俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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雄英体育祭(修行編)

「・・・・・さて、役者もとい親の許しを得て残りの一週間は俺の家で宿泊するメンバーは揃ったな」

 

地下のトレーニングルーム、広大な無人島の砂浜にて俺達は佇んでいた。麗日お茶子を始め、切島鋭児朗、八百万百、耳朗響香、拳藤一佳、常闇踏陰を見渡す。

 

「他の皆は土曜日から来るんだよね」

 

「流石に一週間も他人の家に泊まらせるわけにはいかないって親が許されないのも無理ないだろう。お茶子は一人暮らしだから例外だし、それを許した親が寛大なんだ。それじゃ、皆の個性を活かした戦法とその伸ばす意味も兼ねて始めようか、修行を」

 

気合が籠った返事をする6人の顔を改めてもう一度見回す。

 

「一応、皆の個性を把握しているから何となく的な感覚で痛いところを突くからな?」

 

「それは、私達の個性の弱点を看破したということなのですか?」

 

「看破まではいかないさ。ちょっと予想をして突くんだ。お茶子が許容重量(キャパシティ)超えると酔うようなことを故意的にする」

 

ピッと人差し指を立てた。

 

「まず皆は個性を発動したまま、『登ってもらう』」

 

「「「「「「・・・・・登る?」」」」」」

 

皆、俺の背後に100メートルも聳え立つ崖―――に気付くのに数秒から10数秒経過してからだった。

 

「そ、この崖から登ってもらって初めて修行がスタートする」

 

「な、何でそんな事を?」

 

「個性だけじゃなく、身体能力の向上も視野に入れてんだ俺は。個性だけがそいつの強さだけじゃないからな。―――そういうわけで常闇、お前だけは個性の使用は不可だかんな」

 

「・・・・・何故だ?」

 

「お前は"個性"を頼り過ぎている節がある。お前の"個性"は強力だからお前自身前に出ることは滅多にないだろうが」

 

一瞬で常闇の懐に飛び込み、拳を顎の下まで振り上げた。

 

「―――ヒーローは体を張ってこそ存在の意味がある」

 

「っ―――」

 

顎にぶつかる直前に拳を停めて常闇に真っ直ぐそう言い切った。拳を降ろし、常闇から離れて皆にも他人事ではないということを伝える。

 

「俺からすれば皆に足りないのは近接格闘術のノウハウだ。何でもかんでも"個性"で解決できるなんて思っていないだろうが、それでも解決しようとするのは大間違いだ。もしも相澤先生みたいな"個性"を使えなくされる"個性"の(ヴィラン)と戦うことになれば、結局最後に残るのは己の体だ。その体で戦うしかない状況に格闘術やら自衛の術が必要になるのは必然。故に皆には自分の"個性"を活かした戦いを学びつつ身体能力の向上を目指してもらう。戦う幅が広がればより選択も増えるし」

 

「うん、そうだね」

 

一佳だけが一誠の考えに声を出して賛同した。唯一、一誠に長く鍛えられた一佳にとって実体験して強くなった実感を覚えた。"個性"が"個性"なので、格闘術を覚えても損は無かった。

 

「因みに、この中で一週間も過ごしてもらうから。何となく察していると思うけど、このトレーニングルームの凄さはこれだけじゃなく、外の世界との時間の流れが大きく違って、ここで一週間も過ごせば地上はたったの七時間しか進んでいない調整にしてあるから問題ない」

 

「そ、そんなこともできるのかよお前・・・・・」

 

「俺は不可能を可能にする男でもあるからなぁ。だから着替えやら道具やらここまでもって来てもらった訳であるからして」

 

百達が持参した物を魔方陣である場所まで飛ばした。

 

「この空間にある別荘に皆の荷物を送った。案内役として俺も同行するけど皆は修行することを忘れずにな」

 

そう言って崖に振り向きざまに爆発的な跳躍力で空を蹴りながら崖の上まで跳んで行く。それから創造した人数分の命綱に繋がれた体を固定するベルトを落として皆の前に下げた。

 

「それじゃ、ここまで登って来い皆!」

 

こうして六人の修行が始まった。各々とベルトを体に固定した後に一佳以外初めての崖登りを体験をする。

 

―――数時間後。

 

「案の定、思っていたよりも登ったな」

 

汗を流し濃い疲労の色を窺わせる数人に一言。

 

「登っただけで体力が消耗なんてこの先もそんなんじゃキツイぞ」

 

「キツイって・・・・・これからどんな修行をするん?」

 

「死ぬ一歩手前の感じ」

 

「死っ!?」

 

直接死ぬわけでもないから安心しろ。でも、死ぬほどキツイのは変わらんがなぁ?そう思いを抱きながら親指で背後に鎮座している白亜の城に差す。

 

「あの中に皆の荷物がある。部屋に案内して三十分の休憩をしつつ体操着に着替え終えたらまたここに集合だ。今日一日は近接格闘術の時間だが・・・・・お前ら、意識を保てよ?女でも容赦なく殴るんでそこんとこヨロシク」

 

三十分後―――砂浜で千切っては投げられ、千切っては投げられるお茶子たちが悲鳴をあげ続ける未来は直ぐであることを当人達は知る由もなかった。

 

 

 

「・・・・・だから顔中傷だらけなのかお前ら」

 

翌日のHR、傷だらけの5人の理由に相澤は納得した。揃いも揃って傷の手当てをされたまま登校していたのでクラスメート達も最初はギョッと目を見開いた程に驚いてた。

 

「兵藤、一体どんなやり方をしてんだ?」

 

「合理的で死ぬほどキツイ修行です」

 

「・・・・・そうか」

 

合理的なら問題ないと判断する相澤はそれ以上の追及は不合理的だとせずHRを終わらせた。

 

「家庭訪問を兼ねて休日の日、お前の家に行くからなオールマイトと一緒に」

 

「何でっ!?」

 

ただし、異世界の人間の修行方法は興味があるので見に行くことにした相澤ことイレイザーヘッド。

 

―――昼休み―――

 

「なあ、兵藤の家で修行は実際どんな感じなんだ?」

 

「マジキツイ修行だぜ。崖登りから始められて次は近接格闘術だろう?そんで自給自足をさせられては、俺達の"個性"を活かした戦い方を教えてくれるんだ」

 

「・・・・・自給自足って何してるんだ?常闇、お前はどんな修行をさせられてんだ?」

 

一誠のトレーニングルームを見たことがある上鳴は怪訝な目で切島を見つめる他に顔が鳥の常闇にも話を振った。瞑目して昨日(一週間)の修行内容を復唱し、咀嚼するように思い出す常闇。

 

「夏じゃないのに海を泳いで気持ち良いけど、泳いでいる間に酔うし結構キツイんけどね」

 

「ケロ、とてもハードな修行だったのねお茶子ちゃん」

 

「でも、本当に為になる修行だよ。私のに足りないところや弱点をめっちゃ突いては教えて鍛えられるんよ」

 

「へぇ~、何だか凄い体験をしているんだね!それはそうと麗日ちゃん」

 

常時透明化の"個性"を発動している葉隠透がお茶子の弁当の中身を見て疑問をぶつけた。

 

「今日は食堂じゃなくてお弁当何だね」

 

「あ、うん。一誠君が私達の分のお弁当を作るって言うからそうはさせない!って私達が代わりに作ったんだぁ」

 

「兵藤君、片腕なくなってるのにどうやって作ろうとしたんだろう・・・・・」

 

その当人は百と耳朗、B組から来た一佳に塩崎と一緒に輪を作って持参した弁当を食べていた。

 

「切島、今日も修行すんのか?」

 

「あったりまえだろ。あんな凄い場所でのトレーニングルームは兵藤の家以外絶対にないんだからよ。それに地下なら"個性"を使っても地上に何の影響もないから気兼ねなく使えるぜ!目指せ体育祭優勝!」

 

本気で優勝を目指す者と自分に足りないところを改めて見直し向き合う者が揃って修行の話しは―――。

 

「そう言うことなのでオールマイトさん。休日の日に兵藤の家に御同行をお願いします」

 

「ああ、分かったよ。彼の家には何時か行こうとしていたところだ」

 

極一部の教師(プロヒーロー)にもされていた。

 

「あの子が生徒を鍛えている話は聞いていたよ。実際、どんな風なのかわからないけど」

 

「・・・・・そうですか」

 

「異世界で経験をしたその糧を活かす彼は、きっと間違った修行を君の生徒にするとは思ってないぜ相澤君」

 

「そういうオールマイトは知っているんですか。兵藤が過ごした異世界のことを」

 

「・・・・・ああ、知っているとも。私が秘密を明かしたように彼も自分の秘密を明かしてくれた。どうして彼があそこまで強くなったのかもね」

 

とてもではないが、その秘密を口にすることはできない。と付け加えるオールマイトに追求はしない相澤。

極一部の者にしか知られていないオールマイトの衰弱ともいえるヒーローとしての活動時間と本当の姿の秘密に対して、一誠もまた何らかの秘密を抱えているのは薄らと察している相澤は「分かってます」と本人が話してくれるまで何も言わない姿勢でいる。

 

「(しかしあの子が友人達に修行を・・・・・緑谷少年も鍛えてもらえばあるいは・・・・・)」

 

離れる相澤の目を盗んでオールマイトは携帯でメールを送った。同じ"個性"を持つ同士ならば一日の長たる一誠から使い方を伝授してくれるはずだと確信して。

 

―――その日の夜。

 

「さて、今日も一週間の修行をすんぞ。やることは大体同じだから気張れよ皆」

 

現実世界は六時間、特殊な空間の中での過ごす時間は一週間。ヒーロー志望の者にとっては有意義に修行を励めれる整った環境と言えよう。

 

―――俺が来たぜ!(by切島)―――

 

休日の日こと日曜日。雄英は六日間も授業を始めヒーロー科は夕方まで授業を受けるシステムになっている。

一誠の家での修行を改めて体験してみたいと志願したメンバーは一週間の着替えと道具を持って一誠の家に足を運んだ。相澤とオールマイトも車で向かいそれぞれ集結しつつあった。

 

「オールマイト。彼の家はここでいいんですね?」

 

「土地を購入したのは丁度この地域だから間違ってないよ」

 

のどかな町でいいだろう?と一誠が住んでいる地域の住民達を見れば、(ヴィラン)が現れることなど思っていないかのような笑みを浮かべ家族や友人、知人、恋人と闊歩している光景を窺える。ヒーロー達の尽力で成っている平和は確かな形として残っているのであった。

 

「ああ、ここを曲がったところに―――」

 

赤信号で停車させた相澤に道を教えたところで、オールマイトと相澤は車の中から・・・・・荷物を背負っている数人のA組の生徒が目の前で横切る様子を視界に入れた。

 

「・・・・・鞄を見るからにして、同じ目的のようだね相澤君」

 

「時間を置いてから兵藤の家に行きましょう。それはそうと、車庫はあるんですか?」

 

「あるよ。写真を送ってもらったから」

 

携帯の画面に一誠の家の写真を相澤に見せる。何台も収納できる広い空間の車庫の写真も見て把握し、青信号になったら車を動かす。今のオールマイトを知られてはいけない為に敢えて合理的ではない行動をする相澤。

 

その一方。日を改めて一誠の家で修業しに来たA組の面々は駅で迎えに来てくれた一佳と切島の案内で目的の家に向かって辿り着いた。自分の家のように扉を開けて中に入ると玄関先のフロアでは既に朝食を済ませ、雄英学校の体操着を身に包んでいるクラスメート達がいたのであった。

 

「あ、皆だ!何か久し振りだねー」

 

「久し振りって昨日学校で会ったじゃん」

 

「いや、麗日の言う事は仕方ないぜ?地下に入れば分かるけどよ」

 

「どういうことだ?」

 

既に修行を経験している者とそうではない者の会話を他所にして珍しいものを見る目で改めてきたメンバーを見回す一誠。

 

「声を掛けた覚えのない奴もいるな?別に構わないけど」

 

「皆、誘ったり志願したりしたんだと思うよ。一誠のトレーニングルームで強くなれるって期待しているかもね」

 

「―――フフフ、だったらその期待に応える修行をしなくちゃな」

 

「兵藤、顔が黒くなっているぞ」

 

常闇の指摘で我に返り、一誠はパンパンと手を叩いた。

 

「一応聞くけど他に後から来るって奴はいないな?」

 

「いないと思うぞ。何でだ?」

 

「来訪者の応対はできなくなるからに決まっている。それに皆の修行に専念したいから他のことに構ってられないからな」

 

「そうなのね。でも、どうして一週間の着替えを用意する必要あるの?」

 

「一週間も過ごす以外何の目的がある?」

 

素朴な疑問を素朴に言い返す。

 

「え、今日から一週間。この家で過ごすのか俺達?」

 

「地下、でだがな?常闇達もそうして修行しているしお前らもそんな生活をしてもらうから」

 

具体的なことを言わず、一誠は皆を置いて玄関に近づき扉を開けた。車庫の空間に侵入した矢先、一台の車が停車して今まさに二人の男性が出てきたところを出くわす。

 

「良いタイミングで来てくれた」

 

「HAHAHA!おはよう、一誠!」

 

養父と養子の抱擁シーンは若干惜しみながら直ぐに終わり、気だるげな印象を窺わせる相澤にも挨拶を交わし中に招き入れば案の定―――。

 

「オールマイトだっ!?」

 

「相澤先生もいるじゃん!どうしてここに?」

 

ざわめく面々と対面する。

 

「やあ皆おはよう!私達がここに来たのは何故って?それは皆の修行姿を見に来たからだ!」

 

「兵藤がお前らにどんな修行をしているのか確かめにな」

 

なるほど・・・・・。一同は納得した。教師として修行の様子を確認しに来たのだろうと察したのである。

 

「因みに私は一人の教師ではなく一誠の父親として来ているから気軽に話しかけても構わないからね」

 

「敬意を払って接する事は忘れるなよお前ら」

 

『はいっ!』

 

オールマイトに修行している様子を見られる。恥を掻かないようにしようと各々の胸中にやる気の炎を燃え上げていることを知らない一誠は皆を促す。

 

「そんじゃ、揃ったことだから地下に行くぞ」

 

上階に繋がる階段の裏にあるエレベーターに移動し、十人以上も集まった一誠達を収容し閉まる扉のエレベーターはスッと駆動音もなく下へと降下を始める。ガラス張りで筒状の中で佇むこと三分も経過したところで目的の階層を目の当たりにした。

 

「相澤先生とお父さん。個々が俺の修行部屋だよ」

 

九つの超巨大なスノードームが広大な白い空間に浮いている。一誠達を乗せているエレベーターは中央の巨大なスノードームへと向かっている。

 

「こ、これは・・・・・っ!?」

 

あらん限り目を見開き、ガラスに張り付くほどオールマイトは驚いた。相澤も静かに目を張り、食い入るように凝視している。更にこの修行部屋に始めて来たメンバーも声を失うほどに愕然としていた。一同を乗せたエレベーターは中央のスノードームへと降下して―――到着する。石で積まれた土台の上に停止し扉が開くと一誠達は足を前に動かし砂浜にその足で踏みつける。

 

「一誠・・・・・ここは」

 

「トレーニングルームの一つ、無人島」

 

オールマイトが求める説明を一誠は百メートルも聳え立つ崖に向かって歩きながらいう。

 

「さっき見えたけどここ以外もここも含めて九つのスノードームみたいなトレーニングルームがあるんだ。噛み砕いていえばUSJみたいなその場で経験できるルームな感じに。様々な災害や事故を体験や経験できるUSJのように俺のトレーニングルームは様々な環境の中で修行ができる。ここ無人島はその一つだ。中には―――」

 

崖の前に辿り着く一誠は「まあ、今は主にこの無人島で修行してもらう予定だ」と言いながら新しく修行しに来たメンバーに告げた。

 

「体をほぐす準備運動したら、この崖を個性使いながら登ってもらうぞ。個性によっちゃあ使わなくてもいいけど」

 

「の、登る?この崖をかっ!?」

 

「常闇達はもう何度も登っているぞ?お前らも出来ないとは言わせないからな。特にヒーローを目指しているなら目の前の困難や苦難を乗り越えろよ。PlusUltra(プルスウルトラ)だ」

 

愕然とする新メンバーに対して、先に経験豊富になってきている常闇達がお手本として壁の上から垂れている命綱に繋がれた固定ベルトを装着させて崖を登らせ始める。個性を使わせながらだ。その様子を見上げながら一誠は告げる。

 

「"個性"は身体能力、機能の一つだって聞いたから常時使うことで、個性もそれ相応に強化されると考慮した上に身体の向上も目指して崖登りから始めるんだ」

 

「あの綱とベルトは安全性を求めているから付けさせているんだよね?」

 

「―――一見、そう見させているけど実際そうでもないぞ?」

 

え?と漏らすオールマイト。

 

「油断大敵って言葉があるじゃん。命綱があるから落ちる心配はないと思わせつつ、実際に壁から落ちたら縄はあっさり千切れる仕組みになっているんだ。大丈夫、問題は無いと安心して登っているならそれは大間違いだ。どんな状況でも常に警戒して対処するのもヒーローだし、あいつらにも後でそう教えたら顔を引き攣らせたよ。自分達は怪我や命の保証なんてしない物を身に付けられていることを知ってな」

 

「・・・・・実際、落ちた生徒は?」

 

「いんや、いない。個性を使わせているから当然だろ。それでも落ちたらもう一度登らす」

 

ス、スパルタ・・・・・ッ。と声が漏れたのを一誠は気にせず言い続ける。

 

「あれは所謂自分に対する戒めだ。"個性"だけで何でも対処ができると思っているその心と精神を―――根元から壊して零から徹底的にイジメ抜いて思い知らせているわけだ」

 

それからしばらくして、誰一人崖から落ちることも無く登り切って仮初の命綱と固定ベルトだけが落ちてきた。

 

「次はお前らだ。時間は有限、さっさと身に付けて崖を登れ。それでも嫌で無理だと思う奴は帰って良いぞ?そう思った奴はしょせん、あの入試試験で運よくヒーロー科に入れただけの―――ヒーローになれない腰ぬけもいいところの期待はずれな人間だからな。というか帰れ、時間の無駄だモブ共」

 

敢えて見下し敢えて嘲笑、敢えて挑発して敢えて無化にする。一誠の言動にムッと来た面々は・・・・・。

 

「登ってやろうじゃない!」

 

「おうよ!あいつ等ができて俺らができない道理はないんだからな!」

 

分かりやすいほど反応しては、自分の意志で崖を登ろうとする意欲を見せるのだった。

 

「一誠・・・・・」

 

「躊躇するぐらいならヒーローなんて夢のまた夢だ。更に今よりも目指すなら目の前の壁を乗り越えなきゃ話にならない。―――俺もそうだったし」

 

「「・・・・・」」

 

それはそうと、と一誠は二人に問いを投げた。「二人は何時までここにいるんだ?」と。

 

「オールマイトは一日中いるのは無理だ。俺が代わりにあいつらの修行を見ることにしている」

 

「・・・・・ここ、特別なトレーニングとして一週間過ごせば地上じゃあ七時間しか経過していない設定にしてあるんだけど。だからお父さん達が一日過ごしても地上は一時間しか過ぎてないことになるぞ?」

 

「なんだと?」

 

「一日に一週間分の時間を過ごせる特殊なトレーニングルーム。体感時間がちょっと変化してしまうけど地上でその分の時間を過ごせば元通りになる。今はそんな風に設定しているけど設定を変えれば外の世界は一秒、この中じゃあ一年間ってするのも可能なんだ。まあ、その分体感時間は大いに狂うからあんまあいつらにそうしてやることはできないけどね」

 

愕然、驚愕するプロヒーローの二人。異世界の技術はそんなこともできるのかと一誠の話しを聞き揃って言葉を失い、

 

「合理的な修行空間・・・・・」

 

相澤は頭の中で合理的なことを考え始めた。相澤の考えていることに二人は気付きもせず、四苦八苦で崖を登る面々を眺めている。

 

「因みにこの崖登り、俺がまだ子供の頃やっていた修行の一つだよ」

 

「その時、"個性"は?」

 

「あったけど、自分の力で登った。だからあいつ等を見て俺からすれば生易しいよ。成熟している体で崖登りしているんだから出来ないなんて俺が許さない」

 

「Oh・・・・・」

 

それから第二陣のメンバーが時間を掛けて登り切ったところで一誠も二人と一緒に崖の上へ。

 

「ほら、お前達の荷物だ。部屋に案内するからそこで三十分休憩。その間学校の体操着に着替えてそれが終わったら修行すんぞ」

 

「ちょ、ちょいまち・・・・・。体が・・・・・」

 

仰向けで横たわり全身で息をする上鳴に座りこむ新メンバー達と佇んだまま乱れた息を整えようとするお茶子たちの違い、経験の差がハッキリと表れていた。

 

「・・・・・人の命が危機に瀕している間に時間が待ってくれると考えているのかお前?お前らもその体たらくなのは普段トレーニングしていない証拠だ。そんなんじゃあ(ヴィラン)相手に体力が先に消耗して倒すどころか助ける人間をみすみす危険に晒すか己の未熟さの前で殺されるかのどちらかだ」

 

お茶子たちを目で促し、先に休憩に行かせる。

 

「あいつ等はそれが嫌で異論はするが弱音は一切吐かないでいるぞ上鳴。お前、何の為にヒーローを目指している?否、俺に鍛えて欲しいと思ってここにいる以上。俺に従ってもらう前提で修行してもらう。それが嫌なら今すぐ帰れ。いるだけなら邪魔でしかならない存在だ」

 

発破を掛けられた面々・・・・・。静かに見守る相澤とオールマイトの前で静かに一人、また一人と立ち上がるその宿す光の眼は、―――好き勝手に言われてこのまま帰って堪るか!と反抗的なそれだった。

 

「結構、シビアだね相澤君・・・・・」

 

「だが、言っていることは尤もで一理ある。プロを目指すならこれぐらいの厳しさが丁度良いでしょう」

 

あいつは教官に向いている。首に巻いた捕縛武器の中で小さく漏らす相澤だった。

 

こうしてA組の大半と二人のB組のちょっとした合同修行が始まる―――。

 

三十分後。

 

「そんじゃ、さくっと修行を始めよう。人数も多くなったからA班B班と分けさせてもらうから。といっても、泊まり込みで修行しているメンバーと今日初めてするメンバーだけどな」

 

「やっぱりする修行も異なるのですか一誠君?」

 

「当然。寧ろやることが二分されてより長く専念できる。A班は何時もと同じ修行を、B班は―――」

 

人数分の背中で背負う筒状の竹かごと釣り竿に餌をB班の目の前に置き、指を森林の方へ指す。

 

「今日は自給自足をする日だから、あの魔獣が生息している食料の宝庫の森の中で食糧の調達をして来い」

 

「は、はぁ?自給自足って・・・・・あの城の中に食料は無いのか?」

 

「何か地味・・・・・」

 

思っていた修行とは異なる、そうぼやいたクラスメートに呆れながら説明をした。

 

「肉と水しかない。野菜もほんの数種類しかないから作る料理は限られる。だから森の中に育っている野菜と果物、川にいる魚を調達するのがお前達の最初の修行だ。一見地味な修行だと思うがお前達の目的を邪魔する俺の個性で創造した魔獣もいるから戦いつつ食料の確保をするシビアが待っている」

 

「魔獣って・・・・・あの猫もどき?」

 

「さあ?行ってみてからのお楽しみだ。相澤先生、同伴してもらってもいいですか?手助け無用で」

 

首肯する相澤とB班は食糧集めに精を出すことに決まって、腕に装着した時計の時間を確認する。

 

「今はAM9:30・・・・・昼まで3時間の間、出来るだけ多く頑張ってくれよ?帰りは当然崖を登って来ること」

 

『・・・・・えっ?』

 

「いいな?」

 

どこまでもスパルタだった。そして、一誠が腕を横薙ぎに振るった直後にB班が突風に襲われ体は浮遊感を覚えた。

 

『・・・・・はっ?』

 

どこまでもイイ笑みを浮かべる一誠が言った。

 

「最初の修行は―――コミュニケーション能力。お互い協力し合って頑張って食料を集めることがお前らの修行の始まりだ」

 

100メートルの崖の上から落とされる感覚。目の前の光景にお茶子たちは、遠い目をしてしみじみと懐かしさを覚えていた。自分達もあんな感じだった・・・・・と。

 

「・・・・・相澤君、やっぱり息子の修行はシビアだよッ」

 

「・・・・・取り敢えず、死なない程度の修行だと思って見守りますよ」

 

崖から絶叫という悲鳴を耳にする相澤も崖から飛び降りてB班の後を追う。1組の班がいなくなった後にA班の面々へ振り返る。

 

「さて、B班の頑張りを無駄にしない為にも皆も何時も以上頑張らないとな?」

 

―――B班メンバー

 

上鳴電気、峰田実、障子目蔵、蛙吹梅雨、砂籐力道、葉隠透、緑谷出久、芦戸三奈、瀬呂範太、塩崎茨の以下9名が魔獣の森に吹っ飛ばされそのまま落下。

 

ガサガサガサッ!

 

「あだっ!」

 

「いでっ!」

 

「ケロ」

 

「・・・・・」

 

木々がクッションの役割を果たし、それから思っていた衝撃よりも全身に軽い打撲を食らった。それは着地に失敗した者で無事に着地で来た者は、木の枝の上に乗ったり空中で姿勢を整えてから地面に着地した。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

髪が棘がついたツル状で周囲の木々に伸ばし、蜘蛛の巣のように張り巡らして着地に成功したクリスチャンな塩崎の気に掛けの問いに各々と返事を発する。

 

「あ、ああ・・・・・木がクッションみたいになってくれたみたいで全身を打っただけだ」

 

「100メートルの高さから突き飛ばされる経験をするなんてな・・・・・」

 

「何だよあいつ、オイラ達が死ぬことを考えてなかったのかよ!?」

 

「それよりも早く皆の―――」

 

ズンッ!

 

行動を起こそうとした矢先、皆々の眼前に生えている木々の陰から鈍い足音を立たせて姿を現した魔獣の猫―――否、太古に存在していた巨大な生物。

 

「・・・・・ウェイ?」

 

間抜けな面で間抜けな声を発した上鳴。上から見下ろす猛禽類の生物と出会った瞬間、弱肉強食の摂理、理が勃発した。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』

 

「「「「「ぎゃあああああああっ!?きょ、恐竜だああああああああああああああああっっっ!」」」」」

 

しかも火ィ吐きながら迫って来たので徒党を組んで対処するよりも早く、蜘蛛の子が散るように逃げてしまった。

 

「皆さん、個々に逃げては―――っ!」

 

「ケロォッ!」

 

塩崎の制止は虚しくも届かず、蛙吹の20メートルも伸びる舌で木の上に移動させられる。後に蛙吹も人間離れした跳躍力で彼女と同じ枝に飛び乗り、離れた場所で木の枝に避難した障子と瀬呂に疾呼した。

 

「障子ちゃん瀬呂ちゃん、一緒に逃げつつ皆を探しましょう」

 

「分かったっ!?」

 

4人は太古の恐竜との戦闘を避け枝から枝へと跳び移りながら地上で逃げ回る仲間を探す。

 

「・・・・・」

 

相澤はその一部始終見ていた。一誠の修行はスパルタのように見えるが先を見据え、ヒーローに求められる要素を密かに仕組んでいることを察した。本人もしっかり言っていた。コミュニケーション能力の修行であると。

 

「・・・・・何気に教師に向いているんじゃないか」

 

手助けは無用。そう言われている相澤はこの3時間どうやって修行を全うできるのか追いかけて見守る。

 

 

 

「・・・・・駄目じゃんあいつら」

 

「イヤイヤ一誠・・・・・流石にあんな怖い魔獣を野放しにしていたのかい?」

 

「ゲーム感覚で言えばあの魔獣は中級だぞ?去年のヘドロの(ヴィラン)でも倒せる程度の強さだし。・・・・・まったく、敵前逃亡なんて・・・・・」

 

不満そうな顔で愚痴漏らす一誠が、魔方陣でB班の様子をオールマイトと見ていた。A班の修行は個々の"個性"の向上が適した方法で行われている。

 

「ま、まあ一誠。他の5人も中々じゃないか?冷静で状況を判断しているみたいだし」

 

「それぐらいできなきゃヒーローなんて夢のまた夢だ」

 

俺なんて子供の頃、魔獣の森でサバイバルしたほどなのに・・・・・とぼやく一誠からすれば逃げ出した5人は未熟者以下だと抱いている。驚きはしても協力して倒せば良しとも考えているのであった。身も蓋もない一誠の言葉に何とも言えないオールマイトはお茶子達の話に切り替えようと口を開いた。

 

「と、ところで一誠。少年少女等をどんな風に考えて鍛えているんだい?」

 

「ああ、それね」

 

一誠はまずお茶子を視界に入れた。巨大な背中に大きな石を背負った状態で海の上に浮かぶ石の道をひたすら上へ目指して走り続ける彼女を。

 

「麗日お茶子は許容量オーバーすると酔うから、その酔いに慣れさせるためにはやっぱり許容量の増加は必須だと思っている。だから負担の大きい方で"個性"を使った状態で走らせているんだ」

 

「でもあれ、途中で道ないんだけど?」

 

「そこが今背負っている石を積み上げる場所でもあるゴール。んで、海に落ちて砂浜まで泳いではまた登るというループをしてもらっている」

 

徹底的に鍛え上げようとしている一誠の考えは感嘆よりも畏怖の念を抱いたオールマイト。かつての自分が強くなる為に行われた修行よりもシビアではないかと・・・・・。

 

「と、常闇少年は?」

 

「単純な身体能力向上と近接格闘を教えている。"個性"だけで解決だなんて間違っているから自分の力のみ頼らず、己の肉体も駆使して対処できれば常闇の弱点もカバー、克服できるだろうと思っている。それは他の5人も同じだから」

 

体一つで分身体の一誠と組手をしている常闇を見つめる。何度も片腕だけの一誠に砂浜に叩きつけられたり転ばされたりと弄ばれている。

 

「切島少年は?何やら走り込みをしているようだが」

 

「個性が『硬化』。攻守両面に秀でても機動力もないと。それに何時まで"個性"を維持できるかも大切だ。持久戦に持ち込まれたらキツイだろうからね」

 

「なるほど。では、耳朗少女は?」

 

「接近戦に持ち込んでの"個性"を活かした戦法を編み出している最中だ。6メートルも伸ばせる耳は逆に言えばそれしか伸びない。それ以上の遠距離の攻撃ができる相手には不利な上に耳朗の修行はちょっと悩んでいる。耳たぶのプラグからも爆音並の音が流せるなら他の方法を模索できるんだけど・・・・・」

 

一誠でも全ての"個性"を活かす方法の答えを出せているわけではない。

 

(一誠でも悩むことがある。うん、本当に完璧な人間は異世界でもいないようだね。安心したよ!)

 

己の優秀さに溺れ、過信するより断然いいと考えのオールマイト。やはり人間は何かしらの欠点があってこそ面白いのだと耳朗を見つめ悩む養子の肩に手を置いて話しを催促する。

 

「一誠!八百万少女はどんな感じで修行しているのかな!B組の少女も気になるね!」

 

「お父さん、何だか楽しそうだね」

 

「AHAHAHA!そりゃあそうさ、何故って?息子が頑張ってクラスメートを強くしているんだ。楽しくてうれしいに決まっているさ!」

 

砂浜で高笑うオールマイト。一誠の新たな一面を見れた3時間後。本来の姿に戻ってしまう5分前に人知れず一誠と地上に戻り、一足早く相澤を残して立ち去った。

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