俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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雄英体育祭(修行編)

 

―――3時間後。PM0:00

 

「・・・・・B班、この結果は何だ?」

 

『・・・・・』

 

10人分の籠の中は思っていた以上でそれ以下の成果があった。

 

「籠一杯に食料を集めて来いと入ってないが・・・・・10分の4以下ってどういうことだ?」

 

魚や少量の野菜と果物。そして籠の数が足りない結果に俺は心底呆れる。体操着と体がボロボロが大半のB班に対して。

 

「お前ら、あっちで何してたんだよ。食料の宝庫だって言っただろ」

 

「食料の宝庫どころか魔獣の巣窟だったぞ兵藤・・・・・」

 

当たり前だ。そういう風にしたのは俺だし俺が忘れるはずがない。

 

「事前に言っただろう。お前らを邪魔をする魔獣がいるって。で、籠が足りないのも何でだ?人数分は渡したはずだ。釣り道具もないし」

 

峰田が答えた。

 

「魔獣に襲われてそれどころじゃねーよ!?」

 

上鳴が言う。

 

「魔獣を倒す際に電気で燃えちまって・・・・・ウェイ」

 

以下。この二人の籠がない理由だった。

 

「あー・・・・・うん、お前ら二人。ヒーローに向いてないな。帰るか?」

 

「「はっ!?」」

 

駄目だしをされ、二人は愕然とするが・・・・・いや、駄目じゃんほんと。

 

「その籠がもしも人だったら。仕方がない、しょうがないで済まされると思ってんの?命を(ヴィラン)に奪われたのも同じだぞ」

 

「た、ただの籠じゃんか」

 

吐露する峰田の気持ちを察して、俺は深い溜息を吐いた。

 

「ああ・・・・・そういう認識?じゃあ、言うけどさ。もしも皆に渡した籠が国の政府やら有名な人物からの護送目的で依頼された荷物で、何らかの原因で紛失したらそれでも『ただの~』って失敗して言い訳できるのか?それでお前らヒーローの人生があっという間に失う原因になってもおかしくないぞ。上鳴、お前も言えることだぞ」

 

ぐうの音も出ない二人以外にも話しかける。

 

「初めてだからしょうがないのと、今回無様に逃げ惑ったことも次の糧として頑張ればそれでいいことにする。最初からA班には自給自足をさせなかったからお前らB班と逆の立場でさせたら成果はどうなっていたか比べることもできない。故にこれ以上俺からは何も言わない」

 

「え?」

 

「残りは今まで見ていた相澤先生から言われてろ。俺よりも同じ現場でB班を見ていたから言いたいことはあるだろう。小言程度だろうけど」

 

チラリ、と主にA組の皆が相澤先生を横目で見るその仕草は、何を言われるかという緊張の表れでもあった。

 

「―――30分後、案内したリビングキッチンに来い。それまで連帯責任としてそこで正座だ。これもヒーローが仕事に仕損じたことに対する罰だ」

 

「せ、正座・・・・・っ」

 

全ての籠を浮かせて別荘と化している城の中へと向かう俺の背後で・・・・・。

 

「お前ら正座だ。兵藤の言う通り俺から小言を言わせてもらう」

 

さっそく相澤先生に小言を食らうB班だった。そんな他所にキッチンがある部屋へ赴き、既に調理をしている女性メンバーに一言。

 

「俺も参加して良い?」

 

「「「「座ってなさいっ!」」」」

 

「・・・・常闇、切島・・・・・」

 

「料理作らせないだけで寂しそうな顔をするな・・・・・」

 

「だから、どうやって片腕だけで料理するんだよお前は・・・・・」

 

お茶子達の傍に籠を置いて、渋々と二人の前に腰を降ろす場所はテラスに設置されているソファだ。

 

「んで、B班はどうだった?いきなり自給自足の修行させられてキツかっただろ」

 

「10分の4しか食材を持って来なかったよ」

 

「ンまじで!?」

 

「だからってお前らが文句を言う資格は無いからな。お前らも初めては近接格闘だったからそれなりの覚悟で臨んだからこそ上々な成果で修行を全うできたんだからな」

 

驚く切島を諭すように言い、特殊な方法で作った天気を見上げる。

 

「良い天気だなー自分で作ってなんだけど」

 

「ああ、お前って凄いよなー。こんな場所を一人で作っちまうなんてよ。俺にも一つ作ってくれね?」

 

「フハハハ、無理だ。作ったとしてもお勧めできんよ」

 

「何故だ?」

 

「体感時間が狂うって言っただろう?もしもこの空間の中で思った以上に長居をしたら、浦島太郎の逆バージョンになるんだ。外の世界が何時の間にか何年何十年と過ぎるとは逆に、自分の体が老人になっちゃうって感じにさ」

 

うげぇ、と嫌そうな顔をする切島と納得したように首を縦に振る常闇。

 

「まあ、実際本当に歳を取るわけじゃないから問題ないが、身体に変化が生じるのは間違いない。だから使うとすれば気をつけないといけないんだ。分かったか切島」

 

「お、おお・・・・・分かった」

 

「便利な物でもそれなりにリスクがあるか。ところで皆はどうしている。もう終わっているんだろう」

 

「修行を失敗した罰として外で正座+相澤先生の小言を食らってる」

 

そこで二人して沈黙した。同情でもしているのかどうかわからんが、30分は正座してもらっている。

 

「兵藤、午後の修行はどうするんだ?緑谷達も来てるんだから一人じゃ仕切るの大変じゃね?」

 

「俺が分身で俺自身を増やせることを忘れたか?それについてはもう考えてある。特にA班のお前達にはそろそろ次の段階にしてもいいかと思っている。故に実演習というやつだ」

 

「おおっ!」と嬉しそうに顔を笑みで固める切島から視線を外し意味深で常闇に向ける。

数日も修行、この地下で過ごしたのはその倍の数週間、そろそろ一ヶ月と過ぎようとしている。だから体験させてもいい頃間と考えた結論だ。

 

「修行名は―――PlusUltra(プルスウルトラ)。もうこれ以上ないってほどの修行だ。この修行を乗り越えたら自分を誇ってもいいほど強くなった証を得る」

 

「証を得る・・・・・」

 

「"個性"だけ頼らず己の肉体も駆使して戦う。この両方が成せれば強くなっていると実感するだろう」

 

それだけを言い残しキッチンに向かう。

 

「なあ」

 

「「「「ダメ」」」」

 

「・・・・・解せん」

 

まだ何も言ってないのにこの警戒心・・・・・。

 

―――30分後。

 

今日の昼食はカレー。そして扉を開けてB班の何人かが生まれたての小鹿のように足を震わせつつ入って来た。

 

「あ、この匂い・・・・・カレー!?」

 

「カレーかっ!」

 

独特なカレーの香ばしい匂いを瞬時で察したB班。震えていた足は嘘だったかのように真っ直ぐ立って席に近づいてくる。

 

「相澤先生も用意してあるみたいだから食べてくれ」

 

「分かった」

 

大勢で食事することになったこの一時はあと六日間も繰り返す。六日後にもなればB班も実力を得るだろう。

 

「―――食べながら聞いてくれ皆。午後の修行内容のことについて話す」

 

話を切り出す俺に、A班の女性陣が作った料理から俺に顔を向けたり食べながら聞こうとする姿勢の面々が分かれる。

 

「これからA班は新しい修行をする。何週間も俺の修行に堪えた結果、そろそろ他の修行もさせようと思っているからだ。そこでB班の皆にもその見学をして貰う。この一週間後、B班にはまだまだ早いが経験させるつもりでもあるからだ」

 

「一週間って。学校はどうするんだ兵藤。そんな長くも友達の家に泊まるなんて親に言ってないぞ」

 

「そこは問題ない。このトレーニングルームと地上の時間の流れを変えている。俺の時間の流れを変える"個性"でこの中を一週間もいれば地上の時間は―――皆が来た時間の七時間後の約PM16時半ぐらいにはなってるだろう」

 

「・・・・・マジで?」

 

「ん」

 

この部屋の壁に掛けられている二つの大きな時計に指差す。どちらも数字に差す針が違っている。

 

「片方がこの空間の中の今の時間、もう片方が地上の今の時間だ。これを見てまだ信用できないなら一度地上に戻らせて確かめさせようか?常闇達もそう説明をしてこの数日間、いやこの中で数週間も過ごして修行してきた」

 

『・・・・・』

 

B班から声が聞こえなくなり、更に挑発的で言い続けた。

 

「だからこの数週間の間、確実にお前らB班と常闇達A班の実力の差が大きくある。B班、短い一週間の間でもA班に後れを取らないように死ぬ気で頑張れ。同じクラスメートでも同時にライバルでもあるんだ。お互い切磋琢磨して互いで互いを更に向こうへ目指せ。―――PlusUltra(プルスウルトラ)だ」

 

―――俺が来た(by相澤)―――

 

昼食を食べ終えた一同は、一誠が先導して城の地下深い場所へ案内される。白亜の色の壁は下へ下へと進めば何時しか灰色に、光が無い暗い空間の中へと変わっていく。まるで奈落の底に案内されている気分だとこの雰囲気になれない女子は女子同士で手を握り合い一誠の背を追う。

 

「兵藤、どこへ行くつもりだ?」

 

「別のトレーニングルームだよ。ここ以外にも八つの巨大なスノードームみたいな球体があっただろ?ここ無人島は他のトレーニングルームへ行く為の空間でもあるんだ。エレベーターで行くと思った?」

 

「・・・・・気にはなっていたが、城の地下にその道があるとはな」

 

「道というより扉だ」

 

ただ真っ直ぐ暗い廊下を突き進むその歩調は一瞬の躊躇も怖ろしさも感じさせないほど悠然としていた。

 

「相澤先生。この世界で一番強い(ヴィラン)って誰だと思う?」

 

「一番強い・・・・・(ヴィラン)?」

 

「うん、そう。お義父さんは真に賢しい(ヴィラン)は闇に潜んでいると言うけど、ある意味その通りでもあるんだ。真に賢しいじゃなくて真の(ヴィラン)だけどね」

 

怪訝に暗い中で相澤の視線は一誠に向けられる。何が言いたいのかこの瞬間まで理解できない相澤は後に知る。廊下の深奥に漏れる光が見えてきたことで一誠は小さく口角をあげる。

 

「あの先に扉がある」

 

漏れる光の先へ目指して歩く一行は―――辿り着く。半円形で八つの色に龍を象った顔がある空間に。

 

「ここが他の修行ルームへ行く為の出入り口だ。で、これから行くルームはこの黒い龍の口の中にある扉の向こうだ」

 

一行が周囲を見回していることを気にせず黒い龍の片目の中に手を突っ込み、ガゴンッ!と音を立たせる何かをしたことで龍の顎が鈍い音を立たせつつ開き、凶悪な牙を覗かせるその口の中に扉があった。

 

「さて心して入れよ?中は・・・・・一瞬の光もない闇の世界だ」

 

口の中に入り扉を開けながらそういう一誠に唾を思わず飲む。開けた扉の中に入っていく一誠の姿はあっという間に見えなくなった。固唾を呑んで見守る面々も意を決して―――恐る恐るとやはりどこか怖いと思いながら入る。

 

「ほ、本当に暗い・・・・・」

 

「待って、手を繋ごう。皆の姿も全然見えないよ」

 

「いや、自分の体すら見えない・・・・・」

 

「こえーよ!マジで恐いって!」

 

「バッ、恐いって言うから余計に恐くなるだろうが!」

 

「おーい、兵藤!どこだよっ!?」

 

常闇の空間に入る面々。相手どころか自分の体すら見えない空間に小一時間もいれば心がどうにかなりそうなほど暗闇が徐々にその人物の精神を蝕んでいく。そして、全員が中に入るや否や―――バタンッ!と勢いがついた扉が勝手に閉まった。

 

「うおっ!扉が閉まったぞ!」

 

「ちょ、マジで兵藤どこ行った!?暗くて何にも見えない!」

 

「上鳴、電気だ!電気で明りを点けろ!」

 

「お、おう分かった!」

 

誰かの指摘で"個性"を発動し掛けた上鳴よりも早く、暗闇を裂くようにパッと光が一同だけでなくこの空間を照らした。いきなり迸る光に思わず目を腕で覆い光を遮るが慣れてきた頃には―――。

 

「まったく、騒がしいな暗いだけで」

 

声が響いてきた。声がした方へ顔を向けると壁際に階段があり、その先には扉から出てきた一誠を見つけた。

 

「兵藤!?お前、そこで何をしてたんだよ!」

 

「明りを点けに決まってるだろう?なにも見えない中、A班にやってもらうこともできないからな」

 

「やってもらう?ここでか?」

 

「そうだ。まずは切島、お前からな。それ以外の皆はどっちでもいいから階段の方へ上がってくれ」

 

よく見れば一誠がいる反対側の壁際にも階段と途中まである鉄柵付きの足場があった。指定された当人以外、怪訝な面持でそれぞれ階段に登り、中央を眺める感じで佇む。

 

「さて、始めるぞ」

 

パチンッ―――!

 

指で弾くその音から一拍して常闇を照らす光が弱まりつつ別の光を、黒色も交じった光を発し始め切島を照射する。

 

「なんだ?ここで一体何をするつもりだ・・・・・?」

 

何の変化も起きない中、切島は一誠に視線を向けていた身体とは反対側に・・・・・蠢く黒い影が静かに現れた。

 

「切島、後ろッ!」

 

クラスメートからの疾呼に背後へ振り返った矢先、切島の顔面に強い打撃が叩きこまれた。

 

「んだ・・・・・っ!?」

 

その正体は・・・・・酷似した自分だった。違う点は全身から黒い靄を発し、目を妖しく赤く光らせていることだ。

 

「お、俺・・・・・っ?」

 

「そうだ。切島、それはお前だがお前じゃない」

 

一誠の声が静かに響く。

 

「それはお前自身の影だ。足元を見てみな、お前の影がそれを証明している」

 

言われた通り一瞬だけ下を見れば、自身の足元の影は目の前の自身と酷似ている者と繋がっていることに気付いた。

 

「世界で一番強い(ヴィラン)は・・・・・己自身だ。誰よりも自分を理解し、自分より自分のことを知っているとすればそれは己自身だ。―――もう何となく分かって来ただろ。ここの修行ルームは何なのかを」

 

どこまでも深い笑みを浮かべた一誠がこう発した。

 

「ここは自分自身と戦うトレーニングルームだ。戦い方も性格も"個性"すらその影が全てお前のことを熟知している。そして影もまたお前と同じ戦い方をする。それは―――他の皆も同じだ」

 

切島は戦闘態勢に入り硬化の"個性"を使うと影も"個性"硬化を発動したことで驚愕する。

 

「俺とまんま被ってんじゃん!?」

 

「いや、だからお前自身だって・・・・・」

 

話を聞いてたか?と呆れる一誠だった。

 

「まあ・・・・・とにかく自分自身を倒せってことだよ要は」

 

「そういうことなら分かりやすい!」

 

と言って自身の影に飛び出す切島。影と戦うクラスメートに呆れが籠った息を吐く一誠は相澤に話しかけられた。

 

「お前、こういうトレーニングルームもあるならどうして最初から使わない?」

 

「物事には順序ってのがあるんだよ先生。確かにここなら自分の癖や弱点を把握できる。己を知って己で通じて他のことも知ることができる。でも、これだけが修行じゃないんだ。だから最初から使わなかったんだ」

 

「・・・・・お前も考えてはいるんだな」

 

「あ、何か失礼っぽいなそれ」

 

「貶しているわけじゃないから安心しろ。だが、一体どういう原理で影が物理攻撃をしているんだ」

 

「秘密」と言いながら切島と自身の影との戦いを見守る。拮抗しているようにも見えるが、徐々に押されている切島。

 

「同じ程度の強さだけど決定的な差は・・・・・あいつにはない技と狡猾さかな」

 

「イダダダダダァ~ッ!?もげる、腕がもげる~!」

 

柔道の技、十字固めを決められ、タップする切島。この瞬間勝負は決したことで切島の影は霧散して切島を残した。

 

「―――理解したか皆?最強の敵は自分自身であることを」

 

一堂にいる皆々に声を掛ける一誠は淡々と言い続ける。

 

「自分を乗り越えてこそ人として一人前になれると俺は思っている。だから他の皆も体育祭まで頑張って修行を励め。―――次は耳朗だ、頑張れよ」

 

自分自身との戦い―――それはヒーローを目指すものとしてかけがえのない経験だった。その経験を忘れず糧とし

更に向こうへPulsUltra(プルスウルトラ)―――。

 

―――その日の夜。

 

「相澤先生、もう帰るのか?」

 

「ああ、この事を校長にも教えたい。兵藤、お前は何気に教師に向いているよ。かなりスパルタだがな」

 

「はは、教師か・・・・・初めて言われたよ」

 

「それぐらいお前とこのトレーニングルームは合理的だってことだ。学校側もお前のトレーニングルームを利用したがいたいと思うだろうよ」

 

相澤先生は俺にそう言い残してエレベーターで地上に向かった。それを何時までも見送り、寝静まっているだろう皆がいる城へ、自室へ魔方陣で直接移動した。

 

「・・・・・」

 

テーブルに置いてあるこれまで修行してきたA班のステータスの資料を見つめ、さらに向上した部分だけを上書きしていく。

 

「皆、体力の方は上々だな。後はやっぱり個性の方か・・・・・どんな方法で伸ばすか・・・・・今後の修行次第で懸かってるかもしれないな」

 

そして新たに加わったB班・・・・・特に緑谷については・・・・・。

 

『一誠、緑谷少年を鍛えて欲しい。贔屓せずさり気なくでもいいから』

 

オールマイトから直々に鍛えて欲しいと言われている。言われなくても来た時点でそうするつもりだったが・・・・・お父さんの意志を継ぐ男だ。徹底的に鍛えてやるよ。

 

「さて・・・・・風呂にでも入るか」

 

長湯な俺は一人で入ることはもう習慣となっている。片腕となった今じゃあ何時もより時間が掛かるけどな。

 

と、思っていた俺だが皆はまだ―――。

 

男部屋。

 

「はい、UNO!」

 

「だぁー!?また負けたぁー!」

 

「騒々しい」

 

修学旅行をしている気分ではしゃいでいた。もう思いっきり着替えと必要な道具以外にも娯楽を持ってきたB班の誘いで男二人しか寝泊まりしていない切島からすれば、楽しみが湧いて出て来たようなものだった。

 

「いやぁー、こうしてお前らと泊まるなんて今回が初めてだよな!」

 

「めっちゃ修行はきついけど、このぐらいのことはあいつも目を瞑ってくれるよな」

 

「オイラなんて女が入浴する時間なんて、兵藤が見張って覗けれなかったっ・・・・・!」

 

「欲望の権化め・・・・・」

 

悪いかっ!?と常闇に突っ込む峰田。UNOをしているのは持参してきた本人の上鳴に切島、瀬呂と緑谷、障子と常闇に峰田、砂藤の全員だった。

 

「他の男子連中もくれば良かったのになぁ」

 

「しょうがないだろ。誘っても来ない相手を言ってもどうしようもない」

 

「それに比べて女子は全員来てんだろ?しかもB組の女子二人も来てるし」

 

「そうだよ!入浴じゃあ選り取り見取りな女達が裸体を晒しているんだぞ!?それを拝めず男として駄目だろう!」

 

取り敢えず峰田の発言を気にせず無視し、次はトランプをやろうぜー!と上鳴の話に反応する男子陣。

 

「つーかさぁ」

 

「瀬呂君?」

 

「いや、兵藤が凄いのはわかってんだけど、オールマイトの養子にもなれる実力も理解している。でもぶっちゃけ、兵藤の"個性"って複数持ちでも多くね?数えただけでも三つ以上あんぞ」

 

ババ抜きとして配られたカードの同じスートを抜きながら一誠に対する疑問をぶつける。

 

「・・・・・確かに、個性を二つ有している轟以上も兵藤が勝っているな」

 

「えっとなんだっけ。天使になれる個性に魔獣を創造できる個性、それとワープの個性に?」

 

「後、USJで見た巨大な八つ蛇と巨大なドラゴン・・・・・」

 

「あれって"個性"の枠に収まっているのか?」

 

謎が謎を呼び浮かび、緑谷達の中で一誠に対する疑念が深まるばかりだった。

 

「兵藤って・・・・・本当に一体何者なんだ?何でオールマイトの養子になれた?」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

その一方、女子部屋では・・・・・。

 

「ねえねえ、恋バナ。恋バナしない?」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

肌と二本の触覚がある髪がピンクの女子、芦戸三奈がトランプをしながら突然そう言いだしていた。男子達と変わらず、女子が増えたことで賑やかも増した。

 

「せっかくB組のクラスの女子もいるんだから何か盛り上がる話をしようよ!」

 

「だからって恋バナなんて・・・・・ハズイじゃん」

 

「恋バナとは一体?」

 

「八百万さん知らないんだ?恋愛に関する話しをするんだよー」

 

「恋愛・・・・・」

 

芦戸の突如の提案により別の意味で盛り上がる気配が感じ始める。

 

「芦戸さん。恋バナをするにしても一体どのような感じで会話をするのですか?」

 

「ちょ、マジですんの?ウチそういうの苦手だから抜けるよ」

 

「抜けたら耳朗の下着、峰田のところに置くよ」

 

「フザけんなっ!?よりによってアイツの手に渡ったら捨てるしか無いじゃん!てか、何時の間にウチの鞄を・・・・・!」

 

人質もとい弱みを握られた感じの耳朗は嫌々ながら話に参加するしかなかった。

 

「じゃあ最初は蛙吹からねっ」

 

「ケロ、そう言われても私は好きな人も気になる人もいないわ三奈ちゃん」

 

「だったら好みのタイプは?」

 

トランプで遊びながら話しは続く。問われた蛙吹は大きめの目を天井に向け、考える仕草をする。

 

「蛙が好きな人かしら?容姿はともかく、取り敢えず蛙が好きな人なら考えるわ」

 

「梅雨ちゃんは"個性"が蛙だもんねー」

 

「そうね。あ、嫌いな人なら要るわ。あからさまに変態な人」

 

「それ峰田だよね?」

 

「ノーコメントよ」

 

小人な男子生徒がくしゃみをしていることを女性陣は露にも思わないでいた。

 

「そんじゃ次は、葉隠ちゃん!」

 

「わ、私?い、いないよ~」

 

体が透明化してパジャマと浮かぶトランプしか見えない女子にも話を振られ、パタパタと動くトランプは否定しているかのような表現をしてる。

 

「気になる人は~?」

 

「気になる人はー・・・・・うーん、まだいないかな。そういう芦戸ちゃんは好きな人や気になる人はいるの?」

 

「あはは、いないいない。でも、一緒にいて楽しいなって言う人が好きだよ」

 

「あ、分かるかもっ!あ、ババ・・・・・」

 

隣から引いたカードが引きたくないものであることを耳朗は聞き取った。

 

「塩崎さんは?B組に好きな人いる?」

 

「クラスメートに好みの男の人はいません。ですが・・・・・心から好きな人がA組にいますわ」

 

おおーっ!と女子が騒ぐものの、好意を寄せている相手は誰なのか既に知っている女子からすればライバルでもあった。

 

「誰っ?ウチらのクラスの男子の中で誰が好きなの?」

 

「・・・・・一誠さんですわ」

 

「逆玉の輿!?」

 

「違います。私は天使の姿で助けられたあの人を心からお慕いしています。決してオールマイトの養子であるから、金銭的な目的で彼を慕っているのではなく―――」

 

芦戸が引くほど異議を唱え追求し出すB組の女子に、「B組にもこういう人いるんだ」と知ったA組の女性陣だった。

 

「助けられた?それは何時なの?」

 

「去年、一年前ですわ」

 

一年前・・・・・まだこの場にいる全員が雄英に進学希望していた中学三年生の頃の時期であった。お茶子の話で塩崎は意識を去年の話しに向かったことで芦戸への追求は止み、安堵で溜息を零した。

 

「世間では知られていませんが私、友人と人身売買をされかけました」

 

「嘘っ!?良く助かったね!」

 

「一誠さんが助けてくれましたの。天使の姿と神々しいドラゴンと共に・・・・・」

 

「神々しいドラゴン・・・・・?」

 

「はい、あの時のことはまだ忘れていません」

 

熱に浮かされたような表情を浮かべ、皆に問うた。

 

「この中で彼に助けられた人はいますか?」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

いる、あからさまに沈黙し出す少女が四人もいた。

 

「え、皆・・・・・もしかして去年兵藤と出会ってたの?」

 

「意外だねぇ~・・・・・」

 

「そうね。顔見知りならもっと入学してきた当日に反応していたはずなのに」

 

芦戸、葉隠、蛙吹がお茶子達に好奇な視線を向ける。

 

「・・・・・ウチの場合、(ヴィラン)に殺され掛けて意識が朦朧としてたから最初、誰が助けてくれたのか分からなかったけど、髪の色と声だけは覚えてたんだ」

 

独白する耳朗に便乗する感じで一佳も話に加わった。

 

「私も似たような感じかな。空を飛ぶ一誠を追い掛けて、見つけたら逃げていた(ヴィラン)に人質目的で捕まっちゃったところを一誠に助けられた」

 

「私も、人知れず誘拐されて監禁されていたところを助けてもらいましたわ・・・・・」

 

「私は、両親の借金を肩代わりにしてくれたおかげで助かったほうだよ」

 

だから一誠と仲が良かったのか。あまり気にしてなかったがその理由を分かったことで。

 

「じゃあ、四人は塩崎さんのように兵藤君のこと好き?」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

そう問われた四人は沈黙を貫こうとしたところで・・・・・扉を叩く音が聞こえた。

 

「はーい?」

 

「―――もう寝る時間は過ぎてるがまだ起きてたんだなお前ら」

 

扉の向こうから聞こえるのは修行の鬼の教官のこと一誠だった。ギクリッと誰かが体を硬直させ、騒がしかった部屋も静まりかえるほどに女性陣の中で緊張が走った。

 

「俺はこれから風呂に入る。その間でも起きているのは構わないが明日。眠そうな顔をしていた奴はその眠気を無くすほどの修行を特別にしてやるからな」

 

それから一誠の声が聞こえなくなり・・・・・揃って息を零した。ここでは一誠が法律なのだと修行してその身に刻まれるほど上下関係を覚えさせられいる身としては、逆らいたくない相手であった。

 

「・・・・・寝ましょう。特別の修行はきっととんでもない修行かもしれませんわ」

 

「きょ、今日の修行めっちゃきつかったしね・・・・・」

 

「あれ以上のキツイ修行なんてあるの・・・・・?」

 

一誠の鶴の一声で女性陣は直ぐに就寝の準備をして―――

 

「あれ、お茶子ちゃんどこ行くの?」

 

一人だけ部屋から出て扉の方へ歩いて行く少女に、葉隠が声を掛けた。まだ眠りについていない女子達も興味深々に見ていた。

 

「えっと、トイレだよ?」

 

それだけ言い残してお茶子がいなくなるや否や。

 

「「・・・・・」」

 

一佳と八百万が立ち上がってお茶子の後を追うことを知って、雰囲気的に他の女子達もついていく形で立ち上がる。

 

 

「(ヒソヒソ)お茶子さん、いつもこの時間帯でトイレに行くので少々気になっていたのです」

 

「(ヒソヒソ)B組の私達じゃわからなかったことだねぇ」

 

「(ヒソヒソ)でも、別にトイレ行くだけで気になる?」

 

声を殺してお茶子を尾行する女性陣。

 

「何というか、女の勘が言うんだよね。怪しいって」

 

「怪しいって何がですの?」

 

「それを調べるために今晩行動をしてるんだよ」

 

足音を立てないよう前に足を運び、友人の少女に悟られない距離から追う一同。

お茶子が足を運ぶ先は何故か―――浴場に進んでいた。

 

「お風呂?お風呂好きなんだお茶子ちゃん」

 

「そういうお話は聞いたことないのですが・・・・・」

 

曲がり角から盗み見する八百万達。葉隠はパジャマを脱いで堂々とお茶子の様子を見ている。

 

「あ―――」

 

葉隠が思わず驚きで発した理由は、お茶子が男子風呂に入っていく様子を目の当たりにしたからだ。

 

「お茶子ちゃん、男子の風呂に入ったよっ」

 

「え、えええええっ?」

 

「ど、どうして・・・・・?」

 

「―――ちょっと待って、今風呂に入っているのって・・・・・」

 

驚きでお茶子らしくない行動に動揺するも、さっき誰が男子の風呂に入るって聞いたのを思い出して芦戸が口にした途端。

 

「「「「・・・・・」」」」

 

八百万、耳朗、拳藤、塩崎が無言で男子風呂へ侵入し、脱いで体に布を巻いた姿のお茶子と対面する。

 

「み、皆っ・・・・・!?」

 

思いもしなかった友人達の登場に動揺と狼狽するお茶子にズイと顔を近づける一佳。

 

「今の今まで一誠さんとお風呂入っていたんだね。まさか、二人はそういう・・・・・」

 

「ち、違うんや!片腕だけじゃ洗い辛いと思うん一誠君の翼とか体を洗うのを手伝ってるんだけなんよ!?」

 

慌てて弁解するお茶子の顔は次に影が差す。

 

「私が一誠君の家に住むようになったのも、一誠君の身の回りの世話・・・・・介護の目的だし、あの時庇うことがなかったら腕がなくなることもなかったし・・・・・」

 

「「・・・・・」」

 

ソレを言われては八百万と耳朗は何も言えなくなり口を閉ざすしかなかった。気にするなと言われても、私生活に不便が生じているならますます申し訳ないと罪悪感を覚える。だからお茶子は同棲生活を始めたのだと知り、納得する。

 

「だから私・・・・・一誠君のために頑張りたいんだけなんだ」

 

うららかな彼女から伝わる気持ちは嘘偽りではなかった。ここまで尾行していた自分達が恥ずかしいとバツ悪そうな顔をする少女達は「ごめん」と謝罪した。

 

「こっちもごめんね。黙っていて」

 

「いえ、今思えば一誠さんの私生活のことを考慮していなかった私達も悪いですわ。その上、特訓や稽古、修行を手伝ってもらっていますのに・・・・・」

 

「そうだね・・・・・って、拳藤。何服脱いでんの?」

 

今気付いたとばかりパジャマを脱いで下着姿になっている一佳が耳朗に声を掛けられる。

 

「私も一誠さんの体洗うの手伝う」

 

「へっ!?」

 

「そうですわね。私も手伝いますわ」

 

「八百万さん?」

 

「私もいたしましょう」

 

塩崎も挙手して徐にパジャマを脱ぎだして全裸になり始める。

 

「じゃ、私も手伝うね!お先-」

 

「葉隠さんっ!?」

 

「なんか面白そ!私もやってみたい!」

 

「美奈ちゃん。男の子の体を洗うのは色々と勇気が必要よ」

 

―――ほぼ全員、女子達が一誠がいるであろう風呂場に入り「なんのドッキリだっ!?」と驚く少年の声が聞こえたような聞こえなかったような・・・・・。

 

 

 

 

 

AM5:30

 

早朝の時間に叩き起こされたA、B班のメンバー達はまだ眠たそうにボーとしていたが、轟く雷を間近で見せ付ける一誠に一瞬で姿勢を正し、眠気さえも吹っ飛ぶほど覚醒した。

 

「皆おはよう。本来まだ眠っている時間帯だが、B班も参加したことで修行の内容も変えることにした。一日しか修行できないB班の為にA班も付き合う形で今後行うからよろしく」

 

「というと?」

 

「うん、A班が今やっているような修行に加え、B班にはまだ早い段階だけど今日は"個性"を応用した戦法をA班と一緒にやることにした」

 

A班とB班が同じ修行を今日から始める。その分、一誠に見てもらえなくなるのではと懸念するが後にそれは杞憂に終わった。修行内容を言っている一誠に蛙吹が挙手をする。

 

「私達の"個性"を活かした修行って、私達自身が良く分かっている方だと思うのだけれど?」

 

「そうだな。蛙吹の「梅雨ちゃんと呼んで」・・・・・梅雨ちゃんの言う通り、自分の個性は自分がよく知っているだろう。だが、俺はあくまでもっとその個性の可能性があるを思っている」

 

「"個性"の可能性・・・・・?」

 

「そうだ。例えば・・・・・上鳴」

 

俺っ?と話しを振られ、一誠と眼が合う。何を言われるのか内心ドキドキと緊張する。

 

「お前の個性の特徴は?」

 

「はっ?纏ったり放出したりだけどよ・・・・・使い過ぎるとアホになる」

 

「なるほど、纏うことができるなら話しが早いかもな。コントロール次第でこういうこともできる」

 

一誠が全身に電気を纏って見せる。

 

「放出せず、纏うことを維持し続けてそのまま動けば雷のごとく素早い動きもできるぞ」

 

「・・・・・マジで?」

 

「それを可能にするのはコントロールが大事だ。電気の出力を自分で調整してできれば、目では追えない速度を手に入れられる。これが真にお前の手に入れるべきの技と電気の力だ」

 

纏う電気を消して緑谷にも指摘する。

 

「緑谷、お前もだからな?体力テストで見た個性を使ったら肉体に反動が出るなんて、そんなんじゃヒーロー活動は無理だ。一ヶ所じゃなくて一度、全身にその力を常時張り巡らせて見ろ。使うな、ただ力のエネルギーを満遍なく全身へ伝わるイメージをしろ」

 

「!?」

 

「―――と、まあこんな感じで俺からすれば皆の個性にまだ可能性があると踏んでいる。以上、説明終わりだ。早速身体能力向上の修行すんぞ。朝食はその後だ」

 

 

―――雄英高等学校―――

 

 

「報告は以上です校長」

 

B班が参加して二日目、地上ではまだ二時間しか経っていない最中。相澤は学校に戻り校長室にいる根津に一誠の地下室のことを教えていた。

 

「彼の地下、トレーニングルーム・・・・・。異世界の技術は凄いね話しを聞いた限りだと」

 

「合理的なことだと思います。ですので一学期が終えたら本来の場所ではなく兵藤のトレーニングルームを利用したい」

 

「それは彼が了承しているのかな?」

 

「それとなく伝えました。まだ答えは聞いてませんが」

 

それでは許可をすることはできないと根津は思った。だが、あっさり了承してもらえるイメージが湧くのが不思議でしょうがない。相澤が合理的というぐらい整った場所なのだろうと思い、椅子から降り相澤の傍によって見上げる。

 

「分かった。私も彼の地下を見よう。それから判断するから」

 

「・・・・・それは無理かと」

 

「うん?」

 

「兵藤の地下ルームはほぼ地上と隔離された状態。インターホンを鳴らした程度では気付くこともないでしょう」

 

「じゃあ、彼と連絡する手段もないってことなのかな?」

 

首肯と相澤は頷く。もしも一誠と話しをするなら―――明日になる。

 

 

「クシュンッ」

 

「一誠?」

 

「や、誰かが噂されたような・・・・・」

 

朝食を食べ終え、今は"個性"を伸ばしつつ"個性"を活かした戦法を編み出している最中だった。

主にB班のメンバーだ。まあ、殆ど近接格闘だが覚えておいても損は無い。

 

「しっかし、A班・・・・・いや、A組の皆の"個性"は凄いね一誠」

 

「俺からすればまだまだ伸びしろあるのにそれを模索しないあいつらに疑問だよ。ヒーローになればそれで満足なのかって」

 

「皆も人知れず努力していると思うよ?今もこうして一誠に鍛えられて強くなっているのが分かって来る」

 

「そうでもなくちゃ、困るってな」

 

一佳と中国拳法の打撃合戦を行っている他所に、他は様々なやり方で俺の分身体やA班にB班が鍛えられている。特に緑谷は・・・・・。

 

 

「・・・・・流石、頭の回転は早い方だったか緑谷」

 

「君のアドバイスで、なんとかっ・・・・・」

 

力の流れが全身に伝わっていることを察し、取り敢えずは成功した緑谷の新しい技法の習得。

 

「あんまり大きい声で言えないが、お父さん・・・・・オールマイトからお前のこと頼まれているからな。後継者としてあまり恥ずかしい姿を晒すなよ」

 

「・・・・・兵藤君。どうして君がこの力を受け継がなかったの・・・・・?」

 

二人だけ崖の上で修行を行っている為、二人の会話は耳朗でも聞き取れない。それでもお互い聞こえる程度の声を殺し話し合いをしている。

 

「受け継ぐことができない都合があるからだ。都合が無くてもその"個性"を受け継ぐ気もなかったかもな」

 

「な、なんで?」

 

「今そんなこと聞く暇はないだろう。ほら、その状態のまま正拳突き100回。終わるまで絶対に解除するな。解除する度に+50回だ」

 

「う、うんっ」

 

 

 

「ん、緑谷の奴。早速"個性"の可能性を見出したようだ」

 

「うわ、本当?凄いな緑谷」

 

「負けてられないぞ一佳?」

 

「だね。じゃあ、一誠。もっと武術を教えて」

 

「任せろ。同時にギアをあげるぞ」

 

 

 

違う視点を変えて上鳴―――。

 

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・き、きっつ・・・・・ウェい」

 

「うーん・・・・・無駄じゃないんだが、やっぱり感覚を体に覚えてからじゃないと難しいか。ほれ、充電」

 

「あばばばばばばばばっ!?」

 

体に電気を纏っての移動を試んでいる一誠と上鳴ペア。しかし、思いの他"個性"の扱いに困難している上鳴に充電を兼ねた電撃攻撃を浴びせる一誠も首を捻ってどうしたものかと考えているのだった。

 

「つーか、お前はどんな感じで電気を纏ってんだっ」

 

充電完了した上鳴からの質問に一誠は首を傾げた。

 

「服を着る感じ?」

 

「お前、そんな発想でできてるのかよ・・・・・」

 

「慣れれば呼吸する感じに電気を纏うことができるんだよ」

 

実際に電気を纏う一誠が上鳴の肩に手を置いた。そうすることで纏っている電気が上鳴の全身にも伝わる。

 

「し、痺れるけどっ意外と出力が出てないなっ?」

 

「移動するときは一気に出力をあげてもいるんだ。主に脚へ電気のエネルギーを―――あっ」

 

不意に、何かを思い出したような不自然に言葉を止めた一誠。

 

「・・・・・ああ、俺基準でやってもらってるから出来ないか流石に。悪い上鳴。初歩の初歩を忘れてた」

 

「は?」

 

「いいから、今度は全身に電気を纏うとせず太股から足の先だけ電気を纏うイメージをしてくれ。多分、それでさっきよりはマシになると思う。いいか、強くイメージをするんだ。出力は5万V」

 

強調するように指示を下される上鳴はその日、飽きるほど電気を纏う修行をさせられた。

 

 

―――塩崎seed。

 

「塩崎の髪って切り離しも可能な上に伸縮可能か・・・・・」

 

「はい、何か私の"個性"を活かした方法は浮かべましたか?」

 

一定の距離でバラバラに離れている一誠とA班とB班はマンツーマンで修行を受けていた。不味相手の個性を把握する為に最初は軽く模擬戦をしてから"個性"を活かした戦法を編み出す。

 

「ん、大体な。塩崎―――」

 

「・・・・・」

 

ムッ、と何故か不満顔になる塩崎を思わず口を閉ざし、何でそんな顔をする?と内心疑問を漏らした。

 

「一佳さんのことは名前で呼ぶのに私のことは名前で呼んで下さらないのですか?」

 

「・・・・・え、呼んで欲しいのか?」

 

「はい」

 

改めて名前を呼ぶと、花が咲いたように笑みを浮かべ出す。不満はあっさり解消されたことで改めて言い掛けた言葉を口にする。

 

「神話に出てくるメデューサーって魔物知ってる?」

 

「髪が蛇の・・・・・ですか?」

 

「そう。茨の髪を―――こんな風に出来るんじゃないかって思っている」

 

一誠の鮮やかな赤い長髪がゆらりと一人で動き、大きく伸びながら形作り、凶暴で獰猛そうな生物の顔へと成った。

 

「髪を自在に伸縮、操れるならこうすることも可能のはずだ。その髪をもっと活用、活かす為には工夫も大事なんだ茨」

 

「工夫・・・・・」

 

「ああ、残りの数日間。茨の個性の可能性を更に見つけるぞ」

 

 

―――峰田seed

 

 

「さて・・・・・お前が一番難儀なんだよな。どうお前の"個性"を活かした戦い方を編み出すか・・・・・」

 

「おいおいっ、オイラだけ分からないだなんて勘弁してくれよ!」

 

ギャーギャーと喚く小人もとい峰田を見下ろす一誠は心から悩んでいた。峰田の個性は物に超くっつく!それだけだ。故に一誠はそのくっつく個性をどう戦闘向きにしようかと頭を掻きながら苦難の色を浮かべる。

 

「うーん・・・・・確かお前自身はくっつかず弾くんだよな?」

 

「そうだよ。それがどうしたんだよ」

 

「・・・・・うーん」

 

「おおおおおおいっ!?」

 

また悩まれてしまい不安でしょうがない峰田だった。

 

「いやな?あるにはあるんだけど・・・・・それを決行した場合、お前の髪が後で邪魔になるんだよ」

 

「は?何だよそれ。オイラの髪が邪魔になるって」

 

「だって、くっついて弾くだけなんだろう?もぎったその髪はその後どうなるんだ?」

 

それを指摘され、口を閉ざす峰田自身も分かっているのだろう。ただのゴミになるだけだと。

 

「まあ、取り敢えずここじゃあなんだから別の場所に移動するぞ。そこがお前の練習場とする」

 

「・・・・・マジで頼むよ本当・・・・・」

 

―――障子seed

 

「身体の器官を複製できるか。なら、手も複製できるから・・・・千手観音みたいにできるか?」

 

「そこまで複製はできない」

 

「でも複製はできるんだな?というか自分の口で言え口で。腹話術か」

 

その場で腰を降ろして胡坐掻く二人。触手で複製した口と会話している一誠にとっては腹話術をされている気分で何とも言えなかった。決して辛い物をブチ込んだたらどうなるのか試したいとは一瞬でも思ってはいない。

 

「複製した手も攻撃できるならそれはそれでやりようはあるな。主に近接格闘術」

 

「ああ、自分でもそう思っている」

 

「さらに複製して相手の死角からの攻撃もできそうだがどうだ?」

 

「一ヵ所に二つも複製すると操作性が落ちる。だから動きも鈍くなってしまう」

 

なるほど・・・・・と障子の短所と言えるべき"個性"の弱点を知って一度首を縦に振る一誠。

 

「ん、じゃあ常時その状態で残りの時間も過ごしてもらうぞ。その操作性の向上だ」

 

「二つも複製したままか」

 

「そうだ。本来の腕のように手足を動かせる為にだ」

 

やることが決まれば一誠は即座に行動する。

 

「複製した手だけ崖を登ってもらおうか。そうすれば否が応でも操作性も向上するだろう」

 

―――瀬呂seed。

 

「・・・・・テープ、テープかぁ・・・・・。何でだろう森の中で移動するターザンのような感じしか思い浮かべないぞ」

 

「それ、できるからできれば他のを考えてくれね?」

 

何とも言えない雰囲気の中で二人は新たな"個性"の可能性を考えているが、テープという個性ゆえに一誠はどうしようか・・・・・と悩んでいる最中だった。

 

「テープって直ぐにちぎれる印象しかないからなぁ・・・・・考えにくい」

 

「俺のテープを舐めるなよ兵藤。これでも俺のテープは頑丈なんだ」

 

「頑丈?実際どのぐらいだ?」

 

「落下する物を受け止めれるほどにだ」

 

それはどれほどの重量のものかと聞きたいが、一誠は別のことを質問した。

 

「テープを使い過ぎるとどうなる?」

 

「体が痒くなるなぁ。肌がかさついてよ。これがまた堪らないんだ痒くて仕方なくてさ」

 

・・・・・テープの強度に潤いが不可欠?と思ってしまった。

 

「んー・・・・・テープを巻き戻す際の飛び蹴りとかパンチとかぐらいなら可能だろうし。人一人分テープで垂直に支えられるぐらいの強度が欲しいところなんだが・・・・・。ああ、頑丈なら射出したテープを盾代わりにも出来るんじゃね?」

 

「あ、そういう手もあったか」

 

本人も納得する新たな可能性だったようだ。

 

「でも、盾にするつったってどうやってだ?」

 

「そりゃあ腕や胴体に何重も巻きつけて打撃のショックを吸収できるようなそんな感じだ。あ、また思い付いた。手足に巻きつけて蜘蛛のように壁に張り付いて移動もできるな」

 

「蜘蛛かよ!でも、それもできそうだなー」

 

段々とテープの新たな可能性が浮かび上がるにつれ戦闘とは真逆な方へと話しが盛り上がる二人であった。

 

「・・・・結局お前は格闘術とか護衛術、中国拳法を学んでもらう他なさそうだ。すまん」

 

「ま、しゃーねーわな。よろしく頼むわ兵藤」

 

本当に結局そこで落ち着き、瀬呂に武術を学ばせるのだった。他のメンバーも新しい"個性"での戦い方やアドバイス、格闘術のノウハウを学び教えられ、時間はあっという間に過ぎたB班が宿泊できる最後の日の当日―――。

 

「ん、まあ上々の方かな。前より見違えるほど、確実に実力を得ただろ」

 

身支度を整え、一週間振りに家へ帰るB班を送り迎えする一誠とA班。

 

「帰ってからも自分なりに修行して体育祭に臨むんだぞ皆」

 

「はい、一週間ありがとうございます。ですが、体育祭ではライバル、敵となってしまいますがご容赦を」

 

「個人戦があったら油断しないで勝負するさ」

 

先に帰るB班と握手を交わし合い、各々と別れを告げる。そして1人、また1人と玄関の向こうへと進みいなくなってまた7人に戻った一誠達。

 

「一気に静かになったなぁ」

 

「本当に久しく静寂だ」

 

「地下では色々とありましたから・・・・・」

 

「本当だよ。主に一誠がらみだけどね」

 

「うん、ものすっごスパルタやからキッツイわぁ~」

 

「これからもそうだろうけど」

 

六者六様、今の現状と地下で起きた経験にこれからのことを思って言う。そんな六人に振り返りこう言う一誠。

 

「んじゃ、修行はもうここまでにするか?家に帰ってもいいぞ」

 

そんなことを言われた少年少女達は自然とそれぞれ笑みを浮かべたり止めないとやる気を窺わせる。

 

「まだまだぁっ!」

 

「これからも頼む」

 

「誰も弱音を吐いていませんわ一誠さん」

 

「右に同じく」

 

「八百万さんの言う通り!まだ頑張れるよ、私!」

 

「うん。寧ろまだ修行をつけて欲しいね」

 

行動でそれを表す。一誠を置いてまた地下に行こうとしている六人に苦笑いを浮かべる一誠。

 

「まったく、一体誰に似たんだ?いや、火を付けたのは。今日は地上で過ごす時間帯なのにさ」

 

一誠の呟きを拾ったのか、地下へ向かう足を止め背後にいる少年へ振り返り目でこう訴えた。

 

―――お前がそうさせているのだ―――。

 

その訴える目の意図を察したのか、深い笑みを浮かべた。嬉々として本当に楽しげに笑って宣言した。

 

「いいだろう。お前らが望むならさらに修行のレベルをハードにしてやる。覚悟しろよ」

 

「「「「「「よろしく(お願いしますわ)」」」」」」

 

再び地下へと修行しに戻る一誠と五人の少年少女達。その経験は確実に必要となる状況で活かされ自身を持つことになるだろう。それまで一誠はこの五人を鍛えることに専念する事数日後―――ついに当日となった。

 

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