俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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雄英高等学校体育祭

―――雄英体育祭本番当日―――!!!

 

オリンピックに代わるほど日本のビッグイベントの一つと呼ばれても過言ではないほど学校の敷地内はもはやお祭り騒ぎ。生徒や教師、一般人以外、(ヴィラン)の襲撃に遭ったからか入場検査が入念に行われている為、長引いている。主にそれは生放送でお茶の間に流すつもりでいる報道陣の入場検査だ。それだけではなく全国からプロヒーローを警備依頼を目的に学校側が呼び寄せていた。(ヴィラン)に対する危機管理体制は盤石だと示す計らいの為でもあった。

 

1-A 控室

 

皆、コスチュームに着替えず体操着着用で体育祭のオープニングが始まるまで待機している。

公平を期す為、着用不可であるからだ。そうすることでヒーロー科に入れなかった普通科の他にもサポート科、経営科も同じ土俵で勝負することができ、入試で不合格になった生徒でも勝ち進みアピールできる可能性が浮上するのである。

 

「兵藤、緑谷」

 

右が白髪、左が赤髪に左の目の周囲が火傷を負っている顔の轟が二人に近づき声を掛けた。

それに爆豪が反応して三人に目を向ける。

 

「轟君・・・・・なに?」

 

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」

 

威風堂々、否、既に悟ったように緑谷へ話す。いきなりそう言われ思わずビクッと驚き、半ば慌ててそれに肯定する。

 

「お前オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが・・・・・」

 

轟は真っ直ぐ緑谷に言い放った。

 

「お前には勝つぞ。・・・・・それから兵藤」

 

一瞬、隻腕となった体を見ては一誠の顔を見つめた。

 

「片腕無くなっても戦う気なら、俺はお前に勝つつもりでいくぞ」

 

「・・・・・」

 

轟からの宣戦布告。控室は三人に注目する視線で静寂に包まれる。

 

「・・・・・ふぅ」

 

「・・・・・?」

 

静かに息を吐く一誠。轟は何故、そんなつまらなさそうな表情をするのかと不思議そうに疑問を浮かべた。

 

「別に俺はクラスの中で最強だとは一度も思っちゃないぞ轟。お前が俺に対して何を言おうが勝手だが、他の連中の存在も忘れたらお前・・・・・足元掬われるぜ?」

 

「・・・・・」

 

首をクラスメートに向ける轟の視界に入る光景。皆、瞳に負ける気はないと強い光を宿し見つめていた。一誠に鍛えられた面々から強い何かを感じる。何故だか侮ってはいけないと思うほどに。

 

 

 

雄英高等学校の敷地内に何千何万という人の数を収容できるドームがある。

それこそが雄英高等学校体育祭が行われる聖域でもあった。既に一般人やプロヒーロー達がこぞって集まり、席に座って体育祭が始まるその瞬間を待ち遠しそうに腰を降ろしている最中で。

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!』

 

プレゼン・マイクの実況がドーム内に轟く。

 

『どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?(ヴィラン)の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!!!』

 

報道陣がカメラを構え始める。一年のステージへ一斉にレンズを向け出てくる瞬間を待った。

 

『ヒーロー科―――一年!A組だろぉぉ!?』

 

一年のステージ入場口から確かな足取りで出てくるヒーロー科1-A組。気の小さい人間であれば大人数に見られている意識をすると緊張で心臓の動悸が激しくなるのも無理はないだろう。逆に気の強い人間は自分の凄さを見せ付けられると思い高揚感を覚えることもある。

 

『B組に続いて、普通科C・D・E組!サポート科F・G・H組もきたぞー!そして経営科―――』

 

「お―――っ」

 

普通科の方へ何気なく視線を向けていると見慣れた顔の少年を見つけてしまった。当の少年もヒーロー科へ眠たそうな目で見ていた為、視線が直視しあった。

 

「おお、心操じゃん!一年ぶりー!」

 

一瞬で普通科に移動する一誠に普通科の生徒達はギョッと目を見開いてクラスメートの肩に腕を回す一誠に驚きを隠せなかった。

 

「やっぱお前も雄英にいたんだなっ。元気にしてたか?」

 

「・・・・・お前、その腕」

 

「ああ、別に気にすることでもないよ。というか、普通科かよ。お前の"個性"結構役立てるってのに残念だよ」

 

苦笑いを浮かべる一誠に対し、去年事件を解決した少年=心操人使の視線は隻腕に向けられたままだった。

オールマイトの養子が片腕を無くす事件があったなんてない心静かに何とも言えない気持ちになっている。

 

「まあでも、この体育祭でお前の凄さをプロ達に見せつければ注目してくれる。頑張れよ心操。お前達普通科もな」

 

朗らかに笑みを浮かべる一誠が普通科から離れた後、心操を見るクラスメートは唖然と声を掛けた。

 

「お前、オールマイトの養子からなに期待されてんだ?すげーぞ」

 

「てか、さり気なくこっちまで期待を寄せられたんだけどどういうこと?」

 

「・・・・・」

 

少なからずクラスメート達より一誠のことを知っている少年は呆れつつこう言った。

 

「変な奴だけだ。ただそれだけだ」

 

そして体育祭でならではの醍醐味が始まる。

 

「選手宣誓!」

 

と、壇上に立つSMのお嬢様っぽいコスチュームを着ている女性が鞭を振るいながら宣言した。

 

「あ、職員室にいたいつぞやの人だ。おい緑谷、誰だっけ?」

 

「1、18禁ヒーローのミッドナイトだよ兵藤君」

 

18禁・・・・・。

 

「18禁なのに高校にいてもいいのか?俺達まだ15なのに」

 

「同感だ」

 

「いい」

 

「静かにしなさい!選手代表!」

 

ピシャンッ!と鞭を振るいながら言うミッドナイトから代表の名前を名乗り上げた。

 

「1-A兵藤一誠!」

 

・・・・・何故に俺?と疑問を小首傾げることで一誠の心情を察した瀬呂が指摘した。

 

「いやお前。入試ダントツ一位だっただろう」

 

「ああ、そういうこと?てっきりクラス委員長がするのかと―――」

 

早く来なさい!と催促されてしまい、ミッドナイトがいる壇上へと移動する。

 

「先生、選手宣誓に決まった言葉ってある?」

 

「雄英は自由な校風が売り文句だから好きなことを言ってもいいわよ」

 

「・・・・・そう言うことなら」

 

頭の中で言葉を選び考えた結果。一誠の選手宣誓が発せられる。

 

「宣誓」

 

オールマイトの養子の選手宣誓。場が静まり返り、一誠がなんて言うのだろうと固唾を呑んで見守ったり興味津々に好奇な視線を向けてくる観客席にいる一同のことなんて気にせずこう言った。

 

「俺はオールマイトのように偉業を果たした、本当の意味での英雄、ヒーローになることをこの失った片腕に誓います。金も名声も名誉も必要とせず人の為に身体を張るそんなヒーローを。故に」

 

一誠は邪な笑みを浮かべた。

 

「将来俺はフリーでヒーロー活動をします。国から金を受けなきゃ人を助けないヒーローと呼ぶに相応しくない拝金主義者の贋物のヒーローと一緒にされたくないんで」

 

場が―――違う意味で静まり返った。生徒達も思考を停止して一誠の発言に理解できないでいた。だが、しばらくして・・・・・。

 

『―――――っ!!!!!』

 

会場全体から物凄い一誠に対するブーイング、罵声やゴミなど投げつけ始めた。

 

「おまっ・・・・・!プロヒーロー達に喧嘩売るかァッー!?」

 

信じられないと心から叫ぶ切島だけでなく、緑谷達も壇上から降りてくる一誠に「なんてことを・・・・・!」と恐い物を見る目で見ていた。

 

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」

 

「雄英って何でも早速だね」

 

未だにブーイングの嵐が収まってない中でさっさと進めようとするミッドナイトだった。それにお茶子が突っ込むように指摘するのだがミッドナイトの耳までは届かない。

 

「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!さて運命の第一種目!今年は・・・・・」

 

早速ではない、と心の中で突っ込む生徒達の心境を露をも知らず、立体的なモニターに映る最初の種目の題名が―――。

 

「コレ!!!!」

 

ババンッ!と効果音が聞こえそうなほど「障害物競走」と画面に映るモニターを指摘するミッドナイト。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由さが売り文句!ウフフフ・・・・・コースさえ守れば何をしたって構わないわ!」

 

と、言うと・・・・・一誠の中である予想を当然のように思い浮かんだ。

 

「さあさあ位置につきまくりなさい!」

 

既にスタート地点は他の科の生徒で密集、埋め尽くされている。ヒーロー科の一誠達は中間当たりで密集している他所にスタート地点にあるゲートの三つのランプが一つ、また一つと消えていく。

 

(お前ら・・・・・ここで全員揃ってゴールしなかったら後で怖いからな)

 

突如、お茶子達に悪寒が襲われたことを一誠は気付かない。そして、三つ目のランプの光が消失と同時に―――。

 

「スタ――――――――――――――――――――――――――――ト!!」

 

障害物競走が始まり、生徒達がダッと駆けだし始めた。

 

 

 

 

「最初のふるい」

 

スタートして間もなく。ゲートが狭過ぎて人が人を押し寄せ合いながら前へ進み、ようやくゲートを潜り抜けた矢先に足元が凍りつき痛みとあまりの冷たさにその場で案山子状態となる多くの生徒達ができ上がった原因は轟焦凍の"個性"だった。走りながら地面を他の科の生徒達の足を凍らせたので早くもダントツ1位に繰り上がる。

因みに実況はプレゼント・マイク、解説は無理矢理呼ばれたイレイザーヘッドこと相澤。地面に縫われたように足が凍って動けない大勢の生徒を置き去りにこのまま轟の独走―――。

 

「甘いわ轟さん!」

 

「!」

 

スタートゲートの近くで足を凍らされて動けない生徒達から飛び出す轟の妨害を乗り越えた数多の影。

 

BOOM!

 

「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」

 

足を凍らせられる直前に跳んでかわしたり、"個性"でかわしたりと轟が思ってた以上に避けられ、避けた生徒達が轟の独走を許さなかった。

 

「はっはー!轟のウラのウラをかいてやったぜざまあねえってんだ!くらえオイラの必殺―――!」

 

と"個性"で攻撃しようとした峰田を横やりする鉄の塊。

 

「峰田君!!」

 

殴られ吹っ飛ぶクラスメートを思わず声を掛けてしまう緑谷の目の前に―――。

 

《ターゲット大量!》

 

「入試の仮想(ヴィラン)!?」

 

スタートゲートから離れて間もなく。狭いコースを進んだ先に轟達を阻む巨大な影が待ち構えていた。

 

『さぁいきなり障害物だ!!!まずは手始め・・・・・』

 

轟がそのコースに辿り着き相対する巨大な影の正体は・・・・・。

 

『第一関門ロボ・インフェ―――』

 

「邪魔だ鉄屑の塊共」

 

実況の声なんて聞く必要もないと言わんばかりに巨大なロボットの大群へ飛び掛かる一つの小さな影が。

 

KICK!!!!!

 

サッカーボールよろしく、入試試験で登場した巨大仮想(ヴィラン)に向かって蹴り、爆発的な脚力で鎌風を起こし全てのロボを一刀両断。

 

「この程度の障害で・・・・・俺を止められると思ってるのか?税金の無駄使いだろ」

 

鈍い音を轟かせながら倒れる巨大ロボに目もくれずコースを走りぬけて行く―――一誠。

 

『・・・・・』

 

『実況するまでもなかったなマイク』

 

ほぼロボのことで実況しようとしていたが、あっさりと全て破壊されてしまったので開いた口が塞がらないまま硬直したプレゼント・マイク。

 

「流石だな・・・・・」

 

轟を抜き、独走を始める一誠を普通の走りでは追いつくことはできないと判断し、氷の道を作ってその上で滑走する手段で追いかけようとした轟の両脇から二つの影が追い抜いた。

 

「―――っ」

 

二つの影、その二人は轟自身が追い抜かれるはずはないと思っていたクラスメートだった。

その二人は相澤からも見て目を張ったほどに一誠の背を確実に追いかけている。

 

「上位に入らなきゃ、とんでもねぇ修行をさせられちまいそうだぁな緑谷ぁっ!」

 

「う、うんんんっ!」

 

汗を流しながら"個性"の状態維持をしつつ走るのは緑谷と上鳴の二人。全身に電気を纏い推進力を得ている上鳴と諸刃の剣の"個性"を全身に満遍なく許容量範囲内で伝えることで身体能力の向上を得た緑谷。

 

―――どうなっている?

 

明らかに"個性"の扱い方が上達している。奇襲事件から経ったの二週間でそこまで上達できるものなのか。

と、一人から三人を追い掛けることになった轟は氷の道を滑りながら追いかける。二人の成長に驚いているのは轟だけではなかった。

 

(どうなってやがるっ!?)

 

両手を後ろに向け、爆発で生じる爆風を利用して移動する爆豪も主に緑谷の急成長に焦燥と驚愕が混ざった表情を浮かべながらコースを走り続ける。

 

(デクの野郎に何が起きやがったっ!?何で俺より先に前にいやがるっ・・・・・!?)

 

爆風での移動よりも明らかに緑谷の方が速い。

 

(くそがっ!!!俺を負かそうなんていかせねぇぞデクァッ!)

 

その頃、独走している一誠は次の障害物競走第二関門に到着―――否、あっさり突破していた。距離と大きさがバラバラな足場と繋がれる綱を伝って渡らないといけない『ザ・フォール』を。

 

『A組兵藤、曲芸のように足場から足場へとまるで蛙のように跳んであっさりクリアァッー!』

 

「片足だけでもできるぞこんなの」

 

次の関門へ気を緩めることも無く走る一誠の背後では。

 

「修行でした時と同じようにっ」

 

緑谷にとって経験した修行と似ている風景に躊躇もせず、走り幅跳びのようにダンッ!と跳んだ。

 

『A組の緑谷もA組の兵藤と同じ跳び方を始めやがったぁ!もう綱なんていらねぇんじゃねーのかイレイザーヘッド!?』

 

『合理的な移動だろう』

 

『A組上鳴も跳んだ!なんだ、A組の間じゃあ蛙が流行ってんのかぁー!』

 

『聞けよ』

 

「―――ケロ、いいことじゃない」

 

後続―――轟と爆豪も第二関門を攻略中に続いて辿り着いたお茶子達もまた、

 

「超秘!」

 

綱で渡らず、走りながら跳んで移動する方法で攻略を臨む。蛙吹も修行で向上した身体能力、蛙に相応しい脚力で足場から足場へと移動するのだった。そうすることができない面々は地道に綱を渡っていくしかないが、確実に上位に食い込んでいる。

 

「恐らく兄も見ているのだ・・・・・」

 

飯田天哉もまた負けられないと綱渡りを臨んだ。

 

「かっこ悪い様は見せられん!!!」

 

綱の上を滑るように"個性"で移動する。が、その様は・・・・・。

 

『カッコ悪ィィ―――――!!!!!』

 

褒められたものではなかった。

 

『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名か通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!そして早くも最終関門!!かくしてその実態は・・・・・』

 

先に最後の関門へ辿り着いたコースの名は―――。

 

『一面地雷原!怒りのアフガンだ!地雷の位置はよく見りゃあわかる仕様になってんぞ!目と脚酷使しろ!』

 

「・・・・・逆に避けてくださいと言っているようなもんだろこれ」

 

と、地雷原のコースをのんびりと歩いてクリアしようとする一誠であったが、不意にその場で留まり背後へと振り返った。少しして最後の関門のコースに二人が駆けながら現れた。

 

「うげっ、兵藤がいんぞ!?」

 

「なんか、嫌な予感がするっ」

 

緑谷と上鳴の二人もここまでやってきた。それに付いては称賛に値するが、聞き捨てにならない言葉を言われる。

どうしてくれようかと、ガラリと雰囲気が変わる一誠を今まで修行を受けていた二人からすれば警告の鐘が鳴り響くほどに、危険を感じた。

 

「ここは地雷原。なら、空からも雷を振り注がせよう」

 

たちまち暗雲がこの場一体に漂い・・・・・ゴロゴロと嫌な音が成り始め―――雲から稲光と共に轟音を発し、槍のごとく地面へ豪雨のように降り注ぐ雷の領域と完成した。

 

「アッハッハッハァッー!これも修行、この振り続ける雷の中を突破してみせろやっ!」

 

「「最悪だぁっー!?」」

 

雷振る中で高らかに、(ヴィラン)のように笑う一誠はその後、悠々とスタジアムに戻ってゴールを果たす―――。

 

―――私が来たよ(by根津)―――

 

「兵藤!あの雷を消しとけよ!めっちゃあっぶなかったぞ!?」

 

「ヒーローに危険は付き物だ。あの程度の危険を乗り越えなきゃヒーローはなれないぞ」

 

「八百万さんの避雷針が無かったら進めなかったよー」

 

「対応力が求められる状況もあるんだ。それも修行で学んだはずだぞ。でもまあ・・・・・」

 

障害物競走の結果を見る一誠は心の底から嬉しそうに笑った。

 

1 A組 兵藤一誠 2 A組 緑谷出久 3 A組 上鳴電気 4 B組 塩崎茨 5 A組 轟焦凍―――。

 

「ほぼA組の皆が上位にいる。特に修行をした殆どの皆がいる。―――お互い頑張ったことが無駄になっていないことを分かって嬉しいもんだよ」

 

「だなっ!」

 

「修行の賜物だ」

 

笑みを浮かべ合う一誠達の耳にミッドナイトの声が聞こえる。

 

「予選通過は上位43名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!そして次からいよいよ本番よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!」

 

本番―――本格的なことをするのだと一誠は人知れず笑みを浮かべる。

 

「さーて第二種目目よ!私はもう知ってるけど~~~~~何かしら!?言ってる傍から」

 

「コレよ!!!!」とモニターに映る種目の競技名が発表される。

 

「騎馬戦・・・・・?」

 

「個人競技じゃないけどどうやるのかしら」

 

疑問湧く中でミッドナイトは説明をする。

 

「参加者は2~4人のチームを自由にくんで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが・・・・・先ほどの結果に従い各自にポイントが振りあてられること!」

 

その説明を聞き合点したとばかり砂籐は口にする。

 

「入試みてえなポイント稼ぎ方式か。わかりやすいぜ」

 

「ああ、つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

 

「意外と単純。それを合計したPをハチマキか何らかにした奪い合いをしろってことだろ・・・・・くだらねぇ」

 

「あんたら私が喋ってんのにすぐ言うね!そしてそこ、くだらないって言わない!」

 

上鳴や一誠がミッドナイトの説明の内容の深い部分を突いてしまったようで怒鳴られた。

 

「ええそうよ!そして与えられるポイントはしたから5ずつ!43位から5ポイント、42位が10ポイント・・・・・といった具合よ。そして・・・・・」

 

一位に与えられるポイントは―――――!

 

「1000万!!!!」

 

この瞬間、誰もがバッと一誠に視線の集中砲火をした。

 

「・・・・・1000万?」

 

一位に予選通過した一誠が目をパチクリと復唱した。あからさまなその点数の意図は・・・・・。

 

「上を行く者には更なる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞPlusUltra(プルスウルトラ)!予選通過一位の兵藤一誠君!持ちポイント1000万!」

 

持ちポイントを守り切れば楽に勝利できるという半面、狙われる対象にもなった一誠。だが、果たして一誠を狙う恐れ知らずな者はいるだろうか?主に、一誠のスパルタな修行を受けたメンバーの中で。

 

「制限時間は15分。振り当てられたポイントの合計が牙のポイントとなり奇襲はそのポイント数が表示された"ハチマキ"を装着!終了までにハチマキを奪い合い保持Pを競うのよ。取ったハチマキは首から上に巻くこと。しかもマジックテープ式で取りやすさを追求してるからとりまくればとりまくる程、管理が大変になるわよ!そして重要なのはハチマキを取られてもまた騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ!」

 

通常の騎馬ならアウトになる筈が雄英形式ではならない。

 

「てことは・・・・・」

 

「43名からなる騎馬10~13組がずっとフィールドにいるわけか・・・・・?」

 

「シンド☆」

 

「いったんP取られて身軽になっちゃうのもアリだね」

 

「それは全体のPの分かれ方見ないと判断しかねるわ三奈ちゃん」

 

二種目目の競技の戦い方や戦況、そして組む相手との"個性"の相性など様々な条件や状況が勝利を左右することを全員が察する。

 

「"個性"発動アリの残虐ファイト!でも・・・・・あくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃等はレッドカード!一発退場とします!それじゃこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

 

『15分!?』

 

ざわつく一同。たったの15分の間でチームを決めなければいけない。決めるなら気が許せる相手やどんな状況でも有利な万能や攻撃力がある"個性"の相手とだろう。―――よって、

 

「兵藤!俺と一緒に組もうぜ!」

 

「私と組んで兵藤君!」

 

一誠に鍛えられた15人のクラスメートやB組の一佳や茨から誘いを受けるのも無理はない。

 

(一誠の強さの上にポイントは10000・・・・・一誠と1週間も過ごした考慮すれば一誠の人気はうなずける)

 

教師用の観客席から見守っているオールマイトも一誠の人気は同感だと心中思った。

 

「・・・・・だったら、俺の提案に乗ってくれないか?決勝戦でお前らの今までの修行の成果を皆に見せたい。ここで半数以上潰れるなんて嫌だから俺を信じて決めさせてほしい」

 

『乗ったっ!』

 

躊躇もなく一誠の指示に聞く面々。

 

「「・・・・・」」

 

爆豪と轟、そして同じA組の三人が完全に蚊帳の外、はぶられていた。一誠に群がるクラスメートは一誠からあれこれと指示を受け、誰一人ともA組の中で五指の強さに入る二人へ振り向こうとも意識しようともせずいる。

 

「・・・・・おい半分野郎。てめえ、面貸せ」

 

「奇遇だな・・・・」

 

しかし、残り物には福がある―――ある意味最強のチームができ上がる。

 

 

前騎馬 障子目蔵  後騎馬 芦戸三奈&耳朗響香  騎手 瀬呂範太 

 

前騎馬 切島鋭児朗 後騎馬 麗日お茶子&緑谷出久 騎手 常闇踏陰  

 

前騎馬 塩崎茨   後騎馬 砂籐力道&上鳴電気  騎手 八百万百

 

前騎馬 兵藤一誠 騎手 蛙吹梅雨&拳藤一佳&峰田実

 

 

―――前騎馬 尾白猿夫 後騎馬 葉隠透&発目明  騎手 心操人使

 

 

「ま、まさか・・・・・あいつまでいただなんて、誤算だ・・・・・」

 

大袈裟に上半身を垂らして疲労の色を全身で息する一誠から浮かんでいる。そんな一誠は見たことないと―――発目明というサポート科の少女との繋がりを気になる一佳。

 

「あの女は誰なんだ?」

 

「・・・・・去年知り合った一人だ。京都で行われた自分が開発、設計した作品を提示する展覧会みたいなことがスタジアムでやってたから俺も面白半分に参加して優勝したら何でだか『私と結婚してください』!って身も蓋もなく訳も分からずに求婚されたんだ」

 

本人が心底、困惑している様子を窺え一佳は自分みたいな出会い方をしていないのだと察し、一方的な片想い(?)なのだろうと認識する。

 

 

『お久しぶりです兵藤さん!私と組みましょう!』

 

『なっ、お前は・・・・・!?』

 

『って、片腕無いではないですか!どうしたのですか!?いえっ、あなたの状態を知っていればドッ可愛いベイビー義手を用意していたのに・・・・・っ!』

 

 

「―――あいつの説得があそこまで疲れるものとは思いもしなかった」

 

「お疲れ様ね兵藤ちゃん。だけど透ちゃんを普通科の男子の人に任せても大丈夫なの?」

 

「ああ、あいつならこの場にいる中で俺が一番知っている方だ。あいつの"個性"、物理的な意味で高い破壊力は皆無に等しいけど、それを補う感じで結構強力な"個性"を使役するんだ。絶対あいつを知らなきゃ、例え爆豪や轟でさえ負ける可能性は極めて高い」

 

自信に満ちた表情で言う一誠が断言した。3人は思わず心操人使という普通科の男子に目を向け密かに警戒する。

 

「じゃあ、兵藤よりも強いのかよ?」

 

「何バカなことを。俺の方が強いに決まってるだろう―――誰がお前らを鍛えたのかまたその身に刻んでやろうか峰田君?」

 

峰田の発言に肩を竦ませ、威圧感を放つ。修行の過酷さを思い出し、委縮しがちな峰田を他所に口を開いた一佳。

 

「一誠、私達を乗せるなんて本気か?腕、無いのに」

 

「騎手じゃあ片腕のない俺だと踏ん張りもバランスも取れ辛い。なら、騎馬の方がいい」

 

「でも・・・・・」

 

どうやって3人も一つの体で乗せるのか?一佳はそれを口にしようとすると、一誠が一佳の言葉を遮るような感じで先に手招きした

 

「心配するな。考えはある」

 

3人をスタジアムの通路まで来てもらい、その中で久方ぶりに右目の眼帯を外し、濡羽色の瞳が解放された形で開く―――。同時に一誠の体から漆黒のオーラが発し、緑谷達の前で人の形を崩して異形へと変わり果てて行く。

 

「「「―――っ!?」」」

 

『俺がこうすればいいだけの話しだ』

 

 

 

「ここにいる殆どがA組ばかり注目している・・・・・何でだ?拳藤や塩崎がA組連中とつるんでるし・・・・・おかしいよね・・・・・。仲良くする必要もないのに」

 

同じヒーロー科で一佳と茨のクラスB組に不穏な空気が漂っている。

 

「まあいいや。ヒーロー科B組(ぼくら)が予選で何故中下位に甘んじたか、彼女等抜きでも調子づいたA組に知らしめてやろう皆」

 

金髪の少年の言葉にまばらであるが同感だというB組の生徒は頷いた。

 

 

―――15分後

 

「15分経ったわ。それじゃいよいよ始めるわよ」

 

観客も報道陣も"個性"発動可の騎馬戦を心待ちしていながら歓声を沸かせる。主役となる生徒達は長方四角形のフィールドの外で並び立つ12組の騎馬。最後の1組が通路の奥から現れたことで騎馬戦は始まる―――。

 

《―――オイオイ、あんな異形型の生徒いたっかイレイザー?》

 

プレゼント・マイクの声は疑問で満ちていた。静かに最後の1組を見下ろす相澤も見たことはないと沈黙で返答した。

 

「・・・・・まさか、兵藤君なのかっ?」

 

離れた場所からでも見える緑谷の視界に入る1組の騎馬の姿。ズボンの雄英の体操着を着ているが、上着の体操着は着ていない為、黒光りする鱗に時おり紫色の発光現象を起こす身体に逆関節の裸足、腰辺りには尾が生えている。更に三つの鎌首に三つの頭部、四つの血のように赤と濡羽色と金色の瞳オッドアイの目が二つと計六つの鋭い眼光が他の騎馬を見据えている―――隻腕の騎馬。そんな騎馬の肩と首に蛙吹と峰田、一佳が肩車のように乗っているのでアレは誰なのか直ぐに察した。

 

「あ、あんな異形型の"個性"もあったんやね一誠君・・・・・っ」

 

「まさに化け物・・・・・」

 

「こ、こえぇ・・・・・」

 

既に目の前で存在されているだけで気圧されている緑谷達。彼らだけではなかった。同じ場にいる一同も人型の蜥蜴から発する形容し難い威圧感に言葉と息を呑み―――冷や汗を掻く。

 

《まあいいや。さァ上げてけ鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今!狼煙を上げる!!!!いくぜ!残虐バトルロイヤルカウントダウン!―――3!》

 

「狙いは・・・・・」

 

《2!》

 

「一つ」

 

《1・・・・・!》

 

START!

 

雄英体育祭第二種目、騎馬戦が始まった。開始と同時に勇ましく一誠達に迫る―――複数組のチーム。

 

「実質それ(1000万)の争奪戦だ!」

 

「兵藤を倒さず上へ目指せるかってんだ!」

 

「ごめんね、兵藤君!」

 

格上でも直接戦うことはない。主に騎手同士が戦いを繰り広げられる。警戒して対処すれば―――と心持で襲来してきたのだろう。

 

『―――耳を押さえろ。叫ぶ』

 

一誠からそう言われた3人は、両手で両耳を押さえる。その仕草を確認した後、地面に沈んでも常闇の体から出てくる鳥のような影でも、茨のツルが伸びて来ても一誠は・・・・・・。

 

『―――――スゥ』

 

三つの口は大きく酸素を吸い、肺に送っては溜め―――腹部を膨張させた。その膨らむ腹を見て迫っていたチームは何かヤバいと察した時は既に遅かった。

 

GYEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!

 

肺に溜まった酸素が爆音並の大音響と化した。スタジアム中に轟く咆哮は全てのチームの足を地面に縫うような感じで留まらせ、体を硬直させるだけでなく、獣のごとく吠えた声に衝撃波も加わっていて目の前にいたチームや直線状にいたチームも全員総崩れ。観客達からも完全に言葉を失い、一誠を見る目を変えていた。

 

《あ、あいつ・・・・・俺の"個性"並にただの肺活量で・・・・・っ》

 

窓ガラスが割れ、サングラスもずれた状態で実況者のプレゼント・マイクが戦慄したように声を震わす。

 

『・・・・・おいおい』

 

ザッザッザッと足元に倒れているB組のチームに近づきながら話し掛けた。

 

『俺は叫んだだけだというのに脆いなお前ら』

 

鉢巻きを巻いている生徒を巨大化させた手で鷲掴みにし持ち上げた。蛙吹の方へ寄せ、ハチマキを奪ってもらえば地面へそっと横たわらせ踵返して移動を始める。次の獲物を補足する狩猟者として。

 

「兵藤狙い・・・・・まだ続けるか?」

 

「狙われたら最後だって!今のあいつ、マジで恐いって!」

 

「やっぱりここは・・・・・」

 

「だ、だねっ」

 

((兵藤以外)のA組(B組)を優先的に狙って勝つ―――!)

 

『・・・・・させると思ったか?』

 

A組B組の心中を思いっきり悟られていて、妖しく煌めかせる眼光が相手チームを驚かせる。

全チームの首や頭に巻いていたハチマキがまるで意志を持っているかのように一人で離れ、宙に浮きながら一誠の元へ集う。

 

「ちょっ!?」

 

「ハチマキがっ!?」

 

「どうなっているんだぁっ!?」

 

輪を描いて峰田チームの真上を旋回し続ける合計数の高いハチマキが4つ輪から外れ、残り宙に浮くハチマキは・・・・・。

 

『峰田、1000万のハチマキを寄越せ』

 

「は?」と唖然する峰田の返答を待たず、1000万のハチマキも勝手に外れて宙に浮き続けるハチマキ諸共―――口内から吐く一誠の火炎で塵一つ残らず焼失した。

 

「「「「なっ・・・・・!?」」」」

 

あまりにも突然、あまりにも愚行、あまりにも理解できない一誠に一人残らず目を張り、開いた口は塞がらない。

 

『この方が騎馬戦らしくなる』

 

五つの高得点のハチマキがランダムでA組B組の4チームの頭や首に再び巻き付く。一誠の意図を読めない面々からすれば突拍子過ぎてただ困惑、当惑する。

 

「おおおおおおおい兵藤っ!?おまっ、何やらかすんだよォッ!」

 

「・・・・・とてもじゃないけど一体何を考えているの兵藤ちゃん?あなたの考えが全く分からないわ」

 

「一誠・・・・・」

 

味方からも非難めいた視線や言葉、当惑の気持ちが伝わって来ることを気にせず、淡々と一誠は己の気持ちを打ち明けた。

 

『1000万という人参ぶら下げられている馬みたいな状態で勝っても俺は嬉しくもなんともない。だから「全力」でぶつかり合うような騎馬戦をしたいから燃やした』

 

「バッキャロー!?それで勝てなきゃ何の意味もないじゃないかっ!」

 

『俺を誰だと思っている。それにあの一週間の修行を発揮もしないつもりか?全て俺に任せる腹だったか峰田?』

 

ぐるりと鎌首を峰田へ曲げて強い意志が宿っている瞳を窺わせる。

 

『ここからあいつらは死に物狂いで負けんが為に全力で戦う。俺達もその全力の闘争の渦中の中に飛び込んで晴れて堂々の一位になるのさ。その方が―――恰好いいだろうに』

 

「―――っ!?」

 

『因みに俺はもう自分から手出しはしない。お前らが俺を動かせ。俺は何でもできる。このフィールドを湖のようにすることや炎や雷、氷を吐いたり、天侯も変えることも―――何でもだ』

 

目元が細まる。まるで好戦的に笑みを浮かべているような感じだと一佳は思った。その言葉に嘘は無いと蛙吹や峰田よりも早く信用して顔をあげた。

 

「わかった。一誠、私達の言う通りに動いてくれ」

 

『ああ、了解した。で、俺は何をすればいい』

 

問われ、指示を待つ一誠に蛙吹が下した。

 

「本当にそんなことできるなら兵藤ちゃん、このフィールドを水一杯にしてみせて」

 

無言で首肯する三つ首。

 

『錬金』

 

それだけ呟く。一誠の中で地面という物質を全く異なるものへと魔法と魔力で変えてみせた。地面という足場が突如として自身が沈みいつの間にかフィールドが膨大な水で一杯に、全チームの上半身まで浸かり動きを確実に鈍くさせる。

 

「ほ、本当に・・・・・水が一杯に・・・・・」

 

「す、すげー・・・・・」

 

「ケロ・・・・・」

 

相手も浮き足が立って必死に水の中で動く様をスタジアムにいる一同が視認する。

 

《フィールドが突然大量の水で戦場変わっちまったー!?一体全体どうなってるんだぁーッ!もはや騎馬戦どころじゃねぇー!》

 

プレゼント・マイクの実況を気にせず、一誠はあろうことか

 

「いけぇー兵藤!泳いで突進だぁ!」

 

『もう騎馬じゃないな』

 

サーフィンよろしく、3人を背に乗せ、両掌を巨大化した一佳がフルに水を掻き、二人の行動で水中でも問題視せず、自由に移動できてた。

 

《あいつら自由すぎだろぉーっ!だが、俺はそれが好きだぁーッ!》

 

「・・・・・」

 

振って湧いた絶好のチャンスが爆豪の額に巻かれている。一誠が何の目的でこうしたのかは爆豪にとってどうでもいいことであった。だがしかし・・・・・同時に心から不愉快と憤怒を胸に抱いた。逃げ切れば確実に決勝へ進める勝利を満足ができるはずもない。勝つなら徹底的に完膚なきまでの勝利だと豪語する。

 

「残りのハチマキぁ全部奪い取るんぞっ!」

 

「水のせいで動きは思うようにいかないぞ爆豪君!」

 

「かんけねぇ、かんけーねんだよぉっ!んなことはっ!やるったらやるんだよ!動けっ、他のハチマキを持ってる雑魚やモブがいる方へよぉっ!」 

 

前騎馬の飯田の頭を叩き促す。その気持ちには異論ないが、水に浸かったままでの移動はどうしようもないほど遅い。それも騎馬を組んだ状態では尚更遅くなるのも無理はない。それを爆豪も理解して飯田に催促しているのだ。

 

「待て、足場をつくる」

 

轟が右手を掬い上げるように振ると、水面がたちまち氷で覆い氷の足場が出来上がった。

 

「一度騎馬を解いて上がろう。騎馬が崩れても続けられるならセーフだろう」

 

「流石だ轟君!」

 

「俺に指図すんじゃねぇ!俺がてめぇらを指図するんだよっ!」

 

「君は酷いな爆豪君!?」

 

こっちもこっちである意味フリーダムであった。轟の作った氷の足場に上がろうと便乗するチームは後を絶たない。

 

《さぁ!A組轟の氷でフィールドは氷の戦場と化したぞてめーら!?流石推薦入学者だ。A組兵藤の個性で変えられたフィールドを乗り越えた!まだまだ勝負は一寸先は闇だっ!》

 

《相手の個性を利用して有利に戦う、合理的だな》

 

「そして」

 

組み直し終えた爆豪チームの騎馬となっている轟が未だに泳いでいる峰田チームへと顔を向けた。

 

「そこで凍っていろ」

 

足から氷の個性が発動し、水のフィールドを氷のフィールドへと変えていく轟に対し一誠が取った行動は。

 

『・・・・・』

 

―――迫る氷から逃れるようにあろうことか氷の下、水中へと潜りだした。

 

「潜った。氷の下に?」

 

「大方、下から氷を突き破って襲いかかって来る腹だろうよ。その間どれだけ息を止められるか知らねえけどな」

 

あっさり看破する爆豪。氷の下で泳ぐ1組のチームの姿を肉眼で捉えることはほぼ無理だ。耳朗の個性ならば水中で泳ぐ音を察知、探知できるであろうが水中に攻撃することができる"個性"は限られる。

 

「緑谷、どう思う兵藤の行動の意図は」

 

峰田チームが氷の下に潜ったことで脅威は一先ず除外され、他のことに意識できるようになったのは喜ぶべきか。

騎馬の常闇の問いに騎手の緑谷は周りに目を配りながら返答する。

 

「氷の下から奇襲、それしか考えられない。だけど、何時までも水の中にいることは蛙吹さん以外できないだろうから氷が無いところから現れる」

 

「てことは、一番後ろから来るってことか?」

 

「でも、一誠君は突き破って来るかもしれんよ」

 

それぞれの考えを意見として述べている間にハチマキを持っている緑谷チームへB組が襲いかかって来た。

 

「常闇君っ」

 

「ああ、この状況だ。お前に頼ってもいいだろう黒影(ダークシャドウ)?」

 

『アイヨ!』

 

一誠の修行で以前より力を備えることに成功した常闇踏陰もまた、新たな"個性"の可能性を見出すことをできた。

 

―――常闇、お前の"個性"は意思疎通ができて体に宿っているようだな?だったら多分、出来るはずだ。

 

―――一体何をだ兵藤。

 

―――ははっ、当然それはお前の頑張り次第でできることさ。

 

あの時は・・・・・本当に死ぬかと思った。修行時のことを走馬灯のように思い出した常闇は瞑目して心を無に。

すると鳥のような実体化しているモンスターが常闇の体の中に戻った。

 

―――お前のその"個性"と一心同体ってやつをさ。

 

「・・・・・おおおおお」

 

陽炎のように常闇の頭が揺らめき始める。それが頭から首、肩、両の腕へと伝うように伸びて覆い始める。

 

「おおおおおっ!」

 

静かに声を発する常闇の背中にも黒い陽炎ようなものが覆い・・・・・一対の羽みたいな影が波状的に広がる。

 

黒影(ダークシャドウ)、俺の想い(やみ)に応えろっ。俺とお前は一心同体、俺の気持ちはお前の気持ち、お前の気持ちは俺の気持ちだっ」

 

両腕が完全に黒い影に覆われた。頭部も未だに陽炎のように影で揺れていてその姿は黒影(ダークシャドウ)に似ていた。常闇の変化にB組は足を止め、警戒で様子を窺っていたがそれは常闇に時間を与えてしまっていることと道理で・・・・・。

 

「これは、精神と肉体的にも疲労するぞ兵藤・・・・・」

 

『戦う!戦う!』

 

「分かってる・・・・・だから俺の思い通りに動けば戦え・・・・・ぐっ」

 

常闇の片腕が己の意志とは無関係に動き―――振られると影が鞭のように伸びて常闇が敵と認識した騎手のB組生徒を横薙ぎで騎馬から振り払った。

 

黒影(ダークシャドウ)ッ」

 

『戦う!楽しい!暴レル!』

 

常闇の想いとは反して"個性"が暴走気味になり、焦燥に駆られ必死に抑え込もうとする。その方法はと言うと―――。

 

黒影(ダークシャドウ)・・・・・俺の想いに応えなければ、兵藤に半殺しされても仕方ないということだな」

 

『ッ!?イヤダッ!?』

 

半ば脅しの形で、「兵藤に半殺し」という言葉で黒影(ダークシャドウ)が涙目になって暴走を抑えることをできてしまった。

 

「常闇、お前・・・・・兵藤にどんな修行を受けてたんだ・・・・・?」

 

「常闇君より、兵藤君の言うことを聞いちゃってない?」

 

「一体・・・・・何が遭ったんだろう」

 

唖然と二人と一匹の間にしか知られていないことを知る由もない緑谷達3人は、ハチマキを死守する。

 

《さあ!もう時間も3分もないぞ!ポイントのハチマキが5つしかなくなった状況でどのチームが決勝戦に進められるかてめーらは想像できてっか!?》

 

「爆豪に突っ込め障子!」

 

「分かった」

 

1組のチームがハチマキを持つ爆豪達の方へ突っ込む。

 

「勝算あんの瀬呂!?爆豪と轟がセットだよ!」

 

「問題ねぇっ!」

 

「凄い自信だね」

 

六つの足が爆豪チームへ真っ直ぐ向かう最中、瀬呂は緊張の面持ちでありながら不敵な笑みを浮かべている。

 

「瀬呂君達が来るぞ爆豪君っ!」

 

「ハチマキ持ってねぇしょうゆ顔の相手をしている暇ねぇ!」

 

「一理ある」

 

轟の右足から瀬呂達を凍らせんと氷を発生させた。迫りくる氷の対策は―――。

 

「障子、俺を背負って氷から避けろ!芦戸と耳朗も離れて障子が走る方向へ走れ!」

 

「それいいのっ!?」

 

「いいんじゃない?騎馬が崩れても続行できる上に2人の騎馬をしているB組がいるし」

 

瀬呂の指示通りに障子は背に瀬呂を乗せ独自の動きで回避、芦戸と耳朗もそれぞれ対処して氷から難を逃れ複製した障子の手と再び組、再構成する。

 

「避けたっ!?」

 

「考えたな。思いの他、この戦いの趣向を理解できているようだな」

 

「感心してんじゃねぇよ半分野郎―――」

 

「食らえ爆豪っ!」

 

瀬呂のテープが射出。そのテープは爆豪に向かうがその最中、もう片方の肘からテープを射出し、断続的に切ってまた射出。切ったテープは爆豪へ向かうテープの先にくっつき、やがて波状的な竹の箒みたいになりくっつく範囲が広がった。

 

「てめえ、そんなんで俺から()れると思ってんのか」

 

BOOM!

 

眼前に腕を突き出し、手の平から放つ爆破でテープをあっさり木端微塵にした―――。

 

ピト、

 

「むっ?」

 

ただし、狭い範囲の攻撃は広い範囲の攻撃を全て相殺できる筈もなく、飯田の体に2本のテープがくっついた。

 

「おりゃああああああああっ!」

 

テープを巻き戻し、何時の間にか液体で滑りやすくなった氷の足場を障子がテープを引き戻す瀬呂の引力に逆らわず滑り、

 

「障子―――悪いなっ」

 

「承知の上だ」

 

障子の身長と飯田の身長は12㎝の差がある。その差は確実に飯田を覆い、

 

「っ!?」

 

CRAAAASSH!!!!!!

 

前騎馬同士が直撃し合い、爆豪達の体勢が一瞬だけ崩れた。

 

「てんめぇっ―――!?」

 

爆破で瀬呂を吹き飛ばそうとしたその手は、ガシッ!と複製した障子の手で手首と腕を掴まれ明後日の方へ向けられた同時に瀬呂の手は―――届いた。

 

「悪ィな爆豪」

 

両腕を塞がれた爆豪の隙を突き、鉢巻きを巻いた額から奪い取ってみせたのだ。

 

「轟ィッ!?」

 

ポイントを奪われて逃がすかっ!と言外で轟の名を発し、轟も具体的に言われなくてもこの密着の状態では直ぐに次の行動はできまいと氷の"個性"を使った。

 

グイッ!

 

その刹那―――障子の背に張り付いていた数本も重なっているテープで引き寄せられる。瀬呂も背後に鋭くテープを射出し氷の地面へ張り付けることで

 

「耳朗ちゃん!」

 

「わってる」

 

遠くから瀬呂と障子の背後にいる二人がテープを引っ張り、瀬呂もテープを巻き戻すことで滑る液体も相まって引力は上がる。後ろへ引っ張られる二人を追う氷は障子の足先まで迫っていた。やばい、と二人がそう思ったところで氷の大地を破壊する二つの衝撃波が走る氷を遮った。その原因は耳朗の心音を爆音のボリュームで流すイヤホンジャックだ。

 

「右へ引っ張れっ!」

 

瀬呂の疾呼で芦戸と耳朗は右に移動してテープを引っ張ったその行動で凍らせる対象を見失う氷は通り過ぎる。

 

《どんでんがえしだぁ~っ!爆豪チームに対し、瀬呂チームが巧みにコンビネーションでハチマキを奪いやりやがったYEAHHHHHHHHHHHH!》

 

《・・・・・あの1チーム、なかなか面白いことをしてくれる》

 

「~~~~~っ!?」

 

完全にやられた。その認識を爆豪に嫌というほど思い知らせた。青筋を浮かべ痙攣し、鬼のような険しい表情をして瀬呂達に対する憤慨を燃え盛る炎のように燃やした。

 

「ナイス耳朗!今のはマジ助かった!」

 

「ウチも活躍しないと」

 

「それより早く、爆豪から逃げないと!」

 

もはや関わりたくもないと迅速に組み直し残り時間まで逃げの一手を臨む瀬呂チーム。

 

「―――皆。この後、俺は使えなくなる。頼んだぞ」

 

「飯田?」

 

「しっかり掴まっていろ」

 

飯田が意味深に話し掛け、脚に力を籠めた。

 

()れよ爆豪君!」

 

「!」

 

前騎馬の飯田が走ることで後騎馬の二人も呼応して付いて行くしかない。

 

「トルクオーバー!」

 

次の瞬間、瀬呂達を通り過ぎる。そして、爆豪の手には奪われたハチマキがあった。

 

「は?」

 

瀬呂の気持ちは障子達の代弁としていた。目では見えない速度であっという間にハチマキを奪われ放心。

それはプレゼント・マイクも驚きで実況する。

 

《な―――――!?何が起きた!?速っ速――――!飯田、そんな超加速があるんなら予選で見せろよ―――――!》

 

「おい何だ、今のはスピードは!」

 

飯田の脹脛から生えるエンジン器官から黒煙が出ている。爆豪は見たことのない飯田のスピードに驚愕と疑問をぶつけずにはいられなかった。

 

「トルクと回転数を無理矢理上げ爆発力を生んだのだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメートにはまだ教えてない裏技さ」

 

思いがけない飯田の裏技で取り戻せたハチマキ。首に巻き付け、驚きが抜けてない間抜けな顔をしている瀬呂達をまた同じ手で来る可能性を考慮して警戒―――。

 

「ケロ」

 

蛙の鳴き声が爆豪の耳朶を刺激した矢先、うなじに何かの感触を覚えた。嫌な予感も覚え、条件反射でハチマキを抑えようと動かす手は、一瞬早く離れるハチマキを掠る。そのハチマキの行方を目で追い掛ければ、穴が開いている氷から顔を出す蛙吹と目が合う。ニュルリと口から伸びている舌はハチマキを()っていた。

 

「爆豪ちゃん。油断大敵よ」

 

飯田の行動が一瞬で無駄に帰し、再び爆豪はハチマキを奪われた己の不甲斐なさに・・・・・ブチ切れた。

 

「こんのっ、クソガエル返せ、殺すぞぁあああああああああああっ!?」

 

「サイナラ」

 

チャポンと、水中に逃げ込んだ蛙吹に怒りをぶつける相手がいなくなり獣のような声をあげる爆豪。

 

「兵藤ちゃん、ハチマキ」

 

『あっさり取ってきたな』

 

「後ろ向いていたから取れたの」

 

水の中、氷上では見ることは叶わない一誠達の状態。金色の膜に覆われ出入りもしやすい中、漂っていたのであった。戻ってきた蛙吹から一佳がハチマキを受け取り、二つあるハチマキを一瞥する。

 

「一誠、きっと誰かがハチマキが無いと思うけどどうするんだ?」

 

『無論、そいつに渡すさ。その前に俺達もそろそろ動く』

 

「オイラ、ずっとこのままでいれば良いと思うんだけど駄目なのかよ」

 

水中にいれば水に適した個性や遠距離攻撃ができる個性以外、手も足も出せない最も安全な場所の一つだ。

時間までやりすごせば確実に勝てるというのにと峰田の思いだ。

 

『駄目だな』

 

しかし、それを良しとしない一誠。

 

『そろそろフィナーレなんだ。俺達も参加しなきゃチキン呼ばわれされる』

 

再び脅威が動く―――。

 

 

 

氷の大地が鳴動する。その現象は緑谷達が最初に気付き、後に観客達も気付く。地震のようにゴゴゴゴッと揺れ続けるそれは何かの前触れであることを察した。

 

「残り1分・・・・・・ここで動くかっ」

 

「何をしてくるか分からない。警戒しようっ」

 

そして、その前触れは直ぐに起こる。氷の大地を容易く水中から大規模に粉砕し、何組かそれに巻き込まれ上空へ吹っ飛ぶ。白い煙が立ち籠りその奥からシルエットが浮かぶ。やがて煙から出て来たのは今の今まで水中にいた1組のチーム、峰田チーム。

 

『今まで大人しくしていた分、暴れ回らせてもらおうか』

 

ニヤァと目を細めながら舌なめずりする一誠は、獲物を捕食せんとする肉食の獣みたいだった。

 

《ようやく、峰田チームが姿を見せたぁっ!つーか、どんだけ水中にいたんだお前ら!息していたんだろうなっ!?》

 

してなきゃとっくに死んでいると突っ込みたいところであるが、一誠は駈け出し始めた。まず近くにいたチームを横薙ぎに振るい崩したり、遠くにいるチームは衝撃波でふっ飛ばし、峰田や蛙吹、一佳もハチマキが無いチームに控えめな攻撃、くっつく髪を投げつけたりとして行く内に瀬呂チームの姿を視野に入れた。

 

「な、こっちにも来るの!?」

 

「障子、逃げ―――」

 

「もう遅いぜ!」

 

峰田の言葉通り、あっという間に障子の前へ移動した一誠が手を突き出す。その手を複製した手と一緒に掴みもう片方から突き出してくる手も複製した手で受け止める。

 

「結構力があるんだなっ」

 

その手は隻腕の一誠の代わりとなって一佳の個性で巨大化にした手だ。

 

「兵藤、何でハチマキ無い俺達にまで攻撃をしてくるんだ!?」

 

『暴れる以外に理由は必要か?』

 

力と力の根競べをしている2組に近づくハチマキを持っていないチーム達。動きを止めているならばとこの好機を逃さず動きだした。当然、爆豪チームもそうだ。

 

「ようやく出てきやがったかてんめぇえええええええええええっ!!!!!」

 

爆風で空中を移動する爆豪が単独で一誠達へ向かう。騎馬から離れてアリなのか?と問われれば、

 

「テクニカルなのでオーケー!ただし、地面に足ついてたらダメだったけど!」

 

とミッドナイトが認めただろう。

 

「ば、爆豪の奴がきたぁああああああああっ!?兵藤、なんとかしろよぉっ!」

 

ギャー!と喚く峰田。思いっきり氷を踏みつけ、氷のフィールドを、足場を崩壊した一誠の一つの頭部がクルリと振り返り顎を大きく開けたその直後。口内から冷気を纏ったビームが放たれ、真上から振り下ろそうとする両腕に直撃し、たちまち凍りついたことで爆豪の"個性"は完封されてしまう。

 

『邪魔だ』

 

腰辺りから生え出した尾で爆豪の頬を叩き、砕けた氷の隙間に覗く水の中へと沈んだ少年。

 

「―――っ」

 

瀬呂が何かに気付き、バッと動いた。そして同時に一誠が爆発的な脚力で上へ跳び高いところから・・・・・。

 

ゴウッ!

 

三つの口から放たれる巨大な火炎球が氷と水のフィールドに直撃し、急激に熱せられたことでスタジアムは水蒸気に包まれ視界は真っ白となる。

 

《何も見えねぇー!?》

 

《・・・・・・》

 

騎馬戦の時間は過ぎても水蒸気で生じる煙にスタジアムが包まれている。約数分後、突如発生する突風でフィールドがようやく肉眼でも捉えるぐらい煙がなくなり、水が完全に干上がって元の地面のフィールドに戻っていたのと全チームの姿を見ることができるようになる。組が崩れていたり、立っていたりとまばらな姿勢と様子でいた。肝心なのはどのチームがハチマキを持っているのかだ。

 

《煙が晴れたところで、結果発表するぜ!1位―――常闇チーム!!》

 

「常闇君大丈夫?」

 

「凄く疲れてるよ・・・・?」

 

「休めば大丈夫だ」

 

《2位!!瀬呂チーム!》

 

「あれ、何時の間にっ!?」

 

「いや、あんとき咄嗟で何とか・・・・・」

 

《3位!八百万チーム!》

 

「何とか・・・・・」

 

《4位!峰田チーム!派手さなら1位だったところだぜ!》

 

「うおおおおおっ!」

 

「ケロ、主に兵藤ちゃんだろうけどね」

 

《5位!物ま・・・・・アレェ!?オイ!心操チーム!?何時の間に逆転してたんだよオイオイ!》

 

「御苦労様」

 

《以上5組が最終種目へ・・・・・進出だああ――――!》

 

心操が進出と聞き一誠は振り向き意味深に視線を送っては親指を立てた。そんな一誠に気付き、顔を反らす反応で返した。

 

《一時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!―――おいイレイザーヘッド、飯行こうぜ!》

 

《寝る》

 

《寝るのかよっ!》

 

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