俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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雄英高等学校体育祭

一時間後―――昼休憩終了

 

《最終目標発表の前に予選落ちした皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!》

 

スタジアムのフィールドに集結する1年の全校生徒の中プレゼント・マイクの実況が快調にされる。

 

《本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げてくれるぜ!さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目―――進出五チーム総勢24名からなるトーナメント形式!》

 

モニターに映るトーナメントの構図にまだ対戦相手の名前が記されていない。これからそれを決める前菜ということなのだろう。

 

《一対一のガチバトルだ!!》

 

「トーナメントか・・・・・!毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ・・・・・!」

 

感動を覚え、両手を歓喜で握り締める切島。

 

「去年トーナメントだっけ」

 

「形式は違ったりするけど例年サシで戦ってるよ。去年はスポーツチャンバラしてたハズ」

 

芦戸の素朴な疑問は瀬呂が解く。

 

「てか24名?」

 

「5チームでやるのではないようだな」

 

「というと・・・・・」

 

「それじゃ組み合わせ決めのくじ引きしちゃう―――前に今回はさらに盛り上げる為に騎馬戦で破れてしまった敗者復活のチャンスタイムをしちゃいましょうか!」

 

ざわっ。とスタジアムが騒然と化する。例年はそんな敗者復活など無かったのに今年はそうする雄英に驚愕しているのであった。

 

「復活できるのはたったの1チーム。それを決めるのはルーレットになります!」

 

巨大なモニターに映る騎馬戦の種目に敗れたチームの名前が記されたルーレット。

 

《んじゃ、決めちゃうぜ!つーことでイレイザー、押せ!》

 

《合理的じゃないことをさせるな》

 

そう言いつつもスイッチを押してルーレットを回し、直ぐに停止するスイッチを《速過ぎるぜっ!?》と突っ込まれながらも押した相澤。一度は一周したルーレットは次第に動きが緩やかになり、

 

《メッチャ早く停められちまったが最終種目に復活できる1チームがこれで決まるぜ!さァ、一体どのチームがハイ・リカバリーを果たす!?》

 

やがて、それはついに停止し示す。敗者復活の権利を得たチームを。

 

《―――爆豪チーム、てめぇーらだ!敗者復活しやがったぜ!》

 

「「―――っ」」

 

《そういうことでミッドナイト!後よろしく!》

 

「はい、それじゃ改めてくじを引いてもらうわ」

 

改めて総勢24名全員がくじを引きしばらくして結果が出た。

 

「組はこうなりました!」

 

一回戦 緑谷VS心操 

 

二回戦 拳藤VS上鳴

 

三回戦 常闇VS瀬呂 

 

四回戦 爆豪VS麗日

 

 

五回戦 飯田VS兵藤 

 

六回戦 尾白VS耳朗

 

七回戦 砂藤VS八百万 

 

八回戦 峰田VS青山

 

 

九回戦 障子VS塩崎

 

十回戦 切島VS葉隠 

 

十一回戦 轟VS蛙吹 

 

十二回戦 発目VS芦戸

 

 

《よーしそれじゃあトーナメントは一先ず置いといてイッツ束の間、楽しく遊ぶぞレクリエーション!》

 

「・・・・・」

 

ザッと踵返す一誠。レクリエーションに参加する気分でもなく時間が来るまで何かしてようと思いだ。

他の一年の生徒達も各々と行動をする。

 

「―――心地良さそうな場所で寝ようと思っていたが」

 

スタジアムの外、林の中に一誠は天使の翼を生やして木漏れ日の光に照らされる場所で背を壁に預けて腰を降ろしていたが一人ではなかった。

 

「まったく・・・・・」

 

自分の翼の上で寝転んだり伸ばした両足をまくら代わりにして横になっていたり、身を寄せて一誠の隣に座っていたり―――

 

「俺の代わりに寝てくれるよこいつら」

 

気持ち良さそうに翼の羽の上で寝顔を窺わせているのは一佳と茨、麗日達女性陣だった。

 

「迷惑?」

 

隣で眠ってない一佳が問う。その問いの答えとしてどこか遠い目をしつつ懐かしさを感じながら直視せず首を横に振った。

 

「いや、緊張をほぐしたい気持ちもあって俺に付いてきたんだろうけど、俺が起こさないまま行ったらどんな反応をするんだかって思ってた」

 

「それ、絶対に止めなよ。意地悪どころか悪質だ。あと、凄く悪い顔になっちゃってる」

 

ニヤァ、と邪な思いがありありと孕んでいる笑みをしている一誠の頬をムニっと軽く人差し指で突く。

 

「皆、この時の為に一杯修行をして努力したんだ。それを手伝った一誠が邪魔をしてどうすんの」

 

「ははは、本当にそうしたら俺は避けられる日々を暮らすだろうな」

 

苦笑いを浮かべながら頬を突く指を包むように掴み二人の脚の間の上に落とす。

 

「こうしているの、一年振りじゃないか」

 

「うん、そうだね」

 

二人きりの空間が当たり前のように静寂の中で出来上がり、二人の手はどちらからでもなく指と指の間に差し込みながら手を握り合った。

 

「茨達がこうして一誠に寝顔を見せるほど気を許しちゃってるんだね」

 

「そりゃあ修行ン時、サバイバルもさせたから外でも寝ることを躊躇わなくなったんだろ」

 

「いや、そう言うわけじゃないんだけど・・・・・まあいいや」

 

変なところで鈍い一誠に指摘することもないか、内心そう思い一佳は異性から伝わる手の温もりを実感しつつ首を傾け頭を肩に乗せた。まるで連れ添う恋人みたいに。

 

「決勝、行けるかな・・・・・」

 

「それは一佳次第としか言えないな」

 

「お前なら行けるとか、頑張れとか、言ってくれないんだ?」

 

「まだ見えない先のことを確定する事はできない。それに俺は一回戦であっさり負けるほど弱くした覚えはない」

 

戦いに関して情けは掛けるつもりはない。付け加える一誠の強さは力だけでなく心、精神的からも来ている。

異世界で培った経験と事件でオールマイトでも計りしれず底が知れない強くなった一誠を一佳が知る由もない。

 

「厳しいね、修行でもないのに」

 

「俺も身の周りがそうだったからそうせざるを得ないんだよ。少しでも甘やかせばそいつが気を緩んでしまう」

 

「・・・・・そっか」

 

まるで先生みたいな一誠に口元を緩ます。

 

「―――頑張れ。決勝で待ってる」

 

「―――――」

 

さっき自分で甘やかすからとか言ってたくせに・・・・・。チラリと一誠へ視線を向ければ瞑目している。眠りに入ったのか、それとも狸寝入りしてこれから言われる一佳の言葉を聞いてなかったことにしようとする腹なのか分からないが、一佳は優しい目で見つめ握り合う手に若干力を込める。

 

「うん・・・・・ありがとう」

 

手から伝わる温もりは一佳にとって勇気を与えられ貰っている。それに応えず無様に負ければ会わす顔が無い。

相手が誰であれ決勝戦まで負けないと静かに決意する拳藤一佳と言う少女はもう片方の手の平を握りしめる。

 

―――ウチが来た(by耳朗)―――

 

「オーケー。もうほぼ完成」

 

レクリエーションが終わる時はあっという間に来た。スタジアムのフィールドに教師(プロヒーロー)の"個性"で設けられたステージが観客席にいる一同の視界に入っている。ステージを作ったのは四角い身体のプロヒーロー、セメントス。

 

《色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!》

 

最初のオープニング戦、一回戦は一誠にとって因縁めいた繋がりがある緑谷と個人的に応援したい心操の試合。

 

《頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!》

 

「よう、心操」

 

通路の奥から心操に話しかけながら現れる一誠。

 

「兵藤・・・・・」

 

「お前の"個性"を知っている者としてよくここまで勝ち残ったと称賛ものだよ。だけど、どんな強力な"個性"でもその力だけで済まそうとするな。せっかくのチャンスを棒に振るう行為でもあるんだから。ああでも―――」

 

笑みを浮かべ、一誠にポンポンと心操の肩を触れられる心操は表情を変えない。

あれこれと「どっちなんだよ」と思ってしまうほど一誠からアドバイスを受ける心操だった。

 

「まあ、とにかく頑張れって言いたいんだ俺は」

 

「だったら最初からそう言えばいいだろう」

 

「なはは、変なところでお節介なんだよ俺は」

 

苦笑し、心操の顔を真っ直ぐ見据える。

 

「個人的に俺はお前を応援している」

 

「同じクラスメートにじゃなくてか」

 

「同じクラスの生徒だから、同じ生徒として応援しなきゃいけない道理なのか?」

 

肩を竦め踵返す一誠。その背を見続ける心操に対して一言放った。

 

「勝っても負けても、お前を見ている奴らに見せ付けてやれよお前の凄さを」

 

「・・・・・」

 

暗闇の中に消えていく一誠の背は見えなくなったところで意識を身体ごと通路の出入り口へ―――。

 

(言われなくてもそうするつもりだ)

 

前に足を運び、ステージがあるフィールドへ進み、

 

(お前が俺を見てくれているように、認めてくれているように他の奴らにもそうするつもりだ)

 

 

それからの二人の戦いは健闘をしたと本人達の名誉の為に言っておき、一回戦を突破したのは緑谷。

心操もクラスメートだけでなくプロヒーローから称賛され、一誠が望み心操が目標としていたことが少なからず達成できた。

 

 

《お待たせしました!続きましては~こいつらだ!》

 

ステージの上には既に二回戦で戦う生徒が立っていた。

 

《スパーキングキリングボーイヒーロー科、上鳴電気!(バーサス)姉御的印象なガールで同じくヒーロー科、拳藤一佳!》

 

「兵藤家で修行した者同士がこうも揃うとやっぱ、こうなるわな」

 

「だからって手加減はするつもりはないからな。個人的にもB組としてもさ」

 

お互い相手の"個性"を修行している間に把握している故、どう対処をすればよいのか少なからずできる。

 

《START!》

 

試合開始宣言がしたと同時に二人はまず距離を置く為に場外を判定するラインの手前まで下がった。

 

(っし、兵藤から教えられたことをここで活かさなきゃな)

 

戦いの最中、当然だが焦りと性急な行動は何事にも置いてしてはならない。冷静に動き、相手の様子を窺いながら対処すべし。

 

脳裏に過ぎる修行以外にも戦法の知恵知識を伝授する一誠の姿。焦りは禁物と耳にたこができるほど口酸っぱく言われ続けられたのだ。見ている一誠にそれを守らないでいたら・・・・・どんな目に遭うのか分かったものではない。

 

(上鳴って、電気を操る"個性"だから厳しいかな)

 

それに比べて手の平を巨大化させるだけの"個性"。触れるだけでも痺れるその攻撃は厄介であり、一佳は有効的な打開策を講じる。

 

(一撃で倒すか場外に吹っ飛ばす!)

 

《拳藤が先に仕掛けた!》

 

駈け出し、距離の差を縮めながら拳を巨大化させる一佳に上鳴は警戒する。

 

「おらぁっ!」

 

「っ!」

 

BZZZ!

 

大砲のような拳が上鳴がいた空間を通り過ぎた。一佳の初撃がかわされたのだ。上鳴は全身に電気を纏い、雷の速度で回避して一佳の背後から

 

「―――放出する、イメージってかっ・・・・・!」

 

突き出す人差し指から電気を放出する。

 

「許容量、10%!」

 

BZZZZZ!

 

一筋の光が細く短くても稲光を発し、電気を纏うビームと化しているその攻撃は巨大な掌で受け止められる。

 

《上鳴の痺れる攻撃を受け止めた拳藤!結構シビれていないかと心配だ!》

 

《・・・・・》

 

上鳴の"個性"の扱い方が入学初日の頃と比べれば違いの差が歴然としている。その原因はやはり一誠から受けたスパルタの修行の成果・・・・・。

 

「っ、この程度ならまだっ・・・・・!」

 

感覚が麻痺仕掛けている掌をそのまま盾代わりにし前へ走る行動は、二本目を突き出す上鳴がさらにVと上げさせる。

 

「20%!」

 

「ぅっ!?」

 

それでも止まらない。走る速度も落ちるどころか逆で上鳴の懐の手前まで届いた。流石にヤバいと感じ、取った行動は全身に30%の電気を纏い空へと跳躍して

 

「130%、ライジング・ボルテックス!」

 

両手をステージへと振り下ろし、槍のように収束した電気が放射される。一佳がいるステージに直撃し、眩い雷光が迸り続けた。

 

「・・・・・焦り過ぎだ」

 

ポツリと一誠の呟きが聞こえたら危機感を覚えていただろう。しかしその呟きは当然聞こえておらず、更には自分の横に現れ組んだ巨拳を振り下ろそうとしている一佳を横目で驚きで目を張った。

 

「そうすると、思った!」

 

背中を強打、ステージへと叩きつけられた全身に強い衝撃が襲われた上鳴。痛む体に鞭を打って起き上がったが、矢のように落ちてきた一佳に正拳突きで殴り飛ばされ場外へ。

 

「上鳴君場外!拳藤さんの勝利!」

 

三回戦、常闇VS瀬呂の番であるが、常闇に圧倒され瀬呂は敗北した。

 

「これは相性が・・・・・」

 

何故かスタジアムからドンマイコールが自然と湧き上がっている。次は四回戦であるいが・・・・・。

 

「次、ある意味最も不穏な組みね」

 

「ウチなんか見たくないなー」

 

《中学からちょっとした有名人!!堅気の顔じゃねえヒーロー科爆豪勝己!!(バーサス)俺こっち応援したい!!ヒーロー科麗日お茶子!》

 

「「「私情ありあり・・・・・」」」

 

実況の教師に呆れつつ二人の姿を捉えながら客席から見守る。

 

「兵藤ちゃん、お茶子ちゃん勝てるのかしら」

 

「わからないな。でも、これだけは知っている」

 

「なに?」

 

一誠はハッキリと断言した。《START!!》と試合が始まり、お茶子が爆豪へ速攻を仕掛ける様子を見ながら。

 

「あいつは、皆が思っている以上に心と精神が強いよ」

 

 

「お前、浮かす奴だな丸顔。退くなら今退けよ『痛ぇ』じゃすまねぇぞ」

 

自分に対する印象が丸顔ということに何とも言えない気持ちとなるがお茶子は決意を揺らがない。

 

「退くなんて選択肢ないから!」

 

爆豪へ駈け出す最中、修行中に言われたことを思い出す。

 

『一誠君。もしも私、一誠君みたいな強い相手と戦ったら勝てれるかな?』

 

『ん、無理だ』

 

『即答っ!?』

 

『お茶子に相手を物理的に倒すという決定打が皆無なんだ。触れたものを浮かす、その程度の"個性"じゃあできる事とできない事が状況と時と場所に応じて変わってくるし何より「力」がない。触れて浮かせれば何とかなるって思っている時点でもう甘いし倒せんよ』

 

『あうぅぅ・・・・・』

 

『だからお茶子には足りないもんを埋めてマシな程度にするしかない。それが今後のお茶子の為にもなるはずだ』

 

『それって・・・・・』

 

『近接格闘術をお前に叩きこむ。全身を軽くせず両腕両脚だけ軽くすれば、その部分のみ達人並みの速さを得られる。ただ、俺のような強い相手との接近戦をする場合。絶対に躊躇するな。肉を切らせて骨で立つぐらいなことをしなくちゃならない。お茶子・・・・・お前にその意気はあるか?』

 

爆豪の右腕が動く。

 

『もしも―――俺じゃなく、轟や爆豪と戦う羽目になればどうなるかシュミレーションでもするか。去年の雄英体育祭の最後はトーナメント戦だったしやって損は無いはずだ』

 

(来る―――!)

 

右の掌が払うように前に突き出し、BOOMと爆発を起こした。観客席から戦慄という緊張が走る。ヒーロー科の生徒とは言え、女の子相手に躊躇もなく強烈な攻撃を放った爆豪に畏怖の念を抱かずにはいられない。良心があるとできないことだからだ。

 

「じゃあ死ね」

 

爆発の余波で生じた煙でお茶子の姿が隠れて見えず、距離を置いて迎撃の姿勢で待ち構える爆豪の眼前。立ち籠る煙から影が浮き出てきた。その影の正体はお茶子の体操着―――。

 

「ナメっ・・・・・」

 

真正面から猪突猛進のように飛び出してくると認識し、凄まじい反応速度で捕まえて零距離からの爆破を試みようとした爆豪・・・・・だったが、捕まえたのはお茶子自身でなく上着の体操着。

 

「!!」

 

気付いた時は既にお茶子が目と鼻の先にいた。

 

『裏を掻くことも大事だけど、さらに裏の裏を掻くことも大事だ』

 

『どないして?』

 

『頭の良い奴はそう言う戦い方を知っているし気付くもんだよ。故に相手の意表を突かなきゃダメな時もある。そう、狡猾な手段で戦うこともあるのさ』

 

―――ドガッ!

 

お茶子の大振りの踵落としが爆豪の頭にクリーンヒット。

 

《強烈~~~っ!麗日の踵落としが爆豪の頭に入ったー!》

 

それでも決定打までの威力ではなかった。ギロリとお茶子を睨みつけながら鋭く手を突き出して爆破攻撃したが、一撃離脱(ヒットアンドウェー)を心得ているような動きで何時の間にか爆豪から離れて警戒していた。

 

《ありゃ?麗日が追撃しなかった?》

 

《当然だ。あれは合理的な戦い方を学んでいるからできる行動だ。警戒も何もせず愚直に攻撃する行為は(ヴィラン)かそれ以下の奴だ》

 

「・・・・・ふぅ」

 

武術の達人のような構えと姿勢をし、爆豪の目と体の動き、そして様子を瞬きするのが惜しいぐらい見つめ窺う。

近距離・中距離の攻撃ができる爆豪の"個性"の強力さを体に沁み込ませているお茶子が次に取った行動は・・・・・その場で軽くリズムに乗ったジャンプをし始める。

 

「てめえ・・・・・」

 

「はぁっ!」

 

お茶子らしくもない妙な動きと戦い方、そして何時の間にか裸足でステージに走るその速度は、重力を無効化したことで羽毛のような軽さで走ることが可能になったお茶子だからできる業。

 

BOOM!!

 

姿勢を低くして走って来る相手に爆発で攻撃&牽制。

 

「―――――っ!」

 

「っ―――」

 

自ら爆発に飛び込み、動く地雷みたいな爆豪に突っ込むお茶子。

 

「おらあああああああああああっ!」

 

拳を突き出す彼女にもう片方の掌から爆発を起こして迎撃―――それでも尚、

 

(こいつ・・・・・バカみてえに突っ込んでくる上に、攻撃を食らう事を臨んで近づいてきやがるっ)

 

イカレた戦い方。爆豪はお茶子にそう認識した。技術や応用などクソ食らえみたいに迎撃しても突っ込み続ける・・・・・そんな二人の戦いは決着つくまで続くのかと誰もが思った。

 

BOOOM!

 

もうこれで何度目の攻撃と牽制なのかとお茶子に放つ爆発を繰り返す爆豪の目に・・・・・華奢な手が見えた。

 

「負けら、へんっ!」

 

「バカみたいにしつこいなテメエはっ!」

 

爆豪の左手が、お茶子の腹部に向かって爆破。

 

「~~~~~っ」

 

腹部から伝わる衝撃と痛みに歯を食いしばる。しかし、負けないと強い意志を目に宿したお茶子は、もう一度攻撃仕掛ける爆豪の胸倉を、爆発を食らいながら―――掴んだ。

 

「私も一誠君みたいにっ!」

 

掴まれた胸倉。しかし、お茶子の行動はそれだけで終わらない。足を横に薙ぎ払って立つ姿勢を崩して押し倒し、爆豪の首の頸動脈と上へ伸ばした腕ごと抱え込むように回した両腕で締め上げた。

 

《ここでどんでん返しかぁッ!?麗日が爆豪をうららからしくなく格闘技で抑え込んだぞっ!》

 

「こ、こんのぉっっっ・・・・・!?」

 

「絶対に、放さないっ!」

 

完璧に決まった絞め技に爆豪は苦しさを覚えながらまだ自由な片腕で、

 

BOOOOM!!!!!

 

お茶子に爆破の個性を放ち続ける。

 

「うぐっ!」

 

「いい加減に、放れろぉおおおおおおっ!」

 

爆発の威力が段々と増していくのを何度も食らっているお茶子は実感している。爆豪も必死にもがき、お茶子の絞め技を解こうとしている。攻撃を受け続けながらのこの状態が何時まで続けられるか分からない不透明な現実に最後の手段を選択した。爆豪の腕を掴み個性を発動するお茶子は自分から絞め技を解き、掴んだ腕と爆豪の胸倉を掴んだ状態で立ち上がっては、

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

場外へ押し出そうとする。その行動の意図を気付き、そうはさせまいとお茶子へ両手を突き付ける。

 

「死ねぇ!!!」

 

雄英体育祭始まってから初めて見る最大威力の爆破がお茶子を襲い呑みこんだ。

 

《爆豪、会心の爆撃を麗日に撃ちやがったぁっ!!麗日は大丈夫なのか心配だっ!》

 

《私情すげぇな・・・・・》

 

これで麗日は終わった。一誠の修行を受けた緑谷達でさえも思っている。ただ一人、一誠を除いて。

だが、この場に何人気付いているだろうか?麗日は爆豪の体を軽くさせることに成功した。

爆豪は麗日を吹っ飛ばそうと最大威力の爆破をぶっ放した。

この二つの要因が導く答えは・・・・・。

 

「・・・・・」

 

爆破の爆風で自分自身を場外へ吹っ飛ぶ自分で自分の首を絞めた―――爆豪が放心した状態で壁際にいた。

対して麗日は・・・・・。ステージの上で全身ボロボロ、満身創痍、四つ這いになっていた。何時その場で平伏してもおかしくない雰囲気を纏って一同に窺わせているものの。

 

「・・・・・っっっ」

 

フルフルと最後の力を振り絞る腕が上方に上がり手を固く握り親指を立てた。まるで自分の勝ちだ、と示すその仕草にミッドナイトはそんな二人の様子を交互に見比べ、宣言する。

 

「爆豪君場外・・・・・麗日さん二回戦進出!!」

 

 

―――ワァッ!!!!!

 

 

《うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!麗日ぁぁあああああああああああああああああっ!(男泣き)》

 

《・・・・・》

 

 

「す、すげぇっ!あの爆豪に勝ちやがった!?」

 

「マジかよっ、信じられねぇ・・・・・」

 

「凄いわお茶子ちゃんっ」

 

スタジアム中がお茶子に対し称賛や感動をしている。あの勝負の中で爆豪が勝つと多くの者が予想していただろうにそれを覆して勝利をもぎ取ったお茶子に拍手喝采までされるほどに。

 

―――私が来たよ!(by葉隠)―――

 

《さあ、サクサク行くぜ!?お互いヒーロー家出身の英雄(オールマイト)の養子とエリート対決だ!これはある意味見逃せない試合が始まろうとしている!飯田天哉 対 兵藤一誠!》

 

「兵藤君、戦う前に一つ聞きたい」

 

《START!》

 

飯田からの問いに疑問符を浮かべる一誠。

 

「拝金主義者のヒーローはヒーローじゃない、贋者だと言ったこと覚えているかい」

 

「それが?」

 

「それは国から収入を貰っている全てのヒーローに対して否定している言葉だ。君はヒーローを目指して雄英に入学したんじゃないのか。ヒーローになれば必然的に国から収入を得るものなのだぞ」

 

飯田の問いは真剣さが籠っていた。一誠はそれに察しながらも自分の発した言葉を訂正も曲げることもしない。

 

「飯田。お前にとってヒーロー、英雄って何だ?」

 

「それは勿論、人々を悪から救い平和と秩序を守る正義のヒーローだ」

 

「うん。それは俺も肯定する。正義のヒーローはそれでこそ存在意義がある」

 

「ならば―――!」と食って掛かる飯田を遮る一誠の言葉。

 

「だけど、逮捕協力や人命救助等で発生する貢献度に応じて、国から給与を貰っている。逆に言い返せばヒーローだけに限らず人は金を貰わず生きていくのは難しい。それは理解してるよな?」

 

「理解しているさ。生きる為に必要な物の一つなのだから」

 

「俺もそう思う。だけど、俺個人じゃあどうしても疑問が浮かぶんだよ。ヒーローに憧れるのは当然。ヒーローになって人々を守る凄い人間になりたいという願いは抱いてもおかしくはない。だというのに何でヒーローがヒーローを蹴落とさなきゃならない?同じ志を持つ者同士が水面下で(ヴィラン)になるなんてのは変だろ」

 

「―――――っ」

 

ピッと人差し指を立てだす一誠。

 

「ここ日本だけ限らず、世界中にもヒーローが溢れ返り過ぎている。もっとヒーローの数を減らし、ヒーローらしい実力と"個性"が見合う仕事を分けて活動すればいいんだ。実際、街を守る警備隊や人命救助や災害救助といった活動があるからヒーローとなった人間はその仕事に就職、活動しているわけだが・・・・・まあ、要はこう言うことだ」

 

一誠らしくない毒舌が続く。

 

「私利私欲の為にヒーローになりたい人間、成っている人間は(ヴィラン)以下の贋物なんだ。本当の偉業をしたことないくせにお父さん(オールマイト)と同じ土俵にいるなんて個人的に許せないんだ。オールマイトを超える?オールマイトみたいな立派なヒーローになりたい?―――くだらん。そう思うのは、夢抱くのは個々の自由だが実際に自分が吐いた妄言を実現できないで生きている人間はどれだけいると思う?仕舞いには活躍に応じた報酬と名声が得られる給与システムに加えてタレント的活動を含む副業・・・・・」

 

握る拳を見下ろし、オールマイトの拳と被るように視界に入れる。

 

「俺にとってヒーロー(英雄)は、英雄(ヒーロー)は、誰にもできないことを完全にやり遂げた人間のみ与えられる称号だ。誰でも当たり前のようにできることをオールマイトと同じだと思い込んでる奴を見ると納得できないし疑問が湧く一方なんだよ飯田」

 

一誠にとってのヒーロー、英雄を語られる飯田は知る。

 

「お前の親もヒーローなんだろう。立派にヒーローとして活動をしているんだろう。立派な両親の間から生まれたお前にとって誇らしいはずだ。だが悪いな飯田。俺にとってのヒーローはお前の両親と当て嵌めることはできない。正義という旗を掲げて秩序と平和の為に生きているお前の両親の在り方を否定するつもりはないけどな」

 

複雑な心情を抱えている一誠の想いを飯田は知った。本気で根本的にヒーローの存在を否定していないわけではない。ただ、ヒーローとしてそれでいいのか?という疑問と戸惑いを抱えているだけだったのだ。

 

「・・・・・初めて君が腹を割って話してくれた気がするよ」

 

「一応、俺は訳ありの人間だからな。おいそれと深い話しはできんよ」

 

「そうか。何時か話してくれると信じてるぞ」

 

「気が向いたらな。さて、始めるか。麗日があんなに頑張ったんだ。俺もそれなりに戦わないと失礼だ」

 

「同感だ。君を負かして優勝してみせる!」

 

脹脛のエンジンの器官、"個性"を発動して一誠の懐に飛び込む。

 

「レシプロバースト!」

 

飯田は騎馬戦で見せた技と速度で肉薄―――。途中、跳んで体を捻り弧を描く感じに蹴りを放つ。

 

ガンッ!

 

「片腕となった俺だが、それでも負ける気は微塵も感じられない」

 

「ぐっ」

 

片腕で蹴りを防ぐ一誠が不敵に飯田の足を弾き返しながら述べる。宙で一回転し着地する飯田の目と鼻の先にいる相手こと一誠は追撃しなかった。

 

「中々速くてイイ蹴りだな。ちょっと腕が痺れたぞ。ただ、惜しいな。あの時もう片足も追撃していれば俺に一撃を与えていただろうに」

 

差し伸ばすように腕を伸ばし、手をクイクイと挑発、誘いこむように動かす。

 

「今の蹴り、もう一度打って来い」

 

「・・・・・いや、残念ながらエンジンが止まってしばらく経たないと駄目だ」

 

飯田の言葉通り、脹脛から生えるエンジン器官から黒煙が発生している。

―――溜息を吐く一誠。

 

「お前、そんなんでヒーローになれるのかよ。リスクある技をいきなりぶっ放して戦えないだなんて話にならんぞ」

 

そんなことを言う一誠の頭から狐耳、腰辺りに九つの狐の尻尾が生え出し、「異形型の"個性"かっ!?」と騎馬戦で見た姿とは異なる一誠に驚かずにはいられない。

 

「狐の特性を持つ"個性"か?尾白君のような強靭な尻尾でもなさそうだが・・・・・」

 

「見掛けで判断するなよ飯田」

 

九つの尾が鋭利な槍のように鋭くなった。

 

「俺は尾白以上だ」

 

グワッ!と飯田に襲いかかる九つの尾。避ける飯田に迫る尾はステージに突き刺さったり抉ったりする。尾が刃物のような凶器と化しているのは確かに威力だけ見れば尾白以上だろう。

 

「理解してくれたところで、続きをしようか」

 

一誠が翼なしで宙に浮き、上から飯田に突き出す掌から気のエネルギーが放たれる。

空を飛べない飯田はただ地上で逃げ惑うことしかできない上からの砲撃がしばらくして隻腕だったはずの腕が肩から燃え盛る炎で腕と化し、もう片方の腕が炎を纏い、九本の尻尾にも炎が纏う。

 

「紅蓮爆炎刃」

 

両腕と尻尾を螺旋状に振るう一誠から爆炎を伴った強烈な一撃が飯田へ放たれた。螺旋状に燃え盛る爆炎により飯田は目をあらん限りに見開き、条件反射で頭を守るように腕を交差したが呑みこまれた。

 

「うわあああああああああああっ!」

 

竜巻のようにうねりあげる爆炎が焼失すると、ステージに気を失った状態の飯田を見てミッドナイトは判定する。

 

「飯田君戦闘不能!二回戦進出兵藤君!」

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