俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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休日

「・・・・・『ターボヒーロー「インゲニウム」。ヒーロー殺しの被害者に』か」

 

体育祭が終わって翌日の朝。新聞の記事を読めばそう事件に関する情報が大きく記されている。

本名は飯田―――。あの飯田の肉親にまず間違いないだろう。

 

「飯田君、とてもショックを受けたんよね」

 

コーヒーを淹れてくれたお茶子が邪魔にならないところで置いてくれながら俺の隣に座る。

 

「しかもこれは昨日起きた事件だ。まったく、あんなに大勢のヒーローがいたってのにヒーロは何しているんだって話だよ」

 

「一誠君、ヒーローに対して辛辣だね。もしかして嫌い?」

 

「別にそう言うんじゃないんだお茶子。ヒーローだって完璧じゃないことも理解しているつもりだ。現にオールマイトは教師として素人だし」

 

「あははは・・・・・」

 

乾いた笑い声を発するお茶子の尻目にコーヒーを飲む。・・・・・ん、あっさりして飲みやすい。

そんな味を楽しんでいる俺に彼女は質問してくる。

 

「昨日の今日だけど、皆くるんかな?」

 

「自分達も空を飛びたいって言い出したからなぁ。あれは本当に人によっては今までより地味で根性がいる」

 

「コツとかあるの?」

 

「俺が手助けするとこんな感じだ」

 

彼女の背中に手を触れて気を送る。すると、お茶子はピクリと身体を小さく弾ませた。

 

「分かるか?」

 

「なんやろ、何か変なのが体中に蠢いとる」

 

「それがお茶子の『気』だ。俺の気でわかりやすく動かしているんだ。掌を」

 

指示を出して掌を上に向けてもらい、更にお茶子の気を操作して手から小さな気の塊を出した。

 

「わっ!なんか出てきた!」

 

「それは『気』だ。今回は俺の補助で小さな気の塊を出した。今の感覚をもっと明確に、呼吸をするような感じまで扱えるようになれば空を浮くことができる」

 

「私の"個性"無しでも浮くことができるんだね」

 

「というか、お茶子の個性の指向性をもっとコスチュームに加えればいいと思うんだけど?浮いたら機械で空を跳んだりとか、長距離からでも浮かせるように無重力(ゼロ・グラヴィティ)の力を機械の機能で放ったりとかさ。あの青山のレーザーみたいに」

 

「おおっ!なんか恰好好い!」

 

どんな想像をしたのか分からないけど、異論はないみたいだな。それはさておき・・・・・。

 

「・・・・・ん、お茶子」

 

「うん?」

 

「少し、甘えさせてもらう」

 

頭上に疑問符を浮かべるそんな彼女を他所に身体を横にして頭を異性の太股の上に乗せた。所謂膝枕だ。

 

「い、一誠君・・・・・?」

 

「今この瞬間こうして頼めるのはお茶子しかいないから」

 

瞑目したまま彼女の太股から伝わる温もりと弾力を噛み締めつつ、心のゆとりを得る。

 

「・・・・・」

 

ポム・・・・・。

 

「・・・・・?」

 

「うん、私の膝で良かったら何時でもこうしてあげるね」

 

俺の頭に手を置いて撫で始める。目を開けると慈しみが籠った目で見下ろすお茶子と視線が絡まる・・・・・。

髪を撫でる感触と優しげな目で見つめてくる彼女を見つめる俺は小さく笑みを浮かべた。

 

「今のお茶子のその目、綺麗で見惚れてしまいそうだ」

 

「っ!?」

 

顔に火がついたように散る朱色は彼女の心情を明かしているようなものだった。そんな顔の頬に腕を伸ばし触れてみると異常に温かかった。しかも弾力があり、まるで餅のようだった。

 

「い、一誠君・・・・・」

 

「・・・・・」

 

気恥ずかしそうな少女をもう少し触っていたいが・・・・・眠くなってきた。腕を下げては顔を横に、お茶子の腹部に顔を埋める形で瞑目する。

 

 

 

「・・・・・すぅ」

 

「ね、寝ちゃった・・・・・」

 

どこか、ホッとしたお茶子。でも、心なしか期待していたように残念そうな表情を浮かべた。

 

「ううう・・・・・私の目が綺麗だなんて、一誠君・・・・・なんてハズいことを・・・・・っ」

 

パタパタと熱く赤くなった顔を扇ぐように手を振るうお茶子の心の動悸も激しかった。

この場に二人以外誰もいなかったことが幸いと誰に感謝しているのか分からないがお茶子は感謝した。

それとは別に一誠に対して感謝は勿論している。一緒にヒーローを目指そうという気持ちも偽りではない。でも、それ以上の気持ちを抱いているかどうかは・・・・・。

 

「ムムム・・・・・」

 

ちょっと意識をすれば、頬がポッと赤くなる。やはり、同棲生活をしているからか一誠に対する気持ちが変化しているのを自覚するようになってきた。だからか。綺麗な目だと言われ、その対抗心としてか一誠の左の瞼をそっと添えて上にずらすと垂直のスリット状の瞳が覗けるようになった。

 

「・・・・・一誠君の眼だって、恰好いいやん」

 

ふと、右目の眼帯の事を思い出す。USJの奇襲時、一誠は眼帯を外して巨大な化け物を右目から出した。

眼帯は化物を封印する為の特殊な処置として身に付けているのだろうか?

 

「・・・・・」

 

"個性"を使って一誠を軽々と持ち上げて向きを変え直す。ゴクリ、と緊張の面持ちで右目の眼帯を外しに掛かる。外す間に起きませんようにと願いを込めて、スルッと右目の瞼を外したことで曝け出す。そして・・・・・右目の瞼を持ち上げつつずらした途端。金目ではない濡羽色の瞳がお茶子の視界に入った。

見続けると奈落の底を見ている気分でこっちが吸い込まれそうになる。そう、本当に意識が吸い込まれ―――。

 

 

 

ピンポーン

 

玄関の外では八百万達が集っていたが、来訪者を知らせる呼び鈴を鳴らして五度目。一向に扉を開けて顔を出す気配はない二人に怪訝な表情や気持ちを抱く。

 

「外出しているのでは?」

 

常闇の指摘にその可能性もあると八百万も同感と首肯する。しかし、ものは試しとばかり扉のドアノブを掴んでガチャリと動かした途端、あっさりと開いて中へ通じた。

 

「お、開いた」

 

「ちょ、勝手に入る気?」

 

「帰ってきたら後で謝ればいいだろ」

 

扉を開けた上鳴に抵抗を覚える耳朗。ヒーロー志望の者として不法侵入は如何なものかと、もしここで生真面目な飯田がいたら・・・・・・。

 

『君達ぃっ!クラスメートの家だからといえど勝手に断わりも無く家の中に入ってはいけないぞ!』

 

と、注意するだろう。

 

 

 

 

「えっ・・・・・」

 

目の錯覚か?周囲がいきなり真っ暗になって、自分が立っている場所も己の姿が以外何も見えない。トレーニングルームの暗闇の部屋みたいな感じで何時の間にかここに立っていることに驚きを禁じ得なかったお茶子はキョロキョロと焦心に駆られて忙しなく周囲を見回す首を動かす。

 

「こ、ここ・・・・・どこっ?」

 

目を覗き込んでいきなり暗い場所に立つ自分の状況に困惑と当惑する。―――そんな少女の背後に暗闇からヌゥと凶暴で凶悪そうな顔の化物が顔を出した。

 

『―――ここは我が主の心の中だ』

 

「ひっ!?」

 

更にもう一匹、三つの頭部を持つ化物も現れる。

 

『興味本位で我が主の心に入り込んでくるとはな。とんだ愚行をする人間がいたものだ』

 

『ですが―――彼女が初めてではありませんか』

 

優しい女性の声が聞こえたと思うと、暗闇を裂くようにして神々しい光を纏う金色のドラゴンが現れた。

 

『ご安心を麗日お茶子。我々はあなたに対して危害を加えようなどしません』

 

何故か自分の名を口にされて驚くお茶子は反射的に質問してしまう。

 

「どうして、私の名前・・・・・」

 

『我が主・・・・・兵藤一誠の中でずっと見ていましたからわかりますよ』

 

「一誠君の中・・・・・?」

 

『ええ、先ほど申された通り。ここは兵藤一誠の心の中です』

 

金色のドラゴンの言葉から一拍して暗闇から一気に景色が変わる。お茶子の眼にはどこまでも広がる草原と同じぐらい広い青空と大海原、そして大自然。

 

『ここが主の心の中です。我々ドラゴンはこの中で過ごしています』

 

「一誠君の心に・・・・・ドラゴンって」

 

『その先は我々の口から教えることはできません』

 

『だが、我が主は貴様等人間とは次元が違うほど異なっている存在だ。くれぐれも主に対して裏切ってくれるなよ人間』

 

『主の気持ちを踏み躙り尚且つ、悲しませる者は容赦しない。そうした者は主の傍に生きる資格と価値は無い』

 

それだけ言い残して空を飛んだり草原の上を歩いて遠ざかっていくドラゴン達を、ただポツーンと見送って置いてけぼりにされるお茶子。

 

「・・・・・あれ、私。どうやって戻れるの?」

 

「―――戻してやろうか」

 

「へっ?」

 

直ぐ真後ろから聞こえる声に振り返った矢先、額に凄まじい衝撃を受けた。それを最後に目の前がまた真っ暗に成って―――ハッ!と我に返った時、お茶子は一誠を膝枕にしたままの状態で覚醒した。

 

「・・・・・ゆ、夢だったん?」

 

妙にリアルだった・・・・・と、首を傾げる。

 

「―――何が、夢なのですの?」

 

「ふぇっ?」

 

またしても後ろから聞こえた声に振り返ると、ここにいないはずの人物・・・・・八百万百を筆頭に切島達が何時の間にか上がっていた。

 

「あれ、八百万さん。それに皆、何時の間に?」

 

その素朴な疑問は上鳴が答えた。

 

「俺達何度もインターホンを押したんだぜ?それが全然出てくれないわ鍵開いているわで、どうしようかって悩んだ結果」

 

「勝手ながら家の中に入りまして、お二人をお探ししたところ・・・・・麗日さんが一誠さんを膝枕して寝ているところを発見しましたの。それが丁度今さっきのことですわ」

 

百がシメとばかり上鳴の言葉の後を付け加えて説明した。

 

「それで、夢とは?」

 

「ああ、うん。自分でもよく覚えてないんよ。でも、凄く衝撃だったってのは何となく今でも覚えているんだけど」

 

「んだそりゃ?つーか兵藤。まだ寝てるのか?しかも眼帯外れてるし」

 

「だったら早く付けろよ!?またあのとんでもねぇ化物が出てくるかもしれねぇって!」

 

USJ時の事を思い出したのか、身体を震わす峰田の焦心に駆られた叫びで眼帯を手にし、一誠の右目に付け直すお茶子。

 

「それで皆、これからどうするの?また修行するん?」

 

「んまぁ、当然そのつもりで来たんだけど。兵藤が眠ってんなら勝手に地下にはいけないだろ」

 

「うーん。そうだね。じゃあ、確かあの棚の中にゲーム機とかボードゲームとかあるから。一誠君が起きるまで遊んでいてくれない?」

 

異論はないと切島達は各々と動き遊ぶ準備をしている最中、峰田はお茶子に問うた。

 

「ゲーム・・・・・なあ、麗日・・・・・兵藤はエロいゲームとかある―――」

 

ガシィッ!

 

「んなもん、あるわけないだろうこの性欲の権化が」

 

巨大な異形の手で峰田の頭を掴み、アイアンクローをかます一誠の声は怒気が籠ってた。

 

「あ、起こしちゃった?」

 

「何か騒がしいと思えばな。百達が来ていたか」

 

「ごめんなさい。勝手に上がっちゃいました」

 

「ん、『今回』はしょうがない。次はこっちも気を付けるけどそっちも無断で上がってこないでな」

 

今回は、という言葉が妙に強調されたように聞こえた。お茶子はおぼろげとなった夢を思い返すけれど、具体的にどんな夢だったのかはやはり鮮明に浮かぶ事は無かった。

 

「おっ!音楽系のゲームがあるっ!」

 

「ああ、それか。俺と常闇もやったけど全然ダメだったぜ。こっちの太鼓の達人だったら得意だけどよォ」

 

「うしっ、んなら兵藤。俺と勝負しようぜ!」

 

「ウチもやりたい。いい?」

 

「別に構わないけど・・・・・敗者は地獄よりもめっちゃキツい煉獄の修行コースだかんな。その分、強くなれるという実感付きだけど」

 

「「「「「(どうしよう、負けたくないけど強くなりたい)」」」」」

 

こうして始まったゲーム大会。勝者と敗者は誰なのかご想像にお任せする・・・・・。

 

 

同時刻―――雄英高等学校。

 

 

「う~ん・・・・・これは・・・・・」

 

根津の元に極秘に赤丸が記された数枚の封筒と紙を机の上に並べて眺めていた。

 

「やはりと言うべきか必然的と言うべきか、世界各国があの子に注目しているようだね」

 

一筋の傷跡がある顔と円らな目は書類と向き合っている。その書類の内容は簡略すれば、一誠の"個性"についてだ。

複数の"個性"を持っている上に個性が変化した。"個性"の更なる可能性の瞬間を見た各国の政府やヒーロー達は一誠を通じて個性の変革を求めている。―――故に国によって一誠を祖国に交換留学として招きたいという外交に関する手紙だった。

 

「確かに彼の修行で生徒達は強くなっている。でも、それはあくまで生徒自信と個性が伸びた程度。異世界から来た彼の力は"個性"の枠には収まらないんだよね」

 

"個性"に変革をもたらす、彼はできるのだろうか?顎に手をやって考える仕草をする根津は思考の海に飛び込んで数分後・・・・・連絡をした。

 

「ああ、私だ。至急、兵藤君に連絡して学校に来てくれるようにお願いできるかな?うん、彼に関するちょっとした問題が起きたんだ」

 

―――私がきたわよ(byミッドナイト)―――

 

「個性の変革?」

 

「天使になれる"個性"を発動した君は青白い天使になったのを見て、世界中は"個性"の更なる向上、国によっては『進化』の可能性が浮上して君を外国に来て欲しいって手紙が来たんだよ」

 

「うん、行く気ない(キッパリ)」

 

断言する校長室に呼び出された一誠はハッキリと断わった。

 

「てか、知らないとはいえ勘違いしてるよなその人達」

 

「そうだね。君は異世界から人間。この超人社会の世界で生まれた訳じゃない君の力は異世界の力だ。でも、君の力と"個性"の違いって具体的にどう違うんだい?」

 

純粋に疑問をぶつける根津から向けられるつぶらな瞳を真っ直ぐ受け止め、差して隠すほどでもないと説明する。

 

「俺の力の殆どは神の器と書いて神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれる摩訶不思議な能力なんだ」

 

神器(セイクリッド・ギア)?」

 

「そう。それは一つや二つだけでなく、俺の世界、異世界なら人間もしくは人間の血を引く異種族なら誰でもその摩訶不思議な能力を宿しているんだ。ただ、4歳まで発現できる"個性"と違って神器(セイクリッド・ギア)は知っても発現する事はそう簡単なことじゃないんだよ」

 

「それは何でだい。人間がその力を宿しているなら発現してもおかしくないのに」

 

神器(セイクリッド・ギア)の発動条件が様々なんだ。しかも神器(セイクリッド・ギア)の能力も様々。その上、どんな能力を宿しているのか自分でも分からないから発動したくてもその方法が分からない」

 

興味深く耳を傾ける根津に驚かせる話しが一誠の口から洩れた。

 

「それに神器(セイクリッド・ギア)は神のシステムによって産まれた産物。つまり、神器(セイクリッド・ギア)は神様からの贈り物。だから"個性"に負けないほど神器(セイクリッド・ギア)も強力なんだ」

 

「―――――」

 

神が何らかの方法で人間達に摩訶不思議な能力を与えている。それが一誠の異世界では普及しているという。

ならば、超人社会となった原因―――"個性"は一体なんなのかと、根津は思い改めた。

 

「そして神器(セイクリッド・ギア)には更にもっと強力な神器(セイクリッド・ギア)が存在する」

 

「もっと強力な・・・・・神器(セイクリッド・ギア)?」

 

「―――神を滅ぼす可能性を秘めた神器(セイクリッド・ギア)こと神滅具、神滅具(ロンギヌス)。通常一種しかない能力を二つ以上も強力な能力を備えている。その数は全部で17種もある」

 

「17種・・・・・・」

 

「その殆ど、俺はこの身に宿している」

 

自身の胸に手を添える一誠に驚きで開いた口が塞がらない根津。

 

「因みにあの天使の姿はその神滅具(ロンギヌス)の一つだから」

 

「そ、そうなのかいっ?」

 

「で、本題の"個性"と神器(セイクリッド・ギア)の違いってのは。神器(セイクリッド・ギア)は宿主の想いに応えて変化する仕組みになってるんだ。それが"個性"と俺の世界の摩訶不思議な能力の違いだろうな」

 

説明は終え、いなくなった一誠が立っていた場所に見続ける根津。封筒の中に仕舞ってある書類に目を向けた後に天井を見上げる。

 

「私達の身に宿る"個性"、もしかしたら神から授けられたものかな。でも、それはどんな意図で人間に"個性"という能力を与えたのか、本当にこの世にも神がいたら聞きたいね」

 

 

その頃トレーニングルームでは、膨大な水が落ち続ける滝の下で水行が行われていた。

凄まじい水圧が今もお茶子達の全身に襲い、その衝撃も長く耐え続ける精神力も必要になる訳だが。

 

「おーい兵藤!これ、何時までやらせる気なんだよ!」

 

「文句言うな峰田。切島を見ろ」

 

と、一誠は切島に目を向けると立って水行をしている。真剣な面持ちで瞑目してずっとあの姿勢でいるクラスメートに称賛しているのであった。

 

「お前らがどうしても空に浮かびたいって言うからこっちは修行をつけているんだ。文句言うなら帰れ」

 

「でも、これ実際に必要なことなのか?」

 

「必要じゃなかったらこんなことやらせはしない。無駄口を叩かず心を静めて残り30分間」

 

一誠もまた滝の水に全身を打たれながら一緒に修行をしていた。皆の手本となる為に指導するだけじゃなく実際に同じ修行をすることでコミュニケーションも深める意味も兼ねているのだった。

 

水行が終われば次は早いと思うが一誠は気と言うものを八百万達に教える。

 

「気ってのは人間なら誰しも持っているエネルギーの事だ。これは武道をやっている人間に向いているがコントロールもまた難しい。このメンバーの中で格闘技をかじってる切島が一佳の次に気をコントロールできる可能性がある」

 

「おおっ!」

 

「まあ、取り敢えず初歩中の初歩。こうやって気を出す事から始めようか」

 

両手を合わせて身体の中から気を引き出して見せる一誠。光る球体が百達の視界に入り驚嘆させる。

 

「それが気ってやつかぁ・・・・・本当に俺達の体にそういうエネルギーがあんのか?」

 

「あるさ。それにコントロールすれば戦い方のバリエーションが更に増えるぞ」

 

両手に淡い光を纏わせ、一誠は気を炎に変えて正拳突き、両脚に電気と氷を纏わせて回し蹴りをして見せた。

 

「すごっ!?気ってそんなこともできるのか!」

 

「こんな風にする為には気を極めなきゃならないけどな。だが、それをできる可能性はお前ら全員ある。もしも扱えるようになれば"個性"+気の相乗効果も発揮するはずだ。切島の『硬化』に炎か電撃のダメージを相手に与えることができるようにな」

 

「すげぇ、もしも本当にできたらもっと強くなれるんだよなっ」

 

「それは保障する。さ、話しはここまでにして早速やろう。だが、力んで出すなよ。それじゃ気は引き出せない。心と精神を落ち着かせて集中するんだぞ。その為の水行でもあるんだからな」

 

あの水行の意味はこう言うことだったのかと不思議に思っていた面々は納得した。

 

「これは地道で時間も掛かる。直ぐにできるものじゃないから忍耐力も必要になるから頑張れよ」

 

気合の入った返事を発する面々はその場で腰を降ろして一誠から教えられた通りに練習をするのだった。

 

―――だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・こいつらの本気を俺は舐めてたかもしれない」

 

二日目の休日を迎えたその日の内に、一日一週間の時間を過ごせるトレーニングルームで気のコントロールをできる修行をして十日も過ぎた。その結果、俺は驚かずにはいられない光景を目の当たりにしているのだ。

 

「―――浮きましたわっ!」

 

「気を、引き出せたっ・・・・・」

 

「おおっ、浮いてる。俺、浮いてんぞっ」

 

ほぼ全員、浮くか小さいながらも気を引き出せて見せた潜在能力に・・・・・。

それに比べて誰よりも早く宙に浮いた一佳は。

 

「一誠、こんなに早く飛べれるようになった!飛ぶって気持ちいい!」

 

鳥のようにスイスイと翼も無しに飛んでいらっしゃる。何こいつら・・・・・異世界の人間だと舐めてたよ。ヒーロー志望の少年少女だけあって空飛ぶ可能性を現実味にしちゃってるし末恐ろしい奴らだ。

 

「兵藤!見ろよこれ、気を炎に変えちゃったぜ!」

 

両手の間に灯る炎を見せ付ける切島。もう言わずにはいられなくなった。

 

「―――ほんと、お前ら成長早過ぎるだろう!アドバイスをしているからってさ!」

 

「「「「「先生の教えが良いから」」」」」

 

そう言われると・・・・・照れるっ。

 

「んまぁ、気を引き出せるようになった奴は身体の中でもコントロールできるように頑張れ。宙に浮けるようになった奴は一佳のように飛べるように、気をコントロールするようにな」

 

「実際。それってどうやるんだ?」

 

「身体の中の気を渦巻のように動かし続ける。車を動かすタイヤのようにな」

 

「わかりやすっ」

 

だけど、それが難しいんだが、感覚でできた奴もいれば頭の回転が速い奴もできる。後は慣れるまで感覚でやるしかないがな―――。

 

「お、ちょっと浮いたぞっ!?フワフワする!」

 

「・・・・・殴って良いか?イラッときた」

 

「なんでっ!?」

 

言った傍からできるなんてふざけるなって話だよ。もう少し、苦労して欲しいところだっ。

 

「―――一度中止、俺の話を聞いてくれ」

 

パンパンと意識を集める。浮遊している者は地に降り立ち、気を引き出している者はそれを中断して視線を俺に向けてくる。

 

「遠くない未来。お前らの成長具合からして俺から教えることはなくなるだろうけど、気による攻撃はあまり使用するな」

 

「え、なんでだ?」

 

「気ってのは己の活力、元気でもあり体力でもある。気を使い過ぎると体力の消耗もそれ相応に無くなって最後は戦えなくなる。だから気で戦う場合は体力のことも考慮する必要になる。まあ、気は修行や体を鍛えたりすれば自ずと自然に増えるから問題ない。だが、今身につけようとしている力は人を殺すこともできる危険性を持っている」

 

崖に向かって気弾を放って当てた。すると表面が抉れた崖を見て切島達は目を張った。

 

「あんな風に、他にも岩の塊でも破壊できる。最大は山をも破壊することも可能だ。故に気は生身の人間に当たると人体が吹っ飛ぶ。―――正直、一佳が緑谷に気を放った時は冷や汗を掻いた。一歩間違ったら相手を殺してしまう力でもある。だからコントロールが大事であることを肝に銘じてくれ」

 

息を呑む一佳を一瞥して真剣な面持ちで告げる。

 

「それでもいまの気弾ってのを知りたいなら教える。お前らが完全にコントロールできるようになってからの話だが焦らずともお前らは強くなる。自分のペースで修行を励め」

 

重々しく首肯する皆を見つめる。分かってくれるならこれ以上何も言わないでおこう。

 

「さて、それとは別に気の扱い方は他にもある」

 

全身に気を張り巡らせる。

 

「こうして全身を張り巡らせれば、打撃による攻撃を最小限に抑えられ、逆にこっちが打撃を加えるとだ」

 

近くにあった岩の塊に近づき、脚を振り回して蹴るとバカンッ!と岩が砕けた。すごっ!と驚嘆の声が聞こえる。でも、これもまた気をつけないといけない。

 

「岩を破壊できる。だが、さっきも言ったようにこれもまた相手の命を最悪奪ってしまう。気弾よりはまだマシでも心掛けて気をコントロールして扱えよ」

 

「質問いいかしら兵藤ちゃん」

 

梅雨ちゃんに反応すると、自身の舌を指摘する。

 

「それって舌も気を纏えるのかしら?」

 

「できるぞ?梅雨ちゃんの一番の武器になるなソレ。岩をも破壊できる舌って凄すぎだろ。建物を貫いて奇襲攻撃なんて事もできるわけだし、人体も貫くことも可能に・・・・・ああ、気弾もそうだからな」

 

「コワッ!梅雨ちゃんの舌、殺人舌になっちゃうのっ!?」

 

気を完全にコントロール出来たらの話しだってば。できなきゃただの頑丈な舌ってだけだし対して驚異的でもない。

 

「因みに手の数が多い障子が一番凄くなる。人体の一部を複製できるから肉弾戦じゃ俺を除いて上位に食い込むぞ。口を複製して口からビーム出すとか」

 

「口からも出せるのか」

 

「その気になれば目からでも」

 

キュインッ!と目から実際にビームを放って岩に穴を開けた。

 

「・・・・・気って、何でもありなのか?」

 

「なんでもありってわけじゃないけど、水の上を走れたりはできるかな」

 

「忍者かいっ!」

 

ニンニンッと手を組むお茶子が突っ込んでくる。

 

「走れるだけで止まれば沈む」

 

「あ、そうなんだ」

 

気の扱い方やコントロール。その他諸々とお茶子達に残りの時間まで伝授していく。

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