俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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職場体験

二日ぶりの学校に雨の中でも足をお茶子共々運ぶ。その途中、俺達は電車の中で注目を浴びた。

雄英に通う生徒もなれば、活躍すると一気に未来のプロヒーローとして期待されるようで一つだけ駅が離れていようと大人達が人気になった人間を見つけると話しかけないはずがないのだった。

 

「見ず知らずに人達から話しかけられてさ、何か緊張しちゃったねー」

 

「しばらくはこんな状況が続くかもしれないから慣れないとな」

 

「何時もクールな一誠君が羨ましいです」

 

「クールか?ただ物静かなだけかと思うんだけど」

 

学校に辿り着くまで、俺はお茶子と一本の傘の中で歩き続ける。周囲は同じように傘を差して学校に向かおうと歩いている同級生や先輩方の姿も見受けれる。そんな面々の中で二人は唯一―――。

 

「―――女の子と相合傘だなんて、ちょっとドキドキしてるのにさ」

 

である。「い、一誠君っ」と頬に朱色が散らばるお茶子を見てそんなことを言う俺は言っていることとやっていることが違うことをしていた。傘を持つ手の上を重ねるようにして触れるという行為に。

 

「手、冷たいな。肌がカサカサにならないようにしないと」

 

気恥ずかしいと俺から目を反らして降り注ぐ雨で濡れ落ちた瞬間、水の波紋が生じるコンクリートの地面に俯くお茶子であった。

 

―――1-A―――

 

「どうよ!家でも練習して炎を自在に扱えるようになったぜ!」

 

「俺は当然電気だけどな。"個性"使わず電気を扱えるなんてすげーよ気って」

 

手に纏う炎と電気を成果として見せ合う切島と上鳴を他所に芦戸は気の塊を野球ボールぐらいの大きさまで引き出していた。

 

「芦戸ちゃんの気、大きいわね」

 

「今この大きさが限界だけどね。梅雨ちゃんは?」

 

「私は身体を纏って攻撃力を増す方に頑張ってるわ」

 

障子は複製した手から引き出した気を融合させる試みをしていたり、砂藤は拳に気を纏う練習を、峰田は浮遊、常闇は黒影(ダークシャドウ)に気を纏わせれるか模索、耳朗は耳たぶのジャックを意味深に見つめていたり、瀬呂は気でテープの強度の確認、百は引きだした気を見つめ考えていた。

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

クラスメートが異様な力を身に付け、その練習をしている様子をただ見守ることしかできない緑谷達(気の修行をしていないメンバー)。

 

「おは・・・・・」

 

「・・・・・なんだこれ」

 

後に入って来た一誠とお茶子も唖然としてしまうのだった。そしてチャイムが鳴り、相澤が教室に入って来た頃には騒ぎやピタッと止み、全員着席していた。

 

「おはよう」

 

『おはようございます』

 

二日ぶりの授業が始まる。

 

「んじゃ、授業を始めるぞ。時間は有限、合理的にだ。今日の"ヒーロー情報学"ちょっと特別だぞ」

 

主にヒーローに関する法律や知識、時たまに抜き打ちテストもやらされる。ので、そう言う授業が苦手な生徒は緊張をする―――。

 

「内容は『コードネーム』。ヒーロー名の考案だ」

 

「「「「「「「胸ふくらむヤツきたああああああああああああああああああああ!!」」」」」」」

 

ヒーロにとって二つ名は「象徴」。そして羨望と名声を集めれる「広告塔」。さらにヒーローを目指す少年少女からすれば「憧れ」なのだ。幼少の頃から考えていた自分に相応しいヒーロー名がこれから先遠くない未来で本名よりも多く呼ばれ、周囲から寄せられる期待を背負う呼称として存在し続けるのである。

 

「というのも先日話した『プロからのドラフト指名』に関係してくる」

 

騒ぎ出す生徒達に煌めく赤い目で睨み、髪が騒ぎ立つように逆立ち静かな威圧が放たれる。

 

「指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2、3年から・・・・・つまり今回来た"指名"は焦態勢に対する"興味"に近い」

 

静まりかえる生徒に説明を続ける。

 

「卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある」

 

「大人は勝手だ!」

 

峰田の言葉に同意と一誠も目を細める。

 

「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」

 

「そ。で、その指名の集計結果がこうだ」

 

 

轟  4,123

 

爆豪 2,556

 

兵藤 1,989 

 

常闇 372

 

上鳴 313

 

八百万 118

 

麗日 117 

 

飯田 115

 

緑谷 91

 

峰田 20

 

瀬呂 19

 

障子 17

 

耳朗  8

 

「だー白黒ついた!」

 

「てか、兵藤が3位って・・・・・なんで爆豪が2位?」

 

「あれだろ。プロヒーローを貶したせいだろう」

 

「せっかく優勝したのに残念ですわね一誠さん」

 

「それでもあんなに多いのはオールマイトの養子としての話題ありきだろうがな。轟もそんなことだろうし」

 

指名数に唖然やショック、普通に受け入れると反応は様々。

 

「これを踏まえ・・・・・指名の有無関係なくいわゆる職場体験ってのに行ってもらう」

 

相澤から告げられる職場体験。学園側は指名されなかった生徒以外にも指名された生徒も含め、実際に活動しているヒーローの元で職場の体験を経験させようとしているのだと察する一同。

 

「お前らは一足先に経験してしまったが。プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった」

 

「それでヒーロー名か!」

 

「俄然楽しみになってきたぁ!」

 

プロヒーローの活動を同伴する。それは自分もヒーローとして現場を経験することになる。なので本名でなくヒーロー名が呼ばれることが多くなることから今からヒーロー名の考案を緑谷達が考えるのである。

 

「まァ仮であるが適当なもんは・・・・・」

 

「―――付けたら地獄を見ちゃうよ!」

 

相澤の、ヒーローらしかぬ発言に女性の声が突然遮るように聞こえた。扉の方へ一斉に注ぐ面々を他所に入って来るのは女性の教師。

 

「この時の名が!世に認知されそのままプロ名になっている人多いからね!!」

 

「「「ミッドナイト!」」」

 

何故ここに、と思う者もいる中で相澤が動く。

 

「まぁそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん。将来、自分がどうなるのか名を付けることでイメージが固まりそこに近付いてく。それが『名は体を表す』ってことだ」

 

"オールマイト"とかな。

 

相澤の発する意味ある言葉は一誠達に自分のヒーロー名はどんなものにするか、また既に考えていたと思いながら前の席から渡されるボードを手にする。

 

―――15分後。

 

「じゃ、そろそろできた人から発表してね!」

 

ミッドナイトの促しに場は緊張で走った。

 

(発表形式かよ!?)

 

(え~これはなかなか度胸が・・・・・!)

 

教卓に赴くヒーロー名を発表する第一号、青山。

 

「行くよ」

 

スッと己が考えたヒーロー名は・・・・・。

 

「輝きヒーロー『|Ican not stop twinkuling.《キラキラが止められないよ☆》』

 

「短文!!!」

 

ミッドナイトから突っ込み―――。

 

「そこはIを取ってCan’tに省略した方が呼びやすい」

 

「それねマドモアゼル」

 

訂正かよ!英語が仏語かどっちかにせいと思わずにはいられない中で嫌な予感を覚える一同。

続いて芦戸が一世一代となるヒーロー名を披露した。

 

「じゃあ次アタシね!リドリヒーロー、エイリアンクイーン!」

 

「2!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!!」

 

「ちぇー」

 

(((((バカヤロー!)))))

 

この瞬間、一誠達の心が一致した。

 

(((最初に変なの来たせいで大喜利っぽい空気になったじゃねぇか!!)))

 

誰も笑わす為にヒーロー名を考案している訳ではない。のに、真面目であるはずの発表会がおかしな雰囲気に・・・・・。

 

「次も変なヒーロー名だったらこの空気を簡単に変えられないぞ」

 

懸念する一誠は口に出すほど今の状況を好ましくないと感じていた。そして緊迫する妙な状況下の中、スッと挙手して名乗り上げる少女が。

 

「ケロ、じゃあ次、私いいかしら」

 

「梅雨ちゃん!」

 

彼女が教卓の前で皆に書いたヒーロー名を見せた。

 

「小学生の時から決めてたの。梅雨入りヒーロー、FROPPY(フロッピー)

 

「カワイイ!親しみやすくて良いわ!」

 

ミッドナイトも絶賛。

 

「皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」

 

(((ありがとう梅雨ちゃん(フロッピー)。空気が変わった!!)))

 

清涼剤とばかりに空気は皆が心から安堵で発表会ができるほどまで一変した。

この機に乗じて他の皆もヒーロー名を次々と発表する。

 

切島鋭児朗 剛健ヒーロー 烈怒頼雄斗

 

耳朗響香 ヒアヒーロー イヤホン=ジャック

 

障子目蔵 触手ヒーロー テンタコル

 

瀬呂範太 テーピンヒーロー セロファン

 

尾白猿夫 武闘ヒーロー テイルマン

 

砂籐力道 甘味ヒーロー シュガーマン

 

芦戸三奈 エイリアンクイーン改め ピンキー

 

上鳴電気 スタンガンヒーロー チャージズマ

 

葉隠透 ステルスヒーロー インビジブルガール

 

八百万百 万物ヒーロー クリエティ

 

轟焦凍 ショート

 

常闇踏陰 漆黒ヒーロー ツクヨミ

 

峰田実 グレープジュース

 

口田甲司 ふれあいヒーロー マニア

 

 

「『爆殺王』」

 

爆豪勝己のヒーロー名はヒーローらしい名前とは遠く離れていた。

 

「そういうのは止めた方がいいわね」

 

「なんでだよっ!」

 

二人のやり取りに一誠がポツリ。

 

「寧ろ爆豪は『ボンバーマン』か『バクマン』の方が"個性"と性格が相まってピッタリじゃないか?」

 

「あー、言えてる!(上鳴)」

 

「よっ、ボンバーマン!(切島)」

 

「んだとテメェ兵藤コラッ!テメェらも何言ってやがるっ!」

 

「そうね。それ、採用としましょう」

 

「ふざけんなぁあああああああああっ!?」

 

「「またかぶった(砂藤&尾白)」」

 

爆豪勝己 本人否認 ボンバーマン

 

「じゃ私も・・・・・」

 

お茶子も立ち上がり、照れながらヒーロー名を発表。

 

「考えてありました」

 

麗日お茶子 ウラヴィティ

 

「シャレてる!」

 

殆どヒーロー名を発表を終えたがまだ発表していない生徒はいた。

 

「思ったよりずっとスムーズ!残ってるのは飯田君、兵藤君、そして緑谷君ね」

 

「おい!俺は認めてないからなっ!」

 

「・・・・・んじゃ、俺」

 

兵藤一誠 ドラゴンヒーロー 天龍

 

「「「「「あれ、天使長じゃないの?予想していたのに」」」」」

 

「ふざけんなよお前らっ」

 

後に緑谷と飯田も「デク」と「天哉」というヒーロー名で発表会はようやく終えた。

 

その頃―――――職員室では、四角い顔の教師(プロヒーロー)、セメントスのデスクのパソコンにとあるヒーローから指名が来ていた。

 

「あれ、一年の指名。今頃来てますね一名」

 

傍にいた骨と皮だけのような超細身で、窪んだ眼窩の奥から窺える水色の眼の男、反応するオールマイトにセメントスは教えた。

 

「緑谷くんと兵藤君に来てますよ」

 

「―――――!へえ!!どれどれ・・・・・・」

 

今頃でありながらもオールマイトにとって指名された二人は深い関係がある。どんなヒーローが指名したのか横からセメントスのパソコンを覗き込んで把握しようとした気持ちは。

 

「――――――!!!!!この方は・・・・・・!」

 

今までオールマイトに緊張を抱かせた事がなかった。その筈なのに指名したヒーローの名を見て窪んだ眼窩の奥に窺える水色の眼が大きく見開いたほど、オールマイトの中で緊張が走った。

 

 

―――授業後。

 

「職場体験は一週間後。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から自分で選択しろ。指名のなかった者はあらかじめこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件。この中から選んでもらう。それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる。スペースヒーロー13号のような対(ヴィラン)ではなく主に事故・災害などの人命救助のようにな。よく考えて選べよ。ただし今週末までに提出しろよ」

 

「あと二日しかねーの!?」

 

相澤先生からリストを百と受け取る。全員分のリストが配り終えると二人は教室からいなくなった。

 

「・・・・・1000人以上のプロから指名されると名前を見るのも億劫しいな」

 

「多ければ良いという訳ではないということですわね。一誠さん、どんな方々から指名されてますの?」

 

「パッと見、見たことあるのとないのと混ざってる。でも、その中じゃ一番有名なヒーローが何人か指名されてる。轟の父親とかベストジーニストとか」

 

「では、そのお二方のどちらかを?」

 

んー、どっちでもいいんだがな。特にこれといったヒーローはいない。

 

「そう言う百はどこに行くか決まった?」

 

「スネークヒーロー、ウワバミさんの事務所から指名されていましたの。彼女のところでも参ろうかと思いますが」

 

「スネークヒーロー?」

 

眉根を寄せて、スネークヒーローの情報を思い出す。

 

「彼女って確か、テレビCMの撮影で引っ張りダコだったよな?そんなヒーローの事務所に行ってヒーローらしい活動を体験できるか怪しいぞ。逆にCM出演させられそうだ」

 

「CM撮影・・・・・」

 

行く場所を間違えては本末転倒。ちゃんと外見だけでなく中身も見据え、しっかりと間違わないよう選択しなければならないからな。

 

―――昼休み―――

 

「うしっ!もういっちょ練習でもするかな!」

 

そう言うと同時に両手から気を引き出した切島に一佳と塩崎を迎えに戻ってきた眉根を寄せる一誠。

 

「練習するのはいいが、狭い教室の中でできるのは限られてるからあんま意味ないぞ」

 

「そうかぁ?でも、兵藤の家じゃないと確かにできない修行もあるよなぁ」

 

「そうね。兵藤ちゃんのトレーニングルームは凄いもの」

 

思い浮かべるトレーニングルームの光景。身近で手軽に修行をできる環境はそうそうにない。

プロを目指すヒーロー志望の生徒からすれば絶好の修行空間なのだ。

 

「休みの日になる度に修行を目的に来るんだからなお前らって。一日しかない休日をもっと友達として娯楽的なこともしたいと思う時もあるぞ俺は」

 

「あはは・・・・・」

 

「すまん」

 

ジト目で切島達を見つめる一誠に申し訳なさから来る苦笑いと罪悪感。毎度毎度一誠の家に押しかけては修行と、スポーツジムに通っている感覚な気分でいる者達に一誠は思うところがあったようだ。

 

「切島君達、昨日も兵藤君の家に?」

 

「ああ、空を飛ぶ技法を教えてくれと頼んだからな。そんで俺達、まだ飛ぶ事はできてないけど浮く事はできるようになったんだぜ」

 

峰田が宙に浮いたのは一誠からまた別の修行を受けていたからなのだと緑谷は悟った。

 

「技法であり必殺技じゃない。故に移動手段が増えただけに過ぎないからな」

 

「空を飛ぶって個性とか装備じゃないとできないことを、関係なくできるから凄いよね!」

 

興奮したように持参した弁当を食べている葉隠は称賛の声を発する。

 

「空飛ぶってのは恰好いいもんな、俺、コスチュームにマントも付け加えようかな」

 

「・・・・・いや、上鳴は止めた方が良い」

 

「えっ?何でだよ?」

 

「許容オーバーしたらお前アホ顔になるだろう。しかもそれがマント付きだったら・・・・・くくっ」

 

「ブフッ!」

 

笑いをかみ殺す一誠に耳朗も噴いた。他の面々も「あー」と感じで悟った。故に何とも居た堪れない上鳴は顔に影を差した。

 

「止めて一誠。ウチ、ウェイな上鳴は笑っちゃう・・・・・」

 

「―――ほう?」

 

一誠は何を思ったのか、邪な笑みを浮かべた。あ、嫌な予感がすると一誠の修行を体験した緑谷達は瞬時で察する時。まるで忍者のように指を構えた一誠がその場で光に包まれる。それはたったの一瞬で、光が消失すると一誠は―――鏡合わせのように上鳴電気の姿になっていた。

 

「お、俺?」

 

愕然と目を見開く上鳴の顔で一誠は・・・・・・顔を許容オーバーした際になるアホ顔を浮かべ出した。

 

「うぇい?うぇうぇうえーい!うぇい!(略:どうだ?俺はこんなこともできるんだ!イエーイ!)」

 

「ツボッボフォー!?」

 

堪らず四つ這いになって全身が痙攣するほど笑って震える耳朗。緑谷達も完全なる上鳴の姿となった異性に唖然屋驚愕する対象的に、上鳴は物凄く複雑な表情を浮かべていた。

 

「・・・・・自分のアホ面を見せられると何とも言えない気分となるから止めてくれ」

 

「ふぇい」

 

一瞬の光がまたしても一誠を包み、元の姿に戻った一誠は口の端を吊り上げる。

 

「いやー、人をからかったり驚かせたりするのはやはり面白いな」

 

「兵藤、他人の姿になれるのかよ・・・・・」

 

「なれるだけであって、そいつ自身になることじゃない。故にそいつの"個性"も使える訳じゃない」

 

「なるほど。じゃあ、オールマイトにもなれるんだ?」

 

「というか、ここにいる全員にもなれる。当然女子もな」

 

やってみせようか?と指を構えた一誠に危機感を覚えた女子達が一斉に飛び掛かった。真後ろからも一誠を取り押さえようと動き・・・・・それから改めて昼食を臨んだのであった。

 

―――俺が来た!(by砂籐)―――

 

放課後。

 

全ての授業が終わり外では既に夕焼けで朱色に染まり切っていた時間帯。部活をしている部員以外、生徒達は各々と帰る頃、ヒーロー科に所属している一誠達もまた帰宅の準備をしていた。

 

「一誠君、帰ろ」

 

「ああ」

 

一誠の家で同棲をしているお茶子からの誘いに異論など微塵も無いと肯定する言葉を発する一誠。

そんな二人に「くっ、このリア充め・・・・・・っ」と血の涙を流さん勢いで悔しそうに見ていた峰田を他所にして緑谷は扉に手を掛けて横に開けたと同時に。

 

「わわ、私が独特の姿勢できた!!」

 

「ひゃ」

 

凄まじい勢いをまるで車のように急停止、キキイイイッ!という効果音が聞こえるほど二つに分かれてピンと兎のように天へと伸びた前髪が横に揺れ動くぐらい教師あるまじき行動、廊下を走って来たのだろう。上半身を前に折り、両拳を握って肘も折った独特的な姿勢で緑谷の前に現れたどこか緊張の面持ちのオールマイト。

 

「ど・・・・・どうしたんですか?そんなに慌てて・・・・・」

 

「ちょっとおいで」

 

あ、よかった兵藤少年もいた君もおいで。と誘われる一誠も緑谷と一緒にオールマイトの背中を追い掛けるように歩く。

 

「君達に指名が来ている!」

 

「「?」」

 

指名?と不思議そうに顔を見合わせる二人を緊張の色を浮かべている顔で二人に指名したヒーローを説明した。

 

「その方の名はグラントリノ―――。かつて雄英で一年間だけ教師をしていた・・・・・私の担任だった方だ。ワン・フォー・オールの件もご存じだ。むしろそのことで緑谷少年に声を掛けたのだろう」

 

「そんな凄い方が・・・・・!っていうか"個性"の件知っている人がまだいたんですね」

 

「・・・・・!」

 

驚嘆する緑谷と何か気付いたように反応する一誠。

 

「グラントリノは先代の盟友・・・・・とうの昔に隠居なさっていたのでカウントし忘れていたよ・・・・・」

 

そう言うオールマイトの―――全身が。

 

プルプルプルプルプルプルプルプル・・・・・・・ッ

 

「あえてかつての名を出して使命をしてきたということは・・・・・怖ぇ怖ぇよ」

 

((オールマイトがガチ震いしている!!))

 

「とにかく・・・・・緑谷少年を育てるのは本来私の責務なのだが・・・・・せっかくのご指名だ・・・・・存分にしごかれてくるくく・・・・るといィいィィ・・・・・・ッ!」

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッ!

 

(どんだけ恐ろしい人なんだ―――――!?)

 

(興味あるな。オールマイトの師匠)

 

まだ決めていない緑谷はこの後、全身を更に震わすオールマイトに勧められてオールマイトの師、グラントリノというヒーローのところへ第一希望体験先に記入した。

 

「ど、どんな人なんだろうね兵藤君・・・・・すんごい緊張して来ちゃったよ」

 

「まあ、今の緑谷はそれなりに"個性"を扱えるようになったんだ。俺やオールマイトの他にも違った指導をしてくれると思うからいい経験になるのは間違いないだろう」

 

「え、兵藤君・・・・・グラントリノのところに行かないの?」

 

「・・・・・いや、まだ決めるのは性急と思っているだけだ」

 

しかし一誠は、グラントリノではなくオールマイトをライバル視しているエンデンヴァー事務所に体験先として希望した。

 

 

―――職場体験当日。

 

「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」

 

「はーい!」

 

「伸ばすな『はい』だ芦戸。くれぐれも失礼のないように!じゃあ行け」

 

俺達1-A組の生徒一同は駅内でそれぞれ体験先がある地域へと向かう。

 

「一誠さん、頑張ってくださいね。不要な気遣いかと思いますが」

 

「いや、そこは気遣ってくれないか?寂しいぞ俺」

 

片手を上げる俺の仕草に最初は首を傾げる反応を示す百だが、意図を察してくれたようで同じように片手を上げて、お互いの手がパチンッと叩き合う。

 

「お前も頑張れよ」

 

「はい」

 

「兵藤!俺も俺も!」

 

切島も自己主張してくるので同じように手を叩きあった。そして既に背を向けて俺達から離れて歩いている爆発頭のクラスメートに声を掛けた。

 

「おいボンバーマン。体験先にでも(ヴィラン)級の発言をするなよ。あと、爆破で物壊すなよ」

 

「ざけんなっ。誰がボンバーマンだ!」

 

「「「ボンバーボンバー(上鳴&瀬呂&芦戸)」」」

 

「ブッ殺すぞテメェラ!」

 

(またかっちゃんがイジられてるっ。本当に信じられない光景だ。流石雄英・・・・・!)

 

それからクラスメート達と一言二言と言葉をかわし合い、

 

「エンデンヴァー、ナンバー2のヒーローとしての実力と判断力を拝見させてもらおう。よろしくな轟」

 

「・・・・・お前、それを目的で選んだのか」

 

「お前だって似たようなもんだろう」

 

「・・・・・まあな」

 

轟と共にエンデンヴァー事務所がある場所へ赴く―――。

 

 

 

その日の内―――俺と轟は目的地がある地域に辿り着き事務所の玄関先を揃って踏み込んだ。

 

「おォ、よく来てくれた」

 

ズンと近づいてくる巨躯の体に炎を纏っている燃焼系ヒーロー・エンデンヴァー。そして他にもプロヒーローが出迎えてくれた。

 

「君とは初対面だったな。俺がエンデンヴァーだ。体育祭での君の活躍を見させてもらった。オールマイトの養子になれる素質があるだけあって素晴らしい複数の"個性"だ」

 

素質つーか、死者蘇生っていう希少な個性を知られない為の保護目的なんだがな。

 

「ウチの焦凍共々、ヒーローとはなんたるかこの一週間知ってもらう。しっかり俺の姿をその目で焼き付けるように」

 

「そのつもりでここを選んだので望むところです。よろしくお願いします」

 

片目を真っ直ぐエンデンヴァーを見返す。日本のヒーロー界でもっともオールマイトよりも越える事件最多数の保持者。並のヒーローでは到底ナンバー2まで昇り詰めることはできない功績。俺の世界でも様々な凄い存在達を見てきた。さて、この人は俺にどんなことをして見せてくれるのだろうか。

 

「・・・・・」

 

しばし俺を上から見つめるエンデンヴァーは背を向けてプロヒーロー達に告げる。

 

「今世間で話題になってる保須で姿を現したヒーロー殺しを捕える。奴が現れた地域は最低でも四人以上主にヒーローを襲っている。だが、奴が現れてからまだ一人しか襲ってない。前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる。しばし保須に出張し活動する!!市に連絡しろぉ!!」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

ヒーロー殺し・・・・・なるほど、ここを選んで正解だったかな。

 

―――東京・保須市

 

貯水タンクの上に乗っている者がいた。全身に刃物、注目するは背中に刀を装備していることだろう。血のように赤いマフラーのような布を巻き、目元にも白い布を巻いている。その者の目は雄英体育祭で1位の表彰台に立つ轟と一誠の姿が載せられた新聞の写真に見つめていた。

 

『オールマイトの養子こと兵藤一誠。プロヒーローの在り方に否定する』

 

と大きく記された文字を見て深い笑みを浮かべた。

 

「ハァ・・・・・こいつは良い」

 

嬉しそうにヒーローを否定する理由を詳細された内容を見つめる。

 

「俺の思想と理想を理解してくれる同志が現れた。これほど嬉しいことは他にない」

 

舌で唇を舐め、その目に狂喜の色が孕む。

 

「オールマイトの養子、兵藤一誠。ハァ・・・・・ならば見ていろ。いつか必ずお前が望む正しき社会に変えて見せる」

 

新聞を手から話し、吹く風でどこかに飛ばされる前に抜いた刀で、肉眼では捉えきれないほどの速さで細切れにした。

 

「同じ『信念』を持つ者同士。何時かきっとどこかで出会うだろう。もしもその時が来れば―――――」

 

人気のない路地裏に入り込んだヒーローらしき人物に視界が入り、その者はタンクから躊躇も無く飛び降りた。

 

「殺し合おうじゃないか」

 

背中の刀の柄を手にして素早く鞘から抜き放ち、

 

「死ね贋物。全ては正しき社会を取り戻す為の供物としてな」

 

ザシュッ!

 

『二人目』の被害者を増やしたのであった。

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