俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

2 / 37
旅先は出会いと別れ事件だらけ(1)

その日の内に神奈川県に辿り着いた俺は早速川神市―――がある筈の場所に赴いた。

光景が違っても何かが似ていたり同じだったりするだろうと考えで向かっていれば・・・・・。

 

「・・・・・差異があるけど、似ている方かな・・・・・」

 

川神市ではなく川崎市だった、川神院が川崎大師だった・・・・・ははは・・・・・。

 

「なんだよそれ・・・・・これがこの世界にとって当たり前なのか」

 

多馬大橋の鉄骨の上で苦笑いを浮かべ、何だか期待していた俺がむなしくなってきた。

 

「・・・・・皆のところに帰りたい」

 

『主・・・・・』

 

もうホームシックな状態だ。こいつらもいなかったら俺は孤独だったぞ。ああ・・・・・なんだろう。

 

「お前らの存在が物凄く有り難くなってきた」

 

『あ、主。我らは何時も傍にいますから元気を出してください』

 

「おう、元気出す」

 

確認はできた。やはり俺は異世界に来たという認識も改めて認知した。さて、さっそく軽く朝食でも―――。

 

「きゃあっ!」

 

「『・・・・・』」

 

甲高い悲鳴がどこからか聞こえた。声がした方へ視線を向けるとワゴン車に制服を着た女性を二人ほど半ば強引に入れてこの場からいなくなるように逃走していく様が・・・・・力を引き寄せる特性があるからって、事件を起きるのは俺のせいじゃない、よな・・・・・?

 

『・・・・・何とも言えません』

 

そこは否定して欲しかったぜ!

 

 

「おおっと、個性は使うなよ?使う気配を感じた瞬間、お友達の頭に風穴があけちゃうぜぇ」

 

「おい、さっさと手錠を掛けろよ。せっかく選り抜きで見つけた商売品が逃げられたら堪ったもんじゃねぇ」

 

「分かってるよ」

 

後部座席に誘拐した二人と誘拐を行った三人の男、前部座席に二人の男。

 

「てか、本当にこの女でいいのか?髪に棘があるぞ」

 

「可憐な花に棘ある女はイイ女だって言ってるだろ」

 

「それ、お前の好みの話じゃなかったか?」

 

「どうだっていいだろ。俺達はボスの為に動いているんだ。あの人がいたから今の俺達がいる」

 

「・・・・・だな、あの人の為に俺達が」

 

誘拐犯らが意味深な発言をしているが誘拐された女性達は手足を拘束され身動きもできず、どこかへ人身売買をされ一生自由のない人生を送らされる絶望と恐怖に怯える女性と対象的に。

 

(神よ・・・・・どうか私達をお救いください)

 

棘のついたツル状の髪を指摘されたもう一人の女性が手を合わせて神に対して祈願する。友人を盾にされ個性を使えない今となってしまっては神に祈ることしかできない―――そんな時だった。ドンッ!と車の天井部分から鈍い音が生じた。

 

「な、なんだっ!?」

 

そして更に不思議なことが起きる。車がゆっくりと宙に浮き空へと走り出したのだ。それは前部座席にいる二人と後部座席の窓際にいた二人が理解して心底仰天した。

 

「ど、どうなってんだこりゃあああああああああっ!?」

 

焦り、戸惑う誘拐犯達の目の前にそれが現れる。巨大な生物の目玉がギョロリと車内を覗き込むことで車内に悲鳴が飛び交い、委縮する誘拐犯と女性達の真上、天井に一筋の軌跡が走った直後に切り取られた板のように剥がれ、神々しく眩い光が車内に差し込んだ。

 

「―――もう大丈夫だ」

 

宙に浮くその人物は・・・・・黒い眼帯を右目に付けた天使。

 

「俺が来た」

 

天使の背後にも天使の翼を生やす金色で神々しい光を放つ巨大な生物ことドラゴン。一人と一匹にツル状の髪の女性は瞬きをすることも忘れて食い入るように見つめた。

 

「神の御使い・・・・・」

 

―――私が来ました(by塩崎)―――

 

「これでよしっと」

 

誘拐犯を捕まえ、広い場所に移動し一纏めに縛りあげた。誘拐された二人の女性を無事に救出し一件落着。

天使化を解いて二人に振り返ると―――。

 

「あ、あなた・・・・・オールマイトの養子!?」

 

「・・・・・仕方がないとはいえその認識はどうかと思うぞ。俺は兵藤一誠って名前があるんだ」

 

「え、あ、それはごめんなさい・・・・・でも、どうして神奈川に?」

 

「全国を旅することになったんだ。その最初がココ神奈川にした訳」

 

ポカンと開いた口が塞がらない女性から視線を反らし誘拐犯へ意識と共に向ける。

 

「さて、こいつらを警察署にまで送り届けるか。その後はお前達の学校にでも送ろう」

 

「あ、ありがとう・・・・・ヒーローじゃないのに助けてくれて」

 

「ヒーローの資格が無くても人は誰でもその人の心の中のヒーローになれるさ。俺はそれを目指してもいる」

 

再び天使化となって行く準備をする。

 

「それじゃ、早速―――」

 

「ま、待ってくれっ!?」

 

警察のところに届けようとした矢先に犯人から待ったが掛かった。

 

「なんだ?言い訳は聞かないぞ。お前らは罪を犯したんだからな」

 

「それについては否定はしねぇ。でも、俺達は独断で動いていたんだ!ボスには関係ない!」

 

「お前らの親玉も(ヴィラン)だったら関係はあるじゃないか?」

 

「ちげぇっ!確かにボスは極道の長を務めているが、ゴミみてぇな俺達を心から笑って拾ってくれた恩人なんだ!そんな人に俺達は救われ、俺達はボスの為に・・・・!」

 

「お、おいお前っ!?それは―――!」

 

言っていることがなんだか支離滅裂。やっていることは変わりないからそのボスとやらもいずれ捕まるのが必須、

 

「そんなボスに不治の病で倒れた娘がいるんだ!」

 

「・・・・・?」

 

「不治の病を治す個性を持っている人間は日本にはいないし、治すにしても膨大な金が必要だ!しかも外国でなきゃ治せない・・・・!だから、俺達は独断で金を稼ぐことにしたんだ。例え他の奴らの人生を滅茶苦茶にしても俺達は恩を報いたい一心で・・・・・!」

 

ガバッと拘束された状態で俺に向かって前屈みになり、必死に乞うてくる。

 

「頼む!俺達を最後にボスの顔を見させてくれ!そしたらすぐ豚箱へ連れて行っても構いやしねぇから!」

 

「・・・・・」

 

さて、どうしたものか。(ヴィラン)に情けを掛ける必要もないけど、ここまで必死になられると・・・・・。

 

「兵藤さん、この方達の願いを叶えてください」

 

「え?塩崎さん?」

 

「この方達の思いは本物だと感じ伝わりました。やり方は間違っていますが、根っから悪い方ではないようです」

 

塩崎と呼ばれた髪がツル状の女性は俺に熱意が籠った視線を向けてくる。

 

「・・・・・優しいな。相手は(ヴィラン)だぞ?情けは不要だと思うが」

 

(ヴィラン)でも誰かの為に行ったのであれば情けも掛けてあげることも大切です」

 

「恩を仇で返されることは考えないのか?」

 

「それでも私は人を信じます。この方達は優しさを持っていますから」

 

そう言って俺の隣を通り過ぎ、あろうことか鎖を解こうとする。ジッとその作業を見つめる俺に今まで沈黙して待機していた金色のドラゴン、俺の家族の一人『メリア』が話し掛けてきた。

 

『あの者と似た性格と優しさですね主よ』

 

「・・・・・」

 

沈黙で肯定する。慈悲深いところは確かに・・・・・世界が違えど、相手を思いやる人間はいるのか・・・・・。

 

『どうしますか主。主のことですからもう分かり切っておりますが』

 

「だったらその楽しそうに笑うのは止めてくれないか?」

 

『ふふ・・・・・これは失礼』

 

口角を上げているメリアはそれでも笑みを浮かべ続ける。この後俺がどういった行動をするのか言った通り分かり切っているんだろう。

 

「・・・・・分かったよ塩崎とやら。そいつらの願いを叶えてやる」

 

「兵藤さん・・・・・」

 

「気になることも言われたし、もののついでに不治の病も治してやる」

 

「な・・・・・なんだとっ」

 

「言っておくが、お前らの警察行きは確定だから。お前らの為じゃない、俺に願ってくるマリアのように優しい少女と病で苦しんでいるお前らの恩人の娘がいることを知ったからだからな。俺の個性は不治の病をも治せる力がある」

 

絶句する誘拐犯達を縛っている鎖が勝手に砕け散る様子を一瞥してメリアの手の平に乗る。

 

「乗れ。お前らのボスのところに案内してもらうぞ」

 

面々に振り返り、催促する。オールマイト、俺の言動は間違っているかな?個人的に俺は反省するつもりもないけどな。

 

 

 

「兵藤さん、お優しいお方ですね」

 

「なんだ急に」

 

「思ったことを口に出したまでですわ」

 

事件に巻き込まれた二人を学校へと送っている最中に塩崎からそう言われて怪訝な面持になる。

 

「本当に不治の病を治すとはすばらしい個性です」

 

「俺はできないことを口にしない性格だ」

 

数分前に遡るが、ボスとやらの家に誘拐犯を連れて、直接そのボスと誘拐犯達に慕われている男と話し合い、まだ小学生の幼い娘を面々の目の前で治した。元気になった娘を見てボスは物凄い男泣きをし、そのまま俺に対して土下座をしてくるもんだから驚いた訳だが、誘拐犯達の件は曲げるつもりはない。処遇を説明をするとボスは誘拐犯達を殴ったり叩いたりした後、

 

―――またお前らを笑って出迎えってやるから罪を償って来い馬鹿野郎共がっ!!!!!

 

と、まあ、心が広くて男気のある男だったと感想を抱いた。

 

「きっと、あなたを深く感謝していますよ」

 

「・・・・・あんな笑顔で出頭する犯罪者は初めて見たよ」

 

「人の心を笑顔にさせるのもまたヒーローの務めかと思います」

 

オールマイトと似たようなことを言うなこの少女は。

 

「ヒーローを目指しているのか?」

 

「ええ、来年の春にヒーロー科へ入る為に雄英を受けるつもりです」

 

「私もだよ。君は?」

 

「さあ、どうだろうな。先のことはまだ考えちゃいない・・・・・あの学校でいいんだな?」

 

眼下を見下ろせば学校の施設が視界に入る。脇で抱えている二人の首が肯定と縦に振り、真っ直ぐ学校へと舞い降りた。

 

「兵藤さん・・・・・これは助けてくれたお礼です」

 

地面に着地した最中、塩崎が両腕を伸ばし、手が俺の頬を添えると顔を寄せ、

 

「ちゅっ」

 

・・・・・何故か、俺は彼女に口付けをされた(頬だけど)。俺ももう一人の女性が目を張って硬直するほど心底仰天した。俺と唇を交わす塩崎がほんのりと顔を朱で染め、潤った瞳で熱い吐息を漏らしながら口にした。

 

「神の御使いにお礼を捧げねばいけません。その、身も心もあなたに・・・・・」

 

「はいはい!さっさと先生に事情を説明しないといけないから行こう塩崎さん!兵藤君、私達を助けてくれてありがとうね!―――彼女の話しは戯言だと思って頂戴ねぇ!」

 

塩崎を連行するもう一人の女性が物凄い勢いで行ってしまう中、「戯言とは酷いですっ。私は本当に心からそう望んで―――!」「ここで赤裸々な話をするんじゃない!」等々言い合いが聞こえてくる。

 

『・・・・・やはり、万国共通もとい世界共通我が主の魅力は凄まじいことも変わりないか』

 

「無自覚で落としたのか俺は・・・・・」

 

『彼女の主に対する想いが限界値に達したのではないでしょうか』

 

『神に対する信仰があったようだ。主が天使の姿で助けたのが原因ではないか?』

 

・・・・・ああ、あの時か。

 

―――俺が来た(by一誠)―――

 

神奈川に来て最初の事件を解決して数時間。

 

「強盗が逃走して民家に立て籠もったぞー!」

 

「キャー!ひき逃げぇー!」

 

(ヴィラン)が暴れている!誰か早くヒーローを呼べ!」

 

 

「大丈夫だ。俺が来た」

 

 

一日で数件以上も事件を解決してきた俺だが・・・・・この世界はこうも頻繁に事件や騒動が起きるものなのか?俺の世界の方がまだ可愛い方だぞ。

 

「しかも・・・・・皆弱い」

 

神器(セイクリッド・ギア)の所有者達もまた強さは様々だ。きっと強い「個性」という力を宿した者と出会えるさ』

 

『ていうか、俺も戦わせろや!』

 

《オイラも出させて欲しいぃぃぃっ!》

 

『貴殿らは無理だろう』

 

『我らの中で一番の問題児であるからな。そう易々と現世に召喚は無理がある』

 

『無理無理』

 

・・・・・まったくお前らが騒がしいと暇を感じさせないな。そこがいいんだがさて・・・・・。

 

「もうすぐ日が暮れる。寝床の確保でもするかな」

 

空は朱に染まり切って夜に成ろうとしている。同時に人々が活発化するように犯罪を行おうとする(ヴィラン)も動きだす筈―――。

 

 

「おい、火事だってよ!中華街でものすげぇー勢いで周囲が火の海と化しているって!」

 

「マジかよ!何だってそんなことに!?」

 

「食い逃げした(ヴィラン)が炎の個性で腹いせに周囲の建物に放火したって話だ!」

 

・・・・・。・・・・・。

 

「行くか」

 

 

横浜中華街は身勝手な(ヴィラン)の愚行で直径一キロ以上の火災が多数発生していて人々は逃げ惑うことで、己の身の安全を守る為に燃え盛る施設から遠ざかるのに夢中で。

 

「た、助けて・・・・・」

 

火災に巻き込まれ建物の中に閉じ込められた人々がいることを気付かない。火の手と黒煙が直ぐそこまで迫っていて助けを求める声も―――。

 

「もう大丈夫だ」

 

一人の少年以外届かなかった。

 

「俺が来た」

 

燃え盛る火のように赤い長髪に黒い眼帯を右目に付け、左眼から強い意志を窺わせるただ一人の少年が助けを求める人々を火災から救いあげた。

 

「・・・・・」

 

道路の方では天使化となっている一誠が安全な場所で神々しい光のドームを張り、運ばれる負傷者達の傷をドームの中で癒しているその光景は、取材にしに来た報道陣達のカメラに捉えられていた。

 

「ご覧下さい!次々と運ばれてくる負傷者を瞬く間に癒していきます!姿はまるで天使です!プロヒーローの人でしょうか、私はあの綺麗な姿になれる個性を初めて―――あ、またアレです!出ました!」

 

天使の姿をした少年達が突如発現した幾何学的な円陣の光と共に複数の負傷者を連れて姿を現した。

 

「首尾は?」

 

「八割ぐらいだな。終われば後は火を消すだけだ」

 

「了解。引き続き救助に加えて火災を鎮火してくれ」

 

負傷者を光るドームの中に入れ、傷が癒えた人々をドームの外へと出し終えると忍者のように凄まじい跳躍力で火災現場へと向かう少年達。それから三時間後、横浜地域圏内で巨大な幾何学的な円陣が空に浮かび豪雨を降り注いだ。瞬く間に沈下していく火の海は完全に消え無くなり、あろうことか雨の中で燃えて崩れたり壊れた施設や建造物が蜃気楼を目の当たりにしたと思うほどに元通りとなっていく光景を人々は絶句する。

 

「ついでに(ヴィラン)の確保もしておいた」

 

「え、あっ」

 

「じゃ」

 

夜空へと飛翔していなくなる天使。残された人々はあれは何だったんだろうかと茫然として佇むが後に知ることになる。オールマイトの養子、兵藤一誠だったことを。旅の第一歩、神奈川県での事件解決は養父となったオールマイトの耳にも届く。

 

「A-HAHAHA!さっそくやるじゃないか一誠!それこそ私の息子だよ!さあ、一年間もその調子で頑張りたまえよ!」

 

『おう、頑張るよ』

 

「で、次はどこに行くのかな?」

 

『千葉だ』

 

 

「お母さん、見た?この子。まだ私と歳が変わらないってのにもうプロヒーローみたいなことをしちゃってるよ」

 

「オールマイトの養子の子でしょ?凄いわね。テレビも新聞もこの子とオールマイトで持ちきりよ」

 

「うん、そうみたいだね。天使になれる個性かぁ、一度でいいから会ってみたいな」

 

「あら、そしたらサインを貰いなさいよ。ついでにあんた自身もお嫁さんとして貰ったら?」

 

「ちょっ、何言ってんのお母さん!まだ早すぎだってばっ!」

 

「ツバでもつけときなさいって意味よ。あんた、男勝りだから嫁の貰い手も考慮しなさい」

 

「・・・・・なんだよそれ」

 

 

―――私が来たよ(by拳藤)―――

 

 

「まったく・・・・・お母さんは気が早いんだよ」

 

拳藤一佳(15)。茶髪でサイドのポニーテールにしている植蘭中学校三年生。雄英高等学校の進学希望者の一人。家を後にして残された学校生活を送る為に在籍している。朝日に照らされつつ歩く彼女のサイドポニーテールは緩慢的に揺れ、自分の母親の発言に呆れていた。

 

「まあ、会えるなら会いたいけどね」

 

会うことは満更でもない少女の全身に心地のいい風が撫でるように通り過ぎる。その風に一佳は頬を緩めた。いい風だと蒼い空を見上げて今日も変わらない一日を過ごす―――と当たり前のように変わらない空を見て悟る。

 

「それにしても・・・パトカーのサイレンの音が聞こえるなぁ。(ヴィラン)でもどこかいるのか?」

 

遠くから聞こえる警告音はパトカーの存在を証明しているのと道理。けたたましいパトカーの音が聞こえるとなると(ヴィラン)と遭遇している可能性が高いと判断した一佳は巻き込まれないよう急ぎ足で学校へ赴こうとしたが不意に飛行する天使の姿が突如として目の視界に飛び込んできた。

 

「・・・・・」

 

のんびりと空飛ぶ楽しさを満喫しているのか速くない速度でどこかへ飛んで行く―――。

 

「マ、マジでっ?」

 

思わず零した驚きの声の次は足が自分の意志と反して駈け出した。追いかけたら間違いなく遅刻するが、今話題の人物がこの千葉にいることを知って居ても立ってもいられない。空飛ぶ天使を見失わないように顔を上へ向けつつ駈け出す一佳。対して天使は一佳の存在に気付かず空を飛び続けるが急に降下し始めた。

 

(あそこは確か、公園がある場所・・・・・)

 

休憩でもするのか、一佳は思いもしない出会いに若干緊張と興奮で天使と出会える喜びが顔に出ることを隠さず、走る速度を上げて公園の入口に突入する。一佳が入った公園は敷地がとても広く森林が多く生えていて、森林が生えている場所とは別に遊具は広い所で設けられている。ちょっとした芝生もありそこで寝転がって仮眠をとることもできる公園。天使がこの公園に降り立った可能性を賭けて、公園の中を彷徨うように探し続けること三分。太陽光を浴びるように芝生の上で―――金色の六対十二枚の翼を背中から生やしたまま瞑目して横たわっている真紅の長髪、右目に眼帯を付けた少年を見つけた。

 

「・・・・・」

 

オールマイトの養子、兵藤一誠・・・・・間違いない、本物だ。寝ているのか規則正しい寝息が聞こえてくるので起こさないことを心掛け、恐る恐る足音を立てないようにして近づく一佳。携帯を構えて母親に撮影した写真を送信する思いでカメラモードにしシャッターチャンスを成功させようとした。

 

「―――キヒヒッ、こんなところにイイ人質をミッケー!」

 

何もない虚空から声が聞こえたと同時に両腕と胴体ごと長い何かに巻きつかれて拘束された一佳。

驚きで目を張り声を発しようとしたものの最初から人質を捕える魂胆だったのか、布で一佳の口を覆い縛った。

両手首にも縛りそれが終わるとユラリと姿を虚空から現すのは口から長い舌を伸ばしている細い体、飛び出そうな大きな目玉、神が緑の短髪でどこかカメレオンを彷彿させる。

 

「(だ、誰だ・・・・・っ!?)」

 

「ん~?誰って言いたそうな顔をしているなぁ~。だったら教えてやるのが世の情けってやつだなぁ?俺はカメレオンの特性を持つ隠陰暮雨(かくいんぼう)だ。姿を自由自在に消し、手にして触れたものも全て隠すように消すことができるから俺は銀行を強襲したり空巣したりしても捕まったことは一度でもねぇんだなぁこれが。でも、今日はちょっとヘマをしちまって追われてんのさぁ」

 

相手は(ヴィラン)。パトカーがいる理由はこの(ヴィラン)を探し続けていたからなのだと一佳は気付いた。

 

「さてとお穣ちゃん。俺の為に色々と働いてもらうぜぇ?キヒヒッ!そこで間抜けにも眠っている―――」

 

「・・・・・誰が寝ているって?」

 

「キヒッ!?」

 

芝生に寝ていたはずの人物が左目を開けて身を起こし始めた。不機嫌そうに半目で陰暮雨を睨みつけながら低い声音で口にした。

 

「悪意を感じたから起きちまったじゃないか。こちとら、ここまで不眠不休で飛び続け寝不足だってのに起こしてくれたなお前・・・・・」

 

「う、動くんじゃねっ!この人質がどうなってもいいのか!?」

 

「・・・・・」

 

焦る(ヴィラン)に対し一誠は「阿呆か」と呆れかえった。

 

「人質を殺したらお前の身を守る盾がいなくなるのも道理だろうに。それすら頭から抜けているほど追いつめられているのか?」

 

「ぐっ、くぅっ・・・・・!?」

 

「自分から俺の目の前に現れた不運を恨めよカメレオンもどき」

 

一誠の両拳が異形の手と成り果て巨大化する。天使の翼を今でも生やしているのに真紅の鱗に覆われ、鋭い爪を伸ばしている爬虫類のような拳と相まって異質を感じさせる。陰暮雨と一佳は共に揃って目を張る。

 

「て、てめぇっ!複数の個性を持ってやがったのか!?」

 

「俺の事より自分の身の心配をしろ。今すぐ人質を解放して無事に逃げきるか、俺に殴り倒されて警察行きとなるか、好きな方を選べ。―――3、2、」

 

「くっそぉおおおおおおおおおおおっ!」

 

バッと舌で巻きつけていた一佳を解放し、周りの風景と同化させ姿を消した陰暮雨。

 

―――だが、一誠は。

 

「1、0.―――ふっ!」

 

カウントを数え続け終わっても見逃すほどお人好しでも甘くなかった。一佳の目の前から一誠が掻き消え、次に見つけた時は公園の入り口手前で姿を消していたはずの陰暮雨を的確で確実に森林の木の方へ殴り飛ばした。

 

「は、話、が・・・・・っ」

 

「俺が何時お前を見逃すと言った?無事に逃げきるかって問うただけだ」

 

木を揺らすほど殴り飛ばされ、全身に凄まじいダメージを負った陰暮雨はバタリと倒れる。逃走を計った見えない敵を一撃で倒した一誠の強さに少女は驚嘆していると少年が近付いてきた。

 

「大丈夫か?怪我は特になさそうだけど」

 

縛られている布を外してもらったことで一佳は改めて感謝の言葉を送った。

 

「あ、ありがとう。オールマイトの養子だからやっぱり強いんだね」

 

「まあ、あのカメレオンもどきが単純に弱かっただけだけどな」

 

そう言ってどこからともなく鎖を取り出し、陰暮雨へと近づく。体を起こし逃げられないようがんじがらめに縛りあげた。

 

「なあ。千葉に何時までいるんだ?」

 

「うん?んー、ある程度の事件を解決したら次の県に行くつもりだ。俺は今、全国を旅している最中だからさ・・・・これでよし、と。さて、こいつを警察に届けてまた眠るかな」

 

「そうなんだ・・・・・それって今日中?」

 

「長くて数日・・・・・なんでだ?」

 

俺にまだ用があるのか?と首を傾げる一誠に頷く一佳。

 

「付け焼き刃・・・・・みたいな感じだけどさ。私にもし良ければ稽古を付けてくれないか?」

 

「稽古?何でまた・・・・・というかどうして俺なんだ?」

 

「私の個性は『大拳』って拳を大きくなるだけの個性なんだ」

 

実際に拳を巨大化させた一佳。それだけしかない唯一無二の個性に巨大な手で何ができるのかと思う者もいるだろう。

 

「さっき兵藤も拳を大きくして(ヴィラン)を倒した。だから私の個性も拳一つで戦えるようになりたいんだ」

 

「それってヒーローになる為か?」

 

「うん。だからお願いできるかな?助けてもらった恩人にお願いするのはちょっとアレだけど・・・・・」

 

どう、かな?と申し訳なさそうとバツ悪そうに上目づかいで乞う一佳。一誠は強くなりたいという年下の少女を見つめ・・・・・徐に右目の眼帯を外した途端。

 

「―――――っ!?」

 

ゾッ!!!!!

 

全身に走る緊張感と背筋に伝わる悪寒、脳に伝達するのはリアルに自分の首が体から離れて死ぬ幻が走馬灯のようにハッキリと見えてしまった。一誠の右目・・・・・眼帯を付けているから眼窩に眼球が無いと思っていたが蓋を開けると眼球はあった。同じ色の目ではない、濡羽色の目が眼窩に収まっている。黒と金のオッドアイ。そして一誠から感じる威圧、死に対するプレッシャーが一佳の精神を襲う。それを何時までも感じて膝がおかしいほど揺れ続けるが一向に崩れる気配は感じない。必死に死のイメージを何度も見せられ、頭がおかしくなりそうに感じた一佳の心がくじけそうになった時。

 

「・・・・・まあ、合格でいいか」

 

右目に眼帯をつけ直し、威圧も抑えたところで一佳の膝が崩れその場で尻餅をついた。乱れる息を何とか整え、脂汗を掻いたまま顔を一誠に向ける。

 

「い、いまのは・・・・・」

 

「ヒーローに目指すなら、死を覚悟もしなくちゃいけない。生半可でヒーローになる為に強くなりたいって言ったり、思っていたら稽古なんて付ける気はない。で、質問に答えるとプレッシャー、威圧を放っただけだ。オールマイトもできることだぞ」

 

「・・・・・っ」

 

「それをギリギリ堪えたから合格にした。―――いいよ、数日間の間。限られた時間の中でお前を鍛えてやるよ」

 

オールマイトの養子に鍛えてもらえる。その事実に乾いた笑みを浮かべ、喜びを噛み締めるも気が抜けてあっという間に意識を落とした。

 

「・・・・・ちょっとやり過ぎたか?」

 

その日、拳藤一佳は学校に行くことは無かった。学校から彼女の親にそのこと伝わり、事件に巻き込まれたのではないかと警察に報告し、一佳の捜索が始まった他所に警察署に一誠が気絶した(ヴィラン)と一佳を連れて引き渡したことで事件は解決した。

 

―――そして二日後の早朝。

 

「・・・・・時間通りにきたな」

 

「こんな機会は滅多にないからね。お願いした手前、あの手紙に書かれた通りにしなくちゃ失礼だよ」

 

「遅れても構わないけど、俺の鍛え方は地獄を見るほどスパルタだぞ?躊躇なくその肌に傷を付け、お前の骨を折るつもりで攻撃する。死ぬ一歩手前で稽古をするから・・・・・前言撤回するなら今だぞ」

 

「が、頑張る・・・・・っ」

 

「よし、んじゃ軽く組手を始めよう。個性の使用は禁止だ。俺に一撃でも与えれば合格で」

 

「よろしくね、兵藤」

 

お互い構え、誰もいない早朝の公園で一誠は一佳に稽古をつけることに、一佳は一誠に稽古をつけてもらうこととなった。

 

「来い」

 

「うん!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。