俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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職場体験

職場体験一日目のその日の夜―――。

 

「違う地域に出張する際、寝泊まりはどうするのかと思ったけど。まさか保須市の宿泊施設に籠ってまでヒーロー殺しを捕まえる気なんだなエンデンヴァーは」

 

二人目の犠牲者が出たニュースは既にお茶の間に放送されている。その日、保須市に到着してからはずっと見回りをして件の(ヴィラン)を探し続けたが、手掛かりも姿形、影すら掴めれなかった。

結局、今日は一人のヒーローの犠牲が出ただけで他は何事も無く平和そのものだった。いや、不謹慎だな。撤回だ。

 

「さて、明日も現れるかな。ヒーロー殺し」

 

ダブルの一室のベットの上で寝転がる俺の呟きは虚空に消える。―――共にこの部屋で寝る轟は風呂場にいる。

でも、それなりに時間を掛けて風呂場から出てきた。

 

「上がったぞ兵藤」

 

「おう」

 

相槌打つだけで直ぐには入らない。入浴するタイミングは個人の自由だからな。

椅子に座って何らかの本を開き読み始める轟と対象的に、携帯を持ちお茶子達にメールを送ったり送られてきたりとそんなやり取りをし始めること数分後。

 

「・・・・・兵藤」

 

「ん、なんだ」

 

二人きり、こうして轟と話し合うのは今回が初めてかもしれない。

 

「お前、八百万達とオールマイトに鍛えられてるのか」

 

オールマイトに鍛えられている?・・・・・ああ、勘違いしてるな。

 

「俺とオールマイトは別々で暮らしている。だからオールマイトに直々鍛えられてないぞ」

 

「じゃあ、誰があいつらが強くしている」

 

「ん」

 

自分で自分を指す。轟の双眸が真っ直ぐ俺に向けてくる。

 

「俺の家には特別なトレーニングルームがあってな。そこで数週間分の時間の中で修行ができるんだ。そこであいつらと過ごして修行していたわけ」

 

「・・・・・嘘言っている訳じゃないよな」

 

「吐いてどうするよ?なんなら、お前も俺の家に来るといいさ」

 

氷を具現化させて、それを刀剣に作り上げる。

 

「これができる可能性を秘めいているかもしれないお前を強くしてやれるしな」

 

「・・・・・」

 

俺の氷の刀剣を見つめる視線を己の右手に変えて氷の個性を発動したが、ヘンテコな氷ができ上がった。原型も全然なっちゃいなかった。

 

「今まで地面を凍らせたり氷壁を作ることしか頭がなかったんだ。もっとイメージをして何度も失敗を繰り返せば氷の造形もできると思うぞ」

 

「・・・・・そうか」

 

ま、仮にできたとしても剣術なんて皆無な轟が振るえるとは話が違うがな。あくまで"個性"を伸ばすヒントを与えただけだ。

 

「じゃあ、宙に浮くってのもお前の家で修行したからか」

 

「おう、それがどうかしたか?」

 

「・・・・・それって、誰でも出来るもんなのか」

 

「少なからず誰でもってわけじゃないけど・・・・・修行すれば、な」

 

あいつらは成長が速過ぎるんだ。峰田なんてできるとはあんまり思えなかったのにくそぅ、なんか悔しいな。

悔しい思いをしている俺の隣で何か知らないけど、轟が氷の力を何度も使って何か形を作ろうと一心不乱。

 

「しかしヒーロー殺しか。できれば勝負を申し込みたいな」

 

「何でだ?」

 

「十人以上もヒーローを倒した強敵だからだ」

 

ニヤリと好戦的な笑みを浮かべる俺を轟は意外そうに発した。

 

(ヴィラン)を捕まえて注目するというより、強い相手と戦うことの方が好きなんだなお前って」

 

「知ってたか?自分より格上の相手と戦って強くなっている実感を得ることを。俺はそれを味わいたいんだ」

 

「・・・・・爆豪みてーだなお前」

 

「失敬な。誰が爆発野郎なんだ。あいつより俺の方が大人しいぞ。ライオンと猫って感じに」

 

どっちもネコ科だから似ているぞ、と呟いたのは聞こえてんぞ轟。

 

「・・・・・暇だ。こっそり抜け出そうかな」

 

「やめとけ、クソ親父の説教の炎が噴くぞ」

 

「いやー、だってさ」

 

指を真っ暗な外へ指差す。

 

「さっきから悪意の塊が外で感じてしょうがないんだ。多分、ヒーロー殺しが近くにいると思うんだよ」

 

「・・・・・」

 

「因みに嘘じゃないぞ。俺はそういう探知や気配の"個性"も持っているんだ」

 

怪訝な目で見られるので複数の"個性"を持っている俺だと認識されているだろうからそう言う。

轟はスッと腰を上げた。「どうした?」と徐に立ち上がったクラスメートに問う俺にこう返してきた。

 

「クソ親父のところに行く。知らせてやれば嬉々として動くだろうよ」

 

「―――親思いなんだな意外と」

 

「ふざけんな。誰があんなクズなんか気を使わなきゃならない」

 

吐き捨てるように顔も不愉快そうな表情を浮かべる轟と俺の耳に突如、扉をノックする音が聞こえた。俺達二人が声を発する前に来訪者が入室の許可の有無も関係無しで入って来た。

 

「邪魔する」

 

Oh・・・・・今まさに話をしていた張本人がやって来た。

 

「あ、よかった」

 

「何がだ」

 

「こっから三キロ離れた場所で悪意を感じる。ヒーロー殺しか別の(ヴィラン)がいるとあんたに伝えようとしていたところなんだ」

 

轟が、と付け加えることも忘れずに言うと、エンデンヴァーは「嘘ではないな」と俺に言ってくる。

 

「嘘吐く性分じゃないよ俺は。なんなら、今すぐ確認しに行っていなかったら何でも言うことを聞くよ」

 

「・・・・・」

 

睨むように見つめてくるエンデンヴァーは注意しないと分からないほど、口の端を吊り上げた。

そう言えば、部屋に訪れたのは何か目的があってきたんだろうな。それが何なのか今となっては分からなくなっちゃったけど。踵返して背を見せるヒーローは指示を下す。

 

「お前達。今すぐ身支度して出発するぞ」

 

相棒(サイドキック)は?」

 

「少数精鋭で行く。迅速的な行動でヒーロー殺しを発見し捕える」

 

と、俺と轟、エンデンヴァーの三人でヒーロー殺しを捕えに夜間の街中を出向くことになった。

 

 

二人目の被害をだしたその者―――件のヒーロー殺しは、高いところから煌びやかに建造物から光る街並みを親の仇のように見つめていた。

 

「贋物が蔓延って出来上がった偽善と虚栄で覆われた・・・・・ハァ・・・・・歪な社会・・・・・」

 

町の人は皆、絶えることのない笑顔を浮かべ闊歩し続けている。ヒーローが尽力で町の平和を守り維持し続けている結果が形として残り、栄えているのであった。だが、それをよく思わないヒーロー殺しは静かに怒りの炎を瞳に燃やした。

 

「本物の、本来の英雄(ヒーロー)の意味を忘れた贋物共が。拝金主義者に成り下がって・・・・・・今に見ていろ。俺がこの街を正す」

 

胸に秘める強い想いと信念。ヒーロー殺しは闇に姿を溶け込む感じで姿を消そうとした矢先、

 

「探しましたよ。ヒーロー殺し『ステイン』」

 

彼の背後から声が掛かるのと同時に背中の刀を掴んで目では捉えきれないほどの速さで抜刀、背後にいる声の主へ振るった。

 

「落ち着いてください・・・・・我々は同類・・・・・。悪名高い貴方に是非とも会いたかった」

 

刀の切っ先が黒い靄のような霧のようなものに包まれていた。ソレから目らしき眼光があり、その実態はUSJの奇襲事件時にいた霧の(ヴィラン)であった。

 

「お時間少々よろしいでしょうか」

 

「・・・・・」

 

訝しいと目を細めるヒーロー殺し。攻撃する意思も目標であるヒーローではない眼前の相手に会談を求めている。

 

「用件は何だ」

 

「あなたに会って欲しい者がおります。その者がいる場所へ貴方を連れて行きたいのです。そう、貴方と同じ今のヒーローを快く思っていない者ですよ」

 

その言葉に少なからず興味を持った。ヒーロー殺しは霧の(ヴィラン)に近づく。

 

「いいだろう。案内しろ」

 

「ありがとうございます。では・・・・・」

 

霧を広げとある場所の空間を繋げた霧の(ヴィラン)と、その中に潜ろうとしたヒーロー殺しは、

 

バッ!

 

「―――見つけたぞ。ヒーロー殺し」

 

宙に飛びあがった炎を纏う巨躯の男、エンデンヴァーが夜間にも拘わらず燃え盛る炎で周囲を灯し、明るくする火炎を放ってヒーロー殺しに向けて放った。

 

「エンデンヴァー」

 

霧の中に潜ろうとした意識を、現れたヒーローの殺害へと切り替えて、火炎から回避して対峙した。

 

「これは燃焼系ヒーロー『エンデンヴァー』。よくここにいると分かりましたね」

 

「誰だが知らないが貴様も(ヴィラン)だな。ヒーロー殺しと接触して何を企んでいる」

 

「それを親切に教える(ヴィラン)がいるとでも?それにいま貴方と事を構えている暇などございません。お引き取り願いましょう」

 

霧を拡大させてエンデンヴァーを包みこもうとする。

 

―――しかし、

 

「USJ以来か霧の」

 

「っ!?」

 

横っ腹に足が突き刺さり、踏ん張りが利かない状態で霧の(ヴィラン)は蹴り飛ばされる。

 

「意外だったよ。まさかこんな所で俺の片腕を奪った一人と再開するなんてさ」

 

「ぐっ・・・・・兵藤、一誠・・・・・!?」

 

「今度は逃がす気はないんで。覚悟はいいか?」

 

轟の隣で天使化になる一誠が霧の(ヴィラン)の前に佇み、猛禽類のような目で見下ろす。

 

「―――兵藤一誠」

 

ヒーロー殺しステインの瞳に映るは、本来のヒーローがそこに立っているような輝かしい光を纏う姿。

オールマイトの養子、兵藤一誠の姿を見て眩しいものを見る目でありながら嬉しそうに顔を輝かすは歓喜と狂喜。

同じ志を抱く者が目の前にいる。

 

「むっ!」

 

エンデンヴァーから一誠へ意識を向けるヒーロー殺しは駈け出した。その気配を察知して一誠は口角をあげた。

 

「臨むところだ」

 

空間を歪ませて生じた穴から青い鞘に収まった一本の剣を取り出した。抜刀した瞬間、ヒーロー殺しの刀と鍔迫り合いをする。神々しい黄金の剣を持つ天使の姿の一誠はこの場にいる全員が初めて見ることになった。

 

「待っていた。俺と同じ思想と信念を持つオールマイトの養子」

 

「同じ思想と信念?」

 

「そうだ」

 

どちらからでもなく離れ、エンデンヴァーの火炎をかわしながら一誠に飛び掛かる。

 

「拝金主義者の贋物が本物の英雄(ヒーロー)の意味を忘れ、英雄(オールマイト)と同じだと自惚れている贋物共のヒーローを否定したお前は俺と同じ存在だ」

 

「―――――」

 

剣と刀が衝突する度に火花が散り、周囲を一瞬だけ照らす。ヒーロー殺しは刀でだけなく体に装着している軍人用のナイフも手にして二刀流で斬り掛かり始める。

 

「お前も現在(いま)を快く思っていない、疑問を抱いている。何故、英雄(オールマイト)と同じように贋物が英雄のように崇められているのかを」

 

二刀流でも一誠は難なく一本の剣だけで振るい続け、ヒーロー殺しの剣術を渡り合っている。

 

「問う。お前にとってヒーローとはなんだ」

 

その問いに一誠は当然のように言い切った。強引に振り払って誇らしく答えた。

 

「名声や栄光があれど、感謝されど金を求めてはならない。得てはならない。そうなればその時点でヒーローは真の意味でヒーローではなくなる」

 

剣を振るい、受け止められ鍔迫り合いの中で真っ直ぐヒーロー殺しに言った。

 

「誰にでもできない事を偉業とし、それを成し遂げた上に命を張って誰かを守る。それこそが本当の英雄だ。―――違うか、ヒーロー殺しステイン」

 

「――――――っ」

 

それは、ステインも同じ気持ちでもあり、同意する答えだった。故に一誠に問うた答えはステイン個人にとっては。

 

「正解だ兵藤一誠。立場が対極的であろうとやはり俺達は―――――」

 

「ああ、そうだ」

 

「「似ているな」」

 

揃って笑みを浮かべ、エンデンヴァーや轟の加勢ができないほど激しい攻防を繰り広げはじめる二人。

 

「・・・・・強え」

 

ヒーロー殺しステインもそうだが、武器を持って戦う一誠も強いと印象を抱いた轟。"個性"だけでなく、武器での戦いも完全に慣れている動きで無駄な動きは少しも無い。片腕だけで二刀流のステインに渡り合っている。もしも腕が万全に二本もあれば戦況はどうなっていたのだろうかと思わずにはいられない。

 

(こんなやつ(兵藤)にあいつらは鍛えられていたのか)

 

納得できる証明が突き付けられ、慕われているのも頷く。加勢しようにも邪魔でしかならない雰囲気と気配が轟を覆い、ただ案山子のように突っ立っているだけでしかできない。ただ二人を除いて。

 

「「っ!」」

 

迫りくる火炎を察して互いが距離を置くと、ステインを覆う霧で姿が隠れる。

 

「兵藤一誠がこの街にいるとは誤算ですが、貴方が本気になられてはこの街も吹き飛ぶでしょう。本気になる前に我々は撤退させてもらいます」

 

「ちっ、人の戦いに水を差すなよ霧が」

 

「黒霧と申します。そして我々は(ヴィラン)連合という組織―――。またいずれお会いしましょう兵藤一誠」

 

渦を巻く霧が空間に溶け込むようにして三人の前に消えた。

 

「おい、轟。あの霧を凍らせて身動き封じておいてくれよ。逃げられちゃったじゃん」

 

「・・・・・悪い」

 

「というかエンデンヴァーさん。攻撃するなら一声かけて!俺ごと丸焼にするきかい!」

 

「お前ほどの実力なら回避することは容易いだろう」

 

「ひどっ、子供に対してその言い草!オールマイトに虐められたって言ってやるかんな!」

 

額に青筋を浮かべ出すエンデンヴァーと子供の言葉に苛立ちを覚えた父親に呆れる轟。そしてそれから職場体験二日目の朝を迎えるも、ヒーロー殺しは現れることは無かった。

 

 

―――俺が来た(byエンデンヴァー)―――

 

職場体験三日目。PM17:00・・・・・。

 

「兵藤、どうだ」

 

「んや、全然感じない。街全体が平和そのものだわ」

 

「ちっ、雑魚"個性"だと思って侮ったか。ワープでヒーロー殺しをどこに連れて行ったのか分かれば直ぐに向かうものを」

 

保須市の街中をパトロールするエンデンヴァー一行。俺の感知や探知に引っ掛からないのはこの街に完全にいないか、完全に気を隠しているかの選択と狭まれるが、前者の方だと確信している。

 

「さて・・・・・あの男はどこにいるんだろうなぁ」

 

 

 

薄暗いバーの店のような中、黒霧によって勝負の途中で連れ去られたヒーロー殺しステインは黒霧ともう一人の青年と相対していた。

 

「なるほどなァ・・・・・お前達が雄英襲撃犯・・・・・その一団に俺も加われと」

 

「ああ頼むよ。悪党の大先輩」

 

顔面に人の手のような物を装着している青年―――死柄木弔の勧誘を受けているステインは問うた。

 

「・・・・・・目的は何だ」

 

「とりあえずはオールマイトをブッ殺したい。気に入らない者は全部壊したいな」

 

見せつけるように四枚の写真をステインに晒した。その写真の一枚に一誠の姿があった。

 

「こういう・・・・・糞餓鬼とかもさ・・・・・全部」

 

気に入らないものは全て破壊の対象とまるで子供染みた発言は、ステインの中で死柄木弔の印象が決定した。

 

「興味を持った俺が浅はかだった・・・・・。お前は・・・・・ハァ・・・・・俺が最も嫌悪する人種だ」

 

「はあ?」

 

ギロ、と殺意が籠った目で睨みつけるステインの両手が体に装備している軍人用のナイフを手にして抜き放った。

 

「子供の癇癪に付き合えと?ハ・・・・・ハァ・・・・・・。信念なき殺意で兵藤一誠を殺せると思っているなら俺が教えてやる」

 

次の瞬間。飛び掛かるステインに応戦する死柄木弔とフォローする黒霧のイザコザが勃発し、決着はあっという間だった。

 

「何を成し遂げるにも信念・・・・・想いが要る。ない者弱い者が淘汰される当然だ」

 

右肩、首筋に軍人用のナイフを突き付けられ左腕を足で踏まれ押さえ付けられて仰向けになっている死柄木弔とそうしているステイン。

 

「だから死ぬ(こうなる)

 

淡々と述べるステイン。

 

「ハッ、ハハハ・・・・・!いってえええ強過ぎだろ。黒霧!こいつ帰せ早くしろ!」

 

死柄木弔の催促に黒霧はカウンターで全身を震わせていた。左腕に切り傷がある。

 

「体が動かない・・・・・!おそらくヒーロー殺しの"個性"・・・・・」

 

ワープでステインを飛ばす黒霧が行動不能に陥っている状況。厄介な"個性"を持っている黒霧が動けないのであれば死柄木弔は今まさにピンチだった。

 

「"英雄"が本来の意味を失い贋物が蔓延るこの社会も徒に"力"を振りまく犯罪者も粛清対象だ・・・・・ハァ・・・・・」

 

右手のナイフを死柄木弔の首に近づける。ステインの粛清対象として己の信念を全うする為に殺すつもりである。それに気づく死柄木弔は右肩にナイフを突き刺さったまま動かして首ににじり寄るナイフを鷲掴みで止めた。

 

「ちょっと待て待て・・・・・この掌は・・・・・駄目だ」

 

その瞬間。ナイフに触れる死柄木弔の指先から罅が生じた。

 

「殺すぞ」

 

ステインは見た。触れただけで自前の武器がボロボロと形を崩して崩壊を始めたのを。

 

「口数が多いなァ・・・・・信念?んな仰々しいもんないね・・・・・。強いて言えばそう・・・・・オールマイトだな」

 

人の手のような物に覆われている死柄木弔は狂気が孕んだ笑みを浮かべる。

 

「あんなゴミが祀り上げられてるこの社会を滅茶苦茶にブッ潰したいなァとは思ってるよ」

 

ナイフの刀身が姿形もなくした本人から異様なプレッシャーを感じたステイン。右手が横薙ぎに振るう死柄木弔から反射的に離れて距離を置いたステインに立ち上がる死柄木弔。

 

「なァおい、こちとら回復キャラがいないんだよ。誰が俺の怪我を治してくれると思ってんの?責任とってくれんのかぁ?」

 

常人であれば恐怖で恐れ戦くか泣き叫ぶかであるのに、今さっき殺され掛けていたというのに死柄木弔の変わらぬ態度でいることから・・・・・・。

 

「それがお前か」

 

「は?」

 

ステインは意味深な言葉を発したのであった。そして――――。

 

「お前と俺の目的は対極にあるようだ・・・・・だが」

 

―――――『現在(いま)を壊す』。この一点に於いて俺達は共通している・・・・・・。

 

と死柄木弔から何かを伝わったのか、ステインは粛清対象でありながら認めたのだった。

 

「ざけんな帰れ死ね。"最も嫌悪する人種"なんだろ」

 

「真意を試した。視線を前にして人は本質をを表す。異質だが・・・・・"想い"・・・・・歪な信念の芽がお前には宿っている」

 

黒霧は静かにステインを見つめる。ステインも黒霧を視界に入れ、死柄木弔の行く末はどうなるか――――。

 

「お前がどう芽吹いていくのか・・・・・始末するのはそれを見届けてからでも遅くないかもな・・・・・」

 

この瞬間、死柄木弔率いる組織=(ヴィラン)連合に加わることを承諾したステイン。

だが、死柄木弔は納得できず否定した。

 

「始末すんのかよ・・・・・こんなイカレた奴がパーティメンバーなんて嫌だね俺・・・・・」

 

しかし、窘めるように横から黒霧が発する。

 

「死柄木弔。彼が加われば大きな戦力になる。交渉は成立した!」

 

不意に、体が動くようになる黒霧。ステインの"個性"が解除されたのだと察するが。

 

「用件は済んだ!さァ"保須"へ戻せ。あそこにはまだ成すべき事が残っている」

 

ステインの要望にいち早く黒霧が制止した。

 

「待って下さい。保須市には兵藤一誠がいます。せっかく加わって頂いたあなたを失うことになっては意味がありません。オールマイトより注目すべき存在であり厄介な存在です。兵藤一誠が保須からいなくなった後でも遅くはない―――――」

 

ビュッ!と黒霧の言葉を振るう刀で遮る。

 

「俺と兵藤一誠もまた対極でありながら信念を共通している。お前らが奴に危険視していようと俺には関係ないことだ。奴との決着に横から口出しをするな。さァ、さっさと俺を保須に戻せ」

 

―――ほぼ同時刻、保須市。

 

「今日も今日とてパトロール。ごめんね代わり映えなくて」

 

保須市に一誠と轟の他にもクラスメートがいた。飯田天哉も保須市にあるヒーロー事務所に職場体験先として希望したのである。先導するヒーローの後ろで忙しなく周囲を見回す飯田は返事をする。

 

「いえ・・・・・むしろ良いです」

 

その仕草は何かを探しているようにも見えなくはない。そんな飯田にプロヒーローは立ち止まり振り返った。

 

「・・・・・ねえ、聞きにくいんだけどさ・・・・・」

 

それでも飯田に質問した。

 

「君、ヒーロー殺し追ってるんだろ」

 

「それは・・・・・」

 

「ウチに来る理由が他に思い当たらなくてね。や!別に来てくれたことは嬉しいんだぜ!?ただ・・・・・」

 

真面目な顔つきとなるプロヒーローは飯田に窘める。

 

「私怨で動くのはやめた方が良いよ」

 

プロヒーローはこうも言う。

 

「我々ヒーローに逮捕や刑罰を行使する権限は無い。"個性"の規制化を進めていった中で"個性"使用を許されてるわけだからヒーロー活動が私刑となってはいけない。もしそう捉えられればソレはとても重い罪となる」

 

そう言ってから一変してあたふたと慌てる。

 

「あ!いや!ヒーロー殺しに罪がないとかじゃなくてね。君真面目そうだからさ!視野がガーッとなっちゃってそうで案じた―――」

 

「ご忠告感謝します」

 

そうかい?なら良かったよと安堵で笑みを零し、再び歩き始めるプロヒーロー背中を見つめながら飯田は胸の中で膨らむ思いに焦がれる。

 

(しかし・・・・・じゃあしかし・・・・・!この気持ちを―――!どうしたらいい!?)

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