俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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不本意

職場体験終了―――。その翌日。

 

皆、体験先で貴重な経験を得て戻って来た雄英学校に笑い声が聞こえる。

 

「「アッハッハッハッハ!!!マジか!!マジか爆豪!!」」

 

「爆豪おまえっ・・・・・!」

 

―――なんと、爆豪の髪が8:2のヘアスタイルで登場したのだっ!ヒーッ!と切島と瀬呂は教室に入ってきた爆豪の髪型を見ては涙目で爆笑、俺も堪え切れず笑い始める。

 

「笑うな!クセついちまって洗っても直んねえんだ。おい笑うな、ブッ殺すぞ」

 

「「やってみろよ8:2坊や!アッハハハハハハハハ!!!!!」」

 

故に、いや、だからこそだ。この面白い状況に俺が何もしない筈がない。

 

「切島、瀬呂。こっち見ろ」

 

「「・・・・・・?」」

 

ヒー!ヒー!と笑いながらこっちを見た。そして俺は―――8:2の爆豪に変身した。

 

「ウェイッ!」

 

「「ツッブホォハァッ!?」」

 

しかも上鳴のアホ面も披露すると二人はその場で崩れ落ち床に平伏した。

 

「ブッ殺すッ!」

 

怒りのゲージが越えたのか、8:2の髪型が爆発した爆豪が攻撃してくるが軽くあしらっていると他の皆が和気藹々と体験先で何をして経験していたのか話し合っていた最中、ヒーロー殺しの話題になった。

 

「ま、一番変化というか大変だったのは・・・・・お前ら四人だな」

 

俺と飯田、緑谷に轟を指して言う上鳴の言葉に瀬呂と切島が反応する。

 

「そうそうヒーロー殺し!」

 

「命あって何よりだぜマジでさ。エンデヴァーが救けてくれたんだってな!さすが№2だぜ!」

 

そう認識しているのは警察のおかげなのだと俺達四人しか知られていない。

 

「しかも兵藤。お前、動画で見たけどUSJの主犯を捕まえたようじゃん。すげーよお前」

 

上鳴から話しかけられて、元の姿に戻しつつ爆豪の額に向かってデコピン。

 

「捕まえるまでの間は結構ヤバかったけどな。強力な"個性"を持っている相手との戦いは死線を超えてもおかしくなかった。片方がワープで片方が触れた瞬間に崩壊する能力だったからな。あのコンボは本当に危険だったよ」

 

「うげ、片腕だけのお前でも流石にヤバいと感じたんか」

 

「というか、デコピンで吹っ飛ぶとかどうなってんだよ」と壁まで吹っ飛んだ爆豪とデコピンした俺を交互に唖然とする上鳴。

 

「そこは気にするな。ん?」

 

百が近づいてくる。

 

「・・・・・心配しましたわ」

 

垂れている制服の袖を摘まむ百。USJで俺の腕を奪った原因のあの二人と戦ったことで、また殺されそうになったのではと思っているのか、不安な色も顔に浮かべている彼女へ朗らかに言う。

 

「まぁ、これで(ヴィラン)も俺達にちょっかい出してこないだろう。だから安心してヒーローを目指せる」

 

「・・・・・はい」

 

 

それから時は流れあっという間にSHLとなった。

 

 

「えー・・・・・そろそろ夏休みも近いが。もちろん君らが30日間一ヶ月休める道理はない」

 

この教室はヒーロー科。普通科やサポート科、経営科とは違い、休日も一日しかない上に全力で俺達ヒーローの"卵"を鍛えられるのだから当然だろう。時間は有限、合理的なことが好きな相澤先生じゃなくても雄英は俺達を一から百まで教え導くのだ。

 

「夏休み。林間合宿やるぞ」

 

「知ってたよー!」

 

「やったー!」

 

森林の中、山の中で合宿はある意味、旅行気分を楽しめる。しかも夏期休暇を利用してなのだから・・・・・。

 

「肝試そー!」

 

「風呂!」

 

「花火」

 

「風呂!」

 

「カレーだな・・・・!」

 

「行水!」

 

「自然環境ですとまた活動条件が変わってきますわね」

 

「湯浴み!」

 

「いかなる環境でも正しい選択を・・・・か。面白い」

 

「寝食皆と!ワクワクしてきたぁあ!」

 

俺のトレーニングルームとは違う本物の自然環境の中で行う修行。皆、本当に心から楽しみにしている様子だった。―――というか峰田。本能丸出し。

 

「―――ただし」

 

相澤先生の眼が妖しく煌めいた。静かな威圧にそれで場が一気に静まり返る。

 

「その前の期末テストで合格点に満たさなかった奴には・・・・・学校で補習地獄だ」

 

「「みんな頑張ろーぜ!」」

 

勉学に不安と苦手な二人(上鳴と切島)が揃って焦燥に駆られた表情を浮かぶ。俺は上位に入る自信はあるから対して不安じゃない。

 

「・・・・・」

 

だが・・・・・別の意味で胸騒ぎがする。この不安はなんだ・・・・・?死柄木弔達を捕まえて俺達に対する脅威は無くなった筈なのに・・・・・。

 

 

 

人知れず一誠の胸中で湧く不安を他所にとある某所の都会の建造物の中・・・・・。

医療器具が多々置かれている薄暗い部屋の中に二人分の声が発している。

 

「ヒーロー殺し。捕まるとは思わなかったが概ね想定通りだ。そしてオールマイトの養子、兵藤一誠の言葉に感銘を受け。暴れたい奴、共感した奴・・・・・。様々な人間が衝動を解放する場として(ヴィラン)連合を求める。死柄木弔はそんな奴等を統括しなければならない立場となる!」

 

「だが、その肝心のあの"子供"が捕まっている。ワシは代わりに先生が前に出た方が事が進むと思うが・・・・・」

 

「ハハ・・・・・では早く体を治してくれよドクター」

 

「"超再生"を手に入れるのがあと5年早ければなぁ・・・・・!傷が癒えてからでは意味のない期待はずれの個性だった」

 

その声は死柄木弔を悪として導いている声と同じだった。

 

「ところで、"彼"の住居はわかったかなドクター」

 

「先生の資金で雇ったゴロツキ共に探らせたところ。あっさりと見つかったぞ」

 

「そうか。では、"彼"にやる気を出させる為に用意しなくちゃいけないね」

 

「しかし本当に良かったのか先生。ゴロツキ共に脳無を貸し与えて」

 

「もしもの保険だ。何としてでも弔を取り返さないといけないからね」

 

先生と男と呼ばれた眼前には一誠の姿が映り込んでいた。その映像から発する光に照らされる男の素顔は・・・・・顔の3分の2も凄まじい古傷でのっぺらぼうのように口以外無くなっている。

 

「ああ・・・・・楽しみだ。自分の義息子が犯罪に手を染める瞬間を見るオールマイトはどんな表情を浮かべるのだろうか」

 

―――俺が来た(by死柄木)―――

 

その日の夜―――。

 

「お茶子ー。今日の夕飯は?」

 

「お餅カレーだよー」

 

「・・・・・同棲してから色々と食べたけど。まだ餅のバリエーションがあるんだな」

 

「あるよ!他にも一誠君に食べて欲しい餅とのコラボレーションがいっぱいあるんよ!」

 

キッチンのところでお茶子が熱意を持って隣にいる一誠に餅の素晴らしさを伝えようと意気込んでいた。

 

「あはは、お茶子も顔がまんまるだから餅みたいだよな」

 

「えー、私ってお餅みたいなの?」

 

「おう、弾む辺りが」

 

頭をポンポンと優しく触れるとお茶子の顔は何故かボールみたいに弾む。

 

「な?」

 

「う~、お餅を食べてるからかな・・・・・」

 

「そんなお茶子を応援しよう」

 

「なんの応援やん!?」

 

突っ込む彼女に一誠はおかしそうに笑みを浮かべる。

 

「さて、俺も手伝うよ」

 

「駄目だよっ。片手で包丁を持つなんて危ないよ」

 

「ふふん、俺の調理は包丁いらずなのさ。例えばこのジャガイモ」

 

自慢気でジャガイモを手にする一誠の手の平の上で、勝手に皮が綺麗に剥かれたのだった。本当に包丁どころかピーラーも無しで皮を剥いた一誠に驚愕する。

 

「凄いっ!それって気でやっているの?」

 

「いや、それとは別の力でやっている。でも分かっただろう?俺も調理はできるんだよ」

 

「でも、野菜の皮を剥くってだけだよね?」

 

「む、片手だけでもできることは他にもあるぞ。だから一緒に料理を作ろう」

 

頑なになる一誠に押し切られてお茶子は心配しながら一誠と調理をするのだった。

 

「しかし、誰かと調理するなんてのは久し振りだな」

 

「そうだねー。私はよく母ちゃんとだったよ。一誠君は?」

 

「母親とメイドだったな」

 

「メイドさん!?もしかして一誠君の家ってお金持ちだったりするん!?」

 

家は普通。だけど親達の実家は日本一凄いのは確かだったな。・・・・・嫌いだけど。

 

「・・・・・あれ?でも、もしそうならどうしてオールマイトの養子になったん?」

 

「・・・・・」

 

カレーをかき混ぜていた手を止め、徐に遠い目をする。

 

「この世界にはいないからな」

 

「・・・・・っ」

 

死んだわけではないけど、この世界には他の家族もいないことは確かだ。言葉が足りないが、嘘ではない。お茶子を横目で見るとバツ悪そうに、申し訳なさそうに顔を俯いていた。こっちまで申し訳ないと思ってしまう。嘘じゃないけれど、嘘じゃないけれど・・・・・隠しているから。

 

「ごめん・・・・・」

 

「大丈夫だ。もう昔のことだし気にしていないさ」

 

腕を伸ばして彼女の肩を抱く。寄り添う形になって俺は言う。

 

「それに今の俺にはお茶子がいる。全然寂しくなんてないよ。傍にいてくれて本当に感謝している」

 

「・・・・・感謝だなんて。私、腕が無くなった一誠君が心配だから。そんな腕にしたのも私のせいでもあるんよ?」

 

「いいんだ。誰かを守れるなら身体を張る」

 

火を停めて、お茶子へ振り向き胸に抱き寄せる。

 

「目の前にいて守れないなんてヒーロー以前に男じゃない。力があるならそれを全力で誰かを、何かを守ってやらないと駄目なんだ。弱いままじゃ・・・・・何も救えないし変えられないんだ」

 

そう、昔の俺は弱かった。だからあんな目に遭ったんだ。でも、そのおかげで俺は人生を変える切っ掛けを得たんだ。だけど・・・・・。

 

「何時までも弱いままじゃ、いけないんだ・・・・・」

 

「一誠君・・・・・」

 

慟哭にも似た気持ちを露わにしてしまったかもしれない。それが俺の背に両腕を回すお茶子の行動を促せたのかもしれない。

 

「そうだね・・・・・強くならないと、駄目だよね。私も強くなりたい。他の皆もそう思ってるよきっと」

 

「ああ・・・・・男も女も関係ない。ヒーローを目指すなら強くなりたいと同じ気持ちを抱いているよな」

 

「うん、そうだよ一誠君」

 

うららかな雰囲気を纏うお茶子に感化されたようで、柔和に俺は微笑んだ。

 

「頑張ろう、一誠君」

 

「ああ、頑張ろう」

 

ふと、抱き合う俺達の視線が絡み合い、この何とも言えない雰囲気に包まれる俺達は・・・・・どちらからでもなく顔を近づけた―――。

 

ピンポーンッ!

 

「「っ!」」

 

インターホンの音が我に返らすに十分だった。今の流れと状況にお茶子は一気に羞恥で顔を赤くして俺からバッと離れるが、その反動で俺は宙を浮いた状態で壁とぶつかった。

 

「あだっ!」

 

「あっ、ああっ!ごめん!」

 

手を合わせて"個性"を解除してくれたので元の重力になった。

 

「わ、私が出るね!」

 

パタパタとスリッパの音を立たせては、俺から逃げるように玄関の方へと言ってしまうお茶子。それから部屋は静まる。

 

『残念でしたね主。いいところでしたのに』

 

―――メリア、何か楽しんでないか?

 

『人間の恋愛というものを主を介して今まで見てきましたので少々理解できます。麗日お茶子も主のことを好意を抱いていますよ。あれだけ無抵抗で主と抱擁を交わしたのです。どうでしたか?抱き心地は』

 

―――悪くない。でも、やっぱり両腕で抱き締めたいな

 

『なら、再生することをお勧めしますよ。ふふ、異世界でも主は主ですね』

 

―――なんだか、褒められた気分がしないのは気のせいだろうか。

 

内にいる家族との会話はそれで終えた。訪問者の対応をしに行ったお茶子が焦りと不安の顔で戻って来た。

 

「い、一誠君っ!」

 

「どうした?」

 

「ヴィ、(ヴィラン)がっ・・・・・!」

 

「っ・・・・・?」

 

(ヴィラン)?この家に来たのか?それにしては物静かだ。お茶子に引っ張られながらも玄関に赴いた時、俺はたちは気付かなかった。電源付きっぱなしのテレビ画面が臨時ニュースに切り替わっていたことを。

 

『ただいま先ほど、民間の家に(ヴィラン)の集団が押し寄せ拉致・誘拐をして逃走をしました。現在分かっていることは誘拐された一家は―――雄英高等学校に通う少女とそのご両親であるということです』

 

そして俺は目の当たりにした。脳が剥き出しで細身の身体の―――もうこれで何度目で何人目の(ヴィラン)と遭遇しているんだ俺達はっ!?

 

「脳無っ!?さっきのインターホンを鳴らしたのはお前なのかよ!(ヴィラン)らしくないことを・・・・っ」

 

「驚くところそっちなん!?」

 

いや、分かってるって。ただ、本当にらしくない。何でこんなに大人しくしているんだってことだ。そっちの方が疑問だ。直ぐに捕まえようと動く俺に脳無は手にした物を突き出す。

 

「へっ?・・・・・ノートパソコン?」

 

呆気に取られるお茶子の気持ちは俺の気持ちであり、閉じた状態のノートパソコンをパカッと開けてた脳無。

何こいつ・・・・・何がしたいんだ・・・・・?疑問が謎となり考えが分からないでいる俺とお茶子に突き出すパソコンの画面にSOUNDと表示した。

 

『こんばんわ兵藤一誠君。こんな形で訪問してすまないね。今そこにいるだろう脳無は伝書鳩の役割を果たしてもらっているだけだから襲いはしないよ』

 

襲いはしない・・・・・お茶子が戻ってきた時点で実証した。それが本当でも何の目的があってここにこさせた?

 

『実は君の実力を買って頼みたいことがあるんだ』

 

「・・・・・あんた(ヴィラン)なんだろう?しかも脳無がここに来させた時点で死柄木弔と黒霧の仲間・・・・・いや、トップにいる者だと教えているようなもんだ」

 

『ハハハ、まだ名乗ってすらいないのに良く私のこと理解してくれるね』

 

「あの二人が捕まっているのに脳無がここにいる。なら考えられることは限られてくるんだよ」

 

『なるほど、君は力の他にも頭もイイようだ。どうだい、私の仲間・・・・・いや、弔の仲間になってくれないかい?君ほどの器なら大歓迎だ』

 

まさかの誘い。俺の腕を掴んで寄り添うお茶子がビクッと震えた。―――大丈夫だ。

 

「生憎、もう(ヴィラン)になるつもりはない」

 

『うん?その言い方だと一度はなったみたいな言い方だね』

 

「諸事情あってな」

 

で、用件は何だ。と本題に進めと催促する。パソコンから謎の男の声が用件を言った。

 

『さっきも言ったが、頼みたいことがある。それは今監獄にいる弔と黒霧、そしてヒーロー殺しを助けてほしいんだ』

 

「・・・・・なんだと」

 

理解はできなくはない。だけど、俺が・・・・・正義を志す者達でも素直に応じると思っている筈がないだろう。

 

『むろん、タダとは言わない。こちらはそれ相応の報酬も用意してある。きっと喜んで引き受けてくれるはずだ』

 

「相応の報酬、ね。仮に断ったら?」

 

『残念だけど報酬は無しだ。当然だけどね。因みに断わってもいいけど、君のせいで大変なことになるよ?』

 

「威しか。・・・・・その報酬とやらはなんなのか教えてくれるのか?」

 

「一誠君っ!?」と応じる気でいる俺に愕然とするお茶子。でも、ここは話しを聞いてからでも遅くは無いはずだ。

 

『そうだね・・・・・ああ、テレビは見たかな?今ニュースが流れているはずだけど』

 

「ニュース?」

 

怪訝になる俺はお茶子に頼んでテレビを見て言ってもらった。それから数十秒後・・・・・。物凄く顔を青褪めて戻って来た。

 

「い、一誠君・・・・・」

 

「何が分かったか?」

 

コクリと頷き・・・・・教えてくれた。

 

「八百万さんと耳朗さんが家族と一緒に誘拐されたって・・・・・」

 

「―――――っ!?」

 

まさか、この男・・・・・っ。

 

『そう、報酬は君のクラスメートとその家族の命だ。断わってもこちらとしては構わない。彼女等の命を人知れず奪うだけだからね』

 

愉快そうに声を弾ませるのを隠さず、俺が次に行動を出るのか分かり切っている感じだ。

 

「やってくれる・・・・・流石は真に賢しい(ヴィラン)だな」

 

『褒めてくれてありがとう。さて、引き受けてくれるかな?もしも引き受けて私の依頼を達成できたら監禁している場所を教えてあげるよ。それと先に言うが、彼女達は脳無の他に雇った(ヴィラン)達と一緒だ。一切の手出ししないように伝えてあるが、長引くとしびれ切らして・・・・・どうなるか想像できるかな?』

 

「っ・・・・・!」

 

断わる要素をことごとく塞いでくれる・・・・・異世界でも敵は狡猾のようだなっ。

 

「・・・・・そいつらだけを解放すればいいんだな」

 

『ああ、他にも囚人がいるだろうけど私が必要なのは三人だけだ。特に弔は今後の(ヴィラン)連合に必要不可欠な存在だ。私は今動けない身でね。彼を育成している真っ最中なんだ』

 

「第二のあんたとしてか」

 

『ふふ・・・・・本当に君は何でも分かっちゃうんだね。さあ、肯定か否か今すぐ決めて欲しい』

 

目の前にいたら、ニーズヘッグに喰らわせたいなぁっ・・・・・!くそったれっ・・・・・!

 

「・・・・・分かった。お前の頼みを引き受ける」

 

『ありがとう。では、彼等がいる監獄の場所を教えるよ。それとこの事を他の者達に告げないことを約束したほうがいい。人質の命は私が握っているからね兵藤一誠』

 

男から住所を教えてもらった後。パソコンを閉じ、脳無は踵返して俺達の目の前からいなくなった。

 

「・・・・・」

 

一拍遅れて俺も外へ出ようとする。だけど、俺の腕をお茶子は掴んだままだった。

 

「け、警察に・・・・・ううん、オールマイトに教えてっ!」

 

「駄目だ。今の俺達は(ヴィラン)の手の平にいる。俺達が他の皆に助けを、相談することも釘を刺されている。どっちも、いやそれ以外でもすれば二人と二人の家族の命が奪われる。―――どうしようもない状況だ」

 

だから俺が行くしかない・・・・・。そう伝えた後、お茶子の手が力なくして腕から離れる。時間が経過する度にあの二人と両親は今でも危機に瀕している。だから、行かなくちゃいけない。

 

「・・・・・私も一緒に・・・・・っ」

 

「それだけは駄目だ。お茶子の夢が叶わなくなる。―――そうなるのは俺だけで良い」

 

「そん、なっ・・・・・」

 

振り返る。俺の背後にいる少女は目尻から雫を零して頬を汚している。悲痛の表情を浮かべて酷く心苦しい。目の前の華奢な少女に悲しい思いをさせたあの男は・・・・・いつか必ずこの手でぶん殴る。

 

「俺は夢より、大切なことがある。―――誰かを守って皆と一緒に笑み溢れる中で過ごすことなんだ。だからお茶子、俺はあの二人を助けに行く」

 

世間が俺のことどう思うが関係ない。いや、元々俺はこの世界の住民じゃない。気にする必要も無いんだ。

玄関の外へと赴く。そんな俺をただただ見送るお茶子・・・・・。

 

「一誠君っ!」

 

ではなかった。空気が張り裂けそうなほど叫んだお茶子に条件反射で振り返った直後。俺の胸にお茶子が飛び込んでくる。

 

「こんなこと今、こんな状況で言うのはおかしいんやろうけどっ。でも、でも・・・・・!気を付けて・・・・・っ」

 

―――私は、一誠君の味方だから・・・・・っ!

 

「・・・・・」

 

その言葉だけでも十分だお茶子・・・・・。心が満たされた・・・・・だから、これからすることを許してくれ。

 

「ありがとう、お茶子・・・・・」

 

「一誠君・・・・・んっ」

 

潤って小さく可愛い弾力がある彼女の唇と重ね合ってキスをした。時間にして十秒。静かに顔を離して茫然と立ち竦むお茶子に言う。

 

「行ってくる」

 

「い、一誠君・・・・・」

 

「この続きは戻ってから、な」

 

「っ~~~~!?」

 

ボフッと火が噴いたように顔全体が、耳まで紅潮したお茶子を笑みを零しながら背を向けて歩き出す。

 

「―――待っていろ。全部取り返す」

 

久々に俺はキてしまった。

 

 

 

一方、雄英でも二人の誘拐について臨時招集が校長の権限で行われていた。

 

「皆も知っているだろうけど。生徒とそのご両親が(ヴィラン)に誘拐された。この学園に間接的に攻撃しているものだと推測している。だから我々も警察と他のプロヒーロー達と合同で捜索を行い、生徒達を誘拐した(ヴィラン)を捕える姿勢でいたいと思う」

 

「問題ございません。ですが一つ気になる点が」

 

「なんだい?」

 

相澤が挙手をして己の疑問をぶつけた。

 

「ヒーロー殺しとUSJ襲撃犯の逮捕から日が浅い。今回の事件はもしかするとヒーロー殺しと・・・・・兵藤の発言にあてられた(ヴィラン)達の行動ではないかと思います。が、それだけで生徒を誘拐する理由にならない。何か別の目的があるのではないかと」

 

「おいおいイレイザー。それがなんだろうと俺達が行動するべき事は変わらないぜ?」

 

「んなもん分かってる。分かってたら苦労しない」

 

プレゼント・マイクの気持ちも理解できるし相澤の疑問も根津は同意見だった。だが、それを議論しても仕方がない。

 

「他の生徒にも誘拐されていないか確認しないといけない。もしかしたら生徒達を狙った犯行かもしれない。ヒーロー科担当の教員は直ぐに確認をしてほしい。それ以外の皆は学校の防衛と警察と他事務所のヒーローと結託して生徒を誘拐した(ヴィラン)を探しだしてくれ」

 

「「「「はいっ!」」」」」

 

迅速に動きだす教師陣(プロヒーロー)。それを静かに怒りの炎を燃やす根津が見守っていれば、相澤が話しかけた。

 

「校長・・・・・兵藤にも協力を求めますか」

 

「・・・・・」

 

一誠の力を借りる=異世界の能力を借りるのと道理。根津は思考の海に飛び込み、それから首を横に振った。

 

「いや、その必要はないかもしれない」

 

「その理由は?」

 

「彼はオールマイトの義息子だよ?もう彼のように独自で動いているかもしれない」

 

「・・・・・」

 

納得できる根拠と要素を言われ、血が繋がってなくても影響は受けるという事実は実証されている。

 

「一先ず、兵藤の家にいる麗日にも連絡をしますがね」

 

「頼んだよ」

 

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