俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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敵の襲撃

プッシーキャッツの合宿所の外では闇に支配された豊かな森がざわめいていた。虫の息吹も聞こえず夜行性の動物も息を殺して身を潜める理由は、森の向こう側からバキバキと音を立てて現れる影に怯えているのだった。木々を押し退け突き進むは全長20メートルの巨大樹。足は根っこで蛸の様に地面を張りながら行く手を阻むように長い時を掛けて育った木々を薙ぎ倒す様は怪獣だった。直線状にあるありとあらゆる物を躙り、薙ぎ払い、意志を持っているかのような動きで突き進む巨大樹の枝のところに複数の人影が存在していた。巨大樹が前進する先に何があろうと止まる様子はなく、確実に迫っている中で不敵の笑みを浮かべ前へ手をかざす。

 

「薙ぎ払いなさい坊や」

 

根の一部が地面から離れ鎌首を傾げる様に動き、一拍遅れて破壊する対象へブンッッ!!と豪快に鞭の様にしならせプッシーキャッツの宿泊施設の上半分が薙ぎ払われた。

 

「さぁ、雄英狩りの始まりよ」

 

 

 

 

「―――――」

 

急に冷や水をかけられたような悪寒を覚えた。直ぐに気を探知した途端に翼をお茶子達を包み込んだと同時に―――天井が吹っ飛んだ。あっという間に天井が夜空に浮かぶきらめく星が一誠達を覆い、一拍遅れて明後日の方から轟音が聞こえる。

 

「な、なにっ?何なんっ!?」

 

「合宿所が・・・・・っ」

 

慌てふためき、動揺するお茶子達。突如天井が吹っ飛んだ現象に一誠達だけじゃなく、夢の中に旅立っていた男子と女子、プロヒーロー達が起き上がり現況を知ると目を疑う。そして・・・・・。

 

「―――作戦開始よ」

 

「っ!?」

 

なにもは把握も確認もままならない現況の最中、どこからともなく黒い靄や霧の様な視界を真っ黒に染めるものが発生して一誠達を包み込んだ。

 

 

同時刻―――某所の繁華街。

 

『死柄木弔。彼らだけ行かせていいのかい?砂ポーロに黒霧がいるとはいえど彼もいる』

 

「うん、俺の出る幕じゃない。ゲームが変わったんだ」

 

隠れバー的な(ヴィラン)連合のアジトでSOUNDと画面に表示されているテレビから発する男の声と死柄木弔は会話していた。

 

「今まではさRPGでさ、装備だけ万端で・・・・・レベル1のままラスボスに挑んでた。やるべきはSLGだったんだよ。俺はプレイヤーであるべきで、使える駒を使って格上を切り崩していく・・・・・」

 

手形の飾りを外した死柄木はゲーム感覚で例え、その為の手段を考慮した内容を口にする。

 

「その為、まず超人社会にヒビを入れる」

 

脳裏に浮かべるのは、今頃雄英の生徒やプロヒーローを襲撃しているだろう新たな仲間達の姿。

 

「『開闢行動隊』、奴らは成功しても失敗してもいい。そこに来たって事実がヒーローを脅かす」

 

『彼等は捨て駒かい?』

 

「違うさ先生。俺がそんな薄情者に見えるか?奴らの強さは本物だよ。向いている方向はバラバラだが頼れる仲間さ」

 

雄英一行は様々な場所に待機していた(ヴィラン)にワープさせられ、離れ離れになってしまっていた。この状況で頼りになれるのは自分自身と傍にいた同級生のみだ。

 

「成功を願ってるよ開闢行動隊」

 

 

 

「こんばんわ、雄英高校のみなさん」

 

満月を背にして、月光の光を浴びる巨大樹の枝に立つ数人の影の一人がワープから免れた一誠達に声を掛けた。

 

「私達は(ヴィラン)連合開闢行動隊。お休みのところごめんなさいね?でも、昼夜問わずヒーローは活動するのだから叩き起こされても問題ないわね?」

 

(ヴィラン)連合・・・・・!?なんでここに・・・・・!」

 

「気を抜いちゃ駄目よ。私達は何時もどこでも貴方達の傍にいるのだから」

 

深くフードを被った女の声に呼応して、巨大樹の根が触手のごとく蠢き、鋭く一同の方へと襲いかかった。彼女の〝個性〟で巨大な木は動いているのか定かではない。そしてこの状況下でやることは限られている。指示を下す、与える教師やプロヒーローの不在にやるべきこと。強襲する木の触手が鋭利な刃と化した数枚の翼に光の軌跡を残した斬撃に切り捨てられた。

 

「・・・・・やるわね。噂に違わぬ強さだわ」

 

「そりゃどーも。そんじゃ、つぶれちまいな」

 

「っ!」

 

コンマ秒で夜天から伸びる足に気づくことも無く踏み潰される(ヴィラン)。その様子を見て唖然とするお茶子達は一瞥し皆を探そうと動き出している一誠に声を掛けた。

 

「今の一誠さんが・・・・・?」

 

「俺の師匠の武の達人が繰り出す技だ」

 

「武の達人・・・・・一誠さんの世界は凄いな」

 

彼女達も後を追おうとしたところで弱弱しい声が聞こえた方へ振り返る―――光汰が頭から血を流して近づいていた事に気づく。応急処置として嫌した後、暗い森の方へ息を吸って叫んだ。

 

「A組B組全員!死にたくなかったら自衛の為に戦え!」

 

 

同時刻。

 

相澤達は己の不甲斐無さと失態に自分を攻め立てた。警戒を怠っていたわけではない。万全に期して敵対している者達に同行を探られないように考えていた。それがどうだ。先手を打たれ―――ほぼプロヒーロー達はプッシーキャッツの合宿先からずっと遠くにワープさせられてしまった。

 

「なんてことだ!俺達がいながら・・・・・っ!」

 

ブラドキングが地団太踏む勢いで叫んだ。憤怒で顔を怒りで歪める彼に対して相澤は目を細めながら冷静な口調で語る。

 

「俺達だけ飛ばしてラグドールがいないことに疑問だが、合宿先には兵藤がいる。こういう時こそ、あいつに教師の権限を与えられている」

 

「だけどあの子は体が動かせないんじゃ!」

 

「〝個性〟を使える分、まだ戦える方ですマンダレイ。今俺達は兵藤に任せてできることをしなければならない」

 

UとAが組み合わさったロゴマークの大きな学園の前に佇んでいるプロヒーロー達。遠く離れた合宿先から雄英学校までワープによる座標移動されてしまったのだ。

 

 

 

離散した緑谷達は、それぞれ(ヴィラン)と対峙していた。

 

「こいつはどういうことだ?」

 

相手は一人、強面の顔と左眼に大きな傷―――義眼をしているガタイのいい男が心の底から不思議そうに緑谷と中年の男女と相対していた。ワープされた場所、洞穴がある山の崖沿いで(ヴィラン)を一目で見た中年の男女も驚愕の色を顔に浮かべた。

 

「―――ウォーターホース、どうして殺したヒーローが生きているんだ?」

 

「血狂いマスキュラー・・・・・ッ!?」

 

「っ!?」

 

緑谷は目を見開く。因縁のある者達が神の悪戯かめぐり合い、殺し殺された者が再び戦うことになるとは考えも露にも思えなかった。そしてもう一つ、緑谷は確信した。この二人は―――二年前、目の前の(ヴィラン)に市民を守るため戦った末、殺され殉職した元プロヒーローなんだってことを。(ヴィラン)マスキュラーは黒いローブを豪快に取り払って戦闘態勢に入った。

 

「まあいい、また殺せばいいってやつだ。丁度リストにあった奴もいるし纏めて殺すか」

 

その言葉は緑谷に向けられていた。臨戦態勢の構えをし、迎撃する意欲を体で示すとウォーターホースが緑谷の前に立った。

 

「君は早く他の友達のところに行って合流するんだ!」

 

「で、でも二人を置いて・・・・・!」

 

「早くっ、大人の言う事を聞きなさい!」

 

プロヒーローとしてじゃなく大人として緑谷を引かせようとした二人に覆う影。筋繊維のようなものが腕に纏わりついた状態でマスキュラーは殴りかかろうとしていた。その刹那、自衛の為に戦えと催促する一誠の言葉に背中を押された形で、緑谷が全身に「ワン・フォー・オール」の力を解き放った。驚異的な瞬発力でウォーターホースの前に割り込んだ。

 

DOM!!!

 

両腕をクロスしてガードをした緑谷を軽く殴り飛ばし崖に叩きつけた、叩きつけられた緑谷の腕がその打撃の威力を物語らせる。

 

「君!?」

 

「くっ!」

 

手の平から膨大な量の水が決壊したダムの様にマスキュラーを襲う直前、一度戦った相手の〝個性〟を把握している動きで軽く壁へ避けられた。壁着しそこからウォーターホースへ肉薄しつつ膨れ上がった筋肉の筋の塊で横薙ぎに殴打するが。目と鼻の先で渦巻く水に勢いが削がれる。その間、緑谷を助け出す。

 

「無茶をする!マスキュラーの〝個性〟は『筋肉増強』。皮下に収まらない程の筋繊維で底上げされる身体能力で罪のない民間人やヒーローが殺されているんだ」

 

「ここは私達に任せて君は先生のところへ!」

 

「逃がすかよ」

 

もう片腕にも溢れる筋繊維に覆われる腕で軽く地面をへこませる跳躍力で三人の懐に飛び込む殺意―――。迎え撃つウォーターホース。両者の戦いをただ見ているだけの緑谷はやはり自分も戦うべきだと拳を構えるが。

 

『お前、もう拳で戦おうとするな』

 

脳裏に走馬灯のごとく一誠と鍛錬や特訓、修行をしていた記憶が過る。

 

『え、でも』

 

『自分でも何となく察しているだろう。これ以上使う度に骨が折れて腕もボロボロになると、腕が使えない生活になんぞ。ヒーロー活動を全うしたいなら避けるべきだ』

 

『だから足をメインに戦えってこと?』

 

首肯する一誠。

 

『拳より足の方が強いからな。ただ、お前以上に強い・・・・・あのダイヤモンド野郎のような攻撃と防御が秀でている(ヴィラン)と戦うことになれば、やっぱり必殺技みたいな攻撃手段を編み出さなきゃいけない。それはお前自身が考えなきゃいけないがな』

 

『必殺技・・・・・』

 

『もしも拳で倒さなきゃいけない時、もう火事場の馬鹿力と一発一発全力以上の力で倒せ』

 

『それでも・・・・・倒せれなかったら?』

 

『気の攻撃をするか玉砕覚悟でいくしかない。その為にも気のコントロールできるように猛特訓だ。気を扱えるようになれば身体能力は向上するぞ。もしかしたらお前のデメリットも解消できるかもしれない』

 

 

気をコントロールする。緑屋は修行時を思いだし、砲弾のごとく戦うマスキュラーを見ながら何のために過酷な修行をしてきたのか思い返し、身体の奥底に秘めた、全身に可視化するほどの闘気のオーラを纏う。

 

「んだそりゃ?」

 

筋繊維の塊がウォーターホースを弾き飛ばし緑谷へ襲いかかる。

 

―――また彼等をこの(ヴィラン)に殺されてたまるか!

 

初めて実戦で使う闘気を練りマスキュラーの前に滑り込み、両手を前方へ突き出す。援軍は来ない、頼りのクラスメートもどこかで戦っているはず。(ヴィラン)を倒すしかない状況に躊躇などできるはずもない。自分より強い相手に対して全力で望まないといけないと教わったばかりだ。

 

(全力ッ!)

 

ワン・フォー・オール レーザー 100%!

 

発動した個性+闘気の砲撃が相乗効果を生み、遠くからで見える極太の光る緑谷が放った気砲に、マスキュラーの驚愕の絶叫が彼の姿と共に呑み込まれる。

 

「――――――――――ッッ!?」

 

地上から突き進む流星、その光景に各地で戦っている敵味方は一瞬意識を奪われた。

 

 

「はっ・・・はっ・・・はぁっ・・・!」

 

気を使うと体力も相応に減ると教えられたとおり、緑谷はたった一発撃っただけで疲労困憊になった。

砲撃をモロに食らったマスキュラーは倒れていて勝敗は決した―――かと思った。

 

「ってぇ・・・・・んだよ、今の攻撃はっ」

 

「なっ・・・・・!?」

 

決して軽いダメージを負ってないマスキュラーがムクリと起き上がる。血を流す上半身が傷の深さを表して立ち上がった相手は緑谷を心底絶句させた。

 

「お前、緑谷ってやつだろう。やるなぁ・・・・・!良い攻撃だったぜ」

 

(効いて、ないっ!?)

 

否、気の攻撃は人間を殺めることもできると教えられた為、無意識に全力で放った気砲の威力を弱めてしまったのだ。ヒーローを志す子供がどんな理由であろうと一誠の様に躊躇なく殺すことはできないから。

 

「俄然、楽しくなってきたじゃないか」

 

ポケットに手を突っ込む。何かを取り出そうとして漁っていた手がポケットからこぼれ落ちる何かの型と共に掴んで、ソレを深い傷が残っている左眼に嵌めた。

 

「遊ぶつもりで殺そうと思ってたけどよ、止めだ。お前強いもん。こっからは本気の義眼だ」

 

不気味な義眼を装着したマスキュラーの上半身はついに筋繊維の塊にまで膨れる。

 

「来るっ・・・・・!」

 

ウォーターホースもマスキュラーの本気を感じ嫌な汗を掻きながら警戒する。一度殺されたヒーローだ。肉体と精神的に犯罪者の危険度を憶えている。本気になった(ヴィラン)に殺される二の舞にだけはなるまいと戦う姿勢をとった彼等と緑谷、そしてマスキュラーも満月の光が無くなり突然、暗闇に覆われた。

 

「・・・・・えっ」

 

目を疑い、戦慄する緑谷。自分達を暗闇に包ませた正体を背中から受ける月光で照らされるおかげで捉えることができる。

 

「な、なんで・・・・・」

 

「わーたーしーがー」

 

「オールマイトッ!」

 

「救援にきた!」

 

高らかに叫び逆立てる二本の前髪を揺らしながら夜天から緑谷の前に現れた。この場どころか、強化合宿にすら存在しなかった筈の者の登場に場の空気が一変した。筋骨隆々のその逞しく人を安心させる背中を見せつけられる緑谷は信じられないと我が目を疑い、震える声音で吐露する。

 

「オールマイト、ど、どうして・・・・・」

 

「兵藤少年から連絡があってね直ぐにここへ連れて来てもらったのさ。当然、私だけじゃなく直ぐに動ける雄英のプロヒーロー達も後にやって来てくれるだろう!」

 

親指を立ててサムズアップするオールマイトの言葉は実行されている。壊された合宿の前に別の場所と繋がっている空間の穴から、ワープで飛ばされた相澤達が出て来てそこに佇んでいたお茶子達と光汰から事情の説明を受けている。思いもしなかった英雄の登場に畏怖の念を抱き、戦慄するどころか驚喜するマスキュラー。

 

「おいおい、あの英雄が来るなんて聞いてないぜ。でも、お前の血が見れるなら」

 

「いや、君は私の息子に倒されるよ」

 

マスキュラーの話を遮るオールマイトは見た。夜空の闇に紛れて落ちてくる真紅の髪をなびかせながら髪は黒く染まり、露出している肌に浮かぶ黒い入れ墨の様な紋様状、背中に紋様状の三対六枚の翼、腰辺りに黒い尾を生やして異形と化した者が砲弾のごとくマスキュラーとぶつかる瞬間を。

 

「―――」

 

何かとぶつかったものに振り返ろうとした身体が横に傾き、倒れた。どうして倒れたのか理解できないと顔と目が自分と同じく倒れている者と目が合う。

 

「体力を全部奪った。当分は動く事も出来ない」

 

淡々とそう述べられ、ようやく身体の異変に気付いた時は既に遅かった。指先すら動かせないほど体力は奪われ、見動きもできなくなっている。

 

「そういうことだ、(ヴィラン)よ。我々が来たからにはもう好き勝手にはさせんぞ」

 

あっという間に戦いは終わり、オールマイトは緑谷に話しかけた。

 

「大丈夫かい緑谷少年」

 

「あ、はい。なんとか大丈夫です」

 

「そうか。では、私は他の生徒達の救援に行かねばならないのでまた後で!」

 

凄まじい跳躍力で暗い森の中へと姿を消したオールマイトを見送った後、地面に倒れてるクラスメートにも話しかける。

 

「兵藤君、大丈夫?」

 

「なんとかな。でも、話している暇はないぞ。オールマイトはああ言っても、俺達もできる事を終わるまでしなくちゃ駄目だ。これから他の皆がいる目印を作る。お前は皆のところに行って合流しろ。遅れたら鬼レベルの十倍の特訓だ」

 

「う、うんっ!?」

 

後に方々から空へ伸びる光の柱が出現し、それを目印に緑谷達と相澤達が動き出す。

 

 

「兵藤が戦えってよ」

 

「言われんでも俺ァそうするつもりだ。てか、んだこの光はっ!?」

 

「おそらく兵藤の仕業じゃないか」

 

「摩訶不思議」

 

轟、光の柱の中心の爆豪、障子、常闇が相対している(ヴィラン)は二人。一人は全身拘束具と黒い衣服でむき出しな口を残して縛られている細長の男、もう一人は宝石を散りばめているマントやコスチュームらしき出で立ちの金髪碧眼の青年。

 

「消えたまえ」

 

光る爆豪見る目は親の敵のソレだった。いきなりそう言われ、あ?と爆豪は眉根をあげた。

 

「私より煌めいている者の存在は許さない、消えたまえ!」

 

宝石が輝きだし、全身から眩く発する光に視界を奪われる直前。轟は氷壁を張って光を遮断するが集束した無数の光に撃ち抜かれた。

 

「青山の〝個性〟に酷似した〝個性〟かっ!」

 

色とりどりのレーザーが氷壁を撃ち抜き、破壊すると同時に変化自在で伸びる鋭利な刃が氷壁から顔を覗かせ、危機感を覚えて更に何重層もの氷の壁を張り続けることで防戦一方に強いられる。

 

「クソがッ、近づくこともできねぇ!」

 

「手数も距離も向こうに分があるか」

 

前に進むことも攻撃することもままならない今でも氷壁で守り、自分達の位置を悟らせないようにしていることから特定の位置の把握と攻撃が当たらずにいるものの時間の問題だ。このままではダメだと考えても進展しなければ埒がない。障子と常闇はてをこまねく二人を見て顔を見合わせ頷いた。二人が取った行動は―――空への逃避行。爆豪と轟を抱え低く飛んで、森の中を針の穴に糸を通す様に飛び回って(ヴィラン)から遠ざかった。一誠から教わり習得した武空術は走るよりも速く移動でき他の場所へ赴くことが今の四人にとってありがたかった。

 

「そうか二人とも、空飛べるんだったな」

 

「ああ、こうしてれば他の皆と早く合流ができるかもしれない」

 

空へ飛びだし、森の上から確認をすれば光の柱は他にもいくつもあり、忙しく動いていたり留まっていたりと様子が見受けれる。

 

「光の柱は爆豪と同じってことか」

 

「敵対している者にも発見されやすいが・・・・・」

 

「俺達にとっても見つけやすいってことだ。ここは二手で分かれて合流した方がいいと思う」

 

轟の提案に異論なく、障子と轟、常闇と爆豪はそれぞれ分かれて行動を始めるその頃。

 

「あはははっ、無様だね。名門校の生徒でしょ?高学歴の生徒でしょ?―――なのに」

 

靄の様なガスが充満しているその中心に学ランとガスマスクをつけた少年の前にB組の数人が倒れている。戦闘らしき戦闘は起きなかった。有毒のガスを吸わんと息を止め、堪え続けるにも限界があった。

 

「こんな僕相手に負けるなんておかしいじゃないか。夢見させてほしいな。ホラホラ」

 

そして充満しているガスの中で発砲音と苦痛の声が漏れる。少なくない時間でガスを吸い昏倒してしまったB組生徒達にかわす力はない。―――少なくともかわす必要のない二人を除いて。

 

「君達は硬くなるんだよね。銃は効かないか。でも、このガスの中じゃ何時まで息をしてられないでいられるかな?」

 

「「・・・・・っ」」

 

「そうやって仲間を守ってられるのも時間の問題だよね?」

 

切島と鉄哲が皆を凶弾から己の身を盾に呈し、徹して守っている姿は痛々しかった。蔓延するガスの中、一刻も早くここから離れて安全な場所へと移動させたいところ(ヴィラン)がそうさせない。逆に片方だけ攻めてみても。

 

「このガスはさァ、僕から出て僕が操ってる!君の動きが揺らぎとして直接僕に伝わるんだよ!つまり筒抜け何だよ!」

 

ガスの中に隠れて攻撃をやり過ごしかつ銃撃する(ヴィラン)に翻弄され攻めあぐねている。

 

「ぐっ(マズいっ・・・・・!)」

 

時間は掛けてはいられない。いずれ二人もガスにやられて倒れてしまう。それだけはダメだ。倒れては誰が仲間を守るんだ。

 

『ヒーローが倒れたら守るべき者が不安がる。男なら倒れるな』

 

兵藤(あいつ)もそう言っていたじゃないか!と倒れまいと意欲に喝を入れ(ヴィラン)を睨みつける。

 

「なに?このガスと君達の仲間を守らなきゃいけない状況のその目は?」

 

気に入らないと拳銃を突き付ける(ヴィラン)は嘲笑する。

 

「仲間を守る為なら傷ついてもいいって王道的はもう終わりなんだよ。バァカ」

 

BLAM・・・!

 

銃声がそう鳴り響く―――筈だった。射撃を思わず躊躇した(ヴィラン)は突然近くで発生する大嵐にガスが風力の流れに従い巻き起こる風に引き寄せられ(ヴィラン)のステージと化した一帯の森は正常になる。

 

「なんで風がっ!?」

 

意識が二人から反れたその一瞬。駆け出す四本の足、肉薄する相手の気配を気付き、拳銃を構え引き金を引いた(ヴィラン)の銃弾は硬化の〝個性〟の前ではガインッ!と甲高い音を立てて弾かれた。無意味だった。

 

「「んおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」

 

繊細一隅の好機を逃さんと唸る二つの拳が、ガスマスクを被る(ヴィラン)顔面に突き刺さり破砕した。倒れる(ヴィラン)と一緒に霧散するガス。

 

「っっは!はぁっ、ぶはっ・・・・・っぶねぇ・・・・・なんとか倒せたぜ」

 

「ああっ・・・・・しかし、さっきの嵐はなんだったんだ」

 

ようやく呼吸ができることで地面に倒れ込む二人は、大口開いて酸素をいっぱい肺に送り込み戦いを終えたと噛み締めた。

 

 

森の上から皆を探し出して救出をする障子と爆豪。集まりつつある光の柱の一つに近づくとA組とB組の数人が今しがた(ヴィラン)を倒した戦闘の痕跡を残す場所に佇んでいた。二人が合流し、安否と現況を確認していると遅れて翼を羽ばたかせ舞い降りる一誠と合流する。

 

「死んだ奴はいないな?」

 

「ああ、抵抗してなんとかってところだぜ」

 

「分かった。いま、オールマイト達が救援に来てくれている。その為にお前らの誰かを光らせているんだ。直ぐに駆けつけてくれる筈だ」

 

英雄の存在に爆豪達は少なからず安堵で胸を撫で下ろす思いをした。光を目印に助けに来てくれると期待と信頼して、合宿所がある方角を教える一誠は別の場所へと向かった。(ヴィラン)と命懸けで戦っている同級生を助け、(ヴィラン)を撃退して最後の同級生を助けたところで虚空が渦巻く黒い靄から黒霧が現れる。

 

「あ、クロスケ」

 

「黒霧です。兵藤一誠、先生と交わした契約を忘れたのですか?」

 

「あれはお前と死柄木限定の話だろ。(ヴィラン)連合なんて一言も言われた覚えはない。それに俺は倒しただけで捕まえてはいないぞ?お前ならやられた仲間を回収できる筈だ」

 

指摘される黒霧の口から何も発さず靄の様な体が揺らめくだけだ。沈黙は是なりと既に倒された、(ヴィラン)は人知れず目の前の黒霧によって救い出されているのかもしれない。

 

「そう言えばステインは?」

 

「彼は今回の作戦には加わっておりません」

 

「あっそう。じゃあ、誰も死なずに済んだか」

 

「現況その通りです。が、今回は私達の作戦勝ちである事は揺るぎないです」

 

確信した風に述べる黒霧は虚空に消えようと自身の体を渦巻かせる。

 

「兵藤少年!」

 

独特的な呼称を発する声が聞こえた方へ振り返る一誠達。皆の視線の先はオールマイトの姿を捉え、この襲撃の幕も下りたと実感した。

 

「そう、雄英の生徒を拉致する作戦をね」

 

「っ!?」

 

またたく間に一誠を包み込む黒い霧。皆が気付き、オールマイトが手を伸ばし黒い霧に触れる直前で一誠共々目の前から消失した。

 

「兵藤少年!NOOO!!!」

 

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