「・・・・・・んっ」
拳藤一佳が目覚める。まだ意識ははっきりとせずいた意識は見覚えのない天井をボーと見つめた後、上半身を起こして周囲を見渡し、やはり見覚えのない部屋であることを他人事のように確認した瞬間。一誠のことを思い出して部屋から飛び出た。
(何で私は?何時の間に部屋に寝かされていた?あの後どうなって―――)
心と体が疑問の解消を急かし、廊下を走ったり階段を降りたりして―――そこでようやく見覚えのある場所へと辿り着いたら真っ直ぐリビングキッチンへ繋がる扉を開け放った。
「み、皆!」
焦燥に駆られた少女が中に入るや否や目にした光景は・・・・・。
「「「「・・・・・」」」」
「・・・・・」
見慣れた少女四人が沈黙して二人の男性と女性と席に座っていた。あの人達は一体誰なのだろうと状況を把握できていない一佳は求めた。
「ねえ、昨日どうなったの?」
「えっと・・・・・最悪な事にはならずに済んだよ。でも・・・・・」
「目を疑うようなことが起きましたわ・・・・・」
彼女達にとって、今でも信じられない出来事でまだ驚きが抜けきっていなかった。その理由は半日以上遡る―――。
「残りは轟と百、耳朗に茨か。さて、どうする?」
「「「「っ」」」」
強過ぎる、の一言に尽きる。オールマイトを敗北に追い込み、他の四人の同級生クラスメートの歯牙にも掛けず倒した一誠はトップヒーローの実力を凌駕している。一佳を気絶させた一誠は動きを見せない四人から意識を変えて、翼に包まれているオール・フォー・ワンの首筋に刃と化した翼を添えた。
「言い残す事は?」
「また君は世間に悪として認識されるだろうね。前の世界と同じように」
うひゃひゃひゃひゃ!と笑いを改めて笑うオール・フォー・ワンに殺気を飛ばし、殺意が籠ったオッドアイで睨みつける。お前を殺した後、ニーズヘッグの餌にしてやると最後まで人間らしい死に方をさせない考えをした一誠の翼が大きく振りかぶった。轟達が見ている目の前で首を刎ねる処刑を実行しようと―――臨んだその時だった。
「一誠っ!」
シビレた身体で残りの全ての力を振り絞ったオールマイトに飛び掛かれたのと同じ刹那、目の前に音も無く虚空から翡翠の宝石が飛び出して来て―――一瞬の閃光に三人は包まれた。
『―――一誠様』
「っ・・・・・!?」
耳朶を刺激する静かな女性の声音。聞き間違わなければ・・・最初に聞きたかったある女性の声であった。光に包まれた三人は依然と変わらず砂浜にいたが、彼らの眼前は一人の女性が立っていた。
「ほう・・・・・これはまた、不思議なことが起きるものだね」
オール・フォー・ワンさえ驚嘆する。一誠の視界は目の前の女性を見ることが一杯だった。一本に結った銀髪に琥珀の双眸、メイド服を身に包んだ女性の名を信じられないと震える声音で吐露した。
「・・・・・リーラ」
『この記録映像を見ていると言う事は、異世界でも元気にいらしていることでしょう。原始龍様から一誠様に贈り物を届ける話を持ちかけられまして、話し合いをした結果、私達全員の記録映像を貴方様の下へ届けることに決まりました』
記録映像と発せられあの宝石の用途を悟った。何故今になってソレが発動したのか理解できない疑問など二の次の一誠は釘付けとなった目を彼女の姿に注ぐ。
『お元気でいらしておりますか?貴方がいなくなってからこちらは―――』
メイドから元の世界の状況が報告される間、一誠の目から涙が溢れだす。頬が涙で濡れ汚れ、例え映像だろうと見たかった顔、聞きたかった声と共に突然の再会に静かに歓喜する。
『一誠様、貴方様がこちらの世界は戻る術を考えているように我々も異世界へ行く方法を考えています。原始龍様の力を借りずグレートレッドとオーフィス様の力を中心に準備が整い次第、お迎えに参ります。それまで、どうか異世界でも良き家族をご一緒にお過ごしください』
―――それまでどうか しばらくお待ちください 我が最愛の主様
その言葉を残しリーラというメイドの姿がふっと消え翡翠の宝石が砂浜に落ちる。記録映像が消失して以降、微動だにせず見続けていた宝石から天の川のように散らばっている星空へ視線を変えた。
「・・・・・わかったよ」
「・・・・・一誠・・・・・?」
「・・・・・お義父さん。オール・フォー・ワンは殺さない事にする」
「それでいいだろ」自分の意思を変えた一誠に驚愕するも安堵で胸を撫で下ろした気分に浸る。メイドの映像が一誠の考えを変えたのだ。義理の親ではなくきっと本来の家族の言葉に心を動かしたのだろうと。
「一誠・・・・・分かってくれたんだね」
これ以上罪を犯さない事を言ってくれた義息子に心底感動して己の逞しい胸で抱きしめようと両腕を広げた矢先。
「ただし、その姿で捕まえた事にしろよ」
エッ?と不思議な事を言われ改めて自分の姿を見直した・・・・・結果。
ムキムキマッチョから枝の様なガイコツのごとくガリガリ姿に変貌していた。トゥルーフォームになってるっ!?と愕然とするオールマイトとそんなオールマイトの姿に轟達は開いた口が塞がらないでいた。普段冷静で知的な少年少女達でも間抜けな顔を晒すほど、衝撃的だったのであった。
「最後ムリして来た代償だろ。折角正体を知られさせないようシビレさせたのに」
「ふふふっ。誰にも悟らせなかった彼の思いを気付けなかった君が自分で惨めな姿を世間に晒したねオールマイト」
オール・フォー・ワンが見る先には、海辺の騒動に駆けつけた警察とヒーロー達。その中には当然のように元々
「俺でも今さらオールマイトを庇う事は出来ない。これはしょうもないとして諦めてくれ」
「NO・・・・・・」
結果―――オールマイトの本当の姿はその日の夜から世間に明かされ、
と―――そう説明を受けた一佳は疑問符を浮かべた。
「でも、一誠さんはどうしてここに?」
今まで黙っていた一誠が口開く。
「お茶子達を守る意味も兼ねて分身体と入れ替わってここにいる」
続けて謝罪な言葉を発した言う。「悪かったな」と。
「一誠君・・・」
「でも、俺は後悔してはいない。俺の世界じゃ何時も敵は倒すか死ぬか、殺すかで殺伐とした修羅場の中で潜って来た。だからあいつは殺す事に意味がある」
開き直り、とかではない。異世界からやってきた一誠の敵に対する考えはそうなのだと、お茶子達の考えと常識は温厚育ちと過酷な環境で戦ってきた者の違いがハッキリと理解させられた。
「・・・・・本当に、殺さなくちゃいけない人だったの?」
「俺にとってはな」
「でも、貴方がそこまで殺したがっていた人がこの世界にいらしていたとは・・・・・」
「あいつは、オール・フォー・ワンという
八百万の不思議とした疑問の返答として言った言葉は、彼女達に衝撃を与えた。
「え、じゃああの
「いや、この世界では初対面だ。実感しないだろうけど別の世界で生まれ変わった存在、と認識してくれればいい」
生まれ変わり=転生。博識な八百万の頭の中でその意味を察するのに難しくなかった。
「ですが、人は死んでも記憶はそのままであることは有り得ないのでは?」
「そこは俺も同感だ。でも、俺しか知らない事を教えた覚えも無いのに知った風に口から出すあいつとあいつの容姿は間違いなく俺の世界にいた存在だった。―――だから再び殺す必要があった」
自分の手を見つめ、敵の血で濡れた時の光景を被せて見ていた一誠に茨がその手を手で包み込んだ。温かく柔らかい華奢な手の主から優しい声音が耳朶を刺激する。
「私は異世界で生まれた時からの貴方の事は分かりません。ですけれど、この世界で共にヒーローを目指す貴方の事なら知っています」
人身売買に遭ったとき助けられてからの付き合いはまだ短い方かもしれない。しかし、学校に通ってから毎日に言葉を交わしあった日々はこれからも長く続くだろう。
「貴方の世界でどれだけこの手が血で染まっているのかも分かりませんが、私はその手をこうして包みます。ですが、貴方が誤った道に、行動をする度に命を懸けて必ず止めて見せます」
「無理だろう。俺に敵わないんじゃ止められない」
「いえ、今度こそ止めて見せます」
八百万も手を添える。
「昨夜は何もすることもできなかったですが、もっと精進して強くなります」
「・・・・・ウチも」
ソファに腰掛ける一誠の隣に座る耳朗も八百万の手の上に乗せるとお茶子も手を乗せる。
「うん!皆でもっと強くなって一誠君を止められるぐらいにまで頑張るよ!」
残り一人、一佳だけとなった。皆の視線が少女一人に向き、注がれる彼女は出遅れた感を覚えながらもお茶子の手の上に手を乗せた。
「一誠さんは強過ぎるけど、絶対に私は強くなるよ?」
五人の少女の気持ちは一つとなり、さらなる結束が強まったその頃・・・・・・。
「異世界から来たって・・・・・本当なのかい?」
「話せって言うから俺は事実を話しているだけだ」
警察署で取り調べを受けている一誠(分身)から警察は衝撃の事実を突き付けられていた。相手は塚内。猫の巡査と顔を見合わせたその顔は一誠に戻す。
「じゃあ、オール・フォー・ワンに対する殺害目的は?」
「異世界で殺した筈の男が記憶を保持したままこの世界の人類として生まれ変わっていたからだ」
「・・・・・仮にそうだったとして、彼はどんな人物だったんだい?」
「悪魔だよ。テロリストの一派のボスの立場に立っていて世界を巻き込んだ事件を起こした」
「・・・・・それは義父のオールマイトも知っている事なのかな?」
「余計な情報を与えても、俺の世界の事を教えてもあんたら違う世界の者達に何の意味がある?」
無いさ、とそう言われて口を閉ざす塚内。
「異世界を干渉しても警察のあんたらは直接何もできない、しない方さ。だからこうして話してもただの情報と知識となるだけで物理的に意味は成さない」
「それでも異世界は存在すると言う価値はあるよ」
「それでも信じる人間は世界の総人口の一体何割程度なんだろうな?」
未だに身体を動かせれない一誠は車椅子に座らせられている。背もたれに寄り掛り、ギシっと鳴らす。
「ま、それはそっちの勝手なんだけどな。俺はどーでもいい」
「じゃあ、元の世界に帰ることもどうでもいいのか?」
「帰れるなら帰りたいさ。・・・・・でも、もうしばらくここにいてもいいと思ってきた」
その理由は具体的に話されず事情聴取は終わりを迎える。
それからしばらくして・・・・・世間は大いに騒いだ。
オールマイトの本当の姿。オールマイトの義息子の実態は異世界から来た人間!プッシーキャッツが一人ラグドールの拉致後、〝個性〟を使用できなくなる変調等と日本のみならず世界中にも知れ渡る情報に注目の的となっている。
雄英―――。
「等々、君と彼の秘密があの一夜にして全て露見にされてしまったね」
校長室に集まるブラドキング、オールマイト、相澤の三人の前に根津は何時かこうなってしまうかもしれないと悟っていた風に述べる。
「義息子共々、ご迷惑を・・・・・申し訳ない」
「いや、彼まであの
「校長、兵藤はどうしますか」
オール・フォー・ワンに殺意を以って邪魔するオールマイトを打破しようとした一誠の行いは、普通に考えれば退学処分を受けても仕方がない。一誠の心情を考慮すればいたしかたないと思えなくもないが、一言でいえばやり過ぎた。
「これからプロの教員達、君達と検討しようと思っている。彼の正体も世間に知られた。彼を退学にしたらどうなるか予想ができないからね」
「幸い、兵藤の愚行は一部のヒーローと警察、生徒しか知られてませんがね」
「相澤君、君だったら彼をどうする?」
担任として処罰はどうするか校長の質問に対し、しばらくの沈黙を保ち・・・・・。
「どんな理由であれ、ヒーローの道を外れる者をヒーローにする資格はございませんね」
除籍処分を言外する相澤は教師としてヒーローとして淡々と述べた。相澤以外の三人は彼の考えに沈黙し、一誠の処遇は任せる方針で固まった。
「彼は元々存在すら異例だったからとして思って学校に通わせた。故に
校長の机の上に一枚のプリントが置かれており記載されている内容は―――雄英高校全寮制導入検討のお知らせであった。彼らがその下準備をしている間―――。
「兵藤君、久しぶりだね」
「お久しぶりです。麗日さん」
一誠の家にお茶子達の家族が初めて集っていた。事前に三人の家族へ直接家庭訪問の連絡を受けて、なら一誠の家で会いましょうという三家族の同意を了承した。担当の教師が来る前に三人の両親は一誠の家に辿り着き、今招かれたのであった。
「君の話は響香から聞いているよ。あの時の事も含め何度も助け、世話になっている。改めて言わせてくれ。ありがとう」
「百もそうだ。ありがとう兵藤君。君は私達の恩人だ」
八百万と耳朗の両親から感謝の言葉を述べられても複雑そう無顔で首を横に振る。
「友達として当然の事をしただけ。でも、今の俺に感謝なんて・・・・・」
「いや、君が間違いを犯しても娘の未来を守ってくれた事実は変わりない。私達親子は自分の子供の夢と未来が無くなる方がよっぽど心が痛む」
八百万の父親が一誠の肩に手を置きながら真っ直ぐ目線を合わせて言う。
「―――で、娘とはどこまで発展しているかな?」
あ、この親・・・・・知り合いの娘馬鹿な両親の臭いがするぞ?と一誠は感じてしまった。
「発展・・・・・って?」
「娘から良く君の話を聞くのでね。娘を守ってくれるし成績も実績も優秀。八百万家の婿にしても問題無しだから同居を許したんだ」
一誠達は本人へ視線を向けると、恥ずかしげに真っ赤になった顔を両手で隠している八百万の様子が視界に入る。
「お茶子、アレ、実践したん?」
「ア、アレって・・・・・っ!?いや、しとらんよ!?」
お茶子も母親と何腹不穏な話をしていており―――何やら怪しくなってきたので、一誠は耳朗共々これから訪問してくる教師と会合できる部屋へ半ば強引に案内を促した。
「お前の両親だけ普通で安心した」
「ウチもあんな感じだったら嫌だったよ」
どこか安心し、軽く吐息する少女に同情する一誠。
そして・・・・・家庭訪問の時間を迎えた。
一誠の家に相澤とオールマイトがやってきてお茶子、耳朗、八百万の三組の両親とテーブルを挟んで会合を始める。その会合にはお茶子達も参加している。一誠は別の部屋で待機中。
「全寮制ですか」
「はい、此度の一件で学校側は全寮制にすると決定いたしました。生徒の安全とより強固に守り立派なヒーローに育て上げる為に」
「大事に至らなかったとはいえ
相澤からの説明を受け、ロックじゃないよねぇ・・・・・と難色を示す耳朗の父親。
「お父さんの仰る事はごもっともです。しかし・・・・・我々も知らず知らず芽生えていた慢心・怠慢を見直しやれる事を考えております。どうか今一度、任せてはいただけないでしょうか。必ず響香さん達を立派なヒーローに育て上げて見せますので・・・・・」
真正面から苦情や避難を受け止める覚悟で訪問を臨んだ二人の頭はスッと下がる。
「先生、一つ質問してもいいスか」
耳朗が頭を下げる相澤に、隣にいるトゥーフォームのオールマイトを一瞥して問いを求めた。
「一誠はまたウチらと一緒に通えるんスか?」
「・・・・・」
ここにいないと思っているのこれからの事を訊ねられる。しかし相澤の中では既に定まっていた。
「どんな正当な事情や理由でも、感情的に間違いを起こす生徒を指導するつもりはない」
「「「っ―――!?」」」
「あいつは除籍処分にするつもりだ」
辛い選択だとオールマイトは目を閉じ、自分ではどうする事も出来ないと静かに沈黙を保つ。除籍処分確定の判決を下され、三人の少女達は驚きのあまり声を失う。
「除籍処分ですか。それはまた厳しいですね」
「仕方がないです。教師の信頼を裏切ってしまったのは生徒の方です」
「信頼を取り戻す権利すら相澤先生は与えないのですか?」
「ありません」
八百万と耳朗の父親の眉間に皺が寄った。
「俺と八百万さんは警察やヒーローではなく、たった一人の少年によって助けられた。今、貴方とその少年のどちらが信用できるかと言わせてもらえれば少年の方だと断言させてもらう」
「・・・・・」
「愛娘が服を剥ぎ取られ、心身が醜悪な
ダンッ!とテーブルを殴る様に叩きつける耳朗の父親は叫んだ。
「できなかっただろ!悠長にヒーローや警察の助けを乞う間にも娘達は好きでも無い男に穢されていた!あの時、もしも少年が助けに来なかったらお前達教師はどう責任を取るつもりでいたんだ!?それを自分達の不出来な対応を棚上げして除籍処分とは随分と横暴だな!」
「オッさん・・・・・」
「私も耳朗さんに同意見です先生。雄英に進学する前、私の娘は拉致監禁されたことがあり、ヒーローではなく一人の少年が助けてくれました。あの子がいなければ今の娘は雄英に通っていませんでしょう」
「お父様・・・・・」
自分達の父親がこうまで一誠を感謝して怒っている。初めて自分の父親らはそんな気持ちを抱いていたのだと知り感動がじんわりと心から染み渡る。
「・・・・・」
対して相澤は・・・・・その時の事後を思い出していた。
『捕まえた
『ああ、苦渋の決断極まりなかった。正体はバレないように鎧を着込んだけど、
『・・・・・一誠、君は犯罪を犯してまで助けたかった理由は彼女達が好きだったから?』
『俺のせいであいつらの夢を潰したくなかった。ただそれだけけだ』
『自己犠牲のヒーローは長く続かないぞ兵藤』
『いいさ。元より俺の夢は、とっくの昔に潰えた』
心の強い生徒だった。と生徒を守る為に片腕を代償に守り抜いた少年の姿勢は自己犠牲そのものだった。だが、今回はそうじゃない。感情的になって私的な理由で殺害を臨んでしまったのだ。もはやヒーローを目指す道は潰えてしまったかもしれない。
自室でしばらく待機している一誠は眠っていたところ。誰かに揺すられて意識を覚醒したその直後。左眼の視界が三人の少女の顔で一杯で「うおっ!?」とびっくりした。
「・・・・・寝込みで襲われそうになってたか?」
「ち、違うんよっ。また一誠君の中に入るかどうか・・・・・」
言いかけたその途中で力なくしたように喋らなくなり、重い空気を醸し出すお茶子。
「どした?」
「・・・・・相澤先生が仰いましたの」
何をだ、と首を傾げる一誠に耳朗がポツリと漏らす。
「一誠を除籍処分にするって・・・・・」
「・・・・・そっか」
息を吐き、自分の処罰に対して静かに受け入れる風に瞑目する。
「ま、当然の結果だろうな。人を殺そうとした生徒を何時までも通わせる教育者じゃない。俺もその覚悟であいつを殺そうとしたわけだし」
「でも、だからって・・・・・私達は一誠さんに助けられてここにいるのです。先生達の判断が間違っていないからといっても心が納得できません・・・・・っ」
「お前らも納得していないのだって理解できなくない。でも、あの先生がそう言うんならしょうがない。受け入れるしかない」
「私は受け容れ難いよっ」
「先生達だって一誠がいなかったら大変な目に遭っていたかもしれないのに・・・・・ウチはあんまりだと思う」
顔を俯いてぎゅっと握る手が震わす。胸の奥底から湧き上がる何かに堪えている気配を伝えさせる耳朗だけじゃなく、相澤の決定権に納得できないと顔に影を落とすお茶子と八百万。そんな彼女等の重い雰囲気の中で一誠はスッと両腕を動かし三人を胸の中に抱き寄せた。
「じゃーさ、俺の代わりに三人・・・・・いや、一佳や茨も一緒に立派なヒーローになってくれ」
「一誠君・・・・・」
「そうしてもらえると俺は嬉しく思えるからさ。俺ができなかった事を皆がしてくれれば同じクラスメートとして応援もできる」
ギュッと腕に籠める力を強め、自分の気持ちを伝える。痛いほど伝わる・・・・・その悔しさを。
「「「・・・・・っ」」」
「お前らと一緒に卒業もしたかったんだが・・・・・自業自得だ。ヒーローになれなかった俺の分まで、異世界でも叶えられなかった俺の夢を・・・・・一方的に悪いけどお前達に託す」
淡い希望を抱いていた夢。この世界でも自分は叶えられなかった夢はやはり儚く果たす事は出来なかった。二度目の夢すら手にすることができなかった少年に更に酷く寂しそうだったことでお茶子達は小さくない嗚咽を口から発して・・・・・。
「一誠、さんっ・・・・・」
「ううう・・・・・っ!」
「・・・・・ぐずっ」
久しく泣きだした。部屋の空間を悲しみで包み込むうら若き少女達の声は、扉が少しだけ開いて部屋の外に待機していた親族の教師の耳まで届いていた。―――四人の会話も筒抜けであった。それから少しして親族は静かにいなくなり、最後は相澤とオールマイトも。
「次・・・・・行こうか相澤君」
「・・・・・ええ」
―――そして後日。世間は記者会見で一誠が除籍処分を受け、雄英からいなくなる事を知り、オールマイトの本当の正体を知った時とは別の意味で騒然と化した。