俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

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復帰と圧縮訓練

宇宙から再びソレが接近してきた。ソレに気付いた者は極一部の人間であり、騒ぎになったのはもはや必然的だった。極一部の者は騒々しく予測と計算を処理化し終えると顔が真っ青になった。前回の比ではない事実が世界各国の首脳にも伝えられ、対策本部を設ける。

 

 

8月中旬―――雄英での新生活を送る三人の少女達と最後の朝食をする一誠。彼女達の荷物は全て新しく作られた学校の敷地内の寮に送られていて後は彼女達が寮に行くだけだった。

 

「一誠君はこれからどうするの・・・・・?」

 

「時間が余ったからな。元の世界に帰る方法を考えるさ」

 

「寂しいですわね・・・・・一誠さんがいない教室に行くなんて」

 

「もう、どうしようもないんだね」

 

テレビのニュースの話を耳にしながら一人欠けた学校生活を送る未来を見据える耳朗の口から溜息が漏れる。他の二人も同じ心情のようで顔に影を落とす。

 

「俺の自業自得だ。仕方がない」

 

「・・・・・でも、後から先生達が一誠君を除籍処分を無しにするようなことがあったら」

 

「あの合理的が好きな先生にそんな考えをするか?」

 

「「ないかもしれない」」

 

あう・・・と自分達の担任の性格に残念と落ち込むお茶子。

 

「まぁ、仮に学校に復帰できるような事があっても、俺は元々別の世界から来た他所者だ。本来、学校に通う事なんて有り得なかったんだ。それが今、そうなったに過ぎない」

 

「じゃあ、一誠さんはもう学校に戻る気はないと・・・・・?」

 

「ああ、さっきも言った様に元の世界に戻る方法を探すことに専念する。皆が学校に行ったその後にでもな」

 

やる事は既に定まっている。そう断言する一誠の気持ちを分かるが、やはり学校に戻ってきてほしいという思いを抱く彼女達三人はそれ以降口を閉ざした。必然的に静寂な雰囲気が食卓を支配し、黙々と座って料理を食べていた時だった。

 

『速報です。某国のとある州の面積に匹敵する小惑星が再び地球に落ちてくることがNASAから知らせを受けました。既に数多の隕石の流星雨が地球の大気圏を突破して広範囲的に海や地上に降り注いでおります。近隣の住民の皆さんは速やかに安全な場所への避難をしてください』

 

全世界のお茶の間に知れ渡る地球消滅の予感。その報道はアメリカから来たクリアンス達の耳にも入り、迅速な行動で空港に向かおうといた。アメリカにも隕石が落ち被害が発生したのだ。目的のため日本にやって来た彼等も母国を救わんと行動を始めたことをこの時の一誠達は気づかなかった。

 

「隕石、こっち(日本)にも落ちてくるの・・・・・?」

 

「まるで一年前の時と同じですわね・・・・・」

 

「うん・・・」

 

忘れる筈がない一年前の出来事。謎の光が大気圏に入る前に破壊されて事なき得たが今年はどうなるだろうと八百万と耳朗は不安の色を顔に浮かべる時、お茶子は着信が入った携帯を取り出している一誠を意味深に見つめる。

 

 

隕石の墜落のニュースを見終えた後。一先ず学校へ向かった三人を見送った一誠は今でも、何度目か着信を受けた携帯を見下ろし肩にオーフィスを乗せたまま一息。

 

「―――もしもし」

 

 

一年A組、B組のヒーロー科の生徒は敷地内の寮ではなく、実技試験の説明を受けた施設にいた。緑谷達A組と一佳達B組のヒーロー志望の生徒のみならず上級生のヒーロー科も含め総勢120名が集っている。

 

「やっぱ、皆も来たんだな」

 

「普通、集まらず避難する方だけど俺達はヒーローを目指している生徒だもんな」

 

ヒーローを志し目指す生徒は、他の人間、一般の生徒とは違う。薄暗く静寂が漂う空間の中を静かに待っていると根津校長が壇上に現れた。

 

「皆、よく集まってくれた。早速皆に伝えたいことがあるんだ」

 

自分達に伝えたいこととは何だろうか。全ての学年のヒーロー科の生徒達は、その胸の中で静かに悟った。

 

「朝のニュース見たかい?今、この地球に一年前より巨大な小惑星が落ちてこようとしている。その周りの隕石も同様さ。こうして話している間にも隕石は全世界に降り注いでいて都市や町に大災害が起きている。私達がいるこの日本も少なくない被害を被っているのさ」

 

緊迫の空気が張り詰めた。

 

「だから君達、ヒーロー志望の生徒にも現場で動いているプロヒーローと一緒に要救助者の救助の手助けをするんだ。今、全世界は私達ヒーローの助けを求めている。一人でも多くの人の手が必要な状況だ」

 

プロヒーローとまじって演習ではなく実演の救助をする―――。根津から言われたヒーロー科の生徒達は真剣な面持ちで決意を固める。

 

「今から配るプリントに、これから君達が一丸となって組むチームとメンバー、救助活動する場所を記されてる。配られたら直ぐ学校内のバスに向かいながら確認しつつ乗り込んで行動してほしい。私からの説明はこれで終わりにするけど何か聞きたい事はあるかな」

 

教員達から貰い受けるプリントを手にしながら訊ねられた生徒達の中で、飯田が鋭く挙手する。

 

「一年A組の飯田天哉です!一つだけあります。肝心の小惑星の方はどう対処するのか教えてください!」

 

隕石よりも危険極まりない小惑星の対処。人類の滅亡の凶星はどうやって破壊するか、あれの完全な対処を臨まなければ、いくら民間人の救助をしても後から落ちてくる小惑星をどうにもできないのであれば意味はない。質問を求められた根津はその質問の答えを事前に用意してこう返答した。

 

「大丈夫だ。あの小惑星を完全に破壊できる人に協力を要請したよ」

 

その人物は今、多くの分身体を作り内に宿すドラゴン達も解放させては、日本全国へ散らばせながら飛来してくる隕石を尽く破壊して日本を横断させている。オリジナルは小惑星の落下ポイントへ先回りして魔力を練る。

 

「皆は救助に専念して助けを求めている人々を応じるんだ。それが私達の存在意義を示す時でもあり、ヒーローのなのさ!」

 

『はいっ!』

 

異口同音で叫び、迅速な行動を以って一時クラスメートとバラバラになり急造のチームメイトとバスに乗り込んで各地へ移動する。生徒達が学校からいなくなる様子を見送る根津の背後から、相澤が近寄って来た。

 

「相澤君、彼はなんだって?」

 

「『除籍処分した教師がドラゴンをコキ使うな!』と皮肉気に怒鳴られましたよ」

 

もはや雄英と関係を無くされた生徒が世界の窮地を救う為に駆り出された文句を言われた際に、耳元で叫ばれたのか耳穴を弄りながら淡々と答えた相澤だった。

 

「オールマイトの正体を知られた今、彼が小惑星をどうにかできるなんてヒーローも含めて民間人も思っていないかもしれない。なら、私達が今できる最善を尽くすしかない」

 

青空を見上げながら尽くした今、自分達はただただ待つだけしかできないと根津は思い、未来は異世界から来た者に託す。

 

未来を知らないところで託された本人は大気圏を突破してその大きさを誇る面積と全長を晒しながら大気と摩擦して熱を帯び、大陽を彷彿させる巨大な炎の塊と化して落ちてくる様子を睥睨して肉眼で捉えた。

 

「全く、自業自得とは言え龍使いの荒い元教師の借りを作ってもしょうがないのによ」

 

渋々としながら手の中にある翡翠の宝石を身体の中に沈ませた後、真紅の魔力を全身から迸らせる。

 

「ま、元々〝そうする〟つもりだったんだ。やる事は変わりない。―――オーフィス、力を貸してくれ」

 

意を決した目でいない一人の家族の名を言う一誠の身体から、濡羽色の魔力もが迸らせる。この瞬間、逃げ惑い、死を覚悟する者や神に祈る人類は目にした。不可能を可能にしてしまう力を―――!

 

「―――濡羽色の無限の神よ、赫赫たる夢幻の神帝の龍よ。際涯を超越する我は無限の希望と不滅の夢を抱き運命(さだめ)を降す―――」

 

一誠が呪文を唱えると次に身体の内側からも発する複数の声が呪文を唱えた。その間にも一刻一刻と小惑星が迫って空は朱色に染まる。二人の紡ぐ謳は終盤まで続くと二つの魔力は入り乱れ融合し―――。

 

「龍化」

 

落下地点に一匹の巨大な龍が出現したのであった。

 

そして―――紅、黒の極大で極太のオーラが天を穿つ光の柱となって、地を打ち砕かんとする小惑星と地上から1000mで直撃した。その光景は日本全国、遠くても薄らと見えるほど眩い。移動中のバス、緑谷達も窓から見届ける最中―――小惑星の表面が削れ砕き、消失していくもまだまだ破壊しつくしていない。

 

(インフィニティ)・ロンギヌス・スマッシャー!』

 

全力全開で全壊を臨む一誠の一撃で更に威力が増した砲撃は大気を激しく轟かせ、共に落ちてきた数多の隕石はその轟く衝撃波で一網打尽に粉砕したと同時に、小惑星を包み込むようにして呑みこみ、宇宙の彼方まで伸びる光柱は―――全人類の希望の光となった瞬間だった。対して全て出し尽くし疲れたと言わんばかり、深い溜息を吐く。実際、全力を出したのは一年以上無かった結果、本当に疲れた一誠は見上げた。空に小惑星も隕石も無く、苦労している地上を嘲笑っているかのように際涯ない晴天の青空が窺わせてくれる。頼まれごとは無事に終わった、帰って寝ようと考え事をしていた一誠の周囲に幾つものの魔方陣が展開した。

 

『我が主よ。見事だった』

 

『よく破壊できましたね。こちら側にいる人間達が歓喜の声を上げてますよ』

 

『耳障りなほどにな』

 

《こちらも直ぐに戻る故、少し待っていてほしい》

 

了解、と相づちを打ち消える魔方陣から意識を外して龍化を解く。地面に仰向けで横たわっていれば、携帯の着信メロディだった。

 

「・・・・・疲れた俺にこれ以上何かさせたいんならもうゴメンだからな」

 

『それは承知しているよ。君には本当に感謝している。だから何か要望があればお礼をしたいんだけどなにがいい?』

 

「感謝の言葉だけで十分だよ。俺は勝手にしただけだからな」

 

それだけ言っては一方的に通信を切り、電源すら切って今この瞬間だけは誰も邪魔を許さないとしばらくのんびりとしていれば、地方に散らばっていたドラゴン達が続々と集い、一誠の中に戻った。

 

「さて・・・帰るとしようか」

 

二日後―――。

 

『人類滅亡の危機から早二日目となりましたが、崩壊の波が世界各国の都市や町に爪痕を残ったままの救助は今もなおヒーローと警察、救急隊、自衛隊達によって続けられています。助け出される軽・重・死傷者の数は10万人を超え、治療する医師の数が圧倒的に足りておらず治療を施されないまま命を落とす人が後を絶ちません』

 

「―――だからと言って、俺を駆り出すなって昨日も言った筈なのになぁ・・・・・!」

 

「つべこべ言うんじゃないよ。退学させられてどうせ暇だったんだろう。だったら人の為、世の為に動きなさい」

 

今日も今日とて今度はリカバリーガールに駆り出される。熾天使変化(セラフ・プロモーション)幽世の聖杯(セフィロト・グラール)、メリアの創造能力を最大に駆使して怪我人の傷を癒し続けている俺がいた。

 

「いいのかよ。無許可で〝個性〟使ってよ」

 

「あんたが異世界から来たって話はもう世界中知れ渡ってしまったんだ。異世界から来た人間の力は〝個性〟じゃないってのもね」

 

だからと言ってそれとこれは別だろう、と言いたげな目で訴える暇もなく創造と癒しの結界で作られた広域治癒空間に入る人間達の傷は本来、治療や手術する筈の手間と時間を殆ど無くして、結界内に入れば傷の度合いによって少ない時間で患部を嘘のように癒しによって消えていく。感知すれば速やかに警察とヒーローによって次の負傷者を招き入れる為に移動を促される。

 

「お前さんがいなかったらこれだけ多くの人間を助ける事は出来なかった。お前さんに〝優しさ〟が無ければ―――世界各地で負傷している人間を癒しになんて行きやしないさ」

 

 

アメリカ―――。

 

神々しい光の膜に光のドームみたいなものに中に入ると傷が治ると言う噂が広まり、病院や災害現場付近にいるとも伝えられ実際に行ってみれば。

 

「Oh・・・・・Angel!」

 

そこにエンジェルがいる!と人々は光を求める様に集まって傷を癒されるのであった。クリアンス達の耳に〝あいつ〟がいる話を聞き、国境を越えて救助者を助けに来た事実を胸に留め己の任務を全うする。

 

 

「―――俺はできる事をしているだけだ」

 

「―――ああ、あんたはそれでいいよ」

 

それから後で聞いた話、雄英を始め他の殆どのヒーロー育成機関の学校のヒーロー科の生徒達は現場に出てプロとまじって救助活動をしているようだった。あいつらにとって思いもしない実際の救助経験を得て糧となっただろうな。

 

 

そして人類滅亡の危機から約八日後―――。

 

緑谷達一同は学校に呼び出され、それぞれの教室で教卓に立つ担任の話を聞く姿勢と耳を傾ける。

 

「八日間人命救助お疲れ。お前達の活動の甲斐もあって助け出された人の数は数え切れないが、お前達には残りの二日間、やるべきことがあるのでそっちに専念してもらう」

 

やるべきこと?頭上に疑問符を浮かべる全生徒に説明する。

 

「隕石の衝突で言いそびれたが、これから君達は〝仮免〟取得が当面の目標だ。ヒーロー免許ってのは人命に直接係る責任重大な資格だ。当然、取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」

 

仮免の取得を得るだけで取得者は半分以下の事実とその困難極まる現実に難しい表情を浮かべる。

 

「そこで今日から君らには一人最低でも二つ・・・・・」

 

指で入って来いと言う仕草をする相澤に呼応して扉が開く―――開いても誰も入ってくる様子がない。どうしたんだ?と不思議に思う切島や瀬呂の前にいる相澤の眉間は寄り、束縛武器の布で廊下にいる誰かを縛り、強引に教室に引っ張り込みながら言った。

 

「必殺技を作ってもらう!」

 

「「「えっ、兵藤!?」」」

 

 

―――俺が来た(byグラントリノ)―――

 

 

「「「えええっ!?ひょ、兵藤!?」」」

 

二度とA組の教室にやって来ないだろうと思っていた幼女を肩車させている少年が、不機嫌そうに顔を顰め、相澤へ睥睨して現れたことで一同は驚愕した。

 

「君達の必殺技を作るのに合理的な人材をオールマイトに頼んで」

 

「無理やり連れて来られた」

 

不機嫌な面持ちのまま言う一誠は縛る布をあっさり千切った。

 

「ですが先生、一誠さんはもう・・・・・」

 

「分かってる。もう雄英の生徒でもない限りお前達とは殆ど関わることはない」

 

「じゃあどうして・・・・・?」

 

除籍処分をした張本人が必殺技を作るにしても強引にでも連れて来たのかと、教室は静まり返る。

 

「単純だ」

 

静寂する雰囲気の中でスッと親指を一誠に突き付ける。

 

「こいつは俺達雄英の教師、プロヒーローの信頼を現場で取り戻したからだ」

 

「・・・・・は?」

 

「「「えっ?」」」

 

何だそれ、と言いたげな一誠を始め、唖然とする緑谷達に口を開き続ける相澤はこう言う。

 

「誰もができもしない、多くの人間の命を救った。誰もが認めるオールマイトの様な偉業を果たした。それを考慮した学校側は異例中の異例で―――兵藤一誠の学生として復帰させることに決定した」

 

『―――っ!?』

 

「無論!兵藤の間違った行動の事実は消えない」

 

愚行を忘れたわけではないと歓喜しそうになった面々に水を差す。

 

「それを踏まえて俺達教師やプロヒーローは、これから先の事も考えて兵藤は必要不可欠な存在でもあると認知し、本人の意見を無視して復帰を許すんだ」

 

「無視かよ」

 

「ああ、大いに無視だ」

 

嫌か、と言われても一誠は舌打ちするだけで否定も異論もしなかった。しばらくの沈黙を破り・・・・・。

 

「俺の借りはデカいからなイレイザーヘッド」

 

「その内、倍にして返すよ異世界から来た兵藤一誠」

 

その交わされた会話の中に、復帰を認める雰囲気があった。そしたら次は―――。

 

「うおおおおおおおっ!兵藤、また一緒にヒーロー目指そうな!」

 

「よかったなぁおい!普通ありえねぇのに復帰だなんてよォッ!」

 

「おっかえりぃー!」

 

「やったー!やったー!」

 

「兵藤君!また間違いを起こそうとしたら全力で止めるからな!」

 

「兵藤っ、雄英復帰おめでとー!」

 

クラスメートからの大・歓喜の雄叫びが教室どころか、隣のB組まで届くほど騒然と化した。

 

「おい、今、兵藤が復帰したって・・・・・」

 

「ブラド先生・・・・・本当に?」

 

ザワつく生徒達を前にして腕を組むブラドキングは吐息を零した。

 

「ああ、本当だ。兵藤一誠はもう一度、お前達のライバルとなる一人として戻ってくる事を学校側は許すことに決定した」

 

「「―――っ!」」

 

一佳と茨が声を嬉しさのあまり涙目で歓喜した。

 

「・・・・・A組との合同必殺技をするのも、そういう〝理由〟でもある。お前達、A組に負けないぐらいの必殺技を編み出すんだ、いいなっ!」

 

『はい!』

 

―――・・・・・(by甲田)―――

 

 

相澤とブラドキングと共に必殺技を作り、編み出す為の施設へ足を運ぶA組とB組。その場所は―――UとAが重なった広い寮だった。

 

「残り二日で必殺技なんて作るとすればやっぱりここか」

 

「お前が校長に頼まれていた事は知っていたからな」

 

「頼まれ事は完璧に仕上げてあるから問題ない」

 

自分達の寮に戻って来た一同からすれば、どうしてここなんだろう?と首を傾げる。玄関から入る一誠の足取りは戸惑うこともなく、何度も来た風な真っ直ぐとした歩きで玄関の中へ入っていく。戦闘服(コスチューム)に着替えた面々は左右に分かれる広いA組とB組の下駄箱にも向かわず、真っ直ぐ玄関の奥にある扉に足を運ぶ。

 

「あれ、その扉って開かないんじゃあ」

 

「鍵閉めてるから開かないだろ?」

 

どこからともなく取り出す鍵を持つ一誠が鍵穴に差し込んで解錠した。

 

「ま、これから24時間いつでも使用できるようになるがな」

 

開け放たれる扉の先は硝子張りの廊下―――更に向こうへ進めば―――。

 

「皆久しぶりの、俺特性のトレーニングルームで14日間、この中で己の必殺技を作るんだ」

 

外の世界では丸二日、トレーニングルームの中は14日間という相澤が好む合理的な空間にて己の〝個性〟を磨き編み出す方法に一同は目を丸くした。

 

「りょ、寮にもあのトレーニングルームがあるなんて全然気付かなかった・・・・・」

 

「因みに、A組とB組が同じ寮にしてもらうのも俺の考案だ。他のヒーロー科の上級生んとこの寮もこれと同じ物がある。合理的に活用してもらう為にな」

 

「お前、何時の間にこんなモンを作ったんだよ・・・・・」

 

「頑張った」

 

既に大物だろうコイツ、と話が聞こえるが一誠は気にせず、相澤とブラドキングに話しかけた。

 

「で、ただ必殺技を目的にすればいいんだな?」

 

「強化合宿の時と同じだ」

 

「コスチュームの改良にも視野入れさせた方がいいんじゃないか?」

 

「勿論そうさせるつもりだ」

 

最終確認と交わす話し合いは程なくして終わりを迎える。

 

「んじゃ、空飛ぶ武空術と気のコントロール・・・・・は必殺技を編み出しながら習得したい奴は俺と分身体に願え」

 

魔法で構築する分身体を人数分作る一誠に半ば驚くも意気揚々と臨む緑谷達だった。

 

「―――フフフ、久々に超絶特訓ができるなお前達。身体が鈍ってないか、しながら確かめてやる」

 

が、黒い顔を浮かべる一誠に戦慄する。

 

「あ、一週間分の着替えはキリの良いところで取って来てもらうからな」

 

『あ、そうだった』

 

そして始まる。A組B組合同 それぞれの〝個性〟の必殺技を編み出す―――圧縮訓練!

 

 

「兵藤君、良かったね。復帰できて」

 

「俺は戻る気なんてなかったがな」

 

「ええええっ!?」

 

自然豊かな森林の中で緑谷の驚きの叫びが響き渡る。

 

「な、なんで?」

 

「もう知ってるだろう。俺は異世界から来たヤツだって。だから、元の世界に帰る方法を専念したかった」

 

実際、俺が異世界から来たのかって話。お前らが信じるかどうかは勝手だがな。俺にとってそれが事実でもあるが・・・・・。

 

「本当に、兵藤君は違う世界から来た人・・・・・?」

 

「ぶっちゃけ言うとそうだ。後、俺は人間に見えて人間じゃない」

 

腕を龍化させて緑谷に見せつける。

 

「この世界じゃあ異形型の〝個性〟の人間がいるから間際らしいが、俺は正真正銘の異形なんだ」

 

「正真正銘の異形って・・・・・怪物ってこと?」

 

「実感しないだろう」と聞けば、首を縦に振る緑谷。

 

「俺はこの世界の常識と概念に驚かされた。俺がどんな姿になっても『そう言う〝個性〟を持つ人間』と真っ先に認識されるからな。俺が人間じゃないって言ってもおかしな目で見られる方だろうよ」

 

「兵藤君・・・・・」

 

「さて、話はここまでだ。緑谷、オールマイトの正体を知られたからにはお前も偉業を果たさなきゃ後継者とはなれないぞ」

 

歩きを止めた両足に炎を纏い臨戦態勢に構える俺に対して、全身にワン・フォー・オールのエネルギーを纏い、フルカウルを発動する緑谷。

 

「僕の攻撃の主体は足・・・・・だよね」

 

「腕が爆弾じゃどうしようもない。俺から足技を奪いながらお前も気をコントロールして切島や上鳴みたいな炎か電気も扱えるようにするか」

 

「うん、お願い」

 

 

 

「青山、お前はコスチュームを改良した方がいい」

 

「ノンノン、僕には不要さ。このキラメキコスチュームで―――」

 

「そうか、お前の為にキラメク翼を生やせるコスチュームの設計図を用意したんだが余計なお世話・・・・・」

 

「話を聞かせてもらうよムッシュ兵藤(ガシッ)」

 

図案を破り捨てようとした一誠の肩を掴んで鬼気迫る勢いで顔を近づける青山に止められる。

 

 

 

「砂藤は三分間パワーするその力を、逆に三分間分のパワーで攻撃できやしないか?」

 

「えっと、どういう意味だ?」

 

「糖分を摂取した三分間は五倍に力が増すなら、その三分間分の一撃を一撃必殺にできないかってこと」

 

説明を受けた砂藤の手はポンと納得したような仕草をする。

 

「そういう発想は無かったなぁ。でも、実際どうやるんだ?」

 

「それは自分で編み出さなきゃ、圧縮訓練はその為のもんだろ」

 

 

「轟、氷の工夫はできたかー?」

 

「・・・・・流石にお前のようにはいかねぇ」

 

「んー、そうか。じゃあ、お前も空飛べるようにしておくか」

 

「気をコントロールするってことか」

 

ん、と首肯する一誠は轟を滝の方へ案内する。

 

 

「飯田、この森の中を全力で走り回ってもらおうか」

 

「それが一体何の意味があるんだい?」

 

「速さだけなら俺を除いてクラス随一だろうけど、じゃあ小回りはできるのかって話だ。もしかしたら小回りができたらレシプロのデメリットを解消できる鍵かもしれない」

 

森林を前にして二人は立ち、指導する一誠とされる飯田は顎に手をやって試す価値はあると納得する。

 

「確かに僕はこういう細く入り組んだ道での全力は走った事がない。走り辛いから避けてもいたんだが逆に考えれば・・・・・」

 

「見事に走り切れば、自ずと何かが掴めると思う。まぁ、無駄な事されていると思って走ってくれ」

 

では、行ってくる!と森の中へ走り出して直ぐ森の奥から衝撃音が聞こえてきた。

 

個々の特訓をしている面々を眺められる寮の出入り口の傍で、椅子とテーブルを用意した俺の視界に入り、全員のステータスと情報を記しているところを二人の教師は見守っていた。

 

「見てもいないのにあいつらの成長具合を計っているのか」

 

「見ているぞ。この魔方陣等を通してな」

 

周囲に展開する立体式魔方陣に映っている四十人の生徒達を凝視する二人の教師。話し相手が静かになったのでこっちも集中してデータを書き留める作業に入る。

 

 

トレーニングルームに入ってPM19:30

 

 

「だはーっ!疲れたー!」

 

風呂上がりで寝間着姿の上鳴の一言は他の面々も同意だと言う代表的な言葉だった。浴場のすぐ横には10台のマッサージ機があり、卓球台、牛乳やコーヒー牛乳等々入っている冷蔵庫と旅館的な物が設けられている。そこにあるL字のソファに腰を下ろす上鳴や切島、常闇、瀬呂。

 

「久しぶりの兵藤のシゴキは堪えるよなー」

 

「でもよ、遣り甲斐があるってもんじゃね?」

 

顔中、絆創膏だらけの切島は晴れ晴れとした表情で言えば、静かに常闇が頷く。

 

「しっかし、異世界から来たって話を聞いた時は驚いたよなぁ」

 

瀬呂の発言で、上鳴がいち早く反応する。

 

「あいつが強いのって異世界から来たからだよなきっと」

 

「上鳴、異世界があるって信じるのかよ?」

 

「俺はァ信じるぜ!じゃなきゃ、納得できねぇことが山ほどあるんだしよ。特にあの巨大隕石を破壊した時の映像見たか?撮影者の声がすごかったぜ」

 

俺も見た!と上鳴もはしゃぎだし、

 

黒影(ダークシャドウ)も口からレーザーを出る工夫をしてみるか」

 

と、ポツリと〝個性〟の向上を模索する常闇であった。

 

「ここしばらく色々と騒ぎがあったなぁ」

 

遠い目で記憶を遡る瀬呂の話に他の三人も思わず静かになった。

 

「強化合宿の(ヴィラン)襲撃、兵藤の拉致にオールマイトの本当の正体と兵藤の退学、んで人類滅亡の危機に兵藤の学校復帰」

 

「今まで起きた事件と出来事の中じゃ一番濃かったな」

 

「「ああ」」

 

絶対に忘れられない瞬間だと噛み締める四人がいるルームにB組の男子陣がやって来た。

 

「おっ、切島!ここにいるならお前も卓球やらねぇか!」

 

全身を硬くする〝個性〟が被っている鉄哲からの誘いに切島は不敵の笑みを浮かべて同意した。

 

「よっしゃ!丁度同じ人数だし勝負しようぜ!」

 

「乗ったっ!」

 

始まるプチ卓球勝負大会。ワイワイと騒ぐ楽しく盛り上がる一時はあっという間に終わり二日目の幕が開く。

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