俺のヒーローアカデミア   作:ダーク・シリウス

35 / 37
仮免取得試験

「兵藤、どういうことだよ!」

 

相澤が(ヴィラン)を捕らえている間に俺達は会場の中の更衣室へ足を運ぶ。

 

「何がだよ?」

 

声デカい、と切島にチョップしながら言い返す俺へ何やら訴える視線が向けられている。

 

「どうして(ヴィラン)が紛れているってことが分かったんだよ。フツー、分からないだろ」

 

「気を感じれば分かる」

 

どうやってだよ!とやっぱり教えなきゃならんのかと若干面倒気味に歩きながら説明する。

 

「誰しも宿っている気を感じるんだ」

 

「感じるってーどうやってだよ?」

 

疑問をぶつけてくる瀬呂も他の皆も共通の気持ちで耳を傾けてくる。こんな時まで俺の講座を始めなきゃいけないのかと熱心なクラスメートに溜息を吐く。

 

「水行の滝で精神を落ち着かせただろう。それを応用に相手の気を感じようとすれば何時か感じられる。そうすりゃ、そいつ次第でどこに誰がいるのか把握できる」

 

「ステインを見つけた時のか」

 

この中で覚えのある轟が指摘し、俺は首肯する。

 

「相手の気を探るってのは、障子や耳朗もできる探知の意味だ。気にも良し悪しが分かり、(ヴィラン)の気は大抵悪い感じを発している」

 

「じゃあ、気で探知すれば(ヴィラン)を見つけることも早くできるのですね?」

 

「そういう事だ。見えない場所でも気だけは居場所を教えてくれる。だから葉隠が全裸になって姿が見えなくても気だけは教えてくれる」

 

「私の透過危うい!?」

 

ギョッ!と驚いた風に声を上げる彼女に大丈夫だと意を込めた否定の言葉を送った。

 

「逆に気を殺す、気を隠す事も出来るから危なくないぞ」

 

「気を隠すって、気はそんなこともできちゃうの?」

 

「気配を殺して獲物に近付く動物と同じだ。気配と気の両方を消せば、姿が見えても気で探知しようとしている奴からすれば見つけ辛いこの上ない」

 

ま、その両方をしても肉眼で見つけられちゃ意味は皆無に等しいと胸中悟る俺の周囲から感嘆の声が漏れる。

 

「兵藤、その気を探す方法ってやっぱり難しいか?」

 

「精神を統一。後は雑念を消して心を無にする。その状態を保って部屋の中でも外でも常時放っている俺達の気を頑張って感じれ」

 

やり方は教えた、後は勝手にやれとそれ以降俺は口を閉ざす。俺達はこれから、気なんかよりも大事なことを臨もうとしているんだからな・・・・・。

 

 

 

四つの出入り口に大勢の他校のヒーロー科の生徒達が入り、ほぼ密集する形で会場に集った。その数は誰がどう見ても100や200より多くいると見受けれる。初めて色々と前倒しして仮免取得に臨む緑谷達も受験者の数に驚嘆と圧巻されていた。そんな緑谷達と受検者達の前方の壇上には今回の試験を執り行う委員会の人がいた。

 

「えー・・・ではアレ、仮免のヤツを、やります。あー・・・僕、ヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく」

 

本当に眠たそうな顔と目をしている中年の男性が口を開く。

 

「仕事が忙しくてろくに寝れない・・・!人手が足りない・・・!眠たい!―――そんな信条の下ご説明させていただきます」

 

『(疲れ一切隠さないな。大丈夫かこの人)』

 

受験者一同の気持ちが一致した瞬間だったが公安委員会の目良はそんな心情の下で説明に入る。

 

「ずばりこの場にいる受験者1541人一斉に勝ちぬけの演習を行ってもらいます」

 

1541人―――その大勢の中で一体何人が仮免を取得できるか想像ができない中、説明が会場中に響く。

 

「現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくありません」

 

一部の生徒が一斉に、とある生徒へ視線と気持ちを抱いた。

 

 

〝ヒーローとは見返りを求めてはならない〟

 

〝自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない〟

 

 

「まァ・・・一個人としては・・・動悸がどうであれ命懸けで人助けしている人間に〝何も求めるな〟は・・・現代社会に於いて無慈悲な話だと思うワケですが・・・。とにかく・・・対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが救助・(ヴィラン)対峙に切磋琢磨してきた結果・・・。事件発生から解決に至るまでの時間は今、ヒくくらい迅速になってます」

 

ヒーロー達の頑張りと警察との協力の連携しての成果だと言う事はこの場にいる全員が分かっていることだ。受検者の少年少女達もまた・・・・・。

 

「君達は仮免許を取得しいよいよその激流の中に身を投じる。そのスピードについて行けない者、ハッキリ言って厳しい」

 

目良は次に勝ち抜きの演習内容を発表した。

 

「よって試されるはスピード!条件達成者先着(・・)100名を通過とします」

 

『!?』

 

1541人から―――たったの100人まで減らすと衝撃を受けた受検者達。これは5割どころではない。1000人以上の受験者から一握りの受験者を絞る行為は入試以上の苛烈なルールなのだ。

 

「で、その条件というのがコレです」

 

ボールと何らかのボタンの様なものを受験者達に見せつける。

 

「受験者はこのターゲットを3つ身体の好きな場所、ただし常に晒されている場所に取り付けてください。足裏や脇などはダメです」

 

巨大なテレビの映像にもソレが映し出される。

 

「そしてこのボールを6つ携帯します。ターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで3つ発光した時点で脱落とします。3つ目のターゲットにボールを当てた人が〝倒した〟こととします。そして二人倒した者から勝ち抜きです。ルールは以上」

 

ボールとターゲットを当てる数が一致している。もしも6つとも外してしまえば、他の受験者から奪うか、他の受験者が外したボールで補充するしかないだろう。その間、その瞬間を狙われる可能性は大いにある。

 

「えー・・・じゃ展開後(・・・)、ターゲットとボール配るんで全員に行き渡ってから1分後、スタートとします」

 

「ん?」

 

「展開?」

 

もしかして、とこの会場の周囲を見回した矢先に、重く鈍い音共に天井と壁が離れ始めた。開き始める会場の隙間から入り込む太陽光が徐々に大きく広がり、ついには土煙を巻き上げながら完全に平たく開いた会場の周囲を見渡せる。森林、水場、山、工場、高層ビル、住宅街と様々な地形が用意・設けられていたのであった。

 

「各々、苦手な地形・好きな地形あると思います。ですので自分を活かして頑張って下さい。一応、地形公開をアレするっていう配慮です・・・まァムダです。こんなもののせいで睡眠が・・・」

 

本当にムダに大掛かりだな!!―――と思わずにはいられない1541名の受験者一同だった。

 

そんな会場を一望できる教師専用となっている観客席には、生徒に変装して紛れていた(ヴィラン)をスタッフに任せて現れる相澤。

 

「イレイザー?イレイザーじゃないか!」

 

に、旧友と再会したような声を投げるプロヒーローが座っていた席から立ち上がって近づいてきた。そのプロヒーローに対して、A組の生徒でも見た事がない心底嫌そうな表情をした。

 

「テレビや体育祭で何か見かけたけど、こうして実際に会うのは久しぶりだな!―――結婚しようぜ!」

 

「断る」

 

再会の後に求婚を求められた相澤は―――女性プロヒーローから遠ざかろうと態度で表し、来た道に引き返すも「待て待てイレイザーどこに行くんだよ」と笑いながら追いかけられる。

 

 

―――イレイザー付き合おうぜ!(byMs.ジョーク)―――

 

 

「ん?先生が女の人に追いかけられてる・・・・・?」

 

「え、嘘っ、どこっ!?」

 

「いやいや、相澤先生にそんなプロヒーローがいたらスゲーぞ」

 

会場の席で笑いながら相澤を追いかける謎の女性を視界に入れる一誠は心底不思議で吐露した。芦戸が二人を探そうと周りに視線を向けるが中々見つからず諦める。

 

「先着で合格なら・・・同校で潰し合いは無い・・・むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋・・・!皆!あまり離れず一固まりで動こう!」

 

緑谷の推測は正しいと言わんばかり、皆もそうしようと姿勢でいたが。

 

「フザけろ遠足じゃねえんだよ」

 

「バッカ!」

 

「待て待て!」

 

一人で十分だと単独で行動する爆豪を放っておけない切島と上鳴がついて行き、

 

「俺も大所帯じゃ却って力が発揮出来ねぇ」

 

「轟君!」

 

〝個性〟柄、広範囲攻撃な轟は味方を巻き込まず且つ当人も言った通り力が発揮出来やすい、単独行動を臨んだ。

 

「緑谷」

 

「兵藤君・・・っ!?」

 

肩と額とにターゲットを張った一誠が話しかけた。

 

「俺も単独で勝ちに行く。大勢で固まってもあっさり分断されるのが目に見えてるからな」

 

「で、でもそれじゃあ・・・・・」

 

これが最善の対策、今できる事だとも一誠も理解している。が、強い眼差しを向ける。

 

「お前らは自力で空を飛べるようになって気も扱えるようになった。今までの特訓と修行をここで発揮してみろ」

 

「っ!」

 

「こんなところで脱落なんて俺が許さないからな?したらどうなるか・・・・・覚悟しろよお前ら」

 

威風堂々と緑谷達から離れる際、八百万へ意味深に一瞥した。

 

「っ」

 

八百万は―――この試験に合格したら一誠に告白すると宣言した。それを有言実行するのは本人次第。彼女に励ましも応援もせず、爆豪と轟の様にどこかへと行ってしまい。

 

開始秒読みが始まり、そして―――。

 

『スタート!』

 

3秒過ぎたその瞬間、一次試験が始まった!

 

「さて・・・・・・何気に多くないかコレ」

 

山の麓と高架下へ足を運んだ一誠の周りを取り囲む数十人の受験生達。

 

「気ィつけろ。相手は巨大隕石を破壊した奴だ」

 

「こいつを失格にすれば他の雄英の連中も一網打尽だぜ」

 

ボールを持つ腕を構え、一定の距離を保って警戒する多種多彩なコスチュームを着飾る受験生達に視線を配り、金色のオーラを奔流とかせて周囲の受験生達を吹き飛ばす。人間だけじゃなく、高架下の柱も崩し道路を薙ぎ倒す。

 

「龍化」

 

そしてそこに・・・・・金色の翼を生やす金色のドラゴンが出現した。神々しさと力強い威圧感を放ち動揺する受験者達を見下ろす―――。鋭い瞳孔の眼差しと巨大な出で立ちな化け物と化した同じ受験者に。

 

「に―――!」

 

「逃げろォッー!」

 

圧倒的な相手に臆し、背を向けて蜘蛛の子が散らばるように逃げ始めた受験者達を、不快と目元を細め翼を羽ばたかせ空高く飛びフィールドへ真っ逆様に落ちる。

 

「不味い、緑谷っ!」

 

常闇が危機を察知して声を上げた。常闇だけじゃなく、緑谷達全員があの勢いのまま地面に直撃したらどうなるか想像は容易で―――。

 

「飛ぼう!」

 

『全員』が空中へ避難した直後。

 

『ヒーローを志し、目指す奴が!』

 

金色の鱗に覆われた手を握り、

 

『情けなく背を俺に向けて逃げるんじゃねぇよっ!!!』

 

怒りが籠った怒声を張り叫びながら逃げる受験者の前に地面を殴りつけた。幅広く、緑谷達がいた方でも崩壊の波が広がって地面が割れ、工場やビル、山、全ての地形にある物をたったの一発で破壊し尽くした。どこもかしこも激しい地震と地割れで悲鳴が聞こえてくる。

 

「・・・・・やり過ぎだ馬鹿」

 

心底呆れ、手で顔を覆う相澤の呟きなど。

 

『心の弱い奴がヒーローを目指すなッ!』

 

憤慨する一誠の耳に聞こえる筈なかった。そして後にたった一人で1000人以上の受験者達を脱落させて一次試験を合格したのであった。

 

 

―――俺が来たっ!!!(byイナサ)―――

 

 

「バッキャロー!あの野郎兵藤、いくらなんでもやりすぎだぁー!?」

 

「ていうか、これ。死人出てないよな?」

 

「流石に考えてるだろ、怒ってでも」

 

フィールドとしてもはや機能できていない惨状でも試験は続行している。どれだけフィールドが破壊されようと試験を中止にするなど公安委員会は絶対にしない。すれば、また眠れなくなると本音を吐露して。空中に避難して難を逃れた雄英はゆっくりと降りて霧の様にたちこもる土煙の中、剥き出しの地面の瓦礫の上をちょっとだけ進めば倒れている受験者を見つけることができた。

 

「えっと、どうする?」

 

「どうするって合格する為にもやるしかないだろ」

 

苦労もせず二人分のターゲットにボールを当てる楽をしようなど少し気が引く。だが、その気持ちは杞憂に終わる。土煙の向こう側にユラリと動く黒い影を察知した障子が警戒で構えた。

 

「来るぞ」

 

『!』

 

次の刹那。緑谷達に向かって数多のボールが投げ込まれる。

 

 

「ねぇ、イレイザー。あの子がそうだったんでしょう?異世界から来た人間って子供」

 

女性プロヒーローの隣に座る相澤は訊ねられても無言で返答する。

 

「オールマイトが養子にしたって理由は自分の後継者をあの子にする為だったとか?」

 

「・・・・・さぁな。ただ言える事は、あいつの存在で俺の生徒達は他より一歩二歩も先を見据えさせられている」

 

 

「テープ・撫乱留!」

 

緑谷達の前に立ち両のテープを射出し、布を使用して戦う中国の武術を教えられた瀬呂は気を纏わせた状態で巧みに振り回したことで数多のボールをくっつけ防御に成功する。

 

「瀬呂君っ!?凄い!」

 

「へへ、みっちりしごかれたからなっ。気を纏わせて気を操ることでテープをより丈夫で自由自在に動かせることもできるようになったわけよ!」

 

「コンチクショー!オイラだってしごかれたんだ!見てやがれ!」

 

もぎ取った球状の髪にバチッ!と電気が帯電した。髪に電気を溜めた状態で煙の向こうへと次々に投げ続けた最中、一人の受験者が当たったようで姿が見えずともバリバリバリッ!と悲鳴が聞こえだした。

 

「峰田君、今何をっ?」

 

「オイラの髪に静電気を溜めてやったんだ。それにくっついた相手は瞬間にシビレてしまう新・必殺技だぜ!」

 

ドヤ顔で説明した峰田にただくっつけさせるだけじゃなくなったと印象を受けた緑谷達は素直に感嘆した。

 

(瀬呂君だけじゃなく峰田君もさらに〝個性〟を強くしているっ。気を扱えるようになっただけで〝個性〟にも強く影響が出ている!)

 

初めて気と相乗効果を発揮させる二人の〝個性〟に緑谷は高揚感を覚える。気を極める事で人は強くなる、何時か言っていた一誠の言葉を確信にもてるようになった。

 

「―――僕もやるよ」

 

気を纏いワン・フォー・オールを右腕に集中させる。緑谷も動く気配にお茶子が声を掛けた。

 

「デク君、大丈夫?また〝個性〟使ったら腫れちゃうんじゃ」

 

「うん、大丈夫だよ麗日さん。―――鬼の修行を受けたから何とか調整ができるようになったんだ」

 

双眸を上へ向け、何かを見据える。天候を変え、雨を降らした英雄の様に上手くいくかどうか定かではないが。

 

「まずは、この邪魔な煙を吹き飛ばすっ」

 

腕を思いっきり天へ突き出した。

 

『拳圧?』

 

『そ、空気を圧縮して押し出す―――空気砲の強化バージョンと思えばいい。それを正拳突きで実現にしてみせろ』

 

記憶に過る修行の風景。いきなりそう言われても最初はできる筈がないと緑谷は困惑する。

 

『それって、本当に僕ができるの?』

 

『オールマイトでもできるのにお前ができない根拠は無い。お前ができないのは単純に身体がついていけないだけだ。ぶっちゃけ、マッスルじゃないってやつだわ』

 

『Oh・・・・・』

 

『でも、何も俺のお義父さんみたいに豪快にやれって言っているんじゃない。せいぜい煙や霧を吹き飛ばす程度の拳圧を実現してみせればいい』

 

見てろ、と目の前の木々に向かって力強く正拳突きをして見せた。そしたら見えない衝撃が木々をなぎ倒し、どこまでも進んで最後は遠くの壁にぶつかった。

 

『っ―――――!?』

 

壁にめり込む拳の痕。それが拳圧でできた痕跡であると認知してしまった緑谷は愕然と大きく目を見開く。

 

『これが拳圧。ワン・フォー・オールを継承したお前しかできない人の技だ』

 

〝個性〟でもこんなことはできそうで形無しだがなと苦笑いする一誠だったが。

 

『脚に切り替えて負担を減らすのもいいが、必殺技は多く得て損は無い。お前が今、出せれる威力で拳圧を放て。そうすればオールマイトも喜んでくれるだろうよ』

 

 

ワン・フォー・オール フルカウル―――10%ガン!

 

 

ボッ、と突き出した拳から今の緑谷が出せれる威力の拳圧が放たれ・・・・・空気砲で遠くの蝋燭の灯を消す様に周囲の土煙が拳圧で薙ぎ払われ吹き飛んだ。煙の中で戦っていた受験者のところに突然の突風で一時的に動きを止めざるを得なかった。煙は吹き飛び快適に晴れ、状況を確認しやすくなった。唖然として思考が半ば停止しかけている受験生達は、中心の緑谷と雄英に視線を注ぐ。

 

「緑谷、お前・・・・・」

 

「これからが勝負だよ皆。ここで脱落したら、兵藤君が凄く怒るよ絶対!」

 

『―――ッ』

 

それだけは嫌だと思いながらも、今見せつけられた緑谷の技の威力に言葉は皆を鼓舞した。自分達も負けていられないと奮起して、今日まで編み出し会得した経験と力をこの試験に本領発揮しようと動き出す。その様子を魔方陣で介して観戦する一誠は相澤のにも鮮明な映像を見せて楽しそうに見ている。

 

 

ヒュンヒュンと鞭が唸る。大所帯では発揮できない筈の〝個性〟は、蛇のように受験者の脚を巻き付き縛った瞬間、鞭を伝って氷結する氷が対象の脚が凍りついた。もう片方の手に持つ鞭で氷結した鞭に巻き付き炎と熱で溶かし解く。まだ敵対する受験者達が視界に入る。炎と氷の鞭を振るい相手を寄せ付けず且つ両足からも同じく〝個性〟を発動する。直接触れなければ発動できなかった両手は長くしなり、拘束できる物で代用すれば手の代わり遠くから相手を攻撃する方法を駄目元でやらされているが中々どうしてだろうか。鞭を凍らせたまま振るって受験者の体に当てれば瞬間的に凍りつく、逆に燃え盛る鞭は不慣れな調整を必然的にしながら当てることで集中的に燃やす事が可能になる。

 

「あいつ、こう言う事に関して向いてるな」

 

 

ボッボッと燃える炎に何時も以上に爆発する両の掌を眼前の受験者達に不敵の笑みを浮かべながら構える爆豪。

 

『お前、どーせ爆発と相性がいい炎を使いこなしたいんだろ』

 

『ああ?だからどうした』

 

『お前が望む破壊力ある技を一つ伝授してやる。それを覚え、それの応用にした技も増やせばエンデヴァーを匹敵する力を得られる筈だ』

 

その時の自分は笑っていただろう。この年でNo.2の実力を匹敵するかもしれない技を覚えられると知った時は。実際に覚え、威力を試した時は凄まじすぎて震えてしまった。もう前の自分を越えたと確信もした。―――今度はそれを実践に腕を螺旋状に振るいながら炎を更に燃え盛らせ自分が望む破壊力を具現化させた。それは体育祭時、一誠が飯田に放った技と同じ爆発する火炎と同じでその技を自分の物にしたのだ。

 

「死ね、爆殺炎!」

 

爆発する炎が渦の様に解き放たれ、爆豪の敵を全て燃えながら爆発に巻き込まれ凄まじいダメージを負う。一撃で全員を比類なき破壊力で平伏させ、強者と勝者だけが立っている状態の己に高揚感を抱く。

 

「兵藤の奴、爆豪にとんでもねー技を身につけさせやがったな・・・・・」

 

「俺達も負けられねぇって!」

 

何となくと放っておけず着いて来てしまった切島と上鳴だがこのあと出番無かった。

 

「雄英を潰せー!」

 

血気盛んな受験生達の襲撃は収まっていなかった。同じ競い合うライバルと認識されてもいるが、何かと有名な雄英はマークされがちなのであった。その理由を当然相澤は知っているが、「教えていてもやる事は大して変わらん」と敢えて説明はしなかった。故に毎度毎度、雄英を潰す習慣があり、無意識的に故意的にも俗に「雄英潰し」という洗礼が行われる。

 

触手を大きく広げ、宙を浮きだす障子は低飛行で飛び始め、ターゲットを下に隠しながらクラス一誇る巨体で受験者達に体当たりし翻弄する。極めつけは増やした口から―――。

 

「テンタコルビーム!」

 

空の上から複数の口からビームを放ち、広範囲攻撃を繰り出した。

 

「1!」

 

ドーピングという〝個性〟柄、時間制限付きで戦闘に難色が合った砂藤も〝個性〟と向き合い追及した結果。

 

「2!」

 

〝全力三回分〟に固定して大幅なデメリットを伴う方向性に選んだのだった。立った三回だけの行動で脳機能が低下してしまう以前の〝個性〟より悪化してしまうものの―――砂藤は一瞬で受験者の前に移動した。

 

「っは!?」

 

その理由は、代償の代わりに爆発的な瞬発力と膂力を得たのであった。砂藤は瞬間的に移動して相手の懐に飛び込み、爆発的なパワーを以って徒党を組んでいた受験者数人を纏めて殴り飛ばした。

 

「ふぅー、まだ1回分残せてよかったぜ」

 

そして糖分を摂取して三回以内の行動を繰り返す。

 

他の皆も負けてはいなかった。単独であったりツーマンセルで組んだりと受験者達に戦いを臨み、初めての実戦で想像以上の実力と〝個性〟の威力に驚嘆と感嘆しながら『追い詰める』。

 

「だっ!?」

 

吹き飛ばされる受験者。相手は雄英だった。しかし体育祭で見たヒーロー科A組の〝個性〟ではない。何よりアレなのだ。

 

「何で雄英の連中は身体を光らせてるんだよ」

 

気で体を覆い、身体能力を向上させていることを他校は知らない。その疑問は目の前から吹っ飛んでくる影と「ぐあっ!」と悲鳴を上げるほど衝突して掻き消えた。更に言えば、壁とぶつかったと思っている受験者の傍には、受験者が緑谷達と勝負した果てに吹き飛ばされた受験者達もいた。それに気づく間もなく揺れる地面。誰かの〝個性〟で生じる自然現象だろうと高を括りながら一次合格を目指して立ち上がった。しかし、受験者達の足元からは止まない揺れは程なくして―――陥没した。

 

『うおおおおおおおっ!?』

 

落とし穴に嵌まった感覚を覚え、手を伸ばせば直ぐに地上へ戻れる高さの底まで落ちた。それを誰でどんな〝個性〟なのかというと、受験者達が落ちて一時の静寂が一部の場所で包まれている最中だった。地面から飛び出す―――芦戸が身体を覆う酸と一緒に現れた。

 

「大・成・功!緑谷ー、あらかた落ちたよー!」

 

自身の服まで溶かしてしまう酸を全身に覆った気で防ぎ、モグラのように地面の中を溶かしながら陥没させる作業をしていたのだった。元々一誠がフィールドを崩壊させたので相手を嵌めやすかったのだ。ので緑谷はそれを考慮してより合格する為の効率を増やす為に芦戸にお願いした。

 

自分達が他校の人を一ヶ所に集めるから落とし穴を作ってほしい―――と。

 

「峰田君!」

 

「オイラに任せろー!」

 

駄目押しとばかりに相手と地面をくっつかせたりシビレさせたりして動きを二重の意味で封じる。

 

「皆、こっち!取れる人から先に取っちゃって!」

 

皆を急かす緑谷の声はお茶子達を突き動かす。この陥没は自分達を陥れる為、一ヶ所に集められたのだと受験者達は後に気づかされる。

 

 

それから時は経ち―――。

 

 

『イエーイ!(パチンッ!)』

 

一次試験に合格した緑谷達雄英。一人も欠けず合格した喜びをハイタッチで交わし合う一同。ただ一人空気を読まない爆豪だけはせず代わりに爆豪に変身してアホ面晒す芸をすれば、怒声を上げて掴みかかる爆豪がはしゃぎだす。

 

「あー、そーいえば轟。どうだった、やり辛かったか?」

 

「もう少し使ってみようと思ってる」

 

「そっか、まぁ何事もチャレンジだな」

 

鞭を使ってみろと試させられた当人はまんざらそうでもなかった。使い勝手が良かったのだろう。まだ使ってよしと思うならばそのまま装備として轟の手助けになる。

 

「てか障子、お前。やっぱ触手からビーム放った姿は何気に怪物みたいだったぞ。爆豪の次に迫力あった」

 

「そうか」

 

「え、なに?かっちゃん何かしたの?」

 

「ああ、体育祭で俺が飯田に負かした技を放って笑ってた」

 

「「うんうん」」と同伴していた上鳴と切島が首肯した。そして、他の皆も「あー」と納得する。爆豪らしいと。

 

「芦戸、落とし穴で嵌めるのは良いけど町中ではやるなよ?」

 

「分かってるって!」

 

念の為に釘刺す。それから緑谷達に魔方陣を展開しその中央が両開きに開くと観客席で座っている相澤の顔が直接窺えた。

 

「相澤先生。何か一言あるならどうぞ」

 

「・・・・・兵藤、お前が一番やり過ぎだと言いたい」

 

「え、俺かよ」

 

それに関しては緑谷達も同意せざるを得なかった。轟すら首を頷くほどであった。

 

「他の連中は、まぁ、当然の結果だろう。兵藤に鍛えられて〝個性〟も向上した奴がいれば開花した奴もいる。だから次の試験も無様な形で失格になるなよ」

 

『はい!』

 

以上だ、と相澤から告げられ魔方陣を閉じて消失した。次は二次試験―――どんな内容なのかこの時の一同はまだ知る由もなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。