その後の一誠は関東地方を制覇すれば東北地方、北海道と一ヵ月も掛けて制覇した。次は中部地方と張り切って静岡にやって来て桜が咲く街中を歩いていた。
「そういえば、もう春か・・・・・桜がこの世界でも咲いているんだな」
『そうですねぇ。異世界でも変わらぬ物もやはりあるようで』
活動しやすい気温と心地の好い風が桜を吹雪かせ、出会いと別れの季節を感じさせる。この街も
「おい、
「つぅーことはもうヒーローもいるんだな!こりゃ見逃すわけにはいかないな!」
起こすような・・・・・奴がいるんだな。
『・・・・・主、やはり・・・・・』
言うな、言わないでくれ・・・・・!俺がいるだけで事件が発生するおかしな電波を発しているわけじゃないんだ!俺は何もしてないからな!
『我が主・・・・・取り敢えず、収拾をしたらどうだ?』
ああ、そうするつもりだ。駅のところで暴れていると聞こえたから空高く跳躍すれば分かるだろう。
そう確信し、ビルの屋上へと凄まじい跳躍力でジャンプし更にジャンプをすれば―――駅の路線のところで巨大な怪物が焦燥に駆られた表情で暴れていた。戦っているヒーローらしき影は見当たらない。何時ものように天使化と成り、光の軌跡を残すほどの速度で
「朝から暴れるな」
いきなり現れた俺に対し驚きで全身の筋肉を硬直させる
(スマッシュッ!)
心の中でそう叫びながら『ワン・フォー・オール』を発動し、
「ぎゃあああああああああああっ!?」
雷の自然エネルギーの威力をその身に味わっただろう
事が終わり、静寂が場を支配する中、駅から野次馬達の前に降りて拘束した
「じゃ」
後はよろしくと手を挙げて翼を羽ばたかせて空へ飛ぼう下矢先、
「待て待て君!オールマイトの養子の子だろうが子供が大人の仕事に首を突っ込んでは駄目だろう!」
何故か注意をされた。プロヒーローに。どうして駄目なのか不思議でならない為、小首を傾げた。
「駄目?」
「不思議そうに首を傾げても駄目だ!プロの資格を取得している訳も無く勝手に―――!」
「俺は優先順位を理解してやっていただけだ。どうやって被害を最小限にして
指をパチンと弾くと同時に
「俺はそれを考えて当然のことをした」
「っ・・・・・」
「あんたらプロのヒーローでもできることとできないことがある。俺は今の現状あんたらができないことを俺が代わりにしただけだ。所謂ボランティア活動をしたに過ぎない」
天使化を解き、踵返して悠然とした歩調で歩く俺に呼び止める声は無い。
―――俺が来た(by一誠)―――
どれだけ歩いたか、最初の騒動以来悲鳴は聞こえず無意味にヒーローの活躍が作った平和な街中を散歩がてら、主に
「うーん、流石にもう今日は見当たらないかな?それはそれで平和で何よりだと思いたい」
頭上二メートルのトンネルと目と鼻の先まで近づきながら独り言を漏らし続ける。後もうちょっとしたら寝る場所でもチェックするかと、思っていたら緑の縮毛で顔にそばかすがある地味な印象を窺わせる中学生の少年が視界に入った直後、中学生の背後に蠢く影も視界に入る。
「もう大丈夫だ少年!!」
マンホールが一人で跳ね上がったと同時にヒーローが現れた。そのヒーローは俺が良く知っている最高のヒーロー・・・・・!
「私が来た!」
・・・・・あ、この位置。向こう側が俺の存在に気付いていないんじゃないか!?―――回避!
「
トンネルの真上へ跳躍したその直後、凄まじい風圧&衝撃波が俺がいた場所にまで通り過ぎ、ヘドロの残骸らしきものが飛び散る。あ、あぶねぇ・・・・・。あのヒーローと戦った身として不意打ちであんなパンチは食らいたくないと思いながら着地すると、トンネルの中に中学の少年と筋骨隆々、兎みたいな耳を彷彿させる逆立てた二つの髪は金髪の男性がいた。やっぱりこの人だったか。
「あぶなっ!どこから現れたんだよお義父さん!」
「うん?おお、一誠じゃないか!久し振りだねっ!どこから現れたと聞かれればヘドロの
№1ヒーロー、オールマイトその人だった。久しく会っていない俺に感動の再会と抱擁をしてくる。
「というか危ないって?」
「俺もこの中学生を助けようと父さんの個性を発動していたんだよ。ぶっとばすつもりで」
「Oh・・・・・それは本当に危険だった。同じ力がぶつかりあったら、このトンネルが崩壊してたよ」
「だから回避したんだ。避けて正解っぽいけど・・・・・どうするの?飛び散った
そんな俺の心配は杞憂だった。オールマイトが持っていた袋からコカ・コーラ二ℓのペットボトルを二つ取り出したわけだが・・・・・どういうわけか一本を俺に突き出してくる。
「一誠もコレ空にするの手伝って?」
「その辺に捨てれば早いんじゃ・・・・・」
「NO!勿体ないじゃないか!ほら、早く早く。ヘドロが意識を回復する前に詰めなきゃ!」
・・・・・俺がいなかったら、オールマイトは一人で飲むことになっていたのか?これ・・・・・。
あれから何とか飲み乾し、ヘドロの回収を手伝って数十分が経過した。・・・・・腹、キツい。
オールマイトは気絶している少年を高速でありながら軽く頬をペシペシペシと叩きながら意識を呼び起こそうとしている。その様子を尻目で確認し、年季が入ったノート・・・・・いや、黒コゲになってる色んなヒーローを分析してヒーローの絵も書かれたページを興味心身で次々と見ていく。
「・・・・・うわ、俺のもあるのかよ。ということはあの時あの場所にいたのか」
天使の姿の俺が絵で描かれている。こいつ、ヒーローオタクか。
「ヘ・・・・・あ、良かったー!」
「トぁああああ!?」
あ、目が覚めたようだ。振り返り様子を見るとオールマイトが詰めたヘドロを見せながら中学生に謝罪と感謝の言葉を送っていた。このノートの持ち主に近づき、オールマイトに近づきながらノートを、
「ヒーローオタク」
「へぁっ!?」
返す際そう印象を抱かせた中学生に言う。
「じゃあ私達はこいつを警察に届けるので!プロは常に敵か時間との戦いだから失敬するよ!」
「あ、俺も付き沿うことになってるんだな」
「HAHAHA!当然じゃないか、久しく会っていない息子とのコミュニケーションをしたいからね!」
膝をグッグッと曲げて跳躍する姿勢に入っている。背中に天使の翼だけ展開してオールマイトと一緒に移動する準備をした。
「それでは今後とも・・・・・」
脚に爆発的な力を込めたオールマイトは、
「応援よろしくね―――――――!」
そう言いながら俺と一緒に警察署があるだろう方角へと跳躍した。だが、ここで一つ信じられないことが起きた。
あの跳躍する瞬間、中学生がオールマイトの野太い脚にまるでジェットコースターに乗っている人の・・・・・それ以上酷い顔をしながらしがみついていた。
「ってコラコラー!!!」
・・・・・ファンにしては熱狂過ぎやしないか?オールマイトも流石にこの行動をする中学生に仰天したっぽいところで、
『―――――っ!』
・・・・・ここでこれだよ。
「お父さん、悪いけど」
「むぅ、仕方がない。また連絡して落ち合おう!」
悲鳴が上がった方へと旋回して急降下する。オールマイトも俺の判断に間違いないと任せてくれたからには助けないとな。
「うっ・・・・・くっ・・・・・!」
「Mサイズの隠れミノ・・・・・」
おかっぱの頭髪の艶が心電図のような形になっていて、三白眼で福耳が異様に長い先にプラグがある少女が、ヘドロの
「助かるぜぇ・・・・・これで俺の半身を探せれるってもんだ」
「ん”―――っ!?」
涙目で穴という穴からヘドロが侵入されて呼吸がままならない少女は苦痛で酷く顔を歪め、脂汗を掻いていた。
「後数十秒で楽になるから大人しくしていろ。その後は天国のような気分になるんだからよォ」
それは死の意味をしていて少女にとっては命を懸けても避けたいことだった。福耳の先端のプラグを動かし、ヘドロに突き刺して抵抗を試みるが、ボンッ!と弾く音がヘドロの体外から生じた。
「効かねぇよっ!俺の全身は流動的なんだから爆音を受け流すことなんざ造作もねぇッ!」
(ウソ・・・・・っ)
内心愕然と驚く最中でもヘドロは少女を苦しみ続ける。人気のない場所でただ一人、
「だから大人しく俺に身を委ねろ。そうすりゃあ甘美な死が君を迎えてくれるからさぁ」
その声が少女の耳朶にねっとりと絡みつき、少女の意識も遠のいていこうとしていた。
(死ぬ・・・・・ウチ、死ぬ・・・・・!嫌だっ、誰か・・・・・死ぬ・・・・・・嫌っ・・・・・)
朦朧とする意識の中、三白眼の視界に―――真紅を捉えた。
「一度ならず二度までも襲うかこのヘドロ野郎がっ!」
怒声の声と共に凄まじい衝撃波が襲われたのを最後に少女の目の前は真っ暗になった。
「―――っ!―――っ!」
「・・・・・っ?」
暗闇の中、何度も必死に自分の名を呼ぶ声が聞こえる。それは一体誰なのか最初は分からなかったが徐々に覚醒する意識の中で、耳に届く悲痛の叫びでようやくぼんやりと目を開けたと同時に分かった。
「「響香―――っ!」」
「・・・・・」
意識を戻した少女を中年の女性が顔を覆って泣き崩れる。中年の男性は少女の両の頬を包むように添えて見つめる。
「良かった・・・・・目を覚ましてくれて本当に・・・・・」
「・・・・・ここって」
「病院だよ。お前、
「ある人・・・・・」
己を助けてくれた人物の顔は靄が掛かったようにハッキリと覚えていない。ただ、赤より鮮やかな真紅の色だけが鮮明に覚えている。
「ウチを助けた人は・・・・・?」
少女の問いに父親は首を横に振った。
「それがわからないんだ。私達をお前の携帯で病院にいると教えられただけで誰がお前を救ったのかは・・・・・。声は男のだったのは分かっているがそれ以上はな。後で病院の人に聞くが一先ずお前は一晩ここで安静しなくちゃいけない。・・・・・本当に良かった」
「もう、お母さん達を心配掛けないで・・・・・」
「うん・・・・・ごめんなさい」
後に少女は知ることとなる。自分を助けたのは誰かなのかを。
「・・・・・お義父さん、後継者を見つけたのって本当?」
「ああ、一誠。君が言っていた後継者とほぼ当て嵌まっていたよ。力が無く、純粋にヒーローを憧れている子供だ」
「そうなんだ。そいつって誰だかわかる?」
「ほら、あの子だよ。ヘドロの
「・・・・・あいつ?第一印象がヒーローオタクだけど大丈夫なの?」
「問題ないさ。本人も私の個性を受け継ぐことに臨んでくれた。今じゃあ早速体を作り上げる方法を考案中さ」
「・・・・・まあ、当事者達の問題に首を突っ込む気はないけど、あのひょろい体でお義父さんの個性を扱えるかどうか・・・・・」
「それをこれから十ヶ月の間でギリギリでも扱えるようにしなくてはならないのさ。一誠、君はまだ旅をし続けるんだろう?」
「うん、そのつもりだ。だから遠くから応援してるよ」
―――私が来ましたわ(by八百万)―――
「八百万さん、好きです。付き合って下さい!」
「申し訳ございません。私はトップヒーローとなる為にも殿方と付き合うのはまだ考えておりませんの」
「だったら俺とコンビを組んでトップヒーローになりましょう!俺の個性とあなたの個性が協力し合えば敵なしですよ!」
「・・・・・申し訳ございません」
「八百万さん、またフッたのぉ~?」
「仕方がありませんわ。私、雄英に通うつもりですから引っ越さなければいけませんもの」
「堀須磨大付属中学校一のマドンナが違う高校に通って行く前に繋がりを持ちたいか結びたいと男共が躍起になってるのも無理無いかもねぇ」
女が三人揃えば姦しくなるのは当たり前だが、歳不相応のスタイルにポニーテールの少女の二人の友人はお淑やかなので騒がしくはならない。
「その上、成績優秀、スポーツも万能、容姿も整っているし家柄もいい!天から二物を与えられた才女なんて滅多にいないわ」
「八百万さんに見初められた殿方はいいですわね。きっと八百万さんと釣り合う殿方でしょうし」
「ちょっと、私は殿方と付き合う気はまだありませんの。プロヒーローになるまでは」
「じゃあ、付き合うとしたらどんな人が良いの?」
騒がしくはならない筈だった。そして、友人の一言で主にクラスメートの男子達が急に静かになって聞き耳を立て始める。中学一のマドンナの異性の好みを聞く機会を逃す筈がない男子達のあからさまな反応に女子達は白い目で見るようになる。
「どんな人が良いと言われても・・・・・」
「こんな感じが良いなーって人でもいいの。実際に好きになる殿方と違うと思うし」
「・・・・・そうですわね。八百万さんの殿方の好み、興味ありますわ」
期待に満ちた、キラキラと興味津々に八百万の答えを待つ二人の友人に対し、特にこれだという希望は無い彼女が悩んだ末に・・・・・こう答えた。
「私を頼りにしてくれる殿方でしょうか。例え、私よりも優れているとしてでも心底信頼してくれるそんな殿方が」
おおー、と感嘆の声がどこからか漏れ、八百万らしい異性の好みに二人は同感と感心した。
「・・・・・何か素敵ですね。お互いが信頼し合った先に恋愛に発展する。まるでドラマみたいですわ」
「ヒーローも危険なお仕事もあるから信頼し合わないと駄目な時もあるよね。何だかわかるかなぁー」
「ええ、そうですの。家柄も優れた個性も容姿も関係なく、信頼関係がなければ一流のプロにはなれませんの」
「「・・・・・ヒーローから離れてなかった」」
―――昼休み―――
「八百万さん、俺と付き合って下さい!」
「なに言っているんだ。お前程度の奴が八百万さんと付き合えないだろう!俺が相応しいんだ!」
「冗談はその顔だけにしろ!」
八百万に熱狂的なアピールと告白が一挙にして迫った。昼休みになってクラスメートだけでなく違うクラスや学年の後輩と先輩までもがこの時を狙っていたかのように彼女の元へ近づき現れた。教室の中は一気に騒然とし、友人達と昼食する雰囲気ではないと内心溜息を零し、片手に弁当箱を持ち教室の窓に身を乗り出した。
「ちょ、八百万さんっ!?」
焦りの声を無視して自ら窓から飛び降りた直後。すかさず手の平からロープ状の長細い物とその先に鉤爪がついた金具が『創られ』、それを屋上へと投げ放ち―――遠心力を利用して曲芸のような方法で屋上に移動した。
「―――えっ」
「―――ん?」
宙にいる八百万の視線の先に、シートを引いてコンビニで買っただろう弁当箱を広げ、今まさに食べようとしていた天使の少年と目が合い、彼女が今まさに着地しようとした場所には―――。
グシャッ!
「・・・・・俺の昼飯が」
「あ、あの・・・・・言いたいことがあるのですが、申し訳ございませんわ」
もはや食べられる状態ではない弁当を見下ろして顔に暗い影を落とす少年に、生徒ではない者が不法侵入している形で屋上で昼食を食べようとしていた理由を追求したかったが、凄く残念そうな面持ち雰囲気を醸し出すので弁当を食べなくした自分に非があると謝罪する八百万だった。
「そ、それですわね。あなたはどうしてここで食べようとしていたのですか」
「人気のないところで日光浴をしながら食べたかったからだ」
「・・・・・オールマイトの養子の人がどうしてここに?」
「全国を旅しているからだ」
淡々と答える天使こと一誠は太陽光を十二枚の翼に照らし続けるとそれに呼応して淡い光が翼から発生する。
「不法侵入していることについては悪いと思うけど、まさか屋上に降ってくる女子がいるなんて驚いたぞ」
「・・・・・」
まさか、プロポーズしてくる男子達から逃げる為に個性を使っていたと口が裂けても言えない八百万。
「まあ、飲み物が無事ならちょっとは腹の足しになるか」
お茶のペットボトルを手にして飲む一誠をどこか罪悪感が湧き上がってしまい、一瞬の逡巡をして弁当箱の蓋にひょいひょいと八百万の弁当の中身の半分を盛り、一誠へ突き出した。
「どうぞ・・・・・」
「・・・・・?」
「食べ物を不始末にしてしまった私に責があります。あなたも不法侵入してここで食べようとした行いも悪いのですが・・・・・空腹のままどこかへ行ってしまうあなたを放っておけませんの」
と、自分の気持ちを一誠に伝えたところで・・・・・一誠は感動した。優しい少女だと印象を抱いて。
「優しいな・・・・・えと、名前はなんだっけ。俺は知っての通り兵藤一誠だけど」
「八百万百ですわ」
「ん、よろしく八百万」
「こちらこそ、オールマイトの養子の殿方と出会えて光栄ですわ。それと、申し訳ないのですが眩しいので・・・・・」
とお互い握手を交わし合い、彼女の指摘に天使化を解いた矢先に屋内通じている屋上の扉が勢い良く開いた。
「「「「「八百万さん!・・・・・と、手を握っているお前は誰だぁっ!?」」」」」
騒々しくも八百万を追い掛けてきた男子達が揃って一誠に指を差した。
「ファンか何かか?」
「ええ、まあ、そういうところ―――」
と、言いかけた言葉を途中で止めた八百万。血の涙を流し勢いで一誠を睨み、吠えたからだ。
「てめぇ、八百万さんの手を握りやがってぇっ!」
「堀須磨大付属中学一のマドンナの手を易々と触れるんじゃねぇー!」
学校の規則を破ることの躊躇さも無く発動系や変形系と個性を発動し、迫って来るに対し指をパチンと弾くだけで男子達を突如空いた穴の中に吸い込んでは閉じた一誠。
「い、今のは・・・・・」
「五月蠅いから別の場所へ移した」
校庭の方へ指を差し八百万は自分の目で確かめる為、校庭がある方へと視線を向ければ、一人残らず男子達が確かに校庭にいて、動揺の雰囲気を醸し出していた。
「ワープの個性をお持ちなのですね」
「ワープ・・・・・まあ、そうだな」
何か言いた気に眉根をピクリと動かしたが使い方が似たようなものなので、取り敢えず肯定と相槌を打った。
「先ほどの天使の姿もそうですが、あなたは複数の個性をお持ちなのですか」
「詳しくは教えれないけどその通りだ。八百万は?」
「私は創造ですの」
手の平からポコとフランスの人形マトリョーシカが出てきたことで一誠の意識は八百万の能力に向き、興味津々と感嘆を漏らした。
「創造!凄いな、最高の個性じゃないか。何が
「生物以外なら何でも作れますが、最高の個性と言うのは少々大袈裟では?」
「何言っているんだ。その気になれば人の役立つ物を創れるんだ。それこそ人に笑顔を浮かべるほどの物をさ」
虚空から金色の杖を発現した。杖自体が十字架を模した形で大きな十二枚の金色の天使の翼を生やし、輪後光もついている杖が一誠の手の中に収まる。
「詳しくは教えれないと言ったが、俺も八百万と同じ創造の力を持っているんだ」
「私と同じ個性?被りですの?」
「いーや、質が違うだけだ」
創造の能力を発動する。翼が広がり輪後光に光が帯び始め、先端に光が収束し―――空へと打ち上がった。その光を追うように目と視線を青空へと向け・・・・・少しして空から雪が降って来た。
「な?」
「・・・・・雪を降らすなんて・・・・・その杖が創造の個性を?」
「ん、そうだ。この杖で万物を創造できる。これは俺でしか使役できない特殊な杖だけどな」
ぱっと虚空に消える杖を目の当たりにしても雪は収まる気配を感じない。こんな創造は見たことが無いと視線を一誠に戻し半分に分け与えた料理を食べ終えた頃を見計らって質問した。
「旅をしていると言いましたけど、何か目的があるのですか?」
「世界を知り己を知る。ま、見聞を目的と事件解決も視野に入れて旅をしている」
「学校は?」
「通ってない。だが、勉強は怠って無い」
どこからともなく扇子のように手の中で広げるのはその手の本ばかりや小説。一佳との勉強で更に視野を広める意味を兼ねて様々な本を、為になるような本を購入しては読み始めているのだった。
「来年の春まで旅をし続けるつもりだからな。八百万が雄英に通うつもりでいるなら旅先で出会った顔見知りの知人と面識無しで会いそうだな」
「あなたは雄英に通うつもりはないのですか?オールマイトの養子であるのに」
「んー、別に資格取得しなくてもボランティア活動みたいに人を助けたり守ったりもできるからビミョーなんだよ。今もそんな感じで旅先で起きた事件を解決してるし」
「ボランティア・・・・・」
「まあ、その場で誰かに頼られたら応じるのは当然だ。それがヒーローだろう?」
ハッと一誠の発言に顔を向けると天使と化して宙に浮いていた。その姿はとても綺麗で眼帯が無ければ神秘的な存在と見惚れていただろう。八百万に背を向け、一気に凄まじい速度で雪降る空の彼方へと移動してしまった。
「誰かに頼られるのがヒーロー・・・・・」
自分の中でストンと納得してしまった。助けを求められるだけがヒーローではない、頼られることもヒーローなのだと。
だが・・・・・。
「八百万さん、俺はあなたのことが大好きです!付き合ってくれたら一生幸せにします。だから、雄英に通っても―――」
「申し訳ございません。私は誰かとお付き合いする事はまだ考えておりませんの」
何度目になるのか男子からの告白、プロポーズは。断り方も若干作業的に慣れてしまい、同じ言葉で断わってしまう。その日の放課後、人気のない学校の裏校舎に手紙で呼び寄せられそこにいた男子からの告白を遮って断った八百万。
「俺は本気です!」
八百万を慕う熱意と気持ちは確かに本物だったが、彼女の信念という思いが儚くも心までは届かなかった。
「私に対する想いは伝わりますが、一流のプロヒーローを目指す私が他のことに意識を向けている暇はないのです。恋愛に現抜かしては立派なヒーローになれません」
「立派なら、もうなっているじゃないですか!誰にでも隔てなく優しく振舞い、皆の憧れの象徴となっているあなたは俺の中ではヒーローなんです!」
「・・・・・」
「だから、だから俺だけのヒーローになってください!」
男子からの一世一代の告白。頭を下げる男子を申し訳なさそうに八百万は拒否の言葉を送った。
「ごめんなさい」
深く謝罪の念が籠ったお辞儀をし、男子の横を通り過ぎる。卒業と同時に雄英高校がある県に引っ越す彼女にとって時間が惜しい。帰って支度しなければならない―――。
「待ってよ八百万さん」
彼女の歩みを阻む男子達が声を書けながら現れた。八百万にとって、男子達は全員告白をしてきた男子達であると同時に拒絶した男子達。
「酷いなぁ。そいつの純粋な心も踏み躙るなんて。家柄も容姿も成績も運動も個性も何でも優れているからってお高くとまってんじゃないの?」
「何を・・・・・」
「何度も告白を受け入れてくれないから、八百万さんのことが大好きで大好きで仕方がない―――可愛さ相まって憎さが強くなっちゃった俺達は決めたんだ」
バッと背後から八百万の口と鼻を覆う布が押し付けられた。独特の薬品の匂いが鼻腔を刺激、通り肺へ。
「誰にでもならないなら、俺達のペットにしちゃおうってね」
「ッ―――!?」
前からも一人の男子が近づき、八百万の鳩尾に拳を突き刺した。とても一度告白した異性に対する行いではなかった。意識は一気に落ち、視界が黒くなるのを感じ―――。
「目が覚めた瞬間から俺達の
頼れる者がいなければ、助けを求めてもこないのであれば頼れるのは自分自身と・・・・・自分でどうにかしなくてはならない状況になることもある。
(くっ・・・・・)
立ち上がろうとする八百万の手の平から地面へ伸びる何かが後に八百万の為となること本人以外誰も気づかない最中。
(誰でもいい・・・・・これを気付いて・・・・・っ!)
「まだ意識があるのか。流石は優等生。でも、もうお終いだ」
迫る黒い魔の手は―――確実に彼女の意識を狩ってみせた。