雄英高等学校の入試当日。
「君がヒーローになってくれるなんて正直嬉しい半面驚いているよ私は。君が決めたことだからとやかく言わないけど、良いんだね?元の世界に帰る方法を探す暇は無いと思うよ?」
「まあ、お義父さんに対する恩返しの意味も兼ねてるよ。世間も俺は今年で『15歳』として認識されているだろうし、雄英に通わず他の高校に通った瞬間騒ぎになりかねないよ。それと、元の世界に帰る手段を探す時間はあるから問題ない」
「そうか。後悔しないならいい。でも、推薦じゃなく一般の入試でいいのかな?」
「うん。―――他の連中を蹴落とす絶好の機会だから」
ニヤァと邪な笑みを浮かべる俺は「手加減はしなさい!」とオールマイトに突っ込まれた。
駄目か・・・・・でも、筆記試験は何とか大丈夫な方かもな。
「っと、そろそろ時間じゃないか一誠。遅れてしまっては失格になってしまうぞ?」
「それは嫌だな。じゃあ、行ってくるよ」
「うむ!行ってらっしゃい!」
オールマイトと別れ、入試会場兼雄英学校へと足を歩み始める。季節は俺にとって二度目の春。この異世界に来て一年目過ごした俺だがまだまだ未知数なことだらけだ。異世界に、元の世界に帰ることは諦めないけど、この世界で俺はオールマイトに次ぐ本物の英雄になることを目標にした。
「合格したらオールマイトと違う家で過ごさないとなぁ」
じゃなきゃ、あのトゥルーフォームの姿で一緒に外出したら一発でバレる。本人もそれを解って受け入れてくれた。終わったら空いている土地を買わないといけないや。―――空いているかな土地。
「まあ、今は入試のことに集中しよう。勉学の方はお世話になったし何とかなる筈だ、うん」
異世界の常識と勉学は異世界から来た俺にとって幼稚園児以下の知識と同じぐらいだ。―――筆記で最下位なんてなったら俺は恥ずかしくて死んでしまいそうになる。
そんなこんな思いながら雄英高等学校の正門に辿り着いた俺の他にも、入試を受けに来た大勢の少年少女達が正門を潜り中へ入っていく。皆、中学校を卒業してきたんだろうけど、俺は物凄く特別扱いされて学歴ない俺も入試を受けれることになっている。あの動物の校長の計らいに感謝の念を抱かざるを得ないよ。だから合格してお礼をしなくちゃいけない俺は―――。
「・・・・・一誠さん?」
早速知り合いと再会したんだが。振り返り俺の名前を呼んだ人物の姿が視界に入ると茶髪でサイドテールにした制服姿の少女。
「やっぱりっ、一誠さんだ!久し振り!」
「―――一佳」
朗らかに笑いながら、俺に抱きついてきた。感動の再会の抱擁はやっぱりいいな嬉しくなる。拳藤一佳との再会の抱擁はどちからでもなく離れて少々テンションが高い一佳と会話をすることに。周囲からの視線は取り敢えず無視だ。
「ここにいるってことは一誠も雄英に?」
「ああ、うん。そうだよ」
「そうか、そうか。嬉しいな、一誠なら絶対にヒーロー科に入れるから私も頑張らないとな」
「あれからも自己鍛錬はしてるのか?」
心底嬉しそうに笑みを絶やさない彼女は首を縦に振った。やっぱりか、あの時からちょっと気が強くなっているから鍛練しているんだな。
「お互い頑張ろう一佳」
「うん、頑張ろう」
握手を交わし合い。改めて二人揃って雄英の門を潜った。
試験会場へ入試を受ける受験生達、千桁という人数が集う暗闇の空間では、スポットライトを浴びているサングラスにオールバックしながら鶏の冠のような鶏冠状に立たせ、首にスピーカーみたいな物を身に付けている男性が
『今日は俺のライヴにようこそー!!!!!エヴィバデセイヘイ!!!!!』
と試験会場の中央ステージから声を張り叫んでいる。名前はボイスヒーロー「プレゼント・マイク」。マイクをプレゼントでもするのか?とふざけた名前だけど、この世界にとってヒーロー名の二つ名はとても大切らしい。
『こいつぁシヴィ―――――!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユレディ!?』
『「YEAHH!!!」』
と彼のヒーローのテンションに釣られて叫んでしまったから周囲から奇異な視線を向けられる羽目になった。
『OK!テンションの高い奴は好きだが説明をするぜ!入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の「模擬市街地演習」を行ってもらうぜ!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!―――OK!?』
「OK!」
また、釣られた・・・・・。
『演習場には"仮想
三種?貰ったプリントに疑問と怪訝で視線を落とすと四種の"仮想
『俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校"教訓"をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者と!!』
更に向こうへ!!="
『それではみんな良い受難を!!』
「・・・・・」
そして、俺の実力からすれば、
「思いっきり邪魔だ」
拳で風穴を開けてやったのだった!
「・・・・・オールマイト、彼はもう凄くない?即プロヒーローになってもいいぐらいにさ」
「私の息子ですからね。しかも異世界から来た子供なので仮想
「あの少年の世界ではもっと強い何かがいるとすると・・・・・」
「予想を遥かに超える凄まじい人生を過ごしてきたというのよ・・・・・」
各プロヒーロー達がオールマイトも唖然と一誠の活躍を見ていたとは本人も露知らず、試験が終了。結果、ヴィランポイント100で他にもレスキュー55も加えられて堂々の合格ができた。
「あの強さで回復の個性もある・・・・・確かに、
「リカバリーガールの他にも治癒の個性のある者がいると色々と助かりますしね」
「既に
「そこは本人の意志と検討をしなくてはな」
ワイワイと賑やかになる他所にくたびれて小汚い雰囲気を醸し出し、無造作で伸ばした黒髪首に布を巻いた出立ちの男性が内心呆れながら見ていた。
(兵藤一誠・・・・・。こいつだけはこれから入学してくる生徒とは次元が違う強さを有しているか。―――21人目の生徒としてどう扱うか俺達教師の腕っ節次第か・・・・・)
「と、言うわけで一誠。全ての受検者達の中でダントツ一位で合格なのさ、おめでとう!」
「ロボ相手に苦労しないよ。でも、ありがとう」
その日の夜。オールマイトが用意してくれた豪華な料理を一緒に食べながら答える。男二人だけでは少々虚しいけどこれはこれで悪くないな。
「ぶっちゃけ、あの巨大な仮想
「いんや、『素』だ」
「Oh・・・・・」
それだけ弱かったんだよねアレ。
「あの試験、不合理極まりないと思うよ。もう少し、受験生の個性を把握して個性によるテストをすればまだ張りあえがあったかも。あれじゃ物理的な個性を持っている受験生が有利だし」
「・・・・・それって、君が気に掛けていた少年のこと言ってる?」
「その同類の受験生も含んでいる」
きっとあの試験に落ちているはずだ。ヒーローになれる道は厳しいだろうけど這い上がってきて欲しいもんだよ。
「大丈夫さきっと。学校で活躍によっちゃあヒーロー科編入の検討をしてくれることもあるってさ」
「ん?そうなんだ?意外だな。実力主義の学校かと思った」
「HAHAHA!確かに雄英は他の学校のヒーロー科よりもエリート中のエリートと認識されがちだけど、実力主義じゃあないさ。あれだよ、未だに埋もれている原石の発掘さ!私も聞いた話だけど他の科から何人もヒーロー科に編入できた少年少女がいたらしいぜ?だから心操少年も頑張り次第で編入できるよ」
そういうシステムもあったか。なら、チャンスはある方か・・・・・ちょっと安心した。
「そういえば・・・・・お義父さんの後継者の方は?合格できた?」
合格できなかったらシバいてやると付け加えながら聞くと、オールマイトは親指を立てて力強く頷いた。
「合格だよ。君にもあの子の頑張りを見せてやりたかった」
「そっか、それはよかった。そういえば、お義父さんも師匠がいた?いたらどんな人なのか・・・・・って」
「・・・・・」
今の今まで忘れていたかのように、脳内で走馬灯が過ぎったのか、あの全国的英雄視されているオールマイトがガチで全身をガタガタと震わせているっ!?怯えているというか恐がっているというか、戦慄?
「・・・・・やっぱ、いいや」
「・・・・・優しい義息子を得て嬉しいよ私は」
ホロリとオールマイトの目から汗が出てきたとか、かの英雄の誇りの為に見なかったことにした。
「そんな優しい子に私からプレゼントがあるんだが」
「プレゼント?」
「ああ、君。私のことを思って別居するつもりだろ?その為には家が必要だ。だから―――」
どこからともなく大きめの封筒を俺に差し出してきた。
「君の記憶から見て創造の力もあることを知っているから土地だけ何とか確保したよ」
聞きながら中身を取り出し、オールマイトの名義で俺の所有地となっている土地が記載された書類を目に通す。
「場所は一駅離れた場所だけど、大丈夫かな?」
「うん・・・・・十分だ。トゥルーフォームのお義父さんと一緒にいるとオールマイトだって分かっちゃうもんな」
「すまないね。世間にバレてはならない故に君を保身の為な感じで遠ざけるような感じで」
「いや、寧ろこっちが感謝してるよ。身寄りのない俺にここまでしてくれて。完成したらこの家と繋げるようにしておくよ。そうすれば何時でも繋がった家の中で会えるし」
「―――本当、君の住んでいた世界は凄いと思わされちゃうね」
Fantasyな世界だからなー。それ相応に凄いことも強くなれるものなのさ。
「ところで一誠。明日の夜にでもあの少年と会いに行こうと思うんだが一緒にどうだい?」
「ん?んー・・・・・いいや、俺、お父さんと同じで目立つし、お父さんの後継者と何らかの繋がりがあると教えるようなもんだし、そういうのは学校の中でするよ」
「む、そうかい。まあ、確かに私達は目立っちゃうから仕方がないっちゃあ仕方がないね!」
AHAHAHAHA!とアメリカンみたく笑うオールマイト。―――名前が日本人なのにどうして顔と体付きは外国人みたいなんだろうと、たまに思わずにはいられないと気がある。でも・・・・・。
「お義父さん」
「うん?」
「ありがとう」
二人目の父親はもう一人のお父さんに負けないほど頼もしくて心から誇れる凄い人だ。純粋にそう思い、心から笑って感謝の言葉を送ったら、突然マッスルフォームになって俺を力強く抱きしめた。うん、嬉しさのあまりにその姿で抱き締めるのも久し振りだな。
―――それから時が過ぎて春となった。
桜満開、春うららの季節、出会いと別れの時期でもあるこの日。俺は年齢を偽って高校一年生として通う。
・・・・・俺、小学校ですら通ってないよな。元の世界でも高校二年生から編入したし・・・・・。
まあ、今更気にすることでもないか。
「さて・・・・・高校一年から初めて通う俺のクラスは・・・・・っと」
それに毎年300の倍率を超える正体は一般入試定員36名。18人ずつで意外と少ない2クラスしかない。推薦入学者四人も含めて40人。その中に俺も入っているだろうし、知り合いもいるかもしれない。どのクラスにいるか分からないが・・・・・入れば解るだろう。このクラスに―――。