幻獣使いの運命《ディステニー》 作:むにゃあ
崎原 春
高校二年
16歳
10月5日生まれ。
「この身に宿る聖なる獣。数多の時を経て、その身を現世に蘇らせろ」
紗雪 美依
高校一年
15歳
9月30日生まれ
「我。汝と神聖な契約を結びし者。封印された力を解き放ち。この身の悪しき者を打ち砕く力とならん」
覚醒の守り人編Ⅰ
東京湾に浮かぶ人の手によって作られた、人口約五万人の人工島。通称
普通の島と変わりないこの島には、一つだけ可笑しで夢のような事がある。この島には幻獣と言う、この世の生き物ではない生物が存在する。幻獣だ。
それらの生物は人により召喚され、人はそれら幻獣を使役し共に暮らしている。
幻獣を使役する人物を
この島には十年に一度と早い周期で現れるとされる、二人の幻獣使いがいる。
一人は絶対的なその力で、もう一方を守る、
一人は生物を死へと
女王と守り人は二人で一人。女王は力を蓄える期間があり、守り人は女王を、妨害を企てる存在から守る義務がある。
基本的には守り人が男性、女王は女性となっている。この謎の法則については未だ解明されてない。
綺麗な夜空の見えるこの島に、一人の少女がやってくる。
彼女の名前は
対幻獣組織であるため、当然彼女も幻獣使いではあるが、その力は他の幻獣や使役者では到底叶わない、一瞬で組み伏せられてしまうだろう。
今回彼女が担う仕事は、この島に数日前観測された、守り人の拘束または殺害だった。
「……ここが逆神島。リン、探して……」
月が雲に隠れ、月明かりが弱い夜。深い海のようなブルーのロングヘアーの少女が一人。明日から通う高校の夏服を来て立っている。
彼女はこの島の一番高い高層ビルの屋上に立ち、上から地上を眺めている。
そして彼女の横には、雪の様に真っ白で、犬のような見た目の狼の様に凛々しい顔を持つ幻獣がいる。大きさは、サイくらいだ。
本来幻獣使いには、身体能力の変化などはほとんどないのだが、彼女のように幻獣。パートナーとの絆が深いほど幻獣と心を通わせ、感覚を共有することができる。
そして彼女は、年頃の少女とは無縁の、大きなライフル銃。察するとこの、スナイパーライフルを構えているが、もちろん撃つ気はない。
このライフルは隣にいた幻獣が武器化したもの、幻武と言うものだ。その彼女の幻武であるライフルは、好きなようにスコープの倍率を変更でき、両目でスコープを覗くため、狙撃以外に偵察にも向いている。
そして彼女の探すものは一つ。
守り人は他の幻獣使いとは、段違いの雰囲気を放っているため、幻獣に反応し、彼女の相棒。リンが反応して教えてくれるはずだ。
「……見つけましたっ。あそこですね」
数キロ離れた場所が、突如炎を上げ、爆発した。恐らく幻獣使いによるものだ。
もし違ったとしても、このようなテロ紛いなことは、組織上見過ごす訳にはいかない。
彼女は相棒のリンを幻武から幻獣に戻す、リンは狼型の大きな幻獣で、大人二人なら、余裕で乗せて走ることができる。
「それではリン。行きましょう」
美依はリンにまたがると、目的の場所に向かうように指示をだす。するとリンは、高層ビルの屋上から音もなく隣の低い高層ビルの屋上に飛び乗り、それを繰り返し、高度を下げて目的の場所に向かう。目的の場所に、目的の人物がいる事を信じて。
美依が爆発を発見する前、十五分ほど前の事だ。
この島の高校に通う青年、
春は学校帰りに花を買い、毎年事故のあった場所に花を手向けに行っている。春の姉は、生まれてすぐに事故で両親が他界した為、最後の肉親であり、母親のような存在だった……。
だがそんな姉も、数年前に幻獣が引き起こしたとされる事故でもう居ない。今はこの島に一人で暮らしている。
――春は数十分歩いて目的の事故後を訪れた。そこは東京の秋葉原の用な場所で、昔はたくさんの人が行き交っていた。だが三年が経った今でも、燃えたものがそのまま残っていて当時の悲惨さを物語っている。
「……もう三年か。早いな」
その言葉は、目の前に姉がいるかのように発している。しかし当然だが、誰もいない。
三年前この場所では、意図的に配置された数代の大型タンクローリーが、大規模な爆発を起こしている。その時の犠牲者の一人が、春の姉、秋だった。
秋は爆発のあった場所に比較的近い場所にいたため、体は一瞬にして焼かれ、命を落としたとされている。
春が身元確認のた警察署に出向くと、そこには変わり果てた姉の姿があり、誰かなんて全くわからない。……というより、姉でいて欲しくないという感情のせいか、言葉は出なかった。
しかしそんな春に、姉のものと思われる所持品――遺品――が手渡された。それは姉がいつも肌身離さず身につけていた、サファイヤの様に真っ青な宝石が埋め込まれたペンダント。
春もそれ以来、今日まで姉のペンダントを同じように身につけ続けている。
「それじゃっ。また時間が空いたら来るかっ――――」
帰ろうと、その事を姉に伝えている時だ。春の周りで、急に色々なところが爆発し始めた。
春は急な事で思考が追いつかず、ただひたすらキョロキョロと、あたりを何度も見渡す。明らかに何かがおかしいことは、彼が一番よく知っている。
「な、何なんだ。これ……!」
恐らく幻獣による爆発だと、春は推測する。でも春の見える範囲には、そんな姿は見当たらない。
そして次の瞬間、春の元に何かが降り立つ。
「世界幻獣法、最悪の幻獣使いである崎原春……いいえ先輩。すみませんが、死んでもらいます!」
相棒の白い幻獣――リン――に乗って、美依がここにやってきた。
リンを再び幻武に変換し、屋上で偵察していたときとは少し形が違うスナイパーライフルを構える。
「ま、待て! 俺は何もしてねえ! 爆発だって勝手に……!」
美依は焦って無実を訴える春の言葉に一切耳を貸さず、その指をトリガーに掛けて――――
「――――やっべ!」
危険を察知した春は、美依がトリガーを引くと同時に右にある瓦礫に転がりながら身を隠す。転がったと同時に先ほど春がいた場所には、ほんのり焦げた弾痕ができている。
「お前民間人相手になにライフルなんてぶっぱなしてやがる! 正気か!?」
「先輩、いい加減諦めて下さい」
「それにその先輩って言い方なんだよ! 俺はお前の事なんてなんにも知らないぞ!」
春は瓦礫の後ろで、美依はその瓦礫越しに春を狙う形で会話をしている。お互いは一歩も動かない状態が続くが、それは単純明解、春は動いたら狙撃されるからだ。
「それでは先輩。五、数えるうちに出てきてください。そうすれば、身の安全は保証します」
「おいおい。さっきまで殺そうとしてた人間の言葉を、そう安々信じれる訳ないだろ」
春は全然信用してないが、美依の言葉は本当だった。元々捕獲か殺害のどちらかなわけだから、彼女にそれを決める権利がある。
つまり五のうちに出てくれば、身の安全は圃場されるという事だ。
「一、二、三、四……っ!」
『五』そう言おうとした美依だったが、大きな爆発の揺れでよろめいてしまう。そして彼女の頭上には、高層ビルの崩れた瓦礫が、落下しようとしている。
「あっ……うそ――――」
こんな時に気の抜けたような反応だが、咄嗟に出た言葉がそれだったのだろう。美依はまるで、スローモーションのような感覚になる。
――――美依は死を覚悟する。
だがそんな美依に向かって、一つの影が勢いよく飛びつく。
「――きゃっ!」
「ってえ。大丈夫か!?」
その影は、美依を巻き込み、瓦礫の降下地点の外に滑り込む。
彼は声を上げ、美依の無事を確認する。
瓦礫は二人がそれたと同時に、地面にぶつかった。
「はい。大丈……きっ! どこに手を突っ込んでるんですか!!」
悲鳴を上げてしまいそうになり、それを押し殺すと同時、彼女のシャツの中に手を突っ込み、下着に触れる春を、勢いよく平手打ちし、押しのける。
「す、すまないって! 今のは不可抗力だ!」
「そういうのが通じるのは、漫画やアニメの世界だけですよ! ……あっ!」
春と呑気に話してしまっている事に気づき、慌ててリンを構え直し、座っている春に向ける。
美依が銃口を向けると、春は呆れ混じりに小さく笑い、スっと立ち上がり、服についた砂ホコリを払っている。
「動かないでください。撃ちますよ!?」
「お前。俺を撃てないだろ?」
「……なぜです?」
美依はその理由を一瞬考えたが、思い浮かばない。自分が春を撃てない理由がない。相手は自分の事を忘れているし、彼との思い出は、美依自信も今となっては……という記憶しかない
一方そんなことを言い切った春のその自信。それには絶対的な理由、またの名を屁理屈があったからだ。
「五、数える前に出たろ?」
「へ……?」
まるで小学生のような言い訳をを言う春に、美依は呆気を取られ、間抜けな声を出した。
彼女自信、さっきのアクシデントで、そんな事頭から抜け落ちえいた
「……です」
「ん?」
「こ、今回だけです! 今回だけ……適応します」
自分で言った事を忘れていた美依は、恥ずかしさを紛らすように声を上げ、座り込む春を人差し指で指して言った。
「んじゃ決まりだな。……とりあえずここを出よう、危ないしな」
春はこの襲撃が誰のものかはわからないが、間違いなく無差別で、でも俺を狙って行った攻撃だと思っている。
しかしそんな事、美依が知るわけなかった。
春と美依は、無事に三年前の跡地を後にし、隣駅。春の住む第二地区のファミレスを訪れた。
「――――んで、俺がその任務対象だから、襲ったと? 酷い話だなあ、おい」
「先輩は本当に何も知らないんですか?」
美依は、まさか自分の任務対象が何も知らないとは思ってなかった。さっきの弁解も、きっと演技なんだろうと、そう思っていた。
「当たり前だろ。知ってりゃとっくに逃げてるよ」
「……それもそうですね。私てっきり演技だと思ってました」
「人が必死に言ってるのに、あれを演技だと思ってたのか」
そう言って春はため息をつく。危うく何も知らないまま殺されるとこだったのだと。
「とりあえず、そっちの言い分わ分かったし、今度はこっちの質問に二つほど答えてもらおうか?」
「はい。構いませんよ? もちろん、私に応えられる範囲までですが……」
メロンソーダを両手に持ち、何を質問されるのかと少し不安な美依は、春をただ見つめる。しかし、春の考えている質問は、彼女の身元に関してもものだった。
「一つ目は身元関連だ。名前と年齢は?」
「紗雪美依、年齢は十六です」
「――――じゃあ職業っつか、学年は? どこの学校? あとこれは二つ目に含まれない」
「職業はさっきご説明下通り、対幻獣組織。学年と学校は、第二地区にある南第二高校一年です」
「俺と同じ高校!?」
まさか自分と同じ高校にこんな生徒がいたことに驚いているが、春は見覚えがない。
「でも見覚えないんだけど? 一応ざっくり覚えてるし、青い髪なんて目立つと思うんだけど?」
この島の高校には様々な色の生徒はいる。しかしそのなかでも春の通う南第二高校は、普通の黒い髪の生徒が多かった。
そんな中でそれも一個したの生徒なら、噂の一つや二つ、聞いていてもおかしくないと考えていた。
「それは当たり前です、先輩は一個上なわけですし。私は明日から転校という形で来るんですから。……それで、二つ目はなんでしょう?」
今の美依の言葉を聞いた春は、さらに二つの質問がわけわからなったようだ。
「なんで先輩なんて呼ぶんだ? 初対面だろ? ……いくら明日から同じ学校の後輩って言っても、おかしいよな?」
「そんな質問ですか。……先輩は、そのこともわからないんですか? よく考えてみてください」
春は考えるが、まったく浮かび上がらない。目の前の可愛らしい後輩を、まったく身に覚えがないようだ。しかし、同じ容姿ではないものの、名前で考えると、一人だけ一致する事物が浮かんだようだ。
春が考えていて下がっていた目線を、再びパッと美依に戻すと、美依はニコッとして少し首を傾ける。
「お、お前……あの美依なのか!?」
驚愕のあまり声と共に立ち上がってしまった春は、ここがどこかと思い出し、慌てて座る。
「はあ~。やっと思い出してくれたんですね?」
「いやだって、思い出すも何もお前、全然違うじゃねえか!」
春は彼女の反応からしてそうだと察した。しかし春の中にある美依という人物は、セミロングで黒い髪、そして弱気で自分に懐いていた。そう言った人物だ。
しかしそれも中学の頃までだった。美依が同じ中学に入学すると、ぱったりと姿を表さなくなり、いつしか自分の記憶からも忘れかけていた。
「確かに髪色もかわり、雰囲気も変わりました。でも忘れてしまうとは……酷いです」
「そりゃ急にいなくなって、急にそんなこと言われたら誰だってなる忘れるし、すぐには思い出さないだろ」
美依と随分と合ってないわけで、当然彼女も成長していた。より女性的になり、声も少し中学の頃と変わり、髪の色や長さも変わっている。
今の美依は、春にとって他人のような感覚だ。
「その、なんだ。その髪はあれか? 幻獣で?」
幻獣との契約では、その幻獣と密接になればなるほどに、体の構成が書き換えられていくらしい。
原理はわかってないが、今月も一件、人が幻獣化してしまい、事件が起こっていた。幻獣使いとして過ごしている美依に、春は心配になりつつあった。
「はい、そうです。……そんな心配しないでください、定期検診受けてますから」
「そ、そうか、なら安心だな」
「先輩の心配性は、相変わらずですね」
春のせっかくの心配を他所に、美依はつまらなそうに呟いた。春は美依に対して、昔からやたらと心配性で、美依はそんな春が鬱陶しくも心では好きだった。
「とにかく先輩。今後もし何か事件に巻き込まれたり、不可解な事があったら連絡してください」
「ああ、分かった。……これが連絡先か」
美依は「はい」と返事を言いながら、ファミレスのアンケート容姿の裏にボールペンで電話番号を書き、同時に住所も書いたている。
「……おいちょっと待て、この住所おかしくないか?」
さっそく起きた、ある意味不可解な出来事に、春が驚きつつも美依に尋ねる。
「そんなはずありません。私はしっかり物覚えはいい方なので、間違えたりなんてしてないはずですが?」
「いやだってこれ……俺のマンションの住所だし」
「……え?」
春から思わぬ返しを受け取った美依は、数秒の沈黙の後、コップを持ったまま固まった――――。
「ほ、ほんと、なんですね……」
春と美依は、あの後すぐにファミレスを出て、住所を確かめに行った。すると、偶然か運命か、美依の住所は春と同じマンションの、同じ番号の部屋だった。
「も、もしかして沢田さんの仕業……」
美依はあるひとつの可能性にたどり着き、呟いた。
「ん? なんか言ったか?」
「ああ、いえ! お気になさらず」
美依の同僚で、人材派遣系の係を担っている、最近成人を迎えたばかりの女性だ。
その人、
「ま、とりあえず上がれよ。疲れたろ?」
「あ、はい。お邪魔します……」
二人が中に入ると、驚く光景が広がっていた。
「なんだよこれ!」
玄関に入ってすぐ目に入ったのは、十個近いダンボールの山。
「これ、私の荷物……です」
さすがの光景に、美依も唖然としている。
――――まず二人はダンボールを運ぶ作業から始め、すぐ終えることができた。中を開けるのは明日になるそうだ。
「たく気が利かない業者さんだな。せめて家の中に入れといてくれてもいいのによ」
「すみません。恐らく私の所属する本部の者かと」
「別に美依が謝る必要もないし、怒ってないから」
春は美依に謝られ、すぐに言葉の意味と自信の感情が違うことを教えた。
そこは昔の美依とそっくりだと、春は思って安心している。大げさかもしれないが、自分の知っている彼女が、まだいるのだと。
「それじゃあ寝るふぁ~、俺はソファー使うから、ベット使ってくれ」
そう一言言って、春はリビングの電気を消してソファーに横になった。
「あ、ああはい! ありがとうございます! ……ではなく! ここは家主である先輩が……先輩?」
美依が何か言ってもまったく返事が帰ってこない為、覗き込むと、すでに夢に中のようだ。
明日はいよいよ転校日と同時に、春の今後の方針について一日観察しなければならない。
美依は眠る春の顔を見て、少し口元を緩めて小さく笑顔を見せると、自分も着替えてベットで眠りについた。
不定期投稿ですが、頑張らせていただきます!!