◇
サンサンと大地に恵みをもたらす太陽が沈み、サイヤ人に絶大な恩恵をもたらす月が輝く夜。惑星べジータの王城、王の玉座がある「王の間」。現在ここには星中のエリートサイヤ人が集められていた。エリートサイヤ人が充分集まったことを確認したべジータ王はやがて玉座から腰を上げて立ち上がる。
「お前達も知っている通り、我々サイヤ人がフリーザの舎弟に入って一年。我々はこの一年、苦汁を舐めるような思いをしてきた。」
集まったエリートサイヤ人達はべジータ王の話を神妙に聞いている。
「今宇宙は間違いなくフリーザの支配下にある。だが!そんなことが許されていいのか!宇宙を支配すべきは紛れもない誇り高き戦闘民族サイヤ人だ!フリーザなどでは断じてない!」
声を張り上げて演説をするべジータ王に、エリートサイヤ人達の瞳に徐々に炎が燃え始める。
「よって!ワシは明日フリーザを打ち倒すべく戦う!誇り高きサイヤ人の諸君!ワシと共に来る者は心臓を捧げよ!サイヤ人に栄光を!」
「「「サイヤ人に栄光を!」」」
べジータ王が右の拳を左胸に当てて敬礼すると集まったエリートサイヤ人の全員が同じく敬礼をする。それを見てべジータ王は満足そうにニヤリと笑った。
サイヤ人の反逆の始まりだ。
▼
「サイヤ人についてどう思いますか?」
私がフリーザ様にお仕えして早一年がたった。その間に侵略、破壊した星、奪った生命は数えきれない。奪った生命は最初から数えていないが、星のほうは8つ目から数えるのをやめた。
一年の間私はフリーザ様にはだいぶお世話になった。仕えた当初は意識的に払っていた敬意も今では無意識下で払えている。やはりフリーザ様は全生命の天敵だ。敵にすれば恐ろしいし、味方になれば離れられなくなる。
そんな日々を過ごしていたある日、フリーザ様が私にサイヤ人について聞いてきた。
「ツフル人の敵です。」
当然私は即答した。するとフリーザ様の求める回答ではなかったようで、フリーザ様は苦笑する。
「あ、いえそういうことではなくてですね…。」
「?と言いますと?」
「先日サイヤ人について調べていたらですね、"超サイヤ人"という単語を見つけましてね。咲夜さん、何か知っていますか?」
フリーザ様から超サイヤ人という単語を聞いた時、私の人工赤血球循環装置(人間でいう所の心臓)がドクンッと音を立てた。そして思う。「あぁ、この時が来てしまったか」と。
「はい。超サイヤ人とはサイヤ人の中で千年に一人現れるという伝説の戦士です。どんな天才でも越えられない壁を越えてしまうのだとか。」
原作知識から超サイヤ人のことは知っていたので私はフリーザ様に嘘偽りなく話す。するとフリーザ様は「なるほど…」と何かを考えるように目をつむる。
フリーザ様が超サイヤ人について興味を持ったということはまもなく「たった一人の最終決戦」が始まるのだろう。超サイヤ人の出現を危惧したフリーザ様がサイヤ人を惑星べジータごと滅ぼすこの後のドラゴンボールのストーリーのすべての引き金となる出来事だ。
フリーザ様が目をつむって考え事をしているとウィーンと部屋の自動ドアが開いた。私が振り向けばそこには五歳になったべジータが立っていた。
「べジータ王子、どうかなさいましたか?」
「おれはふりーざさまにしゅっぱつのごあいさつをしにきただけだ!」
私が腰をおとしてべジータと目線を合わせて尋ねるとべジータは不機嫌そうに吐き捨てた。
えぇ…そこまで邪険にしなくてもいいじゃない。
一年前の惑星ジス侵略の任務からべジータは私に対してやたらツンツンした態度をとってくる。あのあとべジータはフリーザ軍の上級兵士などと戦い凄まじい特訓を繰り返し、今では戦闘力13000。父であるべジータ王すらも越えてしまった。たまに私も特訓に付き合ってあげたが、その時でもべジータは常時ツンツン状態だった。
私が一体何をした。
「ふりーざさま、わくせいぼーろのしんりゃくにいってまいります。」
べジータは言葉の通り、フリーザ様へ惑星ボーロ侵略の出発の挨拶をする。手を胸の辺りに添え、丁寧にお辞儀をする様はべジータ王よりもりっぱだ。
「………………」
しかし、フリーザ様は目をつむったままでべジータへ答えようとしない。相当考え込んでいる。
「フリーザ様は今お取り込み中みたいです。王子が挨拶に来たことは後で私が伝えておきますから。」
「……しつれいします。」
何ともいえない気まずい空気が流れたので私がなだめるように話すと、べジータはさっさと部屋を出ていってしまう。そんな彼に私は小さく手を振って「いってらっしゃいませ」と声をかけたが無視されてしまった。反抗期というやつだろうか。
「決めましたよ咲夜さん。」
後ろから声が聞こえたので振り返ってみるとフリーザ様が目を開けて何かを決心したような顔をしていた。
「サイヤ人は滅ぼしてしまいましょう。」
「………了解致しました。」
フリーザ様の言葉に私は深く礼をして答えた。