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ドォーンッ!!
惑星フリーザのフリーザの城の庭に無数の丸型宇宙船が音を立てて着陸した。咲夜によって綺麗に手入れされていた庭はクレーターだらけになってしまった。
「よし!皆の者!ワシに続け!!」
「「「おぉーーー!!!」」」
べジータ王は王家の紋章が入ったポッドから出ると右腕を高らかに上げてエリートサイヤ人達を掻き立てた。
「お、お前達!!何をしてい……ぐわあっ!!」
城の兵士が異変に気付いてやってくるも、エリートサイヤ人に殴られ、あっさり倒されてしまう。その後もサイヤ人達は兵士をなぎ倒しながら城の中を突き進んだ。
「フリーザッ!!」
そしてついにフリーザの部屋へと到着。べジータ王が扉を蹴破って突入し、エリートサイヤ人達もその後に続く。
サイヤ人達の目には腕組みをするドドリアとサイヤ人達に目線を向けているザーボン、優雅にワインを片付ける咲夜が映り、フリーザは窓の外を眺めていた。
「べジータ王、何の用ですか?来いと言った覚えも来るという連絡もありませんが。」
「ふんっ、貴様がそうやって偉そうにしていられるのも今日で最後だ!全宇宙は我々サイヤ人が支配する!」
「ほぅ……それはまぁ何とも愚かで浅はかな野望ですね。それで?そのために虫ケラのあなたが後ろの大量のウジ虫を引き連れて反乱を起こした訳ですか…。」
「なめるなよ!かあぁ!!」
べジータ王はフリーザへと殴りかかった。
「!?なにっ!?」
「…………………」
しかし、その拳はいつの間にかフリーザとべジータ王の間に移動していた咲夜の掌に止められ、フリーザには届かなかった。
「くっ!貴様…ツフル人!!」
「……フリーザ様の神聖な面前です。そのような無礼は許されません。」
「ツフル人ごときがでかい口叩きおって…!!はあぁ!!」
べジータ王は咲夜へ右の拳を向ける。咲夜はそれを右の掌で受け止め、さらに受け流した。攻撃を受け流されたべジータ王は一瞬体勢を崩してしまう。
「はっ!」
「ぐはっ!!」
その隙を咲夜は見逃さず、腹部へ強烈な一撃をお見舞いした。べジータ王は後ろへ吹き飛び、エリートサイヤ人達を巻き込んで城の壁をぶち抜き、庭へと吹き飛ばされた。
「ぐっ……!おのれぇぇ!!」
べジータ王は額に青筋を浮かべ、庭へ降りてくる咲夜を見上げた。
「はあぁぁぁぁぁ!!!」
べジータ王は腰を落とし、拳を握って気合いを入れた。するとべジータ王の体の周りに白い炎のようなオーラが現れる。べジータ王のパワーはどんどん上昇していく。
「はあ!だだだだだだだ!!!」
やがてパワーを上げきったべジータ王は咲夜の元に飛び、猛烈なラッシュを仕掛けた。鍛えぬかれた戦闘民族サイヤ人の王の攻撃が咲夜の細い体を襲う。
「はあ!!……!?なっ!?」
「……………」
ラッシュも終わり、べジータ王はトドメのつもりで咲夜へ渾身の力を込めてパンチを繰り出す。しかし、その拳はまたしても咲夜の掌で止められてしまった。べジータ王は信じられないという表情を浮かべる。
「バカな………!ワシの……渾身の拳を……!!」
「前々から感じていたことですが、あなたは戦闘民族の王でありながら、何か勘違いされているようですね。はっ!」
「がはっ……!!」
咲夜はべジータ王の腹に右足の蹴りで攻撃する。
「パワー……。」
「くっ!!」
痛さで腹を押さえるべジータ王は咲夜に右の手刀を振ることで反撃しようとするが、咲夜はシュンッとその場から消え、べジータ王の後ろへ回り込んだ。
「スピード……。」
「うおぉぉ!!」
ズガッ!!
べジータ王は咲夜の腹部へ強烈なアッパーをお見舞いした。咲夜はそれを敢えて避けず、正面から受け止めた。べジータ王の拳は咲夜の可憐な体を貫き、咲夜はゲボッと大量の血を吐いたが特に気にした様子もなくしゃべる。
「防御力……等々、戦闘力とはそういった様々な能力を総合的に見た上ではじき出される数値です。あなたのようにパワーだけを愚直に鍛え上げただけでは何にもなりません。こんなことはあなたの息子さん、べジータ王子でも分かります。」
「ぐっ……!!貴様っ……!!」
べジータ王はこれ以上ない屈辱に怒りをあらわにしながら右手を上に向けた。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
するとべジータ王の右手から小さな気の玉が出現した。べジータ王はニヤリと笑うとその気弾を天高く放った。
「はじけて混ざれ!!」
べジータ王は気弾がある程度の高さに到達すると右手をグッと握った。すると気弾はパァンと弾け、次の瞬間には小さな月が誕生していた。
パワーボール。ごく一部の限られたサイヤ人にのみ生み出せるその気弾は、星の酸素と混ぜあわせることで人工的な月を生み出すことができる。
「か、かあぁぁぁぁ………!!」
べジータ王とエリートサイヤ人達はその月を見ることで一斉に変身を始めた。身体中に体毛が生え、体もどんどん大きくなっていく。やがて咲夜は大勢の大猿サイヤ人に囲まれてしまった。
「ふははははは!!いくら貴様でもこの数の大猿からは逃れられまい!!喰らえっ!!」
べジータ王はエリートサイヤ人と共に咲夜へ口から強力なエネルギー波を発射した。大猿となり、戦闘力が10倍にアップしたサイヤ人達のエネルギー波は凄まじい爆発を生んだ。
「ふははははは!!所詮ツフル人など虫ケラに過ぎんのだ!!」
「そうでしょうか?」
高笑いするべジータ王。しかし、後ろから咲夜の声が聞こえた。振り返ればそこには不死身の力で傷が綺麗さっぱり消えた咲夜がいた。
「っ……!ほう、今のは防いだようだな。だが、そう長くは逃げられまい。」
「ふふふっ、さて問題です。あれは一体何でしょう?」
大猿になったことで冷静さと余裕を取り戻したべジータ王は不敵に笑うが、咲夜はそんな彼を軽く笑い、庭の一角を指さす。そこには無数に積まれた茶色く太く長い何かがあった。
「!?まさか!あれは……!!うっ!!」
その正体に気づいたべジータ王だがもう遅かった。大猿となった体から力が抜け、徐々に体が縮み始める。そしてサイヤ人達は人間の状態に戻ってしまった。サイヤ人達の腰からはポタポタと血が滴っている。そう、咲夜が指さしたのはサイヤ人達の尻尾だった。大猿になるのに必要なのは尻尾と満月。それを知っていた咲夜はエネルギー波が当たる直前に時を止め、サイヤ人達の尻尾を切りながらべジータ王の後ろへ移動したのだ。
「フリーザ様が何度も忠告なさったはずです。大猿は隙が大きすぎると。」
「っ……!!おのれっ……!!おのれっ!!皆の者!何をしておる!!かかれっ!!」
「「「うおぉぉぉぉ!!!」」」
べジータ王に指示され、エリートサイヤ人達は一斉に咲夜へ襲いかかった。
「……………」
咲夜は目をつむり、気を集中させる。
「あの時……私に力があれば………」
咲夜の体をツフル人特有のピンク色の気が包み込む。
「大切な人を守れる……。はあ!!」
ボンッ!!
咲夜は一番近くに迫っていたサイヤ人の顔を殴りつけた。そのサイヤ人の顔は咲夜の力で爆発するように粉砕されてしまう。
それを皮切りに咲夜はサイヤ人達を圧倒的な実力で殺し始めた。ある者は殴り殺し、ある者は蹴り殺し、ある者はエネルギー波で消し炭にした。やがてエリートサイヤ人達は数分足らずで全滅してしまった。
「なっ……!!なっ………!!」
「(ペロッ」
余りの光景にべジータ王はわなわなと震えている。そんなべジータ王を尻目に咲夜は血で汚れた手の甲を舐めている。
「ああぁぁぁぁぁぁ!!!」
べジータ王は全力でパワーを上げるとはるか上空へ飛んだ。そして合わせた両手を腰の辺りに構え、さらに気を溜める。
「この星ごと!貴様も!フリーザも!粉々に打ち砕いてくれるーー!!!」
「……………」
咲夜はべジータ王を無表情で見上げる。やがてべジータ王は気を最大限まで高め、極太のエネルギー波を放った。
「……この時をどれ程待ちわびたか…。復讐などくだらないことだと理解していても、やはりこの時を願わずにはいられなかった……。」
迫るエネルギー波に咲夜は左腕を腰の辺りに構え、タイミングを合わせて振った。
「全反撃(フルカウンター)。」
するとエネルギー波は倍以上の太さとなり、べジータ王へ跳ね返った。
「おおぉぉぉぉ!!ぐわぁぁぁ………!!!」
誇り高き戦闘民族サイヤ人の王、べジータ王の最期は跳ね返された自身のエネルギー波に飲まれるというみじめなものだった。
「………見ていますか?先輩、ツフル王……、私はやっと、あなた方の仇を討つことができましたよ。」
天に向かって笑顔を見せる咲夜。その表情は憑きものが取れたようにスッキリしていた。
「咲夜さん、終わりましたか?」
ぶち抜かれた城の穴からフリーザが咲夜へ声をかける。
「はい、たった今完了致しました。城や庭を荒らしてしまい、申し訳ありません。」
「構いませんよ。1秒で直しなさい。」
「はっ。………終了です。」
指示された咲夜が指を鳴らすと次の瞬間には荒らされた庭や城が元通りになっていた。時を止めて修繕したようだ。
「よろしい。では、皆さん、本格的にサイヤ人を滅ぼしますよ!」
「「「はっ!」」」
フリーザの声にザーボン、ドドリア、そして咲夜は力強く返事をした。