瀟洒な召し使い   作:グランド・オブ・ミル

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Z・ナメック星編・2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらがご注文の光線銃200丁でございます。」

 

「はい。確かにお受け取りしました。」

 

ここは惑星レビ。ツフル人に次ぐ科学力を持った惑星ベジータと大きさ的にはほぼ変わらない星だ。ツフル人亡き今、この星が全宇宙の科学界を牛耳っていると言っても過言ではない。

 

そんな星で私は箱一杯に詰められた光線銃を箱で二つ分受け取った。原作でフリーザ軍の一般兵が使っていた手にはめて光線を撃つあれである。この光線銃は主に気功波が撃てない新人の兵士に支給される。フリーザ軍はこの光線銃のほとんどをこの惑星レビから輸入している。惑星レビが科学界で輝けるのもフリーザ軍という巨大な取引相手がいるからでもある。

 

「……相変わらず品質は良好ですね。」

 

「ふははっ!当然だ!我が星の科学力を持ってすればこんなことは朝飯前よ!」

 

私が光線銃の一つを手にとり、いじくりまわして品質を確認すると取引に立ち会っていた惑星レビの王が豪快に高笑いをした。頭頂がハゲた頭に王冠を被り、サンタクロースの髭を生やした老年の男だ。

 

「どうだ咲夜!心は決まったか!?ワシの息子の嫁に来い!!」

 

「…結構なお話ですがお断りさせていただきます。」

 

王の結婚の誘いを私はもう何度口にしたかも分からない決まり文句で丁重にお断りする。惑星レビの王子は宇宙レベルで見てもかなり顔面偏差値が高いイケメンだが、あいにく私は誰にも嫁ぐ気はない。

 

私は仕事で色々な星を訪れ、そしてその度にこうやって権力者に求婚されている。求婚と言えば聞こえはいいが、皆がイメージするような甘酸っぱいものではなく、フリーザ様との繋がりを持とうとするものがほとんどだ。

 

知っての通りフリーザ軍は今や全宇宙を支配する最も勢力がある組織だ。当然権力者達はフリーザ軍と繋がりを持とうとする。簡単に且つ強固な繋がりを得る方法は今も昔も変わらず政略結婚である。だが、権力者達は誰もフリーザ様自身に結婚を申し込むことはない。恐れ多いし、下手に求婚して機嫌を損ねてしまったら取り返しがつかないからだ。触らぬ神に祟りなしというやつである。ではどうするかと悩む権力者達は自然とフリーザ様の次に位が高い私に目をつけるわけである。それゆえに権力者達は獣のように私に求婚してくるのだ。私の部屋は各惑星から送られた見合い写真で一杯になっている。まあ、その大半は見ることすらしていないが。

 

「そうか…。まあ、気が向いたらいつでも言うがいい!すぐにでも式を挙げてやる!」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

そう言って王は「ではな!」と高笑いと共に去って行った。多くの権力者はしつこく食い下がって結婚を勧めてくるのだが、惑星レビの王は結構あっさり引いてくれるのでありがたい。こういう所に私は好感を持っている。

 

……ひょっとしてこれも王の作戦なのだろうか。確か心理学にこういうのがあった気がする。確か"単純接触効果"だったか。下手に長い時間相手と会話をするより、短い時間の会話を何度も繰り返すほうが相手の好感を得やすいというやつだ。もし王がそれを狙っているのだとしたらかなりの策士である。ここは科学が発達した惑星レビだ。当然心理学だって発達している。あり得ない話ではない。

 

なんて、そんなことを考えてしまう辺り私もずいぶん歪んだものだ。

 

苦笑しながら箱一杯の光線銃を宇宙船に積み込んでいると右耳のイヤリング型通信機に通信が入った。

 

「はい、こちら咲夜です。」

 

『やあ、咲夜。声を聞くのは久しぶりだなぁ。』

 

「あ、ギニュー隊長ですか?お久しぶりです!」

 

通信機から聞こえてくる久しぶりのギニュー隊長の声に私は柄にもなく嬉しそうな声と笑顔をしてしまう。そんな私にさっきまで取引をしていた商人はちょっと……いやかなり苦い顔をしている。自分の星の王子との結婚を無表情で断った女が通信機で見ず知らずの男と笑顔で話していたらそりゃ複雑な気持ちになるだろう。だが、私とてお互い仕事続きで中々会えなかったギニュー隊長の声を久しぶりに聞いたのだ。これくらいは許してほしい。

 

「何かご用ですか?」

 

『あぁ、実は久々にフリーザ様から休暇を頂いてな。』

 

「まぁ、本当に久々ですね。かれこれ二年ぶりくらいですか?」

 

あまり取引先の商人の機嫌を損ねるのは得策ではない。私は未だにしかめっ面をしている商人に別れを告げ、光線銃を宇宙船に運び込む作業をしながらギニュー隊長と会話をする。

 

『あぁ、もうそんなになるのか…。とにかく、私達は休暇を頂いたんだ。そこで、リクーム達が軍の女の子を誘って盛大に騒ごうと言い出したんだが…』

 

成る程、合コンというやつか。意外かもしれないが、ギニュー特戦隊の面々は結構モテる。性格に若干難があるものの、顔はそこそこ整っていてキャリアだって文句なし。冷静に見てみれば彼らは中々の優良物件なのだ。え、グルドも?なんて思うだろうが驚くなかれ、フリーザ軍にはマニアックな女子も多いため、彼も彼でかなり人気がある。

 

『来る予定だった女の子が一人、急な任務が入っちまってな、女の子が一人足りない状態なんだ。どうしようか困ってた所、真っ先にお前の名前が挙がってな。ほら、お前に妙になついてる女の子がいるだろ?』

 

「あぁ、レナのことですか。」

 

"レナ"はフリーザ軍で戦闘員として活躍する女の子である。入軍したのは今から約10年前で、当時まだまだヒヨッ子だった彼女を指導したのは私である。ちょうどその日、担当する仕事を終わらせて暇を持て余していた私は気まぐれで彼女に指南したのだ。数回とはいえ任務を共にしたこともある。そのせいか私は彼女にとてもなつかれている。可愛い後輩なので私も彼女の前では良い先輩でいようと心掛けている。

 

『そんなわけでお前にぜひ来てもらいたいんだが、どうだ?明日空いてるか?』

 

「明日ですか?確か午後からなら空いています。」

 

『おぉ!そうか!良かった!おっと、そうだ。そういえばフリーザ様が近々幹部達を召集するとおっしゃっていたぞ。』

 

「?何か大型の任務ですか?」

 

『詳しいことは分からんが、フリーザ様の長年の夢が叶うかもしれないチャンスらしい。まぁ、詳細は召集の時に説明されるだろう。じゃあ、明日な。』

 

「はい、では明日。」

 

その会話を最後に通信機がプツッと切れる。今の時期に召集……、いったい何だろう?幹部達を集める程の強大な敵はいない。かといってフリーザ様のお眼鏡にかなう星は最近見つかっていない。

 

まあ、ギニュー隊長の言う通り、詳しい事はその時に説明されるはずだ。今はあまり気にしないでおこう。

 

私はそう割り切り、宇宙船の起動スイッチを押して惑星レビを後にした。明日久しぶりに会えるギニュー特戦隊の皆に心を躍らせながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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