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皆様お初にお目にかかります。紅魔館のメイド長、十六夜咲夜でございます。
何をバカなと笑い飛ばされるかもしれないが、私は忠誠心が鼻から出ることで有名なPAD長になっていた。しかも、私がいるのは死亡フラグの宝庫ドラゴンボールの世界だ。正直泣きたい。
憑依、転生というやつだろうか。とにかく私は十六夜咲夜になっていた。鏡で顔を見た瞬間驚きで凄い勢いの後ずさりをして、頭を壁に打ちつけたのは今ではいい思い出だ。
私はツフル人が開発したツフル王専用の召し使いマシンミュータントだ。それに何故か知らないが、平凡な日本人の私が憑依してしまった。
ドラゴンボールは結構知ってるほうだ。日本人なら一度は聞いたことがあるだろう超人気漫画だ。私も結構好きだった。ツフル人の名を聞いただけで「あ、ここドラゴンボールの世界なんだな。」と理解する程度の知識もある。
ツフル王の城には私と同型のマシンミュータントが多数いた。皆髪の毛が金髪であること以外は私と同じ、咲夜さんそっくりだ。
なぜ私だけ銀髪なのかというと、私は他の量産型の召し使いマシンミュータントとは少し違うらしい。
私は王の身を守るボディガードとしての役割も持っていた。そのため、私には家事能力に加え、ツフル人の科学力の粋を集めた戦闘力も兼ね備えている。そのおかげで私には原作の咲夜さん同様、「時間を操る程度の能力」が備わっている。ブルマも未来の人造人間のせいでめちゃくちゃな世界でタイムマシンを造り上げたので、宇宙でも有数の科学技術の持ち主ツフル人にはこのくらい朝飯前なのだ。そう考えるとブルマって本当凄いな。一人でタイムマシン造り上げたって。あの人本当はツフル人なんじゃないだろうか?
そしてもう一つ、私には秘密がある。私は"不死身"だ。これは比喩でも何でもなく私は"不死身"だ。私の体は「形状記憶セラミック細胞自己修復型」という難しい名前の細胞でできている。細胞の一つ一つが自分達の配列を覚えていて、バラバラになっても元に戻り、もし失われた細胞があっても他の細胞が失った細胞を再生するというチート能力だ。とどのつまり、もし私がべジータとかの気功波で消し飛ばされてもさながら魔人ブウのように甦ることができるのだ。おまけに古くなった細胞は次々と新しくなるので歳をとることもない。
どう考えてもチートですね本当にありがとうございました。
ツフル人達も私がこの機能を問題なく発揮した際大喜びだった。なんでも「形状記憶セラミック細胞」はとっくの父ちゃんにできていたのだが、それに自己修復能力をプログラムすることが非常に難航していたらしい。これができれば不死身の戦闘マシンミュータントが大量生産できて、ツフル人は未来永劫安泰になるのでツフル星中のツフル人で研究を重ね、ようやく成功した第1号が私ということだ。せっかく成功した初号機を国王に献上する辺り、ツフル星の治安の良さが伺える。
よーし、これでツフル人の将来は明るい!いっちょ大量生産やってみっかぁ!とツフル人が意気込んでいた矢先、サイヤ人達が攻めいって来た。
サイヤ人達はツフル星が満月の時を狙ってきて、ツフル人は苦戦、というより一方的な虐殺を強いられた。いくら科学力が発達したツフル人とはいえ、大猿化した大勢のサイヤ人にはとても敵わなかった。もちろん星一番の戦闘力を持つ私も戦ったのだが、まるで歯が立たない。不死身の体のおかげで死への恐怖はなかったものの、平和に生きてきた日本人にいきなり星の命運をかけた戦闘などできるはずもなかった。
こうしてツフル星はサイヤ人によってたった数日で滅ぼされた。私のような不死身のマシンミュータントがもっといれば勝てたかもしれないのに、ツフル人はさぞかし無念だろう。
ツフル人は私が転生してから初めて会った人達だった。当然私は誰もいなくなったツフル星で涙を流して泣いた。そんな私の腕の中には、優しく家事を教えてくれた先輩マシンミュータントの残骸。ドラゴンボールの世界は、現実世界よりも弱肉強食だ。
ツフル星は惑星べジータと名が変えられ、私は王城の地下室に幽閉されることとなった。ツフルの科学力による私の戦闘力はべジータ王も上回る程で、そのうえ不死身で殺すことのできない私をべジータ王は危険視したのだ。
そのまま数ヶ月程、食事も与えられぬまま幽閉されていた。そしてある日、やたら外がうるさくなった。誰かの悲鳴も聞こえるし、振動がこの地下にまで伝わってくる。私はなんとなく理解した。フリーザだ。多分サイヤ人はフリーザと戦っているんだ。
そしてその日から数日後、なんとフリーザ様が私に会いにいらっしゃった。前世では紙の上の存在だったフリーザだが、こうして面と向かってみると凄い威圧感だ。背丈は私のほうが高いはずだが、まるで巨人と対峙しているかのように錯覚してしまう。
さすが戦闘力53万は格が違うぜ。
そしてフリーザは私をフリーザ軍にスカウトしてきた。ここで究極の選択に迫られる。ここでNoと答えれば私はこのまま地下室へ幽閉され、そのまま惑星べジータと共に宇宙の塵になるだろう。かといってYesといえばこれから日本の犯罪が可愛く見える程の悪事に身を染めることとなる。そしてナメック星あたりで悟空かべジータに成敗されることになる。
どっちにしたってバッドエンドだ!もはや選択の余地ねぇ!
とはいえ、このまま幽閉されているのも嫌なので私はフリーザのスカウトを受けることにした。どうせ悪事をしたって死なない私は永遠に地獄へ行くことはない。むしろやってやろうじゃないか!殺人?強盗?惑星破壊?何でもござれだどんと来い!前世では小心者の私だが、今の私は十六夜咲夜だ!怖いものなど何もない!
フリーザが私の名前を聞いてきたので電子脳にプログラムされている製造番号(ちなみに製造番号は私の左肩に書いてある)を言ったら「呼びにくい」と言われてしまったのでそのまま"十六夜咲夜"と名乗った。
前の名前を忘れたわけではないが、これから悪事をするのにその名前を名乗りたくなかった。咲夜さんには申し訳ないがこれから私は"十六夜咲夜"だ。他の誰でもない。
こうして私はフリーザに連れられ、暗い地下室から外へ出た。