瀟洒な召し使い   作:グランド・オブ・ミル

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原作前、無印編・6

 

 

 

 

 

 

 

「「「ぐわあぁぁぁぁ!!!」」」

 

咲夜が後方へ放ったエネルギー波は、リースが咲夜に消されるのをニヤニヤしながら見ていた国王軍の兵士を大量に殺害した。国王にもその余波が来たが、たくさんの兵士が肉の壁となり、かろうじて生きている。

 

「……え?」

 

思わずリースは呆けたような声を出す。そんな彼女を尻目に咲夜はくるりと振り返り、しぶとく生きているドライヤ王へコツコツとゆっくり歩み寄る。

 

「が、がはっ……。貴様……どういう……つもりだ……。」

 

生きているとはいえ重傷な王は憎々しげに咲夜を見る。

 

「低能なあなたにはそんなことも分かりませんか?」

 

「な……に…!?」

 

咲夜は右手を国王へと突き出し、掌に虹色に輝くエネルギーを溜め始める。

 

「あなたはもう用済みなのです。よって、この十六夜咲夜があなたを削除します。」

 

「ふっ、ふざけるなっ……!!ワシが…お前達フリーザ軍に……どれだけのっ……!!」

 

「確かにあなたからはたくさんの鉄や銅をいただいておりますが、年々その質は落ちていっています。にもかかわらず、あなたは城を趣味悪く着飾ったり無駄に脂肪をつけたり、そんな愚か者は必要ありません。」

 

「っ………悪かった……!改善…するっ…!!だから……助け」

 

「もう遅い。誰が上かも分からなくなった愚か者め。その罪、身をもって償うがいい。『マスタースパーク』。」

 

ゴウッ!と凄まじい音をたてて彼女の右手から放たれた虹色のエネルギー波は先程のものとは比較にならない威力を発揮し、王はおろか、背後の王城に大穴を開けてしまった。しかも、それほど高威力のエネルギー波を放ったにも関わらず、咲夜はまったく息を切らさず、悠然と立っている。

 

やがて彼女はリースのほうへ振り向き、微笑みながらこう呟いた。

 

「リース。ここから先はあなたの仕事です。精々頑張りなさい。」

 

「あ…ああ!みんな!あとは兵士だけだ!いくぞっ!!」

 

「「「おぉーーー!!」」」

 

リースが掻き立てると反乱軍の士気はあがり、瞬く間に国王軍を押していく。完全に形勢が逆転した。その前に王はもう倒されたのだ。革命はもう成立しているようなもので、国王軍にもはや戦う気力すら残っていない。

 

まもなく、ドライヤ星の革命は成立した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドライヤ星での仕事を終え、無事惑星フリーザへと帰還した咲夜だが、フリーザの玉座の前でフリーザ軍兵士に取り押さえられていた。理由は言わずもがな、ドライヤ星での勝手な行動についてだ。国王の救援に行ったはずなのに、あろうことか革命の手助けをしてきたのだ。しかも王を殺したのは咲夜。当然のことである。

 

「勝手なことしやがって!」

 

「フリーザ様!こんなやつ極刑にしましょう!」

 

「ドライヤ王は我々の大切なクライアントだぞ!」

 

兵士達の咲夜への罰を望む声にフリーザは……

 

「ふふふ、あーっはっはっはっは!!」

 

大声で笑い始めた。見れば側近のザーボンとドドリアも薄い笑みを浮かべている。これには兵士達も驚いた。

 

「フ、フリーザ様?」

 

「ふふふ、すみませんねぇ。咲夜さんがあまりにも優秀すぎてつい笑ってしまいましたよ。」

 

「はい?」

 

フリーザの言葉に兵士達は困惑する。軍の重要な取引相手のドライヤ王を殺した咲夜が優秀?わけが分からなかった。

 

「一応聞いてみましょう。なぜドライヤ王を殺したのですか?咲夜さん。」

 

「フリーザ様の命令だったからです。」

 

フリーザに対する咲夜の返答に兵士が「何だと!?」と怒鳴るがフリーザが「お黙りなさい。」と止める。

 

「フリーザ様の命令を聞いた時、私はまずそこで妙だと感じました。物資を提供していただいている重要なクライアントに関する任務ならば、新参者の私ではなく、ザーボン様かドドリア様に命じるのではと思ったのです。」

 

「ほう……。」

 

「そして私は出発前、ドライヤ星について調べてみたのですが、ドライヤ星からの物資は年々と質が下がっていることが分かり、フリーザ様が救援するメリットなどない星だと感じました。」

 

「ふふふ、なるほどなるほど。」

 

「この時点でフリーザ様の命令はドライヤ王を救援することではなく、その逆だと考え、最後の確認として実際に国王、反乱軍ともに面会をして私の考えは正しいものだと確信しました。」

 

「そうですか。ふふふ…。」

 

咲夜が話している途中、ご機嫌そうに相槌を打っていたフリーザは話が終わるとパチパチと手を叩いた。

 

「素晴らしい!本当に素晴らしいですよ咲夜さん!よくぞ私の真意を読み取ってくれました!まさに理想の部下像ですね!」

 

「光栄でございます。」

 

フリーザの称賛に咲夜は胸に手を当て、綺麗な礼をする。

 

「あなたはフリーザ軍の最高司令官にしようと思っていましたが、もはやそれすらも霞んできますね。」

 

フリーザは咲夜に右の人差し指を向けてこう宣言した。

 

「十六夜咲夜さん。あなたは私の専用召し使いとなりなさい。いいですね?」

 

「当然です。この十六夜咲夜、フリーザ様のためならば難儀難問無理難題、如何なる命令も遂行してご覧にいれましょう。」

 

フリーザの指名に咲夜は、それはそれは美しい敬礼をするのだった。

 

 

 


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