瀟洒な召し使い   作:グランド・オブ・ミル

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原作前、無印編・9

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星フリーザのとある施設。ここでは、戦闘用のインスタント兵士「サイバイマン」を養殖している。

 

サイバイマンはその名の通り、土に種を埋めて水をかければ数秒で誕生する兵士であり、戦闘力は1200程度。全身緑色で化け物のような姿をしていて、人語を話すことができないが、一応命令を理解する知能はある。

 

「こんにちは。」

 

「あ!咲夜さん!今日もですか?」

 

「えぇ、あの子達に会いに来ました。」

 

そんなサイバイマン養殖場に一人の人物が訪れる。咲夜だ。フリーザ軍に入ってからわずか数日でフリーザの専用召し使いにまで出世した咲夜に、養殖場を担当している鳥型の宇宙人は立ち上がって礼をする。

 

そんな対応に困ったような笑みを浮かべる咲夜の手にはたっぷりと水が入った大きめのジョウロが握られていた。「失礼しますね。」と声をかけて咲夜は扉を開け、養殖場の奥へ入っていく。

 

その部屋には、大型のプランターが数個並べてあるだけで他は何もなかった。咲夜はそのプランターに歩み寄り、「出ておいで。」と声をかける。すると………

 

「「「ギギィ!」」」

 

プランターからたくさんのサイバイマンが飛び出し、咲夜に抱きついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

私がサイバイマンの養殖場を訪れるのは、もはや朝の習慣になってしまった。最初は興味本位で訪れただけなのだが、必死に戦闘訓練をする彼らが可愛く思えてしまい、部活のマネージャーのように肥料を加えたおいしい水を差し入れしたのが始まりだ。

 

それから私は朝、惑星べジータから出勤した後まず最初にここを訪れる。気分は花の水やりだ。

 

「ギギィ♪」

 

「ギィ~♪」

 

私がジョウロで水をかければ、サイバイマン達は気持ち良さそうに目を細める。サイバイマンというだけあって彼らの体は植物と大差ない。日の光を浴びて水を吸えば彼らはすくすく育つ。

 

「ギギッギ~♪」

 

一匹のサイバイマンが「もっと。」と言わんばかりに私の足にすり寄ってくる。私が水をかけてやれば「ギィ~♪」と嬉しそうに振る舞う。

 

やばい、かわいい。

 

前世で原作の漫画を呼んだ時は正直サイバイマンは苦手だった。気味悪い容姿など、私はあまり好きになれなかった。

 

しかし、これを見たらそんなのは吹き飛んでしまう。可愛い。とにかく可愛い。私になついてくれる彼らが愛しくて仕方ない。

 

だが、可愛がってばかりもいられない。私は彼らを一人前のサイバイマンに育てるべく、色々教えなければならない。

 

「いつもの、お願いします。」

 

『はっ!了解しました!』

 

私が部屋の隅の監視カメラへ声をかければ、養殖場担当の宇宙人の返答がスピーカーから聞こえてくる。そしてしばらくすると檻に入れられた虫がそのまま人に進化したような宇宙人が運ばれてきた。

 

彼らはフリーザ軍が征服した星の原住民で、いわば捕虜として捕らえている。そして私はいつも彼らを実験台にサイバイマンに敵の殺し方を教えるのだ。

 

「見ててね。」

 

ビッ!!

 

「ギエッ!!」

 

私がさながらフリーザのデスビームのように指先から光線を発射し、虫型宇宙人の眉間を貫くと少し声をあげて事切れてしまった。

 

「いい?みんな。心臓を撃ち抜いても生き物は数秒くらいは生きていられるの。その間に自爆なんかされて、大勢の味方がやられることもありえる。これは分かる?」

 

「「「ギィ!!」」」

 

「うん、いい返事。それでね、生き物を即死させるにはこうやって脳幹を撃ち抜けばいいの。そうすれば再生能力を持つ例外を除けば、どんな生き物も死んじゃうから。分かった?」

 

「「「ギィ!!」」」

 

「よし、じゃあやってみて。」

 

私ができるだけ優しく、分かりやすく教えるとサイバイマン達は残りの虫型宇宙人に一斉に襲いかかった。彼らは私のように細い光線を撃つ技術はないので、その太いツメのような指で宇宙人の脳幹を貫いている。

 

善人なら私がやっていることを「残酷だ!」とか「なんてひどいことを!」なんて責め立てることだろう。だが、私がやっていることは別段おかしなことではない。似たようなことを人間だってやっている。

 

例えば昔と比べれば随分進歩してきた医療。いい薬をつくるのに人間は試作品をマウスなどの動物に注射し、その効果や副作用を見る。

 

ゴールデンハムスターやウーパールーパーなど、普段何気なく呼んでいるその名前も、捕まえてきてはひどい虐待のような研究を重ねてつけられたのだ。

 

これらに比べれば私がやっていることは可愛いものだ。特に苦しむことなく、サイバイマン達に一思いに殺してもらえるのだから。

 

「ギギィ!」

 

「ギッ!」

 

虫型宇宙人の青紫色の血を浴びたサイバイマン達は、殺し終えれば私の元へと駆け寄ってくる。普通の人間なら恐怖を感じるが、私はただ「可愛い」としか思えなかった。

 

私はそんな彼らの頭を撫で、ご褒美として再び水をかけてあげるのだった。

 

 

 


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