ボクが失った思い出 哀しみの先へ 作:紺野木綿季のソウルメイト
「葉月さん…貴方は一体、何者なんですか?」
「木綿季 さん、貴方には失った記憶があると言いました。それを忘れさせたのはかくりよの妖…そして貴方は一度、その妖に殺されている。殺されていると言うのは不適切かもしれません。」
僕は首を傾げる。
「今日は貴方のお誕生日らしいですね。妖は目の前に姿を見せる事が出来ず、悔ふています。」
妖が僕を祝福してくれているらしい。
「本当は貴方に全てを話したい。それがあの人の約束だから。」
葉月さんは少し悲しく言った。あの人は妖なんだろうか?そして、ボクは何の為に此処にいて誰が探しているのだろう?
失った記憶は懐かしい、でも畏怖もある。此処が隠り世なのか現世なのかも定かではないが確かにあの子が此処にいると教えてくれる。
「飴を一緒に食べませんか?まだまだ、先は長いです。幾ら、あの人が認めた人間だからと言ったって。貴方は人間です。誰も貴方を此処にいると知らない、でも貴方は此処にいる。」
葉月さんは飴を手に乗せてくれた。飴を食べるのは3年ぶりぐらいだろうか?
「あの人の誕生日と貴方の誕生日は一緒、偶然といえども凄いです。」
起章
木綿季を導くように妖が姿を見せる。かつて、妖は恐怖の根源であった。私の役目は隠り世と現世を結ぶ事、この魂はあの人によって作られた。次はあの子と一緒に笑えるだろうか?
誰も此処にいることは出来ない、でも選ばれた人だけが此処にいる。
「春が去った桜もいいですよ。何処までも繋いだ手は離さないでください。」
美しくも儚き物語を一緒に描きたい。
そういえば、貴方は如何して此処にいるの?
「救火君、君はどうして僕を救ってくれたの?」
「それは君に恩返しをしたかったからさ。」
木綿季をあの人の会話が脳裏によぎる。さっきも言った通り、私はあの人に作られたの。
道しるべは見えている、次は改めて人間として友達になりたい。
ちょっと話をそらします。
「別にあんたの依頼なら叶えてあげてもいいわ。」
「ありがとう、土御門澄姫さん。あの子は前世で僕という式を作ったのだから。」
式神は作られた者の命に従う、だが者が亡くなった場合は意識を持つ。
「契約をしたら、私の願いを叶えてもらおうか。」
誰もこの式神を知らない、でも此処にいる。
「ねぇ、木綿季 さん。人間って何で生きているのでしょうか?」
私は呟く。
「ボクは物語を描く為に生きていると思う。僕はね、過去を振り返ったら全てが懐かしく思えたよ。」
ボクが此処にいるのを誰かが知っているのだろうか?
次回 混色