別の日の校庭。
一年は組全員が真剣な面持ちで金吾と小三郎を見ていた。金吾と小三郎は互いに木刀を持ち構えている。
「たぁぁぁ!」
「やぁぁぁ!」
カン!カン!カァン!
金吾と小三郎の木刀がぶつかり合う。因みに喧嘩をしている訳じゃない。お互いに鍛錬をしていたらいつの間にか全員が集まって来たのだ。
「たぁぁぁ!」
「あぁっ⁉︎」
次の瞬間、小三郎の木刀が金吾の木刀に吹き飛ばされてしまった。
「金吾の勝ち!」
乱太郎の言葉に金吾と小三郎は互いに頭を下げ握手を交わす。
「やっぱり金吾には敵わないなぁ〜。」
「いやぁ。小三郎も強かったよ!」
「どっちも強いんじゃない?」
「だけど小三郎は剣術あまり得意そうじゃないね?」
兵太夫と三治郎の言葉に小三郎は苦笑いを浮かべる。
「う〜ん…兄者からは主に体術を教わってたからなぁ。」
「小三郎、体術出来るの⁉︎」
伊助以外にも皆、小三郎が体術ができるのか興味津々。
「やってみようか?」
小三郎は少し離れて、スゥッと深呼吸をする。
「タァッ!はぁ!やぁっ!てやぁっ!」
パンチやキックや飛び蹴りなどを披露する。
「「「オォォ!!!」」」
みんな初めて見る小三郎の体術を見て感心する。金吾も思わず見惚れた。
「「「凄い凄い!」」」
「多分、体術では絶対小三郎に負けちゃうなぁ〜。」
「ほぅ。素晴らしいなぁ。」
「戸部先生!それに食満留三郎先輩!」
「よっ!」
は組全員が振り返るとそこには剣術師範、戸部新左ヱ門先生と留三郎先輩が立っていた。
「兄者!」
小三郎は目を輝かせ留三郎に近寄る。
「いいぞぉ!ちゃんと鍛錬しているなぁ!」
「うん!」
「金吾も上達している。その調子で励むように。みんなもな。」
「はい!」「「「はい!」」」
全員が元気よく返事をすると、乱太郎が留三郎先輩に尋ねた。
「所で、留三郎先輩?どうして戸部先生と一緒に?」
「うっ…それは…。」
「留三郎は学園一の武闘派だが、剣術は未だに苦手でな。こうしてたまに私が個人授業しているのだ。」
「何故バラすんですか!」
戸部先生がしれっと暴露した事に留三郎先輩が慌てる。
「あぁ。だから僕には体術を教えて、剣術は一切教えなかったんだ。」
「留三郎先輩にも苦手なものだあったんですね〜。」
「ま、まぁ。俺でも人間だからな?」
与太話をしていたら何処からかヘムヘムが駆けてきた。
「ヘムヘムへ〜!」
「どうした?ヘムヘム。」
「ヘム!ヘムム、ヘムヘム!」
「何?花房牧之助が私に決闘?また迷惑な…。」
戸部先生の初めて見る嫌そうな顔を小三郎は見る。そして牧之助と言う言葉には組全員と留三郎先輩もげんなりした顔をする。
「花房牧之助って?」
「自称剣豪で勝手に戸部先生をライバルと言い張り、あの手この手で決闘を申し込んでくる傍迷惑なやつ。」
小三郎は若干驚いた。普段は誰にでも寛容な乱太郎がここまで嫌そうな顔をするのは相当迷惑な奴なんだと思った。
「ヘムヘム。追い返しなさい!」
「ヘム〜!ヘムムヘムヘムムヘム!」
「なにぃ⁉︎学園長が許可を出したぁ〜⁉︎」
「「「だぁぁぁぁ!」」」
その場にいた小三郎以外、全員がすっころんだ。しかし戸部先生は何かを思いついたらしく小三郎に近寄った。
「へ?何ですか?」
戸部先生は徐に小三郎の肩に手を置く。
「小三郎、お前が相手をしてあげなさい。」
「ハイィィィィィィ⁉︎」
戸部先生の言葉に全員が飛び起きた。
「それがいいよ!牧之助は凄く弱いから小三郎なら勝てる!」
「いつもは俺たちなんか眼中にないみたいだけど〜。」
「小三郎なら出来る!」
乱太郎、きり丸、しんべえの言葉には組全員が小三郎コールをあげる。
「だ、大の大人に勝てるかな?あ、兄者?」
よく見ると留三郎までもコールに混ざっていた。
「だぁぁぁぁ!」
小三郎がひっくり返った。すると留三郎が近寄ってきた。
「小三郎。」
「は、はい?」
「あの手を使ってもいいぞ?」
「「「あの手?」」」
留三郎の言葉に全員が首をかしげた。
午後一二時を過ぎた頃、校庭では忍術学園の男子生徒全員、くノ一少々、教員全員、学園長が集まった。
「え〜!お弁当にキャラメル〜、アイスクリーム〜。いかがっすか〜!」
きり丸は銭稼ぎで忙しそう。なんやかんやで三年は組の浦風藤内がアイスクリームを購入していた。そしていよいよ花房牧之助と戸部先生が場に現れた。戸部先生の横に小三郎も控えている。
「戸部新左ヱ門!今日こそ決着………誰だ?そいつは?一年にいたか?」
牧之助の言葉に乱太郎達が飛び出した。
「牧之助!聞いて驚け!」
「この子こそ!は組一の出来る子!新しい仲間!」
「忍術学園一の武闘派、食満留三郎先輩の実弟!」
「「「食満小三郎だぁぁぁぁ!」」」
「な、なんか恥ずかしいなぁ〜。」
小三郎は照れながら頭をかいた。
「出来る子?なんだ。なら乱太郎達と変わらないな!ガッハハ!」
「それはどうかな?花房牧之助。私に挑みたくば先ずはこの食満小三郎を倒してからだ。侮ると痛い目に遭うぞ?」
戸部先生の目がキランッ!と輝いた。そして戸部先生は少し後ろに下がった。六年生の席では善法寺伊作がハラハラとしており留三郎を揺すっていた。
「留三郎!いくら君の弟でも危険すぎるよ!」
「大丈夫だ。俺の弟を侮るな。それに一応学園長には木刀と条件を出した。死にはしない。」
「お前の弟の実力を見れるいいチャンスかもな?」
「文次郎まで〜!一応、保健委員は待機させておくからね!」
伊作の後ろには伏木蔵、左近、数馬が控えていた。
「スリルとサスペンス〜。」
「まぁ、大丈夫と思いますけど。」
「保健室行きは牧之助だろうね?あっ、始まるみたいだよ?」
牧之助と小三郎が歩み寄る。
「まぁ!加減はしてやろう!」
「はい。不束者ですがよろしくお願いします。」
「「「それは結婚相手に言う言葉!」」」
学園長が立ち上がった。
「それでは〜。始め!」
「おりゃぁぁぁぁ!」
牧之助が木刀で叩きかかったが小三郎はスッと右に避けた。
「ぬ!よくぞかわした〜。だが甘い!」
今度は横に木刀をなぎ払った……が。
「よっ!」
「何ィィ⁉︎」
「「「オォォ!」」」
何と小三郎はバク転を繰り出し飛び避けた。それからも牧之助は何度も打ちに行くが全てかわされた。
「本当だ…足運びバラバラだぁ〜…。」
小三郎は理解した。この人は………弱いし下手だ。
「凄い!小三郎は身軽だね?」
「牧之助が弱すぎるんじゃない?全部避けられてるし…。」
「でも……留三郎先輩が言っていたあの手ッて何だろう?」
は組は留三郎のあの手と言う言葉が気になっていた。
「なかなかやる!ならば突きはどうだぁぁぁぁ!」
(今だ…!)
小三郎は十分引きつけた後に再びジャンプを繰り出し、牧之助の背後を取った。その時だ。
「!山田先生!小三郎の手!」
「あれは…結印の臨⁉︎」
小三郎の手はちょうど九字印の臨の形になっているのを山田先生と土井先生は捕らえた。そして留三郎と小三郎の視線が重なる。
(やれ!小三郎!)
「兄者直伝!秘伝食満流体術奥義!………◯年殺し〜〜〜!!!」
ブスッ!
「ガッ!………………」
「ゲッ!」
「イッ⁉︎」
「あ…あれは……。」
「ギャァァァァァァァァァァァァ!!!」
悲鳴と共に牧之助が凄まじく吹っ飛んだ。文次郎が留三郎を見る。留三郎は満足気な顔をしていた。
「な、なんちゅーもん弟に教えたんだ!留三郎!」
「だから言っただろ?俺の弟は強いってな!」
「なんかよく分かんねーけどすげーな!お前の弟!」
「ボソボソ……人体の急所への一撃…見事。」
「品がないな。」
立花仙蔵だけは何故か遠くを見ていた。
一方で三年生。
「ヤベェ!あの技まじでヤベェ!!!」
「あんなの…予習出来ない…!!」
作兵衛と藤内が抱きつきあい震えた。
一年い組。
「こぇ〜!!!」
「お、お、お、お、落ち着け!佐吉!」
「でで、伝七も落ち着いて!」
「あれ…牧之助死んだかもね?」
「「「演技でもない事言うな!一平!!!」
教員陣
「と、留三郎の奴…。」
「何を教えているんだ……カンチョーだなんて…。」
「でも、決まれば効果的ですわ。」
「し、シナ先生。意外と冷静ですね?」
「「「やった〜〜〜!!!」」」
は組全員が小三郎を取り囲む。
「まさかカンチョーで倒すなんて!」
「君…ぶっ…面白すぎ〜!」
「あっははは!」
「よし!胴上げだ!」
全員で小三郎を抱え上げて胴上げ。小三郎も少し困惑したが素直に喜んだ。
「牧之助……哀れなり…。」
戸部先生は向こうで垣根に突っ込み、伸びてしまっている牧之助に合掌した。牧之助は伊作率いる保健委員に運ばれて行った。
「つ、つ、つ、強いなんて聞いてない…………がくっ!」