忍たま乱太郎〜食満留三郎の弟〜   作:誰かの影

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小三郎と作兵衛と数馬と藤内の絡み話です。


小三郎と三年生の段

十一月末、昼は暖かいが夜は寒い。その為忍術学園では風邪が流行っていた。そんな中、小三郎は医務室で三反田数馬の薬作りの手伝いをしていた。

 

数馬「ごめんね~小三郎。手伝わせちゃって。」

小三郎「別にいいですよ~、でもまさか保健委員会、数馬先輩以外、不運で足を滑らせ池に転落して全員風邪で全滅なんて。」

数馬「不運だよね。僕はたまたまその日は藤内の予習に付き合っていたから免れたけど。」

小三郎「でも僕もお手伝いしますから!」

 

小三郎は胸をポンっと叩く、その姿に数馬はニコリと笑う。

 

数馬「君は本当にいい子だよね?僕は影が薄くてみんな忘れられるけど小三郎はちゃんと覚えてくれているもんね?」

 

小三郎「何を隠そう、「お約束ブレイカー」ですから。」

 

お約束ブレイカーとは小三郎の別名の一つであり、忍術学園のお約束が一切適用されず、お約束が起こりそうな場合、阻止する為この名がついた。

 

数馬「窓から見ていたけど、今日の手裏剣の練習も何故か山田先生に飛んでいったけど阻止したもんね?」

 

小三郎「そんなとこ見ないで下さいよ~。でもなんでブーメランみたいにターンするんだろうか?あれさえ直ればなぁ……あれ?」

 

薬草を擦っていくといつの間にやら一番大事な葛根がなくなってしまった。

 

 

『葛根とは葛の根の事で現代では葛根湯の名前で親しまれている風邪薬です。しかしその歴史は意外にも深く、平安時代から存在します。』

 

 

小三郎「葛根が無くなっちゃいました。」

数馬「こっちもだ!これは堀に行くしかないね。大変な仕事にあるから小三郎はもういいよ。」

小三郎「あ。力仕事なら任せて下さい!まだまだ手伝いますよ!」

 

小三郎の言葉に数馬はすまないね。っと言いつつも笑う。しかしながら二人では大変だと言い応援を呼んでくると長屋の方に行き、小三郎は先に校庭で待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくすると数馬が浦風藤内と富松作兵衛を連れてやって来た。

 

数馬「おまたせ。」

藤内「やぁ。小三郎。」

作兵衛「よぉ。」

 

小三郎「藤内先輩!作兵衛先輩!こんにちは!」

 

ニコリと笑い礼儀正しく挨拶を交わす。藤内は今度の穴掘りの予習がてら手伝うことに決め、作兵衛は同室二人が風邪で寝込んでいるので進んで手伝いに来てくれたらしい。小三郎はお礼を述べる。

 

小三郎「ありがとうございます!でも作兵衛先輩。神崎左門先輩と次屋三之助先輩を放置しても大丈夫何ですか?もしまた迷子にでもなったら……。」

 

小三郎の言葉に作兵衛は苦笑いを浮かべる。

 

作兵衛「後輩に心配されるなんて……左門も三之助もしっかりして欲しいもんだな。大丈夫。二人ともよほど怠いらしくて大人しく寝てっから。」

 

藤内「それはそうと、まずは用具倉庫から鋤と鍬を持って来なきゃ。葛の根はかなり掘らなきゃいけないからね?」

 

小三郎「ご心配なく!既に鋤と鍬は用意して来ました!」

 

 

小三郎は懐から鋤と鍬を取り出た。

 

数馬&藤内&作兵衛「えぇぇぇぇぇ!?!?」

 

衝撃的な光景に先輩三人は声をあげぶっ倒れた。

 

数馬「まってまって!どこから出したの!?」

小三郎「ここから。」

作兵衛「いやいや!無理があるだろうが!!」

藤内「その懐どうなっているのさ!?」

 

先輩三人の怒涛のツッコミを小三郎は難なくさっさと捌いていき、最後には満面の笑みを浮かべる。

 

 

 

 

小三郎「じゃあ、行きましょうか?」

数馬&藤内&作兵衛「まさかのスルー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が変わり訓練場から少し外れた所。

 

作兵衛「おっ。生えてる生えてる。」

 

そこにはまだ花が咲く前の葛の葉が生い茂っており辺り一面を覆っていた。

 

数馬「じゃあ早速取り掛か…「数馬先輩ストーーップ!!」へ?」

 

小三郎のスキル、「感の鋭さ:A」が発動しガシッと数馬の腰を掴み引き戻す。そして持っている鋤で地面をこっ突くと途端に地面は崩れ、落とし穴が開いた。

 

数馬「あ、危なかった〜。ありがとう小三郎!」

小三郎「気がついてよかった。」

作兵衛「しっかし鋭いなぁ!その感、留三郎先輩もびっくりだわ。」

藤内「俺でも分からなかったよ。流石は将来有望、一年は組一出来る子だね!」

小三郎「そ、それ恥ずかしいです…。」

数馬「でも本当じゃない。お陰で不運に見舞われなかったし。」

 

三人の言葉に小三郎は照れながらも胸を張って見せた。そして葛の根を辿り、地面を掘っていく。

 

藤内「でも奇跡的に花が咲いてなかったね。数馬。」

作兵衛「んぁ?花が咲いちゃダメなのか?」

小三郎「花が咲くと根の栄養が花に持ってかれちゃうんですよ。」

数馬「その過程で、根も小さくなっちゃうんだ。」

藤内「おまけにもう十一月末。」

作兵衛「ん?って事は数馬!珍しくラッキーじゃねーか!」

 

そうである。普段保健委員会メンバーの手伝いをすると手伝い人まで不運を受けるが今回はラッキーなのだ。

 

数馬「小三郎のお陰だよ。前も保健委員会との交流でピクニックに一緒に行った時もどういうわけか不運に合わなかったんだ。」

藤内「凄いじゃないか。保健委員会の不運も素で蹴り飛ばす。不運ブレイカーだ!」

 

 

藤内の言葉に小三郎は苦笑いを浮かべる。

 

小三郎「あはは…(実際は不運じゃなくて、不注意なんだけどね?)。」

 

 

 

四人で根を掘り収穫して行くと、作兵衛の鍬がガキンッ!と何かに当たった。

 

作兵衛「ん?なんだ石か?」

 

作兵衛が手で土をかき分けて行くと、それは何と蓋がされた壺だった。

 

作兵衛「お、おい!なんか壺が出て来たぞ!?」

きり丸?「お宝!?アヒャアヒャ!」

 

突如何処からかきり丸?が姿を現した。

 

数馬「き、きり丸!一体何処から。」

小三郎「な〜んて!」

 

きり丸かと思ったらきり丸のお面をつけた小三郎だった。

 

数馬「小三郎か!びっくりした!」

藤内「そのお面良くできてるね?」

小三郎「鉢屋三郎先輩から貰いました。」

作兵衛「おい!こっち無視するなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤内「それにしても、なんでこんな所に壺が?ご丁寧に封までされているじゃん。」

数馬「こう言うのって…なんかあれじゃない?ほら。開けちゃいけない壺とか。」

作兵衛「ま、まさか……。」

 

先輩三人が話す中、小三郎は壺を持つ。そして下ろす。

 

小三郎「でもお宝系ではありませんね?意外と軽いです。お宝なら金銀財宝ですからこのくらいの壺でも重いはずですから。」

 

小三郎の言葉に先輩方は目を丸くした。

 

作兵衛「普段の一年は組ならここで騒ぐのがお約束だけど…。」

数馬「真面目だね?小三郎。」

藤内「流石お約束ブレイカー。」

 

それから色々中身に対して意見を言い合ったが、最終的に小三郎が開けることにした。小三郎はなんと頭巾の中から苦無を取り出した。最早三人は突っ込まない。そして封を切り蓋をゆっくり開ける。中身は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作兵衛「はぁ?なんじゃこりゃ!?」

 

出て来たのは学園長のプロマイドやフィギュアだった。三年三人はがっかり。小三郎は平然としている。

 

数馬「きっと誰かが処分に困ってここに埋めたんだ。」

作兵衛「誰だ!こんな所に埋めたのは!」

藤内「全く。不法投棄だよ。でもどうする?もらっても嬉しくないし……また埋めるのも…。」

 

うーんと考える中小三郎はプロマイドとフィギュアを手に取る。

 

小三郎「僕が貰っておきますよ。」

作兵衛「は?べ、別に良いけどよ。」

藤内「貰っても嬉しくないと思うけど?」

 

それでも誰も欲しがらない物を引き取ると小三郎は言うので先輩方は譲った。それからは収穫した根を持ち帰り、洗い、干して解散となった。四人とも汗と土まみれになってしまったので、少し早めのお風呂に入る事にした。

 

作兵衛「ってか風呂沸いているのか?……冷た!」

 

まだ早い為、風呂は水風呂状態。

 

小三郎「僕が火をつけて来ますから温度確認お願いします。」

数馬「わかったよ。」

 

 

小三郎は風呂の裏に回り、釜に順序良く薪や例のブツなどを入れて火種を入れる。しばらくすると一気に燃え出した。

 

小三郎「今火が付きましたので!」

藤内「早いね!薪乾燥していたの?」

小三郎「はい。」

 

 

しばらくすると湯が湧き始め、数馬の合図と共に、火を弱め、小三郎も入浴する事にした。

 

作兵衛「う、うぅぅー!!」

藤内「作兵衛!年寄りくさいよ!」

数馬「でも気持ちいね?」

小三郎「最高〜。」

 

 

 

 

 

しばしの間、極楽気分を味わいよく身体を洗い温まってから出た。

 

 

 

作兵衛「でもあのプロマイドやフィギュア。ほんとうに貰って良かったのか?」

小三郎「もう使っちゃいましたよ?」

数馬「は?」

 

 

 

先輩三人は頭に?マークを浮かべた。

 

藤内「使った?」

小三郎「はい。風呂焚きの焚き付けに。」

 

 

作兵衛&数馬&藤内「はぁぁぁぁ!?だぁぁぁぁ!」

 

 

三人ともひっくり返った。

 

小三郎「プロマイドもフィギュアも濡れても大丈夫なように油でコーティングされているんですよ。」

 

ニコニコ顔で発言する小三郎。

 

 

作兵衛「こいつ…普段は真面目なのに…。」

数馬「乱太郎から聞いたよ…小三郎はたまにぶっ飛んだ発言をするって。」

藤内「本人は悪気はないんだろうな?でもまさか燃やすなんて……やば、学園長先生が気の毒に思えて来た。」

 

 

 

 

小三郎「よく燃えました!はい!」

 

 

ニコニコ顔で笑う小三郎に三年生は苦笑いを浮かべるのだった。


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