ドクタケ忍者に攫われたり救出されたりしてから数週間。小三郎は変わらず授業も実技も真面目に取り組んだ。変わった事と言えば。
乱太郎「えい!」
きり丸「やぁっ!」
しんべえ「とぉっ!」
は組全員が実技をかなり真剣に取り組むようになった。相変わらずいくつかは山田先生の方へ飛んでいくが。
山田先生「っと。なんだなんだ?やけにみんな真面目に取り組んでいるじゃない?」
山田先生がそう言うと。全員が振り返り。
庄左ヱ門「だって!」
伊助「次小三郎が攫われた時に!」
三治郎「僕たちで!」
兵太夫「助けられるように!」
虎若「ならないと!」
小三郎「ちょっ!そんなに何度も攫われないよ!」
山田先生「はははっ!愛が深いな?小三郎。」
小三郎「茶化さないで下さい。嬉しいような恥ずかしいような…っと!」
顔を赤くする小三郎だがすぐには組が投げた手裏剣が飛んで来たのを見て道具箱の蓋で受け止めた。
小三郎「気持ちはありがたいんですけど……な〜んでみんなブーメランみたいに手裏剣が飛んでくるんでしょう?」
山田先生「まぁそこはお約束じゃないかな?」
実技が終わり今日の授業はこれで終了。全員が校庭や裏山で遊ぶ中、小三郎は留三郎と共に体術の鍛錬。
小三郎「はっ!やぁっ!」
留三郎「ふっ!はぁっ!」
小三郎のパンチやキックを留三郎が受け止めたり受け流して防御。
小三郎「はぁぁっ!!」
小三郎はバク転で距離を取ると回し蹴りを繰り出した。
留三郎「!回し蹴りが出来るようになったか!だがまだ重さが足りない!」
小三郎「あぁっ!?」
回し蹴りの足をいとも容易く留三郎は受け止めた。
小三郎「あ〜あ。とっておきだったのに。」
留三郎「だが形は綺麗だったぞ。もっと鍛錬すれば完璧に身につくだろう!」
小三郎「うん!」
留三郎に頭を撫でられ素直に笑顔を浮かべる。
ヘムヘム「ヘム?へ〜ム〜!」
そこへ小包を持ったヘムヘムがやって来た。
小三郎「ヘムヘム。何?その小包。」
ヘムヘム「ヘム〜。ヘムヘム。ヘムへヘム。」
小三郎「僕と兄者に?」
留三郎「なんだ?小三郎。」
小三郎「……あっ。父さんからだ。」
留三郎「親父から?」
ヘムヘムが持って来た小包の受け渡し書にサインをして留三郎と共に自室に戻り小包を開ける。
小三郎「手紙と……なんだこりゃ?」
留三郎「なんだ?南蛮語か?」
中に入っていたのは何かが入った南蛮語で書かれた麻袋と手紙。
留三郎「俺が読もう。なになに?」
『留三郎、小三郎。元気にしているか?父さんと母さんは変わらず元気だ。この前は父さんは山へ芝刈りに、母さんは川へ洗濯に行った。母さんが川で洗濯をしているとなんと大きな桃が流れて来たんだ。」
留三郎&小三郎「だぁぁぁぁ!」
思わず兄弟揃って仲良くすっ転ぶ。
留三郎「桃太郎か!」
小三郎「げ、現実にあるんだね?」
再び留三郎は手紙を読む。
『だが母さんはスルーした。」
留三郎&小三郎「だぁぁぁぁ!」
再びすっ転んだ。
留三郎「拾えお袋!そこは拾え!」
小三郎「か、母さんらしいけど…。」
『そんな事はどうでもいいとして…。」
留三郎&小三郎「どうでもいいんかい!なら書くな!」
『この前市場に南蛮店と言う南蛮の行商人が来ていて南蛮のお菓子を買ったんだ。送るから兄弟仲良く友達にも分けて食べなさい。』
突っ込みどころ満載の手紙を読み終えて小三郎は改めて麻袋を見る。
小三郎「なんて書いてあるのかな?読めない。」
留三郎「貸してみろ。…………ん〜。六年生で多少は南蛮語を勉強するがぁ……ん?この単語はポップ…コーンと書かれているな?」
麻袋に書かれている文字を指差して言う。
小三郎「どう言う意味?」
留三郎「確か〜、ポップは大衆向けとか流行りのっと言う意味で、コーンはトウモロコシの事だ。だから〜、流行りのトウモロコシって意味じゃないか?」
小三郎「流行りのって…何が流行り?」
留三郎「さぁ?とりあえず開けて中を見よう。もしかしたらトウモロコシのおやつなのかも知れん。」
留三郎は麻袋を開けて中に手を入れる。そして中身をすくう。
留三郎「なんじゃこりゃ?」
小三郎「豆?」
袋の中に入っていたのは黄色いトウモロコシの粒。乾燥しているのかカチカチだ。留三郎と小三郎はこのまま食べるのかと思いいくつか手に取り食べる……が。
小三郎「うげっ…。」
留三郎「うっ…。」
「「固っ…。」」
思わず吐き出した。とてもじゃないが固くて食べられたものではなかった。
留三郎「南蛮人はどんな顎をしているんだ!?」
小三郎「本当にこれお菓子なの?あれ?なんかある。」
小三郎が覗くと中に紙が入っていた。取り出し広げて見るとまたもや南蛮語。流石の出来る子小三郎でも南蛮語は無理。留三郎も手に取る。
留三郎「……ん?ロースト…炒ると言う意味の単語があるな。このまま食べるんじゃなくて炒めて食べるのかもな?」
小三郎と留三郎は部屋から出て食堂へ行き、おばちゃんの許可をもらい台所へ。
小三郎「炒るんだから鍋でいいよね?油って敷くのかな?」
留三郎「敷くべきだろう。くっ付くと始末に悪い。」
留三郎が棚から食用油を取り出す。小三郎はかまどに火をつけて鍋を熱する。その時、六年い組、留三郎のライバル、潮江文次郎がやって来た。
文次郎「ん?何しているんだ。食満兄弟。」
小三郎「文次郎先輩!」
留三郎「何ってこれさ。」
留三郎は麻袋を文次郎に見せる。
文次郎「な、なんだ?南蛮語か?」
小三郎「父さんが市場の南蛮店って言う珍しい行商人から買って送って来たんです。でも説明文が南蛮語で……お菓子らしいんですけど。」
小三郎は留三郎から麻袋を取り、文次郎に中身を見せる。
文次郎「なんだ?豆か?………固ぇ!」
留三郎「文次郎の顎でも噛み砕けないとはな。」
文次郎「俺をなんだと思ってる!?」
それから文次郎も交えて説明文の解読に当たる。小三郎もいるため今回は犬猿同士でも喧嘩はしないようだ。
文次郎「………正直に言う。分からん!」
留三郎「俺もこれ以上の単語は分からないな。文次郎、他の六年生で誰か南蛮語が出来る奴を知らないか?」
留三郎の言葉に文次郎は考える。
文次郎「……それも分からん。と言っても六年生は俺とお前、善法寺伊作、中在家長次、七松小平太、立花仙蔵の六人しかいない。とりあえず全員召集だ。」
文次郎が他の六年生を呼びに行くと、少し経ってから六年生全員がやって来た。そして早速解読に取り掛かった。
小平太「なっははは!さっぱり分からん!」
仙蔵「だろうと思っていたさ。……クローズ……キャップ……クローズとは閉めると言う意味だった。それにキャップは蓋の事…。」
伊作「つまり炒っている最中は蓋を閉めろって意味だね?……あっ。ローストの前にオイルって単語があるよ?オイルは油だ。」
長次「………ソルト……グッド……ソルトは塩、グッドは良いの意味……つまり味付けは塩が最高らしい…。」
全員が意見を出し合いながら留三郎がまとめる。
留三郎「つまり鍋に油を敷いたのちにこれを入れて蓋をして振りながら炒めるっと言うわけか。」
留三郎が言うと早速小三郎は鍋に油を敷き中にトウモロコシを入れ蓋を閉めて振りながら炒める。すると。
パン!
小三郎「へ?」
仙蔵「パン?」
小三郎と六年生全員が鍋を見る。
パン!パパン!ババババババババン!!!
小三郎「な、何これ!?あ、兄者助けてぇ!」
留三郎「な、なんだなんだ!?とりあえず俺に貸せ!アチャチャチャ!!!」
伊作「留三郎!小三郎大丈っ…ドワァァァ!!」
留三郎が慌てて小三郎から鍋を奪う、しかし鍋の胴を持ったため火傷、伊作が助けようとしたが足がもつれてそのまま留三郎と小三郎を巻き込み倒れてしまった。これが悲劇の引き金になってしまった。倒れ込んだと同時に鍋の中身をぶちまけてしまい、更に残りが入った麻袋がかまどの中に落ちてしまったのだ。
ババババババババババン!!!
小三郎「うわぁぁぁぁ!」
伊作「ま、豆が!豆がぁぁ!!」
留三郎「こ、小三郎!伊作!大丈っ……ぬおぉぉ!!」
文次郎「ど、どうなってやがる!?豆が数倍に膨れって!まずい!台所から溢れるぞ!!」
ポップコーンがどんどん出来て行き、とうとう小三郎と伊作と留三郎を飲み込み食堂に溢れてきた。
仙蔵「ちょっ!どうするんだ!これ!?」
小平太「なんだなんだ!?クラッカーか?」
長次「もそ…これはまずい…。」
どんどんポップコーンが増えて行き仙蔵達は食堂の外へ避難。一方中では小三郎が必死にかまどに蓋をしているが溢れ出てしまいどうする事も出来なくなってしまっている。
小三郎「だ、ダメだ!抑えきれない!わぁぁぁ!!」
ババババババババババン!
さながら機関銃の如くかまどからポップコーンが噴出する。
伊作「ごめんよぉ!!まさかこんな時に不運がぁ!!」
留三郎「そんな事より水!かまどの火を消せ!!」
伊作「無理だよぉ〜!このポップコーンが邪魔して進めない!!」
食堂の外では他の六年生がどうしようか悩んでいた。
仙蔵「どう助けるあれ?」
文次郎「まさかここで伊作の不運が発動するとは……。」
小平太「お!美味いなぁ!これ!」
長次「結構イケる…。」
文次郎「呑気に食うな!」
仙蔵「本当だ。癖になるな。」
文次郎「お前もか!仙蔵!」
飛んでくるポップコーンを食べる六年生。その時、一年は組の乱太郎達が騒ぎを聞きつけてやって来た。
乱太郎「どうしたんですか?」
きり丸「楽しい事っすか?」
しんべえ「あー!それ美味しそう!」
続々やって来るは組の良い子達たが、小三郎の声にみんなが反応した。
小三郎「誰か助けてぇ!」
は組一同「!?小三郎!!!」
は組全員の顔がぐわっと変わり、食堂の扉に体当たり!
は組一同「小三郎!大丈…なんじゃこりゃ!?」
は組の良い子達が食堂に入るとそこは沢山のポップコーン。
おばちゃん「な、なんなのこれは!?」
騒ぎを聞きつけて食堂のおばちゃんと土井先生も駆け付けた。そしてようやく弾け飛ぶ音が止み、台所から小三郎と留三郎と伊作を救出。
山田先生「まったく!どうすんだ!これ!」
小三郎&留三郎&伊作「ごめんなさい…。」
騒ぎが収まり全員で弾け飛んだポップコーンを集めると大皿10杯分以上出来てしまい忍術学園全員で食べているが一向に減らない。
山田先生「お前達も責任持って食べろ!」
小三郎、留三郎、伊作も席に着きポップコーンを食べ始める。
小三郎「ごめんねぇ、みんな。僕のせいで…。」
伊助「まぁまぁ元気出してよ。ともかく美味しいからいいじゃない。」
団蔵「そうだよ!」
三治郎「この塩味もいいけど…お醤油でもいいんじゃない?」
小三郎は謝るも一年は組は笑いながら食べる。初めての南蛮のお菓子に興味津々であるようだ。
留三郎「本当に申し訳ない!親父が変なものを送って来たばかりに!」
伊作「君たち食満兄弟のせいじゃないよ……僕こそごめん…不運に巻き込んでしまって…。」
仙蔵「まぁいいさ。おかげで食べ方も分かったんだから次に気をつければいいさ。」
小平太「それにしてもこの何とかコーンは癖になるなぁ!手が止まらん!」
長次「もそ…南蛮の文化は面白いな…。」
文次郎「一種の保存食なのか?まぁ美味いが。」
六年生も始めて食べる南蛮のお菓子。小平太はどうやらハマってらしく手が止まらない。
小三郎の家から送られたポップコーンは意外にも全員に高評価だった……しかし、その日の夕飯のデザートもポップコーンだったのは言うまでもない。