小三郎「どうも。この小説のオリジナル主人公の食満留三郎の弟。食満小三郎です。今僕は忍術学園から脱出し裏山の森の中に潜伏中です。何故逃げているかと言うと……五年生と六年生が険悪になってしまい、さらに学園長の思いつきで宝探し対決をする事になり、最初は乱太郎達が宝役だったんですけど……不憫で可愛そうだったので僕が代役を務める事にしました。」
読者の方を向き一通りの説明を終えると再び木の樹洞に隠れて持ち物を調べる。
小三郎「あちゃ〜。さっき「空蝉抜け」やったからだいぶ減っちゃったなぁ?」
ミニコーナー
土井先生「空蝉抜けとは、逃げる時に上着を掴まれたら上着を脱ぐと言う遁術の一つだ。空蝉とは蝉の抜け殻と言う意味。」
一方で忍術学園では焙烙火矢に仕込まれた白粉を落とす五、六年生がいた。今はしばしの休戦。兵助と八左ヱ門が残された小三郎の装束を調べていた。
兵助「苦無に手裏剣にコシコロに、忍び熊手、打ち竹にモッパンに………どうなってんだ!?この上着は!」
八左ヱ門「でも重さはあまり感じないぞ?」
その様子に兄である留三郎が歩み寄る。
留三郎「それは恐らくお袋直伝の収納術だろう。」
兵助「留三郎先輩。」
勘右衛門「収納でも限界あるでしょ!」
勘右衛門の言葉に留三郎は首を横に振る。
留三郎「お袋は小三郎よりも詰め込んでいるぞ?実に倍は詰め込んでいたし、挙句には布団まで入れていたぞ?」
五年生一同「どんだけぇぇぇ!?」
五年生の言葉に留三郎は小三郎の装束を指差す。
留三郎「そんだけだが?」
五年生一同「だぁぁぁぁ!」
留三郎の言葉に五年生が転んだ。それから間もなく六年生の身支度が終わり小三郎探索へ出て行く。その後で五年生とヘムヘムも裏山へ探索に出かけた。
仙蔵「にしても留三郎!お前の弟はどういう教育がされているんだ!爆撃なんて聞いてないぞ!」
留三郎「何を言ってる!今のご時世自分の身くらい守れるようにしないと。」
文次郎「だからってやり過ぎだろうが!」
伊作「まさか保健委員会のモッパンまで持っていたのは盲点だった。きっと乱太郎が渡したんだろうね?それにしても…木が例年より生い茂ってるね?」
全員が小三郎の爆撃にあれこれ言う中、善法寺伊作が周りを見る。例年よりも生い茂った木々。隠れる場所は幾らでもある。その時、七松小平太が再び飛び出した。
小平太「とりあえず、埒があかん!邪魔な木は吹っ飛ばせぇ!イケイケドンド〜〜ン!!」
小平太が両手に苦無を持ち周りの木を地面ごと掘り起こしながら突き進む。ほかの六年生も後に続く。そして。
小平太「いたぁぁ!」
小平太が樹洞に身を潜める小三郎?を見つけた。
長次「待て、小平太。」
小平太「どうした?長次。」
中在家長次が小平太の肩を持ち止める。他の六年生も追いついた。そして留三郎が声を上げた。
留三郎「もう逃がさ……ん?」
全員が樹洞に身を隠している小三郎の違和感に気づいた。動かないのだ。
長次「さっきはすぐに爆撃して来たが今回は動かない。罠だ。」
そう言うと留三郎が手裏剣を取り出す。伊作がそれを見てギョッとした。
伊作「ま、待って留三郎!いくら君の弟でも怪我させる気かい!?」
留三郎「案ずるな伊作。あれは小三郎じゃない!」
止めに入る伊作を手で止める留三郎。そして手裏剣を投げる。投げた手裏剣は小三郎?に命中。しかし奇妙な事に声を上げない。少なくとも痛い!とか、ギャ!っとか言う。
留三郎「やっぱり張り子か!」
それは小三郎の装束を着せた粗末な張り子。しかしご丁寧にカツラまで被せてあるためパッと見、間違えそう。
文次郎「珍妙な張り子作りやがって!」
文次郎が袋槍で張り子を斬り伏せた。
プツン。
その時、何かが切れた音がした。ふと文次郎が張り子をよく見ると、何かが書いてある。
「頭上注意です。」
文次郎「何ぃ!?」
文次郎とその他の六年生が見上げると無数の手裏剣と鉄針が降って来た。全員が得意武器で手裏剣を捌く。
文次郎「ふぅ……留三郎!!お前の弟なんなんだ!?マジで殺しに来てるぞ!?」
仙蔵「この罠は間違いなく致死性だ。どんな育て方したんだ?教養はかなり高いが。」
小平太「流石にビビったぞ!」
長次「もそ……一度教育を直した方がいい気が……。」
伊作「怖いよ!君の弟!気立ては優しくて良い子だけど!」
全員が留三郎にクレームを入れるが留三郎は胸を張った。
留三郎「お袋から教養高く育てられ、忍者の技もすぐに吸収する。気立ては優しく誰とでも仲良くなれる。そして!」
留三郎「俺の可愛い弟だ!!!」
留三郎の発言に全員が頭を抱えた。
六年生一同「ダメだ…このブラコン…早く何とかしないと…。」
一方で小三郎は森の中を走っていた。なぜ六年生が近づいて来たのが分かったのかと言うと。
小三郎「小平太先輩って本当に人の子なのかな?木々をなぎ倒してくるなんて。」
小平太が木々をなぎ倒して来たから。やがて森を抜け山道に出た。しかし。
兵助「あぁ〜!見つけたぞぉ!!」
小三郎「うわっ!兵助先輩!」
小三郎は逃げようとしたが背を見せるのは危険と判断し後ずさる。
八左ヱ門「逃がさないよ!」
勘右衛門「食らえ!万力鎖と微塵の捕縛共演!」
八左ヱ門と勘右衛門が微塵と万力鎖を小三郎の脚めがけて投げつけた。小三郎はかろうじてジャンプで回避。しかしそこにすかさず雷蔵が印地で白粉が入った袋を投げ、三郎が鏢刀で袋を破いた。
小三郎「うわっぷ!?けほ!ゴホッ!」
白粉を吸い噎せる。その隙に五年生全員が飛び掛った。
五年生一同「捕まえたぁぁ!!」
しかし。
小三郎はカッと目を開いた。
小三郎「まだです!」
小三郎は袴から扇を二本取り出し開く。
小三郎「忍法!霞扇!!」
五年生一同「!?」
ミニコーナー
土井先生「霞扇とは扇の羽の紙が二重になっておりその間に粉末状の眠り薬が入っており仰ぐと風と共に拡散する暗器の一種である。」
小三郎が扇を仰ぐとピンク色の靄が発し五年生に降りかかった。
兵助「?うっ…ま、まずい!みんな覆面!」
五年生全員が覆面を着用する僅かな隙に小三郎は全力で走る。
兵助「あっ!待て!」
小三郎「はぁ!はぁ!」
小三郎は全力で裏山の森を駆け抜ける。正直に言うとさっきの霞扇で懐はからっぽ。もう後は逃げるしかない。しかし。
小三郎「あぁ!?しまった!崖!」
とても登れそうにない崖にぶつかってしまった。小三郎何とか登れないかと思い、大きな岩の上に登るがそれ以上は無理だ。
六年生&五年生「小三郎ぉぉ!!」
小三郎に追いつき六年生と五年生が小三郎の乗る岩を取り囲んだ。
留三郎「小三郎!兄者の胸に飛び込んでこい!さぁ!早く!!!」
兵助「小三郎!こっちこっち!痛くしないからさぁ!!!」
留三郎と兵助は顔が大きくなりどちらも血走った目で小三郎を見る。
小三郎「ひぃぃ!も、もう逃げられない!しかも……どっちも怖いぃぃ!!と、投石!!」
小三郎は崖や転がっている石を投げつける。
留三郎「ちょ!石を投げるなぁ!」
勘右衛門「石投げちゃいけないんだぞ!」
文次郎「往生際が悪いぞ!」
伊作「痛っ!」
仙蔵「大丈夫か!伊作!小平太!岩を削れ!」
仙蔵の合図と共に小平太が苦無を持ち岩を削り出した。
小平太「イケイケドンドーン!!」
小三郎「ちょ!小平太先輩!本当に人間ですかぁ!?」
小平太に岩を削られ岩がある揺れ始めた。小三郎は咄嗟に苦無を岩と岩の間に差し込み崖に張り付く。同時に足場は崩壊。
仙蔵「本当に往生際が悪いぞ!」
八左ヱ門「降りてこい!お前は完全に包囲されている!」
小三郎「くぅっ…!」
張り付くのも限界がある。
小三郎(もうダメか……乱太郎、きり丸、しんべえ……みんな……。)
陽も傾き夕暮れになる。小三郎が諦めかけたその時!優しい良い子のみんなの声が聞こえた。
は組一同「小三郎ぉぉ!!!」
声と同時に小三郎の目の前に鎖が降りて来た。小三郎が見上げると。
乱太郎「小三郎!その鎖に掴まるんだ!」
きり丸「今生の別れならなぁ!俺たちが探してやる!」
しんべえ「お別れなんてさせないよ!今度は僕たちが守る!」
小三郎「乱太郎!きり丸!しんべえ!みんなぁ!!」
崖の上には黄昏に照らされた一年は組のみんなが立っていた。変わらぬ笑顔がそこにあった。小三郎は鎖に掴まる。
庄左ヱ門「よ〜し!みんな引っ張れ!」
は組一同「オーエス!オーエス!」
留三郎「あぁぁぁ!!待て!小三郎おぉぉ!」
留三郎がジャンプをして手を伸ばすが……その手は僅かに小三郎の脚先に触れただけだった。
しんべえ「掴まって!小三郎!」
鎖で引き揚げられしんべえの手を借りて崖の上へ。そして学園から終了の花火が上がった。
小三郎「みんなぁ……。」
伊助「よく頑張ったね!小三郎!」
団蔵「すごいよ!あの潮江文次郎先輩から逃げ延びたんだよ!」
虎若「本当にすごいよ!自慢していいよ!」
全員が賞賛を送る中、小三郎は突如泣き出した。
小三郎「みんなぁ…うわぁぁぁぁん!」
兵太夫「ちょ!どうしたの!?」
小三郎「ごめん…グスッ…みんなの顔見たら…ヒック…なんか泣けてくるんだよぉ……うわぁぁぁぁん!」
三治郎「あははは。頑張ったね!」
金吾「よく頑張ったよ!君がナンバーワンだ!」
喜三太「頑張ったねぇ〜?よしよし。」
全員が小三郎を抱きしめよしよしと頭を撫でる。
仙蔵「負けたな。」
文次郎「あぁ。俺たちの負けだ。」
兵助「僕たちも負けましたよ。なぁ。雷蔵。」
雷蔵「あぁ。今回の勝者は……。」
三郎「俺たちから逃げ延びた。一年は組の食満小三郎だ!」
五年生も六年生も既に険悪ではなくなった。勝敗はどちらでもなく、無事逃げ延びた小三郎に与えられた。泣く小三郎の様子を留三郎が見つめる。
伊作「一本取られたね?留三郎。君の自慢の弟に。」
留三郎「伊作……あぁ。初めて一本取られた!見事だ!小三郎!俺の最高の弟だ!」
留三郎は静かに拍手をして小三郎を褒めた。