小三郎「ありがとう、ヘムヘム。」
ヘムヘム「へ〜ム〜。」
一年忍たま長屋で小三郎はヘムヘムから手紙と本を受け取り自室へ。ヘムヘムが持って来たのは実家からの手紙。
小三郎「これは僕宛。こっちは兄者宛だね。」
仕分けをしているて部屋の戸がノックされた。
喜三太「小三郎〜。いる〜?」
小三郎「喜三太?どうぞ〜。」
戸が開くと用具委員会全員と善法寺伊作がいた。
小三郎「あれ?皆さんどうしました?用具の手伝い?にしては善法寺伊作先輩もいるし……あれ?兄者は?」
兄がいない事に首を傾げるとしんべえがそばに寄って来た。
しんべえ「小三郎!愛妻弁当作って!」
小三郎「は!?…/////し、しんべえ…僕は君の事を確かに友達として好きだけど……////でも、しんべえが望むなら…す、末永くよろしくお願いします…。」
全員「だぁぁぁぁ!」
赫らむ顔で照れ臭そうにしんべえを見る。全員がこけた。
作兵衛「違う違う!告白じゃねぇよ!」
小三郎「えっ!?び、びっくりした〜。おしげちゃん捨てて来たのかと。」
喜三太「い、今のはボケじゃなかったのね?」
伊作「でも相談はあってね?」
伊作先輩の話を聞く。兄者が鉄双節棍のテストで良い結果が出せずに落ち込んでいる事。他のモブが一位になった事。
平太「だから……気晴らしに今度用具のみんなでピクニックに行くんだ…。そこでみんなで留三郎先輩にお弁当作ってあげようと思うんだけど…。」
守一郎「俺たち料理あんまり得意じゃないから…。」
喜三太「だから小三郎の力を貸して欲しいんだ。」
小三郎「なるほど。でも愛妻弁当って。」
しんべえ「前にね?」
しんべえが歌いながらヤケアトツムタケ忍者のお弁当の内容を小三郎に教える。小三郎はしんべえの歌を聴き、そして何かを思い出したように手を叩いた。
小三郎「よし!分かりました!では、食満留三郎の弟、この食満小三郎。兄者を元気付ける為のお弁当を作る任務。謹んで受け賜わりましてございます!」
小三郎は正座をし直して両手を床につけて頭を下げた。
全員「だぁぁぁぁ!!」
再びこけた。
作兵衛「一々オーバーだな!」
喜三太「突っ込んじゃダメです、作兵衛先輩。」
しんべえ「あれはサブちゃんのキャラです。」
小三郎「あっ。皆さんのお弁当も作りますので。」
小三郎の言葉に全然が目を輝かせた。それから話し合い、お金はしんべえが小切手で全額負担してくれる事になり、買い出しは作兵衛と守一郎がついて回る事に決まり、伊作は留三郎を見ている事になった。
そして数日後のピクニック当日の午前5時。事前に許可を得て台所に立つ割烹着姿の小三郎。ご飯はおばちゃんが事前に炊いてくれていた。ちなみにおばちゃんも手伝ってくれる事になった。
小三郎は手慣れた手つきでおかずを作って行く。卵焼きに豚の生姜焼きに焼き魚。
小三郎「か〜わのりでんぶ〜♬やきもろ〜こ〜♬」
しんべえに教わった歌を歌いながらそれらをお弁当箱に詰めて行く。
おばちゃん「小三郎くん上手だね〜。私も負けないわ!」
おばちゃんもひじきや芋の煮っころがしなど手間のかかる煮物を作り詰める。
日が昇り始める。小三郎は桜澱粉と海苔でご飯に細工していく。
小三郎「ふぅ〜。出来た〜!」
おばちゃん「あらまぁ。可愛く出来たじゃない!」
それぞれのお弁当に異なる細工をして蓋を閉じ包みに入れる。その一つ、留三郎のお弁当に何かを入れると同時に小三郎が急に机に伏した。
おばちゃん「小三郎くん!?どうしたの!?…あら?」
小三郎「zzz………むにゃ…。」
いくら出来る子でもまだ十。小三郎の体力は尽き眠りに落ちてしまった。それでも頑張った、みんなに喜んで欲しいから、兄に元気になって欲しいから。
おばちゃん「よく、頑張ったねぇ?あとはおばちゃんに任せておきなさい。おやすみ。」
おばちゃんは優しく小三郎の頭を撫でておんぶして自室に寝かせた。
翌朝。用具委員会はおばちゃんにお弁当をもらいに来た。
おばちゃん「はい。みんなのお弁当!」
しんべえ「わぁい!小三……むぐぐぐ!!」
留三郎「小三?」
作兵衛「なんでもないです!」
作兵衛が慌ててしんべえの口を掴み羽交い締め。その時、おばちゃんが留三郎に歩み寄る。
おばちゃん「はい。留三郎くんの分!きっと美味しいわよ!」
留三郎「?きっと?」
守一郎「さぁ!出かけましょう!」
留三郎がなんとなく違和感を覚える中、守一郎が遮り用具委員会はピクニックへ出かけた。朝の清々しい空気。道に咲く花。木の香り。用具委員会のメンバーは楽しそうに談笑しながら歩いていく。留三郎も段々と溜息などはなくなり笑顔を見せる。そしてお昼時に前にやって来た辻堂に到着。
留三郎「よ〜し。お弁当にするかぁ!」
全員がお弁当を出すが何故が全員留三郎を見る。
留三郎「なんだ?食べないのか?」
守一郎「まずは先輩が開けてください。」
留三郎「?あぁ。」
留三郎がお弁当の蓋を開けた。次の瞬間「おぉ!!」っと歓声を上げた。
留三郎「こ、これは…!」
そこには唐揚げをメインに卵焼きに焼きもろこにセタシジミの甘露煮、ミニトマト。ひじきなどの煮物にウサギに切ったりんご。そして桜澱粉をふりかけた白米。そして「兄愛」と切られ飾り付けられた海苔。留三郎の中で全てが繋がった。
しんべえ(わぁい!小三…むぐぐ!)
おばちゃん(きっと美味しいわよ!)
しんべえとおばちゃんの言葉、そして「兄愛」とやるのは一人しかいない。
留三郎「小三郎…?これ!小三郎が作ったのか!?」
全員「正解!!!」
全員が声をあげる。
留三郎「ど、どう言う事だ!?」
守一郎「留三郎先輩。みんな先輩を知っているんですよ?だから、みんなで励ます事にしたんです!」
作兵衛「そうです!たかがテストがなんです!」
喜三太「留三郎先輩ならまたいい点取れますよぉ!」
しんべえ「そんな喪部野モブ助けに気持ちで負けちゃダメです!」
平太「留三郎先輩……元気…出して下さい。みんな元気な留三郎先輩が好きなんです…。」
全員の言葉に留三郎の心は動かされた。
留三郎「そうか……知っていたのか……ざまぁないな。後輩に心配されて……。」
その時、喜三太が何かに気がついた。
喜三太「あれ?何かお弁当にくっ付いてますよ?」
喜三太が指差し、留三郎が見ると手紙のような物がくっ付いていた。
『兄者へ。兄者の好きなもの詰め込んだよ!元気出して、僕は元気な兄者が大好きだから。また町の甘味屋さんに行こうね! 小三郎より。」
留三郎(小三郎…!)
留三郎は次の手紙を読む。
『留三郎へ。先ずは謝ります。小三郎の事ばかり気にして貴方に手紙を書くのが遅れてしまいました。』
留三郎(お袋…!)
『風邪は引いていませんか?友達と仲良く出来ていますか?貴方は昔はよく同世代の子にいじめられて泣いていましたね?よく覚えています。でも、貴方は小三郎が生まれてから泣かなくなりました。お兄ちゃんと言う自覚があったのでしょうね?でもね。留三郎。本当は甘えたいのに、悩みを聞いて欲しいのに、弟の面倒を母が見ているから我慢しなければと……ごめんなさい。貴方に甘えさせてあげらるなくて……でも、私の大切な息子。貴方達兄弟は私の宝です。体に気をつけて。小三郎とも仲良くね。
母より。』
追伸「最近寒くなって来ましたから暖かくして下さいね?それから風邪をひいたら生姜湯がいいですよ?他にも首にネギとか、加湿するとか、ほかにもほかにも。」
留三郎は涙を流すもはにかむように、笑いながら手紙を握る。
留三郎「追伸が……長いんだよ……ありがとう…お袋!小三郎!ありがとな!お前らは……最高の後輩だ!!」
留三郎は全員を寄せギュッと抱きしめる。全員が笑い、そしていよいよお弁当タイム!全員がお弁当を開けるとまたもや驚いた。
守一郎「これは…!」
作兵衛「すっげぇ!」
守一郎のお弁当はおかずこそ変わらないがメインは焼き魚。作兵衛は生姜焼き。そして細工海苔で「敬愛」と細工されていた。そして一年生は、喜三太のメインは肉巻きポテト。平太はおからハンバーグ。しんべえはでかい唐揚げ。そして細工海苔は「親愛」と細工されていた。
全員が感激しそして食べる。もちろん味は最高。しんべえなど美味しすぎて泣く始末。
留三郎(まさに…愛だな…お前の愛!受け取ったぞ!小三郎!)
留三郎「うぉぉぉぉ!!!!元気出てきたぞぉ!!」
守一郎「俺も!」
作兵衛「自分も!」
しんべえ&喜三太&平太「僕たちも!」
それから全員で缶蹴りをしたり鬼ごっこをしたりして遊んだ。留三郎は悩みも結果も吹っ飛びいつも以上に楽しんだ。
その夜。小三郎が留三郎に抱きつかれて離さないのはまた別の話。