とある昼下がり。小三郎は自室で今日の宿題を早々に終わらせ一息ついてた。その時扉がノックされた。
「はい、どうぞ。」
「やぁ、小三郎。」
「乱太郎。どうしたの?」
「実はね?」
乱太郎の話によると明日の休みに保健委員会が薬草探しがてら裏山の森にハイキングに行くらしく、委員会との交流も兼ねて小三郎にも参加して欲しいらしい。
「どお?」
「いいね。僕裏山初めてだから。」
「良かったぁ〜。じゃあ明日の9時ね。お弁当は食堂のおばちゃんに私から言っておくから。」
「じゃあ明日。」
翌朝。
「「「ようこそ!保健委員会へ!食満小三郎!」」」
伊作先輩と左近先輩と伏木蔵に快く迎えられ小三郎の顔もにこやかになる。
「改めて、食満小三郎です。今日は保健委員会にお招きいただきありがとうございます!精一杯務める所存であります!」
「そんな硬くならなくていいよ!」
小三郎の持ち前の丁寧な挨拶に乱太郎が突っ込む。伊作先輩がくすっと笑う。
「留三郎そっくりだけど、性格は幾分違うね?」
「あのー、伊作先輩?」
「どうしたんだい?小三郎。」
少し屈み尋ねる。小三郎は周りを見る。
「紫色の髪の……そうだ!三反田数馬先輩は?」
「「「あっ……。」」」
ガシッ!小三郎を誰かが後ろから抱きしめた。
「覚えてくれてた…僕の事忘れてなかったぁぁ!」
小三郎が振り返ると、嬉し涙を流している三反田数馬先輩が小三郎を見ていた。
「君はいい奴だね!小三郎ぉぉぉぉぉ!うわぁぁん!」
大泣きし出した三反田先輩を乱太郎、伏木蔵、左近先輩、伊作先輩が宥める。
「ご、ごめんなさい!」
「誰か足りないと思っていたんです!」
「すみません!」
「申し訳ない!」
「「「で、誰だっけ?」」」
「だぁぁぁ!」(ドテ〜ン!)
三反田先輩がすっ転んだ。
「今、小三郎が言ったばかりじゃないか!三年は組、三反田数馬!!!」
そんなやりとりを小三郎はジト目で見ていた。
「こ、小三郎?」
「そ、そんな目で見ないでよ?」
「自分たちの委員会のメンバーを忘れるなんて……どうなの?(ジト〜〜。)」
「ほんとそうだよ…(ジト〜〜。)」
三反田先輩も小三郎同様ジト目に。
「か、数馬先輩…。」
「よ、よしてくれ。数馬…小三郎…。」
小三郎「こんな委員会…。」
三反田「あって…。」
小三郎&三反田「「いいんかい?」」
「「「だぁぁぁ!」」」(ドテ〜ン!)
寒すぎるダジャレに乱太郎達は盛大にすっ転んだ。
「よろしくお願いします。三反田先輩。」
「よろしくね?小三郎。」
小三郎と数馬はがっしりと握手を交わした。
「いってらっしゃ〜い!」
「ヘムヘム〜!」
外出届を出して、小松田さんとヘムヘムに見送られ、いざ裏山に出発。それから半刻たち、一年は組の教室に留三郎が訪ねてきていた。
「きり丸、しんべえ。」
「食満先輩!」
「何か御用っすか?」
「小三郎が見当たらないんだ。何処かに出かけたのかと思ってな。」
「小三郎なら今日は保健委員会の交流も兼ねて、裏山の森に薬草取りがてらハイキングに出かけましたけど。」
しんべえの言葉を聞いた途端に留三郎は真っ青になった。
「何ィィ⁉︎保健委員会とハイキングだとぉぉぉぉぉ⁉︎⁉︎」
留三郎は大慌てでは組を飛び出して行った。
「どうしたんだろう?食満先輩。」
「さぁ?」
留三郎はすぐに私服に着替えて、音速で外出届を出して後を追った。
「伊作!そして保健委員会の良い子達!頼むから小三郎を不運に巻き込まないでくれ!!」
一方で保健委員会はそんな事など知らずに裏山の森の中を歩いていた。
「小三郎。なんか僕たちより荷物袋が膨らんでいるけど何が入っているの?」
「これ?えっと…お弁当に鉤縄に打竹に包帯に薬壺にトイレットペーパーに懐に苦無2本、ほかにもほかにも……。」
「な、なんでそんなにも…それにペーパーは使わないんじゃ…。」
伏木蔵が首をかしげるが左近先輩が首を横に振った。
「いや、備えあれば憂いなしって言うからな?それじゃ小三郎!」
「なんですか?」
「ペーパー少しくれないか?」
「はい。」
小三郎からペーパーを少しもらい左近先輩は何処かへいった。
「ほら、持ってきて良かった♫」
「「アララッ!」」
乱太郎と伏木蔵がこけかけた。しばらくしてから左近先輩が戻って来て、再び歩き出した。薬草を集めながら裏山の山道に入るとき、数馬先輩が短く悲鳴をあげた。
「痛っ!」
「どうした!数馬!」
「笹で手の甲を切っちゃいましたぁ…。」
「すぐに治療…あぁしまった!包帯も薬も持って来て…。」
「はい、伊作先輩。薬壺と包帯。」
小三郎は荷物袋から薬と包帯を取り出し差し出す。
「助かったよ!ありがとう、小三郎!」
「用意がいいんだね?」
そんなやりとりを後ろから追って来た留三郎が見ていた。
「流石だ、小三郎…お前の備えの良さで…保健委員会の不運を帳消しに出来れば…。」
それからは小三郎の用意した道具は要所要所で役に立った。高い木の上に生えている薬用の苔を採るのに鉤縄。洞窟に生えるキノコを探しに打竹。何時もなら何か不運に見舞われる保健委員会だが今回はすんなり薬草が集められ裏山のてっぺんまで来れた。
「小三郎!見てごらん!」
「うわぁぁ…!」
伊作先輩に言われ、側に来ると、そこにはなんとも美しい眺めだった。地平線の彼方も見えるくらいの光景。
「綺麗ですね〜。伊作先輩?」
気がつくと伊作先輩は小三郎の手を握っており、他のメンバーも側に寄って来ていた。
「ありがとう。なんだか今日の保健委員会は幸運みたいだ!」
「君のおかげだよ。おかげで薬草も沢山集まったよ。」
「ペーパーありがとな!助かったよ。」
「本当にありがとう!」
「スリルはないけどエキサイティング〜。」
お礼を言われて小三郎もにっこりと笑う。
「どういたしまして。」
それからはお弁当を食べ、保健委員会のメンバーと遊び、薬草を摘んだ。
「保健委員会メンバーの不運を小三郎の用意の良さで打ち消した…フッ…心配するまでもなかったな。」
隠れて見ていた留三郎は帰ろうとした時だった。伊作先輩が邪魔な石を投げた。
ゴチ〜〜ン!!!
その夜。留三郎は伊作にタンコブの治療をしてもらっていた。
「伊作、俺の弟を委員会の交流に誘ったんだってな?」
「うん。彼は君によく似ているよ。」
「兄弟だからな。」
「今日は珍しくいい事尽くめでね。薬草も沢山集まったし。不運にも見舞われなかったし。でも留三郎が不運だったね?鍛錬の途中で石が降って来てタンコブなんて…。」
「不運じゃない、不注意だ。」
「あっはははは!」
伊作の笑い声に、留三郎は苦笑いを浮かべた。
不運が来たのは留三郎の下でした。