四ツ谷文太郎の幻想怪奇語   作:綾辻真

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前回のあらすじ。
四ツ谷の能力が判明し、その能力をもっとよく知るために実験を行い始める。


其ノ二

「……旅人が夜の山を歩いていると、コロン、コロンと坂の上から小さな(つづら)が転がり落ちてきました……。旅人は誰かが落としたのかと辺りを見回すも、周りには旅人以外の人間は誰も居ません。不審に思っている間に、箱は旅人の目の前で止まりました。すると今度は箱の蓋がカタカタと音を立てて動きます。……動物でも入っているのかと旅人が蓋を開けると、中から巨大な蒼い腕がにゅうっと伸び、旅人の首を掴みました……!見ると箱から出てきたのは蒼い坊主頭の大入道。金色の眼に鋭い牙、上半身は山伏のような格好で下半身は折りたたまれた紙を伸ばしたかのような薄っぺらい帯状の姿。大入道は捕まえた旅人を見てにやりと笑うと、鋭い歯を持つ大口をガバッと開いて――」

 

 

 

 

 

 

 

「――ガアアアアァァァァーーーーーーーーッ!!!!」

「きゃあああああっ!!!」

「ひゃあああぁぁぁ!!!」

 

今にも『食らいつくぞ』と言いたげなポーズを取りながら、四ツ谷は大声をあげ、つられて小傘と薊が悲鳴を上げた。

それを見た四ツ谷は両手を叩く。

 

「ヒャハハハハッ!ナイス悲鳴!やっぱり他人の悲鳴って言うのは心地いいなぁ♪」

「……まったく、悪趣味なやつだな」

 

高笑いする四ツ谷に慧音は呆れた言葉を漏らす。それにかまわず四ツ谷は小傘と薊に声をかける。

 

「怪談の内容は覚えたな?……それじゃあ早速行動開始と行こうか」

「この怪談を人里に流せばいいんですね師匠」

「いんや。今回は人里に限らず()()()()()()に流すんだ」

「何?幻想郷じゅうにだと!?」

 

四ツ谷の小傘への返答の言葉に慧音は食らいつき、四ツ谷はそれに答える。

 

「ああ。今回の怪談は広範囲にわたって行うからな。噂が広がるまで時間はかかるだろうが、……ま、気長にやっていこう。人里内は主に薊が、外は俺と小傘が広める」

「……あの、父上。我輩は?」

 

そう言って自分に指を刺す金小僧。

 

「お前は別件だ。俺にこんな能力が宿ったって事は、お前にも何かしらの能力がある可能性がある。お前はここに残ってそれを見つけろ」

 

そう言い残し、足早に長屋を出ようとする四ツ谷に今度は阿求が声をかけた。

 

「待ってください四ツ谷さん。ちょっと気になっていたんですが、四ツ谷さんって空は飛べるんですか?それと弾幕ごっこなども……」

 

その言葉に四ツ谷はきょとんとした顔を見せた。

 

「空を飛ぶ?弾幕ごっこ?……何だそれ???」

 

ピキンと、一瞬空気が凍った――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……知らなかった」

 

数十分後、慧音たちの説明で弾幕ごっこのルールや空を飛んでの移動がこの世界にあることを知った四ツ谷は俯いてそう呟いていた。

しかしショックを受けていたのは何も四ツ谷だけではなかった。説明をした慧音たちも軽い衝撃を受けていた。

 

「ま、まさか師匠が弾幕どころか空を飛ぶことすらできないなんて……」

「あんなとんでもない能力を持っているから、てっきりそれぐらいできるものと思っていたが……ほんとに普通の人間とあまり変わらないんだな。と言うか、ほんとに人外か……?」

 

小傘と慧音の言葉に四ツ谷はますます肩を落とした。それを見た阿求が呟く。

 

「百歩譲って弾幕はまあ良いとしましょう。ですが、空が飛べないとなると不便になりますね。幻想郷は意外と広いですから、あちこちに噂を流し広めるだけでも下手したら何ヶ月もかかってしまうかもしれませんよ?」

 

その言葉に室内に沈黙が降りたが、すぐに元気な声が部屋に響いた。

 

「はいはいはーい!それならわちきが何とかできるかもしれない!」

 

何かを思いついたような顔で小傘がそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、はわ、あわわわ……!」

 

一時間後、人里の外れ、畑が延々と続く場所に四ツ谷たちの姿があった――。

そのうちの一人、薊はなんと巨大な傘に乗って宙に浮いていた――。

 

 

 

 

 

 

 

金小僧を長屋に残した一行は、小傘の提案で道具屋を訪れ、そこで二本の持ち手の部分がフック状になった傘を購入した。

そして人里の外れまで来ると、小傘は購入したばかりの傘に妖力を吹き込んだ。

妖力を吹き込まれた傘はその力で大きくなり、傘が開いた状態で空中をふよふよと漂い始めたのだ。

ポカンとその光景を見る四ツ谷たちに小傘が声をかける。

 

「これでこの傘たちはわちきの力でプチ妖怪化、これに乗って『念』を送れば自由に操縦する事もできるよ」

 

そう言って巨大化した傘のフックの持ち手部分に足をかけて、中棒を握り、小傘は空へと上昇して見せた。

それを呆然と見上げる一同。

 

「……あれは本当に人一人を驚かすのにも苦労していた小傘なのか……?」

 

信じられないといった感じてそう響く慧音であったが、それに答えてくれる者はいなかった――。

 

 

 

 

 

 

 

じっとしていても始まらないという事で、その妖怪傘を使い、初めての自転車もとい初めての巨大傘の運転が始まる事となった。

ちなみに傘を二本用意したのは四ツ谷だけでなく薊にも乗ってもらうためだ。

何かあった場合、一緒に人里の外まで来てもらう必要があるかもしれない。遠出で一緒に行動する事があったときの万が一の可能性を考えての四ツ谷からの提案であった。

傘操縦の特訓自体は意外と難しくは無かった。コツさえ掴んでしまえば簡単なもので、四ツ谷はものの十分程度で傘の操縦をマスターする。

そして今度は薊の番となり、おっかなびっくりで傘の操縦をし始めた。

薊の操縦を眺めながら、慧音は四ツ谷に質問してみた。

 

「なあ四ツ谷。さっきお前が話していた折り畳み入道なんだが……あれはお前が考えたオリジナルの妖怪なのか?」

「いいや。アレは元々とある妖怪漫画家が創ったオリジナル妖怪でな。生み出されてまだ百年も経っていないはずだから、まだ幻想郷には居ないとふんで、俺流の工夫(アレンジ)を加えてみたんだ。ちなみに金小僧も別の漫画家さんによって生み出されている」

 

四ツ谷の隣に立つ、小傘、慧音、阿求は同時に「へー」と相槌を打つ。それと同時に上から「きゃあ!?」という小さな悲鳴が聞こえ、全員が一斉にそちらへと眼を向ける。

突風にでもあおられたのか、傘が小さくゆらゆらと揺れており、薊が必死に中棒にしがみ付いている光景が眼に入った。

一応、中棒と薊の腰には命綱が結ばれており、持ち手の足場から足を踏み外したとしても落ちる事はない。それ故、四ツ谷たちも然程心配はしていないのだが、それとは別に四ツ谷と小傘には気になる()()が薊に存在していた――。

薊が傘の中棒にしがみ付いた事により、彼女の豊満な胸の谷間に中棒が挟まれる形となり、それがなんとも言えない妖艶さをかもしだしていた――。

 

「……まだ十五なんだよな?慧音先生よりもデカいんじゃないか、アレ?」

「いいなー。わちきもあんなバインバインなの持ってみたいなー」

 

二人がそう呟き、同時に小傘はあまり膨らみの目立たない、自分の胸をぺたぺたと触りだす。それを見た慧音は呆れた。

 

「今の言葉、微妙にセクハラだぞ四ツ谷。それと小傘、大きいのを持っても全然いいことなんてないんだぞ。……足元は見えにくいし、肩はこる。寝るときも苦労するし、外に出れば男衆のいやらしい眼の注目の的だ」

 

()()()()()()()現在進行形で苦労している者の言葉にはどこか重みが感じられた。

聞かないほうが良いか、と四ツ谷は考えていると、またもや上空から悲鳴が上がる。今度はなんだと、四ツ谷は見上げ――。

 

「ブッ!?」

 

大きく吹き出した。

空中にいる薊は何故か上下逆さまになって浮いており、そのせいで着物の裾が重力に負けて大きくめくれ上がり、足の付け根近くまでその中身を露にさせていた。

真っ白い瑞々しい美脚が視界に入り込み、四ツ谷は慌てて眼をそらし、同時に隣に居た小傘が慌てて薊を助けに向かった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなトラブルが起こりはしたが、四ツ谷も薊も妖怪傘の操縦をマスターし、時刻が昼時に差し掛かった事もあり、四ツ谷たちは一路、長屋へと戻った。

長屋に着くと金小僧が出迎え――。

 

「父上喜んでください!我輩の持つ能力が判明しましたぞ!」

 

――開口一番にそう言った。

 

 

 

 

 

 

そして一時間後、長屋のちゃぶ台の上には、昼食にしては豪華な料理が所狭しと並べられており、それらを四ツ谷たちは一心不乱に掻き込んでいる姿があった――。

 

「もぐ、もぐ……『隠し金を召喚(しょうかん)する程度の能力』ね……。外の世界の埋蔵金や今や伝説となった金銀財宝などを自分の下に引き寄せ、召喚する能力とは……。これもう働かなくて良いんじゃないか?」

「馬鹿な事言ってるんじゃない」

 

食べながらそう呟いた四ツ谷に慧音の鋭いツッコミが入っていた――。




小傘が段々とチート化。
同時に薊がこの作品の微エロ要員に決定しました。
また、金小僧の能力もさりげなく判明。
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