四ツ谷文太郎の幻想怪奇語   作:綾辻真

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前回のあらすじ。

命蓮寺での一件の後、マミゾウ、射命丸、ぬえの三人は四ツ谷の長屋へ集合し、独自の会談を始める。


其ノ七

命蓮寺と天狗たちの会合から次の日の昼間。

いつものように命蓮寺の境内には、修行者である妖怪や人間たちが、せっせと掃除や鍛錬に励む光景があった。

そのうちの一人、寺門前で石畳に落ちた落ち葉を掃除する響子は、人里へと通じる道から賑やかな声が聞こえてきたのを耳にし、ふいに眼を声のする方へと向けた。

見ると道の向こうから一人の男を中心に、小さな子供たち数人がこちらに歩いてくるのが見える。

 

「?」

 

大人一人に子供複数の来客は珍しく、首をかしげる響子ではあったが、彼らを向かえるために掃除で動かしていた竹箒を止めた。

そして彼らが近づくにつれ、中心にいる男の顔がはっきりと見え始め、響子は目を丸くした。

見るとその男は昨日の昼間に人里に住む女性たちと一緒に訪れ、同じく同日の夜に聖たちと共にマミゾウとぬえに客間に連れ込まれていた者であった。

その時響子は、こそこそと人目を避けて部屋に入っていくマミゾウたちを怪訝に思い彼女たちに声をかけたのだが、軽くはぐらかされた挙句、今見たことは他言しないようにと、逆に頼み込まれる結果となってしまったのだった。

 

(確か……四ツ谷文太郎さん、だったかな?)

 

以前開かれた宴会の席でも軽く自己紹介をして名前を知っていた響子であったが、昨日に引き続き今日も寺を訪れ、しかも今回は複数の子供連れという事に、さすがの彼女も彼をいぶかしむ。

しかし、彼の周りでキャッキャと楽しそうに騒ぐ子供たちの手前、それを顔に出すわけにも行かず、響子は来客を迎える表情を(表向きに)つくり、彼らを迎えた。

 

「命蓮寺へようこそ。今日はどういったご用向きでしょうか?」

「おう。確か幽谷響子っつったか?突然で悪いが、境内の一角、ちょっと借りるぞ?」

「は?え?あ、ちょちょっと!?」

 

軽くあいさつしてズカズカと子供たちと共に寺へと入っていく四ツ谷に、響子は一瞬呆気に取られるも、すぐにハッとなって慌てて彼らの後を追いかける。

 

「ちょ、ちょっと!?いきなり何なんですか?」

「今言ったろ?境内の一角を借りるって。今から子供(こいつ)らと楽しい事するんだから邪魔すんなよ?こっちもそっちの仕事の邪魔しねーから」

「か、勝手な事言わないで下さい!それに、『楽しい事』って一体何を――」

 

そう四ツ谷の背中に声をかける響子。すると突然、四ツ谷は立ち止まり、響子へと顔を向ける。

怪しく、そして不気味に歪む四ツ谷の笑みがそこにあり、妖怪であるにもかかわらず響子の全身がゾクリと総毛だった。

そんな響子に四ツ谷は弾むような口調で返答する。

 

 

 

 

 

「何って決まってるだろ?……楽しい、楽しい……『怪談』さ♪」

 

 

 

 

 

境内に入った四ツ谷は、子供たちを引き連れて本堂の前にやって来る。そして本堂へ上がるための木製の階段、その隅っこへ四ツ谷は腰を下ろした。

その四ツ谷を囲むようにして子供たちはウキウキとした表情で立ったまま四ツ谷を見続ける。

そしてそのさらに後ろに困惑気味の響子が、さらに四ツ谷と子供たちの存在に気付いた修行者の何人かも四ツ谷の下へやって来る。

四ツ谷が連れて来た子供たちは、今や四ツ谷の怪談の常連ともいえる少年少女――太一、千草、佐助、蛍、育汰の仲良し五人組であった。

彼らはよく四ツ谷の元を訪れては『怪談を聞かせてほしい』とせがんで来る。今回も四ツ谷に怪談をせがんだ所、この命蓮寺まで連れて来られたという経緯であった。

その五人を代表して太一が四ツ谷に声をかける。

 

「四ツ谷のおにいちゃん!今日はここで怪談をやるの?」

「ヒッヒッヒ。ああそうさ!やっぱり『怪談』は()()がよく出ると誰もが思える場所……すなわち寺の中でやったほうが雰囲気あるだろ?」

「でも、今昼間だよ?こんな明るいうちから『怪談』をやったって雰囲気も何も無いんじゃない?」

 

当然と言った口調で千草がそう言うも、四ツ谷はやれやれと首を振る。

 

「おいおい、今まで昼間でも『怪談』を語った事なんて何度もあっただろ?その度に『キャーキャー』悲鳴を上げていたのは誰だったかなぁ~?」

「こ、怖がってなんか無いもん!」

 

意地悪げな笑みを浮かべて四ツ谷がそう言った瞬間、佐助がムキになって反論する。

それを見てシッシ!と笑った四ツ谷は子供たちに言い聞かせるように語り掛ける。

 

「言いかお前ら。確かに昼間の寺なんかで怪談をしても恐怖も何も感じないだろう。そう言った『怖い気持ち』ってのはやはり『真夜中』や『いわくありげな場所』こそ引き出されるのも納得だ。……だがな。忘れてはいないか?お前たちの後ろで同じように俺の話を聞いている連中も――」

 

 

 

 

「――人ならざる存在だという事を……!!」

 

 

 

 

四ツ谷の言葉にビクリと反応した子供たちは無意識の修行者の妖怪たちから距離を取ろうとする。

だがすかさず、そこへ四ツ谷のフォローが入った。

 

「ああ、だが心配すんな。この寺にいる奴らは比較的良い奴らばっかりだ。この寺と人里の交流はお前たちだって知ってるだろ?」

 

その言葉に子供たちは頷いておずおずと警戒心を解いていく。対して四ツ谷にダシにされた響子を含む修行者の妖怪の何人かは、何とも微妙な顔で四ツ谷を見ていた。

一拍置いて四ツ谷は再び口を開く。

 

「……まあようするに。俺が何を言いたいのかというと、そう言った『人ならざる怪異』ってのは、どこか遠くの場所にある御伽噺(おとぎばなし)などではなく、いつも自分たちの生活圏のすぐ隣に存在している。そういう奴らの『怪談』がすぐ身近にあるから恐怖するんだよ」

 

そして四ツ谷は子供たちを指差して挑発的な口調で続けて言う。

 

「……したがって『昼間だから全然怖くない』と言っておきながら、すぐ背後にいる真昼間でも活動している怪異たちの存在を確認すると、おっかなびっくりでビビッているお前たちは……ただただ滑稽だ!」

 

バッサリとそう言いきる四ツ谷に子供たちは「むぅ~!」と頬を膨らませる。

それを見た四ツ谷は面白そうに響く。

 

「ほォ~、怒ったか?なら証明して見せな。俺がこれから語る怪談に見事怖がることなく耐え抜いたら、お前たちを妖怪などには(おく)さない、勇敢な人間だという事を認めてやろう!」

「良いよ!望む所だよ!!」

 

太一がそう言ったと同時に、子供たち五人は一斉に四ツ谷の前の地面にドカリと腰を降ろした。

それを子供たちの背後で見ていた見た響子たちはあまりの状況に全員ポカンとした表情で立ち尽くす。

すると本堂の廊下の向こうの方から慌しく複数の足音が近づいてきた。

 

「一体何の騒ぎですか?」

「あれ?何この集まりは?」

「何故人里の子供たちがここに?」

「あなたは四ツ谷さん?これは一体どう言う状況なのですか?」

 

騒ぎを聞きつけてか、聖、村紗、一輪と入道、そして星の順で声を出しながらやって来たのだ。

だがその瞬間、四ツ谷は人差し指を口に当てて――。

 

「シッ……!」

 

そう声を響かせた。短く、それでいて余り力のこもっていない言葉とも言えない声であったが、何故か境内全体にそれは波紋のように広がった。

 

「……お静かに。――今は私の、言葉だけを聞くのです……」

 

静かに響く四ツ谷の声に、聖たちを含むその場にいた全員が()()()口を閉じ、沈黙する。

そして呆気に取られた表情で四ツ谷を見るも、そんな視線には意に返さないとでも言うかのように、四ツ谷はいつもの不気味な笑みを顔に貼り付け、()()()()()()()()()を境内に静かに轟かせた。

 

「……さァ、語ってあげましょう。貴女たちの為の……怪談を……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまるで白昼夢のように目の前で起き始めた――。

いや、実際には何も起こってはいないのだが、それでも聖たちは()()()まるで現実に目の前で起こっているような錯覚におちいっていた――。

四ツ谷の口からつむぎ出される怪談。それが耳から脳内へとするりと入っていくことにより、あたかも自分たちの視界にはそれが本当に起こっているかのような幻覚を見ていたのだ――。

まるで自分がその怪談の『体験者』になったかのような感覚におちいり、四ツ谷の怪談の進行と共に、目まぐるしく場面が変わっていく――。

そしてハナシの最後に現れる『人ならざるモノ』……それが幻覚と理解できれど、実際にそれが目と鼻の先に現れる。……いや、()()()()()()()()()()に、さすがの聖たちも、悲鳴こそ上げはしなかったものの、全身にゾクリとする冷たい『ナニカ』を走らせずにはいられなかった。

それ程までに四ツ谷の怪談は真に迫っていたのである。

だが聖たちも寺の者として勝手に境内で怪談を始めた四ツ谷を何とかとめようとする。

しかし、一つの怪談が終わるとすぐさま四ツ谷が新しい怪談を始めるので、聖たちはなかなか四ツ谷をとめることができなかったのだった。

しかもそうこうしているうちに聖たちも段々と、そして気付かぬうちに四ツ谷の怪談の世界へと引き込まれていき、ついには一つの怪談が終わっても誰も四ツ谷を止めようとする者はいなくなっていた。

彼女たちも完全に四ツ谷の怪談に魅入られていたのである。

それは、周りで最初こそ興味なく修行や掃除をやっていた他の修行者たちもそうで。

風に乗って耳に入ってくる四ツ谷の怪談を聞くにつれ、終には仕事の手を止め、四ツ谷を囲む群衆の一人に混ざっていく始末であった。

そうして気付けば日も傾き、夕方に差し掛かる頃には、命蓮寺にいる者の()()()()()、四ツ谷の怪談を聞きに集まっており、周りに仕事や他の事をする者が全くいなくなっていた。

それに気付いた四ツ谷は、ぼちぼち頃合とばかりに、自分の怪談に耳を傾けている全員に聞こえるように声を響かせた。

 

「……さて、お集まりの皆さん。そろそろ夕方になる時間帯。この場所が寺ということもかねて、此度は『この怪談』を持って、幕引きとさせていただきましょう……」

 

そう言って四ツ谷はその怪談の題名を全員に聞こえるように、それでいて静かな口調で声を響かせた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                    「――『(はか)まねき』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        おいで……。

 

 

 

 

                                 おいで……。

 

 

 

 

 

 

                 こっちへおいで……。

 

 

 

 

 

生暖かい風が吹く夜の墓地……。そこから生気の無い声がどこからか響いてきます……。

死んで墓に葬られたは良いものの、誰も訪れる事も、誰も手入れがされなくなったそのお墓は……日に日に荒れ果てていきます……。

荒れ果て、朽ちてゆくその墓の主は、孤独故にタチの悪い悪霊へと変貌し、周囲を通りかかる者たちを己が墓の下へと招き、引きずり込むのです……。

それも、その寂しさを埋められるのであれば、別に人でなくても良い……。

鳥でも……獣でも……人間でも……永遠に自分のそばにいてくれるのであれば、誰でも何でも良いのです……。

 

 

 

 

例えそれが……自分と同じ……『亡者』だったとしても……。

 

 

 

 

近くで息絶えたその死者を……怪しく……妖しく……手招きし……墓の下へと招きます……。

死者は導かれるままその墓へと吸い込まれるようにして消えて行き……極楽にも地獄にも行くことなく……永遠にその悪霊――『墓まねき』と共に墓の下に縛られ続けるのです……そう……あなたも――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――こっちへおいでえええぇぇぇ!!!」

『----------ッッッ!!!?』

 

唐突な四ツ谷の叫び声に、子供たちを含めたその場にいる何人かが大きな悲鳴を上げる。

悲鳴を上げなかった者たちも顔を青ざめたり、引きつらせたりしてその場に棒立ちになって固まってしまっていた。

そしてそれは聖たちも例に漏れず。村紗と響子は素直に悲鳴を上げ、一輪は血の気の引いた顔で冷や汗を流し、聖と星は表情には出さなかったものの、真顔のまま硬直しており、そこからある程度の恐怖があったことが見て取れた。

そんな彼女たちとは対照的に四ツ谷は空に大きな笑い声を上げながら立ち上がる。

 

「ひゃーっはっはっはっはっはぁっ!!イイ!!実にイイ悲鳴だったぞお前たち♪」

「うぅ……くやしぃ。結局一つも悲鳴を上げずにはいられなかったぁ……」

 

心底悔しそうに俯き、そう響く太一。それは他の四人の子たちも同じであった。

しかし四ツ谷は太一の頭に手を乗せ、優しく声をかける。

 

「そうしょげるな。お前らほどの歳の子供はまだそうやって素直に悲鳴を上げてる方が、可愛げがあっていい……それに――」

 

そこまで言った四ツ谷は太一の前にしゃがみ込み、目線の高さを合わせて再び口を開く――。

 

「安心しろ。お前たちは決して臆病なんかじゃないぞ?俺の怖い怖い怪談を飽きもせずに聞きにやって来るお前らが、そんな肝の小せぇ奴らなわけねーだろ?」

「あ……」

 

ハッとして顔を上げる太一に四ツ谷は「シッシ!」と愉快そうに笑うと立ち上がる。

 

「さァて、もうすぐ日も落ちる。お前ら、暗くなる前にさっさと人里へ帰るぞ」

 

四ツ谷のその言葉に子供たちは「はーい!」と元気よく返事をし、来た時同様、四ツ谷と共に寺門から外へと向かい始める。

その背中を唖然とした表情で見送る命蓮寺一同。

だが、いち早く聖がハッと覚醒し、慌てて四ツ谷の背中に声をかけた。

 

「お、お待ちください四ツ谷さん!あなたは結局、この寺へ何をしに!?」

「あァ?何って、そこの幽谷から聞いてねーのか?俺はただこいつらに怪談を聞かせるためにこの寺に来ただけだ。ここは怪談を語るのにイイ雰囲気を持つ場所だったからなぁ」

「はぁ!???」

 

開いた口が塞がらないといった表情で聖は四ツ谷を見つめる。それは他の命蓮寺の者たちも同じであった。皆一様にポカンと口を開いて目を丸くする。

四ツ谷はそんな彼女たちに背中越しに手をひらひらと振りながら子供たちと一緒に寺門をくぐって行く。

 

「そんじゃあなぁ~。場所提供、ありがとう♪お前らの悲鳴もなかなか心地よかったぞ~?」

 

そう言い残し四ツ谷は子供たちと共に命蓮寺を後にしようとし――ふいにその脚が止まった。

 

「……おっとそうだ。大事な事を言うの忘れていた……」

 

そう呟いてクルリと振り返った四ツ谷は、未だ呆然と立ち尽くす命蓮寺の者たちに向けて、人差し指を口に当てながら静かに声をかける。

 

「……最後に語った『墓まねき』……。あれは『曰くありげな噺』なので決して他言しないように……()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里、日が沈みかけた道を、子供たちを家に帰した四ツ谷は自宅へと足を向け、歩いていた――。

もうすぐ長屋に着くというとき、その歩みが不意に止まった。

目の前に四つの影が現れ、四ツ谷の前に立ったからだ。

 

「……見つかったのか?」

 

唐突に四ツ谷がそう口を開くと、四つの影のうちの一つ――マミゾウが代表してそれに答えた。

 

「ああばっちりじゃ。ワシとこのナズーリンの配下の狸とネズミたちを動かして主犯を見つけることができたぞ。()()()()()()()()()()()。じゃがまさか()()()この一件の黒幕だったとはのぅ。命蓮寺創設初期に入ってきた修行者だと聞いて、多少は信用しておったのじゃが……」

 

そう言うマミゾウの横から名前を口にされた本人――ナズーリンが前に出る。

 

()()()()()()()、正直嬉しい話かな?……あいつ、聖たちが見ていない所でいつも私を嫌らしい目で見たりくどいたりして、もう辟易(へきえき)していたから……」

()()()()()()()、ですか?」

()()()()()()()、だよ……」

 

影の一人――射命丸のその問いに、ナズーリンはバッサリと切り捨て、それを見た射命丸はやれやれと肩を落とす。

そんな彼女たちをジトリ目で四ツ谷は声をかける。

 

「……で?結局誰だったんだ?いい加減話してくれるか?」

「あはは、ごめんごめん。それはね――」

 

そう言って、影の最後の一人――ぬえが四ツ谷に黒幕の名と、『宝の隠し場所』を伝えた。

それを聞いた四ツ谷は顎に手を当てて口を開く。

 

「へぇ~、あいつかぁ。前に『あの寺にネズミが潜んでいる』とは言ったが、まさか()()()()()()()()だったとはなァ」

「……お主が先ほど聖たちに怪談を聞かせておるとき、()()()()()その場におらず、()()()一心不乱に穴を掘っておったからのぅ。まず間違いないじゃろう。……にしても、辛抱足らん奴じゃ。お主が子供らを連れて寺で怪談を始めた時、何かおかしいとは思わなかったのかのぅ?」

 

呆れた口調で空を仰ぐマミゾウだったが、その考えを四ツ谷は否定する。

 

「いんや。奴はとても辛抱強く、かつ用心深い奴だと俺は思うね。……たった二人で天狗の里の宝物庫を攻略しようとした奴だぞ?それこそ膨大な時間と労力といった手間隙をかけなきゃ、ああもスムーズに盗みなんてできなかっただろうよ……」

「…………」

「命蓮寺だってそうだ。長い時間をかけて()()()()()()()()()、人目を盗んでは掘り返すといった行為を続けてきたんだろう……。だが、いい加減痺れが切れてしまった。それ故に起こしたのがあの『踊るしかばね』だったんだろうな……」

 

四ツ谷の話を聞いてマミゾウは納得したかのように頷く。

 

「まぁ、確かに宝が埋まってた場所は人目を忍んで取り出すには()()()()()()()じゃったからのぅ……。あ奴の視点から考えれば……うん、まあ気持ちは分からんでもないな」

 

一人勝手にウンウンと何度も頷くマミゾウにその場にいた全員が怪訝な眼を向ける。

だがマミゾウはそれには気にも留めず、四ツ谷に問いかける。

 

「……それで?これからどうする?今すぐ奴をお縄にするのかのぅ?」

「ヒヒッ!そんなもったいない事するわけないだろう?」

 

そう即答した四ツ谷は、再び歩み始め、マミゾウたちの間を通り過ぎていく。

そして彼女たちに聞こえるようにして楽しそうに、愉しそうに声を弾ませる。

 

「主犯も実行犯も鬼の宝のありかすらも分かり、『怪談の種』も撒き終えた。後は奴らをじっくりとどう『料理』してやるかを考えるだけさ♪」

「……愉しそうですね、四ツ谷さん」

 

呆れた口調でそう響く射命丸に、四ツ谷は「ヒッヒ!」と笑って見せる。

 

「そりゃそうさ!何せ今回の『聞き手』は()()()()()()!……それはつまり、あの賢者や巫女に睨まれる事無く、思いっきり『最恐の怪談』を行えるという事だ……!!」

 

興奮冷めやらぬといった面持ちで不気味な笑みを深く作る四ツ谷は、歩みを進めながらぎらついた双眸を虚空へと向け一人静かに声を響かせる――。

 

「行くぞ……いざ、新たな怪談を創りに……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~。結局一体何しに来たんだよあの変人……」

 

四ツ谷たちが去った後、村紗水密は少しもやもやとした面持ちで寺の中を歩いていた。

そんな彼女に声がかかる。

 

「村紗様。一体どうしたんです?」

「ん~?何だあんたか……。どうしたってさっき来てた四ツ谷って変人の事さ。いきなり寺に現れて怪談をおっぱじめて、それが済んだらさっさと帰って、もう何がしたかったのかわかんなくってさ~」

 

やれやれと首を振る村紗。しかし彼女に声をかけた者は首をかしげる。

 

「怪談……?前来たあの四ツ谷って方が怪談を寺で始めたんで……?」

「……あれ?あんたその場にいなかったっけ?」

「え?……ええ、まあ……ちょいと()()()()をしていやしてねぇ……」

「へぇ……そうだったんだ……」

 

そこまで相槌を打っていた村紗はふと何かを考える素振りをする。そして唐突に小さくニヤリと笑うと、その者に向けて悪戯っぽく笑いながら口を開く。

 

「ね。だったらさ、あいつから今しがた聞いたとっておきの怪談があるんだけど、聞いてみる?」

 

そう言って人差し指を口につけ、軽くウィンクをした村紗は、()に先ほど四ツ谷が他言無用だと念押しされたばかりの怪談を語り始めた――。

 

「……名前は『墓まねき』って言う私も初めて聞く怪異なんだけど……いい?ここだけのハナシだから、誰にも言っちゃダメだよ?――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――()()()()()()()()♪」




今回は創作が乗りに乗りましたので、ここまで長く書ききることができましたw
前回よりも速く投稿できた事も嬉しく思います。
また、誤字脱字などの報告も気軽にしていってください♪
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