Not上条 But主人公   作:是夢

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第零話 始まりはいつも突然……みたいなタイトルのプロローグって多いね

一月二〇日から二月十八日生まれの水瓶座のアナタは恋も仕事もお金も最強運!全くあり得ないことにどう転がってもイイことしか起こらないので宝くじでも買ってみろ!あんまりモテモテちゃうからって三股四股に挑戦、なんてのはダメダメなんだぞ♪

 

「いや、まー、水瓶座じゃない俺には何の関係もないんだけどね」

 

七月二〇日、朝。

エアコンが壊れてうだるような熱気が支配する『学園都市』のとある学生寮の一室で男はつぶやいた。

一見すると普通の光景に見えるかもしれない。

しかしこの男、水瓶座ではないだけでなく、ここにいるべき人物ではない。さらに本来ならこの部屋の主ではなく、学園都市の住人でもなければ、そもそもこの世界の人間(・・・・・・・)ですらない……はずだった。

そう、昨日まではそのはずだったのだ……少なくとも、その男の記憶の中では。

 

(よし、とりあえず今の状況をおさらいしよう。これがもしssだったりそういうのなら必要だし、俺も今後の方針を決める為にもしておいた方がいいはずだ)

 

そう考えた男は、とりあえず今朝起きたところからの回想をはじめる事にした。

 

 

 

 

朝、男が最初に感じた違和感は部屋の温度だ。昨日は今年に入って一番の真冬日であり、明日はそれ以上の寒気に襲われると予報されていた。それがどうだろう?今部屋を支配するのは正にうだるような熱気であった。暖房の効きすぎか?と思ったが、エアコンは昨日修理に出したばかりであったことを思い出し、その可能性はないと思い直す。

 

これも昨今叫ばれている異常気象とやらの影響なのだろうかなどと思いながら目を開くと、見知らぬ天井があった。ありがちすぎる表現であったがまさにその通りであった。まさかドラマとかでよくある一夜の間違い的なアレか!?と思い慌てて布団をはねのけたが、誰もいない。改めて辺りを見回すと、やはり見知らぬ部屋……のはずなのだがどこかで似たような光景を見たことがあるような気がした。

しかし一体どうやって運び込まれたのだろうか、前述した一夜の間違い云々はやっぱり無いだろう。そんな事があった覚えはないし、酒が入っていたので……とかそういうのも無い。男は酒が飲めない、というよりも後半年は飲んではいけない年齢だ。それを差し引いても記憶が無くなる程飲んだのならば今頃酷い二日酔いに襲われているはずだがそれもない。

ならば寝ている間に運ばれたか?いやさすがに起きるだろう等と考えていると、部屋の電話がなった。何か情報が掴めるかもしれないと受話器をとった彼の耳に飛び込んできたのは、

「ーーちゃーん、バカだから補習ですー♪」

という『ふざけた連絡網(ラヴコール)』であった。普通の人間なら混乱するか怒るだろう。ある日急に拉致され見知らぬ部屋に放置。挙げ句かかってきたのは身に覚えのない補習の通知。男も普段なら怒鳴らないまでも文句の二つや三つと共に置かれている状況の説明を求めただろう。しかし男は一瞬驚いた表情をした後、まるでドラマに出てくる悪党のような笑みを浮かべ、すぐに引っ込めた後受話器に向けて話し始めた。

 

「ックション!!ハーーックショオオオン!!!」

 

「!?」

 

電話の向こうの声が驚いているのが解る。

 

(ツカミは上々っと)

 

「あ、すいませんなんか起きたら体がゾクゾクして、て、デェーッキシ!!!」

 

「だ、大丈夫なのです?」

 

「あー、ちょっとダメかもなんで、これから熱を計って病院行ってくるんで、大丈夫だったら明日からは顔出します゛、ズズー」

 

「そうですか……仕方ありませんね。それじゃあお大事になのですー」

 

そう言うと電話が切れた。

うまくごまかせただろうか?いや、あの人は見かけによらず相当聡い。何らかの違和感を感じ取られただろう。だが、今は少しでも情報とそれを探す時間が欲しい。

 

男は半ば確信していた。ここは『とある魔術の禁書目録』の世界、もしくはそれに類似した世界であると。つまり自分は二次創作等でよくある異世界トリップ、もしくは憑依と呼ばれる状況にあるのではないかと。この部屋を見てから 薄々感じていた既視感の正体はこれだったのだ。そう、この部屋はアニメや原作の挿絵で見てきた上条当麻の部屋にそっくりなのだ。さらにさっきかかってきた電話の声。アニメで何度も聞いた小萌先生の声だ。アドリブを入れてアニメのそれを流用していないかどうかの確認もした。(まあ、そんな事をせずとも初っ端から男の名字を呼んでいたのだが)

そしてテレビを付けてザッピングすればニュースから聞こえてくる「学園都市」という単語。

 

(ここまでくればほぼ確定かな)

 

無論、手の込んだドッキリという現実的な可能性もあるが、仮にそうだとすればここまで手をかけてくれたのだ、引っ掛からないのは失礼だ。

それに、彼は相当な禁書オタクであり、原作小説を全巻所持、読破しているのはもちろん、アニメは全話最高画質で録画し、Blu-rayも購入。外伝たる超電磁砲も同じくであり、アニメ二期に至っては、リアルタイムで視聴し、録画したものを見直し、某動画投稿サイトで皆のコメントを楽しみつつ己の知識を活かして「解説の人」として親しまれてきた経歴を持つなかなかの(つわもの)である。そんな男が(仮にドッキリだとしても)愛してやまない禁書の世界にきているのだ。テンションが上がらない訳が無い。

更に言えば、彼は家族は既に全員死んでいたし、恋人はできたことすらない。友人は……親友と呼べる者が一人いたが、普段から十二割冗談で、「俺がある日突然消えたら、それはきっと二次創作的テンプレに巻き込まれて、別の世界に行ったんだろう……」等と言っておいたのはこの際どうでもいいが、あいつはきっと自分がいなくても大丈夫な奴だと信じている。家賃も先払いしてあったから大家さんに迷惑はかからないはずだ。後は今までに集めてきた漫画やらラノベやらといったグッズに少し未練があるぐらいだが……それはこちらの世界でこちらの世界の物をまた集められると考えよう。

総合すると、元の世界への未練より新たな世界への期待や好奇心の方が勝っており、突如として見知らぬ世界へ放り出された悲壮感等は微塵も感じておらず、そんな事よりこれからどうするかの方が彼にとっては重要な事であった。

 

 

一通り前提を確認したところで男は次に現在の「自分」を確認しようと考えた。この世界において、自分はどんな役なのか、その調査だ。

まず洗面台に行き顔を洗うついでに自分の容姿の確認、(若干元より若い気はするが)これは紛れもなく自分の顔、および体だ。

顔を洗ってすっきりとしたところで再度部屋の捜索。今の自分の身分がわかりそうなものを探す。

散らかった部屋から様々な物を発見しつつ捜索を続けていると、タンスの上に箱があるのに気づき、取ろうとしたところで何かが落ちた。箱を置き、拾い上げて見ればパスポートだ。さっそく調べてみると、写真はさっき鏡で見た自分の顔で、名義はしっかりと彼の本名だ。他の項目も調べたが、おおよそ、ここにくる前の彼のパスポートそのままであった。

 

それと、学園都市内限定のチャンネルでやっていたニュースで、セブンスミストで爆発事故があったと言っていたので、時系列は虚空爆破(グラビトン)事件の後……つまり大体原作開始時という認識で間違いないだろう。

 

そんな回想を経て男はテンプレを踏まえておおよその見当をつける。

 

(そうなると、俺はほぼここにくる前と変わらない状態でこっちに来ていて、恐らく上条さんのクラスメートで成績は悪いってとこかな。うん、なかなか面白そうだ。原作に関わらず学園都市生活を楽しむもよし、憂鬱でキョンが言ってたようなポジションに収まり上条さんの奮闘ぶりを横目に観つつ、ときどきヘラヘラしながら適当なアドバイスをしたりってのもいいな。超電磁砲メンバーと絡むのはどうだろう。佐天さん辺りならフラグ建築はできなくても都市伝説関連の話で友達にはなれるかもしれないな。よし未来は明るい。アレイスターに目を付けられないように気をつけさえすればなかなか愉快かつ快適に過ごせそうだな)

 

そんな風に今後の大まかな方針を妄想してから、最後に自身の記憶を確認する。こういった状況ではそれまでの記憶を失っていたり、原作知識は思い出せるがそれ以外は霞がかかったようにぼんやりとしか思い出せない……等といったことになっているのをよく読むので、一応確認しておく事にしたのだ。

(……とは言っても今更かな?)

改めて考えてみると、家族や友人等の人間関係も、昨日寝る前の事も既に振り返っており、問題なく思い出せていた。

とはいえ、元々彼の趣味に関する事以外での記憶力はお世辞にもあまりいいとは言えず、三日前の晩御飯も思い出せないぐらいなので、もし実際に記憶に欠落があったとしてもいつものことだと済ませてしまい気にしない可能性が非常に高いのだが。

 

 

 

 

……とまあ、そんな風に現状でできる事前確認を済ませた男は、憧れていた街であり、同時にこれから住むことになる街である学園都市の風景を観てみようと思い意気揚々とベランダに向かうと、そこには真っ白な布団(・・・・・・)が干されていた。

一瞬、脳裏に浮かんだ想像を否定しようとして男はフリーズした。

 

(ま、まさか、いや、でもほんとにただの布団という可能性も…)

 

そんな淡い幻想は打ち砕かれ、目の前の布団…もといティーカップみたいな刺繍の施された衣装を着た銀髪碧眼シスターさんはこう言った。

 

「おなかへった」

 

それにより、彼は、自分の本当のポジションを知らされる。

 

(まさか……この世界の主人公(上条当麻)って、俺?)

 

こうして、一人の男の物語が、静かに始まりを告げたのであった。




どうも、にじファンで読んでくださっていた方は大変お待たせいたしました。はじめましての人ははじめまして。是夢と申します。
にじファン閉鎖より9ヶ月、漸く復活にたどり着きました。
あらすじにもあるとおり、以前のものにだいぶ加筆修正が加わり、一部展開が異なる場合があります。
……まあ、にじファン時代にそこまで話が進んでいた訳では無いのであまり違いは無いのですが……
そんなこんなで、ゆっくり更新ですがこれからも読んでいただけると嬉しいです。


ーーーーさて、私にとっての難関であるインデックスさんとの
会話シーンを書く作業に戻らないと……
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