Not上条 But主人公   作:是夢

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わずかな時間を見つけて幾度も幾度も書き直しているうちにこんなに時間がたっていました。
そんな中なんとか形になったので投稿します。
久しぶりなので粗が目立つかも知れませんがご了承ください。


第三話 主人公がいない間にも物語は進むモノ

少し動いた男は、そのまま様子を伺っていると少しして再び動かなくなった。美琴が慌てて具合をみると、スー、ススー、というやや不規則的な息が聞こえてきた。どうやら力尽きて再び意識を失ってしまったようだが、幸い息はあるようだ。

ここで美琴は一安心するとともに、彼女の中に一つの懸念が生まれてきた。

 

(これ、どうしよう……)

 

このまま放置する、というのは論外だ。まがりなりにもこれをやってしまったのは自分な訳だから責任もあるし、なにより彼にはまだ疑惑がある。そのままにはしておけない。

となると、怪我をしている以上救急車を呼ぶか病院に連れて行く事になるわけだが、そこでこの状況をどう説明したものかとなるわけだ。

確かにこれをやったのは自分で、しかしそれなら何故わざわざ連れてきたのかの説明とか、そもそも不良でもなさそうな一般学生相手に喧嘩をふっかけて病院送りにしたというのは常盤台のお嬢様としての世間体的な事以上に僚艦が怖かったりとか、そんなことを考えている間に事態は妙な方向にに転がり出した。

二人の間に割ってはいるように、真っ白な何かが飛び込んできたのだ。その何かは男を庇うように立つと、

 

「あなた達の狙いは私のはずだよ、この人は関係ないんだよ!」

 

とかなんとか言い出した。

その真っ白な何か……まぁぶっちゃけインデックスなのだが、後々聞いてみたところ、このとき傷ついた男とそれを探る美琴を見て、『インデックスを追ってきた魔術師がインデックスと関わった男から情報を引き出そうとしている』と勘違いしていたらしい。男がインデックスのフードを持ち歩いていたのも、それに拍車をかけていたとかなんとか。だがしかしそんな事情は少しも知らないため、「え、ちょ、え?」みたいになってしまっていた美琴だったが、情報の混沌化はこれだけでは済まなかった。

 

「やれやれ、何処に逃げたかと思えば。ここら辺でそろそろ終わりにしないかい?ほら、君だって一般人を巻き込みたくはないだろう」

 

そんな事を言いながら登場したのは、二メートル近い長身の白人男性……いや彼の実年齢やその長身に反して幼い顔立ちを考えると少年と呼ぶべきだろうか。

服装は教会の神父が着るような黒い修道服。だが神父らしい部分はそれだけ。遠くからでも感じ取れる甘ったるい香水と口元で揺れるタバコの混じり合った不愉快な匂い、毒々しいピアスや指輪、真っ赤に染め上げられた金髪や右目の下に刻み込まれたバーコード状のタトゥーが、彼を神父とも不良ともつかない奇妙な姿にしていた。

 

彼の名はステイル=マグヌス。イギリス清教の組織『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属。ルーン魔術のエキスパートで、その中でも炎に特化した魔術を使い、実は探査、治癒、精神分析と応用力も高い高性能な存在でありながら、インデックスに淡い思いを抱いたり、後に小萌先生にフラグらしきものを立てたりするが、実年齢は十四歳なのだから決してロリコンというわけではない、カラープリンタの魔術師である。

 

勿論、それらの情報全てを知っているのは気絶中の男だけで、初対面かつ前情報のない御坂美琴も、記憶のないインデックスもそんな事は知るはずもなく、不良神父という外見情報と、インデックスのみ魔術師であり追跡者という事しか分からないのだが。

ステイルの方も、インデックスを追っていた所に一般人がいて、どうやらその片方が今朝インデックスが関わった人物らしい、というくらいの認識でしかなく、(うん?「人払い」は済ませておいたんだけどね。まあ、適当に脅かせば引くだろうし、でなければ処理すればいいだけだ)と、そこまで深く考えていなかった。

 

この目まぐるしく変わる状況下、美琴は混乱しながらも、飛び交う僅かな情報から状況を推測しようと試みていた。どうやら、この白いのは男の知り合いらしい。そして新たに登場したエセ神父は白いのを追っている。更に自分は白いのにエセ神父の仲間の悪党であると誤解されているようだ。

 

さてここで問題です。この混沌とした状況下、美琴が自分にかけられた誤解を解きつつ、可能な限りスッキリするためにとった行動とは、果たして何だったでしょーうか?!

 

 

 

 

     ※

 

 

 

 

 

第七学区にある、とある大きな病院。わかる人には、『冥土返し』もしくは『カエル顔の医者』がいる病院と言えば分かるであろう、学園都市の意外と重要地帯。そこに、御坂美琴はお見舞いに来ていた。今日こそは、あの男と話を付けてやる、と意気込んで。

 

あの後、美琴はややてこずったものの神父を倒すことに成功したのだが、そのゴタゴタの影響か警備員が騒ぎを嗅ぎつけてきてしまったために、IDを持たないシスター、インデックスと彼女が離れようとしない気絶しっぱなしの男を抱え上げ、神父を置いて撤退を余儀なくされてしまったのであった。その後、男が持っていた地図にチェックと共に『訳アリ用』というメモが書いてあった病院に二人を連れてきたあたりで門限がヤバくなってきたので、カエル顔の先生に預けてその日は帰った。ここまでが三日前の出来事だ。三日の間、いくらでも話はできたと思うかもしれないが、それは出来なかった。何故なら、男を病院に預けた翌日、話をしようと病院へ向かってみると、なんと男は風邪をこじらせてしまってまともに話せない状態だというのだ。更にそのまま流れでインデックスの面倒を見ることにもなってしまった。仕方がないのでインデックスから情報を聞こうとしても、彼女にとって男はせいぜい、『行き倒れていたところにご飯を恵んでくれた人』ぐらいでしか無かったため、ロクな情報は得られなかった。代わりに、二日間面倒を見るという名目での交流の中最初こそ少しギクシャクしたものの、インデックスの方の事情を聞いて、インデックスを守ることを約束したりするなどの末和解し、意外と友達の少ない美琴に新しい同年代の友人が出来たのは、素直に歓迎すべき事であったのだが。

そんな回想を経ながら、病室の前までやってきた美琴は、廊下の長椅子をベッド代わりに眠るインデックスを起こさないよう、静かに病室に入った。

病室内で眠っているのは勿論例の男。この男について、美琴はインデックスに尋ねる以外にも独自に調査を行ったのだが、結果は芳しくなかった。情報が手に入らなかった訳ではない。通っている学校、交友関係、能力強度といった一通りの情報は手に入った。しかしそれはある程度の人物が調べればすぐ手にはいるようなものでしかない。美琴は、その能力を用いて学園都市のかなり深いデータまで見ることが出来るのだが、それで調べてもそういったところに男のデータはなかった。つまりこの男は、特に隠されたデータのあるわけではないごく普通の一般学生ということになる。そしてもう一人、この男と間違えた少年の方は全くといっていいほど情報が得られなかった。着ている制服が似ていたので、同じ高校かと思ったが高校のデータベースにいない以上、どうにも違うらしい。ここに来て、美琴があの少年の事を思ったより知らなかったことがネックになっていた。

 

(結局、残された手掛かりはコイツだけ、か……)

 

男はこの件について何か知っているのか、しらないのか。どちらにせよ、男が目覚めたらしっかりと聞いておかなくてはならない。そして何より、

 

「いきなり電撃浴びせちゃったこと、謝らないとね」

 

「……うーん……大怪我した年寄り……」

 

などと寝言でのたまう男を見ながら、美琴はそうひとりごちた。

 

 

 

 

 

      ※

 

 

 

 

 

病院から数百メートル離れた雑居ビルの屋上で監視を続けていたステイルは背後に気配を感じ、双眼鏡から目を離した。

 

「禁書目録に同伴していた二人の身元を探りました」

 

ステイルの背後に現れたのは長身の女だった。尤も、二メートルを超すステイルと比べれば、頭一つ程低い。

腰まで届く長い黒髪をポニーテールにし、片方を縛ってヘソが見えるようにした半袖のTシャツに、片方の裾を太腿の根元までぶったぎった着古したジーンズに、膝まであるブーツと革のベルト(ホルスター)と、ここまでなら多少大胆な格好の西部劇の女性ガンマンとも言えそうだが、腰に下げているのは拳銃ではなく鞘に入った長さ二メートルを超す日本刀だ。

彼女の名前は神裂火織。今は説明を省くがステイルの同僚である。

 

「それで、神裂。アレは一体何なんだ?」

 

「ええ、少女の方は御坂美琴。学園都市の能力者における最上位、超能力者(レベル5)の第三位で能力は電撃使い(エレクトロマスター)。他に本人の得意技からとった通称として『超電磁砲(レールガン)』というものもあります。元来正義感の強い性格で、もめ事等に度々首を突っ込んでいるとも報告にはありますので、今回も似たようなつもりで関わってきたものと思われます」

 

そこで報告を止めた神裂に、ステイルは疑問符を浮かべると

 

「? どうしたんだい、もう一人の方の報告もあるんだろう?」

 

「それですが、少年の方の情報は特に集まっていません。少なくとも、魔術師や異能者の類ではない、としか」

 

その報告を聞いて、ステイルは「そうか……」と呟きながら新たに口で引き抜いた煙草にマッチもライターも使わずに火をつける。

 

「そんなにあの少年が気になるのですか?戦闘中も気絶していたそうですし、学校でもただの一生徒としか扱われていないみたいですが」

 

疑問を述べる神裂に、ステイルは煙を吐くと答えた。

 

「神裂、僕があの子を追うときはいつも周囲に人払いの結界を貼っているのは知っているね」

 

「ええ、関係のない者を巻き込まない為の措置……だと……まさか!!」

 

「気付いたかい?そう、にもかかわらず、僕は今回あの二人と遭遇している」

 

つまり、ステイルは彼が御坂美琴と遭遇し、交戦したのは偶然ではなく、誰かに仕組まれていたのではないか、という可能性を考えているのだ。そして、それを仕組んだのが御坂美琴と一緒にいたもう一人の男ではないかと疑っている。だから、男の情報を気にしているのだ。

 

「し、しかし、全て偶然ということも考えられるのでは?」

 

「確かにその通りだ。僕も最初はそう思ったしね。でもね、僕との交戦中能力者の方が気になることを言ったんだよ。『コイツを追ってきたらとんだ目にあった』とね」

 

ここで言ってしまえば、このステイルの推測はかなりの精度で正解であった。男は確かに、この結果を望んで行動を起こしていた。といっても、実際にとった行動は単純だ。美琴から逃げるとき、理由なくそっちへ行かない方がいいと思えた方向へ逃げただけだ。勿論、それで100%人払いが行われている場所へ行けるとは限らないどころか大分確率の低い賭けだが、男としては別にそれでも良かったのだ。何故なら、男にとってここでの遭遇はあってほしい事ではあったが必須ではなかったからだ。必須では無いため確実に起こす必要はないが、起こしておいた方が後々有利になる事象だったため、僅かな確率でも起こり得る行動をついでにとっておいた。ただそれだけのことだったのだ。尤も、遭遇できる確率を少しでも上げるためにインデックスのフードを持ち歩いておき、戦力になりそうな人と出会うまで人通りの少ない道を通らない等の工夫をしておいたりはしていたのだが。そしてそんな事情を他の誰もが知る由もなく、今回運良く大成功を収めてしまった為、現在二人の魔術師が頭を抱えている訳なのだが、男に聞けば「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」とでも返してくれるだろう。

 

「勿論、全て僕の思い過ごしということも多分にある。だがそうでなかった場合、僕達はかなりの策士を敵に回した事になる」

 

「用心に越したことはない、ということですね」

 

「ああ、それに……」

 

そう言いながら、ステイルは双眼鏡も使わずにインデックスがいるであろう病室の窓の方を見ながら、

 

「例えどんな奴が相手だとしても、僕達のやることにかわりはない」

 

結局のところ、いつも通りにする決意を改めた。

 

 

 

 

 

     ※

 

 

 

 

 

学園都市第七学区には、窓のないビルがある。学園都市統括理事長の居城であるとされるその場所は、「核兵器を受けても耐えられる」と評される堅牢さと、『空間移動(テレポート)』系の能力者でないと入ることすらできない気密性を併せ持つ、正に究極の要塞となっている。

そんな場所に、その日、一人の来客があった。

 

「どういうことだ、アレイスター!」

 

来客は部屋に到着するなり、ここまでつれて来た少女が戻るのも待たずに開口一番怒鳴りだした。この髪の毛を金色に染め、サングラスを掛けたアロハシャツにハーフパンツというラフな格好の身長180cm前後の大男、彼こそが何を隠そう隠してないが、原作における上条当麻の隣室の住人にして友人であるクラスメイト、そこに青髪ピアスを含めてクラスの三バカ(デルタフォース)の一角を担う、メイド服萌えかつ何にでもロリこそが最強とか言い出すロリコンにして、義理の妹(しかもロリでメイド)に既に手を出してしまっている疑惑すらあるほどのシスコン軍曹、土御門元春である。

 

そんな、ある種この場所とは不釣り合いともいえるデータを持つ彼が何故こんな所に来ているのか、理由は簡単、彼にはイギリス清教と学園都市の間で動いている多角スパイという顔もあるからだ。そして原作において、この場所に来る人間は限られている事もあってか、二次創作において何か起こると土御門がアレイスターに文句を良いに来るこのくだりは、もしこの光景を現在病院のベッドで寝ている例の男が見れば、「お前は何時もそれだな(笑)」といいそうなくらいのお決まりのパターンとなっていた。

閑話休題。

そんな土御門が怒鳴りつけているのは、様々な装置に繋がれた巨大なビーカーだった……いや、正しくはその中に逆さまになって浮かんでいる『人間』だった。男にも女にも、子どもにも老人にも、聖人にも囚人にも見えるその緑の手術着を着た『人間』こそ、前述した学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリーその人である。

そんなアレイスターは、いきなりやってこられて怒鳴られてたにも関わらず、薄く笑みを浮かべると来客を歓迎した。

 

「やあ、土御門。そんなに怒りを露わにするとは君らしくもない。どうかしたのかね」

 

そんなアレイスターの態度により青筋を立てながら、土御門は複数の書類を叩きつけた。見れば、そのどれもが、現在は病院のベッドの上にいるであろう土御門元春の隣人に関する資料だった。

 

「ふむ、見たところ君の友人に関する資料のようだが、これがどうかしたのかね」

 

と、見たままの感想を返すアレイスターに土御門は青筋を更にビキリと言わせると、初っ端から核心を突いてきた。

 

「とぼける気か……なら言ってやる。この資料に書かれた人間は、七月十九日までの時点ではこの学園都市に存在していなかった。それ以前とそれ以後で、一人の人間のデータがまるまる書き換わっているんだ!」

 

そう、この異変に気付いているのは、何も御坂美琴だけではない。この世界に男を送り込んだ何者かのやり方が杜撰だったのか上条当麻のポジションに別の存在を置くのが余程困難だったのか、とにかく、この世界では二人が別の人間であることに気づくことが出来る人間というのは、そこまで少ない訳でもない。ある程度置き換わる前の上条当麻の事を知っていて、それでいて何かしらのきっかけか、調査能力があれば、気付くことは可能だろう。だが、しかし。

 

「ふむ……なかなか興味深い話だ。しかし、君はそれを証明できるのかね?」

 

そう、起きている事に気付くことが出来ても、肝心の置き換わる前の人間、つまり上条当麻の痕跡が一つ残らず消えている以上、それが起きている事を証明するのは非常に困難なのだ。

土御門自身には確信がある。持ってきた資料にもそれを裏付けるような矛盾がある。だが決定的な証拠は今回の問題の質故に存在していなかった。かく言う土御門自身も、元の人物がどんな人物だったか、ぼんやりとしか思い出すことができない状態なのだ。故に、今回の訴えは土御門の妄言と切り捨てられればそれで終わってしまうようなものであり、それがわかっているから土御門も言葉に詰まるしかないのだった。

 

「本当に、何も心当たりはないのか?」

 

「ああ、残念ながらね。だが私としても興味深い話だ、調査はして何かわかったら君にも教えよう」

 

最後まで飄々とした態度を崩さないアレイスターに、土御門は悪態をつきながらも、これ以上いても無駄だと判断したのか、再び現れた案内役と共に帰って行った。

後に残ったのは、巨大な生命維持装置と、その中でさも愉快そうに笑む人間の姿だけだった。

 

 

   ※

 

 

 

 

 

「ハァ……、ハァ……」

 

夜の学園都市のどこかの裏路地、一つの影が息を切らせる。

 

(一体、どういう事……?)

 

影となっている存在は頭の中で必死に答えを探す。

 

(今日も、あの人はあそこにいなかった。あの場所で事件も起きた様子もない)

 

影はあるデータを元に行動していたが、その当てが外れて戸惑っていた。

 

(私の情報が間違っていた……?それとも、何かイレギュラーが……?でも、それじゃあ……)

 

影は悪い予感を振り払うように頬をピシャリと叩くと、再び前を向く。

 

「弱気になっている暇はない、何がどうであれ、私のするべき事は変わらない」

 

そう呟くと、影は再び学園都市の闇に消えていった。




初めましての方は初めまして、そうでない方は本当にお待たせしました。是夢です。
まずは謝罪を、皆様、長い間お待たせして申し訳ありませんでした。
理由としては、リアルが忙しかった他に、絶不調の大スランプだったことがあげられ、前書きにも書きましたがどんなに書いても納得いくものができず、気付けばこんなに時間がたっていました。これ以上は書いても蛇足だと思うので、今回はこの辺で失礼させて頂きます。


───そろそろ主人公にも、名前が必要だと思うんです。
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