Not上条 But主人公   作:是夢

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第六話 救えなかった者達

巫女服をこの上無く見事に着こなしている自称魔法使いの美少女───まだ彼女名乗って無いけどもう面倒なので名前を言ってしまおう───姫神秋沙に連れられて、電車に揺られる事数駅、電車を降りて二人が到着したのは以前杖伽が最初に学園都市の探索を行った際にも来たことのある建物だった。

窓の数等からして階数は一二のビルが四つ。十字路を中心に漢字の『田』の字を形作り、空中の渡り廊下がビル同士を繋いでいる。そんな建物だ。

この建物、及びそれを経営する企業の名は『三沢塾』と言う。その名前がどこぞのアニメの空気扱いされるキャラと一緒だからか登場巻の登場人物達の扱いからか「影の薄そうな」という形容詞でよく呼ばれるそれらは、元々は学園都市の外の大規模な進学塾グループで、学園都市内においては、本来進学出来る実力はあるのに、敢えて浪人してより高い学校を目指す人向けの施設である進学予備校の一つだ。しかしそれは表向きの話で、実際には学園都市内の学習方法を盗もうとする企業スパイ的な目的で送り込まれた支部校だったらしいが、逆に学園都市に染まってしまい、更には「特別な知識を得た自分達は選ばれたのだ」という変な方向に思想を拗らせて科学崇拝の新興宗教みたいになり、挙げ句の果てに本物(ガチ)の魔術師にまるごと乗っ取られるという変遷を辿るものの、乗っ取られる前には聞けば俗物すぎて耐えられないという程の扱いを姫神にしていたそうなので、同情の余地は全く無い......そんな所だ。

 

さて、そんなビルディングだが、現在進行形で魔術師に乗っ取られ中なので、当然建物ごと魔術的な要塞と化している。その仕組みはコインの表裏がどうだこうだ原作では言っていたが、それは『侵入者』にしか対応しないつくりのようで、現在間桐杖伽には関係無いようであることを床を踏みつけた際の反動具合で判断した。今のところは姫神が連れてきた『客人』扱いという判定なのだろうか。

そんな感じで余計な話をカットした一行はエレベーターの前まで到着したのだが、杖伽はエレベーターが降りてくるのを待っている間暇だったので、何の気なしにやたら広く、そして豪華な飾りのロビーの一階を見渡していたところ、視界の隅に見覚えのある影が映った。それを見て思わずオカマでも無いのに『あの秋の夜の夢の二度見』を発動してしまったが、やはり階段から降りてくる見覚えのある大男の姿があるのは見間違いでは無かった。杖伽は目頭を押さえて天井を向き、肩を震わせながら今見た光景を必死に解析した。

 

(何で?何でアイツいんの?。いや、わかるよ?大体わかった。リスト通りに訪ねたのか原作通りに討伐令が出たんでしょ?でもさぁ、いくらなんでもそれで原作通りになった上このタイミングで降りてくるのは無いよ。だってこっちわざわざ日付変えてるんだよ?それ抜きにしてもあの様子だと......ダメだ!やっぱり好意的な解釈が出来ねー!エレベーターで降りてきたならまだしも階段で降りてきてる時点でポジティブなルート通った展開が想像出来ない!いや、まて、逆に考えるんだ。合流の手間が省けたと考えよう。うん、そーゆーことにしておこーかな俺の精神衛生的にも!)

 

杖伽がそんな葛藤をしている間にエレベーターが降りてきたらしく、姫神が声をかけてきたので、いい加減直接確かめようと三度前を向き目の前の現実が変わらない事を確認すると、

 

「ちょっと知り合いに出会ってしまったので話着けて来ます。少しお待ち下さい」

 

と言ってもうすぐそこまで歩いてきていた不良神父、ステイル=マグヌスに声をかけた。

 

「よー、こんなところで会うなんて奇遇だなステイル」

 

「ああ、さっきから見覚えがあると思っていたがやはり君だったか、しかし君がここにいるという事は───やはりここは日本なのか?」

 

その返答を聞いて杖伽が浮かべる表情に失望が混じり始めていることにも気付かず、ステイルは暢気にブツブツ言いながら考察を始めている。

そして確認して改めてこのバーコードが自分の予想通りの展開を辿っていたことがほぼ確定し、杖伽の中でステイルの評価が20くらい下がった。それでも、原作通りの運命だから仕方ないとか、合流出来たのは都合がいいとか必死に自分を宥めたがあまり巧くいっているとは言えなかった。

 

「よし、わかった。お前の疑問解決してやるからちょっと着いてこい」

 

「?」

 

額を押さえながら険しい顔をした杖伽に言われてステイルは少し不思議そうな顔をしたが、言われた通りに着いていく事に合意した。

 

「お待たせして申し訳ありません。そして同時に彼を連れていく必要が出来てしまったのですが宜しいですか?」

 

「え。あ。うん」

 

そして姫神も、なんだか突然どんよりとしたオーラを出し始めた杖伽に疑問を感じながらも了承してくれた。

 

 

 

 

 

     ※

 

 

 

 

 

それから、再び姫神に連れられて行く事暫く、一行は北棟の最上階にある校長室と書かれた部屋の前までやって来た。とりあえずここは『ノックしてもしもお~~~し』をやるべきか丁寧に失礼しますで行くべきか悩んだが、行動を起こす前に姫神が普通に扉を開いて入っていってしまったので、こちらも普通にその後に続く事にした。

校長室は一フロアを丸々使っておりやたらだだっ広く、豪華ではあるがお世辞にも品がいいとは言えない印象を受ける内装だ。これはこの部屋の現在の持ち主がそういった、インテリアやらコーディネートやらに関心を持たない為、前の主の趣味がそのまま残っているだけで、今の主の趣味では無い。

そしてその現在の主は、杖伽達が入ってきた扉の反対側である部屋の奥、学園都市の夜景を一望できるガラス張りの窓から見える夕焼け空を背にして立っていた。その人物は緑に染めた髪をオールバックにし、白いスーツに身を包んだ細身で長身の男だった。男の名はアウレオルス=イザード。杖伽が先程姫神に見せた写真に写っていた人物であり、インデックスを助ける上で杖伽が最も会いたがっていた人物である。

アウレオルスはノックも無しの突然の来訪にも関わらず、さして驚いたも様子もなく何の感情も浮かべずに杖伽達を迎えた。

 

「突然、いかなる理由にて彼らを連れて来た」

 

とは言え、流石にこちらの目的まで全てわかっている訳では無いらしく、当然の疑問を投げ掛けてきた。

 

「こっちの人の知り合いが困っていて。あなたがその解決の手掛かりになるかもしれないと言って探していた。だから連れてきた」

 

姫神に紹介され、杖伽は一歩前に出て自己紹介から始めようかと思ったが、ステイルがどうにも焦れている様子だったので、話を途中で邪魔される前にそちらの処理をしておくことにした。

 

「ステイル、お前の次のセリフは『いい加減どういうことなのか説明しろ間桐杖伽!』だ!」

 

「いい加減どういうことなのか説明しろ間桐杖伽......ハッ!?」

 

言い出しかけていた台詞を先読みされ、続けて自らもその台詞をそのまま言ってしまった事に驚くステイル。

杖伽も、「流石にマジでそのまま言ってくれるとは思わんかったわ」と軽く笑いながら言いつつも、アウレオルスに向き直り、

 

「お話しする前に、この神父が割り込んでくると面倒そうなので、少しの間彼を黙らせてもらえないでしょうか?」

 

「いいだろう。黙れ(・・)

 

提案を受けアウレオルスが言葉を発した瞬間、杖伽の後方でステイルの声が消えた(・・・)。わざわざ確認するまでもなかったので振り返らなかったが、恐らく声の出ない口をパクパクさせているか、口が開けなくなっているかのどっちかに驚いているのだろう。

次いで、ステイルの方から何やら物音がした直後、

 

「ああ、それと、動くな(・・・)

 

と、首に鍼を突き刺しながらアウレオルスが言ったのと同時に、今度こそ静かになった。

 

(能力の有無の確認と話しやすい環境の整備完了っと)

 

これまた確認するまでもなく杖伽にとって都合良く状況は動いていくが、そうなるように仕向けているのだからある種当然と、どっしり構えながら、アウレオルスに向かって「お手数おかけします」と恭しく礼をする。すると、自らの力を見ても微塵も驚いた様子を見せない事を不思議に思ったらしく、疑問を口にした。

 

「驚かないのだな」

 

「いえいえ、ただ単に無知なので、『魔術師の要塞の中なんだから何が起きても不思議じゃない』ぐらいにしか理解できていないだけですよ」

 

そう言って疑問を適当にかわした杖伽はアウレオルスに促されるままに応接用のソファの元へ移動し、改まって仰々しくお辞儀をした後着席すると、これまたやけに芝居がかった口調で喋り始めた。

 

「それでは舞台も整ったようなのでまずは自己紹介から、(わたくし)、間桐杖伽と申します。我々の目的は単純にして明快。ですので単刀直入に申し上げます」

 

そう言って、杖伽は一呼吸置くと、

 

「インデックスを苦しめている原因が完全記憶能力とは全く関係なく、彼女の体に仕掛けられた魔術術式によるものだという事がわかったので、それを解除するのに協力して欲しいのです」

 

一息で今までの常識がいっぺんに覆る事実(アウレオルス視点)をぶちまけた。その衝撃たるやそれまで何の感情も浮かべない完全なる空虚な虚無だったアウレオルスがそれを聞いたとたん、「愕......然......?」と驚愕を露にして狼狽えだしたのだからそれはそれは相当な物だった事だろう。その声を聞きながら杖伽は、

 

(中の人的には之芭か拳西か......そう言えば、後者は作中の扱いの悪さでは共通するところがあるな)

 

と相変わらずどうでもいいことを考えながらも補足説明を一気に捲し立てる。

 

「詳しく言わせて貰えれば、我々はインデックスの記憶を消さないといけない理由について、『十〇万三〇〇〇冊の魔導書の知識が脳の八十五%を圧迫している為完全記憶能力の持ち主であり記憶が忘れられないインデックスは一年で脳がパンクして死ぬ』と言われていましたが、その言葉が真実だと魔導書が無くても六、七年で死ぬ計算になってしまうので何かおかしーぞということで彼女の体を調べましたところ、彼女の喉の奥に術式が見つかったのですよ。あ、因みにこれがその写真です」

 

そういって取り出したスマホを操作するとその画面をアウレオルスに見えるように提出する。画面には確かに、喉の奥に黒々とした術式が刻まれたインデックスの姿が写っていた。

 

「大脳生理学等の観点から見てもインデックスの症状は科学的にあり得ず、他に異常が無い以上彼女を苦しめている原因がこの術式なのは確定的に明らか。しかし、原因はわかったもののこれを解除しようにもこの術式───我々は喉の奥にあることとその性質から便宜上『首輪』と読んでいます───が極めて難解、並の天才ぐらいじゃ太刀打ちできません。それもそのはずこいつを仕掛けたのは対魔術の総本山たるイギリス清教であろうとされ、かけた理由は魔神にもなりえる危険な存在であるインデックスに対しての安全装置だろうというのが我々の見解ですので、その堅牢さはある種当然のお墨付き、更に言えばこれを解除するのは魔神にすら匹敵するかもしれない超戦力を自由にするって事なので政治的な問題も関わってくるのでより一層高難度。しかし、そんな中!我々は協力を頼めそうな人物を探し、条件に見事に当てはまる人物の元に今、正に辿り着いたのです。元隠秘記録官(カンセラリウス)で魔術の対策に詳しく現在フリーである為しがらみに囚われる事も無くかつてのインデックスのパートナーでもあるためインデックスを救うという目的に協力してくれそうな人物、そう、アウレオルス=イザードさん、貴方です」

 

途中、テンションが上がってどこぞの京都府警の万年警部補みたいな口調になりそれっぽい身ぶり手振りを交えながら長々とした説明をしたが、兎にも角にもこれでこちらの状況は概ね伝わったと考えていいだろう。伝わってなかったらなかったで後で伝わってなかった部分を何度でも伝えればいい話だ。さて、それではアウレオルスがショックから回復するのを待って、それから更に考える時間も与える必要があると思うので、待っている間にアウレオルス周りの紹介でもして暇を潰すことにしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アウレオルス=イザード。元ローマ正教所属の『隠秘記録官』だ。簡単に言えば、「最近の悪い魔術師はこんな魔術を使ってくるので、こんな感じで対策してください」みたいな注意書きのような魔導書を書く仕事をしていた人物で、その中でも最速筆家で知られ、不眠不休で仕事すれば薄い本なら三日、分厚くても一月で書き上げた、という、この世界の原作者みたいな逸話の持ち主である。

本人はこの仕事で一人でも多くの人が悪人の魔の手から守られればいいと考えながらその仕事をしていたのだが、彼の所属していた教会は彼の意に反してその魔導書を独占しようとした。多くの人に読まれる為に書いた魔導書が一部の人間に独占されるのでは意味がない。故に、彼が魔導書をこっそり外に持ち出すようになったのは当然の事で、そのうち似たようなお題目で魔導書の知識を蓄えている禁書目録の少女に出会う事になったのも、まあ必然だったのだろう。

そして彼は後のステイルや神裂のようにインデックスのパートナーに教師という役割でなり、その後歴代のパートナー達の例に漏れず彼女を救おうとして失敗。

その後行方不明になるが、彼はインデックスを諦めきれずに救う方法を世界中で模索し続け、最終的に不老不死である為必然的に長い時を生きる吸血鬼からそんな長い間の記憶を蓄えても脳がパンクしない方法を教えて貰おうと、彼らを呼び寄せる『吸血殺し(ディープブラッド)』を持つ姫神に目を付け、彼女のいる三沢塾に訪れるも、そこでは前述の通り変な信仰を掲げた連中に姫神が監禁されて酷い扱いを受けていた。アウレオルスは狂信者達を排除して姫神を結果的に解放し、彼女に大まかな事情を話して協力を持ち掛け、姫神はそれを了承。また、事の前後は不明だが従来では不可能とされていた『黄金錬成(アルス=マグナ)』という頭で考えた通りに世界を歪めるというインフレの進んだ新約でも上位に食い込みそうな程のチートもいいところの大魔術を完成させる。

しかしながら、ローマ正教に追われ、おそらくイギリス清教にも追われ、学園都市からも排除命令が下され、あれだけ人のために働いてきた男が二〇〇〇人もの人間を犠牲にすることができるようになるほど心を磨り減らして得た結末はあまりにも救いがなかった。

準備を終えた時にはもう既に救いたかった少女はもう別の誰かに救われていて、今までの自分の全てが無駄だったと知るという、残酷にも程がある結末だ。

それでも、救いたかった少女を手にかけることはどうしてもできず、やり場の無い感情を上条にぶつけ、結果敗北。その時のショックのせいかどうかはわからないが全ての記憶を失い、ステイルによって顔を整形され、全くの別人として生きていくことで処刑こそ免れたがその後の消息は一切不明。

とまあ、ここまでが原作において判明している彼の人生の顛末であり、これだけでも大概不運な男だが、彼の不遇ぶりはこれだけでは終わらなかった。アニメ版では1巻と3巻は六話使ったのに彼の唯一の登場巻である2巻の話はアウレオルス=ダミーとかもろもろをカットして三話だけだったのはまだいいとして、漫画版に至っては人気のある3巻の内容早くやりたいからという理由でエピソードごと存在を無かった事にされた。

原作でも前述の通り、記憶は消えて顔も変えて別人として生きているため再登場はほぼ絶望的なのは元より、最初の頃こそ名前や術式の事を回想される事もあったがそれもどんどん少なくなっていき、極めつけは忘れもしない新約9巻、魔神オティヌスによって作られた『誰もが幸せな世界』だ。あの世界にアウレオルス=イザードは登場しなかった。インデックスが笑顔を向けていた集団の中に、彼の姿は無かった。

確かに、他にも原作で救われない末路を辿ったのに登場しなかった人物もいる。15巻に登場した『ブロック』や『メンバー』の連中なんかがその代表か。しかし、それらはたまたま上条の視界に入ったり描写されていないだけで救われていていたのかもしれない。しかし、アウレオルスは違った。彼が幸せである場所はインデックスの側であるはずだ。にもかかわらず、あの世界でインデックスと共にいた集団はステイルと神裂、そして上条が見たことの無い神父や修道女だけだ。顔が整形された後だから気づかなかった?いいや、幸せな世界で彼が整形する理由は無い。上条がたまたま見落とした?周りが神父や修道女ばかりなのに一人だけ純白スーツで緑のオールバックという目立つ風貌の男がいて、しかも記憶を失ってから初めて戦った相手だ。見落とせるはずが無い。どこか知らないところでインデックスに出会うこと無く幸せに暮らしている?それこそ、彼が死に物狂いで積み上げた努力も、人生も、まるごと全てを否定するような所業だ。何の救いにもなっていない。これだけ言えば否が応でもわかるだろう、彼は『全ての人間が幸せな世界』ですら何の救いも得られていないのだ。これ程の不幸があるだろうか。

更に彼の不遇伝説は公式媒体だけでなく二次創作界隈にも及ぶ。

ヘタ錬、アワレオルス等、不名誉な渾名で呼ばれながらもそれなりに人気で、愛されているのはわかるが、何故か多くのSSでその存在はスルーされる。より詳しく言えば、禁書二次創作では、「学園都市?」みたいなタイトルで他所の作品のキャラが訪れて序盤の展開に介入するタイプの作品が結構な数あるのだが、その多くが1巻のインデックス救出編と3巻の絶対能力進化計画編の話だけで、2巻登場のアウレオルスは大抵出てこない。このタイプでなく普通のオリ主ものでも主人公が科学サイドの住人だと高確率で関わる理由が無くスルーされる。よしんば出てきたとしても大抵原作と同じく既にインデックスが上条によって救われていて絶望する展開が待っている。

こうなる理由としては今まで上げた理由の他に、チート過ぎて扱い辛いとかもあるのだろうが、原作における登場タイミングの悪さもあるかもしれない。彼が原作において登場するのは八月八日。三沢塾を既に占拠した状態で、それに対して学園都市から討伐令が出る形で存在が明るみに出る。逆に言えば三沢塾を占拠する前の足取りは原作では一切わからず、その前に接触するのは困難、そして学園都市のいつもの対応の速さから考えて彼が三沢塾を占拠したのは長くても数日前からが限度だろう。そして肝心のインデックス救出の期限が七月二十八日。どう計算しても間に合わないのだ。尤も、最初にあげたタイプの作品だと時系列を無視して1巻と3巻の内容を同時展開することもよくあることだったりするので、もうどう言ってよいのやらわからない。

 

さて、ここまでくどくどと語れば間桐杖伽がそんな禁書の不遇王アウレオルスを協力者に選んだ理由もわかるだろう。アウレオルス本人に語ったようにインデックスを救う為の条件にピッタリ当てはまるというのもある。原作や多くの二次創作で成功していないのだから、この世界では彼に成功させてやりたいという思いも大いにある。更にもう一つ付け加えれば、原作通りならという但し書きが着くが、彼は何のコネがなくとも学園都市内にいたまま労せず接触可能が確定している人物であるという大きすぎる利点がある。

まず原作通りなら八月八日に「学園都市の駅前の本屋から上条の学生寮までの間にある、アイスクリーム屋の先にあるファストフードチェーン店」という、超特定しやすいポイントで張り込んでいれば、確実に姫神秋沙に遭遇でき、そこから今回も使った流れで自然に紹介してもらえる。尚、他所の二次創作にて「姫神が吸血鬼を呼び寄せる為に外をうろつき回っていたのは八月八日だけで無く、それ以前から行っていた可能性がある」という説を読んだことがあったのでそれよりも早くエンカウントする事を期待しつつここ数日街をうろついていた結果、今回のように原作より早めの遭遇という成果を得た事を付け加えておく。更に姫神に遭遇できなかったり、紹介してもらえなくとも、八月八日に三沢塾に行けば確実にいるし、それ以前でも侵入者として扱われれば『コインの裏表』が発動しているかどうかでいるかどうかは容易に確認可能。侵入者として扱われなければ受付の人に、「禁書目録について貴方に有益な情報があると校長に伝えてくれ」とか言えば判別可能、もしくは直接接触してくれる事も期待できるし、その全てがダメでも直接校長室に行こうとすれば問題なし。撃退用の術式で追い返されそうになったらまず間違いなく監視されているだろうからさっきアウレオルスに直接言ったインデックスの症状の真実を叫んでやればいい。

つまり、この世界が原作通りであれば、アウレオルス=イザードは近い内に会おうとすれば絶対会える人なのだ。それは、この世界において何のコネもない間桐杖伽にとって、とてつもなく大きなメリットだ。

以上、ここまで協力を持ち掛けるのにメリットしかない人材であるのに逆に協力を持ち掛けない理由はほぼなく、強いて言うなら話し終えた後で、「よく教えてくれた。お前はもう用済みだ」とか言われる展開があった場合だが、杖伽としてはそれはそれで構わない。別に杖伽自身、インデックスを助けるメンバーに自分を含めるのは必須ではないと思っているので、アウレオルスが一人で勝手にインデックスを救ってもそこまで困る事は無い。それに、そもそもアウレオルスの元々の性格上、そんな事をしそうに無いし、補足説明の際に「インデックスを救う要になるのはアウレオルスだ」というような論調に誘導していたつもりなので、協力という形を拒む理由はあまり考えられない。後は全ての計算が『原作通りなら』という但し書きが付く点だが、それを言い始めると今後原作知識を使う際にも一々それを考えないといけなくなり、原作知識しかない自分の武器が完全消滅するがそうだった場合は原作に関わる方法と共に原作に関わる理由と動機が消失するので、そもそも原作を意識する必要がなくなる。

とまあ、そんな訳でデメリットがデメリットとして機能していないというオマケまでついているので、そんなアドバンテージの塊のような行動をとらない理由は無かったので実行したのが今回の間桐杖伽の行動とその動機の一部始終である。因みに、一応この世界ではアウレオルスがインデックスの第1巻の期限に間に合う可能性も考慮して、七月二十八日以前にも、上記の方法の内比較的安全な方法で三沢塾にアウレオルスがいるかどうかも確認しておいたが、それは普通に無駄足に終わり、他にできることもあまり無く暇だったのもあって念には念を入れて繰り返したので杖伽は三沢塾の受付の人に不振がられるようになった事も蛇足ながらついでに記しておく。以上、解説終わり。

 

(と、まー色々理屈はこねたけど、結局はアウレオルス次第かなー)

 

と、杖伽は脳内で改めて確認しながらアウレオルスの回答を表情だけは真剣なままのんびりと待つ。

アウレオルスが考え始めてからどれほどの時間がたっただろうか。数秒、数分、いや時間単位かもしれない。時計を見ながらではないので正確な時間はわからないが、窓ガラスの外の風景は既に夜の暗闇に変わっていた。

こんな風に書くと、その場に緊張感が漂っているように聞こえそうで実際事の推移がわかってないであろう姫神辺りはそう感じているのではないかと思うが、杖伽自身は、前述の理由で別にどの回答が帰ってきても大丈夫だろうと考えているため極めて暢気しており、目下のところ、この静寂の中自分が寝落ちしてしまわないかどうかが唯一の心配だった。

 

 

 

 

 

 

      ※

 

 

 

 

 

 

「釈然。否、元より悩む必要等なかったな」

 

広い室内を支配していた静寂を破ったのは、アウレオルスのそんな一言だった。それによって八割方夢の世界に旅立っていた杖伽が現実に引き戻され、アウレオルスを見てみると、なんだか憑き物が落ちたかのようにすっきりとした顔に変わったように見えた。

 

「依然。我が本懐も禁書目録の救済。そのための協力であれば断る理由などあるはずもなし」

 

「え、えーと......つまり協力して頂けると受け取っても?」

 

「当然。これからよろしく頼む」

 

「あっ、はい!こちらこそ!」

 

アウレオルスが右手を差し出し、杖伽がそれを両手で掴む。ここに、一人の少女を救う為の同盟は成立した。

 

「それでは早速具体的な段取りについて......と言いたいところなのですが......二人に説明するのが先ですかね?」

 

「必然、そうすべきだろう」

 

提案が受け入れられた杖伽は、まずステイルの方から処理することにした。さっきは見ていなかったが、駆け出しながら懐から炎剣でも取り出そうとした瞬間に止められたのだろうと思われる、どう考えてもそのまま静止していられるのはおかしい奇妙なポーズのままで固まっている。

 

「このバーコード、さっき言った我々の仲間の一人なんですけど、さっきこのビルの一階で会った時からなんだか様子がおかしーんですよ。自分がどーしてここにいるのかもわからないみたいでして」

 

「すまん、私がやった。完全に敵襲にしか見えなかったのでな」

 

「あ、それわかります。なんかすんごい威圧感出して来るんですよね。めっちゃ怖いんですよね、強い人が交渉に来るときって」

 

「わかってくれるか」

 

「似たような経験あります」

 

互いに頷き合い、共感する二人。しかしそれによりアウレオルスとの親近感は高まったが再びそっちのけにされたステイルのイライラも高まってしまった。無論、声も出せず動けないので外見上は表情が変わるだけなのだが。

 

「えっと、じゃー、そろそろコイツにかけた色々解除してもらう事ってできます?いー加減可哀想なので」

 

「寛然、仔細ない。すぐに解除する(・・・・・・・)

 

アウレオルスがそう言った瞬間、不自然に止まっていたステイルの体が支えを失ったように動きだし、バランスを失って顔面から床に倒れる。同時に記憶も戻してもらったようで、色んなショックで暫くは起き上がってこなさそうだ。

なので次に、紹介して貰ってからずっと放置する事になってしまっていた姫神の方へ向き直る。

 

「ひm......い、いやー、えーっと......ゲフンゲフン」

 

杖伽は姫神の名前をそのまま言いかけて、そう言えばまだ自分は彼女の名前を知らないはずだったと思いだしてかなり強引に言い淀む。

そんな彼の事情を知ってか知らずか、今度はアウレオルスが話し出す。

 

「以前、君にも伝えた通り、私には救いたい人がいる。そして彼らもまた、同一人物を救いたいと望んでいる者達で、私に助力を頼んできたのだ。彼らの提示した方法は私の計画していた方法よりも魅力的であったこともあり、当然、断る理由もないので互いに協力する事したのだ」

 

「そう、それなら───」

 

アウレオルスの説明を聞きながら、いや、もしかしたらそれ以前、杖伽が長々と喋っていた内容から既にある程度察しがついていたのかもしれないが、姫神は少しだけ寂しそうな顔をしながらポツリと言った。

 

 

「私はもう。必要ないのね」

 

 

心臓にナイフを差し込まれたような気がした。

 

 

(ああ、わかっているともさ。きっとこれが俺の罪だ)

 

姫神は原作で言っていた。「殺すためでなく助けるために。生まれて初めてこの力を使うんだって」と。彼女は誰かに手を差しのべる事を望んでいた。殺すばかりで誰も救わない自分の力を使って、絵本の中の魔法使いのように誰かを助ける事ができる、そう本気で夢見ていた。そのユメを今、間違いなく杖伽は奪った。アウレオルスに彼女の助けを必要としない方法を提示することで。アウレオルスを救う事で。

これが、罪。誰かを救う事で別の誰かを犠牲にするということ。散々見てきたつもりだった。彼が見てきた数多の創作の中で、幾度となく問われた議題だ。勿論、原作でも彼女の見ていたそのユメへの道は閉ざされているのだから、ここで悩むのはお門違いかもしれない。だがそれでも、今この場で彼女のユメを潰したのは杖伽自身だ。それは、動かしようのない事実。その事にどうしようもない罪悪感を抱いた。もしも彼女の力も必要な方法が提示できれば、二人とも救う側にして両方の望みを叶える事ができれば。そんな無茶苦茶な考えが頭から離れない。

 

「いえいえそんな事はありませんよ。彼の方法がどのよーな物かは知りませんが、我々の方法で救える確実な保証もありませんし、調査して改めて貴女の力が必要と判明するかもしれませんし、それに、貴女が私をここへ案内してくれなければ、そもそもこうして協力していただけることも無かったのですから、貴女には既に感謝してもしきれません」

 

だから嘘を吐いた。

今後どんな展開が来ても、姫神の力が必要になるとは思ってもいないのに。先ほどの通り、例え姫神に出会わなくともアウレオルスに会う方法は何通りも考えてあったのに。姫神の悲しみを少しでもやわらげるため、そして自分の罪を軽く感じるために、間桐杖伽は嘘でかりそめの可能性を提示する。

 

(ったく、これじゃ幻想殺しの代わりじゃなくて偽善使い(フォックスワード)の代行だな......)

 

そして何よりも、偽善使い(その言葉)や罪悪感を感じる状況自体に陶酔している自分に反吐が出る。

 

「蓋然、これは君にとっても悪い話では無い。件の人物は以前話した『歩く教会』の保有者であり、同時に私以上の魔術の専門家だ。自然、君の体質を抑える術についても知恵を借りることができるだろう。そして私からも礼を言わせてくれ。君が彼らをここに連れて来てくれなければ私は一人道を外れたままだった」

 

そしてアウレオルス=イザードは気づかない。吸血殺しと呼ばれたその少女が、自らと同じように誰かを助けたいからこそその場所に立っていたのだという事に。

 

(この辺も、今後向き合っていかねーといけない課題なんだろーな)

 

原作では最期の時まで気づけなかったが、この世界のアウレオルスはおそらく生き残るから、今後気づくこともあるかもしれない。しかし、そこに救い(ものがたり)があるのどうかは定かではない。

こればかりは、救世主(しゅじんこう)が現れてもどうこうなる問題では無かった。

 

さて、そんな考えを振り払う為にも話題を変えて次は今後の詳しい段取りでも決めようかと考えた時だった。

先ほど取り出した間桐杖伽のスマホが鳴った。画面に表示される名前は神裂火織。現在インデックスと見せ掛けの追いかけっこをしている人物からの連絡だ。

 

「噂をすればなんとやらでインデックスを預かる担当の人から連絡です」

 

置きっぱなしだったスマホを取り、気まずい話題から逃げるように電話に出る。

 

「もしもし神裂さん?こちら間桐杖伽ですけどー。......えっ!?......はい、はいそれならここに居ますよ。............はいわかりましたすぐ連れてきます。はい、はーい」

 

そう言って電話を切ると、彼は深い溜め息を吐いた。その様子に思わず、どうしたんだ?と訪ねると彼は疲れたような笑みを浮かべて有名な定型文で答えた。

 

 

「良いニュースと悪いニュースがあるけど、どっちから聞きたい?」




と言うわけで本作のキーパーソン錬金術師さんの登場とその無駄に長々とした解説編。他所ではやってくれないところなので必要以上にガッツリやるスタイル。
今回も更新は遅れましたが、今年が始まる時の目標が、「年内に一巻終わらせたい」だったので、二巻の途中まで来てるので割りと達成感があるというハードルの低さな私です。
来年が終わる頃にはは三巻の内容に入れていたら良いなぁ......と思いつつ、今回はこの辺で。
感想、誤字報告お待ちしております。


───なお、これでも当初の予定よりシーンを一個分カットして次回に回している模様。


追記:日刊ランキング17位にお気に入りが倍以上に増えているだと......?夢じゃないよね?それとも何か良くないことの前触れ?何はともあれありがとうございます!
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