妖精さんに飛ばされた先は、大きなお部屋だった。そこで白衣を着たお姉さんが居た。
「やぁ、久しぶり」
「ん」
「アバターが少し変わっているね」
「ん、色変えた」
髪の毛の色もランダムっていうのを選んだ。だから、今は長い髪の毛が柔らかい桃色で、瞳が紫色になっている。
「まあ、それも似合っているからいいわね。大まかなのは変えてないみたいだし」
ママ達が作ってくれたのだから、基本的には変えてない。
「さて、ご家族がこっちで待っているわ」
「ん」
案内されて、奥にすたっふるーむという扉を開けると、そこで二人の人が待っていた。
「……ママ?」
「そうよ。かのん、おいで」
ママの姿は前とは違うけれど、なんとなくわかる。だから、飛び込んで抱き着く。ママはかのんの頭を優しく撫でてくれる。
「どうやら問題ないみたいですね」
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらも色々と助かりますから。しかし、良かったんですか? 会社を辞めてこっちに来てほぼ生活をこちらに移すなんて……」
「いいんですよ。娘が優先です」
「そうですか……では、頑張ってください」
「はい。確か、家も用意してくれているんですよね?」
「ええ、家というか城ですけどね」
「城ですか……」
「はい。どうせだから、派手にやろうという事になりましてね。転移方法はわかりますか?」
「ええ、ちゃんと教えて貰っています」
「では、開始まで後一時間くらいなので移動しちゃってください」
「了解です」
ママに身体を擦りつけていると、お姉さんがこちらにやってきた。
「かのんちゃん、お姉さんはここで帰るから、パパ達の言う事をよく聞くんだよ。それと、リアル……あっちの世界の事はここ以外では内緒だよ。かのんちゃんは……いや、いいか。取り敢えず、内緒にしてくれたらいいから」
「ん」
「良い子だね。じゃあ、後はよろしくお願いします」
「はい。それじゃあ、いこうか」
「そうね」
「ん」
今度はパパに抱き上げられると、パパが何かをすると一瞬で別の所に移動していた。
※※※
大きな物凄く広いお城みたいな所で、そこの王様が居るような所だった。そこでパパとママはかのんを連れて更に奥にいって、大きな広間へと入った。天井も回りも無茶苦茶広い。
「ここが新しい家だよ」
「ここ?」
「ええ。取り敢えず、ここの水晶に触れてね」
「ん」
ママに言われた通りに触れると、直ぐに何かの画面が出て来た。
「?」
「それはこっちで操作するからいいよ」
直ぐにパパが何かすると、違う画面が開いて。そこからワープって書かれた画面へと移動した。
「この竜宮城っていうのが、家へと帰るボタンだからね。でも、宿屋の部屋やママの店からしか使えないからね」
「ん、わかった」
「部屋を決める前にチェンジするか」
「そうね。カノン、姿が変わるけどママ達には変わらないから、安心してね」
「ん」
「良い娘ね」
ママが撫でてくれている間に、パパの姿が翼と尻尾、角が生えた人の姿に変わった。全部黒色でカッコイイ。それになんか、紫色や黒色の変なのがパパの回りから出てる。
「どうだ、カッコイイだろう」
「ん!」
「よしっ、もっとカッコイイ姿を見せてやろう」
「あなた……」
「いいじゃないか。大丈夫だって」
「はぁ……」
ママがかのんを連れて下がると、パパが変身のポーズをする。すると、黒い色の変なのがパパの身体から溢れ出して、みるみるうちに大きくなっていった。
「……どらごんっ!」
『そうだドラゴンだぞ!』
変身が終ると、ものすごく大きな黒いドラゴンが居た。そのドラゴンからパパの声が聞こえてくる。パパの前に《邪竜王・ディザスター》と出ていた。
「んっ!」
かのんはパパに触ってみる。不思議な感触がした。
『カノンに早速加護を……』
「職権乱用はやめなさい」
『だが、別に構わないそうだぞ? 10人ほど竜族と竜人族のそれぞれの者に選んで与えるようにと言われたからな。その中に娘がいても、問題ないだろう』
「聞いてみるわ」
ママが連絡を入れると、直に返答が来たみたい。
「駄目だそうよ。ちゃんと公平にしろって」
『ちっ、仕方ない。開始時間と同時にするか』
「それって……」
『問題ないだろう。かのんに入る可能性が高くなっているだけだ』
「……それは……うん、駄目だって。加護は謁見に来た時にランダムに与えるようにとの事」
『仕方ない。お前も変わってカノンに見せてやるんだ』
「そうね」
ママも姿が変わって、銀色のドラゴンになった。お母さんの前には《聖竜・セレスティ》と表示されていた。
「お~」
『時間はまだあるから遊びましょうか』
『そうだな。ゲームが開始したら、遊ぶ時間もないしな。あ、奈々も学校から帰ったらやるそうだから、二人で遊んでくるといい』
『そうですね。奈々も心配していましたから』
ななはお姉ちゃんの事。会うの楽しみ。
『とりあえず、今はお母さん達と遊ぼうか』
「ん! のぼるっ」
それから、ママとパパをのぼったり、滑ったり、楽しく遊んだ。転んだりもしたけど、ママが回復魔法とかいうのをしてくれたので、とっても楽しい。
「そうだ、ノートも呼ぶ!」
『ノート?』
「ん! くる、ノート!」
おっきな召喚陣が現れて、機械で出来た竜のノートが現れた。ノートは直ぐにかのんに向かって光線を撃って来た。
『させるかっ!』
でも、パパが弾いてノートを吹き飛ばした。その後、パパが取り押さえちゃった。
「ふぇ……」
『大丈夫よ。ちゃんと契約していなかったのよね?』
「ん……引いて、決めただけ」
『じゃあ、契約しちゃいましょう』
「ん」
『しかし、機械系は操りやすい類なのだが……』
『いえ、あれでしょ。暴走状態だからじゃないかしら? 名前がジャガーノートだし』
『なるほど。じゃあ、かのん操縦席に乗ろうか』
「ん」
ママの掌に乗せて貰って、ノートの頭の上に移動する。頭に触れると、かのんは吸い込まれるように中に入った。中からはパパやママの姿が見える。
『召喚者がコクピットに到着した事を確認しました。これより、マスター登録を行います。よろしいですか?』
「ん!」
『データをスキャンします。スキャン完了。マスター登録を完了しました。使用者のキャパシティーを確認。ERROR。ジャガーノート・オーバードライブはキャパシティーオーバーの為に使用できません。システムを封印し、使用可能状態まで落としますか?』
良くわからない。だから、パパ達に相談してみる。
『した方がいい。今のままでは意味がないからね』
「ん。封印、使う」
『承認されました。システムを封印します。次に武装形態と待機状態、自立起動モードを設定します。マスターはどのような形態がお望みですか?』
「ますたぁー? かのんはかのんだよ」
『カノン……バスターカノンですね。武装形態をバスターカノンに設定しました。待機状態は……』
「??」
『カノン、お母さんが言うように言うのよ』
「ん」
それから、お母さんの言う通りに言うと、全部が終わった。ノートは武器の状態はばすたーかのんってのになって、待機状態は髪飾り。自立起動モードはかのんと同じ女の子の状態。こっちは銀髪ツインテールってのになった。
『彼女はカノンのお友達ね』
「お友達、ノート、お友達っ」
「イエス、マイマスター」
『かみ合ってないようだが……』
『学習機能がついているし、問題ないでしょ』
『それもそうだな。道徳教育も出来てないから、奈々には色々と頼まないとな』
『そうね。でも、出来る限り私達でもやりましょう……あ、取り敢えず、やっちゃいけない事は最低限教えておきましょう』
『そうだな。やばい事になるかも知れないしな』
それから、パパとママとの遊びは終わって、ノートと一緒にお勉強する事になっちゃった。でも、こんなのも楽しくて新鮮だから、とってもいい。