彼女の兄は人殺し。それでも彼女は光を愛する
▼文章、ストーリー、描写などについての紹介など
主人公は、題名の通り僕のヒーローアカデミアにおいて割りと初期に登場して、尚且つそれ以降は基本的に最終章まで出番が無いにも関わらず、それでも作品のヒーロー社会に消えないステイン(染み)を残した彼の年の離れた妹として転生したオリキャラです。
この作品の素晴らしい所は、なんと言っても主人公の丁寧で複雑な心理描写であると言えるでしょう。
(26行省略されています)
物語の大まかな流れは、劣悪な家庭環境で生まれた主人公が、両親の育児放棄により死にかけたところを、年の離れたまだステインになる前の兄に救われ、両親から離れて二人っきりで暮らし、しかし兄は原作通りにヴィランへと堕ちてしまい、主人公は兄を止める為にヒーローを目指して雄英高校へ・・・。しかし、彼女はステインの妹、つまり凶悪ヴィランの家族という訳で、彼女は世間の心無い誹謗中傷にもさらされる・・・という感じになります。
最悪な両親の元に生まれてしまい、ヒーロー社会の中で生きながらも、誰にも助けて貰えない絶望。
そこから助けてくれて、不器用ながらも、自分と共に居てくれる兄への感謝と依存。
しかし、その兄は、そんな自分の思いなど全く顧みることなくヴィランへと堕ちてしまい、自分を置き去りにしてしまう。
孤独、再びの絶望、無力感、兄の狂気を知りながらも止められなかった罪悪感、そして、自分を取り巻く、あまりにも残酷な運命に対する怒り・・・。
そういった主人公の心の動きが、読みやすく、尚且つ心にくる描き方がされています。
辛い背景を持った主人公モノは結構見かけたりしますが、この作品の主人公は、丁寧な心理描写も相まって、とても共感出来、応援したくなる魅力があります。
また主人公だけではなく周りの原作キャラも、非常にイイ味を出しており、辛すぎる環境故に、油断すると、すぐに最悪の結果に向かってしまいそうな主人公に、時に悩みながらも手を差し伸べ続けてくれます。
現在、原作においてステインが本格的に登場した職場体験編まで物語が進んでおり、主人公はあまりに残酷な、けれど妙に生々しく現実的な世間の悪意、そしてクラスメイトの兄を自分の兄が再起不能に追い込んだという眩暈がしそうな最悪の罪悪感にさらされています。
それでも主人公も周りのキャラ達も、悩みながら光の道に進もうとしている。
現実の残酷さ、それによる絶望をしっかりと描写しながらも、それに打ち勝とうとする姿も、しっかりと描写されており、辛いながらも前向きな気持ちになれる素晴らしい作品です。
▼読む際の注意事項など
現在9話と比較的少ない話数ですが、1話の長さがとてつもないです。読むときは、じっくり時間の取れる時に読むのがオススメです。
▲短縮する
たまじ/2022年04月20日(水) 21:00/★ (参考になった:9/ならなかった:5)