紙上の人々・片影星羅
作者:穢銀杏

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100年物のワインを思わせる高貴さと芳醇さがにじみでた一作。

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 筆者がこの作品を読んだ時にまず目を引かれたのは司馬遼太郎の自転車漕ぎ出し文体を連想させる独特の語り口である。知的好奇心を刺激する情報を小刻みに繰り出していき、読者の心を絡めとる。それが本作「紙上の人々・片星影羅」である。
 引き込むような文体に魅せられるままスクロールしながら、読者は作者の穢銀杏氏の引出しの深さに思い入ることになるだろう。氏が取り上げるのは洋の東西を問わない奇聞珍聞の数々。言ってしまえば短編伝奇集である。その殆どは20世紀前半、はたまたそれより過去の余話である。21世紀を生きる我々にとっては冗談としか思えないエピソードもある。だが、我々の意識のみをタイムスリップさせたかのような技巧でもって珍談を誠実に、そして雄弁に語るのが本作である。
 本作の特徴である古書からの引証は、いっそ偏執的とさえ言えるかもしれない。どれほど膨大な読書量を積めば、ここまで古式ゆかしい文章が書けるようになるのか皆目見当もつかない。一端の読書家を気取る筆者をしてそう思わせる程に穢銀杏氏のビブリオマニアぶりは凄まじい。本作は読書という知的活動への愛が存分に詰まった一作であり、満を持して全ての読書家に推薦したい一作である。
 作風から透けて見える穢銀杏氏の読書家としての側面も尊敬に値するが、その文筆家としての能力にも瞠目せざるを得ない。前述したような特徴的な語り口はむしろカムフラージュ。氏の真骨頂は古今の世相を切るその透徹な観察眼にこそある。時間・空間の制約を越え縦横無尽に展開されるエピソードトークの数々はストーリーテラーとしての氏がインプットだけでなくアウトプットにも通暁していることを物語る。
(7行省略されています)


百合ウス・カエサル 2025年04月16日(水) 01:31 (Good:2Bad:3)


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