実際の世の中こそ「正義は人の数だけあるもの」と常々思っている身ではありますが、本作はそういった部分をよく表現してくれていて、それだけでも充分興味を抱けるものでした。

この上でさらに好印象を抱けたのは、主人公が終盤に見出した結論。
複数の正義の存在を前提とする作品の場合、自分の正義を貫くことを優先するあまり他者の正義と衝突する、正義を主張しながら悪行ともとれる行動に走ってしまう、そんな憂鬱な展開も珍しくありません（実際作中でも何度か指摘されていたし）。だから、読み切る前は不安なところもあったのです。
しかし実際読み進めてみると、主人公が見つけたのは複数の正義を肯定する――というよりも、複数の正義があることを当たり前とする世界でした。それ故の問題点も充分把握した上でそちらへ向かって歩もうとする姿には、実生活にも通じる勇気をもらえた気がしました。

さらに目から鱗だったのは、主役メカたるヒロイックロボがこうした結論の象徴に収まってみせたこと！
ヒーロー＝「正義の象徴」、「唯一、あるいは少数精鋭の強者」としての側面を持ちながら、量産品＝「大量に存在する物」という、これだけならば矛盾を孕んでいるというか、「模造品」、「すでに失われたヒーローの代用品」といった否定的な受け取り方をされても反論が難しいところでしょう。
が、ここに上記の結論が加わることで「複数の正義」の象徴というまた違った意味を帯びてくる。「誰もがヒーローになる為の力がヒロイックロボなんだ！」の言葉が示すように、この正義＝ヒロイックロボではダメでも別の正義なら違うかもしれない、あるいは一つ一つは弱い正義でも何機か協力することで困難を乗り越えていける。そんな、「絶対正義」の象徴とされた勇者では示せなかったものを示してくれる。
まさに「ヒーローでありながら量産機でもあるヒロイックロボ」だからこそ表現できる物語だったのだなと、作中要素の合致に思わず震え上がりました。

反目し合っていたレバスタン軍と連携しての勝利とか、人を信じたからこそ自分の申し出を拒否する決断をしたソウタとクオンを温かく送り出してくれた勇者の姿とか、家族のために頑張ることを根っこにしている八木さんとか、実にツボにはまったエピソードもたくさんあって、純粋なエンターテイメントとしても充分に楽しむことができました。

先のことはわかりませんが、今後の活躍も期待したくなりますね。
引き続きよろしくお願い致します。

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