daidains 2024年04月09日(火) 06:43
いや、すごい!
物語の構造がしっかりしていて、過去の名作たちのテーマや構造が自然な形で編み込まれている!
ロラン・バルトの言う「引用の織物」が目指すべき形を見せてもらった気がします。
こういうと「過去作品からパクっている」と主張していると勘違いされてしまうかもしれないですが、私は過去の作品と被っているからダメと言いたいのではなくて、名作同士は深いところでつながっていて、この作品もそれらに連なる資質をもった作品であるということを称賛したいんです。
(35行省略されています)
長いんですが(魅力を語るのにどうしてもそれだけの文字数が必要だったということです)、私がなぜそう思うのか以下にまとめさせてもらいます。
まず、男女(トレーナーとトプロ)の両方に欠落があるというスタート地点が設定されていて、その欠落を埋めることを原動力に物語がスタートします。
トレーナーの場合の欠落は彼が親から見放された「みなしご」状態であることに起因したもので、トプロの場合はレースでの勝利が欠けています。
お互いこの欠落を埋めることを原動力に物語が進むわけですが、その過程でお互いが、欠落が未だ埋まらず未熟な(本当に望む形での自己実現が果たせていない)状態にある相手を保護する役割を交代で演じます。よくこういう役割は「ライナスの毛布」みたいな言葉で例えられますが、男女が交代でライナスの毛布を演じるパターンというのは、吉本ばななさんの「キッチン」とか「満月」に見られるパターンです。私は彼女のことを天性の物語作家だと思っているのですが、同じことをやってのける人がここにもいたとはおみそれしました。
何故かというと、たいていは「保護する」役割と「保護される」役割は固定されていて、どちらかがどちらかに一方的に庇護を与えるだけということが多いからです。(例えばトトロはメイやサツキを保護しますが、彼女たちはトトロを保護する側には回りません)
役割を固定させずそれぞれが複数の役割を受け持つ形は、ストーリー構成上難易度が高く、センスと技術をもつ人でないと実現不可能です。これがすごいところ一点目です!
他にも素晴らしい点を挙げるならば、「トレーナーとトプロが最終的に結ばれない」点が挙げられます。
先ほど彼らの関係を「ライナスの毛布」に喩えましたが、もうひとつ別な喩え方をすると「子供が一人で寝るときに脇に置いておくテディベア」とも言い換えられます。
テディベアは、親を欠いて分離不安にある状態の子供(これは両親から見放された境遇にあるトレーナーとも重なりますね)を、親の代わりに一時的に保護して安眠を促す役割があります。まだ未熟な状態(言い換えると「子供」の状態)にある相手を保護してくれるという点で、トレーナーやトプロがお互いにやっていることと、テディベアの果たす役割が重なっているわけです。
しかし、大人になれば一人で眠るようになるものです。テディベアと一緒のままでは子供っぽいことこの上なく、本当の意味で成長したならテディベア無しで生きていけるはずです。
だからこそ、物語を通じて成長した二人は、テディベアでありまたライナスの毛布でもあるお互いと別れを告げるべきなのです。未熟な状態にあるからこそライナスの毛布が必要なのであり、言い換えるとライナスの毛布はお互いの未熟さの象徴です。
その未熟さの象徴と別れを告げ、一人で歩んでいける強さを描いてこそ真の成長を描いたといえるのであり、この点で二人が結ばれなかったことは、お互いの成長を象徴的にうまく表現できていると思います!
このあたりは「借りぐらしのアリエッティ」で、アリエッティと翔が最終的に結ばれず、それぞれで生きていく決意をしたことに重なるように思いました。彼らもお互いにいい影響を与え、保護を与え合って成長していきます。そういえば翔もトレーナーと同じく心臓にハンデを負っている点でも共通していますね。やっぱり名作同士に通底するテーマがあるんだと思います。
加えれば、そもそもトレーナーが「みなしご」状態かつ体にハンデを持ってスタートする点が、貴種流離譚タイプの神話・昔話およびそれらを元にした物語(手塚治虫の「どろろ」、民話の一寸法師、他にはオイディプス神話とか)とも重なりますし、それらの作品のテーマをうまく織り込むことに成功していると感じました。
本当はもっといいところをお伝えしたいのですが、さすがに長すぎるので遠慮しておきます。
色々べらべら書いてきましたが、ストーリー構成技術に関して、とにかくすごくすごいです!(トプロ風)
自分もちまちま書いているのですが、今後ぜひ参考にさせていただきたいくらいです。
もっと評価されろー!!!
-追記-
すみません、誤解を招く表現がありました。
「トレーナーとトプロが結ばれない」という言い方が、まるで二人が両想いになれなかったかのような言い方になってしまっていますが、私が言いたかったのは「トレーナーとトプロが最終的に二人で一緒に暮らしながら生きていく」ことはできなかった、という意味です。死別しちゃったわけですから。
▲短縮する
(Good:1/Bad:0) 7話 報告
渚 龍騎 2024年04月09日(火) 11:46
感想ありがとうございます!!
全部しっかりと読ませて頂きました!まさかそこまで絶賛して頂けるとは試行錯誤して書いて本当によかったです!
ありがとうございました!!