空山 零句 2026年04月29日(水) 20:50
結論から言うと、素晴らしい作品でした。
すごく面白かったです。これだけは最初に。自分はこの作品が好きです。長文の感想となりますがご容赦下さい。
(107行省略されています)
〜はじめに〜
まずは、感想から。
ぼっち・ざ・ろっく!という物語は、基本的にひとりの目線で語られる物語であり、ひとりは原作でもアニメでも 『ギターヒーロー』としても結束バンドとしても “成功してきた側” の人間として描かれています。
だからこそ、原作では見られない “成功できなかった側” の目線や痛み、努力を描く作品が自分は大好きです。
ひとりたちの裏で、灯里が文字通り血の滲む様な努力を重ねて重ねて重ね続けて、たった一人で何もかもを投げ捨てて修羅のようにギターを弾き続ける姿は見ていて痛ましかった。
なのに、それでもなお、それだけ努力をしてもなお「届く保証」というものは何処にもない。これは現実においても同じことが言えます。
見ていて辛かったのは、灯里の演奏の度に、お客さんがひとり、またひとりと減っていくシーン。
そして何よりも、「温かくも、冷たくもない」拍手が送られるシーン。これは本当にキツイ。音楽に限った話でなく、何でもそうです。
これはつまり、『無機質』を示してるのかな、と読みながら感じました。
だとしたら、なんて残酷なシーンだろうと。
“自分にしかないもの” を見出してくれる人が居らず、何かの感情を動かされた訳でもない。
ただ、“上手い” だけ。
だから建前上、拍手しただけ。心が籠っていない。
『私、努力だけはできますから』という灯里。
『練習してることと、届くことは別だ』『客に何か渡す顔じゃない』
『お前、何と戦ってんの』と問い掛ける星歌。
灯里は “上手い” 演奏をしていただけで、誰かの心へ訴える、感情を感じさせて“届く”演奏を出来てた訳じゃない。
だから褒められることはあっても『貴方の演奏が好き』と誰にも言って貰えない。
音楽なり創作なり何においても、それほど心をへし折るものはありません。彼女はきっと、ひとり達結束バンドやSTARRYに無意識に妄執するうちに、『何のために演奏をするのか』を見失って行ったんだろうな、と感じました。
彼女の心を摩耗させるには十二分過ぎるだろうな、と思います。
作中の描写からして、ひとりたちと同い年ですよね。この子。そら身も投げる。不器用な子なんでしょう。愛おしくも、見ていて労しく、辛かったです。
故に星歌の言葉である
『失敗しないように弾いてる。誰かに勝つために歌ってる。客の顔じゃなくて、数字ばっか見てる。だから届かない』
これが真理なんでしょう。大切なのは、何のために、誰の為に、演奏をするのか。
それを彼女はまず自分の中で固めるべきだった。
才能というものは、求める者に与えられるとは限らない。
でも、努力できない人間にその真価は発揮されない。
難しいですよね。
灯里の姿は、ひとりとは似ていました。ひとりの演奏も最初は「チヤホヤされたい」から始まったものです。
でもその後辿った道筋がまるで違う。
酷く対比的でした。意図して書かれたのかは分かりませんが、灯里は『勝ちたい、結束バンドに勝ちたい』に対してひとりは『結束バンドの皆のために、チヤホヤされるならこの四人でだ』と考えた。
不器用でも、外の光の世界へ一歩ずつ皆に手を引かれていったひとりと、内の夜の世界に自分から独りぼっちで入っていく灯里が浮かびました。
※
後述しますが、だからこそ感じる星歌の描き方も本当に良かったです。
原作ではコミカルに描かれがちな彼女も、このお話では鋭い感性と経験から端的に、辛辣に、でも嘘は言わない形で灯里を見守る様子がとても良かった。
心をへし折られて全部捨てようとする灯里が『下手になってもいいから、生きろ』と星歌に言われるところが特に。
『星ってのは、遠くから見るから綺麗なんだろ。近づきすぎたら焼ける』という星歌のセリフも良かった。星歌と『星』は切っても切れない関係だと思います。
亡き母への願いと想い、虹夏との約束が原作の描写からして掛かっているものだから。
その彼女がこのセリフを言うのが印象深くて本当によかったです。
長すぎてキリがないので一旦次へ。
良かったところと、疑問や気になったところ、面白かったからこそ置いておきます。
〇良かったところ
・シンプルに読みやすい。技巧的な話ですが、文章の切り具合がかなり癖を感じました。多分意図的かな。かなり細かく、何より短く切られてるのが逆に灯里の不器用さを感じてよかった。
・結束バンドの子達に対して悪意に堕ちなかった灯里のもがく姿。ここまで行ったら人によっては逆恨みとかしかねません。
灯里は最後の最後までそうはならず、その分をひたすらギターにつぎ込んだのが良かったです。
それが上手くいくかは話はまた別ですが。
・説明臭さなどが無く、彼女の心象と無意識に堕ちていく姿が一人称で自然な形で語られてるのが良かった。
〇気になったところ
・灯里が何故結束バンドに執着するのか、父親からSTARRYの単語を聞いた瞬間に何故そこまでギターにのめり込んだのかが理由が一切分からなかったところ。
多分これは意図的なのかな? タグに『転生』のタグがあったので、多分転生してますよね灯里。ここが明かされるエピソードが知りたいです。
・これは個人的意見ですが、やや地の文があっさりし過ぎている印象も受けました。どうせならもっと豊富な比喩表現や、彼女の本心が分かる心情描写等も欲しいかもしれません。あと、まあこれは必要無いと言われればそうですが彼女の外見が何も分からないのでイメージしにくかったって所でしょうか。
〜最後に〜
死ぬほど長くてすみません。
すごく面白かったのでつい。参考になりましたら幸いです。ひとりに最後ノートを貰えた灯里が、どういう形でもう一度ギターを握るのか。
どうせならまた見てみたいところです。応援してます。
-追記-
ちなみに偶然かもしれませんが、「遠野灯里」ってものすごく聞き覚えのある苗字とお名前なのですが元ネタはありますか?w
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MトK 2026年04月29日(水) 21:24
感想ありがとうございます。自分の作品でここまで熱意のある感想をいただいのは初めてなのでとても嬉しいです。参考になるまのも多く、とても助かります。名前については被らないように完全ランダムで作ったと思っていたので、元ネタの方は知らないですね。