行別ここすき者数
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履歴はこちら。
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(0)花咲川中学、体育館--
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(0)香澄「せいやー!たぁーーっ!!」
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(0)高嶋「えいやっ!はぁーーっ!!」
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(0)友希那「隙だらけよっ!!」
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(0)3人は今、勇者部の活動として剣道部の練習の手伝いをしている。ここの所数日は香澄、高嶋、友希那の3人は専ら剣道部の手伝いに駆り出されているのだ。
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(0)中沙綾「香澄、お疲れさ…。」
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(0)沙綾が労おうと香澄に近付くが、
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(0)女生徒1「戸山さーーん!」
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(0)多数の生徒に阻まれ、近付く事が出来ない。
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(0)紗夜「高嶋さん、ご苦労さ……。」
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(0)女生徒2「高嶋さーーん!!」
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(0)紗夜の方も同じ状況。そして、
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(0)リサ「友希…。」
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(0)女生徒3「湊さーーん!このタオルを使ってくださーーい!!」
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(0)リサの方も同じ様に友希那の周りに生徒が集まり近付こうにも近付けない。みんな剣道の練習では無く、香澄達勇者部目当てで見に来ている野次馬の様なものだ。
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(0)香澄・高嶋「「ありがとね!」」
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(0)友希那「ありがとう。」
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(0)3人も断る理由も無いので快くタオルや飲み物を受け取っている。
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(0)中沙綾・紗夜・リサ「「「………。」」」
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(0)紗夜「く…っ、牛込さんが、運動部の手伝いなど引き受けた所為で……。」
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(0)リサ「しょうがないよ。剣道部には良い指導者がいないみたいだから。」
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(0)中沙綾「練習が終わったのに、凄い人集りで香澄に近付けない。」
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(0)沙綾と紗夜が苦虫を潰した様な顔を浮かべている中、人集りは散る様子を見せない
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(0)女生徒1「戸山さんっ今度一緒にカラオケ行こうよ!」
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(0)女生徒2「高嶋さんっ、一緒にお買い物行かない?」
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(0)中沙綾・紗夜「「……っ!」」
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(0)香澄「えっと、後で予定確認してみるね!」
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(0)高嶋「私も、スケジュール帳見て返事するね!」
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(0)中沙綾・紗夜「「んなぁあああ⁉︎」」
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(0)2人は誰とでも分け隔て無く接するタイプだ。それが沙綾と紗夜の心にモヤをかける。その一方で--
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(0)女生徒3「あ、あの、湊さん!良かったら今からお茶でも……。」
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(0)友希那「お茶?あぁ……。」
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(0)友希那はリサの方をちらっと見た。
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(0)リサ「行ってらっしゃい、友希那。楽しんで来て。」
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(0)リサは沙綾達とは反対に快く友希那を送り出す。
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(0)中沙綾・紗夜「「ど、どうしてっ⁉︎」」
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(0)リサ「どうしてって?」
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(0)その時、3人の元に香澄と高嶋がやって来る。
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(0)香澄「さーや、ゴメン!今日は先に帰ってて。私、居残り練習に付き合って行くから!」
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(0)高嶋「紗夜ちゃん、ゴメン!私も今日はみんなの特訓を見てあげないとだから!」
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(0)中沙綾・紗夜「「くぁ…ぁ…あ……!」
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(0)2人の言葉が沙綾達の胸にナイフの様に突き刺さる。
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(0)リサ「あらら……。」
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(0)商店街、フードコート--
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(0)中沙綾「リサさんは、どうしてそんなに穏やかでいられるんですか?友希那さんは他の人とお茶をしに行ったのに……。」
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(0)2人はリサにメンタルの強さを知る為にフードコートへと来ていた。
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(0)リサ「私ね、友希那には色々な人と仲良くなって欲しいって思ってるんだよ。」
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(0)紗夜「……どうしてですか?」
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(0)リサ「だって、その方が視野が広がって見識も深まるじゃん。」
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(0)中沙綾「それは……そうですけど…。でも、リサさんとの時間がその分減っちゃいますよ?」
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(0)リサ「うーん……。それでも、友希那の人気が高まる方を望むかな。」
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(0)中沙綾「ど、どうすれば、そんな心の域に……。是非その秘訣を教えてください!」
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(0)リサ「そんな、大袈裟だよ!」
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(0)紗夜「大袈裟ではありません!高嶋さんは優しいから誰の事も笑顔で受け入れてしまう……。そしていつか…私の事なんて忘れて、眩しい光の世界へ行ってしまう……。」
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(0)紗夜の瞳から涙が零れ落ちる。
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(0)リサ「ちょ、ちょっとちょっと!」
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(0)中沙綾「私も冷静さを保っていますが、他の誰かと香澄が楽しんでるかと思うと……。」
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(0)紗夜「山吹さん。全然、保ってません……冷静さ…。」
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(0)リサ「でも、親友が不人気より、人気がある方が圧倒的に素敵じゃない?」
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(0)紗夜「そんなに簡単に割り切れるものではありません…。」
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(0)中沙綾「意外です…。リサさんはもっと友希那さんを束縛してると思ってました…。」
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(0)思わず沙綾から本音が漏れてしまう。
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(0)リサ「そんな風に思われてたんだ……。」
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(0)中沙綾「す、すみません!あくまでイメージです!イメージ……。」
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(0)リサ「みんなの気持ちは理解出来るけど、嫉妬からの束縛なんて逆効果だよ。」
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(0)中沙綾「というと…?」
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(0)沙綾が尋ねると、リサは語るのだった。"親友道"というものを--
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(0)リサ「手綱は離さず、緩めて握るのがコツだよ?例えば……これを見てよ。」
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(0)リサは2人にあるものを見せた。
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(0)中沙綾・紗夜「「こ、これは……⁉︎」」
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(0)リサが2人に見せたのは、大量の手紙とプレゼント。それが紙袋いっぱいに入っていたのだ。
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(0)紗夜「な、何なんですか、これ……。」
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(0)リサ「これは、友希那がファンから貰った物だよ。」
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(0)中沙綾「こ、これ全部ですか⁉︎」
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(0)リサ「香澄達だって受け取ってると思うけど?」
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(0)中沙綾「そ、そうでしょうけど……。それを、こんな風に預けたりは…。」
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(0)リサ「友希那は、こういう物を全部開示してくれるんだ。」
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(0)紗夜「そ、それで……。今井さんはこれを…燃やすんですね?」
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(0)リサ「まさか⁉︎つくづく……鬼の様に思われてるんだねぇ……。」
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(0)紗夜「あ…、いえ……ゴホンゴホン!つい口が滑っ……何でも無いわ。」
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(0)リサから溢れ出るオーラの様なものに気圧される紗夜。
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(0)リサ「私はね、これの贈り主をチェックして後で、お礼をしに行くんだ。」
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(0)中沙綾「お礼って、お礼参りの事ですか⁉︎」
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(0)リサ「お礼参りって……。スケバンじゃ無いんだから…。」
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(0)中沙綾「す、すみません…。」
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(0)リサ「友希那ったら、プレゼントを貰っても"ありがとう"の一言で済ませちゃうんだもん。」
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(0)紗夜「それは……。不特定多数からそんなに貰えば、それが精一杯だと思いますが…。」
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(0)リサ「でも、私がお礼とお返しをする事で人気の拡大に繋がるんだから。」
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(0)中沙綾「に、人気の拡大ですか?これ以上、香澄の人気が出て、2人の時間が減るって考えただけで……!」
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(0)紗夜「私も無理です……。今でさえギリギリなんです…。これ以上だと、闇に滅する自信があります……。どうして今井さんは平気なのですか…?」
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(0)2人はどうしてもリサの考えが理解出来ない。独占するか、他人にも分け与えるか。ただそれだけの違いなのだが、それが2人にとっては大きな事なのである。
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(0)リサ「そんなの分かり切ってるじゃん。友希那の人気が高まれば高まる程--。」
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(0)リサ「最後に私の元に戻ってきた時の喜びが増すからだよ!」
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(0)中沙綾・紗夜「「な………っ!」」
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(0)否、独占という点ではリサも2人と同じ考えのようである。
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(0)紗夜「何という…思考。これは……ドMと言って良いんではないでしょうか。」
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(0)中沙綾「で、ですけど……友希那さんが必ず戻ってくる保証は無いですよ?」
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(0)リサ「ふふふ……。それはねぇ…。」
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(0)リサは不敵な笑みを浮かべる。
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(0)中沙綾・紗夜「「そ、それは………?」」
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(0)リサ「湊友希那は、私無しじゃ生きていけないからね!」
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(0)中沙綾・紗夜「「な、なぁあああっ⁉︎」」
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(0)フードコートに2人の叫びがこだまする。
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(0)リサ「友希那は、全く意識していないだろうけど……。」
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(0)リサは理由を説明しだした。
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(0)リサ「朝、寝起きに水を飲ませた時の反応で、その日の体調を測って、身体に最適な栄養素を朝食で補充。いつもより午前中の運動量が多ければ、昼食は塩分を多めにし、休憩中は座ってる間に……。」
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(0)中沙綾・紗夜「「…。」」
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(0)リサ「靴下を履き替えさせ、首に冷たいタオルをあて、機嫌が悪ければ、おやつには甘い物。お風呂へ向かえば着替えを用意し、背中を流して、夜はマッサージで怪我が無いか確かめ……。」
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(0)中沙綾・紗夜「「……。」」
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(0)リサ「耳かきをしてベッドでゆっくり寝てもらうんだ。」
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(0)中沙綾・紗夜「「…………。」」
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(0)2人は呆気にとられ、言葉が出てこない。2人が思ってた以上にリサの友希那へのつくし度合いが凄すぎたのだから。
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(0)リサ「私は、そんな事を幼稚園の頃からずっとしてきたんだ。」
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(0)紗夜「う、嘘……ですよね………⁉︎幼稚園児が幼稚園児にそんな事を⁉︎」
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(0)中沙綾「でも、確かにそんなの……どれ程熱烈な支持者がいたとしても、誰も真似出来ないです……。」
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(0)リサ「あれれ?みんなには出来る筈だよ?大切な親友の為なら、ね?」
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(0)紗夜「か、完璧過ぎて……怖いです…。」
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(0)リサ「あはっ!そういったサポートが、格好良い友希那を作ってると思うと、あの人気が喜ばしいよ♪」
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(0)中沙綾「な、成る程…。そういう結論になるんですね…。」
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(0)紗夜「ですが、今井さんはそう考える事で自分を納得させているんではないのですか?」
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(0)紗夜が言いたい事は気持ちのすり替え、考え方次第という事である。
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(0)リサ「いや?友希那のお世話は私の趣味で、ある長期計画の一端に過ぎないんだ。」
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(0)中沙綾「長期……計画……?」
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(0)リサは語り出す、長期計画の内容を--
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(0)そして2人は戦慄する。リサの底知れぬ黒い部分に--
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(0)リサ「友希那はね、自分の服や物が何処にあるか全然把握してないんだ。私が管理してるから。」
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(0)中沙綾「えっ⁉︎それなら……もし、リサさんに何かあったら………はっ⁉︎」
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(0)リサ「うん。だから何も無いよう、友希那は私を大切に守ってくれるんだ。無意識に……。」
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(0)紗夜「な………っ!」
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(0)リサ「私がいないと友希那の生活は成り立たず友希那は生きていけない……だからっ!外でどれだけチヤホヤされても、"必ず"私の元へやって来るんだよ!これそこが至高の喜びなんだ♪」
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(0)リサは満面の笑顔で答えた。
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(0)紗夜「わ、私の目の前に悪魔がいます……。」
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(0)中沙綾「私は今、初めて……他人をここまで恐ろしいと思いました……。ふ、震えが止まらない……。」
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(0)しかし--
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(0)リサ「アハハハハッ!嫌だなぁ、2人とも。すっかり騙されちゃって!」
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(0)中沙綾・紗夜「「えっ⁉︎」」
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(0)リサ「そんなの嘘に決まってるじゃん!2人があんまり深刻に悩んでるから、ちょっとドッキリさせただけだよ♪」
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(0)リサは今まで自分が話してきた事は全部作り話だったと笑いながら2人に話す。
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(0)中沙綾「はぁ………。そうだったんですか。すっかり騙されちゃいました。」
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(0)紗夜「私達、少し落ち込み過ぎてたかもしれませんね…。今井さん、心配をかけてすみませんでした……。」
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(0)リサ「いやいや。まぁ、そんなに心配しないで香澄達を信じてあげなよ。」
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(0)紗夜「はい、そうします…。それで……今の話は結局、何処からが嘘だったのですか?」
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(0)リサ「え?どの辺……から?えっと……それはねぇ………。」
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(0)紗夜の質問にリサは突然口ごもってしまう。
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(0)中沙綾「ち、ちょっと待ってください!途中までは本当って事ですか⁉︎」
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(0)リサ「あ、あはは…。私は友希那の自主性を重んじてるよ?本当にね…。」
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(0)結局のところ、何処までが本当で何処からが嘘なのか。はたまた全部が嘘なのか。それとも、嘘だという事が嘘なのか--
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(0)真実は当人のみぞ知る--