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(0)「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺達は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」
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(0)「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」
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(0) あれから、他の長老達とハウリア族も含めて会議室に戻ってきたカナタ達。けれど、自業自得とはいえ、長老を一人再起不能にされた事もあり、アルフレリックを除き他の長老の表情は固く、ジンと個人的な交流のあった土人族の長老グゼに至ってはハジメの言葉に対して、忌々しげに返事を返している。ただ一人、狐人族の長老ルアだけは表向きの雰囲気は変わっていない。
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(0)「は? 何言ってるんだ? カナタに伸された時点であいつの言う“試し”は既に終わってた。その後にユエに襲い掛かって来たのは完全に私怨、俺はユエを守る為に返り討ちにしただけだ。再起不能になったのは自業自得ってやつだよ」
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(0)「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」
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(0)「へぇ? じゃあ、あれか? 口伝とやらに逆らった上に私怨で襲い掛かる事が国の為になるってのか?」
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(0)「そ、それは! しかし!」
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(0)「勘違いするなよ? この件は俺達が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」
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(0) あれだけ掟に拘っているのだ。それを破った上に、人間にやられた事への屈辱から襲い掛かった時点で非のありかは明白。それを頭では理解しているのか、グゼは苦虫を噛んだ様な表情でハジメを睨む事しかできなかった。
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(0)「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」
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(0)「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼らを口伝の資格者と認めるよ」
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(0) そして、ルアの同意を受けて残りの長老達も渋々ながらに資格者である事に同意する。それを総意と判断し、アルフレリックはカナタ達に向き直る。
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(0)「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」
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(0)「絶対じゃない……か?」
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(0)「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」
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(0)「それで?」
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(0)「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」
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(0)「……こちらを殺そうとする相手に手加減しろと?」
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(0)「そうだ。お前さん達の実力なら可能だろう?」
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(0)「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だがな、実際にカナタがあの熊野郎に手心くわえて、下顎叩き割って意識刈り取る程度に留めた結果どうなった? あんな事があった後にこちらを殺しに来る相手に対して容赦しろってのは虫が良すぎじゃねぇか? ましてやそちらの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」
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(0) その言葉にアルフレリックは何も言えなくなる。二度に渡るジンの暴走は完全に亜人側が加害者と言う立場を確定付けてしまった。その所為で被害者であるハジメはこちらの譲歩には一切応じる様子がない。そんな時、虎人族の長老、ゼルが口を挟んだ。
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(0)「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」
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(0)(さっきまでは口伝を軽視しておきながら、状況が悪くなればそれか……)
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(0) 実力差もあるのかもしれないが、ジンの暴走に対してアルフレリックみたいにそれをなだめ、止めようとする様子を一切見せなかった時点で、他の長老達も気持ち的にはジンと同じ側だったのだろう。世界の為に戦い、世界中から敵視されようとも次代の為に遺跡と口伝を残しておきながら、もはや自分の考えを正当化する為に必要なときだけ盾にする程度の扱い。カナタは心の中で会った事も無いリューティリスに少しだけ同情した。それと同時に、カナタは自分の中でゼルをある人物と同類と見なした。組織や施設の理念や法を都合の良い時や世間からの体裁を意識する時だけ持ち出し、それ以外の時は自分の思うがままに振る舞う連中。
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(0)「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」
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(0)「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」
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(0) 無情な宣告にシアは殆ど涙声で長老達に容赦を求めるも、ゼルはそれを聞き入れる様子は無い。それでもなお食い下がろうとするシアをカムは彼女の肩に手を置き、優しく止める。
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(0)「シア、止めなさい。皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」
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(0)「でも、父様!」
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(0)「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」
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(0)「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」
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(0) その宣言に、シアは遂に声を挙げて泣き始めてしまう。ゼルはハウリア族が自分達の決定を受け入れたのを確認すると、してやったりな表情をカナタ達に向ける。
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(0)(気に喰わないな……)
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(0) カナタの中でゼルの得意げな表情が、自分に不良の烙印を押した学校の上層部たち と重なる。けれど、あの時の違うのはこちらに交渉の手札がある事。とは言えそれは自分の戦闘力に基づくものだ。実際に戦うとなれば負ける気はしないからこそ、強気になっているだけとも言えるし、それで過去が変わる事も無い。それでも今のシアが嘗ての自分と重なり、それを打破してやりたいと思う自分がいる、だから彼は動く事にした。
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(0)「……アルフレリックさん」
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(0)「……なにかな?」
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(0) ゼルと暫く目を合わせていたカナタは溜息と共にアルフレリックに向き直る、他の長老は何を言ってもダメだろう。けれど幸いな事にここまでのやり取りを見た感じ、長老の中でも一番権限が強いのはアルフレリックの筈だ。
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(0)(現状を打破し、この決定を覆すなら彼を揺さぶるしかないか)
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(1)「もしこの決定を覆さないと言うのでしたら、それは国の総力を挙げて俺達と敵対する。それがフェアベルゲンの総意と捉えますがいいですか?」
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(0)「っ!?」
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(0)「な、なんだと!?」
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(0) 先ほど、アルフレリックは資格者であるカナタ達とは敵対しないと明言した。にも関わらず、それとは逆の意見をこちらの総意と認識したカナタに長老は驚きを隠せず、シアも目に涙を溜めながらも「え?」と言う表情で顔あげた。
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(0)「前提がズレてますので、まずそこを訂正しますけど俺達は元から貴方達に案内を頼むつもりなんてありません」
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(0) そもそも此処に来たのだって、霧の周期の存在を忘れていたカムの不手際。本来なら、あの場で樹海を歩き回る許可だけ貰ってそれでサヨナラするつもりだったのだ。
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(0)「樹海を案内してもらう事を条件に、それが終わるまで彼女達の安全を保証する。これが俺達とハウリア族が交わした契約です。ですのでそちらが長老会議、国の総意を決める会議に従いハウリア族を……シア達を処刑すると言うのであれば、こちらも契約に則り貴方達と敵対して彼女達を守ります」
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(0) カナタの宣言にシアは目を見開く。
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(0)「本気かね?」
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(0)「本気です。契約は結ばれ、そして既に履行されている最中です。現に自分達は既に契約に伴い、彼女達を捕らえようとした帝国の兵士を殺めました」
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(0) その言葉に長老達にざわめきが広がる。
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(0)「既にハウリア族には契約に従い、俺達に樹海の案内をする義務が生じている。自分達はもう殺されるからと、そんな理由で契約を投げ出す事を許すつもりはありません。ならばその原因を排除してでも契約は履行させます」
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(0)「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」
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(0)「それについては丁寧にお断りさせていただきます」
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(0)「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう?」
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(0) その言葉にカナタは少しだけ目を伏せ、そしてもう一度アルフレリックと向き合う。
(0)
(0)「ハウリア族に契約を投げ出す事が許されないのと同様に、俺達の方も既に契約を投げ出す事は許されないんです。自分達の行いを無意味なモノにしない為にも……」
(0)
(0) ここでアルフレリックの案内を出すと言う譲歩案を受け入れてハウリア族を見捨てれば、その瞬間、自分達が帝国兵士を殺した事は完全な無意味と化す。どんな理由であれ、自分が命を殺めた事に意味を持たせる、それすら出来ないような無意味な殺しだけはしない、その理由を曲げない。それが初めて人を殺した時に、カナタが自分に決めたルールだった。
(0)
(1)「なので、途中で別の好条件が出たからといって乗り換えたりはしません。誰かの命を奪ってまで選んだ事を曲げる。それは俺の……誇りに関わります」
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(0) アルフレリックはハジメ、ユエ、香織にも視線を向ける。香織とユエは頷き、ハジメは何も言わないながらも、その無言が肯定である事ははっきりと感じ取れた。
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(0)「ならばカナタ殿、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。……既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」
(0)
(0)「アルフレリック! それでは!」
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(0) 他の長老衆がギョッとした表情を向け、ゼルに到っては思わず身を乗り出して抗議の声を上げた。アルフレリックの言葉は完全に屁理屈だからだ。けれど、それは当人も自覚している。
(0)
(0)「ゼル。わかっているだろう。この少年達が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか……長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」
(0)
(0)「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」
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(0)「だが……」
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(0)「ああ~、盛り上がっているところ悪いが、シアを見逃すことについては今更だと思うぞ?」
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(0) その一言に全員の視線がハジメに集まり、彼が纏雷を使ってみせると長老達は再びざわめいた。
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(0)「俺らもシアと同じように、魔力の直接操作ができるし、固有魔法も使える。次いでに言えばこっちのユエもな。あんた達のいう化物ってことだ、こいつに至ってはガチで化け物に変身出来る固有魔法を持ってるしな。だが、口伝では〝それがどのような者であれ敵対するな〟ってあるんだろ? 掟に従うなら、いずれにしろあんた達は化物を見逃さなくちゃならないんだ。シア一人見逃すくらい今更だと思うけどな」
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(0) それに続くように香織は指先に風爪纏わせ、ユエも無言で掌に火を灯す。思わぬところのからの援護にカナタも若干きょとんとした表情で3人を見つめていると、香織は笑顔で頷き、ユエは得意げな表情で火を握り締めるように消して、ハジメは目を伏せながら苦笑と共に軽く肩を竦める。そして長老達は小声で話し合いを始め、やがて結論を出したのかアルフレリックとルア以外は渋々と言った表情をこちらに向け、アルフレリックも今までに無いほど大きな溜息と共に、結論を告げる。
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(0)「はぁ~、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である彼らの身内と見なす。そして、資格者である4人に対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。以降、彼らの一族に手を出した場合は全て自己責任とする……以上だ。何かあるか?」
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(0)「ありません。英断、感謝します」
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(0)「……そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが……」
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(0)「気にしないでくれ。全部譲れない事とは言え、こいつも相当無茶言ってる自覚はある筈だ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」
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(0) そして、他の長老達の「さっさと出てけ!」と言うような雰囲気のまま、彼らは席を立つ。そして途中でカナタはいまだボーっとしてるシアの肩に手を置く。
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(0)「なに呆けてんだよ? 用は済んだしさっさと行くぞ」
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(0) そう言って、いまだ困惑気味のハウリア族たちを連れて、カナタ達は部屋を後にする。
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(0)「は、はい……」
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(0)「あ、あの、私達……死ななくていいんですか?」
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(0)「事の次第はさっき話した通りだろ?」
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(0) フェアベルゲンの出入り口に向かう途中、シアはカナタの隣に並び声を掛けた。
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(0)「い、いえ、聞いてはいましたが……その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか……信じられない状況といいますか……」
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(0)「……素直に喜べばいい」
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(0)「ユエさん?」
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(0)「……カナタは貴方と、その家族を救った。それが事実。受け入れて喜べばいい」
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(0)「そうだね、恐らくカナタ君自身にも思う所があったんだと思うけど、それでもシアちゃん達を助ける為にああ言ったのだけは確かだと思う」
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(0) ユエの言葉のあと、シアは再びカナタに視線を戻した。
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(0)「まぁ、長老さん達にも言ったけど契約だしな……それに――」
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(0)「それに?」
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(1) シアが先を促すとカナタは満足げな、まるで悪戯が成功した時の子供の様な笑みを浮かべながら言葉を続けた。
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(1)「個人的に一度ああいう状況を思いっきりひっくり返してやりたかった、ってのもあるしな」
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(0) ※
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(0)「あ……」
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(0) その笑顔を見て私は足を止めた。そして彼の背を見つめる。元々、彼らが自分達を守ってくれる未来は見えていた。けれども、それとて完全ではなく私の言動一つで変わっていくものだ。未来視という技能が、一度自発的に使えば暫く使えないのは自分の行動により変化する未来を逐一確認できない様にする為なのだろう。とは言え自分は亜人、人から向けられる態度など差別にしても、奴隷扱いにしても、こちらの下に見る様な態度だと確信していた。だからこそ、こちらが何も言わずとも助けてくれたカナタさんの行動には失礼ながら裏を感じたし、香織さんやユエさんが兎人族が愛玩奴隷とされてる事や、カナタさんの欲求不満の事を話した時は「やっぱり~っ!」と心の中で叫んだりもした。
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(0) けれどその後、事情を聞いた彼らが持ちかけてきたのは私達との契約だった。しかしそれは途中で破棄されてもおかしくないと思ってた。だって契約とは対等な人同士が交わすもので、奴隷として下に見られがちな亜人と本気で契約を交わす人間なんて居ないはずだから。それでもあの時、それに応じたのは助力を取り付けなければ元も子もない、つまりは選択肢なんて無かったからだ。だからこそ、長老たちが自分達を国の総意として処刑すると言った時は「もうダメ……」と思った。だって、それを受け入れて長老の提案に従った方が彼らに損は無い。口伝にある資格者として歓迎……はされないかも知れないが(ジンを再起不能にした事が原因で)、一国丸ごと敵に回すよりはずっとマシだからだ。それでも――
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(0)『途中で別の好条件が出たからといって乗り換えたりはしません。誰かの命を奪ってまで選んだ事を曲げる。それは俺の……誇りに関わります』
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(0) 静かに、けれどはっきりとした意志が込められた言葉。フェアベルゲンと、国と敵対してでも自分達の契約を選ぶと告げた彼の言葉は強く私の胸に響いた。そしてそんなカナタさんの背を見て、何時か竜になった彼の背に乗った(正確には落ちた)時のことを思い出した。ハイベリアを物ともしない力強さと安心感を覚えた背中、それと同じ気持ちを彼の後姿に感じた。
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(0)(あ~あ……)
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(0) 彼に予備のジャケットを渡された時に「軽い女じゃない」「もっと段階を踏んでから」と言ったがまるで説得力がない。今もハジメさんが彼の隣に並び「すっきりしたか?」「お陰様で」とたった一言で意思疎通している様子に嫉妬している自分がいるのだから。段階?何それおいしいの?と言わんばかりの一足飛びだ、自然と口が綻ぶ。そして――
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(0)「カナタさんっ! ありがとうございますっ!」
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(0)「っとと、いきなりどうしたんだ?」
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(0)「ほぉ……」
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(0)「これはぁ……」
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(0)「ん……やはり欲求不満」
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(1)「おい、だからそのネタ何時まで引きずるつもりだっ!?」
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(0) ――その気持ちのまま、後ろから彼に抱きついた。ハジメさんと香織さんが彼にからかう様な目線を向けるけど関係ないと言わんばかりに抱きつく力を強める。同時に、何時か彼に言われてからずっと抱えていた迷いも消えた。抱きつかれた事に対してカナタさんが顔を赤くしてる時点で可能性はゼロじゃないだろう。ならば後はこの思いのまま一直線に行動するのみ。
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(0)(私を軽い女にした責任、取らずサヨナラなんて絶対に許しませんからね!)