行別ここすき者数
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履歴はこちら。
(0)拝啓 ノアさん
(0)お元気ですか?
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(0)早いもので、あの魔界コロシアムからもう1週間が経とうとしています。
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(0)僕はあれからずっと依頼遂行のために情報を集めていました。それで、いじめ問題以上の陰謀を暴くことになりました。
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(0)それについては協力してくれる人が現れてくれたので、何とかなりそうです。
(0)知っているでしょうが、名前をエクス・レインと言いまして、人間族科のトップの1人なんですって。
(0)そして、一週間後に団体の公式戦をやることになりました。
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(0)もし良かったら、ノアさんも来てください。
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(0)追伸
(0)この前は魔神族科に招待してくれてありがとうございました。
(0)でもまさか ノアさんにあんなに熱狂的なファンがいるとは思ってもいなかったです。
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(0)敬具
(0)テツロウ・タナカ
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(0)「………こんなものでいいかな?」
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(0)夜
(0)哲郎は寮の自室で手紙を書いていた。
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(0)「…今日はもう寝ようかな?」
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(0)哲郎は寝る準備を始めた。
(0)ちなみにルームメイトのマッドは既に寝てしまっている。消灯時間まではあと15分くらいある。
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(0)哲郎はベッドに入り、灯りを消した。
(0)ベッドの中で考えるのは、あの時の事だ。
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(0)***
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(0)数日前
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(0)哲郎がいじめ問題の調査でエクスと出会うより前の事。
(0)学園の休日に哲郎は魔神族科の学園に呼ばれた。
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(0)学科が違って離れているといっても空中に浮かび 飛ぶことが出来るようになった哲郎には行けない距離ではなかった。
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(0)「ここか…………」
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(0)哲郎が着いた場所は、見慣れた人間族科の校舎と瓜二つの建物だった。
(0)なお、魔神族科と天人族科がこの校舎にある。つまり、ここにはあのサラとミナもいるという事だ。
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(0)「よく来たな。 待っていたぞ。」
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(0)校門でノアが出迎えた。
(0)魔界コロシアムでの祝勝会で呼ばれた時以来だった。
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(0)「お久しぶりです!」
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(0)***
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(0)「それで、あれからはどうなんだ?」
(0)「調査はやってるんですが、今ひとつ有益な情報が掴めない状態が続いてましてね。」
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(0)2人は学食に移動した。
(0)そして2人で昼食を食べている。
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(0)パリム学園は全寮制では無く、希望者だけが寮で生活し、それ以外は自宅から通学する。
(0)哲郎は前者、ノアは後者 だった。
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(0)「それで何ですか?
(0)僕をここに呼んだ理由っていうのは」
(0)「たいした理由はない。
(0)ただ、依頼調査で根を詰めすぎていないかと思って、こんな時間を作っただけだ。」
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(0)「そうですか………。まあ確かに、授業以外はそれくらいしかやることが無かったですからね。」
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(0)哲郎は学園での活動を振り返りながら食事に手をつける。
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(0)「それで、何か分かったのか?」
(0)「えぇ。いじめの主犯の人物は分かりました。名前がグス・オーガンと言ってました。」
(0)「グス………? あぁ。あの女か。」
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(0)ノアは指で顎を擦りながら言った。
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(0)「知ってるんですか?」
(0)「噂で聞いたことがあるだけだ。
(0)亜人族科にゴリラのような女がいると言うな。」
(0)「ハハハ……… ゴリラですか…………。」
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(0)身も蓋もない評価に哲郎は苦笑いを零した。
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(0)「ところでそれ、今は外しておいていいんじゃないか?」
(0)「それ? あぁ。これですか。」
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(0)哲郎は胸襟に付けていたボタンを見た。
(0)それはノアが支給してくれた変装魔法を付与したボタンだ。
(0)これをつけている間、哲郎はマキム・ナーダという生徒に変装してパリム学園に潜入することが出来ている。
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(0)この場合、魔界コロシアム 準優勝という称号は、自らを悪目立ちさせる枷でしか無かった。
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(0)「…別に変装したままでも良かったんですけどね。 体力を使うわけじゃないし。」
(0)「まぁ そう言うな。
(0)そのままじゃいつアイデンティティが崩壊してもおかしくないぞ。」
(0)「崩壊してたまるもんですか。」
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(0)冗談交じりの会話を交わしながら哲郎は食事を進める。
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(0)「……………え?」
(0)「?」
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(0)不意に後ろから声がして振り返ると、そこには1人の女子生徒がいた。
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(0)「………何か?」
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(0)その生徒はこちらを見つめたまま動く気配がないので哲郎は声をかけた。
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(0)「!! まずい!!」
(0)「? 何が?」
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(0)柄にもなく動揺を見せるノアを哲郎が不審がると、
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(0)「ど、どちら様ですか?
(0)なんでノア"様"と食事を…………」
(0)「え? 僕ですか?
(0)僕は田中哲郎です。彼に呼ばれてこの学園に来たんですよ。」
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(0)"様"という言葉が気になったが、名前を聞かれたようなのでとりあえず答えた。
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(0)「彼、ノアさんとは1週間くらい前から仲良くさせて貰ってます。
(0)まぁ 友達みたいなものですね。」
(0)「バッ……止せ!」
(0)「?」
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(0)振り返るとノアはさらに動揺していた。
(0)どうしたのか と哲郎が不審がっていると、突然肩を掴まれた。
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(0)「!!? 何ですか!!?」
(0)「あなた、今なんて言った?
(0)ノア様の何ですって?」
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(0)振り返って見た女子生徒の顔はまるで何かに追い込まれたように危機迫っていた。
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(0)「悪いけど、ちょっと来てくれますか?」
(0)「?? 良いですけど、食べ終わってからにしてくれますか?」
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(0)この後彼は常軌を逸したある物と直面することになる。