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(0)治癒魔法
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(0)それは、哲郎が魔界コロシアムの3回戦でのレオルとの試合で見、そしてパリム学園に潜入する中で学んだ事である。
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(0)治癒魔法とは、基本的にしてとても繊細な魔法である。
(0)そしてそれを未熟な状態で使う事はとても危険な行為としてこのラグナロクの全土に知られている。
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(0)なぜなら、【傷口に異物が入った状態で治癒してしまうと、異物が入ったまま塞がって化膿してしまうから】だ。
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(0)哲郎はパリム学園にて治癒魔法のことを粗方教わった。 そして、そのデメリットを逆利用できないかと考えていた。
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(0)(エクスさんからこれの使い方は教わっていた。 確か、こうやって『飛ばす』イメージを水晶に送り込んで…………。)
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(0)ブシュッ!!! 「ッ!!!」
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(0)衝撃波と血が吹き出した。
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(0)哲郎の手のひら から。
(0)そしてコロンと音を立てて水晶が手の平の傷から転がった。
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(0)哲郎はそれを両手を縛られた状態で拾い上げる。 先程の傷は既に【適応】している。
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(0)***
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(0)待機部屋にて哲郎が考えていたのは、エクスから貰った水晶を持ち運ぶ方法だった。
(0)そこで考え出したのは、【手のひらの傷口に水晶を埋め込んで適応で塞ぐ】方法だった。
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(0)哲郎の左手にはメス程度の刃物が握られていた。 これが失敗したらまた別の方法を考えれば良い 程度に試しにこの方法をやってみることにした。
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(0)グサッ!! 「!!!」
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(0)哲郎は手のひらに刃物を突き刺した。
(0)一瞬 刺痛が走るが、それを意に返す暇もなく、その傷口に強引に水晶を押し込んだ。
(0)その直後、傷口が完全に塞がった。
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(0)その時は純粋に成功したことに喜んだ。
(0)そして同時にまさかパリム学園で学んだ事を ましてやデメリットを逆利用するとは思ってもいなかったと驚きもした。
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(0)男の襲撃にあって拉致されたのはこの直後である。
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(0)***
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(0)ジャキンッ!!!
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(0)派手な音を立てて手首を縛っていた鎖が断ち切られた。
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(0)自由になった事を確認するかのように両手首を擦りながら周囲を見渡す。
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(0)哲郎には時間が無かった。 エクスから貰った水晶があると言っても、もしこの事がバレたらあと何回彼らを出し抜く策を思いつけるか分からなかったからだ。
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(0)(………よし。 あれやこれやしている間に視界の方も暗さに【適応】してくれたみたいだ………。)
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(0)そこは、細長い通路だった。
(0)細長いと言っても横幅は人間が3~4人並んで通れるだけの広さがあり、長さは行き止まりすら見えない程だった。
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(0)(僕一人にここまで広い監禁場所を取るとは思えない…………。
(0)僕の他にも連れてこられた人がここにいるのか?)
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(0)哲郎は次に振り返って逆方向を見渡した
(0)「!」
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(0)そして一瞬 息を飲んだ。
(0)そこにはたくさん人が居たからだ。
(0)人種を振り分けると、そのほとんどが哲郎と同年代と思われる女性だった。
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(0)(僕と同じくらいの女の子ばかり?
(0)拉致に簡単だから選んだのか……?
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(0)というかなんでみんな僕の方を見ないんだ? アッ!)
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(0)そこまで考えて哲郎は自分しかこの暗闇に適応していないことに気がついた。
(0)彼女達は今 明るい水槽の中で暗い場所にいる客が見えない魚のように哲郎の事が見えていないのだ。
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(0)(そうだ。 これには明かりをつける機能もあるんだった。)
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(0)哲郎が水晶を握ってイメージを送ると、水晶が発光し、通路を見渡せる程度の光源の確保に成功した。
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(0)(よし。 ここまでは良い。
(0)まずはこの人たちを連れて脱出する方法が無いか探さなくちゃ)
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(0)「…………明かりを、明かりを消して………。」
(0)「!?」
(0)「早く、早く消さないとあいつ が……………」
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(0)声に振り返ると、そこで一人の少女が涙目で哲郎の裾を引っ張っていた。
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(0)「早く………!! 早くしないとあいつが………!!!!」
(0)「落ち着いて下さい! 僕は敵ではありません!」
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(0)「あいつに……!! あいつに殺される………!!!!」
(0)「しっかりするんだ!!!」 「!!!」
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(0)哲郎に両肩を掴まれて諭され、その少女はようやく正気を取り戻した。
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(0)「あぁ 失礼しました。 つい焦ってしまって……!」
(0)「………私も ごめんなさい。」
(0)「……では 教えて頂けますか? さっき言っていた《あいつ》とは一体………」
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(0)ガシッ! 「!!!?」
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(0)質問しようとした直後、哲郎の足を何かが掴んだ。
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(0)「こ、これは……!!!?」
(0)「いっ 嫌っ 嫌ァッ………!!!」
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(0)「あいつ だ……!!!」
(0)「また あいつ が………!!!」
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(0)先程まで話していた少女以外からも悲鳴が聞こえてくる。
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(0)「てっ 敵か!!?
(0)何者だ!!? 姿を見せろ!!!!」
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(0)かろうじての啖呵を切って 哲郎は足を掴んでいるものに光を向けた。
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(0)「!!!??」
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(0)そこに居たのは、くるみ割り人形のような顔をした二人の怪物だった。 1人が四つん這いになり、もう一人がその上に覆いかぶさっている。
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(0)「な、何だ……… こいつらは…………!!!」
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(0)哲郎に言えるのはそれだけだった。