行別ここすき者数
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(0)「……急にどうした?」
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(0) 俺は静かに問いかける。非難する意図は無い。依頼をこなす過程での負傷は各々の責任だ。
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(0)「ほら、君も肩に傷があって大変でしょ? それに、聖職者のボクがついて行った方が解呪を使える人を探すとき、何かと便利だし」
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(0) 確かに、肩の傷には回復が効かないとはいえ、聖職者がパーティに居るのは何かと有利だ。それに解呪を使えるのは聖職者だけ、同業者なら何かとコネクションもあるだろうし、断る理由が無いだろう。
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(0)「それは構わないが、左肩のことで負い目を感じすぎるなよ」
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(0) 冒険者にとって、仕事を続けられないほどの事態になることはよくあることだ。その状況で「私を守るために貴方はこうなったので責任をとります」なんて言い出したら、負債で潰れることになる。
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(0) さらに言うと、わざとらしくゆすりたかりの口実にする冒険者もいるのだ。同じパーティメンバーならまだしも、つい先日会ったばかりの相手に、そういう考えを安易に持つのは危険だった。
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(0)「うん……ボクも軽率だった」
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(0) ティルシアはそう言うと、言葉を続ける。
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(0)「今までは、墓地とかで発生した小規模なアンデッドたちを相手にしてたんだ。あそこまでの規模は初めてだったけど、数が多いだけで難度は変わらないと思ってた」
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(0) 偶発的に生まれる不死系魔物は、大体が数匹程度で簡単に討伐される。それを基準に考えてしまうと、大規模発生をした時に失敗をする。
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(0) 大規模発生はそうなる理由があり、その原因も様々だ。今回のように不死操者が居る場合もあれば、単純に戦場跡で偶発的に大規模となってしまった場合もある。
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(0)「それに気づけて死んでないなら、それでいい」
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(0) 冒険者を含め、各地の集落を転々とする俺たちみたいな存在は、簡単に死ぬし簡単に食い扶持を失う。その中で死なずに教訓を得ることが出来たのなら、それで十分だろう。
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(0)「そっか……じゃあ、気にしないことにするね」
(0)「ああ、そうしてくれ」
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(0) そう答えると、ティルシアは俺の背後に回り、覆い被さるように抱きついてきた。思わず身じろぎするが、左肩の痛みと唐突に感じた柔らかな感触に、脱力せざるを得なかった。
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(0)「今度は何だ?」
(0)「ちょっとの間だから、さ」
(0)「……そうか」
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(0) 返ってきた反応が、思ったよりもしおらしくて、俺は面食らう。どうやら観念してじっとしているほか無いらしい。
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(0) 身体を動かしている間は特になにも感じなかったが、じっとしていると頬をなでる風には、冬の気配が混ざっていることに気づく。そして、それと同時にティルシア自身の暖かさも。
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(0) 目の隈と姿勢の悪さから異性として意識していなかったが、こうも密着されると、考えないようにしても身体の柔らかさを意識してしまう。
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(0)「うん……ありがとう」
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(0) どうするべきか、困惑しているとティルシアは静かに身体を離してくれた。
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(0)「気は済んだか?」
(0)「くふふ、君って意外と朴念仁だね」
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(0) いたずらっぽく笑う彼女に、俺は「そうだな」とだけ応えた。
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(0)――
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(0)「さて、次の目的地はルクサスブルグでしたっけ?」
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(0) 翌朝、町の出口を通ったあとでヴァレリィが旅路の確認をする。
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(0)「ああそうだな、通商路を辿っていくから楽な旅路になるはずだ」
(0)「たのしみ、どんなところなの? とうさま」
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(0) ヴァレリィとシエルはルクサスブルグを見たことが無い。人類圏で最も栄えている街をこれから見られるということで、二人はどこかそわそわしていた。
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(0)「……むぅ」
(0)「キサラ、どうした」
(0)「べっつにぃー」
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(0) 一方でキサラは、むすっとした表情で俺をにらんでいた。
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(0)「といってもな……」
(0)「そうそう、どうせ旅するなら楽しく行かなきゃ、くふふ」
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(0) 俺の左肩をかばうように寄り添って、ティルシアが続ける。
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(0)「誰のせいで不機嫌なんだって思ってるんですか!?」
(0)「だれだろうねぇ、くふふふふ」
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(0) ……どうやら、俺の知らないところで俺の知らない戦いがあるらしかった。
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(0)「キサラ」
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(0) 一つ溜息をついて、不機嫌そうにそっぽを向いているキサラに声をかける。
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(0)「なんですかぁ?」
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(0) キサラはそのまま、こっちを見ようとしない。仕方なく、俺は彼女に歩み寄る。
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(0)「っ……だって、勝手に新しい女の子――」
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(2) ビキニトップのひもを引っ張る。簡単にズレた。
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(0)「ぎゃああああああああああ!!!!!! 何考えてるんですか!???!!?!?!?? 今それをやる雰囲気じゃ無かったでしょ!!!!!!!!」
(0)「いや、不機嫌そうだったから」
(2)「どうしておっぱい開陳させたら上機嫌になると思ったんですか!!??」
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(0) いや、いつも割と機嫌直さないか? とは言わないでおいた。