IS 転生して貰った物は!? 旧式 (マーシィー)
しおりを挟む

その1

活動報告にて掲載して欲しいとの声が多数ありましたので掲載します。

掲載は二次ファン時代に投稿していた所まで。それ以降は分かりません。

それを理解したうえでお読みください。


 初めまして。俺の名前は一二三四五六(ひふみしごろ)だ。

 

 俺の事を簡単に説明すると転生者と言う奴だ。俺は死ぬ前は二次創作が大好きで暇さえあれば色んな二次創作を読み漁っていた。

 

 中でもIS<インフィニット・ストラトス>と言うラノベを題材にした小説が大好きだった。

 

 俺はいつもISを題材にした小説を読みながら、俺だったらこうする、此処はこういう行動で、俺の専用機は、などど妄想ばっかりしていた。

 

 中でもIS チートは隠すもの に出てきた「八卦龍」と言うオリISが大好きだった。

 

 元はゼオライマーと言うアニメが某ロボットシュミレーションに出てきた時、そのゲームのためだけに書き降ろされ、出てきた機体をこの作品の作者が弄って作り出した機体であり、そんな機体に俺は心を引かれた。

 

 いつも俺は妄想の中でこの機体を使ってISの世界で活躍するところを考えていた。

 

 そんな事を常日ごろから考えていて、つい考え事、いや妄想に浸っていたら俺は死んだ。交通事故で。

 

 何のことは無い妄想に集中していたせいで信号が点滅していたにも関わらす歩道に出てしまい近くの工事現場に向かっていたロードローラーに轢かれてしまった。

 

 なんていう間抜け。自分でもコレは無いと思った。

 

 

 

 だが、俺は死んで意識を失ったはずなのに気が付くと赤ん坊になっていた。

 

 

 

 その時、俺が思った事は混乱したり訳が分からなくなったのではなく、ただ

 

 

 (テンプレキター)

 

 

 と思っていた俺はダメ人間だったと思う。

 

 

 

 さて、そんな風にテンプレなのかそれともそれ以外なのかは知らないが俺は赤ん坊からやり直し体を自由に動かせる用になった頃、俺の玩具箱(両親が与えてくれた)の中に”八つの球体”が着いたアクセサリーが入っているのに気が付いた。

 

 俺がコレを手に取った時、頭の中にある知識が流れ込んできた。

 

 それは紛れも無くISの知識であり、そして俺が大好きだった「八卦龍」の知識だった。

 

 

 俺はこの「八卦龍」を手に入れたという事実に驚愕し、次に感動しいるかどうかも分からない神様に感謝した。

 

 俺が大好きだった「八卦龍」をくれてありがとうございます、と。

 

 そして、この「八卦龍」を手に入れたことによって、この世界がISの世界であることに気が付き、前世から思っていた原作介入をすると決めて、原作ヒロインを彼女にするぞ、と意気込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そんな時代がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は「八卦龍」を手に入れた事とテンプレ的な転生をした事によってある事を忘れていた。

 

 「八卦龍」は元となった小説内で世界経済を牛耳っていると言っても過言ではない「世界電脳」が総力を挙げて作り出した機体であり、その技術力は小説内では世界一位であり篠ノ之束博士をも上回る技術力が使われた機体で有る、という事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまり何が言いたいかと言うと、この「八卦龍」

 

 

 整備、補給、その他もろもろが出来ない、と言う事だ。

 

 

 しかも、この「八卦龍」を手に入れた時、世界ではまだISは発表されていないので俺がISを持っている事自体がおかしい事であり、しかも「八卦龍」に使われている技術はどれをとっても原作内の技術力を上回っているので、下手にこれが世界にばれたりしたら、冗談抜きで世界中から、狙われる事になる。

 

 

 テンプレで転生してオリISも手に入れて原作介入だ!!と思ったら、ばれたら命を狙われかねない状況だった。

 

 

 どうしよう(笑)




大体その10話ぐらいまではハーメルン版と同じ。

それ以降から変わってきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その2

皆さんこんにちは。オリ主の四五六です。

 

Q さて、今俺がいる場所は何所でしょう?

 

A IS学園内1年1組

 

そう、原作主人公、織斑一夏がいる1年1組の教室内です。なぜ、俺が此処にいるかと言うと、ええ。そうです。俺がISに乗れるという事がばれました。

 

理由としては簡単な事で、一夏がISに乗れる、という事が発覚してから世界中の国で男性を対象とした適性検査が行なわれたからです。

 

で、それに見事引っかかったのが俺、と言う事だ。

 

事前に対応しておけばよかったんじゃないか?と思う人も居るかもしれない。

 

だが、考えて見てくれ。

 

俺が手にした物は「八卦龍」”だけ”である。

 

IS関係の知識や技術なんていうものはないのである。つまりはISに乗れる事を隠す方法を知らないという事で……

 

あ、でも「八卦龍」自体は乗りこなせるだけの技量は有ったみたいで、今ではキノ以上に扱える自信があるぜ!!

 

でもGZ様に乗ったキノには勝てる気がしないがな!!

 

さてそんな風に考え事をしていたら原作であった織斑姉弟のやり取りが終わり、俺の自己紹介になった。

 

「はじめまして。漢数字で一二三四五六と書いてひふみしごろ、と言います。好きな事は一人でいること、音楽を聴くこと、嫌いな事は、不特定大多数の人が居る場所にいること、勝手に物事を進める人です。ISになぜか適正があり、この学園につれて来られました。ISの”知識”に関しては何も知らない素人なのでいろいろ足を引っ張ると思いますが、よろしくお願いします」

 

そうい言って頭を下げ席に戻る。

 

クラスの反応はまあ、ぼちぼちと言ったところだ。

 

ちなみに俺の見た目だが、銀髪に赤と青のオッドアイで顔つきもかなり整っている。下手なモデルよりかはかなりカッコいいと言ってもいいぐらいだが、正直いらないです。

 

こんな中二病な姿で名前は漢数字オンリーって似合わないにも程があるだろう。

 

なので、学校に来る前から髪は黒に染め黒のカラーコンタクトをつけ、地味な黒ぶちメガネをかけて地味な格好をしています。

 

おかげでクラスの女子の殆どは一夏に興味がいっている様で何よりだ。

 

俺は確かに前世とこの世界に生まれた直後はハーレムだの原作ヒロインを恋人にだの思っていたが、それはあくまでもそういう風に考えている事自体が楽しかったのであり実際に目の前にヒロイン達がいたら、恐縮して何も出来はしないのだ。

 

チキンだのヘタレだの大いに結構!!

 

俺は物語を脇から見ている傍観者になりたいのだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、「八卦龍」の事がばれて命を狙われたくないって事も有るがな!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その3

 自己紹介が終わり、授業が終わり、休み時間となった。

 

 一夏は早速、俺の所に来ようとした所を篠ノ之箒に呼ばれ、廊下に出て行ってしまった。

つまり教室には俺一人になると言うわけで。

 

 正直、キツイです。いろんな意味で。

 

 今の俺は地味な格好をしているせいで余計にキツイです。何がって、周りの囁きが。

 

「あの人?二人目の男性適合者って」

「……なんか地味だね」

「織斑くんはかっこよかったのにね~」

 

 そんな感じの囁きが周りから聞こえてくる。

 

 耐えろ、耐えるんだ俺。此処でこの囁きに負けて変装を解いてしまったら、大変な事になる。地味でいいんだ。地味で。

 このまま俺は地味に過ごしていくんだ。厄介事は一夏がきっと何とかしてくれるはずだ。

 

 そんな風に心の中で葛藤していたら、やってきました。厄介事が。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

 チョロコット、もといオルコット嬢が。

 

「なんですか、えっと……チョロコット?さん」

 

「だ、だれですかチョロコットって。セシリア・オルコットですわオ・ル・コ・ッ・ト」

 

「そうでした。すみません。オルコットさん……で、何か用ですか?」

 

「全く、コレだから男と言う物は……ハッ、コホン。用と言うのは……」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

「「あ」」

 

 用件を言おうとした時に授業開始の鐘がなる。

 

「こ、今回はコレまでにして差し上げます」

 

 そういってそそくさと席に戻るオルコットさん。

 

(なんという小物臭w)

 

 そして授業が始まる。その後はまあ原作と同じ様な展開で終った。オルコットさんは先ほどの事で話すタイミングを見失ったようで今日は話しかけてこなさそうだ。

 

 そして放課後。

 

「織斑君に一二三君いますか~」

 

 山田先生が俺達を探していた。

 

「何か用ですか、山田先生?」

 

「あ、一二三君。織斑君は見ませんでしたか?」

 

「いえ、見てません」

 

「そうですか。では先に一二三君に渡して置きますね」

 

 山田先生から渡されてのはカギだった。

 

「……ああ。寮のカギですか」

 

「はい。そうですよ。一二三君のルームメイトは1年4組の子になりますから仲良くしてくださいね」

 

「はい」

 

 山田先生と別れ、寮の部屋へと向かう。

 

「此処か」

 

 とりあえずノックをしてみる。

 

「誰か、居ますか?」

 

「………はい」

 

「今日からこの部屋のルームメイトになった者ですが」

 

「………どうぞ」

 

 はて?何所かで聞いたような声だが、誰だったかな?

 

「では、失礼します」

 

 そして入った部屋に居たのは

 

「……誰、貴方」

 

 メガネを掛けた青髪の少女だった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その4

 今俺の目の前に居るこの女性。

 

 名前を更識簪と言う。

 

 原作では彼女は自分ひとりの手で「打鉄二式」というISを作ろうとしていた人物である。彼女も原作では一夏ハーレムの一員となるようだが、まさかこんな所で原作ヒロインに会うことになるとは。しかもルームメイトって……

 

「あ~山田先生に聞いてないかな?今日からこの部屋のルームメイトになる一二三四五六だが」

 

「……そういえば、そうだったかな」

 

「では、改めて自己紹介をしよう。俺は漢数字で一二三四五六と書いてひふみしごろって言うんだが君の名前は?」

 

「……更識簪」

 

「更識簪ね……では更識さ「苗字で呼ばないで」……では簪さん」

 

「なに?」

 

「とりあえず、これから一緒の部屋で生活する事になるのだが、いろいろと決めておこうと思うのだが。シャワーの順番とか」

 

「……分かった」

 

 それからしばらくの間二人で順番とか、細かい注意点を聞いたりしたりしてその日は終った。

 

 え、隣に女性が居るのに寝れたのかって?

 

 ハハハ。紳士である俺に彼女に何かするなんて事出来るわけないだろう。

 

 ……すみません。嘘つきました。本当は彼女の姉が恐くて何も出来ませんでした。

 

 彼女の姉である更識楯無は原作キャラ内では上位の腕前を持つIS乗りである。さらに対暗部用暗部、「更識家」の当主でありその人脈や情報網はかなりのものらしい。

 

 ついでにシスコン。

 

 そんな姉を持つ彼女に対して何かして見ろ。物理的、社会的に消されてしまうわ!!シスコンモードでブチぎれた楯無さんを相手にしたら「八卦龍」でもきついわ。ギャグ的な意味で。

 

 さて、次の日になり朝、まだ布団の中に居る簪さんに軽い挨拶をしてから食堂で朝食を取る。

 

 今日のメニューは白米に鮭の塩焼き、味噌汁、おひたし、卵焼き、納豆、飲み物に牛乳をチョイスした。ちなみに食堂が空いた直後ぐらいに入ったので周りには殆ど、と言うか俺以外に誰も居ない。

 

 食後、一度部屋に戻り教科書類を持って教室に向かう。

 

 簪さんはまだ寝ぼけてたのかボーっとしてた。

 

 居室で、一人教科書を開き予習をしている俺。実際はこっそりと「八卦龍」を使いこの学園内にあるパソコン類にハッキングをかましていろいろと情報を収集している。

 

 まあ、殆どを「八卦龍」に搭載されているAI、MIKUにしてもらっているけど。

 

 そんなこんなでいろいろ足跡がつかない程度に情報を収集していたら、誰か教室に入ってきた。

 

「いっちばーんってあれ、一二三君、もう来てたの」

 

「ええ」

 

「来るの早いんだね~」

 

「朝は強い方なので」

 

 そんな風に簡単に会話をしていたら続々とクラスメイト達が来てまあ似たような反応をしていき、最後になにやら慌てた様子で、一夏と箒が入ってきて授業が始まる。

 

 授業中も「八卦龍」による情報収集は怠らない。何時トラブルに巻き込まれ、「八卦龍」の事がばれるか分からないのだ。

 

 それに、極々最近なのだが「八卦龍」に関してとても重大な事が判明した。正直知らなかった方がよかったことである。

 

 この「八卦龍」正確にはISではないのだ。ISの機能を持った別の機体なのだ。

 

 つまり、この「八卦龍」の情報の中にISと同等の性質、機能を持ち量産が可能で性別による適正が無いコアの情報も含まれているのである。

 

 ……真面目にこの「八卦龍」の情報が外に漏れでもしたら第三次世界大戦が勃発しかねん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チートISと思っていたのが実は特大の地雷だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その5

 今俺の目の前では原作最初の見せ場?の切欠となるイベント、そうオルコットさんの女尊男卑発言をリアルタイムで聞いてます。

 

「~としても後進的な国にいること事態、わたくしにとっては耐え難い苦痛で~」

 

「イギリスだってたいしてお国自慢ないだろ!!世界一まずい料理で何年覇者だよ!!」

 

「な、何ですって!!」

 

 原作と同じくクラス代表を決める話が出た時、推薦が一夏にしか出なかったことに腹を立てたオルコットさんが原作通りの発言をして一夏が切れた、と。

 

 ちなみに俺の名前は殆ど出ていません。

 

 フフフ、このために地味な格好と地味なオーラを出して目立たないように人の目線に入らないように過ごしてきた甲斐があったものだ。今では俺の事など「そういえば居たよね」程度しか認識されていないのだ。

 

 フハハ!!これで原作キャラとの邂逅は無くな「ではクラス代表を決める模擬戦はオルコット、織斑、一二三の三人で総当たり戦をしてそれで決めることにする」った……え?

 

「フン!無様に負けるがいいですわ!!」

 

「それはこっちのセリフだ!!」

 

「いやいやいや」

 

 ちょっとまてや!!

 

「織斑先生、どういう事ですか。俺も模擬戦に出るって!!」

 

「何を言っている、貴様も推薦されただろう?」

 

「だからって、いくらなんでも無理があるでしょう」

 

 一夏みたいに専用機を与えられるわけでもないのに代表候補生と戦えっていくらなんでも無茶すぎるだろう。「八卦龍」は使えねーんだぞ!!

 

「これは決定事項だ、腹を括れ」

 

 そういって出て行ってしまった織斑先生。ねーよ、マジねーよ。

 

 せっかく地味に過ごしてきたのにこれはねーよ。

 

「四五六、そんなに落ち込むなよ。アレだけ言われたんだ、このまま黙ってられないだろ」

 

「織斑さんはまだ度胸がある方ですのに一二三さんは情けない事ですね」

 

 となにやら二人が言っているが、こいつら今の自分達の立場と状況が分かってねーのか!?

 

「二人とも、今回の模擬戦がどういう状況になってるのか理解してるのか?」

 

「どうゆう状況ってなんだよ?ただクラス代表を決める試合だろ」

 

「何を仰ってるのかしら。まあ結果の見えた試合で……」

 

「……今回の模擬戦、下手するとイギリスと日本の関係が悪化するんだぞ」

 

「「「「え?」」」」

 

 俺の発言に二人だけではなく、話を聞いていたクラスメイト達も声を出して不思議がる。

 

「ど、どういう事ですか、関係が悪化するって!!」

 

 オルコットが息を荒げて言ってくる。

 

「オルコット、この模擬戦が決まる前に一夏に対してなんて言ったか覚えてるよな?」

 

「それがどうしたって……」

 

「極東の島国、野蛮な猿の国、後進的な国等々そんな発言したよな?」

 

「ええ、言いましたわ」

 

「……その発言が一夏と二人だけの時に言ったならともかく、いやそれも問題だが、そんな発言をよりにもよって授業中、しかもコレだけの人数が居るところで発言したって事は、その発言はオルコット個人の発言ではなく、イギリス代表候補生としての発言として取られても反論できないんだぞ」

 

「四五六、それがどうしたっていうんだよ」

 

「……代表候補生の発言、それはその国の発言として取られてもおかしくはないって事だ。つまりイギリスは日本の事を野蛮な猿の国で後進的な国である、と宣言した、と取られてもおかしくはないんだよ」

 

 其処まで言ってオルコットは自分がどういう発言をしたのか理解して青ざめてた。

 

「今の世界情勢で日本と言う国がどういう意味を持つか分かるだろう一夏」

 

「それは……」

 

「ISを開発した人物は日本人、最強のIS乗りも日本人、ついでにIS学園の生徒も半数は日本人。こんな状態であんな発言をしたら、どうなるか一夏お前でも分かるだろう」

 

「……」

 

 何もいえなくなる一夏。だが、まだ終らない。

 

「コレだけでもヤバイのにまだあるんだぞ」

 

「まだありますの!?」

 

 かなり顔色が悪くなっているオルコットが叫ぶ。

 

「オルコット、お前が発言した言葉をぶつけた相手の名前を言って見ろ」

 

「相手の名前?織斑いち……」

 

「分かったな?織斑一夏。つまり世界最強のIS乗りである織斑千冬の実の弟である相手に野蛮だの猿だの言ったんだ。しかも一夏は世界初の男性IS適合者。そんな相手にアレだけの発言をしたんだ。どう見繕ってもイギリスと日本の関係が悪くなるのは必須。」

 

 もう顔色が悪くなりすぎた青から白くなってきたオルコット。

 

「ついでに織斑千冬と織斑一夏の二人はISの生みの親篠ノ之束博士に気に入られているらしいじゃないか。もし今回の事が束博士に聞かれて機嫌を損ねるようなことになったら、下手するとイギリスが保有しているISコアだけ機能停止させられるかもしれないんだ。今のご時勢、国がISを使用できない事がどういう事になるかなんてISに関与した人間なら分かるだろう?」

 

 其処まで言ったらオルコットはぶっ倒れた。

 

「ちょ、オルコットさんシッカリして!!」

 

「だれか!衛生兵!衛生兵!!」

 

 教室内は阿鼻叫喚の状態になってしまった。やりすぎたか?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その6

 オルコットさんと一夏に今回の試合がどういう事態を招くか言って見た次の日から、オルコットさんに親の仇かの要な目で睨まれてます。

 

 何故俺を睨む。

 

 それはさておき、今は今回行なわれる試合で俺がどういう風にするかを考えなければ。

 

 原作では一夏が一次移行するまでの間ひたすらに避けて一次移行した後後一歩まで追い詰めるもエネルギー切れで負ける、と言う展開なのだが其処にもう一人の人間が入るとなると話しは変わってくる。

 

 俺に専用機を~と言う話は上がってきていないのでつまり量産機で相手をすることになるのだが、まあ八卦龍でひたすら鍛え上げた俺なら量産機でも専用機持ちに勝てる自信はある。あるのだが、そんな事はまず出来ない。

 

 なぜなら、そんな事をしたら確実に面倒な事に巻き込まれる。

 

 IS起動回数や機動時間が優に三桁を越えているような代表候補生に対して公式ではIS起動回数も起動時間も二桁に届かない素人である俺が初の試合で余裕を持って専用機持ちの代表候補生に勝ちました~なんてできねえよ。

 

 そんなことしたらマジでやばいよ。政府に目を付けられるし、此処の生徒会長にも絶対目を付けられるよ。ただでさえ妹さんと一緒の部屋の時点ですでにヤバイのに……

 

 となると負けるか引き分けにするかなんだが、引き分けもまずい気がする。だから此処はワザと負けるしかないか。しかもすぐ負けるのではなくそれなりに戦ってから負けないと今後の生活に支障がおきかねんからな~。

 

 めんどくさ!!

 

 そんな風に考えてたら昼になった。ので一夏に声を掛けられる前に教室から離脱、そしてMIKUの情報から人が少ない場所でさっさと弁当を食べる。

 

 この弁当は俺お手製の弁当である。二度目の人生はいろいろとして見たかったので料理をし始めたらついつい夢中になってしまい、なかなかの腕前になった。

 

 ちなみに同じ部屋の簪さんのも一緒に作ってある。

 

 なぜかって?簪さん、食生活がかなり不摂生なんだよ。なんだよ、食堂で食事をするのは数日に1、2回それ以外はカロリーメ〇トとビタミン剤って。女子の食事じゃないだろう。

 

 それを見かねた俺が注意したら、「……其処まで言うなら貴方が作ってよ」等と言うから、ええ。作ってやりましたとも。栄養バランスはもちろん見た目の配色、ご飯とおかずのバランスなど考えつくしたお弁当を毎日作って渡してやりましたとも。

 

 で、簪さんも俺のお弁当は気に入ったのか今はお昼のお弁当はシッカリと食べるようになりました。

 

 

 あれ、コレって餌付けしてる?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 1

 先日から私のルームメイトになった世界で二人目の男性IS適合者である一二三四五六。

 

 かなり珍しい苗字と名前の彼だったけど、はじめて見た感想は地味。その一言に尽きた。

 

 始めてあった頃は殆ど興味なんて無かった。私は“この子”を完成させる事だけを考えていたから。

 

 それからしばらくの間私たちは殆ど会話らしい会話をせず、同じ部屋に居るだけの他人、そんな関係だった。

 

 でもある日、彼が私の食生活について質問?をしてきた。

 

「簪さんはいつもそんな食事してるの?」って。

 

 その頃の私の生活は授業以外は殆ど部屋に篭り、パソコンのモニターに写る“この子”の事だけを考えていた。だから食事は殆ど携帯食糧とビタミン剤で済ませてた。食堂では数日に1、2回しか利用してなかった。

 

 そんな風に言ったらすごく怒られた。やれ、「女の子がそんな食事では~」とか「成長期に~」とかクドクドと言われた。

 

 そんな彼に私はうっとおしく感じ、「……其処まで言うなら貴方が作ってよ」と言ってやった。こう言えば料理も出来ないくせに私の食生活に口出しできないだろうと思っていたのだけど、次の日、私の目の前にはかわいらしい模様の布で包まれたお弁当が置いてあった。

 

 そのお弁当を前に彼はどや顔で立っていた。地味だけど。

 

 流石に実物を出されてはしょうがないと取り合えずその日はそのお弁当を持って授業に向かった。

 

 そしてお昼の時間。私は人通りの少ない場所で彼のお弁当の中を見て驚いた。

 

 失礼だけど彼の見た目からは想像できないほど美味しそうなお弁当だった。見た目の配色に栄養バランスの考えられたおかず。全体の量も私にぴったりの量だった。

 

 味の方もかなり美味しくて気が付いたら綺麗に食べ終わっていた。

 

 その日の夜、彼は何所と無くわくわくした表情で私にお弁当の感想を聞いてきた。

 

 何か癪だったから「……まあまあ、だったよ」と言ったら、「なら美味しいって言うまで作り続けてやる」と言われ、その言葉通りに次の日から私のお弁当を彼が作ってくれるようになった。

 

 癪だけど、彼が作るお弁当は毎回毎回美味しい物ばかりで、気が付いたら私はお昼のお弁当の中身を楽しみにしていた。

 

 同じ料理は一度も無くてその日その日で変わるお弁当の中身は毎日私を楽しませてくれる。そんな彼に対してちょっとだけ嫉妬しまったのは私だけの秘密である。

 

 毎日毎日同じような日々が続いていたが今は違う。彼が作るお弁当の中身が楽しみで私は明日が楽しみになった。

 

 ……アレ?私餌付けされてる?




文字数が足りなかったので少しだけ加筆。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その7

遅れて申し訳ありません。


 さて、今日遂にクラス代表決定の試合が行なわれる事になる。アリーナ内は何所からか聞きつけてきた生徒で埋め尽くされていた。

 

「……で、一夏。お前の専用機は?」

 

「……まだ、来てない」

 

 原作通り一夏の専用機はまだ来ていないようだ。つまり

 

「仕方が無い。一二三、先に試合をしてもらう」

 

 こうなる。

 

「……ハァ。分かりました」

 

「四五六、がんばれ!!」

 

 一夏が応援してくれるが、こうなったのはお前が原因の一つって分かってるのか?ちなみに俺が使用する機体は「ラファール・リヴァイヴ」。量産機の中で最も多くの武器を使用できる事からこの機体を選んだ。

 フフフ、見ているがいいセシリア・オルコット。俺が対ビット兵器用戦術を見せてやる。

 

「よく逃げ出さずに来ましたわね」

 

「……ハァ。逃げるも何も出来るわけないだろう。そんな事」

 

「フン!これだから男と言う生き物は〜」

 

「いや時間押してるからさっさと始めない?」

 

「っ!!……いいですわ。なら始めましょう」

 

 開始のブザーが鳴り響く。

 

「そして貴方の敗北で終わりです!!」

 

 その言葉と同時に放たれるビーム。その行動に俺は

 

「ほい」

 

 放たれたビームの斜線上にスモークグレネードを投げ込んだ。

 

「な!!煙幕!?」

 

 結果。アリーナ内に灰色の煙が充満する。とは言えスモークグレネード一つでアリーナ内が煙で埋め尽くされるわけも無いので俺はさらに追加で3、4個四方に投げる。

 

「煙幕で目を暗ましたところで私には勝てませんわ!!」

 

「でも攻撃も出来ないでしょ」

 

「ッ!!」

 

 数メートル先も見えないほどの濃度となった煙の中では流石に不利と悟ったのか煙の外に離脱するオルコット。

 

「ハッハッハ、すぐに終らせるんじゃなかったのか」

 

「馬鹿にして!!」

 

 だが、煙幕の外に離脱したとは言え相手は未だに煙の中。いくら射撃が得意と言っても煙の中見えない相手に闇雲に攻撃するわけにも行かず歯がゆい思いをする。

 

「卑怯者!!男なら正々堂々戦わないのですか!!」

 

「え〜。女尊男卑思考の貴方がそんなこと言ってもねぇ」

 

「くっ」

 

「それに“IS”起動回数も機動時間も三桁越すような人に起動回数、起動時間共に二桁に届かない素人に真正面から戦えとか、鬼畜過ぎるだろ」

 

 そう。原作でも思ったがさっき言ったとおり素人が代表候補生相手に真正面から戦いを挑むとか無理がありすぎる。まあ、そんな事を言い出したらいろいろ台無しだが。

 ちなみに起動回数、機動時間共に二桁に届かない〜って言うのは本当だよ。

 

 「八卦龍」は?

 

 いや、アレは厳密にはISじゃないからいいんだよ。だから“IS”の起動回数、機動時間に対して嘘は言ってない。嘘はね。

 

(全く、男と言う生き物はこれだから嫌いなのです!!でもこの煙幕も時期に薄くなります。その時が貴方の最後に……)

 

「ちなみに俺のスモークグレネードは108式まであるぞ(笑)」

 

「へ?」

 

 その後、オルコットは煙幕の周りをうろつきながらなにやら騒いでいたが、俺は無視して煙幕が薄くなってきたら2、3個放り投げ濃度を濃くしていった。

 

 フフフ。これこそ対ビット用戦術、「相手が見えなければビットで攻撃できなくね?」だ!!

 

 いかにビット兵器による全方位からの攻撃といえど相手が見えなければ攻撃できまい。まあ、俺も相手が見えないから攻撃できないけど。

 

 地味?卑怯?フハハハ!!俺の目的は時間稼ぎだ!!それに勝つ気など無いからこれでよいのだーーー!!!

 

 20分後

 

 アリーナ内外はなんと言うか白けた雰囲気が漂っていた。だが、それでいい。俺の試合がしょぼければしょぼいほど一夏の印象が強まり、俺に対する印象は低く薄くなっていくからな!!

 

「……あ。山田先生」

 

「ふぇ、な、なんでしょう」

 

「スモークグレネード無くなったんで棄権します」

 

「え?」

 

 その言葉と同時に試合終了のブザーがなる。

 

「「「えええーーーー!!!」」」

 

 試合終了のブザーが鳴り、その事に呆然としているオルコットを尻目にアリーナのビット内に戻ってきたら

 

「まともに戦わんか!!」

 

 との声と共に振り下ろされる出席簿。甲高い音と共にシールドエネルギーが減った。俺が試合を始めて最初にシールドエネルギーを削ったのは織斑先生だった(笑)

 

「まともに戦ってボコボコにされて来いと?嫌ですよ俺、そんな事」

 

「だからと言ってもっとマシな戦い方があっただろう」

 

「……ハァ。次回があったらそうします」

 

 そこで織斑先生との話を切って一夏に聞く。

 

「一夏、専用機は来たのか?」

 

「え、ああ。四五六の試合が始まってすぐに来たけど……」

 

「そっか。なら一次移行も済んでるか。じゃあがんばれよ」

 

 試合は20分もあったんだ。原作みたいに戦いながらするよりも簡単に終ってるだろう。

 

「……あ」

 

 一夏のその呟きを聞くまでそう思ってたんだけどなぁ。

 

「……おい」

 

「……ごめん、一次移行出来てないです」

 

「俺の試合、20分近くあったよな。内容も目を離せないような内容じゃ無かったよなぁ」

 

「はい、そうです」

 

「なら、何で一夏君は一次移行してないのかな?俺にわかる様に話してくれるかな」

 

 ガクガクブルブル。そんな擬音が聞こえてくるようなほど震えながら怯える一夏。

 

「……ハァ。もういいや。さっさと行って来い」

 

「……ごめん」

 

「なら、カッコよく勝ってこいよ。それでチャラにしてやるよ」

 

「……わかった。四五六、行って来る」

 

「おう。行って来い」

 

 その後の試合はほぼ原作通りに進んだ。違うとすれば、一夏が負けたのではなく僅差で勝ったというところか。一夏の残ったシールドエネルギーは4だけだったからな。

 その後、クラスで一夏の代表決定記念のパーティーが行なわれたが俺は最初の乾杯だけ付き合ってそのあとこっそりと抜け出した。

 人ごみ、と言うかああいうわいわいと騒ぐのは苦手なんだよね。騒ぐなら気の知れた数人で騒ぐ方がいいからな。

 抜け出して向かったのは屋上。夕日が沈み暗い夜空だったが気にしない。さて、今回の試合で俺と一夏の印象は大体決まった。地味で卑怯で意気地が無い俺と、カッコよく正々堂々で意気地がある一夏。

 どちらに人気が出るかなんて一目瞭然。これで今後も地味に過ごしていけば俺の事なんて気にするような人は少なくなっていくだろう。……これでいい。このまま地味に過ごしていく事が俺の平穏に

繋がるんだきっと。

 そう思っていたら屋上のせいか突風が吹き目にゴミが入り涙が出た。取ろうとして目を擦るもなかなか取れない。

 

「クソッ!!」

 

 そう悪態をついていたら

 

「……四五六君?」

 

 簪さんが俺の名前を呼んだ。……ん?

 

「か、簪さん!?何で此処に!!」

 

「……四五六君のクラスの人に君が居なくなったから知らないかって聞かれたから探してたの」

 

「あ〜、黙って出てきたからなぁ。迷惑掛けちゃったな」

 

 目を擦り軽く笑う。

 

「……」

 

「?。簪さん、どうしたの」

 

「四五六君」

 

「え、な……」

 

 名前を呼ばれたと思ったら頭を引っ張られ、簪さんの胸に抱きしめられた。

 

「ちょ、何して……」

 

「私は何も聞かない。だから泣いてもいいんだよ」

 

「え?」

 

「私は今日の試合で四五六君がどう戦ったのは知らない。でも負けたって事は聞いてる。織斑君が勝ったって事も」

 

「……」

 

「でも悔しかったんだよね。織斑君は勝ったのに四五六君は勝てなかったことに……」

 

 そう言いさらに強く抱きしめる。

 

「……私にも少しそういう気持ち、分かるから」

 

 やさしく微笑み、頭を撫でまるで赤子をあやすようにする簪さん。

 

「だから、今だけは泣いてもいいんだよ」

 

 簪さんの心臓の音が聞こえてくる。とても安らげる気持ちになれる。が!!

 

 

 

 

 

 

 

 勘違いだから!!その思い、勘違いだからね!?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 その2

本音さんと簪さんの口調が分からない。


 今日、このIS学園は異様な雰囲気に包まれていた。

 

 何故か?それは今日イギリスの代表候補生と世界に二人だけの男性IS適合者の試合が行われるからだ。私は多少興味が引かれたが見に行く事は無かった。なぜなら、男性の片方のせいで私の“この子”の開発が途中で止まってしまったからだ。

 

 分かってはいる。“この子”と片方の男性、織斑一夏の専用機の開発ではどちらが優先されるかなんて。……分かってはいるけど、納得は出来なかった。

 

 だから、私はクラスの皆や他のクラスの生徒が見に行っている間私は部屋で一人、パソコンの前で“この子”の調整をしていた。

 

 調整をしていて気が付いたらお昼の時間になっていた。ふと部屋の机の上を見てみると其処には彼が作ったお弁当が置かれていた。

 

 最近の私は彼のお弁当のせいでお昼になるとお腹かが空くようになってしまった。……完全に餌付けされてる気がするのは気のせいじゃない気がする。

 

 彼のお弁当を食べながら、ふと考える。

 

 (そういえば、四五六君はどうやって戦うんだろう?)

 

 彼に対して専用機の開発、と言う話は聞いたことはないから必然的に彼は量産機で戦うという事である。専用機持ちかつ代表候補生相手に量産機に乗った素人が勝てるはずなんかない事なんて、考え

ればすぐに分かることなのに彼のクラスの先生は何を考えているのかしら。

 でも、今日彼が部屋から出て行くときに今日の試合の事を聞いてみたら「まあ、何とかして見るよ」って苦笑しながら言ってたから、きっと彼も勝てないことはわかってたんだと、そう思ってしまった。でも、それは間違いだった。彼だって男の子なんだ。負けることが悔しくない、なんて事なんてあるわけが無かった。私が“あの人”に勝てなくて悔しい思いをしてるみたいに……。

 

 外が暗くなってきた頃、ノック音が聞こえてきた。こんな時間に誰?と思って開けてみると、私の幼馴染の布仏 本音が来ていた。

 

「どうしたの?こんな時間に」

 

「かんちゃん。ごろーちゃん、帰ってきてない?」

 

「ごろーちゃん?」

 

「しごろ、だからごろーちゃん」

 

「四五六君?まだ帰ってきてないけど、どうかしたの」

 

「うん。今私のクラスでおりむーの代表決定記念のパーティーしてたんだけどごろーちゃんが居ないのに気が付いて探しにきたの」

 

「そうなんだ。……本音のクラス代表は織斑君に決まったんだ」

 

「うん!!おりむーすごくカッコよかったんだよ!!」

 

 裾を振り回しはしゃぎながら話し出す本音。

 

「最初は一次移行が出来てなくてやられっ放しだったけど一次移行が出来てからはこう、ビューンていってバーンって戦って、最後はギリギリだったけどセッシーに勝っちゃたんだよ!!」

 

「一次移行できていない状態で戦って戦闘中に一次移行したの……非常識」

 

 一次移行も出来ていないのに戦闘を始めるって、馬鹿なのかしら?教師も見ていないで止めれば良いのに。

 

「なら四五六君の試合はどうだったの?」

 

 何気なく彼の試合の事を聞いてみたとたん、気まずい雰囲気を出し始める本音。

 

「その、ごろーちゃんは……」

 

 言いづらいように言う本音を見て私は悟った。

 

「……四五六君、負けたんだ」

 

「……うん」

 

「そっか……わかった。私も探して見るね」

 

「ありがと、かんちゃん。私は食堂付近を見てくるから、かんちゃんは屋上あたりから当たって見て」

 

「わかった」

 

 そうして本音と別れ、彼を探しに行く事に。そうして屋上に出るドアのガラス越しに彼の後ろ姿が見え呼ぼうと思いドアを開けた瞬間彼の口から「クソッ!!」という声が聞こえ、目もとをごしごしと拭いている姿が見えた。

 

 拭きながらも彼の体は小刻みに震え、目もとを拭いている姿は泣くのを必死に堪えているようにしか見えなかった。その姿を見たとき、私は思った。彼は悔しかったんだって。

 

 たとえ専用機持ちの相手とは言え負けた事が悔しかったんだって。本音の様子からしてたぶんボロボロにされたんだと思う。それでいてもう一人の男性である織斑君がギリギリとはいえ勝った事が悔しかったんだ。

 

 そんな彼の姿を見てしまった私は殆ど無意識の内に彼の前に出て、気が付いたらまるで小さな子供をあやすように彼を抱きしめていた。

 彼が泣く事を必死で堪えている姿を見ていると昔の私を見ているようで、それがとても悲しく思えて、私は彼が少しでも気が楽になるようにと、やさしく抱きしめた。

 

 男性を自分の意思で抱きしめるのは恥ずかしかったけど、それより彼が泣くのを堪えている姿を見るほうが辛かった。

 

 

 

 

……どうして辛い、って思ったのかな?

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その8

 簪さんの胸の中、温かいナリー……って違う!!

 

 ど、どうする!?このまま誤解されたままではばれた時ヤバイ、シスコンさんに殺されかねん。かと言って振りほどくわけにもいかない。内気な彼女がここまでしてくれているんだ。無理に振りほどいたら彼女を傷付けかねん。それは出来ないよ。男として。

 

ならば、取る方法はただ一つ!!

 

「四五六君?……寝ちゃったのかな」

 

 気絶有るのみ!!

 

(こうしてメガネが無い四五六君って結構カッコいいかも//)

 

「ハッ!!」

 

 気が付いた時俺は自室のベットの上で寝ていた。時計を見ると朝の4時過ぎ。どうやら気絶した後ここまで運んでくれたようだ。

 

(は〜。にしても昨日はビックリしたな〜。まさか彼女があんな事してくれるなんて……)

 

 そう思いながら静かにベットから抜け出し、部屋にあるキッチンでお弁当の準備を始める。

 

 

(原作ではそんな事出来るような人物じゃなかったような……いやいやいかんなこの考えは。彼女はもう空想の人物じゃなくて実在の人物なんだから、こんな考え方は失礼だよな)

 

 考え事に耽っていても体は勝手に動き、手際よくお弁当を二つ作っていた。

 

「よし、こんな所かって何だこれ!?」

 

 出来たのは無駄に豪勢なお弁当だった。

 

「……どうしよう、これ」

 

 普段通りに朝食を済ませ、教室に向かう時簪さんは珍しくもう起きていたので、部屋から出て行くとき、「……昨日は、その、ありがとう//」と、とりあえず感謝の言葉を出して出て行った。

 

 部屋のドアを閉めるとき、何か沸騰した時の音が聞こえた気がしたが気のせいだろう。

 

 さて、教室に着きいつも通りに授業が始まりお昼になった時、即座に教室から離脱しようとしたら、「お待ちになって、一二三さん!!」と大声で呼び止められた。

 

 振り向くと、其処には少し緊張した表情で立っているオルコットさんの姿が。

 

「……えっと、何か?」

 

「その……一二三さん、以前の失言、申し訳ありませんでした!!」

 

 そう言い深く頭を下げるオルコットさん。

 

「ちょ、何を……」

 

「これはセシリア・オルコット一個人として、そしてイギリス代表候補生として正式に一二三四五六さんに謝罪を申し上げているのです」

 

 頭を上げ目を合わせ言い放つオルコット。

 

「どういう事だ?」

 

「セシリアは昨日のパーティーが始まってから皆の前でこの前言った事に対して謝罪したんだよ」

 

「織斑……」

 

「私は一夏さんと出会うまで、その、女尊男卑の思考に染まってしまっていて男だから、そんな事だけで相手の事を見ることもせずに見下していました。でも一夏さんとの試合で私はその考え方を改めました。このような考え方では一二三さんに指摘された通り、私だけではなく祖国の品位すら落としかねる、と」

 

 涙ぐみならが話すオルコット。

 

「ですから、今更かも知れませんが誠に申し訳ありませんでした」

 

 そして再び深く頭を下げるオルコット。

 

「い、いや、その、頭を上げてください、オルコットさん。オルコットさんがこうして謝罪をしてくれたなら俺は気にしてませんから」

 

「一二三さん……ありがとうございます」

 

 オルコットさんは周りのクラスメイトに「よかったね」とか言われながら慰められていた。ってかここで「その謝罪、お断る!!」等と言いでもしたら今後の生活に多大なる支障が出るからな。……それに“俺”は気にしていないよ。

 まあ、周りの人たち、特に政府とか面子が大事な人たちがこのことを知ったらどうなるかは知らないけどね。

 

「……そうだ!四五六、今日は一緒に食事しないか?」

 

「……え?」

 

「ほら、四五六っていつも昼になるとどっかいって、一緒に食事したことって無かったからさ」

 

「それは……」

 

「な、いいだろ」

 

 何故かキラキラと目を輝かせながら言ってくる一夏。

 

「……ハァ、分かった。一緒に食事しようか。」

 

「そっか!ならセシリアと箒も早く行こうぜ!!」

 

 ごく普通にオルコットと篠ノ之を連れて行こうとする一夏。

 

「おい、織斑」

 

「なんだ?」

 

「オルコットさんと篠ノ之さんも一緒なのか?」

 

「ああそうだよ。飯は一緒の方が美味しいだろ?」

 

 何言ってるんだ、と言わんばかりの表情で返事をする。

 

「……ハァ」

 

「?」

 

 何故俺がため息をついたのか解らないという表情を浮かべる織斑を引きつれ、食堂に着く4人。

 

「何食べよっかな〜」

 

「先に席、確保しておくぞ」

 

「おう、って四五六、食券は?」

 

「俺は弁当だよ」

 

「そうなのか……なら早く行くな」

 

 そうして席を確保して、少ししたら3人が来た。

 

「待たせたな」

 

「待たせましたわね」

 

「すまない、遅くなった」

 

「気にするな」

 

 そうして3人が来たので俺は鞄から弁当箱を取り出す。

 

「かなりでかいな、いつもそんなに食べてるのか?」

 

「いや、食材が痛みそうだったから使い込んだらこうなっただけだ」

 

「ふ〜ん。少し貰ってもいいか」

 

「良いぞ」

 

 そうして蓋を開けたら

 

「なん、だと……」

 

「まあ」

 

「美味しそうだな〜」

 

 三者三様で驚かれた。

 

「卵焼きで良いか?」

 

「おう!」

 

 織斑にとりあえず卵焼きをあげる。

 

「もぐもぐ……すっげ、メッチャうめえ!!」

 

「そうか?」

 

「ああ、まじで美味かったよ」

 

「それは何より」

 

 そうしてもぐもぐと食べていたらオルコットさんと篠ノ之さんがこちらを見ていたのでしょうがないから、から揚げと、ミニハンバーグをお裾分けした。

 

「えっと、よろしいので?」

 

「いいよ。と言うか食べ切れそうにないからどうぞ」

 

「すまんな、ではいただく」

 

 二人とも俺のおかずを食べた数秒後、撃沈した。

 

「ど、どうした。不味かったか」

 

「……いえ、とても美味しかったです」

 

「……ああ。おいしかった」

 

「なら、いいんだが……」

 

((男性なのにここまでおいしい料理が出来るなんて……))

 

 なにやら二人ともへこんでいた。

 

 さて、いろいろあったがこれにて一件落着として、明日から地味な生活に戻れると思っていたら「生徒会から呼び出しします。一年一組、一二三四五六君。一二三四五六君は至急生徒会室に来てください。繰り返します。一年一組〜」と呼び出された。

 

 

 

 

 

 

 ごめん。簪さん。もう君にお弁当は作れないかも……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その9

楯無さんの口調と性格が把握できない。
そのせいでこうなった。


 今俺の目の前でにこやかに笑っている女性、名前を更識 楯無という。

 彼女は簪さんの姉であり、日本お抱えの暗部「更識家」の現当主である。性格は明瞭快活で文武両道、掃除に家事、料理に裁縫、更にはIS関係の知識も豊富で専用機を作り上げたことも。

 プロポーションも女性として魅力的な体を持ち、まさに完璧超人といっても過言ではない、と言う原作でハイスペックを地でいく人だ。

 

 ただし、シスコン。

 

 そんな人が俺を呼び出した理由なんて、一つしかない。

 

「こうして実際に会うのははじめてかしら。簪ちゃんの姉の更識楯無よ」

 

「えっと、はじめまして。簪さんのルームメイトをしている一二三四五六です」

 

「私の名前も珍しい、と思ってたけど貴方のはもっと珍しいわね」

 

「よく言われます」

 

 ここまではにこやかに話が進んでいるが、この後からが問題な気がする。

 

「……さて、今日ここに呼び出された理由、わかるかしら?」

 

「……先日の試合、の事ですか」

 

「そうね、それも有ったわね」

 

 それも?

 

「では先にそのことから話し始めましょうか」

 

「はぁ……」

 

 其処から、試合内容についてクドクド言われたが、まあ楯無さんも素人が真正面から代表候補生に戦いを挑む無謀が分かっているようで大した事は言われなかった。ただ他の方法が無かったのか、と

言われたぐらいだった。

 

「……このぐらいかしらね、生徒会長として貴方にいう事は」

 

「そうですか……生徒会長として?」

 

「そう、ここまでは生徒会長としてのお話。これから話すのは更識簪の姉として話すことよ」

 

 其処から急に顔つきが真剣になり、場の雰囲気もかなり変わった。

 

「この話をする前に、この学園の警備の話をしなくてはならないの」

 

「?」

 

「この学園は世界中からIS関係の生徒や技術者が集まってくるの。そのため警備関係もかなり厳重になってるのは分かるわね」

 

「え、ええ」

 

 徐に立ち上がり俺の周りを回りながら話始める。

 

「警備の関係上、監視カメラもこの学園中に設置してあるわ。無論プライベートな場所、トイレとか浴場は別だけど」

 

「はあ……」

 

「そして、監視カメラがある場所に“屋上”も含まれてるの」

 

「……」

 

 この時点で俺は冷や汗が止まらなかった。

 

「そして昨日、たまたま私が屋上の監視カメラの映像を覗いた時……」

 

 バキィ、そんな音を上げて彼女の手の中の扇子が砕けた。

 

「……ねぇ、四五六君。どうして貴方、簪ちゃんに抱きしめられてるのかな〜」

 

 俺の正面に立ち、俺の顔を両手で掴み顔を固定して至近距離で話す楯無さん。その目は暗く濁っており輝きも無く、一言で言うならヤンデレの目つきだった。

 

「あ、あれは……」

 

「あれは、何かな?私に分かるようにシッカリとオシエテクレルヨネ?」

 

 この時点で俺は気を失いそうになっていた。何だこれ、何でこんな目にあってるんだ。楯無さんの手がめり込んで痛い。と言うか血が出てきてるんですけどぉぉーー

 

「あれは、簪さんが俺を慰めてくれただけです」

 

「慰めた?」

 

「そ、そうです。その日の試合で俺が勝てなかったことに、その、泣きそうになった所を簪さんが抱きしめてくれただけで、他意はありません!!」

 

 実際は目にゴミが入って涙が出ただけのを簪さんが勘違いしただけだけど、こう言っておかないとまずい気がする。

 

「ホントウかな?」

 

「ほ、本当です!!」

 

「……」

 

「……」

 

 そのまましばらくの間見つめあう。ここで少しでも目を逸らしでもしたらきっとヤバイ。明日の日の出を見られなくなる気がする。

 

「……フゥ、どうやら本当のようね」

 

 そういって両手を離し手くれた楯無さん。

 

「痛っ」

 

 手を離してくれたのはいいのだが、手の爪がめり込んだとこから軽く血が出てた。

 

「あ、ご、ごめんなさい。今手当てするわね」

 

 手際よく傷跡を手当てしてくれる楯無さん。

 

「本当にごめんなさいね、四五六君。私、簪ちゃんの事になるとどうしても制御できなくて……」

 

 シュンとして俯く楯無さん。

 

「いえ、大丈夫ですよ。そんなに深い傷でもないですから。」

 

「そうだけど……」

 

 先ほどのヤンデレのような雰囲気は無く、今の彼女は悪い事をして怒られるのではないかと不安になってる子供のようだった。

 

「フフ」

 

「な、なに。急に笑って」

 

「いえ、さっきの楯無さんと今の楯無さんのギャップが可笑しくて」

 

「な!?も、もう。お姉さんをからかわないの!!」

 

「ハハハ」

 

「わ、笑うなーーー!!」

 

 ポコポコと軽く叩いてくる楯無さん。あれ、彼女ってこんなに可愛い人物だったけ?

 

「フゥ、フゥ……コホン。話は変わるんだけど四五六君から見た簪ちゃんってどんな子かな」

 

「?どういう事ですか」

 

「その、ね。私は簪ちゃんの事がとっても大事でとっても心配なんだけど、その、いろいろあってね。直接話す機会がなかなか無くてね」

 

 何処か諦めたような顔つきで話す楯無さん。

 

「……簪さんは普段はあまり話すことはありませんけど、優しくていい子だと思いますよ」

 

「そう?」

 

「じゃなきゃ、俺みたいなのを慰めてくれませんよ」

 

「そうかしら?」

 

「そうですよ」

 

 その後は簪さんの最近の状況を軽く話して、お開きになった。

 

「ごめんなさいね、こんなに引き止めちゃて。それに怪我もさせちゃって」

 

「いえいえ。それだけ簪さんのことが心配なんだって分かりましたから」

 

「そう言ってくれると助かるわ」

 

 その時の彼女の顔は妹を心配する姉、そう完璧超人などではなくただの普通の女性だった。

 

「簪さんとの仲、よくなると良いですね」

 

「ええ、そうね」

 

「では、失礼します」

 

「今日は、ごめんなさいね」

 

「いえ、もう気にしてませんから」

 

 そうして、生徒会室から出て行く俺。

 

 フゥ。……生きた心地がしなかった。だってあの人ヤンデレぽっくなってた時後ろに何か専用機っぽい物がゆらゆらと見えてたもん。下手な回答したらきっと消されてたかも。

 

 でも、まあこれで取り合えず危機は去ったかな。簪さんにちょっかい出さなければ何もしてこないだろうし。俺簪さんにちょっかいなんてして……して……。

 

 

 

 

 

 

 俺、餌付けしてた。どうしよう。

 

 




妹LOVEな楯無さん。
その思いは彼女から目の輝きを奪うほどである。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その10

更識姉妹ルート(ただし、失敗すると二人ともヤンデレになります)

布仏姉妹ルート(ただし、キャラが把握できていないので会話が少なくなります)

NTRルート(寝取りルート。一夏ハーレムの誰かを寝取る。失敗すると主人公勢が敵にまわります)

孤独ルート(ヒロイン無し)

この作品がゲーム化したら作者はこうするんだ。


 生徒会からの呼び出しが終わり、教室に戻り席に着く。後ろのドアからこっそりと入ってこっそりと席に着いたおかげで誰にも気づかれていない。

 

 フフフ、地味スキルは着々と向上しているようだな。そんな風に悦に浸っていたら、クラスの皆の話が聞こえてきた。

 なにやらクラス代表戦の事で盛り上がっているようだ。……という事は「その情報、古いよ」来ました。

 セカンド幼馴染こと、ちっぱい、じゃ無かった凰 鈴音。原作では初期から登場している物のクラスが違う事で何かと不憫な目にあっている子です。

 

 その後は織斑先生の登場で何か小物っぽいセリフと共に戻っていく彼女。今思ったんだけど、彼女、廊下で入るタイミング計ってたから授業開始ギリギリに登場したのかな?

 廊下で聞き耳を立てながら入るタイミングを計ってる代表候補生。……シュールだ。その後いつも通りに授業が進みお昼の時間になって、すぐさま教室から離脱した俺。昨日のように一夏と一緒に食事をする気は無いのだ。それに今日、彼女が起こすイベントに巻き込まれたくないからな。

 

 そうして来ました。俺がいつも食事している隠れ家的な場所。ここは木や校舎等で普段は暗いのだがお昼時、つまり日が一番高くなる時だけ一部分だけ日が当たる場所があり、俺はいつもそこで食事している。

 そこ、寂しい奴とか言わない。こうした日々の小さな努力が後々大きな意味を出すんだ。そう思っていたら

 

「お先に失礼してるわよ、四五六君」

 

 地面にシートを広げ笑顔で座っている生徒会長に姿が。

 

「……何故、ここに?」

 

「此処わね、私のお気に入りの場所なの。最近はちょっと忙しくて来れなかったんだけどね」

 

「……さいですか」

 

 ここでUターンしても厄介事になるだろうと諦めて、「失礼します」と一言掛けてシーツに座らせてもらう。

 

「ふふん。此処に目を付けるとは四五六君なかなかやるわね」

 

「いえいえ、たまたま見つけただけですよ」

 

「そう?」

 

「そうですよ」

 

 そんな会話をしながら俺はお弁当を出す。

 

「それ、四五六君が作ったのかしら?」

 

「ええ。俺の手作りですよ」

 

「……」

 

 俺の作ったお弁当の中と自分が作ったお弁当の中を見比べる楯無さん。

 

(何かしら、この言いようの無い敗北感は……)

 

「どうかしましたか?」

 

「え!?何でも無いのよ、何でも」

 

「そうですか」

 

 不思議に思いながらも、「いただきます」と言ってからお弁当を食べ始める俺と楯無さん。

 

「その卵焼きおいしそうね」

 

「なら、そのから揚げとなら交換しても良いですよ」

 

 おかずの交換をしたり。

 

「……悔しい、でもおいしい」

 

「何が?」

 

 俺の卵焼きを食べた感想を聞いたり。

 

「食後は紅茶よね」

 

「いや、緑茶でしょ」

 

 食後の飲み物で言い争ったりしながら、お昼が過ぎていった。

 

「……ふぅ。こうしてゆっくりお昼を食べるのも久しぶりね」

 

「忙しそうですからね。生徒会長って」

 

「そうよー、忙しいのよー生徒会長って」

 

 ぐうたれた感じになって話す楯無さん。

 

 と言うか、楯無さんてこんな感じだったけ?人をおちょくるのが趣味の人だと思ってたんだけど。

 

「こうしてると普通の女の子ですね」

 

「だれが〜」

 

「楯無さんが」

 

「……へ?」

 

 キョトンとした表情を浮かべる楯無さん。

 

「生徒会室で話したときや、今一緒にお昼を食べた時の楯無さんは普通の女の子ですね」

 

「な、な、な」

 

 顔を赤くしながら驚く楯無さん。

 

「なに、言ってるのかしら四五六君は。私は生徒会長でIS学園最強なのよ。偉いのよ」

 

「そうですか?妹の事を心配したり、今みたいに一緒に食事をした限りでは楯無さんは普通の女の子じゃないですか?」

 

「な!!……フゥ。四五六君と一緒にいると何でか調子が狂うわ」

 

「そうですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

 苦笑しながら、言う楯無さん。でもその顔は何処か嬉しそうだった。

 

「さてと、私は先に失礼させてもらうわね」

 

「仕事ですか」

 

「生徒会長は忙しいのよ。四五六君」

 

「忙しいのは分かりますが、程ほどにしないと体、壊しますよ」

 

「あら、心配してくれるの」

 

「当たり前ですよ、楯無さんは女の子なんですから」

 

「っ!!」

 

 “女の子”その言葉を聴いた楯無さんは何故か目を潤ませた。

 

「ど、どうかしましたか!?」

 

「な、何でもないわ。そ、それじゃあ私は仕事が有るからバイバイ」

 

 そういって駆け足で、走ってく楯無さん。

 

「何だったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前話の没案を晒して見る。

 

ヤンデレモードが続いた場合。

 

「あれは、簪さんが俺を慰めてくれただけです」

 

「慰めた?」

 

「そ、そうです。その日の試合で俺が勝てなかったことに、その、泣きそうになった所を簪さんが抱きしめてくれただけで、他意はありません!!」

 

 実際は目にゴミが入って涙が出ただけのを簪さんが勘違いしただけだけど、こう言っておかないとまずい気がする。

 

「ホントウかな?」

 

「ほ、本当です!!」

 

「……」

 

「……」

 

 そのまましばらくの間見つめあう。ここで少しでも目を逸らしでもしたらきっとヤバイ。明日の日の出を見られなくなる気がする。

 

「……フゥ、どうやら本当のようね」

 

 そういって両手を離し手くれた楯無さん。

 

(はぁ〜。助かったのかな?)

 

「……でも、おかしいのよね」

 

「……え?」

 

「簪ちゃんが優しいと言っても同じ部屋なだけの貴方が泣きそうになってたから、ってだけで抱きしめるとは思えないのだけど」

 

「……そ、それはっムグ!?」

 

 気が付いたときには俺は座っている椅子に縛り付けられていた。水によって。

 

(これは!!)

 

「……ねえ、四五六君。本当に貴方、簪ちゃんに何もしてないの?」

 

「ムー、ムー」

 

 首を振り必死に抵抗する俺。だが

 

「ねぇ、どうして話してくれないのかな?……何かやましい事でもあるのかな?」

 

 再び俺の顔に両手を当ててくる楯無さん。両手の部分だけISを展開しながら。

 

「ねぇ、どうして、どうして話してくれないの!?ねぇ、なんで!!」

 

 少しづつ楯無さんの指が頭にめり込んでくる。

 

「どうして、どうして、貴方は簪ちゃんに抱きしめてもらってるの。何で私じゃなくて貴方が抱きしめられてるの?」

 

「ア、ガガガ」

 

「ねぇ、答えてよ。答えなさいよ!!」

 

 薄れていく意識の中、最後に見たのは輝きが無くなり濁った目つきをしながらも涙を浮かべ何処か怯えている表情を浮かべた楯無さんの顔だった。

 

 

 

 

 つまり、ヤンデレモードが続いた場合、四五六君は死んでいたんだよ!!




ダメだ、生徒会長のキャラがつかめない。気が付いたら普通の女の子になってるお。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 その3

ピロリン♪ 新しい攻略ルートの条件が公開されました。

生徒会ルート 条件 更識・布仏姉妹ルートのグラフィックを100%にする事。

更識姉妹と布仏姉妹によるハーレムが展開されます。ただし4人全員の愛情度を均一に上げれなかった場合、欝ENDになります。

誰得!?一夏ルート 条件 NTRルートで箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラの順番で攻略し、BAD ENDを見る事。

誰かのヒーローになる事を諦めヒロインになる事を決意するルート。

主人公一週目は女装、二週目からはTSになります。

年上のお姉さんルート 条件 孤独ルートで千冬、真耶、クラリッサのみ友好度をMAXに上げる事。

精神が肉体の年齢に有っていない為、年上にしか興味が持てれなくなってしまったルート。年上のお姉さんに甘える事が出来ます。


 私が彼の事を意識し始めたのは、始めて彼と話をした時かしらね。

 

 その日、私はたまたまIS学園の防犯カメラの映像を見ていたの。

これは定期的に行なっている事でその日は生徒会の仕事も、裏関係の仕事も殆ど無いという珍しい日だったのを覚えてるわ。防犯カメラの映像と言えど、IS学園中に設置されているカメラの数は数百以上ありその全てを確認する事は出来ないので、生徒が居ない時間帯や、人っ気が無い場所などを中心として確認していたの。

 

 その画像を見たのは本当に偶然だった。初めて見たときは自分の目を疑ったわ。……だって、あの内気で大人しい簪ちゃんが人を、しかも異性、つまり男性を抱きしめてるんだから。

 しばらくの間私は呆然としていたわ。そしてその後、恥ずかしい事に物凄く嫉妬してしまったの。なんで、抱きしめられているのが私ではなくて見知らぬ誰かなのかって。

 

 この抱きしめられている男性が四五六君だというのはすぐに分かったわ。彼が入学してくる前に顔写真を見たからすぐに分かったの。それに、簪ちゃんのルームメイトっていう事もあるからね。

 

 私はすぐさま、彼を生徒会室に呼び出したわ。彼がどうして簪ちゃんに抱きしめられていたかを聞きだすために。ついでに先日彼が行なった試合の事についても言っておくために。

 彼が生徒会室に入ってきて実際に見た感想は、地味、ただそれに限るわ。身長や顔つきは悪くは無いと思うのだけど、黒髪黒目黒縁メガネが彼を地味にしていたわ。彼が用意していた席に着いてからまずは自己紹介をして先に先日の試合の事から話させてもらったの。

 

 私としては彼の取った行動に対して何か異論を唱えるつもりは無かったの。専用機持ちの代表候補生に対して素人が量産機で試合をしても正攻法ではまず勝つ事は不可能。故に彼が取ったスモークグレネードを使用した行動は評価してもいいと思うの。それがよかったかどうかは別として。

 

 しばらくの間、彼に試合の事で軽く注意と言うか評価と言うかそんな事を話、その話が終った後、私は生徒会長としてではなく、更識簪の姉、更識楯無として彼と話をしたわ。いえ、あれは話と言うよりかは尋問と言った方が正しいわね。

 生徒会長としての私の時はまだ自制が効くのだけど、姉としての私は自制が効かない事が多い。特に簪ちゃんの事が関わってくると。

 

 そのせいで彼に軽くとは言え、怪我を負わせてしまった時私は表情には出さなかったけど、酷く怯えたわ。もしこの事を彼が簪ちゃんに言ったりしたらどうなるかって。でも彼はそんな風な態度は取らずに逆に今の私とさっきまでの私とのギャップが可笑しいって笑うのよ。怪我をさせたのに……

 

 最後に彼から見た簪ちゃんの印象を聞いてから彼と別れ、一人生徒会室で考えて見たわ。彼は簪ちゃんにとって害が有るかどうかって。簪ちゃんに話さず勝手に彼の事を害が有るかどうか考えている私は酷く滑稽で、無様だったと思う。でも私は簪ちゃんと正面から向き合うだけの度胸が無い。

 

 笑えるわよね。IS学園最強、ロシアの代表操縦者、対暗部用暗部「更識家」現当主、とご大層な肩書きを持っているのに実の妹一人と向き合えないなんてね……

 

 次に彼と出会ったのは私が息抜きによく使っている、秘密の場所だったわ。この場所は普段は日陰で薄暗いのに、お昼時だけ一部分だけ明るくなりその場所で一人になるのが私の息抜きだったの。この時だけは、余計な肩書きを捨てて、ただの更識楯無になれる唯一の場所だったから。

 

 そんな場所に彼が入ってきた時は心底驚いたわ。その驚きを顔と態度に出さなかったのは本当に自分自身を褒めてあげたかったくらいだわ。

 そうして、入ってきた彼を追い出すわけにもいかず仕方が無く彼と一緒にお昼を食べる事にして彼が取り出したお弁当の中身を見て、ショックを受けたわ。

 

 此処でお昼を食べる時は自分でお弁当を作って持ってくる、と決めていてそのお弁当は手抜きなどしてなかったのだけど、彼のお弁当は私が作ったお弁当の数段上を行くものだと見てすぐに分かったわ。

 失礼だけど地味な彼がこんなにもおいしそうなお弁当を作れるとは思っていなかったから……

 そうして始めた二人だけの食事はいつもよりもおいしく感じられた。……此処ではいつも一人でお弁当を食べていたのだけど、息抜きにはなるけど、それだけだったから。

 彼とお弁当のおかずを交換したり、食後の飲み物口論したり、今まででは考えれなかった事を彼と一緒にして、とても楽しかった。普通の女の子のように振舞える事が……

 

 私は「更識家」当主になるべくして幼い頃から厳しく育てられてきた。それこそ周りの同年代の女の子が遊んでいる時、私は厳しい訓練をしていた。その事に対して別に不満があったわけではない。「更識家」に生まれてきた時点で私が普通の女の子として生活が出来るはずが無いと、幼い頃に自覚してしまったから。

 

 そう、私は普通の女の子ではなく、「更識家」当主として、IS学園最強として常に人の上に立たなければいけないのだ。

 なのに彼は私を普通の女の子として扱う。それが私にとって、どれだけ得がたい物なのか、そしてどれだけそうされたかったのか、まるで初めから知っていたかのように。

 

 私は彼が恐い。このまま彼と一緒に居たら私は、「更識家」当主と言う仮面を取られ、ただの普通の女の子になってしまうのが恐い。

 でも、心の何所かでそれを望んでいる私がいる。だから私は彼と会う事を止める。……止めたいのに、私の体はあの秘密の場所に向かってしまう。

 

 

 なぜなら、彼と二人で話している間だけは、私は当主でもなく最強でもなく、ただの女の子で居られるから……




う、ん?会長様にフラグが立ったぞ。
四五六君は普通に過ごしているだけのはずなんだけどな〜。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その11

テテン♪ 新規ルートが選択可能になりました

亡国機業ルート(スコール、エム、オータムの三人が攻略可能。ただし主人公勢全員が敵に回ります。)

八卦龍ルート(チート無双が出来ます。ただし原作キャラ全員が敵になります。)

このゲームはアドベンチャーパートとバトルパートを繰り返しながら進みます。

アドベンチャーパートでは選択したルートによって様々な場所に移動することが出来、移動した場所にいるヒロイン達と会話をして感情度を上げていきます。

中には特定のルートのみに登場するヒロインや特定の手順を踏まなければ登場しないヒロインがいますので探して見てください。

バトルパートでは3Dで描かれた主人公を操作して相手を倒していきます。

制限時間内に倒す、武装を制限された状態での戦闘など様々な条件下で戦闘が始まります。

特定の条件を満たすと隠し機体が出現しますので探して見てください。


 先日の生徒会長からの呼び出しの後、お昼時にちょくちょく一緒に食事をするようになった四五六です。

 生徒会長、つまり楯無さんとはおかずの食べ比べや料理のレシピ交換、最近の話題で盛り上がったりしてます。

 

 はて?楯無さんってこんな感じの普通の女の子だったっけ?……まあいいか。別に厄介事を運んでくるわけでもないし。

 さて、本日はIS学園最初のイベントであるクラス代表戦の当日である。この日が来るまでに一夏関係で厄介事がかなりあった。篠ノ之さんとオルコットさんの一夏争奪戦に鳳さんまで参加し苛烈な争いが行なわれていた。今でさえ苛烈なのに来月にはさらに二人増えるんだから大変だよな、一夏は。

 

 まあ、「八卦龍」のAI、MIKUを使って監視カメラの映像を常に見れるようにして一夏達が何所にいるかを確認し、教室以外で会う事を限りなく減らしたおかげで俺は一夏関係の厄介事には殆ど関与してないけどね。

 

 アレだけ露骨にアピールされているのにその好意に気が付かないって鈍感ってレベルじゃないよな。……まさかとは思うがBLとか安部さんみたいな性癖の持ち主じゃないよな。

 

 一夏の事は置いておき、今日のクラス代表戦の事を考えて見る。確か原作では一夏と鳳さんの試合の終盤にアリーナのシールドをぶち破り所属不明の機体が乱入、その後一夏と鳳さんが協力してそれを撃破。確かそんな感じだったよな。

 ま、俺には関係ないよね。原作通りなら俺が出しゃばる必要性なんかないし。主人公ならきっと何とかするでしょ。

 

 この時、俺はそんな考えでいたのだが、この後思い知らされる。この世界は俺が知っている世界では無いという事を。

 

 クラス代表戦が始まった頃、俺はアリーナの外にいた。何故かって?いやね、周り全てが女性しかいない場所に一人でいられるほど俺は度胸はないの。まあ、今の俺なら壁際にでもいれば気が付かれないとは思うけど、試合を見るだけならMIKU使えば見られるから、それならばという事で一人外で観戦してます。

 

 簪さんは今日はアリーナ内で観戦しているようです。どうやら「打鉄弐式」に使うデータをえるために観戦しにいくようです。お弁当は観戦しながらでも食べられるようにとサンドイッチにしておきました。ついでに楯無さんにも同じお弁当を渡しておきました。

 

 何故か?それは楯無さんもあの場所でお弁当を持参する時以外は食生活が不安定らしいのです。簪さんみたいに「打鉄弐式」の調整に掛かりっきりのせいで食事を疎かにするのではなくただ単に生徒会の仕事やIS学園生徒からの襲撃、「更識家」本家への連絡等でどうしてもお昼を疎かにしがちなようです。

 

 そんな話を聞いた俺はついつい簪さんみたいに食事を疎かにしない方が〜と言ってしまい楯無さんが「なら、四五六君。私のお弁当、作ってくれる?」って言われたので作るようになりました。

 楯無さんへのお弁当は手軽にかつ手早く食べれるような物を中心としたお弁当を作って渡してます。

 

 おかしいな?気が付くと簪さんに続いて楯無さんも餌付けしてるぞ。……もういいか。気にするな、俺。

 

 さて、そんな風に俺と更識姉妹の食事情の事を考えていたら何時の間にか一夏と鳳さんの試合が始まっておりすでに終盤に差し掛かっていました。

 

「さて、と。原作通りならそろそろ無人機が……」

 

 直後、アリーナの方角から大きな爆発音が聞こえてきた。

 

「っと、どうやら来たようだな。さてさて、どんな……は?」

 

 アリーナ内に乱入してきた機体を見た瞬間、俺は呆けてしまった。

 

「な、な、なんで……」

 

 其処に写っていたのは原作に出てきた無人機の姿ではなく、俺がよく知っている機体、いや“俺の前世”でよく知っている機体が写っていた。

 

「なんで風のランスターが……」




今回のお話は

四五六、楯無を餌付けする

無人機?いいえランスターです

世界の違いを知る

の三本でお送りしました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その12

ゲーム予約特典!!

ゲーム内に登場する各ヒロインが秘密の衣装を着た等身大ポスターをプレゼント。枚数には限りがありますのでご予約はお早めに。


 風のランスター。それは俺の“前世”で見たアニメに出てくる巨大ロボットの事である。こいつは背中についている一対の大型スラスターを使用した高速戦闘が得意でさらにそのスラスターを利用し竜巻を発生させて相手を攻撃する事が出来る。

 

 アニメでは最初に出てきてアニメの主人公を追い詰める物のあっけなく倒されてしまったが、このランスターの性能がもしアニメと同じだったとしたら、一夏と鳳さんのペアではまずいかもしれない。

 2人とも接近戦を中心とした戦い方をするのにランスターも接近戦を得意としている。さらにランスターはスラスターを利用して強風を相手に向けて放つ事ができるのだが、これが一番厄介なのだ。2人が戦う場所が制限の無い大空ならまだしもアリーナ内と言う限られた空間で、強風を放たれた場合乱気流の中を飛行するような事になるのだ。

 

 さらに、ランスターの最強攻撃は強風を集めて巨大な竜巻を作り相手にぶつける事によりズタボロに引き裂くのだ。

 その様な攻撃を2人が受けたら間違いなく専用機は大破。中の2人も唯ではすまない。どうする。今はまだランスターと一夏達は互いににらみ合っているが、何時までこの状態が続くかは分からない。

 

 ……まだ様子見だな。このランスターがアニメと同じ性能を持っている、と決まったわけではないからな。

 

 こんな時、“前世”で見ていた二次創作のオリ主ならすぐさまアリーナ内に突入して敵を倒すんだろうが、俺には出来ない。

 「八卦龍」という強力な力を持っているのに、俺はあの中に入っていく事が出来ない。もし俺が「八卦龍」を持っていることがばれたら、きっと以前俺が予想していた事が実現するだろう。

 頭の中でどうしてもその事がちらつき、後一歩が踏み出せない。ハハッ、アレだけ原作介入だ、チート無双だって考えていたのにいざ事が起きたらしり込みしてしまう。

 

 

 

 ……俺は、主人公(ヒーロー)には成れないのか。

 

 

 

 アリーナ内

 

 

 

「一夏、あんたはピットに逃げなさい」

 

「な、鈴何言ってるんだ!!そんな事出来るわけないだろう!?」

 

「うるさい!!エネルギーが少ししかない素人がいたって邪魔なだけよ」

 

「でも!!」

 

「私は中国の代表候補生よ。あんたが逃げる時間と、応援が来るまでの時間ぐらい稼げるわよ」

 

 そういって一夏を逃がそうとする鈴。その時2人に相手から通信が入った。

 

『残念だが、そうはさせない』

 

「相手からの通信!?」

 

『私には織斑一夏の持つISコアの奪取が命じられている』

 

「俺のISコアの奪取!?いったい誰に」

 

『貴様が知る必要は無い。なぜなら貴様はここで私に倒されるからだ!!』

 

 其処まで言って相手が動き出す。

 

「一夏はやらせない!!」

 

『邪魔だ!!』

 

 鈴の専用機「甲龍」から不可視の衝撃波が放たれる、が

 

『遅い!!我が風のランスターにその様な攻撃は届かない!!』

 

 不可視であるはずの衝撃波をまるで見えているかのように回避し、接近してくる。

 

『風のランスターの攻撃、受けてみよ!!ボーンフーン!!』

 

 両肩から強烈な風が吹き出し、鈴を襲う。

 

「こ、れ、ぐらいぃぃーーー」

 

 鈴は「甲龍」を限界まで機動させギリギリで避けて見せたものの

 

『風のランスター、出力全開』

 

 避けた先に最大出力で加速したランスターが待ち受けていた。

 

「きゃぁぁぁぁぁーーーーー」

 

「りーーーん!!」

 

 最高速度での体当たりの直撃によりアリーナの壁際まで吹き飛ばされISの絶対防御が発動し、鈴は無事だったものの「甲龍」は待機状態になってしまった。

 

「クソ!!よくも鈴を!!」

 

 怒りに任せ残りのエネルギーのことも忘れ、ランスターに向かう一夏。だが

 

『その様な単純な軌道では風は捕らえられん』

 

 一夏の攻撃を流れるような動作でかわしていくランスター。

 

「当たれ、当たれーーー!!」

 

 闇雲に攻撃する一夏。

 

『……』

 

 それをかわし続けるランスター。そして、元から少なかった一夏のエネルギーが切れる。

 

「しまっ!!」

 

『無様な……』

 

 動けなくなった一夏の首を掴み、吊り上げる。

 

「ぐっ……はな、せ」

 

『織斑一夏、貴様に怨みはないが、我らが悲願を達成するため貴様のISコアを奪わせていただく』

 

 ランスターが空いている手で一夏からISコアを奪おうとしたその時

 

 

 

             「Jカイザー、ファイヤー!!」

 

 

 

 アリーナを覆っているシールドから爆音が響き、その音にランスターが振り向いた瞬間ランスターに衝撃が走る。

 

『何!!』

 

 衝撃で一夏を手放してしまい、地面に落下する一夏。それを受け止める謎の機体。

 

『何奴!!』

 

 一夏を受け止め悠然と佇む謎の機体。それを睨みつけるランスター。

 

 戦いはまだ始まったばかりである。




ばれた時のリスクを考え、今の日々の事を思うと後一歩が踏み出せない四五六

だが、一夏の危機を見て遂にその一歩を踏み出した

次回、「現れた謎の機体、その名は!?」

君は八卦の輝きを見る


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その13

戦闘描写はキツイ。

四五六君の戦う理由を考える。


 アリーナ内外は異様な雰囲気に包まれていた。

 

 突如としてアリーナのシールドをぶち抜き侵入してきた「風のランスター」と名乗る謎の機体。そのランスターになすすべも無く撃破される一夏と鳳。

 そしてランスターは一夏のISコアの奪取を目的としているようで、力尽きた一夏からISコアを奪おうとした時、再びアリーナに衝撃が走り、その衝撃のせいでランスターの手から離れる一夏。

 空中から落下する一夏を受け止めたのは、ランスターでも、鳳さんでもなく、白い装甲に赤いラインの入った全身装甲(フルスキン)の機体だった。

 

『……何物だ、貴様は』

 

「……」

 

 ランスターの問に無言で返す全身装甲(フルスキン)の機体。徐にその機体はランスターに背を向けて移動し始めた。

 

『貴様!何所へ行こうとっ』

 

 ランスターが追撃をしようとした時、行く手を阻むように薄く発光する黄色い球体が八つ出現しランスターに攻撃を仕掛けた。

 

『くっ……何だこれは』

 

 突如出現した八つの球体はランスターを取り囲み、四方からビームによる攻撃を仕掛け始めた。

 

『ええい、邪魔をするな!!』

 

 振り払おうと近づこうとしてもまるで行動を読んでいるかのごとく巧みに移動し回避し、そして攻撃を始める。そして、その間に全身装甲(フルスキン)の機体は一夏を鳳さんが倒れているところまで運んでいた。

 

「っ……お前は、いったい?」

 

「……」

 

 一夏の問にも無言で返し、一夏を地面に降ろした後背を向けてランスターの方に向かう。一夏は動けない体でその後ろ姿を見ていることしか出来なかった。

 

『貴様!!……何故私の邪魔をする』

 

 ランスターが声を荒げて問いただす。

 

「……」

 

 だが、その怒りに満ちた声を聞いてなお無言でいつづける。

 

『……ならば貴様を倒してからISコアを頂くとしよう』

 

 ランスターと全身装甲(フルスキン)の機体の戦いが始る。

 

『うぉぉぉぉーーーー!!』

 

 雄たけびを上げながら高速で移動しながらボーンフーンを放ち攻撃するランスター。それを巧みにかわし避けきらない時は球体の一つを前に出し防御させ、その間に回避し反撃と言わんばかりに他の球体からビームを放ち攻撃する。

 

(速い!!我が風のランスターに劣らぬ速さ。だが、負けられぬ。負けてなる物か!!)

 

 お互いに高速で移動し攻撃し、回避し、防ぐ。だが、その均衡も崩れ始める。ランスターはボーンフーンで攻撃するがその攻撃よりも相手の八つの球体による攻撃の方が手数が多く、避け切れなかった攻撃により全身の装甲が少しずつ削り取られ段々と機動力が落ちていく。

 

 対して相手はボーンフーンの直撃こそしない物の掠りはしているのにその装甲に傷一つ見当たらない。さらに八つの球体を使用した攻防一体の戦い方にランスターは押されていく。

 

『くっ……貴様は言ったい何者なんだ!?』

 

 少しずつ削られていく装甲を見て苛立つように言い放つ。

 

『我々にはやり遂げなければいけない使命があるのだ!!貴様にその邪魔をする資格があるというのか!!』

 

 其処まで聞いて初めて相手からの反応があった。

 

「……使命?」

 

『そうだ!!我が命を掛けてもやり遂げなければならない使命だ!!』

 

「命を掛けて……」

 

『貴様には有るのか、自らの命を掛けてまで果すべき使命が!!無いのならば今すぐに其処を退け!!』

 

 その言葉に気おされたのか戦闘中にも関わらず動きを止めてしまう。さらに動きを止めてしまった場所が悪かった。

 

『その位置ではこの攻撃、避けられまい!!』

 

 そう、動きを止めた後ろには未だ動きがとれない一夏と鳳さんが居たのだ。

 

「!!」

 

『意思も、信念も、果すべき使命もなく戦場に出てきた己を呪うがいい!!』

 

 両手を広げ、背中のスラスターを最大稼動させて解き放つ“風”のランスターの最大攻撃!!

 

『受けよ、デット・ロン・フゥゥーーーン』

 

 胸部に風と言う漢字が浮かび上がると同時に背中のスラスターから複数の烈風が放たれそれは一つに纏り巨大な竜巻となって相手を襲う。

 

「っ!!」

 

「うわぁ!!」

 

「きゃああ!!」

 

 巨大な竜巻に飲み込まれ姿が見えなる相手を見て勝利を確信するランスター。

 

『……何物かは知らぬが、直撃を受けては耐えられまい』

 

 いまだ舞い上げられた土煙によって相手がどうなったかは確認が出来ないが自身が持つ最強の攻撃が直撃したのを見て気を抜いてしまった。

 だから、土煙の中から放たれる攻撃を避け切れなかった。

 

『が、あぁぁぁ!!』

 

 放たれた攻撃に、直前で気が付き回避しようとしたのだが避けきれず右半身を削り取られるランスター。その削り取られた部分からは人ではなく機械部品が見え隠れしていた。

 

『ガガ、な、ゼ……直撃、しタハズ……』

 

 土煙から現れたのは自身の周囲に七つの球体を浮かべ、胸の前に巨大な砲塔を構え、無傷でいる相手の姿だった。

 

『バ…な、無傷、ダと……』

 

 自身が放った最強の攻撃を直撃させたはずなのに無傷でいる相手の姿に混乱するランスター。

 

「……俺には、意思も信念も果すべき使命も無い」

 

『!!なら、バ、何故邪魔ヲする!!』

 

「だけど、守るべき思いはある!!だからお前は此処で消え果ろ!!チャージ!!」

 

「チャーじ、などサセぬ!!」

 

 片方になったスラスターを起動させ相手に向かうランスター。だが

 

「Jカイザー、ファイヤーーーー!!」

 

 相手の攻撃の方が早く光に包まれるランスター。

 

『お、おオオおぉぉォォォーーーーーーーー!!』

 

 雄たけびを上げながら、光に飲み込まれながらも前進を続けるランスター。

 

(我が君よ、申し訳、ありませ……)

 

 光の柱はランスターを飲み込み、アリーナのシールドを吹き飛ばし、空の雲すら突き抜けそして消えた。

 

「……」

 

 誰も彼も、何も話すことが出来ない。戦いを見ていた生徒教師陣。そして一番まじかで見ていた一夏や鳳さんも……

 その後、ランスターを消し飛ばした謎の機体は穴が開いたアリーナのシールドから離脱しその行方を暗ました。捜索隊が結成されるも一切の手がかりは無く、あの機体に関する情報は一切得られなかった。

 一夏と鳳さんはすぐさま医務室に運ばれて検査を受けるもお互い酷い怪我は無く、共に数日間の安静が言われただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝様。ランスターが倒されました」

 

「……コアの回収は?」

 

「残念ながら……」

 

「そ、うか……」

 

「……」

 

「……しばらくの間織斑一夏のISコアの奪取は止めにする」

 

「帝様!!」

 

「騒ぐな、ランスターが倒されたのだ。いかに他の機体に比べ完成していたとは言えやはり未完成のまま差し向けたのが間違いだったのだ」

 

「……」

 

「ならば今することは他の機体の完成度を上げるしか有るまい」

 

「分かりました。早急に仕上げて見せます」

 

「うむ」

 

「後ランスターを倒したあの機体の事ですが」

 

「あれについても情報を集めよ。ランスターを倒したあの機体……我らの悲願の最大の障害になるだろう」

 

「全力を挙げて集めます」

 

「うむ」

 

「では失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我らが鉄鋼龍の悲願、必ずや成し遂げて見せる!!」




カッコいいランスターを書いた結果がこれだよ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その14

ちょっとグロい表現が出てきます。


 どうも、先日この世界で始めて「八卦龍」を使った実戦を体験した四五六です。

 初めての実戦。オルコットさんとしたふざけた試合ではなく、本気での戦い。……恐かった。本当に恐かった。

 MIKUによる戦闘補助が無かったら、「八卦龍」と言う規格外の機体じゃなかったら、きっと俺はあの時、倒されていた。いや下手をしたら死んでいたかもしれなかった。

 ならなんであの戦いに割って入ったのか、それはあのままだったら一夏からISコアが奪われていたからだ。

 

 一夏からISコアが奪われる。それはこの先の話の展開が分からなくなってしまうから俺はあの戦いに割って入ったんだ。

 けど後から思い直したら、その考えこそこの世界で生きている人間を俺は唯のキャラクターとしてしか見ていない、という事だった。

 俺はこの世界の人間はすでに小説のキャラクターではないと、実際に生きている人間だと、意識していたのに、結局心の何所かで俺は小説のキャラクターというメガネ越しに見ていた、と言う事だ。

 だから、一夏からISコアが奪われたらこの先の展開が分からなくなる、と言う勝手な理由であの戦いに入り込み、ランスターを倒した。

 本当に、俺がこの世界を実際の物と考えていたら、俺があの戦いに入っていく理由など無い。「八卦龍」の中の情報が流れ出てしまったら、本当に世界大戦の引き金になるかもしれないんだ。

 

 なのになのに、俺は、俺は……

 

「四五六君、大丈夫?」

 

「ゴホッ……だ、大丈夫だよ。かんざ、ゴホッゴホッ」

 

「無理しないで。風邪引いてるんだから」

 

「……ごめん」

 

 どうやら風邪のせいで上手く考えられないようだ。

 風邪を引いたのはあの戦いの後、学園から離脱して海中に飛び込み結構な深さまで潜り其処から少しづつゆっくりと地面沿いに上がって行きあと数十メートルのところで「八卦龍」を解除してISスーツで泳ぎ海面から出て誰にも見つからないようにこっそりと隠れながら移動し部屋に入り着替えて、戦いの精神面での疲労とまだ4月なのに数十メートルとは言え冷たい海水の中を泳いで移動し、その後も部屋に戻るまでぬれたままで移動したせいで精神、身体共に疲労したせいで風邪を引いたようだ。

 「八卦龍」を装備したまま海面から出たら良いじゃないかと思ったのだが「八卦龍」意外とでかいから目立つんだよね。さらに学園近くでは捜索隊が飛び回っていたので装備したままでは目立つし海面から出てすぐに移動するにはISスーツのままの方がよかったんだよね。

 ちなみに俺のISスーツは一夏ほぼ同じモノなので胸と越しまわり以外は露出してるんだよね。だから水中は寒かった。

 

「ごめんね、簪さん。お弁当作れなくて」

 

「ううん。無理しなくて良いから。だから今日はゆっくり休んで早くよくなってね」

 

「ありがと……じゃあちょっと休ませて貰うね」

 

「おやすみ、四五六君」

 

 風邪引いた俺に優しくしてくれる簪さん。……でもその優しさが今の俺には辛い。

 

「……ん、あ?」

 

「あら、起こしちゃったかしら」

 

「楯無、さん?」

 

 ぼやけて見える視界には心配そうな顔をした楯無さんの姿が。

 

「四五六君が風邪を引いたって聞いたからお見舞いに来たのよ」

 

「そうで、ゴホッゴホッ」

 

「ダメよ、無理しちゃ」

 

「すみません」

 

 体を起こそうとしたが力が入らず倒れこむ。

 

「ゼリー持ってきたけど食べれる?」

 

「……すこしだけなら」

 

 お見舞いの品であろう数種類のゼリーのなかから一つを取りだしてスプーンですくい口元に持ってくる。

 

「そう。じゃあ、あーんして?」

 

「……あーん」

 

 風邪を引いていて上手く思考が回らないせいか楯無さんの行動に素直に従う俺。

 

「……フフ。子供の世話をしてるみたい」

 

「……」

 

 ちょっと恥ずかしくてそっぽを向く俺。

 

「拗ねない、拗ねない」

 

「……拗ねてないです」

 

「フフ」

 

 そうやってゆっくりと時間を掛けてゼリーを食べ終えてからしばらくの間無言の時間が過ぎる。でもその時間は穏やかだった。

 

「そろそろ、私は戻るわね」

 

「今日は、ありがとうございました」

 

「ううん、いいのよ。普段のお礼よ」

 

「そう、ですか」

 

「そうよ。じゃあお大事にね」

 

 楯無さんが部屋から出て行って一人になり、再び眠りに尽く俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

 俺は気が付くと廃墟に立っていた。

 

「なんで、廃墟に……」

 

 だが、この廃墟はどこかで見たような……

 

「……これ、は」

 

 廃墟の中に埋もれている廃材の中に見覚えのあるものを見つける。

 

「これはIS学園の……まさ、か」

 

 まさかと思い、あたりの廃材を見て回る。

 

「やっぱり、此処はIS学園……」

 

 そう。廃墟だと思っていたのは変わり果てたIS学園だった。

 

「っ!!……そうだ、皆は」

 

 その場所から走り出し、アリーナや教室があった場所を探すも何所もかしこもボロボロになっていた。そして最後に寮があった場所に来て、俺は見た。見てしまった。

 

「あ、あぁぁ」

 

 其処には血まみれで倒れ、体中をズタボロに引き裂かれた簪さんの姿が……

 

「うわぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 ベットから跳ね起き床に転げ落ちる。

 

「四五六君、大丈夫!?」

 

 俺の叫び声に起きた簪さんが俺の顔を覗き込む。その顔は俺には血まみれに見えた。

 

「ヒィ!!」

 

 それに驚き、恐怖し、無様に這いつくばって部屋の隅で小さくなる俺。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

 顔を両手で抱え込みひたすら謝り続ける俺。

 

「……四五六君」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

「……大丈夫、大丈夫だよ」

 

 かつて屋上で抱きしめてもらったように優しく、抱きしめる簪さん。

 

「大丈夫、此処に四五六君を傷つける人はいないから……」

 

「あ、うぅ……」

 

「大丈夫、私がいるから、安心して、ね?」

 

「ごめん、なさ……」

 

 簪さんに抱きしめられ、それに安心したのか気を失うように眠りに尽く俺。

 

「大丈夫、大丈夫だからね、四五六君」




もうヤダ。書いてる内にだんだんと話が暗くなってくる。

このままだと四五六が簪さんに依存しそうだよ。誰得だよ、オリ主のヤンデレ化って。しかも男。

誰か俺にポジティブな発想を!!


没ネタ

ゼリーを食べ終えた後の話

「さて、四五六君どう?まだ食べれる?」

「いえ、もう良いです」

「そう……って四五六君のパジャマ、汗で湿ってるわね」

「そう、ですか?」

「そうよ……そうね。着替えましょうか」

「え?」

 其処まで聞いたあと気が付いたら上着を脱がされ上半身を温かい濡れタオルで拭かれていた。

「シャワーはまだ一人じゃ無理そうだからタオルで我慢してね」

「は、い……」

「でも、私と一緒だったら入れるかもね?」

 楯無さんは冗談で言ったつもりだったのだろうが今の俺は風邪で意識が朦朧としていたのだ。つまり

「じゃあ、お願いします」

「え?」

「しゃわー、あびたいです」

「いえ、ちょっと四五六君」

「たてなしさん、おねがいします」

「え、いや、ちょっと……」
此処まで書いてこの後シャワーに入れるかどうかであたふたしている楯無さんに授業から帰ってきた簪さんと鉢合わせする、そんな感じに書こうとしてそのままBADENDにしかならなくなったので止めた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 その4

 今私は風邪で寝込んでいる四五六君の看病をしています。

 四五六君は先日から風邪をこじらせてしまったようで、同室の私が看病をしています。彼がベットで寝ている様子を見ながら私は、昨日の事を思い返していた。

 先日行なわれたクラス代表戦は謎の機体の乱入で中止となった。私は目的としていたデータ収集が出来たからよかったから別にいいのだけど。

 

 私が部屋に帰ってきたときには珍しく、すでに四五六君はベットの上で寝ていた。いつもならもう少し遅くまで起きているのに。

 次の日、私は朝早くに目が覚めた。最近の私は四五六君が起きる時と同じぐらいに起きるようになってしまった。何故か?それは彼が作るお弁当の中身の匂いで自然と起きるようになってしまったからだ。……何かもう完全に餌付けされているのは気にしたら負けなのだろうか?

 

 そんな風に思っていたら気が付いた。いつもならすでにこの時間には四五六君が何かしら料理をしているのに今日は何も作っていない。気になって隣のベット覗いてみたら、四五六君は赤い顔をして呼吸を荒げていた。

 慌てて、四五六君のおでこに手を当ててみたら通常より熱があり、風邪だと分かった。すぐに私はタオルを濡らし、彼のおでこに当てた。……こんな時にどうすれば良いか、分からない私が無性に悲しかった。

 

 その後四五六君の担任の先生に風邪を引いているので授業に出れないと連絡をして私も看病をするといって授業を休ませてもらった。

 そんな風に連絡をしていたら四五六君が気が付いたようだ。

 

「ゴホッゴホッ……簪さん?」

 

「四五六君大丈夫?何処か辛いところはある?」

 

「辛いところは無い、けど……あっお弁当つくらなっゴホッゴホッ」

 

「無理しないで。四五六君風邪引いてるんだよ」

 

「か、ぜ?」

 

「そう風邪。だから今日はゆっくりとしている事。分かった?」

 

 そうやって私は四五六君に言い聞かせて四五六君に寝てもらった。しばらくは四五六君が寝付けるまで一緒にいて完全に寝付いたら私はそっと部屋から出た。

 向かった先は医務室。そこで担当の先生に風邪を引いた四五六君の看病の仕方を聞きに行ったのだ。何故か看病の仕方のほかに弱った時の男性の落し方や好感度を持たれる看病のしかたを熱心に教わらされた。……べ、べつに四五六君にするわけじゃないんだからね。

 部屋に戻ってきたとき、四五六君のベットの隣にゼリーの詰め合わせが置いてあった。どうやら私がいない間に誰かがお見舞いに来たようだ。誰が来たんだろう?本音かな。

 そしてしばらくのあいだ私は彼が寝ている横で先日のクラス代表戦で得たデータとあの謎の機体のデータを見ながら“この子”に使えるデータは無いかと調べていたら、四五六君の呻き声が聞こえてきた。

 振り向き、四五六君を見たとき四五六君は顔中に玉のような汗をかき、何かに怯えるような顔で唸っていた。そして

 

「うわぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 恐怖で怯えたような悲鳴を上げてベットから跳ね起きた。

 私は慌てて「四五六君、大丈夫!?」と駆け寄り顔を覗き込んだら、四五六君は顔をすくませ私から逃げるように部屋の隅までいってそこで両手で頭を抱えこみ小さい声でひたすらに「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」と繰り返した。

 そんな姿を見た私は何時の日かしたように四五六君を抱きしめた。

 

「……四五六君」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

「……大丈夫、大丈夫だよ。此処に四五六君を傷つける人はいないから……」

 

「あ、うぅ……」

 

「大丈夫、私がいるから、安心して、ね?」

 

「ごめん、なさ……」

 

「大丈夫、大丈夫だからね、四五六君」

 

 四五六君が落ち着けるように優しく静かに語りかけるように話しかけたおかげか四五六君は気を失うように再び眠りに着いた。

 彼がどんな夢を見たのかは分からない。でもアレだけ取り乱すほどの夢のことだ。私には想像がつかないほどの恐い夢だったのだろう。

 四五六君が再び悪夢にうなされないように私は優しく、けれども力強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抱きしめた後、四五六君が手を離してくれなくて仕方がないから私のベットに運んでその日は一緒に寝る事にした。

 ……こ、これは四五六君の為にしたのであってべ、べつにやましい事じゃないんだから!!




最後が書きたくてやった。後悔も反省もしない。ただもっと甘くできなかった事が悔やまれる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 その4の続き

練乳、シロップ、蜂蜜、黒糖等など甘い物をかけて見た。でも甘くならない気がするのは作者の(さいのう)がヘボイせいか?

大事な事や秘密にしておきたいことほどちょっとしたことでばれる物です。


 更識簪、私はこれまでの人生の中で一番緊張しています。

 

 何故か?それは今私のベットの中でルームメイトである四五六君と一緒に寝ているからです!!

 

 何故こうなったかと言うと、四五六君が悪夢に魘されそれにより叫び声を上げながら跳ね起きそのまま部屋の隅で震えながら謝罪の言葉を繰り返したのを見て私は四五六君を優しく抱きしめて落ち着かせたのです。

 そうしたら、安心したのか気を失うように再び眠りに着く四五六君。其処まではよかったのだけれどその後が問題だった。

 

 四五六君、手を離してくれないの。

 

 ガッチリと私の服を掴んで離さない四五六君。さっきの事を思うと振り払うのも気が引け、しょうがなく私は四五六君を私のベットまで運び、一緒に寝る事にしたの。……これが間違いだった。

 最初は、別によかったの。さっきの魘されようが嘘のように安心しきった表情で寝ている四五六君の顔を見て何処か嬉しい気持ちがしたから。

 

(フフ。こうして見てると子供みたい。それにこうやって安心しきった表情の四五六君って可愛いな。男の子なのに……男の子?)

 

 私が四五六君が男の子という事を思い出した瞬間、私の顔は一瞬にして真っ赤になった。

 

(え……ちょっと待って、え?私、自分から男の子をベットに入れたの!?)

 

 そう考えてさらに顔が赤くなる私。

 

(う、ううん。大丈夫。これはしょうがない事。だって四五六君が手を離してくれないからっ…ひゃう)

 

 自分が取った行動に対して納得させようとしていたら四五六君が抱きついてきた。しかも私の胸にか、顔を押し付けてきた!!

 

(?!$&*!!!!)

 

 声にならない悲鳴を上げる私。さらに四五六君は顔を押し付けた状態で匂いをかぐように大きく呼吸をし始めた。

 

(え、な、何してるの四五六君!?私まだ今日はシャワー浴びてないのに!!)

 

 もはやパニック状態に陥る私。そんな私の心情なんてお構いなしにさらに呼吸を続ける四五六君。その表情は安心しきった表情だった。

 

(……へぅ)

 

 パニック状態が続いたせいで私の頭は処理落ちして気を失った。

 

「…………はっ」

 

 気が付いたとき、日は暮れていてすでに夜だった。

 

「……もう、こんな時間なんだ。そうだ四五六君は?」

 

 四五六君は私の隣で穏やかな表情で寝ていた。私の手を握って。

 

「フフ。やっぱり子供みたい」

 

 そう思うとさっきの行動は小さな子供が母親に抱きつくような行動だったのかな?

 

「……汗、かいちゃったな。シャワー浴びよ」

 

 握っている手をゆっくりと離し、シャワーを浴びに行く。手を離した時、ちょっと四五六君が嫌そうな顔をしたけど我慢してもらおう。……汗臭いままは嫌だから。

 

「……フゥ。私ってそんなに匂うかな?」

 

 着替える前に四五六君の行動を思い出してしまい、なんとなく服の匂いをかいでしまった。

 

「……あ、四五六君起きたの?」

 

「簪さん、おはようです」

 

「どう、まだ熱っぽい?」

 

「いえ、だいぶよくなりました」

 

「そっか。よかった」

 

「……その、ですね」

 

「ん?なにかな」

 

 何かとても気まずい表情をする四五六君。

 

「………どうして俺は簪さんのベットで寝てるのかな?」

 

「……覚えてない?」

 

「あいにく……」

 

 どうやらあの事は覚えていないようだ。私と一緒に寝たって言うのは恥ずかしいから、誤魔化して置こう。

 

「四五六君、私が食堂でご飯を食べている時にたぶんトイレに行ってその後私のベットと間違えたんじゃないかな?」

 

「……それは、失礼しました」

 

 深々と頭を下げる四五六君。

 

「ううん。気にしてないから。風邪引いてたんだからしょうがないよ」

 

「でも……」

 

「悪いと思ってるなら早く風邪を治す事。いい?」

 

「はい」

 

 そんな姿を見て怒られて落ち込む子供見たいと思った事は秘密だ。

 

「……そのシャワー浴びたいんだけどいいかな」

 

「いいよ。私はもう入ったから。でも大丈夫?」

 

「うん。だいぶよくなったから。それに汗を流すだけだからすぐ出るよ」

 

 着替えを持って浴室に行く四五六君。……その間にシーツ変えておこう。

 

「ふう、さっぱりした」

 

「そう。よか、った……」

 

 浴槽から出てきた四五六君を見て言葉が止まる私。

 

「どうしたの、簪さん?」

 

 首を傾げる四五六君の目は“赤と青”の瞳になっていた……




配置が逆?いいんだよ。男があたふたするより女の子があたふたする方が良いだろう。


お見舞い・更識姉妹ルート編・その一

「四五六君調子はどうかな〜」

 日が暮れ仕事に目処が立った楯無。なのでふたたび四五六の調子を見に行く事に。

「……返事が無いって事は寝てるのかな」

 ドアをノックし、声をかけてみたが反応は無し。

「でも、四五六君は風邪引いてるし……」

 普段ならそこでとりあえず一度引くのだが四五六が風邪を引いているという事が気に掛かる。

「……はいっちゃおうか」

 後ろめたい気持ちを抑え進入した室内で見たものは……

「……か、んちゃん?」

「ね、姉さん……」

 其処で見たものは簪がベットの中で四五六を抱きしめているとこだった。

「……」

「……」

 お互い無言になる。

「……酷い、かんちゃん酷い。抜け駆けしないって言ったのに」

 ぽろぽろと涙をこぼし泣き始める楯無。

「ちが、姉さんこれは……」

 慌てて誤解を解こうとしたが

「かんちゃんのばかーーーー」

 そう叫びながら部屋から飛び出してしまった。

「姉さん……」


お見舞い・生徒会ルート編・その一


 楯無、本音、虚の三人は四五六のお見舞いに来た。

「四五六君大丈夫かしら……」

「愛しのごろーちゃんが心配?」

「そうよって本音!!」

「怒った〜」

 そんな風に話しながら四五六の部屋に到着し、ノックする。

「かんちゃん、いる〜?四五六君のお見舞いに来たんだけど」

「ね、姉さん!?ちょ、ま……」

 簪の返事も聞かずに入った部屋の中で見たものは

「……」ピキッ

「かんちゃんやる〜」

「これはこれは」

 簪が自分のベットのなかで四五六を抱きしめているとこだった。

「かんちゃん、どういう事かな?これは……」

 口調こそ穏やかだが目が笑っていない楯無。

「ヒュ〜ヒュ〜かんちゃんやる〜」

 冷やかす本音。

「不潔です……」

 そう言いながらも顔を少し赤くしながら言う虚。

「これは理由が有るの!!」

 必死に説明をする簪。

「そう、四五六くんがね……」

 一通りの説明を簪から聞き、考え込む楯無。

「ごろーちゃん、どんな夢見たんだろう」

 心配そうにする本音。

「悪夢ですか……」

 楯無と同じく考え込む虚。

「よし決めた。私も四五六君と一緒に寝るわ」

「……え?姉さん?」

「かんちゃんと私の2人一緒なら四五六君だって悪夢を見ないはず」

 有言実行と言わんばかりにベットに入り込む楯無。

「なら、空気を読める本音はクールに去るぜ」

 口元を袖で隠しにこやかに笑いながら部屋から出て行く本音。

「……IS学園の寮は完全防音せいとなっております。それとしばらくの間この部屋に人が近づかないように手配します」

 頬を赤く染めそんな事を言い放つ虚。

「本音!?虚!?」

「さあ、一緒に添い寝しましょう!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その15

甘さ控えめ(笑)


 ただいま絶賛ピンチの四五六です。何がピンチだって?……俺の目の色が簪さんにばれました。

 風邪を引いて気が緩んでいたせいでついうっかり黒のカラーコンタクトを外したまま浴槽から部屋の中に戻ってしまい、そこを簪さんに見られました。どうしよう?

 

「四五六君、その目って……」

 

「いや、そのこれは……」

 

 どうやって説明しよう?まさか中二臭い姿が嫌だから変装してました、なんて言えないからな〜。

 

「……別に四五六君が言いたくなかったら言わなくても良いよ?」

 

「……あ〜、そう言って貰えると助かります」

 

 ふぅ。どうやら深くは追求してこないようだ。助かった。

 

「その、簪さん。この事は他の人には秘密にしてもらえますか」

 

「秘密に?」

 

「ええ。俺、あんまりこの目の色って好きじゃないんですよ。だからあまり人に知られたくないっていうか……」

 

「分かった。この事は私の中にしまっておくね」

 

「……ありがとうございます」

 

 よかった。どうやら秘密にしてくれるようだ。……目の色が嫌いって言うのは本当だよ?まあ、今の自分の名前と似合わないって言うだけだけど。

 

「それじゃあ、俺はもう一眠りっ!!」

 

 そそくさと自分のベットに戻ろうとした時、急に足から力が抜けて崩れるように床に跪く。

 

「四五六君!?」

 

 簪さんが駆け寄ってくる。

 

「だ、大丈夫です。ちょっと気が抜けたようで」

 

「無理しないで。まだ治ってないんだから。」

 

 ベットまで肩を貸してくれる。

 

「っと。……すみません簪さん。迷惑掛けます」

 

「ううん。気にしないで。私がしたいからしてるんだから」

 

「そう、ですか……でもっ」

 

 其処まで言った直後、俺のお腹から大きな音が。

 

「……」

 

「……」

 

 顔が赤くなるのがよく分かる。

 

「……何か作ってくるね」

 

「……すみません」

 

 消えるような声で呟く。ベットにもぐりこみ掛け布団で顔を隠し恥ずかしがる。

 

(女性に腹の音を聞かれるとか、恥ずかしすぎる!!)

 

 しばらくの間、ベットの中で悶えているとなにやらいい香りが。

 

「出来たよ、四五六君」

 

 簪さんが作ってくれたのは卵粥だった。

 

「これぐらいしか出来なかったけど、いいかな」

 

「大丈夫だよ……美味しそう」

 

 早速食べようとしてスプーンを持とうとしたら何故か簪さんが持ち、そのままお粥を掬い

 

「四五六君、あーんして?」

 

 と、してきた。

 

「か、簪さん!?何をっ」

 

「?」

 

「いや、そんな不思議そうな顔をされても……」

 

 アレか!更識家ではこれがデフォルトなのか!?

 

「あーん、して」

 

 ちょっと不機嫌っぽくなった簪さんに気押されてそのまま一口食べる。

 

「……どう、かな?美味しい?」

 

「……塩が効きすぎてる、ご飯を茹で過ぎ、卵が硬すぎ」

 

「あぅ……」

 

「でも、俺が今まで食べてきた中で一番美味しいよ。ありがとう、簪さん」

 

 素直な感想と共に笑顔で答えたら、顔を真っ赤にして小さくあぅあぅ言いながらもスプーンでお粥を食べさせてくれる。

 

「ご馳走様でした」

 

「……お粗末様でした」

 

 お腹が減っていたのかすぐに食べ終えてしまいそのまま横になり目を瞑る。

 

「……ねえ、簪さん」

 

「何?四五六君」

 

「病気の時に、誰かがいてくれるって幸せだね」

 

「……え?」

 

 俺の言葉に動きが止まる簪さん。

 

「俺の家ってさ。両親が共働きしてて小さい頃から家で一人きりだったんだよ。だから、平日とかに風邪とか引くと家に一人っきりだったから、こうやって誰かに付きっ切りで看病してくれることって初めてでさ」

 

「……」

 

 実は俺と両親は仲が悪い。いや悪いって言うよりお互いにどう接していいか分からない、って言うほうが正しいのかな。

 俺は銀髪に赤と青のオッドアイなのに、両親共に黒髪黒目なのだ。まあ両親の親族には結構な数の外国人の血が混ざっているらしいので隔世遺伝とか言う奴でたまたま俺の髪と目の色がこうなった、とはお互い分かってはいるものの、やっぱり自分達と違う髪と目の色を持って生まれてきた俺に対して何処か拒絶するところがあったのだろう。

 さらに、俺は前世の記憶があるおかげで幼少の時から無駄に落ち着いていたせいもあり、両親の俺を見る目には怯えがあった。

 

「だから、今日は本当にありがとう」

 

 目を見つめ、素直に感謝の言葉を話す。

 

「……ううん。これぐらいならいつでもしてあげる。だから私が病気になったら付きっ切りで看病してくれる?」

 

「もちろん」

 

 そう返事をし、お互いに笑い合う。




積みゲーをする。小説も書く。どちらもこなさいといけないのが小説家の辛いところだ(笑)


嘘みたいだろ。これってIS(バトル物)の二次小説なんだぜ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その16

ストーリーを先に進めるか、それともイチャイチャ続けるか、どっちにしよう?


 先日、遂に簪さんにオッドアイがばれた四五六です。

 

 オッドアイがばれた後、簪さんから追求される事も無くいたって普通に接してくれたのがとてもありがたかったです。

 さて、俺自身の風邪も昨日で完全に治り、今日は朝から感謝の気持ちを込めて簪さんと、楯無さんのお弁当を作りました。で、それを2人に渡し、教室に向かおうとした所を織斑先生に捕まり、何故か職員室近くの生徒指導室につれてこられました。

 

「……あの、織斑先生?俺、何かしましたか」

 

「いや、別に説教をするために読んだのではない。ただ先日あった襲撃事件の事でちょっとな……」

 

「はぁ……」

 

 何か嫌な予感がするなぁ。まさかばれてないよな?

 

「本当は次の日にでもすぐにしたかったのだが、一二三が風邪を引いてしまったので今日まで延びたわけだ」

 

「それは、すみません」

 

「謝るな。病気では仕方が無いだろう……まあ、何で風邪を引くような事になったかは後で聞くとして、一二三。襲撃事件の時、貴様は何所にいた?」

 

「襲撃事件の時、ですか……」

 

「そうだ」

 

「えっと、あの日俺はアリーナの外にいました」

 

「アリーナの外に?」

 

「はい。俺、人ごみの中って嫌いなんですよ。それに周りが女性だけって言うのもきつくて……だから試合を見るだけなら外からでもモニターで見れるから外にいました」

 

「……それは間違いないな」

 

「はい」

 

 織斑先生にまっすぐに見つめられて、目を逸らさないように見つめる。此処で目を逸らしたらとてもまずい事になる。そう俺の厄介事センサーが告げている。

 

「そう、か。ならいい」

 

「……あの、何でそんな事を聞きに?」

 

「あの襲撃してきた機体の目的が一夏のISコアの奪取だったとはいえ男性適合者が襲われたのは事実。でだ、もう一人の男性適合者、つまり一二三貴様が今後襲われない、という事はありえない。との事で今後貴様は学校行事などの祭事の際には出来るだけ人目の着く場所、もしくは教員などの近くに要るように、と上の方から言われてな」

 

「はぁ」

 

「まあ、こんな事は言いたくは無いが一二三。貴様はたった二人しか居ない男性適合者だ。その2人にもしもの事が有ったらIS学園の面目は丸つぶれだ。だから今後少し不自由かもしれんがなるべく人目につくようしろ」

 

「……そうですか。分かりました」

 

「すまんな。こんな事はしたくはないのだが」

 

「いえ、俺自身がどういう立場なのかは分かってるつもりですから」

 

「そう、か……一夏も一二三のように自分の立場を理解してくれればいいのだが、ハァ……」

 

 憂鬱な表情でため息をつき少し頭を下げる織斑先生。

 

「ため息すると運が逃げますよ?」

 

「ため息もしたくなる。あの馬鹿は……」

 

 その後、何故か織斑先生の一夏に対する愚痴を聞くはめになった。まあ殆どが愚痴と言うか弟自慢だったが。……このブラコンが!!

 

「今、何か私に対して不名誉な事思わなかったか」

 

「い、いえ何も」

 

 恐いよ、織斑先生。

 

「っと、話がそれたな。それでだ、一二三。貴様に専用機を持たせようという動きがある。」

 

「専用機、ですか」

 

「そうだ。まあ、すぐに作る、と言うわけではないが近い内に本格的にそういう話が来るはずだ」

 

「専用機か〜。う〜ん」

 

「どうした?」

 

「別に専用機じゃなくてもラファール・リヴァイヴを一機貸してくれるだけで良いんですけどね」

 

「どうしてだ?自分の専用機が欲しくないのか」

 

 少し不思議そうにたずねる織斑先生。

 

「一夏の専用機を見てるとちょっと……」

 

「……あれは別物と考えろ」

 

 ちょっと引きつった顔をする織斑先生。でも俺に専用機は要らないんだよな。もう“持ってるし”

 

「まだしばらく先の話だ。一応考えておけ」

 

「はい」

 

 

 

「という話がありまして」

 

「そっか、四五六君にも専用機をね〜」

 

 お昼時、秘密の場所で楯無さんと食事中、今朝あったことを話してみる。

 

「俺としては他の専用機のように何か特殊な装備とかは要らないからラファール・リヴァイヴ見たいに沢山の火器を使用できる機体で十分なんですよ」

 

 特殊兵装なんて「八卦球」でおなか一杯です。

 

「そうかしら?特殊装備っていいじゃない」

 

「……それで一夏見たいな物を付けられてもね〜」

 

「ああ〜」

 

 共に苦笑いをする。

 

「っとそういえば、楯無さん」

 

「なに?四五六君」

 

「この前はお見舞い、ありがとうございます」

 

 頭を下げる。

 

「いいのよ別に。私がしたくてしたんだから。それに四五六君にはお世話になってるんだから」

 

 そういって俺が作ったお弁当を持ち上げる楯無さん。

 

「まあ、それでも一応は」

 

「律儀ね〜」

 

「性分ですから」

 

 その後は他愛も無い話をして解散となった。

 

「……四五六君の専用機、ね」

 

 

 

 

「専用機?四五六君に?」

 

「そう。この前の襲撃事件のせいで自衛が出来るようにって」

 

 一日の授業が終わり自室で簪さんと話をする。

 

「……四五六君は2人しかいない男性適合者だもんね」

 

「そうなんだけど……専用機か〜」

 

「欲しくないの?」

 

「正直、専用機貰うくらいならラファール・リヴァイヴ借りたいです」

 

「何でラファール・リヴァイヴなの?量産機より専用機のほうが性能は良いよ」

 

「性能はよくても、どこぞのマッドな科学者が作った試作兵器が積まれたような専用機が来るような気がして嫌なんだよね。ほら、一夏見たいに」

 

「ああ〜」

 

 苦笑いをする簪さん。

 

「まあ、まだ先の話しだしどうなるかは分からないけどね」

 

「そうだね……そうだ、四五六君」

 

「なに簪さん?」

 

 ちょっと頬を染めもじもじし始める簪さん。

 

「その、ね……その、私に料理、教えてくれないかな?」

 

「料理を?」

 

「うん。私もその、四五六君みたいに料理作れるようになりたいから」

 

「そっか。分かった。俺でよければ教えるよ」

 

「ありがとう、四五六君」

 

 俺が教える、と言ったら笑顔になる簪さん。花が咲く笑顔、とはこの事を言うのかな?

 

「じゃあ、明日からで良いかな」

 

「うん。お願いします」

 

「俺は結構スパルタだよ。ついて来られるかな?」

 

「……お手柔らかにね」




さて、次回の話は四五六と簪が料理の食材を買いに出かける、と言う名目のデートにするか、それともさっさと話を進めてシャル&ラウラを出すか。

てか、最近気が付いたんだけど四五六とラウラって見た目が被ってる気がする。どちらも銀髪でオッドアイとか。


おまけ

食事の最後、別れる前に楯無さんに話しかけられる。

「そうだ四五六君」

「はい?何ですか」

「ないとは思うけど……風邪引いてる時かんちゃんに何かしなかったわよね?」

 目を細め聞いて来る楯無さん。

「いやいやいや、風邪引いてるのに何をしろと?」

「ほら、動けないから体を拭いてとか、手が動かないから食べさせてとかしてないわよね」

「ハッハッハ、してな……あ」

「あ?」

「……それでは失礼します」

 後ろを向き全速力で走り去る。風になれ俺!!

「な、ちょっと待ちなさい!!かんちゃんに何したの!!」

 その後、授業開始時間まで恐怖の鬼ごっこが続いた。

「かんちゃんに何をしたーーーーーーーーーー!!!!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

閑話 クリスマスイブ

思いついただけの話。本編とは一切関係が有りません。
だから自由に書ける!!


 ただいまIS学園の食堂でクラスの女子にケーキ作りを教えている四五六です。

 何故こうなったかと言うと、俺が簪さんと楯無さんにクリスマスケーキを作って食べてもらおうと考えていたのだが、考えている場所が悪かった。

 

 俺は簪さんと楯無さんには秘密にしようとして部屋ではなく教室で考えていたのだが、それがいけなかった。ついつい考え事に夢中になってしまいついうっかり一夏からの「四五六って料理上手だったけどケーキも作れるのか?」と言う質問に「出来るよ」と答えてしまったのが運の尽き。気が付いたらクラス中の女子に頼まれて(鬼気迫る勢いで)仕方が無く教える事に。

 

「えっとまずは俺が手本を見せながら作るので見ていてください」

 

 引き受けてしまったものはしょうがないので諦めてケーキを作る事に。ちなみに人数が多いので学校の食堂の設備を借りて作ります。

 で一つ一つ丁寧に作業をして見ている人にもわかりやすく説明しながら作っていきデコレーションが完成するところまでを一通やってみてからクラスの女子に向けたら、なんと言うかすごい唖然とした表情をしていた。

 

「……あの、何か分からなかった事でもあるかな?」

 

「ううん、そうじゃないけど一二三君って凄いんだね」

 

「そう?」

 

「そうだよ!!こんなケーキお店でしか見たことないよ」

 

 そうなのか?俺としては普通に作ったのだが……

 

「じゃあとりあえずこのケーキを食べてから実習を始めようか」

 

「食べていいの?」

 

「いいよ。残しておいてもしょうがないしね」

 

 そう言いながら俺は作ったケーキに合う紅茶の用意をし始めた。ちなみに最初から皆に食べてもらうように考えていたので作ったケーキは6号サイズ(直径約18cm)を5つほど作っており紅茶も合うのを最初のうちに用意しておいたのだ。

 

「じゃあ、いただきます」

 

 クラスの女子の皆が一口食べ、数秒後に全員撃沈した。

 

「……えっと口に合わなかったかな」

 

 以前もどこかで見たような女子の行動に頭を傾げながら聞いてみて返ってきた言葉は

 

「「「とっても美味しいです」」」

 

 というお褒めの言葉だったので一安心した。ちなみにこの時の女子一同の心の中の声はこんな感じ。

 

(((女性として負けた気がする)))

 

 その後はいつもならワイワイと喋りながら食事をしているのにこのときだけはカチャカチャと食器の音だけが響き食べる女子たちは皆なんか目が潤んでた。なんでだ?最後に食後の紅茶を出してまた撃沈していたがなんだったんだ?

 

 さて、食事が終ったところで実習に入る事に。

 

「其処はもっとしっかりと混ぜて」

 

「そうそう。ゆっくりと丁寧にね」

 

「うん。上出来上出来」

 

 こんな感じに全員に気を配りながらも的確なアドバイスをしていく俺。そうして数時間後には全員が大きな失敗も無く上手にケーキを作る事が出来た。

 その後皆にお礼を言われ、ついでに試食して感想を、とのことで一人一人に感想とアドバイスをしてお開きに。

 一口二口だけとは言えクラス全員分のケーキを食べるのはきつかった。

 

 みんなの試食が終った後俺は、生徒会室に向かった。

 

「失礼します。一年一組、一二三四五六ですが」

 

「四五六君?どうそ」

 

「失礼します」

 

 生徒会室に入った俺の目に入ったのはうず高く詰まれた書類をひたすら処理している楯無さんとその補助をしている虚さんの姿だった。

 

「いまちょっと手が離せないんだけど、何か急用かしら?」

 

「いえ、ケーキを持ってきたんですけど」

 

「ケーキ?」

 

 手を止め此方を向く楯無さん。

 

「日ごろのお礼とクリスマスという事でケーキを作って持ってきたんですけど……」

 

「……虚」

 

「このペースなら30分は取れるかと」

 

「ありがとう。じゃあ四五六君お願いね」

 

 すでに俺が持ってきたケーキに目が釘付けの楯無さん。

 

「分かりました」

 

「速くお願いね」

 

「……会長」

 

 笑顔で言う楯無さんを見てため息をつく虚さん。

 

「……ではどうぞ」

 

「いただきま〜す」

 

 切り分けたケーキをお皿に乗せ一緒に紅茶も出して食べてもらう。

 

「うん、四五六君が作ったケーキはおいしいわ〜」

 

「本当ですね、お嬢様」

 

「そう言って貰うと俺も嬉しいです」

 

 ニコニコと笑顔でケーキを食べる楯無さん。その笑顔を見て一言。

 

「普段の笑顔よりもこっちの笑顔の方が俺は好きですね」

 

「な!も、もう四五六君そういう事急に言うの禁止!!」

 

 顔を赤くしながらあたふたする楯無さん。

 

「…………すごく、いいです」

 

 そんな楯無さんの姿をうっとりとした表情で見ている虚さん。俺と目線が合った時、いい笑顔をしながらグッと親指を立てたので俺もグッと親指を立てておいた。

 

 その後俺と虚さんで楯無さんをからかったあと今度は寮長室に向かう。

 

「すみません。織斑先生居ますか?」

 

「……一二三か、何のようだ」

 

「ケーキを届けに来ました」

 

「……ケーキ?」

 

 不思議そうな顔で見てくる織斑先生。

 

「今日ケーキを作る機会があったので日ごろのお礼という事で」

 

「……そうか、すまないな一二三」

 

 渡したケーキを見る織斑先生の顔はいつものような凛々しい顔つきではなく優しい雰囲気の笑顔をしていた。

 

「……織斑先生」

 

「む、なんだ?」

 

「気になる人に今の笑顔見せたらイチコロですよ」

 

「なっ!!」

 

「では俺はこれで失礼します」

 

 俺の言葉に驚いている隙にその場を離れる俺。後ろからなにやら声が聞こえたが気にしない。

 

「ただいま」

 

「……おかえり、四五六君」

 

 何か作業をしていた簪さんが手を止め俺に向かって挨拶を返してくれた。

 

「?何か作ってるの」

 

「秘密。だから覗かないでね」

 

「わかったよ」

 

 何かいいにおいがしていて気になったがそういわれたからには見ることが出来ないので大人しく自分の机の上で自習をしていた。

 しばらくして、簪さんに声を掛けられる。

 

「四五六君、ちょっといいかな」

 

「なにかな」

 

 呼ばれて振り向き目に入ったのは

 

「ど、どうかな?似合うかな」

 

 真っ赤な顔をしながらミニスカサンタの服装をした簪さんがいた。

 

「……」

 

「な、何か言ってくれないと恥ずかしいよぅ」

 

 徐に右手を上げてグッと親指を上げ笑顔で言い放つ。

 

「とてもすばらしいです」

 

 俺の鼻から愛情がたれていた。

 

「うぅ……」

 

 その言葉にもじもじとし始める簪さん。グハッ!!簪さんのかわいさに吐血しそうだ。

 

「そ、そうだ!四五六君」

 

 話題を変えようと声を上げる簪さん。

 

「その、えっと、ケーキ作ってみたから食べよ」

 

「ケーキ?……分かった」

 

 そういって持ってきたのはちょっと粗が目立つけど美味しそうなケーキだった。

 

「その、四五六君……あ、あ〜ん」

 

 フォークにさしたケーキをこちらに向けて真っ赤な顔でそうしてくる簪さん。その姿だけでこっちは萌え死にそうです。

 

「ど、どうかな?」

 

 差し出されたケーキを食べるとちょっと不安そうに聞いてくる簪さん。

 

「ん、美味しいよ。とっても」

 

「よかった」

 

 安堵の表情を浮かべる簪さん。その後一緒に食べ合わせながら楽しく一夜を過ごした2人。

 次の日に自分達がした大胆な行動にベットの中で悶える2人が居たとか居ないとか

 

 

 

 

 

 後日、四五六が作ったケーキを食べて落ち込む簪さんを必死に慰める四五六の姿があった。




シングルベール、シングルベール、苦しみます〜
彼女とイチャイチャしてるリア充は爆発しろ!!四五六貴様もだ!!



おまけ

「ま、まったく一二三のやつめ」

 別れる直前に言われた言葉に動揺している間に逃げた四五六の事に文句を言っている織斑先生。

「何がイチコロです、だ。まったく……」

 そう言いながらも貰ったケーキを大事に持っているあたり本気ではないようだ。

「……ケーキ、か(最後に食べたのは何時だったかな……)」

 ふと自分が最後に食べたケーキの事を考える織斑先生。

「………………まあいい」

 最後に食べた頃の年代を思い出しとても複雑な表情をする。

「一二三の奴、どんなケーキを作ったのだ?」

 テーブルの上を片付けケーキの入った箱を開けてみると

「……わぁ」

 其処に入っていたのは美味しそうにデコレーションされた複数の一口ケーキとシンプルな見た目のショートケーキが入っていた。

「……」

 無言で一つ食べてみる。

「おいしい」

 その表情は最強のIS操縦者としてではなく、織斑千冬という一人の女性としての笑顔だった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その17

前話にて誤字で、ブラコンと書こうとしたところをシスコン、と書いてしまったのを指摘されて閃いてしまった、新規ルート。

心機一転、一夏ヒロインルート

織斑一夏が何故アレほどまでに鈍感なのかが明かされるルート
条件 NTRルート、誰得!?一夏ルートのグラフィックを100%にすること。


 先日、簪さんからのお願いで料理を教える事になった四五六です。

 

 料理を教える事はいいのですが、あいにく食材があまり無かったので休日に一緒に買いに出かける事にしました。その事をついうっかり楯無さんに話してしまい、殺されかけたのは別の話し。

 

 さて、当日になったのですが簪さんとは10時に駅前で集合、という事でしたのでただいま駅前に向かっております。

 

「さて、と。ここら辺だったはずなんだけど……」

 

 駅前で簪さんを探してあたりを見回すと、いました。少し離れた所の噴水の前にいました。

 

「おー……」

 

 声を掛けようとしたとき簪さんが此方に振り向き、その姿を見た俺はつい声が止まってしまいました。なぜならその姿はとても可愛く、綺麗だったからです。ああ、言葉で上手く表せれない自分の語彙のしょぼさが悲しすぎる。

 

 その姿を確認した後、自分の姿を見ました。顔はいつも通りに黒髪黒目黒縁メガネで服装は、一言で言えば地味、それ以外に言い表せない格好でした。

 

 これはまずい。このまま簪さんの前に行ったらいろいろな意味でまずい気がする。すぐさま其処を離れ簪さんに電話をしました。

 

「あ、簪さん」

 

「どうしたの?四五六君」

 

「もう待ち合わせの場所についちゃってるかな」

 

「うん。もうついてるけど」

 

 ちなみに今の時間は9時30分です。

 

「そっか。悪いけどもうちょっとだけ待っててもらえるかな。時間には間に合わせるから」

 

「分かった。大丈夫だよ。時間より速く着いちゃったのは私のほうだし」

 

「ごめんなさい。すぐ行くから」

 

「うん。待ってる」

 

 そうして携帯を切りすぐさま近くの服屋に入り込み、すぐさま新しい服を買いました。店員に似合うの?貴方みたいな人に、的な目で見られましたが気にせずに試着室を借りてそこでメガネを外し、カラーコンタクトを取り、色落しのスプレーで髪の色を銀色に戻し、今しがた買ったこの服に着替え、試着室をでます。

 出たとこでいかにも似合わない服装を笑ってやろうとしていた店員と出くわしましたが、店員は出てきた俺を見て呆然とした表情になってました。ざまぁ!!

 

 服屋を出て簪さんが待っている噴水のところまで向かうと、簪さんが複数の男性にナンパされてました。……ビキィ!!

 

「ねえねえ、良いだろう?俺たちと一緒にさ遊びに行こうぜ」

 

「そうそう。待ち合わせなんかほっといてさ〜」

 

「……結構です」

 

「そう言わないでさ〜」

 

 簪さんが嫌がっているのに手を掴もうとしたその手を掴む。

 

「其処までにして貰おうか。彼女は俺の待ち合わせの人なんでな」

 

「な!テメェなに、さま……」

 

 男達が見たのは銀髪に赤と青のオッドアイのとてもカッコいい男性でした。男から見ても美しいといえるほどの……

 

「簪さん、遅れてごめんね?」

 

「え、あ、うん」

 

「彼女は俺と待ち合わせしてたんだ。離れてもらえるかな」

 

「す、すみませんでした」

 

「すんません」

 

 慌てて離れていく男達。

 

「ごめんね。遅れたせいで不快な目に会わせちゃって」

 

「う、ううん。気にしてない、けど……四五六君なの?」

 

「そうだよ」

 

「嘘……」

 

 簪さんはとても驚いた表情だった。

 

「あ〜似合わなかったかなこの格好」

 

「ち、ちが!!その……とってもかっこいいです」

 

 最後の方は顔を赤く染め呟く様に話す簪さん。

 

「そっか。よかった。じゃあ、行こうか」

 

 そういって手を差し出す。

 

「え?」

 

「今日は人が多いからはぐれないようにね」

 

「……う、うん」

 

 おずおずと手を取り繋ぐ二人。

 

「さあ、行こう」

 

「うん!!」

 

「此処は、映画館?食材買いに来たんじゃないの四五六君」

 

「そう思ってたんだけど、今から買っちゃうと後が大変だから此処で時間を潰そうと思ったんだけど、ダメだったかな?」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

「そっか……なら何見ようか」

 

 今この映画館で上映されているのは、「戦場で紡ぐ愛 敵兵とのラブストーリー」「ザ・サラリーマン2〜再就職先はブラック企業!?〜」「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」の三本だった。

 

「どれがいいかな?簪さんはどれが……」

 

 簪さんの方を向いて見たらヒーロー物に釘付けだった。

 

「簪さん?」

 

「へぅ!?な、何かな」

 

「どれ見ようか?」

 

「え、えっと……じゃあ、その戦場で紡ぐ愛、で」

 

「分かった。店員さん「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」、を大人二枚で」

 

「かしこまりました」

 

「四五六君!?」

 

「あんなに凝視してちゃあバレバレだよ」

 

「うぅ……」

 

 顔を赤くしそっぽを向く簪さん。

 

「じゃあ、行こう」

 

「……うん」

 

 「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」はタイトル通り、今日までに放映された戦隊ヒーローが集結し映画版の巨大な敵組織を打ち破る、と言う王道パターンだったけど隣で見ている簪さんは目をキラキラさせながら時折体や手を動かして見ていた。

 

「楽しかったね!!四五六君」

 

「そうだね。手や体が動くくらいだったもんね?簪さんは」

 

「な!そ、そんな事してないもん」

 

 また顔を赤くして否定する簪さん。

 

「ハハ、じゃあそういう事にしておこうかな」

 

「し、四五六君!!」

 

 ポカポカと軽く胸を叩いて抗議している簪さんは可愛かった。

 

「っと、こんな時間か、お昼にしようか?」

 

「もうこんな時間なんだ」

 

 気が付けばお昼を回った時間だった。

 

「何処か行きたい場所ってある?」

 

「……じゃあ、あそこで」

 

 そうして連れて行かれた場所は大手チェーン店のファミレスだった。

 

「……ハッ、い、いらっしゃいませ」

 

 店員さんが何故か呆けていたが気にしない。

 

「2人で」

 

「かしこまりました。此方にどうぞ」

 

 案内された場所にすわり注文を終えたあと簪さんに話しかけられる。

 

「あの、四五六君」

 

「なに?」

 

「その髪の毛の色も、もしかして……」

 

「ああそうだよ。この髪の色と目の色が俺の本当の色だよ。驚いたでしょ」

 

「う、うん。ビックリしちゃった」

 

「本当は今日もいつも通りの黒髪黒目の地味な格好で来ようとしたんだけど」

 

 其処まで話してちょっと微笑む。

 

「簪さんの姿を見たらちょっとね……」

 

「えっと、変だった?」

 

「いや、可愛すぎてね」

 

「か、かわっ!!」

 

 真っ赤になる簪さん。最近真っ赤になる頻度が多くないか?

 

「可愛い簪さんと一緒に出かけるなら俺もそれ相当の格好しないと、って思ってね」

 

「うぅ……」

 

 ますます赤くなる簪さん。可愛いな、ホント。

 

「そ、そういえば映画楽しかったね」

 

 いかにも話題を逸らそうと話しかける簪さん。

 

「うん。映画だとやっぱり一味違うよね」

 

「そうそう。テレビで見るのもいいけど大きなスクリーンで見るのは格別だよね」

 

 しばらく話して、話が途切れた時、こう聞かれた。

 

「四五六君、その、女の子がこうやってヒーロー物の話をするって変、じゃないかな」

 

「?、どうして」

 

「だって、その、クラスの女子の話とか聞いてるとヒーロー物とかじゃなくて可愛いものの話や最近の芸能人の話とかしてて私、ついていけなくて」

 

「……」

 

「いつも一人で整備とかしてて、その傍らにテレビでヒーロー物ばっかり見てて、私って女の子らしくないのかな」

 

 さっきまでの楽しげな表情から急に悲しげな顔になる簪さん。

 

「……いいんじゃないかな、それでも」

 

「…え?」

 

「たとえヒーロー物が好きでもいいと思うよ俺は」

 

「でも……」

 

「それに、女の子らしくないって言うけど俺から見たら簪さんは十分に可愛い女の子だよ」

 

「……」

 

 俺の話を聞いて目を潤ませ、赤くなる簪さん。

 

「か、簪さん!?なにか俺悪い事言ったかな」

 

「ううん、違うの。その嬉しくって」

 

「簪さん……」

 

 その後、簪さんが落ち着いた後注文した料理が来て二人で楽しく話しながら食べてお店をあとにする。

 

「それでは、今日の目的の食材選びに行こうか」

 

「うん……四五六君、その……」

 

 おずおずとしながら俺の手を見つめる簪さん。

 

「ああ」

 

 簪さんと手を繋ぐ俺。

 

「じゃあ行こうか」

 

「……うん!!」

 

 食材の選び方を教えながら一緒に買い物をし、夕方になり学園に戻る事に。

 

「四五六君、今日はありがとう」

 

「どうしたの急に?」

 

「その、今日は私のためにいろいろしてくれたから……」

 

「ああ、気にしなくていいよ。俺がしたかったからしただけだから」

 

「それでも、だよ。本当にありがとう」

 

 その時の簪さんの笑顔は夕日と相まって本当に綺麗だった。

 

「……だからこれはお礼だよ」

 

「え?」

 

 簪さんが近づいてきたと思ったら俺の頬にキスをされた。

 

「……フフ、私先に帰ってるね」

 

「……」

 

 呆然とする俺に、イタズラが成功したような顔をしながら先に帰っていく簪さん。

 

「……まいったな、これは」

 

 突然の不意打ちに呆然とするも全く嫌な気持ちは無く、むしろとても心地よい気持ちになった。

 

「惚れちゃった、かな」

 




この後、同じ部屋に住んでいることを忘れていた二人はとても気まずい雰囲気になりました。

ただし、他所から見ればとても甘酸っぱい雰囲気ですが。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 その5

 今日、私はIS学園近くの駅前の噴水前にいます。

 

 何故か?それは先日、私は四五六君に料理を教えてもらうように頼んだところ、四五六君は快く引き受けてくれたのですが、料理に使う食材があまり無い、との事で休日である今日、買出しに来ているのです。久しぶりに外出した気がする……

 

 さて、そんな風に駅前で待っていたら携帯が鳴り、誰かと思って見て見ると四五六君の名前が。

 

「あ、簪さん」

 

「どうしたの?四五六君」

 

「もう待ち合わせの場所についちゃってるかな」

 

「うん。もうついてるけど」

 

 ちなみに今の時間は9時30分です。かなり早くにきてしまった。

 

「そっか。悪いけどもうちょっとだけ待っててもらえるかな。時間には間に合わせるから」

 

「分かった。大丈夫だよ。時間より速く着いちゃったのは私のほうだし」

 

「ごめんなさい。すぐ行くから」

 

「うん。待ってる」

 

 そう話してから電話を切る。四五六君どうしたんだろう?何か電話の向こうで焦っていたような……。

 

 そんな電話があってから30分ほどして待ち合わせの時間になったころ私は、ガラの悪い男性達にナンパ?されています。

 

「ねえねえ、良いだろう?俺たちと一緒にさ遊びに行こうぜ」

 

「そうそう。待ち合わせなんかほっといてさ〜」

 

「……結構です」

 

「そう言わないでさ〜」

 

 私が嫌がっているのにお構いなしに迫ってきて私の手を掴もうとしてきた。もし掴んだら、未完成だけど“この子”で威嚇してやろうと思ったら横から別の手が伸び、その手を掴んだ。

 

「其処までにして貰おうか。彼女は俺の待ち合わせの人なんでな」

 

「な!テメェなに、さま……」

 

 私はその声がするほうを向いた時、息を呑んだ。

 

 さらさらの銀髪に、赤と青のオッドアイ、整った顔つき、服装も一流モデルといって良いほど着こなしている青年が立っていた。

 

 

「簪さん、遅れてごめんね?」

 

「え、あ、うん」

 

「彼女は俺と待ち合わせしてたんだ。離れてもらえるかな」

 

「す、すみませんでした」

 

「すんません」

 

 彼のオーラなのか、そそくさと離れていく男達。

 

「ごめんね。遅れたせいで不快な目に会わせちゃって」

 

「う、ううん。気にしてない、けど……四五六君なの?」

 

「そうだよ」

 

「嘘……」

 

 赤と青のオッドアイでまさかとは思っていたけど、本当に四五六君だったとは。

 

「あ〜似合わなかったかなこの格好」

 

 ちょっと困ったような顔をしてそう言う四五六君。

 

「ち、ちが!!その……とってもかっこいいです」

 

 四五六君の姿は本当にカッコよくて、胸がドキドキしてまう。

 

「そっか。よかった。じゃあ、行こうか」

 

 何気ない表情で手を差し出す四五六君。

 

「え?」

 

「今日は人が多いからはぐれないようにね」

 

「……う、うん」

 

 普段の私なら、絶対にその手を取る事はないのにその時の私は戸惑いながらもその手を取り手と手を繋いだ。

 

「さあ、行こう」

 

 笑顔で言う四五六君。その笑顔につられて私は元気よく返事をした。

 

「うん!!」

 

 そうして四五六君と手を繋ぎ、連れられて来たのは食品売り場ではなく、駅近くの映画館だった。

 

「此処は、映画館?食材買いに来たんじゃないの四五六君」

 

「そう思ってたんだけど、今から買っちゃうと後が大変だから此処で時間を潰そうと思ったんだけど、ダメだったかな?」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

「そっか……なら何見ようか」

 

 四五六君と一緒にこの映画館で今上映されている映画のポスターを見ると、、「戦場で紡ぐ愛 敵兵とのラブストーリー」「ザ・サラリーマン2〜再就職先はブラック企業!?〜」「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」の三本だった。

 

 私はその中の「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」に目が釘付けなった。なぜなら私はこういうヒーロー物が大好きだから。

 

「簪さん?」

 

「へぅ!?な、何かな」

 

 掛けられた声に変な声が出てしまう。

 

「どれ見ようか?」

 

「え、えっと……じゃあ、その戦場で紡ぐ愛、で」

 

 四五六君の前でヒーロー物が見たいなんて恥ずかしくて言えなくて当たり障りの無い物を選んだのに「分かった。店員さん「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」、を大人二枚で」

 

「かしこまりました」

 

「四五六君!?」

 

 四五六君はあっさりとヒーロー物を選んでしまった。

 

「あんなに凝視してちゃあバレバレだよ」

 

「うぅ……」

 

 どうやら、ヒーロー物を凝視していたのがばれていたようです。

 

「じゃあ、行こう」

 

「……うん」

 

 「歴代ヒーロー大集結!!これがヒーロー魂だ!!」はタイトル通り、歴代のヒーロー達が集まり、映画版の巨大な敵組織を打ち破るという王道パターンだったけど、私はその映画に夢中になっていた。

 

「楽しかったね!!四五六君」

 

「そうだね。手や体が動くくらいだったもんね?簪さんは」

 

「な!そ、そんな事してないもん」

 

 私が夢中になっている時のしぐさを見られていたようで顔が赤くなるのが自分でも分かり恥ずかしかった。

 

 その後、お昼の時間になっていたので、四五六君に聞かれ、私たちは近くの大手チェーン店のファミレスに2人で入りました。

 

 その時、入り口で私、いや四五六君の姿を見た店員さんが四五六君に見惚れていたのが何故か気にいらなかった。何で……

 案内された席に着き、注文を終えた後私は朝から気になっていたことを聞いてみた。

 

「あの、四五六君」

 

「なに?」

 

「その髪の毛の色も、もしかして……」

 

「ああそうだよ。この髪の色と目の色が俺の本当の色だよ。驚いたでしょ」

 

「う、うん。ビックリしちゃった」

 

 本当にビックリした。オッドアイだけだと思っていたのにまさか髪の色まで違うなんて。

 

「本当は今日もいつも通りの黒髪黒目の地味な格好で来ようとしたんだけど」

 

 そこで少し微笑み

 

「簪さんの姿を見たらちょっとね……」

 

 と言われ、急に不安になりました。

 

「えっと、変だった?」

 

 久しぶりの外出という事でちょっとオシャレに気を使ってみたのがまずかったのかな。……けれどそんな気持ちは次の一言で吹き飛んでしまった。

 

「いや、可愛すぎてね」

 

「か、かわっ!!」

 

 私は自分の顔どころか体中が熱くなるのが分かる。唯でさえ普段と違うカッコいい姿で不意打ちのように笑顔でそんな言葉を言われ、本当にどうしていいのか私は分からない……

 

 このままではいけないと思い話題を逸らそうと今日見た映画の事を話し出す私。

 

「そ、そういえば映画楽しかったね」

 

「うん。映画だとやっぱり一味違うよね」

 

「そうそう。テレビで見るのもいいけど大きなスクリーンで見るのは格別だよね」

 

 そうやって四五六君とヒーロー物の話で盛り上がった。盛り上がったのだけれど……

 

「四五六君、その、女の子がこうやってヒーロー物の話をするって変、じゃないかな」

 

「?、どうして」

 

 不意に私はそんな事を思ってしまった。

 

「だって、その、クラスの女子の話とか聞いてるとヒーロー物とかじゃなくて可愛いものの話や最近の芸能人の話とかしてて私、ついていけなくて」

 

「……」

 

「いつも一人で整備とかしてて、その傍らにテレビでヒーロー物ばっかり見てて、私って女の子らしくないのかな」

 

 今日の私は何処かおかしかった。四五六君とこうやってヒーロー物の話をしていた時は本当に楽しかったのに窓ガラスに映ったその姿を見て思ってしまった。(普通の女の子ならもっと他の話で盛り上がるんじゃないか?)って。

 

 クラスの女子はいつも「どこどこのケーキが〜」「なになにの服が〜」「だれだれの芸能人が〜」と最近の話題で盛り上がっているのに私はそれについていく事が出来なかった。

 四五六君と出会う前まで私はいつも一人で“この子”の整備ばかりをしていて、空いた時間もヒーロー物のテレビを見ていて、誰かと話し合う事なんて殆ど無かった。

 だから不安になった。四五六君が私と話していてつまらないと思ってるんじゃないかって。女の子らしくないって思ってるんじゃないかって。

 

「……いいんじゃないかな、それでも」

 

「…え?」

 

 でも四五六君はそれでもいいって言ってくれた。

 

「たとえヒーロー物が好きでもいいと思うよ俺は」

 

「でも……」

 

 女の子でもヒーロー物が好きでいいって言ってくれた。

 

「それに、女の子らしくないって言うけど俺から見たら簪さんは十分に可愛い女の子だよ」

 

「……」

 

 女の子らしくない私を、可愛い女の子って言ってくれた。

 

 私は溢れ出る涙を堪えた。泣くまいと必死で堪えた。

 

「か、簪さん!?なにか俺悪い事言ったかな」

 

「ううん、違うの。その嬉しくって」

 

「簪さん……」

 

 その後あふれそうになる涙を堪えて、また四五六君とヒーロー物の話で盛り上がりながら一緒に注文した料理を食べた。四五六君と一緒に食べた料理はおいしく感じられた。

 

 お店から出た後、今日の本来の目的である食材選びに行く事に。

 

「それでは、今日の目的の食材選びに行こうか」

 

「うん……四五六君、その……」

 

 私が四五六君の手を取ろうかどうかで迷っていると

 

「ああ」

 

 四五六君から手を繋いでくれた。

 

「じゃあ行こうか」

 

「……うん!!」

 

 そんなさり気ない気遣いに私は元気な返事で応えた。

 

 四五六君に食材の選び方を教わりながら食材を選び購入していき、夕方になったので私たちはIS学園に戻る事にした。

 

「四五六君、今日はありがとう」

 

「どうしたの急に?」

 

 そんな言葉が自然に出た。

 

「その、今日は私のためにいろいろしてくれたから……」

 

「ああ、気にしなくていいよ。俺がしたかったからしただけだから」

 

「それでも、だよ。本当にありがとう」

 

 だから私は四五六君にお礼をすることにした。

 

「……だからこれはお礼だよ」

 

「え?」

 

 両手が食材で埋まっている四五六君の頬にキスをした。

 

「……フフ、私先に帰ってるね」

 

「……」

 

 呆然とした表情になった四五六君を後目に私は駆け足でIS学園に走っていく。

 

 私は小さい頃から“ヒーロー”に憧れていた。辛く苦しい時に颯爽と現れる“ヒーロー”に。

 

 小さい頃はヒーローは本当にいると信じていた。でも大きくなっていくうちにヒーローなんて幻想だと信じてしまった。

 

 それでも未練がましくヒーロー物を見ていたのは、いつか私を助けてくれるヒーローが現れるんじゃないかって思っていたからだ。

 

 だから今日一日、私は四五六君と一緒にいて一つ分かった事がある。

 

       それは、更識簪は一二三四五六の事が好き、という事だ。

 

 いつか私の前に現れると信じていたヒーロー。

 

 私が好きになった四五六君は私にとってまさしく主人公(ヒーロー)だ。

 

 




その17の簪目線のお話。

簪さんは自分の思いに気が付いたようです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その18

 先日の簪さんのキスのことでなかなか眠れなかった四五六です。

 

 先日の食材買出しと言う名のデート。デートか?……まあいいか。その終わりの時に簪さんから頬にキスをされました。

 

 その時の簪さんの表情や、今まで簪さんが俺にしてくれた事を思い出し、俺は簪さんに好意を持っていることに気が付いた。

 これが異性としてなのか、それとも別のものなのか、それは分からない。ただ簪さんを意識し始めているのは確かだ。

 そんな事を考えていたらなかなか眠れなかった。いままでは気にしていなかった簪さんの寝息が気になってしまったのも原因の一つだと思う。

 

 そんなこんなで次の日の朝。

 

「ふわぁ……おはよう、簪さん」

 

「おはよう、四五六君」

 

 いつも起きる時間になり、起きてみると珍しく先に簪さんが起きていた。

 

「今日は、早起きだね」

 

「だって今日から料理、教えてくれるんでしょ?寝坊はしたくないもん」

 

 微笑みながら話す簪さん。そのちょっとした表情を見て今まではなんとも無かったのだが、自分の思いを自覚した今では、それだけでちょっとドキドキする。

 

「っと、じゃあ始めようか」

 

「うん、お願いします四五六先生」

 

「……先生?」

 

「料理、教えてくれるんでしょう?なら先生じゃない?」

 

「先生……先生か」

 

「……いや、かな」

 

「ううん。いい響きだなって」

 

「そっか」

 

 そうして始る俺と簪さんの料理教室。

 

「其処は、こうやって……」

 

「こう?」

 

「そうそう、上手上手」

 

 いろいろな野菜の下ごしらえを教えたり

 

「このギリギリのタイミングが重要で……」

 

「ギリギリのタイミング……」

 

 蒸し物で火が入り過ぎないギリギリのタイミングを見せたり

 

「彩りを考えつつも栄養バランスも考える」

 

「……大変だね」

 

 調理し終わった物の飾りつけを一緒に考えたりして楽しく料理が出来ました。

 

「……うん。初めてにしてはなかなか上手に出来たね」

 

「四五六君の教え方がよかったからだよ」

 

「そう?簪さんの実力じゃないかな」

 

「そう、かな」

 

「そうだよ」

 

「……フフ、ありがとう」

 

 簪さんは嬉しそうに笑ってた。その笑顔に見惚れた俺は、どじって指を怪我してしまった。

 

「っ、いった」

 

「だ、大丈夫!?」

 

「大丈夫だよ、軽く切っただけだから……」

 

「……あん」

 

「!?」

 

 簪さんは俺が切った指先を口に持っていきそのまま口にくわえ、傷口を舐めはじめた。

 

「……ン、プハッこれで大丈夫だよ」

 

 数十秒傷を舐め、口から離してそういう簪さん。

 

 言えない。簪さんが俺の指を舐め回している姿がとても官能的だったなんて、言えない。絶対に言えない。

 

「?四五六君鼻血出てるよ」

 

「ハッ!!」

 

 

 

 

 俺が簪さんの行動に見惚れてた頃、生徒会室では更識楯無と織斑千冬の2人が向き合い話し合っていた。

 

「……では貴様は、いや「更識家」は一二三に対して?」

 

「ええ。本家では四五六君に対して専用機の開発を検討しています」

 

「何故、今になって……いや、今だからこそか」

 

「はい。この前の襲撃事件。アレによって、男性適合者の重要性がさらに高まりましたから」

 

 そう。この前の襲撃事件で男性適合者の重要性が以前にも増して高くなったのだ。

 

「あの襲撃事件の実行犯は一夏君のISコアを狙ってきました。何故一夏君のISコアを狙ったのかはいくつかは理由が考えられますが、それは置いておき、問題はこの“IS学園”に居る時に襲撃を掛けてきた事です」

 

 IS学園とはその性質上各国からISに関わる様々な人材が集まる場所。ゆえにその警備も半端な物ではなく世界でも有数といって良いほどなのだ。

 

「あの日、襲撃されるまでIS学園の警備システムに一切の異常は見られず、襲撃された直後に外部からハッキングがなされ、結果あの時アリーナには一夏君と鈴音さん、そして……」

 

全身装甲(フルスキン)の不審機だけになった、か……」

 

 あの日、襲撃があった時IS学園のシステムに外部からのハッキングがなされ、一部の警備システムとアリーナの制御システムがのっとられたのだった。

 

「アレだけの事をしておきながら殆ど足跡を残さ無かったのは、見事、としか言いようが無かったですね」

 

 楯無が広げた扇子には「お見事!」と書かれてあった。

 

「それだけでも頭が痛くなる話なのに、二機目の不審機。あれは異常だ」

 

「ええ。外部からえられた簡単な情報だけでもアレが異常なのは分かりますからね」

 

 二機目の不審機。それは一機目と同じく全身装甲(フルスキン)だったのがだが、その性能は凄まじいの一言だった。

 

「完全自立行動している八つの球体の特殊兵装」

 

「アリーナのシールドを撃ち抜く程の強力なビーム兵器」

 

「一機目の最強攻撃と思われるあの竜巻のような攻撃に対して無傷でいられる防御力」

 

「はぁ、どれをとっても現状の技術力を超えていますね」

 

「そうだな……」

 

 2人はあの時の戦闘を思い出し複雑な気持ちになる。

 

「……まあ、アレの事は置いておき一二三の専用機の事だが」

 

「四五六君に対して彼の専用機の開発を、と言う話はすでに数十件を越してます」

 

「アメリカ、ドイツ、中国、フランス……」

 

「それ以外にも、各国の研究機関や大手IS関連の会社から来てますね」

 

「どこもかしこも一二三狙いか……」

 

「まあ、四五六君は一夏君に比べると狙いやすいですからね」

 

 織斑一夏は姉の織斑千冬と言うIS最強の身内にISの生みの親である篠ノ之束と交流があり、迂闊に手を出す事は出来なかった。

 

 それゆえに、これと言ったコネや人脈がない一二三四五六は様々な所から狙われているのだ。

 

「私としては四五六君には私の家を選んで貰いたいですね」

 

「それは本家からの命令か?」

 

「それも有りますが、私個人としても四五六君には私の家を選んで欲しいですね」

 

「ほほう。何故だ?」

 

 千冬がめずらしいといった表情で聞く。

 

「それはひ・み・つです」

 

 扇子を広げ口元を隠し笑う楯無。扇子には「禁則事項です」と書かれていた。

 

「……まあいい。あまり一二三をいじめるなよ」

 

「ええ。分かってますわ」(いじめる前に餌付けされてるんだけどね)

 

「っとそれとだ、二機目の機体を追っていった捜索部隊の報告が来たのだが」

 

「……どうでしたか」

 

 先ほどの表情から一転、真剣な表情になる2人。

 

「二機目がアリーナから飛び出した後、学園のレーダーに映っていたのはホンの数秒だけでその後の調査では一切の手がかりは無し、だ」

 

「そうですか……」

 

「高度なステルス機能が有ったのかそれとも潜水艇などの輸送機が有ったのかは分からないがな」

 

「……」

 

「ただ」

 

「ただ?」

 

 言いよどむ織斑先生。

 

「学園から少し離れた場所の砂浜で海から学園に向かっている足跡があった」

 

「学園に向かって?」

 

「そうだ。あの場所は普段は殆ど人通りも無くたまたま誰かが其処にいたとしても海辺から真っ直ぐに学園に向かっているのは不自然だ」

 

「……」

 

「この足跡を見つけたのは本当に偶然でしかない。襲撃事件と関係が有るのか無いのかは分からない。だが気になってな」

 

「……もしその足跡が二機目の機体の操縦者だったとしたら、IS学園の関係者が……」

 

「それは分からん。全く関係が無いのかもしれないからな」

 

「……」

 

 お互いに無言になる。

 

「……まあ、今は考えていてもしょうがないな。関係があるかは全く分からないのだからな」

 

「そう、ですね」

 

 

 

 

 午前中を使った簪さんとの料理嬉しい?ご褒美?……トラブルもあったけど無事に終了。でこっそりと簪さんが作った料理をタッパーに詰めてその後メールで楯無さんをいつもの場所に呼びました。

 

「四五六君からお誘いなんて珍しいわね?何かしら」

 

「えっとですね、これをどうぞ」

 

「……タッパーに入った料理?」

 

「はい。簪さんの手料理ですよ」

 

「そう。かんちゃんの……え?」

 

 呆けた表情になる楯無さん。

 

「今日、簪さんに料理を教えていたんですけどその時作ったのをこっそりと持ってきたんです。なかなかおいしいですよ」

 

「そ、う……ありがとう。大事に食べさせてもらうわね」

 

 嬉しそうに微笑む楯無さん。

 

「これを渡したかっただけなので今日はこれで」

 

 楯無さんに背を向け帰ろうとしたら

 

「……ちょっっっっと、待ってくれるかな四五六君」

 

 肩を思いっきり捕まれた。

 

「な、なんですか」

 

「四五六君の気持ちはとっても嬉しいわ。かんちゃんの手料理なんて何時振りかしら……」

 

「……」

 

「で、も。なんで四五六君がかんちゃんに料理を教えてるのかな?お姉さんに分かるように話してくれるかな?」

 

「ハ、ハイ!!」

 

 とってもいい笑顔なのに目が笑っていなかった。




会長は餌付けされている事を自覚しています。


おまけ



生徒会室で千冬と楯無の2人が話をおえた頃、楯無に電流が走る!!

「!!!」

「どうした?」

「……今、かんちゃんがいやらしい目つきで見られた気がする」

「……またか」

「……かんちゃんがかわいいのは私が世界で一番よく分かってるだからかんちゃんが異性にもてるのは分かるけど世界で一番かわいくて綺麗なかんちゃんをいやらしい目つきで見るクソ虫はどこのどいつだ!!その腐った目を抉り出して踏み潰して口を縫い付けて耳を削いで全身をゆっくりと少しづつ切り刻んで恐怖と激痛を真の其処まで叩き込んでやる……フフ、フハハハハハハハハ!!!」

「落ち着け!!」

危険な発言をして高笑いを始める楯無の後頭部に出席簿を叩き込む千冬。しかも角で。

「っいったい、何するんですか織斑先生!!」

「貴様が危険な発言をするからだ」

「危険なって普通ですよ、普通」

「どこがだ!!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その19

恋心を自覚した簪と異性として認識し始めた四五六。

さてさて、どうなる事やら。


 楯無さんの質問に命がけで答えてきた四五六です。

 

 楯無さん問いただす口調は柔らかいのに目が笑ってないんだ。しかも後ろの方にISがユラリユラリと見え隠れしてたし。下手な事言ったら次の日の光を見れなかった……

 さて、そんな話は置いておき、今俺は部屋の中でMIKUから来た情報に悩まされています。

 

「そうか……もうこんな時期か」

 

 そう、シャルル・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒの編入イベントです。

 

 この2人が入学してくるという事は部屋換えがあるという事。部屋換えではシャルル・デュノアが厄介だ。なぜならデュノアは最初は“世界で二番目の男性適合者”という事で編入してくる。俺がいるから三人目だが。

 

 原作では一夏と一緒になったが、この世界では俺と言う不確定要素がある。つまり俺と一緒になる、と言う可能性もあるという事だ。

 別に嫌なわけではない。デュノア自体はいいんだ。問題なのは簪さんと離れる事だ。……俺は今の簪さんと一緒のこの空間がとても居心地がいいんだ。簪さんと一緒にいる時、別にいつも話をしているわけではないけど、簪さんが傍にいてくれる。それだけで俺はとても安らげるんだ。

 

 これはやっぱり簪さんの事、好きになってる、ってことなのかな……。

 

 そんな風に部屋換えの事で悩みながら、遂に来た二人の入学の日。数日前からクラスでは入学生が来る、と言う話題で持ちきりだった。

 

「今日入学生が来るんだって、しかも2人」

 

「そうそう。しかも三人目の男性適合者とか……」

 

「もう一人は軍の関係者とか……」

 

 そんな話し声を聞きながら席に座っていると予鈴の鐘が鳴り、織斑先生と山田先生が入ってきた。

 その後は原作のようにデュノアさんの自己紹介で黄色い悲鳴が上がり、ボーデヴィッヒさんの自己紹介でなんともいえない雰囲気となった。

 

 そんな中、ボーデヴィッヒさんが俺の前まで歩いてきた。……はて?何で俺の前に来るんだ。一夏の前じゃないのか?

 

「……貴様が織斑一夏か?」

 

 ……ただ間違えただけか。

 

「いいえ。一夏は向こうの男性ですが」

 

「何!?」

 

 一夏の方を見て、また俺を見るボーデヴィッヒさん。

 

「……すまない、間違えた」

 

 そんな事を言ったボーデヴィッヒさんはちょっとだけ顔が赤かった。

 

 その後、一夏の方に向かおうとして授業開始の鐘が鳴ってしまいしぶしぶ席に戻るボーデヴィッヒさん。まさか俺がいるだけで一夏へのビンタが無くなるとは……。

 

 授業中一夏にガンを飛ばし続けるボーデヴィッヒさん。でも見た目のせいで何故かほほえましく見えるのは気のせいなのかな。

 その後もボーデヴィッヒさんは事有るごとに一夏に声を掛けようとしたのだがこれまた事有るごとに邪魔されて一夏に話せないでいた。そしてちょっとふてくされてた。

 

 ……何だろうこの胸に来るキュンとした気持ちは?

 

 そんなこんなで、放課後のHRにて織斑先生が一言。

 

「〜以上で報告は終わりだ。……っとそうだ、織斑一夏に篠ノ之箒」

 

「は、はい」

 

「はい」

 

「数日中に貴様達は部屋換えとなる。部屋換えの準備をしておくように」

 

「「は、い?」」

 

 2人が織斑先生の言葉に呆ける。

 

「……ってなんでだよ!!千冬姉!!」

 

「そうです!!何で部屋換えなんか……」

 

「ほほう、毎日毎日事有るごとに騒動を起こし部屋のドアを破壊してるのは誰だ?」

 

「「「うぐっ」」」

 

 二人に加え、オルコットさんも唸る。

 

「私が何度修理業者に頭を下げた事か……。今では電話しただけでため息が聞こえてくるようになったんだぞ」

 

「「「すみません」」」

 

 頭を下げる三人。

 

「……じゃあ、俺は誰と一緒になるんですか?織斑先生」

 

「デュノアとだ」

 

 その声に反応するクラスメイト達。

 

「一夏×デュノア、それともデュノア×一夏!!」

「金髪の美少年に迫るイケメン男子……ブハァ」

「……キタァーーー!!これで今年のコミは勝てる!!」

 

 だめだ、こいつら腐ってやがる。……これ俺の正体ばれたらやばいんじゃね。それと周りの反応について行けなくてちょっとオロオロしてるボーデヴィッヒさんに萌えた。

 

「静かにせんか!!」

 

 一喝で静まるクラス内。

 

「……あの織斑先生」

 

「なんだ篠ノ之」

 

「一二三は部屋換えはしないんですか」

 

「しない」

 

「何故!?」

 

 おおう、何故か篠ノ之さんが俺の事を持ち出した。

 

「一二三は今日まで一切騒動を起こした事は無い。ついでに生活態度も問題は一切無い。挨拶などの礼儀もしっかりとしているから教師陣では手の掛からない生徒として助かっている」

 

「……」

 

「ゆえに今の部屋のままでも問題はないと判断され今回の部屋換えは織斑と篠ノ之の2人になったのだ。織斑も女子ではなく同じ男子となら騒動は早々起こさないだろう」

 

 ため息と共に話す織斑先生。……織斑先生ご苦労様です。あと篠ノ之さん、俺を睨まないで。睨むなら一夏にして。

 

「この話はこれで終わりだ。以上解散」

 

 織斑先生が出て行った後、デュノアさんとボーデヴィッヒさん、それと一夏の所に人が集まるのを横目にこっそりといつも通りに教室から撤退する。

 

 ……よかった。簪さんとこれからも一緒の部屋だ。地味に、でも礼儀正しく生活したかいがあったものだ。

 

 

 

「そんな事が今日は有ったよ」

 

「そっか。転入生って四五六君のクラスに入ったんだ」

 

「うん」

 

「……その2人ってどんな感じだったの?」

 

「気になるの?」

 

「別にそうじゃないけど……」

 

 ちょっとふてくされた表情で聞いてくる簪さん。……かわいいな。

 

「金髪の男性がシャルル・デュノアさんで銀髪で眼帯をつけているのがラウラ・ボーデヴィッヒさんだよ」

 

「ふーん」

 

「デュノアさんは好青年って感じで、ボーデヴィッヒさんは軍人って事で何か厳つい雰囲気が有ったけど見た目が小さくてかわいい子だったよ」

 

「ふ〜〜ん」

 

 俺が2人の事を話していてボーデヴィッヒさんの事をかわいいと言ったら目に見えて不機嫌になった簪さん。

 

「……四五六君ってロリコン?」

 

「ブフゥ!!な、なんで!?」

 

「だって、小さい子が好きなんでしょ」

 

「いやいやいや、別に好きじゃないよ」

 

「ふ〜〜ん」

 

 疑いの眼差しで見てくる簪さん。

 

「俺が好きなのは簪さんみたいな人で……ハッ」

 

「え?」

 最初は俺の言葉を理解できなかったのか呆けていたけど理解した後は見る見る内に顔が赤くなっていく。

 

「え、いや、そのこれはなんと言うか」

 

「……」

 俺がつい言ってしまった事にあたふたしている間に簪さんは何と言うか頭から煙が出るんじゃないかってぐらいに真っ赤になっていた。

 

「え、いやその……お、俺ちょっと風に当たってくる!!」

 

 居た堪れなくなって逃げ出す俺。その姿に簪さんは

 

「……四五六君の意気地なし」

 

 そう呟いたそうな。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その20

 ついうっかり自分の心内を喋ってしまい恥ずかしくなって部屋から逃げ出した四五六です。

 

 ……ヘタレ?チキン野郎?いいじゃないか、ヘタレでも。女性に告白まがいの事をしたことなんて前世でもないんだぞ。それをうっかりとはいえ言ってしまったんだ。

 

 はぁ、明日からどう顔を合わせればいいんだよ……。

 

「……うん?」

 

 何か前方からいい争う声が聞こえるな?

 

「何故教官はこのような場所にいるのですか!?」

 

「……」

 

「教官を必要としている場所はこのような場所ではありません!!」

 

「言いたい事はそれだけか?ボーデヴィッヒ。なら早く部屋に戻るんだ」

 

「っ!!教官、私は諦めませんから!!」

 

 やば、こっちに来る。

 

「……」

 

 ふぅ、柱の影に隠れたおかげで見つからなかったぜ。地味スキルに感謝だ。

 

「……で、一二三何時から其処にいた」

 

「何故ばれたし」

 

「生徒の気配に気づけなくて教師が出来るか」

 

 いや、それは織斑先生だけだと思うのですが。

 

「で、何時から聞いていた」

 

「えっとボーデヴィッヒさんが怒鳴ってこっちに来るとこからですが」

 

「そうか……何も聞いていないんだな」

 

「殆ど聞いてないです」

 

「ならばこの事は誰にも話すな、いいな」

 

 睨まないで恐いよ織斑先生。

 

「はい、分かってます。ボーデヴィッヒさんの立場を悪くしたくはないですから」

 

「ボーデヴィッヒの立場?」

 

「ボーデヴィッヒさん、たぶん織斑先生に自分の国に来てください、見たいな事言ったんだと思うんですよ。で、IS学園は一応法律で学園関係者に干渉は許されないって言ってるのに自分の国に来てくださいって言うのは明らかな干渉行為ですよね?それを軍役の人が行なった、なんていいスキャンダルのネタじゃないですか。同じクラスの人にそんな事したくないですから」

 

 頬を軽く掻きながら思った事を言って見る。

 

「……はぁ」

 

 そうしたら、ため息をつかれた。

 

「あの、何か変なこと言いましたか?」

 

「いや違うんだ。お前は其処までしっかりと考えているのに家のあの馬鹿は……はぁ」

 

「……その、愚痴ぐらいなら聞きますよ?」

 

「……そうか?聞いてくれるか?」

 

「ええ、まあ」

 

 今は部屋に戻りたくないし良いかな。

 

「なら、寮長室に来い。あそこなら防音が出来ているからな」

 

「分かりました。行きましょうか」

 

 そういって織斑先生の後ろをついて行く俺。……この時俺はホンの軽い気持ちでついていったのだがそれがあんな事になるとは今の俺には思いもしなかった。

 

「ここだ」

 

「意外と綺麗ですね」

 

「意外は余計だ」

 

 寮長室は思いのほかに綺麗だった。まあよく見ると隅にゴチャゴチャと書類っぽい物がうずたかく積んであるが。

 

「まあ、其処に座れ」

 

「はい」

 

 4人がけのテーブルに向かい合って座る。で始る織斑先生の愚痴。

 

……最初は普通だったんだよ。普通にクラスの事とかちょっとした出来事の愚痴だったんだよ。

 ただ、織斑先生途中からビール飲みだしたんだよね。そうしたら喋る喋る。やれ一夏は女垂らしだの、鈍感だの、もう少し考えて行動しろだの、でもそれら含めて一夏はかわいいだのと、殆ど弟自慢だった。

 まあ、その間に山田先生は大事なところでミスをするだの、束は破天荒すぎて私に迷惑をかける事が多すぎるだの、毎年毎年私のクラスには問題児が多いだの、一夏が原因で壊れるドアの修理に何度私が頭を下げただのと言っていた。

 

 それを俺はビールを注ぎながら、気が付いたら有り合わせの物でお摘みを作りながら聞いていた。まあいいんだけど。聞くって言ったのは俺だから。

 

「聞いてるのかぁ一二三〜!!」

 

「聞いてますよ織斑先生」

 

「私だってな〜私だってな〜女なんだぞ〜ヒック。……ブリュンヒルデだとか最強のIS操縦者だとか言われてるがな〜私だって女らしくヒック、オシャレして好みの男性とデートして見たいんだぞヒック」

 

「いいじゃないですか、デートすれば」

 

「いいじゃないですか、じゃない!!」

 

 缶に残ったビールを一気に飲み干しテーブルに缶を叩きつける。

 

「……いないんだよ〜いい男が〜」

 

 テーブルに頭を乗せてぶつぶつと呟く。

 

「職場は女性だらけで、外に出ようにも仕事や何やらで時間が取れなくて出れたとしても最近の男共は根性無しばっか。女尊男卑の時代だからしょうがないとはいえもっと根性を見せろ!というんだ」

 

 黙って聞き続ける。

 

「それに、私に近寄ってくる男共は私の事をブリュンヒルデとしか見ていない。知らなくても知ってしまえば及び腰になる奴らばっかだ……」

 

 そっと開けた缶ビールを差し出す。

 

「スマン。……ングング、ぷはぁ〜」

 

 それを一気飲みする織斑先生。

 

「……どこかにいい人、いないかな」

 

 そう呟く織斑先生はブリュンヒルデと言われた強い人ではなく、本当にただの一人の女性だった。

 

「……きっと、いい人が見つかりますよ先生」

 

「……一二三は、いい奴、だ……な……」

 

「先生?」

 

 声をかけてみたら

 

「……すぅ……すぅ」

 

 どうやら寝てしまったようだ。

 

「……厳しい人、って思ってたけど苦労してるんだな、やっぱり」

 

 原作では厳しい人、としか思ってなかったけどこうして見ると普通の女性にしか見えない。

 

「こうやって弱みを見せたらイチコロだと思うんだけどね〜」

 

「う〜ん……いちか〜」

 

「……せめてブラコンじゃ無ければねぇ」

 

 寝てしまった織斑先生をベットに運び、ベットの中に寝かせておく。織斑先生の寝顔はどこかスッキリとしていた。

 

「さて、と……掃除、しておこうかな」

 

 テーブルの上には飲み干された缶や空いた皿などが散乱し、床も埃がうっすらとあり、キッチン回りも汚れていたので綺麗にしておく事にする。

 ゴミをまとめて、床やテーブル、本棚をの埃を掃き、キッチン周りを綺麗に拭いていく。ついでに簡単な朝食を作り置きして冷蔵庫へ。

 

 最後にメモ用紙に伝言を書きテーブルの上に置いて部屋を出る。

 

『織斑先生へ

 

今日聞いたことは誰にも言いません。俺の中にしまっておきます。それとたまになら、またこうして愚痴を聞きますので一人で溜め込まないようにしてください。あと簡単ですが部屋の掃除をしておきました。

 

P・S

 

簡単ですけど朝食を作って冷蔵庫に入れておきました。暖めて食べてください。』

 

 そうやって部屋から出たのはすでに深夜を過ぎた時間だった。このまま外で時間を潰すのは不可能。かといって誰か他の人の部屋に泊まらせてもらうのはさらに不可能。(ってかそんなことしてくれる人居ないし。一夏は泊めてくれそうだが相室の篠ノ之さんがな〜)しょうがないので簪さんが居る、自室へ戻る事に。

 

「……」

 

 静かにドアを開けこっそりと入る。……仕切りでよく見えないが簪さんはすでに寝ているようだ。

 

 悪い事しちゃったな。そんな風に思いながら部屋の奥に入ろうとしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どこに行ってたの四五六君」

 

 俺の後ろ(・・・・)から簪さんの声が聞こえた。

 

 




皆、心配するな。ヤンデレ化はしない。


きっとな

おまけ

「う…ん?朝か」

 日の光で目が覚める織斑先生。

「昨日は、確かボーデヴィッヒと話してそれから、それから……」

 昨日の事を思い出しながら寝室を出る。

「?、部屋が綺麗になっている」

 寝室を出て目に入ったのは綺麗にされた部屋とテーブルの上に乗っているメモ用紙だった。

「……一二三め。余計な事を」

 そう言いながらもその顔は優しげな表情を浮かべていた。

「……むぅ、一夏の料理より上手いな」

 冷蔵庫の料理を温めなおして食べ、感想を述べる。

「……付き合うなら一二三みたいな男性が良いな」

 朝食を食べ終えてポツリと呟く。呟いてから気が付く。

「な、何を考えているのだ私は」

 顔を赤くしてあたふたしながらも2人が一緒の家庭を想像してしまい、さらに顔を赤くする先生。

「アイツは学生だぞ。それに年も離れている。そんな事は……」

 それからしばらくの間一二三を見ると顔を赤くする織斑先生が居たとか居ないとか。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その21

 俺の後ろ(・・・・)から簪さんの声が聞こえた。……何故だ、簪さんのベットには膨らみがあるのに。

 

「……ねえ、どこに行ってたの四五六君」

 

 俺が混乱している間に簪さんは俺の真後ろまで移動し俺の耳の真裏で囁くように問いただす。

 

「私ね、さっき四五六君が私みたいな子が好きって聞いて本当に嬉しかったんだよ?」

 

 後ろから手を回し俺に抱きつき話だす簪さん。

 

「この前、四五六君と一緒に出かけた時に分かったんだよ」

 

 抱きしめる力が強くなる。でもその腕は微かに震えていた。

 

「私は、わたし、は……四五六君の事が好きだって」

 

 簪さんの口からハッキリと告白の言葉が出た。

 

「ねぇ、四五六君は、四五六君は私の事、嫌いなの……」

 

「ちがっ」

 

 簪さんの言葉を否定しようと腕を振りほどき向かい合い見た簪さんの顔は

 

「私の事、嫌いじゃない、なら……」

 

 眼を涙で潤ませながらも必死で堪え、俺の言葉を待っていた。

 

 その姿を見た俺は数時間前の俺を殴り飛ばしたかった。俺は簪さんをこの世界に生きている一人の人物として見ると決めたのに、決めたのに結局どこかで簪さんを小説のキャラクターと思い込んでいたのだ。……馬鹿だ俺は!!今目の前に居る簪さんは小説のキャラクターなんかじゃ決して無い。

 目の前に居るのは自分の思いが否定されるんじゃないかと不安になりながらも必死で耐えている一人の人間じゃないか。

 それを俺は原作に介入したくないだとか馬鹿な理由で簪さんと向き合う事から目を逸らしていたんだ。

 其処まで思った時、俺は、俺自身の気持ちにハッキリと気が付いた。

 

「……簪さん」

 

「し、ごろくん」

 

「俺は、一二三四五六は更識簪の事が好きだ」

 

「っ!!」

 

 その言葉を聞いた簪さんは両目から溢れんばかりの涙を流した。

 

「ごめんね、俺がハッキリとした態度を取らなかったせいで簪さん、いや簪には不安な気持ちにさせてしまった」

 

 向き合いお互いに目と目を合わせる二人

 

「だから、簪」

 

「四五六く、ん」

 

 お互い言葉も無く、けれども2人は分かっていたかのようにキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「う〜ん……朝、か」

 

 日の光が部屋に入ってきて目が覚める。……今日この日の目覚めは俺が生きてきた人生の中で一番気持ちがいい日だった。なぜなら

 

「う…ん」

 

 俺の横には簪が居るからだ。

 

「……おはよう、四五六」

 

「うん、おはよう、簪」

 

 2人はお互いに微笑みながら挨拶を交わす。昨日お互いの思いを言い合い、恋人になった俺たちは夜遅くまで2人でお互いの事を話しあった。

 

 そして夜も更けてきて寝ようと言う時に簪から

 

「その、四五六……い、一緒に寝よ?」

 

 と、顔を真っ赤にしながらそういわれて俺も顔を真っ赤にしながら

 

「わ、分かった」

 

 と、承諾して2人で一緒に寝ることにした。お互いに顔を真っ赤にしながらでも、手と手を繋ぎながら眠りについた。

 

「……シャワー、浴びてくるね」

 

「分かったよ」

 

 簪が浴室に向かうのを横目に改めて考える。

 

(俺はいままで何かしらと理由をつけて言い訳をして逃げてきた。……でもそれも今日でお終い)

 

 日の光が入る窓から外を見る。其処には雲ひとつ無い青空が見えていた。

 

(俺は、俺自身の意思でこの世界で生きる!!)

 

 視線をずらし思ったのはこの世界に生まれて手に入れた八卦龍(チート)の姿。

 

(だから、お前とはお別れだ。俺はこの世界で手に入れた力で戦って、守ってみせる)

 

 自らの意思で八卦龍と別れを決める一二三四五六。

 

 その瞳には力強い意思が見えていた。

 

 





……アレ?え、ちょっと待って?可笑しいぞ、どうしてこうなった?なんでだ、何でこうなる????


四五六君が作者の意思から独り立ちしたようです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 その6

 私は今、一人残された部屋で四五六君の事を考えています。

 

 彼がさっき言った言葉「俺が好きなのは簪さんみたいな人で……」

 私は最初、その言葉を理解できなかった。私は四五六君の事が好きだけど四五六君が私の事をどう思っているかは分からなかったから。

 だから、とっさに出た言葉とは言え四五六君が私の事を好きって言ってくれたのは心が踊るようなような気分になれた。でも四五六君はその言葉を言った後顔を赤くして出て行ってしまった。

 

 その姿に「意気地なし」と呟いてしまったのは悪くないと思う。

 

 私は四五六君の事が好き。四五六君もたぶん私の事が好き。

 そう思っただけで私はとても嬉しかった。四五六君は私を“更識楯無の妹”では無く一人の女の子として見ていてくれた初めての人。一人で機械弄りをして男物のアニメばっかり見ていた私をかわいいって言ってくれた人。かわいいと思った私のために本当の姿を見せてくれた人。

 私は四五六君の事を考えれば考えるほど彼の事が好きになっていった……。

 

 四五六君が部屋を出て行ってからすでに5時間が経過していた。

 

(四五六君、どこまで行ったんだろう?)

 

 いっこうに帰ってくる気配が無い四五六君に対して私は次第に不安になっていく。

 

(何で帰ってこないの。四五六君さっきの言葉なら私、気にしないから。早く帰ってきてよ)

 

 四五六君が帰ってこない。それだけで私はとても不安になってしまう。そうして四五六君が帰ってきたのはすでに深夜を過ぎ、次の日に入った頃だった。

 私はとっさに部屋の隅に隠れ、四五六君が部屋に入って来たとき後ろから、こう聞いた。

 

「……ねえ、どこに行ってたの四五六君」って。

 

 私の言葉を聞いた四五六君は硬直して動かなかった。そんな四五六君の真後ろに回りこみさらに言葉を続ける。

 

「私ね、さっき四五六君が私みたいな子が好きって聞いて本当に嬉しかったんだよ?」

 

 後ろから四五六君がどこかに行ってしまわないように、そばにいると意識で来るように抱きつく。

 

「この前、四五六君と一緒に出かけた時に分かったんだよ」

 

 抱きついた腕にさらに力をいれる。でもその思いに反して私の腕は震えていた。

 

「私は、わたし、は……四五六君の事が好きだって」

 

 そして、私は私の思いを四五六君に言った。言ってしまった。

 

 振り向いた四五六君は私を見て驚いた表情をして、その後少しの間目をつぶり、そして返事をくれた。

 

「俺は、一二三四五六は更識簪の事が好きだ」

 

 その言葉を聞いて理解した時、私は泣いた。両目から溢れるほどの涙を流した。

 

 四五六君が私の事を好きって言ってくれた。それだけで私の中に有った不安な気持ちは吹き飛び変わりに言葉に出来ないほどの幸せな気持ちで一杯になった。

 

 四五六君が私の名前を言う。私も四五六君の名前を言う。

 

 そして私たちは無言で、でもまるで初めから分かっているようにキスをした。

 

 1秒か1分かそれともそれ以上の時間か。私たちはキスを続けた。

 

 そして2人とも同じタイミングで口を離す。

 

「……ン、ハァ……四五六」

 

「なんだい、簪?」

 

「……大好き」

 

「俺もだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん」

 

 私が目を覚ますと私の横で四五六が先に起きていた。

 

「……おはよう、四五六」

 

「うん、おはよう、簪」

 

 朝の挨拶を交わす。たったそれだけの事なのに私はそれが無性に嬉しかった。

 

「……シャワー、浴びてくるね」

 

「分かったよ」

 

 そういって私は浴槽に移動した。

 

(私は四五六の彼女になったんだ……)

 

 熱いシャワーを浴びながらそう思う。

 

「……えへへ」

 

 四五六の彼女になった。そう思うと顔がにやけるのを止められない。その時の私の顔はとてもだらしの無い顔だったと思う。でもそれを止めようとはしない。だってそれだけ嬉しいのだから。

 

「四五六、ずっと一緒にいようね?」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF 千冬ルート

この作品は本編と一切関係がありません。

千冬ルートという事でかなり早い段階から本編にあったフラグが立っていると思ってください。愚痴とかケーキとか。

甘くはないですよ?


 今私の目の前にはどこか不安げな表情をしてそわそわとしている生徒が居る。

 

 名前を一二三四五六(ひふみしごろ)と言う。

 

 私が四五六と出会ったのは今年の4月の事だ。この年私の愚弟がISを動かすというとんでもない事をやらかし、そのせいで急遽国が始めた男性の適合検査で見つかったのが四五六だ。

 始めて四五六を見た時は愚弟に比べると地味だと感じた。まあ私の愚弟と比べるのはどうかと思ったのが比較対象が愚弟しか居なかったのでは仕方ない。

 見た目は地味だが四五六は生活態度はきわめて良好で礼儀もしっかりとできていた。まったく、愚弟にも見習わせたい物だ。

 

 この頃はまだ意識などする事もなく一生徒と担任、唯それだけの関係だった。

 

 この関係が変わってきたのは、二組に転入生が入ってきた頃だったかな。この頃は愚弟が引き起こす女性関係のトラブルの後処理に私が何度も頭を下げていた頃だ。

 IS学園と言う特殊な環境においてトラブルを起こすな、とは言わないがこうも毎日毎日小さい事から大きな事と愚弟は様々なトラブルを引き起こしてくれる。

 その事に私が何度頭を下げた事か。……まあ愚弟には今までいろいろと苦労をかけてきたからこれくらいはしてやらなくてはな。

 

 そんなある日の事だ。私がプリントの作成に必要な書類を運んでいる時、四五六が声をかけて来た。「織斑先生、荷物持ちましょうか?」とな。

 その時の私はそれまでのトラブルの後処理から来る疲労で普段なら頼む事などしないのにその時は素直に四五六に頼んでしまった。

 

 今思えばこの時から四五六との付合いが始ったのかもしれないな。

 

 運んでいる最中に四五六が話しかけてきた。

 

「織斑先生、最近疲れているんじゃないですか?」

 

「……何故そう思う?」

 

「う〜ん、なんとなく、かな」

 

「なんとなく、か」

 

「あ、後は一夏の事とかで」

 

「……」

 

「……もしかして当たり、ですか」

 

「……そうだ」

 

「ハハハ……」

 

 私が苦渋の表情で肯定すると四五六は乾いた笑みで笑っていた。

 

「織斑先生、愚痴ぐらいなら聞きますよ」

 

「……聞いてくれるか?」

 

「先生にはいろいろお世話になってますから」

 

 この時の私は相当疲れていたのだろう。愚痴を聞いてもらう、しかも年下の男性、というか生徒に。普段の私なら絶対にしない事をしてしまったのだ。

 

「なら、今晩寮長室に来い。あそこなら防音がしっかりそしてあるからな」

 

「分かりました」

 

 そうしてその晩、言われた通りに四五六はやってきた。

 

「失礼します」

 

「四五六か。入れ」

 

 そうして始る私の愚痴。

 

「一夏は女性関係で〜」「山田先生は〜」「学校の教育で〜」

 

 と言った具合に愚痴とは言っても当たりさわりの無い事を話していたのだが、話している途中で喉が渇きついいつもの癖で水ではなくビールを飲んでしまったのが運の尽き。

 

 其処からはアルコールが入ったせいでどんどん愚痴の内容が過激になっていった。それでも四五六の奴は何も言わずただ聞いていてくれた。

 私は過度にアルコールが入ると絡み始めしかも傍若無人に振舞いさらにその時の事をハッキリと記憶しているので人まえではアルコールを控えているのだが疲労やら何やらでその時の私はガンガンビールを飲んでいき飲むにつれて私は四五六に絡んでいった。

 

 私はこの癖のせいで何度か苦い経験をしたしさせてしまったこともあるのに四五六は酔っ払いの私に対して何をするわけでもなくただ私の愚痴を聞き続けてくれた。

 こんな風に私の愚痴を聞いてくれるのは初めてだった。今まではこの姿を見ると態度を変える者ばかりだったのに……

 気が付くと私はベットの中で寝ていた。寝室から出てテーブルの台の上をみて見ると四五六が書いたメモが乗っていた。

 それには昨日の愚痴の事は秘密にしておく、と書いてあった。ついでに軽く掃除と朝食を作っておいたとも。

 四五六が作った朝食はおいしかった。誰かの手料理なんて愚弟が作る物以外では初めてだったがそれはとてもおいしく感じられた。

 それからと言う物四五六には愚痴を聞いてもらうことが多くなった。四五六に聞いてもらうとなんと言うかとてもスッキリとした気分になれるからだ。

 

 そうした中珍しく今日は四五六の方から相談があるといわれいつものように寮長室に集まり話を聞くことに。

 

「……で、四五六。話とはなんだ?」

 

「えっと、その……」

 

「なにか言いづらいことなのか」

 

「……はい」

 

 シュンとしてうな垂れる四五六。

 

「ゆっくりでいい。すこしづつ話してみろ。しっかりと聞いてやる」

 

「……その」

 

 意を決したように話し出す四五六。

 

「その、俺の髪と目の色の事なんです」

 

「髪と目の色?」

 

「はい」

 

「色がどうしたというんだ?」

 

「……俺本当は銀髪と赤と青のオッドアイなんです」

 

「……なに?」

 

 四五六から出てきた話は驚きの物だった。黒髪黒目の青年は実は銀髪オッドアイだったとは。

 

「俺、この色のせいでいじめられた事があってそのせいで今みたいに黒くしてるんですけど……」

 

「それで?」

 

「……この前から大浴場が使用できるようになったじゃないですか」

 

「そうだったな」

 

「そこで、その一夏にばれてしまって……」

 

「……」

 

 其処まで聞いて私は頭が痛くなった。

 

「一応口止めはしておいたんですけど、その不安で」

 

「……分かった。私からもきつく言っておこう」

 

「お願いします。織斑先生が頼りなんです」

 

 少し涙目で私に頼ってくる四五六を見て胸がキュンとなったのは秘密だ。

 それからしばらくの間、目だった問題等は起きなかった。さすがにアレだけきつく言っておいたのだ。早々喋る事もあるまい。

 

 

 ……と、思っていたのだがなぁ。

 

 

 事の始まりは愚弟がいつものメンバーと話しているとき、髪の色の話になったことだ。あいつはアレだけきつく言っておいたのも関わらずにうっかりと喋ってしまったのだ。

 それだけならまだ何とかなったのだが場所が悪かった。その話が出た場所はお昼時の食堂だったのだ。そのせいでたった数日で学園中にその話が広まり気がついたときには収集が付けれないほどだった。

 そのせいか四五六は常に人の目線に怯えるようになっていた。女子達は本人に確かめようとはしていなかったがそれも時間の問題だ。

 私は愚弟を物理的にきつく締め上げた後、四五六を呼んだ。

 

「四五六、すまなかった。家の愚弟が迷惑をかけた」

 

「先生が謝る事じゃ……」

 

「それでもだ。愚弟が迷惑をかけたことには変わりはない」

 

「……」

 

 頭を下げる私に無言で返す四五六。

 

「……一つ聞いてもいいか」

 

「……なんですか」

 

 私は相談されたときから気になっていたことを聞いてみた。

 

「一体なぜいじめられたのだ?銀髪とオッドアイだけなのだろう」

 

「それ、は……」

 

「いや、すまない。これは私の失言だった」

 

「いや、その……先生にはき、聞いてもらいたいです」

 

 そうして話される四五六の過去。

 

 いじめの切欠となったのは両親との違いだったそうだ。四五六の両親は黒髪黒目に対して生まれてきた四五六は銀髪でオッドアイだった。

 そのせいで小さい頃から四五六の両親は四五六の事で言い争っていたそうだ。「本当に俺の息子なのか?」と父親は疑い、それを否定する母親。それでも父親は母親に対して浮気の疑念を常に抱いていたそうだ。

 そんな風に小さい頃から自身の事で言い争ってきたのを見てきた四五六。そんな中四五六が小学校に入学してからクラスメイトにその事を言われ、そのことを否定仕切れない事がいじめに発展したそうだ。

 

 そうしたことが有ったから四五六は自身の髪と目の色を嫌い黒くして目立たないようにするようになったそうだ。

 

「……そんな事があったのか」

 

「……はい」

 

 今にも泣きそうな顔で話し終えた四五六。情けない事に私はこんな時どんな言葉を掛けていいのかわからなかった。

 だから私は四五六を優しく抱きしめた。

 

「せ、んせい?……」

 

「私は不器用だからな、こんな事しかできないんだ」

 

 優しく抱きしめながら幼い子供をあやす様に頭を撫でる。

 

「四五六、今まで辛かっただろう」

 

「せん、せい……」

 

「だからな四五六.私の胸の中で好きなだけ泣くがいい。私が受け止めてやろう」

 

「う、ううぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁん」

 

 今まで溜め込んでいた物を吐き出すように泣き出す四五六を見て私は抱きしめる力を強くする。

 

 四五六が泣き止むまで私はずっと抱きしめていた……

 

 この事が切欠となり四五六は私と2人の時になると私に甘えて来るようになった。子供の頃親からもらえなかった愛情を今になってえようとしているかのように……

 そんな四五六に対して私もついつい甘やかすようになってしまった。無論2人きりの時だけだ。普段の生活ではそんな事はしないからな。

 

 私に全幅の信頼を寄せながら甘えてくる四五六。そんな四五六に苦笑しながらも応える私。

 

 何時までこの関係が続くかは分からない。でも私はきっとこの先も四五六と関わっていくだろう。

 

 なぜなら私は四五六の事を……

 

 




千冬ルートは千冬さんがヒロインじゃない、四五六がヒロインだったんだよ!!

Ω、ΩΩ<ナ、ナンダッテーー!!

別に可笑しくはないよ?だってちゃんと書いてあるからね、ルート説明のところに。

最後の千冬さんの答えは皆さんの思い思いの言葉を入れていただければ幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF 千冬ルート in デート

 私事、織斑千冬は今とても緊張している。こんなに緊張したのはモンド・グロッソ決勝戦の時以来か、いやもしかしたら決勝戦よりも緊張しているかもしれない。

 何故こうも緊張しているのか?それは私の隣でのんきにも笑いながら歩いている四五六のせいだ。

 

 ことの始まりは学園行事も終わり長期休暇が始る直前に遡る。

 

 この頃私と四五六の関係は教師と生徒、と言うよりも年の離れた兄妹のような関係になっていた。無論2人だけの時だが。

 四五六から髪と目の色の相談を受けた頃から私たちはよく2人で会うことが多くなっていた。それこそいろいろな理由をつけて呼び出したりISの特訓と称して二人っきりになってみたりと、ちょっといき過ぎた感じになってしまっているが、まあ大丈夫だろう。別にやましい事などしていないからな。

 

 さてそんな風に過ごしてきた時、四五六からこう切り出された。

 

「今度の長期休暇の時、一緒に出かけませんか」と。

 

 私は特に考える事もなく引き受けた。その時、私は特に意識することもなくただ普段のやり取りの延長のように思っていたからだ。が、その意識を変えさせられたのは当日が近くなってきたある日の山田先生との会話だ。

 

「織斑先生、最近調子がよさそうですね」

 

「そう見えるか?」

 

「ええ。なんと言うか、こうイキイキしている感じが……」

 

「そう、かも知れないな」

 

 私はそう指摘されて自然に微笑んでいた。その時に思っていたのは四五六とのやり取りだった。

 だから次の山田先生の言葉に咽こんだ。

 

「織斑先生に好きな人が出来たって噂、本当だったんですね〜」

 

「ゴホッ!!何だって!?」

 

「だって最近の織斑先生は以前のような凜とした雰囲気が嘘みたいにやわらかい雰囲気になったって生徒の皆は言っているし、職員室でも時折優しい笑みを浮かべているじゃないですか?」

 

「な、な、な」

 

「だから生徒や教師の皆は織斑先生に彼氏ができたんじゃないかって皆噂していますよ?」

 

「ち、違う!!アイツとはそんな関係じゃ……はっ」

 

 其処まで言って私は自身の失言に気がついた。

 

「アイツって噂は本当だったんですね!!」

 

「いや、それは……」

 

「普段は凛とした織斑先生が彼氏の前では一人の女性になって穏やかな笑みを浮かべて言葉を交わし、交際を重ねるごとにだんだんと2人の距離は短くなっていき、そして2人は……きゃーーー」

 

 顔を赤く染め頬に手を当てて体をくねらせている山田先生を無視して私は考え込む。

 

(彼氏って四五六とはそんな関係じゃない!!アイツとはそのなんだ、親子のような関係であって決して彼氏などでは無い!!それに私の好みは私を最強のIS操縦者(ブリュンヒルデ)として見ないで織斑千冬として見て対等に接してくれる奴だ。……ん?)

 

 其処まで考えてみて思い直す。

 

(四五六は最初から私の事を最強のIS操縦者(ブリュンヒルデ)としてではなくて織斑千冬個人として接してくれたな。それに私の悪い癖である絡み酒にも毎回毎回文句を言わずに付き合ってくれてるし、私ができない掃除や洗濯料理なども一夏以上にできるな。顔や体つきもなかなかいい感じに私好みだし、私個人にだけ甘えてくることも可愛いじゃないか。それに時たま見せる男らしさはこう、グッと来る物があるな)

 

 こうして思い直すと私は四五六の事をかなり見ていたのだ。

 

(うん。こうして考え直すと四五六は彼氏と考えるとかなりいい感じじゃないか……って違う!!そうじゃない!!と言うかそもそもアイツと私は教師と生徒じゃないかーーー!!!)

 

 頭を抱えて唸りだす私。隣には未だに体をくねらせ妄想に入り浸っている山田先生。たまたまこの光景を見てしまったL・Bは後にこう語った。

 

「あの光景は私にとってのトラウマだ」と。

 

 そんな感じに私が四五六との関係を思い直してから数日が立ち、四五六と出かける当日になった。

 前日に私はその、どんな服を着て行こうかで迷ってしまいなかなか寝ることができなかった。こんな事を相談できるような人物はいなかったからだ。山田先生はきっと妄想に耽ってしまいそうだし、生徒に相談するわけにもいかず、一夏や束などは持っての他だ。

 

 そうして朝、寝坊してしまい慌てて服装を整えて待ち合わせの場所に向かった。

 

「あ、こっちですよ〜」

 

「すまない。遅れた」

 

「いえいえ、俺も来たばっかりですから」

 

 先に待ち合わせの場所に来ていた四五六に呼ばれて其処に向かうと……まあ普段通りの地味な感じの四五六がいた。

 

 失礼だと思ったがその姿に安心した。四五六の普段の姿に先日までの彼氏彼女などと言う思いはなくなったからだ。

 

「じゃあ、いきましょうか」

 

「ああ……そういえば今日は何所に向かうんだ?」

 

「まずは服屋さんですね」

 

「服屋?」

 

 そうして四五六に言われるがままにつれて来られたのは少し路地に入った小さな個人経営の服屋だった、

 

「此処が俺がお世話になってる服屋です」

 

「おや、ごろじゃないか。よく来たな」

 

 店の置くから現れたのは白髪交じりの髪をした優しそうな雰囲気の老人だった。

 

「あ、おじさん。こんにちは」

 

「こんにちは。今日はどうしたんだい?こんな別嬪さんを連れて?」

 

「えっとこの人に似合う服を見繕ってくれますか?後俺の服も」

 

「服をねぇ。ごろはいつも通りでいいんだね?」

 

「……ううん。“自分”に似合う服でお願いします」

 

「!!……そうかい。分かった先にこの人から見繕うからごろは少し待ってな」

 

「お願いします」

 

「では、お嬢さん。此方に」

 

「あ、ああ」

 

 そう言われ私はこの老人に連れられて店の奥にある試着室につれて来られた。

 

「さて、どんな服がいいかねぇ。素材がいいから迷っちまう」

 

「あの、ご老人は四五六とはどの様な関係で?」

 

 四五六と親しく話すこの老人のことが気になり私は聞いてみた。

 

「なぁにごろとは、ごろがガキの頃からの付き合いなだけさ。まあワシにとって孫みたいなものよ」

 

「そうなんですか……」

 

「さ、時間もないしさっさと見繕っちまおう。お嬢さんその鏡の前に立ってくれるか」

 

「はい」

 

 そうして鏡の前に立った私の後ろで老人は私の体の寸法を測り服のサイズを直し始めてた。

 

「……ごろはな」

 

「え?」

 

「ごろは小さい頃はそれはもう可愛かった。まるでお人形さんのようにな」

 

「……」

 

 老人が四五六の昔話をし始めたのを私は黙って聞きく。

 

「小さい頃はよくワシの店に来て毎日楽しそうにわらっとったよ」

 

 時計の音と老人の仕立ての音だけが響く。

 

「だがある時期を境に笑わなくなっちまった。それに綺麗だった髪と目の色を変えちまってな」

 

 その頃を思い出し手を止める。

 

「だが最近はまた笑うようになったのよ。誰のおかげかは知らんがの」

 

 そう言いつつもその顔は私を見ながら優しく笑っていた。

 

「さ、できた。着てみてくれるか?」

 

「な!!これをですか!?」

 

 渡された服を見て私は驚愕した。

 

「んん?着方が分からんのかね?」

 

「違います!!そうじゃなくてこんな服は私には……」

 

「大丈夫だ。お前さんならきっと似合うわい」

 

「だ、だが……」

 

 どうしてもこの服を着ることに抵抗があった私に老人は呟く。

 

「ふぅ……ごろがやっと自分の髪と目の色を戻そうとした相手がこれかねぇ」

 

「戻すってどういう事ですか?」

 

「ごろはさっき“自分”にと言った。それは今のように色を変えた俺ではなく変える前の自分に似合うように、と言う意味で言ったのだ。ごろにとって髪と目の色を元に戻すのは相当の覚悟がいることだ。それを決心させた相手がこんなんじゃねぇ……まあよいか。着たくないならしょうがない。今のごろに釣り合う地味な服装で……」

 

「待って、待ってください」

 

「どうしたんだい」

 

「……ます」

 

「うん?なんだって」

 

「この服を着ます、と言ったんです!!」

 

「ホッホッそうかいそうかい着てくれるか」

 

「……うぅ」

 

 意地の悪い顔で笑う老人を背に私は試着室に入り服を着替える。……うぅ、こんなスースーする服は恥ずかしい。

 

「……き、着れました」

 

「ホッホッ、ごろの目利きは確かだね」

 

「うぅ」

 

 白と濃い青をベースに所々にフリルのレースを使用した、詰まる所ゴスロリのような服装を着せられていた。さらに変装用なのか度の入っていないメガネにフリルがついたカチューシャを着け髪形も普段の髪形からポニーテールのようにひと括りしてあった。ただ問題があるとすれば

 

「どうしてスカートの丈がこんなに短いんだ!!」

 

「ホッホッホッ」

 

 そう、この服装やけにスカートの丈が短いのだ。

 

「なぁに心配するな。大丈夫似合っておるからな」

 

「そういう問題では……」

 

「ではお嬢さんはここで待っておってくれ。ワシはごろを着替えさせてくるからの」

 

「な、ちょっと……」

 

 そういってそそくさと出て行く老人。

 

「ど、どうしよう。勢いで着たは良いものの私にこんな服は……」

 

 そう言いながら改めて自身の姿を鏡で見る。

 

「……」

 

 其処に写っていたのは紛れも無い自分自身。だが似合わないと思ってはいたのだがこうして見て見るとだんだんと似合っている気がしてきた。

 私とて女だ。可愛い服を着てみたいという思いはある。だが流石にいい年してミニスカートは……

 

「先生?」

 

「!!し、四五六か!?」

 

 急に後ろから声を掛けられて驚き振り向いた場所にいた四五六は……

 

「その、似合いますか?この格好」

 

 其処にいたのは普段の黒髪黒目の四五六ではなくサラサラの銀髪に赤と青のオッドアイで服装も一流モデルさえ霞むようなコーディネートで少し照れくさそうにしている四五六の姿だった。

 

「どう、ですかね?似合いますか?」

 

「……」

 

「先生?」

 

「あ、いや、うん。その……似合っているぞ」

 

「よかった。そう言ってくれて。先生もとっても可愛いですよ」

 

「か、かわ!!」

 

 カッコいいとか凛々しいとかは言われた事は有っても可愛いとは言われた事がなかった。……体の温度が上がっていくのがわかる。

 

「ホッホッホッ、お2人ともよく似合っておるな」

 

 老人が穏やかな顔つきでそういう。

 

「そうだ、記念に写真を一枚どうかね?」

 

「写真?そうだね、記念にお願いします」

 

「ま、待て四五六、この姿で撮るのか!?」

 

「ダメ、ですか」

 

 ええい、そんなカッコいい姿で捨てられた子犬のような雰囲気を出さないでくれ。

 

「……一枚だけだからな」

 

「はい!!」

 

 そうして私たちは写真撮影をした。一枚だけのはずが四五六と老人の言葉巧みな話術で結局数十枚は撮られた。

 

「現像できたら連絡するからな」

 

「ありがとう。おじさん」

 

 老人に挨拶をして外に出た所で私は気がつく。

 

(この姿で外で出歩く?……この姿で!?)

 

 改めてこの姿を思い出しまた顔が赤くなる。

 

「さ、いきましょう先生。あ、外で先生はダメか……じゃあ千冬さんいきましょう」

 

「え、あ、まって……」

 

 私が考えているうちに四五六は私の手をとりどんどん先に進む。私はこの服装と急に名前で呼ばれたことで軽い混乱状態に陥り抵抗ができなかった。

 

「見てあの2人。何所のモデルかしら」

「うわ〜2人とも素敵だな〜」

「銀髪オッドアイの美青年に黒髪ロングのゴスロリ美女。……くっ負けた」

「くそぅ、イケメンリア充爆発しろ!!」

 

 私たちの姿を見た周りの人たちがなにやら囁いているが今の私には聞こえていない。こうやって異性とて、手を繋ぎながら外を出歩くのは初めてのことだし、こんなフリフリが着いた服を着るのも初めてなのだ。もういろいろと一杯一杯だった。

 

「千冬さん?どうかしましたか」

 

「え、いやなんでもない。大丈夫だ四五六」

 

「でも顔が赤いですよ?熱が有るんじゃ……」

 

「だ、大丈夫だ。問題ない」

 

 私が緊張のせいで顔が赤くなっているのを熱があるのと勘違いした四五六のとった行動は

 

「う〜ん、熱はないようですね」

 

 私のおでこと四五六のおでこを当てて熱を測るという行動だった。

 

「な、な、な!?」

 

 パニックに陥る私。

 

「きゃ〜〜!!いいわ、いいわ!!」

「羨ましい、私もあんな彼氏が欲しい!!」

「パルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパルパル」

 

 そして四五六の行動にざわめく周囲の人々。そんなやり取りをしながら私たちは町を歩く。

 その過程で一夏たちと出くわしそうになったり正体がばれそうになったりしたがそれはまたの機会に語るとしよう。

 

 

 

 

 

 後日、老人から送られてきた写真は私の部屋の机の中に大事に仕舞ってある。これは私と四五六の2人だけの宝物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人で出かけて数日後、町に美男美女の2人組みが出現した、との話で持ちきりだったのは余談である。




服装は水〇燈見たいな感じで。
普段は凛とした雰囲気を出している千冬さんが頬を赤く染めゴスロリを着こんで(ミニスカで)小声で「み、見ないでくれ……」と呟く。


この攻撃に耐えられるか!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF 千冬ルート お酒は二十歳から

思いのほか千冬ルートが人気だったので新規書き下ろしです。

お酒は二十歳になってから。作者との約束だ。

千冬ルートは残念ですがこれでおしまいです。作者の次回作にご期待ください(笑)


































あと、今回の話は健全だから(震え声)


 深夜零時を過ぎたIS学園寮長室。そこに備え付けられたベットの上に二人の人間が倒れこんでいた。

 

 いや、倒れこんでいるのではない。その姿は男が女を押し倒しているような姿であった。

 

 押し倒された側の肌は汗をかいたせいかしっとりと濡れており、その瞳は押し倒されたショックかそれとも別の要因なのか潤んでおり、キスが出来そうなほど近づいた口からはかれた吐息は鼻で吸い込むと、どこか甘い匂いがした。

 倒れこんだ拍子にはだけた胸元から見える鎖骨のラインは深夜に男女二人っきりと言う事もあり、どこか妙にいやらしく感じてしまう。

 

 そんな状態のなか押し倒された側の人間が、押し倒した側の手を掴みはだけた胸元に持ってくる。

 

「わかります?この心臓の音が」

 

「あ……」

 

 胸に直接触らされた手のひらから伝わる人の温かさとドクン、ドクン、と脈を打つ心臓の鼓動音。

 

「あの日から好きに、ううん……大好きになりました」

 

 視界全体に映る相手の顔はアルコールで酔ったのか、それとも別の要因か、頬を赤く染めていた。

 

「だから……」

 

 言葉をそこで切り、ゆっくりと瞳を閉じてわずかに口元を上げる。それはキスの合図。それを見て押し倒した側が思った事は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(どどど、どうしてこうなったああぁぁ!?)

 

 激しく混乱していた。

 

 織斑千冬、2○歳。三十路まじかの喪女には恋愛の経験が足りなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、IS学園教師である織斑千冬は油断していた。

 

 数日前、同僚である山田真耶からおすそ分け(余り物の配布ともいう)で貰った見た目ジュース缶のような缶チューハイを自室の冷蔵庫に入れたままかつ、普通のジュース缶も入れてしまったこと。

 

 彼、一二三四五六との晩酌をもう何度も繰り返しているが何もなかったことに対する危機感の低下に晩酌は終末の夜にしていた事。

 

 そして何より、彼が“アルコールに極端に弱い”という事実を知らなかったこと。

 

 これら複数の事象が重なった時、織斑千冬にとって幸福でありながらも背徳感のある出来事が始ったのだった。

 

 

 

 

 

 事の始まりは毎週金曜日の夜に開かれる勉強会、と言う名目の晩酌であった。

 

 初めて四五六に愚痴を聞いてもらった日から何度となく愚痴を聞いてもらう内に週の終わりである金曜日の夜に勉強会と銘打って集まる口実を作りそこで晩酌というなの勉強会を開いていた。無論四五六と千冬の二人だけである。

 まあ、内容は千冬がIS学園での愚痴を永遠と零しながら四五六の手料理を食べているというグダグダな内容であるが。

 

「ぅ~ヒック、四五六~ツマミは~?」

 

「いま、出来ましたよ」 

 

 寮長室に備え付けてある簡易キッチンから茹でたてのソーセージを皿乗せて酔った千冬の前に置く四五六。

 

「あんまり見ない種類のソーセージですね。どうしたんですか?」

 

「ん~?ああ、この前ラウラが祖国からの差し入れだとか言って持ってきたやつだ。美味いぞ」

 

 茹でたてで熱々のソーセージをフォークでブスリと刺し、大口を開けてガブリと千切り咀嚼してから冷たい缶ビールをグビグビと音を立てて飲む千冬。千冬信者の人が見たら卒倒しそうな姿である。

 

「相変わらずの飲みっぷりですね」

 

「飲まなければやってられんのだよ……」

 

 スーツ姿でどこか哀愁漂う姿の千冬。それを見て苦笑しながら笑う四五六。勉強会という晩酌が始まってからはおなじみの光景となっていた。

 

 二人は教師と生徒と言う間柄だがその姿を他の人が見たら恋人同士と疑われても否定できないほどに二人はお互い気を許しあっていた。

 

「じゃあ、僕も一つもらいますね」

 

 パクパクモグモグと食べる千冬の姿を見ながら四五六もソーセージの山から一つ刺して一口食べたのだが、

 

「……ッ、ケホッ、か、辛い」

 

 どうやら唐辛子が入ったソーセージを食べてしまったらしい。慌ててキッチンに向かい水を飲む四五六。そんな姿を見た千冬は笑い出す。

 

「ハハハ、四五六お前は辛いのは駄目か。お子様舌だな~」

 

「うぅ~。いいじゃないですか、辛いものが駄目でも」

 

 辛かったせいか少し涙目になって千冬を睨む四五六。

 

「ハッハッハ、悪い悪い。そうだ、冷蔵庫の中にジュースがいくつか入っているからそれを飲むといい」

 

 ケラケラと笑う千冬をよそに少しふて腐れながらも冷蔵庫を開けてぶどうと名前がついた缶ジュースの蓋を開けて飲む四五六。

 

 この時千冬が一言、缶チューハイが混ざっている、と注意しておけばあんな事態にはならなかっただろう。だがすでに後の祭りである。

 

「……」

 

 缶ジュース?を飲み干した四五六がフラフラと歩きながら戻ってくる。

 

「うん?どうした、四五、六……」

 

 さっきは千冬の正面に座っていたのに座っていた椅子を引きずって千冬の真横に置いて座る四五六。そして千冬の方を向いて一言。

 

「えへへへ、千冬しぇんしぇ~」

 

 にこにこと笑いながら千冬に抱きついてきたのだった。

 

「し、四五六!!どうしたんだ!?」

 

 普段の姿からは想像できない行動にうろたえる千冬。そんな千冬にもお構いなしに抱きつく四五六。

 

「は、離さないか!!」

 

「千冬しぇんしぇは僕のこと嫌いなの」

 

 うるうると瞳を潤ませて上目遣いで見上げる四五六。さらに捨てられた子犬の如く千冬には四五六に伏せられた犬耳と尾がついているのが見えた。

 

「そ、そんなことはないぞ」

 

「ホント!!」

 

 千冬の言葉にさっきまでの捨てられた子犬のような雰囲気は消え去り今度は褒められた子犬のように耳をピンと立てて尻尾をブンブンと振る姿を幻視した千冬。

 ちなみにこの時の四五六は普段の偽造した姿である黒髪黒目で地味なめがねを掛けた姿ではなく、サラサラの銀髪に赤と青のオッドアイで、めがねは掛けていなかった。

 そんな美少年な四五六が満面の笑みでかわいい子犬の雰囲気を出しながら、好き好き、と言いながら抱きついてくる。

 

 千冬の胸がキュンとなった。

 

(い、一体どうしたというんだ?これはまるで酔っ払いのよう、だ……ハッ)

 

 千冬は四五六に抱きつかれながらもキッチンの方を向く。そこには飲み干された缶が置いてあった。そしてその缶には“ぶどうサワー”と書かれたあった。

 

(あ・れ・かーーー!!!)

 

 以前、山田先生からもらった缶チューハイを四五六は缶ジュースと間違えて飲んでしまったのだ。

 

「……アルコールに弱いにも程があるだろう」

 

 千冬の呟きに頭を傾げる四五六。そんな時四五六のお腹からクゥ~と音が鳴った。

 

「あ……えへへ、お腹すいちゃった」

 

 そう言って四五六はフォークでバジルの粒が混じったソーセージを刺して口に運び、食べた……食べたのだが

 

「ンッ、ア……おっひいよぉ」

 

 ソーセージ自体が太いのと四五六が大きく口を開けなかったせいか無理やり口を大きく開けさせるように入っていくソーセージ。まだ茹でたてでありうっすらと湯気を上げる、緑の粒が混ざってはいるが茶色で太く長い肉の棒を一生懸命に口に含む四五六。一気に食べようと口の奥まで飲み込んだものの噛み切ることが出来なくて口から引き抜く。引き抜かれた肉の棒の皮には四五六の唾液がつき肉の棒の持つ油と混ざり、ヌラヌラと光っていた。

 

「んひゃぁ……ングッングッ、熱くて苦いよぅ」

 

 どうにかして必要分を口に含んだのだがどうやら先端部分がパンパンに膨らんでいたせいか、四五六に舐められた衝撃でパンパンに膨らませた水風船の口から水が噴出すように(茹でられて)熱くて(バジルの味で)苦い肉の汁を口いっぱいに味わうこととなった。

 

 美少女と見間違えるほど綺麗な美少年が茶色くて(肉の色)熱く長い肉の棒(茹でたてバジルソーセージ)を口いっぱいに含みつつ喉の奥まで咥え込んだあと、ゆっくりと引きずりだした後咥えた肉の棒の先端からあふれ出た肉汁を顔の表情を苦さに歪ませながらも懸命に飲み込んでいく。

 

 千冬の鼻から、たらりと赤い液がこぼれ落ちた。

 

 

 その後、缶チューハイ一本で酔ったとは思えないほどの酔いっぷりでひたすらに千冬に甘え続けた四五六。実の弟である一夏にでさえここまで甘えられたことはない千冬は終始押されっぱなしであった。

 誰かに頼られることはあっても甘えられることはなかった千冬。初めての感覚に戸惑うばかりで四五六を引き離すことが出来ない。そして四五六のほうも甘えかたがエスカレートしていく。最初はただ軽く抱きつくだけだったが時間がたつにつれて抱きつく力が強くなり、さらに頭を猫が自分の匂いをこすり付けるが如く千冬の胸にこすり付ける。しかもその行為には一切邪気がない。ごくごく自然に頭を千冬の胸にこすり付け、まるで赤ん坊のようである。

 

 さすがにこれ以上はまずいと感じた千冬は抱きついている四五六を立たせて一緒に寮長室にあるベットまで運び横に寝かせようとした。が、あと数歩のところでアルコールでフラフラしていた四五六が足をつまずかせこけて方を貸していた千冬も一緒にこけてしまった。

 

「いっつつ……四五六大丈夫、か」

 

「しぇん、しぇ……」

 

「え?」

 

 目を開けるとそこにはベットに倒れこんだ四五六を押し倒している自分がいた。

 

 そして時間は冒頭に戻る。

 

 

 

(ど、どうすればいいんだ!?こんな時に私はどうすればばば)

 

 事故とは言え教え子である男性、いや年下の男の子を押し倒してしまったこの状況に喪女に片足を突っ込んだ(両足とは言わない)千冬、2○歳。すでに限界であった。

 

「四五六、私は、私は……」

 

 自分自身の心臓の音が頭に響く。まるで早くキスをしろと千冬を駆り立てるかのように。

 

「わた、し、は……」

 

 磁石のS極とN極が引き合うように千冬の口が四五六の口に引き寄せられていく。ゆっくりとしかし確実に近づく二人。

 

 そして二人の唇が触れ合う瞬間、千冬の意識は暗転した。

 

 最後に千冬が感じたのはマシュマロのように柔らかい感触であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハッ!!」

 

 跳ね起きる千冬。あたりを見回すとそこは見慣れた寮長室のベットの上であった。

 

「……夢、か?」

 

 思わずそう口ずさむ千冬であったがそれにしてはリアルすぎる夢である。ベットから降りて立ち上がりリビングに向かう。リビングのテーブルの上にはすっかり冷め切ったソーセージの残りと中の無い缶ビールが何個も置いてあり昨日の事が夢ではないという証拠が残っていた。

 そんなリビングのテーブルの上にメモ書きが一枚。手にとって見ると一言「部屋に戻ります」とだけ書きなぐったように書かれていた。

 

「夢じゃなかったのか……」

 

 そう呟きながら無意識のうちに手を口元に当てる。

 

「……ッ!!何を思い出しているのだ私は!!」

 

 頭をぶんぶんと振り思い出される感触を忘れようとする千冬。

 

「水でも浴びて忘れよう」

 

 水を浴びて忘れてしまおうと浴槽に向かい“パジャマ”を脱ぎ捨て、冷水シャワーを浴びる千冬。

 

「……」

 

 冷たい水が千冬の体から汗を流すと同時に雑念を洗い流していく。

 

(昨日は何も無かった。間違えて缶チューハイを飲んでしまった四五六を私がベットに寝かした。それだけだ……うん、それだけだ)

 

 そう自分に言い聞かせる千冬であった。

 

(そうだ、私は四五六をベットに運んで寝かせただけだ。ヤラシイ事なんて無かった。パジャマだって乱れてなかった……パ、ジャマ?)

 

 ふと、起きた時自分が着ていた服を思い出す千冬。

 

(パジャマ?え、昨日私はスーツ姿だったはずだ。何でパジャマ姿に、え?え?)

 

 四五六をベットに寝かした時は確かに自分はスーツ姿であったと思い出す千冬であったが、

 

(そういえば下着も違う色になってた……!?!?)

 

 下着が違うものになっているという事は千冬は下着を脱いだことになる。だが千冬にそんな記憶は一切無かった。という事は無意識の内に脱いだか、誰かに脱がされた(・・・・・・・・)と言う事であり昨日そんなことが出来るのは一人しかいない。

 そこまで考えた瞬間、冷たくなった体が一瞬で熱くなった。

 

「くぁsdftgyふじこljk!?!?!?」

 

 シャワー室に不可思議な悲鳴がこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、四五六?なんかいい事でも有ったのか?」

 

「え……フフ、秘密だよ義弟(いちか)

 

「??」




この話を読んだ後、読者は「ヒロインの立場が逆じゃねーか!!」と言う。






没ネタとして酔った四五六はジゴロと化して千冬をイケメンスマイルで口説いて千冬が逃げ出そうとした所を壁ドンして追い込む、と言う感じでしたが、これでは千冬がヒロインになっていしまうので没にしました(ちょっと待て


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その22

 昨晩簪と恋人同士になった四五六です。

 いかんな。顔のニヤケが止まらない。朝方にクラスの女子に「一二三君何かいい事あったの?」と聞かれてしまい誤魔化すのに苦労した。

 簪と俺の関係は今の所は秘密にしている。俺は世界で二番目の男性適合者だ(実際は一番目と言っても問題はないが)

 そんな世界中からいろんな意味で注目を集めている俺に恋人ができた、しかも日本の対暗部用暗部「更識家」の現当主の妹が相手である、なんて事が公になったらいろいろと面倒なことが起こるのは目に見えている。

 それに俺が簪の事を好きになったことを「更識家」の人間だから、とか簪が俺を誑かしたなどと言われるかもしれない。

 俺が好きになったのは“更識簪”と言う一人の女性であり決して「更識家」の人間だから、などと言うくだらない理由ではない。

 だから昨日2人で話し合い今の所は2人の関係を隠すことにしたのだ。無論何時までも隠すわけではなく時期を考えて公表する予定だが。

 ……さてと現実逃避もここまでにしておくか。

 

「答えろ一二三四五六。貴様昨晩の夜、教官の部屋で何をしていた」

 

 今俺は人気の無い場所でボーデヴィッヒさんに尋も……質問されています。ISの兵装を突きつけられながら。

 

 何故こうなったかと言うといつもなら「八卦龍」のAI「MIKU」のサポートで一夏関係とは出会わないようにしていたのだが昨日、俺がこの世界で生きていくと決意した時に「八卦龍」には頼らないようにすると決め使用を控えることにしたんだがまさか使用を控えた初日からこうなるとは……

 ちなみに最初は「八卦龍」は使用を控えるために使用制限を厳重にかけてからとあるIS研究所がふざけて作ったIS装甲の技術を応用して作った金庫を購入してその中に入れて部屋から出たのだが……確かに入れたのを確認してから部屋を出たのだが、気が付いたらポケットの中に入っていた。

 何これ?アレか、大事な物は捨てれませんとでも言う気か。それとも呪われた装備は外せませんとでも言う気なのか!!

 

「聞いているのか貴様!?」

 

「き、聞いてるから銃口でグリグリしないで、痛い痛い!!」

 

「フン、なら早く話せ」

 

 睨みながらも油断なく此方を見ているボーデヴィッヒさん。どうやら昨日俺が深夜、織斑先生の部屋から出て行くとこを見てしまったらしい。さて、どう話したものか。

 

「えっと、昨日は織斑先生とその……」

 

「何をしたんだ……まさか貴様、教官にふ、不埒な真似をしたんじゃ」

 

 全身を小刻みに震わせてブチぎれる一歩手前の表情で此方を見ているボーデヴィッヒさん。

 

 これ、下手な事言ったら命がなくなりそうだ。

 

「いやいやいや、そんな事してないからね」

 

「な、なら何をしていたんだ」

 

「あ〜、そのボーデヴィッヒさんの事を聞いていたんだけど……」

 

「……私の事?」

 

 キョトンとするボーデヴィッヒさん。

 

「そうだよ。昨日ボーデヴィッヒさんが織斑先生と言い争っている時に俺も、その居合わしてて」

 

「何だと!!」

 

「い、いや居合わせたといっても最後の方しか聞いてなかったから」

 

「……」

 

 無言で睨みつけてくるボーデヴィッヒさん。

 

「それでボーデヴィッヒさんが織斑先生と別れた後に俺が見つかってしまって、その後まあいろいろと話をすることになって織斑先生の部屋に呼ばれたんだけど」

 

「本当なのだな?」

 

「……この状況で嘘はつけないと思うんだけど」

 

 現在進行中でボーデヴィッヒさんのISの兵装を突きつけられています。

 

「……そう、か」

 

 ISを解除し離れるボーデヴィッヒさん。

 

「まあ、分かってもらえたならいいけど」

 

「その、す、すまなかった」

 

 さっきまで自身がしていた事に慌てて謝ってくるボーデヴィッヒさん。その姿は普通の女の子だった。だからついつい言ってしまったんだ。

 

「あまり目立つような行動は控えた方がいいと思うよ。織斑先生に迷惑が掛かるから」

 

「ど、どういう事だ!?」

 

 俺がつい言ってしまった事に過剰に反応するボーデヴィッヒさん。

 

「いやボーデヴィッヒさんは今織斑先生の生徒でしょう?その生徒が問題を起こしたらその担任の管理責任を問われるのは普通じゃないかな」

 

「あ、う」

 

「ましてや転入初日に禁止されている勧誘を行ってもし今後もたとえば他国の代表候補生に無暗に戦闘を仕掛けて負傷させたとかISを破損させたとかしたら大問題だよね?」

 

「……」

 

「それでその生徒が過去に織斑先生と深い関わりを持っていたらいいスキャンダルのネタだし、最近織斑先生っていろいろと疲れてるから問題を起こすと嫌われちゃうよ……ってボーデヴィッヒさん!?」

 

 つい勢いに任せてこの先起こるであろう事でどういう風になるかを簡単に言っていたらボーデヴィッヒさんは瞳に涙を浮かべて泣く一歩手前の表情になっていた。

 

「わ、私が教官にき、嫌われるなんてそんなこと……」

 

「だ、大丈夫だよ。ボーデヴィッヒさんが大人しくしてればきっと」

 

「ほ、本当か?」

 

 泣き顔になり俺にしがみつきながら聞いてくるボーデヴィッヒさん。

 

「本当だよ。そう簡単に織斑先生が人を嫌いになったりなんてしないよ」

 

「……うん」

 

 そういってみたら離れてくれたのだが、どうしてか片手で俺の制服を掴んで離してくれなかった。

 

「あの、ボーデヴィッヒさん?」

 

「なんだ」

 

「その、離してくれませんか」

 

「あ、そのすまない」

 

 あわてて手を離すボーデヴィッヒさん。でも何故かチラチラと此方を見てくる。そんなボーデヴィッヒさんと俺は頭を下げて目線を合わせながら話しかける。

 

「ボーデヴィッヒさん」

 

「な、なんだ」

 

「ボーデヴィッヒさんがどうして織斑先生にあそこまで執着するのかは俺には分からない。でもねボーデヴィッヒさん。ボーデヴィッヒさんが最後に織斑先生に会った時と今では織斑先生の立場や環境、それ以外にも様々な物が違ってるんだ」

 

「……」

 

「だから今度はゆっくりと話してごらん。織斑先生もちゃんと理由を話せばちゃんと応えてくれる。それはボーデヴィッヒさんも分かるよね?」

 

「うん」

 

「よし。いい子だねボーデヴィッヒさんは」

 

 そう言って優しく頭を撫でる。

 

「何を!?」

 

「あ、ごめんね?つい手が動いちゃった。嫌だったかな」

 

 あわてて手を離そうとしたが

 

「い、嫌じゃ……ない」

 

 顔を真っ赤にして俯きながらも嫌がらなかったのでしばらくの間頭を撫で続けた。

 

「さて、と」

 

「あ……」

 

 しばらくボーデヴィッヒさんの頭を撫でていたがそろそろいいかなと思い手を離す。なんかボーデヴィッヒさんはもっとして欲しいような顔だった。

 

「じゃあ行こうか?」

 

「ど、何所にだ」

 

「何所って織斑先生の所だよ」

 

「な!!今から行くのか!?」

 

「そうだよ。“思い立ったが吉日”ってね。さあ行くよ」

 

「ちょ、まって」

 

 ボーデヴィッヒさんの手を持ち強制連行する俺。驚きながらも手を振りほどかないボーデヴィッヒさん。その姿はどこか年の離れた兄妹を思わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、四五六何かいう事は?」

 

「すみませんでした」

 

 その日の夜、簪に土下座をする四五六の姿が有ったとか。




ラウラは妹可愛い。異論は認める。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

裏 その7

ラウラ目線のお話。


 私、ラウラ・ボーデヴィッヒにとって織斑千冬と言う人物は特別な人だ。

 

 私は幼き頃から軍人となるべく厳しい訓練に明け暮れていた。その結果私は軍の中でも上位に立てるほどの腕前を持つに至った。“IS”と言う物が出てくるまでは……

 ISが登場してからしばらくしてドイツ軍はヴォーダン・オージェというISとの適正を向上させる物を作り上げ私に投与した。それが私の苦難の始まりだった。

 私以外は投与されても適合したのに私だけ不適合がおきそのせいで私の左目は金色に変化してさらに能力も制御ができず以後の訓練では基準値を下回る結果しか出せないでいた。

 そのせいで私は軍の内部で「出来損ない」「役立たず」と言った評価を下され、見下され終いには軍から除隊されそうになった。軍人となるべく生み出され軍人として育てられてきた私にとってそれは何にも勝る恐怖だった。

 

 そんな時に私は織斑教官と出会ったのだ。織斑教官は出来損ないと見下されていた私に声をかけてくれた。

 

「出来損ないと見下されるのが嫌なら私が鍛えてやる」

 

 そんな風に誰かに言われたのは初めてだった。だからその時の私は藁にもすがる気持ちでその申し出を受けた。其処から教官の厳しい訓練が始った。訓練は本当に厳しかった。でも私がいい結果を出した時、新しい技に成功した時教官は私の頭を撫でてくれた。そして「よくやったな、ラウラ」と褒めてくれた。

 今まで私は褒められた事は有ってもそれは形式上なだけで何も感じられなかった。でも教官が褒めてくれた時はとても嬉しかった。だから私は教官にもっと褒めてもらいたくて厳しい訓練にも負けずにやり遂げた。

 そして訓練の最後に教官が出した最終課題を私は最高得点で終えたとき教官は私を抱きしめてくれた。そして「よく此処までがんばったな、ラウラは自慢の子だ」と今まで見たことのない笑顔でそういってくれた。

 私は不覚にもその笑顔と言葉に泣いてしまいそれを隠すために教官に抱きつき顔を隠してしまった。教官に抱きついている時はとても気持ちがよく安心ができた。

 だがそんな日々も終わりが来た。教官は一年と言う教導期間を終えて日本にあるIS学園の教師として帰国する事となった。

 それからと言う物私の心はどこか穴が開いたかのような感覚があった。何をしても満たされない日々。

 そんな中教官の弟がISを起動させたという情報が入ってきた。そして教官のクラスで教育を受けるという情報も。

 私は見当違いも甚だしいが嫉妬してしまった。私は教官と会えないのに弟と言うだけで教官の教えを受けている奴に。

 

 

 そして私は軍から男性適合者のデータを集めよ、と言う命令を受けIS学園に飛んだ。

 

 

 転入初日に教官と話した時、私は教官と言い争ってしまった。言い争うなんて事したくなかったのに。

 その事を謝ろうと教官の部屋に向かったとき私は見てしまった。教官の部屋から一二三が出てくるところを。

 私はとっさに物陰に隠れてその場で一二三が去っていくのを待った。どうして私が隠れたのかは分からなかった。だがそれよりも深夜に教官の部屋から一二三が出てきたことに何故?どうして?と言う疑問だけが大きく残っていた。

 きっとその時の私は情緒不安定だったのだろう。なれない場所に、敬愛すべき教官に拒否されたことなどで冷静な判断ができなかったのだ。

 だからあんな行動を取ってしまったのだ。

 

「答えろ一二三四五六。貴様昨晩の夜、教官の部屋で何をしていた」

 

 私は人っ気の少ない場所に一二三を呼びISを展開し兵装を突きつけて尋問をしていた。本来ならこのような事は許される事などではないのだがその時の私はそんな考えなどできなかった。

 

 ただ一二三が教官とどの様な関係なのか?ただそれだけを知りたかった。

 そしてその後一二三から教官の部屋から出てきた理由を聞いてひとまず納得をして一二三に対して手荒い事をしてしまった事に対して謝罪をして、分かれようとした時、一二三が言った言葉で私は青ざめる事になった。

 

「あまり目立つような行動は控えた方がいいと思うよ。織斑先生に迷惑が掛かるから」

 

「ど、どういう事だ!?」

 

 教官に迷惑が掛かる!?

 

「いやボーデヴィッヒさんは今織斑先生の生徒でしょう?その生徒が問題を起こしたらその担任の管理責任を問われるのは普通じゃないかな」

 

「ましてや転入初日に禁止されている勧誘を行ってもし今後もたとえば他国の代表候補生に無暗に戦闘を仕掛けて負傷させたとかISを破損させたとかしたら大問題だよね?」

 

「それでその生徒が過去に織斑先生と深い関わりを持っていたらいいスキャンダルのネタだし、最近織斑先生っていろいろと疲れてるから問題を起こすと嫌われちゃうよ……ってボーデヴィッヒさん!?」

 

 私は其処まで聞いて全身から血が抜けていくような感覚に襲われた。

 

 教官が私を嫌う?……嫌だ嫌だ嫌だ!!

 

 教官に嫌われてしまうなんて考えたくもない!!出来損ないと蔑まれ見下された私を此処まで育ててくれた教官に、他の奴らのように蔑まされ見下されたりなんか想像したくもない。

 

「わ、私が教官にき、嫌われるなんてそんなこと……」

 

「だ、大丈夫だよ。ボーデヴィッヒさんが大人しくしてればきっと」

 

「ほ、本当か?」

 

 私はそう言った一二三に抱きついて本当かどうかを聞いた。

 

「本当だよ。そう簡単に織斑先生が人を嫌いになったりなんてしないよ」

 

「……うん」

 

 一二三が落ち着くように言い聞かせてくれたおかげで何とか泣きそうな気持ちは堪える事ができた。そうしたら一二三がしゃがみ私と目線を合わせて話しかけてきた。

 

「ボーデヴィッヒさん」

 

「な、なんだ」

 

「ボーデヴィッヒさんがどうして織斑先生にあそこまで執着するのかは俺には分からない。でもねボーデヴィッヒさん。ボーデヴィッヒさんが最後に織斑先生に会った時と今では織斑先生の立場や環境、それ以外にも様々な物が違ってるんだ」

 

「……」

 

「だから今度はゆっくりと話してごらん。織斑先生もちゃんと理由を話せばちゃんと応えてくれる。それはボーデヴィッヒさんも分かるよね?」

 

「うん」

 

「よし。いい子だねボーデヴィッヒさんは」

 

 まるで幼い子供に言い聞かせるような言い方だったが一二三の雰囲気のせいだろうか、私はその言い方に対してどこか安心していた。そうしたら一二三は私の頭を撫でてきた。

 撫でられた時、最初は驚いたがそれだけで、一二三に撫でられる事はとても心地よかった。

 しばらくして一二三は私を撫でる事を止めた。……もっとして欲しいと思った私は悪い子なのだろうか。

 

「じゃあ行こうか?」

 

「ど、何所にだ」

 

 立ち上がり私の顔を見ながらそういってくる一二三.

 

「何所って織斑先生の所だよ」

 

「な!!今から行くのか!?」

 

 そんな、まだ心の準備が!?

 

「そうだよ。“思い立ったが吉日”ってね。さあ行くよ」

 

「ちょ、まって」

 

 そういって私と手を繋ぎ引っ張っていく一二三。私は振りほどこうと思えばできたのに私はしなかった。一二三の手は私の手より大きく、でもとても温かかった。

 

「織斑先生いらっしゃいますか?」

 

「……一二三か?どうした」

 

「寂しがりやな黒ウサギを一羽お届けに参りました」

 

「寂しがりやってどういう事だ!?」

 

 一二三め、何を言い出すと思えばさ、寂しがりやだと。

 

「寂しがりやな黒ウサギ?……ラウラか?」

 

「き、教官!?それで分かるんですか!?」

 

 教官もそんな風に思っていたのですか。

 

「一二三にラウラか。珍しい組み合わせだな。一体どうした?」

 

「ボーデヴィッヒさんが織斑先生と話がしたいそうで、俺はその付き添いできました」

 

「話?」

 

「ほら、ボーデヴィッヒさん」

 

「うぅ……その教官」

 

「……どうした」

 

「その、き、教官はどうしてもドイツに来てくれないのですか?」

 

「……ラウラその話は「ボーデヴィッヒさん違うんじゃない?」一二三?」

 

「違うってどういう事だ、私は……」

 

「ボーデヴィッヒさんは織斑先生が“ドイツ”に来て欲しいんじゃなくて“自分”の所に来て欲しいんじゃないのかな?」

 

「ち、ちが……」

 

「本当にそう言えるの?」

 

「わ、私は……」

 

 なにも言えなくなってしまう私。

 

「ボーデヴィッヒさん。さっきも言ったけど織斑先生はちゃんと理由を言ってくれれば応えてくれる。でもちゃんと自分の思いを伝えないと分かってくれないよ」

 

「……」

 

 教官は何も言わずただ私たちのやり取りを見ている。

 

「き、教官。わ、私は、私は……」

 

「なんだラウラ?」

 

 教官はしゃがみこみ私と目線を合わせ微笑みながら私の言葉を待ってくれた。その姿を見て私は

 

「私は教官と会いたかった!!」

 

 私の思いを言い放った。

 

「教官だけだった!!私に、出来損ないと言われた私に声を掛けてくれたのは」

 

 一度言ってしまったらもう止められなかった。

 

「教官が私を褒めてくれた時、頭を撫でてくれた時私は自分が必要とされていると実感できたんだ!!だから私は厳しい訓練にも耐えられた」

 

「ラウラ……」

 

「なのに教官は私の前から居なくなってしまった。それがどれだけ寂しくてどれだけ、恐かった、か……」

 

 私の目から涙が溢れ出す。

 

「……すまなかったなラウラ。お前が其処まで私を慕っててくれたとは……」

 

「きょう、かん」

 

 教官が私を抱きしめる。あの時のように。

 

「すまなかった、本当にすまなかった。ラウラの気持ちに気づけなくて」

 

「う、うぅ」

 

 教官の言葉に私はもう限界だった。

 

「うわああぁぁぁぁん!!寂しかった!!寂しかったよぅ!!」

 

 教官は何も言わずただ抱きしめてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「寝ちゃったみたいですね」

 

「ああ、そうだな。なのに手は離してくれないんだ」

 

「はは。そうやってるとまるで親子ですね」

 

「ばか者めが」

 

 そう言いながらもその顔は優しい笑顔だった。

 

「う、ん……ち、ふゆ母様」

 

「な!?」

 

「お互い満更でもないようですね?千冬か・あ・さ・ん?」

 

「ば、ばか者がーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は夢を見ていた。

 厳しいけど大好きな教官と私を優しく諭してくれた一二三の2人と出かけている夢を。

 教官が私の母親で一二三が私の兄様。そして私は2人が愛してくれる母様の娘で兄様の妹。

 私が本当に欲しかった物。それは“家族”だったんだと私は理解した。

 だから恐いけど、明日一二三に聞いてみよう。

 

 「私の兄様になってくれますか?」って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故か夢に出てきたクラリッサも「血の繋がりがない家族?イイです!!凄くイイですよ隊長!!」って言っていたし。

 

 




ラウラが一夏に敵対していたのは一夏に嫉妬していたからじゃないかと思うんだ。



書いてるうちに思いついた事

「母様、はやくはやく」

「そうせかすな、ラウラ」
私は一人先に駆け出して後ろにいる千冬母様に早く来るように呼びかけると

「そんなにはしゃぐとこけるぞ」

苦笑しながら私に注意する四五六兄様。そんな四五六兄様に私は

「こけません!!ってきゃあ」

振り向きながら歩いたせいでこけてしまった。

「だから言っただろう。大丈夫か、ラウラ」

「うぅ〜大丈夫です」

「まったく……ほらラウラ」

駆け寄って起こしてくれた四五六兄様は私の手を握ってくれました。

「これならもうこけないな?」

「はい!!」

四五六兄様が手を握ってくれたおかげで私はこけた痛みなどもう気にもしなかった。

「お前達は仲がいいな」

そうしていると千冬母様が優しく微笑みながらそう言ってくる。

「違うよ母様」

「なに?」

私はそう言って空いている手で千冬母様と手を繋ぎ言う。

「“母様”も仲良しだよ」

「ラウラ……そうだな。皆仲良しだな」

「はい!!母様と兄様、それと私は皆仲良しの“家族”です」

そう言った私の顔はきっと一番輝いていた。






何だこれ?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その23

ラウラは妹可愛い。異論は認める。


 昨晩ボーデヴィッヒさんと織斑先生の蟠りを無くす手伝いをしてみた四五六です。

 

 原作でも思っていたのだがボーデヴィッヒさんが一夏に対してあそこまで敵対していたのは織斑先生の事を母親みたいに思っていたからこそ、あんな風に敵対したんだと思う。

 要は嫉妬みたいな物だ。愛する母親を独占したいからその障害となる人物、この場合は弟の一夏を排除しようとしたんだろう。手段が過激なのはまあ情操教育ができていなかったからという事で。

 

 さて、そんなわけで転入初日でボーデヴィッヒさんの中の蟠りを無くしてしまったわけだがそうなると……どうなるんだ?

 

 原作であった一夏へのビンタは俺と言うイレギュラーでなくなったし確かこのあとオルコットさんと鳳さんとの戦いも今のボーデヴィッヒさんの状態ならまずしないだろうし、と言うかもうすでに一夏に対する敵対心ももう無くなってるんじゃないかな?

 

 あれ?そうなるとVTシステムはどうなるんだ?あれって確か力への欲望みたいなのが引き金になった気がするんだけど今のボーデヴィッヒさんに其処まで力への欲望はないと思うんだけどそうなるとどうなるんだ?

 

 そんな風にボーデヴィッヒさんの今後の事を考えていたら教室にボーデヴィッヒさんが入ってきた。

 

「あ、ボーデヴィッヒさんその……おはよう」

 

「うん、おはようございます」

 

「……え?」

 

 呆けるクラスの女子。それもそうだろう。自己紹介の時他者を寄せ付けないような雰囲気をかもし出していた人物が次の日に年相応の笑顔で挨拶を返してくれたら誰だってそうなるだろう。

 

 俺もその一人だからな!!まさかあそこまで変わるとは……

 

「どうしたのだ?そんな顔して」

 

「え!?い、いやその何か雰囲気がかわったなーって」

 

「そう、なのか?」

 

 コテンと首をかしげ不思議そうにするボーデヴィッヒさん。

 

「ブハァ!!これがドイツの力か」

「鼻血鼻血」

「何、この胸のトキメキは!?」

 

 なにやらクラスの女子の行動が怪しく感じる。そんな中ボーデヴィッヒさんはクラスを見渡して俺を見つけると何所か緊張した趣で俺の目の前まで歩いてきた。

 

「その、一二三四五六よ。昨晩はその、世話になった」

 

 頬を薄っすらと赤く染めながらそういってくるボーデヴィッヒさん。

 

「え、世話になったってどういう事?」

「何か有ったのかな」

 

 その態度に周りの女子は興味津々となる。そして俺は何かとても嫌な予感がしてきた。

 

「いや別に、気にしなくていいよ。俺が勝手にした事だし」

 

「それでもだ。貴様にとっては小さなことでも私にとってはとても大きな事だったのだ。だからありがとう」

 

 俺にお礼を言った時のボーデヴィッヒさんの顔はとても可愛い物だった。

 

「それでだ。その一つ頼み事が、その、あるんだが聞いてくれるか?」

 

 お礼を言った後今度は顔を赤くしてモジモジとした表情になるボーデヴィッヒさん。

 

「だれか!!写真とって!!いや動画にとって!!」

「だから鼻血鼻血」

 

 周りはなにやら煩くなってきたがそんな事よりも俺の中で嫌な予感が大きくなってきた。

 

「な、何かなボーデヴィッヒさん?」

 

「その、わ、私の私の」

 

 決心した表情で言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

            「私のお兄様になってくれませんか!!」

 

 

 

 

 

 

 静まり返る教室内。そして数秒後。

 

「「「「「えええぇぇぇぇーーーーー!!!!」」」」」

 

 大絶叫に包まれる教室内。そして半放心状態になる俺。嫌な予感はこれだったのか。

 

「ど、どういう事!?お兄様って何!?」

「なになに、何が有ったの!?」

「ヤバ、妄想が止まらないわ」

 

 周りの女子達があれこれ話しだす。が直後

 

「何を騒いでいる馬鹿者共が!!!!!」

 

 織斑先生の一喝で再び静まり返る教室内。

 

「何を朝から騒いでいるのだ?」

 

「あ、千冬母様」

 

「……ラウラ、朝も言っただろう、母ではなくて先生と言えと」

 

「あう、すみません」

 

「ハァ、次からは気よつけるように」

 

「はい!!」

 

 落ち込むボーデヴィッヒさんの頭を優しく撫でながらそう諭す織斑先生はどう見ても母親だった。

 

「で、何があったんだ?」

 

「えっとですね……」

 

 クラスの女子がついていけないなかボーデヴィッヒさんがさっきまでの事を話す。

 

「…………」

 

 額に手をやり頭痛を抑える織斑先生。自分がした事の意味を分かっておらずオロオロするボーデヴィッヒさん。

 

「一二三」

 

「え、あ、はい!!」

 

「その、なんだ。迷惑じゃなかったら引き受けてもらえないか?」

 

「え?」

 

「兄と言うのではなくて一般常識を教えるという意味でだ。貴様なら任せられるからな」

 

「ええ~」

 

 俺が引きつった顔でそういったら

 

「ダメ、でしょうか」

 

 とても不安げな表情で此方を見てくるボーデヴィッヒさん。

 

「…………分かった。引き受けます」

 

 ここでNOなどと言ったらもうね、この学園で居場所が無くなる気がしたんですよ。

 

「ありがとう、四五六兄様!!」

 

 花が咲くような笑顔で抱きついてくるボーデヴィッヒさん。……簪にどうやって説明しよう。

 

 

 

 

 

 後に「ラウラ・ボーデヴィッヒの乱」と言われる出来事があった日のお昼、俺は非常自体に直面しています。

 

「どうかしたのですか?四五六兄様?」

 

「……いやそのボーデ「ラウラと言ってください!!兄様」……ラウラ」

 

「はい、何ですか?」

 

「……何でラウラは俺の膝の上に乗ってるのかな?」

 

「兄妹はこうするのが普通なのではないのですか?」

 

 そう、今現在ラウラが居るのは俺の膝の上なのだ。食堂につれて来られたと思ったら何のためらいも無く俺の膝の上に乗ってきたのだ。

 

「……それは誰に聞いたのかな?」

 

「私の部隊の副隊長のクラリッサに聞きました!」

 

 笑顔で話してくれたラウラ。……あ・い・つ・か!!大体予想は付いていたが本当にクラリッサが吹き込んだのか!?

 

 クラリッサ・ハルフォーフ。ラウラが部隊長をしている「シュヴァルツェ・ハーゼ」の副隊長をしている人物である。

 本人は日本通を自称しているがその知識の元が日本の漫画やアニメと言った物なので所々間違った知識を日本の常識として思っている事があり、今回のラウラの一軒もたぶんクラリッサが吹き込んだことなのだろう。

 

 ……いずれ一度〆るか。

 

「どうしたのですか兄様、難しい顔をして」

 

「いや、なにそのクラリッサさんに一度挨拶をしにいかないと思ってね」

 

「はい、そうですね。私も兄様を紹介したいですし」

 

 無邪気に笑うラウラ。……クラリッサ(ヲタク)の魔の手から俺が守らなければ。

 

「兄様、食事にしましょう。ラウラはお腹が空きました」

 

「ああ。そうだね。食べようか」

 

「はい」

 

 ちなみに俺たちがいる場所は食堂。しかも一番人の目が付く中心部。そんな場所で見た目が幼いラウラを膝の上に乗せて食事をしている俺たちはとても目立っていた。

 

 いい意味でも、悪い意味でもね。

 

 

 

 

 

 

 そんな風にラウラに一日中懐かれた俺が精神的にヘトヘトになって部屋に戻ると其処にはとても冷めた目つきで仁王立ちしている簪の姿が。

 

「……」

 

「……」

 

「あの、簪さん?」

 

「……四五六のロリコン」

 

「グハァ!!」

 

「変態、幼女趣味、ペドフィリア」

 

「グフゥ、ガハァ!!」

 

 簪の容赦の無い言葉に心が折れそうになる。

 

「ち、違うんだ簪、話を聞いてくれ。いや聞いてください」

 

 即効で土下座して話を聞いてもらうように懇願する。

 

「……フゥ、冗談だよ四五六」

 

「え?」

 

「四五六が何の理由も無くあんなことするなんて私は思ってないから」

 

「か、簪……」

 

 本気で怒っていないことに安堵した俺。

 

「さっきのは昨日の今日であんなことした四五六へのオシオキだよ」

 

 ちょっと膨れっ面でそういう簪に惚れ直したのは秘密だ。

 

「で、どんな理由があるの?」

 

「それが……」

 

 昨晩起きた事を事細かく話した。

 

「そっか……ボーデヴィッヒさんもいろいろあったんだね」

 

「ああ」

 

「……ハァ、じゃあしょうがない、かな」

 

「え?」

 

「そんな理由があったんじゃあ離れろ、なんて言えないじゃない」

 

「いいのか?」

 

「いいよ。だって四五六の恋人は私でしょ?」

 

「当たり前だろ!!俺の恋人は簪だけだ」

 

「ならいいの。その事を四五六が忘れないなら私は大丈夫だから」

 

「簪……」

 

 お互いの気持ちを確かめ合いそのまま2人は顔を近づけ……

 

「四五六兄様、いらっしゃいますか?」

 

「「!?」」

 

 突然の訪問者に邪魔をされる。

 

「ラ、ラウラか、ど、どうしたんだ?」

 

「えっとお話をしたいのですが今よろしいですか?」

 

 そういってくるラウラに俺は振り向き簪に目線で聞く。

 

「……いいよ。入ってもらっても。私もボーデヴィッヒさんを見てみたいし」

 

「分かった。ラウラ入っても大丈夫だ」

 

「分かりました。失礼します」

 

 ドアを開けお辞儀をしてからおずおずと入ってくるラウラ。

 

「あの、この女性は?」

 

「ああ、俺のルームメイトの更識簪だ」

 

「始めまして、ラウラ・ボーデヴィッヒさん。更識簪です」

 

「は、始めまして、ラウラ・ボーデヴィッヒといいます」

 

「ん、いい子ねボーデヴィッヒさんは」

 

「あぅあぅ」

 

 母性本能でも刺激されたのか簪はラウラを引き寄せて頭を撫でる。それに抵抗せずにいいようにされるラウラ。

 

「……それでどうしたんだラウラ?」

 

「……ハッ」

 

 簪に頭を撫でられて猫のようになっていたラウラだが俺が声を掛けると思い出したかのように動き出す。

 

「その、私は四五六兄様の事をいろいろと聞きたかったのですが……」

 

「聞きたかったが?」

 

「その、お邪魔でしたか」

 

「邪魔?何のだ?」

 

「えっと……恋人同士の時間です」

 

「「え?」」

 

 簪と俺の声が重なる。

 

「クラリッサに聞きました。年頃の男女が2人で居るのは恋人同士だからって」

 

「いやいやいや、その理論は可笑しい」

 

「?お2人は恋人同士ではないのですか」

 

「いや、恋人同士だが……あ」

 

「やっぱりそうなのですね!!では四五六兄様の恋人なら私にとっては姉様になるのですね!!」

 

「あ、姉様!?」

 

「はい。簪姉様」

 

「姉様……」

 

 ラウラに“姉様”と呼ばれた簪は満更でもない様子だった。

 

「今日の所は私は部屋に戻ります。次に来る時は事前に連絡しますね。ではおやすみなさい。四五六兄様、簪姉様」

 

 俺たちが戸惑っているうちにラウラはそそくさと自分の部屋に戻っていってしまった。

 

「……ねえ、四五六」

 

「なんだい、簪?」

 

「……私たちに娘がいたらあんな感じになるのかなぁ」

 

「おい」

 

 この時、俺たちはラウラの行動と発言に驚かされて“ある事”をしておく事を忘れてしまった。その事が後に俺と簪の環境を大きく変える事になるとは、今の俺たちには考えられなかった。

 




ラウラが四五六の義理の妹と化したのはちゃんとした理由があります。

決して書いているうちにこうなったのではありません。

この後の話の伏線です。











と言い訳してみる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その24

 先日からラウラの兄になった四五六です。

 

 先日のラウラの兄様発言はたった1日で全校に行き渡り、次の日にはほぼ全生徒が知っているという状態になっていた。女子の噂を広めるスピードは異常だ。

 

「四五六兄様、どうかしたのですか?」

 

「いや、ちょっとね」

 

 ちなみに今現在俺はラウラと手を繋ぎながら登校しています。今朝方部屋を出てすぐにラウラと出くわして其処から一緒に登校することにしたのだが最初は普通に歩いていたのだがラウラがなんと言うか物欲しそうな顔で俺の手を見ていたので手を差し出したら、ちょっと恥ずかしがりながらも手を繋ぎ其処から手を繋いで歩いていったのだ。

 

 途中で擦れ違う女子はラウラを見て皆凄く和んでいた。一部目つきが怪しい奴がいたがスルーしておいた。

 

 そうしているうちに教室に着いた。

 

「おはよう」

 

「おはようです」

 

 俺に続き朝の挨拶をするラウラ。

 

「おはよう、一二三君にボーデヴィッヒさん」

 

「おはよ~」

 

 先に教室についていたクラスメイトの皆が挨拶を返してくれる。

 

「ラウラ、また後でな」

 

「はい、四五六兄様」

 

 そういってラウラと分かれる。これはラウラに友達を作らせるためにしたことだ。初日のような態度ならいざ知らず、今の年相応の態度ならクラスの皆も話しかけやすいだろうしラウラにも一般的な友人、友達ができればクラリッサ(ヲタク)の間違った知識に振り回される事もなくなるだろう。

 

 この時俺は忘れていたのだ。俺と簪の関係の事をラウラに口止めしておくことを。そんな状態でラウラを一人で恋話が大好きな女子の中に放置してしまった。

 

 その結果、どうなるかはすぐに分かった。そしてその結果が俺と簪の環境を変えることになるとは思いもしなかった。

 

 

 

「ねえ、一二三君」

 

「何ですか?」

 

 声を掛けてきたのは別段接点もなくただクラスメイトと言うだけの女子だった。

 

「……その、4組の更識簪さんと付き合ってるってホント?」

 

「……え?」

 

 思いもよらない質問に思考が停止する俺。

 

「さっきラウラさんが言ってたんだけど、昨日部屋に行ったら簪さんと恋人だ、って言った見たいじゃない」

 

「え、な、ちょ」

 

「それで、実際の所この話本当なの?」

 

 そう聞かれたものの俺はすぐに応える事ができなかった。

 

 “一二三四五六”と言う存在がどういう立場にいるか、それを考えた上で俺と簪の関係はしばらくの間秘密にしておこうとしたのに、まさかそう決めて一週間と立たずに発覚するとは……

 

「あ~……」

 

 返事に困る俺。

 

「四五六兄様、どうなされたのです?」

 

 俺が困っていたらラウラがよってきた。

 

「あ、ラウラちゃん。あの一二三君にさっきラウラちゃんが話してたこと聞いてみたんだけど……」

 

「さっきの話……ああ、四五六兄様と簪姉様のことですね」

 

「そうそう」

 

「四五六兄様の恋人の簪姉様はとても優しい人でした。簪姉様に頭を撫で貰うととても気持ちがいいのです」

 

 昨日撫でてもらった事を思い出したのか笑顔になるラウラ。其処まで聞いて俺は周りの目線に気が付いた。

 

 周りにいたクラスメイト以外に廊下から何故か大量の女子が見えた。つまりこの話はすでにかなりの人に聞かれてしまったという事だ。

 

 ……もう腹を括るしかないのか。

 

「……まあ、確かに俺と簪は付き合ってるよ」

 

「本当に!?」

 

「ああ」

 

 俺が肯定すると周りが一気に騒がしくなった。

 

「簪さんって確か4組の人よね……」

「ちょっとショックだな~狙ってたのに」

「よし、今年のコミケのネタは決まりね!!」

 

 ……一部おかしい奴がいた気がしたがまあいい。さてこれで俺と簪の関係はたぶん次の日には全校に広がっているだろう。

 

 この関係はできればもう少しの間秘密にしておきたがったがラウラに口止めするのを忘れていた俺が悪いか。

 

「あの、四五六兄様?」

 

「なんだい、ラウラ」

 

「その、どうかしたのですか?なにか悲しそうな顔をしていたようですが」

 

「なに、ラウラが気にする事じゃないよ」

 

「あぅ」

 

 俺の心配をしてくるラウラの頭を撫でながら俺は考えた。

 

(さて、と。……俺と簪の関係がばれてしまった、という事は簪と話し合ったことが実現しかねないという事だ。本当ならいろいろと準備してから公表する予定だったのだがこうなってしまっては仕方がない、か)

 

 “男性で二番目の適合者”という価値と一夏と違いこれといった人脈やコネといったものが無い俺はいろんな意味で狙われやすい。

 

 それこそアメリカ、ドイツ、中国にフランス、それ以外にもIS関係の大手企業、研究機関などなど。そういった中で俺と簪、いや日本が抱える対暗部用暗部「更識家」現当主、更識楯無の妹更識簪が俺と恋人になった。

 

 そんな情報が広まれば厄介事になるのは目に見えている。……はぁ、これからどうなる事やら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずはシスコンの楯無さんをどうにかしないと、俺の命がマッハでヤバイ。

 




さ~て次回のお話は?

こんにちは一二三四五六です。いやはやラウラに口止めを忘れたせいでいろんな意味で厄介な事になりそうです。ちょっとしたことが命取りになるって本当なんですね。

次回「シスコン楯無現る!!」
  「妹の容赦ない罵倒」
  「和解の決め手は、真心料理?」

の三本でお送りいたします。では次回も見てください。

ジャーンケーン、グ「四五六何してるの……」「見られた!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その25

シスコン襲来!!が、思わぬ方向に進んだ気が……


 俺と簪か付き合っていることがばれてしまった日の放課後、俺は生徒会室にいます。

 

 放課後になってすぐに布仏虚さんが来てつれてこられました。呼び出された理由を聞いても「会長がお話があるとのことです」としか教えてくれなかった。

 

 ただね、生徒会室に入る直前に「……どうか無事で」とか言うのは止めて欲しかった。

 

 そうして入った生徒会室は普段なら机や書類などが入った棚があるのに俺が入った時は何もなく部屋の中心に椅子が一つだけおいてあっただけだった。そして窓際で外を見ている楯無さんの姿が……

 

「あの、楯無さん?」

 

「……一二三君、椅子に座ってくれるかしら」

 

「(一二三君?)は、はあ」

 

 とりあえず言われるがままに椅子に座る。

 

「……」

 

「……」

 

 お互いに無言になる。静かになった部屋の中では楯無さんが一定のリズムで扇子で手を叩く音が響いていた。

 

「一二三君、私お昼ごろに面白い噂を聞いたの」

 

「噂、ですか」

 

「そう。何でもIS学園の男性生徒に恋人ができたって言う噂」

 

「そ、それは……」

 

 この時点で俺は冷や汗を掻いていた。

 

「しかも、その相手は何でも生徒会長の妹らしいの」

 

「……」

 

「ねえ、一二三君何か知らないかしら?」

 

 此処まで話していても、一切此方を向かずに話す楯無さん。心なしか手を叩く音が大きくなってる気が……

 

「あ~、え~……その男子生徒って、その、俺のことですね」

 

 前回のこともあり誤魔化す事はきっとまずいと思い素直に話すことにした。

 

「じゃあ、その恋人が生徒会長の妹って言うのは?」

 

「……それも本当です」

 

「……」

 

「……」

 

 またお互いに無言になる。

 

「あのね、一二三君」

 

「は、はい」

 

「かんちゃんが付き合っている男が下劣で愚図な男だったら私、秘密裏にかつ物理的に消してると思うの」

 

「……」

 

 冷や汗がさらにドッと出た。

 

「でも、ね。一二三君とは短い間だけど何度も話したり一緒にお昼を食べたりして一二三君がどういう人間なのかは分かってるつもり」

 

 其処まで話してから振り向く楯無さん。その顔は無表情なのに何所か泣き出しそうな雰囲気を出していた。

 

「だから、ね。一二三君、いや一二三四五六さん。どうか私の妹をよろしくお願いします」

 

 無表情な顔つきから一転、真剣な表情で俺に頭を深々と下げそういってくる楯無さん。

 

「楯無さん……」

 

 この時の楯無さんは普段の飄々とした態度は一切なくただひたすらに妹の事を思う姉の姿だった。

 

「此方こそ妹さんを、更識簪さんを幸せにして見せますから、安心してください」

 

 俺は椅子から立ち上がり楯無さんの頭を上げてもらい正面からこう言った。

 

「四五六君……ありがとう」

 

 顔を上げた楯無さんの表情は涙目で、何所か儚げだった

 

「四五六君になら私、安心してかんちゃんを任せられるわ」

 

「いえ、そんな……」

 

「ただね、四五六君」

 

「はい?」

 

「もし、かんちゃんを悲しませるような事があったら殺すわ」

 

「……え?」

 

 先ほどまでの表情から一転して誰もが見初めるような笑顔を浮かべ“殺す”と俺に言ってきた。

 

「かんちゃんを泣かしたら殺します。

 かんちゃんを悲しませたら殺します。

 かんちゃんを裏切ったら殺します。

 かんちゃんに嘘をついたら殺します。

 かんちゃんを愛していないと殺します。

 かんちゃんを傷つけたら殺します。」

 

「あ、あの……」

 

 楯無さんの表情は本当に綺麗な笑顔なのにその口から出てくる言葉はとても恐ろしい。

 

「もしかんちゃんを穢すようなことがあれば、私は貴方の四肢を切り落とし、目をくり抜き鼻を捥ぎ耳をそぎ落とし舌を引き抜き五感を機能できない状態にしてそのまま生かさず殺さずの状態で永遠と生きながらえさせます」

 

 笑顔でゆっくりと話しながら俺のほうに来る楯無さんに気圧されて俺は後ろにあった椅子につまずき尻餅をつく。

 

「いっ……!!」

 

 尻餅をついてほんの少しだけ楯無さんから目を逸らしてしまい、すぐさま目線を戻そうと顔を上げたら其処には鼻が触れそうなほど近くにまで顔を近づけている楯無さんの姿が。

 

「私は本気だからね四五六君」

 

「な、何が…」

 

 思わず引きつったような声がでる。

 

「もし、貴方がさっき言った事のどれか一つでもしたら私はどんな手段を使っても実行するから」

 

 その時の楯無さんの顔は笑顔なのは変わらないのだが声に感情はなく瞳は暗くただ只管に暗く濁っていた。

 

「え、いや楯無、さ「なーんてね」ん?」

 

 俺が戸惑いながら声を掛けようとしたら楯無さんの顔が一転していつもの飄々とした顔になった。

 

「フフフ、四五六君驚いたでしょ」

 

「……は?」

 

「さっきまでのは演技よ、演技」

 

 楯無さんは演技だというが、とてもじゃないが演技には見えなかった。

 

「そ、そうですよね。本当に殺すなんて……」

 

「それは本気よ」

 

「え?」

 

 ヒュン、と風を切る音がしたと思えば俺の顔の真横を楯無さんのISの兵装であるラスティー・ネイルが突きつけられていた。

 

「四五六君。私は本気なの。本気でかんちゃんに危害を加える相手には一切の容赦はしない気だから。例えそれが四五六君だとしてもね」

 

「……」

 

 俺の頬から一筋の血が流れる。

 

「俺は「ね、えさん。何、してるの」簪!?」

 

 楯無さんの本意に応えようとした直後、ここにいないはずの人物の声が聞こえた。




次回は簪のターン。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その26

 楯無さんの思いを聞き、それに応えようとした矢先、何故か此処に簪の姿が現れました。

 

 簪から見た俺の姿は地面に座り込む形で蛇腹剣を突きつけられておりさらに刃が掠ったのか頬から血が流れている状態である。

 

 そしてそれをしているのが実の姉である楯無さんと言う現状。そして2人の仲はハッキリ言って好くない。そんな中で妹の彼氏が実の姉に刃物を突きつけられてしかも軽くとは言え怪我を負わされている。そんな所を見てしまったらどうなるか。

 

「姉さん……四五六に、何してるの」

 

「いや、これは、違うの」

 

 無表情で感情のこもっていない声で問いただす簪。それを聞いて戸惑い怯えた様な表情で後ずさる楯無さん。

 

「何で、何で四五六が怪我をしてるの?ねえ何でなの、答えてよ姉さん!!」

 

「こ、これは……」

 

 言いよどむ楯無さん。

 

「いつもそう、姉さんは私に何も言わないで、勝手に私の事を決めて、私から奪ってく。今度は四五六を奪う気なの!!」

 

「ち、ちがっ」

 

 楯無さんの言葉も聞かず簪は大声で言い放った。

 

「姉さんなんて、姉さんなんて、大っ嫌い!!!」

 

「あっ」

 

 簪からの言葉を聞きその場に崩れ落ちる楯無さん。

 

「嫌い!!嫌い!!姉さんなんて「落ち着け!!簪」っ!!」

 

 其処まできて俺は簪を後ろから抱きしめて落ち着かせた。……もっと早くに止めるべきだった。

 

「離して!!あの人は四五六をに怪我をっ!!」

 

「落ち着けといってるだろう!!」

 

 怒鳴るように簪に言う俺。その声に驚き、何とか気を落ち着かせる簪。

 

「ごめんなさい。私……」

 

「俺はもう大丈夫だから。それよりも……」

 

 俺は落ち着いた簪から床に跪く楯無さんに目線を向ける。

 

「……めん、なさ……ごめ……」

 

 床に跪き両手で頭を抱えて小さな声で謝り続ける楯無さん。その姿は普段の飄々とした雰囲気は無かった。

 

「楯無さん」

 

「ごめ、なさ……」

 

「楯無さん!!」

 

「ひっ、あ……」

 

 大きな声で呼んでやっと反応を見せてくれた楯無さん。でもその表情は怯えしかなかった。

 

「立てますか?」

 

「え、ええ」

 

 手を取り引き上げて何とか立たせたのだが楯無さんは簪に怯えるように俺の後ろに回りこんでしまった。それを見てさらに不機嫌になる簪。その不機嫌な簪を見てさらに怯える楯無さん。

 

「2人とも、場所を変えましょう。とりあえず俺たちの部屋に行こう」

 

 そういって俺は2人を引き連れて部屋に向かう。移動の間3人には一切の会話は無かった。

 

 長いようで短い時間を掛けて部屋に着いたのだが、簪と楯無さんは一切喋らない。……しょうがない。手荒だけど何とかするか。

 

「楯無さん」

 

「!!な、なにかしら」

 

 声を掛けられてビクリと体を震わせてから此方に顔を向ける。

 

「さっきまで生徒会室で俺に話してたこと、簪にも話してもらえますか」

 

「!!そ、れは……」

 

 楯無さんは戸惑いうろたえる。

 

「楯無さん。今ここに居るのは「更識家」の当主でもなく、生徒会最強の会長でもなくてただの更識簪の姉の更識楯無、ただそれだけです」

 

「し、ごろくん……」

 

 そういって俺は楯無さんを簪の目の前に押し出した。

 

「いい機会じゃないですか。思ってる事全部吐き出しましょう」

 

「で、でも」

 

「じゃあ楯無さん。此処で逃げて一生後悔しますか?」

 

「っ!!」

 

「向き合う事から逃げて、一生簪と擦れ違ったまま過ごしていくんですか?」

 

「嫌!!そんなのは嫌よ!!」

 

「なら、此処で勇気をださないと、ね」

 

 俺の言葉を聞き、簪と向き合う楯無さん。

 

「姉さん……」

 

「かんちゃん……」

 

 そうして楯無さんはポツリポツリと話し始めた。

 

 「更識家」という家柄、生徒会長という立場、様々な要因から簪だけを見ることができなかった事。仕事等を理由にして会う事をしなかった事。さらに長年擦れ違ってきたせいで簪とどう接していいのか分からず距離を置いてしまった事等など。いままで溜め込んできた物を全て吐き出していく楯無さん。

 

「ごめん、ごめんね、かんちゃん。こんな意気地の無い姉で」

 

 ポロポロと涙をこぼし俯き謝る楯無さんを簪は優しく抱きしめる。

 

「泣かないで姉さん。謝るのは私。姉さんがこんなにも私の事を思っていてくれたのにそれに気が付かなかった、ううん。気が付こうとしなかった私が悪いの」

 

「か、んちゃん……」

 

「今まで擦れ違ってきたけど、これからは一緒に行こう楯無姉さん」

 

「うん、うん」

 

 お互いに泣きながら、でも笑顔でお互いを強く強く抱きしめあう2人。それを離れた場所で眺めていた俺ももらい泣きしていた。そして俺はこっそりとその場を後にする。今この時は二人だけにしてあげるべきだと思ったからだ。

 

 しばらくして2人が此方に来た時、二人とも目もとに泣いた後がハッキリと付いていたが、2人ともとてもスッキリとした表情だった。

 

「2人とも、もう少ししたら夕食が完成するから先にシャワーでも浴びてきたらどうかな?」

 

 そういって俺は自分の目もとを指差す。

 

「かんちゃん。先に浴びてきたらどう?」

 

「えっと……」

 

「私はほら、着替えを取りにいかないといけないから」

 

「そっか。そうだねじゃあ先に浴びてくるね」

 

「いってらっしゃい」

 

 簪に先に浴びてくるようにすすめる楯無さん。

 

「……四五六君」

 

「何ですか?」

 

 調理の手を止めて振り向く。

 

「本当に、本当にありがとう」

 

 真剣な表情で頭を下げる楯無さん。

 

「四五六君が居なかったら私たちは擦れ違ったままで過ごしていって、何れ取り返しの付かない所までいくところだったわ」

 

「そう、ですかね。俺がいなくてもきっと仲直りできたと思いますけど」

 

「ううん。四五六君が居たから私たちは仲直りができたの」

 

「そうですかね?」

 

「ええ。きっとそうよ」

 

 この時の楯無さんの笑顔はとても素敵だった。

 

 

 2人がシャワーを浴びてスッキリした頃に俺が作った料理があらかた完成したので3人で遅めの夕食に。このひと時は3人にとってとても楽しく、穏やかな時間だった。

 

「ふ~。おいしかった。ほんと四五六君の手料理は美味しいわ~」

 

「そうだね、楯無姉さん」

 

「そう言ってくれると作るかいが出ますよ」

 

「なんていうか私たち姉妹、四五六君に餌付けされてるわよね~。ねえかんちゃん?」

 

「ふふ、そうだね楯無姉さん。私たち四五六に餌付けされてるよね」

 

「そんな気は無いんだけどな~」

 

 食後、穏やかに過ごす3人。

 

「そうだ、楯無さん」

 

「何?四五六君」

 

「今日は泊まっていってください」

 

「え?」

 

「せっかく2人が仲直りできたんだから今日ぐらい簪と一緒に寝たって罰は当たりませんよ」

 

「でも、四五六君は何所で寝るのよ?」

 

「俺は、生徒会室にでも忍び込んで寝ますよ」

 

「そういう事を生徒会長の前で言うのかしら?」

 

「いえいえ、今の楯無さんは“生徒会長”ではなくて“簪の姉”、でしょう?」

 

 そういったら楯無さんは苦笑した。

 

「四五六君にはかなわないわね」

 

「いえいえ、楯無さんには負けますよ」

 

 お互いに笑い合う。

 

「では、また明日」

 

「あ、四五六君、これ」

 

 楯無さんが何かを投げてくる。

 

「これは、カギ?」

 

「私ったら着替えをとりに行ってるあいだにカギを落してしまったみたいなの。拾った人が“勝手に”生徒会室に入ってしまってもしょうがないわよね?」

 

「そうですね。“勝手に”入って一晩過ごしてしまうかもしれませんね」

 

「そんな悪い子を見つけたらお仕置きが必要よね?」

 

「そうですね。“見つかったら”大変ですね」

 

 お互いに含み笑いで会話する。

 

「それでは失礼しますね」

 

「ええ。今日はありがとうね、四五六君」

 

「本当にありがとう、四五六」

 

「いえいえ」

 

 俺は軽く手を振り部屋から出て行った。これで2人の仲がよくなってくれるといいんだけど、まああの感じなら大丈夫かな?

 




読者の皆様、壁殴りしてもいいのよ?


IF 簪が恋人ではなかったら

「ねえ、かんちゃん」

「なに楯無姉さん?」

 2人は同じベットの中で顔を見合わせていた。

「かんちゃんって四五六君のこと好き、でしょ」

「……うん」

「そっか……」

 何所か納得したような表情を浮かべる楯無。

「その、楯無姉さんも?」

「ええ。私も四五六君の事が好きよ。異性としてね」

「そ、うなんだ」

「四五六君って私の事をただの女の子として扱うのよ。生徒会長とでもなく「更識家」の当主としてでもなくね」

「……私もそう。楯無姉さんの妹じゃなくて更識簪として見て扱ってくれるの」

「手料理はとってもおいしくて餌付けされちゃったしね」

「さりげない気遣いもしてくれるしね」

「……」

「……」

 お互いに無言で見つめあう二人。

「かんちゃん、私は負けないわよ」

「私だって負けない」

 お互いに宣戦布告する。でも2人の表情は笑顔だった。





























「でも2人ともお嫁さんにして貰うのもアリかしら」

「……いいかも」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その27

 消灯時間が過ぎたなか、生徒会室にこっそりと向かっている四五六です。

 

 いやはや簪と楯無さんの2人が仲直りしてくれてよかった。知り合い、と言うか彼女の肉親との仲が悪いのは見ていて嫌だからな。

 

 さて、こっそりと移動してきて生徒会室の前まで来ました。では早速“拾った”カギを使って中に入ろうか「一二三、何をしている?」!!

 

「お、織斑先生!?ど、どうしてここに」

 

「ただの見回りだ。それより貴様はどうしてここに居る。消灯時間はとうに過ぎているのだが?」

 

「ええっと、そのですね……」

 

 思わず顔を背けて言いづまる。

 

「……何か言いづらいことでも有るのか」

 

「あ~そういう事じゃないんですけど」

 

 どうしようか。織斑先生なら信用できるから話してもいいとは思うんだけど早々話していい事でもないしなぁ。

 

「まあいい、一二三、ちょっと生徒指導室まで一緒に来い」

 

「え?」

 

「最近噂になっていることについて話がある」

 

「噂って俺と簪のことですか」

 

「そうだ」

 

 そうして俺は織斑先生に連れられて生徒指導室まで連行された。

 

 

「まあ座れ」

 

「はい」

 

 席に着く俺と織斑先生。

 

「さて、こうして呼んだのは他でもない噂についてだ」

 

「……俺と簪が付き合っている、ていう噂のことですね」

 

「そうだ……実際の所この噂は本当なのか」

 

「……はい。本当です。俺と簪は付き合っています」

 

「……そう、か」

 

 何所か複雑な表情をする織斑先生。

 

「噂が本当なのは分かった。だがな一二三、その事で「簪の本家のこと、ですよね」……」

 

 織斑先生は少し驚いた表情をしたがすぐに納得した。

 

「簪に聞いたのか」

 

「ええ」

 

「簪がただの一般生徒ならば、まだよかったのだが彼女は「更識家」の現当主、更識簪の実の妹だ」

 

「だから「更識家」の当主は実の妹を使って俺を誑かしたんじゃないか、と?」

 

「……そうだ」

 

「言っておきますけど、そんな事実は一切ないですからね。俺は一二三四五六は更識簪と言う一個人を好きになったのであってその事に「更識家」や楯無さんが関与した、という事は無いですから」

 

「それは分かっている。楯無が妹をそんな事に使うような奴ではない事は知っている」

 

 そう、この事が俺が危惧していた事である。“世界で二番目の男性適合者”という立場と後ろ盾の無い俺は様々な立場からいろんな意味で狙われてしまう存在なのだ。

 

 だから俺は簪との事を公表するのは周りの準備を整えてから公表する予定だったのだが、其処にラウラというイレギュラーが入り込んできたために準備するまもなく俺と簪の関係がばれてしまったのである。

 

「お前達の事がどうしてばれたのかは私の方でも確認した……すまなかった。私が安易にラウラの事を一二三に任せなければこんな事には」

 

 そういって織斑先生は頭を下げる。

 

「い、いやいやいや!?頭を上げてください。悪いのは口止めをし忘れた俺に有るんですから」

 

「だがな……」

 

「ラウラがした事は俺も簪も気にしてないですから。それにこの事は遅かれ早かれ分かることなんです。それが早くなっただけなんですから」

 

「……すまんな」

 

「いえいえ」

 

 お互いに頭を下げ謝る二人。日本人らしい行動である。

 

「そうだ、織斑先生。以前俺に対して専用機を~と言う話をしたの覚えていますか?」

 

「ああ、覚えているが、それがどうした?」

 

「その話ってまだ来てますかね?」

 

「……引き受けるのか?」

 

「ええ。俺一人だけだったら引き受ける気はなかったんですけど……その簪と付き合うって決めたからにはそんな事言ってられませんから」

 

 ちょっと照れくさそうに言う俺。

 

「そう、か……」

 

 どこかで納得したような顔つきで頷く織斑先生。

 

「なら近い内に一覧できるようにまとめて渡すとしよう」

 

「お願いします」

 

 どんな専用機ができるのかはわからないがきっと使いこなしてみせる!簪を守るために、そしてこの世界と向き合っていくために。

 

「……さてこの話は終わりにして」

 

「?」

 

「どうしてこんな時間にあんな所にいたのか話してもあろうか」

 

 それはそれは素晴らしい笑顔でそう言ってくる織斑先生。ただし目は笑っていないが。

 

「ハ、ハハハ……」

 

 簪、それに楯無さん。俺無事に戻れるかな……

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その28

 どうも、ほぼ徹夜で織斑先生に追及された四五六です。

 

 俺と簪の仲の事で話し終ったあと何故深夜にあんな場所にいたのかと、追及されました。それはそれはいい笑顔で。

 

 まあ、理由が理由だから誤魔化そうとしたのだ出席簿を持ち出されたので素直に話してしまった。織斑先生もどうやら更識姉妹の関係について少しは知っていたようなので納得してくれた。……納得してくれただけだが。

 

 その後は朝が開けるまで説教と言う名の愚痴を聞き続けていました。一夏が引き起こすトラブルに頭を抱えていたのは印象に残っています。

 

 さて、そんな説教も日の出が出る頃には終わり何とか解放された俺はとりあえず部屋に戻る事に。2人が起きているなら朝食を作らないといけないからな。寝てたらまあ、適当にどこかで時間を潰そうかな。

 

「さて、2人は起きてるかな?」

 

 部屋のドアをノックする。

 

「簪、楯無さん起きてますか?」

 

 返事は無い。まだ寝てるのかな?と思ったら中から何か聞こえてくる。

 

「……っあ、だ……ねえさ……」

 

「かんちゃ……いじゃな……」

 

 無駄に色っぽい声が聞こえてきた。

 

「……」

 

 紳士な俺はクールに去るぜ。

 

 

 一時間後もう一度部屋のドアをノックしてみた。

 

「は~い、って四五六君じゃない。お帰りなさい」

 

 何か肌が艶々してる楯無さんが出てきた。

 

「……ただいま戻りました。簪はまだ寝てますか?」

 

「ううん、もう起きてるわよ」

 

「そうですか。なら入っても?」

 

「ええ大丈夫よ」

 

 そうして楯無さんと一緒に部屋の中に入ったら其処には

 

「し、ごろ……」

 

 頬を赤くして息絶え絶えにベットで横になっている簪の姿が。

 

「……」

 

 俺の鼻から愛情が漏れる。

 

「し~ご~ろ~く~ん?何考えてるのかな~」

 

 ニヤニヤと笑いながら話しかけてくる楯無さん。

 

「いや、これはその……」

 

 鼻を押さえながら否定しようとしたが楯無さんはそんな俺を見てさらに笑みを深くする。

 

「四五六君が何を想像したのか知らないけど私はかんちゃんにマッサージをしたあげただけよ?」

 

「マ、マッサージ!?」

 

「そうよ。こう見えて私マッサージ得意なのよ」

 

 フフフと笑いながら話す楯無さん。ちょっとイラッと来た。

 

「……ハァ、まあいいです。とりあえず2人とも着替えたらどうですか?」

 

「そうね、もういい時間だし」

 

「では俺は外で待ってます」

 

「あら別に見ててもいいのよ」

 

「しません!!」

 

 ちょっと声を荒げて外に出て行く。そして30分ほどして

 

「四五六君、もう入っていいわよ」

 

 楯無さんに呼ばれて部屋に入ると制服姿の2人がいた。ただ簪はまだ薄っすらと頬を赤く染めていたが。

 

「その、おはよう四五六」

 

「おはよう、簪」

 

 お互いちょっと照れくさそうにする。

 

「はいはい、2人ともイチャ付くのは2人っきりの時にしましょうね」

 

「た、楯無姉さん!!」

 

「楯無さん!!」

 

 俺と簪が怒るも楯無さんは軽く流してしまう。

 

「さ、それよりも朝食、食べに行きましょうか。流石に今からじゃ四五六君も食事作れないでしょ」

 

 そういってスタスタと先に行ってしまう楯無さん。それを追いかける2人。3人で和気藹々と話す姿はとても楽しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪と楯無さんの三人で食堂で朝食を食べにきたら一夏達がいた。

 

「あれ、四五六?珍しいな食堂に来るなんて」

 

 一夏が話しかけてくる。

 

「ああ。今日はちょっとゴタゴタしてな。朝食作れなかったんだ」

 

「そうなのか……ところでその2人は?」

 

「ん、ああ紹介するよ。こっちが更識楯無さん。このIS学園の生徒会長さんだ」

 

「はじめまして、織斑一夏君。IS学園現生徒会長をやらせてもらってる更識楯無よ」

 

 楯無さんは笑顔で挨拶をする。

 

「はじめまして、織斑一夏です」

 

「それで、こっちが楯無さんの妹で更識簪。俺の彼女だ」

 

「は、はじめまして。四五六の彼女の更識簪、です」

 

 俺が彼女と堂々というと簪は恥ずかしがりながらも否定はせずに自己紹介してくれた。ちょっと嬉しい。

 

「そっか、彼女か……彼女!?」

 

 俺が言った言葉を理解した直後に驚く一夏。

 

「彼女って恋人と言う意味の!?」

 

「それ以外に何が有る」

 

 そう言うと一夏は驚いた表情をした後、笑顔になった。

 

「そっか……おめでとう四五六」

 

 そういって祝福してくれる一夏。

 

「ふ~ん、いいんじゃないの」

 

「あら、おめでとうございます」

 

「おめでとう、一二三君」

 

「神聖な学び舎でこ、恋人を作るなどけしからん!!……いやでも何れ私も一夏と……」

 

 一人おかしいのがいたが皆祝福してくれた。このまま穏やかにすめばよかったのに一夏が余計な一言を言ってしまう。

 

「それにしても四五六はいいな、こんな可愛い子が彼女になってくれて。俺には居ないからなこんな可愛い子」

 

「え?」

 

 こいつ今何て言った?

 

「一夏、ちょっとお話しようか」

 

「一夏さん、少々お話が」

 

「一夏貴様其処になおれ!!」

 

「一夏、夜道には気をつけたほうがいいよ」

 

「な、何だよ皆して……」

 

 こいつは本当に何でこう一言多いのだろうか。

 

 

 四人に囲まれて説教を喰らっている一夏を後目に俺たちは食券を買って食事にする。食事を始めてすぐにラウラが来た。

 

「簪姉様、四五六兄様おはようございます」

 

「おはようラウラ」

 

「ああ。おはようラウラ」

 

 俺と簪と朝の挨拶が済むと当然のようにラウラは簪の膝の上に座る。そしてその行動をごく自然に受け入れる簪。そして何事もなく食事を開始する俺たち3人。

 

「……あ、ラウラこっちを向きな」

 

「はい?何ですか」

 

「ほら、口元が汚れてるぞ」

 

 ナプキンで口元を拭いてやる。

 

「ん……ありがとうです四五六兄様」

 

「慌てて食べるからだぞラウラ。食事はゆっくり丁寧にな」

 

「はい……でもオハチが上手く使えなくて」

 

 ショボンとするラウラ。

 

「ならラウラ、今度私がお箸の使い方教えてあげる」

 

「本当ですか簪姉様」

 

「ええ。お箸上手に使えるようにしましょうね」

 

「はい!!簪姉様とがんばります」

 

「フフフ、がんばろっか」

 

 俺たちの向かい側の席で食事していた楯無さんが呟く。

 

「……兄妹姉妹と言うよりも若夫婦と娘にしか見えないのは何故?」

 

 楯無さんの呟きに回りで見ていた女子達も頷く。

 

「楯無姉さん、何言うのよ」

 

「いやいや、かんちゃん自覚無いの?」

 

「自覚って何が?」

 

「……そう、何のね」

 

 そう言うって楯無さんは俺たち三人を見る。

 

「これで四五六君がラウラちゃんと同じ髪色とかだったら本当に若夫婦と娘よね~」

 

「!!」

 

 楯無さんは笑いながらそんな事を言って焦った。今思ったが俺ってラウラと似てる?(髪は同じ銀髪で色は違うがオッドアイ)

 

「ハハハ、ナニヲオッシャルンデスカタテナシサン」

 

「どうしたの、四五六君?凄く汗出てるわよ」

 

「そ、そうだラウラ。今日の放課後空いてるか」

 

 ラウラに話しかけて話の流れを変えなければ。

 

「空いていますが、私に何か用でもあるのですか?」

 

「ああ。俺と付き合ってくれないか?」

 

「え?」

 

 何故かラウラではなく簪が反応する。

 

「だ、ダメです!!四五六兄様には簪姉様が居るのにわ、私と付き合ってなどと……」

 

 どうやら言葉が足りなかったらしい。

 

「すまないラウラ。言葉が足りなかった。放課後俺と模擬戦に付き合ってくれないか」

 

「も、模擬戦でしたか……ホッ」

 

「四五六君、言葉には気よ付けなさい。ああゆう風になっちゃうわよ」

 

 楯無さんが指差した方向には四方から説教されている一夏の姿が……

 

「……以後気をつけます」

 

「ならいいわ」

 

 こうして俺は放課後にラウラと模擬戦をすることとなった。

 




四五六の正体がばれたらどうなるか考えてみる

黒髪黒目黒縁メガネの地味男子

銀髪オッドアイ一流モデルクラスの顔つきの男性

料理は一流、家事もこなせて気遣いもできる

ISの操縦も国家代表クラスで専用機持ち(八卦龍と専用機の二機)

それでいて恋人には弱みを見せて甘えてくる


なんだこのイケメン野郎は





次回予告(未定)

「オルコットさん、俺と(模擬戦に)付き合ってくれないか」

「え、ええ!?」


「四五六兄様私で(模擬戦を)シてください」

「な、なんだと!?」


「アレ?四五六どうしちゃたのかな、かな?」

「お、落ち着くんだ簪!!その包丁を下ろすんだ!!」


主語って大切だね(笑


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その29

冬場、風呂上りにコタツに入って食べるアイスは格別。

アイスはチョコミントが最強。異論は認める。


戦闘描写って難しい。


 一部騒がしかった食堂での食事が終わり俺たちは教室に向かうことに。一夏は未だに説教されていたがまあ、自業自得という事で。

 

「……それにしても四五六どうしたの急に模擬戦なんて」

 

 簪が不思議そうにたずねてくる。

 

「本当は模擬戦なんてする気は無かったんだけどね」

 

「ならなんで?」

 

「俺が一人きりだったら模擬戦なんてしなかった。でも今は違う。その簪っていう彼女ができたからさ、何時までも弱いままじゃいられないからね」

 

「四五六……」

 

 俺がちょっと照れくさそうに頬を掻きながらそう話すと簪は恥ずかしそうに顔を背けた。

 

 一組の教室の近くで簪と別れラウラと一緒に教室に入る。

 

「おはよう」

 

「おはようです」

 

 挨拶をすると先に来ていたクラスの女子が挨拶を返してくれる。

 

「おはよ~ラウラちゃんに一二三君」

 

 その後は他愛も無い話をしながら時間を潰す。ラウラも転校初日と比べると態度が柔らかくなってきた。今ではクラスの女子達と一緒に笑っている。ラウラは一組のマスコット的な立場になりつつあるようだ。まあ、ラウラは可愛いからな。

 

 授業開始直前に滑り込んできた一夏たちが織斑先生に睨まれるもそれ以外ではごく普通に授業が進み放課後に。

 

「じゃあ、ラウラ行こうか」

 

「はい、四五六兄様」

 

 ラウラを呼んで俺たちはアリーナに向かった。そういえば俺はアリーナの使用の申し込みをしていなかったけどどうやら楯無さんが手を回してくれたようで問題なく使用できるようにしてくれたようだ。後でお手製のケーキあたりをもって挨拶しに行かないと。

 

「……ん、あれは一夏たちか?先に来てたのか」

 

「その様ですね」

 

 なにやら向こうの方で一夏を中心にオルコットと鳳が言い争っている。……これはアレかな?ラウラがあの2人に対して攻撃を仕掛ける事になった事件かな。まあ今のラウラならそんな事はするはずも無いがな。

 

「2人ともどうしたんだ?」

 

「あ、あら一二三さん。珍しいですわねアリーナで会うなんて」

 

「まあ、そうだな。俺はラウラと模擬戦をしに来たんだが、お前たちは何を?」

 

「ボーデヴィッヒさんと模擬戦、ですか?一二三さんが?」

 

「ああそうだが」

 

 なにやら珍しい物を見たような顔をする一夏とオルコットさん。まあ仕方が無いか。あの試合をじかで見てたらそうなるか。

 

「?どうしたのよ一夏。そんな鳩が豆食らったような顔して」

 

 何故2人がそんな顔をしたのか分からないという感じの鳳さん。どうやらあの試合の事をしらないようだ。

 

「鈴は知らないんだっけ、あの試合のこと」

 

「あの試合って何よ?」

 

「鈴が転入してくる前に一組の代表を決める試合をしたんだよ」

 

「一夏さんと一二三さんがそれぞれ私と戦いその結果一夏さんが一組の代表になったのですが……」

 

 オルコットさんが其処まで言うとなんと言うか複雑な表情になった。

 

「どうしたのよ、急に黙って」

 

「その、一二三さんの戦い方でちょっと」

 

「?戦い方がどうしたのよ」

 

「……試合終了までずっと煙幕を張り続けましたの」

 

「は?」

 

 鳳さんが惚けた表情をする。

 

「え、っと……試合の中で煙幕を張ったんじゃなくて?終了まで煙幕を張り続けたの?」

 

「そうですわ」

 

「分かった。煙幕の中から攻撃したん「いいえ、煙幕の中にいるだけで何もされませんでしたわ」……」

 

 鳳さんがなんともいえない表情を作る。

 

「一夏、その話本当?」

 

「……本当だ」

 

「……」

 

 再びなんともいえない表情になる鳳さん。そして微妙に気まずい雰囲気になるアリーナ内。

 

「あ~その一夏、アリーナ使わないなら先に使っても?」

 

「え、ああ俺はいいけど……」

 

「私もいいですわ。一二三さんがどう戦うのか見てみたいですし」

 

「私もいいわよ。一夏とできないなら意味ないし」

 

 こうして先にアリーナを使わしてもらう事に。一夏たちが離れた事を確認してからラウラと向き合う。

 

「四五六兄様準備はいいですか?」

 

「ああ、大丈夫だラウラ」

 

 ラウラが自身のIS、シュヴァルツェア・レーゲンを起動させる。ちなみに俺は前回と同じくラファールリヴァイヴを装備している。

 

「悪いけど一夏合図お願いできるか」

 

「分かった……それじゃあ、始め!!」

 

 一夏の合図と共に俺とラウラは動き出す。

 

 

 合図と同時にラウラは右肩のレールガンで攻撃するが、それを予測していた俺は短距離瞬時加速(ショートイグニッション)でラウラの右側に回りこむように移動し右手に出したアサルトライフルで攻撃したがラウラは慌てず右手を俺のほうに向けると銃弾が空間で停止した。

 

「銃弾が止まった!?」

 

 一夏がなにやら叫んでいるが俺はすでに知っていたので慌てずにそのまま攻撃を続ける。

 

「無駄です兄様!!この停止結界の前では実弾兵器は無意味です」

 

「そうみたいだ、な!!」

 

 右手のアサルトライフルで攻撃を続けながら俺は左手にIS用グレネードランチャーを呼び出しラウラに打ち込む。

 

「無駄だと言っています!!」

 

「それはどうかな」

 

「何をっ!?」

 

 停止結界で止まったグレネードの弾にアサルトライフルの弾が当たり爆発を引き起こす。

 

「っうう!!」

 

 グレネードの爆風にさらされ停止結界が解除されたのを見て俺は一気に接近する。

 

「だぁらあああ!!」

 

「くぅぅ!!」

 

 両手の兵装を戻して右手にブレード、左手にシールドを出して切りかかる。ラウラも両腕に装備されたプラズマ手刀で応戦する。俺とラウラ、どちらも引かずに接近戦を繰り広げる。ラウラの攻撃を俺はシールドで防ぎブレードで受け流し切りかかる。ラウラは俺の攻撃に対してブレードでの攻撃は受け止めず逸らしシールドでの体当たりは大きく回避して切りかかってくる。

 

 一進一退の攻防が続く。だがそれも長くは続かなかった。ラウラが見せた隙に対して俺が切りかかるがそれはラウラがワザと見せた隙でそれに引っかかってしまった俺は無防備な体勢をさらしてしまう。それを見逃すわけもなく体勢の崩れた俺にラウラはワイヤーブレードを打ち込み俺を吹き飛ばす。

 

 さらに追い討ちをかける様に停止結界で俺を動けないようにしてレールガンを打ち込む。

 

「ガッ、グゥゥ!!」

 

「これで終わりです!!」

 

 声と共に放たれた弾丸は見事に俺の眉間に当たり絶対防御が発動し今までのダメージのせいもあってシールドエネルギーが0になり俺の負けが決まった。

 

「イタタタ」

 

「だ、大丈夫ですか!?四五六兄様!?」

 

「ああ、なんとかな。流石に現役軍人には早々勝てないか」

 

「当たり前です。私は軍人なのですよ。素人相手に簡単に負けました、なんてできる筈がないです」

 

「それもそうだな。さてと後で俺の部屋で反省会をしようか。おやつと一緒に」

 

「はい」

 

 そういって俺とラウラはアリーナを出て行った。

 

 

 

 

 

「四五六ってあんな風に動けたんだ。と言うか短距離瞬時加速(ショートイグニッション)なんて俺まだ使えないぞ……」

 

「……私との模擬戦は手を抜いていたと言うのですか」

 

「素人って言いいながらも現役軍人と真正面から切りあえる時点で素人じゃないでしょ……」

 

 俺たちの模擬戦を見た三人はそれぞれ複雑な表情をしていた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その30

久しぶりの更新。



 ラウラとの模擬戦を終えて2人で部屋に行き先ほどの戦闘の反省会をすることに。現役の軍人でなおかつ特殊部隊の隊長であるラウラの指摘を受けながら反省すべき点を書き出していくことに。

 

「ここです。このタイミングならば先ほどのようにするよりもこうした方が……」

 

「なるほど……ならこうしたらどうだろう?」

 

「それも有りですがこの場合は……」

 

 と言う具合に具体例を出しながら分かりやすく教えてもらった。現状俺が使えるのは量産機しかないので量産機で何所まで戦えるのかを把握しておかないと。

 

 俺は「八卦龍」でなら十全に戦えるが、それは俺の力と言うよりもそれは搭載されているAIの補助のおかげと言った方が正しい。既存の技術を遥かに超え、オーバーテクノロジーと化しているこの「八卦龍」に乗れば余程の事がないかぎり負けることは無いだろう。

 

 だが俺は自分自身の力でこの世界で生きていくと決めたんだ。だからこそ今現在の俺自身の力がどれほどなのかを見切らねばいけないのだ。

 

「……四五六兄様?どうかなさいましたか?」

 

「え、いや何でもないよ……ちょっと疲れちゃったから休憩しようか」

 

「はいです」

 

「今日のおやつは特製ショートケーキだ」

 

「ショートケーキですか!!やった!!」

 

 先ほどまでの軍人としての表情から一転年相応の笑顔ではしゃぐラウラ。ラウラは俺が作ったおやつの中でショートケーキが一番のお気に入りのようでこれを出すととても喜んでくれる。作るかいがあるというものだ。

 

「ケーキ、ケーキ、四五六兄様の作ってくれたショートケーキ♪」

 

「ラウラは本当にショートケーキが好きなんだな」

 

「はい。四五六兄様が作ってくれたショートケーキは本当においしいんです!!」

 

「そこまで言ってくれると作るかいがあるよ」

 

 そう言ってはしゃぐラウラの頭を優しく撫でる。

 

「ん~~」

 

 目を細めて猫のようになるラウラ……娘ってこんな感じなのかな?

 

 

 休憩中他愛も無い事を話しているときふと思い出す。

 

「そういえばラウラ、学年別トーナメント誰と組むんだ?」

 

「むぐむぐ、んぐ……学年別トーナメントですか?」

 

「ああ」

 

「う~ん。まだ決まってはいません。クラスの人に何度か誘われはしましたが……」

 

「誘われたのか?」

 

「はい。最近よく話をしてくれる人なのですが……」

 

 困ったように顔を傾けるラウラ。

 

「誘われたのなら組めばいいじゃないか。悪い人ではないんだろう」

 

「はい。その人は私にとても良くしてくれているのですが……その、私は軍属かつドイツの代表候補生なのです」

 

「ああ、なるほど。国のメンツか」

 

「……はい」

 

 ラウラが困った顔をしている理由が分かった。ラウラはドイツの特殊部隊の隊長かつ代表候補生なのである。つまりこのIS学園内でドイツと言う看板を背負っている立場なのだ。そんな立場のラウラがこういってしまうと失礼だが格下の人と組み万が一序盤で負けでもしたらいろいろと面倒な事になってしまう。

 

 負けたからと言って即帰国、という事は無いだろうがそれでもそう簡単には負けれない。だからこそペアを組む相手は慎重に選ばなければいけないのだ。

 

「う~ん難しい所だね」

 

「はい……」

 

 俺とラウラが学年別トーナメントの事を考えていたら部屋のドアが開き人が入ってきた。

 

「ただいま、四五六」

 

「お邪魔するわね~四五六君」

 

「あ、おかえり簪。それといらっしゃい楯無さん」

 

 入ってきたのは簪と楯無さんだった。

 

「お邪魔してます、簪姉様」

 

「ラウラ来てたんだ。いらっしゃい」

 

 先に来ていたラウラに気がつくと軽い挨拶を交わしながらごく自然にラウラの横に座る簪。

 

「……ちょっと妬けるわね」

 

「どうかしたの?楯無姉さん」

 

「ううん。なんでもないわよかんちゃん」

 

 簪のごく自然な行動にちょっと嫉妬してしまった楯無。

 

「そうだ、2人とも。おやつが有りますけど食べますか?」

 

「食べる!!」「頂くわ」

 

 2人は即答した。

 

 

「ん~~おいし♪ほんと四五六君が作ったお菓子類は絶品ね」

 

 ニコニコと笑顔でケーキを食べる楯無さん。

 

「本当だね楯無姉さん」

 

 簪もニコニコと笑顔で食べる。

 

「……そういえばラウラちゃんと四五六君は何かしてたの?」

 

 楯無さんが聞いて来る。

 

「ええ。今日やったラウラとの模擬戦の反省会をちょっと」

 

「模擬戦……そういえばそんな話をしてたわね。ちょっと見てもいいかしら」

 

「あ、私も見てみたい」

 

「どうぞ」

 

 そう言って俺は模擬戦の内容を最初から流し始めた。2人はしばし無言で試合内容を見ていた。

 

「……四五六君普通に戦えるじゃない」

 

「と言うかこれを見てる分には上位に入るよね」

 

「そう、ですかね」

 

 2人は俺の戦い方を見てよく出来ていると褒めてくれる物の俺自身はいまいち実感が無かった。

 

「……悔しいな。開催が後1月後ならなぁ」

 

「本当ね。開催がほんと1月後ならねぇ」

 

「何か有るんですか」

 

「そうなのよ。かんちゃんの専用機「打鉄弐式」が後一月ぐらいで完成するの」

 

「簪の専用機が?」

 

「そう。私が考え作り上げたこの子が後一月ぐらいで完成予定なの。本当なら完成はもっと先の話だったんだけど、その楯無姉さんに手伝ってもらってここまで短縮できたの」

 

「何言ってるのかんちゃん。ここまで短縮できたのはかんちゃんが殆ど完成させていたからじゃない。私はホンの少しだけ手伝っただけ。だから貴方は誇っていいのよ。自分ひとりで作り上げたんだって」

 

「楯無姉さん……」

 

 本当に仲良くなったよなこの2人は。いい事だね。

 

「要するに今回の学年別トーナメントには簪の専用機は間に合わない、と」

 

「そういう事だね……私は日本の代表候補生でまだ未完成とはいえ専用機持ち。量産機に乗って出場するというわけにはいかないの」

 

 残念そうに言う簪。

 

「そうよね~。彼氏と一緒に出場できなくて悲しいわよね~」

 

「うん……って楯無姉さん!!」

 

 簪をからかう楯無さん。でも簪は楽しそうに笑っていた。

 

「ところで四五六君は誰と組む気なの?」

 

「俺ですか?」

 

「そう。私としてはかんちゃんと組んで欲しかったけどさっき言ったように今回かんちゃんは出場できないから他の誰かと組むのだろうけど、誰にするの?」

 

「う~ん。簪と組みたかったけど事情が事情だからな~」

 

 そう悩んでいたらラウラから声が掛かった。

 

「あ、あの四五六兄様。良かったら私と組みませんか」

 

「ラウラとか?」

 

「はい。今日の模擬戦で思ったのですが四五六兄様となら優勝が狙えるかと」

 

 ラウラが自信有り気に言ってくる。

 

「……そうね。さっきの模擬戦の様子を見れば優勝を狙えるかしら」

 

「ラウラとだったら良い、かな」

 

 簪からの許可が出た。という事で

 

「じゃあラウラ。俺とタッグパートナーになってくれるか」

 

「はい!!一緒に優勝を狙いましょう」

 

 両手でガッツポーズをしながら意気込むラウラ。その姿を見た俺は微笑ましい気持ちになれた。

 




という事で学年別トーナメントはラウラと一緒に出場します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その31

主人公の設定を忘れかけてしまった今日この頃。


 ラウラと学年別トーナメントに出場する事を決めてからしばらくの間、俺とラウラは一緒にトレーニングをしていた。コンビネーションの組み立てやら練習の反省会をして細かい調整を行なったり。

 

 その間、オルコットさんに本気で戦うように言われたりそれにつられて一夏や何故か鳳さんやデュノアさんにも戦ってくれと言われたりもしたがそこはラウラとの訓練で忙しいという事で何とか逃げ切った……。でもトーナメントが終ったら捕まりそうだが……。

 

 反省会では俺とラウラの他にも簪や楯無さんがアドバイスをしてくれた。特に楯無さんは学園最強と言われるだけはあってアドバイスはとても的確だった。そのおかげでラウラとのコンビネーションはかなり上手くなった。

 

 そうそう。俺の専用機についてだが先日織斑先生に渡された各国企業の一覧表の中に、更識家という項目があったので迷わず俺はそこを選んだ。

 

 織斑先生も苦笑しながらも一言「そうか」と言ってくれた。さらに「選ばれなかった他の企業には私がしっかりと説明をしておこう。一二三、貴様は気にしないでトーナメントに集中しろ」と言ってくれた。

 

 俺がそのことに頭を下げて感謝すると「教師が生徒の為に仕事をするのは当たり前だろう」と軽く微笑みながらそう言ってくれた。本当に織斑先生には頭が下がる。ただ最後に「……家の愚弟も貴様ぐらいに考えて行動できればなぁ」と目頭を押さえ何所か遠い所を見ながら呟いていたのがやけに耳に残った……。今度また手料理と酒の肴を持って愚痴を聞きに行こう……。

 

 俺の専用機の開発を更識家に選んだ事を簪と楯無さんに言ったらとても喜ばれた。それと同時に心配された。以前考えていた周りからの評判の事だ。だがそれがどうした。周りの事なんて気にしない。俺は自分自身で考えて選んだんだ。回りの人間がどうこう言ってきても気にする物か!!

 

 

 さて、そうこうしている内に学年別トーナメント当日になった。さっそくトーナメント表を見に来たのだが……。

 

「これは……」

 

 俺達の第一試合の相手はオルコット&鳳のペアだった。

 

「四五六兄様」

 

 ラウラが顔を険しくしくする。

 

「ああ。これは厄介だな……」

 

 俺達がトーナメント表を凝視していたら後ろから声をかけられた。

 

「あら、一二三さんにボーデヴィッヒさんじゃありませんか」

 

「ん、オルコットさんか。おはよう」

 

「おはようございます。ボーデヴィッヒさんも」

 

「おはようです」

 

「お二人もトーナメント表を見に?」

 

「ああ」

 

「そうでしたか……。最初の対戦相手は何方に?」

 

「見てみなよ」

 

 そう言って俺はオルコットさんにトーナメント表を指差す。

 

「私達の最初の相手は……、なんとお二方でしたか」

 

 一瞬驚いた表情をしたもののすぐさま好戦的な笑みを浮かべるオルコットさん。

 

「一対一ではありませんが一二三さん。貴方と正々堂々戦える事を嬉しく思いますわ」

 

「あ~そのあの時は悪かったよ」

 

「いえいえ、最初はあの戦い方に怒りを感じはしましたが今はもう気にしておりません。それでも気にすると言うならば次の試合で全力で戦ってください」

 

「分かった。俺とラウラ全力で戦わせてもらう」

 

「フフ、楽しみにしておりますわ。ではまた後ほど」

 

 オルコットさんは優雅にお辞儀をして離れていった。

 

「四五六兄様……」

 

「最初から全力で行かないとな。できるなラウラ」

 

「はい!! 絶対に負けません!!」

 

 こうして学年別トーナメントの初戦はオルコットさんと鳳さんの二人になった。

 

 

 

 

 しばらくして、学年別トーナメントが始り控え室で待機している俺とラウラ。

 

「四五六兄様。私達の最初の相手ですが……」

 

「オルコットと鳳のペアか。厄介だな」

 

 ラウラの専用機シュヴァルツェア・レーゲンと俺が使う量産機であるラファール・リヴァイヴ。基本ラウラを中心とした戦い方をするのでラウラの専用機に搭載されているAICを軸に戦いを進めていくように考えていたのだが……。

 

「オルコットのブルー・ティアーズはビーム兵器で鳳の甲龍は衝撃砲。どちらもAICでは相手にしたくない相手だな」

 

「はい。私のAICは実弾兵器が相手なら無類の強さを発揮できますがビーム兵器や衝撃砲のような実弾では無い物に対しては効果はあまり……」

 

「となると、戦い方を変えないといけないな」

 

「はい。なので今回の試合は四五六兄様を中心とした戦い方で行こうかと思うのですが」

 

「だな。となると……アレ、だな」

 

「アレ、ですか」

 

「アレを使えば衝撃砲の利点はなくなるからな。そうなれば多少は優位になれるからな」

 

「そうですね。BT兵器による包囲攻撃と衝撃砲による不可視の攻撃どちらか一方でも対策が取れればこちらが優位になれますからね」

 

「遠距離はBT兵器による包囲射撃。中・近距離は衝撃砲による不可視の攻撃。それにあの二人も今日に向けて特訓してきたんだ。初戦からキツイ戦いになりそうだ」

 

「ですが四五六兄様、勝つのは」

 

「俺達だ」

 

 ラウラと俺は顔を合わせ力強く頷いた。

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒさん、一二三四五六さん。準備が整いました。アリーナへお越しください』

 

 控え室のスピーカーから準備が完了したとの報告が流れた。

 

「よし!!じゃあ行こうかラウラ」

 

「はい!!」

 

 俺達二人はアリーナへと向かった。

 

 

「来ましたわね」

 

「やっと来たの」

 

 俺とラウラがアリーナに来た時すでにオルコットと鳳の二人は先に来ていたようだった。

 

「一二三さん。今回の試合は全力で来なさってくれますわね?」

 

「ああ。前と違って俺にも負けられない理由ができたからな。全力でいかせてもらうよ」

 

 俺とオルコットはお互いに油断無く向き合い武器を構える。

 

「私は一夏に用があるの!!だからあんた達にはここで負けてもらうから!!」

 

「それがどうしたのですか。私達だって負ける気はありません!!」

 

 ラウラと鳳はお互いに言い争っていたがどちらも隙は見せていなかった。

 

『両者共に指定の位置へ移動してください』

 

 アリーナにアナウンスが流れお互いに移動する。

 

『それではラウラ・ボーデヴィッヒ&一二三四五六対セシリア・オルコット&凰鈴音の試合……開始』

 

 開始の合図と共にブザーがなり鳴り戦闘が始った。

 

「おいきなさい、ブルーティアーズ!!」

 

 先に仕掛けてきたのはオルコットだった。

 

「な、くっ!」

 

 オルコットが狙ったのはラウラであり、それを助けようと移動しようとした俺の前に出てきたのは鳳だった。

 

「悪いけどここから先には行かせないわよ」

 

 その言葉と共に放たれる不可視の砲撃。それを俺はラファールに搭載されているシールドを構えながら上下左右に大きく動きながらかわそうとする。が、不可視なだけあって完全に回避する事はできずシールドや手足の先に当たってしまいシールドエネルギーが削られてしまった。

 

「直撃は避けたようね。でも龍咆は燃費が良いのよ。どんどんいくわよ!!」

 

 鳳はそう言って距離を保ちながら衝撃砲を連射してくる。さらに衝撃砲と自身の動きで俺をラウラのほうに近づけさせなかった。俺もシールドを構えながら空いた手で射撃を行い鳳のシールドエネルギーを削りはするもののお互いに致命打は与えられず膠着状態に陥ってしまった。

 

 対するラウラとオルコットの戦いはと言うとラウラが押されぎみになっていた。

 

「くっ!!」

 

 ラウラがオルコットのレーザー攻撃を凌ぎつつシュヴァルツェア・レーゲンに搭載されているワイヤーブレードとレールガンでオルコットの動きを阻止し動きが止まった所をAICを使用し動きを封じレールガンで攻撃を仕掛けるのだが

 

「がっ!?っつ、また!!」

 

 AICで動きを止めているラウラに対し4方向からBTによる攻撃が放たれる。そう、オルコットは自身がBTと同時攻撃ができない事を逆手に取りAICによって動きが完全に止められてしまうのを利用しAICに掛かってしまった時あえて(・・・)自分自身の防御を捨てBTの操作に集中し4方向からの同時攻撃を可能としたのだ。

 

 AICの使用中は対象に集中しなくてはならないため周囲の警戒が疎かになってしまい一箇所ニ箇所からの攻撃はかろうじて回避はできるものの絶え間なく動きながら4方向からの同時攻撃には対応ができずAICを使用するごとに攻撃をもらってしまうラウラ。

 

 ラウラも攻撃をもらっているばかりではなくレールガンやワイヤーブレードによってオルコットにダメージを与えはするもののオルコッとは常に一定の距離を保ちラウラが近づけば近づいた分だけ距離を離しラウラに決定打を撃たせないようにしていた。

 

「さあさあ、ボーデヴィッヒさん。わたくしとブルーティアーズとご一緒にワルツを踊ってください!!」

 

「な、めるなああぁぁぁ!!!」

 

 あえて防御を捨てAICを逆手に取るオルコットとそれに負けじと攻撃を過激にしていくラウラ。

 

 俺と鳳、ラウラとオルコット。今はまだ何とかなっているがこのままではジリ貧である。だから俺はアレ(・・)を使用する事にした。

 

 俺とラウラが鳳とオルコットとのトーナメント戦を始めてしばらくして俺達が押され始めていた。ラウラはAICを逆手に取ったオルコットに苦戦を強いられ、俺と鳳はと言うと負けはしていない物の突破口が見出せずじりじりと押されていた。

 

「ハッハッハーーー!!どうしたのよ!!さっきから押されっぱなしじゃない」

 

「それだけ鳳さんが強いってことじゃないかな」

 

 そう喋りながらも二人は攻撃と回避、防御を繰り返しながら戦っていた。

 

「当たり前でしょ!!私は専用機、あんたは量産機。それで代表候補私と最近乗り始めたあんたとじゃあ差が出て当たり前よ」

 

「確かに、ね」

 

 衝撃砲を左右上下にランダムに移動しながらかわしマシンガンやアサルトカノンで攻撃を繰り出す。だがさすがは代表候補生。俺の攻撃を巧みに回避し避けきれないのは最小限のダメージですむようにして攻撃を繰り出してくる。

 このままでは俺と鳳の戦いよりラウラとオルコットの戦いが先に終りそうだ。それではまずい。ラウラが勝てば良いが現状では5分5分。どちらが勝ってもおかしくはない状態だ。だから俺はこの均衡を壊すためにアレを使うことにした。

 

「鳳さん、対衝撃砲用新兵器を見せてあげよう」

 

「衝撃砲用の新兵器!?させるか!!」

 

 鳳が俺の言葉に反応して衝撃砲を繰り出しながらこちらに向かってくる。俺はそれを見ながら鳳の方を見ながら後ろに高速で移動した。

 

「新兵器って何?後ろに逃げる事!?期待はずれもいいところよ」

 

「いやいや新兵器はこれだよ」

 

「え?」

 

 専用機と量産機の性能の差で追いつかれそうになった時俺は両手に出したスモークグレネード(・・・・・・・・・)の缶を投げつけた。

 

「これは!!」

 

 俺達はスモークグレネードの煙に包まれる。

 

「新兵器ってただのスモークグレネードじゃない!!煙に隠れようたってそうはいかないんだから!!こんなの衝撃砲で吹き飛ばしてやる!!」

 

 そう言いながら全方位に衝撃砲を放ち煙を吹き飛ばしていく。そして煙が晴れた時鳳の前には誰もいなかった。

 

「一二三が居ない……しまった!!一二三の狙いは!!」

 

 鳳が俺の狙いに気がつきラウラとオルコットの方を見た時、ラウラのAICによって動きを封じられたオルコットさんに俺がラファール・リヴァイヴの切り札であるパイルバンカー灰色の鱗殻を打ち込んでいる姿だった。

 

『セシリア・オルコットさんリタイアです』

 

 ラウラとの戦いでシールドエネルギーを削られていたブルー・ティアーズは耐え切る事ができずシールドエネルギーがゼロになりリタイアした。

 

「やってくれたね一二三。まさか私との戦いから逃げてボーデヴィッヒの方に行くなんてね」

 

「まあ、一対一の勝負じゃなくて二対二の試合だからね。これも戦術っていう事で。それに妹を助けない兄貴は居ないでしょ」

 

「四五六兄様……」

 

 ラウラが嬉しそうな顔でこちらを見てきた。

 

「ふん、まあ二対二だからそういう行動もありでしょうね。でもたとえ二対一になったとしても私は早々負ける気は無いわよ」

 

「いや、この試合俺達の勝ちだよ鳳さん」

 

「なによ二対一になったからって調子に乗るんじゃないわよ!!」

 

 そう言って衝撃砲を放つ鳳。だが俺とラウラはその不可視であるはずの衝撃砲を完全に回避した。

 

「な!?避けた!!」

 

「鳳さん、さっき俺は衝撃砲用の新兵器を使ったはずだよ。だからもう衝撃砲の利点である不可視性はなくなったんだよ。目に見える攻撃なら避ける事は可能だからね」

 

「不可視性が無くなったってどういう事よ!!あんたがしたのは煙を出しただけじゃない」

 

「そう俺がしたのは煙を出しただけ。灰色(・・)のね」

 

「……まさか、あんた」

 

「そう、俺がさっきした事は目暗ましが目的じゃない。本当の目的は空気に色をつけることだ」

 

 そう、俺が対衝撃砲対策として考えていた事は空気に色をつけることである。いかに衝撃砲が不可視だといっても煙が立ち込める中で使えば周りの煙が衝撃がどう動いてくるのかを教えてくれるのだ。

 

「やってくれるわね、あんた。まさかこんな方法で私の衝撃砲を見破るなんて」

 

「これで衝撃砲の利点は潰した。この試合勝たせてもらうよ」

 

「舐めんじゃないわよ!!早々やられるもんですか!!」

 

 そこから俺とラウラ対鳳の戦いが始ったが流石に二対一では鳳の分が悪く押されていき最後はAICで動けないようにされた所を二人掛りで攻撃してシールドエネルギーをゼロにして試合に勝利した。

 

 

 

「あーーー負けたーーー!!」

 

「まあまあ落ち着いて鈴さん」

 

「落ち着けれないわよ!!試合に勝って一夏達と戦うはずだったのにーーー」

 

 試合後俺とラウラはオルコットと鳳と話をしていた。

 

「あーーもういい、あんた達二人とも私達に勝ったんだから絶対に優勝しなさいよ!!じゃないと許さないんだからね」

 

「ああ、俺達だって負ける気はないよ、なラウラ」

 

「はい四五六兄様。私達は負けません」

 

 こうして俺達はオルコットと鳳の二人に勝ち次の試合に駒を進め、その後も順調に勝ち進んでいき遂に俺達は一夏とデュノアの二人と試合する事となった。

 

「次は一夏達との試合か……」

 

「あの二人ですか」

 

「ラウラ……大丈夫だよな」

 

「何がですか?」

 

「……いや何でもないよ。じゃあ行こうか」

 

「はい。この試合にも勝って優勝しましょう」

 

 俺は気を抜いてしまっていたのだ。原作のようにラウラが一夏に対して敵意を持っていないことでVTシステムの条件を満たす事は無いと勝手に思い込んでしまっていたのだ。

 

 もしも俺が何かしらの行動を起こしてラウラのISの検査をさせていればあの事件は起きなかったのかもしれない。

 

 だがそれも結局はIFの話でありあの事件は起こってしまったのだ。そしてその事件をきっかけに俺の物語は新たな局面を迎える事となる。




これにて、にじファン時代に掲載していた文は終了となります。

この後は現在連載中のハーメルン版と一緒に更新していきたいと思います。

更新は気長にお待ちいただけるとさいわいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。