ほんきのみんな(血涙) (黒ウサギ)
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みんなのほんき(血涙)

無限ガッツとか頭可笑しいと思いました(小並感)


 カルデア最後のマスターが第六の特異点の修復を終え、カルデア内部は大いに盛り上がった。

 飲んで食べて泣いて笑って。残る特異点もあと一つとなり宴が毎日のように開かれていた。

 そんな中で、ローマ皇帝の一人、ネロ・クラウディウス主催による『ネロ祭』が開催された。

 腕に自信がある英雄達。そんな彼等、或いは彼女らがチームを組みどのチームが一番優れているかを競う祭りだ。

 聖女なのに鉄拳で語りあるのが好きなマルタはベオフルフと三蔵法師と組み『熊・殴っぐる』なんてチームを。

 二コラ・ステラを始め、エジソンにエレナと言ったよく見かけるメンツは『ジーニアススリー』を。

 皆が様々な人とチームを作り優勝を目指す中、それは起こった。

 

 

 

 

 

 

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「先輩、先輩!どうしたなんですか急に部屋に閉じこもって、体調でも崩したのですか?」

 

 カルデア最後のマスターが行き成り部屋に閉じ籠って早三日が経とうとしていた。

 突然の事にカルデアに存在する数多の英雄達が戸惑っていたが、最初こそはきっと疲れか何かで寝込んでいるのだろうと思っていた。が

 

「もうご飯をフォウさんに運ばせるのは止めてください!フォウさんしか入れない隙間を態々掘る必要なんて無かったじゃないですか!」

 

 食堂にも、浴場にも、医務室にも一向に顔を出さない事を不思議に思った後輩であるマシュ・キリエライトによって閉じ籠りが発覚したのであった。

 それが判明した時に英雄は様々な派閥に別れた。無理やりにでも部屋から連れ出そうとする派閥。日頃の疲れを案じてそのままにしておこうとする派閥。一緒に同じ部屋に閉じ籠ろうと扉を無理矢理こじ開けようとする派閥etc。

 そんな派閥が生まれてしまったがDr.ロマンによって止められていた。曰く彼は尋常ではない勢いで心が病んでいるのだと。原因は何かと訪ねたがロマンは答えてくれなかった。その眼には同情の色が窺えていた。治療を申し出たナイチンゲールの凄味にも耐えていたのだ。

 そんな中、後輩であるマシュは悲しみに包まれていた。先輩でありマスターである人の心情に気が付けなかった事を。後輩であり、一番長く連れ添った相棒とも言える筈の自分に何も相談してくれたかった事を。

 何故、何故何も話してくれなかったんですか?私はそんなにも頼り無いですか?そう訪ねても返ってくる答えは

 

---マシュは何も悪くないよ、悪いのは自分なんだ

 

 等と言われてもそれが本心なのかすら分からない。だからこそ、ちゃんと顔を合わせて話を聞こうとした彼女は毎日マスターの部屋の前で声を掛ける。

 閉じ籠りが四日、五日、六日と経過し遂に一週間となった。流石にこれ以上は見過ごせないと判断したのか多くの英霊がマスターの部屋の前に集まり声を掛けていた。

 

「マスター、何故このような事を・・・?」

 

「まぁマスターにも色々と考える事があるんだろうけどよぉ、このままじゃ次の特異点の修復にも影響が出ちまうぜ?」

 

 ルーラーであるジャンヌダルクの呟きに杖持ちの方のクー・フーリンが答える。マスターはこれまで特異点に向かうまでの期間中に召喚に答えてくれたサーヴァントとの交流を深める事に時間を費やしていた。が、今回に限ってはそうではない。マスターに会えない事で色々と溜まっている英雄もいるのだ。清姫とか。

 

「安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様安珍様」

 

 この壊れようである。割と早めに問題を解決しないと部屋が蒸し焼きにされる可能性すらある。

 どうしたものかと多くの英雄が頭を抱えた。そんな時、開かずの扉が開かれた。

 

「先ぱ・・・・・・い?」

 

『フォウ・・・』

 

 筋肉モリモリのマッチョマンが出て来た。何処かカルデアのマスコットであり謎生物のフォウに似た面影があるが誰だこいつ。

 マッチョマンが無言で手を差し出してきた。その手にはマスターがぐったりとした様子で項垂れていた。

 

「先輩!?しっかりしてください、先輩!!」

 

 閉じ籠りから一週間、天岩戸は開かれた。

 

 

 

 

 

 

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---本当に皆に信頼されてるのか分からなくなった。

 

 その言葉は紡いだマスターは今にも泣きそうに顔を歪めていた。恐らく一週間もの間一人で考え、悩んできたのだろう事がその顔色から窺える。謎生物フォウさんが運んでいた食事は常に空になって戻されていたがマスターはそれを戻していたらしい。

 

「何でそんな事を思ったんですか、先輩・・・?」

 

 聞かずにはいられなかった。召喚に応じた英雄の中には当然彼らの始まりともいえる土地、冬木で出会ったクー・フーリンやエミヤ、アーサー王であるアルトリア・ペンドラゴンが挙がる。そんな付き合いの長い彼等の事を今更疑うなんてどうしたというのだろうか。

 

---ネロ祭、やってたよね。

 

「はい、皆さん思い思いのチームを組んで楽しそうに祭りを満喫なされてました」

 

 とはいえ、流石にマスターがこんな状況なので祭り事態は既に終わっている。主催者のネロなんて自分に何か非があったのかと泣きそうになっていた。

 

---皆、凄く生き生きしてたよね

 

「既に亡くなっている方達が生き生きとする。と言う表現は正しいのか分かりませんがそうですね」

 

 召喚された英雄は既に亡くなっている者が大半である。例外として未来の人類史が消失したことにより死を克服したはずの影の国の女王であるスカサハがいたりするが、大半は故人だ。

 

---楽しんでくれることは良いんだ。

 

「でしたら、一体何を悩んで・・・?」

 

 その質問の答えは思いもよらぬ物だった。

 

---槍持ちのクーさんはさ、どうして私の時には即死出してくれないんだろうね・・・

 

「え?」

 

---メイブさんとかさ、敵の時はあんなに強化使うのに、味方の時は強化してくれないよね・・・

 

「え、先輩・・・?」

 

---アルジェナさんだってさ、カルナさんと組んで種火集めに行こうとすると怒るのにさ、どうして今回はあんなに仲良さそうにボスになってるの?

 

「せ、先輩・・・?落ち着いて・・・」

 

---ヘラクレスなんて私が一緒だと一回しかガッツ使わないのに何で敵になった時は12の試練使う様になるんだろうね!!!

 

「Dr!先輩が可笑しくなりました!」

 

---なーにがすまないだ!開幕宝具ぶっぱしてさ!悪竜の血鎧とかいっつも使ってくれないじゃん!!!

 

---ネロだって全体ガッツとか使えるんなら教えてよ!!!

 

---スカサハさんも即死もっと当ててよ!!!

 

 ネロ祭が生んだ闇は相当に深い模様である。

 こればかりはマスターが閉じ籠るのも仕方が無い事だろう。今まで共に人類の為に戦ってくれた英雄たちが、実は本気じゃありませーんwwwとばかりに今回に限って張り切っているのだ。そりゃ疑心暗鬼にもなる。

 こうしてマスターの心労は溜まっていった。かくして、最後の特異点に向かう前にカルデアに存在する英霊との面談が始まる事となった。




ジャンヌ出たら続きます


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ギリシャが生んだ大英雄と槍バカ

礼装しか出ないけど仕様です。


 ヘラクレス。ギリシャ神話が生んだ半神半人の英雄の中でも最大の存在である彼だが、カルデアではバーサーカーとして存在する。バーサーカーと言えば狂化が掛けられており、ランクによっては意思の疎通が困難な相手もいる。例に挙げるとすればランクEXの清姫だろう。規格外評価であるEXが付けられている彼女だが一見すると何処も狂っている様子は見られない。何が狂っているのか?答えは単純明快、彼女の目にはマスターが過去に愛した安珍として映っているのだ。13歳とまだ若い年に亡くなったのにも関わらずマスターに向かって妻とアピールするなど割とバーサーカーしてる。そもそもこんな可愛い清姫に嘘ついた安珍、ワンチャン同性愛者の可能性がある。

 

 話が脱線したが最初の相手はバーサーカーのヘラクレスである。バーサーカー以外のクラスで召喚される事があればグランドクラスとして存在していても可笑しくない彼だが。現在マスターの前で正座していた。これには面談に同伴したマシュもロマニもダヴィンチもビックリである。言っておくが令呪は当然使用していない。ヘラクレスが自発的に正座しているのだ。正座しててもベッドに腰かけるマスターと同じ目線と言う当たりムキムキマッチョマンは恐ろしい。

 

「さて、最初の面談相手はヘラクレスさんですが・・・」

 

 進行を務めるのは後輩の中の後輩であるマシュ・キリエライトである。そんな彼女はこの面談について頭を悩ませていた。何故かと言えば相手はバーサーカー。同じバーサーカーでもナイチンゲールであれば怪我が絡まない限りは会話が出来るのでありがたいが如何せんヘラクレス。

 

「■■■・・・」

 

 お手上げである。何を言っているのか理解出来ない。王様の妻を寝取った父親が狂った方も会話が出来ないがまだあっちは言語を話す。ヘラクレスが何を言っているのか全く理解できない。

 

「うん、ヘラクレスもこういった祭りごとは楽しみたいもんね」

 

「先輩!?」

 

 何故理解出来るのか、後輩of後輩のマシュでさえも理解出来なかった。

 だが、その時マシュに電流が奔る。マスターは一週間もの間一人で頭を悩ませていたのだ。それはもしかしたら狂気の沙汰なのかもしれない。つまりマスターは人の身でありながら、その身に狂化のスキルを宿す事が出来た訳だ。全く訳が分からない。

 詰まる所マシュも毎日のようにマスターの身を案じていた事で精神が疲れ切っていたのだ。こうして訳の分からない事を考える程度には。

 因みにではあるが、何故マスターがヘラクレスの言葉を理解出来るかと言うと魔力のパスが繋がっているからである。繋がっているからには相手が■でしか会話出来ないヘラクレスだろうが、フラン相手だろうがそれなりの意思は感じ取れる。

 

「こんな事もあろうかと、稀代の天才であるダヴィンチちゃんは作っておいたよ!」

 

「あったよ!バーリンガルが!」

 

「でかしました!」

 

 バーリンガルとは2000年初期に流行ったバウリンガルの言わばバーサーカー用の機械である。詳しい事は省くがこれがあればいかに相手が言語を話す事が出来なくとも会話が出来ると言う優れものである。

 ダヴィンチちゃんが取り出したそれをマシュとロマニは興味津々に覗いてみる。

 

『基本的に平時に12の試練を使っていると、当然の様に魔力が消費されていきます。となれば如何にカルデアからの魔力供給が万全であろうとも、不安が残るというものです』

 

 三人は揃って天井を見上げた。今画面に映っている事が理解出来なかったからである。ヘラクレス、狂っている筈なのに物凄く礼儀正しい。

 

「でもね、多くの英雄がいる中で今更カルデアの魔力とか心配した所で意味が無いんだよね。正直な話余ってる聖杯から魔力供給する手段もあるし」

 

 現在カルデア内に存在する聖杯の個数は驚きの11個。キリ○トもどんだけコップを使っていたのかと思わないでもない。どうせ願う事も無いので置物と化している聖杯から溜まっている魔力を拝借するのも別に良いだろう。

 

「とは言え、正直な所ね。ヘラクレスが12の試練を普段から使おうが使うまいが関係無いんだよね」

 

 カルデア最後のマスターには一つの方針がある。

 召喚に応じた英雄は、特異点で倒された場合カルデアに送還される。既に死んだ英雄からすれば下手こいたなー程度の考えなのだが、マスターはそれを良しとしない。なるべく被害を出すことなく特異点を乗り切る事を目標としているのだ。だからこそ、ヘラクレスが12回復活できようが正直どうでも良かったのだ。

 

「それよりも問題はケルトが生んだ槍バカコンビだよ・・・」

 

「スカアハさんと、クー・フーリンさんですね。お二人は師弟の関係でありますし、息の合ったコンビネーションを見せてくれましたね」

 

『分かります。それにスカアハさんは神殺しも可能なお方ですし、私も確実に勝てる可能性はないですね・・・』

 

 ■■■の三文字の間にヘラクレスはどれほどの言葉を詰め込んでいるのかとロマニが驚愕に顔を染めていた。

 

「私が一緒の時は回避とか一回使ったら終わるのにさ、スカアハさん毎回毎回回避使ってきてさ・・・」

 

「ケルト流と言う名の宝具封印とかぶっぱはロマンの人達涙目ですよね」

 

「それに何だっけ?どちらか片方倒したら強制即死貰うんでしょ?もうそれってあの二人だけで特異点どうにかできそうだよね」

 

 ソロモンの目の前で青タイツに自害を命じたらスカアハ切れて魔術王涙目にならないだろうか。まぁ流石に自害を命じる程薄情でもないし、そこまで簡単に事が済むなら一度目の邂逅で速攻倒している。

 と言う訳でヘラクレスを返して呼び出したるは槍バカ師弟。スカアハは何時もの様に姿勢正しく佇んでいるが、クー・フーリンは何故か槍を突きつけられた状態で寝そべっている。

 

「なんでだぁ!」

 

 因みに槍を突きつけているのはマスターである。槍はスカアハが快く貸してくれました。少しでも突き刺されば激痛を生んでくれるルーンのおまけつきである。原初のルーン万能説極まってる。

 

「何でクーさんもスカアハさんもさ、即死決めてくるの?」

 

「え、いや、即死を決めるも何も。俺の宝具ってそもそも心臓に必中させる事で即死させるもんだから、即死するのは当然なんだが・・・」

 

「でもアルトリアに躱されてるじゃん!当たるって結果が先に出る宝具なのに幸運に負けるとは何なのさ!」

 

「いってぇ!刺すなよ嬢ちゃん!」

 

「スカアハさんはまだ即死が決まらないのも納得出来るんだよ。クーさんにゲイボルグ譲った訳だし」

 

「まぁそれでもスタンさせてから逃れられない様にしてからゆっくりと心臓を貰い受けるがな」

 

「じゃあ私の時もそのコンボやってくださいよ」

 

 そう告げられたスカアハは目を逸らした。何が問題なのかと小一時間問い詰めたい。

 

「まぁアルトリアの件もあるしさ、幸運高い人とかさ、それこそヘラクレス相手なら即死出来ないのもまぁ納得出来る」

 

「ふふ、如何にヘラクレスが相手だとしても私は必ず殺し尽して見せるがな」

 

 スカアハさん渾身のどや顔である。ぶんぶんと盛大に動く尻尾が幻視されたのはきっと気のせいだろう。

 

「それよりも納得出来ないのは強制即死でーす!ばーか!」 

 

 叫びながらマスターは槍と力いっぱい突き刺した。もちろんランサーにである。

 

「マスターが壊れました・・・」

 

「ブォウ・・・」

 

 マシュの呟きに究極体となったフォウさんが応答する。八頭身になった彼、もしくは彼女だがクー・フーリンの上でスクワットを行っている。

 

「ランサーが死んだ!」

 

「稽古が足りんからじゃ」

 

「勝手に殺すんじゃねぇよ!」

 

 話を戻そう。この二人がコンビを組んだ『光と影の師弟』どちらかを倒してしまうと強制的に即死をされるというふざけた話なのだ。ガッツで耐えれる?じゃあ追撃しとくな!とかいう心折設計である。頑張って聖杯転臨までさせた清姫が一瞬で消えてマスターは涙目になった。清姫と一緒に涙目になった。是非も無いネ!

 

「何なんですか、師弟で組まないと仇討ちしてくれないんですか?私達じゃ仇討ちするに値しないんですか・・・?」

 

 段々と尻すぼみになっていくマスターの声にスカアハも申し訳なさで一杯になってしまう。かと言って仇討ちを使えるかと言うと微妙な所なのだ。色々と制約のあるルーンを限定的に使用してるだけなので平時も使えるかと言われると難しいのだ。

 その時、そっとマスターが立ち上がりスカアハの正面に立つ。そして突然の行動に出た!

 

「おっぱいタイツおっぱいタイツ!!!」

 

「!?!!!????」

 

 揉んだ。

 

「回す方のノッブだってさぁ!揉んだんだよなぁ!マスターの私が揉んでも問題無いよなぁ!」

 

「回す方のノッブって誰ですか・・・」

 

 マシュは助けに入らない。否、入る事が出来ないのだ。だって自分も似たような恰好をしているのだ。いつその矛先がこちらに向くか分かったもんじゃない。

 

「大体こんなでっかいメロンぶら下げてあんなに早く動けるって何なのさ!私にも分けろよ!カルデアサマーメモリーだってたわわに実らせてさぁ!」

 

 この後騒ぎに駆け付けた無い方のセイバーが駆け付けるまで師匠は揉まれ続けた。



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