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第一章 常盤色の光の中で

 

 

空に光る緑の裂け目が、私の身体を飲み込む。

 

水に溺れるような感覚が、肺を満たしている。

 

ーー息が、僅かにしか出来ない。

 

私がこの世界を。この次元をーー統治しなければならないというのに。

 

【憎い……憎い憎い憎い!】

 

指が……動かない。

 

 私の計画はーー何処で崩された?

 

 ランサーズ。赤馬 零児。榊 遊矢。ジャック・アトラス。全部奴等が悪いのだ。

 

 奴等の様な気品も知性も何一つない、人畜同然の凡俗め。

 

 叶うならばーーもう一度、合間見えてやりたい。

 

 そしてーー形すら残さぬよう、粉砕をするのだ。

 

 怒りは高ぶれど、周囲の景色は、前面深い緑の光のまま。

 

ーー此処は、空気も薄いようだ。

 

……幾ら私でも、死にたくはない。名声も遺せぬままーーこんなところで。

 

急激に目蓋が重くなる。

 

いや、朽ちてーーたまる物か。 朽ちてーーたまるものかぁ……!

 

「私は……死なん……! 絶対に……死なん!」

 

力の限りに目を開く。その瞬間ーージャン・ミシェル・ロジェは光の中に、こちらへ向かってくるカードの束を見た。

 

「あれは……カード?」

 

 

空間の中に、カードが流れてきている。

 

なんでこんなところに? 神がいるというのなら……私を嘲笑うつもりか?

 

 残った僅かな力で、片手でカードを掴む。

 

 この私への……冥府への渡し賃と、いう事か?

 

 その瞬間、カードから光が発せられた。

 

「ーーこれは!?」

 

私が驚く間もなく、私の体は光によって跡形もなく分解されたーー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ーー長官。長官!」

 

「ーーはっ!?」

 

 何者かの声で、突然目が覚める。

 

「スピードワールドネオ・展開完了しました。逃走中のDホイールとのリンクを確認しております」

 

 オペレーターの声だ。ーーどういった事だ。私は死んだはずではーー?

 

「ーー逃走中? コースは?」

 

 訳のわからぬままに、オペレーターに問いかける。

 

「トップスの別荘地区からシティ中心にかけてSTC06ルートです」

 

 モニターに写るのは、白いDホイールと、それを負うデュエルチェイサー227だ。

 

 あの男……覚えがある。

 

「……まさか、戻って……いる?」

 

 ぞっとした感覚を背筋に覚えて顔に手をやろうとした時、

 

右手に違和感を感じた。

 

【カラクリ将軍 無零】

 

 ほかにも何枚か無造作に握られたカード。

 

 あの時咄嗟に掴んだ、カードだ。まさか、夢ではないと?

 

 暫く茫然としていると、再びオペレーターに催促される。

 

「長官、デュエルチェイサー227への指示はどうされますか?」

 

「……彼に好きにやらせなさい。無論周囲の手の空いているデュエルチェイサーは、万が一の

事があった時の為に急行させておくこと」

 

 苦虫を噛み潰したかのような表情になりつつも、私はそう指示して席から立ち上がる。

 

 どうせ227が勝てないと分かっているからではない。

 

 これは……チャンスだ。チャンスなのだ。

 

一度失敗した私の野望に、火がついた。

 

……恐らく既にランサーズはこちらにきているはず。ならば、お楽しみはこれからだ。

 

 改めてデッキを構築しーー今度こそ赤馬零児をこのシティから葬り去る!

 

私のシティで狼藉を働くものなど……完全に潰すのみだ。

 

心なしか、握り締めた拳に不自然に力が入るのを……感じた。

 

今日はもう退勤だ。家に帰って久しぶりに……デッキケースを開けるとしよう。





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後書き欄







朝の4時から頭が暴走しつつ二時創作をやってみたくなったのでやってみました。
続くかどうかは知りませぬが……えーと……



レイジングテンペスト買うといいとおもうよ。


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第一章 常盤色の光の中で-2

 公用車で帰宅して使用人に食事の用意をさせておき、私はバスルームへ向かう。

 

 屋敷の湯船は既に、赤い着色で満たされていた。

 

 ……私好みの、天然の入浴剤だ。シティ……トップスの中でも、限られた人物しか手にする事が出来ない品質のものだ。

 

 湯船から手で、湯を掬う。

 

 いずれ赤馬零児、そして零王もこの湯のような赤い血に沈めてやる。

 

 鏡に映った自分の顔が、笑みを浮かべているのが分かる。だが、油断はならないのは事実だ。

 

 ……赤馬零児。奴は前の世界でシンクロ召還とエクシーズ召還、さらに融合召還に加えてペンデュラムまでを操っていた。

 

 だが私とて多少の腕には覚えがある。アドバンスと融合、そしてシンクロ召還までは自己評価で甘く見ても100点中の98点は出来ていると考えがある。

 

 しかし……それでは、足りない。 全く足りないのだ。不服かつ、業腹だが、エクシーズとペンデュラムについてはほぼ全く、仕掛け以外は私には分からないと言ってもよい。

 

 此処はどうするべきか。

 

……以前の世界のタイミングでは、確か地下デュエルでエクシーズを行う者が現れた記憶がある。その後、フレンドシップカップへのスケジュールが密接に組み込まれていくことになったはず……。

 

 一応前もって老人たちにマークは付けておいたが、どうやら赤馬零児は既にこの次元にいて、奴らと接触したと見える。ならば……始末は既に不可能と見る。

 

……作戦変更だ。セルゲイをーーセルゲイ・ヴォルコフを、このタイミングで使わせてもらおう。

 

 やるならばあそこ、地下デュエル、そこにセルゲイを使うのだ。

 

 前の世界では奴はキングに感化されて心を持った後に無様にもコモンズの虫に破壊されてしまったがーーこの世界で私の右腕になるに相応しい能力が奴(セルゲイ)にはある。だから、奴をキングにぶつけるのは見送るしかあるまい。それに……万が一にでもユーリが来た場合、戦うならばセルゲイしかないのだから。

 

……今この私が考え付く最適解。

 

ギャラガーに連絡を取らせ、地下デュエルに介入。そこでセルゲイを使いエクシーズの力を男から聞き出し、ランサーズを解体させるーー。運がよければ私にエクシーズを扱う力が備わり、さらに過剰なるほどに私自身が完全無欠となるのだ。

 

……どうせ柊 柚子はすぐにフレンドシップカップに来る。 今度こそ私の勝ちが決まる。全て私の掌の中だ。

 

「フフフ……ハッハッハッハッハ……!」

 

 

 愉快になってくるが、笑ってばかりではいられない。カードの研究もしなければならない。セキュリティのデュエルチェイサーにも支給カードを増やし、サイドデッキの選択権利を与えなければ。

 

 ペンデュラムが魔法カードの一種なのは分かっている。魔法効果の矢をまず投入させ、ほかに……サイクロン、魔封じの芳香、封魔の呪印。なにがなんでも潰さねばならん。

 

 色々と対策を考えているとシンクロ次元に来たばかりの事を思い出す。

 

闘争、他人を蹴落としてでも這い上がらなければならないような過酷な競争。情報アドバンテージ、他人を出し抜く力。

 

 ーーこれだ。久しぶりに忘れていた、人間が生きようとする力の大切さを。

 

 未来よ、幾らでも私の前に立ち塞がるがいい。全て粉砕してくれる。

 

 

私は密かに、ほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 バスルームから戻ると、治安維持局からの連絡が入った。

 

なにやら通信報告によれば、デュエルチェイサー227はやはり敗れたとの事だ。

 

ーー一応今回も彼は確保しておくとしよう。榊遊矢相手には遅れをとったが、温存しておけば

奴はオベリスクフォース相手には役に立つだろう。

 

「……」

 

鍵を手に取り、貴重品を保管してある自分の机をそっと開ける。私はアカデミアの印の入ったデッキケースを手に取った。

 

ーーずっしりと重い、デッキ。【古代の機械】という。

 

私の原点であり、アカデミアの魂ーーそれであり、内心嫌っていて離れたくもあったデッキだ。

 

 だが、あの時 ランサーズ……そして赤馬零児相手にこのデッキを使ってしまった。本来はシンクロデッキを使うべきところを。

 

 それは即ち、私自身がアカデミアと決別したつもりでいて、それでも過去を振り切れていないということだ。

 

 

ーー今は使える知識を総動員して別のデッキで間に合わせるとして、エクシーズとペンデュラムを修得した後は……いずれはこのデッキを改造し、私の魂の進化を世界全てに魅せつけるしかあるまい。赤馬零王を討ち取るのは、このデッキを新生させた超アンティークだ。

 

 

新生したこの私、ジャン・ミシェル・ロジェの至高で強大なる力が、奴らを跡形もなく葬りさるのだ。

 

 

 

「……明日はプロモーターのギャラガーがデニスを見つけるといった時分だな……奴を通して、やれる事がある」

 

 時間は有限だ。動けるうちに動く、その信念こそが私をこの長官の地位までのし上げてきたのだ。

 

シティ最大のデュエル大会……フレンドシップカップの9戦目、そこに炎城ムクロとかいう奴ではなく、セルゲイをぶつける。

 

本当に扱い辛いあの馬鹿者だが、お前の好きな美しい者が見付かるかもしれないとでも言っておけばとりあえずは動かせるに違いない。

 

 その隙を狙い、私がデニスと接触すればーー。

 

 




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早速の感想ありがとうございます!
長官がデュエルで使うデッキも今何度かリテイクしつつ、
現実でそこそこに戦えるデッキとするつもりです!


追記10/02 誤字脱字指摘を受け微修正しました!


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第二章 地下と道化師と

 地下デュエル大会、9戦目ーー。

 

「先行は貰った! 俺はRRーバニシング・レイニアスを召喚! さらにその効果を使い手札からRRートリビュート・レイニアスを特殊召喚! その効果でデッキから墓地にRRーミミクリー・レイニアスを墓地に送る! 墓地のミミクリー・レイニアスを除外し、RRーコールをデッキから手札に加える! さらに、自分の場にRRが二体以上存在するとき、手札から永続魔法、RRーネストを発動! デッキから、RRーブースター・ストリクスを手札に加える! そして、場の二体のRRでエクシーズ召喚を行う! 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》! 俺はフォース・ストリクスのオーバーレイ・ユニットを取り除きデッキから鳥獣族・闇属性・レベル4のモンスターを手札に加える! 俺は二体目のRRーバニシング・レイニアスをデッキから手札に加える!」

 

 

 フィールドでは、私のセルゲイ相手に黒咲 隼が早速、フィールドで猛展開をしている。全く、なんというデッキの回りようだ。まさに、疾風迅雷の如しといったところか。

 

 ……やれやれ、私が学生の頃の時代では精々2体モンスターが並べば驚かれたものだというのに。

 

「お時間を頂き、ありがとうございます。いやいや……凄いですね、レイドラプターズ……いや、エクシーズ召喚というものは。あんな素早いデッキは、私がこの年齢まで生きてきて今まで見たトップ3に確実に入りますよ。あれだけ動いて、手札を全然減らさないとは……流石です」

 

 会議室の一室を貸し切り、デニスと無事に面会をセット出来たのは僥倖だった。

 

 ーー私は少し大げさに驚く演技をしたが、これでは不自然そうには見えまい。こんな場なのでいつもの服ではなく目立たないコート姿で来るしか得なかったが、権現坂くんという大柄なお付きにはギャラガーがひっついている。場を開けてくれている今しか大局的な勝ちへの仕込みはない。デスクで駒を触っている時間を現場に回せば、こうも有益に使えるのだ。

 

「……そうですね。ボクが思うところ確かに彼は……黒咲は、強いと思いますよ。あの屈強な挑戦者も見た目からかなり場慣れしているように見えますが、彼には勝てないとおもいますがね」

 

 デニスはこちらを不審がっているのか、やや距離を置いた様子で話しかけてきた。

 

 だが、今のところはーー私の真意はばれてはいないはずだ。

 

「……君も使うのでしょう? エクシーズ召喚を」

 

 私は我ながら完璧な声色で、デニス君の表情を伺う。

 

 彼には私の事を、市の支配階級ーートップスの一人、とだけ伝えてある。

 

「えぇ、確かに僕もエクシーズ召喚を使えます。まぁ彼と違って、それだけが主軸ではないんですけどね」

 

「それは素晴らしい。一体ーー何処でそのような技術を?」

 

「貴方は信頼できそうですから言いますがーー僕らは訳あって別次元からきて、仲間を探しにきたんですよ。そして、この次元の強いデュエリストをスカウトしにきました」

 

 デニスはそう説明してくる。ーー予想よりも頭の回転の早い子供のようだ。油断はならんな。

 

「ーーそうですか。でしたら、私が約束をしましょう。あなたの仲間を絶対に保護すると。この私、ジャン・ミシェル・ロジェはこの街では単なる警察の役目をしている程度で地位はそれほどではないですが、君達の自由を保障させるくらいはできますからね」

 

 彼に太鼓判を推してやると、デニスは安堵したような表情になった。少しは警戒心を削げたか。

 

「分かってくれて助かります。ただーー僕一人に面会だなんていうから、少し警戒しちゃいましてね。なんとなくですが」

 

「いえいえ、とはいえ今回の件、こちらも治安を維持しなければならないのでそこのところは事情と分かってください。万が一にもアナタたちが危険組織であれば拘束せねば、とまでの意欲で正直きたもので」

 やや弱気がちに見せかけつつ、そう意思を表明しておく。

「分かりますよ。突然怪しい召喚を使うような人間がくれば、それはボクだって警戒するでしょう」

 

 話が分かる。ーーよし、本題だ。

 

「恐れ入ります、デニスさん。ところでーー貴方は強いデュエリストを探していると言いましたね。私もあなたの活動を援助したいとは思っていますがその代わりーーエクシーズの力を私や私の部下に指南願えないでしょうか? 日に日に凶悪化するコモンズを取り締まる為にも、是非、とおもいまして」

 

「エクシーズ召喚を?」

 

「ーー実戦も、兼ねて。 とりあえず、この私自身でも体験してみたい。ーーどうですか? 公園で放送されていたあなたの大道芸も、この目で間近に見たいと思っていましたのでね。……あぁ、御心配なく。鑑賞料として心ばかりですが一週間分ほどは食事に困らない程度のお金は私のポケットマネーで用意しております」

 

 こちらのセキュリティのディスクを、出す。流石にこんなところでアカデミア仕様のディスクを出してはただの馬鹿だ。

 

「……確かに、人が集まれば食事代も馬鹿になりませんからね。日銭は大切だし、分かりましたよ。いいでしょう、よく見ておいてくださいね」

 

 デニスがデッキを用意したーー。此処から私の、運命を変える戦いが始まるのだ。

 

 悪いがーー私の餌食になってもらう。《古代の機械混沌巨人》を取り上げ、我々の手で解析もせねば今のアカデミアの対策は辛いからな。

 

 会議室の机を少しどかし、ある程度動きやすくさせてからディスクを構える。

 

ーーそういえば、彼らが扱うのはアクションデュエルとかいうのもあるのだったな。地縛カードを超える物も開発できれば良いに越したことはないが……時間が間に合うか、分からん。

 

『フィールド魔法発動、クロスオーバー』

 

 彼のディスクから、自動で魔法が発動される。

 

 アクションカード、か。動き回るのは好きではないが……やるしかないだろう。

 

「お手柔らかに、デニス君」

 

「……こちらこそ。観客がいないのが残念ですが……よろしくお願いしますよ」

 

 目の前の道化師は、少しだけ笑った。……さて、化かしあいといきましょうか。

 

『「デュエル!」』

 





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


10/13追記

誤字ってましたね、すみません。
召還→召喚に変換修正


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番外ーー デュエリストクラッシャーVS天翔ける隼

番外編です。


 それは、ジャン・ミシェル・ロジェがデニス・マックフィールドと会議室でデュエルを始める少し前ーー。

 

 

「黒ー咲! 黒ー咲! 黒ー咲!」

 

 相手の応援が犇くアウェイな環境で、セルゲイ・ヴォルコフは既に自身のDホイールに跨り、サーキットのスタートレーンで口に笑みを称えていた。

 

 ロジェに聞けばこの相手は既に今日までに8連勝をしているという。 ……なるほど、中々に噛み具合が良さそうな相手だ。 絶好の……獲物でもある。

 

「……貴様が、セルゲイ・ヴォルコフか。このシティを震えさせた犯罪者であったと言うが……本当か」

 

 鷹を思わせる鋭い目をした男ーー黒咲が、ゆっくりとDホイールを止めて横から話しかけてきた。

 

「……そうだ」

 

 その顔を観察するかのようにセルゲイは見ると、また前に向き直る。

 

20もいかない年齢だが……コモンズで一般的に見るような低質のライダースーツではない。そこそこのスポンサーがついていると見える。

 

「……娑婆にでてきたところで悪いが、俺は加減をする気はない。怪我をしたくなければ引っ込むんだな」

 

 黒咲はそうとだけ言うと、自身の準備が終わったと手でスターターに合図を行った。

 

 そろそろ、開始のようだ。

 

ーー今回もいつものように、第一コーナーを制した方が先行というルールだ。ただ、まだ此処は9回戦目なのでライフについてはお互い4000制となっている。

 

『それでは、デュエルを開始します! 両者スタート用意!』

 

 サーキットのBGMが変わると同時に、観客が黄色い歓声で盛り上がり始める。

 

 此処は賭けデュエルの場だ。オッズは知らんが、今も相当の金が飛び交っているだろう。

 

 デュエルモード、オン! オートパイロット、スタンバイ! フィールド魔法発動! 《スピードワールドネオ!》

 

 走るデュエルディスク……Dホイールから魔法が発動されレーンの周囲が、光に包まれた。

 

 3! 2! 1! ……

 

 カウントが始まり、こちらもエンジンを吹かさせる。

 

 いつ聞いても、この電子音声……悪くはない感覚だ。

 

『「デュエル!」』

 

 黒咲がロケットスタートを決めたが、セルゲイはその後に続いた。

 

 

「ーーほぅ、出来るな」

 

 走り出してすぐに、セルゲイは少し、驚いた。

 

 黒咲という男は……見た目より軽いと見える。 ほぼこちらがトップスピードでいるというのに、差が、縮まらないのだ。 Dホイールの出力がレギュレーションで決まっている以上、大柄なセルゲイは成人男性を大幅に上回る自身の体重もあり、直進における加速性能において不利を背負う。

 

 ……ストレートでは抜けんか。

 

 とはいえ、時速160kmを超える世界でのバトルだ。ドライバーが人間である以上、レースですら何かしらのミスをするというのにデュエルをしながら走るのでは最適な走りは出来ない。

 

 それ故に、セルゲイには付け入る隙があった。

 

 黒咲/LP4000   セルゲイ/ LP4000

 

 第一コーナーは、黒咲が、制す。

 

 先行権をとった瞬間、軽くガッツポーズを黒咲がしたのを、セルゲイは見逃さなかった。

 

「先行は貰った! 俺はRRーバニシング・レイニアスを召喚! さらにその効果を使い手札からRRートリビュート・レイニアスを特殊召喚! その効果でデッキから墓地にRRーミミクリー・レイニアスを墓地に送る! 墓地のミミクリー・レイニアスを除外し、RRーコールをデッキから手札に加える! さらに、自分の場にRRが二体以上存在するとき、手札から永続魔法、RRーネストを発動! デッキから、RRーブースター・ストリクスを手札に加える! そして、場の二体のRRでエクシーズ召喚を行う! 冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》! 俺はフォース・ストリクスのオーバーレイ・ユニットを取り除きデッキから鳥獣族・闇属性・レベル4のモンスターを手札に加える! 俺は二体目のRRーバニシング・レイニアスをデッキから手札に加える! 俺はカードを1枚セットし、ターンエンドだ!」

 

 

コースをリードしつつ走る黒咲。初動のラッシュを終えて尚、手札は4枚。

 

 (守)RRーフォース・ストリクス ランク4/闇属性/鳥獣族/攻 100/守2000

 

 セットカード 1 場 RRーネスト

 

 手札4

 

「フン……今のところは脅威は感じないが……面白くはあるな」

 

 Dホイールを駆るセルゲイは、その後ろを追走していく。

 

 ロジェに半ば無理やり連れてこられた地下デュエル場……普段は碌なことを言わないアイツの命令だが、決闘者の勘も後押ししたので素直にこちらに来てみたら、今回は当たりのようだ。

 

 ただ、融合は使うなと厳重に言われて妙なデッキを渡されたのは……気にくわんが。

 

 本音を言えば、簡易融合すら使うなと言うのはとても気に入らん。

 

 ーーまぁ、いいだろう。 美しくなければ速攻で潰すのみ。美しければ……丁寧に手折ってやるのみだ。

 

「ドロー!」

 

 セルゲイのドローの衝撃で、車体の後ろに風が巻き起こる。

 

「俺は魔法カード《エネミーコントローラー》を発動する。これによりお前のモンスターの貧小なフォース・ストリクスは攻撃表示になる! その100のボディを晒すがいい!」

 

「何ッ!?」

 

 黒咲の驚く声。流石に表示形式を変えられる事は、予想していなかっただろう。

 

「俺はさらに、手札から魔法カード《光神化》を発動! 手札のゼータ・レティキュラントを特殊召喚する!」

 

ゼータ・レティキュラント

 

星7/闇属性/天使族/攻2400/守2100

 

(1):このカードが墓地に存在し、相手フィールドのモンスターが除外される度に発動する。

自分フィールドに「イーバトークン」(悪魔族・闇・星2・攻/守500)1体を特殊召喚する。

 

(2):このカードは自分フィールドの「イーバトークン」1体をリリースし、手札から特殊召喚できる。

 

「……上級モンスターをリリースなしで特殊召喚か」

 

 黒咲は白紫の獣……ゼータ・レティキュラントを見て今度は然程脅威ではないといった様子で、呟く。

 

「この程度ではない。さらに緊急テレポートを発動! デッキから、レベル1チューナーモンスターのリ・バイブルを特殊召喚!」

 

 召喚に応じ、青い本が、フィールドに降り立つ。

 

「さらにチューナーモンスターだと?」

 

 

《7+1》

 

「心の闇より生まれし者、今、魂と引き替えに降臨するがいい! シンクロ召喚!脈動せよ、《ブラッド・メフィスト》!」。

 

 

ブラッド・メフィスト

 

星8/闇属性/悪魔族/攻2800/守1300

 

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

相手のスタンバイフェイズ時、相手フィールド上に存在するカード1枚につき相手ライフに300ポイントダメージを与える事ができる。

また、相手が魔法・罠カードをセットした時、相手ライフに300ポイントダメージを与える。

 

 

「バーンを内蔵したモンスター……? それに2800とは、鬱陶しい……」

 

「フフ……攻撃表示のシンクロモンスターが召喚されたな。 だが……貴様。貴様は俺がまだモンスターを通常召喚していないことに気付いているか?」

 

「……っ」

 

 黒咲の目付きが変わる。

 

 「思い知らせてやろう! 俺は《カラテマン》を召喚!」

 

星3/地属性/戦士族/攻1000/守1000

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、元々の攻撃力を倍にした数値になる。この効果を使用した場合、このカードはエンドフェイズ時に破壊される。

 

 セルゲイのフィールドに、胴着を纏った男が現れる。

 

 同時に黒咲の表情が歪んだ。

 

「カラテマンだと!? そんな弱小モンスター……ふざけているのか!」

 

「……俺は全く、ふざけてなどいないな」

 

 ……ふざけているのは、こんなデッキを渡したロジェだ。

 

「カラテマンの効果発動! カラテマンの攻撃力はエンドフェイズ時まで、元々の攻撃力を倍にした数値になる! この効果を使用した場合、このカードはエンドフェイズ時に破壊される!」

 

「うぉぉぉ!」

 

 カラテマンの身体がパンプアップされ、一回り身体が巨大になる。

 

「これで合計攻撃力は4800となる。 あっけなかったな」

 

 セルゲイはそう告げつつ、黒咲を静かに見る。

 

ーーいや、だがこの程度で終わってもらっては困る。もっと味あわせろ、貴様を。

 

「バトルフェイズに入る! カラテマンで貴様の攻撃力100のフォース・ストリクスを破壊する! 暗黒空手で葬ってやるがいい!」

 

 全身の筋量を増大させたカラテマンが、フォースストリクスに迫る。これが通れば1900の大ダメージとなる……だが、攻撃は中断された。

 

「……ッ! させるか! 俺は手札のブースターストリクスを除外し、効果発動! これを対価に貴様のカラテマンを破壊する!」

 

カラテマンが爆散する。ーーなるほど、凌いだか。だがーー甘いな。

 

「……俺を止めた、と思ったか?」

 

「何?」

 

黒咲が顔を顰める。

 

「……フィールドのモンスターが破壊された時、俺は手札の機皇帝ワイゼル∞を特殊召喚させてもらう!」

 

セルゲイは片手で、Dホイールのパネルを叩く。

 

同時にソリッドビジョンから5つのパーツが飛び出て巨大なる白銀の機械が出現し、無機質な赤い目が黒咲を見た。

 

 機皇帝ワイゼル∞ 星1 攻撃力2500

 

「……こいつッ」

 

古代の機械と似ている、そうとでも思ったのだろうか。

 

「バトル続行! 機皇帝ワイゼルの攻撃! ステンレス・スチール・スラッシュ!」

 

 ワイゼルの手が刀と化し、フォースストリクス……そして、黒咲を襲う。

 

「ぐぉあ!!!」

 

 黒咲LP4000→1600

 

 大爆発が起こり、黒咲のDホイールが減速する。

 

「獲ったぞ!」

 

その瞬間を狙い、セルゲイはホイールを急加速させ抜き飛び出した。

 

「……しまった!」

 

「フフフ……一瞬とはいえ油断するとは美しさが足りないな。機皇帝ワイゼルのデメリット効果により、ブラッド・メフィストは攻撃する事が出来ない。故にターン……」

 

「待て!」

 

 黒咲は、言葉を遮る。

 

「何だというのだ?」

 

 セルゲイは、不審げに黒咲をみやる。だが、黒咲は不敵な表情をしてきた。

 

「忠告は聞いておこう。だが、俺には戦う手は残されている……! 俺は速攻魔法ーーRUMーラプターズ・フォースを発動! 自分フィールドの「RR」Xモンスターが破壊され墓地へ送られたターン、自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる! そのモンスターを特殊召喚しーー」

 

「無駄だ、機皇帝ワイゼル∞の効果発動! 1ターンに1度、相手の魔法カードの発動を無効にし破壊することができる! つまり速攻魔法であろうと無駄だ!」

 

 言葉を中断させると同時にワイゼルの手から光が発せられ、瞬時にRUMのカードを貫く。

 

「何だと!?」

 

「さっきの攻防、瞬時にカラテマンの攻撃に対応し、ブースターストリクスの効果を使ったところは褒めてやろう。あれがなければ貴様は続くブラッド・メフィストの2段攻撃を受けて即座に倒れていたはずだ。ただ、もっとも今の攻撃を止めなくてもカラテマンの自壊チェーンに反応し、俺はワイゼルを特殊召喚するつもりではいたがな」

 

「……何を偉そうに」

 

 顔を歪める、黒咲。

 

「ーーフフフ。強いて言うのならば、カラテマンは見逃してブラッド・メフィストの攻撃に合わせて魔法を使うべきであったか?」

 

「……黙れ! 俺に指図するな!」

 

「フン……勘違いするな。俺はこんなつまらない勝負で終えたくない、というだけだ。貴様の手札は3枚……次のターンどうするか、見ていてやろう。勝とうとする執念は認めるが……美しくあがいて見せるのだな」

 

 

 セルゲイはパネルをタッチし、エンドフェイズを宣言した。

 

 セルゲイLP4000 黒咲 LP1600

 

 黒咲 隼 手札3 場 0 バック RRーネスト

 

 セルゲイ 手札0 場 ワイゼル ブラッド・メフィスト バック 0

 




ちょっとデニスの部分で詰まっている為
(OCGにカップトリッカーもファイアーダンサーもいないしヒグルミにいたっては(ry)

ので先にこちらから書かせていただきました。


簡易融合縛られるとなかなかきついですよね、戦術的に。

ロジェ長官のエクシーズ対策のため、異次元で拾ったカードが少しずつ力を発揮し始めます。


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第二章 地下と道化師と-2

「フィールド魔法、クロスオーバー。そのカードがフィールドゾーンに存在する限り、アクションカードを使用できる。 フィールドに散らばったアクションカードは1枚しか同時に手札に加える事ができない。基本的にアクションマジックは速攻魔法として考えて貰っていい……ま、こんな事ですかね」

 

デニスはそう笑いながらも、私の方を見る。

 

「成程。これは画期的なデュエルですね」

 

 相槌を打つ。なるほど、理屈は理解できる。プレイヤーの身体能力にかなり影響されるデュエルという奴か。……しかしまぁ、動きやすい恰好できたからいいものの、いつもの服だったら走り辛くて大変そうだ。 アカデミアで鍛えた身体能力はあるが、正直運動能力は昔と比べて相当落ちている。アクションデュエルをするならば、それこそ私も肺活量を増やすために水泳でもやるべきか。

 

「では、ディスクの決定ではあなたが先行だそうなのでお先にどうぞ、ミスターロジェ」

 

 デニスは含みがありそうな顔でそう告げた。

 

「分かりました、では、お手柔らかにどうぞ」

 

 ーーいいだろう。この戦い、融合またはフュージョンと名のつくカードなしでいってやる。

 

 私はわざと素人くさく、ディスクを構える。

 

「私のターン! 忍者マスター HANZOを召喚!」

 

星4/闇属性/戦士族/攻1800/守1000

このカードが召喚に成功した時、

デッキから「忍法」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。

また、このカードが反転召喚・特殊召喚に成功した時、

デッキから「忍者マスター HANZO」以外の

「忍者」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

 

 

 ディスクをタップすると同時に、忍者がフィールドに降り立つ。

 

「wao! ミスターロジェは忍者使いだったんですか? ボクの知り合いにも忍者がいるけど、そのモンスターは見た事ないですよ!」

 

合いの手を入れてくるデニス。

 

「ありがとう。でも、私はまだ召喚しただけだからね。ーー私は忍法 変化の術をデッキから手札に加えさせてもらうよ」

 

 サーチし、さらに2枚セット。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド」

 

 私のデッキは忍者デッキではない。だが、まずはこれで様子見だ。 エンタメイジとやら。セルゲイの戦う黒咲のRRとは違った強さを、解析させて貰おうーー。

 

 私は、緊張した面持ちでターンを終了した。

 

 

しかしーーセルゲイの方がやや気がかりでならない。はたして上手く奴は、やれているだろうかーー?

 

悪い病気が、出なければいいのだが。

 



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番外ーー デュエリストクラッシャーVS天翔ける隼-2

「俺のターン! ドロー!」

 

 サーキットを既に1週したが、黒咲がすぐさまこちらに追いすがってきた。 ……成程、こちらの背後に回り風の抵抗を避けるか。

……だが。

 

「この瞬間、ブラッド・メフィストの効果が発動する。貴様の場にRRーネストがあるので300ダメージだ!」

 

 

「ッハァ!」

 

セルゲイが叫ぶとブラッド・メフィストの構える髑髏の杖から光が発せられ、黒咲のDホイールに直撃する。

 

「ぬぅぅッ!」

 

 黒咲LP1600→1300

 

 減速させまいとバランスを取り、歯を食いしばる黒咲。だが、その目から闘志は消えていない。

 

 観客も今の効果には、驚いたようだ。

 

 フフフ……ならば、揺さぶってやる。

 

「……貴様。お前は今、どうモンスターを特殊召喚させようか考えている。違うか」

 

「……さぁな」

 

ぶっきらぼうに黒咲が答えるが、図星らしい。

 

 奴の手札の4枚のうち、一枚はRRーバニシングレイニアス。 そして魔法のRRーコールがあるのは確定だ。だが、展開する為のRRーコールを撃つには、こちらのワイゼルの効果をくぐらねばならない。……そして、こちらがとめられる魔法も一枚きり。つまり、精神勝負だ。

 

 奴の心拍数の上昇が分かる。

 

「……さぁ、貴様はどう動く!」

 

 セルゲイは凄み、煽る。 だが黒咲は迷いなく、手札を振り下ろした。

 

「ーー決まっている、俺はRRーバニシング・レイニアスを召喚!」

 

「ほぅ、また同じ手か!」

 

「さらに俺は、手札のRRーファジー・レイニアスを場のRRがいることにより自身の効果で特殊召喚、さらに二体フィールドにRRが居ることにより、発動済みの場のネストの効果をつかう!」

 

「……既に貼られた永続魔法は、機皇帝ワイゼルの効果では止められない……なるほどな」

 

「セルゲイと言ったな。今度は俺の番だ。さぁ、俺の行動を、何処でとめるかかけてみろ! 俺はネストで、デッキからRRーネクロ・ヴァルチャーを手札に加える!」

 

「ほぅ……なるほどな」

 

「まだ止まらんぞ! 俺はさらに、成金ゴブリンを発動! 手札を補充させてもらう!」

 

「……その効果は止めはせん、好きにしろ」

 

 セルゲイLP 4000→ 5000

 

「俺は、ネクロヴァルチャーをバニシング・レイニアスの効果で特殊召喚し、さらにRRーコールを使う!」

 

 ……奴の手札は残り一枚……つまり、残りがRUMか。だが、此処で止めねばまたもやフォース・ストリクスを作られる。

 

「いいだろう、黒咲! 俺は機皇帝ワイゼルの効果を使い、RRーコールを止める!」

 

ワイゼルの手から再び光が放たれ、RRーコールを破壊する。

 

 だがその瞬間、黒咲の口元が笑った。

 

「俺を揺さぶりにきたつもりだったろうが……賭けに負けたのは貴様の方だったな……! 今ならば動ける! 俺はレベル4のモンスター3体でオーバーレイ! 雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ! エクシーズ召喚! 現れろ! ランク4! RRーライズ・ファルコン!」

 

 

ランク4/闇属性/鳥獣族/攻 100/守2000

 

鳥獣族レベル4モンスター×3

 

(1):このカードは特殊召喚された相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。

 

(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

 

相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。

 

このカードの攻撃力は、対象のモンスターの攻撃力分アップする。

 

 黒咲の上空に、青い隼が舞い降りる。

 

「攻撃力100だが……その効果という事はこちらにくるか!」

 

「そうだ! 俺はライズファルコンの効果を発動! オーバーレイユニットのファジー・レイニアスを取り除き、デッキから手札にファジー・レイニアスを加えると同時に、 貴様のブラッド・メフィストの2800を加え、ライズファルコンは2900! さぁ、バトルだ! まずはブラッド・メフィストを攻撃! 喰らえェェッ! ブレイブ・クロー! レボリューション!」

 

 

ライズファルコンがブラッド・メフィストに炎の体当たりを食らわせる。

 

「ぐぁぁぁっ!」

 

 ブラッド・メフィストは爆散し、跡形も残らず消えた。

 

 セルゲイ LP5000→4900

 

「さらにもう一発だ! もう一発食らえ!」

 

 ワイゼルに向かってさらにライズファルコンは空中で旋回し、機皇帝ワイゼルへ突進すると腹部を貫いて破壊する。

 

「ぐぅぅぅ!」

 

セルゲイ4900 → 4500

 

「貴様の体力はいくら4500とあれど、フィールドも、手札も0。この状況ではサレンダーするしかあるまい。……負けを認めるのだな」

 

黒咲が勝ち誇った顔で、こちらを諭してくる。……あぁ。

 

 

 してしまったか。

 

 

 ーー俺 は そ の 顔 が、 見 た か っ た の だ。

 

 セルゲイの口元に、笑みが浮かんだ。

 

 セルゲイLP4900 黒咲 LP1600

 

 黒咲 隼 手札2 場 RRーバニシング・レイニアス バック RRーネスト

 

 セルゲイ 手札0 場 0 バック 0



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第二章 地下と道化師と-3

「さぁ、ボクのターンだね! ドロー!」

 

 デニスが、大げさにドローをする。

 

 その直後に部屋が暗くなり、一筋のスポットライトがデニスを照らした。

 

「さぁこれからミスターロジェのお望みのペンデュラム召喚を見せたいと思いますが……あっ! ……うーん、この手札、ちょっと事故ってますねぇ……という事で、題目変更! 別の隠し手をみせましょう!」

 

 デニスは少し険しい顔をした後に、ふと先ほどまでの様子に戻り、手札を構える。

 

「ボクのフィールド上のモンスターがいない場合ジェスターコンフィを特殊召喚!」

 

「ヒーッヒッヒ……」

 

 奇妙な声を上げつつ、ピエロが地面に降り立つ。

 

「さらに、マジックカード! ワン・フォー・ワン! ボクは手札のH・Cサウザンド・ブレードを捨ててデッキからレベル1モンスターの、マジック・リサイクラーを特殊召喚!」

 

「そして、2体以上モンスターが場に居るとき、手札からレベル4モンスターの、emハットトリッカーを特殊召喚! さらに、emトリック・クラウンを通常召喚! このまま行きますよぉ、プレジデント! show must go on! 天空の奇術師よ 華やかに舞台を駆け巡れ!エクシーズ召喚!現れろ!ランク4!《Emトラピーズ・マジシャン》!」

 

ランク4/光属性/魔法使い族/攻2500/守2000

魔法使い族レベル4モンスター×2

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分はこのカードの攻撃力以下の戦闘・効果ダメージを受けない。

(2):自分・相手のメインフェイズ1に1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

このカード以外のフィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。

このターンそのモンスターは2回攻撃でき、バトルフェイズ終了時に破壊される。

(3):このカードが戦闘または相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「Em」モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 さらなるピエロが、次々と飛び出してくる。なるほど、まるでこれではサーカスだ。

 

「エクシーズ召喚を決めてきたか……」

 

 私は唸る。なるほど、単純に同じレベルを揃えるだけと考えていたのだが、モンスターによっては素材縛りがあるということらしいな。……地獄の暴走召喚が使えると思っていたが、そういう訳にはいかないようだ。

 

 デニスはこちらを盛り上げようと、尚も声を張る。

 

「まだまだ、こんなもんじゃ無いことをお見せしましょう! さらに、レベル1のマジック・リサイクラーとジェスターコンフィをオーバーレイ! 守備表示で現れろ! シャイニート・マジシャン!」

 

ランク1/光属性/魔法使い族/攻 200/守2100

レベル1モンスター×2

このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。

また、このカードを対象とする魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、

このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

「ほぅ……1ターンに二度もエクシーズ召喚を……素晴らしい」

 

鮮やかな展開に、思わず拍手する。するとデニスは気を良くしたようだ。

 

「ありがとうございます、ミスターロジェ」

 

 素直な様子で、敬意を示してくる。

 

 ……芸に関しては、素直なようだ。だが、しかしながら、このデニスのデッキは恐ろしい。 シャイニートという青髪の女で相手の除去を封じつつ、トラピーズマジシャンを使い誰かを2回攻撃させて制圧させるという殺意に溢れたデッキのようだ。

 今回ペンデュラムが不発であったからよかったものの、ヘタをしたら4000オーバーのダメージを受けて1ターンキルをされていたな。

 

「さぁ、バトルといきますよ! いいですか!?」

 

 バトル宣言が入る。 ーーシャイニートがあらゆる魔法を打ち消さないだけマシだが、長期戦は不利のようだな。

 

 追い込まれる前に、あらかじめアクションカードを目で探す必要もありそうだ……。

 

「Emトラピーズ・マジシャンで、忍者マスター HANZOを攻撃!」

 

 杖を構えたトラピーズマジシャンに迫る。えぇい、アクションカードを手に取る時間は無いが……させるものか。

 

「罠発動! 忍法 変化の術!」

 

私が宣言すると同時に、罠が立ち上がる。

 

「WAO! 忍者は何に化けるのかな? やっぱりカエルなのかな?」

 

「……違いますよ。 私はHANZOをリリースし……デッキの宝玉獣 サファイア・ペガサスを守備表示で特殊召喚! 同時にデッキからさらに同名の宝玉獣 サファイア・ペガサスを魔法ゾーンにセットする!」

 

 私の忍者は馬に化け、そして同名の馬をセットするーー。このやり方が、一体何なのかはまだ、分かるまい。

 

「ーー宝玉獣? 変化の術でそんなのを呼び出す人、ボク初めて見た」

 

「フフ……私も面白いデッキを作るのが、好きなんですよ」

 

 私はそう言い返す。 アカデミアであったデッキコンテスト……遠い昔、学生時代に教師にはそこそこ評価された覚えがあります。

 

「でも、せっかく呼び出したペガサスだけど、戦闘破壊させてもらいますね!」

 

「構いませんよ。ダメージは入りませんからね」

 

その言葉の直後、こちらのサファイア・ペガサスがトラピーズ・マジシャンに破壊されて魔法ゾーンに置かれる。

 

 少しだけ、デニスの顔が真顔になった。

 

 大方、一体何を考えているーー? だと思いますけどね。

 

「ーーではボクは一枚、永続魔法のバリア・バブルを貼ってターンエンドですよ。それでは、ミスターのお点前を拝見しましょうか」

 

 デニスはふふっと、笑う。

 

 さて、私もそろそろ反撃しなければ。

 

ロジェLP4000 デニスLP4000

 

ロジェ 手札3 場 0 バック サファイアペガサス×2 伏せ1

 

デニス 手札0 場 emトラピーズマジシャン シャイニートマジシャン バック バリア・バブル



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第二章 地下と道化師と-4

「私のターン! ドロー!」

 

 私は新たにデッキから手札を加える。ーー来た。

 

「エクシーズ召喚、見事なものでした。ーー私も、感動いたしましたよ。お礼と言ってはなんですが、疑似ペンデュラム、そういったものを私も考えてみたのでこの出来を見ていただけませんか?」

 

 私はそういいつつ、一枚のカードを開示する。

 

「私は《ヘカテリス》を墓地に送り、《神の居城ーヴァルハラ》をデッキから手札に加える」

 

「天使族のサポートカード? ミスターのデッキはグッドスタッフなのですか?」

 

 デニスが、首をかしげてくる。まぁ、無理もあるまいーー疑問は当然、それはそうだろう。私自身、同じような構築の人間はほぼ見たことがない。

 

「私のデッキは、グッドスタッフなどという気心のしれたものではありませんーー永続魔法、ヴァルハラを発動!」

 

 私の傍にカードが立ち上がる。

 

「これで私は、フィールドにモンスターが居ない時に天使族モンスターを特殊召喚できますーー。それでは、行きますよ」

 

「ーーなんだか、ワクワクしてきましたね! 見せてくださいよ!」

 

「言われずとも、披露しましょう! この私の力を! ヴァルハラの効果を使い、《宝玉獣 ルビー・カーバンクル》を守備表示で特殊召喚!」

 

星3/光属性/天使族/攻 300/守 300

このカードが特殊召喚に成功した時、自分の魔法&罠カードゾーン上から

「宝玉獣」と名のついたカードを可能な限り特殊召喚できる。

このカードがモンスターカードゾーン上で破壊された場合、

墓地へ送らずに永続魔法カード扱いとして

自分の魔法&罠カードゾーンに表側表示で置く事ができる。

 

「what!? ヴァルハラにそんな使い方があったなんて!」

 

 素で驚く、デニス。まだまだ、私の見せる技はこんな浅くはないですよ。

 

「ルビーの効果発動! 私の魔法ゾーンにある二体のペガサスをフィールドに特殊召喚し、それぞれの効果でさらにデッキから新たなペガサスと、トパーズタイガーをセットする!」

 

 

「ーーフィールドに、あっという間に3体ものモンスターを……此処から、どうするのか気になります」

 

「なぁに、普通にするだけですよ。通常召喚! チューナーモンスター、《極星天ヴァルキュリア》!」

 

「チューナーモンスターをこのタイミングで……ということは」

 

「そう、私の使う……シンクロ召喚です。……私はフィールドの二体のペガサスに、ヴァルキュリアをチューニング!」

 

 4+4+2

 

「北辰の空にありて、全知全能を司る皇よ! 今こそ、星界の神々を束ね、その威光を示せ!!シンクロ召喚! 天地神明を統べよ、最高神、《極神聖帝オーディン》!」。

 

星10/光属性/天使族/攻4000/守3500

「極星天」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター2体以上

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。

このカードはエンドフェイズ時まで魔法・罠カードの効果を受けない。

また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンのエンドフェイズ時に自分の墓地に存在する

「極星天」と名のついたチューナー1体をゲームから除外する事で、

このカードを墓地から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚に成功した時、自分のデッキからカードを1枚ドローする事ができる。

 

 

 まさに神と言うべき神々しきモンスターが、降臨する。シンクロ次元を治めるだけには、十分すぎる力を持つモンスターだ。

 

「amazing……」

 

「だがまだ終わらせない! 私はさらに、伏せていた罠カードのエンジェル・リフトを使用する! 墓地から蘇れ! 《極星天ヴァルキュリア》!」

 

 罠の効果で墓地から天使が再びフィールドに降り立つ。此処からがさらにデッキの本領発揮だ。

 

「……さて、デニス君。一つお教えしましょう。自分のフィールドの魔法ゾーンに2体以上宝玉獣のモンスターがいる時、使える魔法カードがあります」

 

「……あ~……ボク、実は宝玉には詳しくなくて。効果はどんなんです?」

 

「デッキから、宝玉獣を特殊召喚するという効果ですよ。……そして、先ほどみたように、私のデッキにはまだルビー・カーバンクルがいるのです」

 

「ーーげっ!」

 

「私は手札から、《宝玉の導き》を使いましょう。この効果でさらにデッキから、新たな《宝玉獣ルビー・カーバンクル》をフィールドに呼び、その効果で永続魔法扱いのサファイア・ペガサスとトパーズ・タイガーを特殊召喚します。ーー同時に墓地から、一体のサファイア・ペガサスをさらに永続魔法扱いとして、セッティング」

 

「そして私はさらに、フィールドのレベル4、《サファイア・ペガサス》とレベル4、《トパーズ・タイガー》にレベル2《極星天ヴァルキュリア》をチューニング!」

 

 4+4+2

 

 

「北辰の空にありて、全知全能を司る皇よ! 今こそ、星界の神々を束ね、その威光を示せ!!シンクロ召喚! 天地神明を統べよ、最高神、《極神聖帝オーディン》!」。

 

 神の横に、さらに神が出現する。この狭い会議室には、不釣合いなくらいだ。

 

「攻撃力4000が二体目ェ!? ち、ちょっと冗談きついかな……」

 

 半ば唖然とするデニス。

 

「ーーもしも私がエクシーズ召喚を使えたのならば、此処で2体のレベル3であるルビーを使って何かができたのでしょうがね。……生憎今の私に出来るのは此処までなのですよ」

 

 ……実に、惜しい事ですが。

 

 私はそう言い放ち、バトルフェイズに入る。

 

「バトル開始。一体目の極神聖帝オーディンで、emトラピーズ・マジシャンを攻撃! ヘヴンズ・ジャッジメント!」

 

「ーーアクションマジック! 《ハイダイブ》! これでトラピーズマジシャンの攻撃力は、1000上昇し、3500になる!」

 

 デニスは咄嗟に攻撃に対応してカードを使用する。気転でダメージを、減らしたか。

 

「しかし切れ味は存分に受けて頂きます!」

 

 オーディンに殴り飛ばされ、トラピーズ・マジシャンは吹き飛ぶ。

 

デニス LP 4000→3500

 

「うぅっ……! でも、バリア・バブルのお蔭で1ターンに1度は、ボクのemは破壊されないよ!」

 

「ならばもう一度叩き込むまでです。二体目の極神聖帝オーディンで、トラピーズ・マジシャンをもう一度攻撃!」

 

「まだまだ! アクションマジック、奇跡! ダメージを半分にし、トラピーズの破壊を食い止める!」

 

 トラピーズ・マジシャンにさらにオーディンの追撃が加わる。だが今度は、奇跡のエフェクトがトラピーズマジシャンを包み守護してくれた。

 

 デニスLP3500→3250

 

「ーーこの攻撃に耐えるとは、中々やりますね。正直耐えるとは予想外でしたよ」

 

 予想外のしぶとさに、私は舌を巻く。

 

「お褒めの言葉、ありがとうございます。流石神と名のつくモンスターを従えるだけの事はありますよ」

 

「ーー人を褒めるのが上手いですね、デニス君。正直君は私の部下に欲しいくらいですよ。……さて、私はここまで動いてはもう何もできないのでこれでターンエンドです」

 

 ディスクをエンドさせる。

 

 デニス・マックフィールド……流石ランサーズの一員というだけはある。あの赤馬零児よりは劣ると言っても、相当の使い手だ。この盤面でも、けして油断はできないだろう。

 

 

 

ロジェLP4000 デニスLP3250

 

ロジェ 手札1 場 宝玉獣ルビー・カーバンクル×2 極神聖帝オーディン×2 バック サファイアペガサス×1 神の居城ーヴァルハラ

 

デニス 手札0 場 emトラピーズマジシャン シャイニートマジシャン バック バリア・バブル




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


お待ちかねのデッキレシピプレゼントを、活動報告で行います。

見てね!


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番外ーー デュエリストクラッシャーVS天翔ける隼-3

 セルゲイLP4900 黒咲 LP1600

 

 黒咲 隼 手札2 場 RRーバニシング・レイニアス(攻撃力2900)ユニット2 バック RRーネスト

 

 セルゲイ 手札0 場 0 バック 0

 

「楽しくなってきたな! 俺のターン! ドロー!」

 

 手札を加えたセルゲイは自身の手札を見て、歓喜の表情を浮かべて加速する。

 

「あぁ……気分がいい! 気分がいい! これでは蹂躙できてしまうではないか!」

 

「……ッ」

 

はち切れんばかりに笑顔のセルゲイを見て困惑する黒咲。

 

「……何を引いた、と言いたそうな顔をしているな。俺は墓地のリ・バイブルの効果を発動する! 貴様のエクストラは潤沢だが、俺のエクストラは後3枚! よって効果発動だ! ライフを2000支払い、レベル1チューナーモンスターのリ・バイブルを墓地から特殊召喚! フフハハハハ!」

 

 セルゲイLP4900→2900

 

 セルゲイの叫びと同時に、本が場に出現する。

 

「……まだ、やる気か」

 

「そして俺は、ライフを1500支払い、魔法カード《自律行動ユニット》を発動! 貴様の墓地のバニシング・レイニアスを奪わせてもらう!」

 

 セルゲイLP2900→1400

 

 

「ーー俺の墓地のモンスターをだと!?」

 

 黒咲の驚いている間に、自律行動ユニットは墓地へ潜り込んで、眠っているバニシングレイニアスを引きずり出す。

 

「フッハハハ! 装着! 貴様のバニシング・レイニアスは頂いた!」

 

「貴様……!」

 

 黒咲の顔が険しくなる。

 

「なぁに、すぐに返してやるさ。俺はレベル4、RRーバニシング・レイニアスにレベル1、リ・バイブルをチューニング!」

 

「水晶機巧ーアメトリクス!」

 

星5/水属性/機械族/攻2500/守1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。

相手フィールドの特殊召喚された表側表示モンスターを全て守備表示にする。

(2):S召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊された場合、

Sモンスター以外の自分の墓地の「クリストロン」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

 全く見た事のないシンクロモンスターの出現。それは黒咲を怯ませるには十分だった。

 

「ーーライズ・ファルコンが守備表示にーー!?」

 

「さらに墓地のゼータの効果でイーバトークンを守備表示! 貴様は攻撃力に自信があるらしいが、これではな! 消えろ! バトルだ!」

 

 アメトリクスの攻撃がライズファルコンの頭を切り落とし、爆散させる。

 

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

「ーー手札1からシンクロモンスターまで繋げてくるとは……化け物め」

 

 黒咲の手札は2枚。とはいえ片方はファジー・レイニアスだ。次の手札次第でRRーブレード・バーナー・ファルコンを作るか、フォース・ストリクスを作るか。ーーいずれにしろ、時間稼ぎにしかならない。

 

「さぁ、引け! そして絶望の表情を浮かべるがいい!」

 

 セルゲイが罵ってくる。

 

「ーー絶望する、だと? 俺はどんな状況でも長い痛みに耐えてきた。 瑠璃を失った悲しみという感情にな。ーーその俺の前に貴様という存在が現れたところで、全く怖くもない! それに、この痛みこそーー俺を本気にさせるに相応しい!」

 

「ドロー!」

 

 二本の指で、デッキから新たなるカードが引き抜かれる。

 

 モンスター《RRーミミクリー・レイニアス》、よし、いけるぞ!

 

「通常召喚! RRーミミクリー・レイニアス! さらに、フィールドにRRがいるとき、手札から《RRファジー・レイニアス》を特殊召喚する!」

 

「またエクシーズか!」

 

「ああ! エクシーズは俺の力! 貴様などに敗れはせん! 俺は発動済みの永続魔法《RRーネスト》の効果で、《RRーペイン・レイニアス》を手札に加える!」

 

「《RRーミミクリー・レイニアス》の効果発動! フィールドのRRのレベルを1ずつ上げる!」

 

「レベル操作だと? そんな事をして、何になる!」

 

「さらに俺は、フィールドのファジー・レイニアスを参照し、手札の《RRーペイン・レイニアス》の効果を使う!」

 

星1/闇属性/鳥獣族/攻 100/守 100

「RRーペイン・レイニアス」の効果は1ターンに1度しか使用できず、

このカードをX召喚の素材とする場合、鳥獣族モンスターのX召喚にしか使用できない。

(1):このカードが手札に存在する場合、

自分フィールドの「RR」モンスター1体を対象として発動できる。

自分はそのモンスターの攻撃力か守備力の内、

低い方の数値分のダメージを受け、このカードを手札から特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードのレベルは、対象のモンスターのレベルと同じになる。

 

「俺はファジー・レイニアスの攻撃である500のダメージを受け、レベル5として特殊召喚する!」

 

「さらに俺のエクストラには、レベル5同士で出せるモンスターがいる! 俺は3体のモンスターでオーバーレイ! 獰猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し 寄せ来る敵を打ち破れ! エクシーズ召喚! 現れろ!ランク5!《RRーブレイズ・ファルコン》!」

 

 

 赤き隼が現れ、セルゲイを目に捉える。

 

ランク5/闇属性/鳥獣族/攻1000/守2000

鳥獣族レベル5モンスター×3

(1):X素材を持っているこのカードは直接攻撃できる。

(2):このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、

相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを破壊する。

(3):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、

破壊したモンスターの数×500ダメージを相手に与える。

 

 

「そんな豆鉄砲で俺を沈めるつもりか? やってみるがいい!」

 

「沈めるつもりか、だと? 沈めるつもりではなく、沈めるのだ! 俺は装備魔法、ラプターズ・アルティメット・メイスを発動! こいつをブレイズ・ファルコンに装備!」

 

装備魔法

「RR」モンスターにのみ装備可能。

(1):装備モンスターの攻撃力は1000アップする。

(2):装備モンスターが、装備モンスターより攻撃力が高い

モンスターの攻撃対象に選択された時に発動できる。

デッキから「RUM」魔法カード1枚を手札に加え、

その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 

「ぐぬっ……!」

 

「体力を削りすぎたのが仇となったな。 バトルだ! ブレイズファルコンは相手プレイヤーに、ダイレクトアタックする事ができる! 行け! ブレイズファルコン! 赤熱の怒りを滾らし、反逆の槍を突き立てろ! 迅雷のラプターズブレイク!」」

 

 アメトリクスの横をすり抜け、セルゲイに向かい稲妻を放つブレイズファルコン。

 

セルゲイLP1400→0

 

「ぬぅぅぅぅっ!?」

 

 その衝撃でDホイールが横転し、セルゲイは道路に投げ出された。

 

「ーー! あの速度では!」

 

 WINNER! 黒咲!

 

 会場のコールが響き、観客が湧く。

 

 だが黒咲は慌ててDホイールを減速して強引に止め、セルゲイに駆け寄ろうとした。

 

 この次元の人間はあまりにも、他人に無関心すぎるーーそう思っての事でもあるし、自分がこの決闘者を殺したのだとしたら、後味が悪い。

 

 しかし地面に投げ出されてバウンドしたはずのセルゲイは、何事もないかのように自力で起き上がった。

 

「フフフ……こんな、面白い決闘者が残っていたとはーー地下も捨てたものではないか」

 

「ーー痛み一つ、ないのか!?」

 

メットを外した黒咲は、目の前のセルゲイに絶句する。

 

ーー先ほどのデュエル終盤でも、時速100キロは出ていた。それだというのに、奴は骨折どころか脳震盪一つ起こした様子がない。

 

「大丈夫なのか」

 

 そう尋ねるが、セルゲイはこちらの質問に答えずに自分の身体についた埃を払うと、

 

「名前は覚えておこう。黒咲 隼。今回は借り物のデッキで挑ませて貰ったがーー次は本気で行こう。それまで、連勝記録を破られるなよ。次は晴れの舞台で美しく潰してやる。フレンドシップカップで、待っている」

 

 黒咲を一瞥して、普通に自分の足で退場ゲートから出て行った。

 

「ーーフレンドシップ、カップか……あのような化け物が、幾らもいるというのか……?」

 

 先ほどの戦い、奴はアメトリクスのシンクロ時に出たイーバトークンを何故か攻撃に使わなかった。やつがあれをリリースし墓地からゼータレティキュラントを呼び出せば、俺を仕留めることが出来たというのに。

 戦略でも、身体能力でも負けているーー。

 奴は全然、本気ではなかった。世界は広い。俺も鍛えれば、あれほどの頑強な身体にもなれるのかもしれない。

 

 黒咲は両手を握りしめ、横転したDホイールに目を向けていたーー。

 

 



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第二章 地下と道化師と-5

ロジェLP4000 デニスLP3250

 

ロジェ 手札1 場 宝玉獣ルビー・カーバンクル×2 極神聖帝オーディン×2 バック サファイアペガサス×1 神の居城ーヴァルハラ

 

デニス 手札0 場 emトラピーズマジシャン シャイニートマジシャン バック バリア・バブル

 

「ボクのターン、ドローするよ!」

 

 デッキから手札を補充したはいいが、攻めあぐねるデニス。

 

「カードを一枚伏せて、トラピーズマジシャンを守備表示に。ターンエンドだよ」

 

 自分でも冷や汗をかいているのがわかる。ーーライフでは殆ど動いていないが、アクションマジックを使うのではなく、ロジェに使わされている。自由意思で使っているのではなく、使わねば倒される状況。これは不利だ。なにより4000をいきなり越えるモンスターが、こちらに出せない問題がある。

 

 今引いた《砂塵のバリアーダストフォース》は攻撃宣言時のモンスターを裏守備にする永続的な効果があるので決まりこそすればこの状況を凌げるが、そもそもオーディンはトラップを無効化させる能力を持っているので確実性があるとは言えない。

 

 

「おや、息切れですか。無理もない、大量展開しましたからね」

 

ロジェがデッキに手を掛ける。

 

「私のターンです! ドロー!」

 

 

ロジェLP4000 デニスLP3250

 

ロジェ 手札2 場 宝玉獣ルビー・カーバンクル×2 極神聖帝オーディン×2 バック サファイアペガサス×1 神の居城ーヴァルハラ

 

デニス 手札0 場 emトラピーズマジシャン シャイニートマジシャン バック バリア・バブル 伏せ1(ダストフォース)

 

「私は今引いた《ギャラクシー・サイクロン》でセットカードを割らせてもらいましょう」

 

 ロジェの言葉と共に、せっかく伏せたダストフォースが爆散する。

 

「まずいっ!」

 

「おやおや、危ないところでした。うっかり攻撃したら止められるとこでしたね」

 

……ギャラクシー・サイクロンが墓地に行った今、次のターンでバリア・バブルも割られてしまう。万事休すか。

 

「さらに私は、《極星天ヴァルキュリア》を通常召喚!」

 

「まだチューナーが!?」

 

「2体の《ルビー・カーバンクル》にレベル2、《極星天ヴァルキュリア》をチューニング!」

 

「古えの機械龍、此処に蘇れ! スクラップ・ドラゴン!」

 

「ーー!」

 

 デニスは似たフォルムを持つモンスターをかつて見た覚えがある。古代の機械巨竜。

 

「バトルフェイズ! オーディン二体で、《シャイニート・マジシャン》を攻撃!」

 

「アクションマジックがーー見つからない!?」

 

「ヘヴンズ・ジャッジメント!」

 

「あぁっ!」

 

 オーディンの雷撃がシャイニート・マジシャンを襲う。

 

 シャイニートマジシャンの戦闘破壊耐性は1ターンに一度のみ。これでは、勝てない。

 

 盤面こそ残せたが頼みのトラピーズマジシャンが一体……これでは。

 

「ーー次のターンが最後です」

 

 そう宣言するロジェからは、全身から有り溢れた自信が満ちていた。

 



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第二章 地下と道化師と-6

「私のターン!」

 

 そう宣言してカードをドローした瞬間、今度は私のディスクが点滅する。

 

「ーーセルゲイ? 着信だと?」

 

 デュエル中に、全くもって面白くもない。

 

「デュエル中だ! 貴様は走っていた訳ではないのか!?」

 

「ーー終わった。帰るぞ。置いていく」

 

 ディスクから、奴のテンションの低い声が聞こえる。

 

「待て! 5分待て!」

 

 そう返事をするが、電話は勝手に切られる。

 

「ーーッ 馬鹿者め!」

 

 王の右腕になるべき者があんな好き勝手にしおって。

 

ーーっと、危ない。デニスにばれるところだった。

 

「ーーミスター?」

 

「おっと、お見苦しいところを失礼しました。しょうがない。メインフェイズ! ギャラクシー・サイクロンでバリア・バブルを破壊!」

 

 態度を繕いつつ、攻めの盤面を作る。

 

「さらに《スクラップ・ドラゴン》の効果でemトラピーズ・マジシャンとヴァルハラを破壊!」

 

 スクラップ・ドラゴンが口からブレスを吐き、トラピーズ・マジシャンを消しとばす。

 

「ーーぐぅぅぅっ! emトリック・クラウンの効果発動! 1000ダメージを受け、このカードを特殊召喚する! さらに墓地のサウザンドブレードの効果発動! ダメージを受けた時、このカードも攻撃表示で特殊召喚できる!」

 

 デニスLP3250→2250

 

 すぐさまリカバリーに入ってくるデニス。だが、既に遅い。

 

 「《スクラップ・ドラゴン》で《emトリック・クラウン》を攻撃!」

 

「守備表示のトリッククラウンは破壊されても痛くないね」

 

「ならばオーディン! サウザンドブレードを消し去れ!」

 

 神の攻撃が、H.Cサウザンドブレードに直撃する。

 

「ーーOH! NOOOOOOO!」

 

 デニスLP2250→0

 

 衝撃で吹き飛ぶデニスは、足を引っ掛けて近くの椅子をひっくり返す。

 

 デニスが吹っ飛ぶその様子をみて、私は密かに心の中に歓喜を感じた。

 

 ーー勝った。融合なしでーー勝った!

 

 こんなに自力でデュエルをして達成感を得たのは何年振りだろう。

 

アカデミアでは全く得られなかった歓び。そしてシンクロ次元でも僅かしか得られなかった魂の叫び。

 

「よっと……! いやぁー、お強いですねぇ ミスター。ペンデュラム召喚を見せられず、申し訳ない。もしも明日良ければ、本物のペンデュラム召喚を黒咲相手にお見せしますけど」

 

 デニスがもぞもぞと、起き上がってくる。

 

「いえいえ、エクシーズを見せて頂けただけでも嬉しかったです。お見事でしたよ」

 

 私は拍手する。

 

 ーー先ほどの戦闘中、私のディスクには相手のディスク内を読み取る装置を装備させていた。 ーーだからあのデュエルの中で、デニスのディスク内のデータは読み取れたはずだ。

 

 故にデニスが過去使ったカード、そしてスタンダードやエクシーズ次元や融合次元で目にしたカードをもをこれからデータを元に錬成することが出来る。

 

 フフ、そう思えば我ながらいい仕事ができた。まだシンクロ次元内にないカードの情報、そして融合次元内で私が居なくなったあとに追加されたカードについても、これでいくらかは知ることが出来るだろう。そして、エクシーズとペンデュラムについてもだ。

 あとは気取られずに撤退をするだけだがーー。

 

「ーー先ほど電話が掛かってきてしまったように、どうやら会議の予定が入ってしまったようなのでーーとりあえず、小切手をお渡ししておきましょう」

 

 Jean-Michel Rogerとサインした略式の小切手を渡す。本物のトップスは一々金にケチケチしないもの。これだけの対価を渡す価値があることをしてくれて有難いものだ。

 

「ありがとうございます、これで仲間を探すまで飢え死にしなくてすみそうですよ」

 

 デニスはその小切手を、礼を言いながら受け取る。ーー君からは、もっと大切な情報を頂いたから別に構わないのだがね。

 

「いえいえ、また困った事があれば治安維持局へとお越しください。その時は、手厚く歓迎しますよ」

 

 右手を差出し、握手を求める。

 

 今度はデニスはその手を、恭しく握ってくれた。

 

 

ーー全ては、計画通り。

 

 

私の真の王、そして王をも超える道は、やっと始まったのだ。

 

いい気分で、私はこの日を終えられるーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロジェがいなくなった後、デニスはデッキの一番上をそっとめくった。

 

 

「ーー《ブラック・ホール》……ね。マストではないけど、中々惜しかった。んー、あと1ターン早くお前がくれば反撃できたんだけどなぁ。ま、しょうがないか。負けるのもサービスだしね! さて、このお金で権ちゃんにごちそうしてあげよっと!」

 

 鼻歌交じりに、デニスは、権現坂との合流へ急いだ。

ーー明日は黒咲ともデュエルしたいし、色々やりたい事もあるーー。

 



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幕間ーー移動中

「ーーロジェ」

 

「ーーなんだ、セルゲイ」

 

 私は帰りの車の中、助手席から後ろのシートを塞いでいるセルゲイに向かって応答する。

 

奴の図体はでかいので、ルームミラーを使っても後ろが見えない。

 

「珍しく機嫌が良く見えるぞ」

 

「ーーそう、見えるか? 私からすればお前から私に話し掛けてくる事のが余程珍しいと思うが。地下でいいデュエリストでも、見付けたか?」

 

「まぁな」

 セルゲイはそう頷く。

 こいつはデュエルマシン。それだけに、私が治安維持局長官であるにも関わらず、物怖じせず普通に話し掛けてくる。

 

 ーー多少気に入らないかといえばそうでもないが、むしろそれはそれでよく、私が私として無理に敬語など使わず本音で喋られる相手だ。

 

 ホワイト・タキのような行政評議会の老いぼれどもとやりあうような態度で普段からいては、こちらが疲弊する。

 

「成程、それではお前にとっても収穫はあったという事か」

 

「ーーそうだな」

 

「ならば良い。フレンドシップカップへの仕込みもしなければならない。あの黒咲隼、デニス、それに権現坂と言ったか。彼らを早急にこちらに引き込む事によって、セレナと柊柚子を手にし、ランサーズを瓦解させるーーそして、我々もデニスのディスクを解析して得られたデータから、数々のカードを量産する必要がある」

 

「ーーカードの量産?」

 

 セルゲイの片目が、光った。

 

「あぁ。そもそも私の使う《簡易融合》。これはそもそも融合次元にしか存在しないカードだ。 それと同時に、こちらの世界にあるチューナーモンスターは、シンクロ次元固有のカード。つまり、セキュリティの使う《ゴヨウ・チェイサー》などはこちらの世界にしかない」

 

「ーーでは、何をするというのだ」

 

「決まっている、融合、シンクロ、エクシーズ。あらゆる戦い方を選べるよう、セキュリティのデッキや我々のカードのプールを広げるのだ」

 

「ーーそのような事をする必要は」

 

「では考えてみろ。お前の戦った黒咲隼。 あれがシンクロ召喚を使えるようになったと仮定してーーどう思う?」

 

 

 セルゲイは少し考えたような顔になってーー。

 

「……美しい!」

 

 満面の笑みでただそう、言った。

 

 

「そうだろう。だとすれば我々もさらに美しくなれるというもの。貴様にとっては悲願であったジャック・アトラスですら軽く屠れるようになれるぞ」

 

「ーー面白いぞ、それは。少なくとも退屈ではない」

 

「ーーそう分かったら、私に協力しろ。分かったな、セルゲイ」

 

「ーー俺はどうすればいい?」

 

「取り敢えずは、だ。明日ランサーズの半分と面会する。それまでは科学者どもの使うディアブロ相手にデュエルをしていろ」

 

「ーーディアブロ?」

 

「オベリスクフォース相手にぶつけるデュエルマシンだ。時間がくれば呼ぶから、後はお前の好きにすればいい」

 

「ーーデュエルマシンだと? そんな物なくとも、俺で充分ではないか? それとも俺の実力に疑問でも?」

 

 珍しく、疑念を持つセルゲイ。だが、そこへ

 

「ーーお前には役目がある。アカデミアでのエリート、ユーリという男を討ち取る役目が。ディアブロは、デュエルチェイサーと連携し雑魚掃除を行う為のシステムだ。私がアカデミアを離反し、叩き潰すと誓ったからにはお前に是非ユーリを潰してもらわねばならない」

 

 ーー捕食植物と言ったか。特性すら解明出来ていないが、圧倒的な強さだった。

 

 あれを消し去るには、セルゲイしかない。奴のデュエルパワーならば、潰せる。

 

「なるほど。ならば分かった。お前に協力して、明日はそのマシンとやらの調整を手伝おう……美しさの為ならば、耐えてやる」

 

 セルゲイは鼻息荒く、後ろの座席にどっかりと体重を落とした。



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第三章 シティの新たなる夜明け

「ーーさて、今日は地下の大会の邪魔はせず、普通にやるとしましょう……DC達への命令は、まずはセレナ達の確保だけをやっておくように最優先。そして今回は馬鹿な看守にやらせず、直接私の元へと連れてくるようにしなくては。ーー計画のミスを全てへし折る事で、より良い未来を選ぶ必要がある」

 

 長官室に腰掛け、立体ディスプレイに小さく映るセルゲイを片目に、本日の予定を整理する。

 

 本来ならば今日まずセレナ達の確保が成功し、徳松とランサーズの接触がある。そして明日には刑務所内で水泳大会……いや、デュエル大会が行われるはずだ。

 

 時間の猶予はあるはずではあるが……予定を切り詰めて考えねば、悪い事も起こりかねん。

 

 脱走を即座にされるようでは職務怠慢としか言いようがないし、捕縛隊も近いうちに強化せねばなるまい。エクシーズの対策が全く出来てない時点で、そもそも駄目だ。

 

 ……しかし本当に我ながら今までのシティの体制はザル過ぎだ。チェスで遊んでいる場合ではない。突然来た異邦人にあっさり脱出されるのは、いくらなんでも馬鹿極まりない。

 

 えぇい……まずはこのシティの防御面を上げて守らねば、私自身の王への道が断たれてしまう……だとすれば、このままシティを要塞化して、名実ともに支配者になるしかあるまい……。

 

 まずはこの保身の為にシティの存続を得る対策を考えよう。……コモンズに自衛の為のデュエル教育をさせるか? いや、過度な教育をコモンズにさせる事は反乱に繋がりかねん。これはダメだな。

 

 そうなると別案として、徳松をこちらのデュエルチェイサーの教育係として招き、利用するという手もあるかーー。いやいや、奴には奴の場所がある。徳松が監獄の模範的主としているからこそ今の監獄の治安が成り立っているとも言える。徳松を外したら恐らくは脱走を企てる愚か者も増えるだろう。

 

 

ーーはて、それならばいっそ……囚人を対アカデミアに充てるか?

 

 囚人からメンバーを選抜し、独自にシンクロ次元としてのランサーズを作るか。勝てばトップス入りという餌をチラつかせるなどすれば、まぁ……いけるだろう。

 

 ーー私の知るアカデミアは恐らくコモンズが一人突っ込んだくらいで倒せるほど軽くはない。

 

 だが、囚人により消耗させたところで、デュエルチェイサーに突っ込ませれば少なくともこちらの損害は減るはず。もしも囚人が敵を討ち取れれば、儲け物として考えられる。

 

 だが何処から調達する……? ーーそうか、地下労働との選択制にすればいいのだ。

 

 

 囚人の中でも飛び切り罪が重い者。それらに地下で労働を選ぶか、異次元との侵略者と戦う尖兵となり、私の部下になるかを選ばせる。それならばなんら問題はない。

 

そして、フレンドシップカップはその大会での篩として不足もなし。

 

やれるではないか。

 

片手でポーンをくるくるしつつ、そう結論付ける。

 

そうと決まれば……。

 

「ーー長官!」

 

 その時、言葉と共に人が駆け込んでくる。白衣の部下だ。……セルゲイの調整を時間が戻る前の世界でもやらせていた者。

 

「何ですか、騒がしい。ノックくらいしたらどうです?」

 

「ディアブロが、脱走しました!」

 

「……何ィ!?」

 

 慌ててセルゲイの居た部屋を見ると、共に調整していたディアブロが居ない。折角新たな武器の一つになり得ると思ったものが、何故。

 

『ーーセルゲイ!』

 

「ーー既に追撃に入っている。ディアブロはデュエルチェイサーのホイールを奪い、逃走している」

 

 セルゲイのメットに通信を送ると、そうセルゲイが返してくる。どうやら、外か。通信にエンジン音が混ざるので、既にDホイールに乗っていると見える。

 

『何故私に連絡を取らなかった!』

 

「貴様は自分の都合の良い時しか連絡しないだろう」

 

「ーーッッ」

 

 拳に力が入る、耳に痛い言葉だ。

 

『セルゲイ、奴を壊すなよ!』

 

「……保障は出来んな。それに、むしろ俺が本気でやっても壊れないぐらいでなければアカデミアには勝てないのではないのか?」

 

「ーーっ、いいだろう、やってみるがいい! 貴様に任せるぞ、セルゲイ!」

 

 戦闘メカデュエリスト……ディアブロは私のポケットにいつの間にかあったフラッシュメモリのデータにあったもの。それを再現したものだ。

 

 AIデータは本部PCに蓄積しているが、今のセルゲイのデータはディアブロと何回か対戦した事により認識されているはず。

 

 セルゲイが勝てる確率は低いが……どうやるものか、見ものだが……。

 

 いや、予定を崩されてはまずい。私はそろそろ、黒咲やデニス達へと接触せねば。

 

 えぇい、私はなんて運が悪いのだ……!

 

……負けてくれるなよ、セルゲイ。

 

 



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第三章 シティの新たなる夜明け-2

密かにあがってくる心の中への不安を押し殺して、通信機のスイッチを入れたまま地下デュエル場に赴く。

 

そこではデュエルが丁度終わり、黒咲が勝利したところであった。

 

ーー渋滞のせいで見損ねたか。まぁいい、後で録画資料をギャラガーに提出させよう。

 

 賞金が黒咲の手に渡り、嬉しそうに右手を掲げているのが見える。

 

 中々に激戦であったらしく、デニスは止まったホイールの上で拍手をしていた。

 

「ーーまぁ、問題はあるまい」

 

 私はそう呟きつつも、施設管理者のところへ出向いた。ーー時間を作らねば。私は自分から身を挺して動く事は大嫌いだが、どうしてもやらねばならない事がある場合は別だからな。

 

 

 ーー30分後。

 

「ーーどうも、私がこのシティの警察組織の上役……治安維持局の長官、ジャン・ミシェル・ロジェです」

 

「ーー何だ、俺に何か用なのか」

 

 会場からほどなく離れた地上のVIPハウス。祝勝会でライダースーツからコートに着替えた黒咲 隼は、いきなり不遜な態度をとってきた。

 

 無理もない、優勝取材のプレスか何かだと期待していたのだろう。 不機嫌が全身から溢れていた。

 

「……いや、昨日実はアナタのご友人のデニス君と接触をさせて頂きましてね。……まぁ、アナタたちの仲間、ランサーズという組織があるという事は知っていたのですよ」

 

「奴は別に友という訳ではない」

 

 ツンケンと刺々しい、黒咲。何やら苛立っているかの様子だ。

 

「ーーまぁ貴方方が、強い決闘者を探しているというのは分かっておりました。そこで、私から一つ提案があります」

 

「何だ」

 

「フレンドシップカップの参加枠を増大し、貴方方ランサーズの仲間になり得る戦力を発掘するプロモーションとしてはどうでしょう? この私たちのいるシンクロ次元と貴方方がよぶ世界、それはこのシティの外側にも続いております。ーーつまり、シティの外からも決闘者を招待するので、それまで少しお時間を頂きたい。ーーそして、それまで私のところのセルゲイやデュエルチェイサー達にエクシーズ召還を教えていただきたい。その代わり、我々からはチューナーモンスターを幾らか提供しますし、臨時にデュエルチェイサーの身分を与えましょう。お金も食事もこのシティの平均よりは素晴らしいものが得られますよ。正直スカウトをしたいところですが」

 

 そう告げたところで、黒咲の眉根が動いた。

 

「セルゲイ……!? あの男は貴様の部下だったのか?」

 

 その眼、興味を示した眼ですね。

 

「喩え元が凶悪犯罪者でも、更正すれば立派に社会人を勤められるのが、このシティです。前歴など関係しません」

 

 私はそう続け、ちらりと黒咲を見る。

 

「そしてちょうど今、セルゲイはとある犯罪者を追っております……なので、協力して頂けませんかね?」

 

 私がそう聞くと、

 

「ーーシティの地図と、セルゲイの現在位置を教えてもらおう」

 

 黒咲はゆっくりと頷いた。

 

「GXー573地区を南下しております。シティの地図はこのUSBをデュエルディスクで読み込めばアプリケーションがインストールされます」

 

 私がそっと手を出すと、ひったくるようにUSBを奪う黒咲。

 

 これは、乗ってくれましたね。力を望むタイプは、こうも御しやすい。

 

「ありがとうございます。Dホイールを出しましょうか? デュエルチェイサー用のマシンは競技用よりも高性能ですが」

 

 そう提案するが、

 

「無用だ。<バニシング・レイニアス>!」

 

 黒咲は窓を開けるとそのままモンスターを召還し、飛び乗って上空へ飛翔する。

 

「お、おい、何処へいく黒咲!」

 

「黒咲ぃ! 折角のパーティだってのに! こっちの御馳走全部貰っちゃうよ!?」

 

 権現坂とデニスがその姿を見咎めたが、

 

「貴様達は待っていろ! 後で戻る!」

 

 そう黒咲は告げ、飛び去っていったーー。

 

「はぁ……ロジェさん、どうしたんですかぁ? 黒咲は。なんか急いじゃって変ですねえ」

 

 こちらを見つけて、デニスが話しかけてくる。 こちらを探りにきたか。

 

「デニス君、いやぁ、惜しかったですね。あぁ、私がフレンドシップカップにてこ入れをして強い決闘者を集めると言ったら、飛び出してしまったのですよ。彼もまた、危険そうな人物ではなく安心しました」

 

「んー、まぁ、彼は危険と言えば危険ですけどね」

 

「……ほぅ?」

 

「彼は妹を探しているんですよ。エクシーズ次元というところで、アカデミアに浚われた妹を取り戻すために戦っているのです。だから中々、棘があって僕らにも心を開こうとしないんですけど。妹の事になると、とても一生懸命で」

 

「なるほど……黒咲くんは妹思いのよいお兄さんなのですね。彼は荒々しいが、強い大人になるでしょう。もしもアカデミアがこの次元に攻めてきてそれを捕らえたら、捕虜を尋問してその妹さんに関する情報を聞き出す事にします。私の組織で出来る事と言えば、それくらいですからね」

 

 そう相槌を打っておく。

 

 ーー以前の世界の情報と照らし合わせるに、デニスが浚ったという事だな。

 

そしてその女は、柊柚子と似ているという話だ。

 

 赤馬零王の考える事が少し気にもなる。まさかこの次元にもその顔に似た女がいるという事か?

 

 まぁ、今の段階で考えても仕方がない。あの男の作戦を知れれば優位は保てるが、今の段階で出来る事をするしかない……。



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番外 セルゲイ VS ディアブロ ハイウェイの死闘

「私のターン。私は永続魔法、<機甲部隊の最前線>を発動。さらに<AOJ・サウザンド・アームズ>を召喚。さらにカードを3枚伏せて、ターンエンド」

 

 セルゲイの前を走るライディングロボ……ディアブロは、電子的な合成音の混じった声で自らのターンを終える。

 

「AOJ……知らんテーマだな。記憶にない。だが、いきなり手札を5枚全て使うとはかなり強気ではないか」

 

 セルゲイは前を走るディアブロのホイールから眼を離すと、自分の手札を広げる。……ホイールに登録していたデッキがまたロジェに好き勝手に弄られている。あいつの好奇心は大概だが、せめてこちらに許可をとってからやってもらいたいものだ。美しくない。

 

「俺のターン、ドロー……メインフェイズに入る」

 

 ディアブロがどの程度の強さまで上がったのかは知らんが……やるしかあるまい。

 

「来るがいい、愚かな決闘者よ」

 

 セルゲイは相手の罵倒を無視し、そのまま加速する。

 

「自分フィールド上にモンスターが存在しない為、俺は手札から<聖刻龍ートフェニドラゴン>を特殊召喚。さらに、トフェニドラゴンをリリースし、<聖刻龍ーアセトドラゴン>を召喚」

 

 セルゲイはアセトドラゴンを召喚する。

 

「ほぉう。二枚使って1900が一体か?」

 

「慌てるな。聖刻龍と名の付くモンスターには共通の効果が存在する。このカードがリリースされた時、自分の手札・デッキ・墓地からドラゴン族の通常モンスター1体を選び、攻撃力・守備力を0にして特殊召喚するという効果だ」

 

「通常モンスター? そんなものが来たところで無駄だ!」

 

 ディアブロはそう煽ってくる。……確かに、その意見には一理ある。効果モンスターが大半を占めるこのデュエルモンスターズの現状……それにおいて、効果なし、バニラのモンスターに全く優位性はないという指摘。だが、世の中には【チューナーでありながら】【通常モンスターである】という物が存在するのだ。

 

「俺はレベル1のチューナーモンスター、ガード・オブ・フレムベルをデッキから守備表示で特殊召喚!」

 

 灼熱の炎を纏った龍が、フィールドに降り立つ。守備力は本来2000あるが、聖刻の効果で0となっている。

 

「チューナーだと!?」

 

 ディアブロが言葉に反応し、眼を光らせる。

 

「俺はレベル5の聖刻龍アセトドラゴンに、レベル1のガード・オブ・フレムベルを……」

 

「シンクロ召喚はさせん! この瞬間、トラップ発動! <不協和音>!」

 

「何?」

 

 不協和音ー永続罠ー

このカードがフィールド上に存在する限り、

お互いのプレイヤーはシンクロ召喚できない。

発動後3回目の自分のエンドフェイズ時にこのカードを墓地へ送る。

 

 ディアブロの伏せた1枚がオープンされた事により、シンクロ召喚がキャンセルされた。

 

「ほぅ」

 

やってくれる。思ったよりも楽しめそうだ。

 

「ならばバトルだ! 俺はアセトドラゴンで貴様のAOJ・サウザンド・アームズを攻撃! 無様に消し飛べ!」

 

 攻撃を命ずると同時に聖刻龍ーアセトドラゴンが咆哮しブレスを吹き、サウザンドアームズを破壊する。

 

「ぬ、ぬぅぅぅん! こ、この瞬間、永続魔法<機甲部隊の最前線>の効果で、サウザンドアームズの攻撃力以下のモンスターを一体俺はデッキから特殊召喚出来る! AOJ・コアデストロイをデッキから特殊召喚!」

 

 ディアブロ 4000→3800

 

 ダメージを受け僅かに減速したディアブロだったが、まだ観念する気はないようだ。

 

「光モンスターを一方的に破壊するモンスターか。 ーー追撃を防ぐつもりとはな」

 

 2枚もさらに伏せているというのに攻撃反応罠ではなかったとは不自然だがーーとりあえずはまだやってみるしかあるまい。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。ディアブロといったか、つまらん探りをしていないで来るがいい」

 

 セルゲイはエンドを宣言し、口の端を引き上げた。

 

 セルゲイ LP4000 手札4 フィールド 聖刻龍アセトドラゴン ガードオブフレムベル(守備0) 伏せ1

 

ディアブロ LP3800 手札0 AOJ・コアデストロイ フィールド 機甲部隊の最前線 伏せ2+不協和音(カウント0)



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番外 セルゲイ VS ディアブロ ハイウェイの死闘2

「ーーとりあえず、私はセルゲイの様子を見るとしましょう。どうです? デニス君も見ますか?」

 

 私はタブレット端末を取り出すと、ハイウェイのカメラにアクセスを試みる。これは一つの策、セルゲイの強さをみせてこちらに靡かせるという手だ。

 

 程なくして空撮カメラにアクセス出来、セルゲイとディアブロがタブレットの液晶画面に表示された。

 

 ゆっくりと、私は長椅子に座り込んで片手を口元に寄せ、ひょいとパネルを見せる。

 

「そうですね、折角ですし、それじゃ僕も見させてもらいましょう」

 

 カップを片手に、デニスは傍に腰掛けた。

 

「ーーハイウェイでのライディングデュエルは、気になりますか?」

 

 私はそう尋ねる。

 

「確かにスタジアムとは勝手も違いそうで気になりますね。スリルもありますし、まぁ観客が間近に見られないのは少し残念ですが……」

 

 デニスは液晶に視線を落としたまま、そう喋る。ーー純粋に、ライディング・デュエルという環境を楽しもうとしているということか。

 

「さて、面白くなるといいですね。セルゲイの力をみせられればよいのですが」

 

 私はセルゲイを見た。ーー奴なら、やってくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 ディアブロがドローする。とはいえ、現状はセルゲイのシンクロを封じたとはいえ、手札では圧倒的な損ーー。

 

 セルゲイ LP4000 手札4 フィールド 聖刻龍アセトドラゴン ガードオブフレムベル(守備0) 伏せ1

 

ディアブロ LP3800 手札1 AOJ・コアデストロイ フィールド 機甲部隊の最前線 伏せ2+不協和音(カウント0)

 

「セルゲイ! 貴様は強者であり、有象無象とは異なる力を持っていると判断できる! だが、この俺の力をみせてやる!」

 

 ディアブロは機械染みた音声で、セルゲイを睨む。

 

 

「俺は、<命削りの宝札>を発動! 俺は手札を3枚になるようにドローする!」

 

「3枚ドローだと……!?」

 

 セルゲイの眼の奥が耀く。奴に興味を持った顔だ。

 

「驚いただろう。だが、今の魔法を使った事によりこのターン俺は特殊召喚が出来ず、貴様はダメージを受けないというデメリットを持つ。さらに、俺はターン終了時に手札を全て墓地に送らねばならない!」

 

「ーーだが、貴様は仕掛けてくるのだろう?」

 

「あぁ! <強欲で謙虚な壷>発動! これにより俺はデッキから3枚めくり、1枚を選んで手札に加える! 俺は<黒光りするG>を手札に加えさせて貰う!」

 

「……<黒光りするG>、なるほど。自身が墓地にいる時に除外する事により、相手のシンクロ召喚したモンスターを一度だけ破壊出来るカードか。しかも先程使った命削りの宝札により、エンドフェイズにすぐに手札を捨てて墓地に送る事が出来るようになる以上、その効果は即効性のあるものとなる……」

 

「ハッ、その通り! では俺はさらにAOJ・ブラインド・サッカーを召喚! さらにカードを1枚伏せ、バトルに入らせてもらおう!」

 

「ぬぅ……」

 

「まずは目障りなアセトドラゴンに消えてもらおう! AOJ・コアデストロイは、光属性モンスターを無条件で戦闘時に破壊出来る! 消えろ!」

 

 ディアブロの命令で機械がドラゴンに取り付き、グロテスクに挟み千切る。

 

リアルソリッドビジョンの衝撃が、肌を打った。

 

「ーーしかし、貴様の宝札のデメリット効果により、俺はダメージを受けない」

 

 セルゲイはまだ不敵に笑う。

 

「百も承知! さらにブラインドサッカーで、邪魔なチューナーモンスター、ガードオブフレムベルを破壊だ!」

 

 さらに、ブラインドサッカーが守備0のフレムベルを砕く。

 

「ーーこれで貴様のフィールドは焼け野原だ。さて、力をみせてくれよ? ……ターンエンド! 手札に先程加えたGを宝札のデメリット効果で捨てさせてもらう!」

 

 セルゲイ LP4000 手札4 フィールド なし 伏せ1

 

ディアブロ LP3800 手札0 AOJ・コアデストロイ AOJブラインドサッカー フィールド 機甲部隊の最前線 伏せ3+不協和音(カウント1)



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