ハイスクールD×D ~それは現か幻か~ (DDX)
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序章 とある少年のプロローグ
第1話


はじめまして、DDXと申すものです

この度、このような作品を晒すこととなりました

どのように思われるかはわかりませんが楽しんでくだされば幸いです

それでは本編どうぞ


それは現か幻か

 

現というなら証明してみよ

 

幻というなら儚く消え去れ

 

証明できねばそれは幻

 

消え去らぬのならそれは現

 

ならばこそ問おう

 

それは・・・・現か幻か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪~」

 

鼻歌交じりに学校への通学路を歩く俺の名は現世朧。私立駒王学園に通う愉快で素敵なイケメンだ。

 

おっと、決して誇張表現ではないぜ?だって実際俺はイケメンだからね!容姿はマジで整ってる方だからね!ナルシストと言いたければ言えばいいさ!

 

まあ、そんなイケメンな俺だけどぶっちゃけ女の子にはモテない。基本女の子は俺を好意的な目で見てくれない。

 

だって俺は・・・・

 

(おっ、あの子いい太ももしてるな~。あっちの子はボディラインが素晴らしい・・・・・ややっ!?今あの子ちらっと下着が見えたぞ!黒とは中々に過激ではないか!)

 

だって俺はエロいんだもの。

 

基本俺は四六時中エロいことを考えている。女の子のあんなことやこんなことを考えては愉悦に浸り、それが表情に出ちゃうもんだから女の子からは大抵引かれる。

 

今だって俺は通学途中の女の子を品定めするような目で見てテンション上げてるしね。きっと小さなお子さんを連れた親御さんが見たらそっとその目を両手で包み込むであろう。情操教育上大変宜しくないもんね。まあ、やめないけど。

 

そんなわけで基本女の子にモテないどころか引かれてる俺だけど・・・・・それでも例外はいる。俺がどんなにエロかろうとそれを受け入れた上で俺にキャーキャー黄色い声を上げている女の子や俺にエッチなことをされて調教されたいっていうマゾな女の子もいる。ぶっちゃけそういう子をいくらかつまみ食いしたことだってある(最低なクズだという自覚はあります)

 

そして何より俺には・・・・・親友がいる。

 

「おはよー朧!」

 

「お~、イッセー。おはようさん」

 

噂をすればなんとやらかな?一人の女の子が俺に意気揚々と挨拶をしてきた。

 

彼女の名前は兵藤一誠、通称イッセー。ちょっと癖の強い亜麻色の髪にクリッとした目をした可愛らしい女の子で彼女こそが俺の唯一無二の大親友だ。

 

・・・・・男と女が親友同士だなんて馬鹿なと思ったやつちょっとこっち来い。その顔面ぶん殴ってやるから。あ、女の子だったら胸かお尻をワンタッチで許してあげるよ。なお、どっちになるかはその時の俺に気分、またはどっちの方が性的に魅力的なのかで変わるが・・・・・おっと、話が逸れてしまったな。とにかくイッセーは俺の親友。異論は認めない。

 

まあ、確かにね一般的な考えからすれば男と女が親友同士になるのは難しいかもしれない。だが、俺とイッセーは別だ。

 

なぜなら・・・・・

 

「あ、イッセー。さっき神風が吹いて女の子の黒い聖骸布をお目にかかれたぞ」

 

「なんだと!?くそっ・・・・・私も見たかった!」

 

イッセーも俺に引けを取らないエロの権化だからだ。超エロだからだ。

 

イッセーは確かに女の子だ・・・・・だけど、それでもイッセーは女の子が好きだ。可愛い女の子が、麗しい女の子が、美しい女の子がイッセーは好きなのだ。

 

そしてさらに言うならイッセーは特におっぱいが好きだ。さっきは下着の話で食いついていたがこれがおっぱいとなるとさらに食付きは増すだろう。それだけのおっぱい星人なのだ。

 

なお、イッセー自身も平均を大きく上回る巨乳の持ち主なのだが曰く、「自分の胸で興奮なんかできるか!重いんだよこれ!」と言っている。それを初めて聞いたとき、俺の目からツーと涙が流れたことは今でも覚えている。

 

「なんで・・・・・なんで朧だけがそんないい思いを・・・・と、普段なら言うところだけど今日の私は違うのだよ朧くん」

 

初めは悔やんでいるように見えたイッセーであったが、すぐに誇らしげ・・・・・というか見事なまでのドヤ顔を披露してきた。

 

「なに?どういうことだ?」

 

「ふふふ・・・・・朧よ、私はな・・・・・見たのだ」

 

「見たって・・・・何をだ?」

 

一体どんな女の子のいやらしいところを見たんだ?はっ!?まさか・・・・・生乳をその目に収めたのか!?

 

「教えろイッセー!お前は一体何を見たんだ!」

 

「私が見たもの、それは・・・・・・夢だ。私は夢の中で・・・・・ハーレムを築いていた!」

 

なん・・・・だと?

 

「ハーレムって・・・・・あのハーレムか?俺とお前が・・・・もっと言えば全世界の多くの男が渇望してやまないあのハーレムなのか!?」

 

「そうだとも。私の夢の中で・・・・複数の女の子が裸で私に擦り寄ってきた。そして○○なことや××なことをしてイチャイチャねちょねちょして・・・・・ぐへへ~」

 

イッセーが女の子がしてはいけない顔をしている・・・・・・だが無理もないだろう。ハーレムはイッセーの夢なのだから。

 

なにせ元女子高で女子の比率が多く、ならばハーレムを作れる可能性が高いのでは?という考えのものこいつは駒王に入ったぐらいだからな。

 

まあかく言う俺もハーレムという野望を携えて駒王に入ったのだが。

 

「くそっ・・・・夢とは言え羨ましいぞイッセー!そしておめでとう!」

 

「ありがとう!」

 

ガシッと互いに手を取り合う俺とイッセー。ふふっ・・・・・これは誰がどう見ても親友のやりとりにしか見えないだろうがな。まあ、話の内容はアレだが。

 

「だがイッセー・・・・・一応聞いておくがわかっているか?」

 

「ああ、もちろんだ。私はこの夢を夢のまま終わらせるつもりはない。私はこの夢を・・・・・この幻を現のものにしてみせる!」

 

「よく言った!それでこそ我が親友だ!俺も負けんぞ・・・・・俺も必ずやハーレムを築いてやる!」

 

「「あっはっはっはっは~!!」」

 

手を取り合ったあとは肩を組んで高笑いをあげる俺とイッセー。周りから好奇の目で見られたりご近所迷惑だったりするだろうがそんなの知ったことではない。

 

その後、俺とイッセーはどんな娘を自分のハーレムに居るのかの熱い談義を交わしながら学校へと赴くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり女の子の魅力が一番詰まってるのはおっぱいだと思う」

 

「本当にイッセーはおっぱい好きなんだな」

 

「当然!女の子のおっぱいの柔らかさは夢とロマンでできてるからな!」

 

「わかる、わかるぞイッセー。たとえ巨乳だろうとちっぱいだろうとおっぱいは柔らかい・・・・・それは夢とロマンでできているからだ!」

 

「だよね!」

 

昼休みになって、昼食を食べながら俺とイッセーはおっぱい談義に花を咲かせていた。

 

ちなみに大体話を振るのはイッセーからだ。何度も言うがイッセーはおっぱいが大好きなのだ。まあ、俺もだいすくだけどね。

 

とまあ、こんな感じでおっぱいに対して熱く語っていると・・・・・

 

「イッセーちゃん!」

 

「俺達もその談義に加えてください!」

 

手に昼食を携えて現れる男子生徒が二人。彼等の名前は松田と元浜。わかりやすく言うと俺やイッセーと同類のエロの権化だ。

 

俺、イッセー、松田、元浜・・・・・この4人をまとめて駒王のスケベ四天王と呼ばれている・・・・らしい。知り合いの女子に聞いた話だがイマイチ信憑性に欠ける・・・・というかその女の子が勝手に言ってるだけの可能性も十二分に高い。まあ、別にそれは構わないんだが・・・・・

 

まあともかく、俺達と同様にエロい二人が談義に加わってこようとするのだが・・・・

 

「「失せろ」」

 

俺とイッセーは一言きっぱりと言い放ってやった。それも信じられないくらい冷ややかな目をしてだ。

 

「「・・・・あ、はい。わかりました」」

 

二人共ここまで邪険にされて心によほどのダメージをおったのだろう。おとなしく引き下がっていった。

 

うん・・・・ぶっちゃけ言うけど俺はこいつらのこといけ好かないと思っている。それは別にスケベ四天王と一括りにされているからではない。むしろこいつらのスケベ心を隠さないオープンなところは感心している。

 

だが・・・・・・それでも俺はこいつらがいけ好かない。なにせこいつらイッセーに色目使ってきやがる。イッセーに声をかけるとき大抵胸に視線が行ってるのがいい証拠だ。おおかたイッセーがエロエロだから頼めばもしかしたら触らせてくれるのでは、と期待しているのだと思う。親友であるイッセーにそんな目を向けることなど俺が許さん。

 

ここまで言うと俺がウザったい保護者に聞こえるかもしれないが・・・・・それは俺に限った話ではない。

 

「もう嫌・・・・・あいつらいつも私の胸ばっか見て・・・・・」

 

イッセー自身もあれにはまいっているのだ。

 

イッセーは基本的に男が好きではない。これは女の子好きが高じて出てしまった副作用なようなものだ。イッセー曰く、男に言い寄られると鳥肌が立つほど嫌で、性的な目で見られると悪寒が走ってしまうらしい。

 

されに言えばイッセーはとりわけイケメンが嫌いだ。なぜならイケメンはモテるからだ。モテるがゆえに可愛い女の子に告白される機会も多いイケメン・・・・・それは即ちイッセーのハーレムへの道を妨げる存在にほかならない。だからこそ一般的な女子とは違いイッセーはイケメンを敵視しているのだ。

 

それなら俺はどうだって?俺は問題ない。俺はイッセーの親友だからな。そして何より俺はイッセーを性的な目で見たことがない。

 

その証拠に・・・・・俺は何があってもイッセー相手に性的劣情を催したことがないのだ。

 

「女の子の胸は好きだけどこれは本当に恨めしい・・・・・最近また大きくなったきがするし」

 

「そうなのか?」

 

「ああ・・・・服がきつくなってな。確かめてみろ」

 

イッセーは俺の手をとって自身の胸を持っていく。そして俺は大きかを確かめるように手を2、3度動かして胸をもんだ。

 

「ふむ・・・・そう言われてみると前より揉みごたえがあるように思えるな」

 

「でしょ?やっぱり大きくなってるんだ・・・・・」

 

俺の考察を耳にしてイッセーは酷く落ち込んで見せた。本当に自分のおっぱいには欲情できないどころか煩わしいとさえ思っているようだ・・・・・不憫だな。

 

・・・・・は?劣情を催さないくせに何揉みしだいてんだって?何も問題ないだろ・・・・実際劣情を催したりはしてないし。

 

まあ、もちろん相手がイッセーでなければテンション上がっていただろう。だが、イッセー相手では性的興奮は一切わかない。断っておくがそれはイッセーに性的魅力が無いというわけでは断じてない。イッセーは可愛い。エロい言動をとりまくるが間違いなくイッセーは美少女だ。

 

だがな・・・・・それでもイッセーは親友なんだ。俺はクズでゲスで最低な野郎だが親友を性的な目で見ることだけは絶対にしないと心に誓っている。

 

そして、イッセーもそれをわかっているからこそ俺を親友として認めてくれているし、さっきみたいにナチュラルに俺に自分の胸を触らせるのだ。

 

「朧、おっぱいを小さくする方法はないのか?」

 

「できるがだろうが多分高いぞ」

 

「・・・・・ちくしょう」

 

本気で嘆く親友イッセー。俺はそんなイッセーを慰めるべく頭を撫でることにした。

 

 

 




言っておく・・・・これがピークだ(ある意味で)

とりあえず下ネタ等はこのレベルが私が出せる最高レベルだと思っていてください

それとイッセーがTSしている理由は・・・・そのうちわかります

それでは今回はここらで失礼

次回もまたお楽しみに!


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第2話

今回は朧の秘密が少しだけ見られます

もっとも、具体的に何かはわからないとは思いますが・・・・

それでは本編どうぞ


「イッセー、行こうぜ」

 

「ああ」

 

授業が全て終わり、早々に帰り支度を済ませた俺とイッセーは足早に教室をあとにする。というのも、今日は大事なやることがあるのだ。

 

「くくくっ、楽しみだなぁ・・・・・今日は朧のお気に入り持ってきてくれたんだろう?」

 

「ああ。俺を唸らせた至高の一品だ」

 

俺はソレの入った学生鞄を軽くポンと叩きながら自慢げに言い張ってやった。

 

今日、俺とイッセーはイッセーの家でAV鑑賞会を行うことになっていた。鑑賞するのは俺のとっておきのAV。先日手に入れ、拝見して速攻で俺のお気に入りとかした至高の一品である。

 

・・・・・まあ、わかってるよ。親友とは言え女の子の家でAV鑑賞など世界規模で見てもそんなにないってことは重々承知している。やるなら一人暮らしである俺の家でやるのが普通だと言われてもしょうがないだろう。え?俺が一人暮らしだなんて聞いてないって?別にいいだろう聞かれなかったんだから。

 

まあ、それはともかくとして、わざわざイッセーの家でやるのには理由があるのだ。AV鑑賞を始めてしまったら、少なくとも日が暮れるまでは終わることがない。イッセーの家の近くはともかく俺の家の周辺は人気が少ないのだ。そんな夜道を女の子であるイッセーに一人歩かせるのは中々に問題だろう。まあ、ならば送っていけばいいのだがそれにしたって遅くなればイッセーの親御さんに心配をかけてしまう。というわけでAV鑑賞会はイッセーの家で行うのが通例となっているのだ。

 

「で、今回のはどんなジャンルなんだ?」

 

興味津々かつ、下心を一切隠すきのに表情で尋ねてくるイッセー。

 

「年上のお姉さんモノ。しかも巨乳」

 

「もう最高です!」

 

イッセーは人目をはばからずに敬礼しながら断言した。うん、さすがはイッセー。俺の期待を裏切らない反応だ。

 

「お前のその反応を見るとAVを学校に持ち込むというリスクを犯した甲斐があるな。まあ、たとえ持ち物検査が行われようと絶対に見つかって没収なんてことにはならないがな」

 

「朧ってなぜかそこ自信満々だよな・・・・・実際持ち込んでる時に持ち物検査があっても本当に見つかってないし。私なんて何度没収されたことか・・・・・」

 

くうっと拳を握り締め、涙を流しながらこれまでに没収されてきた宝物の事を思うイッセー。よほど辛く、悲しい別れを体験してきたのだろう。きっと俺も一つでも没収されていたら同じように涙したに違いない。

 

だがまあ、俺が没収されるなんてことには絶対にならないだろう。その絶対的自信が俺にはある。まあ、その自信の正体が何かまではイッセーには口が裂けても言えんがな。

 

「なあ朧、一体どうやったら持ち物検査に引っかからずに持ち込むなんてことができるんだ?」

 

「残念だがそれには答えることはできないのだよイッセー。たとえ親友であっても企業秘密だ」

 

「む~・・・・・・オープンエロ癖に秘密主義とか似合わない・・・・あ」

 

「どうしたイッセー・・・・って、ああ。そういうことか」

 

言葉を途中で区切り、視線を俺から逸したイッセー。気になって俺も視線をイッセーと同じ方を向けると・・・・・・その理由に合点した。

 

イッセーの視線の先にいたのは鮮やかすぎる紅の長髪を持つ麗しい女性。我が駒王学園が誇るアイドルにしてお姉様、リアス・グレモリー先輩だ。

 

「ああ・・・・・相変わらず綺麗だなぁ。おっぱい大きいなぁ」

 

「綺麗の次に出てくる感想がおっぱいなところに感心するぞイッセー。まあ、確かにあのおっぱいを見れば好きにしてみたいという欲求が湧いてくるから仕方ないが。それにしても本当にあの人美人だよな」

 

まさに美の象徴。彼女を一言であらわすのなら美しいという言葉がふさわしいだろう。身にまとう空気も優美で近寄りがたいほどの気品がある。

 

その佇まいは・・・・・

 

「本当に・・・・・・まるで悪魔みたいだ」

 

「・・・・・・え?悪魔?」

 

俺の一言がよほど意外だったのか、イッセーはきょとんとしてしまっている。

 

「悪魔って・・・・そこは普通天使とかじゃないか?」

 

「いやぁ。あの人の美貌はどっちかって言うと妖艶って言ったほうがいいものだと俺は思うぞ?それに考えてみろよ・・・・・あんな先輩に悪魔のように誘惑されて心も体も骨抜きになれるとかどうだ?」

 

「朧・・・・・お前は天才だ」

 

俺の肩をがしっと掴みながらいう俺の親友の鼻からは赤い液体が垂れ流されていた。

 

「イッセー、鼻血鼻血」

 

「おっと、私としたことが・・・・・」

 

慌ててティッシュを取り出して鼻血を拭き取るイッセー。というか鼻血が吹き出すほどってどんな妄想してたんだ・・・・・まあ焚きつけた俺が言うのもなんだが。

 

「いやぁ、もう考えただけで私の中の熱いパトスが暴走してしまうほどだったよ。さすがは先輩だ。だけど・・・・・私とは縁遠い存在なんだろうなぁ」

 

イッセーはがっかりと肩を大きく落としながら落ち込む。まあ、仕方がないだろう。相手は学園のアイドル。対してイッセーは容姿はともかくとして学園内では相当有名なエロエロ女子。

 

・・・・・うん、どれだけ大目に見ても覆りようのない溝が出来てるのは否めないな。

 

だが・・・・・それでいいのだ。イッセーには悪いが、リアス・グレモリーと関わる必要などない・・・・・関わって欲しくなどない。

 

関われば・・・・・戻れなくなるかもしれないからな。

 

「・・・・朧?」

 

「ん?なんだイッセー?」

 

「いや、なんか変な顔で先輩のこと見てたからどうしたのかと思って」

 

おう・・・・・表情に出てしまっていたか。ポーカーフェイスを売りにしたい系男子としてはアカン失態だ。

 

「別に何でもない。ただ床を同じくするならどんなプレイがいいかなと思ってただけだ」

 

「なるほどな」

 

その一言で片付くのか・・・・・・別に狙ってやってるわけじゃないけどエロゲスキャラで良かったと切に思う。

 

「それよりも近づけもしない高嶺の花を眺めるより、俺達にはやることがあるだろう?」

 

ぽんとまたしてもAVの入った鞄を叩きながら俺は言う。

 

「と、そうだった!早く帰ろう朧!」

 

「ああ」

 

俺達はイッセーの家へと目指して再び足を動かし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・・ぐすっ・・・・」

 

イッセーの家につき、2時間近くかかったAV鑑賞が終わるとイッセーが泣いていた。別に悲しいことがあったわけではない。辛いことがあったわけでもない。

 

ただ・・・・・

 

「朧・・・・・こんな素晴らしい作品を見せてくれてありがとう!」

 

イッセーはAVのあまりのクオリティの高さに感激して涙を流していたのだ。

 

「やはりイッセーならこいつの良さがわかってくれたか・・・・・俺も初めて見たときは涙を流したものだよ」

 

あの時は俺も若かった・・・・・まあ、ほんの1週間前のことだけどな。

 

「おっぱいが艶々でたゆんたゆんでぷるんぷるんでもにゅんもにゅんだった・・・・次元超越して画面の中にダイブして触りたかった!ツンツンしたかった!揉みしだきたかった!もっと言えばしゃぶり尽くしたかった!」

 

と、熱く語るおっぱい星人イッセー。おっぱいに対する執着は女子高生・・・・・いや、全国の高校生一であると俺は思っている。

 

でもまあ・・・・・ぶっちゃけ服の上から見た目算の話になるんだけどイッセーの胸もAVに出てた女優に引けを取らないレベルだと思うけどな。でもこれ言ったらイッセーほぼ確実に落ち込むから黙っておこう。

 

「確かにいいおっぱいしてたよな。でも俺は乱れる黒髪も中々唆られるものがあったな」

 

「ああ・・・・・朧黒髪フェチだもんな」

 

そう。俺は自他共に認める黒髪フェチなのだ。黒髪マジサイコー。それだけでステータス・・・・・いや、やっぱ黒髪でも可愛いor美人がいいです。まあ、黒髪だけに固執してるってわけでもないが・・・・・それでも黒髪は俺にとって一番重要な要素だ。

 

「でもなぁ・・・・・AVの女優は好みよりも髪が少し短かったんだよなぁ。それが残念でならない」

 

確かにこのAVは至高だ。女優は綺麗な黒髪を持っていた。だが、それでも俺にとってはまだ足りない・・・・ゆえに至高止まりなのだ。真に素晴らしいものは至高をこえ、言葉で言い表せないものなのだ。

 

「贅沢だな・・・・・と言いたいところだが私も気持ちは分かる。私としてもこう・・・・胸の形がもうちょっとこう・・・・・いや、まああれはあれで良かったんだけど」

 

ふむ、イッセーも同じ気持ちか。

 

確かに上を見ればキリが無いかもしれない。ときには妥協しなければならない時もある。だが、それでも・・・・・

 

「イッセー・・・・俺達は必ず見つけよう。俺は俺好みの黒髪を持つ女の子を」

 

「俺は俺好みのおっぱいを持つ女の子を」

 

「「見つけて・・・・ハーレムに加えてみせる!!」」

 

俺達は心に誓った。自分好みの至高を超えた女の子を必ずやハーレムに加えることを。

 

「よし、それじゃあ俺はそろそろ帰るよ。夕飯の支度しないとだし」

 

「夕飯の支度か・・・・・一人暮らしってやっぱり大変か?」

 

「それなりにはな。だがまあ、慣れれば快適ではあるぞ?自分勝手し放題だし。特にエロ方面」

 

「それは本当に羨ましい・・・・・でも、気になってたんだが朧の両親って・・・・」

 

「んじゃあまたなイッセー」

 

イッセーの言葉を遮るようにして挨拶をしたあと、俺は部屋を出て行った・・・・・すまんイッセー。お前相手でもそれはあまり話したくないんだ。

 

あれは・・・・・思い出したくもない。

 

「あら?もう帰るのかしら朧くん?」

 

物思いにふけりながら玄関で靴を履いていると、イッセーの母親が声をかけてきた。

 

「はい。お邪魔になりましたおばさん」

 

「いいのよ。こんなイケメンが遊びに来てくれるなんておばさんも嬉しいんだから・・・・・やってる事はあれだけど」

 

笑みを浮かべながらも、最後の方は小声で困ったように呟いていた・・・・・ごめんなさいおばさん。人の家でAV鑑賞会なんてやって本当にごめんなさい。反省はしています・・・・・まあ、これからもやめることはないだろうけど。

 

「でもまあ、これからもイッセーの事よろしくね?イッセーてば女の子なのにああいう性格・・・・というより性癖をしてるから昔から友達が少なくて白い目で見られることも多くて・・・・口調まで男の子っぽいし」

 

「あはははは・・・・・まあ言ってはなんですが女の子であれは中々受け入れがたいものがあるかもしれませんからね。でもまあ、俺はイッセーのああいうオープンなところ好きですよ。親友として好感が持てます」

 

俺とイッセーが親友としてうまくいってるのはイッセーのあの性格によるところが大きいからな。

 

自分の欲望に忠実で、それを隠さずおおっぴらにして、それを恥じることのない・・・・・そういう人間らしいところを俺は気に入ってる。だからこそ親友でいられるのだ。

 

「そう・・・・ありがとうね。でも、どうせなら親友じゃなくて恋人の方がおばさんとしては嬉しいのだけど?」

 

「すみません、それは無理です。決してイッセーに魅力がないわけではありませんが・・・・・俺はあくまでもイッセーの親友ですから」

 

そう一言言った後、俺は玄関の扉を空けて外に出た。

 

そうだ・・・・・俺はあくまでもイッセーの親友でしかない。今までそうだったし、これからもそうだ・・・・・俺はただ、死ぬまでイッセーの親友であれればそれでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの~、ちょっといい?」

 

「はい?」

 

俺が頭の中で夕食の献立を考えながら歩いていると、何やら色っぽい女の声が・・・・振り返ると予想通り嫌に色っぽいおそらく年上であろう女の人がいた。

 

にしてもなんという過激な服を・・・・・スカート短いし大きいおっぱいを強調するように服の胸元開けてるし。残念ながら髪は金髪だけれど・・・・・うん、それでもドストライクでないにせよ俺の好みではあるな。

 

「なんでしょうかお姉さん?」

 

俺はなるべく好印象を与えるべく紳士的な態度で応えた。普段オープンで下品なことを言いまくっている俺であるが・・・・・まあ、こういう時はね?やっぱり最初が肝心だし。

 

「知り合いの家に行ってたんですけど気がついたらこんなに暗くなっちゃってて・・・・急いで帰ろうと思ったけど一人じゃ怖くて・・・・・」

 

お?これはもしや・・・・

 

「その・・・・・大変申し訳ないのだけど家まで送ってくれないかしら?」

 

キタ━(゚∀゚)━!

 

いいねいいね!こういうイベント大歓迎よ!ここから恋愛に発展してそして・・・・・ぐふふふ。妄想が止まりませんな!

 

「ええ。俺でよければ喜んで」

 

「本当ですか?」

 

下心満載な気持ちの一切を自分の内に隠して俺は了承の旨を伝えると、女性はパッと表情を明るくさせる。そんな女性の反応に、下心を抱いてることに罪悪感を・・・・・覚えたりはしない。そんなもん感じててハーレムなんて築けるか。

 

「それじゃあよろしくお願いします。家はこっちです。ついてきてください」

 

「はい」

 

歩き出す彼女の隣りに回った俺の心中は、今日一でウキウキ気分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの・・・・・お姉さん?お姉さんは家に帰ろうとしていたのでは?」

 

「ええ。そうよ」

 

「では・・・・なぜこんな人気の少ない公園に?」

 

彼女の案内で到着した場所は、人気の少ない公園であった。今は既に日が暮れてしまっているから当然であるが、この公園は町のはずれにあるせいか昼でも人通りは少ない。そんな公園になぜ・・・・?

 

「家に帰らないんですか?」

 

「帰るわよ。でもその前に・・・・・エスコートしてくれるあなたにお礼をしたくてね」

 

そう言いながらお姉さんは俺の首に手を回し、上目遣い気味に俺を見つめながら俺の胸にその豊満なおっぱいを押し付けてきた。

 

これは・・・・・まったく予想していなかったわけじゃないがまさかこのような展開になるとは・・・・・

 

まあ実はこういう展開もあるだろうなぁと歩きながら考えていたのでそこまで動揺はしなかったんだけどね。そんなことより今は押し付けられているおっぱいの感触を楽しみことに意識を集中させなければ。

 

「あなたよく見ると中々のイケメンね・・・・・私好みだわ」

 

お姉さんはそう言いながら俺に顔を近づけてくる。普通に考えればこれはキスの流れだろう。

 

そう・・・・・普通に考えれば。

 

「お姉さんの方から迫ってくれるだなんて嬉しいですね。ですけどこういうことするなら・・・・・・爪のケアぐらいしてくださいよ」

 

「!?」

 

俺は首に回されていたお姉さんの手を掴み、引き剥がした。その手の先の爪は・・・・・おおよそ人のものとは思えないくらいに長く、鋭く尖っていた。

 

「ちっ!」

 

お姉さんは俺の手を振りほどき、後ろに跳躍して距離をとってくる。

 

「貴様・・・・・なんでわかった?」

 

先程の色っぽさとは裏腹にお姉さんは怒気と殺気を含んだ声色で俺に尋ねてくる。

 

「お姉さんが短気だったからだよ。俺の首に手を回したとき・・・・鋭く尖った爪が見えてたよ」

 

「そう・・・・気が早ったわね。でも、それを見ても驚かなかったっていうことは・・・・・私がなんなのかわかっているということかしら?」

 

「もちろんですとも・・・・・・はぐれ悪魔のお姉さん」

 

俺が言うと、お姉さんは背中からコウモリのような黒い羽を出現させた。やっぱりはぐれ悪魔だったか。

 

「ふふふっ・・・・・あなた普通の人間じゃないわね。悪魔のことを知ってるなんて・・・・・あなた何者?」

 

「そんなことどうでもいいじゃないか。それよりもほかに重要なことがある」

 

「重要なこと?」

 

「ああ。お姉さん、俺は美少女が好きだ。美女も好きだし美幼女も好きだし美老女も好きだ。そして美天使も好きだし美堕天使も好きだし・・・・・・美悪魔も、美はぐれ悪魔だって大好きなんだ。そしてあなたは美はぐれ悪魔・・・・・だからさお姉さん。よければ俺のハーレムの一員になってよ。可愛がってあげるよ?」

 

俺はお姉さんに向かって手を伸ばしながら、ハーレムに勧誘した。ストライクゾーンド真ん中ではないにしてもおこの姉さんも中々の上玉だ。ハーレムの一員に加えてもいいと思うほどに。

 

この申し出、受けてくれるといいんだけど・・・・・

 

「・・・・ふふっ。あははははははっ!いいわねあなた!中々私好みの欲の深い人間だわ!」

 

お?これは好印象?いけるか?

 

「本当にいいわぁ。私はね・・・・・そういう欲の深い人間を殺すのが大好きなのよ!」

 

はい、ダメでしたー。このお姉さん中々歪んだ趣向してやがんなー・・・・いや、オープンエロでこの状況でハーレムに勧誘しようとした俺が言えたことでもないけども。

 

でも、そっか・・・・・・ハーレムに入ってくれない上に俺を殺したいのかぁ・・・・・そうかそうか・・・・・

 

「それは残念だ。本当に残念・・・・残念すぎて涙が出そうだよ。正当防衛とはいえ美はぐれ悪魔なお姉さんを・・・・・・殺さないといけないなんてさ」

 

「・・・・え?」

 

俺の発言に一瞬フリーズしてしまったお姉さんに構うことなく・・・・俺は神器(セイクリッド・ギア)を起動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ~あ・・・・・これどうしよう。

 

ことが終わり、俺は思わず頭を抱えてしまっていた。そんな俺の目の前には、無傷で死に絶えたはぐれ悪魔のお姉さんが倒れている。

 

人気が少ないとはいえここに放置してたら、そのうち誰かに見つかっちゃうだろうなぁ。そうなったら・・・・・ダメだ、スッゲェ面倒くさいことになるのが容易に想像できる。

 

くそっ、俺は平穏無事にハーレムを築きたいっていうのになんでこんな面倒事に巻き込まれるんだ!この町で暮らすようになってこれで三回目なんだぞ!

 

と、まあ嘆いていても仕方がない。ここはやはり前の二回と同じようにあそこに連れて行こう。そうすればあとは向こうで何とかしてくれる。

 

そうと決まればお姉さんと背負って・・・・・死んだ人間、いや悪魔か。ともかく意識のないやつを背負うのって意外と大変なんだぞこんちくしょうめ。それにこちとら死体に興奮するようなやばい性癖抱えてるわけじゃないからただただ疲れるんだぞ。

 

・・・・・俺、今日はいつ家に帰れるのかなぁ?

 

この貸しはいつか返してもらいますからね、グレモリーさんとその眷属の悪魔さん達。




とりあえずプロローグはここまでです

次回からは原作一巻の内容に入っていきます

どのようになるか・・・・どうかお楽しみに

それでは次回もまたお楽しみに


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第一章 黒き美髪へフォーリンラブ
第3話


今回から原作一巻の内容に入ります

朧視点が多いのでオリジナル展開が多々ありますが・・・・どうかお楽しみに

それでは本編どうぞ


平和を維持したいと思っていた

 

平穏を維持したいと思っていた

 

俺の過去は悲しみで満ちている

 

俺の過去は憎悪で満ちていた

 

俺の過去は絶望で満ちていた

 

復讐を望む自分がいる事は知っていた

 

だが、俺は・・・・・それよりも平和と平穏を望んだ

 

そっちの方が・・・・・俺にとって尊いから

 

だから平和の影で起きていることを知っていながら無視していた

 

時には巻き込まれることもあったけれど・・・・・すぐに何事もなかったかのようにそっぽをを向いた

 

それでいい

 

それでいいんだ

 

そうすれば・・・・・俺は残り短い時間を親友(イッセー)と謳歌できるのだから

 

いつもハーレムハーレムって固執していたけれど・・・・それは確かに夢だけれど・・・・

 

叶わなくたっていい

 

そんな夢よりも・・・・俺は親友(イッセー)と一緒に入れたら良かったんだ

 

それで・・・・・よかったのに・・・・・

 

・・・・・わかっていたのに

 

人生なんて思い通りにいかないなんてわかっていたのに

 

俺にとって平和も平穏も・・・・・幻だってわかっていたのに・・・・

 

親友(イッセー)は人生を劇的に変えてしまう出会いを果たす

 

俺もまた・・・・・人生を変えてしまう出会いを果たしてしまった

 

俺の・・・・俺たちの平穏は・・・・平和は・・・・・

 

・・・・・失われてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっぼろ~!朧朧!聞いてきくれ朧!」

 

登校早々、やたらとテンションの高い我が親友、イッセーに絡まれた。

 

というかマジでテンション高い・・・・・間違いなくこれまでで最高だぞ。

 

「どうしたイッセー?またハレムの夢でも見たのか?」

 

俺はそうあたりをつけて尋ねてみた・・・・だが、そうではないと言わんばかりにイッセーは笑みを浮かべている。

 

「ふっふっふ・・・・違うよ朧くん。それ以上・・・・それ以上なんだ」

 

ハーレムの夢以上・・・・だと?

 

はっ!?もしや・・・・・

 

「お前・・・・・とうとう揉んだのか!?自分以外のおっぱいを!」

 

「あ、いや。そこまではまだいってないんだけど」

 

違うんかい!思わず叫んじまったじゃねえか!というかそのせいでクラスの大半(主に女子)に俺は白い目で見られてるんだぞ!まあ、慣れてるからいいけど。

 

でもおっぱいを揉んだんじゃないとすると一体・・・・待てよ?今イッセーの奴『まだ』って言った?

 

まさか・・・・・

 

「イッセー、まだということはつまり・・・・・予定ができたということか?」

 

「ふっふっふっ・・・・・そうだ!とうとうだよ。ハーレム計画の第一歩を私は踏んだ・・・・私に彼女ができたのだよ!」

 

「「「「なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」」」

 

あまりのことに俺は絶叫してしまった。俺だけでない。イッセーはやたらとでかい声で言い放ったため、それを耳にしたクラスメイトの多くも同じようにリアクションをとっていたのだ。

 

「くくくっ・・・・諸君静粛に。朝早くから騒いでは迷惑だ」

 

勝ち誇ったような表情でクラスメイト達を宥めるイッセー。

 

・・・・・うわっ。スッゲェムカつくなこの表情。

 

「なんで・・・・なんで女の兵藤に彼女が出来て俺にできないんだ」

 

「世の中・・・・・残酷すぎる」

 

「くそっ・・・・・俺兵藤のこと狙ってたのに」

 

「兵藤ならエッチなこと許してくれる素敵な彼女になってくれると思ってのに・・・・・」

 

イッセーに宥められ、おとなしくなったクラスメイト・・・・だが、その中の一部の男子は地面に膝をついて嘆き始めた。

 

まあ、女のイッセーが彼女できてなんで自分はって思うのはわからなくもないからいくらでも嘆いていいと思う。

 

ただし後半二人、テメー等はダメだ。後でボコるから覚悟しやがれ。

 

にしても・・・・・

 

「まさか彼女ができるとは俺も予想外だわ・・・・・一応聞くけど告白はどっちから?」

 

「向こうからだ。俺も一瞬信じられなかったけどすぐに天にも昇る心地になったぜ」

 

ふむ・・・・まさか向こうからとは。同性愛者ということか・・・・・言っちゃ悪いが稀有な子だな。しかもイッセーのこのリアクションからして可愛いっぽいな・・・・・もしくは素晴らしいおっぱいの持ち主か・・・・

 

「どんな子なんだ?写メとかはあるか?」

 

「あるぞ。頼んで撮らせてもらったんだ。恥ずかしいからあまり人に見せるなって言われたけど・・・・・特別に親友である朧にだけ見せてやろう」

 

そう言って携帯を取り出し、操作し始めるイッセー。

 

・・・・・見せるなって言われてるのに親友だからって理由で見せてくれるのか・・・・・地味に嬉しいなおい。

 

「ほら、この子だ」

 

イッセーは携帯画面をこちらに向け、俺に見せてくる。

 

「ッ!!」

 

その瞬間・・・・・俺は稲妻に打たれたかのような衝撃を受けた。

 

携帯に映された少女は・・・・・可愛かった。とてもとても可愛かった。そして何より・・・・・美しい黒い長髪の持ち主であった。

 

美しい・・・・綺麗だ・・・・・思わず見惚れてしまう。いや、見惚れるなどという言葉はあまりにも陳腐・・・・・気を緩めてしまえばイッセーから携帯を奪い取って視姦してしまいそうだ。

 

自分の中にドス黒く、純粋な欲望が芽生えるのを感じる。

 

この少女を手に入れろ

 

この少女を鳴かせろ

 

この少女を犯せ

 

この少女を孕ませろ

 

俺の男の・・・・否、雄の本能が俺に強く命じている。

 

それほどまでに・・・・・俺はこの少女に惹かれてしまった。この少女を求めてしまっていた。

 

イッセーの彼女だとわかっているのに俺は・・・・・・

 

コノ少女ヲ俺ダケノモノニシタイト思ッテシマッタ

 

「・・・・どうした朧?」

 

「うぇ?」

 

一体どれだけトリップしていたのか、イッセーの言葉で俺はようやく正気を取り戻した。

 

・・・・なんか変な声出ちゃったけそれはまあいいだろう。

 

「様子がおかしかったけど・・・・・大丈夫か?」

 

「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっとあまりにも可愛かったもので絶句しちまってさ」

 

・・・・・うん、まあ嘘はついてないよな。

 

「ああ、そういうことか。確かにお前が好みそうなぐらい綺麗な黒髪してるもんな」

 

「そうそう。羨ましいぞコンチクショーが」

 

「ちょっ、痛い痛い」

 

俺は自分の気持ちを誤魔化す為にイッセーの頭を乱暴気味にガシガシ撫でてやった。イッセーの方はいつものスキンシップぐらいにしか思っていないようで痛いと言いながらも笑みを浮かべている。

 

・・・・そんなイッセーを見て、この子に欲情していた自分に罪悪感を抱いてしまいそうになる。

 

「それで?いつおっぱい揉んでやろうかなって思ってるんだよ?」

 

「い、いやいや・・・・そういうのは色々と順を追ってだな・・・・」

 

「・・・・・お前そんな奥手でどうすんだよ?仮にもハーレムを志してるんだろ?」

 

「そ、そんなこと言ってもしょうがないだろ!こちとら童貞なんだからな!」

 

「いや、それ言うなら処女な?自分の性別見直せ?」

 

「処女は永遠に取っておくもん。私は百合だから童貞であってるもん。いずれ卒業してやるけど」

 

これまた迷言を残す我が親友。思わず感服しそうである。

 

だが・・・・・イッセーがあの子で童貞を卒業か・・・・

 

・・・・ダメだ。考えただけで嫉妬で狂ってしまいそうになる。ちょっとこの話はここで切り上げたほうが良さそうだ。

 

「まあ、何はともあれお幸せにな。それじゃあそろそろ授業始まるから俺席に戻るな」

 

「おう。今度デートすることになってるからたっぷり感想聞かせてやるよ」

 

「楽しみにしとく」

 

そう言って手をヒラヒラと振りながら、俺は自分の席に座った。

 

 

 

・・・・・デートか。羨ましい限りだな

 

俺もあの子とデートしたい

 

あの子とデートして、愛でて、犯して、侵略して独占したい

 

相手はイッセーの彼女なのに・・・・なんて嫉妬深いんだろう

 

寝取ってしまいたいだなんて・・・・・俺は最低な親友だな

 

・・・・・ああ、駄目だ、考えないようにしたいのに・・・・・無理だ

 

やっぱり俺は・・・・・・あの黒髪の少女が欲しい。あの子が・・・・たまらなく欲しい

 

でも・・・・・大丈夫だよイッセー

 

この衝動・・・・・俺は抑えてみせるから。押さえ込んで見せるから

 

だからどうかイッセー・・・・・

 

どうか・・・・・幸せに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




朧の精神はぶっちゃけそこまでまともではありません

親友であるイッセーのために身を引いておりますが、そうでなければなりふり構いません

つまりどういうことか・・・・・それは次回以降にわかります

それでは次回もまたお楽しみに!


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第4話

今回は朧がある決意をします

決意というと聞こえはいいかもしれませんが・・・・中々クズいのでご注意を

それでは本編どうぞ


「なあ、朧・・・・・・お前夕麻ちゃんのこと知ってるよな?」

 

「・・・・・は?」

 

イッセーが彼女とデートして日の翌日の登校中に、イッセーは不安げな表情で俺に尋ねてきた。

 

ちなみに夕麻ちゃんというのはイッセーの彼女の名前だ。報告されたときは聞くのを忘れていたが後で聞いた。

 

「知ってるもなにもお前の彼女の名前だろ?お前から教えてもらったんだから知ってるに決まってる」

 

・・・・・そりゃ知ってるに決まってる。忘れるはずがない。あんなに魅力的な子を・・・・・忘れるものか。

 

「だよ・・・・な。うん・・・・・そうだよな」

 

知っていると答えると、イッセーは表情を曇らせた・・・・・マジどうしたんだ?いくらなんでもおかしすぎる。

 

「・・・・・何かあったのか?」

 

「・・・・・私さ、昨日夕麻ちゃんに殺されたんだ」

 

「・・・・は?」

 

イッセー?一体何を言っている?

 

「ごめん・・・・・いきなりそんなこと言われたって混乱するに決まってるよな。でも・・・・・目を閉じると今もその時の光景が鮮明に蘇るんだ。私に向かって死んでくれないかって言いながら・・・・夕麻ちゃんは黒い翼を背中からはやして・・・・それで私は夕麻ちゃんが出した不気味なほど光り輝く槍に貫かれて・・・・それで・・・・・殺された」

 

おい、それって・・・・・夕麻ちゃんが?

 

「・・・・まあこんな話信じてくれるわけないよな。私だって信じてないさ。あれはきっとデートがすごく楽しかったから・・・・その反動で見た夢なんだって思ってる」

 

そうだ。まだそれが真実だと断定するのは早い。イッセーの言うとおり・・・・たまたま偶然一致した夢である可能性だってある。そうだ、それこそイッセーはアレを持ってるからそれが影響して変な夢を見た可能性だってなくはない・・・・・と思う。

 

「まあ、お前が夢だって思うならそいつは夢だよ。というかそれ以外ありえないだろ」

 

「うん、そうだよな・・・・そのはず・・・・だよな。でも・・・・・」

 

「・・・・・でも、なんだ?」

 

「・・・・・今朝昨日のデートのこと両親に話したんだけど・・・・・おかしいんだよ。二人とも夕麻ちゃんなんて子知らないって言うんだ。あんなに自慢したのに・・・・・そんな子知らないって。私に彼女がいるんだったら会ってみたいって」

 

・・・・・乾いた笑みを浮かべながら語るイッセー。それを聞いて俺は・・・・自分の中で芽生えた考えが的中してるのではないという疑いが強くなるのを感じる。

 

「証拠を見せようと思って携帯の中の写メを見せようと思ったんだけど・・・・・なぜか消えてて。写メだけじゃなくて夕麻ちゃんの電話番号もメールアドレスも消えてて・・・・・覚えてる電話番号に電話してみても繋がらなくて・・・・」

 

・・・・ダメだ。ここまで来ると疑いではすまなくなってくる。

 

これは・・・・・俺の考えが正しいものなのだと・・・・・イッセーが本当に夕麻ちゃんに殺されたということになってしまう。

 

「私・・・・・・どういうことなのかわからなくて・・・・なんか・・・・ちょっと怖くなってきて・・・・自分がおかしいんじゃないかって思えてしょうがなくて・・・・」

 

「イッセー・・・・・」

 

「なあ朧・・・・私おかしくないよな?夕麻ちゃんは確かにいたよな?夕麻ちゃんは・・・・・私の彼女だったよな?」

 

まるで縋るかのような目で俺を見つめてくるイッセー。今のイッセーは、俺がこれまで見てきてきた中でもっとも弱りきっていた。

 

好みの女の子に告白されて玉砕された時よりも

 

ラブレターをもらったけれどそれがイッセーをからかうためのイタズラだって判明した時よりも

 

自分の胸の大きさに絶望していた時よりも

 

それ以上に・・・・・泣き出しそうなほどに弱々しく見えてしまった。

 

そんなイッセーを、俺は見ていられなかった・・・・どうにか立ち直らせたかった。

 

そう・・・・それがどんなに残酷な選択肢だったとしてもだ。

 

「・・・・何を当たり前な事を言ってるんだよお前は。お前はなにもおかしくない。夕麻ちゃんは確かにいた。だって俺は覚えてるんだぜ。すっごい素敵な黒髪を持った俺好みのお前の彼女の事を。なにせ密かに寝取ってやろうかなぁと思ってたぐらいだからな」

 

「ちょっと待て。お前今なんて言った?」

 

イッセーは嫌に神妙な面持ちで聞き返してくる。しかも睨んでいるように思える。

 

「お前はおかしくない」

 

「そこじゃない!最後だ最後!」

 

「思ってたぐらいだからな?」

 

「その前だ!お前俺から夕麻ちゃん寝取ろうとしてたのか!?」

 

「そんなこと言った覚えはありません・・・・・メイビー」

 

「メイビーってなんだよ!?お前それで誤魔化されると思ってるのか!?」

 

思ってません。完璧百パー煽ってることを自覚しております。

 

「いやぁ、ごめんごめん。ついつい本音が漏れちゃって」

 

「本音なのか!?やっぱり本音なのか!?お前はなに親友の彼女寝取る計画立ててくれてるんだよ!」

 

「いやいや、いいじゃん。計画してるだけで実行に移すつもりないんだから。というかさ・・・・・・俺に告ってきた子に下心満載で言い寄ってたお前が言うことかァァァァ!」

 

「逆ギレすんな!というかあれはお前が振った直後だからいいだろ!セーフだろセーフ!断固として無罪を主張する!」

 

「振ってねぇよ!ちょっと考えさせてくれって言っただけだろうが!お前がその後言い寄っておっぱいおっぱい連呼するからあの子離れて行ったんだぞ!ある意味寝取るよりタチわりぃぞ!」

 

「連呼してない!ただサブリミナル効果を狙って会話の最中に小声で何度か呟いただけだ!それなのにあの子すっごい蔑むような目で俺を見ながら最低って言って・・・・」

 

「妥当な言動だよ!こえぇよ!そんなことすれば大抵の女の子離れていくに決まってるだろ!」

 

「お前に告るような子だから大丈夫だと思ったんだよ!だいたいお前はな・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあはあ・・・・・な、なあ朧。私達朝っぱらから・・・・住宅地のド真ん中で何を言い争ってたんだ?」

 

「はあはあ・・・・し、知らねえよ。つか・・・・息が・・・・苦し・・・・」

 

言い争いをはじめてから1時間後、俺とイッセーは近くの公園のベンチに座って息を整えていた。

 

なぜわざわざ公園でそんなことをしてるかって?ご近所さんに注意された挙句通報されそうになったからだけどなにか?全力疾走で逃げてきたんだけど問題ある?

 

いや、まあ途中からお互いのフェチについて熱く語り合っていたから仕方ないといえば仕方ない・・・・・だが解せないという気持ちもある。

 

「朧・・・・・ありがとな」

 

「あ?何が?」

 

「あれ・・・・私を元気づけるためにわざと言ったんだろ?」

 

「・・・・バーカ。俺がそんなに器量のいいこと出来ると思うか?」

 

「思う。朧は頭いいしなんだかんだ優しいし」

 

微笑み浮かべながらそんなこと言ってくんなよ。嬉しいじゃねえか。

 

「・・・・・・そう思いたければ思っておけ」

 

と言いながら罪悪感が半端ない。寝取る云々の話半分本当だし。計画してはないけど寝取りたいなぁとは思っちゃってたし。

 

・・・・うわ。俺マジ最低だ。とりあえず話題変えて少しでもダメージを軽減せねば。

 

「というかイッセーよ。もうとっくに授業始めてしまってるんだが・・・・どうする?遅刻以外何者でもないけど学校行くか?」

 

「いや、もう学校は午後から出ればいいだろ」

 

ん?こいつがこんなこと言うなんて珍しいな。

 

「勉強嫌いなくせに授業は一応真面目に出てるお前がそんなこと言うなんて・・・・・やっぱり引きずってるのか?」

 

「いや、そういうわけじじゃないんだけど・・・・・どうにも体の調子が悪くてさ。テンションがなかなか上がらないというか・・・・・太陽の日差しが刺すように痛く感じるし」

 

・・・・なんだと?元気の良さが取り柄の一つのイッセーが・・・・・体調不良?

 

まさか・・・・

 

「イッセーまさかお前・・・・・今日は女の子の・・・・」

 

パシンッと、イッセーの手が俺の頭を叩いた。

 

「なあ朧・・・・私自分でも普段から恥じらいはないし下品だし女としての意識は薄いって自覚してるけど・・・・それはいっちゃダメだと思うんだぁ」

 

「ごめんイッセー。謝るから許して」

 

イッセー・・・・今まで見た中で一番怖い顔してる。顔笑ってたのに目が笑ってないっていう表情生まれて初めて見た。

 

でも女の子の日じゃないとなると・・・・やっぱりそうだよな

 

思わず目を背けてしまったけど・・・・・イッセーは殺気夕麻ちゃんに殺されたと言っていた。

 

そしてそれは十中八九実際にあったこと・・・・では今俺の目の前にいるイッセーはなんなのか?

 

俺は・・・・・それに心当たりがあった。

 

殺されたのに生きていて・・・・太陽の光を嫌がるとなると・・・・一つしかない。

 

「でもまあ、太陽の光が刺すように痛いだなんて・・・・・まるで悪魔みたいだな」

 

「朧・・・・・いくらなんでも親友を悪魔呼ばわりはひどくないか?」

 

「悪い悪い。あくまでもまるでだよ。悪魔だけに」

 

「・・・・そのギャグは寒いぞ?」

 

「大丈夫。自覚してるから」

 

「いや、自覚してればいいというものでもないと思うが・・・・というか前の先輩の件といい悪魔を引き合いに出すの好きだよなぁ」

 

「いやいや、そんなことはないぞ・・・・・悪魔自体はどっちかというと嫌いだ」

 

これは本当のことだ。

 

悪魔は・・・・・俺の人生を狂わせた原因の一旦だからな。

 

「・・・・じゃあその嫌いだっていう悪魔に例えられた私は・・・・」

 

「ごめん。本当にごめん。深い意味はないんだ。マジでごめん」

 

俺は思わず土下座して謝った。

 

・・・・・この程度のことに気が回らないなんてな。どうやらよほど余裕がないようだ。

 

「いや、まあいいけどさ・・・・それより日陰行っていいか?やっぱ辛い」

 

「ああいいよ。肩貸そうか?」

 

「頼む」

 

俺はイッセーに肩を貸して、近くの木陰に移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おそらく間違いないだろうな。今ここにいるイッセーは・・・・・転生悪魔だ。昨日の夜夕麻ちゃんに・・・・堕天使に殺されてイッセーは悪魔になってしまったのだろう

 

誰が転生させたのだろうか?このあたりで有力な悪魔・・・・やはりグレモリーかシトリーだろうか?いや、それはいっそどちらでもいい。

 

問題は・・・・・イッセーが悪魔になってしまったということ。俺の親友が・・・・悪魔に・・・・

 

正直・・・・悲しいし辛い。イッセーが悪魔の世界に足を踏み入れてしまったことが・・・・・残念でならない。

 

だけど・・・・・だけどそれ以上に・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・俺の心は喜びに震えてしまっていた

 

イッセーを殺した堕天使・・・・偽名だろうが夕麻ちゃんは初めからイッセーを殺すために近づいたんだろう

 

つまり夕麻ちゃんはイッセーに好意を抱いているわけじゃない

 

つまり・・・・・夕麻ちゃんを手に入れるチャンスがあるということだ

 

イッセーを殺したことは許せない。その点に関しては嫌いだし、必ず復讐してやろうとも思う

 

だけどその後は・・・・その後は・・・・・

 

彼女を俺のものにして・・・・・彼女を愛でてしまおう

 

たとえこれがどんなに愚かで、非道な想いだろうと構わない

 

俺は彼女に・・・・・・心を奪われてしまったのだから

 

彼女が欲しいから

 

だから必ず・・・・・手にしてみせる

 

美しい黒髪の堕天使を・・・・・この手に




夕麻・・・・正しくはレイナーレが人間ではなく、イッセーとの関係も終わったものだと知った瞬間これである

やはり朧は中々にひねくれてるといいますか・・・・歪んでおります

それでは次回もまたお楽しみに!


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第5話

今回はオリキャラが登場します

なんというか破天荒な人です・・・・・いや、人じゃないけど

それでは本編どうぞ


「さて・・・・どうするかな」

 

俺は自宅で夕食を食べながら今後の事を考えていた。

 

堕天使の夕麻(仮名)を手に入れると決めたはいいが・・・・その手段、方法をまず考えないとなぁ。

 

彼女の目的はイッセーを殺すこと・・・・・であるのなら、たとえ一度殺そうとも悪魔として転生したイッセーを再び殺そうと画策する可能性は十分にあるし、まだこの街に滞在している可能性もゼロではない。

 

となるとやっぱり彼女を探さないとなぁ・・・・ただ問題は彼女に指示を出したものがいるかどうかだ。上位の堕天使の指示を受けてイッセーを殺したとなると・・・・・俺のやろうとすることは堕天使勢と敵対することになる。

 

そこらの堕天使風情なら負ける気はしない・・・・むしろ過去の精算ができる可能性があるから望むところだ。というかマジでコカビエル辺りはぶっ殺したいし。

 

でもそれ以外、アザゼルとかシェムハザあたりとことを構えるとなると・・・・いや、その辺りはまだマシか。戦うことになっても最悪死ぬことはない。だが、あいつ・・・・・白龍皇とやりあうとなると・・・・まあ死ねるよな。あいつとは相性悪すぎる。

 

だからまあ、軽率にことを進ませられないんだよなぁ。

 

「・・・・どうしよう」

 

『ふふふっ・・・・随分と弱気ですね朧』

 

俺の呟きに愉快そうに答えるものが一人。

 

この部屋・・・・・もっと言えばこの家には現在俺一人しか住んでいない。保護者がいないわけではないけれど、あの人は今・・・・・どこにいるんだろうなぁ。まあ、どこかで元気に服を脱いでいるのだろうけども。

 

ともかく、俺しかいないこの空間で聞こえてきたこの声。その声の持ち主はあいつしかいない・・・・俺の中、正確には神器の中にいるあいつしか。

 

「随分と嬉しそうに言ってくれるじゃないかラ・ムー」

 

『ええ。弱気なあなたを見るのは愉しいわよ。でもその呼ばれ方は好きではありません。私のことはラムと呼んでくださいと言ってるでしょう?』

 

その名前は電撃ビリビリカマして空を飛べる角の生えた美少女にしか許されない気がするが・・・・うん、まあいいか。

 

ラムと名乗ったこの・・・・女?うん、まあ本人は女がいいとか言ってたから女でいいか。ともかくこいつは俺の神器に宿た存在だ。それも相当に特殊な存在だ。

 

まあ、それは今は置いておくとして・・・・

 

「ラム・・・・お前は仮にも俺の相棒だろ?その言い草はどうかと思うぞ?」

 

『ごめんなさい。でもこればかりは性格的なものだから諦めて頂戴。私達ももう十年以上の付き合いなのだから・・・・・理解はしてくれるでしょう?』

 

・・・・・本当にこいついい性格してるよ。我欲を満たすことにご執心なところは俺に似てるなぁ。

 

だから気に入らなくて・・・・・大好きなんだ。

 

「それはそうと、相棒なんだからお前からも何か案出してくれよ」

 

『いいわよ。面白そうだし』

 

「・・・・・面白くなさそうだったらどうしてた?」

 

『無視を決め込んでいたわね』

 

・・・・・だろうとは思ったけどさ。

 

『でも案といっても大したものは出せないと思うわよ?せいぜいが情報収集と様子見をしろってところかしら』

 

「・・・・やっぱりそれしかないか?」

 

『ええ。そもそもあなたお気に入りの堕天使ちゃんの居所さえ掴めていないのよ?そんな状態で手に入れるもなにもあったものではないでしょう?』

 

言ってることはもっともすぎるほどにもっともだ。なににせよまずは彼女の居所を掴むところから始めなければならない。やはり街中を歩き回って探さないといけないのだろう。

 

『まあ、見つかったといってもすぐに行動を起こす訳にもいかないけれどね。アザゼルはともかく白龍皇と戦いになるのは避けたいし。あれの能力はあなたとはあまりにも相性が悪すぎるわ。あなたが消えるのは私としても本意じゃない』

 

「心配してくれてるのか?」

 

『当然よ。かつての私の所有者達・・・・国の英雄やらトップやらもいたけれどあなたはそのどれと比べても面白い。何より私の力を使いこなしてくれている。私にとって最高に愉しい相棒がみすみす消させるのは嫌だわ』

 

「それ言ったら・・・・俺がやろうとしてることも俺の時間を縮めることになるのだがそれはどうなんだよ?」

 

そう・・・・・俺があの堕天使を手に入れるためにやろうとしてることはいわば外法・・・・俺に残された僅かな時間をさらに縮めることとなる。

 

『それについてはまあ残念ではありますが・・・・それもまた一興。あなたが覚悟をもって決めたことならば文句など言いません。何より楽しそうです』

 

絶対最後の一番重要なんだろうなぁ。でもなんだかんだ自分が乗れるときは物分りいいし、俺に手を貸してくれるし・・・・

 

「本当、お前がリアルにいたらハーレムに誘うんだけどなぁ」

 

『それは本当にやめてくださいお願いします』

 

そんなに嫌なのかよ・・・・・まあいいけどさ。

 

『ともかく今は情報収集をメインにして活動しましょう。実際にことを起こすのは様子を見てから。それに・・・・・その堕天使の事以外にも気にかけるべきことはあるでしょ?』

 

「・・・・イッセーか」

 

『ええ。彼女は悪魔と化してしまった。そうなればもう平穏とはかけ離れた生活を送らざるを得なくなる。今は放置されているけれど、いずれ彼女を転生させた悪魔は接触することになるでしょうね』

 

「だろうな。おそらくはグレモリーかシトリー・・・・どっちも現魔王を輩出した名家で学園にいるのはその妹達だ。悪魔としての格は信頼に値するが・・・・それでも安全の保証は確立されていない」

 

悪魔になってしまったからには、命の危険にさらされることも少なくない・・・・親友がそんな目に会うのは俺としてもあまり気持ちのいいものではないな。

 

となると・・・・・そっちの方も腹括らないとな。

 

『あなたも悪魔の世界に足を踏み入れるの?あんなに憎んでいた悪魔の世界に』

 

「・・・・今だって正直好きではない。だが、悪魔の全部が全部ああいうやつとは限らんだろ。しばらくは様子見するが近いうちに接触する。イッセーをフォローしたいからな」

 

『・・・・あなたが堕天使をものにしようとしてることがバレたらどうなっちゃうかしらね』

 

「本当に楽しそうに言うよな・・・・」

 

こいつに実体があったのなら絶対に愉悦で笑みを浮かべながら震えていただろう。

 

『まあ冗談はともかくバレたらまずいことになるのは確実ね。あなたがイッセーちゃんの主人である悪魔と関わることを前提とするならば』

 

「だろうなぁ・・・・悪魔と堕天使、そして天使は現在三すくみ状態。それを刺激するような事は俺としても本意ではない」

 

『そこで一つ提案があるのだけれど』

 

「提案だと?」

 

『そう。堕天使ちゃんの事をうまく誤魔化せて且つ悪魔達を必要以上刺激しない方法・・・・・悪魔達やイッセーちゃんの目の前で殺せばいいのよ』

 

・・・・ああ、なるほど。そういうことか。

 

「確かにいい手ではあるな。悪魔達の目の前で殺せば誤魔化しは効くしその後も展開次第では必要以上に気を揉む必要はなくなる。問題はそうそう都合よく行くかどうかだが・・・・」

 

『それは状況を見て臨機応変にですよ。機会を伺うの。早くいちゃねちょしたいからってはやっちゃ駄目よ?』

 

「かといって様子を見すぎて手遅れも勘弁だけどな・・・・まあ何とかするさ」

 

『せいぜい頑張りなさい。とりあえずやることを整理してみましょう』

 

「整理?何のためにだ」

 

『読者のためよ』

 

メタいこと言うなよ。というかこの小説そういうの許されるの?大丈夫なの?

 

・・・・・まあ、晒されてるということは大丈夫だということなのだろうが。

 

「整理するとまずは夕麻ちゃん(仮名)については情報収集して居所、状況を把握する。そしてその上で機会を伺って悪魔達の目の前で殺して確保する。悪魔達の方はできればその時接触して可能な限り信じさせる。うまく悪魔達に取り入ってイッセーのフォローをするためにな」

 

『あら、整理してみると大変ねそう』

 

「人ごとみたいに言いやがって・・・・・」

 

『実際行動を起こすのはあなたで私にとってはほぼ人ごとですもの』

 

「さいですか・・・・」

 

でも本当にラムの言うとおり大変だよな・・・・・全部都合よくいったとしたら俺はよほどの幸運の持ち主・・・・いや、上手くいったら残り時間を削ることになるんだ。ある意味よほどの不運の持ち主だといったほうがいいだろうな。

 

「そんなになってまであの堕天使を欲するなんて我ながら病んでいるな」

 

『何を今更。それよりも私としては気になることがあります』

 

「なんだよ?」

 

『ドライグはもうイッセーちゃんとコンタクトしたかしら?』

 

「どうだろうな?イッセーは自分の神器のことを知らなかったからなぁ・・・・まあ、悪魔になったからにはそのうち否応なしに接触するとは思うが・・・・」

 

『ふふふっ、赤龍帝が覚醒すればまた白龍皇と面白いものを見せてくれるのかしら・・・・楽しみだわぁ』

 

・・・・・そういやこいつ楽しそうだからって理由で二天龍の戦いを煽りまくってやがったんだっけな。本当にロクでもない・・・・

 

「というかお前、愉しむのはいいけどバレないように引っ込んでろよ?」

 

『あら?どうして?』

 

「面倒になるのが目に見えてる。そうでなくてもアザゼルや白龍皇に知られたとき厄介なことになったんだぞ?白龍皇には半分にさせれるし・・・・・・」

 

相性が悪いってあの時ようやく気がついたんだよな・・・・・まともな戦闘になればマジで消される。

 

『そう・・・・まあ、仕方がないわ。それじゃあ時がくるまでは言わないでおいてあげるわ。それまでせいぜい私を楽しませてね』

 

「ものわかりよくて助かるよ・・・・・さて、それじゃあ明日から頑張りますか」

 

『ふふっ、意気込むのもいいけど・・・・・・ご飯冷めてるわよ?』

 

「あ・・・・」

 

くっそ、冷めた飯あまり好きじゃないのに・・・・・というかラムの奴わかってて黙ってやがったな。

 

本当いい性格してるよ・・・・俺の相棒のドラゴンさんは。




朧とラムの会話についてよく意味がわからないと思うかもしれませんがそれは今後徐々に判明していきます

ラ・ムーもとい、ラムのことも含めて・・・・ね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第6話

メインヒロインであるレイナーレが全然登場しない・・・・・

ま、まあそのうち出るのでしばしお待ちを・・・・

それでは本編どうぞ


夕麻ちゃん(仮名)を手に入れようと決めてから数日、情報収集はまずまず順調だといえる。

 

彼女がまだこの街にいることを実際にこの目で見て確認することができたし、他にも彼女以外の堕天使が数人この街に来ていること、そして街の廃教会を拠点にしていることも把握できた。残念ながら彼女達の目的は未だわかっていないが・・・・それもおそらくは時間の問題であろう。

 

ただ・・・・今俺は別の問題に直面している。というのも、イッセーの様子がおかしいのだ。

 

「なあ朧・・・・」

 

「なんだイッセー?」

 

「・・・・・ごめん、やっぱ何でもない」

 

またか。登校してから放課後の今まで・・・・これで4回目だ。

 

神妙な面持ちで俺に声をかけてきて、どうしたか尋ねるとなんでもないと返される。こんなことこれまでの付き合いで初めてだ。

 

ただまあ・・・・・なんとなくだが検討はつく。おそらくイッセーは・・・・気がついたのであろう。自分が悪魔に転生してしまったことに。

 

堕天使に接触したのか、はたまたイッセーの神器に宿った例のドラゴンに聞いたのか、それともイッセーの主たる悪魔にとうとう告げられたのか・・・・あるいは別の要因か。ともかく何らかの理由で自分が悪魔であることを自覚したのだと思う。そしてこの態度は・・・・・それを俺に告げるかどうか迷っているのだろう。

 

普通ならそんなこと告げるべきではないだろう。主である悪魔の立場を危うくさせる可能性もあるからな。だが・・・・それでも俺に告げようとするのはおそらく俺がイッセーの親友だから。

 

それでこうして迷ってくれている・・・・・まあ、俺の考えすぎの可能性もあるがそうだとしたら嬉しいものだな。

 

だが・・・・あんまり思いつめた顔をされても困る。これは俺の好きなイッセーではないからな。

 

だからまあ・・・・・こっちから言ってやるのがいいだろう。

 

「イッセー、なにか俺に隠し事か?」

 

「!?ど、どうして・・・・」

 

「どうしてわかったって?4回も声をかけられてどうしたって尋ねても何でもないって返されれば簡単に察せるに決まってるだろ?」

 

「うっ・・・・」

 

俺の指摘に思わずたじろぐイッセー・・・・・こう言ってはなんだがやはりイッセーは少々頭がよろしくないな。まあ、そういうところも気に入ってるのだが。

 

「イッセー・・・・・別に無理して言うことないんだぞ?」

 

「えっ?」

 

「俺とお前は親友同士だ。俺にとってイッセーは唯一無二の友達だし俺の自意識過剰でなければイッセーにとっての俺もそのはずだ」

 

「・・・・うん。それは間違いない」

 

おおう・・・・・恥ずかしいこといった自覚はあるし実際結構恥ずかしかったけど、間違いないって返されるとさらに恥ずかしいな・・・・・それ以上に嬉しく思うが。

 

「だがな、親友だからなんでも包み隠さず話すって考えは正しくないと俺は思う。誰にだって知られたくないこと・・・・・それこそ墓場にまで持っていきたい秘密や隠し事はあってもおかしくない。もちろんイッセーも例外ではないと思っている。例えば更衣室や銭湯で見かけた理想のおっぱいをもった女の人の事を思って自分を慰めていたり、夜な夜なおっぱい的な儀式にふけっていたり・・・・」

 

「お前は私をなんだと思ってるんだ!確かにどっちもやったことはあるけども!」

 

・・・・え?どっちもあるの?前者はともかく後者は完全に冗談だぞ?なんだよおっぱい的な儀式って。切り出したの俺だけどわけがわからないですよイッセーさん?しかも暴露したってことはそれイッセー的に隠し事にならないの?

 

「まあともかく・・・・人には何らかの秘密や隠し事があって当然。それを教える教えないのはお前の自由だが・・・・別にそれを教えてくれようがくれまいが俺のお前に対する印象やら友情がマイナス方面に働くことはない。俺の心の中の黒髪神やうなじ神やくびれ神や鎖骨神に誓ってもいい」

 

「朧・・・・・」

 

「だから・・・・言いたくなければ言わなければいい。な?」

 

俺はイッセーの頭を撫でながら言う。すると、イッセーの表情は目に見えて明るくなった。

 

「・・・・ありがとう朧」

 

「別に礼を言うほどのことでもないが・・・・ま、どういたしましてだな」

 

これで大丈夫そうだな・・・・よかった。

 

でも・・・・ごめんなイッセー。お前が隠したい事実・・・・お前が悪魔であるということは俺はもうすでに知ってしまっている。そして俺がそれを知っているとお前がわかるまでおそらくそう時間はかからないだろう。

 

だけど、それまでは・・・・・何も知らない親友を演じさせてもらう。

 

さらに言うなら俺はイッセー以上に秘密や隠し事が多いしな。

 

罪悪感は多少あるが・・・・・それでも話すわけにはいかない。少なくとも今はな。

 

「ところで朧、さっき言ってた黒髪神やらうなじ神やらってなんだよ?」

 

「イッセー・・・・・俺の心の中には理想の黒髪やうなじ、くびれ、鎖骨を持つ女神様がいるんだよ。俺はそれを崇拝している・・・・それだけだ」

 

「そ、そうか・・・・・」

 

「おいイッセー・・・・お前何引いてやがる?どうせお前の中にもおっぱい神はいるんだろ?というかお前ほどのおっぱい星人の心の中におっぱい神がいないはずない」

 

「私をなんだと思ってるんだ・・・・・・まあいるけど」

 

お前最後にぼそっと言ったの聞こえてんぞ。やっぱりいるんじゃねえか。

 

それをイッセーに突っ込んでやろうとした瞬間・・・・声をかける人物がいた。

 

「やあ、ちょっと失礼」

 

俺とイッセーは声をかけてきた人物を見る。

 

そこにいたのはイケメンフェイスに爽やかな笑顔。全身から漂うモテオーラ・・・・同学年の、いや、学園一の美男子、木場祐斗であった。

 

正直イケメン度は俺より上だろう・・・・まあ、別に悔しくないけどね。ただ一回くらいもげないかなと思ったことはあるけど。

 

だが、こいつがここに来たとなると・・・・

 

「・・・・なんのよう?」

 

イッセーはジト目で木場に尋ねた。相変わらず女の子の癖に徹底したイケメン嫌いだなコイツは・・・・別に構わんが。

 

「リアス・グレモリー先輩の使いできたんだ」

 

その言葉を聞いた瞬間、イッセーは目を見開いた。完全に心当たりがあるのだろう。

 

かく言う俺も・・・・合点がいった。木場が来た時点でそうなんだろうなと思っていたが・・・・やはりイッセーを悪魔に転生させたのはリアス・グレモリーか。

 

・・・・正直少し安心したな。シトリーでも悪い目には合わないからいいと思っていたが、グレモリーは悪魔の中でも一際愛情深い一族だ。そのグレモリーの眷属になれたのならば・・・・それなりの幸せは約束されているだろう。

 

「・・・・私はどうしたらいい?」

 

「僕についてきて欲しい」

 

イッセーの問いかけに木場がそう答えた瞬間、教室内は女子の悲鳴に包まれた。

 

やれ、どうして木場くんが兵藤なんかをだとか

 

やれ、木場くんが汚れてしまうだとか

 

やれ、兵藤じゃ木場と釣り合うはずがないだとか

 

やれ、木場×兵藤なんてカップリング許せないだとか

 

・・・・・お前ら木場に気があるのはわかるが言いたい放題だなおい。

 

というか別にいいだろ・・・・イッセーは確かに性格というか性癖がかなりアレだが見た目はクラスどころか学年の中でもトップクラスといっていいほどの美少女だぞ?本人はコンプレックスにしてるけどおっぱい大きいんだぞ?正直木場とだって十分に釣り合ってると言っても過言じゃないんだぞ?

 

・・・・いや、最後のは撤回する。木場にイッセーは勿体無い。木場×兵藤なんてカップリング俺も許さん。もしも本当にそうなりそうになったら木場のをもいでやる。イッセーは絶対に嫁にやらんぞ。

 

『嫁にやらんって・・・・あなたイッセーちゃんのお父さんでもなんでもないじゃない』

 

うっせーよラム!てめぇ今まで静観してたくせにこういう時だけ突っ込んで来んな!そして父親だとかそんなの関係ない!イッセーを娶りたいなら最低でも俺を圧倒できるぐらい強くなきゃダメだ!認めない!

 

『じゃあ白龍皇なら認めるの?』

 

冗談じゃねぇ!あんなバトルジャンキーにイッセーはやらん!それだけは何があっても嫌だ!たとえイッセーが惚れても全力でくっつくの阻止してやる!

 

『あなためちゃくちゃね・・・・面白いからいいけど。それよりもイッセーちゃんが見てるわよ?』

 

ラムの言うとおり、イッセーがチラチラとこっちを見ている。どうやら俺に遠慮しているようだ。仕方ないな。

 

「俺のことは気にしなくてもいいから行きな」

 

「朧・・・・ありがとう」

 

「ただまあ・・・・木場、一つお前に言っておく」

 

「なんだい?」

 

まさか自分に振られるとは思わなかったようで、木場は驚いた様子を見せながらも返事を返してきた。

 

「一応言っておくけど・・・・・イッセーに変なことするなよ?絶対にするなよ?したら・・・・くけけけけけ」

 

「あははははは・・・・・肝に銘じておくよ」

 

何をするかは明言していないが、それでも嫌な予感はしたようで顔色を悪くする木場。

 

木場・・・・何を想像したか知らんが多分それ以上に悍ましいことになるからな。

 

「それじゃあ行こうか」

 

「わかった。またな朧」

 

「ああ。また明日」

 

俺と挨拶を交わした後、イッセーは木場のあとについて教室を出て行った。

 

・・・・さて、俺も行くか。

 

『こっそり潜り込んで話を聞くつもり?』

 

さすがラム、鋭いな。なにか堕天使どもの情報について聞けるかもしれないし・・・・何よりイッセーがちゃんと馴染めるかどうか心配だからな。

 

『さっきのことといいあなたまるでイッセーちゃんの保護者ね・・・・それより潜り込むのはいいけど見つからないように気をつけなさいよ?』

 

大丈夫だよ。そんなヘマはしない。俺には・・・・お前の力があるんだからな。

 

『・・・・そこまで買ってくれるなんて相棒として嬉しいわね。ありがとう』

 

どういたしまして。

 

さて、それじゃあ・・・・・色々と聞かせてもらいますよ。グレモリーさんとその眷属さん達。

 

 




朧の秘密、隠し事はかなり多いです

まあ、隠しておかないと色々と面倒ですからね・・・・それでもいずれは判明しますが

それでは次回もお楽しみに!


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第7話

今回は主にイッセー視点となります

内容としては原作に近いところもありますがオリジナル要素もありますのでどうかお楽しみに・・・・

それでは本編どうぞ


こんにちは、兵藤一誠です・・・・って、私は一体誰に自己紹介しているのだろう?

 

まあいいや。今私は学園一のイケメンと評される木場祐斗のあとをついて歩いている。理由はリアス・グレモリー先輩に会いにいくためにだ。

 

リアス・グレモリー・・・・・どうやら彼女は悪魔らしい。ついでに言うと私も悪魔らしい。

 

・・・・うん、これ普通に考えれば頭おかしいって思われても仕方がないというのはわかってる。というかぶっちゃけ頭がおかしい程度で済めばいいんだけどね。だけどどうやらそれは本当のことであるようだ・・・・昨日、そして今朝の出来事でそれを思い知らされた。

 

今朝・・・・ああ、先輩のおっぱい綺麗だったなぁ。大きかったなぁ。触りたかったなぁ。

 

「兵藤さん、よだれが」

 

「はっ!?」

 

し、しまった・・・・今朝見た先輩のおっぱいのことを思い出して思わずよだれが出てしまうとは・・・・ち、違う!私が悪いんじゃない!先輩のおっぱいが素晴らしすぎるからいけないんだ!

 

・・・・嘘ですごめんなさい。先輩のおっぱいは悪くありません。というかおっぱいが悪であるはずがない。

 

おっぱいは正義!ジークおっぱい!

 

・・・・・私疲れてるのかな?こんなこと考えるなんて・・・・あ、違うや。これ普段通りだったわ。

 

ま、まあそれはともかくとして・・・・

 

「なあ、どこまで連れて行くんだ?」

 

私はよだれを拭って木場に尋ねてみる。

 

一度校舎をでてその次にはいったのはまさかの旧校舎。外観は古いけどなぜか中は小奇麗でガラスとかも見る限り一枚も割れていない・・・・・手入れされているのか?それにしても一体こいつは私をどこに連れて行こうというのか。

 

「もう着くよ・・・・・ここだ」

 

そう言ってとある教室の前に止まる木場。その教室の戸には・・・・『オカルト研究部』という文字の書かれたプレートがついていた。

 

「オカルト・・・・研究部?」

 

一瞬ポカンとしてしまった私は悪くないと思う。なぜに先輩に会いに来てオカルト研究部?

 

私が疑問を抱いているのをよそに、木場は扉の前に立って口を開く。

 

「部長、連れてきました」

 

確認を取ると中から「ええ、入ってちょうだい」と声が聞こえてくる。どうやら先輩はなかにいるようだ。というか部長って・・・・あれか?先輩はオカルト研究部の部長ってことか?

 

木場が戸を開けて、私もそれに続いて部屋に入る。

 

そこで・・・・私は違和感というには些細な何かを感じ取った。

 

「・・・・あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「・・・・いや、何でもない」

 

気になった木場が声をかけるが、私は何でもないと返事を返す。

 

ま、まあ実際本当に何でもないと思うし・・・・なんか私の後ろから誰かが部屋に入ってきたような気がしたけど多分気のせいだ。だって私の後ろには誰もいなかったんだから。

 

そんなことよりも、この部屋・・・・・さすがはオカルト研究部って感じだな。天井や壁、床に至るまでなんか形容し難い面妖な文字が書かれているし、奇妙な置物とかが置いてあるし。

 

私もおっぱい儀式をしたときに似たような文字やらアイテムやら見よう見まねでおいてみたけどここまでわけわからない状態にはなっていないと自信を持って言える。

 

ふと、部屋に備え付けられたソファに目を向けると、そこに一人の少女が座っていた。

 

この少女のことは知っている・・・・・一年の搭城小猫ちゃんだ。

 

ロリ顔で小柄で可愛らしいその容姿からマスコット的な人気を誇っている・・・・かく言う私も彼女の姿を見てはほっこりしている者の一人だ。なぜか朧は複雑そうというか・・・・なんとも言えない表情で見ていたこともあったけど。

 

ちなみに小猫ちゃんをハーレムに入れたいなぁと思ったことも何度もある。胸は慎まやかながらそれでも両手にフィットしそうで感触は良さそうだ。

 

「・・・・食べる?」

 

小猫ちゃんをじっと見つめていたら、先程から黙々と食べていた羊羹の乗ったお皿を私に差し出していた。どうやら食べたいと思われていると誤解されてしまったらしい。

 

「それじゃあいただきます」

 

誤解とはいえ、せっかくの厚意だ。ありがたく羊羹をひと切れつまみ口に運ぶ。

 

うん、程よい甘さで美味しい羊羹だ。どこのだろう・・・・・今度個人的に買いに行きたい。私もこれでも女だから甘いものには目がないのだ。

 

「あ、ごめん、自己紹介が遅れたね。私兵藤一誠」

 

そういあべ自己紹介してなかったことを思い出し、自己紹介すると向こうはぺこりと頭を下げてくれた。

 

・・・・・仕草が一々可愛らしいな。このこやはり可愛い。

 

そういえば先輩はどこだろう?部屋の中には先輩の姿が見当たらない。

 

ただ、部屋の奥・・・・カーテンを隔てた向こう側だろうか?なんかシャワーの音がする・・・・って、およ?なんかカーテンにシャワーを浴びる女の人の姿の陰影が・・・・

 

えっ?まさかこの部屋シャワー付き?いや、それ以前に浴びてるの誰?陰影とは言えすっごく興奮を催すんですけど!

 

陰影越しにもわかるぐらい豊満な胸・・・・あの大きさはおそらく先輩のものだ。今朝この目でまじまじと見たからおそらく正解のはずだ。

 

先輩のおっぱい・・・おっぱい・・・・えへへへへ・・・・

 

「・・・・・いやらしい顔」

 

ポツリとそう呟く声が私の耳にはいる。声のする方へと振り向くと、そこには羊羹と食べている搭城小猫ちゃんの姿。

 

・・・・いやらしくて悪かったね。ごめんよ。だけど仕方がないんだ・・・・・だって私はエロの権化なんだから。

 

「部長、これを」

 

キュッとシャワーを止める音に続いて、先輩とは違う女性の声が聞こえてくる。カーテンの向こうには先輩以外の誰かがいるようだ。

 

「ありがとう朱乃」

 

どうやら先輩は着替えているらしい・・・・ということは女性が渡したのは服なのだろう。

 

着替えをする先輩・・・・・い、いかん。油断するとその光景が目に浮かんできそうだ。またいやらしい顔をしていると言われかねんぞ。まあ、それは今更ではあるが・・・・・

 

シャー、という音と共にカーテンが開かれる。そこにいたのは制服姿の先輩だった。

 

濡れたままの美しい紅の髪がなんとも艶っぽい・・・・ああ、綺麗だなぁ。

 

先輩に見とれていると、その後ろにもう一人の女性がいることに気がつく・・・・って、やや!?あのお方は・・・姫島朱乃先輩ではないか!

 

絶滅危惧種に指定されているポニーテール所有者であり、いつも笑顔を絶やさない気品あふれる大和撫子。リアス先輩と併せて学園の二大お姉様として有名な姫島朱乃先輩。

 

ま、まさかこのようなところでまみえることになろうとは・・・・

 

「あらあら、はじめまして。姫島朱乃と申します。どうぞ以後お見知りおきを」

 

ニコニコ顔で丁寧に挨拶される・・・・・うっとりしてしまいそうな声だ。

 

「こ、ここここちらこそ!えっと・・・・兵藤一誠です!その・・・・よろしくお願いします!」

 

感激のあまりキョドりまくってしまった私は悪くないはずだ。だってそれだけの衝撃だったんだもの。

 

その光景を見て、うんと頷いたあとリアス先輩が口を開く。

 

「これで全員揃ったわね。兵藤一誠くん、いえ、イッセー」

 

「は、はい・・・」

 

「私達オカルト研究部は貴女を歓迎します」

 

「ど、どうも・・・・」

 

「悪魔としてね」

 

・・・・・これが、私とオカルト研究部面々とのファーストコンタクトであった。

 

この時、私は自分がトンデモない状況に立たされているなど思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

「大丈夫イッセー?」

 

「す、すみません部長・・・・あまりの事態に少し処理落ちしてました」

 

色々と話を聞かされ・・・・一喜一憂して疲れ果てた私はぼんやりとしてしまっていた。

 

話を要約すると、このオカルト研究部のメンバーは全員悪魔であるらしい。リアス先輩、もとい部長が主であり、他のメンバーは全員眷属・・・・そして、私もその眷属の悪魔の一人となってしまったようだ。

 

事の発端は夕麻ちゃんとデートしたあの日だった。正直夕麻ちゃんの話が切り出された際には、あまり触れられたくなかったということもあり少し不機嫌となってしまったのだが・・・・これがまた大変な話であった。

 

その夕麻ちゃんはなんと堕天使という元々は神に仕えていたけれど、邪な感情を抱いてしまったが故に地獄に落とされた種族の一人らしい。

 

そしてその堕天使である夕麻ちゃんの目的は・・・・神器(セイクリッド・ギア)所有者である私を殺すことだった。

 

神器というのはどうやら一部の人間が宿す規格外の力であり、それは時には悪魔や堕天使にさえ影響を及ぼすことがあるらしい。

 

私にそんな力があるなんて正直信じられず、何かの間違いかと思ったのだが・・・・先輩に言われるがままにしたら私の左腕に凝った装飾のなされた赤い籠手が装着された。どうやらそれが神器らしい・・・・自分が普通の人間ではなかったとわかったときはそれなりにショックだった。まあ今は悪魔なんだけども。

 

ともかく、夕麻ちゃんはそんな神器所有者である私を危険視して、私を殺したようだ。だが、私は生きている。

 

その理由こそが・・・・部長にあった。

 

部長は私がデートの待ち合わせの際に偶然手にとったチラシ・・・・どうやらそのチラシには悪魔を召喚する魔方陣が書かれており、死に瀕した私の『生きたい』という強い思いが部長を呼び寄せてしまったらしい。

 

そして召喚された部長は瀕死の重傷を負った私を見て、救うために・・・・特殊な方法で私を転生させたらしい。部長の下僕たる悪魔として。

 

・・・・あの時は本当にびっくりしたなぁ。部屋の皆の背中からコウモリみたいな黒い翼が出現して・・・・私の背中にも翼がついてたんだもん。びっくりするなってほうが無理でしょ。

 

再度一通り部長と眷属の皆から自己紹介された。ご丁寧に皆悪魔ですって言葉を加えながらだ。

 

そんな状況に頭を抱えそうになった私であるが・・・・部長の一言で私は奮起することとなる。

 

「私のもとに来ればあなたの新たな生き方も華やかなものになるかもしれないわよ?」

 

部長に転生させられた私は部長の下僕として生きていかなければならないらしい。だが、それも悪くない・・・・・どころか、考えようによっては最高であった。

 

なんでも部長が言うにはやりようによってはモテモテな人生が送れるらしいのだ。今は部長の下僕である私も、成果さえ上げれば爵位をもらえ、自分だけの下僕を持てるようになるようだ。

 

つまり・・・つまりだ。それは下僕を私好みの女の子で固め、夢にまで見たハーレムを作ることができるということなのだ!

 

私は稲妻に打たれたかのような衝撃を受けた!これはもうやるしかないと思った!今なら秘蔵のエロ本、AVも捨てられると思ったけどそれとこれとは別問題なので捨てるのは無理!

 

ともかく、私はそんな理由で部長の下僕となることを了承したのだ!全ては我がハーレムの為に!

 

あ、ちなみに余談ではあるがその後のちょっとしたやりとりで彼女を部長と呼ぶこととなった。本当はお姉様と呼びたかったけどどうにも部長は『部長』という呼ばれ方が好きなようだ。

 

とまあ、こんな感じに先程まで一喜一憂していたのだが・・・・流石に疲れてぼんやりとしていたというわけだ。

 

だけど仕方ないじゃないか。今日一日・・・・というよりこの短い時間の中でいろんな情報が頭の中に一気に入ってきたのだから。

 

部長が悪魔で、私も悪魔になってしまった・・・・・このことだけでも普通の人間にとっては正直的すぎる内容だというのにほかにも色々とあったのだ。こんな展開そうは・・・・あれ?

 

なんだろう・・・・なにか引っかかる?一体何が・・・・・

 

『本当に・・・・・・まるで悪魔みたいだ』

 

『でもまあ、太陽の光が刺すように痛いだなんて・・・・・まるで悪魔みたいだな』

 

ッ!?そうだ・・・・何が引っかかっていたかわかった。

 

朧・・・・・・あいつ部長のことを見てまるで悪魔みたいだって言っていた

 

私が部長に悪魔に転生させられた次の日・・・・・その影響で太陽の光に苦しんでいた私を見て朧は悪魔みたいだと言っていた

 

それだけじゃない・・・・・部長の話では夕麻ちゃんは私を殺した後、私の周囲から夕麻ちゃんに関する記憶と記録を消したと言っていたのに・・・・朧は夕麻ちゃんのことを覚えていた。

 

それって・・・・一体どういうことだ?まさか朧は・・・・悪魔の関係者?

 

「どうしたのイッセー?」

 

「え?」

 

「顔色が少し悪いわよ?」

 

どうやら表情に出てしまっていたらしく、部長が心配そうに尋ねてきた。

 

これは・・・・朧のこと部長達に言うべきなのだろうか?もしかして朧のこと何か知っているかもしれない。

 

いや、でも・・・・・偶然だっていう可能性もある。

 

「・・・・いえ、なんでもありません」

 

そういうと、部長は怪訝そうな表情を浮かべながらも、それ以上追求してこなかった。

 

・・・・きっと偶然だ。朧が私と部長のことを悪魔みたいだって言ったのも、夕麻ちゃんのことを覚えていたのも・・・・偶然に決まっている。

 

偶然に決まっている。そうに違いないはずなのに・・・・

 

なのに・・・・なんで?

 

なんで・・・・・こんなに心がざわつくんだろう?

 

どうして・・・・朧のことを疑ってしまうのだろう?

 

一体・・・・どうして?

 

 

 

 

 

 

なあ朧・・・・・お前は普通の人間だよな?

 

私と同じくらいエロくて独自のフェチズムを胸に掲げる・・・・普通の人間だよな?

 

私は・・・・そう信じてる

 

親友である朧のことを・・・・・私は信じてるよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良かったわね朧。イッセーちゃん悪魔としてうまくやっていけそうじゃない』

 

「・・・・ああ」

 

部屋に忍び込んでこっそりと話を聞かせてもらっていた俺は、家に帰ったあとラムと聞いたことについて話していた。

 

ちなみに言葉に出してだ。モノローグでの会話は意外と疲れるから。

 

それはともかくとして、ひとまずイッセーはリアス・グレモリーの眷属として・・・・悪魔としてこれからの人生を謳歌しようとしているようである。

 

・・・・そのことについて文句を言うつもりはない。いや、本当は色々と言いたいことはあるのだが・・・・イッセーの人生だ。俺が過度に口を挟むこともないだろう。それに、グレモリーならまあそこそこ信用はできるし。

 

・・・・どうでもいいけど悪魔の生き方を『人生』というのはいいのだろうか?

 

『随分とくだらないこと考えているわね』

 

「人のモノローグを勝手に読むな。今は言葉を交わして会話してんだろうが」

 

『そう細かいことを気にしないでちょうだい。それよりも・・・・・堕天使ちゃんのことに関してはあまり有意義な情報は得られなかったわね』

 

「そうだな。だがまあ、そこはあまり期待していなかったから構わないさ。目的は主にイッセーだったからな」

 

『本当に過保護ねあなた。親友というよりもはや保護者よ?』

 

「うっせーほっとけ。自覚はしてんだよ」

 

心配したっていいだろうが。悪魔の世界はそれなりに血生臭いんだ。危険な目に遭うことだって多々ある・・・・・あいつが傷つくのは嫌なんだ。

 

『まあ、自覚しているのならいいわ。それよりも・・・・・イッセーちゃん、あなたのこと話さなかったわね。色々と疑わしい発言してたのに。それに気がついてた素振りも見せていたのに』

 

ラムの言うとおりであった。イッセーの奴、明らかに様子おかしかったときあったし・・・・きっとその原因は俺だろう。

 

こんなことになるって知らずにイッセーの前でそれなりに不用意なこと言ってたもんなぁ・・・・・でも、イッセーはそれを言わなかった。

 

それを言わずに・・・・隠していた。

 

「話せば確実にグレモリー達に疑われ、監視をつけられる可能性もあった。いずれ接触するつもりではあったが、今はまだ時期じゃないから監視は勘弁して欲しい・・・・・話さないでくれたイッセーには感謝しかないな」

 

『でも・・・・そのせいでイッセーちゃんの立場が悪くなっちゃったりして~』

 

こいつ・・・・楽しそうに言いやがって。

 

「そうならないように俺がフォローする」

 

『そう。なら安心ね♪』

 

こいつは・・・・・俺以上に食えないな。いや、俺の性格は一部コイツが原因だからある意味当然だけども。

 

『ただ気がかりなのは・・・・神器を発動していたはいいけど、その神器がどういったものなのかは分かっていないようね』

 

「・・・・赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。二天龍の一角、赤龍帝の力をもった神器。絶大な力を誇り、神をも屠ることができるという・・・・・」

 

『ただまあ、知らなければ宝の持ち腐れね。それを知るのがいつになるのか・・・・もっと言えば、彼女が彼の存在に気がつくのはいつになることか・・・・』

 

「・・・・いずれ気がつくだろう。その時イッセーは何を感じ、何を思うか・・・・」

 

『楽しみに♪』

 

・・・・正直俺は少し不安だけどな。

 

まあともかく、イッセーのことはしばらくはグレモリーとその眷属達に任せよう。

 

俺は俺で・・・・やることやらないとな。




察しているとは思いますが朧もオカルト研究部の部室にいました

誰も気がつかなかったのは・・・・朧が神器を使っていたからです

神器の能力についてはいずれということで

それでは次回もお楽しみに!


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第8話

今回もまだレイナーレとの邂逅とはなりません

もう少しかかりますので・・・・どうかお待ちを

それでは本編どうぞ


夕麻ちゃん(仮名)のことを調査してさらに色々なことがわかった。

 

彼女の本当の名前はレイナーレというらしい。名前も中々俺の好みだ。そしてそのレイナーレはアーシアという俺と同い年ぐらいのシスターに執着しており、連れ回しているらしい。

 

レイナーレがそのシスターに執着する理由は・・・・・・その子が持つ神器だ。どうにも彼女の神器は希少な回復の力を持つらしい。

 

回復・・・・ゲームでは定番の能力であるが、現実的に考えてその効力は敵に回せば恐ろしいものだ。なにせ術者が力尽きない限り、どんなに敵にダメージを与えようが復活して来るんだからな。戦闘において回復ほど恐い能力はない。

 

そしてこれは俺の憶測だが・・・・レイナーレはシスターを飼い殺しにするのではなく、神器を我が物にしようとしている。少し見ただけだがそれでもシスターが純粋な心根の持ち主だということはわかった・・・・・だが、だからこそそういう心根の持ち主は扱いづらいところがある。

 

レイナーレを含む堕天使達は中々に過激な思想をを持っているようだから・・・・あのシスターとは考え方が合わないだろう。だから、シスターの中の神器を取り出そうとしている・・・・と、見ていいだろう。

 

・・・・まいったな。これはタイミング次第ではそのシスターを見殺しにしてしまう可能性がある。できればそれは避けたいのだが・・・・・優先すべきはレイナーレをイッセーや悪魔達の目の前で殺すことだ。高確率で見殺しにしてしまうだろう。

 

これは罪悪感がハンパないな。もし万が一シスターが死ぬことになったら神器を取り返してシスターに返した上でグレモリーに悪魔として転生させてもらえるように誘導してみるか。

 

幸か不幸か、なぜかイッセーはシスターと関わりを持ってしまっているようだからな。高確率で事態に巻き込まれるだろう。

 

・・・・・イッセーも随分と縁を引き寄せるものだ。これもドラゴンの神器を持つ影響だろうか?

 

よし、大まかな計画はこれで確立したな。あとは上手くタイミングを見計らおう。

 

『ふふっ、考えは纏まったようね。それじゃあ・・・・そろそろ現実を向き合いましょうか』

 

・・・・ああ、そうだなラム。これで心おきなく・・・・・目の前のはぐれ悪魔に集中できそうだよ。

 

「死ねぇぇぇぇぇ!」

 

裸の女性の上半身に巨大な獣の下半身を持つ悪魔が、両手にもった槍のような武器で俺を突き殺そうと攻撃を加えて来る。俺はそれをどうにか回避していた。

 

・・・・・勘弁してくれよ。動体視力には自信あるけど俺の身体能力は普通の人間より少し優れている程度なんだぞ?回避し続けるにしたって限度がある。

 

堕天使達の調査をしている時に偶然出会ってしまったこのはぐれ悪魔・・・・・会ったそうそう俺を喰おうとして襲いかかってきた。

 

なんで俺はこうはぐれ悪魔とのエンカウント率が高いんだ・・・・・この街に来てこれで4度目だぞ?なんで悪魔や堕天使や天使が始末する前に俺が出会っちゃうかなぁ・・・・・

 

『それがあなたの縁じゃないかしら?あなただって曲がりなりにもドラゴンの神器の所有者なのだから』

 

嫌な縁もあったものだなおい。つうか俺その縁のおかげで昔あんな目にあったの?

 

『それについてはご愁傷様としか言えないわね』

 

・・・・・マジで勘弁してくれ。

 

『そんなことよりも、考え事が終わったのならいい加減片付けなさい』

 

いや、それでもいいんだけどさぁ・・・・・イッセーがグレモリーの眷属になったじゃん?ならいずれこのはぐれ悪魔の討伐に参加するかもしれないし・・・・・その時色々と勉強になりそうだろ?

 

『過保護もここまで来ると関心を通り越して呆れるわね・・・・・でもね朧?彼女はあなたを殺そうとしているの。ならばあなたの手で殺すことが慈悲であり、責任よ。ちゃんと・・・・手にかけてあげなさい』

 

・・・・・そういうところ律儀だよなお前は。

 

でもまあ・・・・そうだな。コイツはここで俺が殺そう。ここで俺が逃げたら犠牲者が増えるかもしれないし・・・・こいつにこれ以上罪を重ねて欲しくもないしな。

 

「あ~・・・・くっそ。なんか偽善者っぽいこと考えてるなぁ俺。自己嫌悪はんぱねぇ。俺はそういうんじゃねえんだっつの」

 

「さっきからちょこまかと!大人しく私に殺されろ!」

 

「悪いけどそうもいかないんだよ。いや、あんた程度じゃ俺を殺すなんて到底無理なんだけどさ。そもそも俺簡単には死ねない体しちゃってるし」

 

「何をわけのわからないことを!」

 

「ああ、ごめんごめん。わけわかんないよなぁ・・・・でもいいよ、わかんなくて。わかんないまま・・・・死ねばいい」

 

俺は神器(セイクリッド・ギア)を発動する。そして神器によって作らてた双銃を手に持つ。

 

「それは・・・・貴様神器使いか!」

 

「そのとおり。俺は神器使いだ。ご愁傷様はぐれ悪魔さん。俺の神器は少々特殊なんでね・・・・迷い、惑わされ逝くがいい」

 

俺ははぐれ悪魔に銃口を突きつけ・・・・・ありもしない弾丸を撃ち放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・・・これは困ったことになったな」

 

はぐれ悪魔の死体を前にして、頭を抱えていた。

 

いつものようにオカ研の部室前に運ぼうとしたのだが・・・・・コイツはデカすぎる。別に見つからずに運ぶこと自体は容易なんだが、ここまでデカイとそもそもが運ぶ手段がない。

 

『幸いここは町外れよ。そうそう人目につくこともないし・・・・・放置してもいいんじゃない?』

 

「だよなぁ・・・・・」

 

ぶっちゃけ一般人に見つかる可能性はゼロではないが、それでも場所的に考えればこれまでよりは低い。だったらここに放置するか・・・・・きっとそのうちグレモリーかシトリーあたりが見つけてくれるだろう。

 

『そのうち、というよりすぐになりそうよ』

 

「は?」

 

『どうやらこいつを始末しに悪魔さんたちが来たみたい。耳を澄ましてみなさい』

 

ラムの言うとおりだった。よく耳を澄ましてみると話し声が聞こえてくる。声からして・・・・グレモリー達か。案の定イッセーも嫌がる。

 

「タイミング良すぎるだろ・・・・・まあいい。事後処理は任せて退散するか」

 

『そうね。行きましょう』

 

この場の処理をグレモリーに任せ、俺は神器を発動して姿をくらませてその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大公からはぐれ悪魔の討伐を依頼され、町外れの廃屋にやってきた私達。

 

私はまだ新米悪魔だから戦闘を見るために連れてこられたんだけど・・・・・どうやらそうはいかなくなったらしい。

 

「ッ!?これは・・・・」

 

私達の前には・・・・・おそらく討伐目標であるはぐれ悪魔の倒れふす姿があった。

 

「・・・・・死んでる」

 

はぐれ悪魔の生死を確認していた小猫ちゃんが、嫌に重い声色で皆にそう告げた。

 

「死体に外傷は一切ありませんね。部長、これは・・・・・」

 

「ええ、どうやらまた奴の仕業のようね」

 

私を除く全員の表情がこわばるのがわかる。

 

「あの・・・・これって一体どういう事なんですか?」

 

イマイチ事情を飲み込めない私は部長に尋ねてみる。

 

「・・・・一年前からこの街に潜り込んだはぐれ悪魔が私達が手を下す前に殺されるということが何度もあったの。正確にはこれが4件目なのだけれどね」

 

「それがさっき部長の言った『奴』の仕業ということですか?でもどうしてそいつの仕業だってわかるんですか?」

 

普通に考えて殺されてるってだけならその『奴』とかいう仕業だなんてわからないと思うけど・・・・・もしかしたら他の悪魔や天使、堕天使が殺した可能性だってあるし、そもそも同一犯ではない可能性だってある。

 

さっき部長が言っていたけれど、はぐれ悪魔というのはどの勢力も見つけ次第殺すようにしているそうだし。

 

「死体に特徴があるからよ。そいつが殺したはぐれ悪魔は全て一切の外傷がなく殺されているの」

 

「一切の外傷がない?」

 

「ええ。詳しい方法まではわかっていないけれど、奴は一切の外傷なくはぐれ悪魔を殺している。こいつのようにね」

 

部長の視線がはぐれ悪魔の死体に注がれる。

 

その死体は部長の言うように外傷がなかった。ただ、表情だけは苦るしそうに歪んでいる。

 

「・・・・まあ、討伐目的であるのだから殺されたということ自体はいいわ。問題は・・・・誰がこれをやったかということよ」

 

「他の悪魔や天使、堕天使がやったという可能性は?」

 

「他の悪魔がやったと言う可能性はないわね。それなら私の耳に情報が入ってくるはずだから。そして、天使や堕天使の仕業という可能性もゼロよ。なにせ・・・・・これまでの3件、殺されたはぐれ悪魔はオカルト研究部の部室の前に置かれていたんだから」

 

「部室の前に?」

 

「ええ。天使や堕天使だったらわざわざそんなことはしないわ。悪魔の領域に足を踏み入れるなんて愚行としか思えないもの」

 

確かに・・・・天使や堕天使がやったとしたら処理は自分達でするって考えるのが普通だもんな。つまり天使や堕天使の仕業ではない。

 

あれ?でも・・・・

 

「部長、これまでは死体は部室の前に置かれていたんですよね?でも今回は・・・・」

 

「ええ。それは私も気になっていたわ。今回は死体はここに放置されていた。死体の状況から奴の仕業と見て間違いないのだけれどどうして今回は放置されていたのかしら?」

 

顎に手をあて、考え込む仕草をとる部長。

 

そんな部長に、朱乃さんが声をかけた。

 

「部長、その理由はおそらくそうする時間がなかったからだと思いますわ」

 

「どういうこと?」

 

「・・・・・この死体、まだ暖かい」

 

小猫ちゃんの言葉を聞いた瞬間、部長はあたりを見渡した。

 

死体が暖かい・・・・それはつまりこれをやった奴がまだ近くにいて、私達の接近に気がついて逃げ出したということが私でもわかった。

 

部長もそう思ったからあたりを見渡しているのだろう。私も見渡してみるが、それらしい人物の姿は見られない。

 

「・・・・死体の処理は後回しにしましょう。奴を探すわよ。どんな力を持っているかわからないから全員で固まって・・・・十分に警戒をするように」

 

「「「はい」」」

 

部長の命に従い、私達ははぐれ悪魔を殺した犯人を捜索した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捜索を始めて一時間・・・・・それらしい人物を見つけることはできなかった。

 

「・・・・見つかりませんでしたね」

 

「ええ。今回こそ尻尾を掴むチャンスだと思っていたのだけれど・・・・」

 

残念そうに肩をすくめる部長。ほかの皆も苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「あの、部長・・・・見つけてどうするつもりだったんですか?」

 

私は興味本位で部長に聞いてみた。

 

「別に危害を加えるつもりはないわ。ただ何が目的でどうして死体を部室の前においているのか、そしてどうやってはぐれ悪魔を殺しているのか・・・・・それが聞きたかったの」

 

「・・・・それだけですか?」

 

「・・・・まあ、その人物の人柄や能力によっては眷属にスカウトしようとも思っていたけれどね。悪魔の駒にはまだ空きもあるから」

 

部長・・・・意外とたくましい考え方してるんだなぁ。でも、そんなあなたも私は好ましく思います。

 

でもそっか。見つけても特に危害を加えるつもりはないんだ・・・・よかった。

 

・・・・よかった?

 

え?・・・・あれ?どうして私・・・・部長が危害を加える気がないってわかって安心してる?

 

どうして・・・・・あいつの顔が頭に浮かんでる?

 

『一年前からこの街に潜り込んだはぐれ悪魔が私達が手を下す前に殺されるということが何度もあったの』

 

一年前から・・・・あいつは以前言っていた。駒王学園に通うために一年前にこの街に来て暮らし始めたって。

 

『他の悪魔がやったと言う可能性はないわね。それなら私の耳に情報が入ってくるはずだから。そして、天使や堕天使の仕業という可能性もゼロよ』

 

悪魔でも天使でも堕天使でもない・・・・・それはつまり人間の仕業である可能性が高いということ。

 

『これまでの3件、殺されたはぐれ悪魔はオカルト研究部の部室の前に置かれていたんだから』

 

死体はわざわざオカルト研究部の部室の前に置かれていた。目的はわからないけれど、そいつはオカルト研究部のメンバーが悪魔だということを知っているからわざわざ死体をそこに運んでいた。

 

 

・・・・・この条件に当てはまりそうな人物・・・・一人だけ心当たりがある。

 

あくまでも可能性の話で・・・・私の考えが外れているかもしれない。いや、きっと外れている。

 

それでも・・・・どうしてもあいつのことを思わずにはいられない。

 

私にはこのはぐれ悪魔を殺したのが・・・・・朧だと思えてならなかった。




イッセーの朧への疑心は少しづつ深まっていきます

ですがまあ、朧への信頼はそうそうゆるぎませんが

レイナーレとの邂逅はもう少しです

どうかそのときをお楽しみに

それではこれにて失礼します!


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第9話

今回、とうとう朧とレイナーレが邂逅します

どうなるかは・・・・読んでのお楽しみです

それでは本編どうぞ


『とうとうこの時が来たわね』

 

「ああ・・・・そうだな」

 

今夜・・・・レイナーレはとうとうシスターから神器を抜き出す儀式を始める。しかも、イッセーはそれを知って止めようとしている。

 

グレモリーも眷属を一人連れてレイナーレ以外の堕天使と話をしようとしている。堕天使達は独自に動いてるフシがあるから、おそらく消される。それが終わればレイナーレのいるところに姿を現すだろう。

 

・・・・・俺にとってはこの上ない絶好の機会だ。残念なことにシスターが神器を抜き取られ、死ぬのはほぼ確定してしまったが・・・・・やはりそこはグレモリーに悪魔に転生してもらおう。

 

はあ・・・・こうして色々と考えているとやはり俺はこういった暗躍が向いているらしい。性格的にも能力的にも・・・・呆れるぐらいに。

 

だが、まあいいだろう。そのおかげで・・・・もう間もなく理想の女性を手に入れることができるのだから。

 

『さあ、行きなさい朧。行って・・・・あの堕天使をものにしなさい』

 

「・・・・前から思っていたがラムって俺のしようとすること反対しないよな。結構ゲスなことやろうとしてるんだけど?」

 

『反対?するわけないでしょ?だって面白そうだもの』

 

ああ、そうか。そうだよな。お前は自分が面白ければそれでいいもんな。

 

『それに・・・』

 

「それに?」

 

『・・・・・あなたはこれまで十分すぎるほどに苦しい思いをして生きてきた。だったら、少しぐらいいい思いしたっていいと思ったのよ』

 

ラム・・・・・

 

「・・・・ありがとう」

 

『うふふっ・・・・馬鹿ね。お礼なんていらないわよ。私とあなたの仲なんだから』

 

どうやら俺は最高の相棒を持ったらしい・・・・・本当にいい女だよお前は。神器でなければハーレムに勧誘していた。

 

さて、それじゃあ・・・・

 

「行くぜ・・・・相棒」

 

『ええ』

 

俺はレイナーレのいる廃教会へ向かう。

 

全てはレイナーレをこの手につかむために・・・・・レイナーレを愛するために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、嫌だ・・・・死にたくない!やめろ!やめろ!」

 

ボロボロの身体で倒れ、上半身だけ起こして必死に命乞いをするレイナーレ。その目の前には破滅の力を今に放とうとしている部長の姿があった。

 

アーシアを奪還しようと私は木場と小猫ちゃんと共に廃教会に乗り込んだ。

 

だが・・・・結局アーシアを救うことはできなかった。私が到着した時にはアーシアは既に神器を抜き取られたあとだったのだ。

 

目の前でアーシアが死に、激しい激情に駆られた私はアーシアから神器を抜き取った張本人、以前私を殺すために近づいてきた夕麻ちゃん・・・いや、レイナーレに戦いを挑んだ。

 

初めは私が新米悪魔であったということもあり、レイナーレに圧倒されていたけれど・・・・・それでも私は神器の力を解放すること勝利を手にすることができた。

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』・・・・・レイナーレ以外の堕天使達を消し去った後に私達に合流してきた部長が私の神器のことをそう呼んだ。それは神器の中でもレア中のレアであり、『神滅具(ロンギヌス)』と呼ばれる神をも屠る力を得ることができる神器であるらしい。

 

その力を使って私はレイナーレを倒すことができた。そして、今そのレイナーレは部長の手によって滅ぼされようとしている。

 

レイナーレの仲間であったイカれた神父のフリードはレイナーレを見捨てて逃げ出した。先程まで私の彼女だった頃の夕麻ちゃんの声でレイナーレは私に命乞いをしていた。

 

だけど・・・・許すつもりはない。こいつはアーシアを殺したのだから。

 

私は部長にレイナーレを滅ぼすように頼んだ。

 

そして、部長が破滅の力の篭った魔力をレイナーレに放とうとする。

 

その瞬間・・・・

 

「おお、髪だけでなく下着も中々俺好みじゃないか」

 

「「「!?」」」

 

聞こえてくるはずのない声が聞こえてきた。

 

突然のその声に驚いた私達が声のする方へ・・・・レイナーレのすぐ後ろへと視線を向けるとそこには・・・・

 

「やあイッセー。それにグレモリー先輩もこんばんは」

 

そこには・・・・朧がいた。

 

音もなく、気配もなく・・・・まるで先程からずっとそこにいたと言わんばかりの表情で、朧は倒れるレイナーレのすぐ後ろでスカートを摘み上げその中の下着を覗いていた。

 

朧め・・・・なんて羨ましいことを!

 

って、そうじゃなくて!

 

「朧!?どうしてここに!?」

 

「いやぁ、どうしてと言われてもねぇ・・・・話すとそこそこ長くなるんだけど実は・・・・・およ?」

 

朧はレイナーレのスカートの中から視線を逸らさずに事情を説明しようとしたが・・・・それは阻まれてしまった。

 

私達が呆気にとられていた隙にレイナーレはアーシアから奪った神器で自身の傷を治癒し、立ち上がると同時に朧の背後に回り込んで拘束して、首筋に光の槍を突き立てたのだ。

 

「ふふふっ・・・・・あはははははは!愉快だわ!どうやらまだ私はツキに見放されていないみたいね!」

 

形成は一気に逆転してしまった。レイナーレに朧を人質に取られてしまったのだ。

 

「あなたのことは知っているわ現世朧!イッセーくんがデートの時に最高の親友がいるって自慢げに話してくれていたもの!」

 

「へえ、イッセーがそんなことを・・・・嬉しいこと言ってくれるじゃないか」

 

「言ってる場合じゃないだろ!お前今やばい状況だってわかってるのか!?」

 

レイナーレが手にしている光の槍はいつ朧の身体を貫いてもおかしくない。だというのに、朧は何でもないといった様子で慌てる素振りさえ見せなかった。

 

「堕天使レイナーレ!彼を開放しなさい!」

 

「開放?何を馬鹿なこと言ってるのよ!そんなことするわけないでしょ?どうしてここにいるのかは知らないけれど、彼は私がここから逃げ出すための人質なんだから!」

 

部長が朧を放すようにレイナーレに促すが、レイナーレはそれを拒否する。当然だ。今のレイナーレにとって朧の存在は命綱なのだから。

 

「あなた達、一歩もこっちに近づいてきては駄目よ?もちろん魔力で攻撃するのもダメ・・・・って、そんなこと出来るわけないわよね?だってそんなことしたらこの子を傷付けることになっちゃうものね!」

 

構えを取るもののその場から一歩も動けず、手も出せずにいる私達にレイナーレは愉快そうに笑みを浮かべながら言い放つ。

 

くそっ・・・・最悪だ。どうしてこんなことになったんだ。というか本当になんで朧がこんなところにいるんだよ!

 

当の本人はというと何故かニコニコ笑顔だし・・・・本当にお前は状況わかってるのかよ!

 

「ふふふっ、本当にありがとうね現世朧。あなたのおかげで私はこの場から逃げられそうだわ・・・・・しかも奴らを八つ裂きにするチャンスも得られた」

 

レイナーレは朧に突き立てていた槍を私達の方に向けてくる。

 

ちくしょう・・・・朧を人質にして私達を始末しようっていうのか!

 

どうする・・・?一体どうすれば・・・・?

 

「くくく・・・・・あははははははっ!」

 

私がこの状況をどうやって打破しようかと考えていると、朧は突然大声で笑い出した。

 

「何を笑っているの?この状況に危機感を覚えて気が変になっちゃったのかしら?」

 

「いや、違う違う。俺が笑ったのは・・・・あまりにも君の考えがお粗末だったからだよ」

 

「なんですって?」

 

先程までのニコニコ顔とは打って変わって、朧はニヤリと冷酷な笑みを浮かべてそんなことをレイナーレに言い出した。

 

「俺を人質にすればこの場を切り抜けられると思ったかい?でもそれはあまりにも君にとって都合の良すぎる考えだ。君、そもそも俺がどうしてここにいるのかわかっていないだろう?」

 

「・・・・・何が言いたいの?」

 

あまりにも余裕そうに振舞う朧を不愉快に感じたのか?表情を歪めながらレイナーレは朧に尋ねる。

 

「俺はねレイナーレ・・・・美少女が好きだ。美女が好きだし美老女も好きだ。そして美悪魔も好きだし美天使も好きだし美堕天使も好きだ。そして何より俺は・・・・君のような美しい黒髪を持った女性が大好きなんだ」

 

朧はレイナーレの方へ振り返り、レイナーレの黒い長髪に目を向けながらそう言う。

 

「つまり、君は俺にとって理想の女性と言ってもいい。君のような女性を俺は探し求めていた」

 

「そう。だったらこの場を逃れたら少しは遊んであげるわよ?光栄でしょ」

 

「ああ、至極光栄だね。だけど・・・・・残念だけどそうなることはないよ」

 

ッ!?なんだ・・・・これ?

 

朧から感じる気配・・・いや、空気?とにかく何か・・・・・凍えるように冷たいものを感じる。

 

「君は確かに俺の好みだ。だけど・・・・だけどね?君はイッセーを殺した」

 

・・・・え?

 

なんで?どうして朧が・・・・それを知っている?

 

「君は俺の大切な親友であるイッセーを殺した。そして今は、俺を人質にしてイッセーを追い詰めようとしている。君のそういうところ・・・・・俺は嫌いだ」

 

「ッ!?」

 

レイナーレも朧から何かを感じ取ったのか、表情がこわばっている・・・・まるで朧を恐るかのように。

 

「でもね・・・・好みの女の子を嫌うっていうのはそれなりの苦痛なんだ。だから俺は君への嫌いって感情を払拭しようと思う・・・・・君を殺すことによってね」

 

朧がレイナーレにそう言い放つと同時に・・・・・バン、という炸裂音が私達の耳に聞こえてきた。

 

「ッ!?あああぁぁぁぁ!!足がぁぁぁぁ!!」

 

炸裂音がしたあとに、レイナーレが絶叫をあげて足を手でおさえだした。レイナーレの足には傷ができており、そこから血が溢れ出ている。

 

朧はレイナーレが痛みで苦しんでいる隙に拘束を振りほどいて、レイナーレの前に躍り出る。

 

朧の両手には・・・・拳銃が握られていた。

 

「痛いかい?ゴメンネ。でも・・・・そうでもしないと拘束を振りほどけそうになかったから」

 

「貴様・・・・・!この程度の傷すぐに・・・!」

 

レイナーレは傷に手を当てて治癒しようとする。

 

だが・・・・

 

「・・・・え?なんで?どうして!?なんで治らないの!?」

 

レイナーレの傷は治らなかった。これまで数多の傷を治してきたにも関わらず・・・・・朧がつけた傷は治らなかった。

 

「残念ながらそれを治すことはできないよ。だって・・・・その傷も、痛みも、流れる血でさえも現実ではないからね」

 

現実では・・・・ない?一体何を言って・・・・?

 

「・・・・レイナーレ、イッセー、それにグレモリー先輩とその眷属の悪魔さん達にも説明してあげよう。俺の神器のことを」

 

「神・・・・器?神器!?朧が神器の所有者!?」

 

私は驚きを隠せなかった。一年以上一緒にいた親友である朧が神器使いだったなんて思わなかったからだ。

 

「・・・・それが、その銃があなたの神器なのかしら?」

 

部長が朧に尋ねる。

 

「いいや違う。この銃は神器で作り出したものではあるが、この銃自体が神器というわけではない。俺の神器はそもそも実体がない・・・・能力系の神器だ。これがまた凄いんだよねぇ・・・・我ながら引くほど」

 

「自分でも引くほど凄い神器かい?」

 

「・・・・もったいぶらずに早く教えてください」

 

「私、焦らされるのあまり好きじゃないのだけれど?」

 

木場、小猫ちゃん、朱乃先輩が急かすように朧に説明を促す。

 

「そう焦らないでよ・・・・今言うからさ。俺の神器の名は『現に寄り添う幻(ニア・リアル)』。幻を作り出し操る神器だ」

 

幻を作り出し・・・・操る神器?

 

「貴様・・・・幻術使いか」

 

苦々しげな表情で朧に対して言うレイナーレ。

 

「そうだよレイナーレ。この銃も、弾丸も、そしてその弾丸で作り出した傷、傷から流れる血、感じる痛み・・・・それさえもこの神器で作り出した幻だ」

 

「じゃあ傷が治らないのは・・・・」

 

「その傷が現実じゃないからだよ。実際にはお前は傷を負っているわけではないから神器では治せないんだ。もっと言えば、どのような方法であっても治せないといえるだろう」

 

傷が現実じゃないから治せない・・・・・か。なんだかややこしいな。けど、朧の神器はきっと凄いものなんだろう。

 

だって、部長や朱乃さん、小猫ちゃんも木場の表情も険しいんだから間違いないだろう。

 

「・・・・傷が治らない理由はわかったわ。だけど・・・・・そんな現実でもない幻風情で私を殺せるとでも本気で思っているのかしら?」

 

「どうやらレイナーレは幻術使いの恐ろしさを分かっていないようだな・・・・殺せるさ。あまりにも容易に、あっけなく殺すことができる・・・・・それをすぐに証明してやるよ」

 

好戦的な笑みを浮かべながら両手の銃をレイナーレへと向ける朧。

 

そんな朧が・・・・・今は何よりも頼もしく思えた。

 

 




とうとうレイナーレと邂逅した朧

次回は朧VSレイナーレとなります

まあ・・・・大分一方的ですがね

それでは自秋もまたお楽しみに!


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第10話

今回は朧VSレイナーレがメインになります

朧の戦闘技術・・・・どうかその目をお確かめください。

それでは本編どうぞ。


「イッセー。幻術使いの戦い方ってのを見せてやる。よく見てなよ」

 

朧が私の方を振り返りながら、ニコリと微笑みを浮かべて言ってきた。その表情は、到底これから戦おうという者ではなかったけれど・・・・・なぜかとても頼もしく感じる。

 

朧はきっとレイナーレに勝つ。だから私は今後のために朧の戦いをしっかりと見ていようと思ったその瞬間・・・・朧の身体を光の槍が突き刺さった。

 

「がっ・・・・はっ」

 

あまりにも呆気なかった。光の槍はいとも容易く朧の胸を貫通し、傷口からは血が溢れ出す。

 

「ふふふふ・・・・あははははははっ!馬鹿じゃないの!戦闘中に敵から目をそらすからそうなるのよ!」

 

朧を見ながら高笑いをあげるレイナーレ。

 

確かに朧の行動は軽率であった。戦闘中によそ見をするだなんて戦闘経験ほぼ皆無である私でも愚かだと思う。

 

だけど・・・・なぜだろう?

 

部長達は朧が槍に貫かれるのを見てすぐに臨戦態勢に入ったというのに・・・・私も何もする気にならなかった。

 

それは悲しみに暮れているからではなく・・・・・なんというか・・・・なぜだかはよくわからないけれど朧は無事だと直感的に私にはわかっていたからだ。

 

そしてそれは案の定であった。

 

「随分と嬉しそうに笑うじゃないかレイナーレ」

 

朧がそうレイナーレに告げると同時に・・・・スゥーとその体が透けていく。

 

そして朧の体が完全に消えると同時に、別の場所から朧が姿を現した。

 

「俺は・・・・このとおり無傷でピンピンしてるぞ?」

 

「なっ!?馬鹿な・・・・どうなってるの!?」

 

朧が消えたことにか、それとも朧が突然現れたことにか、あるいはその両方にか・・・・レイナーレの表情は驚きに染まっていた。

 

「どうなってるもなにも、俺は幻術使いだぞ?バカ正直に敵の目の前に居続けるわけがない」

 

「まさか・・・・さっきのあれは幻?」

 

「イグザクトリー。さっきのは俺が作り出した幻だ。すごくリアルだっただろ?本物の俺はこっちさ。気持ちのいいくらい綺麗に騙されてくれたねレイナーレ」

 

よほど自分の策に嵌ったレイナーレが滑稽に思えたのか、くくっと愉快そうに朧は笑う。

 

「くっ・・・・馬鹿にするな!」

 

そんな朧に、怒りを顕にしたレイナーレが光の槍を両手に掴んで朧に向かって投擲する。

 

だが、その槍が朧の体に触れたその瞬間・・・・・またしても朧の身体は消えてしまい、別の場所から朧が出現した。

 

「ごめんさっきの嘘。本当の俺はこっち。いや、あっち?そっち?あれかな?それかな?一体どれかな?」

 

朧が指差す場所に、朧がどんどん出現していく。

 

一人、二人、三人、四人、五人・・・・・私の視界に数えるのが億劫になるほどの数の朧が現れる。

 

「さて問題。本物の俺はどこにいるでしょうか?」

 

「ッ!?このぉぉぉぉぉ!!」

 

もはや理性など吹き飛んでしまったのだろう、レイナーレはめちゃくちゃに槍を投げまくる。

 

狙いもなにもあったものではないけれど、それでもいくつかは何人もの朧の身体を貫く。

 

先程と違って、今度は槍に貫かれても朧の身体は消えたりはしなかった。しかし、槍に貫かれても傷一つないことからその全てが幻であることが容易にわかった。

 

「残念、どれも幻だ。本物はこの中にはいないよ。だって本物は姿をくらませてるから・・・・さて、もう十分槍は投げただろう?今度は・・・・・こっちの番だ」

 

幻の朧達は一斉に銃を構え、レイナーレに向ける。

 

「ははは・・・・・あはははははは!撃ってみなさいよ!どうせ全部偽物なんでしょ!だったら撃ったて無駄よ!」

 

どうせ全部幻なんだからと、狂ったように笑うレイナーレは余裕そうに挑発してみせた。

 

・・・・正直よくはわからないけど、レイナーレのその余裕は愚かだと思った。

 

「それじゃあ遠慮なく・・・・・ごめんなレイナーレ」

 

朧達は銃の引き金を引いた。

 

バン、という炸裂音が響くと同時に・・・・・レイナーレに体中に無数の傷が生じた。

 

「ッ~!!」

 

声にならない悲鳴をあげ、その場に崩れ落ちるようにして倒れるレイナーレ。

 

「嘘・・・・なん・・・で?全部・・・・偽物の・・・・はず」

 

痛みのせいか、言葉がたどたどしくなりながらも、どうにか絞り出すように言い切ったレイナーレ。

 

そんなレイナーレに、いつの間にか一人になっていた朧が近づきながら告げる。

 

「偽物だから攻撃は当たらない・・・・その考えは愚かだとしか言えないね。そもそも俺のこの銃、そこから放たれる弾丸は全て幻なんだぞ?すべての攻撃が本物でも偽物でもあるんだからな」

 

すべての攻撃が本物でも偽物でもある・・・・・正直あまり頭のできに自信のない私は朧の言っていることはよく理解できなかった。なんだか複雑というか・・・・ややこしいし。

 

だけど・・・・これだけは確信をもって言える。

 

朧は・・・・・敵に回すと絶対に厄介だ。

 

「俺の攻撃に対処しようというなら直接体に当たらないようにするしかない。それに気がつけなかった時点でジ・エンドなんだよ。やはりお前は・・・・・幻術使いの恐ろしさをわかっていなかったようだな」

 

倒れるレイナーレのすぐ傍に朧は腰を下ろす。

 

そして・・・・・片手でレイナーレの身体を起こし、その頭部に銃口を突きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェックメイトだ」

 

レイナーレの頭に銃口を突きつけながら俺は告げる。できる限り冷酷に聞こえるように、残酷に聞こえるように・・・・酷く冷めた声色で。

 

「い・・・や。しにたく・・・ない。しにたくないよぉ・・・・・ゆるしてよぉ」

 

まるで小さな子供のように涙を流しながら、俺に許しを請うレイナーレ。

 

そんな姿にさえ・・・・俺は劣情を催しそうになってしまう。

 

だけど・・・・・それでもやめるわけにはいかない。

 

「すまないなレイナーレ。君のことは本当に好みだ。だけそ・・・・それでもイッセーを殺し、苦しめた君を許しておくことはできない。だから俺は・・・・君を殺す」

 

「う・・・・あ・・・・」

 

恐怖からか、とうとうまともに口を聞けなくなってしまっている。

 

そんな姿にも愛おしさを感じると同時に・・・・いたましさと、心苦しさも感じてしまう。

 

だけど・・・・・

 

「・・・・・気休めにもならないかもしれないけれど大丈夫だよレイナーレ」

 

俺はイッセー達には聞こえないよう、レイナーレにだけ囁く。

 

「君を殺すのをやめることはできない。だけど・・・・・後でちゃんと生き返らせてあげるからね」

 

「・・・・え?」

 

俺の言葉に疑問の声を上げるレイナーレ。

 

それとほぼ同時に俺は・・・・・引き金を引き、レイナーレの頭に幻の弾丸を撃ち込んだ。

 

一瞬ビクリと体を震わせた後、レイナーレは一動きを止めてしまう。

 

レイナーレの命の灯火が・・・・・消えた瞬間だった。

 

「・・・・・終わったよイッセー。レイナーレは死んだ」

 

レイナーレの体を極力優しく地面に横たえさせながら、俺はイッセーにそう告げた。

 

「本当に・・・・死んでのか?」

 

「ああ、死んだよ。間違いなくね」

 

「でも・・・・・今撃ったのって幻の銃弾なんだよな?それで死ぬことってあるのか?」

 

どうやらイッセーは幻の弾丸で本当に死ぬのかどうか疑問を抱いているらしい。そしてそれはグレモリーとその眷属達も同じらしく、俺を怪訝な表情で見つめている。

 

「疑い深いなぁ・・・・・確かに打ち込んだのは幻の弾丸だ。実際にはレイナーレは脳天を撃ち抜かれたわけではない。それ以外の傷だって存在しないものだ」

 

俺はパチンと指を鳴らす。それと同時に幻術を解除した。

 

先程までレイナーレの全身にあった銃で撃たれた傷は、全て跡形もなく消え去った。

 

「だからこのとおりレイナーレは無傷さ。だけどな、それでもレイナーレ自身が幻だと理解していながらも、本当に撃たれたと脳が錯覚してしまっているんだ。だから頭を撃ち抜かれたから死ぬと錯覚してしまい・・・・そのとおり死んだんだよ」

 

たとえ幻だろうと、脳が錯覚してしまえばそれは本当になってしまう。それが俺の幻術において恐ろしく、悍ましいところだろう。

 

「信じられないなら自分達で確認するといい・・・・いや、その必要はないか。これがその証拠だ」

 

レイナーレの体から、淡い緑色に光が出てきた。それはレイナーレがシスターから奪った神器であった。

 

俺はその光を手に取り、イッセーに渡す。

 

「こいつはレイナーレがそのシスターから奪った神器だ。レイナーレが死んだことで開放されたんだろう。ほら、これを彼女に返してやりな」

 

「で、でもアーシアはもう・・・・」

 

イッセーはシスター、アーシアを見やる・・・・・神器を抜き取られたことによって息絶え、固く目を閉じるいる彼女を。

 

「・・・・確かにその子は死んだ。だけどなイッセー・・・・お前だって一度死んだんだ。それなのにここにこうして生きているのはどういう事なんだ?」

 

「え?」

 

「・・・・あなた、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)のことを知っているの?」

 

「ええ。回復能力を備えているその子には僧侶(ビショップ)あたりが合うと思います。イッセーのことを思うのなら・・・・どうかそれを使ってあげてください。お願いします」

 

俺はグレモリーに頭を下げて頼み込んだ。

 

イッセーのことを思っての事はもちろんだが・・・・・俺は彼女をみすみす見殺しにしてしまった。だから・・・・・彼女には生き返ってもらいたい。

 

外傷がないから俺がやりたいところだが・・・・・今の俺ではレイナーレを生き返らせるのが精一杯。だからグレモリーに頼るしかなかった。

 

「・・・・いいわ。もともとそのつもりだったもの」

 

グレモリーは紅のチェスの駒・・・・僧侶の駒を取り出し、アーシアの胸に置いた。

 

「部長、それは?」

 

「これは僧侶の駒よ。あなたに説明するのが遅れたけれど、爵位持ちの悪魔が手にすることができる駒の数は兵士(ポーン)が八つ、騎士(ナイト)戦車(ルーク)、僧侶がそれぞれ二つずつ、女王(クイーン)が一つの合計15体なのよ。これは実際のチェスと同じね。僧侶の駒は一つ使ってしまったけれど、私にはもう一つ僧侶の駒があるわ」

 

「それで・・・・・私と同じようにアーシアを生き返らせるんですか?」

 

「そうよ。僧侶の力は眷属の悪魔をフォローすること。回復能力を持ったこの子はうってつけだわ。前代未聞だけどこのシスターを悪魔に転生させてみる」

 

そう言うと、グレモリーの体が紅の魔力で覆われる。

 

そしてグレモリーが呪文を唱えると駒はアーシアに取り込まれ、同時にイッセーの手にあった神器もアーシアの体に入る。

 

程なくして・・・・アーシアの顔に生気が戻り、静かだが確かな寝息が聞こえてくる。

 

「これで彼女は生き返った。しばらくすれば目を覚ますでしょうね」

 

「アーシア・・・・良かった」

 

アーシアが生き返ったことに喜ぶイッセーは、涙を流しながらギュッとアーシアの体を抱きしめた。

 

「これにて一見落着・・・・だな。めでたしめでたし」

 

「ええ、そうね・・・・・それじゃあ、そろそろ色々と聞かせてもらおうかしら?」

 

グレモリーの刺すような視線が俺を射抜く。イッセーを除く他の眷属達も俺を見ている・・・・木場に至っては剣を構えていた。

 

「・・・・怪しいのはわかるし警戒されるのも当然だとは思いますけどそこまで露骨だと俺悲しくて泣いちゃいますよ~。シクシク」

 

「「「しらじらしい」」」

 

全員にジト目を向けられた。しかもイッセーにまで。解せぬな。

 

「解せぬな・・・・・まあ、わざとだけどさ」

 

「・・・・ねえイッセー、彼はあなたの親友なのよね?いつもああなの?」

 

「イッセーくんも苦労してるのね」

 

「・・・・・同情しますイッセー先輩」

 

「あはははは」

 

グレモリーとその眷属全員がイッセーに同情の視線を贈る。

 

「重ねて解せぬな。それはないですよ皆さん・・・・じゃあ、そういうことで」

 

「待ちなさい。まだ質問に答えてもらってないわよ?」

 

おう。やっぱりダメか。まあわかってたけどさ。

 

「・・・・仕方がない、か。わかりましたよ。ちゃんと包み隠さずお教えします」

 

まあ、嘘だけどな。

 

「だけど・・・・それは明日の放課後、オカ研の部室でってわけにはいきませんか?ただの人間である俺には夜更しは辛いんですよ・・・・・さっきのレイナーレとの戦闘でくたびれてしまいましたし。幻術をあそこまで使い続けるのって疲れるんですよねぇ」

 

これも嘘だけど。実際そこまで疲れてないし。それに現在進行形で幻術使ってるし。

 

「・・・・明日ちゃんと話してくれるのね?」

 

「約束しましょう」

 

話はする。嘘は交えるけどね。

 

「・・・わかったわ。なら明日の放課後、部室に来て頂戴」

 

「了解。それじゃあ俺はこれで・・・・っと、そうだ。グレモリー先輩、一つお願いがあるんですけどいいですか?」

 

「なにかしら?」

 

「レイナーレの死体・・・・・あなたの力で消してください」

 

俺はそれを指差しながら言う。

 

「どうしてかしら?」

 

「・・・・どうにも殺しただけでは憎しみが収まらないんですよ。死体とはいえこのままここに彼女がいたら・・・・俺が何をしでかすかわからないんです」

 

もっともらしい理由をつけてグレモリーにそう頼む俺。もちろんそれも嘘だ。

 

本当の理由は・・・・・カモフラージュのため。

 

「死者を冒涜するようなことをするのは気が引けるんですよ・・・・だからお願いします」

 

「・・・・仕方ないわね。イッセー、あなたはそれでいい?」

 

「私・・・ですか?」

 

「一応とはいえ、彼女はあなたの恋人だったのでしょう?」

 

・・・・まあ、イッセーにそれを聞くのは当然のことか。さて、どうするイッセー?

 

「・・・・お願いします部長」

 

数秒考えた後、イッセーはグレモリーに言う。

 

「わかったわ」

 

グレモリーの魔力がそれに放たれる。強力なその一撃によって、跡形もなく消し飛ばされてしまった。

 

まあ、正確には跡形もなく消し飛ばされてしまったように見えると言ったほうがいいのだが。

 

「・・・・ありがとうございますグレモリー先輩。それでは今度こそ俺は失礼します。また明日な、イッセー」

 

俺はその場にいる一同に踵を返して、引いとまずその場をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここまではほとんど計画通り

 

本番はこれからだ・・・・

 

レイナーレ・・・・すぐに生き返らせてあげるよ

 

 




朧の計画は彼の思惑通りに進んでおります

あとはレイナーレを生き返らせて・・・・・

果たしてレイナーレがどんな反応を示すか

それでは次回もまたお楽しみに!


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第11話

今回は朧がレイナーレを生き返らせます

果たしてどのようにして生き返らせ、どうなるのか・・・・

それでは本編どうぞ


 

「さて・・・・・やるか」

 

イッセー達と分かれて15分ほどして、俺は再び廃教会へと戻ってきていた。

 

そして、俺の目の前には無傷で死に絶えるレイナーレの姿が。

 

あの時・・・・グレモリーに消させたのはレイナーレの幻だ。皆の意識がアーシアに集中している隙に幻で本物の姿を隠し、偽物を作っていたのだ。

 

わざわざ俺が頼んで消してもらっていたのだ・・・・・あれが幻だったなんてイッセー達は思いもよらないだろう。

 

と、そんなことより始めないと・・・・・だがまあ、その前に確認しておかないとな。

 

「ラム、生き返らせるのにどれぐらいの時間が無くなる?」

 

『そうね・・・・無傷だし死後それほど時間が経っているわけじゃないから3年程度かしら?』

 

たった3年か・・・・・思ったよりも1年少ないな。ラッキー。

 

『思ったより少ない・・・・そう思ったでしょ?私からすれば3年もよ。なにせあなたの残りの時間を半分以上失うことになるのだし』

 

「なんだ?悲しんでくれるのか?」

 

『当然よ。あなたほど一緒にいて楽しいと思える相棒これまでいなかったもの。楽しい時間が3年も減るなんて不幸だわ』

 

楽しいのが3年減るのが嫌・・・・ね。ほんとコイツは俺に似て快楽主義者だな。

 

ただまあ・・・・

 

「・・・・俺もお前と一緒に入れる時間が3年減るのは残念に思うよ」

 

『そう。そう思ってくれるなんて光栄ね。でも・・・・やめないんでしょう?』

 

「ああ。たとえ俺がこの世界にいられる時が削られようとも・・・・俺は彼女に魅了されてしまったからね」

 

黒く、美しい長髪を持つレイナーレ。まさに俺にとって理想の女性だ。ここでみすみす諦めてしまえば、必ず後悔するだろう。

 

だから俺は・・・・・躊躇なんてしない。

 

『まあ、その為にここまで綿密に計画を立てていたわけだものね。今更止めやしないわ。好きにしなさい』

 

「そうさせてもらうよ。それじゃあそろそろ・・・・と、そうだ。最後にラムに言っておくことがあったな」

 

『なにかしら?』

 

「お前のことはしばらく伏せておく。だからお前もレイナーレがいるときは口頭で会話しないようにしてくれよな」

 

『・・・・・そう。やっぱり愛に焦がれようとも信用、信頼は別問題ということかしら?』

 

「ああ。たとえどんなに魅了されようとも・・・・レイナーレが堕天使である以上、心の底から信用することは今はできない」

 

堕天使は・・・・俺にとって憎むべき存在だ。

 

堕天使のせいで俺の過去は歪んだ。堕天使は俺から大切なものを奪った。

 

堕天使だけじゃない・・・・・悪魔も、天使さえも俺から大切なものを奪い、俺の人生をめちゃくちゃにした。

 

だから俺は、少なくとも今は堕天使も悪魔も天使も・・・・・根本から信用することができない。

 

この憎しみが・・・・心を蝕み続ける限り。

 

『いつかあなたのその憎しみが晴れるといいわね』

 

「・・・・そうだな。さて、今度こそ始めよう・・・・・禁手化」

 

今度こそ、俺はレイナーレを生き返らせるために・・・・禁手(バランスブレイカー)を解放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば・・・・私の視界は暗闇に包まれていた。

 

私は・・・・一体どうしたのだろう?記憶が正しければ私はあの男に・・・・現世朧に殺された。ということはここは死後の世界?

 

・・・・なぜだか、それは違う気がした。だって、死んだにしては私は体になんの違和感も感じていないのだから。

 

普段通りの感覚・・・・動かそうと思えば手も足もいつも通り動かせる気がする。そして背中になにか硬いものが当たってる感覚がしている。

 

そして私はようやく気がついた。私は今、地面に背をつけて寝そべっているということに。視界が暗闇に包まれているのは、私が目を閉じてるからだ。

 

・・・・早く目を開けなきゃ。暗闇はもう見たくない。

 

「・・・・ん」

 

思わず短く声を漏らしながら、私はゆっくりと目を開く。どうやらそれなりに長い時間目を閉じていたようで、視界が少しぼやける。

 

だけど、目の前に誰かいるのはわかる・・・・・顔ははっきりわからないけれど、なぜか不快に感じる・・・でも、同時に畏敬の念を抱かずにはいられなかった。

 

視界が少しずつはっきりしていく・・・・・そして私はとうとう目の前にいる者の顔をはっきりと捉えた。

 

「やあ。おはようレイナーレ」

 

思わず見惚れてしまうほどに綺麗な笑顔を見せるその人物は・・・・私を殺した男だった。

 

「ッ!?いや・・・・いやぁぁぁぁぁ!!」

 

恐い・・・・恐い恐い恐い。

 

目の前にいる男が恐くて恐くて仕方がない。

 

どうすればいいのかわからない・・・・ただ悲鳴しか上げられない。恐怖ですくんで体が動かせない。

 

私は・・・・どうなるの?こいつに・・・・この男に何をされる?

 

考えれば考えるほど・・・・・私は恐怖の渦に飲み込まれてしまった。

 

「あ~・・・・そっか。そうだよな。恐いに決まってるよな」

 

現世朧は何か言っているが、耳に入ってこない。いや、耳に入ってきてもその言葉の意味を理解することができない。

 

ああ・・・・恐い恐い恐い。

 

「・・・・仕方ないな。ちょっとごめんねレイナーレ」

 

突然、私の体が何かに包まれ、視界が何かに遮られた。

 

暖かい・・・・とても暖かい感触。その感触は私の恐怖を少しづつ溶かしていった。本当に心地がいい・・・・ずっとこうしていたいとさえ思ってしまう。

 

でも・・・・この感触は何なんだろう?この暖かさを与えてくれるものは一体?

 

私はふと顔を上げてみる。すると、すぐ傍に現世朧の顔があった。・・・・ああ、そうか。私は現世朧に抱きしめられているのか。

 

私を殺した男に抱きしめられているというのに・・・・なぜだろう?拒もうという気が湧いてこない。それどころか、このままでいいとさえ思ってしまう。

 

どうして私はこんな気持ちになっている?私を殺した男に、私はどんな感情を抱いている?

 

・・・・・ああ、いいや。どうでもいい。

 

今は少しでも長く・・・・この感触を堪能させてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたかレイナーレ?」

 

「・・・・ええ」

 

しばらくして、現世朧は私から離れた。少し名残惜しく感じてしまったが・・・・そんなこと絶対に言ってやらない。

 

だって・・・・こいつは私を殺した男なのだから。そんな男に、素直に告げるのは・・・・あまりにも癪すぎる。

 

それに・・・・今は他に言わなければならないこと・・・・・聞かなければならないことがある。

 

「・・・・それで?私はどうして生きているのかしら?」

 

「おろ?随分と冷静じゃないか・・・・・ちゃんと自分が死んでたってことも理解できているし」

 

・・・・・正直に言うと本当に自分が死んだかどうかは未だに疑問に思っていた。だけど、その疑問を解決しようとすると色々とこじれそうね。

 

「なに?話ができないほど動揺して欲しかったの?」

 

「いや、そういうわけじゃないけどさ。というか落ち着いてもらいたかったから抱きしめたわけだし」

 

・・・・それで本当に落ち着いてしまった自分が疎ましくてしょうがない。

 

「それよりもいいから早く教えなさい。私はなぜ生きて・・・いえ、私をそうやって生き返らせたの?」

 

「・・・・禁手だよ」

 

「禁手?」

 

禁手のことは知っていた。神器所有者の中でもほんのひと握りの者のみが至る究極系。その力は、どのような仁義においても絶大だという。

 

だけれど・・・・その禁手と私が生き返ったことに何の関係が?

 

「俺の神器の能力は知っているな?」

 

「ええ。幻を操る能力でしょう?さっきの戦闘で十分すぎるほど見せてもらったもの」

 

「いや、十分すぎるほどといってもあんなのほんの一端に過ぎないんだけどな・・・・まあ、今はそれはいいか。ともかく俺の神器の能力は幻を操ることだが・・・・禁手に至ると現と幻を反転することができるんだよ」

 

「・・・・は?」

 

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった私は悪くないだろう。

 

現と幻を反転することができる・・・・それはつまり幻を現実に変えることができるということ。

 

少し考えただけでわかる・・・・・それはあまりにも異常だ。

 

けれど・・・・解せない。

 

「・・・・その能力でどうやって自分を生き返らせたのかまだわからないって顔だな」

 

「・・・・ええ、そうよ。その能力だけでは合点がいかない。まだ何かあるのかしら?」

 

「いいや、何もないよ。禁手の能力は現と幻の反転だけ。だが、それだけあれば死者蘇生は可能なんだよ。相当にチートだがな」

 

ははは、と苦笑いを浮かべながら現世朧は言う。

 

「もったいぶらずに早く教えなさい」

 

「わかったよ。俺がレイナーレを生き返らせるためにしたことは・・・・レイナーレの『死』という現実の反転だ。現実を反転させて幻とした。幻ってのは消えるのが道理だ。故に・・・・レイナーレの『死』は現実から幻となって消え去ったというわけだ」

 

「・・・・・」

 

もはや驚きすぎて声さえ出なかった。

 

さっき私は彼の禁手の能力を聞いて幻を現実に変えることができると思ったが・・・・そうではなかった。彼は現実を幻に変えることさえできるのだ。そんなのこの世の断りから大きく逸脱している。

 

そんな力を持った神器だ存在するなんて・・・・恐怖を通り越して思わず呆れてしまう。

 

「というわけで俺は禁手の力を使ってレイナーレを生き返らせたわけだが・・・・・何か意見はあるか?」

 

「・・・・いいえ、ないわ」

 

本当は色々と突っ込みたいことはあったけれど・・・・・言わないでおいた。

 

突っ込んだところで意味はない。私はこの男の禁手の力で生き返った・・・・それだけで十分だ。

 

それよりも・・・・・もっと聞きたいことがある。

 

「・・・・・なんで私を生き返らせたの?」

 

そう、これこそが私が一番聞きたかったこと。

 

わざわざ私を殺しておいて生き返らせるなど・・・・・どんな思惑があってのことなのか知りたい。

 

知ったところでどうするって言われればそれまでかもしれないけれど・・・・・私には知る権利があるはずだ。

 

「レイナーレを生き返らせた理由か・・・・それは単純明快だ。君のことが好きだから」

 

「・・・・え?」

 

こいつ・・・・今なんて?

 

「私が・・・・好きだから?」

 

「ああ、そうだよ。言っただろ?君は俺にとって理想の女性だ。だから俺はどんな手を使ってでも君を手に入れたかった」

 

そういえば言っていたわね・・・・あれはふざけ半分で言っていたと思ったけれど本気だったのね。

 

・・・・おかしいわ。なんでこんな奴が本気で私を好いているって知って心臓がうるさいぐらいに高鳴ってるのよ。

 

・・・・馬鹿げてるわ。

 

「だから生き返らせたって言うの?でも、だとしたら・・・・・そもそもどうして私を殺したのよ」

 

私は自分の心持ちを誤魔化すように尋ねた。まあ、実際知りたいことではあるけども。

 

「それも言っただろ。君は俺の親友であるイッセーを殺し、追い詰め、苦しめたんだ。君のそういうところが嫌いだった。だから、殺すことでその嫌いを払拭したんだよ。そして、その嫌いを払拭したあとレイナーレを生き返らせたって事だ」

 

嫌いという感情を払拭するためだけに私は殺されたのね・・・・なんて自分勝手なのかしら。

 

でも・・・・否定も非難もできない。というよりする気が起きない。

 

私は堕天使・・・・自らの欲に従い生きる存在。

 

ならば、彼の自分勝手な我欲に満ちた行動を否定したりはしない。

 

・・・・私、こんなに物分りのいい性格してたかしら?一回死んで考え方が変わった?

 

「・・・・めちゃくちゃねあなた。自分勝手な理由で私を殺して生き返らせて・・・・気が狂ってるとしか思えないわ」

 

否定はしないけど・・・・まあ、これだけは言わせてもらおう。殺されたことに関しては多少は恨みはあるし。

 

「自覚はしているさ。俺は確実に狂ってる。でも・・・・狂ってでも君のことが大好きなんだレイナーレ。この気持ちに嘘はないよ」

 

「幻術士の言うことなんて信じられないわね。戦闘中だって嘘つきまくってたじゃない」

 

「それはまあ・・・・うん、ごめん。悪かったよ」

 

そこは素直に謝るのね・・・・調子が狂うわ。

 

・・・・もういいか。これ以上何言っても無駄だわ。一応は質問には答えてくれたんだし・・・・あとは肝心なことを聞いておきましょう。

 

「納得のいかないことは多少あるけど、それについてはまあいいわ。とりあえずはあなたが私を殺し、生き返らせた理由はわかったから。だから・・・・今度は別の事を聞かせてもらうわ」

 

「というと?」

 

「まず一つ、私が生き返ったことはあの悪魔達は知っているの?」

 

周囲を見たところ悪魔達はどこにもいない。だからこのことを奴らが知っているのかが気になった。

 

「いいや、グレモリー達はお前が生き返ったことは知らないよ。なにせレイナーレの死体を消してくれって頼んでカモフラージュまでしたし。まあ、その死体は幻だったわけだけど。とにかくレイナーレが生きてることは俺しか知らない。完全に俺の独断だからな」

 

「そう。あいつらは知らないのね・・・・じゃあもし、そのことがバレたら?」

 

「レイナーレは今度こそ確実に殺されるだろうな。俺もそうとう厄介なことになる」

 

・・・どうやらこいつ自身それなりに危ない橋を渡っているらしい。

 

「・・・親友を騙してまで私が欲しかったの?」

 

「ああ。心の底から欲しかった」

 

即答したわね・・・・・親友よりも女が大事だなんて所詮は男ね。まあ、そういうの割と嫌いじゃないけど。

 

「・・・・それで?私のことを欲しかったあなたは今後私をどうするつもりなのかしら?私のことを鎖で繋いで犯して啼かせて孕ませる気?」

 

「レイナーレ・・・・・俺のことなんだと思ってるのよ?」

 

「少なくともまともな精神じゃないとは思ってるわよ。というか狂ってるってことは自覚しているんでしょ?」

 

「ははっ。そうだったな」

 

そうだったって・・・・ああ、もう。こいつと話すと少し疲れるわ。

 

「別に鎖でつなぐつもりも犯すつもりも孕ませるつもりもないさ・・・・・将来的にどうかはわからないけど」

 

「最後ボソって言ったの聞こえてるわよ」

 

「聞こえるように言ったからな」

 

「そう。それで?結局のところ私をどうしたいの?」

 

「・・・・レイナーレ。俺と一緒に暮らしてくれないか?」

 

現世朧は真っ直ぐに私を見つめ、手を差し出しながら問いかけてきた。

 

その目、その声は真剣そのもので・・・・・悔しいけど彼の容姿も相まってかっこいいと思ってしまった。

 

「それ、拒否権あるの?」

 

「あるよ。嫌なら断ってくれていい。別に断ったところでどうこうしようなんて思わないからな。受ける受けないは君の自由だよ」

 

受ける受けないは私の自由・・・・か。

 

よく言うわね。ここで断るという選択肢は私にはないのに。

 

ここで彼の誘いを断ったところで・・・・・私には行くところがない。

 

アーシアから神器を奪ったのは私の独断・・・・それに失敗した上に悪魔と、それも悪魔の中でも特に有名なグレモリーの人間と小競り合いを起こしてしまったとなると処罰は免れない。

 

アザゼル様は争いを好まないお方だ。私が悪魔とことを起こしてしまった知れ・・・・死罪の可能性もあるだろう。

 

アザゼル様がそうしろと言うなら従ってもいいとは思う。けれど・・・・・同時に死にたくないとさえ思ってしまう。

 

一度死を経験したからこそ・・・・・・やはりまた死ぬのは恐い。

 

ああ・・・・・やはり私に選択肢など存在していなかった。

 

「・・・・・せいぜい私を養いなさい」

 

私は彼の・・・・朧の手をとった。そうするしか生き残る術がないから。

 

・・・・そう。それが理由だ。それ以外の意味などなにもありはしない。

 

なにも・・・・・ないんだ。

 

「ああ。可能な限り幸せにしてみせますよ?」

 

「・・・ふんっ」

 

朧のキザったらしい言葉に思わずそっぽを向いてしまったが・・・・その言葉に期待してしまっている私もいた。

 

まあ、そんなこと絶対に言ってやらないし態度にも出してやらないけど。

 

「それじゃあ俺達の家に帰ろうか。さっそくレイナーレのために腕によりをかけて夕食を作らさせてもらうよ。何かリクエストはあるかい?」

 

「フランス料理のフルコース。それ以外認めない」

 

とりあえずムカついたから無理難題をふっかけてやった。せいぜい困り果てるがいいわ。

 

「フランス料理のフルコースだな。了解」

 

「・・・・は?」

 

その後、私は朧の家でフランス料理のフルコースを堪能することとなった。

 

どの料理も舌がとろけるように美味しかった・・・・・言ってみるものね。

 

・・・・・ああ、もう。これからの生活が少し楽しみになってきちゃったじゃない。

 

本当に・・・・・最悪だ。




レイナーレは吊り橋効果的な感じで朧に若干好意を抱いてしまっています

問題は・・・・その吊り橋に当たるのが朧ということなのですがね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第12話

今回はレイナーレを連れ帰った翌日のお話です

ここでしか見られないレイナーレをご覧あれ

それでは本編どうぞ


「俺はきっとこの瞬間のために生きてきたんだ」

 

「・・・・それもう4回目よ」

 

愉悦に浸りながら言う俺に対して、レイナーレはゲンナリとした声色でボソッと呟いた。

 

レイナーレを連れ帰って一夜明け、俺は今レイナーレの髪を整えている。

 

「よくもまあ飽きないわね・・・・・・もう3時間は建っているいうのに」

 

「飽きるわけないだろ。こんな綺麗で美しい黒髪を俺好みに弄れるんだからさ」

 

レイナーレの髪は俺の予想以上のものであった。

 

絹などと比べるのもおこがましいと思えるほどのサラサラとした手触りに艶。そして一切の不純な混ざりけのない純黒・・・・・これは俺の知る至高を遥かに超える髪であった。

 

驚いたことに、レイナーレは特別ケアなどはしていないと言う。ケアなしでこれほどの質を誇るとは信じられなかった。おかげで朝8時から3時間、ノンストップで整え続けてしまっている。

 

素晴らしい髪ではあったのだが、毛先は少々傷んでいたのでハサミを使って慎重にカットし、カットし終えたら丁寧に櫛を用いて整える作業・・・・・もしもの時のために磨いていた技術が唸りをあげ、俺の手で至高を超えるレイナーレの髪はさらなる極致へと高まろうとしている。

 

髪フェチの俺としてはこれ以上に喜ばしいことなど無いと言っても過言ではないのだ。

 

あ、ちなみにその間レイナーレには俺が用意した本やらゲームやらパソコンやらをやってもらっている。暇にはならないための配慮も忘れない。

 

「昨日だってあんなに触ってたくせに・・・・・流石に異常だと思わずにはいられないわ」

 

「昨日と今日とでは目的が違うんだ。昨日触ってたのはどのシャンプー、コンディショナーが合うのか厳選するため、そしてお風呂後に髪を乾かすためだったんだからな」

 

そう、俺は何日も前からレイナーレの髪に合いそうなシャンプー、コンディショナーを数種類選んで購入していた。髪質に合わないものを使わせるのなんて言語道断だからな。

 

そしてそのシャンプーとコンディショナーを使って洗ってもらったあとは、タオルとドライヤーを使って髪を乾かした。ちなみに、その時レイナーレが気持ちよさそうに目を細めていたので「気持ちいいか?」と聞いたら顔を真っ赤にしたレイナーレに思い切り頭を叩かれてしまった。

 

・・・・・ツンデレっていいものだなと思いました。

 

ちなみに、本当は髪を洗うのも俺がやりたかったのだが流石にそれは断られた。はっきりと「気持ち悪い」と言われて。

 

・・・・・ドMでないので罵倒されてもあまり嬉しくありませんでした。

 

「私の髪、そんなにいいのかしら?」

 

レイナーレは手にしている本から視線を外すことなく、俺に尋ねてくる。

 

「当然だ。だから俺はどんな手を使ってでもレイナーレを手に入れようと思ったんだからな」

 

「・・・・・あなたやっぱり歪んでるわね。病院に通うことを勧めるわ」

 

「それは困る。入院生活ってつまらなそうじゃん?」

 

「呆れた・・・・入院させられるって自覚はあるのね」

 

そりゃもうそれぐらいの自覚はありますとも。俺の精神状態は間違いなくまともではない。

 

好みの女性を手に入れるために殺して生き返らせるなど・・・・・正気の沙汰ではないに決まってる。

 

だが・・・・・

 

「自覚してても・・・・・それでもお前が欲しかったんだよ。心の底から・・・・ね」

 

「・・・・・そう」

 

ただ短く、俺の言葉にそう答えるレイナーレ。ただ、後ろから見ても十分にわかるほど頬がほんのり紅く染まっていた。

 

どうやらこんな俺からの言葉でも嬉しいと感じてくれているようだ。正直嬉しすぎる。

 

「さて・・・・・・そろそろ終わりにしないとな」

 

俺は手にしていた櫛を近くの机に置いた。

 

「ようやくね・・・・・長かったわ」

 

「そんなことないぞ?正直あと10時間は続けたかったぐらいだ?」

 

「・・・・・本当にあなた異常ね。でもそれならなんでやめたのよ?」

 

「いや、これ以上続けたら俺の男の象徴がいきり立ちそうだったから」

 

「最低」

 

ですよね~。うん、自覚はしておりますとも。

 

でもしょうがないでしょ。レイナーレの美しすぎる髪が俺の男の本能を刺激しまくってくれるんだからさ。むしろ3時間以上耐え切った俺を褒めて欲しいぐらいだ。

 

「まあ、そんなことはともかくとして、そろそろ昼食の準備するけど何食べたい?」

 

「デミグラスソースのオムライス」

 

俺の問いかけにレイナーレは即答した・・・・・もしかしてあらかじめ考えてあったのか?

 

昨日のフランス料理フルコースの食べっぷりといい・・・・・どうやら胃袋を掴むことに成功したらしい。

 

「了解。直ぐに作ってくるから待ってな」

 

レイナーレの要望に応えるべくキッチンへと向かう俺。

 

レイナーレの期待に応えられるように、誠心誠意作らせてもらうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、あなた学校に行かなくてもいいの?」

 

昼食のオムライスを満足そうに食べ終え、食後のコーヒーを飲むレイナーレが俺に尋ねてきた。

 

「ちゃんと行くさ。授業終わったぐらいに」

 

「授業終わった後に学校にって・・・・・とんだ問題児ね」

 

「そう言うなよ。今日学校休んだのはレイナーレに気を遣ってなんだぞ?」

 

「私に気を遣って?」

 

「ああ。連れてきてそうそうに長時間留守番だなんて寂しい思いをさせたくなかったからな」

 

一人寂しくこの家で俺の帰りを待つレイナーレ・・・・想像するといたたまれない。

 

「馬鹿馬鹿しい。小さな子供じゃあるまいし寂しくなんてないわ」

 

「昼食とか自分で作れるか?」

 

「休んでくれてありがとう」

 

・・・・・初めてレイナーレにお礼言われたきがする。でもその理由がご飯って・・・・まあいいか。

 

「それより・・・・わざわざ授業が終わった後に学校に行くのは、あの悪魔達にあなたのことを話すためかしら?」

 

「ああ。色々話すって約束しちゃったからな」

 

まあ、何から何まで全部話すなんてことはしないがな。いくらか嘘も織り交ぜるし。

 

「そう・・・・・あなたの話を聞いた悪魔達の表情をこの目で見られないなんて残念だわ」

 

くくっと笑みを浮かべるレイナーレ。グレモリー達に殺されかけたのだからそう思うのも無理はないだろう。まあ、それを言ったら直接手にかけた俺はどうなんだって感じだがな。

 

ちなみにレイナーレにも昨夜のうちにおおよその事は話しておいた。その時に「・・・・・こんな奴について来るんじゃなかった」と何度も呟いていたのが印象的だ。気持ちはわかるけど。

 

特に俺の保護者について話した時なんかは・・・・・なんか悲しみの向こう側を見たような表情で俺に本気で同情していた。

 

・・・・うん、まああの人・・・・いや、あの悪魔が俺の保護者だって言うんだからそのリアクションは仕方がないと思う。というかアザゼルの言うとおり堕天使の間でも有名なんだな・・・・・いっそ戦慄する。

 

「というわけで後で俺は少し留守にするけど・・・・」

 

「わかってるわ。その間大人しく待ってろって言うんでしょ?」

 

「いや、その逆」

 

「・・・・逆?」

 

「一晩だけとはいえ俺と生活を共にしたわけだが・・・・・今後やっていけそうにないって思うなら無理だと思ったならここから去ってもいいぞ」

 

それは心からの言葉だ。今ならまだかろうじて間に合う・・・・・俺が自分の執着をギリギリで抑えられるラインだ。

 

さて、どうするか・・・・

 

「・・・・・見くびられたものね」

 

「え?」

 

「昨日あなたの手をとった時点で私の覚悟は決まったわ。今のあなたの言葉はその覚悟を踏みにじる行為にほかならないわ・・・・・人間風情が私を舐めるな」

 

真っ直ぐに俺を見据えながらレイナーレは言う。

 

・・・・・まったくもってその通りだな。俺の忠告はレイナーレへの侮辱でしかない・・・・・言われて気がつくとは俺もつくづく甘い。

 

『あなたは女の強かさを舐めすぎよ。ハーレムを志すって言うならそれは念頭においておくべきよ』

 

・・・・ああ、そうだなラム。

 

「くくくっ・・・・そいつは悪かったよレイナーレ。だが・・・・今一度覚悟することだな。俺はもうお前を手放すつもりは毛頭ないぞ?」

 

「上等よ。あなたが死ぬまで連れ添ってあげるわ」

 

ニヤリと互いに笑みを浮かべる俺とレイナーレ。

 

ああ・・・・俺が惚れた女は本当にいい女だな。髪の事抜きでも惚れてしまいそうだ。

 

そんな女と消えてしまうまで連れ添えるとは・・・・・俺は果報者だな。

 

 

 




餌付けが効きすぎてますね

まあ、そうでなくてもそれなりには朧を気に入ってますが・・・・

次回もまたお楽しみに!


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第13話

今回から朧がイッセーやリアス達に話をします

まあ今回は・・・・・

それでは本編どうぞ


 

レイナーレとの激闘から一夜明け、授業後私達はいつものようにオカ研の部室に集まっていた。ただ・・・・・いつもとは違うことが二つある。

 

その一つは・・・・・

 

「アーシア、やっぱり落ち着かない?」

 

「は、はい・・・・・少し」

 

この場にアーシアがいることが。

 

昨日、アーシアは部長の悪魔の駒で転生し、部長の眷属・・・・・僧侶となった。

 

アーシアが目を覚ました後、事情を説明したらそれはもう驚いていた。アーシアは熱心な信者だったから当然であろう。

 

だけど・・・・アーシアは受け入れた。これから悪魔として生きていく宿命を受け入れ、私達の仲間となったのだ。

 

ちなみにアーシアは部長の計らいによって近々駒王学園に転入することになっている。まあ、部長の眷属となるのだからその方が都合がいいのだろう。

 

ただまあ・・・・流石にアーシアが私の家で暮らすことになったことについては驚いたけど。部長曰く、関わったからには責任を持てということらしい。しかもアーシアまで乗り気だし・・・・・まあいいけどね。

 

冷静に考えればアーシアみたいな可愛い娘と暮らすなんて・・・・・やばい、役得すぎる。すっごい嬉しい。何かもう・・・・・えへへへへへ。

 

「イッセーさん?どうしたんですか?」

 

「へ?」

 

「・・・・イッセー先輩。いやらしい顔してました」

 

なん・・・・だと?

 

くっ・・・・アーシアとの生活のことを考えてついついにやけてしまっていたのか。これではアーシアに変な奴だと思われてしまう・・・・まあ、事実なんだけどさ。

 

エロくて同性愛者とか・・・・・どう考えても普通じゃないよね。

 

まあ、直すつもりは毛頭無いけどね!私は我が道突き進むぞ!ハーレム築くぞ!おっぱい揉みしだくぞ!

 

・・・・と、まあこの話はここまでにして。次行こう次。

 

もう一つ、いつもとは違うことがあるのだ。そのもう一つというのは・・・・・今日部室に集まった目的だ。

 

いつもは部活動やら悪魔としての活動のために私達は部室に集まったのだが・・・・今日はそれ以外にも目的がある。

 

それは、朧に話を聞くこと。昨夜、レイナーレとの戦いに割り込み、神器を用いて朧はレイナーレを殺した。それだけならまだしも朧は悪魔に関する事情も色々と知っているみたいだった・・・・故に私達は、それに関して朧から話を聞くために今部室に集まっているのだ。

 

そう、集まっているのだが・・・・その肝心な朧が部室に来ていない。

 

「イッセー、彼とは連絡は取れないの?」

 

「はい・・・・・電話しても出ません」

 

部長が連絡は取れるかと私に尋ねるが、残念ながらそれは不可能だった。電話しても朧の奴出ないんだよなぁ・・・・しかもあいつ今日学校休んでるし。

 

朧・・・・・なんで来ないんだよ?

 

「・・・・もしかして初めから来るつもりがなかったのかしら?」

 

「・・・・ありえますね。昨日ああ言ったのはその場から逃れるためだけの可能性があります」

 

溜息を吐きながら言う朱乃先輩の言葉に、木場が同意する。

 

「いや、いくら朧でも流石にそれは・・・それは・・・・」

 

「「「それは?」」」

 

「・・・・・十分にありえます」

 

だってあの朧だもんなぁ・・・・あいつ何考えてるのか私でもわからないことあるし。何よりあいつ・・・・・・卑怯とか卑劣とか言われても結構気にしないタイプだし。

 

・・・・やばい、なんか本当に朧の奴来ないで逃げたんじゃないかと思えてきた。すごく皆に申し訳なく思えてきた。

 

「なんか・・・・本当にすみません」

 

「イ、イッセーさんが謝ることじゃありません!」

 

「そうよイッセー。悪いのは彼の言葉を鵜呑みにしてしまった私と・・・・なにより私達を騙した彼よ」

 

「ちょっとちょっと。その言い草は流石に酷いんじゃないですかね?」

 

「「「!?」」」

 

私達の耳に、その場にいなかったはずの人物の声が聞こえてくる。

 

声のする方へと振り向くとそこには・・・・

 

「やあ。こんにちは」

 

ニッコリと笑顔を浮かべる朧が、部室に備え付けられたソファに座っていた。

 

「いやぁ、このソファやっぱり座る心地いいですね。うちにも欲しいなぁ」

 

「朧!?な、なんで!?いつから!?」

 

私は朧がそこにいたことに驚きを隠せずにはいられない。それは他の皆も同じようで、表情は驚愕に染まっていた。

 

だって・・・・そこにはさっきまで間違いなく誰もいなかったはずなのだから。

 

「いつから、と聞かれれば・・・・・誰よりも早くからと答えておこうか」

 

「・・・・どういうこと?」

 

依然笑顔のまま答える朧に、部長が睨みながら尋ねる。

 

「皆さんが部室に来る前から俺はこのソファに座っていましたよ。ただ、皆さんはそれに全く気が付かなかったようですが」

 

「まさか・・・・・幻術で姿をくらませていた?」

 

「イグザクトリー。その通りでございますよ姫島先輩」

 

どうやら朱乃先輩の言うとおりであったようで、朧はおどけたような態度で肯定した。

 

「・・・・趣味が悪い」

 

「あははははっ、きっついなぁ搭城ちゃん。でもさ、自分がいないところで自分の事どう言われてるかとかって気になったりしないかい?」

 

・・・・その気持ちちょっとわかるかも。自分の事どう言われてるかってやっぱり気になるからなぁ・・・・でも、だからって自分の姿消して話を聞くのもどうかと思うけど・・・・まあ、朧だからしょうがないか。うん。

 

「それより・・・・随分とまあ俺のこと疑ってくれましたね。そんなに俺って信用ありませんか?」

 

「そう思っているのなら姿を隠さずに堂々と待っていて欲しかったのだけれど?」

 

「うん、ごもっともですね。まあそもそも俺は幻術士・・・・信用なんてできるわけがないか」

 

「そんなことない!」

 

朧が自嘲気味の笑みを浮かべながらそういうのを聞いて・・・・私は思わず叫んでしまっていた。

 

「イッセー?」

 

「私は・・・・朧のこと信用してる。だって・・・・親友だし」

 

・・・・うわぁ。私今すっごい恥ずかしいこと言ってるよ。絶対顔赤くなってる・・・・信じられないくらい熱いもん。

 

でも・・・・言ってることは本当だ。私は誰がなんと言おうと・・・・たとえ朧が何者であろうとも朧の事を信用してる。

 

朧は・・・・私の一番の親友だから。

 

「・・・・・」

 

「どうしたんですか?」

 

何やら額に手を当てて黙り込んでいる朧に、アーシアが声をかける。

 

「いや、その・・・・ちょと涙腺が崩壊しそうになって・・・・」

 

・・・・え?それってまさか・・・・感極まってとか?朧が?

 

「えっと・・・・朧?マジで」

 

「悪いかよ!こちとら生まれてこのかたイッセー以外に親友はおろか友達なんて一人もいなかったんだ!だから嬉しかったんだよ!」

 

おう・・・・マジで感極まってだったのか。

 

というか・・・・朧、お前友達いなかったんだな。確かに私以外と話をしてるところなんて一回も見たことなかったけどさ・・・・

 

「「「・・・・・」」」

 

皆の朧を見る目がどこか優しい気が・・・というより同情に満ちてる気がする。さっきまで疑われてたのが嘘みたいだ。

 

「あ~・・・・朧。なんていうかアレだ・・・・何があっても朧のこと信用してるから。だから・・・・まあ・・・・ずっと親友でいよう」

 

自分でもかなりくさいこと言ってるって自覚はある。でも、こんな朧見てると・・・・言ってやらないといけないって気になっちゃったんだ。

 

それにまあ・・・・・・私自身が朧とずっと親友でいたいって思ってるしな。

 

朧といると・・・・楽しいし。

 

「ありがとうイッセー・・・・・・でもまあ、友達はいなかったけど彼女は何人かいたから寂しくはなかったけどね~」

 

「「「「感動を返せ!!」」」」

 

朧のこの一言に、アーシアを除くその場に居た全員が突っ込んだ。普段物腰柔らかい木場でさえだ。アーシアだけ苦笑いを浮かべているが。

 

「いやぁ、ごめんごめん。なんかああいう空気ってくすぐったくてさ~。あははははは」

 

朧・・・・本当にお前ってやつは。

 

まあ、朧のそういうところも私は親友として好きなんだけどさ。

 

ただ・・・・アーシア以外は全員朧にジト目向けてるけど。私だってそうだし。

 

「あ、そんなことよりもこれ」

 

朧は自分のすぐ隣に置いていた箱を手にとって差し出してきた。

 

「最近話題のシュークリーム。手土産にと思って1時間待って買ってきましたー」

 

「1時間待ってって・・・・お前まさかその為に授業サボったって言うんじゃないよな?」

 

「あはっ」

 

「あはっ、じゃないだろ・・・・」

 

「なんだよおい・・・・文句言うならイッセーにはあげないぞ?」

 

「ごめんなさい私が悪かったです。私にもください」

 

私は速攻で頭を下げて謝罪した。

 

プライド?そんなものよりもシュークリームだ。あのシュークリーム一度は食べてみたいと思ってたんだから。

 

その後、私達は皆で朧の買ってきてくれたシュークリームを味わった。特に小猫ちゃんは大変満足そうであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・あ、まだ肝心な話何もしてないや。

 

 




自分の評価を上げてから落とす・・・・そういうことを朧は平気でやります

そしてそんなことして楽しんでます

・・・・本当にろくでもない性格をしている

それでは次回もまたお楽しみに!


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第14話

今回朧が悪魔の事情に詳しい理由が明らかに

まあ、そこまで複雑でもないですが

それでは本編どうぞ


「さて、それじゃあそろそろあなたのことについてじっくりと聞かせてもらおうかしら?」

 

朧の買ってきたシュークリームに舌鼓を打った後、ようやく話を聞こうと部長が促した。

 

「わかりました。話してあげますよ。ただまあ・・・・すみません。その前にちょっと」

 

朧はアーシアに視線を移した。

 

「君は・・・・アーシアでいいんだよな?」

 

「あ、はい。そうですが・・・・」

 

「・・・・すまなかったアーシア」

 

「え?」

 

突然、朧はアーシアに対して深々と頭を下げた。

 

でも一体どうして・・・?

 

「もっと早くに俺が到着していれば・・・・神器(セイクリッド・ギア)を奪われず、君が死ぬことはなかっただろう。君を死なせてしまった責任は俺にある。本当に・・・・・すまなかった」

 

どうやら朧は結果的にアーシアを死なせてしまったことに罪悪感を覚えてしまっているらしい。

 

・・・・朧の気持ちはよくわかる。私だって同じなのだから。

 

もしも私がもっと早くアーシアを助けることができたのなら・・・・アーシアは死なずに、悪魔に転生することなんてなかった。

 

アーシアは悪魔として生きていくことを受け入れてくれはしたけれど・・・・・それでもアーシアを死なせてしまったという現実は変わらない。

 

だから罪悪感を感じずにいられないんだ。私も・・・・朧も。

 

「そ、そんな・・・・現世さんが謝る必要はありません。現世さんがレイナーレ様を倒してくダサったと聞きましたしむしろ私のほうが現世さんにお礼を・・・・」

 

「それこそ必要ないことさ。俺のやったことはいたずらに場をかき乱しただけ・・・・俺がいなくたって君は神器を取り戻すことができた」

 

・・・・朧の言うとおりだ。

 

あの時・・・・・朧が出てきたとき、部長がレイナーレを消そうとしていた。そうなれば神器を取り出すことができただろう。

 

はっきりと言ってしまえば・・・・・朧のやったことは朧の言うとおり、場をかき乱しただけ・・・・むしろ、あの時は朧が人質に取られたと思って焦ったぐらいだし。

 

「だから礼を言う必要なんてないよ。俺は・・・・俺のしたことはアーシア達からすれば意味のないことだからな」

 

「意味がないとわかっていたのなら・・・・・どうしてでしゃばってきたのかしら?」

 

部長が刺すような視線を朧に向けながら尋ねる。他の皆も同じように朧を見ている。

 

まあ・・・・あそこで朧が出てきたせいで余計な気を揉むことになったのは事実だからしょうがないといえばしょうがない。これに関しては私もフォローできない。

 

「どうしてか・・・・それはあの時言ったはずですよ。俺はあの堕天使・・・・レイナーレのことが好きだったんだ。彼女の黒く、美しい髪は俺がずっと追い求めていたものだ。だから・・・・・俺は心の底からレイナーレのことが好きになってしまった」

 

「それは私がレイナーレ・・・・夕麻ちゃんの写メを見せた時からか?」

 

「・・・・ああ。そうだよ」

 

朧はニコリと微笑みを浮かべながら言う。

 

そっか・・・・きっかけは私が見せた写メなのか。確かに朧好みの黒髪をしてると思ってるけど・・・・そこまでだったんだな朧。

 

「なら・・・・・なぜ好意を寄せるレイナーレを殺したんだい?」

 

木場は朧に尋ねる。

 

「・・・・もしかして私のため?」

 

私がレイナーレに殺されたから・・・・だから朧は怒ってレイナーレを・・・・殺した?

 

私のせいで朧は・・・・殺しを?

 

「違うよイッセー。というかそれも俺はあの時言ったはずだよ」

 

違・・・う?

 

「俺は・・・・親友のイッセーを殺し、追い詰め傷つけたレイナーレが嫌いだった。だけど・・・・・好きな相手を嫌うっていうのは中々に辛く、苦しいことなんだ。だから俺は・・・・レイナーレへの嫌いという感情を払拭するためにレイナーレを殺したんだよ。もっとも、殺しただけでは払拭できず、死者を冒涜しかねなかったんでグレモリー先輩に消滅させてもらったんだがな」

 

嫌いって感情を払拭するために・・・・・あくまでも自分の為に?

 

自分の為に・・・・朧はレイナーレを殺したのか。

 

・・・・なんだろう。自分の為に朧が殺したってことよりも朧が自分の為に殺しをしたっていうほうが・・・・哀しい。

 

「・・・・狂っているわね。嫌いという感情を払拭するために殺すだなんて普通じゃないわよ?」

 

朱乃先輩が非難するかのような目で朧を見る。まあ・・・・確かに普通じゃないもんな。

 

哀しいって思うのと同時に・・・・・恐いとも思ってしまったし。

 

「狂ってる・・・・か。ああ、そうだ。俺は狂っている。だけど・・・・それこそ人間らしいとは思わないですか?」

 

「・・・・え?」

 

朧?何を言って・・・・

 

「恋情、愛情、劣情・・・・・その感情のもとに狂狂狂狂(クルクルクルクル)と狂う・・・・・俺はそれを人間らしさだと思いますよ?あなた達悪魔にはわからないかもしれませんが・・・・・それは弱さ故に愚かで哀れで残酷な人間ならではの感情だとは俺は思っていますよ」

 

ゾクリ・・・と、背筋が凍るかのような感覚を私を襲った。

 

朧の表情は・・・・純粋だった。純粋な・・・・曇のない笑顔だった。だけど・・・・それなのにただひたすらに恐かった。今の朧は・・・・私の知っている朧じゃないように思えて仕方がない。

 

だからなのかわからないけれど・・・・何も言い返せなかった。

 

朧の言ってること・・・・私は理解できなかった。それは私が悪魔だからではないと思う。そもそも私はついこの間まで人間だったんだだから。だけど・・・・それでも朧の言うような人間らしさなんて理解できない。理解したくない。だから否定したいのに・・・・・その為の言葉が見つからなかった。

 

それは他の皆もそうなのか・・・・・何か言いたそうな表情をしているのに黙り込んでしまっていた。昨日まで人間であった・・・・誰よりも優しいアーシアでさえも、何も言えずに俯いている。

 

「なあ朧・・・・お前の言う『人間』ってなんなんだ?」

 

反論できない私は・・・・その代わりに朧に尋ねた。

 

「・・・・・その質問に何か意味はあるのかイッセー?」

 

朧は表情を変えずに・・・・・依然笑顔のまま逆に俺にそう返してきた。

 

・・・・ああ、そうさ。意味なんてないさ。ただ・・・・反論できなかったから苦し紛れに言ったに過ぎない。

 

朧は・・・・・それを見透かしているのだろう。

 

「・・・・」

 

私はまた黙り込んでしまった。その場に居た誰しもが・・・・何も言葉を発することができず、ただひたすらに重たいくうきのなか黙り込んでいた。

 

だが・・・・・そんな空気は直ぐに取り払われることとなる。ほかならぬ朧自身によって。

 

「・・・・おっも!ちょっとちょと!皆さん真剣に受け取りすぎですって!そんな難しい顔してないで、かる~い気持ちで適当に流せばいいんですよ。俺なんかが言ってることなんてさ~」

 

さっきまでの私の知らない朧じゃない・・・・そこにいたのはいつものふざけてて、道化じみた朧だった。

 

おどけたように言う朧・・・・・その態度のおかげで、私達を取り巻く重苦しい空気はどこかに行ってしまった。

 

「朧・・・・お前ってやつは・・・・」

 

「ん?俺ってやつは・・・・なんだ?」

 

「・・・・いいや、何でもない」

 

ああ・・・・なんだろう?朧のこういうところ見ると・・・・なんだか朧らしいって思えてしょうがない。

 

なぜだか・・・・安心する。朧が何を考えているのかわからないままだっていうのに。

 

「そっか。ならいいさ。それよりも・・・・話を逸らしまくってる俺が言うのもなんだけどいい加減肝心な話しようか。あなた達が本当に聞きたいのは・・・・もっと別のことだろう?」

 

もっと別のこと・・・・そうだ。私達が聞きたいこと・・・・それは・・・・

 

「・・・わかったわ。それじゃあ聞かせてもらいましょう。現世朧・・・・あなたは一体何者なの?」

 

私達が知りたいことは・・・・朧が一体何者なのか、だ。

 

「神器が使えるだけの普通の人間・・・・っていうのは当然なしですよね?」

 

「・・・・・当然です。現世先輩は悪魔のことを知っていた。私達が悪魔であるということも・・・・それなのに普通だなんて通用しない」

 

小猫ちゃんがジト目を朧に向けながら言う。

 

小猫ちゃんの言うとおり、朧は悪魔の事知ってるみたいだし・・・・・部長達が悪魔だってことも知ってるみたいだった。それなのに普通の人間だなんてありえない。

 

「ま、そう思われて当然・・・・か。でもまあ。そこまで大それたことでもないんですけどね。ただ・・・・俺の保護者が悪魔だってだけのことですからね」

 

・・・・は?

 

「保護者が悪魔って・・・・ええっ!?朧の親って悪魔だったのか!?」

 

「違う。保護者がだよ。親が悪魔だったら俺人間じゃないってことになるだろう」

 

あ、そうか・・・・驚きのあまり冷静さを失ってしまってたようだ。

 

そっか・・・・親じゃなくて保護者か・・・・

 

「って、それでも十分驚くべきことだぞ!?保護者が悪魔って!」

 

「あ~・・・・そりゃやっぱ驚くよな。まあ、ともかく。俺は保護者が悪魔で、その悪魔に悪魔のことやら天使、堕天使、それと神器のことなんかも教えてもらってたんだよ。だから詳しかったっていうこと」

 

「なるほど、そういう事情があったのね・・・・じゃあその悪魔の名前を教えてくれないかしら」

 

「・・・・・」

 

部長が朧に保護者の悪魔の名前を尋ねると、朧は苦笑いを浮かべながらそっぽを向いた。

 

「朧?どうしたんだ?」

 

「ああ、その・・・・え~と・・・・あ~・・・・グレモリー先輩。それ言わないといけないですか?」

 

「ええ。言ってくれないとあなたが言ってることが本当かどうか信用できないもの」

 

部長の言ってることはもっともだ。その悪魔の事がわからなければ、朧の言ってることが真実かどうかわからない。

 

・・・・まあ、私は普通に信じてるけどさ。

 

「ですか・・・でも・・・あ~・・・う~ん・・・・」

 

「どうしたのかしら?」

 

「いや、そのですね・・・・その悪魔っていうのは結構有名らしいんでグレモリー先輩でも知ってるとは思うんですが・・・・でもなんていうか・・・・言いたくないといいますか言っても誰も得しないといいますか・・・・むしろ知ったら後悔するといいますか・・・・」

 

・・・・そんなに知られたくないのか?なんか冷や汗まで出てる上にだんだん声が小さくなってるし。

 

「いいから早く教えなさい」

 

そんな朧に対して部長は容赦なかった・・・・まあ、部長からしたら朧はまだ疑わしい存在だということだろう。

 

ここで私が朧をフォローしてもいいんだけど・・・・正直私も朧の保護者について知りたい。だから何も言わないでおこう。

 

「・・・・わかりました。教えますよ。ただ、教えるのはグレモリー先輩一人だけにです。他の皆には・・・・先輩が話してもいいと判断したら話してください」

 

「・・・それって意味があるのかしら?聞けば私は皆に言うわよ?」

 

「・・・・知れば理解できますよ。俺がどうしてこんなに渋ってるのかが」

 

そう言うと、朧は部長にだけ聞こえるように耳打ちした。

 

すると・・・・

 

「追求してごめんなさい。私が悪かったわ」

 

部長は朧の肩をがしっと掴み、同情に満ちた目をして朧に申し訳なさそうに言った。

 

・・・・これは一体どういうことだろうか?あの部長がこんな態度をとるなんて・・・・余計にその悪魔がどういう存在なのか気になる。

 

この反応からして部長はその悪魔のこと知ってるみたいだけど・・・・

 

「あなたも・・・・・・・苦労してるのね」

 

「わかってくれますかグレモリー先輩・・・・・俺の気持ちが」

 

「ええ。彼女とは私も数回会ったことがあるけれど・・・・・あれは破天荒だなんてレベルじゃないわ」

 

「全くです」

 

どこか遠い目をしながら語り合う朧と部長・・・・というか、本当になんなんだ?いい加減私も気になってきたぞ。

 

「あの、部長・・・・その悪魔というのはいったい誰あのかしら?」

 

「朱乃・・・・・知らないでおいてあげて。というより知ったら本当に後悔するわ」

 

朱乃先輩が部長に尋ねるが、部長はさっきの朧と同じような事を言って拒否してしまった。

 

女王(クイーン)である朱乃先輩に聞かれても答えないなんて・・・・その悪魔というのはよほどヤバい存在だということだろうか?ますます気になってくるぞ。

 

私だけじゃなく、小猫ちゃんやアーシア、木場ももちろん朱乃先輩も知りたそうにしている。

 

でも・・・

 

「あの部長・・・・どうしても教えてもらえませんか?」

 

「イッセー・・・・ごめんなさい」

 

こうも頑なでは、教えてもらうのは難しいだろう。

 

ほんと・・・朧の保護者って何者なんだ?

 

 

 




朧の保護者は三大勢力の間では結構有名です

相当強いですし・・・・破天荒ですしね

ちなみにオリキャラですのでそこはご理解を

それでは次回もまたお楽しみに!


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第15話

今回で原作1巻は終了です

今後どうなることか・・・・

まあともかく本編をどうぞ



「えっと・・・・まあ、つまりは保護者が悪魔だから朧は悪魔のことについて詳しかったっていうことなんだな?」

 

とりあえず私は話をまとめることにした。

 

保護者が誰なのかについては・・・・・もう聞くのは諦めた。いずれわかるかもしれないしまあいいか。

 

「ああ。そうなるな。ちなみに、俺が駒王学園に入学したのもあのひとの勧めだ。グレモリーの庇護下に入ればそれなりに安心だとか言ってな・・・・実際はそうでもなかったけど」

 

朧はげんなりとした表情で言った。

 

「そうでもなかったって・・・・どういうこと?」

 

「無傷のはぐれ悪魔の死体・・・・・って言えば察してくれるか?」

 

無傷のはぐれ悪魔の死体・・・・あ。

 

「そう・・・・あなたとレイナーレとの戦いを見てそうだろうとは思っていたけれど、一年前からはぐれ悪魔を殺して部室の前に連れてきていたのはあなたの仕業だったのね」

 

「そうですよ」

 

部長が尋ねると、朧は素直に肯定した。

 

「・・・・どうしてそんなことをしたんだい?」

 

木場が険しい視線を朧に向けながら聞く。

 

「大した理由じゃない・・・・・ただの正当防衛だ」

 

「・・・・正当防衛?」

 

「そうさ。偶然会って殺されそうになった。だから正当防衛で殺した・・・・・何か問題はあるか?」

 

・・・・まあ、返り討ちにしなければ朧が殺されてたわけだし仕方ないよな。

 

「・・・・偶然で4回もはぐれ悪魔に出会ったのかい?」

 

私は納得したけど、なおも朧を睨むように見る木場。でも言われてみれば確かに4回もっていうのは偶然にしては出来すぎだ。疑われるのも仕方がない・・・か。

 

「それについては・・・・俺の方がうんざりしてるよ。駒王に来れば相違はぐれ悪魔もグレモリー先輩たちが処理してくれるから安全だと思ってたけど・・・・どうやら俺の縁の強さは半端ないらしい」

 

「縁の強さ?」

 

「・・・・昔からはぐれ悪魔に縁があるんだよ。これまで会って殺されそうになった回数は両手じゃ数え切れないほどなんだよ。ははははは・・・・」

 

「うん、なんかごめんね」

 

遠い目をして乾いた笑い声を上げる朧に、木場は申し訳なさそうに謝った。

 

どうやら朧は悪い意味ではぐれ悪魔と縁が強いようだ。両手じゃ数えきれないって・・・・少なくとも10回以上は会って殺されそうになっててことか?

 

・・・・うん、これはマジで同情する。木場も同じ気持ちなのかそれ以上は何も追求しなかった。

 

「・・・・・それじゃあわざわざ部室の前に連れてきたのは?」

 

今度は小猫ちゃんが朧に質問する。

 

「死体の処理に困ったからだよ。俺の力では殺すことはできても死体を消すことはできない。昨日のレイナーレのようにな。だから、わざわざオカ研の部室の前に連れてきたってわけだよ。処理を押し付けるために」

 

「・・・・そうですか」

 

「そのジト目はないでしょ搭城ちゃん。はぐれ悪魔の死体が人間に見つかって困るのは君達の方なんだよ?だから俺の判断は的確なものだろ」

 

まあ言ってることはもっともだよな・・・・・うん、朧の判断は正しいって悪魔歴の短い私でもそう思う。

 

「じゃあやっぱりバイサーについてはどうして放置していたのかしら?」

 

バイサー・・・・ついこの間討伐依頼が入ったはぐれ悪魔だ。確かに朱乃先輩のいうようにあいつはその場に放置されていた。

 

「バイサー・・・・ああ、ついこの間のはぐれ悪魔ですね。その理由は単純ですよ。あんなデカイの俺じゃ運べないからです。俺は神器を持ってるだけで身体能力は並の人間よりちょっといい程度なんですからね」

 

「あ・・・・確かにあのはぐれ悪魔でかかったしな」

 

あんなの並の人間の腕力じゃ運ぶことができない。というか悪魔になった私でも現状自信ない。

 

「それで困ってた時にちょうどイッセー達が来たから・・・・俺は幻術で姿をくらませて処理を押し付けえたってことですよ」

 

押し付けたって・・・・朧、言い方。

 

「なるほど・・・・そういうことね」

 

って、それでいいんですか朱乃先輩。

 

「納得していただけたようで何より・・・・・では、そちらが知りたがってたことは以上でいいですか?いいなら・・・・次は俺からの提案を聞いていただけますか?」

 

朧の言葉に、私とアーシア以外の全員が疑いの眼差しを朧に向けた。

 

・・・・何もそんなに警戒しなくても。まあ仕方ないとは思うけど。

 

「・・・・まあ、疑いの眼差しを向けたくなる気持ちはわかりますがね。でもお互いのためだと思いますよ?」

 

「それはあなたの言う提案次第よ。言ってみなさい」

 

「はい。それでは・・・・・俺をオカ研に入れてくれませんか?」

 

「「「「・・・・はい?」」」」

 

朧の提案に、皆して素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「・・・現世くん。一体どんな思惑があってそんな提案してきたのかしら?あなたの思惑を教えてくれないかしら?」

 

「もちろんですとも。グレモリー先輩達からすれば事情を話したとは言え俺は得体の知れない警戒するべき存在ですよね?」

 

「ええ。そうね」

 

そうねって・・・・部長容赦ないですね。

 

でも・・・・親友である私が言うのもなんだけど朧は確かに傍から見ると疑わしい。まあ私は全面的に信じてるけど。

 

「だからこそ、俺をオカ研に入部させるべきなんですよ」

 

「えっと・・・・朧?普通逆なんじゃ・・・・疑わしいなら入部なんてさせないと思うけど?」

 

「そうでもないぞイッセー。考えてもみろ。疑わしい俺を野放しにして何かされると厄介だろ?それよりも手元に置いて監視、あるいは飼い慣らす方が手間が少ないと思わないか?」

 

「な、なるほど・・・・」

 

確かに言われてみると納得する。

 

納得するけど・・・・・・朧、自分で言ってて悲しくならないのだろうか?

 

・・・・いや、ならないか。朧だし。

 

「というわけで俺をオカ研に入れてください。俺は結構役に立ちますよ?部の活動はもちろんのこと悪魔としての活動まで幅広くお手伝いいたしますよ。先輩達としても希少な幻術使いの力・・・・・有効に使ってみたいとは思いませんか?」

 

今ならお買い得とでも言うかな様に自分を売り込む朧。

 

「・・・・確かにまあ、監視も兼ねてあなたの力を利用できるっていうのは私たちとしては得といえるわね。でも・・・・あなたの方はどうなの?さっきあなたはお互いのためと言っていたけれど・・・・あなたの得はなんなのかしら?」

 

なるほど・・・・確かに部長の言うとおり、朧には何の得も無いように思える。それなのにお互いのためって言ってた・・・・・どういう事なんだ?

 

「俺の得は・・・・イッセーとアーシアのフォローが出来ることです」

 

「「・・・・え?」」

 

朧の言葉に・・・・私とアーシアは思わず声を漏らしてしまった。

 

「イッセーもアーシアも転生したばかりの新米悪魔・・・・色々と戸惑うことも多い。俺は悪魔に育てられたから悪魔の事情については二人よりも詳しいですからね。色々とフォローしたいんですよ」

 

「・・・・それがあなたの得だって言うの?直接的な利益はないじゃない」

 

「ありますよ。自己満足っていう利益がね。イッセーは俺の親友だし、アーシアが悪魔になった責任の一端は俺にある・・・・・だから二人をフォローすることは俺の自己満足になる。それが俺の利益ですよ」

 

「朧・・・・お前」

 

この言い方だと自分のためだって聞こえる。でも・・・・実際はそうではないと私はわかっていた。

 

朧は私とアーシアの為にオカ研に入ろうとしているのだ。

 

「あの・・・・現世さん。私のことは気にしなくても・・・・」

 

「アーシアのためじゃない。あくまでもこれは自分の為だ。自己満足だって言ってるだろ?」

 

あくまでも自己満足だと主張する朧。

 

でも・・・・無駄だよ朧。そうじゃないだなんてこと私にも・・・・今日が初対面のアーシアにだってわかるんだ。

 

本当に、察しがいいくせに・・・・・なんでそういうところは抜けてるんだお前は?

 

「・・・・いいわ。そういうことならオカ研への入部を許可するわ」

 

部長は朧の入部を認めた。

 

「・・・・ありがとうございますグレモリー先輩・・・・いえ、部長と呼んでもよろしいですか?」

 

「ええ。構わないわよ。明日からきっちり働いてもらうわよ?」

 

「了解です。んじゃ俺はこれにて失礼します。皆さん明日からよろしくお願いしますね」

 

話が終わったそばから、朧はそそくさと帰り支度をし始める。

 

「え?もう行っちゃうのか朧?」

 

「ああ。入部決まったとは言え本格的に活動するのは明日からだし。今日のところは家に帰って入部届けでも書いてるよ。というわけでまたなイッセー」

 

手をひらひらっと私に向けて振った後、朧は部室から去っていった。

 

「・・・・イッセー。あなたの親友は相当な問題児なようね」

 

額に手を当てて、ゲンナリとした様子で部長はいう。他の皆・・・・アーシア以外は同じような表情をしている。

 

「まあ、否定はしません。でも・・・・それでもいいところも結構あるんですよ?あれで結構優しいですし・・・・」

 

「それはわかります。私のことも気にかけてくれていますし」

 

私の言葉に、アーシアは同意してくれる。まあ、確かに朧はアーシアのことは何かと気にかけてるみたいだし。

 

「まあ、その辺りは明日からの行いで判断させてもらうわ。さて、彼との話も終わったことだしイッセーはアーシアを連れてチラシを配って来てくれるかしら」

 

「わかりました」

 

チラシ配り・・・・それは悪魔にとっては大事な下積みの仕事で、朧との話が終わったら行くことになっていた。

 

このチラシを決められた縄張りのなかの欲張りな人間のおうちに配り、人間はチラシから悪魔を召喚し契約。チラシは一度しか使えないから使用されたら再びチラシを配る。これが新米悪魔なら誰しもが通る下積みのお仕事。

 

最近は私も契約の仕事をしていたが、今回は悪魔として私の後輩に当たるアーシアとの付き添いという形で私も同行する。

 

「それじゃあ行こうかアーシア」

 

「はい。よろしくお願いしますイッセーさん」

 

私はアーシアを連れて、チラシ配りに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・部長、本当に彼の入部を許可しても良かったのですか?」

 

現世朧が去り、イッセーとアーシアがチラシ配りに向かった後、朱乃が真剣な面持ちで私に尋ねてきた。

 

「朱乃は彼の入部には反対なのかしら?」

 

「正直に言えば・・・・反対です。事情を聞いたとは言え彼は得体がしれませんから。私は彼の保護者が誰なのかを聞いていませんし・・・・・やはり教えてはくださらないのかしら?」

 

「・・・・ごめんなさい。それは本当に追求しないでちょうだい」

 

・・・・正直あの方が保護者というのはあまりにもかわいそうだわ。別に悪い方ではないのだけれど・・・・ある意味では悪魔の歴史上最大の問題児と言っても差し支えないわね。

 

「よほどなんですね・・・・ですが僕も朱乃先輩と同じ気持ちです。彼を入部させるのはあまりにもリスクが高いと思います」

 

「・・・・幻術士は欺くことに秀でている。何をしでかしてくるのかわかりません」

 

どうやら祐斗も小猫も朱乃と同意見のようね。まあ、気持ちはわからなくはないけれど。私だって・・・・現状は彼を信じるつもりは毛頭ないのだから。

 

けど・・・・

 

「あなた達が不安に思う気持ちはわかるわ。確かに彼は怪しい存在・・・・・でも、彼の言うとおり、監視するのなら手元に置いておいたほうがいいのも事実だわ。目の届かないところで妙な動きをされても対処が遅れるもの」

 

彼相手に対処が遅れればおそらく致命的だわ。仮に私達の敵になるとしたら・・・・間違いなく驚異となる。

 

だからこそ、近くに置いて監視する。そして・・・・

 

「もしも彼が私達に仇なす敵だと判断したその時は私が彼を・・・・」

 

「消す・・・・ですか?」

 

「「「「!?」」」」

 

私達の耳にこの場から去ったはず者の声が聞こえてくる。

 

声のする方に振り返れば・・・・・そこには案の定現世朧が居た。

 

「・・・・帰ったのではないの?」

 

「いいえ。実は今ここにいる四人に言いたいことがあったので残ってました」

 

「そう・・・・それで姿をくらましていたということ。随分と趣味が悪いわね」

 

「結果として盗み聞きしてしまったことに関しては悪いと思っていますよ?だからこうして命の危機に瀕しているのも仕方がないと思ってますし」

 

彼の周りを雷の魔力を纏う朱乃が、魔剣を突きつける裕翔が、直ぐに殴り飛ばそうと構える小猫が取り囲んでいる。何か少しでも怪しい動きをしたら、直ぐに三人は彼に攻撃を仕掛けるでしょうね。

 

かく言う私も、すぐに破滅の魔力を開放できるように構えているけれど。

 

でも・・・・そんな状況であっても、彼は一切慌てふためくことはなかった。想定していたのか・・・・それともこの状況でさえ驚異ではないといったかのように笑みを浮かべている。

 

「まあ、この対応は正解だと思いますよ。もしも俺が怪しい動きをしたのなら迷いなく消したほうがいい。それがあなた達にとっての最善だ」

 

「・・・・命の危機に直面しているというのに余裕そうね」

 

「そうでもないですよ?内心では恐くて心臓バクバク、早めに警戒解いて欲しいなと思ってぐらいですから。まあ、それは無理だってこともわかっていますがね」

 

・・・・何が恐くて心臓バクバクよ。イッセーじゃなくても嘘だってわかるわ。

 

「とりあえず警戒したままでもいいので聞いて欲しいんですけど・・・・発言を許可してくれますか?」

 

「・・・・いいわ。言ってみなさい」

 

「ありがとうございます部長。それでは・・・・・・イッセーを幸せにしてください」

 

現世朧は今日一番の真剣な表情でそう言った後、深々と頭を下げる。

 

その彼の態度に・・・・私達は思わず面をくらってしまった。

 

「さっきばフォローすると言いましたが・・・・・俺は所詮人間です。ほぼ確実に俺はイッセーよりもずっとずっと早くに死にます」

 

・・・・まあ、その通りね。イッセーは悪魔・・・・並の人間よりも数十倍、あるいは数百倍は長く生きることとなる。

 

「あいつは俺の大切な親友なんです。だからこそ俺は・・・・イッセーには幸せになってもらいたい。でも・・・・あいつよりも先に死ぬ俺ではあいつを幸せにしてやることなんてできるはずがない。だったら・・・・イッセーと長く時を同じくするあなた達に託すしかない」

 

彼のその言葉には、一切の偽りがないように思えた。

 

彼は・・・・本気でイッセーの幸せを願い、私達にその願いを託している。

 

「あの時・・・・木場がイッセーを迎えに来たとき、正直嬉しかったんです。木場がグレモリーの眷属の一人だって知っていたから。グレモリーの一族が誰よりも愛情深いだということは聞いていた・・・・部長の眷属になれたのならばイッセーが幸せになれる可能性は高いと思ったんです」

 

私の眷属になれたからイッセーが幸せになる可能性が高い・・・・それは私にとって嬉しい言葉であった。

 

疑わしいと思ってはいるけれど・・・・それでも彼にそれを理解されていることが嬉しかった。

 

「改めてお願いします。イッセーを・・・・幸せにしてください」

 

再び彼は私達に頼み込む。

 

彼の真摯な姿に・・・・私達はいつの間にか彼への警戒をといていた。

 

「・・・・言われるまでもないわ。イッセーは私の大切な眷属・・・・幸せにするのは私の義務よ。もちろん、イッセーだけでなく朱乃も祐斗も小猫もアーシアもよ」

 

そうだ・・・・私はグレモリーの名において、眷属達をなんとしても幸せにしてみせる。それが私の・・・・義務であり誇りだから。

 

「・・・・それを聞けてよかった。ありがとうございます」

 

安心したかのように、彼は頭をあげてニッコリと微笑みを浮かべる。

 

その微笑みは、年相応の少年のものであった。

 

「他の皆さんもイッセーの事よろしくお願いしますね・・・・・ただ木場」

 

「なんだい?」

 

「念を押しておくけど・・・・イッセーに手を出したらもぐからな?覚えてろよマジで?」

 

「・・・・・肝に銘じておくよ」

 

彼がものすごい威圧感を放ちながら言うと、祐斗は冷や汗を流しながら了解する。

 

・・・・一体何をもぐつもりなのか気になったが、正直恐くて聞けなかった。

 

「それならよろしい。それでは今度こそ・・・・また明日」

 

そう告げると、彼は部屋から去っていった・・・・今度こそ本当に行ったわよね?

 

それにしても・・・・・今の彼の話を聞いて少しでも気を許してもいいと思ってしまった。

 

どうやら私も・・・・大概甘い性格をしているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまレイナーレ」

 

グレモリー達との話を終えて、帰ってきた俺はリビングでくつろいでいたレイナーレに声をかける。

 

「おかえりなさい」

 

俺が帰ってきたことに気がついたレイナーレは、俺に視線を向けて言う。

 

・・・・・おかえり、か。

 

「・・・・」

 

「なにキョトンとしてるのよ?」

 

「ああ、ごめん。つい・・・な。おかえりって言ってもらえるとは思わなかったから」

 

「なに?嫌だったのかしら?」

 

「その逆、すごく・・・・すごく嬉しかった」

 

「・・・・あっそ」

 

どうでもいいといったようにそっぽを向けるレイナーレ。

 

「・・・・その程度で嬉しいって思うなら、特別にこれからも言ってあげるわ」

 

そっぽを向きながら、頬を少し紅く染めながら言うレイナーレは・・・・とても可愛いかった。

 

「・・・・ありがとうレイナーレ。さて、それじゃあ夕飯の準備はじめるな。リクエストは」

 

「中華がいい。あと早くして」

 

「了解。あ、そうだこれ夕食までの繋ぎに」

 

俺はレイナーレの為に買っておいたシュークリームの入った箱を差し出す。保冷剤をたっぷり入れて貰ってたから大丈夫のはずだ。

 

「・・・・こういうのって普通ご飯の後に食べるものじゃないかしら?」

 

箱を開け、シュークリームを確認したレイナーレが言う。

 

「いらないなら冷蔵庫にしまっておくけど?」

 

「・・・・別にいらないとは言ってないわよ。食べるわ」

 

レイナーレは箱からシュークリームを取り出し、食べ始める。

 

「・・・そっか。それじゃあ急いで作るからな」

 

美味しそうにシュークリームを食べるレイナーレを見た俺は、夕食作りに台所に向かった。

 

 

 

 

これからは、こういう生活が続いていく

 

学校ではグレモリー達のもとで悪魔の活動の手助けをし、家ではレイナーレと過ごす

 

・・・・レイナーレのことがグレモリー達にバレないようにするのはそれなりに大変だろう。そしてバレたら・・・・高確率でグレモリー達と敵対することになる

 

なかなかリスキーだ・・・・だけど・・・・

 

それでも・・・・レイナーレがいればそれでいい

 

それで・・・・満足だ

 




これで今回の章は終了です

まあ、次回でこの章までのキャラ設定を載せますが

次章からは原作二巻の内容・・・・・そこで朧のハーレム要員が登場しますのでお楽しみに

それでは次回もまたお楽しみに!


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一章終了時点での設定

今回は一章終了時点でのキャラ設定等です

ただ、一部ネタバレもありますのでご注意を

それではどうぞ


オリジナルキャラ

 

名前  現世朧(偽名)

年齢  16歳

性別  男

種族  人間

神器(セイクリッド・ギア)  『現に寄り添う幻(ニア・リアル)』(偽名)

 

駒王学園に通う本作の主人公。パッと見はクールなイケメンに見えるが、中身は青春を謳歌しまくってるエロ少年。日々親友の兵藤一誠とエロエロトークに花を咲かせていた。外見はいいが、性格に難があるため大抵の女子からは避けられるor白い目を向けられている。しかし、それでも一部マニアックな女子からは人気があり、彼女がいた時期が何度もあった。

 

女性の髪、うなじ、くびれ、鎖骨に並々ならぬ執着を持っており、特に髪に対してその傾向が顕著。最近では瞳や太ももの彼の執着対象になりつつある。ただ、おっぱいおや尻といったものでもきちんと興奮するためアブノーマルではない。

 

観察力に優れており、頭がよく勉強もできるが学校の成績は悪い。当人は「俺の性格で成績いいとかありえないでしょ」と言っており、わざと成績を落としている。

 

実は普通の人間ではなく、神器を所有しており、さらには保護者である悪魔から悪魔、天使、堕天使、神器の事を聞いているためそのあたりの事情は人間にしては詳しい。しかし、本人は過去のある出来事が原因で三種族のことを基本憎んでいる。とくに悪魔・・・・とりわけはぐれ悪魔に関しては両手では数え切れないほどに襲われ、殺されそうになっているため根は深い。

 

神器の『現に寄り添う幻』は強力な幻術を操る能力を持っている。この幻術が与える影響力は大きく、幻の傷によって幻の痛み、出血を生じさせ、それによって殺すことも可能。例えば脳天を幻の銃弾で撃ち抜けば死ぬし、幻の血が流れれば出血多量と錯覚させて死なせることもできる。なお、『現に寄り添う幻』は朧がつけた偽の名前であり、本当の名前は別にある。なお、現世朧という名前も神器の能力からつけた偽名である。

 

戦闘では幻で作った二丁の拳銃を使うことが多い。これは、朧自身が普通の人間よりも少し優れている程度の身体能力を有しておらず、拳銃ならば身体能力にあまり左右されないという理由から来ている。なお、視力(動体視力や静止視力)に関しては常人を遥かに超えるポテンシャルを持っていることも理由の一端となっている

 

ハーレムを築くことを志しているが、実はそれはポーズであり、親友であるイッセーと楽しく過ごせればそれでいいと思っていた。しかし、そんな時にイッセーにレイナーレ(夕麻)の写メを見せられたことでそんな思いが一変。初めはイッセーの彼女ということで諦めていたが、レイナーレがイッセーを殺す事を目的とした堕天使とわかるとなんとしてもレイナーレを手中に収めようと画策し、イッセー達を騙して見事レイナーレを自らの庇護下に置くことに成功した。

 

第一章終了時ではレイナーレの事を隠しながらも、親友であるイッセーと結果的に見殺しにしてしまったことが原因で悪魔に転生してしまったアーシアのフォローのためにオカルト研究部に所属。リアス達の協力することとなった。

 

現状、本作で一番のクズでカスでゲス。こんなのが主人公なのだから色々と終わっている。

 

 

 

名前 ラ・ムー(本人はラムと名乗る)

性別 女(?)

種族 神器、ドラゴン

 

朧の神器に宿るドラゴン。詳細はまだ秘密。

朧の相棒であり、ときにアドバイスもすることもあるが基本的には自分が楽しければそれでいいという愉悦主義者。

自分の愉悦を優先しつつも、それでも朧のことはとても大切に思っており、朧の幸せを切に願う。

朧にとって双子のお姉さん的存在(しかし朧、ラム共に自覚していない)

 

 

朧の保護者

性別 女

種族 悪魔

 

朧の保護者の悪魔。詳細は秘密であるが、朧の事を怪しんでいたリアスが彼女が保護者だということを知った瞬間に朧に深く同情するほどには破天荒。朧も彼女には頭を抱えている。

 

 

 

 

原作キャラ

 

名前 兵藤一誠

年齢 16歳

性別 女

種族 人間→悪魔

神器 『赤龍帝の籠手ブーステッド・ギア』

 

原作主人公。本作ではTSして女になっているが、それでも基本的な考え方は原作と変わりなし。女の子大好き、おっぱい大好きな百合少女。

朧のことは親友として非常に仲がよく、自身のコンプレックスである胸を触らせるほど。

 

 

 

 

名前 レイナーレ

性別 女

種族 堕天使

 

本作のメインヒロイン。朧に目をつけられてしまったがために、イッセー達の目の前で朧に殺され、生き返らされた挙句、共に暮らすこととなってしまった現状ではある意味一番可愛そうな子。

朧に対して吊り橋効果的なものが発揮されてしまったがために、若干好意を寄せてしまっている。しかし、その吊り橋に当たるのが朧であるという。

自分を殺した朧を憎いと思いつつも好意を寄せてしまっていることに若干頭を抱えているが、とりあえず美味しいご飯が食べられるからいいやと思っている。結構楽天的なのかもしれない。

今後、朧に対する好感度がどんどん高まっていくことを強いられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現状での朧に対する好感度

 

レイナーレ

4/10(このうち2は餌付けによるもの)

 

イッセー

8/10

 

アーシア

5/10

 

リアス及び他の眷属

2/10

 

 




現段階ではまだまだ秘密は多いです

朧が抱える秘密がなんなのか・・・・それはいずれまた

それでは次回もまたお楽しみに!


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第二章 麗しきうなじのフェニックス
第16話


今回から新章突入!

まあ、まだ原作2巻の内容には突入しませんが・・・・

それでは本編どうぞ


レイナーレを連れ帰ったり、グレモリー達に接触してからはや一週間。俺はリスクを背負いながらもそれなりに充実な生活を送っていた。

 

現在時刻は朝の6時。俺は朝食を作っている。

 

今日の朝食のメニューはだし巻き卵と焼き魚、ほうれん草のお浸しに味噌汁、白米。人によっては多いと感じるかもしれないが、朝はこれくらいでちょうどいいと俺は思っている。

 

俺がだし巻き卵を作る準備を進めていると・・・・・レイナーレが台所にやってきた。

 

「・・・・おはよう」

 

まだ眠いのか、普段よりも瞼が垂れ下がっているレイナーレが俺に朝の挨拶をしてくる。ときめきました。

 

「ああ、おはようレイナーレ。随分早いお目覚めだが・・・・今日も手伝ってくれるのか?」

 

「・・・・悪い?」

 

「いいや、大歓迎だ。それじゃあ味噌汁の方お願いな」

 

「わかったわ」

 

台所に立ち、作業を開始するレイナーレ。この光景にも慣れつつある。

 

あれは4日前のことだった。俺が朝食を作っていると、レイナーレがやってきて自分も手伝うと言いだしたのだ。大丈夫だと初めは断ったが、どうやらレイナーレとしては俺一人に全部やらせるのが気分が悪いらしく、どうしても手伝うと言って聞かなかったのだ。そしてそこまで言ってくれているのに断るのも失礼だと思い、俺はレイナーレの手伝いを承諾。その日以降、レイナーレが朝食を作るのを手伝ってくれるようになった。

 

なお、その時礼を言いながらレイナーレの頭を撫でたら、顔を紅くしながら俺を睨み、ボディブローを叩き込んできた。ボディブローは痛かったけどあのツンデレっぷりは正直反則級の可愛さだったなぁ。

 

にしても・・・・・

 

「・・・・やっぱり意外だな。レイナーレが料理できるなんて」

 

そう、レイナーレは料理ができるのだ。包丁の扱い方はうまいし、味付けに関しても中々俺好み。正直レイナーレにそこまでの料理スキルがあるとは思わなかった。

 

いや、料理だけではない。実は朝食の手伝いを申し出た日から、家の掃除やら洗濯やら買い物やらも一部レイナーレがやってくれているし、昼食も自分で用意するようになったほどだ。

 

まあ、夕食は俺一人で作ってるからな。口には出さない夕食に関しては俺に全面的に任せてしまうほどにはレイナーレの楽しみになっているようだ。これに関しては素直に嬉しい。

 

まあともかくだ・・・・・このレイナーレの妙な主婦レベルの高さは『ギャップ萌え』という言葉を送りたいほどなのである。

 

「なに?悪いのかしら?」

 

「いや、そういうわけじゃないけどさ・・・・なんていうかそういうことできるって思ってもみなかったから」

 

「あっそ・・・・一応一人で暮らしてたから最低限のことは自分でできるようにしておいたのよ」

 

「なるほど・・・・・そのスキルを俺のために発揮してくれるだなんても感謝感激感涙だな」

 

「べ、別に朧のためじゃないわ。あくまでも私があなたの世話になりっぱなしっていうのが気に食わないからやっているだけよ」

 

俺のためじゃないと言いつつも、一瞬言葉に詰まった上、少々頬が紅い。つまり今言ったことは建前・・・・嘘ということだ。

 

「家事スキルが高くても嘘の方はまだまだだなレイナーレ。もっと俺を見習わないと」

 

「ッ!!な、なんであなたなんかを見習わないといけのいのよ」

 

誤魔化すようにそっぽ向いていうレイナーレであるが、動揺を隠しきれていない。

 

そんなレイナーレもまた・・・・愛おしくて仕方がなく感じる。

 

「そか。まあ確かに俺なんかを見習うなんてやめたほうがいいわな。なんというか屈辱だろうし」

 

「あなたそれ自分で言ってて悲しくないの?まあ、いいけれど。それよりも口よりも手を動かしなさい」

 

「それ俺のセリフな。ちょっと手止まってるぞ?ちなみに俺は一切止まってません」

 

「・・・・・本当に腹立たしい」

 

そう憎まれ口を叩きながらも、先程までの会話で止まっていた作業を再開するレイナーレ。そんなレイナーレを見て、俺は心がポカポカと温まるのを感じた。

 

『あらあら、朝からお暑いことね。私火照っちゃったわ・・・・この火照りどうやって沈めてくれるのかしら?』

 

・・・・・ラムが何か言ってるが、俺には聞こえない。聞こえないからスルーしよう。

 

『うふふっ。意地悪ね』

 

・・・・・スルーしよう。突っ込んだら俺の負けだ。

 

『あ、いっそのこと朝ごはんの前にこの場でレイナーレちゃんをいただいて・・・・』

 

もうお前黙れよ。

 

『突っ込んだわね。朧の負け』

 

・・・・・ちくしょうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイナーレと作った朝食を食べた後、俺は制服に着替えて家を出る。その際、「行ってきます」とレイナーレに言ったら当たり前のように「行ってらっしゃい」と返してくれた。

 

なんというか・・・・・やっぱこういうのいいよなって思う。ときめました(本日二回目)。

 

「朧、おはよう」

 

「おはようございます朧さん」

 

俺がときめきにふけっていると、二人の少女が挨拶してきた。どうやらいつの間にか待ち合わせ場所に来ていたようだ。

 

「ああ。おはようイッセー、アーシア」

 

俺は二人に・・・・イッセーとアーシアに挨拶する。イッセーとは頻繁に登校することはあったが、今ではアーシアも一緒だ。まあ、アーシアがイッセーの家で暮らすことになったので当然といえば当然だが。

 

まあそれはともかくとして・・・・

 

「アーシア、イッセーとの生活はどうだ?」

 

「すごく楽しいです。何もかも新鮮で・・・・それにイッセーさんもイッセーさんのお父さまとお母さまも良くしてくれてますし・・・・私とても幸せです」

 

ニッコリと気がレのない笑顔で言うアーシア・・・・何この子天使?いや、悪魔なんだけども。

 

「こんなに幸せな思いができるなんて私は恵まれています。ああ。主よ・・・・うっ」

 

「ア、アーシア!大丈夫か!?」

 

手を組んで祈りを捧げると、アーシアは頭痛に襲われる。イッセーはそんなアーシアを心配そうにしている。

 

アーシアは悪魔だ。悪魔なのだから神に祈りを捧げればダメージを受けてしまう。元々シスターであったアーシアにはこれは辛いだろう。

 

まあ、何度もダメージを受けながらも神への祈りをやめようとしないその根性には素直に感心するが。

 

にしても・・・・

 

「神様・・・・か」

 

「どうしたんだ朧?」

 

「・・・・何でもないよ。それにしても、アーシアは本当に信仰心が厚いんだな。感心するよ」

 

「関心だなんて・・・・私にとって神様を信仰するのは当然のことなので。主よ・・・あうっ」

 

「朧!」

 

「いや、そんなつもりは全くなかったんだけど・・・・ごめんアーシア」

 

「い、いえ。朧さんが謝ることはありませんよ」

 

間接的にとは言え、ダメージを受ける要員を作ってしまった俺に、アーシアは頭を抑えながらも謝ることはないと言ってくれた。

 

なんというか・・・・本当に優しい子だなアーシアは。

 

でも・・・・だからこそ思う。やはり現実は残酷だと。

 

だって・・・・アーシアが祈りを捧げる神様はもう・・・・

 

「・・・・なあアーシア。実は俺も神様を信仰していてな」

 

「え?そうなんですか?」

 

「ああ。その神様っていうのが美髪・・・」

 

「アーシアに変なこと教えるな!」

 

イッセーが俺とアーシアの間に割り込んで邪魔してきた。

 

解せぬ・・・・せっかく俺がアーシアに美髪神、鎖骨神、くびれ神、うなじ神という偉大な神様を教えてやろうと思ったのに。

 

『朧、それは余計なお世話って言うのよ?』

 

ラム・・・・言われなくてもそんなことわかってるっての。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・・」

 

午前の授業を終え、現在俺、イッセー、アーシアの3人で昼食を食べているのだが・・・・・イッセーは落ち込んでいた。

 

理由は先程の英語の授業で行われた抜き打ちの小テストだ。どうやらイッセーはその小テスト、出来がよろしくなかったらしい。

 

「ははははははは・・・・・全っ然わかんなかったよ。全く解けなかったよ。何かもう泣きたいよ」

 

「元気を出してくださいイッセーさん」

 

この世の終わりみたいな表情を浮かべるイッセーをアーシアが励ます。

 

「・・・・悪魔になったおかげで英語だろうながいんだろうが言葉通じるようになったのはいいけど・・・・文字に関してはさっぱりだからやっぱり辛い」

 

悪魔は自分の言葉を相手が一番聞きなれた言葉に聞こえるようになっており、その逆も然りのためどの言語でも言葉が通じる。だが、それはあくまでも音声言語の話なので文字として書かなければならないテストではほとんど効果を発揮しないのである。

 

それ故に・・・・イッセーはこのように落ち込んでいるのだ。

 

「まあそう落ち込むなよイッセー。小テスト程度じゃ成績に大きく影響を与えるわけじゃないさ。そもそも人生においてそこまで重要なものでもないしさ。俺なんて寝てたから白紙で提出したし。名前さえ書いてないぞ?」

 

「いや、それはどうかと思うぞ?」

 

「朧さん・・・・流石にそれは・・・・」

 

・・・・なんかイッセーとアーシアに呆れたように言われた。解せぬ。

 

「というか本当にお前変わってるよな。あれぐらいの問題なら余裕で全部解けるくせに」

 

「え?そうなんですか?」

 

「そうだよアーシア。朧は頭いいし勉強できるんだ。ただ成績はひたすら悪いけどな。それこそ進級ギリギリだったほどに」

 

「まあ、わざと成績落としてるからな」

 

「どうしてわざわざ自分から成績を落としてるんですか?」

 

「いや、だって俺のキャラで成績優秀ってなんか違うじゃん?」

 

「まあわかるけど」

 

「わ、私はわかりません」

 

俺の言い分にイッセーは理解を示してくれたが、アーシアにはわかってもらえなかったようだ。

 

・・・・まあ、純粋なアーシアではわからなくてもしょうがないかもしれないが。

 

こんな感じで他愛のない話を3人でしていると・・・・会話に割り込んでくるものがいた。

 

「あらら?両手に花だなんて約得なシチュエーションじゃない」

 

「げ・・・・桐生」

 

会話に割り込んできたのは同じクラスのメガネ女子・・・・桐生藍華であった。

 

桐生はイッセーの数少ない女友達であり、その縁でアーシアともすぐに友達になっていた。それ故に、桐生が来たことに二人は何も文句は無いようだが・・・・俺は違う。

 

「私とあんたの仲で『げ』はないんじゃないの朧?」

 

「・・・・あーあーそうですね。ごめんなさいね桐生さん」

 

「わかればよろしい」

 

俺の誰がどう見ても嫌そうな謝罪を聞いて、満足そうに笑みを浮かべる桐生。

 

ああ・・・・ほんと気分悪い。

 

「あの・・・・朧さんと桐生さんってどういう関係なんですか?」

 

「あ、それ私も気になる。なんだかんだ今まで聞いたことなかったし」

 

俺と桐生の関係が気になったらしいアーシアが尋ねてくる。そして、イッセーもそういえば知らなかったと同調してきた。

 

「・・・・別に大した仲じゃない」

 

「そうそう。ただの元・恋人同士ってだけだよ?」

 

「へ~、元・恋人か・・・・は」

 

「こい・・・びと?」

 

俺と桐生の関係を聞き、イッセーとアーシアはポカンとした表情をする。

 

だが、それも少しの間だけで・・・・

 

「「えええぇぇぇぇぇぇっ!?」」

 

二人の表情は一気に驚愕に染まった。

 

「うんうん。いい反応してくれるね~」

 

「はあ・・・・そうだな」

 

楽しそうに笑みを浮かべる桐生。それに対して、俺はそんな愉快な気持ちにはなれずにいた。

 

桐生の言うとおり、俺達は元・恋人同士だった。1年の終わり頃に桐生から告白され、桐生のうなじが俺の好みに近かったため了承して付き合っていたのだが・・・・正直、桐生のことはそこそこ本気で好きだった。

 

これまで、付き合った女の子は5人いるのだが、桐生はその中でも一番好きだったと断言できる。一緒にいると楽しいし、会話も弾んだ。デートも何度かして・・・・まあ、したこともある。

 

だけど・・・・俺はある日突然に桐生に振られた。

 

『朧・・・・私と別れて。あんたは私とは釣り合わないほどに・・・・いい奴すぎるよ』

 

儚げな笑みを浮かべてそんな風に告げられた。基本的に去る者追わずというのが俺のスタンスなのでそれを受け入れはしたが・・・・・正直これにはムカついた。

 

俺がいい奴?ふざけるな。俺はいい奴なんかじゃない。私利私欲、自分の為だけに生きるエゴイストだ。

 

自分が楽しければ、幸せならそれでいいのに・・・・いい奴だから別れろだと?そんなの納得できるわけ無いだろうが。

 

・・・・本気だったのに。

 

「ん~?どうしたのかな朧?私と付き合ってたときのこと思い出しちゃったかな?」

 

「そうだよ。お前がベッドの上でどれだけ喘いでいたのかを思い出してた」

 

「それは奇遇。私はあんたのたくましいモノのこと思い出してたんだよね」

 

「・・・・お前って首筋弱いんだよな。ちょっと触っただけで恥ずかしい声出すほどに」

 

「朧は男のくせに乳首攻められるとビクッするんだよね。そんなところが可愛かったな~」

 

「それを言うなら桐生は・・・」

 

「いい加減やめろ!アーシアがショート寸前だ!」

 

イッセーに言われアーシアを見てみると、顔を真っ赤にさせ、頭から煙が出ていた。どうやら今の会話は刺激が強すぎたようだ。

 

・・・・流石に申し訳ないなこれは。

 

「あ~・・・・すまんアーシア。ちょっとヒートアップしすぎた」

 

「朧ってば変態~」

 

「うるさい、お前は黙ってろ」

 

本当にムカつく・・・・嫌いとまでは言わないけどさ。

 

「アーシアも気をつけなよ?朧にいつ襲われるかわかったもんじゃないんだから」

 

「よし、その口すぐに閉じろ桐生。でないとお前の性感帯を学校中にばらしてやる」

 

「だったら私は朧のモノの大きさを学校中に言いふらしてあげる」

 

「・・・・お前の全身のほくろの数と位置の情報も追加だな」

 

「そうくる?なら・・・」

 

「だからやめろって!」

 

再びヒートアップしそうになったのを、またしてもイッセーに止められる。

 

ああ、くそっ。なんで桐生相手だとムキになっちまうんだよ・・・・

 

『それだけ気が合うってことよ。未練タラタラっていうのもあるでしょうけど』

 

ラムさん・・・・もう本当に黙っててくださいお願いします。

 

『嫌よ♪』

 

・・・・・誰か助けてくださいお願いします。




桐生が朧の元カノという設定は完全なる思いつきです

性格的にそれなりにうまくいきそうだなと思ったけど・・・・まああんな感じで破局しております

そしてそのせいで朧は・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第17話

今回もまだ原作の内容には入りません

でもまあ・・・・それなりには楽しめるかと

それでは本編どうぞ


放課後、旧校舎の一室にて俺はグレモリー、及びグレモリー眷属達と模擬戦をしていた。

 

なんでそんなことをしてるかって?グレモリーに幻術使いを相手取る時の対策がしたいからと頼まれたからだ。なので全員でかかってくることと、屋内で戦うということを条件として俺はそれを了承した。

 

なぜそのような条件を出したかというと・・・・こいつらの戦い方が結構ド派手だからだ。だから狭い屋内で一人相手に複数人で相手取るのはかなり手こずるだろうな思って出した条件なんだが・・・・・効果はテキメンだった。連携を取ろうとするもののほとんどの奴が動き制限されてぎこちなかったからな。

 

故に・・・・・

 

「あはははは。皆まだまだですね~」

 

「「「「ぐっ・・・・」」」」

 

こうなっているのだ。余裕に笑う俺に対して、皆は苦々しげな表情を浮かべて睨んできている・・・・全身カラフルなペンキに染まりながら。

 

このペイントは俺が幻術で作り出した銃で撃ったペイント弾によるものだ。そして全員がカラフルなのは・・・・そのペイント弾に当たりまくったからである。

 

「なんていうか・・・・うん。皆戦い方が素直だ。おかげで俺すっごいやりやすかったですよ」

 

「・・・・・殴りたい。その笑顔」

 

「おお、殴ってみろイッセー。今こそ鍛えた成果を見せる時だぞ?」

 

「うぐっ・・・・」

 

俺に挑発されようとも殴りかかっては来ようとしないイッセー。

 

その理由は・・・・散々殴りかかってきて全部躱されたり当たったと思ったのに幻だったりしたからだ。やっても無駄だとうことがわかっているのだろう。

 

・・・まあ、実際無駄だしな。今皆が見てる俺だって幻で本物は皆に見えないように姿をくらませてるんだから。

 

さて・・・・これで終了でいいだろう。

 

「よし、じゃあ今日はここまでにしましょう」

 

俺が指を鳴らすと、皆に付いたペンキが全部消えた。幻術を解除したためだ。

 

「とりあえず・・・・皆もっと屋内での戦闘に慣れておいたほうがいいかな?一人一人の攻撃力は高いけど、その故か攻撃手段が派手すぎる。こういう周囲の状況を気にしないといけないところで戦闘が発生するときもあるんだからある程度セーブして戦う方法も身につけておくべきですね」

 

「・・・・悔しいけど言い返せないわ」

 

反論しようにも、俺の指摘がもっともなものであったため悔しそうにするグレモリー。

 

「そう言った意味では一番いい動きをしてたのは木場だ。起動力を活かして俺を視界から外れて攻撃しようとしてたのは中々だった。まあ、全部見えてたけどな。俺視力いいし」

 

「・・・・いや、朧くん目良すぎるでしょ。狭い屋内で全速力じゃなかったとは言え普通の人間じゃ目で追えるようなものじゃないんだけど・・・・」

 

「私の視力は53万です」

 

「・・・・斬って捨てたくなるような笑顔だね」

 

木場にまで言われてしまった・・・・まあわかるけども。俺も向こうの立場だったら銃を乱射してやりたいと思う。

 

「でもまあ、実際俺の視力はかなりいいよ。マサイ族もびっくりなほどだし。ぶっちゃけ最低でも10.0ぐらいはあると思う」

 

「「「それ良すぎだから(です)」」」

 

全員に突っ込まれてしまったが、実際問題それぐらいはあるだろう。俺の目は特別性だからな。

 

『これも私のおかげね』

 

・・・・ああそうだよ。お前のせいだよラム。まあ、いいんだけどさ。

 

「そんなことよりも、さっきも言ったように皆戦い方が素直すぎます。幻術使いを相手取るなら目で見た情報を信じちゃダメです。今目の前にいる俺も幻だって疑うぐらいじゃないと」

 

「え?今私達が見てる朧さんは幻なんですか?」

 

「いや、俺は本物だよ。嘘だけど」

 

「嘘・・・なんですか?」

 

俺の言ったことに面白いぐらいに翻弄されるアーシア・・・・正直少し胸が痛いです。

 

「・・・・うん、まあこういうのも良くないな。幻術使いのいうことを一々鵜呑みにしちゃいけない。俺は嘘つきだから」

 

「「「それはもう十分すぎるほどわかってる」」」

 

アーシア以外の全員が口を揃えて言う。

 

・・・・この短期間でこの評価。うん、幻術使いとして鼻が高いです。

 

『あなた泣きそうよ?』

 

ほっといてくださいラムさん。

 

「まあ、ともかく幻術使いとの戦闘中に敵からもたらされる情報は信じないほうがいいです。だからこそ、一番有効だったのは姫島先輩のアレだったわけだけど」

 

「アレ?」

 

「あまりにも俺に攻撃が当たらない上、俺からの挑発でイラついてやたらと雷落としまくってたあれです・・・・正直あれが一番危なかった。姿くらませてた時にあれやられると中々焦るんですよ」

 

実はあの時一発雷喰らったんだよなぁ。あれは痛かった。いや、痛いで済んでる時点で俺も大概なんだけどさ。

 

・・・・・この体じゃなかったらやばかった。

 

「・・・・つまり幻術使いと戦う時は幻に惑わされずデタラメに攻撃すすればいいってことですか?」

 

「それが対策になるってわけじゃないけど、他に手がないなら有効ではある。まあ、幻術使いを相手にする時っていうよりは俺を相手にするときはって言ったほうがいいけど・・・・・」

 

「そうですか。わかりました・・・・その時はそうします」

 

「・・・・念のため言っておくけど塔城ちゃん、俺君たちと敵対するつもりはないんだけど?」

 

「幻術使いは嘘つき」

 

「いや、確かにそう言ったけれども」

 

ぶっちゃけ将来的に敵対する可能性があるので洒落にならない。まあ、別にデタラメに攻撃されたって困りはするけどどうにでもなるからいいけど。

 

・・・・肝心な秘密はまだ教えてないし。

 

「まあ、とにかくこれからも何度か模擬戦の相手をしますんで少しづつでもいいのでコツを掴むといいですよ。それじゃあ俺はそろそろ・・・・」

 

「もう帰るのか?」

 

「もうって・・・・そろそろ日が暮れるぞ?イッセー達はまだ仕事があるだろうけど俺は帰って夕食の準備やらしないといけないんだからな」

 

「そっか、朧は一人暮らしだもんな」

 

「そうだよ。だから色々やること多くて大変なんだ」

 

嘘です。本当はレイナーレと二人暮らししてます。最近はレイナーレも家事負担してくれてるからひとり暮らしの時よりも色々楽になってます。

 

「あれ?でも保護者がいるのに一人暮らしなのか?」

 

「あのひとは仕事で世界中回ってるんだよ。この学園に入るまでは俺も一緒だった。まあ、この街にもしもあのひとが居たら・・・・」

 

「やめて頂戴朧・・・・・想像したくないわ」

 

「はい。すみません部長」

 

あのひとがこの街にいたらと想像してしまったのであろうグレモリーはすごいゲンナリとした表情をしていう。

 

・・・・うん、それは仕方ないよな。あのひとがこっちで暮らしてたら絶対色々と問題になるから。

 

『私は好きなんだけどね彼女』

 

そりゃお前は楽しければなんでもいいだろうよ。

 

「とにかく俺はこれにて失礼します・・・・っと、そうだ忘れてた。部長、これを」

 

俺はカバンを開けてプリントを3枚グレモリーに渡した。

 

「これは?」

 

「部活の活動報告書と活動予定表と部費の増額願書です。この3枚を生徒会に見せれば部費が増額するかもしれませんので。一応目を通しておいてください。不備があれば修正いたしますので。それでは皆さんまた明日」

 

皆にヒラヒラと手を振って、俺は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・はあ、なんだか調子が狂うわね」

 

部長は朧が手渡したプリントを見ながらそう言う。

 

「調子が狂うって・・・・朧がですか?」

 

「ええ。正直監視目的で部に置いているから警戒しているのだけれど・・・・あそこまで真面目にやることやってもらうとね」

 

「真面目・・・・ですか?私には巫山戯てるようにしか見えません」

 

部長の言葉を否定するようにバッサリと言う小猫ちゃん。容赦ないなぁ・・・・あ、そうだ。

 

「小猫ちゃん。朧が仕事終わりにでもって言ってお手製のゼリーを冷蔵庫に入れてたけど?」

 

「訂正します。少しは信用してもいいと思います」

 

この変わり身の速さである。小猫ちゃん・・・・それはちょっとチョロすぎると私思うな。

 

「ですが部長、あの態度からは真面目だとは到底思えないのですわ」

 

「まあ、確かに小猫や朱乃の言うとおり態度は巫山戯ているようにしか見えないわね。でも・・・・その実これよ」

 

部長は手にしている3枚のプリントを私達に見せてくる。3枚のプリントはどれもびっしりと丁寧な字で埋め尽くされていた。

 

「3枚とも内容は事細かに書いてあるわ。不備もなければ誤字も一切なし。彼なりに色々と考え、調べて書いたのでしょうね」

 

「これを朧さんが・・・・すごいです」

 

「さっきの模擬戦にしたってそうよ。ふざけた態度をとることは多々あるけれどそれでも戦闘自体は幻術使いとしてまともに取り組んでいた。それは皆もわかっているのではないかしら?」

 

「・・・・そうですね。態度はともかく幻術を使ってでのあの戦い方はこちらの要求通りのものでした。彼は彼なりに真面目に取り組んでいたと僕も思います」

 

木場もまた、朧は真面目に事に取り組んでいたことに納得している様子だ。

 

・・・・自分に言われてるわけでもないのに嬉しいと感じるのはやっぱり朧が私にとって親友であるということなのだろう。

 

「朧さんは真面目でお優しい方です。私も学校生活の面で色々とお世話になってます」

 

確かに、朧は何かとアーシアを気にかける。昼は桐生とヒートアップしてしまっていたが、アーシアの前では下ネタを言うのを極力控えてるしな。

 

ただまあ、朝変な神様を教えようとしてたのはダメだけど。

 

「とにかく、こんなふうに真面目なところを見せられると・・・・警戒しないといけないのにその警戒が少し緩んでしまいそうなのよね」

 

「それが彼の思惑であるという可能性もありますわよ部長?」

 

「わかっているわ。だからこそ・・・・・この上なく厄介で調子が狂ってしまうのよ」

 

部長は俺達眷属に多大な愛情を持って接してくれている。だが、だからこそ朧のことも警戒しながらも身内として見てしまうところもあるのだろう。

 

「部長・・・・私は朧を警戒する必要はないと思います。朧はあれで・・・・優しくていい奴だから」

 

「・・・・イッセーがそう言う気持ちもわかるわ。でも・・・・警戒はやはりするべきよ。おそらく彼はまだ私達に隠してることがあるでしょうから」

 

・・・・・・それは否定できない。だって朧は一年も親友である私に自分の事を隠していたのだから。きっとまだ隠してることはあるのだろう。

 

でも・・・・それでも私は朧を信じてる。

 

朧が私達の敵になることなんてないって・・・・私は信じたいよ朧。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ・・・・もう最っ高」

 

俺は今幸せの絶頂に浸っている。というのも、初めてレイナーレの髪を洗うことができたからだ。

 

夕食を食べ終えてしばらくして、お風呂に入りに行こうとするレイナーレに冗談半分で髪を洗わせて欲しいと言ったらなんと了承してくれたのだ。

 

ということで、現在俺は風呂場でレイナーレの美しい髪を丁寧に洗っているのだ。

 

「・・・・毎度思うけれどそんなにいいのかしら?」

 

「幸せすぎて俺の男の象徴がエレクチオンして絶頂しそうです」

 

「あっそ」

 

最近レイナーレのスルースキルが(俺のせいで)上がってきた気がするけどそんなこと気にしてられない。とにかくこの幸せを謳歌しなければ。

 

「というかあなた・・・・この状況で興奮するのは私の髪に対してだけなのかしら?」

 

レイナーレが若干呆れたような声色で俺に尋ねる。

 

この状況というのは・・・・バスタオルを体に巻いた状態で俺の目の前にいるという状況のことだろう。

 

「そんなことはないぞ?一番俺を魅了するのが髪ってだけでレイナーレの躰も綺麗だと思ってる。いっそこのまま襲いかかって体中まさぐってしまいたいとさえ思っているんだ」

 

「ならすればいいじゃない」

 

「嫌だ。そもそもそうならないためにバスタオル巻いてもらってるんだからさ」

 

はじめはレイナーレはバスタオルを巻かずに浴室に入ろうとしていた。だが、その状態じゃ髪を洗うのに集中できないからと俺がバスタオルを渡したのだ。ちなみに俺も濡れてもいい服を着ている。

 

まあ・・・・その時色々と見えたけどな。それについてはすっごい嬉しかった。

 

「嫌って・・・・何?私とそういうことしたくないの?」

 

「今はまだな。今したらレイナーレに嫌悪感抱かれそうだし」

 

「そう・・・・・ちょくちょく思うけどあなたって結構いい人ね」

 

「・・・・いい人?」

 

その言葉を聞いた瞬間・・・・・俺はレイナーレの髪を洗う手を止めてしまった。

 

「どうしたの?」

 

「・・・・違う。俺は・・・・いい人なんかじゃない!」

 

「ッ!?」

 

突然俺が大声を出したのに驚いたのか、レイナーレは体をビクリと震わせた。

 

「違うんだよ・・・・レイナーレに嫌悪感を抱かれたくないのは・・・・そうなったら俺が俺自身を嫌ってしまうからなんだ。俺がいい人だからじゃない・・・・俺は自分さえよければそれでいいんだ」

 

そうだ・・・・俺はいい人なんかじゃない。そんなんじゃない・・・・あるはずがない。

 

「・・・・・なんでそこまで否定するのよ?別にいい人だって言われるのは悪いことじゃないと思うわよ?」

 

「そうだな・・・・レイナーレからしたらそうなんだろうな。だけどな・・・・・いい人っていうのは幸せになれないんだよ。いい人ほど・・・・幸せになれずに早く死ぬんだよ。幸せになれたとしても・・・・守ってくれる存在がいないとすぐにそれは手から零れ落ちる」

 

そんなの・・・・俺は嫌だ。

 

「俺は・・・・幸せになりたい。幸せになるんだ!もうあんな思いは・・・・大切な幸せが失われるのなんてゴメンだ!そんなの絶対に嫌だ!」

 

思い起こされるのは・・・・・かつての幸せだった日々。父さんがいて、母さんがいて、そして俺がいて・・・・・毎日が楽しかった。

 

けどそんな幸せは・・・・奪われたんだ。天使が、堕天使が・・・悪魔が俺から全てを奪ったんだ。

 

だから今度こそ俺は幸せになってやるんだ。

 

失わないためには・・・・・いい人なんかじゃいられない。

 

「俺は・・・・いい人なんかじゃ・・・・ない。俺は・・・幸せに・・・・」

 

「・・・・なれるわ」

 

「・・・・え?」

 

「あなたぐらい強かな人間ならなれるわ。自分の幸せのために悪魔どころか親友さえ欺けるぐらいの度量があるなら・・・・幸せになれないどうりはない」

 

「レイ・・・・ナーレ」

 

「というより・・・・その為に私を連れてきたのでしょう?だったら私を惨めにしないためにも・・・・幸せにくらいなってみせなさい」

 

レイナーレは俺の胸ぐらを掴み、顔を近づけて言う。

 

ああ・・・・この女は自分が惨めにならないために・・・そのためだけに俺の幸せを願っている。あくまでも自分のために人の幸せを願ってやがる。

 

ははは・・・・・なんだよおい。レイナーレも俺と同類のエゴイストじゃないか。より一層好きになったぞ。

 

「・・・そうだな。俺はほかの誰でもない俺の為に幸せになってやるよ。お前が惨めになるとかならないとかそんなことだって考えたりしない。俺の幸せの為に・・・・お前を利用してやる」

 

「そう・・・・まあ、それでいいんじゃないの?どうでもいいけど」

 

どうでもいいと言いながらも俺の言葉に満足したようで、レイナーレはニヤリと笑みを浮かべて見せた。

 

「だったら早く私の髪洗いなさいよ。それもあなたの幸せなんでしょう?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

そう言って俺に背を向けるレイナーレ。そして俺は再びレイナーレの髪を手にとって洗い始めた。

 

「それと・・・・さっき言ったあなたがいい人だっていうのは取り消すわ。自分の幸せの為に私を利用するようなあなたが・・・・・いい人だなんてありえないもの」

 

「・・・・くくっ。ああ、そうだな」

 

ああもう・・・・なんどこうたびたび嬉しいこと言ってくれるんだよこの女は。

 

『全く・・・・前に言ったのに、あなたまた女の強かさを舐めたわね』

 

そうだな・・・・俺もたいがい学習が下手なようだ。

 

まあ、そんなことは置いといて・・・・と。

 

「んー・・・・やっぱレイナーレの髪最高♪」

 

「そう・・・・それは何よりだわ」

 

今はとにかく・・・・・この幸せを謳歌するとしますか。

 

 




朧はいい人と言われるのを極端に嫌っています

その原因・・・・というか決定つけたのが桐生とのことなのですが

でもまあ、実際朧は善と悪のどちらかと言われればギリギリで善ですがね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第18話

今回は朧のハーレムメンバーの二人目が登場します

誰なのかは・・・・・まあ、章タイトルから察せられるかと

それでは本編どうぞ


「ふぁ・・・・・」

 

イッセー、アーシアの3人での登校時。イッセーは寝ぼけ眼をこすりながら欠伸をした。

 

「随分と眠そうだなイッセー。何かあったのか?」

 

「ん?あ~・・・・・まあちょっと」

 

イッセーはチラリとアーシアの方を横目で見ながら歯切れ悪く言う。

 

アーシアがいるから話すのと躊躇ってるのか?となると・・・・エロ方面か?

 

「イッセー・・・・・まあ思春期なんだから恥ずかしがることはないと思うぞ?」

 

「何を想像したのか知らないけどそうじゃない・・・・・こともない」

 

アーシアに聞こえないように最後のところをボソッと小声で言うイッセー。やっぱりそうなんじゃないか?

 

「なにがあったんですかイッセーさん?私気になります」

 

「うっ・・・・」

 

興味津々といった様子で尋ねてくるアーシア。そんなアーシアを前にして何も答えないという選択肢は選び難く、イッセーはたじろぐ。

 

「いや、その・・・・・昨日アーシアがお風呂に入ってる時に部長が来て」

 

どうやら話すことにしたようだ。

 

だが・・・・これはつまり昨夜グレモリーとそういうことになったということだろうか?

 

「部長さんが?」

 

「ああ。それでまあ・・・・・色々とあったんだけど途中で銀髪の女の人が来て、多分部長の家の事情のことを色々と話してて・・・・そのまま二人でどこかに転移して行ったんだ。その時のこと考えると眠れなくて」

 

その時の事を考えると・・・・か。イッセーが言うその時のことってアーシアの手前話してないだけどやっぱりグレモリーとそういうことになってたってことだろう。そしてイッセーの言う銀髪の女の人が途中で乱入したってことかな?

 

銀髪の女の人でグレモリーの家の事情の事をはなしてたとなると・・・・・

 

「イッセー、その女の人ってグレイフィアって名前じゃなかったか?」

 

「え?あ、確か部長がそう呼んでたような・・・・・朧どうして知ってるんだ?」

 

「やっぱりか・・・・そいつはグレイフィア・ルキフグス。部長のお兄さんの眷属・・・・女王(クイーン)に当たる者だ」

 

「あの女の人が・・・・部長のお兄さんの女王?」

 

「ああ。そこそこ有名な悪魔だ」

 

まあなにせグレモリーの兄・・・・魔王ルシファーの妻だしな。

 

「朧さん詳しいんですね」

 

「名前だけ保護者のあのひとから聞いたことがあるだけだよ。あの人知り合い多いから・・・・・まあ、ぶっちゃけあのひとの知り合いの中には知り合わなければよかったと後悔してる奴はごまんといるだろうがな」

 

「・・・・・本当に何者なんだよお前の保護者って」

 

おそらく悪魔の歴史上最大の破天荒な問題児です。本当に頭が痛い・・・・・・

 

まあ、それはともかくとして・・・・・

 

「それよりも、グレイフィア・ルキフグスがそこに現れるということは・・・・・部長の実家の方で何か起きてるのかもしれないな」

 

「なにか?」

 

「ああ。グレモリーは悪魔の中でも有名で相当な権力を有している一族だ。だからこそ色々とあるんだろうよ」

 

それこそ厄介な問題がな。なんというか・・・・・グレモリーの事を思うと多少は同情するな。

 

「色々・・・・か」

 

「気になるか?」

 

「まあ・・・・俺は部長の眷属だし」

 

「私も・・・・気になります」

 

・・・・・これも主を思ってというところかね?眷属の鑑だな。

 

「気持ちはわかるが、あんまり気にしすぎるのも良くないぞ?部長からしたらもしかして触れられたくないことかもしれないし・・・・・だから気になったとしてもあんまり詮索しないでやりな」

 

「・・・・はい」

 

「・・・・わかった」

 

俺が言うと、渋々といった感じに二人は了承した。

 

だが・・・・なんだろうな。そのことに関してひと悶着ありそうな気がする。

 

『あなたの勘って結構当たるからそうかもしれないわね。そうだったとしたら楽しみだわ♪』

 

本日も我が相棒は平常運転なようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・・・ようやく終わった」

 

業後になり、いつもならイッセー達と一緒にオカ研の部室に向かってたのだが今日は違っていた。今日、俺は日直であったため、日誌を書いて担任に提出しなければならなかったので遅れてしまっていたのだ。

 

・・・・・うちの担任って日誌ちゃんと書かないと再提出とか平気でさせるから面倒なんだよなぁ。

 

『いいじゃない。あなた得意でしょう?それっぽいもの捏造するの』

 

捏造言うな。一応は真面目に書いてるんだからな。

 

『そうね。一応真面目にそれっぽいものを捏造してるのよね?さすがは嘘つき』

 

・・・・嘘つきは今は関係ないだろう。

 

そんな風にラムとモノローグ会話をしているうちに、旧校舎のオカ研の部室前にたどり着いたのだが・・・・

 

『あら?何か聞きなれない声が聞こえてくるわね・・・・・来客かしら?』

 

かもな・・・・・もしかして朝の俺の勘が的中したとか?

 

『そうかもね♪』

 

そんなに声を弾ませないでくださいラムさん。俺落ち込んじゃいますよ?

 

それにしても・・・・・どうしたものか。ここでこの扉に手をかけてしまったら・・・・俺もなにかに巻き込まれてしまう気がする。

 

『開けましょう。それが宿命よ』

 

頼むから煽らないでくれ・・・・・

 

『でも開けないなんて選択肢があると思ってるの?』

 

・・・・わかってんだよ無駄な抵抗だっていうことは。でも覚悟を決める時間ぐらいくれたっていいじゃないか。

 

『そうね・・・・それじゃあ3秒で覚悟を決めなさい』

 

短いわ。せめてその十倍は・・・・

 

『はい3秒経ったわ。開けなさい』

 

くっそ・・・・・もうどうにでもなれ!

 

意を決した俺は部室の扉をあけた。

 

そして俺の目に映るのは・・・・・グレモリーとその眷属達の姿はもちろんのこと、銀髪のメイド服姿の女性、そしてどこかホストっぽい容姿をした男とその男の周囲いる15人の女性の姿だった。

 

全員部屋に入ってきた俺に視線を向けている・・・・まあ、詳しくはわからないが空気が若干ピリッとしているから重要な話をしているのだと予想できるし、そんな中での俺の来訪は注目を集めるのは仕方がないことだろう。だけど・・・・俺はそんな連中の視線に意識を割くほどの余裕はなかった。

 

俺の視線は今、真っ直ぐに一人の少女に注がれていた。西欧のお嬢様が来ているかのようなドレスを着ており、ドリルのようにカールした髪をツインテールにしている少女。

 

俺はその少女から目が離せなかった。なぜなら・・・・・・彼女は俺好みの至高を超えたうなじの持ち主であったからだ!

 

「・・・・失礼お嬢さん」

 

しばし見とれていたが、それからの俺の行動は速かった。俺はこの場でどのような話が行われていたのか一切考えることなく、その少女に声をかけていた。

 

「え?な、なんですか?」

 

突然俺に声をかけられ、困惑している少女。俺はそんな少女にひとまず自己紹介することにした。

 

「俺は現世朧・・・・・あなたの麗しいうなじに魅了されたしがない人間でございます」

 

「・・・・は?」

 

俺の自己紹介でさらに困惑しているようだ。だが、それを気にすることなく俺は言葉を紡ぐ。

 

「お嬢さん・・・・・俺はあなたのうなじの虜になってしまいました。あなたのうなじは素晴らしい。そして、そのうなじを持つあなた自身も心から美しいと思いました。ですから・・・・・どうかあなたの隣に、俺の居場所を作っていただけないでしょうか?」

 

「な、なななっ・・・・!!」

 

俺が少女の手を取り、笑みを浮かべながらそう言うと、少女は顔を真っ赤にさせた。

 

照れているのか、恥ずかしいのか・・・・・どちらにしてもその姿は愛らしい。

 

「そ、そんな・・・・困ります。私は・・・その・・・・」

 

「嫌・・・・ですか?」

 

「それはその・・・・そういうわけでもないといいますか・・・・」

 

満更でもなさそうに自身の髪を弄る少女。

 

これは・・・・脈アリか?こういう時はイケメンフェイスに生まれたことに感謝だな。

 

「・・・・おい」

 

もうひと押しでいけると思い、さらに言葉を紡ごうとしたとき、ホストっぽい男・・・・・とりあえずホスト男でいいか。とにかくそいつが声をかけてきた。

 

「なに?今忙しいから用があるなら後にして・・・・」

 

「・・・・俺の眷属に色目を使うなゴミが」

 

俺の言葉を遮るようにしてホスト男が言うと、ホスト男は俺に紅蓮の業炎を浴びせてきた。

 

燃やし尽くされ炭化する俺の体。そんな俺を見て、ホスト男はざまあないと言いたそうに鼻をならし、ホスト男の周囲にいた女の子達はクスクスと笑っている・・・・・俺が口説いていた女の子を除いて。

 

「お兄様!?いきなりなにを!?」

 

お兄様?てことはこの娘はホスト男の妹?

 

・・・・・似てない兄妹だな。

 

「何って・・・・下賎な輩が俺の眷属・・・・いや、フェニックス家の者に触れたんだ。燃やすのは当然じゃないか?」

 

随分な言いようだなおい。気位が高いって言っても、そいつは横暴だろ。

 

「確かにいきなりで無遠慮でありましたが・・・・だからって燃やしてしまうことはありません!」

 

俺のこと思って言ってくれてるのかな?優しいお嬢さんだ。ぶっちゃけホスト男の言ってることことももっともだと思うんだけどね。

 

でもまあ・・・・そんなに声を荒げなくても大丈夫だよお嬢さん。

 

ほら、銀髪の女・・・・多分彼女がグレイフィア・ルキフグスなんだろうが、彼女は本当に俺が燃やされたと思って顔をしかめてるけど、イッセーやグレモリー、そしてグレモリー眷属達は顔色ひとつ変えてないだろ?

 

それは・・・・・俺がまったくもって大丈夫だって理解してるからだよ。

 

さて、それじゃあそろそろ俺が無事だってこと・・・・このお嬢さんに教えてあげるとするかな。

 

「声を荒げる必要はないよ・・・・俺は無事だから」

 

「え?」

 

俺がお嬢さんの後ろから耳元でそう囁くと、お嬢さんは後ろを振り返る。そこにはまあ、俺がいるわけだが。

 

「ほら。俺はここにいますよ?」

 

ニッコリとイケメンスマイルを浮かべて言ってやると、お嬢さんは安堵の表情を浮かべるのと同時にまた顔を赤らめた。

 

・・・・うん、これは好感度上昇かな。

 

「あなた・・・・どうして?だって・・・・」

 

お嬢さんはさっきまで俺がいたところに目を向けるが、そこには何もないわけ。

 

さっきホスト男に燃やされたのは俺の幻。声をかけられたと同時に入れ替わってたんだ。殺気を向けられていたから何かされるだろうなと思ってたからね。

 

「貴様・・・・一体何をした?」

 

ホスト男が忌々しげに俺を睨みながら尋ねてくる。

 

「・・・・あんたの妹さんとデートさせてくれるって言うなら教えてあげるよ?」

 

「ッ!!レイヴェルそこをどけ!そいつを燃やす!」

 

「君レイヴェルっていう名前なんだね。いい名前だ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「聞けっ!」

 

「え?いやだって男の言うこと聞くよりも自分好みの女の子と話すほうが楽しいし・・・・お前は違うのか?」

 

「ぐっ、それは・・・・」

 

あ、たじろいだ。コイツも同じ考えってことか・・・・

 

でも、だからってこんなことでたじろぐとかコイツ結構チョロい?

 

「くっそ・・・・とにかく貴様!レイヴェルから離れろ!」

 

「え~・・・・個人的にはこのままレイヴェルを連れてランデブーと洒落込みたいんだけど?俺本気なのよ?」

 

「・・・・・この建物ごと燃やすぞ?」

 

「それは物騒。でもやめておけ。そんなことしようものなら・・・・・俺も温厚でいられなくなる」

 

俺はレイヴェルの近くに居た幻を消し・・・・・ホスト男に銃口を突きつけた。

 

「なっ!?いつの間に・・・・」

 

「いつだろうね?今?さっき?あるいはこの部屋に入った瞬間からかもしれない・・・・さあいつからでしょうか?」

 

「貴様・・・・まあいい。それよりもそんなおもちゃでどうするつもりだ?そんなものではフェニックスである俺にダメージを与えることなどできないぞ?試しに撃ってみるといい」

 

ホスト男は自分に突き立てられている銃を恐れていないようだ。フェニックス家の悪魔だからこの程度恐るるに足らないと思っているのだろう・・・・・まあ、実際のところフェニックスからすれば俺の能力は相性最悪なんだけどな。

 

「・・・・いいや、やめておこう。ここで試したらレイヴェルを悲しませることになりそうだからな」

 

「つまり俺に燃やされても構わないということだな?」

 

「だったらこう返そう・・・・・燃やせるかどうか試してみるといい」

 

俺は銃を消し、手を広げてホスト男を挑発した。

 

「いい度胸だ・・・・だったら骨も残らず燃え尽きるがいいさ!」

 

俺を燃やそうと炎を纏うホスト男。

 

だが・・・・その炎が俺に放たれることはなかった。

 

「そこまでですライザー様。これ以上は・・・・・流石に止めさせてもらいます」

 

ルキフグスが俺とホスト男・・・・どうやらライザーというらしい・・・・の間に割って入ってきた。

 

「・・・・ちっ。わかりましたよ」

 

舌打ちしながらも引き下がるライザー。まあ、流石に最強の女王に言われたら止まらざるをえないか。

 

「あなたもです現世朧。無闇に挑発しないでください・・・・・彼女がこのことを知ったらここに飛んでくるのではないですか?」

 

「うわっ、それは勘弁・・・・というか俺のこと知ってるのか?」

 

「はい・・・・ザーゼクス様からあなたのことは聞いております。あの方の息子だとか・・・・」

 

「お願いします。その認識改めてください」

 

お、俺があのひとの・・・・息子?いやだ!想像しただけで寒気が止まらない!

 

「さて、最悪な気分だが今日はここで失礼しよう。またなリアス。次はゲームで会おう」

 

そう言ってライザーが手の平を下に向けると魔法陣が光りだした。

 

そして、ライザーとその眷属の女の子達は光の中に消えていく。

 

「あ、あの・・・・」

 

レイヴェルが光の中に消えていく直前に、俺の方を見て声をかける。

 

「・・・・・縁があったらまた会おうレイヴェル」

 

俺がそう告げると、レイヴェルは小さく微笑みを浮かべて光の中に消えていった。

 

『それにしても、あれだけ入るの渋ってたくせにこの結果とはね』

 

はい。嬉しい誤算でした。

 

 




というわけで二人目のハーレムメンバーはうなじ要員のレイヴェルでした

なお、結構好感触な模様

それでは次回もお楽しみに!


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第19話

今回は朧の秘密が一つ判明します

結構重めです

それでは本編どうぞ


「へぇ・・・・・そんなことになってたのか」

 

レイヴェル達が帰った後、俺はイッセー達からおおよその事情を聞いた。

 

「部長の婚約を解消するためにレーティングゲームか・・・・・よほどあちらさんは婚約を成立させたいようですね」

 

「やはりあなたもそう思うかしら?」

 

「当然。向こうはレーティングゲーム経験者なんでしょう?それに対して部長達は知識はあって、ゲームの記録を見たことがあるかもしれませんが経験自体は無し。それをわかった上でレーティングゲームで決着をつけろだなんて黙って結婚しろって言ってるようなものでしょう」

 

まあ、貴族やら権力者にとって婚約ってのはそれだけ大事だっていうことだけど。それに関しては理解できる。

 

理解できるけど・・・・

 

「・・・・・胸糞わりぃな」

 

「おぼ・・・ろ?」

 

「・・・・ん?」

 

顔を上げると、皆が緊張したような面持ちをしている。

 

というより・・・・これは怯えてる?

 

『うふふっ・・・・あなた怒気が漏れ出してたわよ?あなたのそれって結構怖いのよねぇ』

 

マジか・・・・それは気づかなかった。

 

「あ~・・・・すみません皆さん。驚かせちゃいました?俺ってば純愛主義者なのでそういうお家事情ってやつが絡んだ婚約って嫌いなんですよね~。それでちょっとイラッときちゃいました~。てへっ♪」

 

「「「気持ち悪い」」」

 

空気を変えるためにおどけてみたのに気持ち悪いって言われてしまった・・・・・解せぬ。

 

「というか朧・・・・・あそこで口説きにかかるってお前どんだけ空気読めないんだよ」

 

イッセーが呆れたように俺に言ってくる。

 

「空気?何ソレ美味しいの?そんなものより恋愛っしょ恋愛!ああ・・・・レイヴェル本当によかったな~。あのうなじ・・・・舐めて甘噛みしてキスマーク残したいなぁ」

 

「「「変態」」」

 

変態?結構だね。誰になんと言われようと構わんさ!

 

『そこは解せぬじゃないのね』

 

だって自覚してるもん。

 

「というより・・・・先輩本気なんですか?」

 

「え?まあ本気だけど・・・・なにか問題ある?」

 

「問題もなにも・・・・朧くんは人間で相手は悪魔なんだよ?」

 

「その上名門のフェニックス家の令嬢相手に・・・・正気の沙汰とは思えないわ」

 

まあ、塔城、木場、姫島の3人が言ってる事ももっともだ。相手は悪魔の上に名門の令嬢・・・・そんな相手に人間の俺が恋愛だなんて馬鹿げてると思っているのだろう。

 

だが・・・・・

 

「・・・・じゃあ逆に聞きますけど、自分の好みの相手が目の前にいたとして、種族が違うという理由だけで諦められるんですか?相手のお家事情を考慮するんですか?」

 

「「「・・・・・」」」

 

俺の問いかけに、皆沈黙してしまった。

 

「ほら、何も言えないでしょう?だからこそ俺は断言しますよ?俺は自分が間違ってるとは思わない。俺はレイヴェルに惚れた。だからレイヴェルを堕とすことに全力を尽くす・・・・それが恋愛でしょう?」

 

惚れたから・・・・追い求める理由はそれで十分。種族やらお家事情ってのは確かに障害になり得るが、逆に言えば俺にとっては障害にしかなりえない。

 

それが無理だという理由にならないならば、俺は俺のやりたいようにやるだけだ。

 

『そうやってレイナーレちゃんだってうちに連れてきちゃったものねあなたは』

 

ああ。後悔なんて一切してないし、してよかったと思っている。

 

『だったら今回も・・・・せいぜいモノにできるように頑張りなさい』

 

当然だな。あの感じじゃ好感触だったし・・・・策を巡らせればいけるかもしれない。

 

ふふふっ・・・・・胸が踊るなぁ。

 

「私は・・・・少しわかるような気がします」

 

「アーシア?」

 

「その・・・・・好きになってしまったのならどんな事情があったとしても・・・・諦めないことが大切だと思います」

 

「うん。ありがとうアーシア」

 

微笑みを浮かべながら言うアーシアに、俺は感謝の言葉を述べる。

 

・・・・マジにこの子純粋だなぁ。なんていうか妹にしたい。

 

『やめておきなさい。ゲスなあなたには勿体無いわ』

 

そんなことぐらいわかっとるわ。

 

でもまあ・・・・アーシアは応援してくれてるみたいだし、その為にも打てる手を打つとしますか。

 

「まあ、そういうわけもありまして・・・・レイヴェルを堕とすためにも部長達には是非ともレーティングゲームには是非とも勝っていただけないとですね」

 

「え?どうしてそうなるのかしら?それは何も関係のないことでしょう?」

 

なぜ俺がレイヴェルを堕とすこととレーティングゲームに勝利することが繋がるのかが理解できていないのであろう。グレモリーは首を傾げていた。

 

「あのですね部長?レイヴェルもフェニックス家の人間であるのなら、既に婚約者がいる可能性はあるでしょう?部長とライザーの例もあるわけですし。そして仮にその通りだとして、部長達が不利な条件でのレーティングゲームに勝利すれば・・・・・計略にまみれた婚約よりも、純粋な恋愛の方がいいと思ってくれる可能性もなきにしもあらずです。俺はそれを狙っています」

 

「それって・・・・私達の勝利をダシにあの子に言い寄るってことか?」

 

「その通りだよイッセー!花丸をあげましょう!」

 

「いや、いらないけど・・・流石というかなんというか・・・・」

 

「それ褒めてる?」

 

「褒めてない。けど、感心はしてる」

 

流石は我が親友イッセー。こんなげすな発想で感心してくれるのは俺ぐらいだよ。

 

「まあ、そんなわけで俺は皆さんの勝利を願っておりますし、その為にできる事は可能な限りするつもりです。さしあたっては・・・・・姫島先輩、塔城ちゃん。ちょっとお話があるのでついてきてもらえます?」

 

「「・・・・え?」」

 

いきなり俺に名指しされたことに、二人はキョトンとしてしまった。

 

「私と朱乃先輩に話って・・・・一体何の話ですか?」

 

「ちょっと・・・・二人と愛について話し会おうかと思ってね」

 

「・・・朧。こんな時にふざけないでちょうだい」

 

グレモリーがキッと俺を睨んできた。

 

ふざけてるって思われちゃったかぁ・・・・結構本気なんだけどねぇ。

 

「ふざけてるって思うのは別に構いませんが、大事な話ではありますよ。だからこそ・・・・・ここで話すのはやめたほうがいいのでしょうけど」

 

「まさかあなた・・・・」

 

俺がイッセーとアーシアの方にチラッ視線を向けながら言うと、グレモリーは察してくれたようだ。グレモリーだけでなく、木場もそのようで同じような表情をしている。

 

「朱乃、小猫。あなた達はどうしたい?あなた達の意思を尊重するわ」

 

「・・・・朧先輩と話すことは何もありません」

 

塔城は俺と話をすることを拒否した。

 

まあ、別に無理強いするつもりはないし・・・・・本人にとってはデリケートなことだ。仕方がない。

 

さて、姫島の方は・・・・

 

「私は・・・・いいですわ。話をしてきます部長」

 

姫島の方は了承してくれた。まあ、あくまでも了承してくれただけで・・・・俺の言うことを聞いてくれるとは限らないが。

 

「では、行きましょう姫島先輩。あ、話が終わったら俺はそのまま帰ったほうがいいですか?今日はもう部活どころではないでしょうし」

 

「そうね。あなたの話が終わったら、朱乃と作戦会議をするつもりだから帰っていいわ」

 

「じゃあ荷物は持っていきますね・・・・・塔城ちゃん」

 

俺は拾い上げた鞄を開いて、中からクッキーの入った袋を塔城に渡した。

 

「・・・・これは?」

 

「昨日焼いたクッキー。塔城ちゃんの分のね。あ、皆の分ももちろんありますので」

 

俺は鞄から塔城に渡したのと同じ量のクッキーが入った袋を出して机に置いた。

 

「・・・・どうして私の分だけ別にあるんです?」

 

「塔城ちゃんいつも俺の作ったお菓子を美味しそうに食べてくれるからね。だから塔城ちゃんの分だけ別に多めに用意しておいたんだ。さっきのお詫びってわけではないけど・・・・受け取ってくれる?」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

塔城は素直に受け取ってくれた。

 

まあ、こんなのでチャラになったとは全く思ってはいないけどね。

 

「お礼なんていらないよ・・・・それでは皆さん、また明日」

 

軽く手をひらひらと振って挨拶した後、俺は姫島と話をするために旧校舎の適当な部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それで?話っていうのはなにかしら?」

 

姫島は俺を鋭く睨みつけながら尋ねてくる。

 

「言ったでしょう。愛について話し合いたいんですよ」

 

「・・・・茶化さないで欲しいですわ」

 

「全く見当違いでもないと思うんですけどね。だって・・・あなたの秘められた力は愛ゆえのものとも言えるんですから」

 

「・・・・・」

 

さらに目つきが険しくなる姫島。これは・・・・予想以上の憎悪のようだ。まあ、無理もないけれど。

 

「あなた・・・・どこまでしているの?」

 

「大体の事情は知ってしますよ。保護者の悪魔に聞いていますので」

 

「人間にそんなことまで話すなんて・・・・・随分と不容易な悪魔ですわね」

 

「それに関しては同感ですが・・・・まあ、今それを議論しても仕方ないでしょう。なので、まだるっこしいこと無しで言わせてもらいますが・・・・・レーティングゲームに本気で勝ちたいと思うのなら雷光の力を解放することをお勧めしますよ?」

 

普段姫島は雷の魔力を使って戦うが・・・・姫島にはそれ以上のものがある。

 

それは、姫島の血に由縁したものであった。姫島は元々堕天使と人間のハーフ・・・・ゆえに堕天使の光の力を使えるのだ。

 

もっとも・・・・姫島はその父親を憎んでいるようだが。

 

「姫島先輩は堕天使・・・・父親に対して強い憎しみを抱いているんですよね?だから雷光の力を使うことを拒んでいる。だけれど・・・・ライザーとのレーティングゲームに勝ちたければそれを気にする余裕などはありませんよ?悪魔は光に弱い・・・・・雷光の力を使わないのはあまりに勿体ない」

 

「勿体無い・・・・ですって?」

 

ビリッと、姫島の周囲に一筋の雷が走る。

 

「何も知らないのに・・・・私の気持ちも知らないのに勝手なことを言わないで!」

 

バチバチと激しい雷をその身に纏いながら、姫島は俺に怒号を飛ばす。

 

俺に雷を放ってもおかしくないほどの怒りを感じるが・・・・それでも、実際にやらないあたり幾分か冷静なのだろう。

 

「私の気持ちも知らないのに・・・か。それは違いますよ姫島先輩。俺は、ある意味では誰よりも・・・・それこそあなたの主である部長よりもあなたの気持ちを理解できる」

 

「ふざけたこと言わないで!」

 

「ふざけてなんていませんよ。だって・・・・俺は母親を堕天使に殺されているんですから」

 

「・・・・・え?」

 

俺の発言を聞いて・・・・姫島の纏っていた雷の勢いが弱まった。

 

「俺の母親は堕天使に殺された。それもおよそ1年もの間陵辱された挙句にです」

 

「ッ!!そ、それはいつもの嘘かしら?」

 

「姫島先輩がそう思うのならそれでいいですよ。ただ・・・・・真実ですけどね」

 

そう・・・・俺の母親は堕天使に殺されたんだ。

 

今でも容易に思い返すことができる。堕天使共に陵辱される母さんの姿が。そして・・・・・俺をかばって堕天使の光の槍に貫かれる母さんの姿が。

 

「俺も・・・・同じですよ。俺だって堕天使が憎くて憎くて堪らない。でも・・・・・そんな俺だからこそ言わせてもらいます。過去に囚われ、縛られ、力を押さえ込んでしまっては・・・・・守りたいものも守れなくなってしまう。それが嫌なら・・・・その力を解き放つべきなんです」

 

・・・・別に姫島を想って言っているわけではない。ただ、レーティングゲームでライザー達に勝ってくれた方がレイヴェルを落すのに都合がいいから言っているに過ぎない。

 

そう・・・・・それだけだ。

 

「どうしますか?憎しみを押さえ込み力を使うか、あるいは憎しみを抱いて力を封じるか・・・・・選ぶのは姫島先輩です」

 

「・・・・・」

 

俺に問われ、姫島は黙り込む。おそらくどうするべきか、どうしたいのかを考えているのだろう。

 

そして・・・・・しばしの沈黙の後、姫島は答える。

 

「私は・・・・雷光の力は使いませんわ。決めたもの・・・・・あの力は絶対に使わないと。使わずに・・・・雷の巫女としてリアスの女王の務めを果たすと」

 

姫島が選んだ答えは・・・・雷光の力を使わないというものだった。

 

姫島の目からは強い決意が感じられた・・・・・これは何を言っても無駄だろう。

 

「・・・・・わかりました。姫島先輩がそう決めたというのならそれでいいと思います。嫌なことを聞いてすみませんでした」

 

「別に構いませんわ。あなたも・・・・言いたくないことを話したと思いますし」

 

「・・・・まあ、それなりにはですね」

 

本当はそれなりどころではないのだが・・・・・俺としたことが姫島に親近感でも湧いてしまったのだろうか?

 

それで・・・・話してしまったのか?

 

我ながら・・・・馬鹿らしいな。

 

「・・・・一つだけ教えて。あなたがあの堕天使、レイナーレを殺したのは・・・・憎いから?」

 

・・・・まあ、それは聞かれても仕方がないか。

 

「・・・・違いますよ。堕天使は憎いですが・・・・彼女を殺した理由は以前話したとおりです。それ以上でも以下でもない」

 

そう・・・・堕天使は憎いが、それでもレイナーレが好きなのは事実だ。

 

もっとも・・・・憎さゆえに、信用も信頼もしきれていないのだが。

 

「・・・・話はここまでにしましょう。お付き合いいただきありがとうございます姫島先輩。それでは今日はこれにてさようなら」

 

俺は姫島に踵を返す。

 

と、そうだ・・・・まだ言っておかなければならないことがあったな。

 

「姫島先輩・・・・・どうか後悔無きように」

 

姫島先輩の方へと振り返ることなくそう告げて、俺は部屋から出て行った。

 

 




朧の母親を殺した堕天使は実は原作にいます

それが誰かはいずれわかりますし邂逅した折には・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第20話

今回はレイナーレがメインです

こんなレイナーレ・・・・個人的にはアリだと思うんだ

どんなレイナーレかは見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


「♪~」

 

「・・・・・やけに機嫌が良さそうね」

 

夕食の折、私は目の前で機嫌よさげに鼻歌を歌う朧に声をかける。ちなみに今日の夕食はミートローフ・・・・・憎らしいけどやはりこの男の作る料理は美味しい。

 

いや、今はそんなこととうでもいいわね。この男がどうして機嫌がいいのか・・・・それを知らなければ。

 

・・・・なんぜそんなこと知らなければならないと思うのかは置いておく。

 

「ん?わかる?わかっちゃう?いや~、やっぱり一緒に暮らしてるレイナーレにはわかっちゃうか~」

 

ヘラッと気の抜けた笑顔で言う朧・・・・正直うざいと思ったけれど、突っ込まないでおこう。話が逸れる。

 

「いいから答えなさい。どうしてそんなに機嫌がいいの?」

 

「ふっふっふ・・・・実はなレイナーレ。今日俺好みのうなじを持った女の子と会ったんだよ~!」

 

「・・・・は?」

 

もの凄く嬉しそうに言う朧だが、私はあまりのことにポカンとしてしまった。

 

髪ならまだわかる。コイツは重度の髪フェチでそれが理由で私はこの家に連れてこられたのだから。

 

でも・・・・なんでうなじ?

 

「うな・・・・じ?え?髪じゃなくて?」

 

一応・・・・言い間違いではないかと思って聞き返してみた。

 

「うんにゃうなじであってるよ・・・・てか言わなかったっけ?俺は髪だけじゃなくて重度のうなじ、くびれ、鎖骨フェチでもあるんだよ。あ、最近は太ももと瞳にもグッとくる」

 

・・・・馬鹿だとは、馬鹿だとは思っていたけれどこれは重症だ。

 

うなじ?くびれ?鎖骨?そして太ももに瞳?

 

胸やお尻ならまだ理解できるけど・・・・どんだけマニアックなの?

 

しかも・・・・俺好みって・・・・

 

「・・・・・つまり今日あなた好みのうなじの持ち主と会えたってことね」

 

「そうそう!しかもちょっと話したんだけど好感触!あと一手二手仕掛ければものにできそうなんだよね!」

 

・・・・へえ、向こうも悪い気はしてないのね。それに・・・・ものにできるって・・・・

 

じゃあそいつを堕とすことができたら・・・・私はどうなるの?

 

私は・・・・もういらないってこと?

 

私は捨てられるってこと?

 

私は・・・・・必要とされない?

 

な・・・に?この気持ち?なんでこんなにも・・・・こんなにも・・・・?

 

「・・・・」

 

「ん?どうしたレイナーレ?」

 

「・・・・別に。なんでもないわ」

 

自分の声が酷く冷めているのがわかる。声だけじゃなく心も、感情も、思考も・・・・何もかもが冷たい。

 

「・・・・ご馳走様」

 

「え?ご馳走様って・・・・まだ残ってるぞ?」

 

確かに朧の言うとおり、おかずはまだ残っている。でも・・・今は食べる気が全く起きない。

 

いつもなら・・・・何も言われなくたって全部食べてたのに。美味しいから・・・・残したくなんかなかったのに。

 

「別に私の勝手でしょ。一々口出ししないで」

 

「そっか・・・悪い」

 

「・・・・食器は置いておくから洗っておいて。それと・・・・・今日は髪洗わせないから。乾かすのも自分でやる」

 

「いっ!?な、なんで!?」

 

髪を自分で洗って乾かすと言ったら酷く狼狽えてみせる朧。

 

何狼狽えてるのよ・・・・どうせそのうなじ女が手に入ったら私は用済みになってここから追い出すんでしょう?ならいいじゃない。

 

「・・・・私はあなたが生き返らせてここにいる。だけど勘違いしないで・・・・私はあなたに全てを委ねているわけじゃないから」

 

私はそう朧に言い捨てた後、朧に背を向けてその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ああ、もうっ。鬱陶しい」

 

お風呂から出た私は、この家に用意された自分の部屋で久方ぶりに髪をドライヤーで乾かしていたのだが・・・・どうにもしっくりこない。

 

以前・・・・朧にやってもらうようになる前、自分でどうやって乾かしていたのかしっかり覚えていて、その通りにしてるのに・・・・・何故か私の心中に不快感が募っていった。

 

乾かすのだけでない・・・・洗う時もそうだった。ほんの数日前までは自分で洗っていたのに・・・・違和感に襲われた。

 

「・・・・なんでこんなにイラついてるのかしら?」

 

誰もいない部屋で呟く私。その声は誰が聴いてもわかるほどに不機嫌さが混在しているものであった。

 

なんで・・・・なんで私がこんな気持ちにならなければならない?そもそもどうしてこんなに苛立ってるの?

 

わからない・・・・・自分のことなのに・・・・なんで?

 

「うふふっ・・・・悩ましげな美女というのは中々絵になるわね」

 

「・・・・え?」

 

突然・・・・私の耳に聞き覚えの一切ない女性の声が聞こえてきた。

 

声のする方には・・・・灰色の長髪に、朧と同じ灰色の瞳をした、ニコニコと愉快そうに笑っているのに・・・・何故か儚さを感じさせる女性がそこにいた。

 

「こんばんはレイナーレちゃん」

 

「あなた・・・・誰?」

 

「私はラム。朧の神器(セイクリッド・ギア)に宿る者・・・つまりは朧の相棒よ」

 

「・・・・そう」

 

それは驚くべきことだった。だというのに、何故か私の中で違和感というものが働かない。

 

ゆえに感じてしまう・・・・彼女の言っている事は本当なのだと。そしてそれ故に、一々リアクションを取ることもなかった。

 

「その反応からして信じてくれたようね・・・・ダメねぇ。私のような不確かな存在の言うことを信じちゃうなんて」

 

「あいにくと、私は自分の信じたいものを信じるのよ。だからあなたが何を言っても知ったことではないわ」

 

「言うじゃない。流石は朧が気に入った女ね」

 

「・・・・朧が気に入った、か。まあ、うなじ女を口説き落とせたら捨てられるんでしょうけどね」

 

そうだ・・・・朧が話していたうなじ女を口説き落とせたらもう私は用済み。そうなれば私は・・・・

 

「やっぱり・・・・あなた勘違いしてたのね」

 

え?

 

「勘違い・・・・ですって?」

 

「ええ、そうよ。感謝しなさい。私はその勘違いを正すためにわざわざ朧に内緒で姿を表したってわけ」

 

「・・・・私が何を勘違いしているっていうのかしら?」

 

「・・・・あなた、朧がレイヴェルちゃん・・・・例のうなじの娘のことね。その女の子を朧が口説き落としたら自分は捨てられるって思ってるみたいだけど・・・そんなことないわよ。絶対にありえない」

 

「なんでそんなこと言えるの?」

 

「朧はあなたもレイヴェルちゃん、どちらも愛するつもりだからよ。なにせあの子にはハーレム願望があるんだから」

 

「・・・・は?」

 

あまりのことに一瞬私はキョトンとしてしまった。

 

朧に・・・・・ハーレム願望?

 

「・・・・私聞いてないんだけど?」

 

「それに関しては単純に朧が言い忘れてたのよ。あの子頭はいいけどうっかりしてるところがあるというか・・・・度々一言少なかったり余計な事言ったりするのよ。まあ、そういう抜けてるところも私は気に入ってるのだけれどね」

 

愉快そうに・・・・だけど、穏やかさも孕んだ表情で微笑むラム。その微笑みは・・・・・まるで家族に向けるようなものだと思った。

 

「まあとにかく、ハーレム願望がある以上、レイヴェルちゃんのためにレイナーレちゃんを諦めるだなんてありえないから安心なさい。ま、逆はありえるかもしれないけど」

 

「逆?」

 

「ええ。レイナーレちゃんのためなら・・・・きっと朧はレイヴェルちゃんを諦めるわ。レイナーレちゃんは朧にとって特別だから」

 

私が・・・・特別?朧にとって?

 

「どういうこと?」

 

「髪、うなじ、くびれ、鎖骨・・・・・それらが朧のフェチだけれど髪には特に深い執着を持っているのよ。いつも朧が言っているようにあなたの黒髪は朧にとってはこれ以上ないもの。たとえ他を差し置いてでもね」

 

「・・・・・喜べばいいのか呆れるべきなのか複雑ねそれ」

 

とりあえずラムの言っている事を信用するのなら私が捨てられることはないということだけれど・・・・・でもそれが髪への執着故だっていうのがどうにも納得いかない。

 

・・・・もしも髪の色が何らかの理由で黒以外になったら結局捨てられそうだし。

 

「喜べばいいのか・・・・ね。うふふふ」

 

「何笑ってるのよ」

 

「自分を特別扱いされてるのが喜ぶってことは・・・・あなたも少なからず朧の事を想っているということでしょう?それがわかって嬉しいのよ」

 

私が・・・・朧の事を想ってるか?何を言うかと思えば・・・・・当然じゃない。

 

確かに初めは自分を殺した相手だから憎しみの方が勝っていた。だけど・・・・まだ少しの間とはいえ朧と一緒に生活して嫌でも思い知らせれてしまったのだ。

 

朧は私を大切にしてくれているいうことに

 

朧は私の願いを可能な限り叶えようとしてくれているということに

 

そして朧は・・・・・私が今までに会ってきた誰よりも『いい男』だということに

 

確かに破天荒・・・・というか、明らかに変人ではある。だけど、それでも朧は・・・・悔しいけど格好いいし、私に対て真摯であり・・・・・なにより優しい。それが自分の幸せのため、自分の我欲を満たすためなのだから『いい人』ではないと言えるだろうけど・・・・『いい人』でなくても『いい男』ではあるとは思う。

 

だから好意の一つぐらい抱くに決まっている・・・・悔しいからまだ直接は言ってやらないけど。

 

「でもまあ・・・・だからこそ残念なこともあるけれど」

 

ラムは憂いを帯びた表情を浮かべた。

 

「残念なこと?なによそれ?」

 

「・・・・・そうね。本当は言うつもりはなかったのだけれど、レイナーレちゃんが朧の事を少なからず思っているのなら、言っておくべきでしょうね。朧は・・・・あなたのことを心の底から信頼しきれていないのよ」

 

それは私にとってそれなりにショックなことであった。

 

「朧が・・・・私のことを信頼しきれていない?私に・・・・・好意を抱いているのに?」

 

「仕方のないことなのよ。別にレイナーレちゃん個人がどうというわけではないのだけれど・・・・・朧は母親を堕天使に殺されてしまっているから」

 

「・・・・え?」

 

母親を・・・・堕天使に殺された?

 

「じゃあ朧は堕天使を憎んでいるの?だから・・・・私のことを信頼しきれてないということ?」

 

「そうよ」

 

・・・・確かに、どうして朧に家族がいないのかと気になったことはある。でも・・・・まさか母親が堕天使に殺されていただなんて。

 

それじゃあ堕天使に憎しみを抱いてるのも仕方がないし・・・・・私が信頼されなくたって仕方がない。

 

でも・・・・それならどうして・・・・

 

「どうして・・・・朧は憎い堕天使である私に好意を抱いているの?」

 

「それは単純よ。好意を抱くのは好きだから・・・・それ以上の理由もそれ以下の理由もない」

 

「・・・・その好きなのって私の髪?」

 

「それもあるわ。だけれど・・・・あなたとの生活で、あなた自身にも朧は惹かれるようになっているわ」

 

「私自身にも・・・・」

 

それは嬉しいわね・・・・なによ朧の奴。いつも髪髪って言ってるけどなんだかんだ私自身のことも・・・・

 

「まあ、朧ってよほどのことがない限り適応して好きになれるからある意味当然だけれど」

 

「そこでじっとしていなさい。この槍で貫いてあげるわ」

 

私は光の槍をラムに突き出しながら言う。

 

・・・・あとで朧にも突き刺してやろう。どうせ意味ないだろうけども。

 

「やめておきなさい。ここに居る私は幻よ。そんなことしたって意味ないわ」

 

くっ・・・・そういえばラムは朧の神器に宿る存在だったわね。幻でもおかしくないわ。

 

「それはともかくとして、現状としてはあなたは朧に信頼されていない・・・・だけれど、朧自身はあなたを信頼したいと思っているわ。だから・・・・可能ならば約束して。何があっても・・・朧を信じるって。朧のそばにいるって。そうすれば朧も・・・・きっとあなたを信じられるようになるから」

 

・・・・・何を言うかと思えば。

 

朧を信じる?

 

朧の傍にいる?

 

「はあ・・・・そんなできて当然のことをいちいち念を押して言わないでちょうだい。まさかその程度のことができないほど私が低能な女だとでも思っているの?」

 

だとしたら舐めるなってはなしよ。そんなことぐらい、言われるまでもないわ。

 

「・・・・うふふっ。私も朧のことを言えないわね?」

 

「どういうこと?」

 

「事あるごとに朧に女の強かさを舐めるなって言っていたのだけれど・・・・まさか女である私が舐めてしまうだなんて滑稽だわ。悔しいわ」

 

「そう・・・・ざまぁないわね」

 

「あら、手厳しい」

 

ニコニコと満足げな笑みを浮かべるラム。

 

その笑顔を見てると・・・・なんだか認められたと思えて嬉しかった。

 

「それじゃあ改めて言うまでもないのだけれど・・・・・朧の事お願いね」

 

「ええ。あなたの期待以上に信頼されてやるわよ。だから安心して見てなさい」

 

「そうさせてもらうわ・・・・さて、私はそろそろ失礼するわね。これ以上は朧に怪しまれちゃうかもしれないから」

 

ああ・・・・そういえば朧に内緒で話に来たって言ってたわね。

 

だったら・・・・

 

「一応聞くけれど・・・・あなたと話したってことは朧に言わないほうがいいのかしら?」

 

「ええ。秘密にしておいて頂戴。秘密は女を美しくする・・・・・秘密にすれば私もあなたも泊がつくわよ」

 

「・・・・なんというか、そういう発言をするわあなたが朧の相棒だって納得できるわ。そういう言い回し朧にそっくりね」

 

「私が朧にそっくりなんじゃなくて朧が私にそっくりなのだけれどね。なにせ朧がああいう性格になったのは6割方私のせいだから」

 

・・・・・どうやらラムに自覚はあるようだ。

 

「それじゃあ私はこれで・・・・ああ、そうそう。最後にもうひとつだけ言っておくわ」

 

「なに?」

 

「朧はたくさんの秘密を持っている。そしてその秘密は私達女のように美しさに磨きをかけるものではなく・・・・まるで絶望を詰め込んだパンドラの箱のようなものよ。底に希望が詰まっていないようなね。だから・・・・朧の秘密を知るときは、それをそれなりに覚悟しておきなさい」

 

朧の秘密が・・・・絶望を詰め込んだパンドラの箱?

 

母親を堕天使に殺された事以外にも・・・・まだ何かあるというの?

 

「言いたいことは以上よ。さようならレイナーレちゃん」

 

私が朧の秘密について考えている間に、ラムはその姿を消した。朧の下に戻ったのだろう。

 

「・・・・・随分とまあ好き放題言いたいこと言ってくれたわね」

 

自分が話したいことばっかり話して話が終わったらさようならって・・・・・とんだ自己中ね。そういう自分本位なところも朧に似てるわ。

 

ただ・・・・・朧の事をそれなりに教えてくれたことには感謝している。同時にあんな相棒をもった朧に同情も抱いたけど。

 

あの相棒とあの保護者・・・・朧ってもしかして女運ない?だったらせめて・・・・私ぐらいは朧にとっていい女であってもバチは当たらなそうね。

 

さしあたってはこのまだ湿り気を帯びた髪を朧に乾かしてもらおう。なんだかんだそれだって私にとっては夕食と引けをとらないぐらいの楽しみな時間になっているのだから。お風呂の時も・・・・朧に髪を洗ってもらおう。きっと朧は喜んでくれるから。

 

覚悟しなさい朧・・・・・絶対に私の事信頼させてやるんだから。

 

 




レイナーレの朧への好感度は着実に高まっております

まあ、朧は個人的に相当ないい男だと思うので仕方ないですね

まあ、朧の方はそれに気がついていないのですが・・・・

本命に対しては奥手になり、どこか鈍いですので

それでは次回もまたお楽しみに!


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第21話

今回は前半はグレモリー眷属達とのお話、後半はレイナーレとのお話になります

それでは本編どうぞ


「修行・・・・ですか?」

 

レイヴェル・フェニックスという素敵なうなじを持つ少女とであった翌日の放課後、部室にて。俺はグレモリーからそう告げられた。

 

「ええ、そうよ。ライザーに勝つためには戦力アップは必須。だから明日から泊まりで山に篭って修行をしようと思うの」

 

山篭りの修行か・・・・・随分とまあ古風な。現代人である俺には全くもって向いていない。

 

てか・・・・それを俺に言うってことはまさか・・・・

 

「部長、それまさか・・・・俺も参加しろって言うつもりです?」

 

「あなただってオカルト研究部の一員なのだから当然よ。それにレイヴェルを口説き落とすためにも私達に勝ってもらいたいのでしょう?」

 

いや、それはそうなんだけど・・・そうなるとレイナーレを家に残さなきゃならなくなる。

 

流石に数日留守にするわけにはいかない。主に俺の精神安定的な意味で。切実に。

 

それに・・・・・ぶっちゃけそれって無駄な努力になりそうなんだよなぁ。成果は得られるだろうけど結果には繋がらなさうな。俺そういうの嫌いだしー。

 

ということで・・・・と。

 

「すみません部長。俺ちょっと予定があって・・・・お断りさせていただきます」

 

俺はグレモリーに深々と頭を下げながら告げた。

 

「予定って・・・・それはこちらの事情よりも大事なことなのかしら?」

 

「いや、まあそれはそれでこれはこれと申しますか・・・・・すみません。どうしても外せない用事があるんです」

 

まあ嘘だけど。

 

「・・・・それは嘘じゃないでしょうね?」

 

うわ・・・・疑われてる。グレモリーだけじゃなくて他の皆(アーシアを除く)まで疑いの眼差し向けてくるよ。

 

「嘘・・・・と思いたければそれはそれでいいのですが、眷属でもなく、ましてやレーティングゲームに参加することもない俺の参加を強制させるつもりですか?」

 

「・・・・・」

 

俺のその言葉に、グレモリーはむっとした表情を浮かべながらも黙り込んだ。

 

「・・・・お気を悪くされたのなら申しわけありません。ですが、俺があなた達に協力しているのはあくまでも我欲を満たすために過ぎない。あなた達はそれは理解していると思っていたのですが・・・・」

 

「ええ、そうね。あなたはそういう人間だったわ。ごめんなさい、もう何も言わないわ」

 

「ありがとうございます」

 

納得した・・・・という感じではないけれどこれ以上誘っても無駄とは思ってくれたのだろう。グレモリーはとりあえず引き下がってくれた。

 

のだが・・・・

 

「・・・・本当に来てくれないんですか?」

 

塔城が俺の服の裾を引っ張って上目遣い気味に見つめてきた。

 

・・・・おろ?これは意外なリアクション。俺この子にフラグ建てた覚えないんだけどな・・・・

 

「あ~・・・・うん。どうしても外せない用事があるからさ。ごめんね」

 

俺は塔城の頭を撫でながら言う。

 

うん・・・・レイナーレほどではないけど撫で心地のいい髪質だ。

 

「そんな。それじゃあ・・・・・それじゃあ・・・・・修行中は誰がごはんを作ってくれるんですか?」

 

「塔城ちゃん、君は俺を給仕係かなにかだと思っていないかい?」

 

・・・・・どうやらフラグなど建っていなかったようだ。

 

「困りましたわね・・・・宿泊先の家事全般を任せようと思っていましたのに」

 

・・・・お前もか姫島。

 

「・・・・前言撤回。あんたら俺のこと家事手伝いかなにかだと思ってるのか?」

 

「いいえ。雑用係だと思っているわ」

 

もっと酷かった・・・・・だと?

 

確かに部室の掃除やら書類整理やらおやつ用意したりはしてるけど・・・・雑用係か。

 

「・・・・俺の心はボロボロだ」

 

「げ、元気出してください朧さん!朧さんは私達の大切な仲間です!」

 

落ち込む俺を励ましてくれるアーシア・・・・その健気さは今の俺にとってとてもありがたかった。

 

「アーシア・・・・俺の妹にならないか?」

 

「朧!アーシアを汚すな!」

 

アーシアの手をとって妹になって欲しいとお願いしたらイッセーに怒鳴られた・・・・・俺の妹になったらアーシア汚れるの?俺はそこまでの汚物なの?

 

『自分の普段の行いを振り返りなさい。そう思われても仕方がないでしょう?』

 

ラムてめぇ・・・・否定できないだろうが!

 

でもまあ・・・・

 

「イッセー・・・・今の俺の心持ちでそのツッコミは辛い」

 

「え?あ・・・・ごめん」

 

うん・・・・まあ素直に謝ってくれてるみたいだからいいけどさ。

 

「まあ元気だしなよ朧くん」

 

「うんそうだな。励ましてくれるのが木場じゃなかったら元気になってたよ」

 

「それはちょっと僕も傷つくんだけど?」

 

うるせぇ。別にお前のこと特別嫌いってわけじゃないけど男に励まされたところで嬉しくもなんでもねえんだよ。

 

『正直ね』

 

自覚はしている。

 

とまあ、茶番はここまでにしてと。

 

「明日から修行って言ってましたけど何時頃出発するんですか?」

 

「明日の7時に出発するつもりよ」

 

うわっ・・・・めちゃ早いじゃなん。まあその時間はとっくに起きてるからいいけどさ。

 

「だったら明日の昼食と向こうで食べるお菓子とかは作ってイッセーに渡しておきます」

 

「「「「本当にもうありがとうございます」」」」

 

・・・・全員に感謝された。というかレイナーレの時もそうだったけど俺の料理ってそんなにいいの?まあ嬉しいけどさ。

 

「・・・・とりあえずリクエストがあれば聞きますけど?」

 

「そうね・・・・それじゃあチキンカツをお願い」

 

グレモリーが悩むことなく提案してきた。

 

でもチキンって・・・・もしかして相手のライザーがフェニックスだから?そんでもってカツなのは勝ちたいから?

 

「・・・・願掛けですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

・・・・ちょくちょく思うけどグレモリーは変に俗知識に染まってる気がする。

 

「了解。他にはありませんか?」

 

「クッキーとマドレーヌとプリンとマカロンをお願いします」

 

お菓子ばっかじゃないか塔城・・・・・まあいいけどさ。

 

「卵焼き!私卵焼き食べたい!」

 

んで今度はイッセーか。そういやコイツ俺の作る卵焼き好きって言ってくれてるもんな・・・・おかげで弁当で入れた日には全部強奪されるし。まあ、すっごい嬉しそうに食べてくれるからいいんだけどさ。

 

「うん。それも全部作っておくから。それじゃあ俺はその準備もあるので今日はこれで失礼してもいいですか?買い物もしないといけないので」

 

「ええ、いいわよ。明日お願いね」

 

「はい。あ、それと・・・・修行には参加できないですけど俺は俺でできる事しておきますので」

 

「できることって・・・・朧、何する気だ?」

 

「そうだな・・・・レーティングゲームのこと知ってそうな人に詳しいルールとか聞いて対策やらを考えることかな?うってつけな人物いるし」

 

「うってつけの人物って・・・・ああ、朧の保護者?」

 

「それは俺に死ねというのか?」

 

あの人からレーティングゲームのこと聞く?冗談じゃない。確かに教えてくれるかもしれないけどそうしたらこの現状を教えないといけないじゃないか。

 

そうなったら・・・・・ダメだ、絶対に面倒くさいことになる。

 

「心中察するわ朧・・・・でも、だとしたら誰に聞くのかしら?」

 

「それはまあ・・・・部長の親友にかな?」

 

「私の親友って・・・・まあ確かに詳しくはあるけれどあなた接点ないでしょう?」

 

「ところがどっこい。実はちょっとした貸しがあるんですよ。だから大丈夫です」

 

うん・・・・・あれは酷い冤罪だった。我ながら未だに涙が流れそうだよ。

 

「朧、結局誰に教えてもらうつもりなんだ?」

 

「それはまあ・・・いずれわかると思うから今は内緒にしておくよ。それじゃ俺はここで。また明日」

 

「え?ちょ、朧・・・」

 

何やら後ろでイッセーが言ってるけど、これ以上ここに留まると買い物の時間が減るので申し訳ないと思いつつも俺は部室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、そういうわけで夕食後も料理してるってわけね」

 

夕食後にも関わらず料理をしている俺を見て、レイナーレが言う。

 

「まあな。6人分だから結構大変だ。しかもこのあとクッキーとマドレーヌとプリントマカロンも作らないといけないし」

 

「・・・・あなたは彼女達の食事係か何かなの?」

 

「ごめんレイナーレ、その話題は今はやめて。俺の心がもたない」

 

・・・・俺、将来はシェフかパティシエになろうかなぁ。あ、そこまで生きていられないか。

 

『そんなブラックジョークやめなさい。流石に笑えないわ』

 

・・・・・はい。ごめんなさいラムさん。

 

「・・・・・何があったかはわからないけれどごめんなさい」

 

「いや・・・・いいんだ。それよりも俺はこのとおり手が離せなさそうだからレイナーレはお風呂入ってきな」

 

本当は髪は俺が洗ってあげたいんだけど・・・・・ちょっと料理が長引きそうだから諦めることにした。

 

あ、そういえば昨日はなんか機嫌が悪くて髪を洗わせてもらえなかったけど・・・・何故かいつの間にか機嫌が治っててこれからは毎日髪を洗わせてくれるって言ってたんだよなレイナーレ。どういう心境の変化なんだ?

 

『さあ?どうかしらね?』

 

謎だ・・・・まあいいけど。

 

ちなみにその時にハーレムのことも話した・・・・そういえば話してなかったなと思い出してな。あれ話してなかったのが機嫌悪くなった原因・・・・いや、それはないかな?別に現状そこまでレイナーレの俺に対する好感度高くないと思うし。

 

『・・・・はあ』

 

ラムさん?なぜそこでため息?

 

『なんでもないわよ。それよりも・・・・レイナーレちゃんお風呂に入る気はないみたいよ』

 

ラムの言うとおりであった。レイナーレは風呂場にはいかずに、エプロン(俺作)を着て台所に立っていた。

 

「えっと・・・・レイナーレ?」

 

「・・・・・正直もう自分で髪を洗うの面倒くさいのよ。かといってあなたは作り終わるまではここいいるんでしょ?だったら・・・・手伝ってあげるから早く終わせるわよ」

 

おお・・・・なにこれ?すっごい嬉しいんですけど。

 

なんかツンってそっぽ向けながら言ってるけど頬が微妙に赤く染まっててすっごい可愛いんですけど。

 

「・・・・なによ?」

 

どうやら心境が表情に出ていたようで、レイナーレにジト目を向けられる。

 

「いいや、何でもないよ。でもいいのか?これ食べるのグレモリーとその眷属なんだぞ?お前に煮え湯を飲ませたような奴らのために料理するのか?」

 

「それを言うなら私を殺したあなたはどうなるのよ」

 

「うん、まあそうだけどさ・・・・」

 

「・・・・そのことについてはもういいわ。終わったことよ。それに・・・・・」

 

「それに?」

 

「これ・・・・アーシアも食べるのよね?」

 

・・・ん?これってもしかして・・・・

 

「アーシアに罪悪感でも感じてるのか?」

 

「・・・・やったことに関して後悔をしているわけではない。でもあとになって考えるとあの子には悪いことをしてしまったと・・・・思わなくはないわ」

 

それで罪悪感を抱いてしまった・・・・か。

 

ああ・・・・前から思ってたけどレイナーレって根は悪い奴じゃないんだよな。

 

こうやって罪悪感を抱いているし・・・・・なんだかんだ俺にも色々と気を使ってくれているし。

 

こういうところは正直・・・・・だいぶ好ましいな。うん、俺好みといってもいいだろう。

 

「ふふふっ・・・・」

 

「何笑ってるのよ。笑ってる暇があるなら作業を進めなさい」

 

「別に手は止まってないけど了解した・・・・・手伝ってくれてありがとうなレイナーレ」

 

「・・・・馬鹿。別にお礼なんていらないわよ」

 

「ツンデレレイナーレカワユス」

 

「ぶっ飛ばすわよ?」

 

「ごめんごめん」

 

こうして俺はレイナーレと共に明日イッセー達に渡す弁当を作ることとなった。

 

「ところでこれ私の分もあるのよね?」

 

・・・・レイナーレさんマジ抜け目ねえっすね。




段々朧の扱いが雑になってる気がする今日この頃

まあ、正直あれぐらいでちょうどいいといえばちょうどいいのですがね

なお、レイナーレの心境に関しては完全にこうだったらいいなという願望です

だってこれかわえええやん?

それでは次回もまたお楽しみに!


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第22話

今回は原作キャラが二名登場いたします

誰なのかは見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


休日の朝7時・・・・・俺ぐらいの年頃の奴はまだ寝床でおねむの時間あろう。そんな時間に俺はイッセーの家の前に来ていた。昨日作った弁当、及びおやつを届けるためにだ。

 

「ほい、これ約束の弁当とおやつな」

 

俺はイッセーに弁当とおやつを渡す。

 

「ありがとう・・・・って、多いな」

 

「重箱7段だからな。まあ、これでも足りるかどうか微妙なところだけど」

 

俺は横目でチラリと塔城の方を見る。というか塔城・・・・あの小さな体でなんであんなにたくさん食べられるんだ?

 

いや、それよりも・・・・

 

「オカ研メンバー勢揃いだな・・・・・なに?皆してお前とアーシアを迎えに来たのか?」

 

そう、この場にはグレモリーとその眷属が勢ぞろいしていた。

 

「ああ・・・・・そうみたい。なんでもここから修行する山の麓に転移するらしい」

 

「ということは山登りか・・・・・・荷物持ち頑張れよイッセー」

 

「私が荷物持ち!?そういうの普通は男の木場じゃない!?」

 

「いや、筋トレの一貫でイッセーが荷物持ちすることになると思うぞ?どうですか部長?」

 

「ええ、朧の言うとおりイッセーに荷物持ちをしてもらうつもりだったわ」

 

「そんなぁ・・・・」

 

大量の荷物を持って山を登るのを想像したのだろう、イッセーはすっごい凹んでる。流石に同情するな。

 

「まあ朧がついてきてくれたら朧に荷物持ちをさせようと思っていたけれど」

 

「勘弁してくださいよ部長。普通の人間である俺にそれは酷です」

 

・・・・マジに断ってよかった。身体能力的に人間にしては少しいい程度の俺には耐えられない。

 

「ま、まあ何はともあれ皆さん頑張ってくださいね。俺もこの地で、心の片隅で皆さんにエールを送りますので」

 

「心の片隅というのが少々怒りの琴線に触れるけれど・・・・まあいいわ。それよりも、あなた予定があるから修行に参加しないと言っていたけれど・・・・・一応それを信じるとしてその予定というのは今日あるのかしら?」

 

一応って・・・・・いや、実際には予定なんてないから疑われるのは一向に構わないんだけどさぁ。

 

「今日はないですけど・・・・それが何か?」

 

「なら2時頃に生徒会室に行きなさい。そこでソーナがあなたにレーティングゲームの事を教えてくれるわ」

 

「およ?わざわざ俺のために話を通してくれたんですか?」

 

「一応ね。ソーナにはあなたのこと話してあるけれど・・・・いえ、だからこそ突然あなたが目の前に現れてしまえば警戒すると思ったのよ」

 

「あはははー。部長にそんなに信頼されてるなんて嬉しいなー」

 

でも俺のことを話していたのなら警戒されるのは当然だし・・・・・話通してくれたのは助かるな。そこには感謝する。

 

「それじゃあ私達はもう行くわね。朧、私達がいないからって変なことしないでちょうだいよ?」

 

「しーまーせーん。俺は面倒事嫌いな平和主義者なんですよ?」

 

「「「幻術使いは嘘つき」」」

 

・・・・・話に参加していない連中(アーシアを除く)含めてそんな声合わせなくてもいいと思うんだけど?流石に痛いよ?心が。

 

唯一、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべているアーシアだけが救いである。

 

『いいじゃない。あなただって嘘つきを公言してるんだから』

 

そうだけども。でも平和主義者は本当だぞ。

 

「・・・・まあいいや。それでは皆さん言ってらっしゃい。イッセー・・・・強くなってこいよ」

 

「ああ!見違える程強くなってやるさ!」

 

イッセーが意気揚々と返事を返した後、皆は魔方陣を使って転移していった。

 

「行ったか。無駄な努力にならないよう祈るが・・・・・それは難しいだろうなぁ」

 

『あら、辛辣ね』

 

「仕方ないだろう。勝ち目なんて・・・・・ほぼ無いと言ってもいいんだから」

 

というかぶっちゃけ負けると思ってるし。それなのにレーティングゲームのこと聞いて対策考えようとするのも無駄な努力なんだろうけどさ。

 

「さて・・・・帰って手土産になんか菓子でも作るか」

 

『最近そんなのばかりね』

 

まあいいよ。お菓子作り嫌いじゃないしさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後2時となり、俺は生徒会室の前に来た。休日なのに学校の、それも普段なら絶対に来ないであろう生徒会室に来るなんて変な気分だ。

 

『まあまあ、そう言わないの。それよりも、早く入って話を聞きなさい』

 

はいはい・・・・・というか最近よく思うんだが、お前は俺の姉か何かか?世話焼きすぎじゃない?

 

『あら?ドラゴンがお姉さんだなんて豪華じゃない。良かったわね』

 

・・・・・ノーコメントでお願いします。そんなことはどうでもいいんだ。マジで早いとこ用事終わらせよう。家でレイナーレが待ってるし。

 

『そうね』

 

俺は生徒会室の扉をノックした。

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

中から返事が聞こえてきた後、扉を開いて部屋に入る。部屋の中には、メガネをかけた少女が一人。

 

その少女の名は支取蒼那・・・・いや、正確にはソーナ・シトリーといったほうがいいか。駒王学園の生徒会長であり、上位悪魔、シトリー家のお嬢さんだ。

 

そして・・・・俺はそんな彼女と接点がある。といっても、その接点というのは悪魔関連ではない。

 

半年ほど前、校舎裏で泣いている女子生徒を見かけたから紳士としてほうっておけなかった俺はその女の子を慰めていた。しかし、それをたまたま通りかかったシトリーに見つかり・・・・・俺が泣かせているのだと勘違いされて生徒会室に連行されたのだ。

 

・・・・確かにその時から俺が女癖が悪い下品な奴だっていう噂が流れていたから誤解されるのはわかる。わかるけど・・・・・当時のことを思い出すと目頭が熱くなるぜ。すっごい解せない。まあ、その時は当時付き合ってた女の子と逢引して・・・・まあちょっと盛り上がってしまっていたからそっちで連行されていた可能性は無きにしも非ずだったが。ちなみに、その件は慰めていた女の子の弁護により誤解が解けて事なきを得た。

 

そんなわけで生徒会に俺は貸しがあって、今回レーティングゲームの事を教えてもらうという形で返してもらおうと思ったということだ。

 

さて、それじゃあ読者のための説明はここまでにして話をはじめましょうか。

 

「どうも。お久しぶりです支取蒼那・・・・いや、ソーナ・シトリー生徒会長」

 

「・・・・学校ではできれば支取蒼那でお願いします」

 

「わかりました生徒会長」

 

「・・・・・はあ」

 

あら?シトリーの奴なんでため息なんて吐いてるんだ?

 

『どう考えてもあなたが原因でしょう?』

 

ですよねー。

 

と、それよりも・・・・

 

「お一人のようですが・・・・他の眷属の方はどうしていないんですか?」

 

そう、部屋にはシトリー一人しかいない。

 

シトリーもグレモリーと同じく上級悪魔だ。だから眷属を従えている。その眷属というのが生徒会の役員なのだが・・・・・その姿は一人もないとは。

 

「皆には隣の部屋で待機してもらっています。こちらの様子はモニターで確認できるようになっていますが」

 

「なんでわざわざそのようなことを?」

 

「リアスからあなたの幻術について聞き、あなたの幻術には大きく分けて2つのパターンがあると分析しました。一つは空間に幻術を投影し、ないものを有るように見せる、またはあるものを無いように見せるパターン。もう一つは視界に入った者を幻術に嵌めるパターン・・・・・違いますか?」

 

「・・・・・驚きました。部長から話を聞いただけでそこまで分析できるだなんて。正解ですよ」

 

そう、俺の幻術のパターンは今シトリーが言ったものでほぼほぼ間違いはない。正直話を聞いただけでそこまで見破られるとは思わなかった。

 

でもまあ・・・・おかげでどうしてこの部屋にシトリー一人しかいないのかがわかった。

 

「つまり、この部屋にあなたしかいないのは俺が幻術を使用するのを警戒しているから。そして、万が一の時には隣の部屋から壁をぶち破ってでも俺に攻撃を仕掛けるためですね?モニターで確認しているのなら俺のおおよその位置はわかるでしょうし」

 

「ええ。その通りです」

 

断言したな。誤魔化す気が一切ないとは恐れ入る。しかもこの対策からして幻術がモニター越しじゃ効果が薄いってこともわかってるんだろうなぁ。

 

なんというか・・・・・これは面白い。

 

「くく・・・・・あははははは!いいですね生徒会長!その疑い深さ!判断力!本当にいい!」

 

そういう打算的で冷静で容赦のない女は、俺のフェチにそぐわなくとも好みだ。

 

それこそ・・・・

 

「本当に・・・・・あなたはいい女だ。それこそ・・・・・俺のハーレムに入って欲しいと思えるぐらいには」

 

「・・・・そうですか」

 

俺はシトリーの手を取り、真っ直ぐに見つめながら言う。だが、シトリーは一切動揺した様子を見せずに平坦な声色で返事を返すだけであった。

 

・・・・コイツは手厳しいな。でもまあいいか。問題は、もう一つの目的が果たせるかどうかだが・・・

 

「こらお前!会長に何してんだよ!」

 

生徒会室の扉を乱暴に開き、一人の少年が部屋に入ってきた。

 

見事に引っかかってくれたな・・・・とりあえず目的は果たせたか。

 

「はあ・・・・匙。何をしているのですかあなたは」

 

「何って、会長を助けに来たんです!やいお前!会長から手を離せ!」

 

「ああ、いいよ。目的は果たせたからな」

 

「・・・・は?」

 

あっさりとシトリーから手を離した俺を見て、匙と呼ばれた少年は間抜けな声を上げてキョトンとしている。

 

「・・・・匙、さっきのは釣りです。あなた・・・・いえ、正確には私の眷属をこの部屋におびき寄せるための」

 

「へ?」

 

「バレてましたか。どうりでリアクション悪いと思いました。というよりよくわかりましたね?」

 

「私があなただったら万が一のためにこの部屋に眷属を全員集めようとするだろうと思っただけです」

 

・・・・グレモリーと比べて随分とまあ頭の回転がいいな。別にグレモリーが考えなしだとは言わないけども。

 

「ということは・・・・・俺はまんまと引っかかったってことか?」

 

「そういうことになるな。でもまあ、一人しか引っかからなかったとは・・・・生徒会長の眷属は中々優秀なようですね」

 

「・・・・お前はなんで俺のことを残念なものを見るような目で見るんだ?」

 

「え?そんな目してた?それはごめんなさい・・・・・一人だけ引っかかってしまった匙くん」

 

「この・・・・俺は駒4つ使った会長の兵士だぞ!馬鹿にするな!」

 

「よしなさい匙。腹が立つのはわかるけれどそこで乗ってしまえば彼の思う壺。幻術使い相手に平静を失えば・・・・ただではすまないわよ」

 

「うっ・・・・」

 

シトリーに諭され、匙は苦虫を噛み潰したかのように表情をするものの何も言わなくなった。シトリーの言っていることはもっともだということがわかってるのだろう。

 

でも・・・・匙みたいなタイプも俺はそれなりに評価している。たしかに敵の策にホイホイ乗ってしまうのは愚かだといえるが・・・・そこまでして主の事を思うような忠義の高い奴は嫌いじゃない。

 

まあ・・・・忠義だけとは限らないが。どれ・・・・確かめてみるか。

 

「匙くん、ちょっといいか?

 

「あ?な、なんだよ・・・・」

 

「いいからいいから」

 

俺は匙の首に手を回し、会長に聞こえないように部屋の隅に向って小声で話かけた。

 

「君さ・・・・もしかして会長のこと好きなのか?」

 

「なっ!?な、なななな何言って・・・・!」

 

「声大きい。会長に聞かれるぞ?」

 

まあ、おかげでだいたい察したけどな。

 

「うぐっ・・・・・そんなことお前に答える義理はない」

 

「まあそうだな。でも・・・・もし本当にそうなら俺応援するぞ?」

 

「・・・・え?」

 

「だから、お前のこと応援するって。会長とうまくいくようにな」

 

「な、なんでそんなこと・・・・お前には関係ないだろ?」

 

どうやら匙は疑っているらしい。まあ、こいつにとって俺は疑わしい存在なんだから当然だけれども。

 

「確かに関係ない。だけどな・・・・俺はお前みたいな一途で初心な奴は嫌いじゃないんだよ。見てるとついつい応援したくなっちまう」

 

『余計なお節介ね』

 

うっさい。今いいところなんだから割り込むな。

 

「まあ、俺のこと信じる信じないはお前次第だが・・・・たとえ信じてくれなくても、俺は勝手に応援しておいてやるよ」

 

それはまごうことなき俺の本心だ。確かにシトリーをハーレムに入れたいなとは思ったけど、それよりもシトリーの事を一途に想っているコイツがシトリーとくっつくほうがいいだろう。俺純愛派だし。

 

「・・・・そうか。わかった。一応礼を言っておく。ありがとうな」

 

匙は微笑みを浮かべながら俺に礼を言ってくる。その表情からは、俺に対する疑念は感じられない。

 

「礼なんていらないよ。さっきも言ったけど勝手にしてるだけだからな」

 

「二人共、何を話しているのですか?」

 

俺と匙が何を話しているのか気になったのだろう。シトリーが声をかけてくる。

 

「な、なんでもないです会長。気にしないでください」

 

「?そうですか・・・・」

 

なんでもないとごまかしながら、匙は会長の隣に立つ。シトリーは気になってはいるだろうがあまり深くは言及しなかった。

 

『ふふふ・・・・彼、面白いわね』

 

ああ、そうだな。ああいう一途な奴は好ましい。

 

『それもだけれど・・・・彼の中からヴリトラの気配がするわ』

 

ヴリトラ?それって龍王の一角の?

 

『ええ。彼はおそらくヴリトラに由縁のある神器の使い手なのでしょうね。ヴリトラの力をどこまで引き出すことができるか・・・・・赤龍帝であるイッセーちゃん並に今後の成長が楽しみだわ』

 

・・・・・もしかしてヴリトラとも昔何かあったのか?

 

『昔ちょっとね♪』

 

そのちょっとがなんなのか気になるけど・・・・まあ今はいいか。

 

『そうね。それよりも、いい加減話をはじめましょう』

 

あ・・・・そういえばそうだった。

 

俺はまだ肝心な話を何も聞いていないことに気がついた。




ソーナ会長は現時点で朧が駒王学園で一番警戒・・・・というよりは厄介だと思っている相手です

敵対すれば朧といえど、相当にやりにくい相手でしょうからね

まあ、やりにくいだけで対応できないというわけではないですが・・・・・

ちなみに頭脳戦においては朧の方がわずかにソーナ会長よりも上です

これはまあ・・・・場数の差ですが

それでは今回はここまで

次回もまたお楽しみに!


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第23話

今回はソーナ会長と匙がメイン・・・・になるのかな?

結構苦戦してしまいましたが・・・・

それでは本編どうぞ


「どうぞ会長。ほら、匙も」

 

俺は紅茶の入ったカップをシトリーと匙に渡す。

 

「ありがとうございます」

 

「お、おう。サンキュ」

 

「これは・・・・リアスから現世くんの入れたお茶は美味しいとは聞いていたけれどまさかここまでなんて」

 

「これでも得意分野ですので。まあ、姫島先輩には睨まれてしまっていますが」

 

グレモリーが姫島が淹れたお茶よりも美味しいって言ってくれたおかげでな。おかげで元々お茶淹れ担当だった姫島に睨まれることになったんだ。

 

・・・・しかもイッセーが姫島にお茶の試飲をさせられてるって聞いたし。そんなに俺よりも上手くなりたいか?

 

「こちらのスコーンもとても美味しいです」

 

シトリーは俺の持ってきたスコーンを一口食べていう。

 

「それは何より。あ、こっちのジャムをつけるともっと美味しいですよ?紅茶にも合います」

 

「そうですか?では・・・・」

 

「いやいやいやいや・・・・・ちょっと待った」

 

俺がシトリーにジャムを渡そうとすると、匙が声をかけてきた。

 

「ん?なんだ匙?」

 

「なんだじゃなくて・・・・お前は何をしてるんだ?」

 

「なにって・・・・見ての通り俺の特性スコーンと手ずから淹れた紅茶を振舞っているんだが?」

 

「それは見て分かる・・・・でも、なんでそれを現世がやってるんだよ?お前客だろ?」

 

まあ普通は客はそんなことしないわな。

 

「まあ確かに俺は客だが・・・・聞くが匙よ。お前お茶入れとか得意なのか?」

 

「うっ、それは・・・・」

 

「流石に会長にやらせるわけにもいかないだろう。だから俺がやってるんだよ。得意だから」

 

「・・・・お前はそれでいいのか?」

 

「構わないよ。こういうの好きだし」

 

なんか・・・・昔からやってたせいか楽しいんだよね。

 

『将来は執事にでもなってみる?』

 

それもいいな・・・・・俺に将来俺があればの話だが。

 

『笑えない冗談ね』

 

話振ったのはお前だろうに。

 

「・・・まあ、いいならそれでいいが」

 

「そうそう。俺がいいならモーマンタイだ。でもまあ・・・・ここにお茶とスコーンを振る舞いに来たってわけではないし、そろそろ本題に入ろうか」

 

俺はシトリーの方に向き直り・・・・当初の目的を果たすことにした。

 

「それでは会長・・・・レーティングゲームのことについて詳しくお教え願いますか?ついでにライザーのことについても可能な限り」

 

「わかりました。お話しましょう」

 

さて・・・・・ようやくレーティングゲームについて詳しいことが聞けるのか。

 

でもまあ・・・・ぶっちゃけ聞いたところで結果は変わらんだろうけど。

 

「あ、そうだ。ライザーの妹のレイヴェルについても知ってたら教えてくれます?できればレーティングゲームやライザーのこと以上に詳しく」

 

「お前な・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・私からお話できることは以上です」

 

「そうですか・・・・・ありがとうございます」

 

話をはじめてから1時間ほどかけて、シトリーからレーティングゲームとライザーの事を聞けた・・・・レイヴェルのことは全くだったけど。ちくせう。

 

それにしても・・・・ああ、うん。予想してたけど・・・・ダメだなこれは。レーティングゲームのルールとライザー、及びその眷属の能力を考慮してもほぼ確実に・・・・・

 

「・・・・・私の話は役に立ちそうですか?」

 

「ええ、それはもう。おかげでいくつか策が建てられそうです」

 

嘘はついていない。話を聞いていくらか策は思いついたからな。ついでも警戒すべき要素もわかったし。

 

ただまあ・・・・それが結果影響するかどうか別だがな。

 

「そうですか・・・・・それはなによりです」

 

・・・・それは何より、ねぇ。

 

「本日はお話を聞かせていただきありがとうございます。ただ・・・・最後にもう一つだけ聞きたいことがあるのですが・・・・」

 

「なんですか?」

 

「客観的に見て、部長達はライザーに勝てると思いますか?」

 

「・・・・・」

 

俺に問われ、シトリーは黙り込んだ。きっと、客観的見解から勝てるかどうか思考しているのだろう。シトリーは賢いから、きっと導き出される答えは俺と同じだろうが・・・・・

 

そして・・・・数秒した後に、シトリーは口を開く。

 

「・・・・正直勝つのは難しいと思います。リアスとその眷属達では・・・勝率は薄いでしょう」

 

シトリーは神妙な面持ちで答える。

 

「・・・・それが会長の見解ですか?」

 

「はい」

 

「そうですか・・・・・」

 

勝率は薄い・・・・ねぇ。随分とまあふざけた見解だこと。

 

「・・・会長、ちょっと失礼」

 

「え?」

 

「―――――」

 

俺はシトリーに顔を近づけ、そっと耳打ちした。

 

「!?私・・・は・・・・」

 

シトリーは一瞬目を見開いたあと、バツが悪そうに俯いてみせる。

 

この様子からして・・・・・やっぱり俺の思った通りってわけだ。

 

「お、おい現世!会長になにしてんだよ!」

 

「何って・・・・見ての通りちょっと耳打ちをね。いや、息を吹きかけたっていう方がエロくていいかな?」

 

「お前は・・・!」

 

「おっと、怒らせちゃったかな?ごめんごめん。それじゃあ会長、匙がおっかないんで俺はこれで失礼しますね。そのうち部長を交えてお茶でもしましょう。その時は・・・・身内の愚痴を発散しちゃいましょうね~」

 

俺はシトリーにそう告げた後、生徒会室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの野郎・・・・・よくも会長に耳打ちを!そんなこと眷属の俺だってまだしたことないんだぞ!羨ま・・・・いや、恨めしい!

 

しかも早々に逃げやがって・・・・会長のこと応援してくれるって言うから少しはいい奴だと思ったけど撤回だ!今度会ったらとっちめてやる!

 

「・・・・・匙」

 

俺が現世への怒りを募らせていると、会長が声をかけてきた。

 

そして・・・・俺の手をギュッと握ってくる。

 

「か、かかか会長?どどどどうしたんですか?」

 

突然の会長の行動に、俺は驚いてついどもってしまった。

 

会長の手・・・・柔らかくてスベスベだ。それに小刻みに震えて・・・・

 

・・・・えっ?震えてる?どうして・・・・

 

「・・・・会長、本当にどうしたんですか?」

 

俺は会長の顔を見据えながら言う。会長の表情は・・・・少々どころではなく、優れなかった。

 

「・・・・・嘘つき」

 

「え?」

 

「彼に・・・・さっきそう言われてしまったわ」

 

なっ!?さっきって・・・あの耳打ちか!?あの野郎・・・・会長になんてことを!

 

あれ?でも・・・・どうして会長はそんな戯言でこんなに?

 

「・・・・リアスから話を聞いて警戒すべき人間だとは思っていた。けれど・・・・実際に会ってみてその思いは一層に強まってしまった。現世朧・・・・彼は恐ろしい。私の考え、思いは容易に見透かされていた」

 

「見透かされて・・・いた?」

 

「・・・・・彼の言うとおり、私は嘘つきです。客観的と言われたにも関わらず・・・・希望的見解を含んだ答えを返してしまったのだから」

 

勝つのが難しいっていうのが・・・・希望的見解?十分に厳しいものだと思うけど・・・・違うのか?

 

「・・・・本当はわかっていたんです。リアス達ではライザーに勝つことはできないと。それなのに私は・・・・勝つことは難しいと答えてしまった。まるで僅かでも勝機があるのではないかと思わせるような風に・・・答えてしまった。それは私の希望的見解にほかなりません」

 

そうだ・・・・会長の言うとおりだ。勝つことは難しいというのと勝つことができないとでは全然違う。勝つことは難しいということは・・・・・勝機があるということ。そして、それは勝つことができないと考えていた会長にしてみれば希望的見解にほかならないんだ。

 

あいつは・・・・・現世はそれを見透かして会長のこと嘘つきって言ったのか。

 

「会長・・・・・あんな奴の言うことなんて気にする必要ないですよ。親友に肩入れして希望的見解を答えてしまうなんてよくあることだと俺思います」

 

そうだ・・・・別に会長は悪いことをしてるわけじゃない。そんな会長を嘘つきだって言って蔑むなんて・・・・やっぱり現世の奴は許せねぇ。

 

「ありがとう匙。けれど、私が彼を気にしていたのは嘘つきだと言われたことではありません。彼を恐ろしいと思ったのは見透かされたからではありません」

 

「え?どういうことですか?」

 

「彼は決して私の見解が聞きたくて勝てるかどうかを尋ねたわけではない・・・・彼は私がどう答えるのかが知りたくて尋ねたんです」

 

「えっと・・・・俺にはよくわからないんですが?」

 

「ではわかりやすく言います・・・・・彼は私と敵対することを想定しているのです」

 

会長と・・・・敵対?どういうことだ?いや、というよりそんな想定をしているとしても、どうしてそれがあの質問につながるんだ?

 

「彼はおそらく私なら勝つことはできないという結論に抱くであろうと考えていたでしょう。けれど、実際自分に問われたらどう答えるのかを試した。そうすることで私が情に流されるかどうかを見極めたのです。将来敵対したときに備え、私の考え方を理解しておくために」

 

「そ、そんなことを現世が?考えすぎじゃないですかね?」

 

「そうであったらそれでいいのですが・・・・・嘘つきと言ったあとに、彼はもう一言こう添えました。『その甘さに付け入られぬようお気をつけて』・・・・と」

 

「そんなことまで・・・?」

 

「ええ・・・・その言葉を聞いた瞬間に直感しました。これは自分が敵対したとき、その甘さに容赦なく付け入って追い詰めてやるという・・・・警告なのだと」

 

た、確かにそう聞こえなくもない。現世とは今日初めて会ったけれど・・・・あいつにはそれを否定しきれない、否定しようと思えない何かがあると直感的に感じてしまう。

 

「今日あったばかりですが・・・・それでも彼が相当な曲者であることは容易に理解することができた。そんな彼と将来敵対するとしたら・・・・・非常に厄介だと言わざるを得ないでしょう。そうでなくとも幻術使いを相手取るのは面倒だから」

 

俺にはよくわからないが、どうやら現世みたいな性格の幻術使いは敵に回したくないタイプであるようだ。

 

なら会長のこの震えは・・・・現世が恐ろしいと思っているから?現世が恐いから・・・・会長は震えているのか?

 

「会長・・・・大丈夫ですよ」

 

「え?」

 

「もしもあいつが敵になったとしても・・・・俺が会長を守ります。現世なんて俺がぶん殴っておとなしくさせてやりますよ」

 

俺は会長の手を取りながら言う。

 

そうだ・・・・会長のことは俺が守る。守ってみせる。

 

まだそうだと決まったわけではないけれど・・・・もしも現世と敵対するようなことになたとしても、会長に危害をくわえさせない。

 

絶対に・・・・・俺が守る。

 

「匙・・・・・ありがとう」

 

会長は俺に微笑みを浮かべながら言う。

 

会長のこんな微笑み、俺は初めて見た・・・・・より一層。俺が会長を守らなくてはと強く思った。

 

その為にも・・・・・もっと強くならないとな。会長の兵士として恥じないほどに、会長を守れるように・・・・もっと強く。

 

「ところで匙、そろそろ手を離してくれませんか?皆も見ていますし・・・・・流石に恥ずかしいです」

 

「・・・・あ」

 

会長に言われて気がついた・・・・・この部屋は隣の部屋にいる生徒会のメンバーがモニターで見ていることに。

 

 

 

 

 

 

その後・・・・・俺はニヤニヤ顔の皆に質問攻めにあうのであった。

 

 

 




ちなみにソーナ会長の考えは深読みでもなんでもありません

まさしくその通り・・・・朧の考えを見抜いています

・・・・・この二人のやりとりレベル高すぎです

それでは次回もまたお楽しみに!


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クリスマス特別編 ~セルフ質疑応答回~

今回はクリスマス特別企画回です

内容は読者の皆さんが気になってるかもしれない疑問に答える質疑応答となります

・・・・・正直クリスマス要素はほとんどありません

それではどうぞ


「クリスマス特別企画。セルフ質疑応答コーナー。いえー・・・・」

 

「テンション低っ!?どうした朧!?」

 

テンションが低いだと?当然だろ。だって・・・・

 

「そりゃテンションも低くなりますよ我が親友イッセーさん。だって会場の飾り付けから料理の準備まで俺ひとりでやってるんだよ。俺一人で。俺一人で」

 

大事なことなので三回言いました。

 

そう、今回クリスマスってことでちょっと広めの会場でクリパをすることになったのだが・・・・設営、料理等全部俺一人でやっていたのだ。

 

本当に大変だった・・・飾り付の方はまあ幻術で一瞬で終わらせたけど料理の方がな。クリスマスらしい大量のご馳走を一人で作るとかマジ勘弁しろよ。

 

あ、ちなみに幻術で料理を出して禁手(バランスブレイカー)でそれを現実にするなんてことは絶対にしない。そんなこと俺のプライドにかけてできるわけがないからな。

 

「わかったから三回も言わないでちょうだい。それについては感謝してるわよ」

 

「そうだねレイナーレ。俺が焼いて切り分けたターキーを美味しそうに食べながらそう言ってくれると嬉しい限りだよ」

 

「一々刺がある言い方しないで」

 

「だってさ~・・・・・」

 

そりゃそう言う言い方の一つだってしたくなりますよレイナーレ。

 

・・・・まあ、そのレイナーレの格好がミニスカサンタだからいいんだけどね。超眼福だし。黒い髪の上にちょこんと乗ってる紅白の帽子がすっごい可愛らしい。

 

「そもそもなんで朧一人で準備することになったんだ?」

 

「作者がなんかお前見てるとムカつくかららしいからだ・・・・・確かにクズだって自覚はあるけど凹むわ」

 

「えっと・・・・なんというか心中お察しいたします朧様。それと朧様は決してクズなどではありませんわ」

 

「ありがとうレイヴェル・・・・・君だけが癒しだ」

 

ただ一人俺を労ってくれるレイヴェル・・・・・本当に癒しですありがとうございます。

 

ちなみにレイヴェルもサンタコスしてる。マジ眼福。スカート丈はそこまで短くないけど・・・・・襟がないタイプの服だからうなじがはえる。

 

「当然ですわ。だって私は・・・・その・・・・朧様のヒロインの一人なのですから」

 

「照れてるレイヴェルカワユス」

 

「そうね。可愛いわね・・・・・だけど、これだけは覚えておきなさい小娘。あくまでも朧のメインヒロイン、即ち正妻は私よ。あまり調子に乗らないことね」

 

「わかっていますわレイナーレさん。正妻である貴女を出し抜こうだなんて思いません。まあ・・・・・朧様の気が変わって私が正妻になる可能性もありますけれど」

 

「「・・・・・」」

 

ニコニコと笑顔を浮かべながら見つめあうレイナーレとレイヴェル。正直すごい迫力だ。

 

「お、朧・・・・・なんか火花が散ってる気がするのは私の気のせい?」

 

「残念ながら現実だ。まああれでも仲が悪いってわけではないから大丈夫だ」

 

「まだ本編では出会ってさえいないのに・・・・・」

 

「番外編だしそのへんはあまり突っ込んでやるな」

 

まあ、本編でもこういう仲になるんだろうけども・・・・どうせ先の話だから今は置いておこう。

 

あ、そだ。言い忘れていたがイッセーの格好もサンタコスだ。普通に似合ってる。

 

「私に対するコメントなんか雑じゃない!?」

 

「そんなことない。というかモノローグに突っ込むな」

 

「番外編だからいいんだよ!」

 

「それで済ますのか・・・・まあいいけど。それよりも早く本題に入ろう。お前をさっさと解放しろと部長とその眷属達が俺を睨みつけてるからな」

 

俺に対して刺すような視線を向けていくるグレモリーとその眷属達・・・・・まあ、アーシアはなんか申し訳なさそうに苦笑い浮かべてるけど。

 

皆イッセーが大好きだから仕方ないというのはわかるけど・・・・・まあ、本編の進行度的に好感度が極端に高い奴はそこまでいないのだがそこは番外編ということで。

 

「なんというか・・・・ごめん朧。でも朧のこと睨みながらも料理はきっちり食べてるよな」

 

「それに関しては素直に嬉しいとは思うけど・・・・ああ、もう。また逸れた。とっととセルフ質疑応答始めるぞ。ラム、説明頼む」

 

俺は先程からニコニコと笑顔を浮かべて傍観していたラムに話を振る。

 

・・・・というか本当にご機嫌だなコイツ。そんなに見てて面白いかよ。

 

「わかったわ。今回は番外編ということで作者が考えた読者が気になっているであろう疑問を朧達が代弁して私が作者に代わって答える質疑応答回よ」

 

「・・・・読者が気になってるであろうってことは実際にアンケートとったりしてるわけじゃないんだな」

 

「そこはあれよ。これ匿名投稿してるから活動報告でアンケートできないのよ。だからしょうがないの」

 

 

「なんでわざわざ匿名投稿を・・・・」

 

「なんでも作者は匿名じゃない方でも投稿してるらしいんだが・・・・そっちと比べて主人公、つまり俺の性格が相当クズいらしくてな。作者のイメージを悪くさせないために匿名投稿してるらしい」

 

・・・・・この作者は俺のこと嫌いなんじゃないかって結構な頻度で思う。本編での扱いも雑なことあるし。

 

「酷いなそれ・・・・・」

 

「同感だわ。でもまあ、だからといって今更形式を変えるわけにもいかないからこのままでいくしかないわね。さて、このままじゃまた逸れそうだしいい加減始めましょう」

 

「厳密にはさっきのも質疑応答になるんだけど・・・・まあいいか。お~い、二人共。質疑応答始めるからそろそろこっち来い」

 

「・・・・わかったわ。朧に免じてここまでにしてあげるわ小娘」

 

「それはこちらのセリフですわレイナーレさん」

 

「「・・・・・」」

 

いや・・・・こっち来いって言ってるんだからそれやめようよ。

 

「はいはい、またヒートアップしちゃうからマジそこまでにしておけって。それよりもいい加減質問はじめよう。一人いくつまでだ?」

 

「一人一つよ」

 

「なら四つか」

 

「いえ。最後に私が勝手に読者が気になってるだろうことを言うから五つよ」

 

いいのかそれで・・・・まあ、特に問題はないけども。

 

「んじゃとりあえず俺から質問・・・・・俺のハーレムって結局何人ぐらいになるんだ?」

 

「お前な・・・・」

 

「朧・・・・」

 

「朧様・・・・」

 

ラム以外の3人に呆れたような目で見つめられてしまった・・・・・気持ちはわからんでもないが仕方ないだろう。俺としては重要なことなんだから。

 

「ふふふっ、朧ならそれを聞いてくると思っていたわ。あなたのハーレムは最終的にはここにいるレイナーレちゃんとレイヴェルちゃんを含めて5人になるわよ」

 

「5人か・・・・・結構な数になるんだな」

 

「原作でそれ以上の数の女落としてるお前が言うな」

 

「同感ね」

 

「イッセー様・・・・原作のあなたの方が異常ですわ」

 

「ここにいる私とは関係ないのにすっごい複雑な気分なんだけど!?」

 

いや、だって・・・・原作イッセーのあれは異常だろ。モテすぎだ・・・・殺意がわくほどに。

 

「まあ、それはともかくとして、レイナーレとレイヴェルを除いてあと3人はヒロインになるやつが出るってことか・・・・・3人ね・・・・」

 

「3人がどうかしたの?」

 

「まあな。3人中2人は俺のフェチであるくびれ、鎖骨要因だっていうのはわかるが残り一人はどうなのかと思ってな」

 

俺のフェチは髪、うなじ、くびれ、鎖骨の4つだ。髪はレイナーレでうなじはレイヴェルだから3人のうち2人は残りのくびれと鎖骨要員だというのはわかる。だがあとひとつは・・・・

 

「あら、あなた言ってたじゃない。最近はふとももと瞳にも興味があるって」

 

「ああ・・・・なるほど。残り1人はそっちなのか。けど・・・・」

 

「そうなると残り2人になるんじゃないの?」

 

レイナーレの言うとおりだ。そうなるとふとももと瞳要員の2人がハーレム要因になるのにどうして1人なんだ?

 

「ああ、そのことね。実は元々の予定ではそのそれぞれ1人ずつで合計6人になる予定だったのよ。だけど当初瞳要員になるはずだった女の子が予定を変更してラスボス要員になっちゃったから外れたのよ」

 

「ちょっと待て今聞き捨てならないこと言ってなかったか?」

 

「ヒロインからラスボス要員って・・・・何がどうしてそうなったのかわかりませんわ」

 

レイヴェルの言うとおりである。一体どういう経緯でそうなったんだ。

 

「それについては・・・・元々瞳要員の娘はえげつない神器を持ってることになっていたのよ。それが原因で作者が『あ、これって瞳要員のヒロインにするよりラスボスにしたほうがいいんじゃね?』って思ったらしくて変更したそうよ」

 

「なんといういい加減な・・・・というかそんなにえげつない神器なのか?」

 

「ある意味では神滅具(ロンギヌス)以上にやばいわね」

 

「・・・・・勝てる気がしない」

 

「朧・・・・頑張りなさい」

 

「応援していますわ朧様」

 

思わず膝をついてしまった俺の肩に手をおいて慰めるレイナーレとレイヴェル。二人の優しさが身にしみる。

 

「はははは・・・・なんかとんでもないことになったな。ところで朧のハーレムに入るヒロインって全員原作キャラなの?」

 

「いえ、くびれと鎖骨は原作キャラですがふとももはオリキャラよ。当初はふともも要因はジャンヌにするつもりだったらしいけど一身上の都合でオリキャラになったのよ」

 

「その一身上の都合とやらが何か気になるが今は聞かないでおこう。ところでその原作キャラが誰なのかは教えてくれないのか?」

 

「それはまだ秘密よ。でも、くびれ要因の方は結構簡単に想像できるって作者は言っているわ。鎖骨の方はおそらく簡単にはわからないそうだけれど」

 

「そうか・・・まあ、そのへんは楽しみにしておこう」

 

「朧・・・・あくまでも正妻は私だっていうことは忘れないでね?」

 

「朧様・・・・私のこともしっかりと見ていてくださいね?」

 

レイナーレとレイヴェルが俺を見つめながら言う。

 

・・・・・なんだろう、この異常なまでなプレッシャーは?

 

「・・・・もちろんわかっております」

 

「「ならいいわ(いいですわ)」」

 

とりあえず事なきは得たようだ。

 

「あ~・・・・・ごめんなさい」

 

「ラム?何を謝ってるんだ?」

 

「だいぶ先のことなんだけれどレイヴェルちゃんは不遇枠になりそうなのよ」

 

「どうしてですの!?」

 

声を張り上げるレイヴェル・・・・まあ、仕方ないなうん。

 

「色々あるのよ。あまり話すとネタバレになるから抑えるけど・・・・まあ、その代わり今やってる章では見せ場はあるから我慢して頂戴」

 

「うぅ・・・・わかりましたわ」

 

「その・・・・元気出しなさい」

 

がっくりと肩を落として落ち込むレイヴェル。流石にいたたまれないのかレイナーレが慰めていた。

 

「さて、ちょっとレイヴェルちゃんが可愛そうなことになっちゃったけれど次にいきましょう」

 

「あ、ちょっとタイム。一つだけ確認しておきたいことがある」

 

「なにかしら?」

 

「間違っても・・・・・ふともも要因って保護者のあのひとじゃないよな?」

 

「ええ。違うわよ」

 

「良かった・・・・本当に良かった」

 

「そんなに嫌なのか・・・・」

 

そうは言うけどなイッセーよ・・・・あのひとがハーレムとかマジ勘弁なんだ。主に胃痛的な意味で。

 

「それじゃあ次に行くわよ。次はイッセーちゃんよ」

 

「私?それじゃあ・・・・私ってどうしてTSしてるの?」

 

ああ・・・・うん。まあ、イッセー的にはそこ最重要だよな。

 

「それに関しては・・・・主な理由は作者が心から尊敬している執筆者の影響よ。うちの作者はその人とちょっとした交流があってそれが主な原因となってるのよ」

 

「そうなのか・・・・」

 

「作者はそのお方をどれほど尊敬しているのですか?」

 

「相当よ。その執筆者はとても面白い作品をいくつも書いてるようだし。ちなみにその人からのコメントがあるわ」

 

「コメントだと?」

 

「気になるわね・・・・教えて頂戴」

 

「わかったわ。『TS一誠愛しくて洗脳した、後悔はしていない。だが人様のTS一誠が見れたことは超嬉しいので反省もしていない(`・ω・´)』・・・・・だそうよ」

 

「・・・・それ一字一句間違いないのかしら?」

 

「一字一句間違いないわ」

 

・・・・・うん。とりあえずすごい人だっていうことはコメントから十分に理解できた。皆も俺と同じようでなんとも言えない表情をしている。

 

「その人のおかげで私女の子なんだ」

 

「そうよ。あ、ちなみにその人の影響はTSだけに留まらないわよ」

 

「え?どういうこと?」

 

「端的に言うとイッセーちゃんには女の子として男の子相手に恋愛してもらうわ」

 

「・・・・はい?」

 

おう・・・・・マジかよ。あの百合ん百合んなイッセーが男相手に恋愛か。

 

「私が男に恋・・・・恋・・・・い、いやだ。絶対に嫌だ。男なんて・・・・男なんて・・・・」

 

「イッセー様はどうされたのですか?」

 

「イッセーは根っからの男嫌いだからな。俺と・・・・あとまあ、木場はまだいいが、それ以外はな」

 

「筋金入りね・・・・でもそうなると相手って朧か木場になるんじゃないかしら?」

 

「朧か木場・・・・・なあラム。間違っても朧じゃないよな?朧なはずないよな?」

 

イッセーはすがるようにラムに尋ねる。

 

「安心しなさい。朧ではないから。ついでに言うと木場くんでもないし」

 

「そっか・・・・良かった。朧だったらどうしようかと思った」

 

「なに?仲がいいのに朧が相手なのは嫌なの?」

 

「朧が相手なのが嫌だっていうか・・・・朧とは親友でいたいから。その関係が変わって欲しくないんだ」

 

「あ~・・・・わかる。俺も同感だよ。何があってもイッセーとは親友って関係であり続けたいかラその関係壊したくないんだよなぁ」

 

イッセーは俺にとって唯一無二の親友なんだ。この関係が崩れるだなんて嫌すぎる。

 

「随分と絆が硬いのですね。少し羨ましいですわ。ですが、そうなるとイッセー様のお相手は誰なのでしょう・・・・」

 

「それについてはいずれわかるわ。さて、この話はここまでよ。次の質問を・・・・レイナーレちゃんお願い」

 

「次は私ね・・・・わかったわ。朧はアザゼル様や白龍皇の事を知っているようだけれどそれはどうしてかしら?」

 

「そういえば・・・・5話でまるで知っているような感じで朧様はラムさんと話をしてましたわね。私も気になりますわ」

 

「どうなんだラム?」

 

「それについては・・・・私よりも朧が答えたほうがよさそうね。というわけで朧、お願い」

 

ああ・・・まあ、実際に知り合ったのは俺だからな。俺が答えるのが筋か。

 

「んじゃ答えるけど、原作が始まる3年前ぐらい、俺と保護者のあの人と旅してる時にアザゼルが白龍皇を連れて接触してきたんだよ。理由は俺の神器(セイクリッド・ギア)に興味があったんだと」

 

「朧の神器に?」

 

「アザゼル様は神器に深い関心を持ってるのよ。でも・・・・わざわざアザゼル様自ら出向くなんて朧の神器ってそんなに珍しいものなの?」

 

「それはもう。私はレアなのよ」

 

レアねぇ・・・・いや、まあ間違っちゃいないんだけどなんだろう、この釈然としない感じは。

 

「でもあの時は大変だったな・・・」

 

「ええ。そうね」

 

「え?大変だったって何が?」

 

「考えるまでもありませんわイッセー様。アザゼルは堕天使の総督。そして朧様の保護者は・・・・誰なのかは知りませんが有名な悪魔です。勢力として敵対している者がであってしまえば一触即発・・・・戦闘の可能性は十分にありますわ」

 

・・・・うん、まあレイヴェルの言うとおりなんだよな。普通なら戦闘になってもおかしくはない。

 

実際戦闘になりかけたわけだし。ただまあ・・・・

 

「・・・・問題は戦闘を仕掛けてきたのが白龍皇で仕掛けられたのが俺だっていうことだけどな」

 

「・・・・え?アザゼルと朧様の保護者がじゃないのですか?」

 

少々予想外だったらしく、レイヴェルは首を傾げた。

 

「まあ、当然といえば当然ね。アザゼル様は争いを好まない平和主義者・・・・よほどのことがない限り自分から戦いを仕掛けることはないわ。その時は純粋に朧の神器について色々と知りたくて接触したのでしょうね」

 

「ああ。アザゼルの方はレイナーレの言うとおりだよ。だが、白龍皇は違う。あの戦闘狂・・・・・ラム(神器)の事をアザゼルとアルビオンから聞いて興味をもって俺と戦ってみたいからアザゼルについてきたみたいだからな。会って少し話したあといきなり『俺と戦え』とかいって神器展開したんだよ・・・・・そのおかげでえらい目にあった」

 

「あれは悲劇としか言えないわね」

 

本当だよ・・・・・そのせいで俺半分にさせられたんだからな。白龍皇の能力は俺の幻術に対しては相性がいいわけではないが・・・・・俺の自身にとっては相性最悪だからな。何があっても戦いたくない。

 

「悲劇って・・・・何があったんだ?」

 

「それについてはちょっと重いネタバレになりそうだからここでは秘密にしておく。とまあ、そんな風に戦闘になりかけたんだよ。ただ、俺が戦闘拒否ってるのを見て保護者とアザゼルが止めてくれたおかげでまだだいぶましだったけどな・・・・・・その件に関しては」

 

「その件に関してはって・・・・まだ何かあるのかよ?」

 

おそらく相当ゲンナリとしているであろう俺の様子を見て、イッセーが恐る恐ると尋ねてくる。

 

「もしかして・・・・・3年前、誰にも行き先を告げずに外に出てたアザゼル様が重傷を負って帰ってきたことがあったけれどそこのこと何か関係あるのかしら?」

 

「関係あるもなにも・・・・それやったの俺の保護者なんだよ」

 

「「「ええっ!?」」」

 

衝撃の事実に、3人は驚きを隠せずにいた。

 

「で、でもさっきアザゼルと朧の保護者との間に戦闘はなかったって・・・・」

 

「ああ。戦闘はなかったよ。ただ、アザゼルが俺の保護者を口説こうとして・・・・それが原因でアザゼルが半殺しにあっただけだよ」

 

「半殺しにあっただけって・・・・朧様、あなたの保護者は一体どれだけバイオレンスなのですか?」

 

「いや、普段はそうでもないんだけど・・・・なんというか男に対する免疫があまりないというか・・・・過剰に反応しすぎるというか・・・・」

 

「アザゼル様・・・・おいたわしや」

 

「あれは本当にすごかったわね。さて、これ以上はキリがないから次にいきましょう。レイヴェルちゃんお願い」

 

流石にこれ以上文字数を使うのはまずいと判断したラムは、多少強引ではあったが次の質問に移行させた。

 

だが・・・・

 

「では・・・・朧様の保護者について教えていただけませんか?」

 

・・・・結局話が軌道修正されることはなかった。

 

「レイヴェル・・・・・よりによってそれ聞くのか?」

 

「すみません朧様。ですが気になってしまいまして・・・・・」

 

「諦めなさい朧、質問されたからには答えないと♪」

 

コイツすっごい愉悦顔してやがる・・・・・絶対面白そうだって思ってるな。

 

でもまあ・・・・仕方ない。質問されたからにはもうどうしようもないな。

 

「では、答えるわ。といっても、あまり詳しく教えすぎちゃうと重度のネタバレになるから簡潔になるけれど。まず何を教えてものかしら・・・・・」

 

「さっきアザゼルを半殺しにしたと言っていたけれど・・・・・朧様の保護者はそんなにお強いのですか?」

 

「ええ、強いわよ。なにせ魔王候補のだったんだから。しかも超越者よ」

 

「ま、魔王候補!?しかも超越者って・・・・ルシファー様やベルゼブブ様と同じ!?」

 

あまりのことに動揺しまくってるレイヴェル。まあ・・・・そんなに強いって分かればこのリアクションは当然だよな。

 

「それって・・・・もしかしてアザゼル様よりも強い?」

 

「ええ、彼よりは上よ。流石に全力を出したルシファーには劣るけれど・・・・・作中トップクラスの強さを誇るわ。もっとも、本人は魔王の席に興味がないみたいだけど」

 

「まあ、あれが魔王になったら色々とまずいけどな。もし魔王になったら悪魔連中にガチで同情する」

 

「悪魔を憎んでる朧がそこまでいうほどなのか・・・・というか、そのひとの何がそんなに問題なんだ?」

 

「癖ね」

 

「だな。あれは酷い。あれのせいで俺がどれほど頭痛と胃痛に苛まれたことか・・・・・ははははは」

 

「朧・・・・心中察するわ」

 

レイナーレが俺の肩と頭に手を置いて慰めてくれる・・・・これがなければ立ち直れなかっただろう。

 

「一体どのような癖ですの?」

 

「ある意味では人様にお見せできないような癖だ。そのうちわかるとは思うから黙ってるが・・・・」

 

「わかるとしたら3巻の終わり頃か4巻ぐらいになるわね」

 

「・・・・それはつまりそのあたりで登場すると?」

 

「そうなるわね」

 

・・・・・その時は覚悟しておいたほうが良さそうだ。

 

「とりあえず彼女についてはこれぐらいでいいかしら?」

 

「あ、もう一つよろしいでしょうか?」

 

「いいわよ」

 

「では・・・・その方は朧様と一緒に旅をしていたそうですがそもそも何故人間界にいるのですか?」

 

あのひとがなんで人間界にいるのかか・・・・・まあ、気になるだろうな。

 

「表向きは人間界で天使や堕天使、それと神々の情報を集めるためね。集めた情報は逐次冥界に伝えているわ」

 

「なるほど・・・・でも表向きってどういうことだ?」

 

「本当の理由は別にあるのよ。といってもたいしたことないわ。ちょっと冥界の上層部の悪魔を何体か去勢させちゃって居心地が悪くなっちゃっただけだから」

 

「「「・・・・・は?」」」

 

・・・・うん、まあ何言ってるか一瞬わかんなくなるよな。冗談だと思うよな。

 

だけど残念・・・・これ事実なんだよな。

 

「・・・・とりあえず今のでそのお方が誰なのかわかりましたわ。朧様も苦労なされているのですね」

 

「ああ・・・・そりゃもう」

 

「・・・・アザゼル様が去勢されなくて良かったわ」

 

「というか・・・・結局私だけわからないなんて」

 

「イッセーちゃんは悪魔になったばかりだから仕方ないわ。それよりも、質問への返答はこれでいいかしら?」

 

「はい。もう大丈夫ですわ。あとは本編で判明されるのを待ちます」

 

個人的には判明されて欲しくないものである。

 

「じゃあ、あとは私から最後の一つね。内容はズバリ朧とイッセーちゃんの出会いがどうであったかについてよ」

 

俺とイッセーの出会いだと?

 

「それは確かに気になりますわね」

 

「私も気になるわ・・・・あなた達どういう経緯で出会ったの?」

 

レイヴェルとレイナーレが興味深そうに俺とイッセーを見てくる。

 

「どういう経緯かと言われても・・・・たいしたことないよな?」

 

「うん。駒王に入学して1週間ぐらい建った時、登校中にちょっと強めの風が吹いて・・・・」

 

「女生徒のスカートがめくれて、当然俺とイッセーはそれをガン見してて・・・・」

 

「その時ふと朧と目が合って・・・・」

 

「気がついたら互いの手をがしっと握ってて・・・・」

 

「それがきっかけで色々と話をするようになって親友になったんだよな」

 

「「ほら、大したことないだろ?」

 

「「・・・・・ア、ハイ。ソウデスネ」」

 

・・・・なぜか遠い目をして棒読みで答えるレイナーレとレイヴェル。一体どうしたのだろうか?

 

「ふふふっ・・・・やっぱりあなた達面白いわ」

 

「いやいや、別に普通じゃないかこの出会い?」

 

「珍しくはないと思うけど・・・・」

 

「・・・・それを素で言ってるならあなた達は大物よ」

 

「これは呆れるべきなのでしょうか・・・・・」

 

大物?呆れる?そんな要素なかったと思うけど・・・・・まあいいか。

 

「それよりも、質疑応答はここまででいいか?いい加減・・・・イッセーを解放しろという部長達の視線に耐えられそうにないんだが」

 

見ると、先ほど以上に鋭い視線をぶつけてくるグレモリー一行。流石にこれは精神的にきつい。

 

「そうね、ここまでにしましょう。それじゃあ朧、締めの一言をクリスマスらしくお願い」

 

「・・・・結局クリスマス要素はほとんどなかったわけだが了解した。え~、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。今回は読者の皆様が気になってるかもしれないことをこのような形で発表いたしましたがいかがでしたでしょうか?」

 

「無難なコメントね」

 

「いやレイナーレさんや。他にどう言えというのですか?まあいいや、重ねてお付き合いありがとうございます。そして・・・・・・」

 

「「「「メリークリスマス!次回からもまたどうかお楽しみください!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあベッドにいきましょうか朧」

 

「私もご一緒いたしますわ朧様!」

 

「しっかりとやることやろうとするとか君達ちゃっかりしてるね」

 

まあ俺としては大歓迎だけど。

 

聖夜のよるに俺好みの女の子と・・・・ぐふふふふ




他にも疑問に思ってる点は多々あると思いますがとりあえず今回はこれぐらいで

残りは本編中でお確かめください

それでは次回もまたお楽しみに!


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第24話

今回はレイナーレとの会話がメインです

それでは本編どうぞ


「そういえば、話を聞きに行って何か成果はあったの?」

 

食後にレイナーレの淹れてくれた美味しいコーヒーを飲んでいると、レイナーレが尋ねてきた。

 

レイナーレにはレーティングゲームがあるということは話してあるので、成果とは間違いなくその件についてだろう。

 

「んー・・・・・まああったといえばあったかな」

 

「随分と曖昧な返事の仕方するわね」

 

「それはしょうがないさ。成果はあっても結果に影響は与えそうにないからな」

 

「は?どういうこと?」

 

レイナーレはわけがわからないといった様子だ。

 

「シトリーから話を聞いて、向かうが建てそうな作戦はいくつか予測できたし、グレモリー達のための策も思いついた。あと、警戒するべき点もな。それが得られた成果だ。だが、それがあろうがなかろうがほぼ確実に訪れるであろう結果には大して影響は与えないと思う」

 

「・・・・その結果っていうのは?」

 

「どれだけ策を巡らせようがグレモリー達は負けるって結果だよ」

 

「なるほど・・・・・朧が参謀になって策を考えても結果を覆せないのね」

 

「参謀って・・・・俺はそんな大したもんじゃないよ」

 

俺はただ最低限やることをやってるだけだからな。グレモリー達の参謀だなんてお断りだっての。

 

「というか・・・・お前なんか俺のこと過大評価してないか?」

 

「正当な評価よ。これでも私あなたよりも長く生きてるのよ?見る目はそれなりに確かだと思うわ」

 

「なるほど・・・・・ところでレイナーレの歳って・・・・」

 

「刺すわよ?」

 

「ごめん」

 

清々しいまでの笑顔を浮かべ、光の槍を俺に向けてくるレイナーレ。正直簡単には刺されないとは思うけど・・・・今のレイナーレの迫力には少々気圧されてしまう。

 

『当然よ。女性に年齢を聞こうなんて愚かでしかないわよ?』

 

肝に銘じておこう。

 

「まあ、それはともかくとして、朧の策で結果が覆らせられないっていうことは相手のフェニックス家の悪魔とその眷属はそれだけ強いのかしら?あるいはグレモリー達が弱いから?」

 

「きっついなレイナーレ・・・・・でもまあ実際その通りなところはあるけど」

 

シトリーから聞いた感じではライザーの眷属とグレモリーの眷属の力量は総合力ならほぼ互角ってところだろう。グレモリー側は数では劣るが、質・・・・というよりポテンシャルは全員高いからな。イッセーについては経験が浅いから若干力不足だが、姫島、塔城、木場の実力でそれは補えるだろう。

 

だが・・・・・それでも、眷属同士の戦いは分が悪い。なにせ相手はフェニックス・・・・・確実にレーティングゲームには涙が持ち込まれる。アレを使われてばグレモリー側が不利なのは明白だ。数が少ないっていうのもかなり不味いしな。

 

それだけでも勝率を相当に下げているというのに・・・・問題(キング)だ。決してグレモリーが弱いとは言わない。だが、圧倒的な回復、再生力を持つライザーが相手ではグレモリーの方が劣っていると言わざるを得ない。もちろん王の実力でゲームが決するわけではないが・・・・・それでも、眷属同士の戦いで分が悪いのなら王の実力でも差がついているというのは致命的。

 

この時点で・・・・勝率は限りなくゼロに近いといっていいだろう。

 

「はあ・・・・勝てないのわかってるのに策を考えるとかテンション上がんねぇな」

 

「まあ気持ちはわからないでもないわよ。でも、そのゲームで勝てないとうなじ女・・・・レイヴェルとかいったかしら?そいつを口説き落とせないんじゃないの?だったらもうちょっとやる気出しなさいよ」

 

やる気ねぇ・・・・というか、今更だけど、レイナーレ的にはレイヴェルを口説き落とそうとしてることに関してはどう考えてるんだ?

 

『それについてはあなたが気にする必用はないわ。彼女の中ではもう結論は出てるようだから』

 

え?そうなのか?ならいいけど・・・・・それよりも、と。

 

「その事なんだけどさ・・・・・実はゲームに負けるってことを想定して別に口説く方法を考えてみたんだけどそっちの方がよさげなんだよね」

 

「・・・・は?」

 

「いやぁ、だから・・・・ぶっちゃけ俺個人の目的としてはグレモリー達に負けてもらっても構わないんだよ。むしろ大歓迎的な?」

 

正直リスクもあるし、うまくいくとも限らないし、うまくいったとしても面倒なことにはなりそうだけど・・・・・でも成功した時の見返りが超でかい。だから俺としては負けてもらっても一向に構わなくなったんだ。

 

「呆れた・・・・・それってつまり、グレモリー達が勝てるようにすることを完全に諦めたこと?あなたって幻術使いのくせにリアリストね」

 

「いやいや、むしろ幻術使いだからこそリアリストって言ったほうが俺の場合は正しいぞ?なにせ俺は現実を歪ませる幻術使いだからな」

 

「本当にタチが悪いわね・・・・」

 

「あはは!褒め言葉として受け取っておくよ。でもまあ・・・・勝てるようにすることを完全に諦めたったいうのは否定させてもらうかな」

 

「え?」

 

「勝つための策は考え続けるさ。たとえ負けるとわかってても・・・・テンション上がらなくてもな」

 

正直気乗りはしない。それでもやる。やらなければならない。だって俺は・・・・

 

「だって俺・・・・・これでもオカ研の部員の一人だからさ」

 

「・・・・・あなた、馬鹿じゃないの?」

 

レイナーレはいやに神妙な面持ちで・・・・・冷めた目で俺を見ながら言う。

 

「それってつまり、グレモリー達に情を抱いたってことよね?兵藤一誠やアーシアはまだいいわ。二人には罪悪感を抱いているでしょうから情のひとつも沸くでしょうね。特に兵藤一誠はあなたの親友なんだから。でも・・・・それ以外のグレモリーとグレモリーの眷属は違う。彼女達に情を抱くのは愚かでしかないわ。とんだ愚者ね」

 

「愚者とは・・・・酷い言いようだな」

 

「愚者に愚者と言って何が悪いの?わかってるでしょう?グレモリー達とはいずれ敵対する可能性があるのよ?あなたは我欲のために私を生き返らせ、この家に住まわせてくれている。今は隠し通せているけど・・・・それがいつまでも続くと本当に思っているの?」

 

まあ・・・・レイナーレの言ってることはもっともだな。

 

確かに今はレイナーレの存在を隠しとおせているが・・・・いつまで続くかなんてわかったものじゃない。

 

隠し通すのは難しい・・・・なんのきっかけでレイナーレのことがバレてしまうかわからない。バレてしまったとしても、敵対しないように口車に乗せるつもりではあるが・・・・・成功するとは限らない。

 

それなのにグレモリー達に情を抱くなど確かに愚かだろう。情を抱いてしまえば・・・・いざ敵対してしまったら、いくら俺でも心を痛めてしまうだろう。

 

レイナーレはそれを理解してくれている・・・・・つまり、レイナーレは俺を気遣って厳しい言葉を口にしているのだ。

 

「ああもう・・・・・本当にいい女だなぁ」

 

俺は愛おしさのあまりレイナーレの体を引き寄せ、抱きしめていた。

 

言葉は辛辣だけど、それでも俺に対して気遣ってくれる・・・・・こんなにいい女、抱きしめられずにいられない。

 

「・・・・はぐらかさないで。そんなことしたって、あなたが愚者であることには変わらない」

 

「ああ、そうだな。酷い言いようだが・・・・確かに俺は愚者だ。でも、仕方ないさ」

 

「仕方ない?」

 

「そう。袖振り合うも他生の縁・・・・・どんな理由、経緯があって将来的に敵対する可能性があるとしても、もう関わっちまったんだ。だったら・・・・・情を抱いてしまうのは人間のさがってやつだ」

 

そう・・・・どんな力を持ち、どんな存在であろうとも所詮俺は人間に過ぎない。人間らしく情を抱いてほだされる・・・・そんな人間らしさには逆らえないんだ。

 

「・・・・人間というのは損な性質を兼ね備えているのね」

 

「だな。だけど、レイナーレも人のこと言えないだろ?」

 

「は?私が?なんでよ?」

 

「レイナーレだって自分を殺した俺に情を抱いてるじゃないか」

 

殺した相手に情を抱いてるんだ・・・・俺のこと言えないだろ。

 

「はあ・・・・ええ、そうね。あなたを愚者と断ずるのなら、私だって間違いなく愚者よ。でも・・・・別にそれでいいわ。愚者だろうがなんだろうが・・・・私は何があってもあなたの傍に居るって決めたんだから」

 

レイナーレは俺の背に手を回し、ギュッと抱きしめ返しながら言ってくる。

 

「そっか・・・・ありがとうレイナーレ。俺も決めてるよ。何があっても・・・・グレモリー達と、アーシアと、イッセーと敵対することになっても俺はレイナーレを守って。レイナーレの傍にいるって。レイナーレを愛し続けって。そう・・・・決めてるから」

 

俺にとってはレイナーレが一番だ。グレモリー達やイッセーや・・・・・好みのうなじを持つレイヴェル以上に大切だ。

 

だから俺は・・・・・レイナーレを想い続ける。何があってもだ。

 

「そう・・・・それ、嘘じゃないわよね?」

 

「信用ないのな」

 

「幻術使いは嘘つき」

 

「そうだけども」

 

なんか最近そのフレーズ何度も聞くなぁ・・・・自覚はあるし俺が自分で言ったようなものだけど。

 

でもまあ・・・・今回ばかりは、嘘にならないように最大限配慮するつもりだけどな。だってこれは・・・・これだけは嘘にしたくないから。

 

レイナーレを・・・・・愛しているから。

 

「今回は信じてくれてもいいよ」

 

「なら信じさせてみなさいよ」

 

俺とレイナーレは互いの顔を見つめ、ニヤリと笑みを浮かべ合いながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暑いわねぇ。朧、冷房つけて頂戴』

 

ラムさん・・・・少しは空気読んでください。




レイナーレやレイヴェル優先でも朧はグレモリー眷属達の味方です

なので負け戦となるとわかっているので心境は複雑です

それでは次回もまたお楽しみに!


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第25話

今回は朧とグレイフィアメインです

そしてしばらくレイナーレは出てきませんのでご了承を

それでは本編どうぞ


 

決戦当日・・・・・ゲーム開始まで後30分。イッセー達にいくつかのアドバイス、対抗策を話した後俺は・・・・・

 

「いやぁ・・・・・こんなVIP待遇で試合を観戦できるだなんて嬉しいなぁ。ありがとうございますルキフグスさん」

 

「・・・・いえ、お気になさらず」

 

俺は・・・・グレイフィア・ルキフグスと共に居た。観戦するのなら共に、と誘われたのだ。

 

『美女と一緒だなんて役得ね』

 

ラムの言うとおりだ。こんな目が覚めるような美女と一緒だなんてそれなりに嬉しい。

 

嬉しいけど・・・・・・

 

「正直女の人・・・・それも美女からのお誘いなので興奮しております。でもこれって・・・やっぱり監視ですよね?」

 

「はい。あなたを野放しにしてしまえばゲーム中何をしでかすのかわかったものではありませんので。これはルシファー様の指示でもあります」

 

ああ・・・・うん、まあそうだとは思ってたよ。

 

『妥当な判断ね♪』

 

そうだね。だけどそんなに楽しそうに言わないでくださいラムさん。

 

「かはははっ!俺ってば信用なーい!いや、ある意味では絶大に信用されてるってとれる?まあどっちでもいいけど~・・・・・見ず知らずの悪魔に信用されたところで嬉しくもなんともないからな」

 

「・・・・・」

 

俺のその一言に、ルキフグスは黙り込み、俺をじっと見つめてきた。

 

美女に見つめられるのは悪い気はしないが・・・・・これが悪魔じゃなければもっと嬉しかったんだろうなぁ。ま、いいけどさ。

 

「そんなに見つめないでよ~。そんなに見つめられたら人妻だってわかってても何かしちゃうかもよ俺?あ、でもそうなったらルシファーに目付けられちゃう?最強の魔王様を敵に回すのは恐いなぁ。あはははは」

 

「・・・・はあ、あなたをそばに置いているリアスお嬢様の苦労が忍ばれます」

 

「そんな言い方ないでしょうに。むしろ俺の方が苦労してるんですよ?部長ってば俺のこと雑用係だと思ってるんですから。まあ、好き好んでお茶淹れたり書類整理したり掃除したりお菓子作ってきたりしてるの俺だがら否定はできないけどさ~。あ、ちなみに俺が淹れたお茶、あなたのよりも美味しいかもって部長が呟いていたようないないような・・・・」

 

「・・・・・」

 

またしても俺のことを見つめてくるルキフグス。だが、今度はどこかむっとした表情を浮かべている。メイドとして自分よりも美味しいお茶を淹れてると聞いて悔しかったのかな?

 

まあ、そんなのは嘘なんだけどさ。

 

さて、おふざけははここで終わり。ここからは・・・・茶番の時間だ。

 

「まあ、そんなことはさて置くとして、俺ルキフグスさんにこのゲームに関して聞きたいことがあるんだ」

 

「奇遇ですね。私もあなたに聞きたいことがあります」

 

「あ、そうなの?でしたらレディファーストだ。そちらからどうぞ」

 

「では・・・・ここに来る前に、リアスお嬢様たちに色々とアドヴァイスを送っていたようですがそれはどのようなものでしょうか?」

 

あ~・・・・まあ、予想通りだな。このひとが俺に聞くことなんてそんなもんだろ。

 

「別に大したものじゃないですよ。ほぼ確実にフェニックスの涙を持ち込んできてるから注意しろってのと相手がしてきそうな策、あとライザーの倒し方をちょっと教えただけですから」

 

「3つとも重要なことに思えますが?」

 

「ええ。大したものじゃないとは言いましたが重要なことではないと言った覚えはありませんので」

 

「・・・・そうですか。フェニックスの涙のことについてはどこでお知りになりました?」

 

「どこって・・・・フェニックスの涙には癒しの力があるだなんてこと、悪魔と由来のない人間だって興味持って調べればすぐにわかることでしょう。別段気にすることじゃないのでは?」

 

そんなこと、神話の本やらなんやら読めばすぐに分かることだ。実際俺だってそういうたぐいから知識を得てるんだからな。

 

まあ、悪魔であるフェニックスの涙に癒しの力があることはシトリーから確認とったんだけどな。

 

「では、ライザー様の策とはどのようなものだとお考えで?」

 

「単純にサクリファイスでしょうね。質はともかくとしてライザー側の方が数が多い。道連れ覚悟、あるいは味方巻き添え覚悟で戦えば部長側の戦力は一気に落ちる。例外としてクイーンだけはおそらく一騎打ちの戦いになるでと思いますが。姫島先輩は現状部長の眷属の中では抜きん出て強いですから、それを封じるためにライザーも自身のクイーンを当ててくる・・・・・フェニックスの涙持ちのクイーンをね」

 

クイーン同士の戦いでは姫島はまず間違いなく負けるだろう。ライザーのクイーンの話はシトリーから聞いていたが、どうやら実力的にはほぼ互角らしい。

 

互角であるのなら、回復手段を持っている方が勝つに決まっている。例外としてアーシアの補助が受けられる状況であるか、雷光の力を開放すれば勝機はあるが・・・・・

 

仮にアーシアが近くにいれば、ライザーのクイーンは多少のダメージを覚悟してでも撃破しにかかるだろう。そうなれば戦う手段のほとんどないアーシアはほぼ確実に撃破される。姫島が庇ったとしたらそろこそ本末転倒だしな。

 

そして姫島が雷光の力を開放するのは・・・・・可能性としてはほぼゼロだな。本人がそう言っていたんだし。

 

つまり・・・残念ながら姫島に勝目はないということだ。そして姫島に勝目がなければ・・・・相手側のサクリファイス作戦を阻むのは一気に厳しくなるだろうな。

 

「ライザー側が確実にその作戦を取るとは限らないから部長達にはそういう作戦で来るかもしれない程度にしか言っていませんが・・・・ルキフグスさん、あなたはどうお考えで?」

 

「・・・・・ライザー様の策はあなたの考えるようにサクリファイスでしょう。ライザー様は既に何度も公式戦を経験していますのでその策は思い当たるでしょうし、その作戦を実行しない理由はありません」

 

まあ、そりゃそうだ。この程度の作戦、レーティングゲームを実際にやったことのない俺でもちょっと考えれば思いつく。ライザーが思いつかないはずがない。

 

まあ、実行する確率は100%というわけではないだろうが・・・・・な。

 

そしてそうなると・・・・・

 

「そうなると・・・・俺の考えてるライザーの倒し方はほとんど無意味になってしまうな」

 

「その倒し方というのは?」

 

「単純明快ですよ。ライザーの眷属全員を誰一人撃破されることなく倒し、ライザーを全員でボコる。それだけですよ」

 

「なるほど・・・・・確かに単純明快でありますが、有効ではあります」

 

どうやら俺の考えたライザーの倒し方は、ルキフグスからお墨付きをもらえたようだ。

 

圧倒的回復、再生能力を持つフェニックス・・・・・一見すると倒すのは不可能な最強の存在に思えるだろう。だが、実際は違う。どんなに再生能力に優れていようとも、それは肉体の話だ。

 

肉体的に潰せないなら・・・・・精神的に追い詰めればいい。

 

多人数によるリンチ。回復した瞬間に再び攻撃され、ダメージを負って回復・・・・・それをひたすらに続ける。これはかなり堪えるだろう。精神が折れるまで何分も、何十分も、何時間だろうともただひたすらに攻撃され続けるというのは・・・・・温室育ちのお坊ちゃんには相当辛いはずだ。

 

それが俺の考える作戦。ルキフグスのお墨付きをもらったからにはそれは勝目だ。そう・・・・実行されさえすればな。

 

「有効ではあってもそれが実行されなければ絵に書いた餅、机上の空論。相手がサクリファイスを仕掛けてくるのならば・・・・・ほぼ負け確定でしょう」

 

だからテンション上がんなかったんだよなぁ・・・・負けるイメージが明確なんだから。

 

他にも一つだけ勝ち目はあるけど・・・・・それこそありえないからな。俺が悪魔のゲームに参加するだなんて。

 

「負け確定・・・・ですか」

 

「癪に障りましたか?」

 

「いえ、そういうわけでは。そもそも、このゲームはお嬢様とライザー様の婚約を確定させるためのものですので」

 

「あぁ・・・・やっぱりそういう思惑あったんだ。あなたから聞けたのだからそれは確かなのでしょうね・・・・本当いけ好かない」

 

やっぱ純愛主義の俺にはそういうのは合わんわ。頭で理屈を理解できても・・・・ああ、イライラするなぁ。

 

でも、そうなると・・・余計気になるな。

 

「・・・・ルキフグスさん、今度は俺が聞いてもいいですか?」

 

「ええ。どうぞ」

 

「単刀直入に聞きますがあなたはどっちに勝ってほしいと思ってますか?」

 

「・・・・・本当に単刀直入ですね」

 

ルキフグスは呆れたように溜息を吐きながら言う。

 

「私は今回のゲームの審判です。なのでどちらかを応援するわけにはいきません」

 

「硬いなぁ・・・・別にいいじゃないですか。俺を警戒するあまり俺の思考、知識を知るために色々と聞いてきたことを水に流してあげるんですからそれぐらい許してくださいよー」

 

「・・・・・気がついていたのですね」

 

「そりゃもう。それぐらい分かんなきゃここまで生きてこれなかったんでね。そんなことより・・・・・答えろよ。グレイフィア・ルキフグス」

 

俺はルキフグスの目を正面から見据えながら言う。

 

お遊びなしの真剣の眼差しだ・・・・・これで答えてくれなかったらその程度だということだが果たして・・・・

 

「・・・・私は、お嬢様に勝っていただきたいと思っています。私はグレモリー家に使える以前に女・・・・・お嬢様の気持ちも理解できてしまいます」

 

「ふ~ん、なるほど・・・・・女であるがゆえに、か。そうかそうか・・・・・ありがとう。それが聞けて嬉しいよ」

 

「嬉しい・・・・ですか?」

 

「ええ。部長は俺のこと警戒しているでしょうが、それでも俺は一定以上の情を部長に抱いていますので。だから、部長を応援してくるひとがいるっていうのは心情的に嬉しいものなんですよ」

 

これは嘘ではない。前にレイナーレにも言ったが、袖振り合うも他生の縁というやつだ。付き合いが短くても、それでも共にいた時間が少しでもあれば情のひとつも抱く。たとえ、将来敵対し、この手で殺すことになるとしてもだ。

 

それ故に・・・・

 

「だから俺は・・・・・打算とか面倒な事情やら私情やら一切抜きにして、部長達に勝って欲しいと願っているんですよ」

 

それ故に俺はこうして平然と嘘を付ける自分が・・・・・少しどころじゃなく嫌いなんだ。

 




グレイフィアは朧をものすっごい警戒しています

というのも、実はグレイフィアは朧の保護者、あるいはルシファー経由で朧の神器の事をイッセー達よりも知っているからです

まあ警戒するのはある意味当然でしょう

それでは次回もまたお楽しみに!


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第26話

今回から本格的にレーティングゲームを開始いたします

もっとも、朧視点なので色々割愛しておりますが・・・・

それでは本編どうぞ


『で?実際のところはどうするつもりなのかしら?』

 

ルキフグスがイッセー達にゲームについての説明をしに行っている間に、ラムが俺に尋ねてくる。

 

どうするつもりもなにも・・・・・俺のやるべきことはもうやった。ここまで来たら何もするつもりはないよ。

 

『ふ~ん』

 

・・・・なんだよ?

 

「別に。ただ、見えてさえいればモニター越しでも幻術にはめることができるんだから手助けしないのかなと思っただけよ』

 

アホ言うな。確かに精度が落ちるとは言えモニター越しでも幻術はかけられるが、どんなにうまくやったとしてもルキフグスを欺くなんて難しいに決まってるだろ。そんなリスクの高いことできるか。それに・・・・・そんなことしたらお前は俺のことつまらないとか言って見限るだろう?

 

『どうかしらね?あなたのこと溺愛している今の私なら仕方ないの一言で済ませるかもしれないわよ?』

 

溺愛って・・・・それならハーレム入れよ。

 

『それは絶対に嫌』

 

そこ頑なだなお前は。まあいいけど。

 

それよりも・・・・・そろそろ転移が始まる。ルキフグスも戻って来るだろうから黙ってろ。

 

『は~い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ・・・・・学校が舞台だなんて面白いですね」

 

イッセー達が転移されたゲームの舞台は駒王学園。もちろん本物ではなく、そっくりそのまま真似て作られたコピーであるが。

 

「これは部長へのささやかな配慮ってやつですか?学校が舞台なら多少は部長達に有利になりますし」

 

「・・・・・舞台を決めたのは私ではありませんのでそのあたりのことはわかりません」

 

「じゃあ舞台を決めたのは誰ですか?もしかして・・・・・魔王様自ら?」

 

「・・・・・」

 

「沈黙は肯定ととりますよ?まあ、そんなことどうでもいいですけどね」

 

確かに舞台が学校であれば地の利のあるグレモリー側に有利だろう。だが・・・・それでも結果に影響などしないだろう。地の利があろうとも、実力差ってものはそうそう埋まるものでもないし。

 

「そんなことよりも、お嬢様達の陣営の動きをどう見ますか?」

 

「ん?まだ俺の戦略性とか観察眼とか知ろうとしてるんですか?」

 

「・・・・・」

 

「また沈黙ですか・・・・まあいいですけど。まず序盤はそこまで大きな動きはないでしょうね。せいぜいがトラップを仕掛けるぐらい。ゲームはまだ始まったばかりだから下準備と作戦を考える時間は必要でしょうからそれが定石でしょう」

 

まあ、俺だったら序盤から速攻仕掛けるけどな。格上相手にするなら意表を突く戦略が重要だし。向こうが分散してなにかしらしてる間に敵本陣に切り込んで王の首を取る。俺の場合は能力的なものもあるけど。

 

「ゲームが動くのは中盤だ。おそらくまず最初に大きな戦闘が行われるのは体育館。あそこはルート確保の要になるから両陣営狙う()()()ぐらいは見せるだろう。配置する駒は場所を考慮して戦車(ルーク)兵士(ポーン)。部長達は塔城とイッセーでライザー側は戦車を含めた4、5人ってところかな」

 

「・・・・まあ、妥当なところですね」

 

「まあ、実際どうなるかは見てのお楽しみですけどね。さて、どうなるか・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、俺の読み通りの展開になっていた。

 

「あなたの言うとおりになっていますね」

 

「まあ、これぐらいは少し考えれば誰でも思いつくでしょう。それにしても・・・・ライザー側は4人か」

 

4人・・・・・犠牲にする数としては妥当なところか。

 

「どうかしましたか?数としてはあなたの予想したとおりとなっていますが?」

 

「ええ、そうですね・・・・・それじゃあここで一つ予言しようか。この戦いの最終結果はライザー側の戦車、兵士は全滅。そして部長側の方は・・・・最低でも一人脱落。脱落するのは高確率で塔城。最悪イッセーも脱落かもしれない」

 

「・・・・随分と具体的な予言ですね?根拠はあるのですか?」

 

「もちろん。根拠は・・・・おおっ!?」

 

俺が予言の根拠を話そうとしたその時・・・・・俺はモニターに映る映像に思わず釘付けになってしまった。

 

なんと、イッセーが手で触れたライザー側の眷属3人の服が弾け飛び、全裸になったのだ。

 

「なにこれなにこれなにこれ!?すっごい愉快なことになってるんだけど!すっごい眼福なんだけど!」

 

モニターの中のイッセーの説明によると、今のはイッセーが開発した『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』という技らしい。

 

ほとんどないといっても過言でない魔力の才能の全てをつぎ込み、相手(女性限定)の服を弾き飛ばすことだけをイメージして作り出した技のようだ。

 

「くくくくくっ・・・・・これはたまらんな。女でありながらよもやこのような恐ろしくも素晴らしい技を開発しようとは・・・・流石は我が親友、性欲の権化たるイッセーだ。俺も見習わなければ」

 

「・・・・・控えめに言って最低ですね」

 

ルキフグスが汚いものを見るかのような目で俺を見ながら言ってきた。

 

「そうはいいますけど俺だって年頃の男の子なんですよ?女の裸は見たいに決まってるじゃないですか。たとえ好みの女の子でなくてもこみ上げてくるものがあるのです」

 

「・・・・そうですか。では、あなたが好意を寄せるレイヴェル様の服も彼女達のもののように弾き飛べばいいと思っているのですか?」

 

「あ、それはないです。むしろそんなことにならないように心の底から願ってます」

 

「・・・・・なんでですか?」

 

俺の発言に疑問を抱いたのか、ルキフグスは意外そうな表情で聞いてくる。

 

「だってレイヴェルは本命なんですから。そりゃ本命の女の子の裸はみたいですけど、そのせいで辱められるのは流石に嫌なんです。俺、自分がクズだって自覚はありますけどその一線だけは超えたくありませんので」

 

『いわゆるクズ紳士ね』

 

新しい言葉をつくらいないでくださいラムさん。それ結構きついっす。

 

「まあ、そんなことよりも・・・・撃破(テイク)の宣言の準備をしておいたほうがいいですよ?そろそろ体育館・・・・消し飛ぶと思うんで」

 

「・・・・わかりました」

 

俺に言われ、ルキフグスは視線をモニターに戻した。

 

モニターに映るのは体育館から出て行くイッセーと塔城の姿。そしてライザーの眷属達が二人が何故逃げ出したのか分からず困惑している隙に・・・・それは起きた。

 

体育館に降り注がれるのは轟雷。その圧倒的にしてド派手な雷は体育館を跡形もなく消し飛ばしてしまった。

 

当然、そうなってしまえば体育館にいたライザーの眷属4人が無事で済むはずもなく・・・・

 

「ライザー・フェニックス様の兵士三名、戦車一名、戦闘不能」

 

ルキフグスの宣言をもって、舞台から退場した。

 

「まったく、派手にやってくれちゃってもう・・・・これが本物の体育館だったらと思うとゾッとするね」

 

「・・・・この展開を予想していたのですか?」

 

「ええ。体育館は重要なスポット・・・・だからこそ囮にする価値がある。姫島先輩の全力の雷なら建物を消し飛ばすぐらいはできるってのはわかってましたから・・・・まあ、この展開は読めていましたよ。

 

そう、この展開は舞台が学校で、両陣営が新校舎と旧校舎で分かれていると知れた時点で容易に予想することはできた。

 

だが・・・・そんなことを予想していたのは俺だけではない。

 

モニター内では、作戦がうまくいったと嬉しそうにするイッセー、塔城、姫島の姿が。そんな姿を目にした俺は・・・・苦笑いを浮かべざるを得ない。

 

「・・・・・一応忠告しておいたのになぁ」

 

俺がその言葉を発するのと同時に・・・・爆発が起きた。

 

爆発を引き起こしたのはライザーの女王(クイーン)。そして爆発に巻き込まれたのは塔城だ。塔城はその衝撃で吹っ飛び、体も服もボロボロになってしまった。脱落は免れないだろう。

 

「リアス・グレモリー様の戦車一名、リタイア」

 

ルキフグスが塔城のリタイアを宣言。塔城は舞台から退場した。

 

「油断しやがって・・・・まあ、実戦経験、それこそ初めてのレーティングゲームならしょうがないだろうけど」

 

「・・・・あなたの言うとおりになりましたね。両陣営の女王(クイーン)が待機していたことに気がついていたのですか?」

 

「気がついていたというよりは作戦としては定石だから予想できたって感じですよ。重要拠点の囮なんてそう珍しいことではないですし・・・・相手が何かを為して油断した隙をつくなんてこともよくあることですよ」

 

本当・・・・両陣営共素直な戦い方をするものだ。まあ、この程度のレベルのゲームならそう言う素直な定石に則った戦い方は通用するし有効なんだろうけどさ。

 

「あなたにとっての定石というのがどこからどこまでのことをいうのかが気になる発言ですね」

 

「強いて言うなら俺程度でも思いつく戦術は全て定石ですよ。一応それなりに命懸けの修羅場っていうのは何度もくぐってるので」

 

「苦労してるのですね」

 

「心にもない慰めなんていりませんよ。あなたからすれば俺は存在しないほうがいい人間でしょうし。まあ、そんなことよりも・・・・やっぱりこうなっちゃったか」

 

モニターを見ると、姫島とライザーの女王が対峙しており、イッセーは木場の下に向かっている。おおよそは俺の想像通りの展開だった。俺の想像通りということは・・・・それは敗北という名の線路を疾走してるのと同義だ。

 

塔城の退場・・・・それによってグラモリー陣営の勝率は半減したといっていいであろう。そして、このまま姫島が戦えば・・・・まず間違いなく敗北する。そうなれば勝率はさらに半減だ。

 

・・・・・はあ、本当にままならない。現時点で俺の想像は何一つ覆されていないし、イレギュラーなことも起きていない・・・・つまらない展開だ。

 

たとえ負けてもいいと思っていても・・・・・贔屓している側の敗北が決まりきってる試合なんてやはり見ていて気持ちのいいものではないな。

 

 




洋服崩壊が原因で朧はとある技を開発しちゃったりします

それについてはいずれわかるでしょう

それでは次回もお楽しみに!


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第27話

今回はレーティングゲーム中盤かな?

イッセーちゃん視点があり、レイヴェルが登場します

どうなるかはお楽しみに

それでは本編どうぞ


「あ~・・・・これはダメだな」

 

モニターに映される、木場のいつ運動場を目指して走るイッセーを俺は見ていた。

 

「ダメとは、リアスお嬢様の戦車(ルーク)が落とされたことですか?確かに戦力の乏しいリアスお嬢様の陣営にとって一人欠けるだけでも相当な痛手でございますが・・・・」

 

ルキフグスは俺が塔城が脱落したことを言っていると思ってるようだがそうじゃない。それについては予想通りの展開だから特に思うとことは・・・・・なくもないが今は関係ない。

 

問題は・・・・イッセーのことだ。

 

「ああ、いや。そうじゃないですよルキフグスさん。俺が言ったのはイッセーのことです」

 

「彼女がどうかしたのですか?」

 

「気負いすぎてるなって思ってね。塔城のこと・・・・・守ることができなかったのが相当堪えてるようだ。だから今はやる気に満ち溢れてるって感じです」

 

「なるほど・・・・確かにそう見えますね」

 

モニターに映るイッセーの表情は強ばっていて、拳を強く握っている。どう見ても気負いが過ぎてるように見えた。

 

「つまりあなたは彼女が気負いすぎているのが心配ということですか?気負いが原因で何かを仕損じてしまうかもしれないからと。彼女はあなたの親友だと伺っていますし」

 

「違います」

 

「え?」

 

「別に気負うことで何かを仕損じることはないと思いますよ。確かにイッセーはあれで責任感強すぎていろいろ背負い込んでしまうところはありますが、むしろそれで強くなるタイプです。そう言う意味では今回のレーティングゲームではプラスに働くでしょう」

 

しかもイッセーは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の所有者だ。強くなるとしたらその上限値は大きい。だが・・・・

 

「ならば何を心配しているのですか?」

 

「・・・・たとえイッセーがゲーム中に強くなろうとも、このゲームにおいて部長達がほぼ確実に負けることに変わりない。そして負けてしまえば・・・・気負っていた分イッセーの精神的ダメージは大きくなる。頑張ってもダメだったと、自分の無力さに嘆くことになる。それが心配で堪らないんですよ」

 

さっきも言ったがイッセーは責任感が強すぎる。アーシアの件でもそうだが、それことトラウマになりかねないレベルで抱え込んでしまいかねない。特に今回は自分の主君であるグレモリーの婚約がかかっているわけだからな。

 

「・・・・・ままならないなぁ。責任感が強いところはイッセーの美点だけど、それが原因で自分を追い込んじまうってのは・・・・親友として嘆かざるを得ない」

 

そしてそれをわかっていて、ただ見ているだけの自分が・・・・・恨めしくて仕方ないよ。

 

『それについては自業自得よ。そうすると決めたのはあなたなのだから』

 

ああ・・・・わかっているよラム。だから俺は見守るんだ。俺はそれしかできないからな。

 

『・・・・そうね。あら?イッセーちゃん、ついたみたいよ』

 

みたいだな・・・・・イッセー、せめて・・・・あまり苦しまないでくれよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運動場にて、木場と合流して早々に私は敵と相対した。

 

先ほどアナウンスがあって、木場がライザーの兵士(ポーン)を3人落としたことはわかっていたが・・・・それでも、まだ騎士(ナイト)僧侶(ビショップ)、戦車が各一人ずつ、計3人が残っているらしい。

 

木場と組んでも2対3・・・・不利な戦いが強いられるのは明白・・・・だと思っていたのだが。

 

「・・・・・木場、これはさすがに恨む」

 

状況はもっと悪かった。何やら、木場と向こうの騎士が一騎打ちの戦いを始めてしまっていた。まあ、騎士としての矜持ってやつなんだろうが・・・・・これじゃあ木場と組んで戦うこともできない。というか私一人で洗車と僧侶の二人を相手しなくちゃならない。

 

・・・・何この絶望感。いや、でもやらないと・・・・私がやらないといけないんだ!部長の為にも・・・・小猫ちゃんにも託されたんだから!

 

「まったく。頭の中まで剣剣と塗りつぶされた者達は泥臭くてたまりませんわね」

 

意気込んでいる私の耳に、高飛車そうな女の声が聞こえてくる。声の持ち主は僧侶・・・・前に朧が口説いてたライザーの妹だっていう娘だ。確か名前はレイヴェルって言ったっけ?近くには戦車の人もいる。

 

とりあえず私は赤龍帝の籠手を起動し、間合いをとって戦闘態勢に入った。

 

「構えなくても宜しくてよ。私はあなたの相手をするつもりはありませんから。あなたの相手はこちらのイザベラがいたしますわ」

 

「もとからそのつもり。お互い手持ち無沙汰なら戦おう」

 

「・・・・そっちの娘は戦わないんだ。ライザーの妹だからか高みの見物を決め込もうってことか?」

 

「ええ。そうですわ」

 

私の言うことを肯定するレイヴェル。なんというか・・・・偉そうだな。朧が口説こうとしてるからあまり悪く言いたくないけど印象は良くない。

 

「さて、それじゃあ始めようか!リアス・グレモリーの兵士よ!」

 

「お待ちなさいイザベラ」

 

戦車のイザベラが、構えをとって私に攻撃しようとしてくるが、それをレイヴェルが止めた。

 

「レイヴェル様?」

 

「その前に・・・・彼女には聞きたいことがあるわ」

 

「私に聞きたいこと?」

 

一体何を聞こうって言うんだ?皆目見当もつかない。

 

「そ、その・・・・あのですね・・・・・き・・・すか?」

 

「は?」

 

先程までの高飛車な態度はどこへやら、なんか頬を赤らめてもじもじとした仕草で私に声をかけてくるが声が小さすぎて聞こえない。

 

「えっと・・・・聞こえないんだけど?」

 

「だ、だからですね・・・その・・・・あの殿方は・・・お元気ですか?」

 

あの殿方?それって・・・・

 

「・・・・・朧の事を言ってるのか?」

 

「は、はい。その・・・・・朧様のことです」

 

さらに頬が赤らむレイヴェル。というか朧を『様』付けって・・・・わざわざ元気かどうか尋ねるってことはまさか・・・・

 

「えっと・・・・朧はまあ元気だけど。というか君・・・・何?朧に惚れたの?」

 

「な、ななな何を言ってますの!?こ、この私が人間にほほ、惚れるなど・・・・馬鹿も休み休みおっしゃいなさい!不敬ですわよ!」

 

なんというわかりやすい反応であろうか。そんなキョドってしまっては全く否定になっていない。

 

「あ~・・・・・まあ確かに朧イケメンだもんね。(あの時は)紳士的ではあったし」

 

「だ、だから違うと言っているではありませんか!」

 

「・・・・あの日以来、彼の名を呟きながら頬を赤らめてぼんやりとしているレイヴェル様が屋敷で何度も目撃されている」

 

「イザベラ!?」

 

まさかの身内からのカミングアウト。これは恥ずかしい。というかこれベタ惚れじゃないか。朧が何もするまでもなく落ちてるじゃん。これうまくいくんじゃないか?

 

・・・・何だろう、そう思うとなんだかムカムカしてくる。朧の奴・・・・・クソ羨ましい。これがイケメンの力か!

 

「んんっ!と、とにかく元気ならばそれでよろしいですわ。人間とは言え紳士的な振る舞いをしてくれたので多少、()()気になっていましたが、これで憂いはなくなりました」

 

咳払いをして、明らかに誤魔化すように『多少』のところをやたら強調して言うレイヴェル。ライザー家の娘だからそれなりに高い地位にいるんだろうけど、もはや威厳もへったくれもない気がする。

 

というか・・・・

 

「・・・・なあ、レイヴェル」

 

「気安く名前を呼ばないで欲しいのですが・・・・まあいいでしょう。なんですか?」

 

「これ朧も見てるぞ?」

 

「・・・・・え?」

 

私の言葉を聞き、レイヴェルは何を言ってるのかわからないといったふうにキョトンとした表情を浮かべた。

 

「いや、だから・・・・・このゲーム朧も観戦してるぞ?審判のグレイフィアさんと一緒に。つまりさっきの話も全部朧聴いてるんだけど?」

 

「・・・・・」

 

まるで時が止まったかのように硬直するレイヴェル。そしてしばらくして・・・

 

「ッ~!?」

 

レイヴェルは頬どころか顔を真っ赤にさせ、両手を顔に当てて羞恥に悶え始めた。

 

「お、朧様が・・・・見ている?朧様が・・・・先ほどのお話を全部・・・・聞いていた?」

 

「レ、レイヴェル様?大丈夫ですか?」

 

「大丈夫なわけないでしょう!朧様が見ているとは知らずに私はなんとはしたない・・・・・いえ、それ以前に朧様が見ていらっしゃるのならもっと上等な服を着てくるべきでしたわ!イザベラ!私は着替えに屋敷に戻りますわ!」

 

「無茶をおっしゃらないでくださいレイヴェル様!ゲーム中にフィールドから出られるはずがないでしょう!」

 

「だったらどうすればいいというのですか!」

 

「諦めてください!」

 

朧が見ているとわかった瞬間すっごい慌てふためきはじめるレイヴェル。なんか、イザベラを巻き込んでコントみたいなことが始まってるし。

 

「そうですわ!着替えるのが無理ならせめて身だしなみを整えなければ!鏡のある所に行きましょう!」

 

「そんなことをしている場合ではないでしょう!」

 

「・・・・・これ、いつまで続くんだ?」

 

私、イザベラと戦わないといけないんだよな?それなのに一向に戦いが始まる気配がしないんだけど・・・

 

「・・・・君のところも中々愉快なようだねカーラマイン」

 

「・・・・すまない。何も言わないでくれ」

 

向こうで斬り合っていた木場とカーラマインの会話が耳に入ってくる。どっちも呆れてるっぽいけど・・・・まあ仕方ないだろう。

 

というか・・・この隙に攻撃するなり洋服崩壊(ドレス・ブレイク)すればいいんじゃ・・・・いや、さすがにそれは良心が痛みすぎるのでやめておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ルキフグスさん。口説き落とそうと思ってた相手がまさかのほぼ攻略完了状態なんだけどどうすればいいと思いますか?」

 

「知りません」

 

俺の割とマジで真剣な問いかけを、ルキフグスはバッサリと切り捨てた。

 

「いやいやいや・・・・そこは女性としての意見を聞かせて欲しいのですけど?」

 

「無理です。というよりも、今まで何度かレーティングゲームの審判を務めてきたことがありますがこんな状況になったのは初めてなのです。私の心情を察して何も聞かないでくれると助かります」

 

「ア、ハイ。ワカリマシタ」

 

淡々と言ってるけど実際本当に参ってるんだろうなぁ・・・・頭が痛そうに、額に手を当ててるし。

 

『それなら私が女として意見を言いましょうか?』

 

ごめんお前の意見は正直いらない。

 

『酷いわね』

 

お前はこういう時ふざけてろくなこと言わんだろうに。そもそも恋愛経験ないんだろ?あてにならん。

 

『ええ、その通りね♪』

 

・・・・・・本当にあてにならないな。まあいいけど。

 

こうなると本当にあとひと押しで口説き落とせるかもな。ちょっと気が滅入っていたからこれは結構嬉しい。嬉しいけど・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイヴェル・フェニックス・・・・馬鹿な女だ。俺なんかに惚れてしまうなんて

 

行き着く先は・・・・・バッドエンド以外のなにものでもないというのに

 

本当に・・・・・馬鹿な女だ

 

そして・・・・・それをわかっていて、求めた俺もまた

 

 




レイヴェルは完全に朧に惚れてしまっています

まああの時は紳士的だったから・・・・・知らないって恐ろしいですね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第28話

今回でライザーとのギフトゲームは終了します

それでは本編どうぞ


戦局はほぼ俺の予想通りになっていた。

 

木場とイッセーは善戦していた。木場は騎士(ナイト)を相手に優位に戦っていたし、イッセーも赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の新たな能力、強化の譲渡を習得した。だけれど・・・・・結局はそれも意味をなさない。姫島と戦っていたライザーの女王(クイーン)が現れ・・・・木場を脱落させたのだ。

 

どうやら姫島は相手を追い詰めはしたようだが、やはりフェニックスの涙を持っていたようで・・・・回復されてそこからは一方的だ。追い詰めはしたが消耗していた姫島ではかなわず負けて脱落。そしてその勢いのままライザーの女王はイッセーと木場を襲撃したというわけだ。

 

お情けで撃破までされなかったイッセーは、レイヴェルから諦めるように勧められるが・・・・・あいつはそれを聞くような潔い奴なんかじゃない。その言葉を振り払い、屋上で一騎打ちをしていたグレモリーとライザーの下に向かい・・・・・今は劣勢であったグレモリーの代わりに戦っている。グレモリーを救うために。

 

「・・・・・本当に馬鹿な奴だ。無駄だっていうのに」

 

アーシアに傷は直してもらったようだが、それでも先程までの戦いでの疲れまで取り除けるわけではない。疲弊しきって立っているだけでもやっとだというのに、イッセーはライザーに立ち向かっていく。どれだけ傷つこうとも、どれだけ身を焼かれようとも・・・・それでもイッセーの闘志は消えない。イッセーの目はライザーを見据え、歩を進め、拳を振り上げる。そしてまたライザーに傷つけられ、焼かれる。

 

さっきから・・・・それの繰り返しだ。

 

「まったく。なんでお前は・・・・・」

 

わかっている。それはイッセーの美点で。イッセーがそういうやつだからこそあいつは俺の親友であれたのだし、俺自身もそんなイッセーが好きなんだ。でも・・・・そんなイッセーを見て、湧き上がる感情は誇らしさなんかじゃない。痛ましさだ。

 

大切な人が傷つく姿は・・・・・俺のトラウマを抉るものでしかないのだから。

 

「・・・・イッセー」

 

もう耐えられない。こんなもの見たくない。だから俺は・・・・モニターから目を逸した。

 

「・・・・目を逸らすのですか?親友が決死の覚悟で戦っているのですよ?」

 

「だから見届けろと言うんですか?親友の覚悟をその目に焼き付けろと?それが親友である俺の責務だというんですか?」

 

「ええ。その通りです。彼女も・・・・それを望むでしょう」

 

イッセーが望む?ふざけんな。

 

「俺とイッセーのこと・・・・何もわかってないくせに知ったふうな口を聞くなよ悪魔」

 

「え?」

 

「俺はあんなもの見たくないんだよ。親友が傷つく姿を・・・・なんで見届けなければならない?そんな辛いもの俺は見たくない。だから見ない」

 

親友としての責務とか知ったことではない。誰だって嫌なものは見たくないはずだ。それから目を逸らして何が悪い。

 

「イッセーだって・・・・今は考えてる余裕なんてないだろうけどあんな自分の姿俺に見て欲しいだなって思うはずないさ。あいつが俺に自分の醜態を見せたいなんて思うはずがない」

 

「醜態・・・ですか?」

 

「どんな意志が、覚悟があろうが成す術なく痛めつけられる姿なんて醜態でしかない。そんなの誰にも見られたくないだろうさ。それが親友ならなおさらだ」

 

そんな光景・・・・ただ苦しいだけだ。辛いだけだ。そんな記憶が残るなんて、残すなんて嫌に嫌に決まってる。

 

「あんたはどうなんだ?自分の(キング)に、大切な存在にそんなところ見て欲しいと思うか?」

 

「・・・・・それは確かに嫌です」

 

「だろ?だったら・・・・」

 

「ですが・・・・それでも、時には見て欲しいと、見守って欲しいと思うときはあります。かつて・・・・そういう時はありましたから」

 

ルキフグスは、どこか誇らしげに語り始めた。

 

「その時の私は酷く無様だったかもしれない。不格好だったかもしれない。醜態を晒したかもしれない。ですが・・・・・それでも、見てもらって良かったと思っています」

 

「・・・・・」

 

そうか・・・・ルキフグスはそっち側なのか。

 

だとしたらやはり相容れない。俺はそんな綺麗な考えを持てない。俺はそんな風に誇らしく生きられない。俺は・・・・

 

『羨ましいかしら?そんな風に生きられる彼女のことが』

 

・・・・うるさい。黙れラム。

 

『苛立つのは図星だからかしら?』

 

・・・・やめてくれ。頼むから。

 

『もちろんやめるわ。あなたからの頼みだもの。それに・・・・そろそろ終わりそうだし』

 

終わる?

 

『ええ・・・・彼女も見てられなくなったようだから』

 

彼女?ああ・・・・そうか。俺よりもずっと近くでイッセーのことを見てたやつがいたな。

 

「私の負けよ。投了(リザイン)します」

 

画面越しに、グレモリーの声が聞こえてくる。

 

俺が予想したとおり・・・・グレモリー達は完敗した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲーム終了か・・・・まあ、予想通りの結末だな」

 

番狂わせも何もない・・・・俺の思い描いた通りの結末。だからこそ面白くはないが・・・・だが、これでいい。俺にとってはこの展開こそ都合がいいんだ。

 

・・・・まあ、一欠片しか残ってない良心は痛むけどな。

 

「・・・・これでお嬢様はライザー様との婚約が確定しましたね」

 

「形式上は・・・・な」

 

「形式上は?」

 

「ああ。聞くがルキフグス、両家の思惑通りゲームはライザーが勝ったわけだが、この後はどうなる?俺の予想ではトントン拍子で話を進めるために婚約パーティーか何かを開くと思っているんだが?」

 

「はい。そうなるでしょうね」

 

やはりな。悪魔・・・・それも格式が高いとなるとそういう行動は早いからな。だからこそ、俺にとっては都合がいいんだ。

 

「いつだったかわからないけど、日本のドラマで結婚式に乱入してお嫁さんをかっさらっていくってのがあるんですよ。それがまた中々俺好みの展開で・・・・素敵だと思いませんかルキフグスさん?」

 

「あなた・・・・まさか」

 

「言っておくけどやるのは俺じゃないよ。その役目はイッセーだ。ただ、あの様子じゃイッセーは目を覚ますには時間がかかるだろう」

 

戦いの最中でイッセーはとっくに意識を失っていた。あれだけの消耗となると、怪我を直しても目覚めるには二日はかかる。おそらく婚約パーティーには出席できない。

 

だからこそ・・・・ルキフグスを、そして魔王ルシファーを利用させてもらう。

 

「・・・・何が言いたいのですか?」

 

「それはもう察してくれてるんじゃないですか?本当に部長の味方でいてくれるのならやるべきことはわかってるでしょう?魔王ルシファーも部長に味方してくれるでしょうし・・・・・もちろん俺も色々とやらかせてもらうしね」

 

「はあ・・・・大問題になるとわかっているのですか?彼女はともかくとして、人間であるあなたが首を突っ込んでしまえばただではすみませんよ?」

 

「大丈夫ですよ。いざとなれば俺の保護者の名前を出しますから」

 

あのひとは世話にはなったけどそれ以上に迷惑かけさせられたからな。少しぐらい返してもらってもバチは当たらないだろう。

 

・・・・まあ、そうなった場合一部の事情を説明しないといけなくなるだろうけど。その時はその時だ。

 

「というわけで、その件はひとまずルキフグスさんに任せるとして、そろそろ帰らせてもらってもいいですか?早く帰って寝たいんで」

 

「お嬢様達に何も言わずに帰るのですか?」

 

「今日のところは何も言いませんよ。今、俺なんかに慰められたところで余計に惨めな思いをさせるだけでしょうし」

 

一応とは言えアドバイスを受けて、それを全然生かせてなかったからな。向こうとしても今は俺と合わせる顔はないだろう。

 

「・・・・気を遣えるのですね」

 

「これでも紳士なところもありますのでね。それよりも、早くここから出してください」

 

「わかりました」

 

ルキフグスが返事を返すと、魔方陣が展開されて俺を飲み込む。次の瞬間には、俺はオカ研究の部室にいた。部長達の姿はまだない。

 

「それじゃあ俺はこれにて・・・・また後日、ルキフグスさん」

 

「・・・・ええ」

 

俺はルキフグスに背を向け、手をヒラヒラと振ったあとに家へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、結局グレモリー達は負けたの」

 

家に帰ってきた俺は、どうやら俺を待ってまだ起きていたレイナーレにレーティングゲームの顛末を説明した。

 

「ああ。まあ、それに関しては予想通りだ」

 

「随分とドライな反応ね」

 

「予想通りだから仕方がないだろ。あ、そうそう。アーシアは怪我してないからそこのところは安心していいぞ?」

 

「別に聞いてないわ」

 

と、言いつつもどこかほっとしたように安堵の表情を浮かべているあたり、心配してたんだろうなぁ。

 

「そんなことよりも、一応あなたとしては負けてくれた方が都合が良かったんでしょう?これからどうするつもりなのよ?」

 

「ん?まあちょっと・・・・近日中に開催される婚約パーティーに潜り込んでレイヴェルに接近しようかなと思ってね」

 

「どこがちょっとよ・・・・それ冥界に行くってことでしょう?人間であるあなたにそんな権限あると思っているの?」

 

「まあないだろうな。だが、それに関しては考えがあるから大丈夫だ」

 

「・・・・・おおかた幻術を使って潜り込むつもりなんでしょう?」

 

レイナーレは俺にジト目を向けながら聞いてくる。

 

「んー・・・それでもいいんだけどねぇ。今回はその必要なさそうかな」

 

「どうして?」

 

「まあ色々あるんだよ。説明すると長くなりそうだから省くけど」

 

「そう。ならいいわ」

 

気にはなっているだろうが、詳しくは聞いてこないレイナーレ。そういう聞き分けの良さは個人的に好感触だな。レイナーレに対する好感度アップだ。

 

「じゃあ、そのうなじ女を落とす算段はついてるの?」

 

「それについてはまあ多分大丈夫だ。なんか既に攻略ほぼ完了してるみたいだし」

 

「・・・は?」

 

「いやぁ、なんかあの子俺に惚れちゃってくれてるみたいでさぁ。もう本当に嬉しいったらないわ~」

 

まさか一回会っただけでああとはな・・・・・これは嬉しい誤算だ。今後色々とやりやすくなる。

 

「はあ・・・・あなたなんかに惚れてしまうなんて不憫な女ね。まあ、別に構わないけれど」

 

「まあ確かに不憫だな」

 

「自分で言うのね・・・・・さて、話も聞けたし寝るわよ。今日は一緒に寝させてもらうけれどいいわよね?」

 

「え?そりゃ構わないけど・・・・突然どうした?」

 

「最近夜冷えるのよ。湯たんぽがわりにしてあげるわ」

 

いやいや、冷えるって・・・・そうでもないと思うんだが?

 

あ、まさか・・・・

 

「・・・・レイヴェルの話聞いてちょっと妬けちゃった?」

 

「黙らないと二度と口が開けないようにしてやるわよ?」

 

「ごめんなさい」

 

どうやら図星であったらしい・・・・なんというかもう可愛いわホント。

 

「それじゃあ俺の部屋のベッドにレッツゴー!」

 

「何よその変なテンション・・・・」

 

変で結構。それもこれもレイナーレが可愛いのがいけないんだからな。

 

 




どんなに幻術を扱うすべに長けていようとも朧は人間らしい人間です

なので、見たくないものを無理してみようとしません

主人公ですが・・・・物語の主人公っぽくはありませんね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第29話

今回はレーティングゲームの翌日の話

レイナーレは出ませんが・・・・

それでは本編どうぞ


「うわぁ・・・・・・暗っ」

 

レーティングゲームが終了して一夜明け、グレモリーに呼び出された俺はオカ研の部室に訪れたのだが・・・・そこはまるでお通夜みたいにどんよりとした雰囲気に包まれていた。まあ、理由はわかるけども。

 

「朧・・・・・わざわざ呼び出してしまってごめんなさい」

 

「いや、それは別に構いませんけど。というか部長大丈夫・・・・・なわけないですね」

 

だってすっごい落ち込んでるって見ただけでわかるもん。なんか痛々しくて見てるのも辛くなるレベルだし。他の皆も同じような感じだし・・・・・まあ、一人欠けてるけど。

 

「アーシア、イッセーはまだ目を覚まさないか?」

 

「はい・・・・傷は治したんですけど」

 

「まあ、あのゲームで体力の限界を超えるぐらい消耗しちまっただろうからな・・・・今は休ませておくに限るだろう。多分今日明日にでも目を覚ますだろうからな」

 

「そう・・・・ですね」

 

随分とまあ浮かないな。まあ仕方がないか。治癒の力で傷を治せてもイッセーは目を覚まさないからな・・・・優しいアーシアのことだから抱え込む必要のない責任まで抱え込んでしまったのだろう。そういうところはアーシアの美点ではあるが、同時に欠点でもあるな。

 

「それで?どういう要件で俺を呼んだんですか?もしかして、明日にでも冥界で婚約パーティが開かれるからそれに行ってくる的なことですか?」

 

「・・・・どうしてそれを知っているの?」

 

「あ、やっぱりそうなんですね。そんなことだろうとは予想していましたが・・・・さすが上流の悪魔だ。仕事の早いことで」

 

「ええ・・・・全くね」

 

「やっぱり納得いきませんか?だとしたら・・・・・あなたは勝つべきだった。たとえどんな手を使ってでもね」

 

そう言いながら、俺は姫島と塔城の方に目配せをした。二人共、それを意味することをわかっているのか、気まずそうに俺から視線を逸らす。

 

「あなたの言うとおりかもしれないわね。正直、私は甘く見ていたわ。ライザーとその眷属がどんなに強くても負けはしないって。それだけの覚悟と思いで挑んだから・・・・」

 

「それが既に間違ってるんですよ」

 

「え?」

 

「覚悟と思い?それで勝てたら苦労なんてしない。気持ちなんて勝敗に大した影響を与えませんよ。それで勝てると思うだなんて甘えでしかないですよ」

 

「っ!?」

 

おいおい・・・・・そんなわかりきったことで何たじろいでるんだよ。ほんと甘ちゃんだな。

 

「朧くん・・・・そんな言い方はないんじゃないかな?部長の気持ちを少しは汲もうとは思わないのかい?」

 

木場が俺に突っかかってくる。主のためにか・・・・騎士らしいねぇ。やっぱ俺とは合わないわ。

 

「思ってるよ。だが聞くが・・・・・ここで優しい言葉をかけるのが気持ちを汲むってことなのか?だとしたら残酷な優しさもあったものだな」

 

「なっ!?」

 

「確かに優しい言葉は慰めにもなるだろう。それこそ、イッセーなら優しい言葉で慰めるんだろうけど・・・・・俺はそういうの性に合わないんでね。現実を突きつけて、突き落とす。それぐらいで俺はちょうどいい。そもそもの話、俺は部長達と知った仲ではあるけど別に眷属でも仲間でもないんで本来はその義理さえないんだけどな」

 

「・・・・・・」

 

ぎりっと噛み締めながらも、何も言ってこない木場。俺の言ってることに納得してしまったんだろう。でも・・・・・納得したからって食い下がるなんて随分と聞き分けのいい甘ちゃんだな。

 

「でもまあ・・・・そうだな。あえて、思いや覚悟といったものが勝敗に影響すると仮定するとして・・・・・だとしたらそれでも勝てると思うのはおかしい話だよ」

 

「・・・・どういうこと?」

 

「部長・・・・まさか自分だけが思いを抱いているとでも本当に思っているんですか?自分の思いだけが全てだと本当に思っているんですか?ライザーの思い・・・ないがしろにしてません?」

 

「ライザーの?」

 

「ライザーだって覚悟や思いを抱いてレーティングゲームに臨んでいたとは思わないんですか?ライザーはあなたのことを本気で好いていて、だからこそ相応の覚悟と思いを持ってレーティングゲームに挑んでいた可能性だって十分にあるんですよ?それを考慮していたんですか?」

 

「・・・・・・」

 

俺の言い分に何も言い返すに黙り込むグレモリー。

 

まあ、実際のところライザーがどんな覚悟や思いを抱いていたかだなんて知ったことじゃないんだけどな。でも、戦いってのは相手のそういうものを台無しにするためのものでもある。それを理解できているといないとでは全然違う。それが学べたのなら・・・・まあ俺の偉そうな説教も無意味ではないというところだろう。

 

「とまあ、説教じみたこと言うのはここまでにしましょう。とりあえず俺を呼んだ要件が婚約パーティのことだとして、それって冥界でやるんですよね?準備やらなんやら考えると今日中に出発するんですか?」

 

「・・・・そうよ」

 

「そうですか・・・・・一応聞きますけどそれって俺出れないんですよね?」

 

オカ研に所属しているとはいえ人間である俺にそんな権利無いだろうし。

 

「ええ・・・・・だけれど朧にはゲームのことで色々アドバイスをもらったから、話しておくのが筋だと思ったの」

 

「そうですか・・・・・そう思ってくれてるなら嬉しくはありますね。ともかくまあ、こうなってしまったからには仕方ないですし、大人しくパーティーに参加してなるがままに受け入れるのがいいと思いますよ?」

 

「・・・・・わかってるわ」

 

わかってるねぇ・・・・・だったら少しは元気出せよな。見てるこっちの気が滅入るっての。

 

「さて、用はもう終わりましたよね?俺はもう帰りますよ。買い出ししないといけないんで」

 

「そう・・・・わざわざ来てくれてありがとう朧」

 

「いえいえ、お気になさらずに。それでは俺はこれで・・・・・ああ、そうだ。帰る前に一つ」

 

本当は期待させるようなことは何も言うつもりはなかったんだけど・・・・・流石に痛々しすぎるし、ちょっと厳しいことも言ってしまったからな。だから一つだけ・・・・・。

 

「希望を捨てるのはあるいはまだ早いかもしれませんよ」

 

「・・・・え?」

 

「それでは皆さん、ごきげんよう」

 

俺の言った言葉の意味が全くわからないといった様子の部長を横目で見ながら、俺は部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おろ?これはまた・・・・」

 

俺が旧校舎から外に出ると、そこにソーナ・シトリーがいた。

 

「部長達に会いに来たんですか生徒会長?」

 

「いいえ・・・・私がここに居るのはあなたに用があるからです」

 

「俺に用・・・・ね。俺がここにいるってのは部長から聞いたんですか?」

 

「違います。リアスならあなたを呼んで話をすると思ったので」

 

「なるほど」

 

それで帰るところを待ち伏せてたということか・・・・グレモリーに聞いたわけじゃないてことはシトリーは自分の意志でここに居るということ。となると要件は・・・・おおよそ察しがつく。まあ、一応聞くけどさ。

 

「それで?俺に用とはなんですか?」

 

「・・・・・お願いします。あなたの力でリアスを助けてください」

 

やっぱりそれか。まあ確かに俺の幻術ならば婚約パーティを台無しにして、あわよくば有耶無耶にすることはできなくもないだろう。

 

だがまあ・・・・・答えは決まっている。

 

「お断りします」

 

そんなの断るに決まっている。受ける理由がない。

 

「確かに無茶なことをお願いしているということは承知しています。あなたにとってリスクがあまりにも高い・・・・ですが、もうあなたに頼るしか・・・・」

 

「そういうことじゃないですよ」

 

「え?」

 

「俺にとってリスクが高い?正直リスク程度ならどうとでもなりますよ。ただ、俺が断った理由はそれとは関係ない。単純に・・・・あなたの頼みを聞く義理はないし。益もないってことですよ」

 

シトリーの頼みを聞き入れる理由なんて俺には一切ない。だったら断って当然だろうが。

 

「義理もなければ益もないんじゃ頼みを聞く必要はないでしょう。俺はそこまでお人好しじゃないんでね。ただまあそうだな・・・・・生徒会長が俺の唇に熱い口付けを落としてくれるというのなら考えてあげなくもないですよ?」

 

まあ、これぐらい言っておけば諦めるだろう。親友の嫁入りを阻止するためとはいえ、流石に俺なんかにそんことしたくはないだろうし。

 

「それでリアスを助けてくれるというなら」

 

「・・・・は?」

 

だが・・・・シトリーの口から紡がれた言葉は俺にとって予想外のものであった。この女は・・・・親友のために俺に唇を捧げるというのだ。

 

シトリーは俺に近づき、顔を上げて俺を見つめる。その表情からは確かな覚悟が感じられた。そして・・・・踵をあげ、俺に顔を近づけてくる。

 

・・・・ああ、気に入らないな。

 

「・・・・前言を撤回します」

 

「え?」

 

「あなたからの口付けなんていりません。だからやめてください。ああ、ついでに以前言ったハーレムに入れたいってのも撤回しましょう。あなたのような女は・・・・俺のハーレムにはいりません」

 

頼みを聞いてもらう代わりに唇を捧げるだなんて・・・・自分で言っといてなんだが正直ノーサンキューだ。ハーレムにだっていらない。

 

そういうことは・・・・好きな人にするのが、してもらうのが一番に決まっているだろうが。それなのに理由があるとは言え好きでもない奴にしようとするとか正直気が引ける。

 

「だったら・・・・だったらどうしろというのですか?どうすればあなたは・・・・リアスを助けてくれるんですか?」

 

「別にどうする必要もありませんよ。あなたは何もしなくていい。何をしようとも・・・・俺はあなたの頼みを聞くつもりはありませんから。なので無駄なことを考えるのはもうやめてください」

 

「でも・・・それでも私は・・・・!」

 

どうしても諦めきれないといった様子で、俺の手を掴もうとするシトリー。だが、その手が俺の手を掴むことはない。なぜならそこにはもう俺はいないのだから。

 

「ッ!?これは・・・・幻術?」

 

あったはずの俺の姿がないことに、シトリーは驚きを顕にするが、それがすぐに幻術であることに気がついたシトリーは辺りを見渡して俺を探す。

 

だがまあ、俺を見つけることなどできはしない。俺は今、幻術で姿をくらませているんだからな。

 

「そん・・・な」

 

シトリーにとっては俺が最後の希望だったのだろう・・・・それが失われたと判断して、シトリーは呆然としていた。

 

そんなシトリーから視線を外し、俺はその場をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼女・・・・そうとうグレモリーのこと大切に思っていたようね』

 

そうだな。本当なら、シトリー自身が助けたいと思っていただろう・・・・だが、シトリーにも立場があるからな。それができないことだって嫌でも理解してしまっているんだろう。

 

『頭がいいからこそ、先の事を考えて自分では踏み出せない。だから朧に頼る・・・・そういうエゴは好きなのだけれどね。その上で聞くけれど・・・・朧、あなたは彼女の頼みを聞く気は一切ないのね?』

 

当然だろ。さっきも言ったようにシトリーからの頼みを聞く理由なんてない。というよりも、そもそもの話頼まれようが頼まれなかろうが・・・・俺にすることに変わりはないんだしな。

 

『うふふふっ・・・・そうね。だってあなた、彼女からの頼みはきっぱり断ったけれど、別に助けないだなんて一言も言ってないものねぇ』

 

・・・・・俺が動くのはあくまでも自分のためだ。ただレイヴェルが欲しいからいろんなものを利用するにすぎない。その過程で誰を助けることになって、誰を陥れることになってもな。

 

『そう。じゃあ、もしもイッセーちゃんが明日までに目を覚まさなかったら?』

 

・・・・そうなったらまあ、レイヴェルのついでになるが助けることになるかもしれなくもない・・・・かな。一応縁もあるわけだし。

 

『甘ちゃんね~』

 

ほっとけ・・・・たくっ、本当にお前には敵う気がしない。

 

『当然よ。私を誰だと思ってるのよ』

 

わかってるよ。あらゆるものを嘲笑い、弄んだ幻龍・・・・だろ?

 

 




朧は今回嘘はついてません

ただ、助けに行くつもりはあっても、それを言ってないだけです

それでは次回もまたお楽しみに!


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第30話

今回はとうとう冥界に乗り込みます

まあ、正確にはその前がメインなんですが

それでは本編どうぞ


 

「この家に入るのも久しぶりな気がするな」

 

俺は今、イッセーの家に来ていた。イッセーが目を覚ましたかどうか確認するためにだ。

 

「・・・・朧さん?」

 

イッセーの部屋のある二階に行こうとすると、アーシアと遭遇した。手にはタオルを持っている。おそらくイッセーのために用意したものだろう。

 

「こんにちはアーシア」

 

「あ、はい。こんにちは。えっと・・・・イッセーさんのお見舞いですか?」

 

「ああ、まあ半分はね」

 

「半分は?」

 

「気にしなくてもいいよ。それよりも、アーシアはなんでここに?部長の婚約パーティに行ってたんじゃなかったのか?」

 

アーシアも部長の眷属だ。だから婚約パーティーに付き添っていると思ったのだが・・・・・

 

「・・・部長さんに頼まれたんです。イッセーさんの傍にいて欲しいって」

 

「なるほどね・・・・それで?そのイッセーはまだ目を覚まさないのか?」

 

俺が尋ねると、アーシアは表情を暗くしてこくりと頷いた。

 

そうか・・・・まだ目を覚まさないのか。となると間に合わないかもしれないな。そうなると・・・・

 

「・・・・俺がやるしかない、か」

 

「え?」

 

「なんでもないよ。それよりも、イッセーの部屋に行こうか。俺、一応それが目的なわけだから」

 

「はい。わかりました」

 

俺とアーシアはイッセーの部屋のある二階に向かう。そして階段を上りきったところで・・・・今度はルキフグスと遭遇した。

 

「お?ルキフグスさんもいらしたんですね」

 

「・・・・・白々しいことを言いますね。私がここにいることは分かっていたのでしょう?」

 

「あはは、それはまあね。ところでルキフグスさんってイッセーの部屋にいたんですよね?イッセーの様子はどうですか?」

 

「一誠さまなら、先程目を覚ましました」

 

「!?」

 

ルキフグスのその言葉を聞くやいなや、アーシアはイッセーの部屋へと駆け出した。よほど心配だったようだ。

 

「イッセーは目を覚ました・・・・か。それで?ちゃんと焚きつけたんですか?」

 

「はい。ザーゼクスさまもそれを望んでいましたので・・・・これであなたの目論見通りになったというわけです」

 

「そうですね。これで俺が性に合わないことをせず、レイヴェルのことに集中できるってわけだ」

 

俺なんかに助けられたところで、グレモリーからすれば大して嬉しくないだろうからな。まあ、俺単独でやったほうが色々と楽ではあるんだけどさ。

 

「冥界に行くための魔法陣は既に一誠さまに渡してあります、あなたも行きたいのならご自由にどうぞ」

 

「それはどうも。では、これにて失礼」

 

俺はルキフグスに踵を返して、イッセーの部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入ると、そこには制服に着替えたイッセーの姿があった。ちなみにアーシアはいない。先程イッセーの部屋を出て、別の部屋に入るのが見えたからおそらく何かを取りに行ったのだろう。

 

「朧・・・・どうしてここに?」

 

「どうしてって・・・・お前の見舞いだよ。親友なんだから見舞いにぐらい来るさ」

 

「そっか・・・・ありがとう朧」

 

俺に対してニコリと微笑みを浮かべて礼を言ってくるイッセー。まったく・・・・俺なんかにそんな微笑みを向けてくれるのなんてお前ぐらいなものんだよ。

 

「まあ、見舞いは目的の半分で、もう半分は別にあるんだけどな」

 

「別に?」

 

「ああ・・・・部長を取り戻しに行くんだろ?」

 

「・・・・うん」

 

俺が尋ねると、イッセーは力強く頷いた。

 

「ははっ。お前ならそうすると思ったよ。だからこそ、ルキフグスさんに手回しお願いしたんだからな」

 

「手回しって・・・・じゃあこれって朧が?」

 

そう言いながらイッセーは手に持った紙に視線を移す。おそらく、それは冥界の婚約パーティーが行われている会場に向かうための転移魔方陣の書かれた紙だろう。

 

「俺が何も言わなくてもそうなっていた可能性はあるけどな。ルキフグスさんも魔王ルシファーも今回の婚約には反対のようだし。まあ、そんなことはどうでもいいか。俺の目的のもう半分ってのは・・・・俺も一緒に冥界に乗り込むってことだよ」

 

「・・・・え?」

 

キョトンとした表情で間の抜けた声をあげるイッセー。

 

「おいおい、なんだその顔は?俺も一緒だと何か問題あるのか?」

 

「いや、朧が一緒に来てくれるのはすごく頼もしいんだけど・・・・なんで?」

 

「なんでって、親友の手助けをするのは当たり前のことだろ?そうでなくても部長とはそれなりの縁があるんだから俺だって助けたいと思うさ」

 

「朧・・・・・」

 

感極まったといった様子を見せるイッセー。そうかそうか。そんなに喜んでくれるのか。

 

でも・・・・ごめんなイッセー。

 

「まあそれは建前として、レイヴェルに会いたいからってのが本音なんだけどな?」

 

「薄々そうだとは思ってたよ!というかそういうことはわざわざ言うな!」

 

本当のことを話したらおもっきし突っ込んできた。うん、中々キレのあるいいツッコミだ。

 

「ははははっ。それだけ元気にツッコミができるなら、体力は全快してるようだな。変に気を回さなくてもすみそうだ」

 

「まったく朧は・・・・・でもまあ、それでも手伝ってはくれるんだよな?」

 

「ああ。美味しいところはお前に持って行かせるつもりではあるが、それでも俺も補助はするよ。俺の幻術はそういうことに向いてるからな」

 

「そっか・・・・ありがとう」

 

「おう。どういたしまして」

 

右手の拳を突き合わせる俺とイッセー。その際、イッセーから何か大きな力が感じ取れた。

 

『あら・・・・ドライグの力が大きくなってるわね。イッセーちゃん・・・・何かやらかすつもりかしらね』

 

・・・・まあ、そうだろうな。今のイッセーの力じゃライザーに勝てないのはわかりきったことだ。だったら・・・・代償を払って力を得るしかないだろう。俺のこの眼と同じようにな。

 

『あなたの目は代償とは言えないと思うけれどね』

 

まあ、そうだけどな。

 

「イッセーさん、お持ちしました」

 

拳を離したのとほとんど同時に、アーシアが部屋に入ってきた。俺はアーシアが手に持っているものを見て、思わず笑みを零す。

 

「・・・・なるほど。それを利用するのか。確かにそれならフェニックス相手でも効果的だ。考えたなイッセー」

 

「ああ。部長を取り戻すためだ。できる事は全部しておかないとな」

 

アーシアからそれを受け取りながら言うイッセー。頭を使うことが苦手なイッセーがそこまで考えてるとはな・・・・・今回はそれだけ本気ということか。

 

「そっか・・・・そこまで言うからには、絶対に部長助けろよ?その為のお膳立てはしっかりしてやるからさ」

 

「もちろんだ」

 

「お膳立て?もしかして・・・・朧さんも行くんですか?」

 

アーシアは意外そうに俺に尋ねてくる。

 

「ああ、そうだけど・・・・意外か?」

 

「い、いえ。そういうわけではないんですけど・・・・」

 

「まあ、昨日の話聞いてたら意外だって思われても仕方がないか。でも。俺はあの時助けに行かないなんて一言も言ってないよ。為すがままに受け入れるのがいいとか、希望を捨てるにはまだ早いとは言ったけどな」

 

一応、遠まわしにだけど助けはあるって仄めかしてはいたからな俺。まあ、あの時はメインのイッセーが目を覚ますかどうか微妙だったからはっきりとは言えなかったんだけど。

 

「・・・・ふふっ。そうですね」

 

俺の言葉を聞いて、アーシアは笑みを浮かべる。ほんと、この子の笑顔は綺麗だな・・・・これこそ、天使のような悪魔の笑顔ってやつか?

 

「さて、イッセー。そろそろ行こうか」

 

「ああ。それじゃあまた後でなアーシア」

 

「はい。お二人共、頑張ってくださいね」

 

アーシアに見送られて、俺とイッセーはルキフグスから渡された魔方陣で婚約パーティの会場へと転移した。

 

 

 

 




というわけで冥界には朧とイッセーの二人で乗り込むこととなりました

どうなるか乞うご期待

それでは次回もまたお楽しみに!


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第31話

今回とうとう婚約パーティーの会場に殴り込みをかけます。

その前にちょっとありますけどね。

それでは本編どうぞ!


魔法陣で転移された俺とイッセーは、だだっ広い廊下にいた。おそらく婚約パーティーの行われている屋敷の中なのだろう。

 

「ここが冥界か・・・・屋敷の中だからってのもあるがあまり実感はわかないな」

 

正直もっと重苦しいというか・・・・・不快な空気が漂っていると思っていたが、そうでもないし。

 

「確かに・・・・というか朧は冥界に来たことはなかったのか?悪魔の保護者がいるのに」

 

「無いに決まってるだろ。保護者が悪魔だからって俺は一応は人間なんだ。易々と冥界に来ていいわけないだろう」

 

正直来たいとも思った事はこれまでなかったがな。俺の人生をめちゃくちゃにしやがった悪魔と堕天使の世界になんて来たいと思うわけがない。

 

「というより、それはどうでもいいだろ。こんな事話にここに来たわけじゃないんだから」

 

「と、そうだったな。パーティーは・・・・向こうの扉の奥か?」

 

「だろうな」

 

イッセーの視線の先にはやたらと大きな扉があった。扉の奥からはガヤガヤと声が聞こえてきているので、まず間違いなくパーティー会場はその部屋で行われているのだろう。

 

「よし、それじゃあ行こう朧」

 

「ちょい待ち」

 

パーティー会場に乗り込もうと扉の取っ手に手をかけるイッセーに、俺は待ったをかけた。突入する前に、はっきりさせたいことがるからだ。

 

「なんだ?」

 

「・・・・確認しておくが、自分がこれからしようとしていることの意味を、お前は本当にわかっているのか?」

 

「わかってるさ。私はライザーから部長を取り返す。部長の家とライザーの家にはすっごい迷惑をかけることになるだろうけどそれでも私は・・・・」

 

「そうじゃない」

 

「・・・・え?」

 

「俺の言っているのはそういうことじゃない。ある意味ではもっと大事なことだ」

 

正直、グレモリー家とフェニックス家に迷惑がかかる云々のことは割とどうでもいい。俺には関係ないからな・・・・・レイヴェルは思うところがあるかもしれないが。

 

俺が気にしているのは・・・・・イッセー自身のことだ。

 

「誤解されたくないから最初に言っておくが、俺はお前のことを肯定しているし、好ましいと思っている。だがな、お前がこれからやろうとしていることは根本から間違っているんだ」

 

「根本から・・・・間違っている?」

 

「ああ。女が男から婚約者である女を奪う・・・・・・・それは性別上間違った行為だ。お前が部長を慕っているのならなおさらだ。そんなことをすれば、お前は悪魔共から白い目で見られることになるかもしれない」

 

同性愛者ってのは往々として受け入れがたい存在だ。そのあり方は、生物としての生産性を損なっているんだからな。周囲の者達の多くは快く思わないだろう。

 

「お前はそれを理解した上でその扉を開くのか?理解した上で・・・・代償を払ってまで部長を奪い返そうっていうのか?」

 

自分でも酷いことを聞いていると思っている。こんなところでこんなことを聞けば、決心が鈍ってしまうかもしれないのだから。それでも・・・・だからこそ俺は親友として、今ここで聞かなければならないんだ。イッセーにその覚悟があるかどうかを。

 

「朧・・・・ありがとう。私のこと心配してくれてるんだな」

 

イッセーは微笑みを浮かべながら言葉を紡ぎ始める。

 

「でも、大丈夫だよ。その覚悟は出来てる・・・・というより、はっきり言ってそれは今更すぎる」

 

「なに?」

 

「そんな覚悟は、こういう生き方をしてる時点で、女なのに女に好意を寄せてしまっている時点でとっくにできていたんだ。自分の生き方が間違ってるだなんて重々承知してる。もっと言えば、将来的に自分が男に惚れてしまって、今の生き方を自分で否定して後悔する可能性があるってことだって私は覚悟してるんだ」

 

「イッセー・・・・・」

 

「それでも・・・・それでも私はこの扉を開く。この扉を開いて部長を奪い取る。それが今の私の望みだから。覚悟が出来てる以上、先の後悔なんて知ったこっちゃないから」

 

イッセーは俺を真っ直ぐに見据え、微笑みを崩すことなく言い切ってみせた。

 

ああ・・・・・俺はなんて馬鹿だったんだ。俺は親友であるイッセーを侮っていた。イッセーはそれを承知の上で、覚悟の上でその生き方を選んでいたんだ。その生き方を謳歌していたんだ。俺なんかに言われるまでもなく・・・・・イッセーはもう至ってしまっていたんだ。

 

もしもの時はイッセーには引っ込んでもらって全部自分でやっちまおうと思ってた自分が滑稽でしかない。

 

『とんだ道化ね。気を使ったつもりが、逆に思い知らされるだなんて』

 

全くだ。お前の言うとおりだよラム。俺は今、自分が自分で恥ずかしく感じる。

 

だが・・・・同時に誇らしくもあるよ。こんな最高に面白い奴を親友に持てたんだからな。

 

「そっか・・・・わかったよ。悪かったな。出鼻くじくような真似しちまって」

 

「全くだ。この償いはいつかしろよ?」

 

「はははっ、了解。それじゃあ・・・・行こうぜイッセー」

 

「ああ」

 

俺とイッセーは取っ手に手を掛け、そして扉を開け放った。中にはいかにもな服装に身を包んだ悪魔共が大勢いる。

 

つうか何この会場、広すぎるんだけど?いくらなんでもやりすぎだろ。見栄はってるようにしか見えねぇ。これだからお偉いさんは嫌だねぇ。

 

「部長ォォォォォォ!!」

 

俺が呆れていると、イッセーが大声で叫びだした。その視線の先には、深紅のドレスに身を包んでいるグレモリーの姿がある。ついでにその近くにはあんまし似合ってないタキシード着たライザーも。

 

「お集まりの上級悪魔の皆さん!それに部長のお兄さんの魔王様!私は駒王学園オカルト研究部の、リアス・グレモリーさまの兵士(ポーン)の兵藤一誠です!この度、私の(キング)を取り戻しに参りました!」

 

会場中の悪魔の注目を一身に受けながら、イッセーは宣言してグレモリーに歩み寄っていく。

 

「ライザー!お前に部長は渡さない!部長の・・・・部長のハジメテ♥は私のもんだァァァァ!!」

 

「ぶふぉっ!?」

 

それを聞いて、俺は思わず吹き出してしまった。

 

『ハジメテ♥は私のもん』って・・・・スゲェよイッセー。覚悟は出来てるって聞いたけどそんなことまで言い放つだなんて思わなかった。控えめに言って最高だお前。

 

『うふふふふ・・・・・いいわね朧。あんな面白い親友を持つあなたが羨ましくてたまらないわ』

 

はははっ。そうだろうそうだろう。羨ましいだろうラム?

 

「何のつもりだ!ここをどこだと思っている!」

 

イッセーを止めようと、衛兵が手を伸ばす。だが、衛兵がその手で掴んだのは、パーティーに出席している悪魔の肩であった。

 

「貴様!何をしている!」

 

「なんだその口の聞き方は!恥を知れ!」

 

「ぐっ!?」

 

気を悪くした衛兵は、その悪魔に殴りかかる。

 

あ~あ・・・・相手は結構なお偉いさんだろうに。この衛兵下手したらクビになるんじゃねえか?まあ別にいいけど。この衛兵が・・・・いや、この()()()がどうなろうと知ったことではない。

 

「くくくくっ・・・・あはははは」

 

俺はその光景を見て思わず笑い声を上げてしまった。こんなに愉快なこともそうそうないのだから仕方がないだろう。

 

俺の視界に映るのは、衛兵達がパーティーに出席している悪魔に無礼を働いている姿であった。ある衛兵は殴りかかり、ある衛兵は拘束し、ある衛兵はカンカンに怒っている悪魔からの反撃をくらって吹っ飛んでいる。

 

もちろんこれは・・・・俺がしくんだことだけどな。

 

「容赦がないね朧くん」

 

俺が楽しく悪魔共が乱闘する様を見ていると、白いタキシードを着ている木場が声をかけてきた。さすがイケメン・・・・・様になってやがるもげろ。

 

「・・・・朧先輩、一体何をしたんですか?」

 

今度はドレスを着た塔城が声をかける。これまた可愛らしいな・・・・・可憐さ4割増といったところか。

 

「大したことはしてないさ。ただちょっと衛兵達に近くにいる悪魔がイッセーに見えるようになる幻術をかけただけだ。もちろん本物のイッセーの姿を見えないようにした上でな」

 

流石に会場中全員となると俺でも骨が折れるから衛兵だけにしたけで十分効果的だな。本当、こういう時幻術ほど便利な力はないと思う。

 

「それはまたえげつないですわね」

 

俺がしたことを説明すると、豪華な和服を着た姫島が反応を示す。えげつないという割には、顔に笑が浮かんでるあたりこのひとも大概だと思う。

 

「えげつない?これぐらい手ぬるいですよ。もっとやばい作戦考えてたんですから」

 

幻術でドデカイ麽獣出したりドラゴン出したりな。それに比べればこんなのまだ手ぬるい方だ。怪我人は出るかもしれんけど流石に致命傷にはならんだろうし。

 

「「「鬼畜ね(だね)(ですね)」」」

 

「うん。俺鬼畜だよ?ベッドの上では特にね。まあちゃんと愛でるけど」

 

あ、言った瞬間3人とも引きやがった。助けに来た奴相手にそれはないだろおい。

 

まあいいか。そんなことよりも・・・・・俺もいい加減本命の目的を果たすとしますか。

 

「あ、いたいた」

 

会場中を見渡して、俺は目当ての悪魔を見つけることができた。部長助けるのはほぼ建前・・・・俺は彼女に会いにここに来たんだ。

 

「衛兵達にかけてる幻術解きますんであとはよろしくお願いします。まあ、今更解いたところで乱闘は収まらないでしょうから問題はないと思いますが。俺はちょっと用があるので失礼」

 

衛兵達にかけていた幻術を解いて、俺は彼女に近づいていく。後ろ方3人が何か言ってるのが聞こえるがどうでもいい。

 

ああ、会いたかった・・・・・やはり君のうなじは麗しい。

 

「やあ。久しぶりだねレイヴェル」

 

「・・・・朧様」

 

彼女・・・・レイヴェルに笑顔で声をかけると、レイヴェルは複雑な心境を抱いていそうな表情で俺の名前を口にした。




うちのイッセーは自分の恋愛観や生き方に関して結構真剣に考えています。

自分が異常だとも自覚していますが、その上で百合百合してるのです。

朧もイッセーのそういうところも気に入ってますしね。

それでは次回もまたお楽しみに!


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第32話

今回はとうとうレイヴェルとの絡みです

はてさてどうなるか・・・・

それでは本編どうぞ


「会いたかったよレイヴェル。元気だったかい?」

 

「・・・・・はい」

 

俺が問いかけると、レイヴェルは短く返事だけした。

 

そして、今度はレイヴェルが問いかける。

 

「朧様、いくつかお聞きしたいことがあります」

 

神妙な面持ちで尋ねてくるレイヴェル。これは・・・・下手な誤魔化しをしようものなら嫌われてしまうな。

 

「ああ。どうぞ」

 

「ではまず一つ・・・・人間であるあなたが何しに・・・いえ、なぜこの冥界へ来たのですか?」

 

まあ、それは気になるよな・・・・なら、正直に答えよう。

 

「君に会いに来た」

 

「・・・・え?」

 

「俺は・・・・君に会いたくてここに来たんだよレイヴェル」

 

「ええっ!?」

 

お?すっごい顔が赤くなってるな。これは可愛らしい反応だ。レイナーレはこういうリアクションあんまりしないから新鮮だ。

 

「わ、私に会いにって・・・・そんな冗談・・・」

 

「冗談なんかじゃないよ。俺は君に会いたくてここに来たんだよ。そりゃまあ、部長の件も理由に含んではいるけど俺にとってはほんのおまけ。本命は君だよ。麗しのうなじの淑女さん」

 

「あう・・・・」

 

俯きながら指をせわしなく弄るレイヴェル。ああ、本当に可愛いなぁ・・・・ふふふっ。

 

「お、朧様が私に会うために来てくださったことはわかりましたわ。それはその・・・・素直に喜ばしいと言っておきましょう」

 

「それは光栄・・・」

 

「ですが!それでも・・・・たとえ朧様であっても見過ごせないことがありますわ」

 

未だに顔は赤らんでいるが、レイヴェルは鋭い視線を俺にぶつけてくる。

 

「先程、衛兵達が無礼を働いていましたが・・・・あれは朧様の仕業ですわね?」

 

「どうしてそう思うんだい?」

 

「朧様は幻術を使えるのではありませんか?その力を使って衛兵達に近くにいる悪魔が彼女に見えるようにし、あの混乱は起きた・・・・・違いますか?」

 

・・・・・これは驚いたな。幻術のことは何も話してないのに推察されるとは。

 

「イグザクトリー。正解だ。確かに衛兵達には幻術をかけたよ。レイヴェルの言うとおり、近くにいる悪魔がイッセーに見えるようにな。よく俺が幻術使いだってことがわかったね」

 

「初めて会ったとき、あなたはお兄様に焼かれても無傷で、突然姿を消したり現れたりして・・・・どんな能力なのだろうと考えていました。そしてその末に、朧様は幻術が使えるのではないかと推察しました」

 

「幻術だとしたら説明がつくから・・・・かな?」

 

「そうですわ」

 

「そうか・・・・・レイヴェルは賢いんだな。よく考え、そして結果にたどり着く・・・・・そういう賢い子は好きだよ」

 

「好っ!?し、真剣な話をしているのですからからかわないでください!」

 

からかってなんていないんだけどなぁ・・・・というか一々リアクションとってくれちゃってまあ。

 

「こほんっ。話を戻します。朧様は先程幻術を使って会場を混乱に陥れた。そして・・・・彼女がお兄様からリアス様を奪い返す道筋を作ってしまいました」

 

そう言いながらレイヴェルはイッセー達の方を見やる。そこでは赤髪の青年を中心に何か話している。

 

『おそらくあの赤い髪の男が今のルシファーでしょうね』

 

魔王ルシファー・・・・ザーゼクスか。パッと見はただの優男だが・・・・まあ、今はどうでもいいか。

 

「ふむ・・・・魔王ルシファーの言となると誰しもが聞かざるをえないか。状況としてはまずまずか。まあ正直個人的にはそっちはついでなんだが・・・・」

 

「朧様もこの状況を作った一端だというのに・・・・ついでですか?」

 

「ああ。ついでだ。俺の本命はあくまでもレイヴェル・・・・君だからな」

 

「そうですか・・・・でしたら、私が言えばあなたは彼女を止めてくれるのですか?」

 

・・・・・ほう。そうきたか。いいね・・・・・こっちから仕掛ける手間が省ける。これぐらい賢い方がやりやすいから好みなんだよな。

 

「君のために親友を裏切れってことか?中々わがままじゃないか・・・・・そういうの嫌いじゃないよ」

 

「では、やってくれますか?」

 

「そうだね・・・・・他ならぬ君の頼みだ。叶えてあげたいとは思うよ。だけど・・・・それは少々都合が良すぎないかい?」

 

「・・・・・というと?」

 

「ついでとはいえ、俺はイッセーや部長に肩入れしてる。その手前、君の頼みを一方的に聞くってのは筋が通らないし、何より・・・・俺が納得できない。だから賭けをしないか?」

 

「賭け?」

 

「俺と君で戦って・・・・・負けた方は勝った方の言うことをなんでも一つ聞く。なんでも・・・・ね」

 

そう、これこそが俺が持ってきたかった展開だ。一方的にこちらの要求を通すのは、いくらレイヴェルが俺に惚れてくれているとは言え難しい。なにせ俺は彼女の兄の婚約を壊すのに一役かってしまっているんだからな。

 

だからこそ、賭けに持ち込みたかったんだ。そうすれば公平性があると思わせられるから、要求を通しやすくなるし、向こうも要求を受け入れやすくなるしな。

 

「・・・いいでしょう。その賭け乗りましたわ」

 

よし、乗ってくれたか。いや、まあレイヴェルなら乗ってくれると確信していたが。

 

「決まりだ。レイヴェルが勝ったら、俺は君の要求通りイッセーを止めてやろう。そして俺が勝ったら・・・・レイヴェルには俺とデートしてもらう」

 

「デ、デート!?」

 

「ああ。デートだ」

 

これが今回の目的た。レイヴェルと会ってデートの約束を取り付ける・・・・・その為に色々と考えてたんだからな。

 

「な、なぜデートなど・・・・・」

 

「だってほら?俺は君のうなじに魅了されたわけだけれど・・・・君がどういう子なのかまだまだ知らないところは多いし、知りたいとも思う。君だって俺のことほとんど何も知らないだろ?だから、相互理解の為にデートしたいなと思って」

 

「そ、そうですか・・・・朧様とデート・・・・うふふっ」

 

お?なんか嬉しそうにしてるな・・・・満更でもないって思ってくれてるのかな?

 

「流石に冥界でってわけには行きそうにないから人間界でデートしようと思うけど・・・・・レイヴェル、どこがいいかとか希望はあるかい?」

 

「そうですわね、私としては・・・・って、まだ行くと決まったわけではありませんわ!あくまでも・・・・あくまでも朧様が勝ったらの話なのですから!」

 

という割にはノリノリだったけど・・・・まあ、レイヴェルの名誉のために敢えて言うまい。

 

「で、では話はここまでにして・・・・・戦いを始めましょう」

 

そう言いながら手に炎を纏わせ、臨戦態勢に入るレイヴェル。レーティングゲームのときはまともに戦ってなかったから、レイヴェルがどんな戦い方をするのかはわからない。

 

だがまあ・・・・別に知る必要はないけどな。だって・・・・もう勝負はついてるから。

 

「戦いを始める・・・・か。残念だがレイヴェル。そいつは間違ってるよ。始めるんじゃない・・・・・終わらせるんだ」

 

「え?」

 

レイヴェルが疑問の声を上げるのとほぼ同時に・・・・・レイヴェルの目の前にいた俺は姿を消した。そして、レイヴェルの後ろに回り込んでいた俺の姿が顕となり・・・・・レイヴェルの両手に幻術で作った手錠を嵌めた。

 

「なっ!?いつの間に!?」

 

「いつの間にと聞かれたなら、賭けの話をする前からだと言っておこう。その時から既に戦いは始まっていた。だから始めるんじゃなくて終わらせるんだよ」

 

「賭けの話を切り出した時から、朧様のペースだったということですか・・・・ですが、実体のない手錠で動きを封じるいことなんて・・・・」

 

レイヴェルは手錠を振りほどこうとするが・・・・手錠はビクともせず、両手の自由は奪われたままだ。

 

「どうして?本物じゃないのに・・・・」

 

「確かにこの手錠は本物ではない。だけど、俺の幻術は対象者の脳に作用して、感覚を支配するのに特化しているものだ。君の脳がこの手錠を本物だと錯覚してしまっているがゆえに、感覚はそれに従って本当に手錠を付けられているかのように両手の自由を奪っているんだよ」

 

「でしたらこの手錠を燃やしてしまえば!」

 

今度は手錠に炎を灯すレイヴェル。だが、手錠が焼かれることはない。

 

「無駄だよ。さっき自分で実体がないって言ってたじゃないか。実体のないものを燃やすなんて易々とできるはずがない」

 

「くっ・・・・」

 

打つ手がないと判断したのか、レイヴェルは炎を収めた。

 

「さて、聞こうレイヴェル。両手の自由を奪われた状態だが・・・・君はまだ戦いを続けるかい?」

 

俺はレイヴェルの耳に口を近づけ、そっと囁きかけるように小声で言う。

 

「続けるというのなら構わないけど・・・・・そしたら今度は君の両足を封じよう。それでも足りないなら体中に鎖を巻きつけて全身の動きを封じよう。俺の目の前で・・・・その麗しいうなじを強調するように無防備に縛りつけられる姿を晒してみるか?」

 

「ッ!!」

 

拘束され尽くした自分の姿を想像したのか、レイヴェルはビクリと体を震わせる。キュッと目を閉じ、頬は紅潮している。

 

「ん?もしかしてそれも悪くないと思っているかい?だったら・・・・望み通りそうしてあげようか?」

 

「そ、そんな・・・・だめ・・・・です」

 

「なんでだい?君はそれを望んでいるんじゃないのかい?俺に酷く滑稽で、痛々しいほどに美しい姿を晒すことを望んでいるんじゃないのかい?」

 

「でも・・・・そうなったら私・・・・・」

 

まるで子供がイヤイヤするように首を横に振るレイヴェル。だが、その様子は心の底から嫌がっているようには見えなかった。

 

「ああ、そうだね・・・・そうなったら戻れなくなっちゃうかもしれないね。フェニックス家の娘としては、それは酷く屈辱的だろうなぁ。でもねレイヴェル・・・・仕方がないんだよ。君に負けを認めさせるには・・・・君とデートするためには仕方がない」

 

「う・・・・うぅ・・・・」

 

「もしもここで負けを認めるというのならやめてあげるよ。だけど負けを認めないというなら拘束させてもらう。さあ・・・・どうするレイヴェル?」

 

「私は・・・・私は・・・・」

 

葛藤するレイヴェル。おそらくレイヴェルの頭の中には戦いに勝つという思考は削がれてしまっているだろう。今のレイヴェルの頭にあるのは、堕ちてしまうことを是とするか否か。そういう風に誘導している。

 

しばし考え込むレイヴェル・・・・・そして、とうとう口を開く。

 

「認め・・・・ます。私の・・・・負けです。朧様と・・・・デートします」

 

レイヴェルは敗北を受け入れる言葉を口にする。

 

その言葉を聞き、俺は自分でもわかるほどに邪悪な笑みを浮かべながら手錠を消してやった。




実はレイヴェルは朧の幻術で自分の脳内に直接拘束された自分の姿を見させられています

故に効果抜群だったのです

それでは次回もまたお楽しみに!


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第33話

今回はある方の名前が判明します

それでは本編どうぞ


「・・・・・・」

 

俺の勝利で戦いを終え、手錠を消してやると、レイヴェルはむっとした表情で俺のことを睨んできた。頬も紅いが・・・・まあ、これは怒りというより羞恥によるものだろう。

 

「ふふふっ・・・・やっぱり恥ずかしかったか?」

 

「当然ですわ!こんな大勢の前で私を辱めて・・・・・恥ずかしさのあまり顔から火が出てしまいます!」

 

「ごめんごめん。勝つためにはああするのが一番手っ取り早いと思ってさ」

 

俺が楽しむ為でもあったけどね。正直すっごい愉悦だった。興奮した。

 

『変態ね』

 

否定はしない。男の子だもん。

 

「だがまあ、安心しなレイヴェル。他の連中に見られるなんてことはなかったから」

 

「え?」

 

「幻術を使って俺とレイヴェルの姿は隠してたよ。余計な邪魔が入ったら困るし・・・・・レイヴェルの恥ずかしいところを見るのは俺だけで十分だからな」

 

「お、朧様!?」

 

恥ずかしさのあまり、顔がさらに紅らむレイヴェル。ほんと、こういう新鮮な反応をしてくれる子はいい。愛おしくなる。

 

「ともかく、勝負は俺が勝ったんだ。デート・・・・してくれよ?」

 

「・・・・・わかっていますわ」

 

あ、今ちょっと口元緩んで微笑み浮かべてたな。やっぱり満更でもないのか。嬉しいね。

 

ともあれ、これで俺がここに来た目的は果たせたわけだ。あとは・・・・・イッセーの方がどうなってるかだが。

 

「・・・・へえ、中々面白いことになってるじゃないか」

 

「朧様?」

 

「イッセー達の方を見てみなレイヴェル。あれはあれでいい勝負をしている」

 

俺に言われ、イッセーとライザーの方へと視線を向けるレイヴェル。

 

そこには、互いに拳を交え合うイッセーとライザーの姿があった。ただ・・・・イッセーの姿は常のものとは違う。全身を真っ赤な鎧で覆っていた。

 

全身鎧(フルプレートアーマー)?あんなの先のレーティングゲームでは使っていなかったはず・・・・」

 

「あれは禁手(バランスブレイカー)だよ。ごく一部の神器(セイクリッド・ギア)所有者が至ることができる究極形態だ」

 

それこそ神滅具(ロンギヌス)の禁手となれば、イッセーであってもライザーと互角以上に渡り合う力を手にできるだろう。もちろん、そんな力をタダで使えるわけがないがな。

 

「禁手のことは私も知っていますが・・・・ですが前回のレーティングゲームから二日しか経っていないのですよ?未熟な彼女がそれに至れるだなんて思えませんわ」

 

「その通りだ。今のイッセーでは禁手に至るには未熟すぎる・・・・だからイッセーは代償を払ってあの力を強引に引き出しているんだよ」

 

「代償?」

 

「イッセーの左腕をよく見てみろ」

 

レイヴェルは目を凝らしてイッセーの左腕を観察する。そして、それに気がつき、表情を驚愕に染めた。

 

「あれは・・・・まさか、本物のドラゴンの腕?」

 

全身鎧のおかげでわかりにくいが、イッセーの左腕は脈動していた。それは、その腕が本物のドラゴンの腕であるという何よりの証拠であった。

 

「そうだ。イッセーは左腕を代償にして禁手に至ったんだ。もっとも、それでもあの姿でいられるのは長く見積もっても10秒が限界だろうがな。」

 

「たったの10秒?10秒間力を得るために・・・・リアス様をお兄様から奪うためだけに左腕を犠牲にしたというのですか?」

 

「それがイッセーさ。一度覚悟を決めたら何が何でも突き進む。自分の犠牲なんて厭わずにな。そういうところは親友としては改めて欲しいとも思うが・・・・・それこそがイッセーの一番の美点だよ」

 

イッセーがそういう奴だから・・・・・クズな俺でも、あいつを親友だと思い続けられたわけだしな。本当あいつは・・・・・真性の馬鹿だ。

 

「もっとも、左腕がドラゴンのものに変わったことで、利点もあるがな」

 

「利点・・・・といいますと?」

 

「それは・・・・・お?タイミングがいいな」

 

俺が説明しようとすると、イッセーはライザーを左手で殴り飛ばした。殴られたライザーは、自分が過剰なダメージを受けていることに驚いている。

 

「お兄様があんなにもダメージを?どうして・・・・」

 

レイヴェルが疑問に思っていると、イッセーは手の平を開いてみせた。

 

「十字架!?そんな、悪魔が十字架を握るなんてこと・・・・・あ」

 

「そう。普通は悪魔にとって弱点である十字架なんて握れるわけがないが・・・・イッセーの左手は悪魔のものではない。ドラゴンの腕に変質してしまっているんだ。代償を払ったが故にできる戦法だよ」

 

代償をメリットに変えるのは賢い手だ。正直禁手の力だけでは押しきれなかっただろうが、あれならいける。

 

「もっと短絡的だと思っていましたが・・・・まさかそこまで考えられる方だったなんて」

 

「それだけイッセーも必死だっていうことさ。ただまあ・・・・・その必死さがライザーに火をつけてしまったようだがな」

 

ライザーはイッセー執念とも言える勢いにに畏怖を抱いているように見えた。だが、だからこそライザーは全力でイッセーを仕留めようと力を発揮しだした。

 

そして・・・・イッセーとライザーは互いに全力込めて殴り合う。

 

「・・・・・俺はイッセーに勝って欲しいと思っているが、ライザーもなかなか男を見せるじゃないか。正直、あそこまで熱い奴だとは思わなかったよ」

 

「私も・・・・あんなお兄様初めて見ましたわ」

 

「それだけ部長を渡したくないか、それとも男として滾っているのか・・・・・まあどちらかはわからないが、それでもああいう姿は立派だと思うよ」

 

ああいう熱くて泥臭いのは俺には到底無理だろうからな。だからこそ、憧れもする。

 

「さて・・・・・どちらが勝つか見ものだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーとライザーの勝負に決着がついた。勝ったのは・・・・・イッセーだ。

 

途中、禁手の効果が切れて鎧が解除されてしまったが、それでも懐に忍ばせていた聖水に十字架と赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の譲渡の力を組み合わせて浴びせることでライザーをひるませた。そしてトドメに全身全霊を込めた拳をライザーの腹に叩き込んで・・・・勝敗は決した。

 

「お兄様・・・・」

 

床に突っ伏して、立ち上がることのないライザーの姿を見て、レイヴェルは呟く。

 

「・・・・ライザーが心配なら行きなレイヴェル」

 

「朧様・・・・ありがとうございます」

 

レイヴェルはライザーの下に向かい、ライザーを介抱する。その間に、イッセーはグレモリーの家の者に今回のことを謝罪し、頭を下げた。

 

その後、ルキフグスからもらった魔方陣から現れたグリフォンに、イッセーはグレモリーと共に跨る。グリフォンは二人が跨るのを確認すると、先ほどの戦いでできた壁の穴に向かって羽ばたき始めた。

 

「部室で待ってるからな!」

 

俺や木場達にそう言い残して、イッセーはグレモリーと共に冥界の空へと飛び立っていった。

 

・・・・ん?ちょっと待て。

 

「待てイッセー!俺を置いていくな!」

 

イッセーに向かって叫ぶ俺だが、その声はもはや届いていなかった。

 

あいつ・・・・俺のこと絶対に忘れてやがった。いや、さっき俺に向かって言ってたから俺の存在自体を忘れてたわけじゃないだろうが・・・・だからってこれは酷すぎる。あんまりだ。

 

『まあ確かに酷いわね。実際・・・・・今大変な状況に陥ってしまってるし』

 

ラムに言われ、俺は気がつく。会場内の大部分の悪魔の視線が俺に向けられていることに。

 

『そりゃああんな大声を出せば注目もされるわよ』

 

ですよねぇ。

 

「なんでここに人間が?」

 

「さっきリアス様を連れ去った下級悪魔の仲間?」

 

「まさか今回の件は奴が唆して・・・・」

 

なんかヒソヒソが聞こえるよ・・・・・しかも今回のこと俺が黒幕みたいに言うし。なんか今にも俺を捉えようと衛兵達が身構えてるし。

 

『実際あなたが唆したようなものじゃない』

 

確かにルキフグスに話を切り出したのは俺だが主犯ではない。

 

仕方ない。ここは木場達に弁明をしてもらって・・・・・

 

『その木場君達なら他人のふりしてるわよ?』

 

ラムに言われて木場達の方を見ると、自分達は関係ないとばかりに視線をそらしていた。

 

あいつら・・・・・この場に及んでそれが通用するとでも思ってるのか?結局は後で追求されることになるんだろうから助けろよマジで。

 

『日頃の行いね』

 

結構真面目にオカ研の雑務こなしてたのに理不尽だ。

 

仕方ない・・・・・この事態も想定してなかったわけじゃないんだ。ひとまずは幻術を使って姿をくらまして・・・・

 

「皆さん、落ち着いてください」

 

俺が幻術で姿を消そうとしたその瞬間、ルシファーが悪魔達を鎮めた。

 

「ザーゼクス様。しかし奴は・・・・」

 

「彼もまた私がグレイフィアに頼んでこさせたのです。確かに彼は人間ですが、彼は私の知人の悪魔を保護者としていますので私達悪魔と全く縁がないというわけではありません。何より妹の知人でもありますしね」

 

どうやらルシファーは俺を助けるために弁明してくれているようだ。嬉しいといえば嬉しいのだが・・・・悪魔に借りを作るようで若干忌々しい。

 

「彼は後ほど私が責任をもって人間界へと送り返します。なので、一切の危害を加えないように。もしも彼に何かあれば・・・・彼の保護者、ミリアリッサ・メルゼスが黙っていないでしょう」

 

「「「ミ、ミリアリッサ・メルゼス!?」」」

 

あ、ルシファーが俺の保護者・・・・ミリアリッサ・メルゼスの名前を出した瞬間、会場の大多数の悪魔の顔が青ざめる。

 

そして・・・・

 

「「「お願いします・・・・大人しく帰ってください」」」

 

多くの悪魔達が、俺に向かって頭を下げて頼み込んできた。いや、別にこれ以上面倒事を起こす気はないんだが・・・・

 

ミリアのやつ・・・・そうとう厄介者扱いされてるんだな。まあ、あんなことすれば当然だろうけど・・・・・

 

「さて、これで君に危害が及ぶことはないよ朧君」

 

会場が異様な空気に包まれる中、ルシファーが微笑みを浮かべて俺に声をかけてきた。

 

「・・・・どうもありがとうございます魔王様。できれば早めに人間界へと帰していただけますでしょうか?」

 

「私としては君とはゆっくり話がしたいと思っているのだけれど・・・・・ミリアから君のことは色々と聞いていたからね」

 

「お気持ちは嬉しいのですが、こうも悪魔ばかりの空間に一介の人間である俺が長時間居るのは少々居心地が・・・・・魔王様も事後処理が大変でしょうし、早めに帰していただけた方がよろしいかと」

 

「なるほど、正論だね・・・・やはり悪魔のことは好きになれないかい?」

 

苦笑いを浮かべながら、俺だけに聞こえるよう小声で尋ねてくるルシファー。

 

ミリアめ・・・・・なんか余計なこと話してやがるな。まさかあのことまで・・・・いや、いくらミリアでもそこまでは話してないと信じておこう。

 

「それが分かっているなら・・・・頼みますよ」

 

「わかった。早急に準備しよう」

 

こうして俺は、ルシファーのおかげで無事に人間界へと帰ることができた。




ということで朧の保護者の名前はミリアリッサ・メルゼスです

悪魔達の間では悪い意味で有名ですがザーゼクスとは一定以上の進行があります

それでは次回もまたお楽しみに!


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第34話

今回は婚約パーティをぶち壊した翌日の話です

ある意味では今回からこの章の本番となります

それでは本編どうぞ


こんにちは。兵藤一誠です。ライザーをぶっ飛ばして部長を取り返した次の日。オカ研のメンバーは部室に集まっていた。

 

そして今、私は・・・・・

 

「あ~・・・・朧。本当にごめんな?」

 

「・・・・つーん」

 

拗ねてしまった朧に謝罪しています。

 

「べっつにー。謝ってもらうことなんてないしー。置いていかれたことなんて気にしてないしー」

 

うわぁ・・・・・完全に不機嫌になってるよこれ。

 

朧が不機嫌になってるのは、昨日のことが原因だ。昨日、私と部長が婚約パーティーの会場から離脱するとき・・・・私と同じ方法で来た朧のことをうっかり置いて行ってしまったのだ。そのせいで会場から逃げる手段がなくなった朧は、悪魔達に囲まれてしまったらしい。

 

「ついでに言うとー。悪魔達に囲まれて危ない状況だったのに他人のフリされたことだって気にしてないしー」

 

「いや、その・・・・・流石に悪かったと思ってるよ?」

 

木場が申し訳なさそうに苦笑いを浮かべて朧に謝る。小猫ちゃんと朱乃先輩も同じような表情だ。

 

どうにも、朧が悪魔達に囲まれたとき、木場達は助けようとはしなかったらしい。結局、ザーゼクス様が助けてくれたみたいだからなんとかなったようだけど。

 

・・・・うん、朧のためにどうこうするってのに抵抗あるのはわかるっちゃわかるけど、いくらなんでも流石にそれはあんまりだとは思う。そりゃ機嫌だって悪くなる・・・・・原因の半分は私だけども。

 

「いいもんいいもん。俺があの場にいたのはレイヴェルに会うためだったんだもん。部長を助けようっていうのはついでみたいなものだったもん。だから誰からも見向きされなくたってしょうがないんだもん」

 

・・・・・あかん。いい加減いたたまれなさすぎて罪悪感が半端ない。こんなに拗ねてる朧見るの初めてだよ。

 

一体どうやって慰めたものか・・・・・

 

「朧さん。皆さんのことを許してあげてください。その場にいなかった私が言うことではないと思いますが・・・・・それでもきっと皆さん心の底から反省していると思います。だから・・・・」

 

「おっけ。アーシアに言われちゃしょうがないな。皆のこと許しちゃう」

 

「おいこらこの野郎」

 

朧の奴・・・・人が散々悩んでたってのにアーシアに言われてあっさり許すってどういう・・・・いや、私でもアーシアに言われれば許しちゃうな。

 

さすがアーシア、マジ天使だわ。いや、悪魔だけども。

 

「というわけでそのことに関してはもう許すから安心していいよー。むしろ変に拗ねちゃってごめんねー」

 

朧はヘラッした笑顔を浮かべながら、間延びした声でそう言った。

 

あ~・・・・この朧見てわかったわ。さっきの拗ねてるあれは・・・・

 

「朧・・・・さっきの演技だった?」

 

「あ?バレた?」

 

「やっぱりかこんちくしょう!返せ!私の申し訳なさとか色々と返せ!」

 

「お断る」

 

「なんだとぉ!だいたい朧は・・・・」

 

「おっと、ストップだイッセー。ここで言い合いになると長くなる。そうなると・・・・我等が部長さんが声をかけづらいだろう」

 

「え?」

 

朧の視線が部長に向く。釣られて私も部長の方を見ると・・・・確かに、何かを言いたそうにしているように見えた。

 

「それで部長?さっきから俺のこと見てましたが、何か言いたいことでも?」

 

「朧・・・・ありがとう」

 

「へ?」

 

「正直、あなたが助けてくれるとは思わなかったわ。だから、来てくれたことに対しては・・・・素直に嬉しく思ったわ」

 

まあ朧って結構ドライだし、部長の眷属ってわけでもないから・・・・部長からすれば、助けてくれるだなんて思ってもみなかったから嬉しかったんだろうなぁ。

 

「・・・・さっきも言ったとおり、部長を助けようってのはついでですよ。本来の目的は別にあった。だから礼なんていらないですよ。そういうのは全部イッセーにしてくださいよ」

 

「もちろんイッセーには感謝してもし足りないくらい恩を感じているわ。けれど、ついでとはいえ、あなたも助けてくれたことは事実よ。ならお礼を言っておかないと私の気がすまないわ」

 

「ですか・・・・・まあ、そこまで言うなら礼は受け取っておきますよ。どういたしまして。ただ一つ言っておきますけど・・・・・イッセーは貴女を助けるために代償を支払ったんだ。眷属だから当然とか思わないでその代償に見合うだけのものをちゃんと与えてくださいよ」

 

朧は渋々といった風に部長からの礼を受け取った後にそう言った。

 

前からちょくちょく思ってたけど、朧って部長にどこか厳しいというか・・・・辛辣な気がするんだよな。嫌ってはいないと思うけど・・・・部長のことどう思ってるんだ?

 

「言われるまでもないわ。眷属の献身には相応のもので返すのが(キング)の役割だもの」

 

「だそうだ。よかったなイッセー」

 

にっと微笑みを浮かべながら私にいう朧。親友として気を遣ってもらえるのは嬉しいけど・・・・なんか部長と比べてだいぶ差があるような感じで少し気が引ける。

 

「そういえば・・・・・朧先輩。聞きたいことがあるんですが」

 

小猫ちゃんがおずおずと朧に声をかけてきた。

 

「ん?何かな塔城ちゃん?」

 

「朧先輩の保護者のことなんですけど・・・・・本当にあのひとが朧先輩の保護者なんですか?」

 

「・・・・・残念ながらその通りだよ」

 

小猫ちゃんに聞かれ、朧はどこか遠くを見つめてるかのような目で答えた。

 

「その・・・・・苦労してたんですね」

 

「心中察するよ」

 

「・・・・・流石に同情しますわ」

 

小猫ちゃん、木場、朱乃先輩が朧の肩に手を置き、やたらと同情していた。

 

「どうしてここで朧の保護者の話に?というかどうして木場達はそのひとのことを知ってるんだ?」

 

「ザーゼクス様が朧くんを助けるときにそのひとの名前を出してね。その時に知ったんだよ」

 

「正直・・・・朧先輩が不憫でなりません」

 

「部長が私達に頑なに話したがらなかった理由がよくわかりましたわ」

 

「そう・・・・3人とも知ってしまったのね。朧の保護者のことを」

 

「だから言ったじゃないですか・・・・・知らない方がいいって」

 

「「「「・・・・・はあ」」」」

 

私とアーシアを除く5人が、やたらと思いため息を吐いた。え?そんなにあかんひとなの?

 

「なあ、朧。いっそ私にも教えて欲しいんだけど?」

 

「私も・・・・知りたいです」

 

「「「「それは本当にやめたほうがいい」」」」

 

私とアーシアが頼んでみるが、結局教えてくれなかった。私達のためなんだろうけど・・・・正直気になりすぎてモヤモヤするんだよなぁ。

 

「・・・・この話はここまでにしよう。あのひとのこと思い出して頭が痛くなってきた・・・・・とりあえずお茶にしよう」

 

「今日のお茶請けはなんですか?」

 

話を切り上げて、お茶の準備を始める朧に、小猫ちゃんが尋ねた。

 

「あ~・・・・・ごめん塔城ちゃん。昨日大変だったから今日は用意できなかったんだ」

 

「・・・・そうですか」

 

目に見えて落ち込んでしまった小猫ちゃん。小猫ちゃんは朧の用意するお菓子が本当に好きだから仕方ない。

 

「明日はちゃんと準備・・・・ん?」

 

朧は言葉を遮って、視線を移した。朧の視線の先には、光り輝く魔方陣がある。魔方陣のグレモリーの紋様は形を変える・・・・・その形に、私は見覚えがあった。

 

「これって・・・・・フェニックスの?」

 

そうだ。これはフェニックス家の紋様だ。以前、ライザーが部室に来たときに見たので間違いない。

 

まさか、ライザーが昨日のことで部室に乗り込んできたのかと私は思ったが・・・・・それは間違っているとすぐに気がつく。

 

なぜなら、魔法陣から出てきたのはライザーではなく・・・・その妹のレイヴェルであったからだ。

 

「失礼いたしますリアス様。突然の訪問申し訳ありません」

 

「・・・何しに来たのかしら?」

 

まずは部長に対してお辞儀をしたレイヴェル。それに対して部長はむっとした表情でレイヴェルに目的を尋ねた。おそらく、昨日の件で何か言いに来たのだろうと思ったんだろう。私もそう思ったし。

 

「その・・・・・朧様にお話があって参りました。ここに来れば会えると思いましたので」

 

だが、私の予想は外れた。どうやらレイヴェルは朧に用があってきたようだ。

 

「俺に用?」

 

「はい。そのデ、デートのことについてお話を・・・・詳しいことは何も決めていませんでしたので」

 

そうか。レイヴェルはデートのことについて朧と話すために来たのか。

 

・・・・は?

 

「デ、デートォォォォォォォ!?」

 

私はあまりにも予想外なことに叫び声を上げてしまった。

 

 

 

 

 

 




朧がリアスに厳しいのは別に嫌いだからではないです

リアスの能力がイッセーやアーシアの幸せに直結してるようなものなので、厳しくして成長を促しているんです

そこまで考える朧はやはりお人好し

それでは次回もまたお楽しみに!


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第35話

今回は久しぶりにレイナーレの出番あります

しかもそれなりに甘いです

それでは本編どうぞ


「わかりました。では、次の日曜日の10時にここで待ち合わせということでいいのですわね?」

 

「ああ」

 

レイヴェルが来て10分少々して、デートの相談については終わったようだ。

 

それにしても本当に驚いた。まさか朧がレイヴェルとデートの約束を取り付けていたなんて・・・・・可愛い子とデートだなんて羨ましいゾちくしょう。

 

「というわけで部長。ここを待ち合わせ場所にしてしまいましたがいいですか?」

 

「ええ。なんだかんだであなたには雑務やらなんやらこなしてもらってるからそれくらいは構わないわ」

 

「それはどうも。いや~、やっぱり普段の行いって大切ですね」

 

確かにそうだけど・・・・やはり釈然としない感じは。確かに普段、色々と雑務をこなしてくれてるけど・・・・・いつもの態度のせいで台無しになってる感が強い。

 

「朧様。その・・・・・わ、私・・・・」

 

朧に何かを告げようとしているレイヴェルだが恥ずかしそうに顔を赤らめてなかなか言えずにいた。

 

「・・・・レイヴェル。日曜日のデートすごく楽しみにしてるよ」

 

「!?は、はい。私も・・・・・楽しみにしています」

 

レイヴェルが言いづらそうにしていたであろう言葉を、朧が笑顔で先に言った。そして、レイヴェルも顔を赤らめたままであるがその言葉を口にする。

 

「では私はそろそろ帰りますわ。リアス様、重ね重ね突然の訪問申し訳ありませんでした」

 

「いいえ、気にしなくてもいいわ」

 

部長は再び礼儀正しくお辞儀をするレイヴェルに、部長は気にしなくてもいいと告げる。初めはライザーの報復で来たのかと思っていたが、そうではないとわかって先程と違って刺はなかった。

 

「それと・・・・一誠様」

 

レイヴェルは次は、私に話しかけてきた。というか様って・・・・

 

「その、一応言っておきますが、お兄様のことで一誠様が気を病む必要はありませんわ。昨日のことに関しては、私を含めフェニックス家はあなたを咎めるつもりはありません」

 

「え?でも私部長の家とフェニックス家の縁談をダメにしちゃって・・・・」

 

「それに関しては思うところもありますが、それでもリアス様の意思を無視した両家にも反省すべき点があったのは確かですので・・・・ですから一誠様はお気になさらず。むしろ、天狗になっていたお兄様にはいい薬になったと思っていますわ」

 

いい薬って・・・・まあ確かにライザーの奴、結構調子に乗ってる感はあったけど。

 

「それと・・・・・あの時の、リアス様を取り戻すために戦うあなたの姿は私にとって尊敬に値するものでしたわ。私もあなたのような勇ましさを身につけられるよう、精進する所存です」

 

「尊敬?私を?」

 

こんなに可愛い子が私のことを尊敬か・・・・・うん、それはそれで悪くない。くっそ~・・・・朧の目当ての子じゃなかったらハーレムに加えたかったなぁ。

 

「その・・・・言いたいことは以上です。それでは失礼いたします」

 

そう一言告げて、レイヴェルは魔方陣で転移していった。前に会って話したときは結構きつい感じだったけど・・・・なんだか印象が変わったなぁ。

 

おっと、そんなことよりもだ。

 

「朧・・・・あれ?」

 

レイヴェルが帰ったので、朧にどういう経緯でレイヴェルとデートすることになったのか聞こうと思ったのだが・・・・・朧の姿は部室になかった。

 

「・・・・あの野郎!」

 

朧め・・・・レイヴェルとデートをすることになった経緯を説明するのが面倒だったから逃げやがったな!

 

「どうやら逃げられたようね。私もレイヴェルとのデートの件で色々と問い詰めたいのだけれど・・・・・これだから幻術使いは」

 

「部長、その言い方では幻術使い全員がロクデナシなように聞こえますわよ?」

 

いや、朱乃先輩。その言い方だと朧がロクデナシに聞こえるんですが・・・・・いや、間違ってないけれども。

 

「・・・・大丈夫なんでしょうか?」

 

「大丈夫って・・・・なにが小猫ちゃん?」

 

「その・・・・朧先輩は学内でも屈指の女好きとして有名です。そんな朧先輩とデートって・・・」

 

あ~・・・・なるほど。確かに朧の学内での評判はだいぶ悪いからな。小猫ちゃんはまずいことにならないか危惧してるんだろう。

 

仕方ない。ここは朧の親友として弁護してやろう。

 

「大丈夫だよ小猫ちゃん。確かに朧は悪い意味で男らしくて女の子関連での評判は悪いけど、実際には結構紳士的なところあるからそうそう問題は起こさないよ」

 

私の知る限り、付き合った子は結構大切にしてるみたいだし・・・・まあ、桐生とはなんか色々あったっぽいけど。

 

「朧さんが優しい方だっていうのは私も知ってます。だからきっと大丈夫です」

 

私の言葉にアーシアが同調してくれる。まあ、アーシアに関して、朧は特別優しくしてるって感じもあるけど。

 

「まあ、親友であるイッセーが言うなら確かなんでしょうけど・・・・・それでも不安は拭えないわね」

 

どうやら、部長はまだ不安らしい・・・・これも普段の行いが原因だろう。

 

「決めたわ。今度の日曜日・・・・朧達を尾行しましょう」

 

「・・・・・え?」

 

・・・・・ごめんなさい我が親友朧。今度の日曜日のデート、私達は出歯亀となりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪~」

 

「・・・・・やけに機嫌が良さそうね。何かいいことでもあったの?」

 

夕食の準備をしていると、レイナーレが俺に尋ねてきた。

 

「わかる?わかっちゃう?やっぱりレイナーレにはわかっちゃうか~」

 

「そりゃそんな鼻歌が聞こえてくればわかるわよ。というかその返し前にも聞いたわよ」

 

あ~・・・・・そういえばレイヴェルとあった日にそんなやりとりをレイナーレとしたな。

 

「それで?なにがあったの?まあおおかた、うなじ女とのことで何か進展があったってところでしょうけど」

 

「イグザクトリー。その通りだよレイナーレちゃん」

 

「ちゃん付けやめて。キモい」

 

キモいときましたか・・・・・結構傷つくんですけど。

 

『仕方ないわよ。私だって気持ち悪いと思ったもの』

 

そりゃないっすよラムさん。

 

「俺がキモいかどうかは置いておいて、と。実は、今度の日曜日レイヴェルとデートするんだよ」

 

「デート?ああ、昨日のグレモリーの婚約パーティーに乗り込んだ時に色々と仕込んだ結果ってことね」

 

「その通りだよ。その時色々あってね、デートの約束を取り付けたんだ。それで今日、レイヴェルがオカ研の部室に来てデートの日取りを決めたってわけだ」

 

「そう・・・・結局はあなたの思惑通りということね。その為に親友やグレモリー達を利用するなんてとんだクズね」

 

「利用したのは結果論だが・・・・まあ、クズであることは否定しないよ」

 

これくらいクズにでもならないと、女を落とすなんてできないからな。レイナーレの件にしたって最低なことしたわけだし。

 

「クズな俺は嫌いかい?」

 

「別に。どうでもいいわよそんなこと。ただまあ・・・・」

 

「どうしたレイ・・・・」

 

突然のことだった。急に振り返ったレイナーレが俺の頭を掴んで自分の方に引き寄せ・・・・キスしてきた。

 

唇に感じる軟らかい感触は非常に心地よく・・・・ずっとそうしてたいと思うほどであった。

 

「・・・・・少しぐらい動揺しなさいよ。可愛げがないわね」

 

数十秒ほどして、唇を離したレイナーレが、つまらなそうな表情で言う。

 

「男に可愛げなんていらないだろ。というか、急にどうした?」

 

「・・・・・面白くなかったのよ」

 

「え?」

 

「あなたのものになったのは私の方が先なのに・・・・私はまだあなたとデートなんて一度もしたことないわ。別に、行きたいわけじゃないけど」

 

行きたいわけじゃないと言いつつも、レイナーレは不機嫌そうな表情でそっぽを向く。

 

「それは・・・」

 

「わかってるわよ。迂闊にデートなんてしてグレモリー達に見つかったら厄介なことになる。だからデートなんて気軽にできないに決まってるわ。だけど・・・・だから面白くないのよ。朧が別の女とデートするのが」

 

これって・・・・いや、でも・・・・え?

 

「レイナーレ・・・・・妬いてるのか?」

 

「・・・・悪い?」

 

まさかと思って聞いてみたら・・・・ビンゴだった。いつの間にそんなに好感度上がってたんだ?

 

「だから・・・・キスしたのか?初めてのデートをレイヴェルに取られたから、初めてのキスは譲りたくないって?」

 

「・・・・・そうよ」

 

「ッ~!?」

 

ちょ・・・・待った。なんだよそれ・・・・可愛すぎるだろ。そんなの聞いたら・・・・もう・・・

 

「・・・・レイナーレ」

 

俺はレイナーレをあまりにも愛おしく感じてしまい・・・・正面から抱きしめた。

 

「・・・・キス一つで随分と調子に乗るわね」

 

「悪いか?」

 

「・・・・別に」

 

そっけなく言うレイナーレであるが、俺の腰に手を回してきていた。

 

「デート・・・・初めてはレイヴェルとだけど、今度一緒に行こうか」

 

「別に行きたいわけじゃないって言ったじゃない・・・・というか、そんなことしたらグレモリー達に私の事知られるかもしれないわよ?」

 

「幻術で誤魔化す」

 

「ずっと幻術かけ続けるつもり?疲れないの?」

 

「耐える」

 

「そう。馬鹿ね」

 

馬鹿でもいい・・・・疲労なんていくらでも耐えてやる。そんなものより・・・・大事なことなんだ。

 

「・・・・そこまで言うなら仕方ないわね。そのうちデートしてあげるわよ。個人的にはどうでもいいけど・・・・しないとあなたが可哀想だから」

 

「ありがとう」

 

「・・・・ふんっ」

 

ああ・・・・本当に愛しい。さっきまでレイヴェルとのデートに心を弾ませていたはずなのに・・・・今は・・・・

 

今は・・・・レイナーレが愛おしくて堪らなかった。

 

 




ヤキモチ焼くレイナーレは可愛い。異論は認めない

にしても今更だけどようやくキスまでいったんだよなぁ・・・・先が思いやられる

それでは次回もまたお楽しみに!


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第36話

今回からレイヴェルとのデートスタートです

もちろんメインは朧とレイヴェルですが・・・・ふふふっ

それでは本編どうぞ


「よし、行ってくるよレイナーレ」

 

今日は日曜日・・・・そう、レイヴェルとのデートの日だ。

 

デート用の勝負服に着替えた俺は、レイナーレに声を掛ける。

 

「・・・・ふうん」

 

「ん?どうした?」

 

「・・・・別に。ただ、それっぽい服着てると随分よく見えると思っただけよ」

 

「そりゃもう、俺ってばイケメンでスタイルいいからね」

 

「調子に乗らないで・・・・って、言いたいところだけど肯定してあげるわ」

 

およ?これまた珍しい。てっきりボロカス言われるかと思ったんだけどなぁ。

 

「容姿に関しては問題ないんだから、せいぜい余計なことしてうなじ女に嫌われないように注意しなさい」

 

「ご忠告ありがとう。気をつけるよ。それじゃあ行ってきます」

 

「行ってらっしゃい」

 

レイナーレに見送られ、俺は待ち合わせ場所であるオカ研の部室のある学校へと向かった。

 

「・・・・私も準備しましょう」

 

この時、俺はレイナーレの企みに気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち合わせ時間の30分前に、オカ研の部室に到着した俺。少々早すぎる気もしたが、俺としてはこれぐらいでちょうどいいのだ。

 

とりあえず部室に置いてある本でも読んで時間を潰そうと思い、扉を開くと・・・・

 

「朧様、おはようございます」

 

そこには既にレイヴェルがいた。

 

「レイヴェル?もう来てたのか?」

 

「はい。その・・・・準備が思ったよりも早く終わったので、早めに来て朧様を待っていようかと思いまして」

 

頬をほんのり赤らめながらそういうレイヴェル。この反応からして・・・・俺とのデートが待ち遠しくて早く来てしまったと見てもいいだろう。

 

ここまで思われてるとは・・・・嬉しい限りだ。

 

ただまあ・・・・・

 

「・・・・申し訳ありませんレディ」

 

俺はレイヴェルの前に跪き、謝罪した。

 

「きゅ、急にどうなさったのですか?」

 

「紳士として、淑女を待たせるなどもってのほか。その非礼をお詫びいたします。どうかお許しを」

 

「朧様・・・・頭をあげてください。私も上流階級の悪魔ですので、朧様のそう言った紳士的なところは・・・・正直私の好むところですが・・・・あまりにも堅すぎると、私も窮屈ですわ」

 

窮屈・・・・か。

 

「好みの女の前では、それなりの礼儀とかっこつけを心がけようと思ってたんだけど、どうやら今は逆効果なようだな」

 

俺は頭を上げながら言う。

 

「ええ。そもそも、今日のデートは相互理解のためだと朧様が言っていたのではありませんか。それをご自身で反故にしてどうするのです?」

 

「・・・・くははっ!痛いところをついてくるな」

 

全く、自分で言っておいてそれに反する振る舞いをするとは・・・・俺も男としてまだまだ未熟ということか。

 

『当然でしょ。あなたみたいなガキが男を振舞うなんて笑っちゃうわね』

 

容赦ないっすねラムさん。まあ、その通りだから否定はできないけどさ。

 

「わかったよレイヴェル。ここからはありのままの俺を見せよう。だが、覚悟しろよ?俺は・・・・世間一般で言うところのクズに分類される人間だ。失望する可能性は大だ」

 

「ふふふっ、望むところです。形だけとは言え伊達にお兄様の眷属を勤めていたわけではありませんわ。朧様がどのような殿方であろうが受け入れてみせますわ」

 

貴族のお嬢様だからてっきり自分に合わないなら切り捨てるぐらいすると思ったんだが・・・・なかなか度量が深いな。これは面白い。

 

・・・・まあ、なにげに今ライザーが貶められた気がするがそれは置いておこう。

 

「それじゃあ行こうかレイヴェル。デートの始まりだ」

 

「ええ。楽しませてくださいね朧様」

 

差し出した俺の手に、レイヴェルは自身の手を重ねる。

 

そして俺とレイヴェルのデートが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出てきたわね。それじゃあ尾行を始めましょう」

 

旧校舎から出てきた朧とレイヴェルの姿を見て、部長が言う。

 

私、兵藤一誠は現在、オカ研メンバーの全員と一緒に、朧とレイヴェルを監視しております。理由は朧がデート中に余計なことをしないかどうか見張るためである。

 

部長の決定なので眷属である私は従わざるを得ないのだけれど・・・・・正直に言ってあまり気乗りはしない。確かに朧は悪い意味で男らしいところがあって独特なフェティシズムを持つ変態だが・・・・・それでも好意を持つ女の子に対してはそれなりに紳士的だ。あまり心配する必要はないと思っている。

 

まあ、これはあくまでも親友である私の見解であるので、部長達からしたら不安であるというのは仕方ないことなのだろうが・・・・・やはりなんだかデートの邪魔をしているみたいでいい気分ではない

 

「あの・・・・やっぱりやめませんか?尾行なんて朧さんに対して失礼だと思いますし・・・・」

 

私と同じく、あまり気乗りしていない様子のアーシアが部長に提案する。

 

「アーシア、確かに私達のしてることは失礼に値するわ。けれど・・・・・あなたは朧がレイヴェルに妙なことをしないと信用できるかしら?」

 

「それは・・・・・」

 

部長に諭され、アーシアは口ごもる。基本的に朧に優しくしてもらっているアーシアであるが、それでもそういったことに関してはあまり信用されていないようだ・・・・・哀れ朧。

 

「何もなければそれに越したことはないと思っていますわ。ですが、念を入れておくことは悪いことでもないでしょう」

 

・・・・・まあ、普段の行いが行いだから朱乃先輩がそう言うのも仕方ないか。

 

「・・・・・朧先輩の作ってくれるお菓子はおいしいです。ですが、それでも朧先輩は男性としてはクズな面が目立ちます」

 

小猫ちゃん・・・・ある意味では一番朧の恩恵(お菓子関連)を受けているのにそれはあんまりではないだろうか。

 

「いざという時はデートを台無しにしてでも朧くんを止めないとね。彼だって普段から幻術を使ってるわけじゃないだろうから・・・・不意を突けば殺れる」

 

木場・・・・お前、男のせいでたまに朧にぞんざいに扱われてること恨んでたのか?すげぇ物騒だぞ。

 

「朧には雑務をこなしてもらっているから、眷属ではないとはいえそれなりにいい思いをして欲しいとは思っているわ。だからこそ、私達は尾行するのよ。いざという時に朧を止めて、朧が間違いを起こさないためにも・・・・ね」

 

確かに部長の言い分はもっともだけど・・・・どうにも腑に落ちないところもある。というのも、部長の表情が・・・・・どこか楽しそうに見えたのだ。万が一のために、バレないようにと皆でしている変装も特に気合が入っているように思えるし。

 

これはまさか・・・・

 

「部長、つかぬことをお聞きしますが・・・・」

 

「なにかしらイッセー?」

 

「尾行そのものを楽しんでません?あるいは朧がどんなデートするのかが純粋に気になってるとか?」

 

「・・・・・話はここまでにしましょう。そっちに意識を取られると見失ってしまうわ」

 

部長はわかりやすく話を逸した。これはもう確定的だ。

 

ごめん朧・・・・・私には部長の好奇心を止める手立てはないよ。せめて、デートが平穏無事に終わることを願うしかできない私を許しておくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ・・・・なんでグレモリー達もいるのよ」

 

私はグレモリー達を視界に映して、思わず舌打ちをする。朧を尾行しようと思ってきてみれば・・・・・なんでよりにもよってあいつらがいるのよ。

 

・・・・尾行の理由は別にうまくいくかどうかが気になるわけじゃないわ。ただ、朧がうなじ女に私の事をうっかり喋ったりしないかどうかを見張る必要があったからしてるまで・・・・って、私は一体誰に対して言ってるのよ。

 

そんなことよりグレモリー達よ。一応尾行のために眼鏡をかけたり髪を束ねたりして変装しているが・・・・それでも顔を合わせればバレてしまう可能性は決して低くはない。尾行対象が同じである以上、どこかで邂逅してしまうかもしれないし・・・・・尾行を続けるにはリスクが高い。

 

だが、しかし・・・・・

 

「・・・・それでもやめるわけにはいかないわね」

 

たとえグレモリー達と邂逅する可能性があろうと、朧達の尾行をやめるわけにはいかない。その程度のことでやめようって言うならはじめから尾行しようなんて思わない。

 

「・・・・慎重に行くしかないわね」

 

幸い、私は気がついているけれど向こうは私のことに気がついていない。となれば、あいつらの注意は朧達の方に向く・・・・・はずだ。だからきっと大丈夫だ。

 

私は、グレモリー達に注意を払いつつ、朧達の尾行を続けた。

 

 

 

 




レイヴェルがメインなのに尾行してるレイナーレも可愛いなと思います

はてさてどうなることやら・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第37話

今回から本格的にデートのお話になります

まあ、その手の話はあまり組み込まれていませんが・・・・

それでは本編どうぞ


「すごいですわ朧様!あんなにたくさんのお魚達、私初めて見ましたわ!」

 

「ふふっ、そうか。それはなによりだ」

 

俺は年相応にはしゃぐレイヴェルを見て、思わず笑みを浮かべてしまった。

 

今回のデートは、レイヴェルにリクエストで水族館で行うこととなった。どうやら冥界には水族館は非常に少なく、レイヴェルはいつか行ってみたいと思っていたようだ。

 

俺は水族館デートは何回か経験もあったため、それなりに勝手はわかっている。なのでレイヴェルのリクエストを受け入れて水族館に来ているのだが・・・

 

「楽しいかレイヴェル?」

 

「はい!とっても楽しいです!」

 

わざわざリクエストまでしたのだからそれなりに楽しんではいると思ったが・・・・・それなりどころではなかった。人目をはばからず、まるで小さな子供のようにはしゃぐレイヴェル・・・・その姿は、とても愛らしく感じられる。

 

「大きな水槽の中で泳ぐお魚達が自由に泳ぎ回る姿があんなに綺麗だとは思いませんでしたわ。ですが・・・・・」

 

レイヴェルの表情が、笑顔から物憂げな表情に変わる。

 

「どうした?」

 

「見ている私達は楽しいですが、お魚さん達は水槽に閉じ込められて見世物にされて・・・・不満はないのでしょうか?」

 

・・・・なるほど。水槽の中の魚達に同情しているのか。

 

「魚達のことを気づかえるなんてレイヴェルは優しいな。けど・・・・・俺はレイヴェルとは違う考え方をしているよ」

 

「え?」

 

「確かに、この魚達は人間の為に人間に飼い慣らされている。けれど、それこそが・・・・この水槽の中こそが魚達にとっての世界なんだ」

 

「この水槽の中が・・・・お魚さん達にとっての世界?」

 

「水槽の中なんて狭い世界だ。だけど、魚達はこれ以上広い世界を知らない。広い世界は雄大ではあるけれど危険も多い。水槽の中なら危険は少ないし、何よりこれ以上広い世界を知らないゆえに窮屈に感じることもない。だからきっと・・・・不満はないと俺は思うよ」

 

「朧様・・・・」

 

そうだ・・・・きっと魚達はこの水槽の中を窮屈だなんて思っちゃいない。生きづらいとも思っていないだろうし、不満だってないと思う。

 

外の世界なんて・・・・知らなくたっていい。出なくたっていい。

 

『かつてのあなたがそうだったように?確かにそうね。あの小さな村で、家族と一緒に暮らしていたあなたは幸せそうだった。そして望まずに外の世界に出てしまったあなたは、絶望の底に叩きつけられてしまった』

 

・・・・そうだよラム。俺もこの水槽の中魚達のように在りたかったよ。そうすれば今頃もきっと・・・・

 

「・・・朧様のおしゃっていることは良くわかります。確かに、このお魚さん達にとって、この水槽の中が世界で居心地はいいのかもしれません。ですが・・・・」

 

「ですが?」

 

「もしも私がこのお魚さん達だったら・・・・外の世界を知りたいと思うかもしれません。いえ、きっとそう思います。今の私も・・・・フェニックス家や冥界だけじゃなく、人間界のことも知りたいと思っていますから」

 

「レイヴェル・・・・」

 

そっか・・・・レイヴェルはそう思っているのか。

 

「だから、今日のデートはとても楽しみにしていたのです。朧様と一緒にいられるからというのもそうですが・・・・人間界のことを少しでも知るいい機会でしたので」

 

君は外の世界に関心を向けているんだね。それはとても素敵なことだ。夢見る少女というのは非常に魅力的だ。

 

けど・・・だけれど同時に無知で愚かだとも思うよ。だって、レイヴェルのそれは残酷さと絶望を知らないこその願いだから。俺のような目に遭うかもしれないって知らないからこその願いだから。

 

だが、俺はそんな無知さと愚かさも愛そう。俺が生きている限りは、君は無知で愚かな夢見る少女でい続ければいい。そんな君は・・・・とても愛らしいのだから。

 

「・・・だったら、今日のデートはより一層レイヴェルを楽しませないとな」

 

「はい!よろしくお願いいたします朧様!」

 

俺が心で思った事を一切表に出さずにレイヴェルの頭を撫でながら言うと、レイヴェルは笑顔で返事を返してきた。

 

『彼女の笑顔・・・・・あなたには眩しいかしら?』

 

ああ、眩しいよ。だから尊くて、愛らしくて・・・・・・見ていて苦しくもなるな。

 

『そう。それは何よりね』

 

何より、か。相変わらず性格の悪いこと。

 

『褒めないで頂戴。照れるわ。それよりも・・・・レイヴェルちゃん何か言いたげよ?』

 

え?

 

「あ、あの・・・・朧様」

 

ラムの言うとおりだった。レイヴェルは何か言いたそうにもじもじしてる。

 

これは・・・・・もしや告白タイム?

 

「ん?なんだレイヴェル?」

 

期待を込めて、俺はレイヴェルに聞き返す。さて、レイヴェルは何を言ってくるのか・・・

 

「その・・・・お手洗いに・・・・」

 

変に期待して申し訳ありませんでしたレイヴェルさん。そりゃ言いにくいよね。

 

「うん、いいよ。行っておいで。ここで待ってるから」

 

「ありがとうございます。では・・・・」

 

ぺこりと一度お辞儀した後、レイヴェルはお手洗いに行った。

 

さて、この隙に、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、兵藤一誠です。現在オカ研メンバーと共に朧の尾行真っ最中です。

 

「今のところは普通のデートをしているわね」

 

「そうですね。しっかりとエスコートしているようですし」

 

「・・・・・現状これといって問題はない」

 

「いえ、わかりませんわよ。この距離では会話までは聞こえませんので・・・・何か良からぬことを言ってる可能性もありますわ」

 

部長、木場、小猫ちゃん、朱乃先輩は朧達の様子を伺っている。なんというか・・・・すごいノリノリである。

 

「イッセーさん・・・・私、朧さんに対して罪悪感が・・・・」

 

この中で私を除いてほぼ唯一となってしまったアーシアは非常に申し訳なさそうにしている。わかるよアーシア。私も同じ気持ちだから。

 

(というか、私達水族館にまで来てなんでこんなことしてるんだろう・・・・普通に皆で水族館回ったほうが有意義な気がする。かといって提案したところで却下されそうなんだよなぁ・・・・・)

 

そんなことを考えていると・・・・私の携帯がなった。着信音からしてメールが届いたようだ。

 

「イッセー、尾行中はマナーモードにするか電源を落としておかなくちゃダメじゃない」

 

「すみません」

 

部長に咎められ、謝罪した後に私はメールを確認する。

 

「・・・・・あ」

 

「どうしたんですかイッセーさん?」

 

「・・・・・部長、皆。これ」

 

私は携帯のメール画面を皆に向けた。そこにはこう書かれている。

 

 

 

出歯亀乙(^Д^)

水族館にまで来て人間観察とか暇なの?ウケるわー

そんなことしてる暇があったら皆で楽しんだほうが有意義だと思いマース

 

 

 

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

メール画面を見た皆は、思わず固まってしまっていた。文面が文面だからか、アーシア以外は怒りでこめかみをヒクつかせている。アーシアも苦笑い浮かべてるし。

 

・・・・実際私も、さっきまでこのメールの内容と同じようなこと考えてたけど、正直ムカついた。

 

「尾行・・・・・バレてたんですね」

 

「みたいだな・・・・」

 

いや、まあ正直バレても仕方ないとは思うけどね。だった私達・・・・それなりに目立ってたし。なんかこっち見てヒソヒソ言ってる人たくさんいたし。

 

「ふふっ・・・・ふふふふっ・・・・・」

 

「ぶ、部長?」

 

なにやら怪しげな笑みを浮かべる部長。ぶっちゃけ危ない人に見えてしまう。

 

「上等じゃない朧・・・・・そこまで言うなら徹底的に尾行しつくして・・・・」

 

「部長・・・・言いにくいんですが朧くんの姿がありません」

 

「・・・・え?」

 

変に火が入ってしまった部長に、木場が言う。先程まで朧がいた場所に視線を向けると、確かにいなかった。

 

「・・・・私達を撒くなんてやるわね朧」

 

いいえ部長。残念ながらこれに関しては朧が有能だとかそういう問題ではないです。どう見ても意識逸らしてた私達が原因です。まあ、朧はそれを見越してメール送ってきたんだろうけど。

 

「あの~・・・・部長?癪ですがここは朧の言うとおり水族館を楽しんだほうがよくないですか?」

 

私はここぞとばかりに提案してみる。部長、アーシア、朱乃先輩、小猫ちゃんと水族館に来る機会なんて滅多にないんだから楽しみたい。木場?まあ別にいるだけならいいよ。

 

「そうね・・・・・冷静に考えてみれば朧の尾行なんてしたってとくに面白いわけでもないし」

 

部長、それ今更過ぎます。

 

「せっかくだわ。皆でこの水族館を見て回りましょう。ライザーの件で最近は気を張っていたことだし」

 

「よっしゃ!」

 

部長のお許しが出て、私は思わず声を出して喜びを顕にした。

 

結果論だけど、ここまで尾行してて良かったと思う・・・・これもある意味朧のおかげかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、まったく・・・・」

 

私は携帯(以前朧に渡されたもの)に送られてきたメールを見て思わずため息を吐いてしまった。

 

メールにはこう書かれている。

 

 

グレモリー達には尾行をやめさせる

完全に安全とは限らないけど、これで少しは気が楽になるか?

ともあれ引き続きついてくるといいよ

 

 

どうやら私の尾行は気づかれてしまったらしい。しかもその上で気を遣わせてグレモリー達を引き剥がし、挙句について来いと言われてしまった。

 

・・・・正直このメールが来た瞬間、私は一体何をしているんだと虚しくなったと同時に、尾行がバレたことに関して羞恥心で死にたくなった。

 

だけどまあ・・・・一応朧の厚意には感謝しよう。尾行をやめるわけにはいかないのだから。

 

・・・・あくまでも、朧があのうなじ女に私のことを何も言わないかどうか監視するためだ。決して、私個人が気になるからではない。断じてない。

 

そんなこと・・・・・あったとしても認めてやらないわ。




朧は結構気配に敏感なので尾行するのはほぼ無理です

まあ、幻術使わされて撒かれるよりは今回はだいぶマシですが・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第38話

今回でデートは終了

そして本章も終りとなります

どうなるかは見てのお楽しみ

それでは本編どうぞ


「え?朧様はハーレムを志しているのですか?」

 

館内のフードコートで昼食を取りながら、俺はレイヴェルに俺がハーレムを夢見ていることを話した。ちなみに昼食に関しては今回は弁当を作ってきていない。以前、初デートで弁当を作った結果、相手の女の子のプライドをへし折ってしまい、気まずくなってそのまま破局してしまった経験があるからだ。

 

「ああ。俺はうなじフェチで、レイヴェルが俺好みのうなじを持ちぬしだったからあの時レイヴェルを口説いたんだが・・・・・俺のフェチはうなじだけじゃない。ほかに黒髪フェチ、くびれフェチ、鎖骨フェチでもあるんだ」

 

最近は太ももや眼や指のフェチにも目覚めつつあるがな。

 

「そ、それはその・・・・・中々変わった趣味といいますかなんといいますか・・・・・」

 

俺のフェチを聞き、レイヴェルは困惑していた。まあレイヴェルからしてみれば少なからず好意を持ってる相手の特異な性癖を聞かされったのだから無理もないだろう。だが、そういうことは早めに話しておくことに限るので、話をはめるわけにはいかない。

 

『レイナーレちゃんには説明するのが随分遅れていた気がするけれどそれについてはどうなのかしら?』

 

・・・・・・あれは完全にうっかりしてました。まあ、レイナーレは特に気にしてなかったみたいだからいいけど。

 

『・・・・・はあ』

 

あからさまに大きいため息を吐いて、呆れていると主張しだしたラム。一体どうしたってんだ・・・・・まあいいや。今はレイヴェルの方が重要だ。

 

「つまり俺は、自分のフェチに適った女の子を集めてハーレムを作りたいんだよ。そしてレイヴェルはその中のうなじ枠ってわけだ」

 

「なるほど・・・・・わかりました」

 

「・・・・俺のこと、軽蔑するかい?」

 

一般的に男女の仲というのは一人対一人というのが普通だ。だから、ハーレム願望を持つことは女の子の反感を買うことにもなるが果たしてレイヴェルはどうだろうか・・・・・

 

「軽蔑なんていたしませんわ。その程度のことで軽蔑していては、仮とは言えお兄様の眷属は務められませんから」

 

ああ・・・・そういえばライザーは眷属を自分の女で固めていたな。そんなライザーの眷属を仮にとは言え勤めていたから、嫌悪の感情は抱かないのか。

 

「それは良かった。レイヴェルに軽蔑されたら、俺思わず号泣しちゃっただろうから」

 

「嫌ですわ朧様ったら。そんな大げさな・・・・」

 

「大げさじゃないよ。俺にとってハーレムは大事なことなんだ。人間風情がハーレムだなんて倫理的に普通じゃないっていうのは理解してるけど・・・・・ハーレムを作らなきゃ夢が叶わないからな」

 

「夢・・・・ですか?」

 

そう。俺には夢がある。幸せになるということ以外の・・・・いや、幸せの一部ともいえる大切な夢が。

 

「俺はねレイヴェル・・・・俺好みのフェチを持った女の子に看取られて死にたいんだ。それが俺の夢なんだ」

 

「・・・・・え?」

 

俺の言ってることがあまりにも予想外だったのか、レイヴェルの表情に驚きの色が見えた。

 

「まあ、聞きようによっては後ろ向きに思えるだろうな。だけど、愛する人・・・・それも複数人に看取られて死ねるっていうのは幸せなことなんだ。俺が笑って皆も笑顔で死ねたら・・・・・それは何にも変えられない幸せなんだよ」

 

そう・・・・・それは間違いなく俺にとっての幸せだ。恐怖に、絶望に、苦痛に染められたあんな死よりも・・・・よほど幸せで、夢のある死だ。

 

「・・・・・申し訳ありません朧様」

 

「ん?なんで謝るんだレイヴェル?」

 

「私は・・・・・朧様の言っている事を理解することができません。そのような死が幸せであるだなんて思えません。愛する人との死別だなんてただただ悲しいこととしか私には思えません。だから・・・・・申し訳ありません」

 

あ~・・・・なるほど。レイヴェルは好意を寄せる()の考えが理解できないから、だから謝罪したのか。まったく、思わず愚かに思えてしまうほどにいい女だなレイヴェルは。好感度上昇だ。

 

「謝ることはないよ。レイヴェルが俺の気持ちを理解できないのは当然のこと。だってレイヴェルは無限に近い時を生きる悪魔で、死というものを理解していないから」

 

「私が悪魔で・・・・・死を理解していない?」

 

「死とは生命の終焉。人生という名の旅路の終わり。それは確かに嘆かわしいことだろう。だけど・・・・だからこそ俺は、そこに幸せを求めるんだ。俺はそれを幸せで締めくくりたいんだ」

 

これから死ぬからこそ、最期の最期で幸せを謳歌したい。死を知っているからこそ・・・・死が近いからこそ、俺はそう思わずにはいられないんだ。

 

「今はレイヴェルに無理に理解を押し付けようとは思わないよ。だけどいつか・・・・俺が死ぬときにでも、それを理解してくれたら嬉しいかな?」

 

「朧様・・・・わかりました。理解できるように努力します」

 

理解できるように努力する、か。そこまでして俺に合わせてくれようとするなんて・・・

 

かははっ。ダメだなこりゃ。もううなじ枠はレイヴェル以外ありえない。確定してしまった。この女はこの瞬間に逃げ道を失ってしまった。

 

「・・・・可愛いなレイヴェルは」

 

「なっ!?か、可愛いって・・・・突然何を言い出すのですか朧様!」

 

「ごめんごめん。レイヴェルがあまりにも可愛すぎてつい口に出しちゃったよ」

 

「うぅ・・・・」

 

恥ずかしそうに頬を染めるレイヴェル。そんなレイヴェルが本当に可愛い。

 

俺なんかに狙われて、俺なんかに好意を寄せて・・・・・本当に可愛くて可愛そうな子だ。

 

「さて、レイヴェルの可愛いところも見れたことだし、そろそろ行こうか。早くしないとイルカショーのいい席、確保できないし」

 

「は、はい」

 

俺が手を差し出すと、依然として頬を紅に染めるレイヴェルは俺の手をとって立ち上がる

 

その手からはほんのりと心地よい熱を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間というのは得てして早く過ぎるもの。俺は今日、改めてそう認識させられた。

 

昼食を終えたあと、見たイルカショー・・・・張り切って一番前の席で見たいと言っていたレイヴェルは案の定、水しぶきを浴びてびしょ濡れになっていた。水に濡れたレイヴェルのうなじは、俺を十分すぎるほどに魅了してくれた。

 

その後はびしょ濡れになったレイヴェルをもしもの時のためと持ってきておいたタオルで拭いてあげて(その時色々と堪能させてもらった)、また館内を巡って・・・・・・あっという間に館内すべての水槽を見終わったしまった。

 

そして今は・・・・・冥界に帰るレイヴェルを見送るために、オカ研の部室に戻ってきていた。楽しい楽しいデートの時間も、もう間もなく終りを迎える。

 

「デート・・・・・もう終わってしまいましたね」

 

レイヴェルは、水族館を出るときに俺がプレゼントしたイルカのぬいぐるみをギュッと抱きしめながら残念そうに言う。

 

「もう・・・・か。そう思ってくれてるって事は、レイヴェルを楽しませてあげられたってことだな」

 

「え?」

 

「知的生命体っていうのはな、時を操ることができるんだ。つまらなかったり退屈だったりしたら時間を長くすることができるし、楽しかったり没頭したりしていたら時間を短くすることができる。レイヴェルがあっという間だと感じてくれたということは、それはレイヴェルが楽しんでくれていた証明。そして俺も・・・・つい時間を短くしてしまったよ」

 

「・・・・ふふっ。朧様は意外とロマンチストなのですね」

 

俺がニコリとイケメンスマイルを浮かべながら言うと、レイヴェルも微笑みを浮かべてくれた。

 

「ですが、不親切な時間操作もあったものですわね。逆でしたら大歓迎ですのに・・・・」

 

「同感だな。逆だったらもっとレイヴェルと一緒に居られて・・・・もっとレイヴェルの可愛い姿をこの目に写すことができたのに」

 

「ッ!?い、いやですわ朧様ったら。そのような冗談・・・・」

 

「冗談じゃないよ」

 

俺はレイヴェルの肩に手を置きながら、レイヴェルを正面から見つめた。

 

「冗談なんかじゃない。もっとレイヴェルと一緒に居たかった。もっとレイヴェルの姿をこの目に写したかった。もっと・・・・・レイヴェルに俺を刻み込むことができた」

 

レイヴェルとは文字通り住む世界が違う。気軽に会えるわけではない以上、その願いは当然のものだろう。

 

「本当に残念だ。今日のデートがこれで終わるだなんて本当に・・・・・」

 

「朧様・・・・・私もです。私も残念でなりません」

 

レイヴェルも思いは俺と同じか。なら・・・・・せっかくだ。最後に少し愉しませてもらおう。

 

「そう思ってくれてるなら、一つお願いがあるんだがいいか?」

 

「なんですか?」

 

「ちょっと後ろ向いてくれ」

 

「?わかりました・・・・」

 

俺のお願いの意味がわからないのだろう。戸惑いながらレイヴェルは後ろを向いた。俺の目に・・・・レイヴェルの白磁器のように美しいうなじが晒される。

 

「・・・・・いただきます」

 

「ひうっ!?」

 

レイヴェルの口から可愛らしい悲鳴が漏れ出す。無理もない。なにせ、俺にうなじを舐められたんだからな。

 

「いい声で鳴いてくれるな・・・・・もっと聞かせてくれ」

 

「んっ・・・・やっ・・・!」

 

レイヴェルのうなじに口付けをを落とし、少々強めに吸い上げる。レイヴェルの口から悲鳴が漏れるたびに、俺の苛虐心がゾクゾクと刺激されてゆく。そして同時に、レイヴェルをめちゃくちゃにしてしまいたいという欲望が鎌首をもたげ始める。

 

・・・・・そろそろやめてやらないと、歯止めが効かなくなってしまいそうだな。

 

「・・・・・ごちそうさま」

 

うなじから口を離し、耳元でそっと囁いてやると、レイヴェルの体がビクリと震えた。

 

「お、朧様・・・・私・・・・」

 

振り返るレイヴェルの顔は紅く染まり、目は焦点が定まらず潤んでいる。何度も女を抱いてきた経験上わかる・・・・このレイヴェルの反応は羞恥と快楽が入り交じたものだ。

 

「くくっ、レイヴェルの劣情に火をつけちゃったかな?うなじだけでこんなになってしまうなんて、レイヴェルは俺が思ってる以上にいやらしい子だな」

 

「あう・・・・」

 

口付けでついた痕を指でなぞりながら言うと、レイヴェルはもじもじと恥ずかしそうに俯いた。否定の言葉を口にしないということは・・・・・レイヴェル自身がそれを受け入れてしまっているということだろう。

 

「気落ちよかったかいレイヴェル?快楽を感じているというなら、それは君の心が俺の虜になってしまったということだ。そして、その快楽は俺が・・・・俺だけが君に与えることができるもの。哀れだねレイヴェル。君はもう、俺からは逃れることはできなくなってしまった」

 

「朧様・・・・私は・・・・私が朧様から逃げるなんてありえませんわ。だって、朧様の言うとおり私はもう・・・もう・・・・」

 

堕ちたな。これでレイヴェルは俺の、俺だけのものだ。

 

「くくくっ・・・・・今日はここまでにしておこうレイヴェル。これ以上の快楽は次の機会にだ。それまでその昂ぶりは・・・・・自分で慰めて収めるといい。決して俺以外の男の手にかかってはダメだよ?」

 

「もちろんですわ。朧様以外の殿方なんて私・・・・」

 

レイヴェルに呪いをかけるように言葉を投げかける。すると、レイヴェルはいとも容易くその呪いに縛られてくれた。

 

「いい子だ。それじゃあ俺の愛しのレイヴェル・・・・・またな」

 

「はい。また」

 

トロン、と魅了されきった表情を俺に晒したまま、レイヴェルは冥界へと帰っていった。

 

『あんな風に女を誑かして堕とすなんてとんだ悪者ね♪』

 

レイヴェルが帰ったあと、ラムが愉快そうに声をかけてきた。

 

「別にいいだろ。レイヴェルは幸せそうだったぞ?」

 

『クズの言い分ね~。あ~、やだやだ♪』

 

「愉快そうにしているお前もとんだクズだと思うがな」

 

ほんっと、俺とラムは清々しいほどに相性最高だよ。

 

『それよりも、早く彼女を迎えに行きなさい。今頃へそを曲げているかもしれないわよ?』

 

「わかってるさ」

 

今日一日、突き合わせちまったからな・・・・その労をいたわってあげないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせレイナーレ」

 

学校の門を出ると、すぐ近くにレイナーレが居た。

 

「まったくね。見送っただけにしては随分と遅かったじゃない」

 

「ちょっとマーキングしててね。それで遅くなっちゃったんだよ」

 

「マーキングって・・・・あなたまさか・・・・」

 

「いやいや、さすがにあんなところで致しちゃったりなんかしないよ。味見しただけさ」

 

「この変態」

 

「何を今更」

 

変態上等。恋愛なんてものは誰に何と思われようと自分をさらけ出した奴の価値なんだよ。

 

『その理屈で言ったらあなた負けじゃない。秘密を抱えまくってるんだから』

 

やべ、論破された。

 

「まあいいわ。そんなことより早く帰りましょう。こっちは一日したくもない尾行をしたせいで疲れちゃったんだから。ほんっと・・・・・あんなに時間が長く感じられたことは今までなかったわ」

 

「時間が長くね・・・・・ははっ、それはなによりだ」

 

「何笑ってるのよ・・・・ムカつくわね」

 

「ごめんごめん。お詫びに今日の夕食はレイナーレのリクエストに応えるからさ」

 

「なら高級料亭並みの懐石料理でも作ってもらおうかしらね」

 

これはまた難易度の高いリクエストを・・・・・まあ、言ったからには作らせてもらうけどな。

 

「懐石料理ね、了解したよ。それじゃあとっとと準備しないとな。帰ろうレイナーレ」

 

「ええ」

 

俺とレイナーレは、共に暮らす家へと並んで歩き始める。

 

「そういえば・・・・あなた死ぬときに女に笑って看取られるのが夢だって言ってたわね」

 

「ああ、言ったな」

 

あの時レイナーレ割とすぐ近くにいたんだったな。聞こえてたのか。

 

「だったら喜びなさい。あなたが死ぬときは、私がこれ以上ないほどに嘲笑ってやるわ。せいぜい楽しみにしておきなさい」

 

「マジかよ。そりゃ死ぬ時が待ち遠しいな」

 

ニヤリと笑みを浮かべるレイナーレに対して、俺も同じような笑みを浮かべて言う。

 

それが本気かどうかはわからないけれど・・・・・なぜだか、レイナーレがそう言ってくれるのはたまらなく嬉しかった。

 

 




というわけで、レイヴェルは陥落。朧のハーレムの一人となりました

それに伴い、本章も終わりです。前章に比べてだいぶ長くなってしまった・・・・・

次回で本章までのキャラ設定を載せます。そこそこ面白くなるように色々と仕込んでおります

それでは次回もまたお楽しみに!


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二章終了時点の設定

本章までのキャラ設定を載せます

以前同様そこそこネタを仕込んでいますのでどうぞお楽しみください

それではどうぞ


まともな戦闘描写が全くと言っていいほどなかった主人公。過去があまりにも凄惨であったため、幸せになることに異様に執着しており、そのためには俗に言う『いい人』ではいられないと思っている。ゆえに、幻術使いの癖に現実主義であり、クールを通り越してドライな言動が目立っている。しかし実際は他者の感情や想いを理解した上で尊重できるため、一定以上親交を深めている者を見捨てきれず、結果的に言い訳しつつも助ける、救うといった選択肢を選んでしまいがちな甘ちゃんである

 

彼の憎しみの対象である悪魔であり、さらにはレイナーレのことで敵対する可能性があるグレモリー眷属に対して常に警戒心をもっているが、同時にオカ研のメンバーとして共に過ごした結果、情も抱いてしまっている。いざとなれば躊躇いなく殺すことはできるが、その時は酷い後悔に苛まれるのは確定的である

 

上記のとおり、朧はひどく矛盾した考え、言動をすることが多い。これは矛盾こそが人間らしさであると作者が捉えているためであるが、あまりにも徹底しすぎたせいで最近作者は朧のことを『人間らしさを着飾ったバケモノ』と認識してしまっている

 

本章にて、なかなかの変態っぷりを披露してうなじ枠としてレイヴェルを堕としてしまったコイツが主人公なのだからもうこの作品は色々と手遅れである

 

 

 

ラム

あまり正体に触れられることがなかった朧の相棒。何かと朧にちょっかいを出して反応を愉しんでいるのだから本当にいい相棒である。なお、人間の姿で外に出てくることができるが、面白からという理由で朧には黙っている

 

本作において唯一、朧が抱えている秘密を全て知っている存在である

 

 

 

レイナーレ

取り返しのつかないレベルで朧に惚れ込んでいることが発覚してしまった可愛そうなメインヒロイン。朧が好きすぎて、髪を洗ってもらうのも髪を乾かしてもらうのも朧でないと気がすまなくなってしまった

 

朧に対する好意は自覚しているものの、恥ずかしがってそれを表に出すことはほとんどない・・・・すなわち筋金入りのツンデレ、ツンデレイナーレである

 

朧の新たなヒロインであるレイヴェルには、デートを尾行する程度には嫉妬している。ただ、朧が選んだ相手なら仕方ないと嫉妬以上の感情は抱いていない

 

朧の母親が堕天使に殺されたとラムから告げられ、そのせいで朧が自分を信用しきれていないという事実を悲しく思うと同時に、その堕天使が自分の知るものであったならいつか殺してやりたいとも思ってしまっている

 

 

 

レイヴェル

朧のうなじ枠のヒロインに確定してしまった本作で二番目に可愛そうな子(一番はレイナーレ)。初対面時に、朧の紳士的な振る舞いと優れた容姿に一目惚れしてしまい、そこからなし崩し的に後戻りできないレベルで陥落してしまった

 

朧への好意はもはや依存と言えるレベルにまで高まってしまっており、今後朧が死ぬまでは朧以外の男に行為を抱くことはほぼなくなってしまった。また、朧限定の被虐体質であり、朧に虐められると性的興奮を覚えるようになってしまった。本人はそのことを不快に思ってはおらず、むしろ朧のものになれた証明だと嬉しく思うほどである

 

本章においては出番は多かったが、これからの展開上不遇であると言わざるを得ない

 

ちょっとエッチな32話ifルートがあるが、秘密である

 

 

 

グレモリー眷属

イッセー

言わずと知れた原作主人公(TS)。どのような理由があったにせよ、リアス奪還に協力してくれた朧に対して一層友愛を強めてしまっている。ぶっちゃけ当人達にその気があれば朧と恋人同士にもなれたかもしれないと最近作者は思う

 

原作主人公でTSまでしているためか出番はそこそこ多いが、それでもレイナーレやレイヴェルといったヒロイン勢に比べると控えめと言わざるを得ない

 

とある男性キャラとカップリングすることを作者に強いられてしまっている

 

 

リアス

朧から一番厳しい扱いを受けている。しかし、本人は朧の言ってることが的を得ているとわかっており、日頃雑務をこなしてくれていることも含めて感謝している。協力関係という意味では程よい距離感を保てている

 

愛情深さが災いして、最近は警戒すべき朧も身内にカウントしてしまっている傾向がやや見られる

 

 

朱乃

前章終了時点では朧のことを眷属の中で最も警戒していたが、朧が堕天使に母親を殺されたことを知って親近感にも似た情を抱き、それが原因で朧への警戒心が薄れている

 

朧の淹れるお茶が自分が淹れるお茶よりも美味しいため、密かに対抗意識を燃やしている

 

 

 

小猫

朧のことを男性としては最低なクズだと思いつつも、朧がつくるお菓子の恩恵を一番受けているためそこまで嫌ってはいない。というより、完全に餌付けされてしまっているといっていい

 

朧の作るお菓子を食べるのが一日の楽しみとなっており、休日前には朧に余分にお菓子を作ってくれるように頼むほどである

 

 

木場

朧から男だからという理由で不当な扱いを受けることが多々あるため嫌いとまでいかなくても印象は良くない。いつかちょっとした仕返しをしてやりたいと思ったりしている

 

イッセーに少しだけ気があるが、朧の目が黒いうちは諦めざるを得ない状況に置かれている。もっとも、彼がイッセーとくっつく可能性は0%であるが

 

 

 

アーシア

何かと世話を焼いてくれる朧のことを素直にしたってくれている。朧は彼女を妹にしたいと思っているが、純真ゆえに朧がグレモリー眷属の中で最も頭が上がらない存在でもある

 

アーシア自身も最近朧のことを兄のような存在だと思い始めてしまっている。早く目を覚まして欲しいと思う。切実に

 

 

 

 

桐生

朧の元カノ。本作開始前までは、朧は彼女を一番本気で愛していた

 

『いい人すぎるから別れて』と朧に告げて破局したが、それは朧にとって軽いトラウマとなってしまっている

 

今でも朧のことに好意を抱いており、実は未練があるのだが、それでもよりを戻そうとは思っていない

 

 

 

ソーナ

その聡明さと知識から朧が駒王学園で最も警戒する人物。ソーナも朧のことを警戒おり、朧と敵対したときの対策をいくつか用意しているが、朧に自分の甘さを見抜かれたことで朧に対して若干であるが恐怖心を抱いてしまった。

 

親友であるリアスのために自らを犠牲にしようとしてまで朧に助けを求めるが、逆に朧の反感を買ってしまう。しかし、その健気さ自体は朧から認められており、実は朧からの評価はイッセー、アーシアを除くグレモリー眷属達よりも高い。

 

 

 

ソーナに惚れていることを朧に速攻でバレてしまった哀れなひと。一応朧としては匙の恋路を応援しようとは思っており、そのこと自体は匙も感謝している。しかし、ソーナが朧を恐れているため、トータルで見ると朧を快くは思っていない。

 

彼の神器に潜むヴりドラとラムには何らかの因縁があるらしい・・・・・・?

 

 

 

グレイフィア

朧のことを警戒している。しかし、理由はあれどリアスの為に行動してくれたこと自体には感謝の念を抱いており、そのせいでそこまで朧のことを嫌ってはいない

 

密かに朧の料理の腕を気にしていたりする

 

 

 

ザーゼクス

後述する朧の保護者から朧のことを聞かされている。現状、それ以上に説明しようがない最強の魔王ルシファー様

 

 

ミリアリッサ

朧の保護者。名前を聞くだけど多くの悪魔達が萎縮してしまう問題児。彼女が保護者だと分かって、イッセーとアーシアを除くグレモリー眷属は朧に深く同情した

 

番外編にて戦闘能力がアザゼル以上に高いことが判明。魔王候補であり、超越者でもあることからおそらく本作中最強の女性悪魔。しかし、男性への免疫が低く、非常に困った癖の持ち主であるらしく、登場させる際には作者自身心してかからなければならない地雷キャラ

 

 

 

ライザー

原作では2巻のメイン敵であったにもかかわらず、本章ではまさかのまともな出番が一話しかなかったという。だが、前章においてフリードやレイナーレ以外の堕天使の出番が一切なかったことを考えるとまだマシかもしれない

 

 

 

現状での朧に対する好感度一覧

レイナーレ

10/10

 

レイヴェル

10/10

 

イッセー

9/10

 

リアス

6/10

 

朱乃

5/10

 

小猫

6/10

 

木場

3/10

 

アーシア

7/10

 

桐生

8/10

 

ソーナ

4/10

 

2/10

 

グレイフィア

4/10

 

ザーゼクス

5/10

 

ライザー

0/10




前回以上にロクでもないような気もするけどきっと気のせいではない

次回から新章となりますが、これまでと比べてシリアス成分が濃いです

どのような展開になるのか・・・・・ご期待下さい

それでは次章もまたお楽しみに!


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第三章 幻刃幻弾のアヴェンジャー
第39話


今回から3巻の内容に入りますが・・・・しょっぱなから重めです

シリアス成分強めの章に相応しい始まりかと思います

それでは本編どうぞ


ああ・・・・・なんてひどい悪夢(絶望)だろう

 

醜い翼を持った男が美しい女を犯している。それも、幼い少年に見せつけるかのように・・・・・

 

女はどんなに惨めに陵辱されようと気丈に振舞っていた。時折少年の方に視線を向け、安心させるために微笑みを浮かべるが、少年はそれでも辛そうに泣き喚く

 

それは無理もないこと・・・・・女と少年は親子なのだから。親が犯されるのを見て、苦しまない息子などいるはずがない

 

だが・・・・・それでも、それ故に俺は思う。なぜ女は少年を見捨てなかったのだろうと・・・・見捨ててくれなかったのだろうと

 

少年は人質だった。だから女は無抵抗に犯されていた。だったら、少年を見捨てればよかったのだ。少年を見捨てさえすれば女はきっと逃げ出すことができたんだから。そうすればあんな凄惨な結末を迎えずに済んだというのに

 

・・・・・どうして?どうしてなんだ?

 

どうしてそんな子供を守ろうとする?なんの価値もない、将来どうしようもないクズになるそんな子供をどうして大切にする?

 

どうして・・・・・どうして・・・・・・

 

どうして少年()を見捨ててくれなかったんだ・・・・・

 

・・・・・・・母さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ・・・・・」

 

深夜、空になったガラスコップを机に叩きつけながら俺は思わず悪態をついてしまった。

 

思い出されるのは先程まで見ていた夢。幼い頃の悪夢、絶望・・・・・堕天使と、そしてなにより母親を救えず、ただ見ていることしかできなかった自分を深く憎むきっかけとなった過去。

 

そんな胸糞悪い夢を見てしまったので、俺はうちから溢れ出そうになった憎悪を抑えるために水を飲みに台所にきたのだが・・・・・・憎悪はまったく収まらない。どころか、幾分か冷静になれたせいでより一層憎悪が強まってしまった。

 

「・・・・・最近は見てなかったのに。なんで・・・・・」

 

『なんで?おかしなことを言うわね。それは必然よ?』

 

「ラム?」

 

『レイナーレちゃんとレイヴェルちゃんという愛すべき存在を得た。秘密を抱えながらも充実した日常を謳歌している。つまりあなたは幸せに近づいてしまっているのよ』

 

ラムの言うことは否定しない。俺は今幸せに近づいている。それは確かに実感していた。

 

『けれど、あなたにとって幸せと絶望は表裏。幸せに近づくということは絶望を思い起こさせるということ。なぜならあなたはかつて、幸せな日常から最低な絶望に移りゆくの体験してしまったから』

 

「・・・・だから今になってあんな夢を見たってことかよ。戒めのために・・・・・絶望の悪夢で俺を縛るのか」

 

『うふふふっ・・・・・哀れな子ね。誰よりも幸せを追い求めているのに、幸せに近づくほどに絶望を思い出してしまう。なんて・・・・可哀想で可愛い子なのかしら』

 

「・・・・・黙れラム。それ以上はいくら相棒だからって聞かなかった振りはできないぞ?」

 

『あら恐い。怒らせてしまったわね♪』

 

自分でもわかるほどに冷たい声色でラムに言い放つが、ラムの調子は変わらない。ラムのどんな時であっても自分のペースを乱さないところは好きだが、今は忌々しさしか感じない。

 

『まあいいわ。今は黙っておいてあげる。私が口を出したんじゃ余計にイラつかせちゃうでしょうし。それに・・・・・』

 

「それに?それになんだよ?」

 

聞き返すが、ラムは答えない。ちっ、黙るって言っても聞かれたことぐらいには答えろっての。

 

・・・・・まあいい。このままここに居たって仕方がないし部屋に戻ろう。またあんな悪夢を見たらたまったものでもないから寝れそうにはないが・・・・・・まあ本でも読んで時間を潰しておけばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったわね」

 

自分の部屋の前に戻ってくると、そこにはレイナーレが居た。

 

「・・・・・何してるんだよ?」

 

「夜中に足音が聞こえたせいで目が覚めちゃったのよ」

 

「それはここにいる理由になっていないだろ。起こしてしまったことに関してはすまないと思うが、気にせずまた寝ればよかったろうに。それとも起こされたから文句の一つでも言おうと思ったか?」

 

「それもあるけど・・・・・どうにも足音が荒かったから気になったのよ」

 

・・・・ちっ。足音でバレるほど余裕なかったのかよ俺。

 

「・・・・・別になんでもないさ。とっとと部屋に戻って寝ろ。寝不足は美容の大敵だぞ?」

 

「断るわ。なんでないだなんてあからさまな嘘を聞かされて戻れるわけ無いでしょう?これまでないほどにイラついてるみたいだし・・・・・何があなたをそうさせているのかを知るまでは部屋に戻るつもりはないわ」

 

どうやら俺の言うことを聞くつもりはないらしい。こうなったら何を言っても無駄だろう。

 

ああ、鬱陶しい。愛おしい存在ではあるけれど・・・・・・今はただただ煩わしくて堪らない。

 

「・・・・・調子に乗るな」

 

「ッ!?」

 

俺はレイナーレの肩を掴み、壁に叩きつける。

 

「俺はお前を愛している。だからグレモリー達の前で偽装工作までしてここに連れてきた。だがな・・・・・だからといってお前のすること全てを許そうだなんて微塵も思っちゃいないんだよ。あんまり調子に乗るなら・・・・・犯すぞ?」

 

レイナーレの服に手をかけ、縦に引き裂裂きながら俺は言い放つ。服の破れ目からレイナーレの豊満な胸が晒された。

 

まあ口ではああ言ったが、実際に犯すつもりはないがな。これぐらいしておけば部屋に戻ってくれると思ったからやったに過ぎない。

 

なのに・・・・・レイナーレの反応は、俺の予想に反するものであった。

 

「クククッ・・・・・・アハハハハハッ!」

 

怯えもせず、怒りもせず、不機嫌さで表情も歪めることさえもせずに・・・・・レイナーレは愉快そうに声をあげて笑い出す。

 

「なんで笑ってんだよ?」

 

「なんで?笑わずにいられないわ。だって、ようやくあなたに犯してもらえるんだから」

 

「・・・・は?」

 

何を・・・・言っている?この女は何を言っているんだ?

 

「朧の手を取ったあの時からこうなる覚悟は出来ていたのよ。いつあなたに犯されるのか、いつあなたに穢されるのかと心待ちにしていたわ。それなのに朧は全然手を出してこないんだもの。せっかくの覚悟が無駄になってしまったようで腹立たしかったわ」

 

レイナーレは妖艶な笑みを浮かべながら言葉を紡ぎ出す。

 

「けれど、ようやくその時が来た。ようやく朧に犯してもらえる。ようやく・・・・・私の覚悟が報われるときが来たのよ」

 

レイナーレの指が、俺の頬に触れる。俺から乱暴を働いたというのに・・・・・まるでレイナーレに追い詰められているかのように感じてしまう。

 

「さあ、朧はどうやって犯してくれるのかしら?獣のように私の躰を激しく蹂躙してくれるのかしら?それともあなたが愛するこの髪を欲望で染め上げてくれるのかしら?あるいはそのどちらもかしら?まあなんだっていいわね・・・・どんな方法であっても私はあなたの全てを受け入れてやるわ。あなたの女に成り下がってやるわ。だから・・・・・・たっぷりと、思うがままに私を犯しなさい」

 

俺の首に手を回し、耳元で色っぽい声で犯せと囁くレイナーレ。この時俺は気がついてしまった・・・・・レイナーレの手が、わずかに震えていたことに。それは俺に犯されることに対する恐れの震えであることに気がついてしまったのだ。

 

そして理解してしまう。レイナーレは俺に犯されることを望んでいるわけではなく・・・・・レイナーレが知りえない、俺が抱えている『ナニカ』を受け止め、俺を救うために犯されようとしていることに。

 

・・・・なんでだ?なんでこの女は俺なんかのためにここまでする?

 

自分を殺し、自由を奪い、縛り付けた俺に・・・・・・なんで?

 

レイナーレといい、母さんといい・・・・・どうして・・・・・

 

「レイ・・・・ナーレ」

 

俺はレイナーレの背に手を回し、胸に顔を埋めた。あの悪夢によって生じた憎悪は俺の心の奥底に押し込められ、イラつきも消え去っていた。

 

「あら?犯さないの?」

 

「・・・・・・うん」

 

「そう・・・・残念ね」

 

そう言いながら、レイナーレは俺の頭に手を乗せて撫でてくれる。

 

それは酷いくらいに心地よく・・・・残酷なほどに暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・夜が明けるわ」

 

「・・・・そうか」

 

あれから数時間して、夜が明ける時間になってもまだ朧は私に抱きついていた。その間ずっと、私は朧の頭を撫で続けている。

 

「朝食作らなくてもいいの?」

 

「後でやる」

 

「後でって・・・・・学校、遅刻するわよ?」

 

「今日は行かない。レイナーレと一緒に居たい」

 

「そう・・・・・とんだ不良生徒ね」

 

「別にどうでもいい。もともと問題児だし」

 

まるで子供のような言い様だ。だけれど、そんな朧が可愛いと思えてしまう・・・・・私も重症ね。

 

「・・・・・夢を見たんだ。昔の夢を」

 

「夢?」

 

「俺・・・・昔母さんと一緒に堕天使に捕まって。母さんは俺を人質に取られて・・・・・その堕天使に俺の目の前で毎日犯されていた」

 

ッ!?母親が堕天使に殺されたことはラムに聞かされて知っていたけれど、まさか陵辱までされていたなんて・・・・・

 

「その夢を見たの?」

 

「・・・・・うん」

 

それであんなにもイラついていたのね・・・・・無理もないわ。朧にとってはトラウマ以外のなにものでもないでしょうから。

 

「朧・・・・堕天使が憎いかしら?」

 

私は答えがわかりきっていながら朧に尋ねた。

 

「憎いよ」

 

ただ一言・・・・・朧は告げる。

 

「私も堕天使よ?あなたの母親を殺し、絶望の淵に追いやった種族・・・・・私も殺してやりたいほど憎いかしら?」

 

「・・・・まったく憎くないわけじゃない」

 

やっぱり・・・・・私のことも憎いのね。堕天使である私のことも・・・・・朧は・・・・

 

「けど・・・・・それ以上に愛してる。レイナーレのこと・・・・俺は愛してる」

 

「・・・・・そう」

 

改めて言われると・・・・・存外恥ずかしいものね。憎悪を抱きながらもそれを上回る程にか・・・・・どうやら朧の私に対する愛情は私が思っている以上のようね。

 

「それに・・・・・」

 

「それに?」

 

「堕天使以上に俺は・・・・・自分自身が憎くいんだ。人質として捕えられて、母さんが犯されるのを泣き喚きながら見ていることしかできなかった自分が・・・・・憎くて憎くてたまらないんだ」

 

「朧・・・・・」

 

見ていることしかできなかった・・・・・その言葉からして、当時の朧は幻術を使えなかったようね。幻術さえ使えていれば、母親を救うことができていたかもしれない・・・・・朧の幻術ならばそれぐらいのことは出来ていただろうから。

 

だが、できなかったからこそ母親を救うことができず、無力感に苛まれ・・・・・自らを憎むことになってしまったのでしょう。

 

・・・・悔しいけれど、私では朧の自責の念を、自身に対する憎悪をどうすることもできない。だったら・・・・

 

「・・・・以前言った言葉だけれど、もう一度言ってあげるわ」

 

「え?」

 

「あなたが死ぬまで連れ添ってあげるわ。だから・・・・・せいぜい私をずっと愛し続けなさい。憎しみを・・・・忘れてしまうほどに」

 

「レイナーレ・・・・・ありがとう」

 

顔を上げ、ニコリと微笑みを浮かべた後に、また私の胸に顔を埋める朧。

 

 

 

 

馬鹿な人・・・・・感謝の言葉なんていらないのに。感謝するのは私の方なのに

 

朧・・・・・私を愛してくれてありがとう

 

まあ、絶対に直接言ってなんてやらないけど




なぜこの話をわざわざこの章の頭でやったのか・・・・それはいずれわかります

まあ、ここまで言えば朧の母親を陵辱した堕天使が誰なのかわかってしまうでしょうが

それでは次回もまたお楽しみに


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第40話

今回は朧とオカ研メンバーの間でちょっとした変化があります

それでは本編どうぞ


・・・・・なあラム。

 

『なにかしら?』

 

今の状況の説明プリーズ。

 

『放課後、オカ研の部室に来ると同時に有無を言わさぬ迫力のリアス・グレモリーの一言によって正座させられているわね』

 

うん、説明ありがとうラム。

 

さて・・・・・・どうして、こんなことになってるのだろうか。

 

「あの~・・・・伺ってもよろしいでしょうか?」

 

「なにかしら?」

 

恐る恐るとリアスに声をかけてみると、ニコリと微笑みを浮かべながら返事を返してくる。ただ、その笑みは心地の良いくらい黒々としていた。

 

いつもなら適当に流すのだが、今回ばかりはそうもいかないかなと思って助けを求めようと他のオカ研メンバーに目配せするが・・・・・

 

「「「・・・・・・」」」

 

皆無言で目を逸らしやがった。アーシアだけが申し訳なさそうに苦笑いを浮かべているのが唯一の救いだ。つうか、皆どんだけ薄情なんだよ。

 

『普段の行い』

 

前にも言ったきがするけど雑務こなしてるんだからそこまで悪くはない・・・・はずだ。

 

だが、皆からの助けが期待できないとすると・・・・・自分で何とかするしかないか。まずはなんで正座させられてるのかだが・・・・・考えられるのはやっぱり昨日無断で休んだことか?メールとか電話とかきたけど全部無視してレイナーレに甘えまくってたし。

 

『見ていて愉悦だったわ』

 

それはなによりだよ。だから少し黙っててください。

 

「え~と・・・・・部長、昨日無断欠席したことがそんなに気に障ったでしょうか?」

 

「そのことについては別にいいわ。あなたに関しては今更その程度のことで目くじらを立てるつもりはないもの」

 

うわー・・・・無断欠席のことで怒ってなくてよかったと思うけど、なんかすっごい釈然としない。

 

「ただまあ、あなたが来なかったせいでお茶請けがないって小猫が文句を言っていたから、小猫からは何かあるかもしれないわね」

 

小猫の方を見てみると、なんかシャドーボクシングよろしく拳を突き出していた。え?俺殴られるの?さすがにルークの小猫に殴られるのは嫌だよ?当たる気ないけど。

 

それはともかくとして、無断欠席の件で怒ってるわけではないとしたら一体なんでリアスは・・・・?

 

「では、なぜ俺は正座させられているのでしょうか?心当たりがないのですが・・・・」

 

俺は思い切ってリアスに聞いてみることにした。

 

「・・・・・先日、フェニックス家の者から連絡があったの」

 

「フェニックス家から?」

 

あ、なんかちょっとわかったような気がする・・・・・

 

「なんでも、あなたとのデートから帰ってきてからレイヴェルの様子がおかしいらしいわ。うっとりとした表情であなたの名前を呟く姿が以前以上に頻繁に目撃されているそうよ」

 

以前以上にか・・・・そういえば、レーティングゲームのときライザーの眷属が俺の名前を呟いていたレイヴェルを見たって言ってたな。デートから戻ってその頻度は増えているようだ。

 

「それくらいならいいじゃないですか。それだけレイヴェルはあのデートを通じて俺を想うようになってくれたということ。俺としても男冥利に尽きるというものです」

 

「そうね。フェニックス家の人間の中には頭を抱えてる者もいるそうだけれど、そのことに関しては私から文句を言うつもりはないわ。個人の恋愛ごとに必要以上に口を出すほど野暮ではないもの」

 

「だったら別に問題はないじゃないですか。正座崩してもいいですか?」

 

「ダメよ」

 

特に問題はなさそうだったので正座を解いてもいいかと聞いてみるが、お許しは出なかった。そろそろ足が痺れてきたから勘弁して欲しいんだが・・・・・やっぱりそうもいかないか。多分話はそこで終わりじゃないだろうし。

 

「問題は他にあるのよ。あなたのデートから帰ってきてから、レイヴェルはしばらく髪を下ろしていたそうよ」

 

あ、やっぱりか・・・・

 

「イメージチェンジですかね?髪をおろしたレイヴェルもまた可憐でしょうけど、個人的にはうなじが隠れてしまうのが残念でなりません」

 

「うなじが隠れて、ね・・・・朧、あなたもしかしなくてもレイヴェルが髪を下ろしていた理由に心当たりがあるのではないかしら?」

 

「・・・・・・ナンノコトヤラワカリマセン」

 

一応、場の空気的に合わせてわざとらしくシラを切ってみる。

 

「ライザーの眷属の一人が、レイヴェルの項に赤い痣のようなものできているのを見たそうよ。髪を下ろしたのはそれを隠すためでしょうね。けれど・・・・朧、その痣に心当たりは?」

 

「虫刺されとか?」

 

「お~ぼ~ろ~?」

 

「はい、もう誤魔化しません。正真正銘俺がつけたキスマークです」

 

さすがにこれ以上誤魔化すとリアスの怒りがリミットブレイクしそうだったので、潔く白状した。

 

「あなたという子は・・・・・信じて尾行をやめた私が愚かだったわ」

 

「尾行はやめたんじゃなくて俺に撒かれたんでしょう?ねえ俺に撒かれてどんな気持ちでした?ねえどんな気持ちでした?NDK?NDK?」

 

「だ・ま・り・な・さ・い!あなたの頭の中に反省という言葉はないの!?」

 

「さーせん」

 

失礼なことを言うなぁ・・・・・反省という言葉ぐらい俺の頭の中にあるに決まってるだろ。ただ、今回の事案は反省に値しないだけだ。

 

ちなみに尾行をやめようがやめなかろうがキスマークの件についてはどうにもできなかったぞリアス。帰る直前にこの部室でやったんだから。まあ、口に出したら更に怒られるから言わないけど。

 

「まったく・・・・・初デートでキスマークを付けるってあなた一体何考えてるのよ」

 

「ホテ・・・・まあ、それは個人の裁量なのでいいんじゃないでしょうか?レイヴェル嫌がってはいませんでしたし」

 

「あなた今『ホテルに連れ込むよりはマシ』だって言おうとしたわね?」

 

「いえ。ホテホテなじゃがバター食べたいなって言おうと思ってました」

 

「これまで聞いたどの嘘よりも酷いわ・・・・・」

 

なにも頭を押さえなくてもいいだろうリアス。他の皆も頷くな。自覚はあるけども。

 

「というより、さっき個人の恋愛ごとに必要以上に口を出さないって言ってたじゃないですか。それなのにこの仕打ちはあんまりでは?」

 

「今回の事案は必要以内に含まれると判断したわ」

 

解せぬ。というかうなじにキスマークぐらいでそんなにネチネチ言わなくたっていいでしょう。あなたの裸で添い寝よりはだいぶマシだと思うし。

 

というよりそろそろ足の痺れがマズイな・・・・これ以上は今日の今後の行動に支障をきたす。なんとか話を終わらせなければ。

 

「まあとにかく落ち着いてください。この件に関しては俺とレイヴェルの間で解決・・・・というよりそもそも問題にすらなっていないんです。そりゃフェニックス家にとってはそれなりに気にするべき事案かもしれませんが、それでもここで議論しても仕方がないでしょう?だから話はここまでにしましょうよリアス部長」

 

「悪いけれどそういうわけには・・・・・・」

 

リアスは何かを言いかけるが、途中で言葉は途切れてしまった。その上目を見開き、驚いた表情で俺のことを見てる。一体どうしたっていうんだ?

 

「・・・・・まあいいわ。確かに朧の言うことにも一理あるしここまでにしておくわ。もう正座を崩してもいいわよ」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

なんかやけにあっさり許してくれたな・・・・確かに早く正座崩したいとは思ってたけど、完全に説得し切るにはまだまだ掛かると思ったのに少し拍子抜けだ。それになんか機嫌が良さそうに見えるような・・・・・

 

「・・・・朧先輩」

 

疑問を抱きつつも正座を崩す俺に、小猫が声をかけてきた。明らかに不機嫌そうなジト目・・・・・そんなに昨日無断で休んだの恨んでるの?お菓子持ってこれなかったの怒ってるの?

 

「あ~・・・・・小猫ちゃん、昨日は勝手に休んじゃってゴメンな?そのお詫びってわけじゃないんだけどほら。今日は小猫ちゃんが好きだって言ってくれたチョコマフィン作ってきたんだ」

 

「・・・・・・わかりました。今日のところはこれに免じて許してあげます」

 

そう言って、小猫は俺が差し出したマフィンを機嫌よさげに受け取った。そんなに俺の作ったチョコマフィン好きなのか・・・・でも、なんかリアスみたいに驚いた表情もしてたけどそれは一体・・・・?

 

「朧くん、お茶をどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます朱乃先輩」

 

「・・・・・ふふっ、どういたしまして」

 

朱乃、なんでお茶受け取っただけで機嫌良さそうに笑ってるんだ?しかも朱乃まで驚いた表情してたし・・・・・・どういう事なんだ本当に?

 

『あら?もしかしてわからないのかしら?』

 

え?ラムにはわかるのか?わかるんだったら教えて欲しいんだけど・・・・

 

『教えな~い♪』

 

うわぁ・・・・腹立つなこれ。

 

「朧、お疲れ様」

 

「お疲れ様です朧さん」

 

ラムに対してイラっとしていると、イッセーとアーシアが声をかけてくる。もしかしたら二人ならリアス達が機嫌よさげにしてた理由がわかるかもな・・・・・・聞いてみるか。

 

「なんとか俺の足は犠牲にならずに済んだよ。けど、なんかあの三人機嫌よさそうに見えるんだけどどうしてだかわかるか?」

 

「え?気がついてないのか?」

 

「意識してなかったんですね」

 

尋ねてみると、なんか二人共意外そうな表情になった。これは何か知ってる?

 

「正直心当たりは全くないんだよな・・・・いや、小猫ちゃんはマフィンのことで機嫌が良くなってるかもしれないけど」

 

「それです」

 

「え?やっぱマフィン?」

 

「いや、違うから。朧、小猫ちゃんのこと名前で呼んでるだろ?部長達のことも」

 

・・・・え?名前?

 

『自覚がないとは呆れたわね。あなた、さっきからモノローグでも名前で呼んでたわよ?』

 

ラムに言われて、そういえばそうだったと思い出す。

 

「私とアーシアの事ははじめから名前で呼んでたけど、部長達のことは前まで苗字で呼んでただろ?多分部長達、それで朧に対して距離を感じてたんじゃないか?」

 

「じゃあ機嫌が良さそうなのって・・・・」

 

「きっと部長さん達は朧さんに名前を呼ばれて距離が縮まったと感じたのだと思います」

 

それが嬉しかったってこと?確かに距離保つために苗字で呼んでたけど・・・・・その程度のことで?

 

『彼女達にとってはその程度の範囲内ではなかったようね。どうやらあなた、完全に身内だと思われてしまってるようよ』

 

なんだよそれ。甘い悪魔共だな。

 

『同感ね。けれど、それはあなたにも当てはまるわよ?これまで苗字で呼んでいたのに今は意識せずとも名前で呼んでいる。それは、あなたが無意識にここに居る悪魔達の事を一定以上の身内だと思ってしまっている何よりの証拠よ』

 

・・・・・・否定はできない、か。俺も甘いな。

 

『全くね。けれどいいじゃない。あなたのその甘さ・・・・・人間らしくて私好きよ?』

 

そうか・・・・まあ、お前に好かれるのなら甘いのも悪くはないだろう。だが・・・・

 

『ええ、そうね。これで尚更やりにくくなったわね。レイナーレちゃんのことがバレたら敵対する可能性はまだ十分にある。敵対するとなれば、あなたは引き金を引かなければならない・・・・たとえそれがどんなに辛くても』

 

わかってるよ。俺にとってもっとも大事なのは、優先すべきはレイナーレだ。レイナーレの件で敵対するというのなら、俺はリアスやその眷属・・・・そして、イッセーにでさえ、俺は牙を剥く。俺の感情に関わらず・・・・・・いざとなれば、俺はその手段を選ばなければならない。

 

『手段を選ばないのではなく、残酷でも辛苦にもだえようとも手段を選ぶ・・・・・それでこそよ。それでこそ人間。それでこそ私の大好きな現世朧よ。その覚悟を持ち続けられるように・・・・せいぜい期待してるわ』

 

そいつはどうも、我が相棒。

 

「朧?どうした?」

 

「え?どうしたって何がだ?」

 

「いや、なんか急にぼんやりしてたから」

 

「大丈夫ですか朧さん。体調が悪いんですか?」

 

心配そうな表情で俺を見てくるイッセーとアーシア。まったく、俺なんかを心配するなんて、本当に・・・・・

 

「何でもないよ。それよりも、二人はマフィン食べなくてもいいのか?早くしないと小猫ちゃんが全部食べちゃう勢いなんだが・・・・・」

 

「アーシア!早く行こう!」

 

「はいです!」

 

小猫に全て食べられてたまるかと、イッセーとアーシアもマフィンを取りに行った。

 

「はあ・・・・やれやれ」

 

目に映るのはイッセーやアーシア、リアス、朱乃、小猫が俺の作ったマフィンを美味しそうに食べている光景。以前ならその光景に思うことなどほとんど何もなかったというのに今は・・・・・だがまあ、それも悪くはない。将来的に敵対する可能性はあるとしても、今はこの光景を大切に思うことに甘んじよう。

 

それぐらいの我が儘・・・・・今は・・・・今だけは許されたっていいはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、木場の様子がおかしいけど、どうかしたのだろうか?

 

『あ、彼のことは苗字呼びなのね』

 

いや、だって野郎だし。そこはまあいいかなって。

 

 




朧の中でのオカ研メンバーへの好感度はだいぶ高まっています

このままいけば普通に信頼しあえる大切な仲間レベルになる日もそう遠くありません

このままいけば・・・・ね

それでは次回もまたお楽しみに


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第41話

今回は朧が珍しく木場のことを気にします

あ、決して変な意味ではないので

それでは本編どうぞ


「行くわよ朧!」

 

「はいさー」

 

カキン、と金属特有を響かせて、部長の金属バットによって鋭い打球が放たれる。俺はその打球を軌道を読み、ダイビングキャッチすることなくボールをグローブでキャッチした。

 

現在、俺達オカ研メンバーは旧校舎の裏手で野球の練習をしていた。来週、駒王学園では球技大会があり、その部活動対抗戦のための特訓を行っているのだ。

 

どうにもリアスはこの手のイベントが好きなようでタイプで、かなり張り切っている。もっとも、オカ研は俺以外は皆悪魔なのでスポーツでそうそう負けることなんてないと思うが。

 

「今のを容易くキャッチするなんて、やるわね」

 

「前から言ってますが身体能力は並の人間より少しいい程度ですが、視力はいいですからね。あれぐらい容易いですよ」

 

見えてさえいれば、そこから軌道予測することなんて余裕だ。ただまあ、悲しいかな・・・・この軌道予測は戦闘やらなんやらで培って来たものだから素直に嬉しくはない。

 

『だとしてもいいじゃない。こういうふうに平和なイベントでそれが活用されるのなら悪くはないでしょう?』

 

まあ、それもそうだけどな。

 

『まあそれはそれとして・・・・・彼、やっぱり様子がおかしいわね』

 

ラムに言われて俺はあいつの・・・・木場の方に視線を向けた。

 

「いくわよ祐斗!」

 

俺の時と同じように、リアスは木場の方へと打球を飛ばす。いつものあいつなら平然とキャッチするのだが・・・・・ボールは木場ぼけっとしていた木場の頭に当たり、そのまま地面に落としてしまった。

 

らしくない木場に、イッセーやリアス達が声を掛ける様子が俺の目に映る。

 

『朧はあれ、どう思うかしら?』

 

んー・・・・男のドジっ子は需要がないなと思うな。

 

『同感ね』

 

・・・・・ラムさん、ぼけたんだから突っ込んで。

 

『え?突っ込むところあった?』

 

・・・・うん、俺が悪かったよ。ごめんね。本題に戻ろ?

 

『わかったわ。では改めて聞くけれど・・・・・どう思う?』

 

何かあったのは間違いない。そしてその『何か』は俺が休んでるあいだに起きたんだろう。

 

『でしょうね。あなたが休む前はいつも通りだったもの。問題は何があったのかだけれど・・・・』

 

そのへんのことはイッセーあたりにそれとなく聞いてみるさ。

 

『まあ、それが無難ね。それにしても・・・・・意外ね』

 

意外?

 

『男に大して興味もないあなたが、木場くんのことを気にかけていることがよ』

 

男に興味がないって・・・・・まあ間違ってはないけどさ。正直普段なら大して気にもしないが・・・・木場の目がな。

 

『・・・・ああ、なるほど。気がついたのね。そう、そうよ。彼の目はあなたと同じ。憎しみを抱いたものの目。復讐者の目よ』

 

やっぱり、か・・・・・嫌な親近感を感じたからもしかしてと思ったんだが憎しみと復讐か。

 

面倒だな・・・・・・・おかげで放っておくことができなくなってしまったじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、ちょっとイッセーと話がしたいので借りてもいいですか?」

 

「え?」

 

野球の練習が終わり、部室に戻ろうとする一同を引き止めて俺が言う。イッセーは突然のことにキョトンとした顔をしてる。

 

「イッセーと話?私達が居る前では話せないことなのかしら?」

 

「まあちょっとね・・・・・親友同士で話したいこともあるんですよ。イッセーがオカ研に入ってからは中々二人で話す機会もないですので」

 

実際問題、イッセーのそばにはいつもアーシアかリアスがいるからな。二人で話す機会はめっきり減ってしまった。まあ、俺は俺でレイナーレやレイヴェルのことに気を回しすぎていたが。

 

「親友同士でね・・・・怪しいわね」

 

「怪しいですわ」

 

「・・・・怪しいです」

 

リアス、朱乃、小猫から連続で怪しまれてしまった。

 

「あの、お三方・・・・・流石に悲しくなるんで勘弁してくれないでしょうか?」

 

「だったらもう少し普段の行いに気を遣いなさい」

 

「あなた達は俺の普段の行いを思い返してください」

 

しつこいけどそこまで悪くはないでしょうマジで・・・・・

 

「はあ・・・・まあいいわ。夜には悪魔の活動もあるんだから手短にお願いするわよ?」

 

「はい。わかりました。んじゃ行こうぜイッセー」

 

「え?あ、ああ・・・・わかった」

 

リアスからの許可も取れたので、俺はイッセーを連れて旧校舎の空き教室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうして朧と二人で話をするのも久しぶりだなー」

 

「そうだな。どっかの誰かは紅髪のお姉様と金髪のシスター、そのほか綺麗どころの女の子に夢中だもんな」

 

「うぐっ、否定できない・・・・・けどそれは朧もだろ?最近はレイヴェルのことばっかだったし」

 

「はははっ、違いない。だが、揃いも揃って女のことで手一杯とは嬉しいことじゃないか」

 

「確かにな」

 

久しぶりのイッセーとの他愛ない会話。本題ではないが、こういった会話もした二人でしたいと思っていたので、それなりには楽しめる。

 

「それで?本題はなんだ?」

 

リアスから手短にと言われていたので、早めに本題に入ろうと思っていた矢先にイッセーの方から聞いてきた。

 

「驚いたな・・・・本題が別にあるってなんでわかった?」

 

「親友としての勘」

 

か、勘ときましたか・・・・・まあ親友としては嬉しいっちゃ嬉しいな。

 

「それよりも話してくれ。部長も待ってるし」

 

「ああ・・・・お前、木場の様子がおかしいことの心当たり無いか?」

 

「え?木場の?」

 

俺が話すと、イッセーは心底意外といった表情をした。

 

「なんでそんなに驚くんだ?」

 

「いや、朧が男の心配するなんて珍しいなと思って。木場みたいな爽やかイケメンあんまり好きじゃないだろ?」

 

「まあ正直好きではないな。ただまあ、木場に関して言えばそこまで嫌いでもないけど」

 

あいつとも他生の縁って奴が芽生えてるからな。男だがそこまで嫌いってわけでもない。まあ、だからといって普段なら様子がおかしい程度じゃ気に止めないけど・・・・・ラムにも言ったように変に親近感を抱いちまってるからな。

 

「ふ~ん・・・・まあいいけど。木場の様子がおかしいことに関して、心当たりはあるっていえばある。朧が休んだとき、うちでオカ研の会議したんだけど・・・・その時流れで私のアルバム見ることになって」

 

「ああ、あのアルバムな」

 

「ちょっと待って、あのって何?なんで朧が知ってるようふうなの?私朧にアルバム見せた覚えないんだけど?」

 

「おばさんに見せてもらったから」

 

「母さん・・・・・」

 

勘弁してくれといった風に頭を抱えるイッセー。まあそんなに落ち込むな。普通に可愛かったぞ。

 

『そういうこと口に出してあげなさいよ』

 

いや、イッセーの場合火に油になりかねないから。

 

「まあそのことに関しては今は置いておくとして、そのアルバムの写真の一枚を見てからなんだよ。木場の様子がおかしくなったの」

 

「その写真には何が写ってたんだ?」

 

「幼稚園時代の私と同い年の園児の男の子とその親御さん」

 

「特に変わった写真ではないが・・・・・」

 

「まあ私もそう思ってたんだけど・・・・その親御さんがさ、古ぼけた西洋剣を持ってたんだよ。てっきり模造品だと思ってたんだけど・・・・・木場が言うには、それは聖剣らしい」

 

「聖剣?」

 

これは予想外だな・・・・・まさかここで聖剣が出てくるとはな。

 

だが・・・・ふむ。まさか・・・・・

 

「その時の木場の様子はどうだった?」

 

「なんていうか・・・・すごく冷たい目をしてたな。まるで何かを恨んでるような」

 

何かを恨んでるような、か。そういえば木場は、まえのレーティングゲームの時にも相手方の騎士(ナイト)と戦ってたとき、聖剣がどうとかで様子が変わっていたな。

 

聖剣を恨む、か・・・・・まさか木場の奴、聖剣計画の?それで悪魔に?だとしたら、リアスの眷属は本当に事情が複雑なのが多いと言わざるを得ないな。

 

「なあ朧、木場と聖剣って何か関係があるのか?」

 

「なんでそれを俺に聞く?」

 

「その・・・・朧なら何か知ってるかなって。私よりも悪魔のこと詳しいし・・・・朱乃先輩や小猫ちゃんのことも何か知ってる風だったし」

 

そう口にするイッセーは、どこか悔しそうに見えた。おそらく同じ眷属である自分よりも、俺の方が事情に詳しいってことに思うところがあるのだろう。悪魔になってまだ日が浅いのだから仕方ないのだがな。

 

「・・・・・思い当たることはあるといえばある」

 

「それってなんだ?」

 

「・・・・悪いが今は話せない」

 

「どうして!」

 

なぜ教えてくれないのかと、イッセーは声を荒げる。

 

「すまない。思い当たることはあっても絶対そうとは言い切れなくてな。確証のない情報ってのは、あんまりいいものじゃなくてな・・・・特に今回の場合は俺の心当たりと違ったら少々どことじゃなく不謹慎だ。俺としても慎重にいきたいんだよ」

 

「・・・・・それ本当か?」

 

・・・・どうやら疑われてしまっているらしい。まあ、日頃嘘をつきまくってる代償だな。

 

「信じてもらえるかわからんが本当のことだよ。確信できるようになったらちゃんと話すから」

 

「・・・・わかった」

 

とりあえずは納得してくれたようだ。

 

「すまないなイッセー。今は我慢してくれ」

 

「それはまあ、いいさ。朧の言ってることは理解できなくもないし」

 

「そっか・・・・さて、そろそろ戻ろうか。あんまり遅くなるとリアス部長に怒られるし」

 

「部長怒ったら怖いもんな。早くもど・・・・あ、そうだ」

 

部室に戻ろうとするが、イッセーが何かを思い出したように足を止めた。

 

「どうした?」

 

「うちでオカ研の会議してたとき、母さんと父さんがお前が最近うちに来ないってぼやいてたぞ」

 

「おばさんとおじさんが?」

 

まあ、確かにイッセーが悪魔になってからはあまりイッセーの家に行ってないしな。前に言ったとき・・・・冥界に乗り込んだときもおばさんにもおじさんにも会ってないし。

 

「わかったよ。近いうちに顔出す」

 

とはいったものの、正直もう気軽にイッセーの家にいけないんだよな・・・・リアスやアーシアがいるし。

 

「その時は、久しぶりにAV鑑賞しような」

 

「・・・・そうだな」

 

イッセー、それは相当難しいと思うぞ。いや、お前に対する被害は少ないかもしれないが・・・・俺がね。うん。それに俺もう持ってるAV全部捨てたし。レイナーレやレイヴェルがいればそんなもの必要ないしな。

 

でもまあ・・・・・やっぱ暇見つけて行くかな。なんだかんだイッセーと一緒にいる時間は、レイナーレやレイヴェルと一緒にいるときとは違った楽しさがあるしな。

 

『・・・・そうね。せいぜい楽しみなさい。いつまで続くかわからないのだから』

 

・・・・・そうだな。




朧はグレモリー眷属達の事情にある程度詳しいですが、木場のことはあまり知りません

男だからとかそういうのではなく、単純に朧だって何でもかんでも知ってるわけではないからです

それでは次回もまたお楽しみに!


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第42話

今回は朧とソーナのお話になります

書いてて気がつく、俺この二人の絡みが割と好きだ

それでは本編どうぞ


放課後、いつもならイッセーやアーシアとオカ研の部室のある旧校舎に向かうのだが、今日は学校の屋上に来ていた。理由はまあ呼び出されたからなのだが、その呼び出した人物というのは・・・・

 

「どーも生徒会長」

 

駒王学園の生徒会長にして上級悪魔のソーナ・シトリーであった。

 

「こんにちは現世くん。わざわざ来ていただきすみません」

 

「いえいえ、美人なお姉さんからあのような形で呼ばれてしまっては来なければ男がすたるというものですよ」

 

今日の昼休みの時、シトリーはリアスと新しい眷属(リアスはイッセーとアーシア、シトリーは匙)の顔合わせをさせるためにオカ研の部室に訪れた。そのとき、誰にも気づかれないようにこっそりと俺のポケットに手紙を忍ばせたのだ。わざわざそんな手の込んだことしてまで俺なんかと話がしたいだなんてシトリーも変わってらっしゃる。

 

『それにわざわざ応じるあなたもどうかと思うわよ?話の内容だなんてわかりきってるのに』

 

自分が変わってるだなんて自覚してるよラム。ただまあ、せっかくだし付き合ってやるのもやぶさかではないと思ったからな。というかお前は面白そうと思ったから止めなかったんだろ?

 

『当然じゃない』

 

やっぱお前も大概だよ・・・・まあいいけど。

 

「さて、普段ならここで小粋な世間話でもして場を和ませるのが紳士な俺のやり方ですが、早いとこ部室に行かないとリアス部長達に変に勘ぐられてしまうかもしれませんからさっさと本題に入りましょう。頼みを断ったにもかかわらずリアス部長をどうして助けに行ったのかってこと以外なら可能な限り聞きたいことにお答えいたしますよ?」

 

「・・・・・・」

 

ははっ。むっとした表情でジト目で俺のこと見てる。やっぱり図星だったか。シトリーが俺を呼び出す理由なんてそれぐらいしか思い当たらないからな。

 

『わかっていながらあんな言い方するなんてひどい男ね』

 

別にいいだろ。自覚はしてるんだからさ。

 

「あはははっ。一体どれだけのひとが会長のそんな可愛い顔を見たことがあるんでしょうね。会長の眷属達でもそうそう見られなさそうだからこいつは貴重だ」

 

「・・・・どうしても教えてくださらないのですか?」

 

随分とまあしつこいな・・・・というより、ちょっと考えればわかることなのになんでわからないかね。

 

まあいいか・・・・このままじゃしつこすぎて鬱陶しいし、対価をもらって話してやるか。

 

「仕方がありませんね・・・・そこまで言うのなら教えますよ。ただし交換条件です」

 

「交換条件?」

 

「ええ。俺が会長の疑問に答える代わりに、会長は俺の質問に答える。それでどうですか?」

 

「・・・・・あなたの質問の内容によります」

 

まあ、そうだろうな。答えられない、もしくは答えたくない質問なんてされても困るだろうからな。

 

「まあ聞くだけ聞いてみてくださいよ。それから判断すればいいですし」

 

「わかりました。それで?質問というのはなんですか?」

 

「・・・・木場って聖剣計画の関係者なんですか?」

 

それが俺の質問の内容だった。正直シトリー自身のことで聞きたいことはないし・・・・・だったら今気になってる別なことを聞いたほうがいいだろう。リアスの親友だっていうシトリーなら知ってそうだし。

 

「・・・・・どうしてそんなことを私に聞くのですか?リアスに聞けばいいのでは?」

 

「そこはまあ、球技大会で張り切ってるリアス部長にそんなことを聞くのは気が引けてしまいますのでね・・・・というか、少々迂闊ですよ会長」

 

「迂闊・・・・私が?」

 

「ええ。さっきの返しでは俺の質問に答えてるようなものですよ。木場は聖剣計画の関係者だってね。知らない、あるいは答えたくないなら『そうなんですか?』とか『なんのことですか?』とか言って答えるのが普通なのにね」

 

「・・・・・」

 

俺に言われて自分の迂闊さを自覚したのか、シトリーの表情は苦々しげだ。まあ、あえてそうやって判断できるような形で聞いたんだけど。

 

「そう気を落とさないでくださいよ。何を聞かれるのだろうかと身構えていたところを自分と関係ないことを聞かれてしまって気が緩んでしまったついああやって答えてしまったというのは理解していますから」

 

「・・・・警戒している相手に励まされても嬉しくありませんね」

 

「だったら何があっても俺相手に気を緩ませないことです。まあ、難しいかもしれませんがね。幻覚を操る神器を持っているとは言え俺は所詮脆弱な()()だ。純粋な力という点では悪魔である会長よりもはるかに劣っているんですからね。格下相手に警戒し続けるのは中々に難しいですよ?」

 

「・・・・肝に銘じておきます」

 

悪魔と人間じゃ力に差があるすぎるのは明白。神器を持っていたとしても俺は英雄と呼ばれるような超人などではないのだから、警戒が緩んでしまうのは仕方のないことだろう。野生の虎やライオンだって常に小動物を警戒するなんてことしないだろうしな。

 

『確かに同感ね。それで?なんでわざわざ敵対する可能性のある相手にそんな忠告をするのかしら?』

 

決まってるだろ?過度な警戒してる相手が無警戒なやつと同じくらい幻術に嵌めやすいからだよ。

 

『ふふふっ・・・・正解よ。確かにそういう相手ほど嵌めやすいわ。なにせ一々こっちのやることなすこと疑ってくれるんですもの。それがわかってるならいっぱしの幻術使いとしては合格をあげられるわね』

 

そいつはどうも。

 

「さて、と。直接的ではないにせよ、俺の質問には答えてくれたわけだ。俺もあなたの疑問に答えるとしましょう。あなたの頼みを断ったにもかかわらず、俺がリアス部長を助けに向かった理由は簡単。俺自身がそうしたいと思ったからですよ」

 

「・・・・え?」

 

「袖振り合うも他生の縁。同じ部活に所属しているので、リアス部長には情があります。だからついでとはいえ助けようと思っていた。まあ、俺がしたのはサポートでメインはイッセーに任せましたがね。ただ、イッセーが目を覚まさなかったら俺が助けてましたよ。もちろん、レイヴェルの事を一番に優先した上での話ですが」

 

「つまり頼まれるまでもなく助けるつもりだったということですか?なら私のしたことは・・・・」

 

「まあぶっちゃけ無意味ですね。わざわざ唇を捧げてまで頼み込もうとしたあの行動に意味はありません」

 

むしろそのせいで俺の反感を買ってしまったんだからマイナスといってもいいかもな。

 

「というより、俺はあの時あなたの頼みは聞かないとは言いましたが、助けないとは一言も言っていないんですから、それで察することもできたでしょうに・・・・それとも察するだけの余裕もなかったんですか?」

 

「・・・・・」

 

沈黙は肯定、と。ソーナ・シトリー・・・・彼女は間違いなく聡明な女だ。だが、その聡明さを活かしきれていない。まあまだ成人もしていないんだし・・・・・心が未熟なのは当然。粗もあって当たり前だろう。

 

そして・・・・俺もひとのことは言えない粗だらけのガキだ。

 

「・・・・・人間も悪魔も未熟なら大差はない、か」

 

「どういう意味ですか?」

 

「さあ?悪いですがそれに答える義理はないのでね。それじゃあ俺はそろそろ失礼。オカ研の皆にお茶を淹れて差し上げないといけませんので」

 

「・・・・待ってください」

 

シトリーに背を向け、その場をあとにしようとしたが、シトリーは俺に待ったをかけた。

 

「なんです・・・・か?」

 

立ち止まり、シトリーの方に振り返ろうとする俺であったが・・・・突然俺は頬に軟らかい感触を感じた。そして、目の前にはシトリーの顔がある。つまり、俺はシトリーに頬にキスをされたのだ。

 

「・・・・なんのつもり?俺はあんたの頼みを聞いたわけじゃないんだからこんなことされる理由なんてないんだが?」

 

俺の口から出た言葉は、おそらくひどく冷たいものだっただろう。それほどまでに、シトリーのその行為に俺は腹が立っていた。

 

「そうですね。現世くんは私のお願いなど関係なしに、ついでとはいえあなたの勝手な意思でリアスを助けに趣いてくれた。だから私は、そんなあなたに対して勝手にお礼をしたんです。私の勝手なのですから非難される理由はありませんよね」

 

シトリーはどこか勝ち誇ったかのような表情で俺に言う。その表情は、まるで鏡を見ているかのように気味が悪かった。

 

「・・・・ええ、そうですね。その通りですよ」

 

シトリーの言ってる理屈に俺は反論できない、反論しようがない。なにせ自分で前例を作っているようなものだからな。俺は勝手にしたのだから、シトリーだって勝手にしてもいいだろう。

 

「でも、そういうことはメインで助けたイッセーにしてくださいよ。あいつなら会長にほっぺにチュウされれば歓喜してくれますよ?」

 

「わかりました。検討しておきましょう」

 

「・・・・さいですか。では、もう用はありませんよね?俺はこれにて失礼します」

 

今度こそ俺は、シトリーに背を向けて屋上をあとにした。

 

『うふふ・・・・また女の強かさを侮ったわね』

 

うるさい。あんなもん予測できるわけないだろ。

 

『予測できないのなら男としてまだまだな証拠ね。というより、あんな綺麗な女の子にほっぺにチュウされたのに嬉しそうじゃないわね』

 

・・・・それに関しては俺も多少驚いてるよ。まさかこんなにも嬉しくないものだなんてな。

 

『まあそれだけ本命であるレイナーレちゃんやレイヴェルちゃんが大事だって証拠よ。それを再認識できただけでもあのチュウには価値があると思わない?』

 

否定はしないでおいてやるよ。

 

まったく・・・・・なんか無駄に疲れたきがするな。帰ったらレイナーレに甘えるかな。




ソーナは賢いけど細かい心情を読み解くまでは至ってないと個人的には思ってる

まあ、朧は特別わかりにくいというか、読み解きにくいように思えるから仕方ないけどね

ちなみにわざわざほっぺにチュウまでしてるのでソーナは朧の悪っぽいところに惹かれかけてたりしてまう。真面目故の弊害みたいなものだと思っといてください

でも大丈夫。ソーナヒロインはありえないので

それでは次回もまたお楽しみに!


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第43話

今回は球技大会です

前半はギャグというか・・・・朧がめちゃくちゃしてます

まあ、後半はちょっとシリアスですが

それでは本編どうぞ!


今日は球技大会。天気は快晴で、まさに絶好の日和といっていいだろう。私、兵藤一誠が所属するオカルト研究部は優勝を狙って意気揚々とドッジボールに挑んでいるのだが・・・・・断言しよう。一番活躍しているのは朧だと。

 

「ふははははははは!脆弱脆弱脆弱ぅ!そんなヒョロ球でこの俺を仕留めようなど笑止!もっとマシなの投げてこいや!てめぇらそれでも野球部か!」

 

「くそっ、現世の野郎すばしっこい・・・・皆、このまま現世を狙っていても埒があかない!心苦しいが狙いを変えて・・・・」

 

「おやぁ?俺を狙うのやめちゃうの?なに逃げんの?俺相手に逃げるの?こんだけ散々挑発されておいて、一矢報いることもなく逃げるの?うわダッサ・・・・・あ、失礼。しょうがないか~。君たちみたいなモブじゃ俺を仕留めるなんて出来るわけないもんねぇ?諦めるしかないもんねぇ?」

 

「・・・・なんだと?」

 

「あれぇ?気に障っちゃった?ごめんねー。もういいよ。俺のことは諦めてほかの人狙いなよ。そうすれば晴れて君達は『現世朧を避けてほかの美女美少女とおまけのイケメンを当てにいきました』って記憶が頭に残ることになるんだからね。いやぁ・・・・一生忘れられそうにない良い思い出じゃないか。そんな思い出が残せるなんて羨ましい限りだぞ♪」

 

「・・・・・前言撤回!総員、現世を狙えぇぇぇぇぇ!!」

 

「「「現世ぶっ潰す!!」」」

 

「やれるもんならやってみろや三下モブどもが!ハハハハハハ!!」

 

・・・・・試合が始まってからずっと、朧は相手チームを煽りに煽りまくりヘイトを稼ぎ、わざと自分を狙わせてきているのだ。だが、当然朧にボールが当たることはない。流石に学校行事で幻術を使うなどという反則はしていないものの、それを差し引いても朧は悪魔である私たちをはるかに超える回避力を有するのだ。ボールを躱しまくり、甘い球が来たらキャッチして反撃している。正直当たる気がしない。

 

「部長・・・・・朧の奴、絶好調ですね」

 

「ええ・・・・・そうね。ふふふっ・・・・」

 

部長はどこか遠くを見つめながら乾いた笑みを浮かべている。おそらく朧の所業に頭が痛くなるのを通り過ぎるほどに呆れ返っているのだろう。朱乃先輩や小猫ちゃんの方を見ても、何やら呆れたような表情をしている。アーシアは相手チームに同情して何やら申し訳なさそうにしているが。

 

正直、これは酷いと私でも思うが、結果としては朧の煽りが功を奏して戦局はオカ研の絶対的有利となっている。部長もそのことが分かっているがために、呆れてはいるが朧のことを止めないのだろう。というかまあ、今更止めたところで朧が狙われることは変わらないだろうが。

 

「はははっ!どこを狙っているのかね?さっきよりは鋭い球を投げるようだが当たらなければどうということはないのだよ?野球部でこれでは他の部活もたかが知れてるだろうねぇ・・・・この勝負俺の独壇場ではないか!」

 

あ、とうとう試合相手の野球部以外も煽りに行きやがった。試合を見てた他の部活の連中がこめかみに青筋浮かべているのがはっきり見える。

 

「くくくくくっ・・・・・このまま一度も当たらずにいれば、リアス部長や朱乃先輩、アーシアや小猫ちゃんから俺は・・・・にゃは!これは楽しみですな!」

 

「「「「現世をぶっ殺せぇぇぇぇぇ!!お姉様達の貞操を守るんだぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

ああ、部長達の名前を出したことにより学園の7割以上の生徒の怒りが頂点に達してしまった。これはもう、以後の試合全てで朧は集中狙いされるだろうなぁ・・・・朧の言ってることが嘘だと思わず踊らされてしまうなんて可哀想な人達だ。これ絶対に朧の作戦なのに。

 

実際、部長達となにか約束があるわけでもないし、さっきの言動だって具体的に何をしてもらうとか言ってないから後でいくらでも言い訳やら誤魔化しがきく言い回しだ。

 

「イッセー・・・・・勝てればなんでもいいような気がしてきたわ」

 

そうですね部長。ここまで来たら・・・いや、私ははじめから吹っ切れてましたよ。だって、朧が参加してるんだもの。あいつが勝つためならえげつない手段を平気で選ぶだなんてわかりきってたもん。まあ、その手段で私達が狙わるるようになることが一切ないのはある意味朧らしくはあると思うけれど。朧って変に優しいところあるし。

 

ただ・・・・

 

(やっぱり・・・・あれって気を遣ってるからでもあるんだろうなぁ)

 

私は分かってしまった。朧が必要以上に煽って自分に注目を集めている理由を。朧が・・・・時々木場の方に視線を向け、その度にため息をついて相手を挑発するような言動をしていることに私は気がついている。

 

試合が始まってから・・・・いや、それよりも前から、木場はずっと上の空だ。球技大会などどうでもいいといったようにぼんやりとしている。きっと朧は今の木場では大した活躍はできないと・・・・狙われでもしたらいとも容易くやられてしまうと思い、それで木場に注意を向けさせないためにああして煽りまくっているのだろう。

 

あの朧が男にあそこまで気を遣うなんてな。もしかして木場の抱えてる問題のことなにかわかって朧は・・・・

 

「てかそれだけ投げといて一発も当てられないとか雑魚すぎワロタ(^Д^)ねえ、今どんな気持ち?ねえ、どんな気持ち?NDK?NDK?」

 

「「「現世ぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

・・・・うん、きっと木場のこと気遣ってなんだよな?それとオカ研を勝たせるためになんだよな?朧自身の愉しみとか愉悦とかそういうのじゃないよな・・・・朧?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・朧、言いたいことはないかしら?」

 

「ふっ、流石は上級悪魔、ソーナ・シトリー率いる生徒会チームだ。この俺にボールを当てるだなんてやるな。これはうかうかしてられませんよリアス部長?」

 

「転んだところを当てられて何をかっこつけてるのよ!」

 

球技大会が終わり、オカ研の部室にて朧は部長からお説教を受けていた。生徒会チームとの決勝戦、あれだけ煽りに煽っていた朧は見事に当てられた。調子に乗って動き回っていた朧は足元の小石に躓いて転び・・・・・その隙をついた生徒会の匙が朧にボールを当てた。その際、なんか妙に力が入っていたような気がする・・・・あれはさんざん煽られてイラついたのが原因だけじゃないように私は思う。

 

まあともかく、現在朧はあれだけ大口叩いたくせに情けなく当たってしまったというわけだ。

 

「あなたという子は本当に・・・・」

 

「いやぁ、当てられたことは申し訳ないと思ってますけどしょうがないじゃないですか。俺だって人間なんだからそれぐらいのミスしますよ?」

 

「つまらない嘘はやめなさい。当てられたのがわざとだっていうのはここに居る全員がわかっているのよ?」

 

「・・・・・・エ?何ヲ言ッテルンデスカリアス部長?ナンノコトヤラワカリマセンヨ?」

 

部長から視線を逸らし、明らかな片言で告げる朧。どう見ても図星だ・・・・まあ、誤魔化すのは無理だと判断してわざとわかるようにしているのだろうが。

 

「やっぱりそうなのね・・・・・あなたのことだから、最後の最後で当たって皆の怒りを収めて尚且つ球技大会を盛り上げようって魂胆だったのでしょう?」

 

「ドウデショウネー?」

 

カタコトでしらばっくれる朧。やっぱりそうだったのか。あのまま朧がボールに当たらずに終わっていたら、煽っていたのが朧だとはいえ、私達オカ研自体を良く思わない輩が出ていただろう。朧はそのことを理解しているがゆえにわざと当たって皆の怒りを沈め、同時に『朧にボールを当てる』という学園の生徒過半数以上のある種共通した目的を達成させることで球技大会そのものを盛り上げたのだ。もちろん、自分が当てられてもオカ研の勝ちがほぼ確定した状態を作った上でだ。

 

よくもまあ、こんなにも気を遣えるものだと思う。おそらく今回の球技大会、部活対抗戦においてはほとんど朧が思い浮かべたシナリオ通りにことが運んでいただろう。

 

「朧・・・・あなたが私達のことを気遣ってくれているということ自体は嬉しく思うわ。だけど、その為にあなたが進んで嫌われにいくのは嬉しくないわ。あなただってオカルト研究部のメンバー・・・・私の眷属でなくとも、大切な仲間だと私・・・いいえ、私だけではなくここに居る全員が思ってるのよ?」

 

「大切な仲間?ご冗談を。俺はただの同じ部に所属してるってだけの人間ですよ?部に所属してる理由はイッセーとアーシアの二人だけのためだ。あなたが俺のことを仲間だと思うのは筋違いでは?」

 

「またそんなことを言って・・・・・」

 

朧の言動に、部長は呆れたように額に手を当てる。それが嘘だとわかっているからだ。確かにはじめは私やアーシアの二人だけのためだったかもしれない。けど、普段の行いやフェニックス家のことを思い返せば今はそうじゃないことが私にだってわかる。

 

私達はよく、朧に普段の行いが悪いみたいな言い方をしているが、実際はそう思ってなどいない。普段から朧は雑務等で私達のフォローをしてくれる。はぐれ悪魔の討伐の時だって幻術を使って協力してくれているし・・・・普段の行いは悪いどころか相当良いことは全員わかっている。

 

極めつけはフェニックス家との問題の時だ。レーティングゲームの際には朧なりに策を考えて私達にそれを伝えてくれたし、レイヴェルのついでとはいえ部長を助けに冥界にまで乗り込んだ。

 

そんな朧に対して、私達が悪感情を抱くはずがないし、朧自身私達のことを一定以上大切に思ってくれているだなんて明白だ。

 

それなのに朧はあんな言い方を・・・・・素直じゃないというか皮肉屋というか・・・・

 

「・・・・もういいわ。これ以上何を言っても無駄でしょうし・・・・朧、今日はお疲れ様」

 

「いえいえー。ただ自分が楽しみたかっただけなのでお気遣い無くー」

 

これ以上何を言っても無駄だと判断した部長は、朧を労って話を切り上げた。対する朧も、それに乗っかりこの話はここまでとなった。

 

「さて、次は・・・・・祐斗」

 

部長は木場の方に視線を向ける。その視線はいささか鋭く見える。

 

「・・・・なんですか部長?」

 

「なんですかって・・・・・本気で言っているの?」

 

部長の視線がさらに険しくなる。敢えて具体的なことを言わないのは、朧が木場のことを気遣っていたということを部長も気がついていたからだろう。朧の手前、頭ごなしに木場を叱りつけることができないのだろう。

 

かく言う私も・・・・木場に色々と言ってやりたいことはあるのだけれど、朧があそこまで気を遣っていたことを思うと何も言えなくなってしまっている。

 

「・・・・昼間はすみませんでした。どうにも調子が悪かったようです。少々疲れているみたいなので普段の部活は休ませてもらいます。夜の活動はちゃんとしますので」

 

そう言って、木場は私達に背を向けて部室を去っていった。

 

「木場・・・・・本当にどうしちゃったんだよ」

 

明らかに様子のおかしい木場・・・・今の木場を見ているとたまらなく不安に駆られる。基本的に男よりも女のほうが好きな私でも、心配してしまう。

 

「・・・・・よほど根は深いということか。まあ、聖剣計画に関わってしまってるんだから仕方がないだろうが」

 

「「聖剣計画?」」

 

なにかを知っているかのように呟く朧。私とアーシアは『聖剣計画』という聞いたことのない言葉に首を傾げ、部長と朱乃先輩、小猫ちゃんはそれを朧が知っていることに驚いている様子だった。

 

「朧・・・・どうしてあなたがそれを?」

 

部長がどうしてそれを知っているのかと朧に尋ねる。

 

「計画のこと自体はあのひと一緒にいた時に・・・・まあ話をちょっと聞いたことがあるぐらいですが。ただ、計画に木場が関わっているということは生徒会長に聞きました」

 

「ソーナに?」

 

「ええ。木場と聖剣の間に何かあるってことはイッセーに聞いたので、もしかしたらと思って彼女に確認してみたんですよ」

 

「なぜ私に聞かずにソーナに聞いたのかしら?」

 

「球技大会で張り切ってるリアス部長に聞くのは気が引けたので。あとはまあちょっとした流れでそうなったのですが・・・・・まあ、それは置いておいて、俺のことよりも、イッセーとアーシアに聖剣計画のこと教えてあげたらどうですか?二人共知りたがってるようなので」

 

ちらりと朧は私とアーシアの方を見やる。

 

「それじゃあ俺もこれで」

 

「え?朧帰っちゃうの?」

 

「帰るというかなんというか・・・・木場にちょっとな。今はリアス部長やイッセー達よりも、俺が行ったほうが良さそうだからお節介焼いてくるよ。あ、今日の分のお茶請けのお菓子は置いておくからそこは安心してくれ」

 

そう言って朧は鞄からお菓子の入った袋を取り出し机に置き、木場を追って部室から出て行った。

 

朧・・・・木場のこと頼んだぞ。

 

 




復讐心という親近感を抱いているせいか朧は木場を気遣いまくっています

こういうところが朧の人間らしい甘さなのでしょう

ちなみに球技大会での煽りは4割ぐらいは楽しんでやってました。残り6割は気遣いです

それでは次回もまたお楽しみに!


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第44話

今回のお話のテーマは『復讐』になります

そこまで暗くてシリアスにはなってないとは思いますが・・・・

それでは本編どうぞ


「水も滴るいい男・・・・・今のお前を見たら、何人の女が胸キュンするだろうな?いや、実に羨ましい」

 

旧校舎前で、土砂降りの中傘もささずに濡れに濡れた木場を見つけた俺はそう言ってやった。もちろん俺は傘さしてるがな。雨に濡れるのなんて嫌だし。

 

「・・・・・なんのようだい朧くん?」

 

「用がないと話しかけちゃダメなのか?俺とお前の仲じゃないか」

 

「おかしなことを言うね。僕と君の間に親しみなんてものななかったと思うけど?そもそも君は僕のこと嫌ってるんじゃないのかい?」

 

「別に嫌っちゃいないさ。同じ部活に所属してるんだから一定以上の仲だとは思ってるぞ?まあ、オカ研の中じゃ一番好きじゃないけど。お前男だし」

 

まあ、もしも男装女子とかだったらもうちょい好きになってたかもしれないけどな。ぶっちゃけ木場って性転換しても結構いい線いくレベルだと思うし。

 

『そうなったらハーレム候補に入っていたかしら?』

 

あるいはそうかもな。まあ、そんな仮定に意味はないけど。

 

「正直だね。朧くんのその正直さ・・・・少し羨ましいよ」

 

「あははははっ!嘘つきな俺の正直さとか矛盾してるな。面白い言い回しだ。まあそんなどうでもいいことは置いておいてと・・・・・確かにお前のことは好きではないが、それでも最近は俺、お前に親近感を抱いてるんだぜ?」

 

「・・・・・どう言う意味だい?」

 

「聖剣計画」

 

「ッ!?」

 

おっと、聖剣計画の名前が出た瞬間目つきが変わったな。怒りと悲しみ、憎悪に染まった・・・・・復讐者の目だ。

 

「どうして君がそれを?」

 

「まあそれは色々あってな。面倒だから説明省くけど。まさかお前があの計画の生き残りだとはな・・・・・いや、生き残りって言い方は違うか。お前は転生悪魔なんだからな」

 

「・・・・そうさ。聖剣に適応できなかった僕は・・・いや、僕達は処分された。僕だけが運良く瀕死のところを部長に悪魔として転生させられたんだ」

 

「だから復讐を誓っている・・・・か。復讐の対象は教会か、聖剣か、あるいはエクスカリバーか・・・・・まあいずれにしてもお前の憎悪は相当なものだろう。気持ちはよくわかるよ」

 

「わかる・・・・だって?ふざけるな!」

 

木場は神器・・・・魔剣創造(ソード・バース)で剣を作り、俺の首筋にそれを突き立てた。

 

「君に僕の何がわかるって言うんだ!僕の人としての人生は聖剣に、あの計画に壊された!その僕の怒り、悲しみ、憎悪、復讐心・・・・君に何がわかるって言うんだ!」

 

ははっ、怒ってる怒ってる。まあ、軽はずみに言われたと思ってるみたいだから起こるのも無理ないか。だがまあ・・・・・残念ながら、俺にはわかっちゃうんだよな。なにせ・・・・

 

「殺したいほど憎い奴がいる」

 

「・・・・え?」

 

「ただ殺すのも生ぬるい。苦痛と絶望に染め上げ、許してくれと懇願させるほどに追い詰めた上で殺してやりたい程に憎い相手が・・・・・俺にはいるよ」

 

「・・・・それはいつもの嘘かい?」

 

剣を持つ手の力をわずかに緩めながら、木場は俺に尋ねる。

 

「そうじゃないってことぐらい俺の目を見ればわかるだろ。今の俺の目・・・・多分お前と同じだと思うぞ?」

 

「・・・・・」

 

何も言い返さず、剣を下げる木場。俺の目を見てわかったんだろうな・・・・俺もまた復讐者だって。

 

「奪われたんだ・・・・・かけがえのない幸せを。何にも代え難い大切なものを・・・・俺は奪われた。だから奪ったやつを許さない。許すことなんてできるはずがない。出会うことがあったら・・・・必ず復讐してやると心に誓っている。だから俺はお前の復讐を否定なんてしないさ。むしろ応援しているぐらいだからな」

 

「僕の復讐を応援、か・・・・君が初めてだよ。僕の復讐を肯定してくれたのは」

 

「肯定するに決まってるだろ。リアス部長やイッセー達がどう思ってるかは知らんが、そもそも復讐心ってのは否定するべきものじゃない。復讐に意味なんてないって言う奴もいるが、それは復讐すべき相手がいない・・・・憎悪を知らない奴の戯言さ」

 

復讐しない限り、心に巣食う憎悪は消えない。それは苦しいことだ。その苦しみを晴らすためってだけでも復讐に意味はあるさ。

 

「ということで、木場の気持ちがわかる俺としては、一刻も早く復讐がなされることを祈ってやろうと思ってるよ。ただ・・・・・」

 

「ただ・・・・なに?」

 

「一つ忠告をしておこう。復讐を肯定したが俺はそれと同じように幸せも肯定している。幸せってのは何よりも尊いものだり、俺やお前のような復讐者だって幸せになる権利はあるし、それをみすみす手放すのは愚かだと思っている」

 

「・・・・何が言いたいんだい?」

 

「いちいち聞き返さなくてもわかっているだろう?ここ最近のお前は自分の幸せを放棄してるように見えるんでそれがちょっとムカついてな。だから言わせてもらう・・・・幸せと復讐は同居できる。だからどっちも怠るな。復讐には意味があり、幸せには価値がある・・・・それを忘れるな木場祐斗」

 

「・・・・・」

 

俺が告げると、木場は何も言い返さずに俯いた。おそらく、木場は思い返しているのだろう。リアス・グレモリーの眷属『木場祐斗』としての生活・・・・幸せを。

 

「俺が言いたいことは以上だ。じゃあな。また明日」

 

何も言わない木場に背を向け、俺はその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイナーレはさ、俺やイッセー達に復讐したいと思うか?」

 

「・・・・は?」

 

髪をブラッシングしながら尋ねると、レイナーレは訳がわからないといったように短く声を漏らした。

 

「いきなり何を訳のわからないこと言っているのよ?」

 

「いや、なんていうか・・・・・レイナーレって俺に殺されてるだろ?イッセー達には計画の邪魔されてるし。だから復讐したいとか思ってるのかなぁと」

 

「ふーん・・・・そんなことを思ったのは、この間見た悪夢が原因かしら?」

 

「それも原因の一端だと言っておこう」

 

まあ、木場のこともあるからこの言い方で間違いはないだろう。

 

「それで?実際のところどうなんだよ?」

 

「そうね。はっきり言えば・・・・」

 

「はっきり言えば?」

 

「正直どうでもいいわね」

 

レイナーレの答えは、俺の想像以上にあっさりしたものであった。

 

「お前を殺した俺や、追い詰めたイッセー達のことが憎くないっていうのか?」

 

「別に憎しみを抱いてないわけじゃないわ。あなたや兵藤一誠達のことは憎いし、その感情は今後消えることはないと自信を持って言えるわ」

 

・・・・自分から聞いておいてなんだが、結構ダメージはいるな。まあ、俺も堕天使であるレイナーレに全く憎しみを抱いていないわけでもないからお互い様といえばお互い様だが。

 

「憎しみを抱いているならなんで復讐しようと思わない?」

 

「簡単よ。私は今の生活に満足している。だから復讐しないのよ。復讐なんてしたら、今の生活が終わっちゃうじゃない」

 

「憎しみを晴らすよりも現状維持の方が大事ってことか?」

 

「そうよ。癪だけど、今の生活は『神の子を見張るもの(グリゴリ)』にいた時よりも充実している・・・・有り体に言えば幸せだわ。それを壊してまで復讐することに私は利点を見いだせない。復讐しない理由なんてそれで十分だわ」

 

『彼女の言い分もわからないでもないわね。復讐に意味があるといっても、それで幸せという価値を失ってしまうのなら諦めてしまっても仕方がないわ』

 

ラムの言うとおりだ。復讐と幸せは同居できるが、それは幸せの内容によっては必ずしもというわけでもないしな。

 

「まあ、そもそもの話あなたに復讐しようとしても無理でしょうしね。どうせ殺せないわ」

 

「はははっ。まあ、俺もレイナーレに殺されるつもりはないから」

 

『うふふっ。その言葉、どこまで本気なのかしらね?』

 

さあ?どこまでだろうな。レイナーレになら殺されてもいいと多少は思わなくもないのは確かだし。

 

「そういうあなたはどうなのよ?」

 

「ん?どうって?」

 

「母親を1年間も犯した挙句殺した堕天使に・・・・復讐したいとは思っていないの?」

 

復讐したいとは思っていないのかねぇ・・・・・何を聞くかと思えば。

 

「復讐したいに決まってるだろ。憎くて憎くて堪らないんだからな。もっとも、相手が相手なだけにそう簡単に会えるわけでもないから復讐の機会なんて来るかもわからないがな」

 

「そう・・・・ちなみに、その相手っていうのは誰?」

 

「・・・・・どうしてそんなことを聞く?」

 

「別に。ただの興味本位よ。私の知ってる奴かもしれないし」

 

興味本位ねぇ・・・・まあ、レイナーレが知りたがる理由なんてそれ以外ないか。同じ堕天使である自分が知ってる奴かどうかは普通に気になるだろうし。

 

『本当にそれだけかしらね?』

 

どう言う意味だよ?

 

『さあ?どう言う意味かしらね♪』

 

わけわからん・・・・・まあいいか。それよりも、せっかくだしレイナーレに教えてやるか。個人的には名前も出したくないんだが一緒に住んでる上本命でもあるしそれぐらいの義理はある。

 

「そんなに知りたいなら教えてやるよ。多分・・・・というよりレイナーレでも確実にそいつのことは知ってるだろうさ。なにせ―――――だからな」

 

「・・・・え?」

 

その名前を教えてやると、レイナーレは驚いた様子を見せる。まあ、当然だろう。奴は堕天使の中でも有名だからな。

 

「流石に驚いたか?」

 

「ええ・・・・でもまさか―――――だとは思わなかったわ。そういうことには興味ないと思っていたし」

 

「ふーん。レイナーレにとってはそういう印象なんだな。まあ、それだけ母さんが魅力的だったということだろう。息子の贔屓目抜きにしてみても母さんかなりの美人だったし」

 

母さんレベルの美人なんて世界中探してもそうはいないと断言できる。だからこそ、捕らえら、犯されてしまったんだが。

 

「まさかよりにもよって―――――だなんて・・・ちっ」

 

「レイナーレ?」

 

忌々しげに舌打ちするレイナーレ。よりにもよってって・・・・どういう意味だ?レイナーレと―――――の間に何かあるのか?

 

「・・・・なんでもないわ。それよりも髪の手入れ雑になってない?」

 

こちらを振り返るレイナーレが、不満気に言ってくる。

 

「何を言う。いくら話をしているとはいえ、この俺がレイナーレの髪の手入れを疎かにすると思っているのか?今日もいつも通りバッチリだ。見くびってもらっては困る」

 

「ああ、そうだったわ・・・・あなた無駄に器用だったわね」

 

「無駄言うな。フェチを極める上では必須技能なんだから」

 

「はいはいすごいすごい」

 

うっ・・・・レイナーレ、なんかだんだん俺のあしらい方が上手くなってる気が・・・・

 

『気のせいじゃないわよ?いい加減慣れてきたんじゃないかしら?』

 

慣れるほど親交を深められたことに喜ぶべきか悲しむべきか・・・・

 

『そこは喜んでおきましょ』

 

ま、そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奴か・・・・―――――が朧の母親を

 

―――――が朧を苦しめ、朧を悲しめ、朧を絶望の淵に叩き込んだ

 

―――――が・・・・・・私の朧を

 

許さない

 

絶対に許さない

 

いつかこの手で――――を

 

必ず・・・・・・殺してやる

 




とうとうレイナーレは朧の復讐相手の名を知りました

一応隠してはありますが・・・・・まあ読者には誰かはもうわかってると思います

そして最後のモノローグが意味するものは・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第45話

今回はラムのことが少しわかります

本当にロクでもない・・・・

それでは本編どうぞ


「はあはあはあ・・・・・」

 

「100発当てるのにおよそ5分・・・・随分とまあ成長したじゃないか」

 

放課後、他のオカ研メンバーが部活動に勤しむ中、俺はイッセーと一対一で模擬戦をしていた。イッセーたっての希望で、リアス部長に許可をもらって旧校舎の外の開けた場所で行っていた。

 

「くっそ・・・・ベチャベチャだ」

 

体中至るところについているペンキを見ながら、げんなりした様子で言うイッセー。イッセーを染め上げてるペンキはもちろん、俺の銃から放たれた幻のペイント弾によるものだ。俺の勝利条件はペイント弾を100発当てる。イッセーの勝利条件は俺に一撃当てること。その条件で行われた模擬戦は・・・・5分で決着がついた。

 

「前は3分持たなかったが、今は5分だ。十分な成長率だ。お前は確実に強くなってるよ」

 

俺は幻術を解除しながら言う。イッセーについていたペンキは綺麗さっぱり消えてなくなった。

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいけど・・・それでも正直凹む。一発も当てられないなんて・・・・」

 

「別に凹むことはないさ。このルールで勝負すれば、駒王学園で俺に勝てる奴はいない。そもそもが俺にとって有利すぎるルールなんだからな」

 

100発当てられる前に一撃入れればいい・・・・それだけ聞けば簡単に思われるかもしれないが、いかんせん攻撃に当たらないことに関して俺は絶対の自信を持っている。そもそもがこの体は()()は普通の人間のものなんだ。一撃でももらえば致命的・・・・そういう戦いをしてきた。だから俺に攻撃を当てることなんて・・・・

 

『違うでしょう?』

 

ラム?

 

『一撃でももらえば致命的?そうじゃないでしょう?今のあなたは大抵の攻撃では致命傷にならない。なにせその体は人間のものであると同時に・・・・うふふふ』

 

・・・・・ちっ。嫌なこと言ってくれるなよ。あんまり意識したくないんだから。

 

『でしょうね。意識すれば思い出してしまうものね。自分が今どういう存在なのか。そしてそれ故に、あなたは攻撃を受けることを恐れ、避けている。死を・・・・思い出してしまうから』

 

ラムに言われた瞬間、俺は思い出してしまう。あの時の瞬間・・・・あの時の光景を。忌々しい・・・・記憶を。

 

「・・・・朧?」

 

「ん?どうしたイッセー?」

 

「それはこっちのセリフだ。なんか怖い顔して考え込んでたけどどうかしたのか?」

 

「ああ、ごめん。昨日見たAVがあまりにもハズレだったから怒りがこみ上げてきて・・・・」

 

「気持ちはわかるけどなんで今!?」

 

ものすっごい適当に言った嘘なのに、イッセーは簡単に信じてくれた。それもこれも俺の普段の行いおいうか性格というか性癖のおかげというものだろうか。というより、気持ちはわかるとかさすがはイッセーだ。

 

「まあそれはそうとして、なんで急に俺に模擬戦の相手を頼むんだよ?俺とやるのは結構ストレス溜まるから嫌だって言ってなかったか?」

 

あらゆる攻撃を回避され、煽られまくるという理由でストレスが溜まるらしく、イッセーは俺との模擬戦があまり好きではなかった。それなのに突然俺に模擬戦頼んでくるとは何かあると思わずにいられない。

 

「あー・・・・・・実は昨日ドライグと少し話をしてさ」

 

「それってお前の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に宿る意思とってことか?」

 

「ああ、そうだ。それで、ドライグに言われたんだ。私はいずれ宿敵である白い龍・・・・白龍皇と戦うことになるって」

 

「赤龍帝と白龍皇の因縁は相当深いらしいからな・・・・現赤龍帝であるお前がいずれ白龍皇と戦うことになるのは当然といえば当然だな」

 

まあ、運が悪いことにその現白龍皇ってのが間違いなく歴代最強って言えるくらいに強い事なんだが・・・・正直イッセーには同情する。

 

『彼は本当に強いものね・・・・あるいは全盛期のアルビオンに迫るかもしれないわ』

 

マジチートだな。

 

「だが、その話と俺との模擬戦はあまり関係なくないか?俺と模擬戦したところで白龍皇対策にはならないだろ」

 

「まあそうなんだけど・・・・ドライグが言うにはある意味白龍皇よりも厄介な奴がいるらしくてさ」

 

・・・・ん?それって・・・・

 

「あの白龍皇より厄介?俺には想像もつかないな・・・・一体どんなのだ?」

 

「幻龍ラム・・・・・その神器を持つものだそうだ」

 

あ~・・・・やっぱりか。俺のことじゃねぇか。これはちょっと面倒だな・・・・

 

「幻龍ラム?聞いたことないが・・・・名前からしてその神器ってのは幻を操る類のものなのか?」

 

「ああ。ドライグが言うには幻に関連する神器の中では最も面倒らしい。だからその対策として朧に模擬戦を頼んだんだ」

 

「なるほどね。その幻龍対策のためか。そういうことなら納得だが・・・・・そのラムってのはドライグとはどういう関係なんだ?何もないのに厄介だなんて言わないだろ」

 

『あら?わかっててそれを聞くの?』

 

しょうがないだろ。一応とは言え形だけでも知らない振りをしないといけないんだから。

 

「ラムっていうのはなんでもドライグがまだ神器に封印される前・・・・二天龍の戦いを煽りに煽って盛り上げてたドラゴンらしい」

 

「なにそれタチ悪い。何の目的で煽ってたんだよ・・・・」

 

「なんでも自分の愉悦の為らしい。ラムってのは快楽主義者で、自分が楽しそうだと思うことにはさんざん首を突っ込むロクデナシだってドライグは言ってたよ」

 

おい、言われてんぞ?

 

『ふふふっ、そんなに褒められると照れちゃうわね♪』

 

うん、ここでその返しができるのは流石だわ。

 

「だが、それだけ聞くと別に厄介というわけではなくないか?話を聞く限りは煽ってただけで余計なことはしてないみたいだし」

 

「途中まではそうだったらしい。だけど・・・・最後の最後で悪魔、天使、堕天使達に協力して二天龍が神器に封印されるきっかけを作ったらしいんだ」

 

・・・・・改めて聞くとお前最低だな。さんざん煽った挙句裏切って神器に封印するのに協力したとか酷すぎるだろ。

 

『だってあの戦いに飽きちゃったんですもの。だから神器に封印してその持ち主の人間同士が戦うのを見てるほうが楽しいかなぁと思って。それと、()()のドラゴンである私があの二天龍を嵌めるだなんて面白そうだったし』

 

いい性格してるよお前は・・・・・・まあ、その気持ちが少しでもわかるから俺も大概だけど。

 

「それを聞くとマジにそのドラゴン、ロクでもないな。というより、そのドラゴンも神器に封印されてるっぽいけどそれは・・・・」

 

「二天龍を封印したあと、ラムも危険とみなされて封印されたそうだ。正直ロクでもないドラゴンだったとは言え協力してくれた龍を封印ってのは少し酷いとは思うけど・・・・」

 

『別にそうでもないわよ。自分の厄介さは自覚していたわ。まあ、もともそそのつもりで協力してたたし・・・・もしも封印してくれなかったら聖書の神に直談判していたわ』

 

お前も大概変わってるよな・・・・

 

『だって神器になった二天龍の戦いを愉しむなら私も神器になるのが一番だと思わない?実際そこそこ楽しめているし』

 

歴代の赤龍帝と白龍皇、それとお前の所有者達に俺は全力同情するぞ。

 

「あー・・・・まあだいたい察したよ。神器になっても戦い続ける二天龍に、幻龍は神器になってまでちょっかいかけまくってるってことだろ?多分所有者を難癖つけて丸め込んで」

 

「ああ。ドライグはそう言ってたよ。実際問題結構洒落にならない迷惑を被ったらしい。ドライグが勝ちそうだったところを妨害して向こうを勝たせたり逆もあったり・・・・どうやったか他のドラゴン10体ぐらい呼び寄せて戦いをめちゃくちゃに崩壊させたこともあるらしい」

 

全力で楽しんでるのな。

 

『当然♪』

 

「つまり、イッセーは幻術使いの俺と模擬戦をしてその厄介な幻龍に対抗しようって思ったのか?」

 

「まあそういうこと。正直ドライグの話だと白龍皇より面倒くさそうだし・・・・そんなのに面倒事起こされたら堪らないからさ。もういっそやられる前にやったほうがいい気がした」

 

「まあ同感だな。その手の奴は好きにさせると害にしかならん」

 

『それ自虐?』

 

・・・・・ラム、お前ちょっと黙れや。

 

「ただ、対策立てたいなら今のままじゃ話にもならないぞ?俺程度に手も足も出ないんじゃその幻龍には逆立ちしたって一泡さえ吹かせられん。もっと精進したほうがいい」

 

「うっ・・・・わかってる。だからこうして朧に模擬戦頼んでるんだろ?」

 

「まあそれもそうか。なら、ちゃんと対策取れるようにもう一戦・・・・と言いたいところだが、そろそろ時間じゃないのか?」

 

「え?あ、ホントだ」

 

俺に言われ、携帯で時間を確認するイッセー。このあと、イッセーは朱乃のところに行って、ドラゴンの力を吸い出してもらうことになっている。そうしないと、以前ライザーとの戦いで変化してしまったドラゴンの腕がむき出しになってしまうらしい。

 

ちなみに、その手段というのが結構エロいらしく、イッセーは大変約得なようだ。

 

「それじゃあ今日の模擬戦はここまでだな。まあまたいつでも付き合ってやるよ」

 

「サンキュ朧。それじゃあまた後でな」

 

そう言ってイッセーはその場を立ち去っていった。

 

「・・・・・なあラム、どう思う?」

 

イッセーの気配が完全になくなったあと、俺はラムに尋ねてみた。

 

『まあ、あの話が出てきたということはドライグにはバレてるかもしれないわね。あなたが私の神器・・・『幻龍の戯れ(ボーダーレス・ファンタズマ)』の所有者であることが』

 

幻龍の戯れ(ボーダーレス・ファンタズマ)・・・・それが俺の神器の本当の名前。俺が幻龍である証であった。まあ、幻龍と呼ばれるのは好きではないのだが。

 

「ということはドライグ経由でイッセーにはバレてるかもしれないってことか。さっきの話はそれが本当かどうか探るためってとことか?」

 

『かもしれないわね。けどまあいいんじゃないかしら?この秘密は別にバレてもそこまで問題じゃないでしょ?』

 

「まあそうだな。ほかにバレたくない秘密はいくらでもあるが・・・・お前のことがバレた程度どうってことないよ。適当に誤魔化す手段もいくらでもあるし。たとえで赤龍帝と因縁がある幻龍であることを親友であるイッセーに知られたくなかったとか・・・・それだけでも言い訳としては上等だ。十分に誤魔化せる」

 

『あるいは私に脅されていたとかでもいいんじゃない?』

 

「そうだな」

 

まあ、今言ったみたいに誤魔化す手段はいくらでもある。面倒事を避けるためにラムのことは言わなかったが、バレたらバレたで別に構いやしないのだ。

 

『でもまあ、実際問題どうなのかしらね?イッセーちゃんに私のことがバレたのかそうでないのか・・・・あら?これってそこそこの愉悦案件かも?』

 

それさえも愉悦にするのか。かなわないなお前の快楽主義っぷりには。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・なあドライグ。本当に朧が幻龍なのか?」

 

朱乃先輩のいる部屋に向かう途中、私は神器の中にいるドライグに尋ねてみた。

 

『確実とは言えないがおそらくな。奴の幻術の使い方はラムのそれに似ている。何よりラムに似て相当な嘘つきのようだからな』

 

あくまでもドライグは朧が幻龍であると疑っているようだ。ただまあ、ドライグの話は結構信憑性があって・・・・私も朧が幻龍ではないかと思ってしまっている。

 

ただまあ・・・・

 

「ドライグ。朧が幻龍だとしても、今までお前に迷惑をかけてきたドラゴンの神器の所有者だとしても、私は朧のことを信じてるよ」

 

たとえ朧がなにものであろうと私は朧を信じている。朧が自分が幻龍であることを隠してたとしても構うものか。朧は私の親友なんだから・・・・・だから私は朧を信じる。

 

『まあ、奴を信じる信じないはお前次第だ。俺はそのこと自体はとやかく言うつもりはないさ。だが・・・・お前はいつか奴に裏切られることがあるかもしれない。それが幻龍というものだからな。そのことは頭の片隅に入れておくといい』

 

「・・・・・わかった。だけど、朧が私を裏切ることなんて絶対ないさ」

 

絶対に・・・・・きっとそんなことはない

 

私はそう信じている




あくまでも朧を信じるイッセー。だけどその実朧はイッセーを殺したレイナーレと生活を共にしており、さらには重大な秘密をいくつも抱えていて・・・・

はたして二人の友情はどうなるのか、乞うご期待

それでは次回もまたお楽しみに!


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第46話

今回はゼノヴィアとイリナが登場します

この章のこれまでの話がフラグを建てるものであるなら、ここからの話はフラグを回収するものとなります。多分。

それでは本編どうぞ


『さて、随分とまあ面白い状況になっているわね』

 

ラムは今の状況を楽しむかのような声色で言う。

 

放課後のオカ研の部室にて・・・・現在、部室に備え付けられているソファには教会から来た二人の女戦士が二名腰を下ろしている。なんでも、この町を納めるリアスと何らかの交渉がしたいようだ。

 

驚くことに、二人のうちの一人はイッセーとは昔馴染みらしい。昨日イッセーの家に訪れた彼女はおばさんと談笑していたようだ。現在悪魔であるイッセーとしては気が気でなかっただろう。そしてそのイッセーの主たるリアスも相当心配しただろうな。

 

『それにしても、教会の人間が悪魔と交渉だなんて・・・・・どういう風の吹き回しかしらね?』

 

さあな。教会の人間は悪魔を嫌っている・・・・というより、倒すべき害悪として見ている連中だ。それなのに交渉がしたいとはよほどのことが起きてるのだろう。

 

ただその交渉云々もそうだが・・・・木場のことが気がかりだ。二人のことを怒気を孕んだ目で忌々しそうに見ている。前の話でそれなりにおとなしくなるかなとは思っていたんだが・・・・・そうでもないようだ。まあ、仕方のないことだとも思うが。

 

というより・・・・正直俺も彼女たちに殺気をぶつけてやりたい気分だけどな。俺にとって教会は悪魔と堕天使に並ぶほど憎らしい存在なのだから。まあ、だからといって理由もなく攻撃するほど見境無いわけでもないが。

 

ともかく、今は交渉を見守りますか。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側で管理、保管されていたエクスカリバーが奪われました」

 

話を切り出したのはイッセーの昔馴染みだという少女、紫藤イリナだった。エクスカリバーが奪われたって・・・・木場があんな状態だってのに、随分とまたタイムリーだな。ほれみろ、木場のやつ表情がさらに険しくなっちまいやがった。

 

「なあ朧、なんか今の言い方だとエクスカリバーって複数あるように聞こえるんだけど・・・・」

 

イッセーは紫藤の言い方に疑問を感じたらしく、すぐ近くにいた俺に尋ねてくる。

 

「実際に複数あるんだよ。正確にはオリジナルのエクスカリバーではないがな」

 

「オリジナルのエクスカリバーじゃない?」

 

「ああ。エクスカリバーは過去の大戦で折れてしまってな。教会はそのエクスカリバーの破片から錬金術で7本の新たなエクスカリバーを作り出したらしい」

 

「へえ、あなた悪魔じゃないのに詳しいわね」

 

紫藤が感心したように俺の方を見ていう。当然というかなんというか俺が悪魔じゃないことには気がついているようだ。

 

「というより、どうしてここに人間が?」

 

「彼については事情があって私達に協力してくれているのよ。それよりも話を続けて頂戴」

 

「わかった。これが現在のエクスカリバーの姿だ」

 

俺の件に関してはリアスが手短に説明し、話が再開された。青髪に緑色のメッシュをいれた女性・・・・ゼノヴィア・クァルタが傍らに置いていた布に巻かれた長物を解き放つ。現れたのは、一本の長剣だった。破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)という名前らしい。

 

『・・・・これがエクスカリバー?随分とふざけているわね』

 

ラム?どうした?

 

『どうしたもこうしたもないわよ。この剣はオリジナルのエクスカリバーに比べてあまりにも脆弱だわ。聖剣としてはそれなりだけれどオリジナルの七分の一にさえ値しない・・・・・ナマクラといってもいいわね』

 

その言い方からして・・・・ラムはオリジナルのエクスカリバーを知ってるんだな。

 

『ええ。あれはまさに聖剣の中の聖剣と呼ぶにふさわしい剣だったわ。それがこんな見るも無残なものになってしまうなんて・・・・・やっぱり神造の剣に人の手が加えられてしまったらダメね』

 

まあ、そりゃ神造の剣に人の手が加わってしまえば衰えるに決まってるか。

 

現在のエクスカリバーに対するラムの愚痴を聞いてる中、教会の二人の話は進んでいく。話が進むにつれ木場の怒気が膨れ上がって言ってるようだが・・・・・大丈夫だろうか?

 

そして話は、聖剣を奪い、この地に逃れたという下手人に関するものへと移っていく。

 

「私の縄張りは出来事が豊富ね。それで?エクスカリバーを奪ったのは何者かしら?」

 

「奪ったのは『神の子を見張るもの(グリゴリ)』だよ」

 

リアスの問いに、答えたクァルタが口にしたのはとある組織の名前であった。

 

グリゴリ・・・・それはほぼ全ての堕天使が所属する、堕天使の中枢たる組織だ。そのグリゴリがエクスカリバーを盗んだようだが・・・・・どうにも解せない。

 

グリゴリの・・・・堕天使の総統アザゼルとはかつて一度だけ会ったことがあるが、奴はそこまで危険な男ではない。むしろ、争いを嫌う平和主義者であった。そんなアザゼルがエクスカリバーの強奪を指示するとは到底思えない。

 

『アザゼルの意思とは関係なしに、もしくは反してエクスカリバー強奪を企てたものがいるようね。問題はそれが誰なのかだけれど・・・・』

 

その答えは、すぐにクァルタの口から語られることとなる。

 

「奪った主な連中は把握している・・・・グリゴリの幹部、コカビエルだ」

 

ッ!?コカ・・・・ビエル?

 

その名を聞いた瞬間、俺の心臓は大きく脈を打った。

 

コカビエル・・・・古の戦いから生き残る堕天使の幹部。聖書にもその名を記された大物

 

そして何より奴は・・・・奴は・・・・・

 

『これは・・・・驚いたわね。もしかしてあなたが見た夢はこれを予期していたものかもしれないわね』

 

あるいはそうなのかもな。まさかここで・・・・俺が生きているうちにこんな機会に恵まれるとは思わなかった。この機を逃せば、もう二度と訪れないであろう・・・・・最初で最後の絶好の機会だ。誰がなんと言おうとも、俺はこの機に奴を・・・・

 

俺が内心でほくそ笑んでいるうちにも、話は進んでいく。

 

コカビエルはこの町に潜伏しているようで、今回二人がこの場に持ちかけた交渉というのは『悪魔はこの一件に関わるな』というものらしい。悪魔が堕天使と手を組むのではないかと危惧しているようだ。まあ、教会は堕天使と同じぐらい悪魔のことを信用していないから当然といえば当然だ。

 

もちろん、リアスはそんなことはしないと少々怒り気味に言い放った。誇り高い彼女がそんな姑息なことをするわけがない。何より魔王の妹という立場もあるわけだしな。

 

一切関わらないと約束を取り付けて安堵の表情を浮かべる。それを見て、リアスの怒りも多少収まった様子だ。

 

「・・・・一つ、聞かせてもらってもいいかな?」

 

俺は気になったことがあるため、二人に声を掛けた。

 

「なんだ?」

 

「教会から派遣された戦士は君たち二人だけなのか?はっきり言ってこの危険な任務、到底君たち二人だけで解決できるとは思わないが?」

 

「随分と私達を見くびってくれるな・・・・と、言いたいところだがその言い分はもっともだな。正直に言って私も死ぬつもりはないが無謀だとは思っている」

 

「それでもやらなくてはならないのよ。それが教会の下した命令なのだから」

 

「・・・そうか。わかったよ。ならもう何も言わない。聞いて悪かった」

 

どうやら二人共それなりの覚悟を持ってことにあたっているらしい。二人の信仰は敬意に値するが・・・・やっぱ教会はクソだな。

 

神に代わって人々を導くとか邪悪を退けるとかなんとか言ってるような連中だが・・・俺に言わせれば悪魔や堕天使と何も変わらない。いや、綺麗事並べて裏で非道なことをやってのけるだけ余計にタチが悪い。教会の身勝手な偽善のせいでどれだけの悲劇が起こってると思ってるんだ。

 

「さて、そろそろおいとまさせてもらうよ。行こうイリナ」

 

「あら?お茶の一杯ぐらい飲んでいったらいかがかしら?なんならお菓子も振舞うわよ?」

 

「いいや、結構だ」

 

「ごめんなさいね。それでは」

 

リアスの厚意を断って、二人はその場をあとにしようとする。

 

だが・・・・部屋を出る前に、二人の視線はアーシアへと注がれた。

 

「昨日会ったときもしやと思っていたが・・・『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 

クァルタが言うと、アーシアは肩をビクリと震わせた。

 

「あなたが教会内部で噂された元聖女の魔女?悪魔や堕天使をも癒す力を持っていて教会に追放されたらしいけど、まさかこんなところで悪魔になってたとは思わなかったわ」

 

「あ、あの・・・・私・・・・」

 

紫藤の言葉に、アーシアは萎縮してしまう。そのあとも、二人はアーシアを貶めるような事を言い・・・・俺はそれを聞くたびに、自分の中で激しい怒りが募っていくのを感じた。

 

「ふむ、君からは信仰の香りがするな。抽象的な言い方だが、私はそういったものに敏感なんだ」

 

「そうなの?アーシアさんは悪魔になったその身でもまだ主を信じているのかしら?」

 

「・・・・捨てきれないだけです。ずっと信じてきたのですから・・・・」

 

二人に睨まれるかのように見つめられながらも、アーシアははっきりと・・・・だが、どこか悲しげに答える。

 

アーシアだって、好きで追放されたわけではないのに・・・・本当は悪魔になった今だって堂々と神に祈りを捧げたいと思っているはずなのにそんなことを聞くだなんて・・・・・きっとこいつらは、自分たちの言ってることこそが正しいと思って疑ってないだろう。

 

「そうか。ならば今すぐ私たちに斬られるといい。神の名のもとに断罪してやろう。我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」

 

プチン

 

その時・・・・俺は自分の中で我慢の糸が切れたのを感じた。彼女たちの信仰には敬意を抱いていたがもう我慢ならない。

 

彼女たちへの怒りは、俺の心に巣食っていた憎しみの炎へと油のように注がれ・・・・一気に燃え上がった。

 

「くく・・・・あはははははははははっ!」

 

自分でもわかるほどに狂ったように笑い出した俺に、その場にいた全員の視線が集まってきた。

 

「・・・・なぜ笑っているんだ?」

 

「なぜって・・・・笑うに決まってるじゃないか!自分たちの事情に首を突っ込むなと言っておきながら、そっちは悪魔の事情に口を出して、それどころか綺麗事並べて断罪しようとしてるんだ!こんな滑稽でくだらない茶番を笑わずにいられるかっての!あはははははっ!」

 

「茶番・・・・ですって?聞き捨てならないわね。今のあなたの発言は私たちの主を愚弄するものよ」

 

「主を愚弄、ねぇ・・・・それってつまり君たちの行動は神様の意思だって言いたいのかい?」

 

「そうとってもらっても構わない。私達教会の人間は主の代行者でもあるのだからな」

 

教会の人間は主の代行者ねぇ・・・・随分な言い草だ。どうやらこいつらは教会の暗部を、闇を知らないと見える。

 

「だとしたらなおさらおかしな話だな。俺は君たちの言う主っていうのは清廉潔白な存在だと思っていたんだが・・・・教会の人間がその主の代行者だというのならどうにも腑に落ちない」

 

「どういうことだ?」

 

「別に?ただ、君たちは教会に属していながら無知なんだなって思っただけだよ」

 

こいつらは知らないだろうが・・・・俺は知っている。

 

かつて教会の手によって粛清されそうになった女のがいたことを

 

その女を守ろうと立ち向かい、死んでいった男がいたことを

 

そして・・・・その光景が脳裏に焼き付き、悲しみと絶望を心に抱き続ける女と男の子供のことを

 

綺麗事を並べながらもそんな非道を教会は裏で何度も行っていることを・・・・俺は知っている。

 

「あなた・・・・何を言っているの?」

 

「俺の言っていることの意味がわからないならそれでいいよ。むしろわからないほうがいい。そんなことより重要なことは・・・・・お前たちの茶番のせいで俺が今、はらわたが煮えくり返りそうになってるってことだよ」

 

「「ッ!?」」

 

俺が怒気をぶつけながら言うと、二人は一瞬怯んだ後に、俺を睨みつけてきた。

 

「アーシアのこと・・・・・何も知らないくせに好き放題侮辱しやがって。アーシアはいい子だ。こんなクズな俺に対しても微笑みを向けてくれて、俺なんかのことを優しいって言ってくれて・・・・・慕ってくれるんだからな」

 

ただまあ、やっぱり俺は優しくなんてない。なにせ・・・・この二人をぶちのめしたいっていう衝動を抑えられそうにないんだから。

 

「俺はアーシアを侮辱したお前達を許さない。二人共俺と戦え。俺が勝ったらアーシアに謝れとかそういうことを言うつもりはない。そんなことして心にもない謝罪をさせたところで意味がないからな。だからこいつはただの憂さ晴らし・・・・・付き合ってられないっていうなら拒否してもいいが、まさか高潔なる教会の戦士であるお前たちがここまで言われて逃げたりなんかしないよな?」

 

「ほう・・・・随分な口を叩くね」

 

「そこまで言われたら、私達も大人しく引き下がるだなんてできないわ」

 

俺の挑発に乗ってくるクァルタと紫藤。二人共剣の柄に手をかけている。

 

「朧、やめな・・・」

 

俺を止めようとするリアスであったが・・・俺の前に介入する木場を見て、言葉を詰まらせる。

 

「ちょうどいい。僕も一枚噛ませてもらおうかな」

 

あふれるほどの殺気を身に纏わせた木場が、その手に魔剣を携えながら言う。

 

「誰だ君は?」

 

「・・・・君たちの先輩だよ。失敗作だけどね」

 

不敵な笑みを浮かべる木場。同時に、部室内に無数の魔剣が出現する。

 

俺達の戦いは・・・・もはや誰にも止めることはできない。




ここからがある意味でこの章の本番となります

今後どうなっていくのか…………乞うご期待

それでは次回もまたお楽しみ!


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第47話

本編に入る前に言っておこう

これを読んだ読者のうち8割以上が『これはひどい』とい言うだろう

どのような内容になっているか・・・・・その目でお確かめを

それでは本編どうぞ!



「さあ、覚悟しなさい」

 

球技大会の練習をしていた場所で、俺は紫藤と向かい合って立っていた。紫藤は俺に日本刀のように姿を変えた聖剣、『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』を突き立てている。

 

少し離れたところでは、木場がクァルタと対峙している。紫藤とクァルタは俺達の力に興味を持ったらしく、私的な決闘という形で応じて、このようになったのだ。

 

ちなみに、余計な破壊と気配を周囲に与えないように、朱乃が結界を張ってくれているので多少の無茶をしても大丈夫らしい。

 

「朧・・・・・気をつけてね」

 

「心配するな。無傷で終わらせてやる」

 

心配そうに声をかけてきたイッセーに、俺は軽く手を振りながら答える。

 

というより、そういう心配は俺じゃなくて木場にしたほうがいいだろ。見てみろよあいつ・・・・殺気むき出しでクァルタに剣を突き立ててやがる。こいつはあくまでも決闘で殺し合いじゃないってことわかってるのかねあいつは・・・・まあいざとなったら俺が何とかしてやるけど。

 

とにかく今は・・・・・目の前の相手に集中するとするか。

 

「無傷で終わらせるだなんて随分と私のこと甘く見てくれるわね。悪魔でもない人間のくせに」

 

「人間なのはお互い様でしょう紫藤さん。俺は神器(セイクリッド・ギア)使いだ。あまり舐めないほうがいい」

 

「ふーん神器(セイクリッド・ギア)使いなんだ。ちなみにどんな神器(セイクリッド・ギア)なのか教えてくれたりは・・・・まあしないわよね。戦う相手にそんなこと教えるはず・・・・」

 

「俺の神器(セイクリッド・ギア)は幻術を操るものだ」

 

「・・・・え?」

 

俺が神器(セイクリッド・ギア)の能力を大まかに教えると、紫藤はキョトンとした表情を浮かべた。

 

「何を驚いている?俺の神器(セイクリッド・ギア)の能力が知りたいようだから教えてやったんだから喜んだらどうだ?」

 

「いや、普通戦う相手に自分の能力を教えたりしないでしょ?あなた何を考えているの?」

 

「別に大したことは考えてないよ。ただ、戦う相手とはいえ可愛い女の子が知りたがったんだ。答えてやるのは紳士として当然の行いだろ?」

 

「か、可愛いって・・・・」

 

可愛いと言われて、紫藤は頬を赤く染める。これから戦う相手に褒められて喜ぶだなんて・・・・この子チョロくないか?

 

『あら?女は男に褒められると嬉しいものよ?たとえこれから戦う相手からだとしても』

 

そういうもんか・・・・・まあいいけど。それよりも・・・・この戦い、ちょっと趣向を凝らしてみるか。

 

「紫藤さん、この戦いだけど俺はある条件を自分に課して挑もうと思う?」

 

「条件?」

 

「ああ。俺はこの戦いで幻術は一度しか使わない。それが条件だ」

 

「幻術を一回しかって・・・・何を言ってるの?その条件はあなたを不利にするだけよ」

 

「だろうな。でもそれでいいんだよ。俺はアーシアを侮辱してくれた件で結構怒ってるんでね・・・・不利な条件で勝てれば、少しは気分が晴れるだろ?それにまあ、あんた相手なら幻術一回で十分勝てるだろうからな」

 

「・・・・・・」

 

挑発するように言ってやると、紫藤は俺のことを睨みつけてきた。いい具合に頭に血を登らせてくれているな。本当にこの子チョロいな。

 

「いいわ!だったらせいぜいそんな条件を自分に課したことを後悔しなさい!悪魔に与する人間に裁きを!アーメン!」

 

紫藤が俺に向かって剣を振るう。鋭い剣閃だ。悪魔でないとは言え、あんな斬撃をまともに喰らえば大怪我必至だ。

 

まあ・・・・当たればの話だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・すごい」

 

朧とイリナの戦いを見て、私は思わず声を出して感心してしまった。イリナが繰り出す聖剣による斬撃を朧はいとも容易く躱してみせる。その動きに無駄はなく、思わず見とれてしまいそうになるほどだ。

 

「回避が得意というのは知っていたけれど、あそこまでとは思わなかったわ」

 

「全く危なげがありませんわね。当たる気配が一切ありませんわ」

 

部長も朱乃先輩も朧の動きに感嘆の声を漏らす。二人ここまで言わせるなんて・・・・・少し朧のことが羨ましい。

 

「でも・・・・どうして朧さんは幻術を使わないのでしょうか?」

 

「朧先輩は私達との模擬戦の時はいつも幻術を使って攻撃を躱していた。それなのに今回は幻術を使わずに・・・・・・妙です」

 

その一方で、アーシアと小猫ちゃんは朧が幻術を使わないことに疑問を抱いていた。普段の朧ならば、攻撃を躱すときは幻術を使って相手の苛立ちを募らせにかかるのに、今回は違う。律儀に相手の攻撃を幻術を使わずに体裁きで躱している。

 

イリナの攻撃を躱してるあの朧は幻術で作り出した幻ではないかと思ったけれど、わざわざそんなことする意味がないのでおそらくそれは違うだろう。

 

一体朧は何を考えているのだろう?

 

「まさか、本当に幻術は一回しか使わないつもりかしら?」

 

「それはわかりませんわよ部長。朧くんのことですからそれは嘘の可能性が高いです」

 

「そうよね・・・・」

 

部長と朱乃先輩は朧が口にした『幻術は一度しか使わない』というのは嘘だと思っているようだ。なんというか・・・・・二人の朧に対する信用はある意味で突き抜けてるな。まあ気持ちはわかるけども。

 

でも本当に・・・・朧のやつ一体何を企んでるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んー・・・・・結構いい太刀筋してるな。しかも聖剣の能力使って剣の形を変えて軌道を不規則にしてくるから思ったよりも躱しにくい。

 

『とか言いながら苦もなく躱してるじゃない。ふふっ、本当に朧はそっちの才能に長けているわよね』

 

まあ、俺の数少ない戦闘で活用できる才能だからな。これぐらいはできないと。

 

「くっ・・・・思ったよりもいい動きするわね」

 

「運動神経は常人よりちょっといいぐらいだけど動体視力は悪魔にも負けないほどに高いんでね。これくらいは造作もないさ」

 

斬撃を繰り出しながら言う紫藤に対し、俺はその斬撃を軽々を躱しながら返事を返す。紫藤の声からは苛立ちが感じ取れる。幻術も使わずに自分の攻撃がいとも容易く躱されてしまっているこの状況に焦っているのだろう・・・・まあ、それが俺の狙いなんだがな。

 

おそらく紫藤は多くの悪魔や異端を相手取ってきたのだから人間の相手ぐらい容易いと思っていたのだろう。だが、実際戦いが始まってみれば手を抜かれた上で自分の攻撃を簡単に躱されてしまう。その事実に苛立ち、焦り、平静を乱ししてしまってるのは彼女の様子を見ればわかる。

 

だが、それこそが俺の狙いだ。相手にとことん油断させておいて、相手を翻弄する。歴戦の戦士相手ならこんな幼稚な手は通用しないだろうが、技術面はともかくとして紫藤は若さゆえに精神面はまだ未熟のようだから嵌めるのは容易だった。

 

とはいえ、躱し続けるだけは勝負は終わらない。なのでそろそろ仕掛けさせてもらおう。さんざん攻撃を躱したおかげで、十分に観察することができたしな。

 

「はあはあ・・・・すばしっこいわね。けど、躱してるだけじゃ私には勝てないわよ?」

 

連続で斬撃を繰り出したせいで疲労したの、イリナは若干息を切らしながら言う。

 

「わかっているさ。安心しなよ。ちゃんと勝つための作戦は立ててるからさ」

 

「だったらそっちから仕掛けてみなさい。あなたの作戦なんて私は跳ね除けてやるわ!」

 

「随分とまあ威勢がいいことで。だけど・・・・紫藤さん、それはちょっとまずいよ?」

 

「まずい?なにが?」

 

「いやだって・・・・・全裸でそんな凄まれても俺困っちゃうよ♪」

 

「え?何言って・・・・・きゃあっ!?」

 

俺に言われて気がついたようだ。自分が今一糸纏わぬ生まれたままの姿・・・・すなわち全裸であることを。

 

紫藤は羞恥で顔を真っ赤に染めながら、自分の裸体を見られないようにと蹲ってしまう。そんな隙を俺が見逃すはずもなく、俺は紫藤に接近し、紫藤の手から聖剣を掠め取り、それを紫藤に突き立てた。

 

「あっ!?」

 

「チェックメイト。俺の勝ちだよ」

 

自らの失態に驚いている紫藤に、俺は勝ち誇ったように言い放ってやった。武器を奪われてしまった上に、剣を突き立てられてしまっては紫藤に勝機はない。この勝負は俺の完勝だ。

 

「う、うぅ・・・・どうして私の服が・・・」

 

「服?それならちゃんと着てるじゃないか」

 

「え・・・・あ、あれ?」

 

俺に言われて自分の体を見る紫藤。その体には、きちんとボンテージのような黒い戦闘服を纏っている・・・・というか、今更だけど全裸にするまでもなくエロくね?

 

「そんな・・・・どうして?」

 

「幻術を使うのは一度だけ・・・・・そう言っただろ」

 

「ま、まさか・・・・?」

 

どうやら紫藤は何をされたか察したようだな。

 

「空間投影型の幻術さ。紫藤さんの体に幻術を纏わせて全裸に見えるようにした。これぞイッセーの『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』を参考に考案した俺の超幻術・・・・・『幻福投影(ハッピー・ヴィジョンズ)』だ!」

 

「・・・・最低です」

 

「最低ね」

 

「最低ですわ」

 

「朧さん・・・・」

 

俺が技名を高らかに叫ぶと、戦いを見ていた小猫、リアス、朱乃が呆れたように言う。アーシアに至ってはどうリアクションをとっていいのかわからずに微妙な表情をしている。

 

「・・・・彼は本当に人間か?悪魔だと言われた方が納得できるんだが?」

 

「うん、ゴメン」

 

なんかクァルタは軽蔑するかのような視線を俺に向けながら言ってくるし、木場は木場で謝っている。

 

・・・・・別に呆れられるのも軽蔑されるのも予想してたから気にしないけど木場、仮にも一緒に戦ってる俺に対してそれは失礼すぎるだろ。復讐の応援してやってるんだから少しは俺の味方しろや。

 

「あなた・・・・そんな低俗な技で私に勝って良心が痛まないの!主よ!このこの罪深き変態をお許しにならないでください!」

 

「目算になるが、実際よりも胸は大きくしてウエストは細くしてたんだが?」

 

「え?本当?」

 

俺を非難する紫藤にそう言ってやると、紫藤はどこか嬉しそうに表情をほころばせた。やっぱこの子チョロいわ。

 

って、あれ?そういえば一番リアクションしそうなイッセーからは何もないな・・・・どうしたんだ?

 

「イ、イッセーさん?どうしたんですか?」

 

イッセーの方を見ると、何やら肩をワナワナと震わせており、そんなイッセーにアーシアが心配そうに声をかけていた。一体どうしたんだ?

 

「朧、お前・・・・・」

 

ようやく口を開くイッセー。そして俺の方に視線を向け、力強く言い放つ。

 

「お前・・・・間違ってる!こんなの間違ってるぞ!」

 

イッセーの口から出た言葉は俺を否定するものだった。

 

幻福投影(ハッピー・ヴィジョンズ)・・・・確かに凄まじいエロ技だ。それは認める。だが!その技は私の洋服崩壊(ドレス・ブレイク)には遠く及ばない!いくら全裸を投影したところで、そんなもの所詮妄想の域を出ないじゃないか!」

 

どうやらイッセーは俺の幻福投影《ハッピー・ヴィジョンズ》に文句があるようだ。凄まじい気迫を感じる・・・・表情が緩んでいて、鼻血が出てるから説得力はあまりないが。

 

だが・・・ふむ、どうやら討論は避けられないらしい。いいだろう。久しぶりにお前とエロ論争に興じるとしようイッセー!

 

「お前の言っていることは理解出来る。確かにこれは妄想の域を出ないかもしれない。だけどな、この技には洋服崩壊(ドレス・ブレイク)にはない利点がある。それは・・・罪悪感だ!」

 

「罪悪感・・・・だと?」

 

「そうだ!お前の洋服崩壊(ドレス・ブレイク)は相手の服を弾き飛ばし、生身の裸を見られるという近年稀に見る素晴らしい技だが、その技は相手に対して罪悪感を抱いてしまうという欠点がある!せっかくの全裸・・・・罪悪感が邪魔してしまって100%満足に楽しむことができない!」

 

「そ、それは・・・・」

 

俺の一言に、イッセーはたじろぐ。よし、一気に畳み掛ける!

 

「対して俺の幻福投影(ハッピー・ヴィジョンズ)は本当に相手を全裸にさせるわけじゃないから罪悪感は皆無!心置きなく裸体を楽しむことができるんだ!」

 

「いや、罪悪感は抱きなさいよ・・・・・」

 

リアスが何やら野暮なツッコミをしているが、そんなものはスルーだ、スルー。

 

「だ、だが所詮その裸体はお前の妄想が生み出したものだ!お前だってわかっているはずだ・・・・自分の妄想によって生じたエロは、どんなにリアルであっても本物に、生身に及ばないということを!」

 

「ッ!?痛いところをついてくれる・・・・」

 

確かにイッセーの言っていることはもっともだ。どんなにリアルでも妄想は妄想でしかない。妄想では本物に敵わない・・・・・

 

「それに罪悪感だってな・・・・私にとってはスパイスなんだ!なんかこう・・・・悪いことしてるっていう感じが私の興奮をちょうどいい具合に高めてくれる!朧、お前はこの気持ちわからないのか!」

 

「ぐぅ・・・・・た、確かにその気持ちは・・・・・わかる!」

 

悪いことしてるって罪悪感は時として適度にエロに対する興奮を高めてくれることがある。覗きという偉大な例もそれを証明してくれている。あまりにも重度な罪悪感は申し訳なさしか産まないが、軽度の罪悪感はエロのスパイス!俺とてそれを無視していたわけではなく、それでも罪悪感を抱かないエロを重視しようと思っていたが・・・・・改めて言われると揺らいでしまう。

 

「・・・・・二人共、最低です」

 

小猫からゴミを見るかのような目で蔑まれているが、今は置いておくとして、まずいぞ。このままでは俺が押し切られてしまう。やはりフェチ以外の分野ではイッセーには敵わないのか?

 

・・・・・いや、ここで負けを認めるわけにはいかない。こうなっては仕方がないな。これは言うまいと思っていたが・・・・切り札を切らせてもらおう。

 

「イッセー・・・・・洋服崩壊(ドレス・ブレイク)には他にも大きな、重大な欠点がある。致命的な欠点だ」

 

「なん・・・・だと?」

 

「イッセーよ・・・・・もしも洋服崩壊(ドレス・ブレイク)を施した相手がPADをつけていたとしたらどうなると思う?」

 

「ッ!?」

 

イッセーの表情が、今日一番の驚愕に染まった。

 

「PAD・・・・だと?」

 

「ふっ、気づいたようだな。お前の洋服崩壊(ドレス・ブレイク)はPADをも崩壊させてしまう。PADの崩壊とはすなわち、虚栄と尊厳の崩壊と同義だ。方向性は違えど胸にコンプレックスを抱いているお前もその悍ましさは理解しているはずだ!」

 

「う・・・・ぐぅ・・・・」

 

イッセーは自身の大きな胸にコンプレックスを抱いている。それこそサラシを巻いて小さく見せようとしているほどにだ。方向性は違えど、イッセーのサラシはPADと同義。それが洋服崩壊(ドレス・ブレイク)によって崩壊してしまったら・・・・それを想像して、イッセーは戦慄しているのだろう。PADの崩壊はスパイス程度のレベルの罪悪感では到底済まないからな。

 

「だ、だけど・・・・私の目にかかれば相手がPAD着用者かどうかは判別できる。PADをつけてる相手には洋服崩壊(ドレス・ブレイク)をかけないようにすれば・・・・!」

 

「お前は近年の偽乳詐称技術の発展を甘く見ている。ものによってはこの俺の目をもってしても見抜くのに時間がかかることもあるんだぞ。それでもお前は確実に判別できるというのか?」

 

「そ、それは・・・・」

 

「何より、お前は・・・・目の前に女の敵がいるとして洋服崩壊(ドレス・ブレイク)せずにいられるというのか?相手がPADかどうか気にする心のゆとりがお前にあるのか?」

 

「ぐぬぬ・・・・・」

 

俺の言うことが正論であるため、イッセーは反論することができずにいる。それはつまり、イッセーが洋服崩壊(ドレス・ブレイク)の弱点を認めてしまったことにほかならない。

 

「その点で言えば幻福投影(ハッピー・ヴィジョンズ)洋服崩壊(ドレス・ブレイク)に優っていると言えるだろう。なにせ相手がPAD装備者であったとしてもその尊厳と虚栄を傷つけることがないんだからな。それどころか幻福投影(ハッピー・ヴィジョンズ)によって見せる光景は対象者にとって理想である可能性もあるため掛けた対象にさえハッピーを与えることができるかもしれない」

 

「くそっ・・・・その点に関しては負けを認めざるを得ない!」

 

イッセーは悔しそうに両手両膝を地面に付けてしまう。一時は追い詰められてしまったが、このエロ論争は俺の勝利だと言ってもいいだろう。

 

だが・・・・・まだ終わりではない。俺は愕然としているイッセーに近づき言葉を投げかける。

 

「・・・・すまないイッセー。俺はこのエロ論争に勝利するためにお前の心を傷つけてしまった」

 

「朧・・・・いや、いいんだ。お前に言われなければ私は洋服崩壊(ドレス・ブレイク)の弱点に気がつくことができなかった。それに気がつかせてくれた朧には感謝しているよ」

 

「そう言ってもらえると気が楽だ。それと、言っておくが・・・・・欠点があったとしても、俺はお前の洋服崩壊(ドレス・ブレイク)はやっぱり素晴らしい技だと思っている。どうかお前には相手がPADであるかもしれないという恐怖心と戦いながらこれからもその技を行使し続けて欲しい」

 

「わかっている。私は相手が女の子(可愛い)であるのならば洋服崩壊(ドレス・ブレイク)を使い続ける。だってこの技は私の魔力の才能のほとんどすべてを注ぎ込んだ技なんだからな。朧も幻福投影(ハッピー・ヴィジョンズ)・・・・使い続けろよ?」

 

「ああ・・・・・約束しよう」

 

「朧!」

 

「イッセー!」

 

ガシッと、俺とイッセーは互いの手を取り合った。そう、これが俺とイッセーのエロ論争なんだ。どのような討論をし、どのような結論に至ろうとも、最終的には互いを賛え合い、友情を深める。

 

既に数え切れないほどイッセーと論争を繰り広げてきたが・・・・・終わったあとのこの爽快感は何にも変えられないものだ。

 

「・・・・・朱乃、小猫、アーシア。怒るべきことのはずなのに・・・・私、なんだか最近これに慣れてきてしまった気がして悲しくなってきたわ」

 

「部長、心中お察しいたしますわ」

 

「・・・・・もう最低という言葉では足りません」

 

「イッセーさん・・・・朧さん・・・・・」

 

「私・・・・・なんでこんな人間に負けてしまったの?」

 

「・・・・・悪魔とそれに与する人間というのは性欲の塊と言っても差し支え無いようだね」

 

「ゴメン。本当にゴメン」

 

なんか外野が好き放題言っているけど・・・・・うん、気にしない気にしない。

 

『まあ一々気にしていたらやっていけないものね。私はとっても楽しかったわよ♪』

 

それは何よりでございますよラムさん。




どうしてこうなった?

ぶっちゃけ作者をもってしてもひどいと言わざるをえません

朧もイッセーも本当に何ということをしでかしてくれたのだ・・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第48話

前回はおふざけが過ぎましたが、今回からはまたシリアスシリアス成分割り増しとなります

はてさてどうなりますことか・・・・・

それでは本編どうぞ



「さて、木場の方はどうなってるかなっと」

 

「あれだけのことをしておいてどうしてそんなに冷静に仕切り直せるの・・・・?」

 

私との論争を終えた朧は、木場達の方へと視線を向ける。部長に何やら突っ込まれてるが、まるで聞こえていないかのように全く気にしていない。かく言う私は少々熱くなりすぎたと若干反省している。後悔はしてないけど。

 

「というか朧、木場の方に助太刀したりしなくていいのか?」

 

ふと疑問に思った私は朧に尋ねてみる。朧はイリナとの戦いを無傷で勝利した。それも幻術はたったの一回しか使っていないので余裕があるはずだ。だから木場の方に助太刀すれば有利になると思ったのだが・・・・

 

「んー・・・・まあ助太刀してもいいんだけどねぇ。ぶっちゃけ俺が戦いふっかけた理由って個人的に紫藤さんとクァルタさんの物言いにイラついたからで、そのイラつきは紫藤さんに恥をかかせた時点で結構収まっちゃってるんだよなぁ」

 

「・・・・・」

 

朧のこの発言を聞き、イリナは朧に睨むように視線を向ける。ただ、負けてしまったが故にか何も言ってはこなかった。

 

「それに、今俺が助太刀しようにも木場からしたら『邪魔するな』って感じになりそうだからさ。大人しく見てたほうが無難かな?」

 

確かに朧の言っていることはわかる。私と朧の論争にツッコミはしていたが、今の木場は声をかけるのもはばかられるほどに雰囲気が尖っている。まあ、木場にとっては復讐のための戦いだから無理もないんだろうけど。

 

「・・・・・朧、聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

 

「なんですかリアス部長?」

 

「この勝負・・・・・祐斗は勝てると思う?」

 

「多分無理です」

 

部長の問いかけに、朧は一切考える素振りを見せずに即答した。

 

「・・・・そう思う根拠は?」

 

「それは聞かなくてもわかってるんじゃないですか?まあ、聞かれたからには答えますが。単純に今の木場とクァルタさんは相性が悪い。木場は次々と魔剣を創造してクァルタに攻撃を仕掛けているが、それをクァルタはものともせずに木場の作った魔剣をものの見事に破壊している。さすがは『破壊』の名を冠するだけあってあの聖剣はいい攻撃力だ」

 

確かにゼノヴィアの攻撃力は凄まじい。なにせさっき、聖剣を振り下ろしただけででかいクレーターができてしまうほどだからな。木場が創った魔剣が破壊されてしまっても仕方がないと言える。

 

「けど、木場ならスピードを活かして対処できるんじゃないか?」

 

「できるだろうな。普段の木場なら。だが・・・・・あれ見てみろよ」

 

朧に示され木場の方を見てみると、木場は身の丈を大きく超える巨大な魔剣を創造していた。なんて大きさだ・・・・見ただけで高い攻撃力が秘められていることがわかる。

 

「まったく・・・・・それは悪手でしかないってのに」

 

朧は木場の魔剣を見て呆れていた。まあ、私も朧が呆れている理由はわかっているのだが。あの剣は、あまりにも木場らしくなさすぎる。

 

木場はゼノヴィアに向かって剣を振るう。だが、木場の振るった剣はゼノヴィアの振るった聖剣のひと振りによって粉々に砕かれてしまった。

 

巨大で、攻撃力に重点を置いた剣なんて本来の木場の攻撃スタイルに反したものだ。木場の長所を殺してしまうだなんてこと私でもわかる。それはゼノヴィアも理解しているようで、木場に説教じみたことを言っている。

 

ここまでくれば誰がどう見ても理解出来る・・・・・今の木場は常の戦いができなくなっている。だからこそ、勝目などないということに。

 

「まあ、ここまでだな・・・・・仕方ない」

 

朧は木場へと近づいていった。その木場は、ゼノヴィアから聖剣の柄で殴られたことによってダメージを受け、地面に膝をついている。柄とはいえ聖剣の一撃だ・・・・ダメージは相当なものだろう。

 

「まだだ!まだ僕は・・・・・」

 

「ストップ・・・・・もうゲームセットだよ木場」

 

ダメージを受けながらも立ち上がろうとする木場を、朧が制した。

 

「どいてくれ朧くん!僕はまだ・・・・」

 

「立ち上がったところで今のお前に勝機なんて無い。諦めろ」

 

「諦めろだって?どうして君が・・・・よりにもよって君がそれを口にするんだ!僕の復讐を応援しているって言ってたじゃないか!」

 

「朧が・・・・・木場の復讐を応援?」

 

私はなぜ朧が木場の復讐を応援しているのか分からず、声を漏らす。部長達も意外そうな表情をしていた。もっとも、朱乃先輩だけが何かを知っているのか、表情が少々険しいが。

 

「確かに俺はお前の復讐を応援しているよ。だけど、俺は無駄が嫌いでね。勝ち目がないのに挑むだなんて無駄・・・・・・応援してるがゆえに見てられないんだよ」

 

「無駄なんかじゃない!僕は・・・・」

 

「自分でもわかってるだろうが。このままやっても勝てないだなんてことは。ちょっと頭冷やして反省しろ」

 

そう言いながら、朧は木場の手に手錠を掛ける。幻術で作ったものであるためか、木場はどうにか手錠を外そうとするがびくともしない。

 

「というわけで、この戦いはここまでということでいいかなクァルタさん?」

 

「そうだね。私もその騎士(ナイト)とはもう勝負する気はないよ。だが・・・・・次は君が相手をしてくれるのかな?」

 

ゼノヴィアは朧に聖剣の切先を向けながら言う。

 

「おいおい・・・・どうしてそうなる?」

 

「どうしても何もないさ。君はイリナに勝利して、私はその騎士(ナイト)に勝利した。だったら、次は私達が戦うというのが筋ではないか?」

 

「えー・・・・・」

 

勝ったもの同士戦うのは筋だと言うゼノヴィア。だが、朧の方は全く乗り気はなさそうだ。

 

「正直、俺から仕掛けておいてこんなこと言うのはなんだけど、もうこれ以上はやる気はないんだけどなぁ・・・・・・けどまあ、このまま引き下がるのも癪か。わかったよ。木場の雪辱戦って名目でその勝負受けてやる。野郎の雪辱戦だなんてすっごい不本意だけど」

 

面倒くさそうにしながらも、一応はゼノヴィアの申し出を受け入れた朧。木場の雪辱戦っていうのがすっごい不満っぽいけど。けどまあ、それでもあの朧が男の木場の雪辱戦を行うというだけでかなり珍しいことではあるけども。

 

「んじゃ、勝負するとしてクァルタさん、一つ忠告してあげよう」

 

「忠告だと?」

 

「ああ。心して聞きな・・・・・・背中には気をつけることだ」

 

「ッ!?」

 

朧に言われ、ゼノヴィアは後ろを振り返って剣を構える。だが、振り返った先には、何もなかった。

 

そして・・・

 

「はい、チェックメイト」

 

後ろを振り返った隙に・・・・・朧はゼノヴィアの背中に幻術で作り出した拳銃を押し当てた。

 

うん、なんていうか・・・・・朧らしい作戦である。

 

「くっ、卑怯な・・・・」

 

「卑怯?わざわざ忠告したのにそれを無下にしたのはそっちじゃないか。断じて俺は卑怯ではない」

 

この時、この場にいた全員の心が一つになったのを感じた。皆絶対に思ってるはずだ・・・・・『いや、卑怯だろ』と。

 

でもまあ確かにあそこで後ろを向いたのは迂闊だとは思うが・・・・

 

「・・・・さっき背後から聞こえた足音は幻術か」

 

「ご明察。その通りだよ」

 

足音?

 

「朧、それって一体どういうこと?」

 

「俺の幻術は何も視覚だけを惑わせるものじゃないってことだよ。こっちも俺の領分さ」

 

そう言いながら、朧は耳を指で示す。

 

それを見て、なぜゼノヴィアがあの時振り返ったのかわかった。あの時、朧はゼノヴィアにだけ聞こえるように幻術で足音を作り出したのだろう。あんな忠告をされたあとに背後から足音が聞こえてしまえば、振り向いてしまうのも仕方がない。

 

やはり卑怯な手ではあると思うけれど・・・・それでも、その手に嵌めるために策を巡らせた朧はやっぱりすごいと思う。

 

「さて、勝負は着いた。茶番はここまで・・・・とっとと自分の仕事に戻りな。それともまだやるかい?」

 

「・・・・いや。もう戦う気はないさ」

 

ゼノヴィアにはもう戦意は無いようで、聖剣を下ろした。

 

「・・・・リアス・グレモリー、先程の話よろしく頼むよ。それと眷属をもう少し鍛えたほうがいい。センスだけ磨いても限界がある・・・まあ、悪魔でなく人間に負けた私もまた修行不足だけどね」

 

ゼノヴィアは木場、朧の順に視線を向けながら部長に言う。朧に視線を向けたときは少々悔しそうだった。

 

「用は済んだ。行こうイリナ」

 

「あ、待ってよゼノヴィア。現世朧くんって言ったっけ?次に会うときは絶対に負けないんだから覚悟してね!」

 

荷物を持って、その場をあとにするゼノヴィアと、その後を追うイリナ。まあイリナは去り際に朧へ捨て台詞を吐いていったが。

 

「さて・・・・・少しは頭は冷えたか木場?」

 

「・・・・・」

 

朧が未だに手錠を付けられている木場に視線を向けながら言う。木場は朧を忌々しげに見つめていた。

 

「その目からして反省はしてないようだな・・・・・まあいいけど」

 

ため息を吐きながら、朧は幻術を解いて手錠を消した。木場が朧に切りかかるのではないかと心配していたが、それはなかったので安心した。おそらく、朧相手にそんなことをしても無意味だってわかっているのだろう。

 

「木場、俺はお前の復讐を応援してる。それは今でも変わらないさ。だけど・・・・今日のお前の戦いを見て、一つわかったことがある」

 

「・・・なんだい?」

 

「お前・・・・・根本的に復讐向いてないよ」

 

「ッ!!」

 

朧のその一言に、木場の朧を見る目はさらに険しくなる。だが、朧にそれを恐れている様子は全く見られなかった。

 

「怒るなよ・・・・・事実を言ったまでなんだからさ。さて、リアス部長。俺はそろそろ失礼させてもらいますよ。帰って勉強しなければならないので。ほら、俺って優等生ですし?」

 

「いや、誰が優等生だよ」

 

朧のボケに、私はツッコミを入れた。まあ多分、今のは重い空気を変えるための朧なりの気遣いだったのだろうが。

 

「待ちなさい朧。あなた、祐斗の復讐を応援していると言っていたけれど・・・・・それはどう言う意味かしら?」

 

その場を去ろうとする朧を引き止め、部長が尋ねる。

 

「そのままですよ。俺は木場の復讐が成されればいいと思っています。なにせ俺も・・・・木場と同じで復讐を志していますからね」

 

「・・・・え?」

 

どこか悲しげな表情を浮かべる朧・・・・そんな朧が何を言っているのか、一瞬わからなかった。朧が復讐を?一体誰に?そもそもなんで復讐なんて・・・・

 

皆は私と同じように驚いている・・・・・木場と朱乃先輩を除いて。二人は朧から何か聞かされて知っているのだろうか?

 

・・・・親友である私は知らないのに。

 

「それじゃあ俺はこれにて・・・・皆さんまた明日」

 

手をヒラヒラと振ってその場を去っていく朧。

 

朧に復讐のことを聞きたいのに・・・・・私は引き止めることができなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・朧?どうしたの?」

 

家に帰ってきた朧は、突然私を抱きしめてきた。いつもならすぐに夕食の準備を始めるというのに。

 

「・・・・・・この町に居る」

 

私を抱きしめる腕の力を緩めることなく、朧は言葉を紡ぎ始めた。

 

「居るって誰が?」

 

「・・・・コカビエル」

 

「ッ!?」

 

コカビエルが・・・・・この町に?どうして・・・・?

 

「コカビエルが・・・・居るんだ。この町に・・・・近くにいる。はははは・・・・・こんな偶然ってあるんだな」

 

狂ったような笑い声をあげる朧。それと同時に、朧から悍ましく思えるほどにドス黒いもの感じる。

 

それを私は知っていた。私と戦った時に朧が私に向けていた感情。兵藤一誠を殺した私に対して向けられていた・・・・・憎悪。もっとも、私の時よりもはるかに強く感じられるが。

 

「殺す・・・・必ず殺す。コカビエルを必ず・・・・・」

 

コカビエルに向けられる強い憎悪。朧の復讐の念は凄まじい。

 

ああ、そうね・・・・・憎いわよね。母親を陵辱し、挙句殺したコカビエルが憎いわよね

 

わかってる・・・・・わかってるわ朧。あなたの憎悪・・・・私は理解している

 

理解しているからこそ・・・・・私も願っている。私も望んでいる

 

あなたが強く憎んでいるコカビエルを・・・・・私は・・・・私が・・・

 

「・・・朧」

 

私は朧に負けないくらい力強く、朧を抱きしめた。

 

 

 

 

 




ようやく朧の復讐相手が誰なのか明記されました。まあ、ほとんどの読者は気が付いていたと思いますが

はたして朧は復讐を果たすことができるのか・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第49話

今回もイッセー視点となります

理由は朧視点よりもやりやすいから・・・・・まあそれだけですよ

それでは本編どうぞ


「嫌だァァァァ!俺を巻き込むな!俺は帰るぞ!」

 

必死に抵抗する匙を、私を小猫ちゃんは両腕を掴んで引きずっていた。

 

先日、イリナとゼノヴィアが帰ってから私はずっと木場のために何か出来ることはないかと考えていた。今の木場は復讐のためならなんでもしてしまいそうな危うさがある。木場一人で復讐なんてさせたら木場の命に関わるかもしれない。同じ部長の眷属として私はそれが嫌だった。部長は絶対に悲しむし・・・・・何より私も仲間を失いたくない。

 

ゆえに、私はエクスカリバーを破壊しようと思った。正確には木場に聖剣に打ち勝ってもらうって感じだが。その為に、まずはイリナとゼノヴィアにその許可を取ろうと考え、協力してくれそうな匙を伴って二人を探しているのだ。

 

まあ、匙と待ち合わせをしているところを小猫ちゃんに見つかって、成り行きで小猫ちゃんにも協力してもらうことになっちゃったけど。小猫ちゃんは小猫ちゃんで木場のことが心配だったようだ。

 

「兵藤!なんで俺を巻き込むんだよ!俺はシトリー眷属なんだからそっちの眷属の問題とは無関係だろ!」

 

私と小猫ちゃんを振りほどこうともがきながら匙は言う。私の方は抑えるのはギリギリだけど、小猫ちゃんの方はびくともしてない。私より小柄なのに・・・・・さすがはうちの戦車(ルーク)である。

 

「そう言ってくれるなよ。仕える主は違っても私達同期の悪魔じゃないか。協力してくれ」

 

「嫌だ!こんなことが会長にバレたらどうなると思ってるんだ!お前のところのリアス先輩は厳しいながら優しくもあるんだろうけど、俺のところの会長は厳しくて厳しいんだぞ!ただひたすらに厳しいんだぞ!」

 

匙はよほど会長にバレるのが恐ろしいのか、体を震わせている。

 

「まあ確かに会長って厳しそうだもんな・・・・・」

 

「いやいや、会長あれで結構可愛らしいところもあると俺は思うぞ?匙はそうは思わないのか?」

 

「いや、そりゃちょっとは思うけど・・・・・って、え?」

 

「「・・・・ん?」」

 

なぜかこの場にいるはずのない人物の声が聞こえてきた。声のする方へ視線を向けると・・・・・

 

「やっほー。こんなところで奇遇だねお三人」

 

そこには朧がいた。

 

「・・・・・なんでこんなところにいるんですか朧先輩?」

 

「ちょっと小猫ちゃん、その言い方は辛辣すぎやしません?」

 

ジト目を向けて言う小猫ちゃんに、朧は苦笑いを浮かべながらそう返す。

 

「いや、でも本当に何してるんだよ朧?」

 

「何って、多分お前たちと同じだよ。紫藤さんとクァルタさんを探してた。エクスカリバーの破壊許可をもらうためにな」

 

・・・・え?

 

「ど、どうして・・・・?」

 

「一応、俺だって木場と同じオカ研のメンバーなんだ。少しぐらい協力してやりたいって思うさ。なにより俺はあいつの復讐の応援してるからな」

 

淡々と当たり前のように言う朧。朧は朧で木場の事を気遣っているのか・・・・・

 

「というかイッセー。小猫ちゃんと匙を誘っておいて親友である俺の事を誘わないってどういうことかな?かな?」

 

ニコリと微笑みを浮かべながら私に尋ねてくる朧。だが、その微笑みからはなにか黒いものを感じる。

 

「いや、その・・・・朧には色々と協力してもらってるけど部長の眷属じゃない朧を誘うのは気が引けるというか筋違いというか・・・・」

 

「あの・・・・・さっきも言ったけど俺もリアス先輩の眷属じゃないんだが?」

 

「匙は同じ悪魔だからいいだろ?」

 

「よくねえよ!?」

 

まったく、男のくせにうだうだうだうだと・・・・・いい加減腹を決めて欲しいものである。

 

「とりあえずイッセー・・・・・俺とお前の仲でそんなこと言われたら泣くよ?泣いちゃうよ?よよよ・・・・」

 

「ごめん、謝るからそのわざとらしい嘘泣きやめて」

 

目を手で覆って、誰が見ても芝居だとわかる泣き真似をしている朧に私は言う。

 

「・・・・まあ、親友であるお前に隠し事たくさんしてる俺の事信用しきれないのはしょうがないことか。実際はそこまで気にしてないからお前も気に病むな」

 

「・・・・別に信用してないわけじゃないし。ただ・・・・親友である私が知らないこと、木場や朱乃先輩が知ってたみたいで・・・・・ちょっと嫌だっただけ」

 

自分でも子供みたいな拗ね方してるっていうのはわかってる。それでも嫌なものは嫌なのだ。親友である私が知らないことを、他のひとが知ってるなんて・・・・・

 

「あ~・・・・それに関しては悪かったよ。木場や朱乃先輩に話したことは成り行きで話す必要があったから話したんだ。だけど、あれは俺にとってはあまり話したくはないことでな・・・・正直思い出すのでもきっついんだ」

 

あれというのは復讐云々のことだろう。話してしまえば復讐を志すきっかけになった事を思い出してしまうから話したくないってことか・・・・一体朧の過去に何があったんだろうか?

 

それと・・・・・木場はエクスカリバーの件で復讐の話になるっていうのはわかるけど、朱乃先輩は一体・・・?

 

「まあともかくだ・・・・・変に心配かけて悪かったなイッセー」

 

「・・・・ん」

 

朧が私の頭を撫でながら言う。そんな風に言われてしまえば、もう許すしかない・・・・仕方ないからこの件はここで終わりにしてあげよう。

 

「・・・・なあ、お前ら」

 

「ん?どうした匙?」

 

「いや、どうしたっていうか・・・・・お前ら実は付き合ってるとか・・・」

 

「「もぐぞ?」」

 

「ごめんなさいなんでもないです」

 

何やら匙がトチ狂ったことを言いだしたので脅しを掛けた。とりあえずわかってくれたようなので一安心だが・・・・・私が朧と付き合ってるとか冗談じゃない。

 

「あの・・・・その思われても仕方がないと思います。先程のは私から見ても付き合っている男女に見えましたから」

 

「え?そんな風に見えた?」

 

「はい」

 

う~む・・・・・小猫ちゃんは冗談でこんなことをいう子じゃないから、本当にそう見えたってことか?私としては今のやりたとりは普通の親友同士のそれだと思っていたのだが・・・・

 

「というより、普段の二人の接し方を見ていると付き合っていてもおかしくないように見えます。付き合ってないのに普通胸を触らせるだなんて事しません」

 

「胸を触らせるって・・・・・兵藤、お前そんなことさせてるのか?」

 

「おい匙、なんでイッセーの名前を出してるのに視線は俺の方に向ける?」

 

朧の言うとおり、匙の視線は朧に向けられていた。しかも蔑むような視線だ。

 

「いや、だってなぁ・・・・それ普通にセクハラだろ」

 

「セクハラじゃない。イッセーの方から触らせてきてるんだから」

 

「あれはただ胸が大きくなってるの確認してもらうために触らせてるだけだから下心はないんだけど・・・・なぜか変な目で見られることが多いんだよなぁ」

 

「不思議だよな」

 

「それを本気で言ってるなら先輩たちの頭の方が不思議です」

 

「お前らの友情はどうなってるんだよ・・・・」

 

なんか納得いかないって目で小猫ちゃんと匙に見られている。どうして理解してもらえないのだろうか?私としては朧とは健全な親友関係を築けていると思っているんだけど・・・・

 

「まあ話は戻すが、生徒会長は確かに厳しそうだが、個人的には可愛らしさとかもあると思うぞ。慣れればからかいがいもあると思うし」

 

「ごめん、話を脱線させた要因が私にもあるってわかってるけど言わせて・・・・・戻すってそっち?」

 

確かに朧が来たときは会長の話ししてたけど戻すべきはそっちではないはずである。

 

「そんなこと言えるのはお前ぐらいだぞ現世・・・・・というか、会長に変なちょっかいかけるなよ」

 

「いや、ちょっかい云々に関しては俺はむしろかけられてる方だぞ?なに?もしかして匙妬いてるの?お前の嫉妬はこの前球技大会のドッジボールで当てられたんんだからチャラだろ」

 

「お前その言い方からしてあれわざとかよ」

 

「エ~?ワザト?何言ッテルカ俺ワカラナイ~」

 

だったら棒読みやめろよ朧。

 

「まあ、お前に対する怒り云々はあの時ボールに込めたから一応はいいけど・・・・・」

 

あの時ボールにやけに勢いがあったのはそれが原因か。朧地味に痛がってたぞ。

 

「・・・・もう会長にちょっかいかけるなよ?」

 

「いや、だから俺はちょっかいかけられてる側なんだけど・・・・まあいいか。約束しまーす」

 

朧を睨みながら言い聞かせる匙と、おどけたふうに了解の意を示す朧。一体朧と会長の間に何があったのだろうか・・・・まああまり詮索はしないでおこう。

 

「さて、いい加減本当に本題に戻るが、紫藤さんとクァルタさんを探すとして・・・・お前たち二人がどこにいるのか心当たりはあるか?」

 

ようやく話が本題に戻った・・・・・私が言うのもなんだけど脱線しすぎだ。

 

「逆に聞くが朧・・・・・お前の方に心当たりはあるのか?」

 

「ふっ、イッセー・・・・心当たりがあったら聞くと思うか?」

 

「二人共何を無駄にかっこつけてるんですか?」

 

いやいや小猫ちゃん。それぐらいの遊び心は許してよ。まあ実際問題心当たりが一切ないのは問題かもしれないけどさ。

 

「まあ、心当たりがないのなら仕方がない。地道に探すとしよう。町の教会にでもいけばなにかわかるかもしれんが・・・・・俺はともかくとしてお前たち3人は無理だし」

 

朧の言うとおりだ。悪魔である私、小猫ちゃん、匙が教会になんて行けるわけがない。自殺行為にも等しい。

 

「とはいえ、極秘任務にあたっている白いローブ姿の女性二人なんて探しても聞き込みしてもそう簡単に見つかったりは・・・・・あ」

 

突然、朧は何かに気がついたかのように声を上げた。

 

「朧?どうした?」

 

「・・・・・前言撤回だ。探す必要も聞き込みする必要もない」

 

そう言いながら、朧はある一点を指差す。私達がその方向に視線を向けるとそこには・・・・・

 

「迷える子羊にお恵みを・・・・・」

 

「天の父に変わって哀れな私達に慈悲をぉぉぉぉ・・・・」

 

・・・・路頭で祈りを捧げ、募金活動をしているイリナとゼノヴィアがいた。よほど困っているのか、表情が悲しげだ。

 

「・・・・・彼女たちの名誉のために見なかったことにするか、木場のためにあれに声をかけるかどっちがいい?」

 

可哀想なものを見る目二人を見る朧が私に尋ねてくる。

 

実質一択なのに、私はその選択肢で頭を悩ませることとなった。




朧が協力しようとしてる理由は木場のこともありますが、自分一人でコカビエルとことを構えるのは分が悪いと思ってるからです

つまり、協力にかこつけて利用するためです。おお、クズい

ちなみにこのときレイナーレは朧に内緒でコカビエルを捜索していたり

それでは次回もまたお楽しみに!



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第50話

今回は朧視点です

まあそこまで原作と差異はありませんが・・・・・

それでは本編どうぞ


「うまい!日本の食事はうまいぞ!」

 

「これよ!これが故郷の味よ!」

 

「厳密にはファミレスは日本の食事と呼ぶかどうか微妙なんだが・・・それとファミレスが故郷の味ってどうよ?」

 

目の前で女性とは思えぬ勢いで食事しているクァルタと紫藤に、俺は思わず呆れながらツッコミを入れてしまった。

 

俺達は今ファミレスに来ている。どうにもこの二人は空腹だったようで・・・・二人と話をするいいきっかけになると思い連れてきたのだ。

 

「まあ、ここの料金は俺が持つから好きに食べてくれ。先日恥をかかせた侘びとでも思ってな」

 

「では次はこれを・・・・」

 

「それじゃあ私は・・・・」

 

好きに食べろとは言ったけど容赦ないなおい。まあ別にいいんだけど。

 

問題があるとすれば・・・・

 

「朧先輩、パフェをおかわりしてもいいですか?」

 

「私はパンケーキね」

 

「なんでお前らまで頼んでんだよ」

 

俺はとなりでスウィーツを食べている小猫とイッセーに突っ込んだ。

 

「だってここの料金は朧が持ってくれるんだろ?」

 

「だったら食べておかないと損です」

 

いや、それはクァルタと紫藤に対してでお前たちは違うんだが・・・・・まあいいか。特に金には困ってないし。

 

『ミリアと一緒に旅をしていたときに色々稼いでいたものね』

 

まあな。おかげであと10年は遊んで暮らせるぐらいの金はあるもんな。そこまで生きてられないだろうけど。

 

「俺もなんだか小腹がすいてきたな・・・・・何か頼むか」

 

「頼むのは勝手だけど匙は自腹な」

 

「なんで俺だけ!?」

 

「俺の財布の紐は女のために緩めるものだ。野郎のために払う金は基本持ち合わせていない」

 

「どんだけ自分に正直なんだよ・・・・・」

 

別に男なら普通だろそれぐらい。

 

『そういえばあなたは何も食べないの?』

 

目の前のクァルタと紫藤の食べっぷり見てたらそれだけで食欲失せるからな。

 

というか・・・・食べるのはいいけど、あんまり長引くのは勘弁して欲しい。こっちは早く本題に入りたいんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ようやく飢えが満たされた。まさか悪魔とそれに与する人間に救われることになるとは思わなかった」

 

「奢ってもらってその言い草はないだろう・・・・・まあ別に気にしやしないけど」

 

「満腹だわ。主よ、心優しき悪魔達に祝福を・・・・」

 

「「「うっ」」」

 

紫藤が十字を切った瞬間、イッセー、小猫、匙がうめき声をあげる。目の前で十字を切られたのだから悪魔にとっては苦痛でしかないのだろう。こういう時不便だよな悪魔って。

 

「紫藤・・・・俺以外の3人は悪魔だから十字を切るのは勘弁してやれよ」

 

「ごめんなさいつい・・・・・というか、本当にあなた悪魔じゃないのね」

 

「どう言う意味だそれは?」

 

「なに、あの決闘を通じて一番悪魔らしく卑劣だったのは君だと判断したまでだ」

 

「君たち本当に奢ってもらったって自覚ある?」

 

いくらなんでもこの言い草はあんまりではないだろうか?訴えたら勝てるレベルじゃね?

 

『でも実際一番所業は酷かったわよ』

 

自覚はしてますけども。

 

「さて、食事も終えたことだ。君たちが接触してきた理由を聞かせてもらおう」

 

話を切り出してくるクァルタ。こちらから切り出す手間が省ける上、余計な言い回しもする必要がなくて助かるな。

 

「率直に言わせてもらおう・・・・・エクスカリバーの破壊に加担させてもらいたい」

 

俺が言うと、クァルタと紫藤は驚きをあらわにして互いの顔を見合わせていた。まあ、彼女たちからすればこの提案は予想外だったのかもしれない。

 

普通に考えれば許可なんて降りないだろう。向こうは悪魔にこの一件に関わって欲しくないだろうし、そもそも下手に手を出そうものなら三種族間の争いに発展しかねない。なにより、聖剣を下級悪魔とそれに与する人間が破壊しようだなんて侮辱とも取られかねない。

 

まあ、向こうが断ることができないように手段は考えてはあるが・・・・・さて、どう出るか・・・・

 

「そうだな。破壊できるのなら一本ぐらいは任せてもいいだろう。ただし、こちらもそちらと関わりを持っていると知られたくないから身バレしないようにしてもらうが」

 

意外なことに、クァルタによってすんなりと許可は取れた。紫藤の方は難色を示していたが、さすがにコカビエルを相手にして尚且つ聖剣を3本奪取するのは辛いとクァルタに言われて納得しかけている。

 

「けれど悪魔の手を借りるだなんて・・・・」

 

「ならば人間の力を借りるということにすればいい。上は現地の人間の力を借りるなとは言っていないからな」

 

そう言いながら、クァルタは俺の方を見やる。確かに俺は悪魔と協力関係にあるが種族的には人間だ。教会の言に反することにはならないのだろう・・・・だいぶ屁理屈ではあるが。

 

だがまあ、そういう臨機応変な考え方ができるのは好ましい。どれ、俺も後押ししてやるか。

 

「そこについでにドラゴンのても借りるってのも付け加えておくといい。イッセーは神滅具(ロンギヌス)・・・・赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の所有者。今代の赤龍帝なんだからな」

 

『更に言うならヴリトラの神器(セイクリッド・ギア)所持者である匙くんとあなたもドラゴンだけれどね』

 

まあそうだけど・・・・匙の神器のヴリトラについては俺が本来知る由もない事なんだから言うわけにはいかないだろ・・・・・あと、俺ドラゴン扱いされるのあんまり好きじゃないんだが。まあ今はそんなことどうでもいいが。

 

「・・・・驚いたわ。イッセーちゃんが赤龍帝の籠手の持ち主だなんて」

 

「まさかこんな極東の島国で出会えるとは思わなかった。ドラゴンの力が健在ならば、力を最大まで高めることで聖剣の破壊も可能となるだろう。これも主の導きか」

 

イッセーが今代の赤龍帝だと知り、紫藤もクァルタも驚きを隠せないようだ。

 

「確かに人間とドラゴンの力を借りるなとは言われてないけれど・・・・・いくらなんでも屁理屈がすぎるわ。あなたの信仰心は変よゼノヴィア」

 

「変で結構だ。とにかく信じてみようじゃないか。ドラゴンの力を」

 

よし、ひとまずは交渉完了だな。これでこいつらのことを()()できる。

 

「それじゃあ木場を呼ばないと。事情説明しないとだし」

 

イッセー木場を電話でこの場に呼び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーの呼び出しに素直に応じた木場は、程なくしてファミレスに訪れた。さすがにエクスカリバー関連となると無視できないということか。エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾のようだが。

 

ちなみに話の流れで、聖剣計画を企てた首謀者の名前も割れた。その人物の名はバルパー・ガリレイ。聖剣計画の一件から信仰に問題があるとされ、異端の烙印を押されて現在は堕天使側の人間らしい。果たして問題があったのはガリレイの信仰か、あるいはそんな奴を受け入れていた教会か・・・・ガリレイの聖剣計画を利用しているのだから、教会は教会でゲスだとは俺は思うが。

 

なお、ガリレイは今回の件に噛んでる可能性も十分にあるらしい。エクスカリバー破壊を目的とするなら邂逅する可能性もあるかもしれないな。

 

「こうなったからには僕からも情報提供したほうがよさそうだね。先日、エクスカリバーを持ったものに襲撃されたよ。その際神父が一人殺害されていたが・・・・やられたのはそちら側だろうね」

 

どうやら、クァルタ達よりも先に木場が接触していたようだ。皆はそれを聞いて驚いている。というか接触してたなら言えよ・・・・事情があるのはわかるけど。

 

「相手の名前はフリード・セルゼン。この名前に覚えは?」

 

「フリード・セルゼン!?」

 

木場が襲撃者の名前を口にすると、イッセーは大きくリアクションをとった。

 

「なんだイッセー?そのフリードって奴のこと知ってるのか?」

 

「・・・・え?朧それ本気で言ってる?」

 

俺がフリードヤラのことを尋ねると、イッセーは意外そうにそう返してきた。どう言う意味だ?

 

「フリードはアーシア件でレイナーレ達に協力してたはぐれ神父だ。お前、レイナーレ達のこと調べてたからてっきり知ってると思ったんだが・・・・」

 

「そうなのか?ちょっと待ってくれ、記憶を遡ってみる。えっと、フリードフリードフリード・・・・・ダメだ、レイナーレ以外に女の堕天使が居たってことは覚えてるけどそれ以外は全く記憶にない」

 

「朧先輩・・・・どういう記憶力しているんですか?」

 

いやいや小猫よ、そんなこと言われても仕方がないじゃないか。あの時の俺は良くも悪くもレイナーレのことで頭いっぱいだったんだから。あと、アーシアのことにも意識は向けてたけど・・・・・その上で女の堕天使がいたことを覚えてるだけでも俺としては十分なんだが。

 

『もはやさすがの一言ね』

 

褒めるなよ。照れる。

 

ちなみにフリードって奴は元々は優秀なエクソシストだったそうだが、信仰心はなく、性格やらなんやらが異常だったため異端となったらしい。うん、どうでもいいな。10分で忘れる自信がある。

 

「ともかく、エクスカリバー破壊の共同戦線といこう。何かあったらそこに連絡してくれ」

 

クァルタはメモに連絡先を書いてこちらによこした。

 

『合法的に女の子の連絡先をゲットできたわね』

 

あー・・・・・これってそういうことにもなるんだな。まあ別に私的な活用はする気は一切ないんだけれども。

 

ちなみにこっちの連絡先については教える必要はなかった。イッセーの母親が紫藤にイッセーの携帯番号を教えていたらしい・・・・・おばさん、それ流石にまずいのでは?おばさんは知らないでしょうけどイッセーと指導は組織的に本来敵対してるんですから。

 

「では、これで失礼させてもらおう。食事の礼はいつかさせてもらう」

 

「私としてはこの間の件があるからこれでようやくチャラなんだけど・・・・」

 

そう告げた後、その場をあとにするクァルタと紫藤を俺達は見送った。

 

「さて、俺もこれで失礼するぞ」

 

「え?もう行っちゃうのか?」

 

「ああ。人間の俺が混じってると話しにくいこともあったりなかたりするだろうし、あとの話は悪魔の皆様でどうぞごゆっくり。あ、ここの食事料金はここに多めに置いておくから追加で何か頼みたいなら好きにしな・・・・・ただし匙と木場の分は含んでないから」

 

「お前・・・・そこ頑ななんだな」

 

「本当にブレないね」

 

匙と木場が呆れたように言うが、何があっても俺は男に奢る気はないので気にしない。

 

「それじゃあまた・・・・・と、その前に木場」

 

「なんだい?」

 

「復讐にこだわるのはいいけど、それで冷静さを失えば本末転倒だ。それがお前が致命的に復讐に向いてない理由だよ。復讐を果たしたいなら・・・・・・激情は心の奥底に押しとどめることだな」

 

木場にちょっとしたアドバイスを送り、俺はファミレスをあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふふっ・・・・・うふふふふふ。ほんっとうにあなたは悪い子ね~』

 

相手はコカビエルなんだ。古の大戦から生き残ってるその強さは本物・・・・俺ひとりで戦っても確実に勝てるとは限らない

 

『だから利用できるものはなんでも利用しようっていう腹積もりなんでしょう?教会の戦士も、贔屓にしている悪魔達も・・・・そして親友でさえ。いいわねぇ・・・・そういうエゴは私大好きよ?』

 

別にラムに好かれるためにやっているわけじゃない。ただ・・・・・コカビエルを確実に殺したいんだ。俺の手で殺せればそれが一番だが・・・・・・最悪、コカビエルが死んでさえくれれば・・・・

 

『自分で手を下すことにこだわらないのもまた、あなたの良さとも言えるかもしれないわね・・・・せいぜい頑張りなさい。この私を楽しませるためにも』

 

ああ。俺の復讐劇・・・・せいぜい楽しみやがれ

 

 

 




コカビエルを殺すためなら利用できるものはなんでも利用しようとする朧

コカビエルが復讐相手でなくても普通に協力はするので・・・・意識の違いってだけかもしれませんがね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第51話

今回は朧とレイナーレとの会話がメインとなります

それでは本編どうぞ


「フリード・セルゼン?」

 

「ああ。どうにも今回の聖剣強奪に一枚噛んでるようなんだが・・・レイナーレって一時期そいつと一緒に行動してたんだろ?どんなやつなんだ?」

 

家に帰った俺は、レイナーレにフリードとか言う奴のことを聞いてみた。ぶっちゃけそいつ自身には全く興味はない。だが、敵として現れる可能性が高いのなら少しでも情報を仕入れたくてレイナーレに尋ねてみたのだ。

 

「・・・・正直あんな奴思い出したくもないわ」

 

レイナーレは表情を忌々しげに歪ませながら言う。

 

「嫌いなのか?仲間だったのに?」

 

「フリードは私が追い詰められたとき、助けて欲しいなら抱かせろって言ってきたのよ。断ったらあっさりと私を見捨てたわ」

 

「なるほど。いざというとき助けてもらえなければそりゃ嫌いにもなるわな。にしても・・・・・ふうん、フリードってやつレイナーレにそんなことを・・・・」

 

自分の中で怒りがフツフツと湧き上がってくるのを感じる。フリードってやつのこと、興味ないといったのは撤回だな。

 

レイナーレに手を出そうとしたんだ。可能なら・・・・

 

「可能ならこの手で殺してやりたい」

 

「え?」

 

「そう顔に書いてあるわ」

 

「マジか」

 

まさか考えが読まれるとは思わなかった。

 

「以心伝心なによりだ。お礼にお前を見捨てたフリードにはそれなりに報いを与えてやるから」

 

「そう・・・・それはありがたいわね。けど、別に無理にどうこうしなくてもいいわよ。嫌いではあるけどある意味では感謝もしてるもの」

 

「感謝だと?」

 

「ええ。なにせあいつが見捨ててくれたおかげで私は・・・・」

 

「私は?」

 

「・・・・・なんでもないわ。気にしないで」

 

いや気にしないでって・・・・・・無理だろ。一体何だって言うんだ?

 

『朧・・・・あなた本当に経験豊富なの?』

 

は?どう言う意味だよラム?男女仲云々の経験ならお前も見てきただろうが。十分に豊富だよ。

 

『だったらどうしてそんな・・・・まあいいわ。見ていて面白いし』

 

何なんだ一体・・・・・

 

「まあ、フリードはあなたなら問題なく対処できるでしょうから大して警戒する必要は多分ないでしょうね。問題はあなたが憎くて憎くて堪らないコカビエルだけど・・・・・フリードの比じゃない程に強いわ。せいぜい死なないように気をつけなさいよ?」

 

「言われるまでもないさ。まあ、そう簡単に死んだりなんかしないから心配するな」

 

「別に心配なんて・・・・・まあ、あなたが死んだら夕食を作るひとがいなくなるからそう言う意味では心配だけれど」

 

そこまで俺の作った料理を気に入ってくれてるなんて光栄極まるな。

 

「と、そうだ。レイナーレに確認しておきたいことがひとつあるんだが・・・・」

 

「なに?」

 

「今回の件・・・・コカビエルの独断だと思うか?アザゼルが関与している可能性は・・・・」

 

「無いわね」

 

アザゼルが関与している可能性があるかどうか気になって訪ねてみるが、レイナーレは即答した。

 

「お早い解答だな」

 

「当然よ。アザゼル様は平和を愛するお方よ。過去の対戦だって私達堕天使は真っ先に手を引いた・・・・アザゼル様が仲間が犠牲になるのを嫌がったからよ。そんなアザゼル様が下手すれば戦争の火種になりかねないようなことを企てるはずがないわ。コカビエルの独断に決まっているわ」

 

やたらと熱心に語るレイナーレ。よほどアザゼルのことを敬愛しているのだろう・・・・・少々妬けるな。

 

「やはりアザゼルが関与してる可能性はほぼゼロとみていいか・・・・・直接会ってるからアザゼルの性格は大体把握しているが、同じ堕天使であるレイナーレのお墨付きなら安心だな」

 

「・・・・え?」

 

レイナーレはキョトンとした表情を浮かべた。

 

「ちょっと待ちなさい朧。今、アザゼル様と直接会ったと言ったかしら」

 

「ああ、言ったよ。そういえばレイナーレにはまだ言ってなかったな。アザゼルとは3年ぐらい前、ミリアと旅をしてた時に会ってるんだよ」

 

俺の神器・・・・・ラムのことに興味を持って会いに来たんだよな。白龍皇と一緒に。俺にとってはある意味では本当に迷惑だったが・・・・・白龍皇に半分にさせられたから。

 

「どうして言わなかったのよ!」

 

「え?いや、そこまで大事な事じゃないと思って・・・・」

 

「十分に大事なことよ!ハーレムのことといいどうしてあなたは肝心なことを中々話さないのよ!」

 

何やら怒り心頭なレイナーレ。というか、ハーレムのことはあっさり受け入れてたから肝心なことには含まれないのでは?

 

『そうね。あなたの中ではそういうことになっているのね』

 

え?どういうことだ?

 

『わからないならいいわよ。それよりも、今はレイナーレちゃんを宥めなさい』

 

なんか釈然としないが・・・・とりあえずわかった。

 

「と、とりあえずこれまで話さずにいたのは悪かったよ。素直に謝る。ごめん」

 

「まったく・・・・アザゼル様に無礼を働いてないでしょうね?」

 

・・・・・無礼か。

 

「俺はとくに何もしてないよ。俺は」

 

「何その気になる言い方・・・・って、そういえばあなたアザゼル様に会ったのは3年前って言ってたわよね?」

 

「言ったよ」

 

「・・・・・ちょうどそれぐらいの時、外出していたアザゼル様が重傷を負って帰ってきたことがあるんだけど」

 

「ごめん、それやったのミリアだわ。アザゼル、ミリアを口説こうとしてな・・・・・ミリアはあんな悪癖持ちのくせに男に対する免疫がないから半殺しにしちゃったんだよ」

 

あれは凄まじい光景だったな・・・・・半狂乱気味な悪魔が堕天使の総督を半殺しにするとかそう何度も見られるものじゃないだろう。

 

「おいたわしやアザゼル様・・・・・というより、アザゼル様を半殺しにできるってその悪魔どんだけ強いのよ」

 

「実力は魔王クラスだからなぁ・・・・しかも超越者扱いらしいしぶっちゃけ相当強いよ。アザゼルよく半殺しで済んだなぁって思ったもん」

 

「もしもアザゼル様じゃなかったら・・・・・噂通り?」

 

「ああ。去勢されてただろうな」

 

ミリアは『去勢悪魔』の異名でも知られる最悪な悪魔だからな。ミリアによって去勢された悪魔、堕天使はそれこそ数知れないらしい。天使連中はミリアにちょっかい出すことはほとんどないから被害はほぼないらしいけど。

 

そしてもっと恐ろしいのは・・・・ミリアが別の異名も持っていることだ。そしてそっちの異名の方が有名であり・・・・・俺がミリアに頭を抱える原因の一端。ミリアの悪癖が生んだ悲劇だ。

 

「朧?なんだか顔が青いけれど大丈夫?」

 

「・・・・大丈夫だよ。ちょっとミリアのこと思い出してブルーになってただけだから」

 

「まあ・・・・心中察するわ。そういえば、その悪魔は今どこでどうしてるのよ?」

 

「んー・・・・・前に連絡とったときは南極に行くって言ったたっけか」

 

そんなところで何をしてるのかは知らんがな。

 

「・・・・それ大丈夫なの?その悪魔の悪癖って・・・・」

 

「まあ大丈夫だろ。むしろ俺としては人目がない分安心だ」

 

「そ、そう・・・・ところでその悪魔に私のこと話したりしてないでしょうね?」

 

「話してないよ。話すと面倒くさいから・・・・・」

 

まあ、長年の旅のおかげかどうかは知らないが堕天使やら天使に対する敵対心は薄いから最悪話し合いでどうにかなるとは思うけど・・・・それでも面倒くさいから言っていないのだ。

 

「けど、その悪魔がここに来たらバレるんじゃないかしら?」

 

「まあそれはな・・・・・そうだな、せっかくだし言っておこう。実は、そのうちお前のことをリアス達に話そうと思ってるんだ」

 

「グレモリー達に私のことを?大丈夫なのそれ?」

 

「大丈夫なように説得する。時間はかかるかもだけど・・・・・レイヴェルのこともあるし、お前のこと受け入れてもらわないとやりづらくなっちゃうからさ」

 

そう簡単にはいかないだろうけどな・・・・・なにせレイナーレはイッセーとアーシアを殺してる。リアスは自分の眷属を心の底から大事にしてるから、説得するのは難しいだろう。

 

だが・・・・それでもどうにかして説得したいと思う。説得できれば、レイナーレも今よりは自由に生きやすくなるだろうし。

 

「・・・・まあ、それを決めるのはあなただから、その辺りのことは任せるわ。まあ今の生活にも大して不満はないけど」

 

「そうか・・・・まあいずれ何とかしてみせるさ。今は・・・・・コカビエルを殺すことに集中しないとだな」

 

「今更になるけど・・・・・殺せるの?」

 

「さあな。正直やってみないとわからない。ただ、俺の幻術は殺せるだけのポテンシャルは持ってると自負している。やり方次第では・・・・・殺れる」

 

自惚れるわけではないが、俺の能力をたいして知らない初見の相手ならば殺すのはそう難しくはないと思う。逆に、俺の能力、力の全容を知られてしまえば殺すのは厳しいだろう。

 

コカビエルと戦うまでにどれだけ力を隠して置けられるか・・・・やはり、イッセー達を利用してうまく立ち回る必要はありそうだな。

 

「・・・・・もう一つ聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

 

「なんだ?」

 

「やっぱりコカビエルは自分の手で殺したいって思うかしら?」

 

いやに神妙な面持ちで尋ねてくるレイナーレ。その表情に、どうにも引っかかるものを感じるが、ひとまず答えることにする。

 

「俺の手で殺せたらそれに越したことはないと思っているが・・・・最悪コカビエルが死ねばあまり拘りはしないさ。俺が一番許せないのは母さんを苦しめ、殺したあいつが生きているっていう事実だからな」

 

「そう・・・・わかったわ」

 

「なんでそんなことを聞くんだ?」

 

「別に。ただ気になっただけ。それよりも、そろそろお風呂にしましょ。今日も私の髪・・・・ちゃんと洗ってちょうだいよ?」

 

「あ、ああ。もちろんだ」

 

レイナーレ言動にわずかに疑問を抱きながらも、今日もレイナーレの髪を洗おうと風呂場へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朧は・・・・自分の手でコカビエルを殺すことに拘らないのね

 

だったら・・・・・私でもいいのね

 

私がこの手で奴を・・・・・コカビエルを・・・・

 

殺しても・・・・・いいのよね?




実際問題、悪魔であるレイヴェルもハーレムに入ってるのでレイナーレのこと許してもらうのは必須だったりする

敵対を危惧してこれまでレイナーレのことを隠していましたが・・・・・はてさて今後どうなることか

それでは次回もまたお楽しみに!


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第52話

今回はイッセーとのお話です

最近は話を引き延ばしてるみたいで申し訳ない・・・・・

それでは本編どうぞ


「授業サボってこんなところで何してるの朧?」

 

屋上で寝っ転がっていると、イッセーが声をかけてきた。

 

ちなみに今教室で授業は普通に行われている。つまり、イッセーの言う通り俺は授業をサボっているということになる。

 

「いやぁ、今日か聖剣破壊の計画を進めるんだと思ったら昨日寝れなくってな。だから授業サボって仮眠とっておこうかなって思って」

 

まあ半分嘘だけどな。昨日寝れなかったのは本当だけど・・・・・・コカビエルに勝つための算段をひとりで集中して考えたかったから屋上にいたんだ。まあ、結局向こうの出方がわからないから考えても無駄って結論に至ったけどな。

 

『当然よ。そもそもあなた、元々は相手の出方に合わせて戦うタイプなんだし』

 

ははっ、そうだったな。

 

「気持ちはわからなくはないけど・・・・それなら教室で寝ててもいいんじゃないか?幻術使えば誤魔化せるだろ?」

 

「いやいや、さすがに寝ながら幻術は使えないっての」

 

本当は時間制限とかつければ簡単な幻術は使えるんだけど・・・・・一応隠しておこう。

 

「というか、サボリ云々はお前もそうだろうが」

 

「あー・・・・・まあそうだけどさ。たまにはいいって。となり座っていいか?」

 

「どうぞ、レディ」

 

「レディはやめて。寒気がする」

 

苦笑いを浮かべながら、イッセーは俺のとなりに腰掛ける。

 

「・・・・・こうしてると、あの時のこと思い出すな」

 

「あの時?」

 

「私が悪魔になったばかりの頃・・・・・一緒に授業サボったことあったでしょ?」

 

「ああ、あの時か・・・・・」

 

あの時のことはよく覚えている。なにせ、レイナーレを手中に収めようと思った日なんだからさ。

 

「悪魔になったばかりでまだ日の光が辛くて・・・・朧はあの時私が悪魔だって気がついたのか?」

 

「ああ・・・・お前の話を聞いて、日の光を浴びて辛そうにしてるのを見てわかったんだよ。ああ、イッセーは悪魔になったんだなって」

 

「朧はその時どう思った?」

 

「・・・・オブラートに包んで答えて欲しいか?それともはっきり答えて欲しいか?」

 

「・・・・・はっきり答えて欲しい」

 

一瞬答えに詰まったな・・・・・・つまり、正直な答えを聞くのが怖いってことか。

 

悪いなイッセー・・・・・その怖いの、多分的中だ。

 

「ショックだったよ。それと同時に悲しくもなったし・・・・・ちょっと憎しみも抱いた」

 

「・・・・・どうして?」

 

「前に言ったと思うが、俺ははぐれ悪魔に何度も襲われている。奴らは間違いなく俺を殺そうとしていた。俺にとって悪魔ってのは基本的に忌むべき存在なんだ」

 

今でも容易に思い出せる。俺を襲ってきた悪魔共の事を・・・・・・大半は返り討ちにして殺したけどな。

 

「そんな種族に親友であるお前がなってしまった・・・・・ショックを受けないわけ無いし、憎しみだって抱くさ」

 

これは嘘偽りのない正直な気持ちだ。悪魔になってしまったが故に・・・・・俺はイッセーに僅かな憎しみを抱いてしまった。悪魔への憎しみが消えることは永劫ないから。

 

「今も・・・・・憎い?」

 

「ああ、憎いよ」

 

「・・・・・そっか」

 

俺の返答を聞き、イッセーはわかりやすく落ち込んでみせる。まあ、親友に憎いなんて言われれば落ち込むに決まってるが。かく言う俺だって、親友に憎しみを抱くのは辛いがな。

 

けど・・・・・

 

「イッセー・・・・・憎いだけの奴を、いまだに親友だと思っていられるほど俺はお人好しじゃない」

 

「え?」

 

「悪魔は憎い。けど、それは種族としての括りでの話だ。兵藤一誠という個人に対してはこれ以上ない友愛を抱いてる。それはお前が人間だったとしても悪魔だったとしても変わらないさ。お前は今でも・・・・そしてこれからも、俺にとっては最高の親友だよ」

 

「・・・・・本当?嘘じゃない?」

 

「嘘つきだけど・・・・・これは本当だよ」

 

何があってもイッセーは俺にとって親友だ。そうたとえ何があっても・・・・敵になったとしても、殺すべき相手になったとしても俺はイッセーを親友だと思い続けよう。

 

『残酷ね。それは言い換えれば親友でも殺すときは殺すって言ってるようなものじゃない』

 

・・・・・否定はしないさ。

 

「あと・・・・・オカ研の皆もそうだな。リアス部長も朱乃先輩もアーシアも小猫ちゃんも・・・・・あとついでに木場もか。好きか嫌いかって言われてば好きだ。同じ部活に所属してるんだから情の一つも抱くさ」

 

実際問題あいつらって結構面白いからなぁ・・・・・ラム譲りの愉悦感覚で言えば、一緒に居たほうが得なのは間違いない。

 

『それは。私も同意見ね』

 

だろ?

 

「さっきは自分で否定してたけど、朧ってなんだかんだでお人好しだよな」

 

「あほか。俺みたいなのがお人好しなら人類の6割8分がお人好しだっての」

 

「また中途半端且つリアルな数字を・・・・」

 

だけどまあ、実際そんなもんだろ・・・・・多分。

 

「さて、この話はここまでだ。それよりもほかに話しておかなければならないことがあるからな」

 

「それって・・・・やっぱり聖剣の破壊に関することか?」

 

「そうだ。まあ、正確には首謀者であるコカビエルのことだけどな」

 

コカビエルの名を聞いた瞬間、イッセーの表情が引き締まり、目つきが変わった。

 

「コカビエルってやっぱり強いのか?」

 

「当然だ。大昔の大戦を生き残った堕天使の幹部なんだからな。その力は間違いなく本物・・・・・以前お前は代償を支払って禁手(バランスブレイカー)状態になってライザーと互角に戦っていたが、今回はそうはいかないだろう」

 

ライザーは確かに強い。能力は厄介だし、戦闘センスもあるといっていい。だが・・・・コカビエルはそのはるか上を行くだろう。ライザーとは比較にならないほどに強いはずだ。

 

「私が禁手化(バランスブレイク)しても勝てないってこと?」

 

「勝つどころか、手も足も出ない可能性が高いと思ったほうがいいだろう」

 

禁手化(バランスブレイク)したとしても、イッセーの元々のポテンシャルがぶっちゃけ人間に毛が生えた程度だからな・・・・・これでは勝てないだろう。まあ、俺よりは身体能力上だろうけど。

 

もしも勝てるとしたら、多大な代償を支払って限界を超える力を手にするか・・・・・覇の力に飲まれるかだろうが、そうなったときはさすがに止めさせてもらおう。

 

「だったらもしもコカビエルと戦闘になったら・・・・・」

 

「・・・・・まあ、死ぬ気で戦わないとだな」

 

たとえ死ぬ気で戦ったとしても、イッセー達じゃコカビエルに勝てる可能性は低い。だが、少しでも消耗させてくれれば・・・・・俺の幻術で殺す。最悪消耗させることができなくても・・・・・可能ならば殺すつもりだがな。

 

『微妙に自信なさげね。正直私の力をうまく使えば苦もなく殺せると思うのだけれど?』

 

相手は堕天使の幹部だぞ?一定以上の強敵との戦闘の経験はそんなにないんだからそう簡単にいくかっての。

 

『へえ・・・・・あなた、随分と見くびってるのね』

 

お前の力をか?

 

『いいえ、違うわよ。あなたが見くびっているのは・・・・うふふっ♪』

 

こいつ・・・・話すつもりがないなら途中まで言いかけるなっての。面倒なやつだ。

 

「コカビエルと戦うとしたら・・・・・命懸けになるってことか」

 

苦々しげに表情を歪めながらイッセーは言う。

 

・・・・・命懸け、か。

 

「イッセー・・・・・前に言ってたボーリングとカラオケだけどさ、やっぱ俺もいくよ」

 

「へ?」

 

突然の話題転換に、イッセーはわけがわからないといったふうに首をかしげた。

 

「桐生も来るっていうからどうしようか悩んでたけどさ・・・・コカビエルとやりあう可能性がある以上、俺も参加を予定しておこうと思ってな」

 

「どういうこと?」

 

「先の予定決めておけば、死んでたまるかって思っていざというとき気合が入るだろ?だからだよ」

 

「・・・・珍しいな。朧がそんな精神論口にするなんて」

 

まあ、イッセーがそういうのも無理はないか。基本的に俺はリアリストだから。

 

「でもまあ・・・・・朧の言ってることももっともか。皆とのボーリングとカラオケ楽しみだ・・・・・これは簡単には死ねないな」

 

「だろ?だから・・・・・命なんて掛けんじゃねえよ。死力を尽くすことと命を掛けることは別物だ。死ぬ気で戦うのは大いに結構だが・・・・・命を掛けるだなんてつまらないことはするな」

 

「わかった。朧も、自分で言ったからには命掛けはダメだからな?」

 

「当然だよ。ハーレム築く前に死んでたまるかっての」

 

コカビエルは憎い。何があっても必ず死なせてやるつもりだ。だけど・・・・・そこに命を掛けるつもりは毛頭ない。

 

こんなところで死ねない・・・・・俺はまだ、幸せになってないんだ。死ぬときは・・・・・愛する女に笑って看取られるって決めてるんだからな。

 

「お互い・・・・・絶対生きて乗り切ろうぜ」

 

「ああ・・・・そうだな」

 

互いに拳を突き合わせ、生き残る決意を固める俺とイッセー。

 

絶対に・・・・・・死んでやるものか。

 

 

 

 

 

 

 




朧とイッセーのこの関係性が好きな作者

ただ、親友であっても割り切るところは割り切る朧の気持ちは正直わからなかったりする・・・・・作者なのに

それでは次回もまたお楽しみに!


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第53話

今回は朧とゼノヴィア、イリナ3人のお話です

それでは本編どうぞ


放課後、俺は神父の格好をして町中の人気の少ない場所を歩き回っていた。神父の格好をしているのはコカビエルの配下だというイカレ神父のフリード(たしかそんな名前だった)は教会の追手を始末しているようなので、誘き寄せるためにだ。ちなみに、この格好は俺の幻術によって施したものである。こういう時幻術は本当に便利である。

 

あと、俺はひとりで町を歩き回っているわけではない。同行者が二名ほどいる。その同行者というのは・・・・・教会の戦士、ゼノヴィア・クァルタと紫藤イリナだ。

 

「・・・・ねえ、なんで君は私たちと一緒にいるの?」

 

紫藤が俺にジト目を向けながら尋ねてくる。まあ、もっともな疑問だな。普通に考えれば俺は与しているイッセー達と行動を共にしているはずなのだから。

 

「んー・・・・・二人が割と俺の好みだから?」

 

「えっ!?そ、そんなこと言われても・・・・・」

 

俺の発言に紫藤は顔を赤くする・・・・・・うん、やっぱこの子チョロいわ。

 

「まあ嘘だけどさ」

 

「私の純情返して!」

 

おお、いいリアクション。なんというか、イッセーに並んで嘘のつきがいのある子だな。冗談抜きで好みかもしれない。

 

「イリナの純情はどうでもいいから置いておくとして、実際君はなぜ仲間である悪魔たちではなく私たちに同行する?」

 

「どうでもいいって酷くないゼノヴィア!?」

 

イリナの悲痛なツッコミにも顔色一つ変えることいなく、ゼノヴィアは興味深そうに俺に視線を向けてくる。

 

まあ、別に知られて不都合な理由でもないし、答えてやるか。

 

「俺・・・・いや、俺たちが聖剣破壊の協定を持ちかけたのは木場に復讐を果たさせるためだ。そのためには木場に聖剣使いと戦い、聖剣を破壊してもらう必要があるが・・・・・聞くが、仮にコカビエルと戦うことなく、自分たちの手だけで聖剣回収ができそうだったら場合、あんたたちは協定を結んだからという理由でイッセー達に連絡をとってくれるか?」

 

「・・・・・いいや。私達の手だけで任務を果たせるというのなら悪魔の手を借りるつもりはない」

 

「そうね。私たちとしては悪魔と協力っていうのは上に知られたくないから、手を借りる必要がなさそうならイッセーちゃんたちには連絡しないわ」

 

「だろうな。だからこそ、俺はあんたたち二人に同行してるんだよ。こっちが先に敵方と接触した際、その時の状況や敵の強さにかかわらずイッセーたちに連絡できるようにな」

 

俺の目的はコカビエルだが、それでも同じ復讐者としては一応木場の復讐も果たせせてやりたいとは思ってるからな。協定を持ちかけたもののクァルタと紫藤だけで十分だったから手は借りませんでしたじゃあまりにも木場が報われないからな。

 

ただまあ、一応向こうが先に接触した際も連絡をよこしてくれることになっているが。

 

『悪魔・・・・それも男相手に気を遣うなんて、あなたも丸くなったわね』

 

俺だって不本意だよ。だけど、多少なりとも縁はあるんだからそれぐらいはしてやりたいって思ってもおかしくないだろ。

 

『ふふっ、そうね♪』

 

ったく・・・・・楽しそうにしやがって。

 

「・・・・・・人間でありながら、随分と悪魔に肩入れするんだね君は」

 

クァルタが俺を睨むように見ながら言ってくる。

 

「教会の戦士であるクァルタさんからしてみれば、人間なのに悪魔に協力する俺の気がしれないのかな?だったら言わせてもらうけど・・・・・俺に言わせれば悪魔も教会も大差ないよ」

 

「聞き捨てならないわね。偉大なる主を信仰する私達を悪魔なんかと一緒にしないでもらえるかしら?」

 

「全くだ・・・・・・思わず断罪してしまいそうになった」

 

二人共俺に聖剣をちらつかせてくる。どうやら相当気に障ってしまったらしい。

 

本当に熱心な信者だ・・・・・だがまあ、清いだけではいずれ苦しむことになるかもしれないし、ここである程度薄汚い現実ってやつを突き立ててやろう。

 

「・・・・・助けて欲しいなら誠意を見せろ」

 

「「え?」」

 

「俺は教会の戦士がそう言いながら、助けを求める人間にお布施を強要するところを見たことがあるよ。それも一度じゃなく何度もな。ちなみに、お布施を断られたから見捨てたって奴もいる」

 

「なっ!?馬鹿な!高潔な教会の戦士がそんなことをするわけがない!」

 

「そうよ!でたらめ言わないで!」

 

俺の言ってることが信じられないのか、二人は怒りを顕にする。

 

「まあ信じたくないなら信じなければいい。けどな、教会の中にはそういう神への信仰心をもたず、営利目的(ビジネス)で所属してる奴もいるんだよ。まあ、信者に比べれば少数ではあるだろうがな」

 

「ビジネスって・・・・そんな・・・・・」

 

「金のために教会に所属するなんて・・・・・・」

 

信じなければいいとはいったが、それでも二人共それなりにショックを受けているようだ。俺の言っていることがタチの悪い冗談だと割り切れなかったといったところだろうか。

 

「ショックを受けているところ水を差すようで悪いが、別にそのこと自体は悪いことでもないと俺は思うぞ?」

 

「え?」

 

「どういうことだ?」

 

「金はそれなりに大事なものだっていうことだよ。俺がさっき言った例は極端で、流石に軽蔑せざるを得ない所業だと言わざるを得ないが、それでも金ってのは衣食住には欠かせないものだ。事実、お前たちだって先日金不足のせいで空腹に苛まれただろ?」

 

「うっ・・・・・・」

 

「そ、それは・・・・・」

 

先日の一件があってか、反論できずに二人共たじろいでしまっている。

 

実際問題、信仰心はないが金になるから教会に属しているという者はいくらかいるだろう。だが、だとしてもその行いで救われるものがいるというならそれは否定するべきことではない。目的はどうあれ、結果的にプラスに働くのならばそれは確かな善行なのだから。

 

だが・・・・・・そういった奴らとは違い、確かな害悪というのもある。

 

「問題があるとすれば・・・・・我欲のために教会を利用している連中、あるいは神の名のもとに平然と非道な行いをする連中だな。それこそ、バルパー・ガリレイがいい例だろう」

 

「・・・・以前言ったが、奴の先導のもと行われた聖剣計画は教会内でも最大級に嫌悪されている。だからこそバルパーは教会から追放された」

 

「まあ、それについては当然の処置と言っておこうか。だがな・・・・平気な顔をして非道を行う奴はバルパーだけとは限らない」

 

俺は昔のある出来事の事を思い返しなら言う。本来なら・・・・・思い出したくもないことだが。

 

「バルパーのような非道を行ってる人が教会内にまだいるって言うのかしら?」

 

「ああ、俺はそう思ってるよ。なんなら他にも例を出してやろうか?」

 

「「・・・・・・」」

 

二人とも俺の提案に口を閉ざす。二人共熱心な信者であるがゆえに、教会の裏側・・・・・暗部を知りたくはないのだろう。

 

ただまあ、その選択はおそらく正解だ。ミリアと旅をしていた時は教会に属する人間の非道を何度か見かけたし、なにより・・・・・・その一部を教会が黙認している節もあるしな。まあ、かわいそうだから流石にそこまでは教えないでおくけど。

 

「神に仕える教会に属する者の中にもそういうロクデナシはいる。逆に、悪魔に属していながら善意に満ちた者もいる。そう言う意味で、俺は悪魔も教会も大差ないと思っている」

 

まあ、別の意味で・・・・個人的な事情で大差ないと思ってるがな。

 

悪魔も教会・・・・天使も堕天使も俺にとっては憎むべき対象だ。俺の幸せをぶち壊してくれたんだからな。

 

「さて、今の俺の話を聞いて君たちは教会に失望したかな?協会に属するのが嫌になったか?この任務を全うする気も失せちゃったりして?」

 

意地の悪い問いかけだというのはわかっている。だが、この程度で教会に失望してしまうというのならこいつらは所詮そこまでだ。別の生き方を勧めざるを得ないだろう。

 

『そんな気遣いするだなんて・・・・・甘ちゃんねぇ』

 

別に気遣いじゃないさ。ただ、憎むべき教会に属す人間がそれで減るならラッキーだなと思ってるだけさ。

 

『だからって、わざわざコカビエルと接触する前に言うことないじゃない。コカビエルを消耗させる大事な駒だっていうのに。本当に・・・・・あなたは矛盾だらけの人間ね。まあ、そういうところが好きなんだけど♪』

 

はいはい。それはなによりですよラムさん。

 

「・・・・・あまり見くびらないでくれ」

 

「ほう・・・・・というと?」

 

「確かに、君の話は私たちにとっては色々と考えさせられるものだった。だが・・・・」

 

「その程度じゃ、私たちの主に対する信仰は微塵も揺るがないわ。教会に主を信仰しない者がいたとしても、私たちはただ主を信じ続けるだけよ」

 

確かな決意の篭った眼で、力強く言い放つクァルタと紫藤。

 

ああ、うん・・・・・残念だ。教会の戦力を落とすことはできなかったよう。この二人が教会に失望してくれればささやかながら復讐になると思ったのに。

 

「・・・・いい返事だ。だったらせいぜいその信仰を保ち続けられうように努力することだな」

 

我ながら憎たらしい言い方だ。

 

というか、そもそも信仰を保ち続けることに意味なんてないんだけどな・・・・・なにせ、彼女たちが信仰する聖書の神は・・・・

 

『とうの昔に存在しないものねぇ。そんなものを信じ続けるだなんてとんだ道化ね』

 

お前が道化言うか?世界トップクラスの道化の癖に。

 

俺がラムに対してに呆れていると・・・・俺の携帯が鳴った。数回コールしただけですぐに鳴り止む・・・携帯画面を確認すると、着信はイッセーのものだということがわかる。

 

()()話|はここまでのようだ・・・・・イッセーたちの方であたりを引いたらしい」

 

さっきの着信は合図だった。どちらかが敵方と接触した場合、携帯を鳴らしてすぐに切るようにあらかじめ打ち合わせていたのだ。

 

イッセーたちが今いる場所は把握している。問題は既にコカビエルが向こうにいるかどうかだが・・・・・それは行ってみてのお楽しみだな。

 

「さて、二人の信仰がどれほどのものなのか・・・・・見せてもらおうか」

 

「ああ、存分に見るといい」

 

「見逃さないように気をつけてね」

 

俺達はイッセーたちの下へ・・・・・戦いの場へと駆け出した。




教会のあれこれに関しては私の勝手なイメージです

でもまあ、正直まったくないと言い切れないとは思ってます

大きな組織ともなると、そういった人間も出てきそう

それでは次回おまたお楽しみに!


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第54話

今回は朧視点とイッセー視点でお送りします

それでは本編どうぞ


『朧・・・・・言ってもいいかしら?』

 

なんだよ?

 

『女の子二人に置いていかれるだなんて・・・・・流石にかっこ悪いわよ?』

 

わかってるよこんちくしょう!

 

先程、意気揚々と敵と邂逅したイッセーたちの下へと駆け出した俺とクァルタ、紫藤であったが・・・・・俺の走力が二人よりもはるかに劣っていたため置いていかれてしまった。

 

いや、うん・・・・・しょうがないよね。だって俺の身体能力並の人間よりちょっといい程度なんだから・・・・・鍛えられた教会の戦士に追いつけるわけないし。

 

『まあ幻術を使った戦闘に身体能力の善し悪しは二の次だから幻術使いとしては問題ないとは思うけれど・・・・・男としてはやっぱりかっこ悪いわね』

 

うるせぇ、俺だってそれなりにショック受けてるんだからそれ以上傷をえぐるな。

 

ともかく、イッセー達の下に急がないと・・・・・・

 

「ストップよ朧?」

 

「・・・・・へ?」

 

突然、背後から不機嫌そうな聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

声のする方へと恐る恐ると振り返ると・・・・・・

 

「そんなに急いでどこへ行こうというのかしら朧?」

 

ニコリと黒い微笑みを浮かべるリアスの姿があった。そのすぐ近くにはシトリーもいる。

 

『朧、前からちょくちょく思っていたのだけれど、あなたって結構運無いわね♪』

 

楽しそうに言ってんじゃねぇよラム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く・・・・・エクスカリバーの破壊だなんてあなた達は」

 

「本当に困った子達ね」

 

私たちは部長と会長に近くの公園に連れてこられ、噴水の前で正座させられています。

 

先程まで私たちはイカレ神父のフリードと戦っていた。だが、その戦いの最中、聖剣計画の首謀者であるバルパー・ガリレイが現れ、フリードはバルパーを連れて撤退してしまった。そして、その二人のあとを木場と、加勢にやってきたゼノヴィアとイリナが追っていくのを見て私が悪態をついていた時に・・・・・朧の首根っこを掴んだ部長と会長に見つかってしまったというわけだ。

 

現在、私と朧、小猫ちゃんは部長から、匙は会長から説教を受けている。

 

「まったく・・・・・それで、祐斗はそのバルパーを追っていったのね?」

 

不機嫌な表情の部長が私に尋ねてくる。

 

「はい。ゼノヴィアとイリナも一緒だと思います。でも、何かあったら連絡はしてくるとは思うので・・・・」

 

「復讐の権化となった祐斗が連絡をよこすと思っているのかしら?」

 

はい、ごもっともです。やっぱり連絡してこない可能性のほうが高いだろうなぁ・・・・

 

「小猫・・・・あなたまでどうしてこんなことを?」

 

部長は次に小猫ちゃんに視線を移した。

 

「・・・・・祐斗先輩がいなくなってしまうのは嫌です」

 

小猫ちゃんは悲しげな表情で正直な気持ちを部長に告げる。その言葉を受け、部長は怒るというよりはどこか困惑している様子だ。

 

「朧・・・・あなたはどうかしら?」

 

「俺は木場に復讐を果たさせたいと思ってます。リアス部長以上に・・・・・木場の苦しみはわかっているつもりなので」

 

「・・・・・」

 

淡々と語る朧に、部長はむっとしたように眉を潜ませた。自分以上に木場のことがわかっているという朧の言葉に思うところがあるのだろう。

 

「過ぎたことをとやかく言っても仕方がないわね。けれど、あなた達の行動が世界に大きく影響を与えてしまう可能性も十分にあったということはしっかりと理解して反省なさい」

 

「「・・・・はい、ごめんなさい」」

 

「・・・・・・」

 

私と小猫ちゃんは素直に謝罪の言葉を述べたが、朧だけは何も言わずに黙っていた。

 

「朧、返事をしなさい」

 

「・・・・・すみませんでしたリアス部長」

 

「はあ・・・・まあいいわ」

 

渋々といった様子で謝罪する朧。少々失礼な態度だと思ったけれど、部長は呆れながらもそれを許した。

 

朧・・・・・お前は一体なにを思っているんだ?

 

「匙・・・・どうやらあなたには反省が必要なようね」

 

「ゴメンなさいゴメンなさい!許してください会長!」

 

「ダメです。罰としてお尻を千叩きです」

 

「イタァ!?」

 

私達が部長から説教を受けている一方で、匙は会長から折檻を受けていた。

 

魔力の篭った手で匙の尻を叩く会長・・・・・あれは痛そうだ。物理的にも精神的にも。この歳で尻叩きだなんて恥辱でしかないからな。

 

「イッセー、余所見しない」

 

「は、はい!すみません!」

 

匙たちの方に意識が向いてしまっていた私に、部長の檄が飛んできた。

 

「祐斗については使い魔に捜索を任せているわ。見つかり次第、皆で迎えに行きましょう。あとのことはそれから考えるわ。まあ、ともあれ・・・・・」

 

部長は私と小猫ちゃんを引き寄せ、優しく抱きしめながら頭を撫でてきた。

 

「あなたたちが無事でよかったわ。本当に心配ばかりかけて・・・・馬鹿な子達ね」

 

優しい声で、部長は私たちの無事を喜んでくれていた。部長の温もりが私と小猫ちゃんを包み込む。

 

「朧・・・・・あなたも何事もなくて良かったわ」

 

私たちのことを抱きしめたまま、部長は朧に視線を向けながら言う。

 

「そういう気配りは自分の眷属だけに振りまいてくださいよ。確かに俺はオカ研メンバーとしてあなたたちに協力していますが・・・・・俺なんかを気遣うなんて、無駄な労力ですよ」

 

「またあなたはそんな・・・・・」

 

部長の自身に対する気遣いを無用だと断ずる朧。朧のことだから、意識してそうやって壁を作っているのだろうが・・・・・どうして、そんな風に壁を作っているのだろう。

 

「話が終わったのなら俺はこれで失礼しますよ。やることがあるので」

 

「・・・・・やることっていうのはなにかしら?」

 

「クァルタと紫藤の二人と交わした協定はまだ生きています。彼女たちを探して任務に協力します」

 

どうやら朧は部長の説教を受けてなお、退くつもりはないようで、聖剣破壊計画を続行するつもりのようだ。

 

「ダメよ。そんな勝手許さないわ」

 

「あなたが許す許さないだなんて関係ありませんよ。先程はリアス部長の顔を立ててあえて捕まりましたが、元々俺はあなたの眷属でもなければましてや悪魔でさえない。俺は人間としてあの二人と協定を交わした・・・・・それに関して口出しされるいわれはありません」

 

「それ・・・は」

 

朧の言い分に、部長は反論しなかった・・・・いや、できなかったのだろう。いくら協力関係にあるとしても、朧はやはり私たちとは根本が・・・・種族が違う。朧に命令を下す権利は、部長には無い。

 

けど・・・・だけど・・・・

 

「ただまあ、一応必要なことは言っておきます。この件に関しては人間『現世朧』が個人的な理由で介入しているので、リアス部長たちに過度な迷惑をかけることはありません。世界に対する影響もさほどないと思いますので、その辺りの心配は無用です」

 

「・・・・それは屁理屈というのではないかしら?少なからずあなたは私たちと縁を築いているのだから・・・・・完全に無関係とはいかないわよ?」

 

「それでも無関係を貫ける可能性は高いでしょう。何を言われてもあなた達は俺が勝手にやったといえばいいのですから」

 

つまり、いざという時は自分を切り捨てろと朧は暗に示唆しているのだろう。

 

私たちを思ってそう言ってくれてるとは思うのだけれど・・・・・私は朧のその気遣いを悲しく感じられてしまう。

 

「それと、もう一つ言っておきますが・・・・・万が一の時は木場の命は可能な限り保証します。俺の幻術ならばもしもの場合は木場を逃がすことぐらいはできると思いますので・・・・もっとも、木場次第のところもあるので必要以上に期待されても困りますが」

 

朧は木場の身も案じてくれていた。いざという時は木場を逃がそう考えているようだ。

 

「朧・・・・お前、どうしてそこまで?」

 

何が朧をそこまで駆り立てるのか・・・・自分への気遣いは無用だと言いながら、なぜ私達を気遣うのか、私は尋ねてみる。

 

「・・・・・ただの私情だよ。それ以上も以下もない」

 

返ってきた朧の答えは・・・・・実にあっさりしたものであった。けれど、そのあっさりした答えは、これ以上ないほどにしっくりしていた。

 

朧は自分勝手なお人好しだ。朧は否定するだろうが、朧の行動の多くは誰かの為の私情で占められている。そして今回もまた・・・・・そういうことなのだろう。

 

馬鹿だと思った。けれど同時にすごいとも・・・・羨ましいとも思った。私も朧みたいに、自分だけで責任を背負ってしまえるようになりたいと・・・・私は心から思った。

 

「それじゃあ、俺もう行くから。またなイッセー。それとリアス部長と小猫ちゃんも」

 

手をひらひらと振り、ニッと笑みを浮かべながら朧はその場を去っていく。そんな朧の背を、私はただただ見つめることしかできなかった。

 

朧・・・・・死ぬなよ。

 

「会長!十分に反省しましたから許してください!」

 

「ダメよ。あと960回ね」

 

匙・・・・お前も尻が死なないように気張れよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーたちと別れた後、俺は一端自宅に帰ってきていた。

 

うん・・・・あんなふうにイッセー達と別れておいて家に帰るだなんてカッコ悪いってのはわかってるよ。だけど、コカビエルを探す前にレイナーレの夕食を作っておかないとだから。

 

「よし、完成。レイナーレ、夕食は作っておいたぞ。俺はもう行くから」

 

「私の夕食を作るために帰ってきてくれたのは嬉しいけれど、忙しないわね。もう少しゆっくりしてから行ったらどう?夕食だった朧の分はないし」

 

レイナーレの言うとおり、夕食は俺の分はない。机の上に置いてあるのはレイナーレの分だけだ。

 

「俺の分はいいんだよ。味見とかでそこそこ腹に入れてるから。それよりも、一刻も早くコカビエルを探したいんでね」

 

ようやく奴らが接触してきたというのに、俺はその場に居合わせることができなかった。せっかくコカビエルの足取りを掴むチャンスだったのに・・・・・それを取りこぼしてしまった。

 

あの時リアスと会ってさえいなければ・・・・・いや、リアスと会っていなくとも、俺が着いたときには既にフリーどもバルパーも去ってしまったあとだっただろうけど。

 

ともかく・・・・・今頃は木場たちは交戦しているかもしれない。その場にコカビエルも現れるかもしれない・・・・早く探さないと。

 

「それじゃあ行ってくるよ。遅くとも0時には帰ってくるようにするから」

 

「・・・・待って朧」

 

「ん?」

 

俺が出ていこうとすると、レイナーレが引き止めた。

 

「どうしたレイナーレ?」

 

「・・・・・私も行くって言ったらどうする?」

 

私も行くって・・・・

 

「何言ってるんだよレイナーレ。それじゃあお前の存在が露呈しかねないだろ?レイナーレは来なくていいから、ここで待ってな」

 

「わかってるわよ。ちょっと言ってみただけだから。わざわざ危険を冒してまで首を突っ込むなんてありえないわよ」

 

「そうか。ならいいんだけど・・・・・」

 

んー・・・・レイナーレってそういう冗談言うような奴だったっけか?でも、自分でも危険だってわかってるみたいだからでばってくることはないだろうし・・・・わからん。

 

『女心がわからないなんてまだまだね』

 

うぐっ・・・・否定はできんがムカつく。

 

まあともかく、わからんことを考えても仕方がないし、いい加減行くか。

 

「ほかに話がないな俺は出発させて・・・・ん?」

 

俺の言葉を遮るように、携帯電話が鳴り響く。画面を見てみると、そこにはリアスの名前が記されていた。ひとまず要件を聞くために、俺は通話ボタンを押して携帯電話を耳に押し当てた。

 

「もしもしリアス部長?どうかしましたか?」

 

「・・・・・朧、コカビエルと会ったわ」

 

「・・・・え?」

 

携帯から発せられた部長の言葉に、俺は驚かずにはいられなかった。




当小説の主人公である朧はなかなか戦いの場面に遭遇できない呪いか何かがかかってるんじゃないかと思ってしまう作者

まあ、さすがにあと少しで戦闘に入れる・・・・・はず

それでは次回もまたお楽しみに!


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第55話

今回、とうとう朧とコカビエルが邂逅します

はたして朧は・・・・・・・

それでは本編どうぞ


リアスから電話を受け30分後、駒王学園の門前に来るとそこにはグレモリー眷属(木場を除く)とシトリー眷属が集まっていた。

 

「あ、朧・・・・」

 

「よっイッセー。まさかコカビエルたちを探しまわってた俺よりも先にそっちで出くわすとはな」

 

まあ本当はうちにレイナーレの夕食作りに戻ってたから探し回ってはいなかったけど。

 

「とりあえず、怪我ひとつないようで良かったよ」

 

「まあ向こうはその場で戦う気はなかったみたいだったから」

 

理由はどうあれ、コカビエルと遭遇して無事その場をやり過ごせたのは儲けものだ。イッセーは中々ツイてると言っていいな。

 

もっとも、バルパーとフリードを追っていった3人のうち、紫藤は返り討ちにあって戦線離脱となってしまったようだが。エクスカリバーまで奪われてしまったようだし。木場とクァルタについては聞く限り逃げられたようだが・・・・・・まあ、あいつらもそのうちこっちに来るだろう。

 

そんなことよりも・・・・・だ。

 

「コカビエルは・・・・・もう来てるのか?」

 

「多分な・・・・私でもわかるぐらい異様な気配を感じるし」

 

確かに、イッセーの言うとおり学園の方からとてつもない重圧を感じるな。この重圧を俺は知っている。俺の母親を陵辱し、殺したやつのものだ・・・・・間違えるはずはない。

 

「・・・・・朧、来てくれたのね」

 

学園にいるコカビエルへの憎悪を募らせていると、リアスが声をかけてきた。

 

「そりゃあ麗しい美女からのお誘いなんですから。来ないのは失礼というものでしょうレディ?」

 

「まったく・・・・こんな時でもそんな軽口を叩けるだなんてさすがというかなんというか」

 

何がさすがだ。こっちは憎しみやら緊張やらで今にも張り詰めてたものが破裂しそうな心境だってのに。

 

「朧・・・・・電話して呼び出しておいてなんだけれど、今からでもあなたはこの件から手を引いてもいいのよ」

 

「は?」

 

何言ってるんだこいつは?

 

「今回の件は悪魔と堕天使、教会の問題。朧は私たちに協力してくれてはいるけれど、そのどれに属しているわけではないわ。つまり・・・・」

 

「首突っ込む理由がないから引っ込んでろってことですか?何を言い出すかと思えば・・・・・俺は好きで首を突っ込んでるんですよ?それなのに引っ込んでろだなんてそれこそ勝手な言い分です」

 

「それは・・・・そうかもしれないけれど・・・・」

 

「というより、俺に電話してきたってことは俺の幻術が必要だって判断したからですよね?だったら言わせてもらいますが・・・・・・必要なものを自分から手放そうとかもったいないことするものじゃない。今回は事態が事態ですし・・・・・俺の幻術()、存分に利用すればいいじゃないですか」

 

「朧・・・・ええ、そうね。あなたの幻術、頼りにさせてもらうわ」

 

ニコリと微笑みを浮かべながら言ってくるリアス。リアスをハーレムに加えようとかは一切思わないが、やはり女の微笑みというものはそれなりにいいものだ。こういう戦闘間近では尚更な。

 

『頼られたからには、それなりの成果を示さなければね』

 

そうだな。俺もコカビエルを殺すのに皆の力を利用しようって思ってるんだ・・・・・頼られたからにはこっちもそれなりの成果で返してやろう。

 

「ところで朧、一つ聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

 

「なんです?」

 

「彼女には今のこの状況について説明したかしら?」

 

彼女というのは俺の保護者である悪魔・・・・・ミリアのことを言っているのだろう。

 

「いいえ、伝えてませんよ。というか伝えるのは不可能です」

 

「不可能?どうしてかしら?」

 

「単純にこちらからの連絡手段がないからですよ。あのひと携帯とか持ってないから・・・・・向こうから魔力を使って一方的に連絡をとってくることはありますけど、ここ数カ月はそれもありません」

 

「そう・・・・・わかったわ」

 

俺の回答を聞き、リアスは残念そうに言う。

 

「まさか、あのひとに救援を要請しようって思ってたんですか?」

 

「ええ・・・・相手はコカビエルだもの。はっきり言ってしまえば私たちの手には余る相手。彼女が来てくれるというのなら頼もしいのだけれど・・・・」

 

まあ、ミリアの力は魔王クラスだもんな・・・・堕天使の総統であるアザゼルを半殺しにできるのだから、コカビエルの相手ぐらいは当たり前のように務まるだろう。

 

「そういうリアス部長の方は、お兄さんの・・・・魔王の力は借りられないんですか?」

 

「・・・・朱乃が打診してくれたわ。1時間後に加勢に来てくれるそうよ」

 

どうやら一時間もすれば最強の魔王であるルシファーが加勢に来てくれるらしい。そいつはまた頼もしいことだ。

 

だが、そうであるにもかかわらずミリアに連絡をとったかどうかを聞いてくるということは・・・・その一時間の間にこちらが全滅する可能性も視野に入れているからだろう。もしもミリアがすぐにでも加勢に来てくれれば、全滅のリスクは大きく減るから俺に尋ねた・・・・そんなところだろう。

 

「・・・・・恐いですか?コカビエルを一時間も相手しなければならないのが・・・・自分の仲間、眷属に命の危機が訪れるかもしれないのが」

 

「・・・・・」

 

「沈黙は肯定と取りましょう。でしたら、恐怖におののくリアス部長に一言言わせてもらいましょう・・・・誰も死にやしませんよ」

 

「え?」

 

「俺の幻術は死なないこと、死なせないことに関してはこれ以上ない最適な力だ。だから・・・・あなたの仲間が、眷属が死ぬことはありません」

 

確実とは言えないけどな。

 

「まあ、だからといって恐れるなとは言いませんけどね。その恐怖は生きるために必要なものですからね・・・・恐怖におののいて縮こまって動けなくなるのは論外ですが、恐怖を忘れて蛮行に走るのはもっと論外です。生きたいなら、生きて欲しいと願うのならば恐怖を捨てないでください」

 

「朧・・・・・ふふっ、今日は随分と優しいのね」

 

「まあ誰も死なせないつもりではありますが死闘前ですからね。男として女に優しい言葉の一つでもかけてやりたくなるってものですよ。まあ、戦闘終わったらネチネチと反省点とか言いまくる予定ですが」

 

「朧・・・・最後ので台無しだから」

 

せっかくいいことを言ってたのにイッセーに呆れ顔で言われた。解せぬ。

 

というか、イッセー、リアスと話してたからさっきまでずっと黙っててくれたのね・・・・

 

「さてそれではリアス部長、決戦前の団欒はここまでにして・・・・そろそろリアル部長から皆を鼓舞する一声を聞かせてもらいたいですねぇ」

 

俺がそう言ってリアスの方をみると、ほかのメンバー・・・・主にリアスの眷属たちもリアスの方へ視線を向けた。

 

皆に見つめられ、イッセーは腹を決めたようで声を発する。

 

「私の下僕悪魔たち!私たちの役割はソーナたちが貼ってくれている結界内に飛び込んでコカビエルの注意を引くことよ!フェニックス家との一戦とは違い、これは死線となるけれど・・・・誰ひとり死ぬことは許さないわ!全員で生きて帰りましょう!」

 

「「「はい!」」」

 

リアスの言葉に、その眷属たちは力強く返事を返す。

 

・・・・ここで『俺はリアス部長の下僕悪魔じゃありませんけどねー』とか空気の読めないことは流石に言わないでおこう。うん。

 

「行くわよ!」

 

リアスを先頭にして、イッセーたち眷属はそれに続いて門を潜って、学園内に入り込んでいく。あゆみ始めようとしたその時・・・・

 

「待ってください朧くん」

 

シトリーに呼び止められてしまった。

 

「なんですか会長?」

 

「・・・・・リアスたちの事を頼みます」

 

真っ直ぐに俺の事を見つめながら、シトリーは告げてくる。

 

「残念ですが、その頼みを聞く義理はありませんね」

 

「わかっています。だからこれは一方的な自分勝手な押し付けです」

 

・・・・まったく、お堅いイメージの生徒会長がいい性格になったものだ。

 

「・・・・・くくっ、そうですか。そういうことならわかりましたよソーナ会長」

 

俺はソーナに手をひらひらと振った後、門を潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を一言で言い表すのなら『異様』であった

 

校庭の中央には奪われた4本のエクスカリバーが光を放ちながら浮かんでいる。それを中心に校庭を覆い尽くすほどの魔法陣が刻まれていた。そして、4本のエクスカリバーの傍らには初老の男が・・・・・おそらく、そいつがバルパー・ガリレイなのだろう。

 

まさに異様な光景・・・・・だが、俺はそんなどうでもいいものよりも別のものへ視線を向けていた。

 

バルパーの頭上・・・・・空中に、黒い10枚の翼を広げた堕天使が居る。

 

ああ・・・・ああ・・・・ようやくだ。ようやく捉えた。あの時から何も変わらない姿・・・・最も忌々しく感じるその姿

 

母さんを陵辱し、殺した・・・・・俺がこの世で最も憎む相手・・・・・生きていることさえ許せない男

 

―――――堕天使コカビエル―――――

 

『とうとうね・・・・・とうとうこの時が来たわ』

 

リアスがバルパーやコカビエルと何か話しているが、それよりもラムの声がずっとよく通って聞こえてきた。

 

そうだ、とうとうこの時が来たのだ。待ちに待ったこの瞬間が。

 

先程までは憎悪で火が付いたかのように全身が、脳内が熱を持っていたが・・・・・今は違う。コカビエルをこの目で直に見たせいだろうか・・・・・・・全身が、脳内が氷のように冷たく感じる。

 

先程まではコカビエルとどう戦うか考えを巡らせていたが、今は冷静に・・・・冷酷に・・・・ただただ、どのような残酷は方法で殺してやろうかと考えを巡らせている俺がいる。

 

ああ・・・・ああ・・・・殺したい。惨たらしく殺したい。苦しめ、追い詰め、恐怖におののかせて殺したい。絶望を味あわせながら殺したい。

 

俺の脳が・・・・・ただひたすらにコカビエルを殺せと叫んでいる。体がその命令に従おうと今にも動き出そうとしている。

 

だけどまだだ・・・・まだ・・・・・下手に動くわけにはいかない。確実に殺すために今は・・・・まだ・・・・・

 

「ん・・・・?ほう、悪魔共に混じって人間がいるようだな」

 

強敵がこの場にいない憂さを晴らすのように光の槍で体育館を破壊し、つまらなそうにしていたコカビエルが俺に視線を向けながら言う。その様子からして・・・・・俺のことは覚えていないらしい。

 

まあ、俺が奴に捉えられたのはもう何年も前の話だし、あの時の俺と今の俺では目の色が違う・・・・その上、奴にとっては俺は脆弱で矮小な人間でしかないのだから覚えていなくても仕方がない。

 

仕方がないが・・・・・ああ、忌々しい。まるで母さんのことさえ覚えていないと言っているようで・・・・・忌々しい。

 

「・・・・・こんばんは堕天使コカビエル。いい夜だな」

 

俺は・・・・今にも溢れ出てきそうな憎悪を抑えながらコカビエルに言い放つ。

 

「せっかくだし自己紹介しておこうか。俺の名前は現世朧・・・・・今夜お前を殺すかもしれない男の名前だ。よく覚えておくといいよ」

 

「俺を・・・・殺す?ハハハハハハッ!随分と冗談のうまい人間だな!」

 

俺の言ってることを戯言だと笑い飛ばすコカビエル。その姿は俺の目には醜悪にしか映らない。

 

笑うなら笑え・・・・そのうち笑っていられなくなるかもしれないんだからな。

 

「その笑える冗談に敬意を評し、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうか」

 

そう言いながら指を鳴らすコカビエル。すると、闇夜の奥から大きな足音を立てながらそれが姿を現した。

 

10mはあろうかという巨体、地を踏みしめる太い四本の足に漆黒の体毛。そして・・・・・鋭い牙を覗かせる三つの頭。

 

『あらあら・・・・よりにもよって、あなたにとって天敵とも言える存在が出てきてしまうなんてね』

 

ラムの言うとおり、そいつは俺の天敵だ。

 

地獄の番犬の異名を持つ三頭犬・・・・・・ケルベロス

 

その6つ眼光は・・・・・真っ直ぐに俺へと向けられていた。

 

 

 

 




朧がリアスにやたらと優しい言葉をかけていたのは自分の気持ちを落ち着かせるためでもあります

他人を気遣う余裕さえ持てれば、自分も冷静さを失わずにすみますからね

さて、とうとうコカビエルと邂逅した朧ですが・・・・・はたしてコカビエルを殺せるどうか・・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!



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第56話

今回は朧VSケルベロスとなります

なぜ朧にとってケルベロスが天敵なのかもわかります

それでは本編どうぞ


俺を睨む六つの眼光・・・・ケルベロスは俺にとって天的なため若干恐ろしい。俺ではケルベロスに勝つのは難しいかもしれない。

 

最悪なことにコカビエルと先程まで言葉を交わしていたせいか、ケルベロスの標的は俺に向けられている。面倒だな・・・・・とりあえず平静を装ってその程度余裕だって思わせたほうがいいかな。そうすりゃ狙いが俺に集中するのが避けられるかもしれない、

 

「ケルベロスか・・・・・確かに厄介な相手だがその程度なら十分に対処できる。いっちょ遊んでやりますか」

 

とりあえずこんなもんでいいかな・・・・・ヘタをすれば挑発とも取られかねないが、それでも相性が悪いってことを悟られずには済むかもしれない。あとはうまくリアスたちに押し付けて、俺はサポートに徹する方向で・・・

 

「朧・・・・そんなこと言って大丈夫か?犬苦手だろ?」

 

必死にケルベロスとの直接戦闘を回避しようと策を巡らせている中、イッセーは言ってはならないことを口にしてしまった。それも小声とかじゃなく、十分にコカビエルに聞こえる声量でだ。これはまずい・・・・一度でもその認識を相手に植え付けてしまったら撤回するのはまず無理だ。

 

「イッセー・・・・・この馬鹿!」

 

「えっ!?心配してるのに馬鹿はひどくない!?」

 

「うるせぇ!敵を目の前にしてなに俺の弱点堂々と晒してくれてるんだよ!バレないようにうまく立ち回れるように策を巡らせててたのに台無しじゃねえか!」

 

「あ・・・・・ごめん朧」

 

俺に言われて自分の失態に気づいたようで、イッセーは申し訳なさそうに俺に謝罪してくる。

 

まあ、言ってしまたものは仕方がない。問題はコカビエルがそれを聞いてどう対応してくるかだが・・・・

 

「くくくっ、そうか。貴様は犬が苦手なのか・・・・・ならば、その苦手を克服するためにもこいつと存分に触れ合うがいい!やれ!」

 

やっぱりそう来るか畜生め!

 

コカビエルがケルベロスに指示をだすと、ケルベロスは・・・・何もない空間へと突進していった。一見するとケルベロスが暴走しているように見えるが・・・・・俺は危機感を募らせていた。なぜならケルベロスが突っ込んだ先には・・・・幻術で姿をくらませていた俺がいるからだ。

 

「くっそ!やっぱり気づかれたか!」

 

俺を引き裂かんと振り下ろされた爪をかろうじて躱しながら、悪態をつく。

 

「嘘っ!?朧の幻術が見破られた!?」

 

易々と姿をくらましていた俺を見つけ出したケルベロスを見て、イッセーは驚きの声をあげる。

 

「ほんっとケルベロスとは相性が悪いな・・・・見ての通り、あいつには俺の幻術は効かない。俺が相手をするのは分が悪すぎます。なのでリアス部長たちの方でやつの相手をお願いしてもいいですか?」

 

「わかったわ。あなたはアーシアやイッセーと一緒に下がってサポートを・・・・朧、後ろ!」

 

「ッ!?」

 

リアスに言われ、俺は急いでサイドステップしてその場を退く。先程まで俺がいた場所にはケルベロスの頭の一つがあった。どうやら俺を噛み砕こうとしていたらしい。リアスが声を上げてくれなかったら少しやばかったな。

 

「もう一体・・・・厄介な」

 

先程俺を噛み砕こうとしたケルベロスは、最初に襲い掛かってきたやつとは違う個体だ。どうやらコカビエルが連れてきたケルベロスは一体だけではなかったようだ。

 

「地獄から二体も連れてくるとは、随分と犬が好きなようだなコカビエル」

 

「ああ、好きだぞ。だからこそ、しっかりと遊んでもらわなければな・・・・・人間というおもちゃで!」

 

二体のケルベロスが同時に俺に向かって襲いかかってくる。そのうち一体はリアスたちが押さえてくれたが、今のリアスたちでは一体の相手をするだけで精一杯らしく、残る一体は勢いそのままに俺の方へと向かってくる。

 

「くっそ・・・・こうなったら破れかぶれだ!」

 

俺は幻術で拳銃を二丁生み出し、ケルベロスに幻の銃弾を撃ち込む。銃弾はヒットし、視覚的にはケルベロスの体から血が流れているように見えるが、ケルベロスの勢いが止まることはない。おそらくほとんどダメージがないのだろう・・・・・やはりうまく幻術に嵌めることができないようだ。

 

俺の幻術は相手の脳に干渉し、五感を欺くことに長けているが・・・・・そこには優劣がある。視覚、痛覚、聴覚、味覚、嗅覚の順で支配するのが得意であり、このうち戦闘で活用できるのは聴覚までだ。だからこそ、俺が一番苦手としている嗅覚が発達している犬とは相性が悪く、うまく欺けないのだ。先程姿をくらませていた俺が容易く発見されたのもそれが原因だろう。姿がなくとも匂いまでは誤魔化すこどができないので、匂いで俺の居場所がバレてしまったのだ。

 

さらに悪いことにケルベロスは頭が三つもある・・・・・つまり、脳が三つもあるのだ。ケルベロスに幻術をかけようとするならば、その三つの脳に同時に、同一の幻術を施さなければならないのだが、それが非常に難しい。多人数に幻術を掛けること自体は難しくはないのだが、それは全員に同時に幻術をかけているわけではない。どうしても個人ごとにラグができてしまう。普段ならそれで問題ないのだが・・・・・ケルベロスの場合は同時でなければならないため難易度が跳ね上がる。それでも、極限まで集中すればできなくもないのだが・・・・・

 

『昔、犬に噛まれてから犬が大の苦手になっちゃって・・・・・おかげで犬を前にすると集中が乱れちゃうのよね』

 

ラムの言うとおりだった。俺は幼い頃に犬に噛まれて大怪我を負った事があり、それ以来犬が大の苦手だ。

 

以上のことからケルベロスは俺の苦手をこれでもかというほどに詰め込んだ存在・・・・・最悪な天敵なのだ。

 

『まあ、誰にだって相性っていうものはあるのだから仕方ないけれど・・・・相性が悪いからってやられっぱなしも良くないわ。どうにかしなければ・・・・死ぬことはなくとも、コカビエルと戦う余力はなくなるわよ?』

 

わかってるさラム。だから今必死に対処法を考えてるんだろうが。

 

ケルベロスの牙が、爪が俺に襲いかかる。時に三つの口から火炎が吐き出され、俺の身を焼き尽くそうとしてくる。

 

その全てを俺は躱す・・・・いや、躱せているだけだ。状況を打破する手段は思いつけていないし。ダメージはないとはいえ、躱すだけでも体力は減っていく。このままではジリ貧だ。

 

どうする・・・・どうすればいい?あれを使うか?だがあれをここで使えば・・・・・

 

『朧!気を抜かないで!』

 

「ぐっ!?」

 

珍しく声を荒げるラム。一瞬の油断だった・・・・その油断を突かれ、俺の体にケルベロスの爪がかすめてしまった。そこまで深くはないが、左の肩から右の腰のあたりまで爪痕が刻まれ血が流れる。

 

失態だ・・・・浅いとは言え、処置しないと血が流れて体力が減る。

 

「朧さん!」

 

「朧!」

 

俺が爪で引き裂かれたのを見たためか、サポートに徹していたイッセーとアーシアがこちらに駆け寄ってくる。だが、それは悪手だ。

 

「二人共くるな!下がってろ!」

 

二人に向かって叫ぶが、すでに手遅れだった。ケルベロスは俺から二人へと標的を変え、牙で噛み砕こうと口を大きく開く。助けようにも俺では何もできない。

 

また・・・・失うのか?俺が弱いから・・・・仲間を・・・・親友を・・・・

 

「くっそぉぉぉぉ!!」

 

俺は自分の無力さを嘆き、叫ぶことしかできない。今まさにケルベロスの牙はイッセーーとアーシアを噛み砕こうとしていた。

 

その時・・・・・・・ケルベロスの頭めがけて、光の槍が落ちてきた。

 

槍はケルベロスの脳天から顎を貫通し、地面にまで突き刺さっている。この頭は完全に活動を停止しただろう。

 

いや、そんなことよりも・・・・・今の槍はまさか・・・

 

「まったく・・・・・無様ね。まさかあなたがこんな犬に苦戦するだなんて思わなかったわ」

 

ケルベロスの頭上には黒い翼を広げる黒い長髪の女がひとりいた。それが誰なのかは知っている。見間違うはずがない・・・・・俺の最愛の女だ。

 

「レイ・・・・ナーレ」

 

「ふふふっ・・・・・来てあげたわよ朧」

 

クスリと微笑みを浮かべながら、レイナーレは俺に視線を向けながら言い放った。




まさかのレイナーレ参戦・・・・・いや、まあフラグは盛大に建てていましたが

それにしても超久しぶりなまともな戦闘描写なのに苦戦するとか・・・・・うちの主人公大丈夫だろうか?

それでは次回もまたお楽しみに!


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第57話

今回はレイナーレが中心となります

はたしてどうなるか・・・・・

それでは本編どうぞ


「レイナーレ・・・・・お前、どうしてここに?」

 

突然戦場に乱入してきたレイナーレに俺は問う。

 

「・・・・それに答えるのはあとよ。まずは・・・・・この五月蝿い犬を片付けるわ」

 

レイナーレはケルベロスの方を睨見ながら言う。ケルベロスの方も、自分の頭を一つ串刺しにしたレイナーレに殺気を向けていた。

 

「はっ。犬風情ががいっちょ前に私を殺そうっていうの?残念だけれど無理よ。だって、あなたと私とでは戯れにさえならないもの」

 

レイナーレの挑発に怒ったのか、ケルベロスはレイナーレに向かって口から火炎を吐き出そうとする。

 

その瞬間・・・・・ケルベロスの心臓を、光の槍が貫いた。ケルベロスは短くうめき声を漏らした後、地面に倒れふし動かなくなった。ケルベロスは魔物・・・・それ故に光の攻撃に弱い。その上心臓を貫かれたとあっては死は免れないだろう。

 

ただ、ひとつ気がかりなのは・・・・・ケルベロスの心臓を貫いたあの槍。あれは一体いつ放たれたものだ?俺が見ている限りではレイナーレは槍を放つどころか出現させてさえいなかったはずなのに・・・・

 

「ふんっ、他愛ないわね。さて・・・・」

 

自分が倒したケルベロスに一瞥するレイナーレ。その後・・・・イッセーとアーシアの方へと視線を移した。

 

「レ、レイナーレ・・・・・様」

 

「レイナーレ『様』?ふふっ・・・・この期に及んで私のことを様付けするの?愚かな子ね」

 

「レイナーレッ・・・・!」

 

一度は自分を殺したレイナーレを怯えたように見るアーシア。イッセーはそんなアーシアを庇うように前に出る。

 

「なんで・・・・・なんでお前が生きてるんだ!どうして!」

 

「それはあとで朧にでも聞きなさい」

 

「朧・・・・に?」

 

俺の方を見てくるイッセー。俺は思わずイッセーから目を逸らしてしまった。

 

「それよりも・・・・・イッセーちゃん。もしも私が来なかったら、あなたアーシアもろともケルベロスに殺されていたかもしれなわよ?」

 

「ッ!?それ・・・は・・・・」

 

「情けないわね・・・・アーシアのことを守ると言っていたのは誰かしら?今の自分はアーシアのこと守れてるて胸を張って言える?守りたいのならもっとしっかりしなさい・・・・でなければまた失うことになるわ」

 

「・・・・・」

 

レイナーレの言うことに、何も反論できずに俯いてしまった。

 

「あなたもあなたよアーシア」

 

「え・・・?」

 

「警戒心も危機感も薄い・・・・何かあったらイッセーちゃんが守ってくれるからって安心しているの?だから自分から危険に首を突っ込んでもいいと思っているの?」

 

「そ、そんなことは・・・・・」

 

「たとえ思っていないとしても、私からすればそう見えるのよ。あなたはもっと自分の身を案じることを覚えなさい。あなたの回復の力は貴重なのよ?自分が死んだら仲間は全滅するぐらいの心構えを持ちなさい。特にこういう戦いではね」

 

「・・・・・」

 

イッセーと同じく、反論できずに黙り込むアーシア。

 

なんというか・・・・・言い方は辛辣だけど、これってアドバイスだよな?気遣ってるからこそああいうこと言ってるんだよな?二人を殺したこと・・・・・レイナーレなりに結構気にしてるんだろうな。

 

「ツンデレレイナーレカワユス」

 

「あなたは何を馬鹿なこと言ってるのよ・・・・今一応戦闘中よ?」

 

レイナーレが呆れたように突っ込んでくる。どうやら思ったことをつい口に出してしまっていたようだ。

 

「と、そうだ。レイナーレ、お前どうしてここに居るんだよ?来なくていいって言っただろ?」

 

「そうね。だけど来るなとは言わなかったじゃない。来て欲しくなかったらちゃんとそう言ってくれないとわからないわ」

 

「うぐっ・・・・」

 

レイナーレの言ってることは屁理屈であるが、それでも間違ったはいないので言い返すことはできない。レイナーレ・・・・・なんか会ったときと比べて口が達者になってる気がする。

 

『それについては同感ね。というより、うちを出る前にレイナーレちゃんが『私も行くって言ったらどうする?』って尋ねてきた時点でこうなることをどうして予測できなかったのかしら?』

 

返す言葉もない・・・・だけど、その言い方からしてお前は察してたんだよな?なんで言わなかったんだよ?

 

『言わないほうが楽しいかなと思ったからよ♪』

 

ああそうだな。お前はそういうやつだったよ。

 

「とりあえず、ここに来た理由を教えてくれ」

 

「単純なことよ。コカビエルはアザゼル様の意思に背いている。私はもうグリゴリには帰れないけれど、アザゼル様を慕う気持ちに変わりはないわ。だから・・・・」

 

「我慢できずに来ちゃったってわけか。まあ、気持ちはわからんでもないが・・・・・・」

 

おかげで少々面倒なことにはなった。

 

俺の視線の先には、レイナーレの登場によって表情を険しくしているリアス達の姿があった。すぐ近くには木場とクァルタもいる。どうやら加勢に駆けつけたようだ。

 

「・・・・ケルベロスの姿がないところを見ると、そちらも無事撃破できたんですね」

 

「ええ。祐斗たちが来てくれたおかげで倒せたわ。そんなことよりも・・・・・どういうことかしら朧?なぜその堕天使が・・・・レイナーレが生きているの?」

 

怒気を孕んだ声で俺に尋ねてくるリアス。まあ、リアスからすれば裏切り行為にも等しいんだ。怒るのも無理ないだろう。

 

だが、今はリアスたちと揉めてる場合じゃない・・・・・・倒すべき敵は別にいるのだから。

 

「レイナーレについては後ほど必ず事情を説明します。ですので今は戦いに集中しましょう」

 

「そういうわけにはいかないわ。彼女はコカビエルと同じ堕天使・・・・敵である可能性のあるものを放ってはおけないわ」

 

リアスの言うことはもっともだ。レイナーレはコカビエルと同じ堕天使・・・・・共謀していると思われても仕方がない。どうにか誤解を晴らさなければレイナーレが殺されかねない。

 

「・・・・確かに私はコカビエルと同じ堕天使。あなたたちにとっては敵にも等しい存在ね。私だってあなたたちと仲良くするつもりはないし」

 

俺がどうしたものかと考えていると、レイナーレはリアス達に言葉を発しはじめる。

 

「だけれど今この時において私たちの利害は一致しているわ」

 

「・・・・どういうことかしら?」

 

「リアス・グレモリー。あなたはこの地を納める悪魔として、コカビエルを倒したいと思っているのでしょう?私は敬愛するアザゼル様の意思に反し、この地に降り立ったコカビエルを倒したいと思っているわ。たとえ同じ堕天使だとしてもよ。互いの敵が同じならば、今は共闘すべきじゃないかしら?」

 

「・・・・あなたの言葉を信じろというの?その話に乗って背後から襲われたらたまったものではないわ」

 

レイナーレは共闘を持ちかけるが、リアスは取り合おうとしない。無理もないか・・・・・レイナーレはイッセーとアーシアを一度殺しておりのだから信じられないのも仕方がない。

 

となると・・・・俺が後押しする必要があるな。

 

「リアス部長、レイナーレはケルベロスからイッセーとアーシアを助けました。もしも本当にコカビエルと共謀しているのなら神滅具(ロンギヌス)所持者であるイッセーと回復の出来るアーシアを仕留めるチャンスを自ら潰すだなんてこと考えられません。レイナーレをの言ってることを信じるのにこれ以上の根拠はありません」

 

「それは・・・・」

 

俺の言葉に、リアスは反論してこなかった。もしもレイナーレがコカビエルと共謀しているのなら高いなサポート能力を持つ二人を助ける理由などないのだから反論のしようもないということだろう。

 

「リアス部長・・・・・あなたの眷属でもなく、悪魔でさえないない俺が言うべきではないかもしれませんが、レイナーレのことが信じられないというのなら・・・・・・レイナーレを信じる俺のことを信じてください。レイナーレはこの場においてあなた達に牙をむくことはありません。俺が保証します」

 

虫のいい話だということはわかっている。リアスたちのことを信用しきっていない俺がこんなことを言うのは愚かしいことだ。だけど今は・・・・口八丁でもこう言うしかない。

 

「・・・・・はあ、仕方がないわね。わかったわよ。今だけは・・・・彼女のことを敵と思わないでおくわ」

 

俺の説得を受け、リアスは折れてくれたようだ。少なくともこの先頭においてはレイナーレと敵対することはないだろう。

 

「ただし、少しでも怪しい動きをしようものなら・・・・・私があなたを消すわ」

 

「奇遇ね。私も同じことを思っていたわ」

 

敵対・・・・しないよね?大丈夫だよな?どっちも信じてるからな?

 

「あれれれれー?そこにおわすはレイナーレ様じゃありませんかー!」

 

俺がレイナーレとリアスたちが敵対しないかと心配していると、軽薄な声が聞こえてきた。俺もレイナーレも、リアスたちも声のする方へと視線を向ける。そこには銀髪の神父がいた。

 

「どうもレイナーレ様!俺の事覚えてらっしゃる?」

 

「ええ、覚えてるわよクズで外道でカスな私の元部下のフリード」

 

にやりと笑みを浮かべながら言う神父とレイナーレ。そうか・・・・奴がフリードか。

 

「ひっどいなー。俺ってばレイナーレ様が死んじゃった思って枕を涙で濡らしちゃってたんですよ?」

 

「見え透いた嘘はやめなさい。あなたにそんな殊勝な心があるわけないわ。ただまあ、あの時私を見捨てたことに関しては特別に許してあげるわ・・・・あなたのことなんて正直もうどうでもいいし。それよりも・・・・」

 

レイナーレの視線は上空にいるコカビエルへと向けられる。

 

「コカビエル・・・・・アザゼル様の御心を無視して、随分と勝手なことをしてくれているわね」

 

「低級堕天使風情が俺を呼び捨てにするか」

 

「残念ながらあなたに対して敬意を抱いていないの。あなたに抱いているのは・・・・・殺意だけよ」

 

光の槍を右手に出現させるレイナーレ。それをそのままコカビエルに向かって投擲した。

 

「ふんっ、くだらん。そんなもの・・・・・」

 

コカビエルは地震に向かってくる槍を止めようと左手を突き出す。間もなく槍が左手に触れようかというその瞬間・・・・・槍は軌道を変化させ、コカビエルの頭部へと向かっていく。

 

「なにっ!?くっ・・・・」

 

流石に正面から受けるわけにはいかないようで、コカビエルは顔をそらして槍を避ける。その顔からはわずかに焦りの色が見て取れた。

 

「ふふふっ・・・・低級な堕天使風情の私の攻撃で栄えあるグリゴリの幹部たるコカビエルにそんな顔をさせられるなんて光栄至極ね。今どんな気持ちなのかよければ教えてくれないかしら?」

 

「貴様・・・・・」

 

コカビエルの意表をつけたことがよほど愉快なのか、笑みを浮かべるレイナーレ。対するコカビエルは忌々しげに表情を歪ませていた。

 

『あらあら、誰かさんに似て随分と煽るのがうまくなったものね』

 

俺の煽りはお前譲りだから実質レイナーレのあれもお前似だろうが。そんなことよりも、さっきのレイナーレの攻撃・・・・・

 

『あらかじめ軌道を設定していたか、あるいは放ったあとに遠隔操作して軌道を変えたのか・・・・・どちらにしてもあれはあなたと戦った時には持っていなかった技術ね。あなたが学校に行ってる間ただ留守番していたわけではなさそうよ?』

 

まったく、随分と器用なことができるようになったものだな・・・・・正直レイナーレを戦力として考えていなかったんだが、撤回せざるをえない。

 

『そうね。現状ケルベロスに苦戦していたあなたよりよっぽど優秀よ?』

 

・・・・戦いはまだ始まったばかりだ。コカビエルを殺すためにも一層気を引き締めないとな。

 

『あらスルー?余計に惨めよ?』

 

せっかくいい感じに締めたのに・・・・・覚えてろよ畜生め。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さすがに原作のままでは戦力的に足手まといになりかねなかったのでレイナーレを若干強化しました

槍の軌道を変えたのは遠隔操作によるものです。ケルベロスの心臓を貫いたのも槍を遠隔操作して空中で留めておき、ここぞというときに心臓めがけて放ったからです。留守番中よほど暇だったからひそかに修行していた模様

それでは次回もまたお楽しみに!


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第58話

今回はまだ原作と比べて大きな差異はありません

今回はまだ・・・・・ね

それでは本編どうぞ


「くくくっ・・・・完成だ。4本の聖剣はここに一つになり、術式も完成した。あと20分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。術式を解除するにはコカビエルを倒すしかない」

 

バルパーが4本の聖剣の統合と校庭に描かれていた術式の完成を告げる。この術式・・・・・エクスカリバーの統合以外にも意味があるかもしれないとは思っていたが、まさか町を崩壊させるほどものだったか。それも20分もしないうちに発動か・・・・・魔王ルシファーが来るのは1時間後。余裕で間に合わないな。いざとなればコカビエルを殺すのは魔王に任せようと思っていたが・・・・まあいい。

 

実際にコカビエルに会ってみてわかった・・・・・あれなら・・・・・

 

「フリード、最後の余興に4本に統合された聖剣を使って奴らと戦ってみろ」

 

「はいなボス。人使いは荒いけど、ちょー素敵仕様になったエクスカリバーちゃんを使えるなんて光栄の極みみたいな?」

 

統合されたエクスカリバーを手にし、好戦的な笑みを浮かべるフリード・・・・・一応確認しておくか。

 

ラム、統合されたエクスカリバー、お前の目にはどう映る?

 

『そうねぇ・・・・・一本一本はナマクラだったけれど、流石は4本を統合したといったところね。そこそこのナマクラになってるわ』

 

そうか。まあやはりオリジナルを知っているお前としてはそう判断せざるを得ないか。

 

「・・・・共同戦線が生きているのなら、あの聖剣をともに破壊しようじゃないか。最悪私はあの聖剣の核となっているかけらさえ回収できればそれでいいからな」

 

「ああ・・・・わかったよ」

 

統合されたエクスカリバーを前にして、クァルタは共闘を進言し、木場はそれを了承した。クァルタとしては破壊してでもかけらを回収できれば問題なく、木場は聖剣を破壊したい・・・・まあ利害は一致しているな。

 

問題は・・・・

 

「レイナーレ、エクスカリバーは興味ないだろうが奴はお前を見捨てた元部下だ。お前も戦いに参加するか?」

 

「・・・・・やめておくわ。さっきみったけれどあいつのことなんてどうでもいいもの。それよりも、コカビエルとの戦いに備えて力を温存しておきたいわ」

 

どうやらレイナーレはフリードと戦う気はないらしい。そしてそれは俺も同じだ。レイナーレといざこざがあったようなのでフリードのことは嫌いだが・・・・あまりコカビエルの前で幻術を使いすぎるわけにはいかないからな。ここは木場とクァルタに任せよう。そもそもが聖剣に用があるのはこの二人なわけだしな。

 

「バルパー・ガリレイ、僕は『聖剣計画』の生き残り・・・・いや、正確には、あなたに殺され、悪魔に転生した頃で生きながらえている。あなたに聞きたいことがある・・・・なぜあんなことをした?」

 

木場は戦いを始める前に、バルパーに問う。

 

「ほう、あの計画の生き残りか。いいだろう、教えてやる」

 

木場の申し出に答え、バルパーは聖剣計画を企てた理由を話し始めた。

 

幼い頃から聖剣を好いていたバルパーは、いつか自分も聖剣使いになりたいと思っていたようだ。しかし、バルパー自身に聖剣を扱う素養はなかったようで、使える者に強く憧れていた。その憧れが高じて、聖剣使いを人工的に生み出す研究にのめり込み・・・・『聖剣計画』を企てた。

 

聖剣を扱うためには特有の因子を必要とする・・・・『聖剣計画』のために集められた被験者たちは皆その因子を有してはいたそうだが、聖剣を扱えるほどではなかったらしい。ゆえにバルパーはその因子のみを抽出することはできないのかと考え、それを実行した。その結果・・・・バルパーは因子を抜き取って結晶化することに成功させ・・・・・聖剣計画の被験者たちを全員殺したのだ。

 

「・・・・ちっ、クソが」

 

俺はバルパーの話を聞き、思わず悪態をついてしまった。バルパーのしたことはもちろん最低だ。だが・・・・・バルパーを追放し、断罪しておきながらそのバルパーの計画を利用し、聖剣使いを生み出している教会はそれと同じぐらいか、見方によってはそれ以上のクズだ。

 

今はコカビエルを殺すことに専念したいのに・・・・・すぐにでも教会を潰してやりたいとも思ってしまう。

 

「さて、これはどうせ余り物だ。これはくれてやろう。貴様の同志たちの成れの果てだ」

 

バルパーは手にしていた結晶を木場の足元に放り投げる。『聖剣計画』で抽出した聖剣因子の結晶を。

 

「皆・・・・ごめん」

 

結晶を拾い上げ、涙を流す木場・・・・・その時、決勝は淡い光を放ち始めた。まるで木場を祝福するように暖かく、優しさに満ちた光。その光は人の形をとる・・・・・それはおそらく『聖剣計画』の犠牲者たちだろう。

 

彼らは木場に何かを訴えかけていた。俺には聞こえないけれど・・・・・・その言葉はきっと木場を励ますものだろう。

 

やがて彼らの魂とも言える光はひとつに集まり・・・・・木場を包み込む。

 

「そうか・・・・木場、お前は至ったんだな」

 

「至った?何に?」

 

俺のつぶやきが聞こえたのか、レイナーレが尋ねてくる。

 

「神器の究極形態。想い、あるいは願いが劇的な展示方をした時に至る領域・・・・禁手(バランス・ブレイカー)だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的・・・・・まさにそんな言葉がふさわしい戦いであった。

 

木場の禁手は相反する力・・・・魔と聖を同時に兼ね備えた剣、聖魔剣を生み出す力だった。『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』・・・・その力は明らかに通常の禁手とは異なるものだ。おそらく()()()()亜種だろう。

 

強力な剣に、以前のクァルタとの決闘の時とは違う冷静な、常の戦い方をする木場を前にして、統合された聖剣をもってしてもフリードは劣勢を強いられていた。

 

さらに、木場だけではない。クァルタもまた、フリードを追い詰めている。破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)以外にクァルタが持っていた二本目の聖剣・・・・かつてローランが持っていたとされるオリジナルのエクスカリバーに劣らぬ聖剣『デュランダル』。彼女はその使い手でもあった。使いこなす領域には至っていないようだが、それでもオリジナルから大きく力が劣るエクスカリバーを用いるフリードを圧倒するには充分だった。

 

「クソがっ!ここに来てそんなチョー展開アリですかぁぁぁぁ!?死ねよてめぇら!」

 

悪態をつきながらエクスカリバーを振るうフリード。だが、その剣閃が木場とゼノヴィアを捉えることはない。

 

武器の質もだが・・・・・剣士としての技量も、木場とクァルタの方がフリードを大きく上回っていた。

 

「はっ!」

 

クァルタのデュランダルによる一閃が、フリードのエクスカリバーを砕いた。

 

「マジで!?伝説のエクスカリバーちゃんがポッキリ逝っちまいやがった!やっぱり折れてるもん再利用しようってのがいけなかったんでしょうか!」

 

「チェックメイトだ」

 

エクスカリバーが折られたことを嘆くグリード。その隙をついて、木場は聖魔剣を振るう。フリードは折れたエクスカリバーでその剣閃を防ごうとするが・・・・受け止められたのは一瞬。剣はさらに折れ砕かれ、木場の聖魔剣はフリードの身を引き裂いた。

 

「見ていてくれたかい?僕たちの力はエクスカリバーに打ち勝ったよ」

 

倒れ伏すフリードを背に、木場は静かにつぶやく。その表情は決して晴れやかではなかったけれど・・・・・それでも木場は一つ成し遂げたのだ。

 

「次はあなただ。覚悟してもらおう」

 

エクスカリバーに打ち勝った木場は、次に『聖剣計画』の首謀者たるバルパーへと剣を向ける。

 

「馬鹿な・・・・聖魔剣だと?相反する二つの要素の融合など・・・・いや、まさか・・・・そうか、わかったぞ!聖と魔を司る存在のバランスが崩れているというのなら説明はつく!つまり魔王だけでなく神もまた・・・・」

 

そこから先の言葉が紡がれることはなかった。どうやらバルパーはあのことに気がついてしまったようだが・・・・・上空から降り注がれた光の槍に貫かれ、絶命する。

 

槍を放ったのは・・・・・コカビエルだった。

 

「ふんっ・・・・バルパー、貴様は優秀だったよ。その思考に至ったのが何よりの証拠だ。だが、貴様はもう必要ない。元々は俺ひとりでもやるつもりだったからな」

 

協力者であったバルパーへの凶行。それにはその場にいる者たち全員が不快感を抱き、コカビエルに対し臨戦態勢をとる。

 

そんな俺たちに・・・・・コカビエルは愉快そうに笑みを浮かべながら告げてくる。

 

「赤龍帝。限界まで高めた力を誰かに譲渡しろ」

 

「・・・・・それだけ余裕ってこと?舐めてくれる・・・・!」

 

「舐めているのは貴様たちの方だ。俺と貴様たちでは次元が違う。普通に戦えば俺を倒すことなど到底できやしない。だからこれが最後のチャンスだ・・・・存分に活かすがいい!」

 

「くっ・・・・・イッセー!私に譲渡を!」

 

「はい!」

 

コカビエルの言うとおりにするのは尺だろうが、それでも確かにこれはチャンスではあった。リアスはイッセーに譲渡を命じ、イッセーは力をリアスに譲渡する。

 

『これは・・・・譲渡の力を鑑みても凄まじいわね。もう少しで魔王にも届きそうだわ』

 

かつての魔王を知るラムがそういうのだから、実際今のリアスの力は相当なのだろう。コカビエルもそれを感じ取っているためか歓喜している。

 

「消し飛べぇぇぇぇぇぇ!!」

 

リアスの滅びの魔力がコカビエルに向かって放たれる。強大な魔力を、両手を使って受け止めるコカビエル。流石にこの質量の魔力を受け止めようとすればコカビエルも無傷では済まないようで、着ているローブの端々は破れ、手からも血が流れている。

 

だが・・・・それでもコカビエルを倒すには足りない。放たれた魔力は少しずつコカビエルの手で押さえ込まれ始めている。

 

「雷よ!」

 

リアスの一撃で倒しきれないのならと、朱乃がコカビエルの背後から雷を放つが・・・それはコカビエルの黒い羽の羽ばたきによってかき消されてしまう。これが彼女本来の力、雷光であったのなら話は別だったかもしれないが・・・・

 

程なくして、リアスの放った魔力はコカビエルの手によって完全にかき消されてしまった。

 

「ハハハハハハ!全く愉快な眷属を持ったものだなリアス・グレモリー!赤龍帝に禁手に至った聖剣計画の生き残り、さらにバラキエルの娘とはな!貴様も兄に劣らぬゲテモノ好きなようだ!」

 

「我らの魔王を!何より私の眷属を侮辱することは許さないわ!あなたはここで必ず倒す!」

 

「ならばやってみろ!貴様らが対峙してるのは悪魔にとって長年の宿敵だ!これを好機と見なければ貴様の程度もたかが知れているというものだ!」

 

「あなたの敵は悪魔だけじゃないわ!喰らいなさい!」

 

コカビエルに向かって再び光の槍を放つレイナーレ。先程のこともあってか、今度はギリギリまで引きつけてから躱そうとするコカビエルだが・・・・・槍はコカビエルが回避行動をするのとほぼ同時に拡散し、無数の小型の槍となった。流石にそれを躱すことはかなわず、コカビエルに槍が何本も突き刺さるが・・・・

 

「・・・フハハハハ!なかなか面白い攻撃だが所詮は低級な堕天使の攻撃などこんなものか!全く効かんな!」

 

「ちっ・・・・」

 

ダメージをほとんど受けていないコカビエルを目にして、レイナーレは舌打ちをする。確実当てるために拡散させたようだが、やはり威力が不足してしまったようだ。

 

「だったらこれで!」

 

槍を幾本も作り出し、コカビエルに投擲するレイナーレ。槍はまっすぐにコカビエルに向かわず、軌道を変えながら迫っていくが・・・・それがコカビエルを捉えることはなかった。先程までは意表をつくことができたが、流石に3度目ともなると小細工は通用せず、コカビエルは槍を躱したり打ち消したりしてしまう。

 

「無駄だ!もう貴様の攻撃が俺を捉えることはない!」

 

「「コカビエル!」」

 

コカビエルに向かって剣を振るう木場とクァルタ。それに続いて小猫も攻撃を仕掛けようと迫っていく。

 

だが・・・・それでも敵わない。3人はうまく連携をとって攻撃を仕掛けるが、コカビエルは光の剣を両手にもち、木場たちの攻撃はことごとく防がれてしまっている。その上、攻撃の隙をついて反撃までしてくる。特に子猫はその反撃をまともに受けてしまい、後退せざるを得なくなってしまった。

 

それでも木場とクァルタはめげずに攻撃を続ける。一度だけ、連携がうまくはまってコカビエルの頬に剣先が掠めたが・・・・それでも大ダメージには至らない。

 

「くくくっ・・・・褒めてやろう。お前らはよく戦っている。拠り所となる主を失っていながらもな」

 

戦いの最中、コカビエルはそう口にする。俺以外の者達はその言葉の意味が理解できていない様子だ。

 

「フハハハハハハ!どうやらお前たち下々まで真相は語られてはいないようだな!ならば教えてやる!神は・・・・すでに死んでいる!先の三つどもえの戦争で四大魔王と同じように神も死んでいたのだ!」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

コカビエルは告げる。神の不在を・・・・・神の死を。それを聞き、一同は驚きを隠せずにいた。

 

「人間に依存せざるを得なくなったほど疲弊した三大勢力は、それを人間に知られるのは都合が悪いと判断し、神の死を秘匿した。故にこのことを知っているのは各勢力の一部のトップだけだ。もっとも、バルパーは気づいたようだがな」

 

そのことなら俺も知っているけどな・・・・正確にはあの時にお前に教えられたんだが。

 

「神がいない・・・・?なら僕らは何を信じてあの施設で過ごしたっていうんだ・・・?」

 

「そん・・・な・・・」

 

「主は・・・死んでいる?私たちに与えられる愛は・・・・?」

 

神の死は、かつて神を信仰していた木場・・・・そして、今でも神を敬愛しているアーシアやクァルタにはショックが大きかったようで呆然としている。特にアーシアとクァルタはひどい有様であった。地面に膝を付き、完全に意気消沈しきってしまっている。

 

「情けない・・・・・まったくもって情けない!争いの大元である神や魔王が死んだからこれ以上戦争を続けることに意味がない?その上人間に依存せざるを得ないなど・・・・我ら堕天使が勝利すれば人間に頼る必要もないというのに!アザゼルの野郎・・・・・何が二度目の戦争はないだ!あの臆病者が!」

 

「アザゼル様を侮辱するな!あなたのような戦闘狂とは比べ物にならないほどにアザゼル様の堕天使を思う心は崇高なのよ!」

 

「やかましい!何も知らなかった低級堕天使風情が!」

 

「ッ!?」

 

アザゼルを侮辱されたことに腹を立てたレイナーレはコカビエルに叫ぶが、コカビエルの怒号に気圧され言葉を詰まらせてしまった。

 

「俺は戦争を始める!貴様らの首を手土産にし、俺だけでもあの時の続きをしてやる!堕天使こそが最強だとサーゼクスやミカエルに思い知らせてやる!」

 

そこまでした奴は・・・・・コカビエルは戦争を求めるのか。天使や悪魔を滅ぼし尽くし、堕天使こそが至高であると証明しようというのか。

 

ああ・・・・・反吐が出る。やっぱりコイツは・・・・・クズだ。この手で殺してやる

 

だが、その前に・・・・

 

「・・・・・神はいる」

 

「なに?」

 

俺が呟くと、コカビエルは眉をひそめて俺の方へと視線を向けてくる。他の物たちの注目も俺の方へと集まってきた。

 

「神はいる。たとえ聖書の神が死に絶えようと・・・・・神はここにいる」

 

俺は自分の胸に手を当てながら言う。

 

「会ったことも見たこともない神を信じて祈りを捧げる・・・・それは、自らの心に神を生み出し、祈りを捧げるのと同義だと()は思う。だから・・・・・私にとっての神は死んでいない。たとえ聖書の神が死んでいようとも、私の心に神がいる限り私の心は折れない!」

 

それは・・・・・俺の言葉ではない。それはかつて俺の母さんの言葉・・・・どんな陵辱に対しても気丈に振舞っていあ母さんを絶望させるために神の死を告げたコカビエルに対して・・・・母さんが言った言葉だった。その言葉は・・・・・神に祈りを捧げていた当時の俺の心を支えたものでもある。

 

「くだらん・・・・実にくだらん!自らの心に神がいる限り折れないだと?馬鹿馬鹿しいにも程がある!所詮は脆弱な人間の戯言だ!」

 

どうやら、今の言葉を聞いてもコカビエルは何も思い出さないようだ。せっかく口調や一人称を母さんに真似たというのに・・・・・コカビエルはその言葉を覚えてさえいなかった。

 

もともと許すつもりなど毛頭なかったが・・・・・余計に許せなくなった。

 

先の戦いでコカビエルの戦いは存分に見させてもらった。十分だ。

 

コカビエルは俺ごときでも・・・・・・十分に殺せる。

 

「・・・・・戦争は起きないよコカビエル。お前が戦争を起こす前に・・・・・ここで俺がお前を殺すからな」

 

俺は幻術で銃を作り、コカビエルに向けながらそう告げた。

 

 




実はそこそこ信仰心の強い朧。もっとも、朧が信仰しているのは自分の心の中にいる神様だけなのである意味では自分への信仰ですが

次回、とうとう朧の復讐が始動します。どうなるかはその目でお確かめを・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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第59話

とうとう朧の復讐が始まります

さて、どのように復讐するのか・・・・・

それでは本編どうぞ


「殺す?貴様が俺を?不可能だな。貴様のような人間風情では俺は殺せん」

 

俺では自分が殺せるはずがないと断言するコカビエル。侮られたものだな・・・・・まあその方が都合はいいんだが。

 

どれ、もうちょっと挑発してみるかな。

 

「随分とでかい口を叩くな。そういうお前だってここまで戦っておいて誰ひとり殺せていないじゃないか」

 

バルパーを除いてだけどな。まあ、あいつは直接戦ってたわけではない上にコカビエル側のやつだったから除外しておいていいだろう。

 

「ふんっ、確かにまだ貴様らを誰ひとり殺せていないが、まさかあれが俺の本気だとでも思っていたのか?俺が本気を出せば貴様らを殺すのに5分とかからん」

 

「フラグが建ったな」

 

「なに?」

 

「そう言うセリフは負けフラグって言うんだよ。そういうかっこつけたこと言うやつに限って負ける・・・・物語ではよくあることだ。そんなことも知らないのか?」

 

「くだらんな。実際の戦場にそんなフラグなどというものはあるはずない。戦場では強いものが勝ち、弱いものが負けるのだ」

 

強いものが勝ち、弱いものが負けるねぇ・・・・確かにその理屈は間違っちゃいないんだろう。だがその理屈は俺には適応されない。

 

「コカビエル、俺は弱いさ。ここに居る誰よりも弱い。さっき死んだバルパーを除けば身体能力的には間違いなく最弱だろう。だがな・・・・・俺は幻術使い。幻術ってのは弱くても勝てる小細工だ。まさか長年生きていてそれさえわからないだなんて言うわないよな?」

 

「確かに貴様の幻術(小細工)は厄介ではある。本気を出していないとは言え、この俺が未だに戦いでひとりも殺せていないのも貴様が幻術を使って俺の反撃を微妙に逸らされていたからだ」

 

「「「・・・・え?」」」

 

他の者たちは気がついていなかったようで疑問の声を上げているが・・・・どうやら、コカビエルは気がついていたらしい。まあ、コカビエルほど戦闘経験があれば気がつかれるのは当然といえば当然か。

 

「だが、貴様の幻術は防御には使えても攻撃にはどうだ?ケルベロスに大したダメージも与えることもできない程度の幻術で俺を殺せるとでも?そもそも、幻術とは言え俺にダメージを与えるには俺に攻撃を当てなければならないはずだ。まさかこの俺に銃弾を当てることができるなど本気で思っているのか?」

 

確かに俺の幻術は因果を無視してダメージを与えることは()()()。ダメージを与えるには攻撃を当てるという過程を()()()に必要とする。ようは当たらなければどうということもないということだ。

 

だが・・・・・この状況ならば攻撃を当てることはそう難しくはない。

 

「俺ひとりじゃ確かに難しいだろう。だが、俺はひとりだけどひとりじゃないんでね」

 

俺は幻術を使って分身を作り、その分身に銃を持たせてコカビエルに銃口を向けた。

 

「37人・・・・・俺が今出せる精一杯だが、これだけいれば銃弾を当てるのもそうそう難しくはない。いくらお前でも同時に放たれる37の弾丸を全て躱すのは難しいだろう?」

 

「ほう、確かに大した数だ。だが・・・・・これでもまだ当てるのは難しくないと言えるか?」

 

黒い翼を広げ、コカビエルは高速で飛び回り始めた。

 

「は、速い・・・・・」

 

それを目の当たりにして、イッセーがつぶやく。確かにコカビエルの飛行速度は速かった。並の人間・・・・どころか、悪魔や堕天使でも目で追い切るのは難しいだろう。事実、リアスたちはコカビエルの動きを目で追いきれていなかった。

 

「さあ、撃ってみるがいい。当てられるものなら当てて見せろ。もっともその目に俺の姿をまともに映すことができたらの話だがな」

 

どうせ当てられないだろうと思って挑発してくるコカビエル。まったく・・・・・面白いくらい俺好みな展開にしてくれるものだ。

 

「・・・・・ちっ、そこまで言うなら躱してみせろよ」

 

俺は舌打ちをした後、上空に向かって銃を構える。ひとりひとりの銃口は一つとして同じ方向には向いていない・・・・コカビエルからすれば当てずっぽうで当てようとしているように見えるだろう。

 

「当てずっぽうで当てられるとでも思っているのか?愚か極まりないな。まあいい、撃ってみろ人間。俺に当てて見せろ」

 

はっ、言われるまでもないよ。見事に当ててやる。もっとも・・・・・当てるのは銃弾じゃないがな。

 

「・・・・・警告しておこうコカビエル。背中には気をつけることだ」

 

「はははっ!何を言うかと思えばそんな浅はかな手にこの俺が・・・・がぁっ!?」

 

浅はかだと俺を笑い飛ばすコカビエルだが・・・・・その口からはうめき声が漏れた。原因は・・・・背に感じる痛みによるものだろう。

 

「だから言っただろ・・・・・背中には気をつけろと」

 

俺はコカビエルに忠告する・・・・・少しでも背後に意識を持って行かせるために。

 

「なっ・・・!?ばかな・・・・!」

 

背後を振り返るコカビエル。そこには・・・・・剣を手に、コカビエルの左右の翼を切断した俺の姿があった。

 

俺がわざわざあんな忠告をしたのは少しでも背後を意識させれば、そこをついて幻術がかけやすくなるからだ。コカビエルは見事に俺の術中にはまったということだ。

 

「俺の翼がっ!?うおっ!?」

 

実際に目で見て確認してしまったせいで、コカビエルの脳は翼を失ったと錯覚してしまい飛行能力を失ってしまい地に落ちていく。動揺しているせいか着地体制を取るのが遅れてしまっているコカビエルを・・・・・俺は剣を持った幻術の分身で取り囲み、四肢を剣で貫き、動けないように地面に仰向けの状態で突き刺した。

 

「うぐおおおおぉぉぉ!?くそっ!こんなもの!」

 

四肢を貫かれる激痛に悶えながらも、どうにか体の自由を取り戻そうともがくが、コカビエルの意思に反して体はピクリとも動かなかった。

 

「無駄なことはするものじゃない。こいつは幻術だが、貴様の脳はそれを本物だと錯覚してしまっている。貴様のようになまじ戦闘経験が豊富なやつほど痛みを本物だと信じ込んでしまって幻術が脱するのが難しくなるんだよ・・・・・皮肉なことにな」

 

「この・・・・俺が!こんな人間風情の幻術に!」

 

「それがお前の敗因の一つだ。せっかくだし惨めな堕天使の幹部様に敗因を一つ一つ説明してやろう。敗因その1。俺のことをたかだが人間風情だと侮り、俺のスペックを低く見積もってしまったこと」

 

俺の幻術を厄介だと言いながら、それでもコカビエルは俺のことを人間風情だと侮っていた。その侮りが油断を生み、俺に付け入る隙を作ってしまった。

 

俺の目に映らぬよう、高速で飛び回っていたがあんなものこの目があれば追うことは難しくない。目に映りさえすれば幻術なんてかけ放題だ。

 

「敗因その2。俺の言うことをいちいち鵜呑みにして、俺の嘘に踊らされたこと。幻術使いってのは大概嘘つきだっていうのにな」

 

先程のやり取りで俺はいくつもの嘘を織り交ぜた。コカビエルはその嘘を見抜けずに・・・・いや、見抜こうともしなかった。どうせ何があっても容易に対処できると思っていたのだろうが・・・・浅はか極まりない。

 

「敗因その3、俺が剣を使うことを一切想定していなかったこと。まあ、これに関してはお前の前で剣を使っちゃいなかったから想定できなくても仕方がないといえるが」

 

なにせ、コカビエルの前どころかこの場にいる奴らにも剣をまともに使うところは見せていないからな。

 

俺は戦闘時は身体能力の関係上銃を使うことが多いが、元々は剣を使う方が得意だ。ラム曰く、剣術の才能はずば抜けて高く、剣士として修行していれば必ず大成できていたらしい。なので、剣のひと振りでコカビエルの翼を切り裂くことができたのだ。まあ、あくまでもあれは幻術だけど。

 

「そして敗因その4・・・これがもっとも大事なことだ」

 

俺は最後にして最大の敗因をコカビエルにつきつける。

 

「貴様が今ここで俺のような人間風情に追い詰められている最大の理由は・・・・・・貴様が母さんを一年間もの間陵辱し尽くした挙句に殺し・・・・・俺を逃してしまったからだ」

 

「ッ!?まさか貴様・・・・・あのときの・・・・?」

 

目を見開き、ハッとした表情で俺のことを見るコカビエル。

 

「ようやく思い出したかコカビエル。そうだよ・・・・俺はあの時のお前に捕まった親子のうちのガキの方だよ。ははははっ・・・・・数奇なものだよな。この広い世界でまた会えるだなんて嬉しい限りだよ」

 

俺はこらえきれず笑みを浮かべながら、手にもった銃口をコカビエルにむける。

 

「待ちに待った復讐の時間だ。手始めに372発・・・・俺と母さんが捕まっていた日数、弾丸を貴様に叩き込んでやる。せいぜい苦しんでくれよ?」

 

俺はコカビエルに向かって、銃の引き金を引く

 

さあ・・・・・復讐の幕開けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度も・・・・・・何度も何度も何度も。朧はコカビエルに向かって引き金を引く。その度に銃弾がコカビエルの体をえぐり、鮮血がほとばしる。決して急所に当てることはなく、死なないように配慮しながらも弾丸は撃ち込まれ続けていて・・・・・それは本当に幻術なのかと疑ってしまうほどに酷い光景であった。

 

傷だらけになり、これ以上は出血多量で死んでしまいそうになったときは幻術を解いて傷と出血を消すが・・・・・そのあとはまた銃弾が打ち込まれ始める。先程からこれの繰り返し・・・・・・当分終わる気配はなさそうだった。

 

周りを見てみると、リアス・グレモリーたちがコカビエルに銃弾を撃ち込む朧を恐怖の宿った目で見ている。まあ、あんな狂気じみたことしてる人間を目にすれば仕方のないこと。こいつらはそれなりに朧と親交があるから尚更でしょうね。

 

「朧・・・・・」

 

「待ちなさい」

 

私は朧の下へ歩み寄ろうとしていた兵藤一誠の手を掴んで引き止めた。

 

「あなたまさか朧を止めようだなんて思ってるのかしら?だったらやめなさい。朧の邪魔をしないで」

 

「朧の邪魔って・・・・・どういうことだよ?お前は何か知ってるのか?」

 

「ええ、知ってるわ。むしろ朧の親友であるあなたが知らないことに驚きね」

 

「・・・・・」

 

私の一言に、彼女はあからさまに落ち込んでしまった。まあ、親友なのに朧のあの凶行の理由が何一つわからないのだからそれなりにショックを受けるのも仕方がないとは思うけれど。ただ、朧は朧で親友だからこそ知られたくないと何も話していないのでしょうけど。

 

他の連中も朧がどうしてのあんな凶行に走っているのか分かっていないんでしょうね・・・・・・ただ一人を除いて。

 

「・・・・・姫島朱乃。どうやらあなたは何か知っているようね」

 

「ええ・・・・・コカビエルがそうだとは聞いていなかったけれど、それでもあれを見ればわかりますわ」

 

私が尋ねると、姫島朱乃はそう答える。やっぱりそうか・・・・・彼女だけ朧を見る目が違っていたからもしかしてとは思ったけれど。

 

姫島朱乃のことは知っている。バラキエル様の娘だ。彼女の事情は私でもおおよそ理解しているが・・・・・それはおそらく朧も同じ。だからこそ、朧はこの女には全てではないようだが話したのだろう。

 

「朱乃・・・・あなたは何を知っているの?なぜ朧はあんなことを?」

 

「それは・・・・・申し訳ありません部長。彼の事情を私の口から語るわけには・・・・・・」

 

リアス・グレモリーが尋ねるが、それでも彼女は答えない。自らの主に問われても答えないとは・・・・・それなりには誠実さは備えているようね。もしも話していたら槍の一本でもお見舞いしていたところだわ。

 

「とにかく・・・・・あなた達は大人しくここで見ていなさい。終わるまで・・・・ね」

 

どれだけかかるかはわからないけど、この期に及んで邪魔者が入るのは朧としては面白くないでしょうね。だからこいつらには朧の復讐が終わるまでここでおとなしくしてもらう必要がある。

 

結局、私が手を下すまでもなかったということか・・・・・まあ、それならそれで構わないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

235・・・・・236・・・・・237・・・・・傷と出血を消して・・・・・238・・・・239・・・・

 

引き金を引いてコカビエルに苦痛を与え、出血多量で死にそうになったら傷と出血を消してまた引き金を引いて・・・・・・先程からこれを繰り返す。

 

決して気分のいいものではない。相手は憎むべき相手とはいえ、俺のしていることは非道にして外道・・・・好んでこんなことをしているわけではない、それでもやめるわけにはいかない。たとえどんなに苦しくても・・・・・この復讐には意味があるのだから。

 

『復讐には意味があり、幸せには価値がある』・・・・・俺が木場に言った言葉。俺はこの言葉は真理であると思っている。復讐したところで過去には帰れないし、失ったものを取り戻すことだってできない・・・・・・それでも確かな意味はある。復讐を遂げれば・・・・・・憎悪は消え去り、幸せの価値が増すのだから。

 

憎悪は幸せの価値を鈍らせる。憎悪は心を過去へと縛り付け、幸せを陰らせてしまう・・・・だから俺は復讐するんだ。コカビエルの死をもって・・・・・・コカビエルへの憎悪を消し去るために。

 

コカビエルを殺したところで全ての憎悪が無くなるわけではないけれど・・・・・コカビエルを殺したところで、堕天使という種族への憎しみは無くならず、悪魔や天使、教会への憎悪は健全だけれど・・・・それでも、俺が最も憎いのはコカビエルだ。コカビエルが死に憎しみさえ無くなれば・・・・・きっと俺の幸せは輝きを増す。幸せの価値は跳ね上がる。

 

もう・・・・・もう十分すぎるほどに俺は苦しんだんだ。絶望したんだ。だから輝かしい幸せを手にしたっていいはずなんだ。幸せを満喫したっていいはずなんだ。だから・・・・その為に・・・・・

 

コカビエル・・・・・・貴様にこの憎悪にふさわしい報いを与えて・・・・・ぶっ殺してやる。俺の幸せのために・・・・・死んじまいな。

 

「ぐ・・・・がぁ・・・・」

 

コカビエルに弾丸を撃ち込み始めて472発目・・・・・これでひとまず区切りだ。流石に472発もの弾丸をほとんど休みなく撃ち込まれ続ければ、コカビエルといえど相当な痛みと疲弊で苦しんでいることだろう。

 

少々生ぬるいかもしれないが・・・・・・報いはこんなところでいいだろう。あとは仕上げだ。

 

「これで最後だ。何か言い残すことがあるのなら聞いてやろう」

 

「・・・・殺・・・せ」

 

銃を剣に変え、突きつけながら言うとコカビエルは短くそう答えた。

 

別に母さんへの懺悔を期待していたわけじゃなかったが・・・・・この期に及んで命乞いさえせずに、死を受け入れるか。その潔さだけには敬意を評してやる。

 

「わかったよ・・・・・じゃあ死ね」

 

剣を両手でもち、確実に殺せるように心臓に突き立てる。俺の復讐が間もなく完遂されようというその時・・・・・

 

「そこまでにしてもらおうか()()。そいつを殺されては困るんだ」

 

俺を復讐を阻む声が聞こえてきた。俺のことを幻龍と呼ぶその声には聞き覚えがある。

 

声のする方、上空へと視線を向けると・・・・

 

「白龍皇・・・・・!」

 

そこにいたのは白い全身鎧を身につけた者・・・・・忌々しい白龍皇であった。

 




朧にとって復讐とは『憎悪を消し去り、幸せの価値を高めるもの』となっております。まず間違いなく一般的ではないでしょうが、これは朧が幸せを求める気持ちがあまりにも強すぎるためです

さて、とうとう白龍皇まで登場してしまいましたが・・・・・朧の復讐はどうなってしまうのか?

次回もまたお楽しみに


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第60話

現れた白龍皇・・・・・果たして朧の復讐はどうなるのか?

それでは本編どうぞ


「白龍皇・・・・なんでここに貴様がいる!」

 

朧は上空からこちらを見下ろす白龍皇に尋ねる。

 

「アザゼルにコカビエルを連れて帰るように言われてね。それで来たのさ」

 

アザゼル・・・・・今回のコカビエルの暴走はアザゼルとしてはやはり見過ごせなかったということね。けれど、よりにもよって白龍皇をよこしてくるなんて・・・・・それだけアザゼルは事態を重く見ているということでしょうけど、朧・・・・・・そして私からすれば最悪だわ。

 

「そういうわけだ。君にコカビエルを殺されるのはこちらとしては都合が悪い。こちらに引き渡してもらおう」

 

「断る!こいつはこの場で殺す!邪魔をするというなら・・・・・・貴様から始末する!」

 

朧はコカビエルに突き立てていた剣を消し、新たに銃を作り出して白龍皇に向ける。ようやく訪れた復讐の機会・・・・・それをみすみす失うわけにはいかないと思っているのでしょう。邪魔するなら白龍皇だろうが誰だろうが殺す勢いだわ。

 

けれど・・・・・・相手が悪すぎる。朧では白龍皇()は殺せない。

 

「ほう?それはいいな。コカビエルと戦えなくなって少々がっかりしていたのだが・・・・・幻龍と戦えるとは嬉しい限りだ。以前は邪魔が入って叶わなかったが、今回こそは存分に楽しませてもらおう」

 

愉快そうな声色で言う白龍皇。どうやら引く気はないらしい。相変わらず戦闘狂ね。

 

普段なら面白いと思えるのに。愉悦を感じることができるのに・・・・・・今はそんな思いは微塵も抱けない。

 

「楽しむ余裕なんてすぐに消してやるよ!せいぜい夢幻に飲まれながら俺を敵に回したことを後悔しやがれ!」

 

「後悔などしないさ。たとえ戦いの結果死ぬことになっても・・・・・俺はただ戦えればそれでいい」

 

ただ戦いを求める・・・・・・彼は典型的なドラゴンに憑かれしものね。たいする朧は・・・・・さしずめ復讐どころか、幸せに囚われし者といったところかしら。

 

「そうかよ・・・・・だったらお前の大好きな戦いの中で死ね!」

 

『やめなさい朧!』

 

朧が白龍皇に向かって中の引き金を引こうとしたその時・・・・私は朧を呼び止めた。私らしくもなく声を荒げ・・・・・周りのものにこの声が聞こえてしまうのもはばからずに。

 

「止めるなラム!こいつは・・・・・白龍皇は俺の復讐を阻もうとしている!ようやくだぞ!ようやく訪れた復讐の機会なのに・・・・・・こんなやつに邪魔されてたまるか!俺はここでコカビエルを殺す!」

 

朧は激情のままに私に怒鳴る。朧もまた周りに聞こえるように声に出してしまっている・・・・・それだけ気持ちに余裕がないということでしょう。

 

『落ち着きなさい朧。わかっているはずよ。ここで白龍皇とやりあえば死ぬのはあなたの方よ。たとえ死ななくとも、死期を早めてしまう可能性も十分にある』

 

「それでも・・・・・それでも俺は!復讐を果たすためには白龍皇()を殺さないと・・・・!」

 

『いい加減にしなさい!』

 

「ッ!?」

 

私はまた声を荒げてしまった。

 

だって仕方がないじゃない。朧に・・・・・死んで欲しくないのだから。

 

『朧・・・・・あなたにとって復讐がどれだけ大事なことなのかは私が一番よくわかっているわ。この復讐を逃せば、あなたの幸せを覆う憎悪という陰は消えない・・・・・それでも、死んだら幸せになることさえ叶わないのよ?あなたは幸せにならなければならないのでしょう?だったら・・・・・・コカビエルのことは諦めなさい』

 

ああ、なんて惨めだろう。自らの愉悦を何よりも優先するこの私が・・・・・自らの愉悦を満たす道具(相棒)を案じているだなんて。

 

けれど・・・・・・惨めでも構わない。朧が死ななければ・・・・・私はそれでいい。

 

「・・・・・・くそっ」

 

朧は手にしていた銃を消し、腕をおろした。どうやら諦めてくれたようね。

 

ただ・・・・・朧は血が滲むほどに拳を握りしめていた。当然ね・・・・・おそらくこれで朧の手でコカビエルを殺すチャンスは永遠に失われてしまったのだから・・・・・悔しいでしょうね。

 

「なんだやらないのか?残念だが・・・・まあいい。戦いを楽しむことはできなかったが、その代わりに幻龍と・・・・・我が宿敵に会うことができたからな」

 

そう言いながら、白龍皇は朧からイッセーちゃんへと視線を移す。

 

「はじめまして我が宿敵くん。いや、女の子なのだから宿敵ちゃんと言ったほうがいいのかな?まあどちらでもいいか。君に会えて嬉しく・・・・・なっ!?」

 

宿敵である赤龍帝(イッセーちゃん)に機嫌良さそうに声をかける白龍皇であったが・・・・・その言葉は最後まで紡がれることはなく、代わりに驚きの声を漏らした。

 

白龍皇が意識をイッセーちゃんに向けた僅かなあいだに・・・・・コカビエルの心臓へと光の槍が放たれ、深々と突き刺さる。

 

「ぐッ!?がぁ・・・・・・」

 

うめき声を小さく漏らした後・・・・・コカビエルは動かなくなる。コカビエルは・・・・・レイナーレちゃんの手によって死を迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬何が起きたのかわからなかった。

 

ラムに諭され、コカビエルへの復讐を諦めてしまった俺の目に映るのは・・・・・心臓を光の槍によって貫かれ、死に絶えたコカビエルの姿。そして槍の放たれた方へと振り返ると・・・・・・そこにはレイナーレがいた。

 

なんで・・・・どうしてレイナーレがコカビエルを殺す?確かに元々はそのつもりであったのだろうが・・・・それは敬愛するアザゼルを思っているからだ。そのアザゼルからコカビエルを連れ帰るよう命を受けた白龍皇がこの場に来ているのだから殺す理由なんてないはずなのに・・・・・どうして?

 

「・・・・どういうつもりだ堕天使の女?お前はアザゼルのことを敬愛していたはずだが・・・・・それなのになぜコカビエルを殺した?その行為はアザゼルの意思に反するものだということは理解できているだろう?」

 

白龍皇は怒気を孕んだ声でレイナーレに尋ねる。

 

「あら?白龍皇様が私のような低俗な堕天使のことを覚えてくれていただなんて・・・・光栄極まりないわね」

 

「質問に答えろ」

 

ニヤリと笑みを浮かべはぐらかそうとするレイナーレであったが、白龍皇はそれを許さず追求する。

 

正直俺も知りたかった・・・・・なぜレイナーレがあれだけ敬愛するアザゼルの意思に反するようなことをしたのか。

 

「・・・・・コカビエルは私のことを低級堕天使だと蔑んでいた。奴は覚えていないでしょうけど・・・・・それは私がアザゼル様の部下であった頃からよ。しかも、私だけでなくアザゼル様のことも侮辱して・・・・・殺す理由なんてそれで十分でしょう?」

 

レイナーレは自分と、アザゼルを侮辱したからコカビエルを殺したと言うが・・・・俺にはそれが信じられなかった。そんなことをすれば白龍皇に目をつけられ殺されてしまうかもしれないのに・・・・・動機がリスクに見合っていない。

 

ということはコカビエルを殺した理由は別にある?わざわざ嘘をつくほどの理由って一体・・・・?

 

「・・・・まあいい。今更君を問い詰めようが殺そうがコカビエルが死んだ事実に変わりないし、コカビエルが生き返るわけでもない。俺にできることはせいぜいコカビエルの死体をアザゼルのもとへ送り届けることだけだ」

 

そう言いながら地面に降り立った白龍皇は、絶命したコカビエルの死体を小脇に抱える。どうやらこの期に及んでレイナーレをどうこうしようとは思っていないらしい。

 

よかった・・・・・もしもレイナーレに牙をむくというのなら、ラムに諭された直後だったのに死ぬ覚悟で止めなければならなかったからな。

 

「ああ、あとフリードも回収しなければな・・・・・念のため言っておくが、彼は殺さないでくれよ?彼まで殺されては事情聴取ができなくなってしまう」

 

レイナーレにフリードは殺さないようにと念を押しながら、白龍皇はコカビエルと同じようにフリードも小脇に抱える。

 

「殺さないわよ。そんな奴どうでもいいわ」

 

「そうか。それならいい。では失礼するよ」

 

『もう行くのか白いの?』

 

コカビエルとフリードを連れて白龍皇は飛び立とうとするが・・・・・それを引き止める声が聞こえくる。

 

声の発生源は・・・・イッセーの赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宝玉からであった。

 

『起きていたのか赤いの』

 

次いで別の声も聞こえてくる。出処は白龍皇の宝玉からだ。それぞれの声の主は二天龍・・・・ドライグとアルビオンだろう。

 

『せっかく出会ったというのにこの状況ではな』

 

『いいさ。いずれ戦う運命なのだから・・・・我らの戦いを煽る者もいることだしな』

 

『あら?それは誰のことかしらね?』

 

二天龍の会話に、ラムも口を出す。まあ因縁深い三龍がこの場に集まっているのだ・・・・こうなるのは無理もないことだろう。

 

『誰のことだと?白々しい・・・・・』

 

『貴様以外誰がいるというのだ』

 

『ふふふっ、ごめんなさいね。それはそうとして二人共変わったわね。以前なら会うなり戦い始めていたというのに、今では互いに敵意が薄いじゃない』

 

『どうやら俺も白いのも戦い以外の興味の対象を得たようだな。そして・・・・・それは貴様もだろう幻龍?』

 

『お前があそこまで声を荒げるとは・・・・・自らの愉悦を何よりも重視していたというのに随分と今の宿主にご執心のようだな』

 

『そりゃあもう。だって朧はこの上なく人間だもの。興味は尽きないわ』

 

俺なんかに興味・・・・ね。光栄と受け取ればいいのか面倒なのに捕まってしまったと取ればいいのか・・・・

 

『ただまあ・・・・・もちろん今でもあなた達二人の戦いに興味津々よ。ここでは戦わないようだけれど・・・・・私をまた楽しませてちょうだいよ?』

 

『別に貴様を楽しませるために戦っているわけではないのだがな・・・・まあいい。また会おうドライグ、ラム』

 

『じゃあなアルビオン』

 

『さようなら~♪』

 

別れを告げる三者。そして白龍皇はその場を飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、もうわけがわからない。

 

拷問かと思えるような凶行の末コカビエルを殺そうとした朧

 

急に現れて朧がコカビエルを殺すのを阻止した白い鎧を着た男

 

そして・・・・・・隙をついてコカビエルを殺したレイナーレ

 

一体何がどうなって居るんだ?あの白い鎧の奴は白龍皇・・・・私の宿敵みたいだけど、朧はそいつと知り合いみたいだった。一体どこで知り合ったんだ?しかも白龍皇は朧のこと幻龍って呼んでたし・・・・

 

そもそも、どうして朧はコカビエルを殺そうとしたんだ?復讐だって言ってたけどそれってどういう事なんだ?

 

死んだはずのレイナーレがどうしてここに居るのかもわからないし・・・・・一体どういう状況なんだよこれ?こうなったら朧に詳しい事情を聞かせてもらわないと。

 

「朧・・・・・色々と説明して欲しいんだけど?」

 

「・・・・・」

 

私は朧に声をかける。だが、朧は私の問いかけに答えようとしない。

 

「朧、聞いてるのか?」

 

「・・・・・」

 

再度朧に声をかけると、朧は私の下へと歩み寄ってきた。ようやく話す気になったかと思ったが・・・・朧は私の脇を通り抜けて行ってしまった。

 

そして・・・・・

 

「・・・・・レイナーレ」

 

朧は・・・・私のすぐ後ろにいたレイナーレを抱きしめた。

 

「レイナーレ・・・・・ありがとう。コカビエルを殺してくれて・・・・・ありがとう。これでようやく俺は・・・・コカビエルに憎悪を抱かなくて済む。コカビエルへの憎悪を・・・・・消すことができる。本当に・・・・ありがとう」

 

朧は震える声で、たどたどしくレイナーレにそう告げた。

 

「・・・・馬鹿。感謝の言葉なんていらないわよ。私は別にあなたのためにコカビエルを殺したわけじゃない。私がコカビエルを殺したのは嫌いだったから・・・・・ただそれだけなんだから」

 

そう言いながらも、レイナーレは朧の背に手を回していた。そしてその手は、あやすように朧の背を撫でている。

 

その光景を見て私は察した。レイナーレがコカビエルを殺した本当の理由を・・・・

 

「・・・・・くそっ」

 

思わず悪態をついてしまった。なぜなら、レイナーレが親友である私でさえ至れないところにいるということを理解してしまったから。レイナーレは・・・・・朧にとって私以上に特別な存在なのだと理解してしまったから。

 

ああ・・・・・なんでだろう?

 

すごく・・・・・すごく悔しい

 

すごく・・・・・すごく羨ましい

 

すごく・・・・・すごく妬ましい

 

「朧・・・・・」

 

抱きしめ合う二人を前にして・・・・・私はただ朧の名を呟くことしかできなかった

 

 

 

 

 

 

 

 




朧の復讐はレイナーレの手によって成就されました

普段ならいざ知らず、朧の凶行によって虫の息だったからこそできたことですが・・・・・何はともあれこれで朧の憎悪は一つ晴れたということです

それでは次回もまたお楽しみに!


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第61話

今回はコカビエルとの戦いが終わった後の話となります

メインはレイナーレです

それでは本編どうぞ


コカビエルとの戦闘を終え、家に帰ってきた私と朧。本来ならグレモリー達に私のことや朧とコカビエルの因縁、そしてラムのことも話すべきなのであろうが・・・・皆あの戦闘で疲労が蓄積しており、事後処理やらもあったため話は後日ということとなった。

 

そして今、私はベッドの上で朧に抱きしめられていた。ベッドの上だからといっていかがわしいことになっているわけではない。双方ちゃんと服を着ているし、朧も私の胸に顔を埋める以上のことをしようとしてこない。ただ単純に朧が私に甘えてきているというだけだ。

 

「朧、暑苦しいんだけど?」

 

「・・・・・」

 

本当は朧に抱きしめられて心地よく感じているにもかかわらず、私の口から出るのは朧を突き放すような言葉。しかし、朧からの返答はなかった。

 

「はあ。戦闘後だからゆっくりしたいのに、これじゃあ眠れないじゃない。どうしてくれるのよ?」

 

そう言いながらも、私は朧の背に手を回してあやすように撫でている。仕方がないじゃない。愛しい人に甘えられてるんだから応えるのは当然でしょ?

 

「・・・・レイナーレ、ごめん」

 

しばらくして、ようやく朧は口を開いた。

 

「ごめん?なにが?」

 

「ラム・・・・幻龍のこと黙ってた」

 

正直、朧のこの発言には呆れ果てた。何に謝っているかと思えばくだらないにも程がある。

 

「馬鹿ね。そんな些細なことでいちいち謝る必要なんてないわよ。何かと思えばくだらない」

 

「え?」

 

「曲がりなりにも数ヶ月一緒に暮らしてあなたがどういう人間なのかはおおよそ把握しているわ。あなたは嘘つきで秘密主義のロクデナシ。今更隠し事の一つや二つ気にしないわよ」

 

まあ、幻龍のことはともかくラムのことは直接話しをしたから知っていたけれど。

 

「・・・・・それはそれで凹むんだが」

 

「そう。それはなによりだわ。存分に凹みなさい」

 

いや、実際は凹まれても困・・・・りはしないわね。朧の凹み顔結構可愛いし。ああもう、なんだか朧へのゾッコンっぷりを自覚しちゃってこっちが凹みそうだわ。

 

「というより、謝るなら私のほうよ」

 

「どうしてだ?」

 

「どうしてって、私が余計なことしたせいで私のことがグレモリー達に露呈しちゃったじゃない。それは面倒事でしょ?」

 

本当は最後まで姿を隠して、隙を見てコカビエルを殺そうと思ったのだけれど、アーシアがケルベロスに殺されそうになってたから思わず出てきちゃったのよね。我ながら浅はかだわ。

 

「確かに面倒だけど大丈夫。もしもリアスたちがレイナーレに危害を加えようっていうなら殺すから」

 

壮絶な戦闘の後のせいか、それとも復讐のあとのせいか朧の思考は随分と物騒なものになっていた。確かに朧は私のためならグレモリー達を殺しもするだろうが、普段ならこんなふうにそれを堂々と宣言することはない。

 

というか、私としてはそうなることは避けたい。なぜならそれは朧にとって悪手なのだから。

 

「朧、あなたやっぱり馬鹿だわ」

 

「は?」

 

私が言うと、朧は呆けた表情を浮かべる。わかってないのかしら?復讐のあとだから思考がおかしくなっているのかもしれないわね。

 

「あなた前に言っていたでしょう?グレモリー達に情を抱いてしまっているって。そんな相手を殺してしまってはあなた絶対に後悔するじゃない」

 

「それは・・・・・」

 

言葉を詰まらせる朧。朧だってわかっているのだろう。たとえ愛する私を守るためとは言え、情を抱いている相手を殺せば必ず後悔することを。ましてや相手の中には親友である兵藤一誠もいるのだから抱く後悔は想像を絶するものになるでしょうね。そしてその後悔は、間違いなく朧の幸せに陰りを生むことになる。

 

「あなたにとっての一番の幸せが私だとしても、グレモリー達のいる生活だってあなたにとっては幸せなはずよ。幸せを何よりも求めるあなたが一番の幸せのためとは言え他の幸せを自ら切り捨てようって言うの?だとしたら愚かとしか言い様がないわね。幸せを求めるなら、その要因をひとつ残らず手中に収めてみなさいよ。あなたはこの私をものにしているのよ?だったら一番の幸せだけを確保しようだなんていう妥協は許さないわ」

 

まったく、堕天使である私がどうして人間風情である朧にここまで気を遣わなければならないのよ。これが惚れた弱みというやつならとんだ弱さもあったものね。まあ、それも悪くないと思ってしまっているけれど。

 

「妥協は許さない、か。はははっ・・・・レイナーレは厳しいな。幸せになるために一体どれだけ俺に苦労しろって言うんだよ」

 

「苦難ぐらい喜んで受けて立ちなさいよ。幸せのためならその程度乗り越えられるでしょう?というか乗り越えなさい」

 

「命令かよ。俺はそういう主人公気質じゃないんだけど、まあいいか。好きな女の前でカッコつけて惚れ直させる機会ができたと思っておこう」

 

「そうしておきなさい」

 

惚れ直させるっか・・・・無理な話ね。これ以上ないほどに惚れてるのに、どうやって惚れ直せって言うのよ。

 

「・・・・レイナーレ。俺いい加減眠くなっちゃったからさ。このまま寝ていいか?」

 

話が一区切りしたところで、朧はそう切り出してくる。

 

「私の胸を枕にしようっていうの?あなたはともかくとして私は眠れそうにないのだけれど?」

 

「ダメか?」

 

顔を上げて上目遣い気味に尋ねてくる朧。顔の造形が整ってるせいか断りづらいわね。これで一体何人の女を落としたのかしらねコイツは。

 

「・・・・・今回だけよ」

 

仕方がないから今回だけは許してやるわ。次からは頼まれない限りやらせないわ・・・・って、これじゃ頼まれたらやらせるってことじゃない。まあ別にいいけど。

 

「ありがとうレイナーレ」

 

私に感謝の言葉を述べて後、再び私の胸に顔を埋めようとする朧。だが、私はそんな朧に待ったをかける。

 

「待ちなさい朧」

 

「え?」

 

「止めは私が刺したけど、コカビエルを追い詰めたあなたにご褒美をあげるわ」

 

私は朧の頭を手で押さえ、朧にキスしてやった。前にした時も思ったけれど、朧の唇の感触は柔らかく、心地よかった。

 

「感謝しなさいよ?私からのご褒美なんてそうそう受けられるものじゃないんだから」

 

「うん。すごく嬉しいよ」

 

嬉しそうに微笑むその表情からして、それは本音なのだろう。まったく、嘘つきのくせに素直なんだから。私は全然素直じゃないのに・・・・・

 

「・・・・・用は済んだわ。とっとと寝なさい」

 

「ああ。おやすみ」

 

朧は私の胸に顔を埋める。そして程なくして小さな寝息が聞こえてきた。

 

「寝付くのはやいわね」

 

「仕方がないわよ。それだけ疲れているのだから」

 

何気なく呟いた私の独り言だったが、それに反応するものが一人。声のする方に視線を向けると、そこにはいつかの灰色の美女・・・・朧の神器(セイクリッド・ギア)に宿る相棒、ラムがいた。

 

「こんばんはレイナーレちゃん。こうして会うのは二度目ね」

 

「ええ、そうね幻龍さん」

 

ニコニコと胡散臭い笑顔でいうラムに対して、私はイヤミっぽくさん付けしながら言ってやった。なんで出てきたのかは敢えて聞かない。はっきり言ってどうでもいいことだから。

 

「うふふ♪いいわねぇ、その態度。私好みの生意気さだわ」

 

「別にあなたの好みに沿ってたとしても嬉しくともなんともないわよ」

 

「あら辛辣。まあいいけれど」

 

どうでもいいといったように言葉を返したラムは、朧に近づいて朧の頭を撫で始めた。その時の表情は先程のような胡散臭い笑顔とは違い、慈しむように微笑みを浮かべている。私はその光景をただただ黙って見ていた。余計なことを言ってしまえば邪魔になると思ったから。

 

「朧は弱いわ」

 

数分ほどして、ラムは朧の頭を撫でながらではあるが突然そう言ってきた。

 

「優秀な幻術使いではあるわ。数多の種族が存在するこの世界においても朧ほど優秀な幻術使いはそうそういないでしょうね」

 

それは私もわかっていた。かつての大戦を生き残ったあのコカビエルを追い詰めているのだから、幻術使いとしては優秀であることは疑いようはない。

 

「けれど、優秀な幻術使いであっても朧は弱い。視力と反射神経は高いけれど、身体能力は人間レベルを逸脱しておらず、腕力も体力もはっきり言って低いわ。そしてそれは精神面も同じ。過酷な経験をしているから多少はタフではあるけれど、それでも人間らしく儚く、脆く、ちょっとしたことで簡単に傷つくこともある」

 

ラムの言っていることは否定しようのない事実であった。どれほど強力な幻術を操ろうとも朧はやはり人間なのだ。人間はこの世界で最も数は多いが、その殆どは儚く弱い。数ヶ月朧と生活しているからこそわかるが、朧はその例に漏れず弱い存在だ。

 

強力な幻術を操り、その幻術で強者をも打ち倒せる朧。だが、決して強いわけではない。むしろ、弱いからこそ朧は勝てるのだろう。弱いからこそ、幻術という小細工を使いこなせるのだろう。

 

「レイナーレちゃん、どうか弱い朧を支えてあげて。弱い朧に寄り添ってあげて。この子にはあなたが必要なの」

 

「それを朧の相棒であるあなたが口にするの?」

 

「朧の相棒だからこそよ。私は確かに朧の相棒だけれど、朧を支える存在でもなければ朧に寄り添う存在でもない。私はただ、朧にちょっかいかけて楽しむだけの愉悦主義者よ」

 

快楽主義者、ね。その割には朧が白龍皇と対峙していた時には随分と焦っていたようだけど・・・・・まあ、言わないでおくけれど。

 

「お願いレイナーレちゃん。朧の最愛であるあなたにしかこんなことは頼めないのよ」

 

頼む、か。ふざけてるわね。

 

「あなた、私のこと馬鹿にしているの?」

 

「え?」

 

「頼まれるまでもないことをいちいち頼まれるとか不愉快極まりないわ。私が朧にとっての最愛であるように、朧は私にとっての最愛なのよ?支えるのも寄り添うのもできて当然のことよ。いちいちそれを他人に頼まれるだなんて気分が悪いわ」

 

誰に言われるまでもない。私は朧の傍にいる。朧を支え、朧に寄り添う。それは私だけの特権であり、私だけにできること。誰にも譲れない私の存在理由。

 

「わかった幻龍?あなた私にした頼みごとは無意味なのよ。むしろ言われるまでもなくやろうとしていることをやれだなんて侮辱に等しいわ。あなたはただこれまでどおり朧の中で愉悦を満喫していればいいわ」

 

「うふふふっ、これはしてやられたわね。わかったわレイナーレちゃん。あなたの言うとおり、私はこれまでどおりただ朧の中で楽しませてもらうわ。だから、あなたも私に愉悦を与えて頂戴ね?」

 

「いやよ。愉悦を与えるのは朧の仕事でしょ?私はあなたにそんなもの与えないわ」

 

「あら残念♪」

 

何が残念よ。私が与えるまでもなく、勝手に楽しんでるくせに。

 

「用が済んだならさっさと朧の中に戻りなさい。あなたがいたらゆっくり朧を堪能できないわ」

 

「ええ、そうさせてもらうわ。またねレイナーレちゃん♪」

 

胡散臭い笑みを浮かべながら、レイナーレは姿を消す。

 

「・・・・まったく、面倒な女だわ」

 

消えたラムに対して悪態をつきながら、私は朧の頭を撫で始めた。




幻術使えようが所詮朧は人間なのではっきり言って身体的にも精神的にも弱いです。だからこそ、レイナーレには朧を支えてもらわないとね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第62話

最近どうも難産だ・・・・・

それはともかくとして。今回から朧やレイナーレの事情をイッセーたちが知るお話となります

長くなりそうなので何話かに分けるつもりです

それでは本編どうぞ



コカビエルとの激闘から数日経ち、俺はレイナーレを伴ってオカ研の部室に来ていた。イッセーやリアス達にもろもろの事情を説明するためにだ。数日待ったのは、あの事件の事後処理が色々とごたついていたからだ

 

部室の中にはオカ研のメンバーと、なぜかソーナとクァルタもいた。ソーナはまだわかるが、なぜクァルタがここに?

 

「すみませんリアス部長。ソーナ会長はまだいいとして、なぜクァルタがここに?先のコカビエルとの戦闘で共闘したとはいえ彼女は教会の人間。いわば部外者ですよね?」

 

「彼女はもう教会の人間ではないわ。私の二人目の騎士(ナイト)として悪魔に転生しているの」

 

「教会の戦士が悪魔に転生?」

 

「神がいないと知って破れかぶれになってね。悪魔に転生したんだ」

 

クァルタのこの発言に、俺はあきれ果てた。そりゃショックだったていうのはわかるが、いくらなんでも短絡的すぎるだろう。これまでと生き方がまったく変わってしまうんだからな。まあ、選択したのはクァルタ自身。本人がそれでいいというなら構いやしないが。

 

「それよりも、本題に入りましょう朧、そしてレイナーレ。あなたたちの事情、色々と聞かせてもらうわよ?」

 

リアスがそう告げてきた瞬間、皆の表情が険しくなった。表情から読み取れる感情は怒りや悲しみ、疑惑といった負の感情だ。まあ、当然だろうな。なにせ、実質俺は皆のことを騙していたようなものなのだから。少しでもその負の感情を取り払うためにも、きっちり話はしておかなければならないのだが・・・・・その前に言っておかなければならないことがある。

 

「リアス部長、話をする前に一つだけ言っておきます」

 

「何かしら?」

 

「俺は皆に対して情を抱いています。好きか嫌いかでいえば好きだし、何よりこのオカ研で過ごす日々を楽しいと感じていました。だから・・・・・どうか何を聞いてもレイナーレに危害を加えないと約束してください。俺は皆を殺したくないんです」

 

リアスの目を真正面から見据え、レイナーレを抱き寄せながら俺は言う。リアスたちの表情は先程より険しくなっている。木場やクァルタに至っては剣を出して構えているほどだ。まあ、脅しともとれることを言っているので仕方がないとは思うが。

 

だが、脅しと取られようともこれは行っておかなければならないことだ。これは脅しであると同時に警告でもあるのだから。

 

さて、リアスはどう返すか・・・・

 

「それはこれから聞く話の内容次第ね。私の眷属でも悪魔でもないとはいえ、あなただって私・・・・いえ、私たちにとっては大切な仲間よ。好んで敵対したいだなんて思わないわ」

 

どうやらこの期に及んでもリアスたちは俺のことを仲間だと思っているようだ。まあ、さっきの負の感情は俺を仲間だと思ってくからこそ生じたものなのだからそれはわかっているのだけれど。

 

「けれど、あなたの話の内容次第では朧と、そしてレイナーレと敵対する道を選ばざるを得なくなるわ。私にとって守るべきなのは私の可愛い眷属や仲間である悪魔たちなのだから。もしも朧とレイナーレが私たちの害となる存在であるというなら、私はあなたたちを滅ぼすわ」

 

リアスからの返答はリアスなりの覚悟と、そして誠意と警告が込められたものであった。下手に俺の言うことを素直に承諾されるより、よほど信用できる。

 

「お心遣い感謝しますリアス部長。その気遣いに報いるためにも、これから話す内容に嘘偽りは一切ないことを誓います。さて、それじゃあ何から話したものか・・・・」

 

「何からだなんて決まってるじゃない。どうして私が生きていて、そして朧と一緒にいるのか・・・・・そこから話すのが妥当なところでしょ?二人ほどそれを気にしているひとがいるようだし」

 

レイナーレは自身の方へ視線を向けてくるイッセーとアーシアを見ながら言う。まああの二人はレイナーレが原因で悪魔になってしまったわけだし、レイナーレのことから聞きたいと思うのは当然のことか。

 

「朧・・・・・どうしてレイナーレが生きているんだ?」

 

イッセーは拳を強く握り締めながら、俺に訪ねてきた。

 

「単純なことだよ。あの日の夜、レイナーレは死んでいなかった。だから生きている。それだけだ」

 

『あら?嘘偽りはないと誓ったくせに早速嘘をつくのね』

 

仕方がないだろう。ここで嘘を付かなければ俺の禁手(バランス・ブレイカー)について話さないといけなくなる。敵対する可能性が皆無で無い以上、あの禁手のことは話すべきではない。

 

「あの時、俺はレイナーレに幻術をかけて脳を支配した。自分は死んでいると強く錯覚させることでいわゆる仮死状態にしたんだ。アーシアから奪った神器が出てきたのも、仮死状態にしたおかげで・・・・」

 

「そんなこと聞いてるんじゃない!」

 

イッセーは左手で俺の胸ぐらを掴みかかってきた。

 

「レイナーレのせいでアーシアは死んだんだぞ!コイツはアーシアを殺した・・・・・なのにどうして!どうしてレイナーレは生きてるんだよ!どうして生かしてるんだよ!答えろ朧!」

 

激情のままに叫ぶイッセー。その目は俺を射殺すかのように鋭い。イッセーにこんなふうに見られる日が来ようとはな。

 

「・・・・好きだからだ」

 

「え?」

 

「レイナーレのことが好きだったから、愛してしまったから俺はレイナーレを生かした。俺の幸せにはレイナーレの存在は不可欠なんだ」

 

「アーシアを殺したのにか?」

 

「ああ」

 

「・・・・・私を殺したのにか?」

 

「・・・・・すまないイッセー。今の俺にとってはお前よりもレイナーレの方が大切なんだ。本当に・・・・・すまない」

 

「ッ!?」

 

俺の言葉を聞き、イッセーは表情を歪ませる。そして俺の胸ぐらを掴んだまま、右腕を大きく振り上げた。そうか、俺はイッセーに殴られるのか・・・・まあ仕方がないか。俺は親友であるイッセーではなく、レイナーレを優先してしまっているのだから。

 

甘んじてイッセーの拳を受けようと覚悟を決める俺だが、それを阻む者がいた。

 

「やめなさい、イッセーちゃん」

 

それはレイナーレだった。レイナーレは俺が殴られないようにとイッセーの腕を掴んでいる。

 

「あなた、なんで朧のことを殴ろうとしているの?」

 

「なんでって。朧は私達を騙して・・・」

 

「そうじゃないでしょう?」

 

「え?」

 

「あなたが朧を殴る理由はそんなくだらないことじゃない。あなたが拳を振るう理由はそれ以上にくだらないものでしょう?」

 

「そ、それは・・・・・」

 

レイナーレに問いただされ、イッセーはたじろぐ。俺にはレイナーレの言っていることの意味がわからなかった。いったいどういうことなんだ?

 

「その様子だと自覚しているの?ふふふっ、これは滑稽で、同時に醜くもあるわ。親友同士といっても所詮は男と女。友情なんて幻想に過ぎななかったようね」

 

「黙れ!」

 

イッセーは俺の胸ぐらから手を離し、今度はレイナーレの胸ぐらを掴んだ。

 

「あら?私を殴るの?いいわ。あなたにはその権利がある。殴るというなら好きにしなさい」

 

今にも殴られそうになっているというのに、レイナーレは余裕を崩さない。イッセーをからかうように嘲笑を浮かべていた。

 

「ああ、朧がさっき私に危害を加えたら殺すとか言っていたけれどそれは気にしなくてもいいわよ?今回は朧は特別に見逃してくれるそうだから。ね、朧?」

 

レイナーレは俺に目配せをしながら言う。本当は幻術を使ってごまかそうと思っていたのだが、レイナーレ自身がいいと言っている以上はそうもいかないか。

 

「ほら、殴りなさいよ。アーシアの時のように思い切り殴りなさいイッセーちゃん」

 

「このっ・・・・・!レイナーレ!」

 

レイナーレの挑発を受けて、イッセーは拳を振りかぶる。今度こそイッセーの殴打が炸裂してしまうかというその瞬間・・・・

 

「ダメですイッセーさん!」

 

アーシアが声を張り上げ、イッセーを止めた。

 

「アーシア?なんで止めるんだ?レイナーレのせいでアーシアは・・・・」

 

「はい。私はレイナーレ様に神器を抜き取られて死にました」

 

「だったら・・・・」

 

「でも、レイナーレ様は私とイッセーさんを助けてくれました」

 

ニコリと微笑みを浮かべながらアーシアはイッセーに告げる。

 

「私とイッセーさんがケルベロスに襲われそうになったとき、レイナーレ様は命の恩人なんです。だから、殴ったりなんてしたらダメですよイッセーさん」

 

「それは・・・・確かにそうだけど」

 

アーシアの言うとおり、あの時レイナーレが来てくれなかったら大事になっていた可能性は高い。俺もあの時は相当焦った。イッセーもレイナーレがいなかったらどうなっていたのかがわかっているのか、握り拳をほどいて、レイナーレの胸ぐらを掴む手の力も緩めている。

 

「手を下ろしてくださいイッセーさん。レイナーレ様を殴ってはダメです」

 

「・・・・・・」

 

イッセーは黙りながらも、手をおろした。流石に妹のようにさえ思っているアーシアに諭されてはイッセーも従わざるを得ないということだろう。

 

「・・・・はっ、相変わらず甘ちゃんね」

 

「レイナーレ様?」

 

「なに?助けてくれたから私が殴られるのは嫌だって言うの?たったあれだけのことであなたを殺した私を許そうとか思っているの?だとしたら反吐が出るほど不愉快だわ」

 

アーシアを侮辱する言葉を口にするレイナーレ。

 

「あなたのそういう甘い優しさは私は大嫌いだわ。私はあなたを殺したのよ?憎みなさいよ。恨みなさいよ。恨みつらみを口にして、私のことを罵りなさいよ。あなたにはその権利があるのよ?」

 

内容は酷いものだった。それこそアーシアを大事に思う者であれば、誰だって怒り狂いそうなほどに。だがそれでも、誰も何も言わなかった。誰もレイナーレに対して怒っていなかった。なぜなら・・・・レイナーレの目からは涙が溢れていたから。

 

その涙を見て、皆思ったのだろう。レイナーレの態度は形だけのものであり、本当はアーシアに対して申し訳ない気持ちでいっぱいであることに。

 

「まさか私のことを許そうだなんて馬鹿なこと考えてないわよね?いい?あなたは悪魔なのよ。今のあなたはもう聖女じゃない。怒りのまま、激情のまま私のことを憎んだって誰も攻めたりはしないわ」

 

「・・・・嫌です」

 

「え?」

 

「レイナーレ様のことを憎むのも恨むのも嫌です」

 

アーシアは優しい声色で、だがしっかりと言い放った。

 

「恨みや憎しみに意味がないとは言いません。ですが、それでも私はレイナーレ様にそんな感情を抱きたくないです。レイナーレ様が助けてくれたとき、とても嬉しかったから。だから私はレイナーレ様を恨みも憎みもしません。レイナーレ様のことを許します」

 

「ッ!?」

 

許す・・・・・その言葉を聞いた瞬間、レイナーレの顔はひどくこわばった。

 

「馬鹿な女ね。許されたところで、私はあなたに謝るつもりなんて一切ないわ。あなたから神器を抜き取ったことを後悔したりもしない」

 

「それでも私はレイナーレ様のことを許します。他の誰でもない、私のために私はレイナーレ様のことを許したいんです」

 

「・・・・・本当に馬鹿な女」

 

そう言って、レイナーレはアーシアから視線を逸した。

 

アーシアの言うことは、俺からすれば甘く、愚かだとしか思えなかった。だけど、同時に尊いとも思った。

 

ひとを許すということは簡単なことではない。憎み、恨む気持ちというのは理屈や理性で抑えるのは難しいことだ。だが、アーシアはそれでもレイナーレを許した。

 

『愚かしいほど優しい子。あなたはああはなれそうにないわね』

 

わかってるよラム。俺はアーシアのようになれないし、アーシアのようになるつもりもない。

 

だからこそ俺は思う。アーシアは凄い子だって・・・・・アーシアのようにありたかったってな。




原作からしてアーシアは普通にレイナーレのこと許しそうだなと思ったのでこうなりました

ちなみにイッセーの感情については・・・・まあ、親友といっても男女ですからね。嫉妬が入ってると思ってください

それでは次回もまたお楽しみに!


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第63話

久しぶりの投稿だけどスランプだから短い・・・・・

ともかく本編どうぞ


 

「さて、レイナーレに関する処遇は一旦置いておくとして、次の話に移ってもいいかしら朧?」

 

「いちいち聞かなくてもいいですよ。お好きにどうぞ」

 

別の話に切り替えようとするリアスに、俺のそう返す。やましいことがあるのは俺の方なのにいちいち聞いてくるなんて律儀だな。まあ、俺は俺で嘘つくこともあるから自分でもタチが悪いと思うが。

 

「わかったわ。なら聞かせてもらいましょう。あなたとコカビエルの間に何があったのかを」

 

リアスが尋ねると、その場にいた一同の表情が険しくなった。まあ、あんな拷問みたいな仕打ちを目の前で見せられれば表情の一つも険しくなるに決まっているか。ただ、レイナーレと朱乃の二人は険しいというより悲しげな表情だが。レイナーレは事情を説明知っているからともかくとして朱乃はやはり察してしまったようだな。だったらどうせなら言ってくれた方が俺としても良かったんだが・・・・・自分で言って気分のいいものではないからな。

 

「朧・・・・・復讐って言ってたよな?どういうことだ?」

 

「どうもこうもないさイッセー。文字通りだよ。あれは復讐だったんだ。コカビエルは俺の母さんを殺したんだからな」

 

「「「・・・・・え?」」」

 

ほぼ全員に表情が驚愕に染まった。当然といえば当然だが。

 

「10年前・・・・・俺は母さんと一緒にコカビエルに捕まってしまった。そしてコカビエルは毎日のように俺の目の前で母さんを陵辱したんだ。母さんは絶世の美女といっても差し支えないほど綺麗な人だったし、コカビエルだって堕天使の幹部。先の戦いでは戦闘狂の面が強く見られたがそういうことにも関心が高かったようだ」

 

俺は当時のことを思い出しながら語る。母さんがコカビエルに犯される光景が脳裏によぎるが、以前ほど黒く、重たい感情は湧き上がってこなかった。おそらくコカビエルが死んだことで多少は溜飲が下りたからだろう。

 

「そんな日々が1年ほど続いて、ある日母さんは隙を見て俺を連れてコカビエルの下から脱走しようした。だけどそれは失敗した。コカビエルは罰と見せしめのために俺を殺そうと槍を放ってきたんだが母さんは俺をかばって槍に貫かれて死んだんだ」

 

コカビエルに対する憎しみはそれほどでもないが、自分に対する憎しみは溢れ出しそうなほど湧いてきた。実質俺のせいで母さんは死んだようなものだからな・・・・・自分が自分で憎らしい。

 

「そのあと母さんの勇敢さに免じてコカビエルは俺を見逃してくれたんだが・・・・・・俺はその時誓ったよ。次に会ったとき、コカビエルを殺そうとね。その結果がアレだよ。まあ直接手を下すことはできなかったが」

 

「・・・・君はそれで満足なのかい?」

 

一通り説明し終えると、木場が神妙な面持ちで尋ねてきた。

 

「どう言う意味だそれは?」

 

「君のコカビエルを憎む気持ちは僕にはわかる。だからこそ、君を絶望の底に追いやったコカビエルが自分以外の手で殺されることは本当に復讐と呼べるのかどうか、君が満足することができたかどうか気になってね」

 

なるほど、いかにも同じ復讐者らしい考えだ。そういえば、木場も自分の復讐の大元となったバルパーを直接手にかけることはできなかったんだっけか。コカビエルが殺しちゃったから。あの戦いで聖剣を超えることはできたがバルパーを手にかけられなかったことは木場にとって消化不良なのかもしれないな。

 

ただまあ、俺は木場とは考え方が違うがな。

 

「確かに自分の手でケリをつけたいとは思っていたが別にあれはあれで構わないさ。俺にとって大事なのは俺の目の届くところでコカビエルが死ぬことだ。コカビエルの死を認識できさえすれば俺の復讐は完遂される。憎い相手が死んだという事実だけで俺は満足なんだよ。たとえそれが誰の手で、どんな目的であったとしてもだ」

 

まあ実際はレイナーレがやってくれたってのは嬉しく思うんだがな。俺のためなんかじゃないんだろうが、それでもレイナーレは俺にとって愛する存在だから。

 

「そうか。それが君にとっての復讐なんだね。そう考えられるのは少し羨ましいよ」

 

そう言いながら木場は儚げな笑みを浮かべてみせた。やはり、こいつはバルパーを自分の手で殺したいと思っていたのか。その感情を否定するつもりも非難するつもりもない。むしろ当然のことだと思う。復讐の念なんてものは時として理性は理屈の外側にあるようなものだからな。

 

「まあともかく、コカビエルへの復讐は終わった。俺の中で最低な過去を一つ精算出来たってわけだ。それに関しては良かったかな?」

 

「良かった?本気で言ってるの?」

 

「イッセー?」

 

「なんで・・・・どうして私達に、私に何も言ってくれなかったんだ?」

 

イッセーは俺の肩を掴んでくる。

 

「なんでそんな大事なこと言ってくれなかったんだ?親友の私になんで何も言ってくれなかったんだ?レイナーレには話してたんだよな?なのにどうして私には・・・・?」

 

コカビエルのこと何も話さなかったのがそんなに不満なのか・・・・・いや、違うか。親友だからこそ頼って欲しいのに何も言ってくれなかったのが悔しいってところか?

 

気持ちはわからなくもないが・・・・・悪いな、イッセー。

 

「話して何か意味があったのか?」

 

「え?」

 

「話したところで何の意味があった?俺のためにお前がコカビエルを殺してくれたのか?俺の悲しみと苦しみを少しでも軽くしてくれたのか?お前にそれができたのか?」

 

「そ、それは・・・・」

 

俺に問われ、言い淀むイッセー。

 

「なあイッセー、コカビエルのことを話したとしてお前は俺に、俺のために何をしてくれたって言うんだ?」

 

「・・・・・」

 

「ほら、何もできないだろう?だったら話す意味なんてないじゃないか。話したところで何にもならなかった。むしろそれをお前に突きつけて、今みたいに無力感を味あわせてしまう。だから話さなかったんだよ」

 

話したところで何が変わるわけでもない。イッセーのことだから同情はしてくれるだろうがそれがなんだって言うんだ。同情じゃ悲しみは癒せないし、ましてや復讐を果たせるわけでもない。

 

「朧、いくらなんでも言いすぎじゃないかしら?イッセーはあなたのことを心配しているのよ?」

 

リアスが咎めるような声色で言ってくる。

 

「それ自体には感謝してますよ。ただそれだけです」

 

イッセーが心配してくれていることには感謝している。だけど感謝だけだ。それ以上ものは抱きようがない。だから話さなかったてのもあるんだがな。

 

「朧、私はそんなに頼りないのか?私じゃ朧の力になれないのか?」

 

「・・・・・時と場合による。ただ、コカビエルの件に関してイッセーが俺にできることはなかったというだけだ」

 

今の言葉には嘘があった。確かにコカビエルの件ではイッセーを頼ることはできなかったが、たとえイッセーにできることがあったとしても頼ることはなかっただろう。

 

親友といえども役に立ちそうなら、意味があるのならば多少良心がいたんだとしても利用することはある。だが、俺がイッセーに何かを頼るということはない。今までも、これからもだ。

 

『頑なね。どうしてそこまでイッセーちゃんを頼るのを嫌がるのかしら?』

 

どうして?決まってるだろ。あいつが俺の親友だからさ。親友だからこそ頼りたくないんだ。頼って俺の重荷を背負わせるなんてまっぴらゴメンだからな。

 

『あらお優しい。それを言葉にして伝えないところなんて私、感心しすぎて涙が出そうだわ♪』

 

涙が出そうならなら『♪』なんて付けるなよな・・・・・まあいいけど。

 

それよりも、コカビエルについての説明もおおよそ終わったし、そろそろお前のことについて説明することになるんだが・・・・

 

『私はいつでもいいわよ?今日はこれが楽しみだったんですもの♪』

 

やけに機嫌がいいな・・・・・・嫌な予感とまではいかないが、なんか面倒なことが起きそうな予感だ。

 

さて、いったいどうなることか・・・・・

 

 

 




親友を大事に思うけど頼ることはしない朧

にしても前回といい、朧とイッセーの絆に溝が・・・・・まあ仕方ないんだけど

それでは次回もまたお楽しみに


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第64話

相変わらずのスランプだけどなんとか投稿・・・・

今回は一応はラムの話がメインとなります

それでは本編どうぞ


「朧、そろそろなぜあなたが白龍皇に幻龍と呼ばれていたのかを教えてもらえないかしら?」

 

リアスがそう切り出してくる。少々唐突だと思ったが、イッセーの心境を考慮して話を変えようと思ったのだろう。確かに、あのまま話を続けていたらまたイッセーを傷つけることを言ってしまっていたかもしれないからちょうどいいといえばちょうどいいな。

 

「わかりました。俺は・・・・」

 

「待ちなさい。その話は私からするわ」

 

俺の言葉を遮ってラムが言う。だが、その声はいつものように俺のうちから聞こえてくるものではない。それを俺の外から聞こえてくる声だった。

 

声のする方に振り向くと、そこには灰色の長髪に灰色の瞳の美女が・・・・・人間の姿をしたラムがいた。

 

「うふふっ、はじめましてリアス・グレモリー並びに眷属の悪魔達とソーナ・シトリー。私はラム。朧の神器(セイクリッド・ギア)に宿るものよ」

 

突然現れたラムに驚き、戸惑っているイッセー達に、ラムは自分から自己紹介した。

 

「さて、それじゃあ話してあげましょうか。なぜ朧が白龍皇に幻龍と呼ばれているのかを」

 

「ちょっと待て。ストップ」

 

話をしようとするラムであったが、俺はそれを止める。

 

「朧くん?一体どうしたのですか?」

 

「すみませんソーナ会長。ちょっとだけ時間頂ただきます」

 

「あら?これから話をしようっていうのに出鼻をくじかないで欲しいわ」

 

「黙れこの性悪ドラゴン!てめぇ、そんな風に外に出てこられるだなんて俺は知らなかったぞ!」

 

そう、俺はラムが外に出てこられるだなんて知らなかった。故に今目の前で起きている現実に驚きと共に怒りが沸き起こってきた。

 

「知らなくて当然よ。朧には話してないし今の今まで一度もこうして姿を現したこともないもの」

 

「なんで教えてくれなかった?」

 

「それはいちいち聞かなくてもわかっているでしょう?私とあなた・・・・・一体何年の付き合いだと思ってるのよ?」

 

ニコリと愉快そうに微笑みを浮かべるラム。言わなかった理由は間違いなくそっちのほうが面白いからなんだろうな。この愉悦主義者が・・・・・

 

「まあ知っている子もいるけれど。ね、レイナーレちゃん?」

 

「・・・・・はあ、ほんっと面倒な女だわあなたは」

 

ラムがレイナーレに視線を移しながら言うと、レイナーレは呆れたようにため息を吐く。

 

「レイナーレは知ってたのか?」

 

「ええ。二度ほどこうして表に出てきたラムと話をしたことがあるわ」

 

「てことはお前、ラムのことずっと前から知ってたってことかよ?」

 

「そうよ」

 

散々ラムのこと隠してたっていうのに・・・・・ラムのやつ、これも愉悦だってのか?俺をおちょくって楽しみやがって・・・・

 

「あ~・・・・・朧、大丈夫か?」

 

俺がラムの所業に頭を抱えていると、イッセーが心配そうに声をかけてきた。さっきまで傷つけることを行ってしまっていた俺に・・・・・そこまで俺が哀れに見えたのだろうか?

 

「大丈夫だ。ラムとの付き合いもそこそこ長いから慣れてるし」

 

「そ、そうか。なんというかドンマイ」

 

「ん。ありがとイッセー」

 

先程に比べてだいぶ刺がなくなってきてるな。まさかラムのやつ、これを予測して・・・・・いや、それは考え過ぎか。

 

「朧、そろそろ話し始めてもいいかしら?あまり待たせるのも悪いわよ?」

 

「ああ、構わないよ。てかなんでお前が説明するんだよ」

 

「いいじゃない、話すのは私のことなんだから。それにあなただってさっきから説明しっぱなしで疲れているでしょうし」

 

まあ確かに疲れてないって言えば嘘になるけども。

 

「さて、それじゃあいい加減説明に入らさせてもらうわよ。まずは改めて自己紹介を。私は幻龍ラム。朧の神器幻龍の戯れ(ボーダーレス・ファンタズマ)に宿るドラゴンよ」

 

「幻龍の戯れ?朧先輩の神器の名前は現に寄り添う幻(ニア・リアル)では?」

 

小猫が俺の神器の名前に疑問を抱いたようで尋ねてきた。

 

「それは朧が神器の能力から考えた偽の名前よ。私のことを隠すために皆には偽の名前の方を話していたのよ?」

 

「なぜ朧はあなたのことを隠していたのかしら?」

 

「レイナーレちゃんのこともあって敵対する可能性があったからよ。敵対する可能性がある以上、情報をあまり与えたくなかったということね」

 

「・・・・・そう」

 

ラムのことを隠していた理由を聞いたリアスは表情を暗くした。いやリアスだけでなく、リアスの眷属ではないソーナと眷属になったばかりのクァルタ以外、そしてレイナーレ以外の全員の表情が暗い。元々俺のことを警戒していたはずなのに・・・・・なんでこいつらは俺に情なんて抱くんだ。まあ、それに関しては俺も人のことは言えないがな。

 

「あとは・・・・まあ、イッセーちゃんが原因ね」

 

「私?」

 

「ええ。正確には、イッセーちゃんの中のドライグが原因といったほうがいいけれど」

 

ラムはイッセーに近づき、イッセーの胸を指差しながら言う。

 

「聞こえているのでしょうドライグ?おしゃべりしましょ♪」

 

『ふんっ。お前と気軽に話をするほどいい仲をしているつもりはないのだがな』

 

ラムの言葉に反応し、ドライグが俺たちにも聞こえるように言葉を発した。

 

「あら?神器になる前からの付き合いだっていうのに釣れないわね。散々あなたとアルビオンとの戦いを盛り上げてあげたっていうのに。私のおかげで楽しかったでしょ?」

 

『お前のおかげで何度も死にかけたこともあったがな。挙句に間接的にとは言え俺たちが神器になった原因を作ったのもお前だし、神器になってからも俺の宿主を好き勝手弄んでくれたのもお前だ』

 

ドライグの声がやけに刺々しいな。よほどいろんな感情が溜まっているのだろう。

 

「朧、ラムとドライグの間には何があったの?」

 

「何があったって・・・・・リアス部長、ご存知ないんですか?」

 

「幻龍ラムのことに関しては情報が少ないのよ。名前だけは聞いたことがあるけれど、詳しいことは悪魔の間では知られていないわ」

 

「それに関しては私もだな。教会でも幻龍ラムに情報を知る者はほとんどいなかった」

 

え?ラムのことってそんなに知れ渡ってなかったのか?でもミリアはラムのこと知ってたようだが・・・・

 

「ラム、お前の情報って秘匿されてたのか?」

 

「ええ、私のことは悪魔、天使、堕天使の間でも一部の上層部を除いて秘匿されているみたいよ。二天龍の戦いを煽って、さらにその二天龍をも惑わす私の幻術を危険だってみなしているようね」

 

「なるほど。そうやってお前の情報を秘匿することで今の神器になったお前を誰も探さないようにしようとしたってことか。見つかったら悪用するやつが出てくる可能性があるから」

 

まあこうして俺が悪魔たちに関わってしまってる時点で色々と破綻しているが。それでも俺がどの組織にも明確に属するつもりがないからまだいいんだろうが。

 

「というか朧くん、ラムはあなたにとって相棒のような存在なのですのよね?それなのに知らないことが割と多いようなですが・・・・・」

 

「言わないでください朱乃先輩。俺だってそれは自覚してるんですから。だけどこいつ、面白そうだからって理由で色々と秘密抱えてるから・・・・・本当にタチが悪い」

 

「それをあなたが言うのかしら朧?秘密主義はあなたにも言えることでしょう?」

 

「俺の秘密主義はお前譲りだっての。というかお前は俺のあれこれ全部知ってるんだからそこはフェアじゃないだろうが」

 

なにせコイツは俺が生まれてからの全部を中で見ていたわけだからな。秘密もなにもあったものじゃない。

 

「第一、俺の性格が愉悦主義の歪んだものになったのも元はといえばお前のせいなんだぞ。今の俺を構成する要素の6割以上がお前が原因だぞ」

 

「それについては否定しないけれど別にいいじゃない。あなただってその性格のおかげで得すること多いでしょう?」

 

「まあそうだけど・・・・・だけどたまには俺の苦労も考えてくれ。たまにめっちゃ頭痛くなるんだぞ」

 

「あの、朧・・・・」

 

「ごめんイッセー、今は黙ってて」

 

イッセーが何やら声をかけてくるが、今はかまってる暇はないので少々辛辣だが黙ってるように促す。

 

「というかそもそもの話からして本当にお前は俺の味方なのか?助けられたことも何度もあるけど陥れられたこともなんどもあるんだが・・・・」

 

「何を言うかと思えば。そんなの決まってるでしょう?私は私の味方よ。あなたを助けるのも陥れるのも私が楽しいからやっていることでそれ以上の理由も以下の理由もないわ」

 

「本当にゲスだな。そんなんだからお前は・・・・」

 

「あら?あなただって・・・・・・」

 

その後、俺とラムのやりとりは数十分にわたって続いたわけだが・・・・・・終わった後に『俺、一体何をやっていたんだろう?』と思ったのは言うまでもなかった。




どうしてこうなってしまったのか・・・・・それは朧が最近あったことで色々とストレスが溜まってしまったからですね

溜まったストレスがたまたまこのタイミングで爆発してラムとちょっとした言い争いになってしまいました。まあ、ラムの方は楽しんでいましたが・・・・

ちなみになんだかんだ読者的にはラムの情報がこれまでと比べてほとんど更新されていませんがそれはわざとです。というか、ラムに関しては朧も知らない秘密がまだありますので

それがなんなのかは今後のお楽しみです

それでは次回もまたお楽しみに


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第65話

今回で朧とレイナーレの処遇が決まります

それでは本編どうぞ


「なるほど、朧はかつてあなたの神器に興味を持ったアザゼルと白龍皇と接触したことがあって、それで白龍皇と顔見知りで幻龍と呼ばれていたのね」

 

「まあ、そういうです」

 

俺とラムの言い争いが終わって、ようやくリアスたちに俺が白龍皇に幻龍と呼ばれていたのかの説明が終わった。説明の内容が端折られてる?んなもんわざわざ説明してたらそれだけで一話使っちゃうんだからそこは勘弁してくれ(メメタァ)

 

「堕天使の総督と白龍皇に目をつけられてよく無事だったね朧くん」

 

「無事?あ~・・・・うん。無事だよ?あれは無事だったよ。ブジダッタブジダッタ。チョーブジダッタ」

 

「・・・・・・ごめん、余計な事を言ったみたいだね」

 

うん、本当に余計だったよ木場。おかげで俺が白龍皇に半分にされたことやミリアとアザゼルのひと悶着を鮮明に思い出しちまったんだからな。なんか泣きたくなってきた。

 

『あの時は大変だったわね』

 

まったくだ。というか、お前は話が終わったからって早々と引っ込むなよ。

 

『だってもう満足しちゃったんだもの♪』

 

・・・・・こいつがこんなんだから、さっき言い争いになったんだろうなぁ。まあ、言い争いになった原因は俺にもあるのだが。

 

「まあ、その時何があったかは敢えて聞くのはやめておくけれど・・・・私たちからあなたに聞きたいことはだいたい全部聞いたわ。まあ、それでもまだ私たちに秘密にしていることはたくさんあるんでしょうけど」

 

「ええ、ありますよ。それはもうたくさん・・・・・なにせ秘密は男の財産なんですからね」

 

「「「あっそ」」」

 

ちょっと、カッコつけてるのにこの塩対応はあんまりじゃないかな?

 

「レイナーレ。心に深い傷を負ったので慰めて欲しいです」

 

「は?」

 

「いえ、なんでもありませんごめんなさい」

 

なんかすっごい嫌そうな顔された・・・・・・この場に俺の味方は・・・・・

 

「あの、朧さん。大丈夫ですか?」

 

居たよ。アーシアが心配そうな表情で俺を気遣ってくれたよ。やっぱりこの子いい子だよ。

 

「アーシア、別に慰める必要はないわよ。コイツ実際は心に傷なんて負ってないから。ただ大げさに言って楽しんでるだけよ」

 

「え?そうなんですか?」

 

「朧だからな。十中八九間違いない」

 

「ええ」

 

ちょっとちょっとレイナーレ、イッセー。せっかくアーシアが気遣ってくれてるんだから余計なこと言わないでよね。というかこんな時だけなんで二人して気が合うの?

 

「まあ、朧が心に傷を負ったかどうかなんてどうでもいいから置いておくとして・・・・」

 

リアス、その言い方はリアルタイムで傷つくんだが。

 

「聞きたいことはあらかた聞いたことだし、いい加減朧とレイナーレの処遇について決めましょうか」

 

「「「・・・・・」」」

 

リアスのその一言で、空気が張り詰められるのを感じる。まあ、さすがにこればっかりはふざけてもられないから仕方がないか。

 

「私は・・・・その件に関して意見を言うのは控えます。朧くんがオカルト研究部の所属なので、リアス達が決めるべきでしょうし。堕天使レイナーレに関しては直接的な被害を受けたわけではありませんので」

 

「私はつい先日悪魔になったばかりだ。話を聞いたとは言え、過去に何があったのか直接見てもいないし体験してもいないから他の皆の決定に従おう」

 

ソーナとクァルタは他の皆に決定を委ねるようだ。二人はレイナーレの件について直接関わったわけではないから妥当なところだろう。

 

問題はほかの連中だが・・・・・

 

「私は・・・・朧くんには要所要所で助けられていますし、不問にしてもよろしいかと思います。彼女についても近々三種族の会談が行われることを考えれば。処断するのは得策ではないかと」

 

「僕も朱乃先輩に同意です。朧くんには朧くんの事情があったとは言え、僕の復讐を応援してくれたのは事実なので、私情ですがその朧くんに罪を問うつもりはありません」

 

「私も・・・・・朧先輩の作ったお菓子が食べられなくなるのは嫌です」

 

朱乃、木場、小猫は特に俺をどうこうしようとは思っていないらしい。朱乃は堕天使への憎しみという点で俺に親近感が沸いてるため、木場は復讐の応援があったため、小猫はお菓子があるからというところだろうか・・・・・なんか小猫だけすっごい現金だな。

 

「・・・・・イッセーとアーシアはどうかしら?」

 

「私は・・・・・朧さんには色々お世話になっていますので。これまでどおりのお付き合いがしたいです。レイナーレ様も・・・・助けてくださった恩がありますし」

 

アーシアはなんというか・・・・アーシアらしいな。俺をどうこうしようとか全然考えていないんだろう。レイナーレについても、一度殺されたというのに助けてもらった恩の方を大事にしているようだし。

 

「私は・・・・・正直、私やアーシアを殺したレイナーレと、レイナーレのことを隠していた朧のことを簡単に許すことはできません」

 

イッセー・・・・まあそうだよな。アーシアの件で誰よりも怒っていたのはイッセーだ。簡単に許されるだなんて思ってはいない。

 

「だけど、それでも・・・・朧は私の親友です。そしてその朧がレイナーレを大切に思っているっていうなら・・・・」

 

「処断したくない・・・・かしら?」

 

「・・・・はい」

 

この期に及んで俺のことをまだ親友として大切に思ってくれてるのか・・・・お前って奴は本当に・・・・

 

「皆して甘いわね・・・・まあ、私も人のことを言えないけれど」

 

「リアス部長、それって・・・・・」

 

「朧、これまで私たちを助けてくれたおんに免じて私たちはあなた達を処断しないわ。。そしてその朧に免じてレイナーレ、あなたを処断するのもやめておくわ。朱乃の言うとおり、三種族の会談も近いからというのもあるけれど」

 

どうやら、リアスたちとの敵対は避けられたようだ。

 

『良かったわね朧。親しい相手を殺すことにならなくて』

 

まったくだ。ここまで縁を築いた相手を殺すのは流石に気が引けるからな。

 

「ありがとうございますリアス部長。それに皆も」

 

「甘い連中ね。私は別に許してくれだなんて言った覚えないのに・・・・・まあ、余計な面倒が起きずにすんだっていうのはありがたいけれど」

 

「ツンデレレイナーレカワユス」

 

「殺すわよ?」

 

光の槍を俺につきつけながら言ってくるレイナーレ。一回くらい顔を赤らめて慌てふためく姿が見てみたいんだけどなぁ。

 

「ただまあ、レイナーレに関しては処断しないとは言え、放っておくつもりはないわ。あなたには私たちの監視下に入ってもらいましょう」

 

「監視下?どうするつもりかしら?」

 

「この学園に通ってもらう・・・・もっと言えば、オカルト研究部に所属してもらうわ」

 

「堕天使の私を悪魔のテリトリーの中に・・・・・随分とまあ思い切るわね」

 

リアスの発言に、レイナーレは呆れた様子だ。けど、部長の判断は間違ったものではないだろう。最近はどうだか知らないが、元々は俺だってリアスたちに警戒されていて、監視下に置くためにオカ研に所属させていたわけだし。まあ提案してのは俺の方からだけど。

 

「いいわ。いい加減朧の家に引きこもる生活も飽きてきたし。退屈しのぎにはなりそうだから従ってあげるわ。けどいいのかしら?そんなこと勝手に決めちゃって」

 

「大丈夫よ。この町を任されているのは私・・・・この町の中でどうするのかは私に一任されているわ。いいわよねソーナ?」

 

「私がなんといってもあなたは押し通すつもりでしょう?まあ、私も特に異論はないから構わないけれど」

 

どうやらソーナもリアスの考えに異論はないらしく、レイナーレが駒王学園に通い、オカ研に所属するのはほとんど確定した。つまり、これからレイナーレと学園生活を共にできるということだ。

 

「朧・・・・・嬉しいっていうのはわかるけど、そんな堂々とガッツポーズするなよ」

 

「え?あ、おっと。俺としたことが・・・・・」

 

イッセーに言われて、俺は無意識のうちにガッツポーズをとっていたことに気がついた。しょうがないじゃないか。だって嬉しいんだもの。

 

「とりあえず、大まかな手続きやなんやらは私の方ででしておくから、朧は書類を作っておいて頂戴」

 

「え?俺が書類作るんですか?」

 

「ええ。だってあなた、そういうの適当にでっち上げるの得意でしょう?」

 

リアス・・・・・間違っちゃいないが言い方ってものがあるだろう。

 

「それとレイナーレ。手続きのためにあなたと連絡が取れるようにしておきたいのだけれど・・・・携帯か何か持ってるかしら?」

 

「あるわよ。朧の家に住むようになってすぐにもらったから」

 

そう言いながらレイナーレは携帯を取り出し、同じく携帯を取り出したリアスと連絡先を交換し合う。悪魔と堕天使が連絡先交換とかなんというレアな光景だろうか。

 

「さて、それじゃあ今日のところは俺とレイナーレは失礼させてもらってもよろしいでしょうか?帰ってやらなければならないことができてしまいましたし」

 

「さっき言ってた書類を作るのか?早いに越したことはないと思うけど、そんなに急ぐ必要もないんじゃ・・・・」

 

「いや、書類が理由じゃない。ただ、レイナーレと一緒に学校生活が送れるようになった記念に今日はご馳走を作ろうかと・・・・」

 

「何をしているの朧。さっさと帰るわよ」

 

ご馳走と聞いた瞬間、レイナーレが俺の手を引いてきた。なんというか、非常にわかりやすい。

 

「・・・・ご馳走」

 

向こうではなんか小猫が羨ましそうにこっち見てるし。今にも涎を垂らしそうな勢いだ。

 

「というわけで今日は帰ってもよろしいでしょうか」

 

「ええ、いいわよ」

 

「では失礼します」

 

「あ、あの、レイナーレ様!」

 

部室をあとにしようとしたその時、アーシアがレイナーレを引き止めた。

 

「なにかしら?」

 

「次の休日に皆で遊びに行くんですけど、レイナーレ様もご一緒にどうですか?」

 

「・・・・は?」

 

アーシアからの突然の提案に、訳がわからないといったように声を上げる。

 

「えっと・・・ダメですか?」

 

「・・・・はあ、それ、イッセーちゃんも来るのでしょう?あなたはともかくとしてイッセーちゃんは私なんかがいたら気分が悪いでしょうし、やめておくわ」

 

「・・・・・」

 

レイナーレはイッセーがいるならと断った。イッセーがジト目でレイナーレを見てくるので、レイナーレの判断は間違っちゃいないだろう。

 

「そうですか・・・・わかりました」

 

「・・・・まあ、また次の機会があるって言うなら行ってあげなくもないけれど」

 

「本当ですか?」

 

落ち込むアーシアに対して、レイナーレがフォローを入れると、表情が一転。アーシアは嬉しそうに微笑む。

 

「まあ、あくまでもその時気分が乗ればの話よ。それよりも・・・・・いい加減その呼び方やめなさい」

 

「え?」

 

「様付けするなって言ってるの。今は様付けされるような関係じゃないんだから別の呼び方にしなさい」

 

「はい。わかりましたレイナーレさん」

 

「それでいいのよ」

 

様付けがなくなり、レイナーレはどこか満足気な表情だ。

 

「・・・・・」

 

「朧、なんでそんなにニヤニヤしてるのかしら?」

 

「いやいや、別に意味はありませんよレイナーレさん♪」

 

「・・・・はあ。いいわ。いい加減帰るわよ」

 

「はーい。それでは皆さん、またね」

 

イッセーたちにひらひらと手を振って、俺とレイナーレは部室を出た。

 

 




駒王の制服着たレイナーレとかすっごい見たい

次回でこの章は終わりとなります

それでは次回もまたお楽しみに


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第66話

今回でこの章は終わりになります

それでは本編どうぞ


日曜日、俺はイッセー、アーシア、木場、小猫、桐生の5人と共にカラオケに来ていた。歌ったり飲み食いしたりとそれなりに騒がしく楽しんでいた。まあ、何を歌おうか迷った挙句聖書の暗唱をはじめようとしたアーシアを俺と桐生以外の三人が必死に止めるという事態が起こっていたが。桐生はわけがわからないと首をかしげていたが、正直悪魔じゃない俺からしたらただただその光景は面白かった。

 

「ねえ朧、ちょっといい?」

 

イッセーが歌っているときに、桐生が俺の服の裾を引っ張り、声を掛けてきた。

 

「・・・・なんだ?」

 

「そんなにあからさまに嫌そうな顔しなくたっていいでしょ・・・・話があるの。ちょっと付き合いなさい」

 

「わかった」

 

仕方なしに、俺は桐生と共に部屋の外に出た。

 

「で?話ってなんだ?」

 

「あんた、イッセーと何かあったの?ギクシャクしてるように見えるんだけど・・・・」

 

よりによってそれか・・・・・まあ、こいつ結構周りのこと見てるから気づかれてもある意味当然だとは思うけど。

 

「まあ色々あってな。ギクシャクしてるのは否定しない。ただ、親友やめたわけじゃないし時間が経てば普段通りに戻ると思うから桐生が気にすることはないさ」

 

レイナーレのことは一緒にいる時間が増えればたぶんそのうち打ち解けてくれるだろう。だからそこまで心配する必要はないと思い、俺は桐生にそう答えた。

 

『さて、それはどうかしらね?』

 

は?どう言う意味だよラム?

 

『はあ・・・・その歳にしてはそれなりに女性経験豊富なのにどうしてこうも肝心なところで鈍いのかしら。まあ、見てる方は楽しいからいいけれど』

 

マジで何を言ってるんだこいつは・・・・・まるで意味がわからん。

 

「まあそれならいいんだけど・・・・・喧嘩したって言うなら早めに仲直りしなさいよ?私はともかくアーシアは必要以上に気にしてるみたいだから」

 

「・・・・それを言われると心が痛むな」

 

アーシアは優しい子だからなぁ・・・・・あまり気にしないで欲しいが、アーシアの性格上それも無理か。本当にに申し訳ないな。

 

「一応聞くけど・・・・イッセーとギクシャクしてるのって男女の仲的な意味じゃないでしょうね?」

 

「それは天地神明にかけて違うと断言する。あくまでも俺とイッセーの関係は親友だ。それ以外のものになることはありえない」

 

「・・・・そう思ってるのはあんただけだと思うんだけど。傍から見たらあんたら二人はいつ付き合ってもおかしくないってぐらい距離が近いから」

 

「俺とイッセーが付き合う?ないわー・・・・・それだけは絶対にないわー。確かにイッセーはちょっとおっぱいに執着しすぎてレズっ気が強いのに目をつぶれば可愛い良い子だけど、付き合うとかマジないわー」

 

「・・・・はあ」

 

なぜか呆れたような表情でため息を吐く桐生。俺変なこと言ってないよな?なんでため息吐かれなきゃならないんだよ・・・・・

 

『自分の胸に手を当てて考えてみなさい』

 

おう。それで分かるならいくらでもやってやるよ。

 

「もういいわ。話はここまでにしましょう。これ以上は頭が痛くなりそうだし」

 

「まあせっかく遊びに来たんだから楽しまないと損だもんな」

 

「そういうこと。朧、部屋に戻ったら何か歌いなさいよ。結構上手いんだし」

 

「ああ。言われなくても」

 

ひとまず桐生との話を終え、部屋に戻る。

 

さて、何を歌おうかな・・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朧がイッセーちゃん達と遊びに出かけ、家で留守番していた私はリアス・グレモリーに呼び出されて駒王学園のオカ研の部室に来ていた。部屋の中にはリアス・グレモリーと姫島朱乃がいる。

 

「わざわざ朧がいないタイミングで呼び出すなんて・・・・なんの用かしら?」

 

「ちょっとあなたに聞きたいことがあったのよ」

 

「聞きたいことね・・・・別にいいけれど、話をするなら側近に殺気を沈めるように言ってくれないかしら?気分が悪いわ」

 

私は姫島朱乃に視線を向けながら言う。姫島朱乃は殺さんばかりに私のことを睨んでいた。よほど堕天使が憎いようだが・・・・正直理解に苦しむわ。あの事件でバラキエル様はご自分のことを責めていた。バラキエル様だって散々苦しんだというのにまるでバラキエル様を加害者のように扱うだなんて・・・・どうかしているわ。

 

そもそも、私に下手なことしようものなら朧に殺されかねないのだけれど・・・・・そのあたりのことわかっているのかしら?

 

「朱乃」

 

「・・・・はい。すみません部長」

 

姫島朱乃はリアス・グレモリーに謝罪しながら殺気を解いた。これで落ち着いて話ができるわ。

 

「それで?聞きたいことってなにかしら?」

 

「あなたは自分やアザゼルを侮辱したからという理由でコカビエルを殺したけれど・・・・それは本当かしら?」

 

いやに神妙な面持ちで尋ねてくるリアス・グレモリー。何を聞いてくるかと身構えていたけれど・・・・まさかこんなわかりきったことを聞いてくるなんて。

 

「何かと思えば・・・・そんなの嘘に決まっているでしょう?私がコカビエルを殺したのは朧と私のためよ」

 

アザゼル様はコカビエルを生きて連れてくるように白龍皇に命じていた。そのアザゼル様の意思を無下にしているのだから・・・・そんなの朧のために決まっている。

 

「朧はコカビエルに母親を殺された。だからコカビエルを強く憎んでいた。そしてそれは私も同じ。愛する朧の母親を殺し、朧を絶望に淵に追いやったコカビエルが憎かった。だから殺したのよ」

 

「・・・・あなたは朧のことを愛しているの?心酔していたアザゼルの意思に反してまで?」

 

「ええ、そうよ。私は朧を愛している。誰よりも何よりも・・・・最愛といっても過言でないほどに」

 

まあ、癪だから朧には当分言ってやらないけれど。まだしばらくは私に愛されるためにご機嫌取りさせてやりたいし。

 

「・・・朧くんは人間ですわよ?」

 

今度は姫島朱乃が聞いてくる。自身が堕天使と人間の間に生まれたから聞かずにはいられなかったというところでしょうね。

 

「関係ないわ。確かに以前は人間なんて私たち堕天使と比べるまでもない低俗な存在だと思っていた。今だって人間は別に好きではないけれど・・・・関係ない。私はただ『現世朧』という男を愛しているだけ。朧の種族なんてどうでもいいわ」

 

別に朧が人間だろうが悪魔だろうが天使だろうが鬼だろうが妖怪だろうがなんだって構わない。それを些細な問題だと切り捨てられる程度には朧を愛してしまっているのだから。

 

「そういえば、以前私の愛は薄汚れていると言割れたわね。今もそう見える?私の愛は薄汚れているかしら?醜いかしら?」

 

別にリアス・グレモリーにどう思われようと構わないが一応聞いてみる。

 

「・・・・いいえ。あなたの朧への愛は醜くなんてないわ。むしろ・・・そこまで一人の男を愛せるだなんて羨ましいぐらいよ」

 

「それに関しては・・・・私も同感ですわ」

 

「そう・・・・・それはなによりだわ。羨ましいのならあなたたちもせいぜい愛しがいのある相手を見つけることね」

 

二人共イッセーちゃんに対して愛情を抱いているのかもしれないから言うまでもないかもしれないけれど煽り目的で一応言ってみた。私も朧に似てきたかしらね。

 

「話は終わりかしら?だったらもう帰らせてもらうわよ。あなた達の相手を長々していられるほど、私も暇じゃないの」

 

まあ本当は家にいてもやることはないから今回の呼び出しはいい暇つぶしになったと思っているのだけれど・・・・絶対に言ってやらないわ。

 

というか、わざわざこんなことを聞くために私を呼び出すだなんて・・・・私が思っている以上にリアス・グレモリーは朧に情が移ってしまっているのかしらね。朧の方もなんだかんだ彼女たちのことを気に入っているようだ案外上手くやれているようね。

 

・・・・なんだかそれはそれでムカつくわね。ちょっとちょっかい出してやろう。

 

「帰る前に、あなた達に忠告しておいてあげる。朧のことを仲間として扱っているようだけれど信用しすぎない方が身のためかもしれないわよ?」

 

「どういうことかしら?」

 

「朧はコカビエルの件以外にもいくつも秘密を抱えている・・・・隠している秘密次第では、朧はあなた達の信用や信頼を裏切りかねないわ。せいぜい気をつけることね」

 

わざと朧への不信感を強めるようなことを言った後、私は部屋をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

せいぜい朧への信用を落とすがいいわ

 

醜い独占欲だと罵られても構わない

 

朧を一番信用しているのは私だ

 

朧を一番大切に思っているのは私だ

 

私が・・・・朧を一番愛しているんだ

 




ちょっと朧とイッセーの仲がギクシャクしたり、レイナーレが朧への愛情がちょっとだけあらわにしたり・・・・この章は楽しかった。他に言うこともあるとは思うが

次回はまた章終わり恒例の現時点での設定公開になります・・・・おそらく

それでは次回もまたお楽しみに!



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二章終了時点での設定

現段階のキャラの設定になります

だいぶ簡易ですが・・・・それではどうぞ


直接手を下したわけではないが、母親を殺したコカビエルへの復讐を果たした本作の主人公。彼がまだ『現世朧』であった前に母親と共にコカビエルに捕まり、自分を人質に母親を陵辱された過去を持つ。この一件から朧は堕天使に対して憎しみを抱くようになった。コカビエルと同じ堕天使であるレイナーレに対しても僅かに憎しみの感情を抱いてはいるが、それ以上の愛情を注いでいる

 

本章にてレイナーレのことがオカ研メンバーに露呈してしまい、必要あらばイッセー達を抹殺することも考えていたが、結果的にレイナーレを受け入れてもらえたことでそれは回避された。なお。万が一受け入れられなかった場合は朧は心に傷を負いながらもイッセー達を抹殺していたし、それぐらいのことは容易になせる実力がある

 

いくらか秘密が明かされたが、それはまだほんの一角であり、まだまだ多くの秘密を抱えている。その秘密の中には彼を『現世朧』たらしめるものや、彼が『現世朧』になったきっかけも含まれている

 

戦闘力に関しては、不意を突いたとはいえ、グレモリー眷属達がても足も出なかったコカビエルを追い詰めることができる程度には高い。普段は幻術によって生成した銃を使って戦うが、実は剣士としての適正が高く、木場やゼノヴィア以上の才能を秘めている

 

幼少期・・・まだ『現世朧』になる前に犬に噛まれたせいで犬が大の苦手。犬系のモンスターが敵として現れたときはほぼ役立たずになってしまう。つまりフラグ

 

本章ではシリアス成分多めとなってしまったが、『幻福投影』の存在で全部チャラ

 

 

 

ラム

二天龍の戦いを煽りまくったくせに二天龍の封印に貢献したどうしようもない愉悦主義のドラゴン。自身も神器となってしまうが、それはラムが望んだことであり、神器になってからも二天龍の戦いにちょっかいを出しまくった

 

自身の愉悦を何よりも重視し、相棒である朧もそのための道具として考えている一方で、朧に対して深い情愛を抱いている。朧が白龍皇と対峙した際には、愉悦を崩してまで朧の身を案じ感情をあらわにした

 

ドライグやアルビオンからは厄介な存在と思われている

 

 

 

レイナーレ

朧の事を愛してやまない本作のメインヒロイン。朧の復讐対象であるコカビエルを殺すほどに朧への愛情が高まってしまった。現在でもアザゼルへの敬愛を抱いているが、朧への愛情はそれを上回っている

 

朧が留守にしている間、暇だったので修行をしていた。その結果、光力をコントロールする技術が異様に高くなり、時間差攻撃や拡散攻撃といったことが可能となり、コカビエルを驚かせた。潜在能力は高く、今以上に強くなる可能性は十二分にある

 

朧を思うがゆえにコカビエルとの戦闘に参加したが、そのせいでイッセー達に生存がばれてしまう。朧がイッセー達の信頼を獲得していたことと、コカビエルとの戦闘でレイナーレがイッセーとアーシアを救ったことが功を奏しどうにか争いにならずに済んだ

 

監視のため駒王学園に通い、オカ研に所属することに。レイナーレとしては朧との学園生活を密かに楽しみにしていたりする

 

 

 

イッセー

話数を重ねるごとに女の子っぽくなっていっている気がする原作主人公。朧とは親友として接しつつも、心の奥底では異性として見てしまっており、レイナーレの件でそれを若干自覚してしまった。まあ、だからといって彼女がおぼろのヒロインになる可能性は皆無だが

 

レイナーレのことや、コカビエルへの憎悪を隠していた朧に怒っており、そのせいで若干ぎくしゃくするようになってしまった

 

 

リアス

朧のことは完全に身内として考えるようになってしまう。そのため、レイナーレの件も許してしまった。

 

朧に名前で呼ばれるようになったのは彼女としては結構嬉しいらしい

 

 

朱乃

人間である朧の事を愛しているというレイナーレに、自分の父親を重ねてしまって複雑な心境を抱いている

 

名前で呼ばれたとき上機嫌になる程度には朧を信頼している

 

 

 

小猫

朧に対する毒舌は変わらないものの、餌付けは順調に進んでいる。本人はあまり意識していないが朧への信頼はもう仲間レベルである

 

 

木場

復讐という共通点を得て、朧への信頼を高める。復讐をなした朧が何を思い、どうなっているのかを気にしている

 

 

 

アーシア

レイナーレによって死を迎え、悪魔に転生したにもかかわらず、レイナーレの事を許したなんかもうマジで優しい子

 

今後レイナーレと友達になっていきたいと思ってる。いや、どんだけいい子だよ

 

 

ゼノヴィア

卑劣且つ性に忠実な朧のことをグレモリー眷属たちよりもよほど悪魔らしいと思っている。しかし、幻術使いとしての実力は認めている

 

とりあえずほかの眷属たちが朧を認めているようなので自分も早めに名前で呼ばれるようになりたいと思っていたりする

 

 

 

 

ソーナ

強かさと自分勝手さが朧に認められ、名前で呼ばれるようになった。朧への好意を自覚したが、想いを伝える気は一切なく、朧とどうこうなろうとも思っていない

 

 

イリナ

決闘の際、幻とはいえ全裸にさせられてしまったかわいそうな子。朧に対して結構なレベルの怒りを抱いているが、好みかもしれないと言われて動揺したりとチョロい子。けど、そんなチョロい子が作者は好きだったりする

 

 

コカビエル

朧の母親を一年もの間陵辱した挙句に殺した堕天使。それが原因で朧に追い詰められ、レイナーレに殺された。幼少の朧に神の不在を教えたのも彼である

 

朧を庇って死んだ母親に免じて朧の事を見逃したが、そのせいで死んだ

 

 

白龍皇

朧の事を幻龍だと知っていた数少ない存在。朧を幻龍と呼び戦いたがっている

 

過去に朧の何かを半分にした

 

 

朧の母親

一年間陵辱された挙句、朧をかばって死亡した朧の母親。名前を伏せているのはまだ秘密があるから

 

 

 

 

 

 

 

 

現状での朧に対する好感度一覧

レイナーレ

10/10

 

イッセー

8/10

 

リアス

7/10

 

朱乃

7/10

 

小猫

7/10

 

木場

7/10

 

アーシア

7/10

 

ゼノヴィア

3/10

 

ソーナ

9/10

 

イリナ

2/10

 

 




結構シリアスだった第三章もこれにて本当におしまいです

なお、次章も結構シリアスに・・・・・・

それでは次回もまたお楽しみに


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間幕
第67話


今回から4巻の内容・・・・・ではなく、その前にちょっとした間幕を数話挟みます

4巻は4巻でシリアスなところもあるのでその前の息抜きみたいなものだと思ってください

それでは本編どうぞ


 

「♪~」

 

「朧・・・・・これは一体何かしら?」

 

機嫌よさげに鼻歌交じりに作業する朧に私は尋ねる。

 

「何って見ての通り、学校に持っていく弁当作ってるんだけど?」

 

「それはわかってるわよ。私が聞いてるのはこの机に置いてある重箱の方よ」

 

私は机の上に置かれている重箱を指差す。箱の数は5個。どう考えても学校へ持っていく弁当の量ではないのだが・・・・

 

「いや、それにおにぎりとかおかずとか詰めていこうと思ってるんだが?」

 

やはりこの重箱は学校に持っていくものらしい。アホか。いつもより早く起きて何をしているのかと思ったら・・・・・

 

「一応聞くけど、これ誰が食べるの?」

 

「当然俺とレイナーレ♪」

 

「食べきれるわけ無いでしょ。あなた馬鹿なの?」

 

いくら朧の作る料理が美味しいといっても、重箱5段も食べきれるはずがない。朧と二人で食べるにしても3段が限界だ。

 

「いやだって、せっかくレイナーレも学校に通えるようになったんだからこれぐらいはしないと・・・・」

 

気合入れるのはいいけどそれは質だけにしてほしい。量まで気合を入れる必要は皆無だ。はあ・・・・・確かに私も学校に通えるようになったのは嬉しい。少しでも朧といっしょにいられる時間が増えたのだから。だけれど、初日からこれは・・・・・さすがに勘弁して欲しい。

 

「朧、私のために頑張ってくれてるのは嬉しいわ。初日だから気合が入るのもわからなくはないけれどやりすぎよ」

 

「そうか?というか今日だけじゃなくてこれからずっとこれぐらい作ろうと思ってたんだが・・・・」

 

「本物の馬鹿ねあなたは」

 

まさかこれを毎日続けようとしていたとは・・・・ここまで馬鹿だといっそもう呆れを通り越して尊敬してしまいそうだわ。

 

ただ、いくらなんでも毎日重箱は無理。楽しい食事の時間が憂鬱な時間になってしまう。なんとしてでも阻止しなければ。

 

「朧、今日はもうほとんどできちゃってるみたいだから甘んじて重箱5段を受け入れるわ。だけど毎日はやめて」

 

「え?でも・・・・」

 

「やめて」

 

「いや、だけど・・・・」

 

「ヤメテ」

 

「はい。わかりました」

 

私の説得が功をそうして、朧は諦めてくれた。え?脅し?ちょっと何を言っているのかわからないわね。

 

「わかればいいのよ・・・・・もうほとんどできてるみたいだけど手伝うわ。早く終わらせましょう」

 

「ああ。そうだな」

 

私も加わって、お弁当作りを再開する。それにしても・・・・量は多いけれど、やっぱり美味しそうね。お昼が楽しみだわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~。眼福眼福♪やっぱり制服姿のレイナーレはいいな♪」

 

「はあ・・・・まだ言ってるの?」

 

学校へ登校中、朧は何度目になるかわからない賛辞を私に送ってくる。どうにも私の制服姿がツボにはまったようだ。

 

「前からうちの制服ってレイナーレに似合うだろうなって思ってたんだよ。どうにかして手に入れようと思ってたけど、その必要もなくこうして見られて嬉しくてたまらないよ」

 

「あっそ。それは良かったわね。というか、それなら幻術使えばいくらでも見れたんじゃないの?」

 

「いや、まあそういうわけにもいかないんだよねぇ・・・・・あはははは」

 

朧は何かを誤魔化すように笑みを浮かべる。また隠し事?こいつは本当に・・・・・

 

「というかレイナーレ、こんな通学路で幻術の話はしちゃダメだろ。ギリギリ幻術使って周りには音ごまかしたけど」

 

そんなことしてたのか・・・・・相変わらず器用なやつね。

 

「元々話を振ったのは朧でしょ?私は悪くないわ」

 

「ははは・・・・・そうか。まあともかく、制服姿のレイナーレを見られたことだし、レイナーレを駒王に転入させてくれたリアスには感謝だな。まあうちのクラスじゃなくて木場のクラスに転入してくれたことには納得いかないが」

 

不満げな表情を浮かべながら朧は言う。朧の言うとおり、私は朧の居るクラスでなく、グレモリーの騎士(ナイト)、木場祐斗の居るクラスに転入させられることになっている。私の転入は監視のためだから、信頼をおける騎士にその役を任せるということだろう。私としても朧と同じクラスが良かったから不満だと言わざるを得ない。

 

「休み時間になったら絶対に会いにいくからな。昼も一緒に食べよう。いや、いっそのこと幻術使って俺もレイナーレの居るクラスに・・・・・」

 

「そんな無駄な労力使わないで大人しく自分のクラスにいなさいよ」

 

こいつ、こんなんで大丈夫なのかしら・・・・私を想ってくれるのは嬉しいけれど心配になるわ。

 

私の学校生活・・・・・どうなるかしらね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイナーレ・ノワール。他は特になし」

 

学校に到着し、担任だという教師に連れられてきた私は、教卓の前で一応クラスメイトとなる者達に自己紹介をする。といっても、どうでもいい人間に名前以外教える気はないから手短にだが。

 

ちなみにノワールというファミリーネームは朧がつけた。私の黒髪を見て決めたらしい・・・・・安直だが、悪くはないと思っている。

 

「えっと・・・・ノワールさん、本当に自己紹介それでいいのかな?」

 

「ありません」

 

担任が苦笑いを浮かべ、目でもっとないのかと訴えながら訪ねてくるが、知ったことか。

 

「そ、そっか。それじゃあ席は木場くん・・・・あの爽やかなイケメン君のとなりにお願いね」

 

「・・・・わかりました」

 

よりによって木場祐斗の隣ってどんな嫌がらせよ。まあ、グレモリーがそうなるように手を回していたのかもしれないけれど。というか担任に爽やかなイケメンって称されるってどんだけよ・・・・・私は断然朧の方が好みだからなんとも思わないけど。

 

「よろしくねレイナーレさん」

 

「気安く話しかけないで」

 

席に着いた私に、木場祐斗が声を掛けてきたが私はバッサリ切り捨てた。監視してるような奴とどうして馴れ合わないといかないのだろうか。

 

やっぱり朧のいるクラスが良かった。イッセーちゃんもいるけれど、朧がいればそれで私は・・・・・

 

「ノワールさん」

 

朧のことを考えていると、女生徒が私に声を掛けてきた。しかも、女生徒以外にも周りには何人か集まってきている。

 

「ノワールさんって外国の人だよね?どこの出身なの?」

 

「ノワールさんってどこ住んでるの?」

 

「趣味は?」

 

「好きな人いるの?」

 

集まってきた連中は一斉に私に質問してくる。そういえば、転入生は質問責めに合うことがあるって朧が言ってたけどこれがそうなのか・・・・・鬱陶しいことこの上ないわね。ひと睨みして散らすことは多分できるだろうけど、さすがに初日から必要以上に悪印象を与えるのは気が引ける・・・・仕方なしに、木場祐斗にどうにかしてもらおうと視線を向けるが、ニコニコと笑顔で見ているだけで助けてくれそうになかった。

 

どうしようかと困り果てていたその時・・・・

 

「はい、そこまで」

 

朧の声が私の耳に入ってきた。朧は私の肩に手を置き、どこかいたずらっぽい笑みを浮かべている。

 

「これ以上俺のレイナーレに質問するのはよしてくれないか?戸惑ってるみたいだからさ」

 

「俺の・・・・?現世、お前ノワールさんとどういう関係だ?」

 

男子生徒の一人が、怪訝な表情で朧に尋ねる。

 

「俺とレイナーレは・・・・なんと一つ屋根の下で暮らすただならぬ関係なのだ!」

 

「「「「な、なんだってぇぇぇぇぇ!!」」」」

 

朧の発言に、周囲の連中は大げさに驚いてみせた。

 

「馬鹿な!転校初日の女の子とお近づきになろうと思ったのにもうお手つきだっただなんて・・・・!」

 

「しかもよりにもよって現世の!?」

 

「ダメよノワールさん!現世だけはダメ!」

 

「そうよ!現世は学年を代表する・・・・いえ、学園を代表するクズで変態なんだから」

 

とんでもない言われようね。前に朧が笑いながら自分は学園の嫌われ者だって言ってたのを聞いていたけれど、まさかここまでとは。いっそ清々しくなるほどの嫌われっぷりだわ。

 

「ふはははははは!クズ結構!変態結構!レイナーレはそんな俺とイチャネチョしたいって言ってくれてるんだからな!」

 

「言ってないわよ」

 

「ごふっ!?」

 

ちょっとイラっときたから肘鉄を朧の鳩尾に食らわせた。

 

「レイナーレ・・・・・いくらなんでもこれはきつい・・・・」

 

「そう。それはなによりだわ。せいぜい悶えなさい。というか、もうすぐ一限目が始まるんだから自分の教室に戻りなさいよ」

 

「お、おう。それじゃあレイナーレ、一限目終わったらまた来るから・・・・」

 

鳩尾を押さえながら、朧は自分の教室に戻っていった。

 

「あなた達ももうすぐ授業始まるんだから自分の席に・・・・いえ、その前に言うことがあったわ」

 

皆は私が何を言うのだろうかと興味津々にしている。だけど残念ね。あなた達が期待するようなことを言うつもりはないわ。

 

「あなた達が朧のことをどう思おうが構わないわ。けど・・・・・二度と私の前で朧を侮辱しないで。不愉快だから」

 

「「「「・・・・・はい」」」」

 

私が脅しをかけると、皆顔を青白くさせて返事をした後に自分の席に戻っていった。

 

「レイナーレさん・・・・朧くんのこと結構大切に思ってたりしてるのかな?」

 

「黙れ」

 

「うん、ごめん」

 

まったく・・・・・まだ授業も受けてないのに、どうしてこんなに疲れるのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんだかんだ朧のことが大事すぎるレイナーレ。まあ、まだ朧の前ではツンケンしてますが

それでは次回もまたお楽しみに!


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第68話

今回はちょっと空気が冷たいかも?

冬突入してこんなの書くとか・・・・・

どういう意味かはその目でお確かめを

それでは本編どうぞ


お昼休み・・・・・屋上は異様な空気に包まれていた。

 

「朧・・・・・これどうしてくれるんだ?」

 

「いや、俺に言われても困るんだが・・・・・」

 

それを見たイッセーは責めるような目で俺を見てくるが、正直俺だってどうしてこんなことになっているのか皆目見当もつかないから困っている。俺はただ、屋上で昼食を食べようと思ってレイナーレを連れてきて・・・・二人じゃ流石に重箱5段はきついと思ってイッセーとアーシアを誘っただけだ。だからその時、あいつがどうしても自分もついて来ると言って聞かなかったのは俺のせいじゃないし、こんな状況になったのも俺の責任じゃない。

 

そうだ。こんな・・・・・レイナーレと桐生がものすっごい黒い笑みを浮かべて見つめ合う状況になっているのは断じて俺のせいではないんだ。

 

「はじめまして転校生さん。あなたのことは聞いてるわ。朧と一緒に住んでてただならぬ関係なんですって?」

 

数分にも渡る見つめ合いの末、桐生が先にレイナーレに切り出した。

 

「ええ、そうよ。それがどうかしたのかしらどこかの誰かさん?」

 

「別に。ただ朧の()()()として警告しておくけど、朧って結構手が早いから気をつけたほうがいいわよ?油断してるとあんなことやこんなこと、じっぽりねっとりヤられるちゃうから」

 

「警告ありがとう。けど大丈夫よ。朧って()()はすっごく大事にするみたいだから。今のところ特に乱暴されたりなんてしていないわ」

 

なぜか桐生は『元カノ』、レイナーレは『本命』の部分をやたらと強調しながら言う。

 

「それはなによりだわ。でもそれはそれで不安にならない?一緒に住んでるっていうのに手を出してこないだなんてもしかして朧はあなたにそういう劣情を催すような魅力を感じていないのかもしれないわよ?」

 

「ご心配無用よ。朧は私のこの髪に、そしてこの髪を持つ私にぞっこんなの。いつもいつも理性のタガが外れて襲っちゃわないように気をつけてくれてるってことは私にはわかってるわ」

 

「ふ~ん・・・・へ~・・・・そうなの。それならいいけれど・・・・・可愛そうね。朧ほどのテクニシャンに抱かれる悦びを味わえないなんて」

 

「大丈夫よ。いずれはちゃ~んと味わうことになるもの。それこそ、あなたが知らない悦びを得られるほどに激しく・・・・ね」

 

「「・・・・・・」」

 

いくらか会話した後、また黒笑を浮かべて見つめ合う二人。何かもう・・・・・ひたすらに気まずい。

 

「朧さん・・・・・なんだかとても寒いです」

 

「わかるよアーシア。私もだもん」

 

夏真っ盛りだというのに、寒気を感じているというイッセーとアーシア。まあ無理もない。俺だってレイナーレとアーシアの間には真っ黒なダイアモンドダストが発生しているように見えているのだから。あの間に放り出されたら魔王様だって凍りつくぞ。

 

「朧、早くあれ何とかしろよ」

 

「俺が?」

 

「当然だろ。どう考えてもあれはお前が原因なんだから」

 

「無理無理無理。確かに話の内容からして原因は俺だっていうことはわかるが、どうして二人があんなことになってるか理由がわからないんだもん。理由がわからないんじゃ止めようがないだろ」

 

「「・・・・・」」

 

なぜかイッセーとアーシアが訝しげな目で俺を見てくる。

 

「あの朧さん。朧さんはその・・・・・女性とお付き合いしたことが何度もあるとおっしゃってましたよね?」

 

「まあな。歳の割には恋愛経験豊富だと自負している」

 

「それなのにこれって・・・・」

 

え?『これ』って・・・・どう言う意味?

 

『どう言う意味かしらねぇ?うふふふふ♪』

 

愉快そうに笑い声を上げるラム。この様子からしてラムはわかってるようだ。しかもラムにとっての愉悦案件である可能性が非常に高い。本当に一体なんだというのだろうか・・・・

 

「まあいいか・・・・・とにかくアレ、責任もって何とかしてこい。でないと昼食食べられないから」

 

「うっ・・・・・それは困る。わかった、何とかしてみる」

 

流石にせっかく作った弁当にありつけないのは勘弁願いたいので、俺はレイナーレと桐生の間に割って入るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイナーレ、どうして桐生とあんな言い争いになったんだ?」

 

「だから何度も言っているでしょ?普通に話をしただけであれは言い争いなんかじゃないって」

 

授業が終わりオカ研の部室に向かう途中、昼間の件をレイナーレに尋ねるがはぐらかされてしまった。既に何度も聞いているが一向に教えてくれない・・・・これはもう聞き出すのは無理かもしれないな。

 

ちなみに昼食についてはあのあとしっかりと食べられた。時間がかかるかなと思ったのだが、俺がちょっと話すを二人とも直ぐに引き下がってくれたのだ。まあ、なぜかすっごい呆れ顔になっていたが。

 

「そんなことよりも、これから部活だけど私は悪魔の集団の中で何をすればいいのかしら?悪魔の怪しげな儀式の手伝いでもすればいいの?」

 

「レイナーレ・・・・一々嫌味ったらしく言うのはやめろ」

 

「あら、ごめんなさい」

 

レイナーレの言い方にむっとしたのか、イッセーが咎めるが、レイナーレの方は全く悪びれた様子はない。この二人、相変わらず打ち解ける様子が見られないな・・・・俺とイッセーのギクシャクはある程度解消されたけれど、こっちの方はまだまだかかりそうだ。

 

「悪魔の活動は夜になるまでは始まりません。それまでは普通にオカルト研究部として活動するんですよレイナーレさん」

 

見かねたアーシアが補足して説明する。

 

「まあ、レイナーレは俺の手伝いをしてくれれば多分大丈夫だよ」

 

「朧の手伝いね・・・・朧って普段何してるのよ?」

 

「お茶とお茶請けのお菓子の用意したり、書類作ったり、部室の掃除したり・・・・・かな?」

 

「それほとんど雑用じゃない」

 

うん、まあ否定はできないかな。正直俺ってオカ研の内容とはあまり関係ないことしてるんだよなぁ・・・・

 

「つまり、私は雑用係その2になれっていうことね・・・・まあいいわ。オカルトとかそういうのあまり興味ないし」

 

「まあ僕たちはそもそも存在自体がオカルトじみてるけどねぇ」

 

レイナーレの発言に、苦笑いを浮かべながら言う。確かにオカ研のメンバーは俺以外悪魔ばっかだもんな。今回堕天使のレイナーレが入ったし。

 

『まあ、あなただって人間だけれどオカルト要素にかなり染まってると思うけれどね』

 

それに関しては否定はしない。

 

「ともかく、大して面倒なことするわけじゃないから気楽にしてればいいさ」

 

「そうね。気楽に監視されておくわ」

 

まだツンケンするか・・・・・まあ、これがレイナーレの基本スタンスみたいだし仕方がないか。

 

「と、もう部室に着いたか・・・・・それじゃあレイナーレ。早速皆にお茶出すから手伝ってくれ」

 

「ええ」

 

気がついたらもう部室の前に来ていたようで、早速お茶を淹れようとレイナーレに言って部室の扉を開く。

 

「お待ちしていましたわ朧様」

 

扉を開いた俺の目に真っ先に映ったのは、普段のオカ研には見られない人物・・・・・レイヴェルの姿であった。

 

「え・・・?レイヴェル?」

 

「お久しぶりです朧様。こうしてまたお会いできる日を心待ちしていました」

 

「それは俺も同じだよ。俺に会いに来てくれたのか?」

 

「それもありますが・・・・・もう一つ理由がありますわ」

 

そう言いながら、レイヴェルは俺の隣のレイナーレへと視線を向けた。

 

「あなたが堕天使レイナーレですわね。リアス様からお話は伺っています・・・・・今日はあなたと話をしに参りました」

 

「・・・・へえ、私と話、ね」

 

にこやかな笑顔でレイナーレに告げるレイヴェルに、レイナーレもまた、同じように笑顔で応じた。

 

 

 

 

 

 

 




修羅場になってるのに気が付かないとか・・・・・朧、恋愛経験あるのにどうしてこうも鈍いのか

そしてさらに次の修羅場が・・・・・?

次回もまたお楽しみに!


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第69話

今回はレイナーレとレイヴェルの話がメインとなります

はたして修羅場となってしまうのか・・・・・?

それでは本編どうぞ


 

私はレイヴェル・フェニックスに旧校舎にある一室に連れてこられた。わざわざ部屋を移したのは、私と二人で話がしたいからだそうだ。

 

面倒くさい・・・・・とは思わなかった。私もこいつには話があるからだ。

 

「さて、部屋も移しましたことですし話をしましょうレイナーレさん」

 

「・・・・・その前に、私から言っておくことがあるのだけれどいいかしら?」

 

「あなたから・・・・・ですか?」

 

私が切り出すと、レイヴェル・フェニックスは意外そうにキョトンとした表情を浮かべる。

 

「ダメなら別にいいけれど」

 

「・・・・いえ、そちらからどうぞ」

 

僅かに悩んだ素振りを見せるが、了承してもらえた。

 

「なら言うけれど・・・・・・朧の本命は私よ」

 

「・・・・は?」

 

なぜか間の抜けた声を上げるレイヴェル・フェニックス。だが、それを特別意識することなく、私は言葉を紡ぐ。

 

「いえ、正確にはあなたのことも朧は本気で愛してるからあなたも本命ではあるのだけれど・・・・私はあなた以上に特別なの。朧は何よりも私の事を優先してくれているんだから」

 

「え、えっと・・・・レイナーレさん?」

 

「確かに朧とデートをしたのはあなたの方が先だけれど、キスは私のほうが先よ。いえ、そもそも私は朧と一緒に住んでるんだからその時点で特別だなわけだし」

 

「あ、あの・・・・」

 

「朧だって私に甘えてきたり弱いところを見せてきたりしてるから私にぞっこんなのは間違いないし。つまり私が言いたいのは・・・・正妻は私よ。それだけは覚えておいてちょうだい」

 

とりあえず言いたいことは言った。別にコイツが朧のハーレムに入ることに異論はない。だが、それでも序列というものははっきりさせておく必要がある。この女には是が非でもそれをきっちり理解してもらわなければ困るからこうして教えておいたわけだ。

 

さて、問題はこの女の反応だけれど・・・・・

 

「・・・・ぷっ。ふふふっ・・・・・」

 

・・・・なぜか声を出して笑われた。

 

「何笑ってるのよ?私そんなにおかしなこと言ったかしら」

 

「すみません。そういうわけではありません。ただ・・・・・あなたが朧様の事を本当に愛しているのだとわかって安心してしまって」

 

「どういうことよ?」

 

「はっきりと言ってしまいますと、私はあなたのことを疑っていました。あなたは朧様のことを利用しているのではないかと。だからこそ二人で話をしようと人間界に来たのですわ」

 

・・・・ああ、そういうことか。

 

「あなたは悪魔だものね。堕天使である私に疑念を抱いていたということかしら?」

 

「私も悪魔ですので・・・・正直に言ってしまいますと堕天使に対していい感情は持っていませんわ」

 

「そう。じゃあ、堕天使な私が朧の一番だってわかってさぞ残念なんでしょうね」

 

「いいえ。むしろその逆です」

 

は?逆?

 

「どういう意味かしら?」

 

「先程言ったでしょう?レイナーレさんが朧様の事を愛しているとわかって安心したと。先程のレイナーレさんは・・・・なんというか必死に見えました」

 

必死か・・・・・まさかそんな風に見えていたなんて。確かにまあ、私のほうがこの女よりも朧に愛されてるって何が何でも教えてやろうとは思っていたけれど・・・・・正直恥ずかしいわね。

 

「そんなあなたを見て思ったんです。あなたは・・・・私以上に朧様を愛しているのだと。私以上に朧様に愛されているのだと・・・・・悔しくなるほどに思い知らされましたわ」

 

「・・・・・そう。だから私の言うとおり、大人しく側室に身を置くということかしら?」

 

「ええ、今はその地位に落ち着きますわ。ただし・・・・私は隙あらば正妻の座を奪おうと常に狙うつもりなのでそれはお忘れなく」

 

不敵な笑みを浮かべながら告げる。レイヴェル・フェニックス。全く・・・・朧もとんでもない女に惚れ込んだものね。

 

「くくくっ・・・・あはははははは!さすがは悪魔といったところね!いいわ、隙あらば狙いなさい。もっとも、簡単に奪わせたりはしないからそのつもりでいなさいレイヴェル」

 

「ええ。望むところですわ」

 

したたかな女。朧はレイヴェルのこんな一面を知っているのかしら?これを朧が知らなかったとしたら・・・・・ああ、なるほど。これが愉悦ということかしらね?悪くないわ。

 

「さて、話も終わりましたし朧様達の下へ戻りましょう。朧様ともお話したいですし」

 

「ちょっと待って」

 

話が終わったからと部室へと戻ろうとするレイヴェルを私は引き止める。

 

「なんですのレイナーレさん?」

 

「まだ、いくつか話しておきたいことがあるわ。朧に関わる大事な話よ」

 

「朧様の・・・・・わかりました。聞きますわ」

 

さすがに朧の名を出したら聞かざるを得ないようで、レイヴェルはその場にとどまった。

 

「・・・・朧は嘘つきよ。その上たくさんの秘密を抱えてる。愛しているという私やあなたにさえ告げていない秘密を。その秘密の内容次第では、朧は私達の想いを裏切ることになる可能性があるわ」

 

「朧様の抱えた秘密・・・・」

 

「あなたが朧を愛するというのならそのことはしっかりと覚えておきなさい。そして誓いなさい。その時が来ても絶対に朧を愛することをやめないと。誓えないのなら・・・・・」

 

「身を引け・・・・と言いたいんですか?」

 

「そうよ。さっきあんな話をしたあとに言うのもなんだけれど、大事なことなのよ」

 

朧がどんな秘密を抱えているのかと考えると不安になる。恐ろしくなる。その秘密を知ってしまったら、知る前の関係には戻れなくなってしまうのではないかと・・・・・そう思ってしまう。だから恐い。

 

だけど・・・・それでも、恐くても私は彼を愛さなければならない。今私が生きているのは朧のおかげ。だから私にとって朧を愛することは生きることと同義なんだ。

 

これは呪いにも等しい愛。朧を愛することをやめれば、私は生きていけない。そして私はそんな状況に身を置いていることに満足している。レイヴェルにそこまで求めるつもりはないが・・・・それでも、誓ってもらわなければならない。

 

ひとえに、朧の幸せのために・・・・・

 

「・・・・レイナーレさん。正直に言いますと朧様がどんな秘密を抱えているのか、その秘密が私の想いを砕くものだったらと考えると恐ろしいですわ」

 

どうやらレイヴェルも私と同じように恐ろしく感じているようだ。

 

「けれど、それでも私は朧様を愛し続けると誓います。私にはもう朧様しかいないのですから」

 

「朧しかいない?どういうことかしら?」

 

「私はどうしようもなく朧様に惹かれてしまいました。それこそ、朧様以外の男性にもう好意を寄せることができないと確信できるほどにです。だから私は恐くても朧様を愛し続けなくてはならないのです。朧様だけが私の最愛なのですから」

 

「・・・・そう。わかったわ」

 

ああ、レイヴェルも呪われてる。朧を愛さなければならないという呪いにかかってしまっている。こいつももう・・・・戻れない。

 

「誓ってくれて何よりだわ。その誓い、決して忘れないで頂戴」

 

「ええ。忘れませんわ」

 

最後に念押しをし、私とレイヴェルは部室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりレイナーレ、レイヴェル」

 

10分少々して、部室に戻ってきた二人を俺は出迎えた。

 

「なんの話をしていたんだ?」

 

「それは・・・・秘密よ」

 

「はい。これは朧様にも教えられない秘密ですわ」

 

「む・・・・そうか」

 

秘密と言われると余計に知りたくなるな。どうにか聞き出せないか?

 

『やめておきなさい。あなただって秘密を抱えまくってるんだから、あなただけ聞き出そうなんて野暮にも程があるわよ?』

 

そう言われると反論できないな・・・・

 

『それに、女は秘密を着飾って美しくなるものよ。二人の美しさに磨きがかかったと思えばいいじゃない』

 

それもそうか。まあ、二人が険悪になってたりはしないみたいだから問題もなかっただろうし気にしないでおくか。というか、険悪どころか仲良くなってるような気もするが。

 

「そんなことより朧様、せっかく来たのですから私、朧様とお話したいですわ」

 

「それは俺もだよ。色々と話しておきたいこともあるし」

 

「私のこととか?」

 

「まあそれもだな。リアス部長、ちょっと二人とイチャラブ話したいんでソファ借りてもいいですか?」

 

「その言い方どうにかならないの?まあいいわ・・・・好きにしなさい」

 

呆れ顔をしながらも、リアスは了承してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

リアスからの許可を経て、部室に置かれたソファに座って俺とレイナーレ、レイヴェルの3人で会話を楽しむ。このひと時は、俺にとってはただただ至福だった。

 

 

 

 




修羅場にはならなかった模様。まあ、必死なレイナーレが見れたんだからよしとしてください

というか朧が愛されまくてって作者の私もイラっときますww

間幕はもうちょっと続きますのでお楽しみに

それではこれにて失礼


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第70話

今回はオリキャラ登場

それも結構なレベルの・・・・

それでは本編どうぞ


レイナーレが駒王学園に通い始め、レイヴェルが訪問してきて三日経ったある日、俺は今日の授業が終わってレイナーレを迎に行こうとするが・・・・

 

「現世くん、少しいいかな?」

 

そんな俺を引き止める者がいた。メガネをかけ、いかにも優等生ですと言わんばかりの可愛い女の子。彼女のことは知っている。俺と同学年の二年でありながら駒王の風紀委員を務める無雲(むくも)零華(れいか)だ。ちなみに学内では生徒会長であるソーナと並ぶ人気を誇っている。

 

「何の用ですか風紀委員長。俺これから部活があるんですけど?」

 

「ちょっと君と話がしたくてね。ボクと一緒に来てもらおうか」

 

あと、言い忘れていたがこいつはボクっ娘である。おお、あざといあざとい。

 

「話って・・・・また厳重注意か何かですか?俺最近は風紀委員に目をつけられるような風紀を乱す事してないと思うんですけど?」

 

「確かに朧って最近はこれといって目立ったことしてないな」

 

一緒にいたイッセーが俺にフォローを入れてくるが・・・・その言い方じゃ俺が以前までは面倒事を働いているように聞こえるだろうが。隣にいるアーシアが苦笑い浮かべてるぞ。

 

まあ確かに・・・・・多少女関連で風紀を乱すようなことはしていた自覚はあるから反論はできないけども。

 

「球技大会でほぼ全校生徒を敵に回すようなことをしておいてよくそんなことが言えるね?」

 

「そんな昔のことは忘れましたー」

 

「ほんの少し前のことだっていうのに君という人は・・・・・」

 

俺の発言に額に手を当てて呆れ顔を浮かべる零華。相変わらず演技の上手い女だ。

 

「まあ今回話したいのは別件についてだけどね」

 

「別件?」

 

「うん。なんでも君、最近転入してきたレイナーレ・ノワールさんと一緒に住んでて尚且つただならぬ関係だそうじゃないか。だから彼女に対して風紀に反する事をしないようにボクとしては釘を刺しておきたいのさ」

 

「家ならともかく学校でそういうことするつもりはないんですからいいじゃないですか・・・・・人のプライベートに首を突っ込まないでください」

 

「言い分はもっともだけど、君はこの学園一の問題児だからね。プライベートから釘を刺すぐらいでちょうどいいというのがボクの見解さ」

 

なんとも解せない見解もあったものだ。

 

「それを言うなら俺の隣にいるイッセーもアーシアや我等がリアス部長と暮らしてるんですけど?」

 

「兵藤一誠さんに関しては同性だからセーフ判定だよ」

 

ますます解せない。イッセーは俺と同レベルの変態だっていうのに女ってだけでセーフ判定とか・・・・・まあいいか。どうせこんなの口実なんだろうし。

 

「わかりましたよー。どうせ断っても引かないんでしょう?大人しく従います」

 

俺は零華に従い彼女についていくことにした。最近話すこともなかったし、ちょうどいい機会といえばちょうどいい機会だな。

 

「というわけだイッセー、アーシア。用ができたから俺は遅れるってレイナーレやリアス部長達に言っておいてくれ」

 

「はい。わかりました」

 

「せいぜいしごかれてこいよ」

 

「イッセーてめぇ・・・・・人ごとだと思って」

 

「ちゃんと話を聞くつもりがあるって言うなら早く行こうか。君と違ってボクは忙しいからあまり時間をかけたくないんだ」

 

よくもまあこんなに嫌味ったらしい言葉を選べるものだ。ここまで来ると嘘に自信がある俺も感服だ。

 

「はいはい。それじゃあイッセー、アーシア。また後でな」

 

イッセーとアーシアにヒラヒラと手を振りながら、俺は零華のあとについて教室をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・ちゅ・・・・」

 

風紀委員の部屋に連れてこられた俺は・・・・・部屋に入って早々、零華にキスされた。それも舌を入れてくる深いキスだ。

 

「ふふふっ。不意打ちなのにしっかり舌を動かして答えてくれて・・・・・・さすがは本校きってのプレイボーイだね朧くん」

 

数十秒ほどしてようやく唇を離した零華は、メガネを外して不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

「褒めの言葉として受け取っておくよ。というか、風紀委員長のくせに学内で不純異性交遊とはいい度胸だな」

 

「いいんだよ。誰も見てないんだから。そのためにほかの風紀委員の皆には席を外してもらって人払いしたわけだからね」

 

「風紀委員長の言動じゃないな・・・・こんな本性が知れたら何人の生徒が失望するのか・・・・」

 

「それはどうかな?真面目なそうな風紀委員長が実は・・・・って、結構な萌え要素だと思うんだけど?」

 

まあ、確かにこのギャップにころっと落ちそうなのは多いかもしれないな。

 

「まあ、そんなことはともかくとして・・・・・こうして君と二人で話しをするのは久しぶり・・・・・いや、二人じゃなくて三人だったねラムさん」

 

『・・・・・』

 

「おや、だんまりか。相変わらず君はボクのことがお気に召さないようだね」

 

『・・・・・』

 

零華の問いかけを徹底的に無視するラム。ほんっと、ラムの零華嫌いは筋金入りだな。

 

無雲零華・・・・こいつは俺の中のラムのことを知っている。いや、ラムのことだけじゃない。悪魔や天使、堕天使のことも知っているし、それ以外のことも理解しているらしい。そのうえ二天龍クラスの力まで備えているとか・・・・・まあそれに関しては零華が自分で言っていることなんだが。ただ、ラムが必要以上に警戒していることからそこそこの信憑性はある。

 

あと、お分かりだろうがこいつは風紀委員長のくせに本性は俺に近い気質のロクデナシだ。そう言う意味では気が合いそうなのに、なんでラムはこいつを嫌うかね。

 

「それで?なんでいきなりキスなんてしてくれたんだ?」

 

「報酬の前払いさ。君に聞きたいことがあってね。ただで聞き出すのは失礼だと思ってこうしてボクの唇を舌付き捧げたってわけさ」

 

やっぱりそういうことか。零華は時々こうやって俺から何かを聞きだそうとしてくることがある。その内容は大抵人に聞かれたら困る悪魔やら俺の事情だったりするから毎回こうして人のいない部屋に連れてくるわけだが・・・・こんなふうに報酬を払うだなんてことは初めてだった。

 

「それともこれじゃあ足りないかな?なら・・・・これはどうだい?」

 

零華はクスリと妖艶な笑みを浮かべ、スカートをつまんで捲り上げた。ギリギリ下着は見えないが、太ももが顕になる。

 

「どうだいボクの太ももは?これにはちょっと自信があってね。君のフェチには含まれてはいないが悪くはないだろう?」

 

なんでこうも自信満々に言えるかね。まあ、確かに悪くはない・・・・・いや、どころかかなり良い。細すぎず太すぎず程よいむっちり加減の肉付きの良い太もも。腰から膝にかけてのラインも芸術的だと言わざるを得ない。俺が最近太ももにも興味を抱いたのは零華が理由だったりするしな。

 

「いっそのこと触って堪能してみるかい?君だったら・・・・・ボクも構わないよ」

 

「嬉しい申し出だが今回は遠慮しておく。あんまりレイナーレを待たせるとうるさそうだからね」

 

「それは残念。というか、随分とあの堕天使にぞっこんなようだね」

 

こいつ・・・・・やっぱりレイナーレが堕天使だってこと知ってたか。

 

「当然さ。レイナーレは俺好みの理想の黒髪の持ち主だしな。まあ、今となってはそれ以外のところも愛おしくて堪らないが」

 

「お熱いことで。となると他に手っ取り早く渡せるものを用意したほうがいいかな?」

 

「いや、いいよ。さっきのキスと太ももを晒してくれただけで十分さ。聞きたいことがあるのなら何なりとお聞きくださいレディ」

 

俺は仰々しく礼をしながら零華に言う。

 

「おや、紳士的なことで。なんでうちの生徒の大半は君を蔑むんだろうね・・・理解に苦しむよ。まあいいか。さて、それじゃあ遠慮なく聞かせてもらおうかな」

 

遠慮なくか・・・・・はてさて、一体なにを聞いてくるのやら。

 

 




零華は朧と同じように原作とはかけ離れたイレギュラーです

朧とは方向性は違いますがね

それでは次回もまたお楽しみに!


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第71話

今回は朧と零華の話がメインとなります

それでは本編どうぞ


 

「・・・・・・」

 

「レイナーレ・・・・・いつまでむっすりしてるんだよ」

 

「は?別にむっすりなんてしてないわよ」

 

珍しく私に声を掛けてきたイッセーちゃんに、私はそう返した。口ではこういっているけれど、正直機嫌は悪い。その理由は当然朧がいないからだ。

 

「まったく・・・・そんなに朧が連れて行かれたのが気に食わないのか?」

 

「当然よ。おかげでこんな悪魔しかいない空間に朧のいない状態で居なきゃいけないんだから」

 

「お前・・・・少しは言葉を選べないのか?」

 

「お生憎様。選べるほど語彙量豊富じゃないのよ」

 

私の発言にイッセーちゃんはイラついたような呆れたような表情を浮かべるが知ったこっちゃない。自分の性格の悪さは自覚しているが、変えるつもりはないし。

 

「イ、イッセーさん。レイナーレさんは純粋に朧さんのことを心配しているんですよ。だから・・・・」

 

「あ~もう・・・・わかったよ。アーシアに免じてこれ以上はなんにも言わないでやるからありがたく思うんだな」

 

「そうね。アーシアには感謝するわ。アーシアには」

 

「この・・・・・」

 

ギリっと歯を食いしばって怒りを表現するイッセーちゃん。それでも特に言い返してこないのはアーシアの顔を立てたということでしょうね。まあ、そのアーシアは苦笑いを浮かべているけれど。

 

「ですが私も早く朧先輩に来て欲しいです・・・・・朧先輩がいないと今日のお茶請けがいつまでたっても出てきませんし」

 

「そうね。私も朧に処理してもらいたい書類があるから早く来て欲しいわ」

 

搭城小猫とリアス・グレモリーも朧が早く来ることを望んでいるようだ。もっとも、二人共朧がどうこうじゃないくお茶請けと仕事のためのようだけれど。ただまあ、二人の言うとおり早く来て欲しいものだわ。

 

それと朧を連れ出した風紀委員長・・・・・どんなやつかは知らないけれど、いつか泣かせてやりたいわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朧くん、君は随分と熱心にコカビエルを殺そうとしていたようだけど、それはどうしてだい?」

 

零華が俺に尋ねてきたのは、俺にとって忌々しくて仕方ないコカビエルのことについてだった。

 

「よりにもよってそれかよ・・・・・」

 

「聞かれたくないことだったかな?それはすまなかった。だけど気になって気になってしょうがないんだよ。あの日の戦いは初めから最後まで見ていたけれど、なんで君がコカビエルをあそこまで追い詰め、痛めつけて殺そうとしていたのかは結局解らずじまいだからね」

 

零華のやつ、やっぱりあの戦いをどこかで見てやがったのか。もしかしたらいあという時は自分がコカビエルを殺そうとかも考えていたのかもしれないな。いくらなんでもこの街が滅ぶのはこいつも嫌だったろうし。ただ、俺がコカビエルを殺した理由を知らないということは、その後日のオカ研の部室での話は聞いていなかったようだな。

 

「まあ、報酬を前払いで貰ってしまっているし手短に答えてやる。俺は昔、母親と一緒にコカビエルに捕まったことがあってな。母さんは一年間コカビエルに陵辱された挙句に俺をかばって殺された。つまりあれは復讐さ」

 

「・・・・それはまた随分と重たい理由だね。お得意の嘘だったりするのかな?」

 

理由を聞いた途端、顔色が変わったな。まあ、そうなるのも仕方がないが。

 

「俺も嘘をつくなら時と場合を考えるさ。今回のは本当だ」

 

時と場合のとこは嘘だけどな。

 

「ああ、うん嘘だね。時と場合のところは。理由については本当か」

 

簡単に見破られたか。最近嘘の精度が落ちてきたか?幻術使いとして情けない。まあ、あるいは零華が鋭いかだが。

 

「ごめんね。話したくないことを話させてしまったようだ」

 

「別にいいよ。復讐はもう終わった。コカビエルのことはまだ忌々しく思ってはいるが、憎悪はほとんど消えているからな」

 

「復讐は終わったって・・・・手を下したのはレイナーレだろう?それでも君は復讐をなしたと思えるのかい?」

 

「確かに俺の手で殺したいとは思っていたさ。それでも、俺にとっては目の前でコカビエルが死んでくれさえすればそれで復讐はなされたも同義だ」

 

「ふうん・・・・まあ、君がそう思っているならそれでいいけど」

 

どこか腑に落ちないといった様子だが、零華はそれ以上追求してはこなかった。

 

「さて、コカビエルのことは話したが、他に聞きたいことはあるか?」

 

「いいや。他にはないよ」

 

「え?」

 

「何その反応?」

 

「いや、早く部室に行きたいから俺としてはそれで構わないんだが・・・・・白龍皇のこととかは聞かなくてもいいのか?」

 

正直零華のことだからそのあたりのことも聞いてくるかと思ったんだが・・・・

 

「それについても確かに聞きたいとは思っていたけれど今はいいよ。いっぺんに聞いてしまったら君との楽しいお話の機会が減ってしまうからね」

 

「楽しみは分けて堪能したいというわけか・・・・まあ気持ちはわからないでもないけどな。というか、そんなに俺と話をするのは楽しいのか?」

 

「ああ、そりゃうもうね。だってボク・・・・・君のハーレムに入りたいと思うぐらいには。君のことが好きなんだからね」

 

零華は俺の首に手を回し誘惑するように俺の耳元で囁きながら言う。

 

俺のハーレムに入りたいと思うぐらいに俺に好意を抱いてくれているか・・・・・零華は俺好みの太ももを持っているし、性格も気に入っている。ハーレムに入れるのも悪くはないかもしれないが・・・・・

 

『ダメよ朧。彼女をハーレムに入れるのは許容できないわ』

 

なんで俺のハーレムに入れるかどうかにお前の許可を取らないといけないんだよ。というか、なんでダメなんだよ?

 

『彼女は得体がしれなさすぎる。こういうイレギュラーは何をしでかすかわからないわ』

 

それこそお前からすれば望むところじゃないのか?イレギュラーなことは大好きだろう?

 

『好きよ。だけどこの女は・・・・この女だけだダメ』

 

頑なだな・・・・・けどまあ、こうなってしまってはラムは引かない。こいつ結構頑固だしな。

 

仕方ない。大切な相棒がへそを曲げるのは俺としても勘弁願いたい。今日のところは零華のハーレム入りは断念するか。

 

「ねえ、さっきからどうして黙っているんだい?いい女から告白されたっていうのにそれはないだろう?」

 

「すまないな。ちょっとラムと零華をハーレムに入れるかどうか審議していてね」

 

まあ、正確にはラムが一方的に反対してきたから審議とは言わないが。

 

「そうか。それで、審議の結果は?」

 

「今回は見送り・・・・ということになってしまった。いやはや残念だ」

 

「それは確かに残念だね。どうやら君のハーレムに入るにはまずはラムをどうにかしないといけないようだ」

 

あ、こいつラムが一方的に反対してきたことに気がついてやがるな。

 

『何があっても私が彼女を認めることはないけれどね』

 

ほんとに頑なだなお前は・・・・・

 

「まあ、ラムのことに関してはじっくり考えさせてもらうよ。ほら、朧くんは早く部室に行くといい。愛しのレイナーレが待っているだろうからね」

 

「そうさせてもらうよ」

 

零華に踵を返し、部屋から出ようとするが・・・・言い忘れたことがあったことを思い出し立ち止まった。

 

「と、そうだ。零華に一つ言っておくことがあった」

 

「なんだい?」

 

「俺との話を楽しみにしてくれているようだが・・・・・次の機会は訪れないかもしれない」

 

そう、もしかしたら零華と話すのはこれが最後になるかもしれない。なにせ俺は・・・・

 

「・・・・三種族会談でなにかするつもりなのかな?」

 

「はははっ、鋭いことで」

 

「そっか・・・・朧くんともう話ができなくなるのは残念だなぁ。というか、それってボクが君のハーレムに入る機会が失われたも同義じゃないかい?」

 

「それはまあ・・・・否定はしない」

 

正直話しどころか、三種族会談が終わったらもう会うこともないだろうからな。零華をハーレムに入れることはほぼ不可能だ。本当に残念でならない。

 

「君が何を企んでいるかは知らないし深くは詮索しないでおくけど、その企みが上手くいくことを祈っておいてあげるよ」

 

「ありがとう零華。それじゃあ・・・・さよなら」

 

零華に軽く手を振って、俺は部屋を出た。

 

『朧、あなたやっぱり・・・・・』

 

ああ。多分お前の考えてるとおりだよ。

 

『そう・・・・やっぱりあなた矛盾だらけの大馬鹿だわ』

 

そうだな。俺は・・・・・とんだ大馬鹿野郎だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなりましたー」

 

「ええ、全くね」

 

零華と別れ、一直線に部室に来た俺をどこか不機嫌そうなレイナーレが出迎えた。

 

「随分と機嫌が悪そうだな・・・・俺がいなくて寂しかったのか?」

 

「馬鹿言わないでちょうだい・・・・というか、結構長かったけれどどれだけ絞られたのよ?」

 

「それはもう結構厳重にな」

 

零華のことは話さないで置いた。零華自身、こっち側の事情に詳しいけど極力自分から関わろうとは思っていないようだからな。

 

「そう。ざまあないわね」

 

「レイナーレさんひどいっすね」

 

不敵な笑みを浮かべるレイナーレ。だが、さっきまでの不機嫌さがなりを潜めているあたり、もしかしたら俺がいなくて寂しかったのかもしれない。

 

『もしかしたら・・・・ねぇ』

 

なんだよラム?

 

『なんでもないわ。それよりも、レイナーレちゃん以外にもあなたに熱烈な視線を向けてる子がいるわよ』

 

レイナーレ以外にも?

 

「朧先輩。早くお茶請けを出してください」

 

「朧。お茶請けの準備が終わったら処理して欲しい書類があるのだけれど」

 

なるほど、小猫とリアスか。こってりと絞られたということになっている俺に対して随分とスパルタだこと。

 

「了解。すぐにお茶請けの準備をして書類に取り掛からせてもらいますよ。レイナーレ、手伝ってもらえるか」

 

「遅れたのは朧なんだから一人でやりなさい・・・・・と、言いたいところだけど暇だし仕方ないから手伝ってあげるわ」

 

わお。相変わらずのツンデレイナーレだねぇ・・・・・と、そうだ。

 

「レイナーレ」

 

「なによ?」

 

「愛してるぞ」

 

「ええ。知ってるわ」

 

「はははっ、そっか」

 

知ってるわ・・・・か。やっぱり『私も愛してる』だなんて言ってくれないか。

 

せめてその時が来るまでに一度でもいいから・・・・・言われてみたいものだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朧、部室内で急にイチャつくのはやめてくれ・・・・」

 

「ああ、居たのかイッセー」

 

「居るに決まってるだろ!」




三種族会談にて何かをやろうとしている朧。果たしてどうなるのか・・・・・

ともかく、これにて間幕は終わり・・・・・にはなりません。次回でもう一話、ちょっと毛色の違う話をして間幕は終了となります

それでは次回もまたお楽しみに!


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とある少女の独白

今回はちょっと毛色の違うお話を

このお話を最後に、次回から4巻の内容にに突入します

それでは本編どうぞ


ボク、無雲零華はいわゆる転生者というやつだ。前世で神様の手違いによって死んでしまい、そのお詫びとして『ハイスクールD×D』の世界に(ほぼ強制的に)転生させられた。それも特典能力付きで。正直言って、この状況をボクは素直に喜べない。

 

ハイスクールD×Dは前世で好きだったラノベの一つだった。原作のキャラをこの目で見れるというのは嬉しいといえば嬉しい。だがボクは知っている。この世界は死亡フラグ満載且つ力のインフレが止まらないやばい世界だということを。神様からは二天龍クラスの力をもらったけれど()()()()では全く安心できない。原作に巻き込まれてしまった暁には命の危機に瀕することは一度や二度じゃすまないだろう。

 

はっきり言おう、冗談じゃない。前世で神様の手違いで死んでしまったというのにこんな命の危機的な意味でやばい世界に放り出されるとかまじふざけんなと思った。だから、死にたくないボクは決めたのだ。可能な限り原作には関わらないで、尚且つ原作の顛末を眺めてやろうと。たとえ関わるとしても命の危機の少ない桐生ポジションに居座ろうと。ボクはそう決心をし、駒王学園に入学したわけだが・・・・入学したボクを驚かせることが二つあった。

 

一つは主人公である兵藤一誠ことイッセーが女の子であったことだ。ハーレム願望を持ち、おっぱいを愛し、おっぱいで数多の奇跡を引き起こしたあのイッセーがなぜか豊満なおっぱいを持つ女の子であったのだ。ただまあ、これについてはまだマシか。驚きはしたが、この世界のイッセーは原作イッセーと同じようにおっぱいを愛し(自分のは嫌いなようだが)、ハーレムを志す百合少女だったから性別以外原作とは大して違いはない・・・・・まあ、原作展開的にいろいろ問題も生じるかもしれないが、それはおっぱいの奇跡で何とかしてくれるだろう。多分。

 

問題は二つ目・・・・・そのイッセーの親友に私の知らない男がいたことだ。男の名は現世朧。イケメンではあるが原作イッセーに引けを取らない変態でハーレム願望持ち・・・・・つまりは残念なイケメンだ。初めは無駄にイケメンだけどイッセーの性別が違うということもあってボクが知らない奴が居てもおかしくないと思っていたのだが・・・・・神様から貰った(押し付けられた)能力で知ってしまった。こいつが神器(セイクリッド・ギア)使いであることを。それもドラゴンの魂が封じられたボクの知らない神器だ。

 

なぜか女の子になったイッセーの身近に居てイケメンで変態でハーレム願望を持っていてボクの知らないドラゴン系の神器の持ち主・・・・・ボクは彼が転生者ではないかと思った。それもロクデナシでクズな踏み台系転生者ではないかと。そう思ったボクは彼を警戒し、色々と調べていたのだが・・・・・・調べれば調べるほど、転生者であるかはともかく、彼はもしかしたらクズではないのかもしれないと思うようになった。

 

下心丸出しの顔で女の子を目で追うし、人前で平気でイッセーとおっぱいやらフェチやらの話をしているのだから間違いようのない変態ではある。けれど・・・・・それでも彼は優しかった。付き合った女の子には紳士的に振舞うし、困っている女の子がいたらすぐに助けようとして・・・・・基本的には男はスルーしていたが、それでも積極的に見返りを要求するようなことはなかった。さらに言うなら、彼はイッセーを親友としてこれ以上ないほどに大切にしていた。百合だの変態だのと蔑まれていたイッセーのよき理解者であろうとしていた。変態というところに目をつぶれば、普通にいい奴だと思った。そしてそんな彼を・・・・朧くんのことをボクは段々・・・・・

 

朧くんと関わろうと思った。だからボクはわざわざ風紀委員に入って、変態行動を取る彼に厳重注意をするという名目で話をする機会を得たのだ。話してみると、より一層彼の人の良さが窺い知れた。本人は否定しているのか、あるいは自覚していないのか、自分のことをクズだと言い張っていたがボクはそう思えなかった。当然のように女の子を・・・・ボクを気遣うことができる彼をクズだなんて思えるはずがない。まあ、なぜか彼の中のドラゴン・・・・ラムにはひどく嫌われてしまってはいるが。

 

そんなこんなで彼への想いと昂ぶらせている中・・・・・この世界は原作に突入した。だが、原作は現世朧というイレギュラーが原因で正史とは違う流れとなっていた。

 

 

 

朧はレイナーレやレイヴェルといった原作キャラと関わりを・・・・・二人を自身のハーレムに入れた。原作キャラに手を出したのだからやはり転生者なのかとは思ったが、それでも彼を嫌悪したりはしなかったし、クズだなんて思うこともなかった。むしろ・・・・・ハーレムに入ったレイナーレやレイヴェルが羨ましくてたまらなかった。

 

 

 

朧くんがかつて母親と共にコカビエルに捕らえられ、母親をコカビエルに陵辱された挙句に殺されたことを知った。それを聞いて彼は転生者ではないと確信した。わざわざ転生しておいて過酷な過去を背負うとは思わなかったからだ。ただまあ、転生者であろうがなかろうがもはやどうでもいい。彼がどんなふうに原作に関わり、原作を歪めていったとしてもどうでもいい。

 

 

 

そうだ・・・・ボクは朧くんのことを調べていくにつれ、朧くんに惹かれてしまったのだ。彼のことが愛おしくなってしまった・・・・・彼のことを好きになってしまったのだ。

 

あんな変態をどうしてなんて言う奴もいるかもしれないが、元々ハイスクールD×Dのことを知っていたボクからすればどうってことない。そっ閉じ案件多発の原作が好きだったボクからすれば朧くんのフェチなど大した問題ではない。むしろ可愛いものだ。得体の知れないイレギュラーだからなんだって言うんだ。そんなの転生者であるボクも大して変わらない。

 

好きだ・・・・・好きだ好きだ好きだ。大好きだ。どんな原作キャラよりも、木場よりもヴァーリよりも曹操よりもボクは朧くんの方がカッコいいと思う。朧くんの方が可愛らしく思う。朧くんの方が・・・・好きで堪らない。彼のハーレムに入りたい。そのためにボクは唯一自慢できる太ももを磨き上げ、彼を魅了し続けていたのだから。

 

もうすぐ起きる三種族会談。原作におけるターニングポイントの一つ。そこで彼は何かをしようとしていて・・・・それを終えたら、二度と会えなくなるかもしれないと言っていた。何をするのかはわからないけれど、君がそう言ったんだ。もしかしたら君は・・・・この世界からいなくなってしまうかも知れないね。

 

君の選択を阻むつもりも否定するつもりもないから手出しはしない。けど・・・・それでも・・・・どうか許してくれ朧くん。邪魔はしないけれど・・・・君のその目論見が上手くいかないことを僕は願う。君がこれからもこの世界に有り続け、いつかボクが君のハーレムに入る未来が訪れることを期待する。そんなボクを・・・・どうか許しておくれ。お詫びと言ってはなんだけれど、いつかボクが君のハーレムに入ることができたなら、ボクの全てを君に捧げるから。ボクの全てを滅茶苦茶にしてしまっていいから。

 

 

 

 

 

ああ朧くん・・・・

 

ボクは・・・・ボクは・・・・

 

ボクはもう・・・・・・・君に呪われてしまったよ

 

永遠に覚めない恋の呪いに・・・・

 

だから・・・・ボクは願うよ

 

これからも君が・・・・・この世界にあり続けることを

 

ボクは・・・・・願うよ




ということで、今回は転生者、零華さんの独白でした

強力な力を持ち、朧に好意を寄せている彼女ですが、本格的な原作介入はかなり先になりますのであしからず

そして次回からは4巻の内容・・・・・またシリアスな話になっていきますのでご容赦を

それでは次回もまたお楽しみに!


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第三章 幻術使いのターニングポイント
第72話


今回から新章突入

始めはシリアスから・・・・・

それでは本編どうぞ


 

忘れない

 

忘れてはならない

 

許せない

 

許してはならない

 

奴らを決して許してはならない

 

母さんを殺した堕天使を許さない

 

父さんを殺した天使を許さない

 

そして・・・・・

 

―――を殺した悪魔を・・・・・・俺は許さない

 

だから俺は・・・・俺は願う

 

もう二度と・・・・もう二度と・・・・・

 

俺のような人間を生み出してはならないんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リアス部長、ソーナ生徒会長。俺は思うんですよ・・・・・それは本当に必要なのかって」

 

とある喫茶店で、テーブルを挟んで対面に座るリアス・グレモリーとソーナ・シトリーに俺は告げる。きっと、これまでの彼女達との付き合いの中でここまで真剣になったことはなかっただろう。

 

「ちゃんとした敬意、入念な協議の上でそれが決まったのだということは理解しているつもりです。俺のような一個人が口を出してどうなるものでもないということも理解しているつもりです。だけど、それでも俺は思わずにいられないんです。本当にそれは必要のあることなのかと。本当にそれは正しいものなのかと」

 

それは必要だと判断されたから定められたものなのかもしれない。でも、俺はそうは思えない。それは悪しき行い。場合によっては破滅さえもたらしかねない。そのことはこの二人も・・・・・この二人だからこそわかってくれるはずだ。

 

「それは決して起きてはならないものです。必ず数多の悲劇を巻き起こすでしょう。必ず多くの犠牲者を生むことでしょう。そんなの俺には耐えられない。今回ばかりは俺のためだけじゃない。俺は、多くのひとのためにそれを否定しなければならないんです。お二人なら俺の気持ち・・・・・わかってくれますよね?」

 

「朧・・・・・そうね。あなたの気持ちは痛いほどよくわかるわ」

 

「あなたの思いには強く共感します」

 

二人とも俺の気持ちは理解してくれているようだ。この二人を味方につけることができるのならあるいは・・・・

 

「けれど・・・・・残念ね朧」

 

「どれだけあなたの想いが正しくて尊くても・・・・・・」

 

「「授業参観は決して無くならないわ(無くなりません)」」

 

「チクショー!!」

 

リアスとソーナから告げられた無情な一言に、俺は思わずテーブルを殴りつけて嘆きをあらわにした。

 

「お、落ち着きなさい朧」

 

「これが落ち着いていられますか!いや、確かに知ってたよ!いくらリアス部長とソーナ生徒会長の権力を用いたとしてもあの悪しき行事が無くならないってのはわかってたことだよ!だけど実際に告げられると死ぬほど辛いんです!」

 

「そんなになんですね・・・・・」

 

「当然でしょう!だって授業参観ですよ?高校生にもなって授業参観とか普通やらないでしょう!難しい年頃の少年少女が親に見守られながら授業受けるとか恥辱以外何物でもないじゃないですか!下手すりゃトラウマものですよ!」

 

正直、高校生にもなってこんな行事で喜ぶのなんてよっぽど純粋な奴が重度のファミコン(ファミリーコンプレックスの略称)ぐらいなものである。マジふざけんな。

 

そして何より・・・・・俺にはほかの奴らよりもそれを忌嫌する重大な理由があった。

 

「あなたのその狼狽え様からしてもしかして・・・・・」

 

「ええ、来ますよ。冥界の歴史上最大の問題児。俺の保護者である最悪の悪魔・・・・・ミリアリッサ・メルゼスがね」

 

「「やっぱり・・・・・」」

 

ミリアの名を聞き、リアスとソーナは頭を抱えた。というか、ソーナにはミリアのこと言ってなかったと思うが・・・・・親友のよしみでリアスが伝えたのかもしれない。

 

「どう考えてもミリアだけは来ちゃダメでしょ・・・・・・歩く犯罪者ですよあれ?下手すると精神的且つ未来的に死ぬ人間が出てくるかもしれないんですよ?警察が出動するかもしれないんですよ?」

 

「そのあたりは朧くんがうまく制御するしかありませんね」

 

「そうね。もしもの時は幻術の使用を許可するわ」

 

「俺の精神がすり減りますよ!というかそのもしもの時ってほぼ確実に起こりますよ!」

 

幻術使い続けるのだって限度があるし、そうでなくても抑えるのは大変だっていうのに・・・・・マジ勘弁してくれよ。

 

「そもそも授業参観のこと隠しておけなかったの?」

 

「それ以前の問題ですよ。レイナーレのこともあって先日連絡を取りましたけどその時には授業参観のこと知ってましたもん。嬉々として行くって言って聞かなかったですもん。もう回避不可能じゃないですか」

 

隠すために話題にも出さないようにしようと思ったのに・・・・・ちくしょうめ。

 

「一体どこから情報を得たのかしら・・・・?」

 

「どこからって・・・・・それ本気で言ってるんですかソーナ生徒会長?」

 

「どういうことかしら?」

 

「ミリア、授業参観のことあなたのお姉さんから聞いたって言ってましたよ。あとリアス部長のお兄さんからも聞いたそうです」

 

「「・・・・・・え?」」

 

俺の言葉を聞いた二人は、呆けた声を出すと同時に目を丸くした。

 

そして・・・・・

 

「「・・・・・・やっぱりこの世に神はいない」」

 

ものすっごい悲しそうな表情でテーブルに手をついて嘆き始めた。悪魔が言うセリフじゃないとか、確かに聖書の神はもういないとか、ほかの神ならいくらでもいるかとかいろいろ思ったけど気持ちはよくわかるからツッコミはなしにしておこう。

 

「どうして・・・・・授業参観のことは話してないのにどこから情報が・・・・?」

 

「学園からじゃないですか?スケジュールの関係やら何やらで学園の行事はグレモリー家に報告されてそれでルシファー様にも伝わってそこからレヴィアタン様にもって流れかと」

 

「ありえすぎるわ・・・・・」

 

「なんにせよ、朧くんだけじゃなくて私達にとっても授業参観は・・・・・地獄になりそうね」

 

そこまで言うかソーナ・・・・・いや、そこまでのレベルだよなぁこれ。

 

「でも、俺やソーナ生徒会長はともかくリアス部長はまだマシでしょう。ミリアやレヴィアタン様に比べてまだだいぶマシかと思いますよ?」

 

「そうね。なにせ私達のところは格好からして・・・・・って、あら?朧くん、お姉様のことを知っているのかしら?」

 

「ええ。レヴィアタン様って外交担当でしょう?それでミリアと旅をしてた時に外交の仕事だかなんだかで4年ほど前に一度だけあったことがあるんですよ」

 

正直あの時の衝撃は半端なかった。仕事出来る出来ないはともかくとして魔王としてあの格好は色々とアウトだろう。まあ個人的には面白かったからいいんだけども。

 

「そういえば、その時お姉様から面白い子と会ったと聞いたことがあるような・・・・」

 

「あ、それ多分俺です。幻術で色々やって欲しいってせがまれて・・・・面白そうなのでまあ付き合いました」

 

「なんてことしてくれるんですかあなたは!あの時以来お姉様はより一層あの趣味にどっぷり使ってしまったんですよ!」

 

「ごめんなさいはんせいしてます(メソラシ)」

 

「本当に反省しているのなら私の目を見て、棒読みじゃなくちゃんと言ってください!」

 

そんなこと言われても・・・・・実際反省してないんだから目も逸らすし棒読みにもなるに決まってるじゃないか。

 

「ともかく、授業参観は俺たちにとって間違いなく鬼門となります。授業参観をなくせないというのなら俺たちに出来ることは覚悟を決めることだけ・・・・・・気を確かに持って乗り越えましょう」

 

「ものすごく話を逸らされてしまった気がしますが・・・・・まあそうですね。今更ジタバタしても仕方がないのだから覚悟を決めましょう」

 

「はあ・・・・・三種族の会談も控えているというのに憂鬱で堪らないわ」

 

「ちなみにその会談、ミリアも出るそうですよ?授業参観のついでにって言ってました」

 

「「デスヨネー・・・・・」」

 

二人共眷属にお見せできない顔しちゃってるよ・・・・・気持ちはわかるけども。

 

というか、どう考えてもついでは逆だろミリア・・・・・・普通に考えて授業参観の方がついでだろうが。

 

「こうなったらヤケだ・・・・・ここは俺が奢りますから今日はとことんまで身内の愚痴を垂れ流しましょう。そうすれば多少は気が晴れるでしょうし」

 

「そうね・・・・・今のうちに発散しておきましょう」

 

「その発散すべき愚痴が大量にあるのがまた悲しいですが・・・・・」

 

「「それは言わないで(ください)」」

 

こうして、俺たち3人は身内の愚痴を延々と語り尽くすこととなった。

 

『普通にやってることは酷いわねぇ』

 

それ以上に迷惑被ってるんだからいいんだよ。お前だってわかってんだろうがラム。

 

 

 

 

 




どこがシリアスだって?やだなーちゃんと冒頭はシリアスだったじゃないですか

まあ、この章は後半でだいぶシリアスになるから今は・・・・・ね?

それでは次回もまたお楽しみに!


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第73話

話が進まない・・・・・・

まあその・・・・・多忙なので・・・・・申し訳ありません

それでは本編どうぞ


「・・・・・お待たせしました。オリジナルブレンドになります」

 

寡黙そうなこの喫茶店のマスターが、俺の前にコーヒーを差し出してくる。

 

「ありがとうございますマスター」

 

「・・・・いえ、仕事ですので」

 

そう答えて、マスターはカウンターの奥に戻っていった。ほんとマスター渋かっこいいわ。

 

「んー・・・・・やっぱりマスターの淹れるコーヒーは美味いなぁ」

 

「朧くん、彼は確かミリアさんの・・・・・」

 

「ええ。知り合いの悪魔だそうですよ。どういう経緯かまでは聞いてないですけど、ミリアの勧めでこの町で喫茶店を経営してるんです。いわゆるそっちの事情に精通した方専門のね」

 

だからこそ、さっきから堂々と三種族関連の話を堂々とできているわけだがな。

 

「この町を任されているのに知らなかったわ・・・・・」

 

この町を治めているというのにそれを知らなかったリアスは若干落ち込み気味だった。

 

「別に落ち込む必要はないと思いますよ?ここって本当にごく一部しか知らないらしいですし」

 

「この町を任されてるのにその一部に入らなかった私って一体・・・・」

 

やべ、フォローしたつもりが逆効果だった。どうするかなぁ・・・・・

 

「そういえば朧くん、今日はレイナーレさんはどうしているのですか?」

 

どうしようかと悩んでいると、ソーナが話題を提供してくれた。

 

「レイナーレならアーシアとクァルタと一緒に買い物に行ってますよ」

 

「あの二人と?」

 

「ええ。クァルタがこっちで暮らすのに必要な日用品とか買いに行ってるそうです」

 

レイナーレと違い、クァルタはなんか手続きで面倒なことがあったらしく、近々ようやく転入を果たすらしい。それで転入前にこっちで暮らすための日用品を3人で買いに行っているということだ。

 

なお、誘われたと俺に報告したときレイナーレは口では悪態をついていたが・・・・・実際はどこか嬉しそうにも感じた。多分誘ったのがアーシアだからだろう。

 

「ちなみにそこにイッセーがいないのは・・・・・」

 

「まあお察しというやつです。なんかまだレイナーレとイッセーってどこか険悪なんですよねぇ。確かに因縁は深いかもしれないけど、いがみ合いすぎでしょ・・・・・」

 

「朧くん、あなたがそれを言うのですか・・・・・」

 

「え?どう言う意味ですかソーナさん?」

 

「「・・・・・」」

 

なぜか俺を呆れた目で見てくる二人。本当になんだって言うんだ・・・・・

 

「朧、あなた一応女の子と付き合ったことは何度もあるのよね?」

 

「ええ、そりゃまあ駒王学園きってのプレイボーイと一部では称されてるほどですから・・・・というか、それ前にもアーシアやイッセーからも言われたんですがなんでそんなこと聞くんですか?」

 

「この際だから言うけれど、あなたが異様に鈍いからよ」

 

鈍い?俺が?いやいやいや・・・・・そんな馬鹿な。

 

「なにを言ってるんですかリアス部長。俺が鈍いだなんてあるわけないじゃないですか」

 

「・・・・・すみません朧くん、正直それは私も否定せざるをえません」

 

「え?」

 

「レイナーレとイッセーがいがみ合ってるのはあなたが原因なのよ?二人共相手があなたにとって特別な存在だから嫉妬してるのよ」

 

「いや、それはないでしょう」

 

「「なんでそこを断言・・・・・」」

 

またもや二人に呆れられてしまう。だってまあ・・・・ねえ?

 

「イッセーと俺との関係はあくまでも親友でそういった感情はほぼ皆無ですよ。だからイッセーが俺とレイナーレの関係で嫉妬するとかはないと思いますよ?」

 

「そう・・・・もうあなたがそう思っているならそれでいいわ」

 

「ええ。そうね」

 

なんだか二人共投げやり気味な気が・・・・・・

 

「でもレイナーレに関してはどうなのよ?」

 

「それ以前の問題というか・・・・・レイナーレ、俺のハーレムに入ること許容してくれてますけど多分そこまで好感度高くないので」

 

「「・・・・・は?」」

 

「そんな何言ってるんだコイツみたいな目で見ないでくださいよ」

 

「いやだって・・・・え?それ本気で言っているのかしら?」

 

「そりゃもう本気ですよ。俺がどれだけ愛してるって言ってもレイナーレの方からは一度も言ってくれてませんからね。そもそもが俺、レイナーレを拉致してるも同然ですし、仕方ないからハーレムに入ってくれて一緒に暮らしてるのかなと」

 

自分で言うのもなんだが、きっかけがきっかけだったから今はまだレイナーレが俺の事を心から好いてくれているとは思えない。そもそも俺、一度レイナーレを殺しちゃってるし。

 

「まあそんなわけで、好感度がイマイチな現状でレイナーレがイッセーに俺関係で嫉妬することはほぼないと思いますよ?」

 

「「・・・・・・・」」

 

思ったことを率直に言ったら、今度は二人共黙り込んでしまった。この反応は予想外だな・・・・・一体二人共何を考えているんだ?

 

「朧、あなた・・・・・」

 

「あら?私に黙って上級悪魔二人と密会だなんていいご身分ね」

 

リアスが何か言おうとした時、それにかぶせるように聞こえてきた声。振り返るとそこには案の定レイナーレがおり、そのすぐそばにはアーシアとゼノヴィアもいた。

 

「レイナーレ?こんなところでどうした?」

 

「買い物が終わったからお茶しようってことになってここに来たのよ」

 

あー・・・・そういえばレイナーレにもこの喫茶店のことは話してたっけか。

 

「そういう朧はどういう密会だったのかしら?」

 

「密会だなんて人聞きの悪い。ただ今度の父兄参観と身内のことについて二人と話してただけだ」

 

「あー・・・・なんとなく察したわ」

 

不十分だった気もするが、それでも俺の説明を聞いてレイナーレは納得した模様。レイナーレとイッセーのことについても話してたけどそれについては敢えて言うまでもないだろう。

 

「でもまあ、俺はもうお役御免かな」

 

俺は財布からいくらか札を出して机に置いた。

 

「帰るの?」

 

「ああ。なんかメンツ的に女子会みたいなこと始まりそうだし、邪魔者な男の俺は退散するよ。ここのお代は全部俺が持つんで皆さんごゆっくりどうぞ」

 

そう言い残して、俺は手をプラプラ振りながら喫茶店から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変な気遣ってんじゃないわよ全く・・・・」

 

ボヤきながら、私はさっきまで朧が座っていた椅子に腰を下ろした。

 

朧は女子会と言っていたけど・・・・正直私は気が休まる気がしない。なにせこの場において私以外は全員悪魔で、私はその悪魔の宿敵である堕天使なのだから。

 

けどまあ、こいつらもここで私に手を出したらのちのち面倒なことになるっていうのはわかってるだろうしひとまずh大丈夫かしらね。

 

「ほら、あんた達二人も座りなさいよ。この際だから朧のお金で綺麗さっぱり使い切っちゃうまで堪能しちゃいましょ」

 

「うん、そうだな」

 

「えっと・・・・いいんでしょうか?」

 

ゼノヴィアの方は遠慮なくご馳走になろうとすぐに座ったが、アーシアの方はためらいがちだった。

 

「いいのよ。朧前に男の財布の紐は女のために緩めるものだって言ってたもの。だから遠慮なんて必要ないわ。というより、ここで遠慮してたら朧の好意を無下にして逆に失礼よ?」

 

「は、はい。では・・・・・」

 

未だ戸惑いがちではあるが、アーシアも椅子に腰掛けた。この子は本当に人がいいわね・・・・・今はもう悪魔なんだけど。

 

「レイナーレ、ちょっといいかしら?」

 

何を頼もうかとメニューに手を伸ばす私に、グレモリーが声を掛けてきた。

 

「なにかしら?」

 

「聞きたいことがあるのだけれど・・・・・あなたって朧のこと愛してるのよね?」

 

グレモリーが私に尋ねてきたことは、そんなわかりきった当然のことであった。

 

 




アーシア経由で意外とゼノヴィアとは良好な関係を築けているレイナーレ

うちのレイナーレ、アーシアが絡むとめっちゃちょろく感じる・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!


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