魔法少女リリカルなのは 覇王を継ぐ者 (八雲ルイス)
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プロローグ
第1話 悪夢の前夜


――新暦62年ミッドチルダ

 

side アリシア

 

こんにちわ!アリシア·テスタロッサ、8歳です!今日は私、ミッドで開催されているDASSの地区予選に来ています。

 

ぁ、最初に言っておきますが、私は出場選手じゃないですよ?年齢制限に引っかかっちゃいます。私の2つ年上の友達が初出場してるのでその応援に、です。

 

 

実況『さぁー、DASSミッドチルダ地区予選もいよいよ大詰め!まもなく最終試合が始まろうとしています!この決戦を制し、都市本戦出場の栄光を手にするのはいったいどちらなのか!?』

 

 

実況が声高らかに最終試合の時間が迫っていることを告げると、会場の私を含めた観客は皆『わぁーー!!』と盛り上げます。

 

 

実況『しかし、今回の予選最終試合、過去に例を見ない異例な組み合わせになっています。片やとてつもなく硬い防御からのカウンターを得意として打撃力も出場選手屈指の高さを誇る都市本戦優勝最有力候補、片や本大会の年齢制限下限の最年少にして全試合ワンラウンドKO勝利を収める期待のルーキー。この試合、これまで以上に盛り上がること間違いないでしょう!』

 

 

実況が会場を盛り上げる中、私はリング脇で準備体操をしてる“友達”に目を向けます。ぁ、ちなみに私は特別にセコンド席に居させてもらってたりします。

 

 

アリ「ねぇ、刹那。すっごく持ち上げられちゃってるね。“期待のルーキー”だってさ?」

 

刹那「まぁ、私がルーキーなのは間違いないですし、あぁ言いたいのも分からなくもないですけどね。それに、持ち上げられても私がすることは、この覇王流で勝利を掴む。それだけですよ」

 

 

エメラルドグリーンに似た髪の“少年”。それが私の友達の刹那·ストラトス。なんとビックリ、あの覇王流の継承者なんだよ。目の色は普段は両方紫で、覇王流を解放したら蒼と紫の虹彩異色になるんだって。自分の中の魔力のコントロールがなんだかんだって難しそうなこと言ってた。

 

一人称は私だけど性別は男の子。やたら丁寧な喋り方してるけど私の方が年下なんだよなぁー。癖って言ってた。

 

 

刹那「では、行ってきます」

 

アリ「刹那ーっ!頑張ってぇーー!!」

 

 

リングに上がる刹那に私が手を振るとリングを向いたまま右手をあげてガッツポーズで応えてくれました!

 

ぁ、私が言ってた友達が年上の男の子だったの、意外かなぁ?

 

 

side out

 

 

 

side 刹那

 

 

審判「刹那·ストラトス選手、カイト·ロデルス選手。両者前に」

 

2人『はい』

 

 

審判に言われ、私はリング中央で試合相手のカイトさんと向かい合う。流石に優勝候補なだけあって貫禄のようなものがあるし、前に立っているだけでプレッシャーに近いものも感じる。これだけでもわかりますが、とても強い、ここまで私が戦ってきた誰よりも

 

 

審判「構え!」

 

 

審判に言われるままに大勢を低くし、右足を下げて半身になり構えのポーズをとる。

 

 

刹那(……防御とカウンターが最大の武器、でしたっけ。試させてもらいます。覇王流はそれからでも遅くはありませんね)

 

審判「………ファイッ!」

 

 

審判の掛け声とともにゴングが鳴らされ、試合開始。私はすかさず距離を詰めてラッシュをかける。が、物の見事に全て防がれる。大したダメージにもなっていない。

 

右に左にフェイントやストレート、ジャブ。アッパーと多彩な攻撃を織りまぜて攻めるもほとんど効果なし。

 

 

刹那「(噂通り硬いですね。生半可な攻撃は通じなさそうです。やはり一筋縄では)…っ!?」

 

 

色々と考察をしながらラッシュをかける中、私の一瞬の隙を突いてカイト選手の右ストレート。なんとか咄嗟に防ぎましたが、その打撃力だけでリング際まで後退させられる。もちろんダメージもかなり大きい。

 

 

カイト「ぉ、今のでリングアウトならないんだ?ルーキーの割にやるじゃん」

 

刹那「褒めても何も出ませんけどね」

 

 

殴られて崩れた体勢を立て直す。防御が売りなだけあり、向こうからはあまり攻めてこないらしい。

 

 

刹那「しかし、すみません。今ので私の勝ちが見えました」

 

実況『おぉぉっとぉ!?ここでまさかの優勝候補筆頭へ向けての勝利宣言だぁぁ!!!』

 

 

再び実況の声で湧き上がる会場。

 

 

カイト「あまり舐めないでもらえるかな?優勝候補とか言われて成り上がるつもりはないけど、ルーキーに負けるつもりも俺には無いよ?それに俺の本当の本気は防御でもカウンターでもない。この圧倒的な打撃力だ!」

 

 

私の挑発で向こうも頭にきたのか、防御から一転。重い打撃のラッシュ。防ぐのも手一杯で私にはダメージが蓄積されていく。

 

そしてフィニッシュであろう、回し蹴りが私の頭部を襲う。

 

 

刹那「あなたも、私をバカにしないでください」

 

 

その蹴りを私はヘッドバットで受け止める。ダメージは入るが、下手に防御するよりは安い。

 

 

刹那「では、覇王の血を継ぐものとして私も見せましょう」

 

 

カイトは刹那が一体何を言ってるんだ?と言ったような顔で足を下ろし、次の打撃に移ろうとした瞬間、ギョッとする。

 

 

刹那「覇王の本気を」

 

 

刹那の瞳が件の虹彩異色に変わっていたのを見たからだ。それと同時にかなりの威圧感が会場全体を包み込む。先程までうるさかった実況でさえ言葉を飲んだ。

 

 

刹那「はぁぁ!」

 

 

再び私のラッシュ。最初同様に右に左にと攻め込む。そしてこれも最初同様にことごとく防がれ、左腕を弾上げられて私のボディががら空きになる。

 

 

カイト「これで終わりっ!」

 

 

もちろんチャンスとばかりにカウンターの一撃が迫る。しかし、もうそれは私には見えている。

 

 

刹那「覇王…」

 

 

カウンターの拳は無視し、むしろその拳に突っ込む形をとり、弾き挙げられたのとは逆の右の拳を握りしめる。

 

 

刹那「断空拳っ!」

 

 

そのまま私の拳はカウンターの為に逆にがら空きになっていたカイトの胸部へと吸い込まれた。

 

 

カイト「ぐ……はぁ!」

 

 

断空拳の直撃を受けたカイトはリング外へ吹き飛ばされ、壁にクレーターを作って静止し倒れ込む。後々実装されるクラッシュエミュレートがもしあれば肋の数本は逝ったであろう。

 

審判のカウントダウンにも全く反応がない。そして、それは無慈悲にカウント0を告げた。

 

 

実況『し、勝者はルーキー刹那だぁぁぁぁ!!!!!』

 

 

ようやく調子を取り戻した実況を背にしてセコンドからタオルとドリンクを受け取りながらリングを降りる。すると案の定アリシアが飛び込んで来た。私はそれを受け止め、頭を撫でる。

 

 

アリ「刹那、都市本戦出場おめでとう!刹那ならやってくれるって信じてた!」

 

刹那「アリシアの応援のおかげですよ」

 

 

こんな軽い会話を少しし、会場は表彰式に移っていった。




どうも、八雲ルイスです。

ずっとリリカルなのはシリーズが大好きで、長年考案していたものを投稿してみました。

初めてなので誤字脱字多いかもしれませんが、その時は指摘くださると嬉しいです。


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第2話 繰り返した過ち

DASS予選を見事制し、笑顔で溢れている刹那とアリシア。

しかし、この後待ち受ける悲劇を2人はまだ知らない


刹那「ふぅ…少々疲れました」

 

アリ「試合のあとより疲れた顔してるよ、刹那。はい、スポーツドリンク」

 

 

表彰式も終わり、控え室に戻るや否や椅子に座り込む刹那。試合のあとの報道陣からの質問攻めと表彰式、そしてこの後に控えているヒーローインタビューのせいで精神的に疲れているのだろう。

 

アリシアはそれを察し、スポーツドリンクを渡して少しでも疲れを癒してもらおうとする。

 

 

刹那「この後はまたインタビューですか…流石に気が滅入りますね」

 

アリ「仕方ないと思うよ?ルーキーがいきなり全試合ワンラウンドKOしちゃったんだもん」

 

刹那「それはそうなんですが、仕事頑張りすぎですよ……」

 

アリ「まぁまぁ、帰ったらお祝いだよ!お母さん、今日は早く帰るって言ってたからパーッとやろうよ」

 

 

インタビュー自体はキャンセル出来ないので、少しでも元気づけようと明るい話題を出していく。刹那もお祝いには乗り気で、少しは疲れも取れたようにも見える。

 

 

刹那「ぁ、その件なんですが」

 

 

が、ふと思い出したかのようにアリシアを制する刹那。

 

 

刹那「恐らくこの後のインタビュー、時間かかると思うので、アリシアは先に帰っててもらえませんか?」

 

アリ「ぇー?一緒に帰ろうよぉ」

 

刹那「私を待っていたらお祝いの用意が出来ませんよ?仕事帰りのプレシアさんに手伝ってもらうの気が引けますしね」

 

アリ「むぅ……仕方ないなぁ。じゃあ先に帰ってるね?」

 

 

当然のことながら1人で先に帰ることには良い気のしないアリシア。しかし、せっかくの刹那優勝祝いの用意ができないことや、仕事で疲れてるプレシアにその用意を手伝わせることにも抵抗がある。

アリシアは渋々ながら刹那の提案を了承し、部屋を出る。

 

 

アリ「じゃあ、また後でね」

 

刹那「はい、また後で」

 

 

この時の刹那の選択が後にとても大きな後悔とトラウマに繋がったことを彼は知る術はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――約2時間後

 

 

刹那「ふぅ……これでやっと、帰れますね」

 

 

案の定、ヒーローインタビューでは色々なことを聞かれ、その後も報道関係者や格闘技ファン、はては選手にもみくちゃにされていた刹那。

私服に着替えを済ませ、身支度もすべて整え、セコンドをしてくれたプレシアの知人にも挨拶をして別れ、ロビーへと歩を向ける。

 

すると、ロビーは何やら(主に報道関係者が)慌ただしく喧騒に包まれていた。

 

 

刹那「やけに騒がしいですね………あの、すみません。何かあったのですか?」

 

 

とりあえず手近な男の人に状況を聞いてみることにする。

 

 

「詳しい事は分からない。けど、なんでもアンクレス地方にある魔導研究所で大規模な爆発事故があったらしい」

 

刹那「……っ!?それは本当ですか!?」

 

「そこの記者の人たちが話してたし、ほら」

 

 

その人は手に持つ端末を操作し、ニュース速報を見せる。そこには『魔導研究所にて大爆発事故!』の見出しの記事がデカデカと載っていて、写真もあった。まさしく、プレシアが務めている研究所であり、そしてアリシアの住む家のすぐ側だ。

 

 

刹那「ありがとうございます!!」

 

 

刹那はそれを見るや否や、お礼だけ済ましてから急いで外に出て、アンクレスへと向かう道を走る。

それなりに離れた場所だが、もう既に家に着いているであろうアリシアが心配で気が気ではなく、ただただ走った。

そしてミッドチルダ北部、アンクレスの郊外に差し掛かる当たりで山の影からもうもうと立ち上がる黒い煙が目に入る。

刹那は体力には自信はあるが、ここまで走ってきたこともあり、息は上がりきってヒィヒィ言っている。が、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。

そんな時、刹那は違和感に気付く。息切れが酷すぎるのだ。長距離を走ったとはいえ、まだヒィヒィ言うほどではないはずだ。そこで刹那は1つの結論へと至る。

 

 

刹那「まさか……魔力と酸素による結合が起きている?くっそぉ!!ハイペリオン!!!」

 

HP〈 Get set〉

 

 

こここら先は魔力と酸素の結合はさらに酷くなる、と咄嗟に思い至った刹那はすぐさまデバイスを起動、白と黄緑を基調としたバリアジャケットに身を包み、自身の魔力で窒息しそうなのを防ぎながら家へと向かう。

『無事でいてくれ』刹那の頭の中はもうこれで一杯だった。

それから走ることさらに数分。テスタロッサ邸に着き、勢いよく扉を開き中に入る。そこには床に倒れているアリシアと猫のリニスがいた。

 

 

刹那「アリシア!!アリシア!!」

 

 

刹那はすぐにアリシアのそばに駆け寄り、揺さぶって起こそうとするが、返事はない。息もしておらず、胸に耳を当てても鼓動は聞こえなかった。

そんな時、刹那の脳裏にはある光景が広がる。旧ベルカ時代、ゆりかごの聖王になる決意をしたオリヴィエ。

自分が弱いばかりに大切な人(オリヴィエ)を救えなかった辛い過去の記憶。

アリシアを1人で帰らせた自分の間違った判断で大切な人(アリシア)を失ってしまった現実。

この2つが脳裏で重なり合い、刹那を襲った。

 

 

刹那「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!!」

 

 

既に息絶えているアリシアを抱き寄せ、刹那は泣き叫び、ショックで気を失ってその場に倒れ込んだ。

 

 

HP〈 ……Spirit link full drive. Soul absorb, Get set.〉

 

 

ハイペリオンが何かを囁いた次の瞬間、気を失った刹那を中心としてベルカ式の魔法陣が展開。刹那の体が一瞬強い光に包まれたが、誰1人、その場で何が起きたのかは知らなかった。




はい、2話目投稿です!

1話のタイトルと時系列で何が起こるのか察していた人もいるんじゃないでしょうか?(笑)

ちなみにアリシアの年齢をここでは8歳、アニメ本編に換算すれば10歳としていますが、これはぶっちゃけ設定捏造しました!


プロローグはこれで終わりますが、本編までまだもう少し掛かります。それまでお付き合いくだされば幸いかな、と想います。

感想、誤字脱字の指摘etc……待ってます!


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プレリュード A´s
第3話 強さの意味


大切な存在であるアリシアを亡くした刹那。
この不幸な事故はかつて守りきれなかったオリヴィエの姿と重なって刹那を苦しめた。

誰が悪いということも無い。刹那には何の責任はない。

しかし己を責め続ける。責め続けて責め続けて、ただひたすらに強さだけを求めた。

そう、自分の弱さが招いた結果だ、と刹那は語る。


―――――約半年後の冬

 

 

刹那「………」

 

 

ミッドチルダにあるスタジアムの脇に刹那はいた。目を閉じて、佇んでいる。

そう、ここはミッドチルダで行われる格闘技の大会でも屈指の規模を誇るウィンターカップの会場。そこに刹那はいた。

 

 

実況「さぁ、まもなくウィンターカップの1回戦、初戦が始まろうとしています。そして初戦からいきなり波乱の予感がするぞぉぉ!!おっと、両者選手が入場してきたぁぁ!!」

 

 

スタジアム脇で佇んでいた刹那は審判に促されるがままにリングに上がる。同じくリングに上がってきた試合相手は筋肉質な体、重量のありそうな巨軀。スピードこそ並以下だが、一撃のパワー強さと常に攻めて行くバトルスタイルが売りの強豪選手だ。

一方の刹那は半年前のDASS予選優勝。本線の結果はと言うと…

 

 

実況「初戦対戦選手、片方は半年前のDASSミッドチルダ予選で全試合ワンラウンドKO勝利を収めたものの、その後の都市本戦は棄権という結果の刹那·ストラトス選手だ!来年以降のDASSはもちろん、この大会でも優勝候補の一角を担っているぞおおおおお!!」

 

 

そう、例のアリシアを亡くした一件が原因で都市本戦は棄権。このウィンターカップがそれ以降初めて参加する大会となるのだ。

 

 

刹那「さて………」

 

 

意を決したようにリング中央へと向かい、構える。その瞳は蒼と紫の色彩を放っていた。

が、以前とはどことなく雰囲気が違う。以前はあった覇気がない……という訳では無いが、以前と違い、この試合をただの通過点としか認識していないような冷たい目。

そんな刹那を他所に、試合のゴングは鳴らされた。

 

同時に相手選手は刹那へと接近し、刹那へと攻撃を始める。一撃のパワーは強く、クリーンヒットを貰えば刹那と言えど流れを持っていかれ、敗北にさえ繋がりかねない。

しかし刹那もクリーンヒットを簡単に貰うつもりもなく、的確に一撃一撃を捌いていく。

 

 

刹那「……この程度、ですか。弱いですね」

 

「……は?っ!?」

 

 

刹那のちょっとした呟きに反応をした一瞬。相手選手が繰り出した右ストレートの肘の内側を刹那は左の拳で軽く小突く。すると相手選手の右腕はパンチの威力を失い、脱力する。

 

 

刹那「崩雷!!」

 

 

パンチの威力を失い、怯んだ一瞬だった。刹那の右の肘が左のこめかみに直撃。紛うことなきクリーンヒットだ。肘は拳よりも硬いため、下手な拳よりも威力があり、なおかつ断空の力を乗せた一撃は相手選手の意識を刈り取るほどの一撃だった。

 

 

「っ……あぁ!!」

 

 

それでも辛うじて意識を保った相手選手。体勢を立て直そうと刹那へと反撃の意思を込めた視線を向ける。が、戦慄した。

 

 

刹那「爆砕……棍!!!」

 

 

肘打ち·崩雷の勢いで体を1回転させ、断空に加えて遠心力をも乗せたラリアット·爆砕棍が既に振り下ろされているところだったからだ。

 

 

「が……はっ」

 

 

不意に防御しようと不安定な姿勢となってしまったため、胴への直撃を許してしまい、そのままリングへ叩き付けられた。

次の瞬間、KO勝利を告げるゴングが鳴り響いた。

 

 

刹那「弱さは罪です。それでは何も守れません」

 

 

ゴングが鳴った後でも、未だに起きない相手選手を背に、刹那はリングを降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 刹那

 

件の1件でアリシアを失った私は、目が覚める前に夢を見ました。かつてのベルカ大戦末期。ゆりかごへと向かうオリヴィエを止められなかった時の夢。以前までも何度も見た夢だ。

その時はアリシアが目が覚めた時にアリシアが側にいてくれた。側にいてくれたおかげで乗り越えてこられた。

しかし、アリシアはもういない。しかも、今回の夢は倒れる私を置いていくのはオリヴィエではなくアリシア。紛れもない悪夢だ。

 

その夢のせいでしばらく私は塞ぎ込み、さらに何故かリンカーコアも過剰な魔力の負荷を負ってしまっていた事もあって、やむなくDASS都市本戦を棄権。その後しばらくは病院での生活を余儀なくされた。

件の事故はアリシアの母親、プレシアさんが研究していた魔導炉の暴走によるものであり、私はその被害者という事もあって管理局の人達がいろいろと良くしてくれた。

けれどアリシアはもういない。そう思うと何をするにも手がつかなくなってしまった。そこに追い打ちをかけるように連日連夜見る例の悪夢。私は少しずつ追い詰められていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………私が弱いから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………私が弱いから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………私が弱いからアリシアが死んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう結論を出すまで時間は掛からなかった。かつての覇王のクラウスも私も己の弱さのせいで大切なものを失った。

 

 

弱さは罪

 

 

そう自分に言い聞かせ、ひたすらに強さだけを求めた。

 

そうして私はウィンターカップを迎え、何の危なげもなく予選を通過。件の初戦勝利以降も圧倒的な強さで優勝をもぎ取った。

しかし、それでは足りない………まだ私は……弱い。

 

 

その後も大小いくつかの大会に出場しては優勝すると言う結果を残していますが、まだ足りない。

 

そんな時、私が出場したとある格闘技の大会。規模はDASSやウィンターカップ程ではないが、そこそこ大きく参加する年齢の層も上は30歳程まで出てくる大会。

無論20歳以下のジュニア部門とそれ以外のシニア部門とに分かれているが、ジュニア部門に出てくる選手は大体が過去に対戦したか同じ大会に出ているのを見ている為、興味はない。

ルール上は現在11歳となった私がシニア部門に出ることは可能ということなので、シニア部門へとエントリー。もちろん、今回の私のようなことをする選手は前代未聞とのことです。ちなみに男女の部門でも分かれてはいますが、女性が男性部門に参加することに限り、ルール上可能となっている。

 

その大会での初戦。対戦相手はクイント·ナカジマ。当然ながら私とは年齢は10以上も離れており、既に結婚もしているらしい。そして男性部門にエントリーした女性。何を考えているのかはわかりませんが、弱ければ屠るだけです。

 

 

刹那「よろしくお願いします」

 

 

私はリングに上がり一礼、構えに入る。クイントも同様に一礼から構えに入る。足にはローラー、両手には拳型の外装を身に纏ったハードヒッター、と言ったところでしょうか?

 

 

審判「………ファイッ」

 

 

試合が始まると同時に私はクイントの懐へと潜り込み断空拳による一撃。ジュニア部門であれば既にここで決着は着いたであろう私の最大級威力を持った一撃。

クイントはそれをいともたやすく左手で受け止める。想定はしていたものの、気持ちのどこかでは舐めていた部分もあったのか、それから第1ラウンドは泥沼化し、お互いに撃ち合うもクリーンヒットを出せないまま終わってしまった。

 

初めて第1ラウンドで決着がつかなかった瞬間でした。

 

そのまま第2ラウンドへと突入。第1ラウンドと変わらない拳の打ち合いとなった。

 

 

クイ「刹那くん、だっけ?」

 

刹那「……はい、そうですが」

 

 

打ち合いの最中、対戦相手であるクイントさんが不意に話しかけてきた。

 

 

クイ「刹那くんは格闘技が本当に好きなの?」

 

刹那「………」

 

 

訳が分からなかった。格闘技はずっと続けてきた私の趣味であり特技。嫌いなどということは無い。格闘技が好き……なはずだ。

 

そう、私はそこで断言できなかった。嫌いでは無い。それは断言出来る。しかしアリシアを失って以降はただ強さを求める手段として格闘技を利用していた私には自信を持って好きだ、とは言えなかった。

 

 

クイ「さっきぶつけたあなたの拳から寂しさのようなものが伝わってきた。何かを失って、それに囚われているのね」

 

刹那「……っ」

 

 

私はクイントさんから即座に距離をとった。私の心の中を全て見透かされている、そんな気がしたからだ。

 

 

刹那「だったら、なんだと言うんですか?」

 

クイ「失ったものは戻ってこないわ。生きている者がそれに囚われるのは、その人が本当に望んだ結果なの?」

 

 

私は戦慄した。例の魔導炉の事件は有名だから知っていてもおかしくはないだろうが、私とアリシアの事までは知る術はないはずだ。なのに、たった1ラウンド拳を交えただけでここまで見透かされた。その事に私の心は大きく揺らいだ。

 

 

刹那「オリヴィエは………アリシアは………私が弱いせいで、私の前からいなくなりました。もう、戻ってくることはありません。私が弱いせいで!だから私は強さを求めました。それの何がいけないと言うんですか!」

 

 

私は叫ぶと同時に断空を乗せた蹴り·烈風脚で攻撃に入る。が、動揺していたせいか軽々と受け流されてしまい…

 

 

クイ「ダメとは言わない。けど、それはあなたが好きだった格闘技への冒涜、よ!」

 

刹那「が………っ!?」

 

 

バランスを崩したところへ腹部へ強烈な拳を受けてしまった。初めて受けたクリーンヒットだ。

 

 

クイ「はぁぁ!!」

 

 

そこからは防戦一方。右に左にと繰り出されるかつて無いほどに強烈なラッシュ。捌ききれずに防ぐことで精一杯だった。

ラッシュに続くラッシュで私の防御にも限界が近付いていく。そこをクイントさんは見逃さなかった。

 

 

クイ「リボルバー…キャノン!」

 

 

防御の上から今まで以上に強烈な拳を打ち込まれ、完全に防御が崩れた。

 

 

クイ「もう一撃!」

 

 

それによってがら空きとなった私の腹部へクイントさんの左の拳によるリボルバーキャノンが直撃し、私は意識を失っていった。

 

 

side out




どうも、八雲ルイスです。

第3話、なんか長くなっちゃいました(笑)

いろいろな小説読んで、皆さんが言ってますが、あえて私もこう言わせてもらいます。


すぅぅぅぅ(息を吸う)


戦闘描写むずかしぃぃぃぃ!!!




さて、初めての敗北を決した刹那。そしてその刹那に手を差し伸べるクイント。アリシアを失った刹那の心境はどう変わっていくのか!それでは次話をご期待ください!


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第4話 強さの意味 2

まさか前の投稿からかなり時間が空いてしまうとは……

すみません、リアルの方が忙しくなって来たのとGジェネジェネシスとモンハンZにハマったのが原因です!←←←

それでは、どうぞ!


あたりは暗く、遠くの空は赤く光っている。所々、もくもくと立ち上る煙も見える。

 

ここはベルカ、かの次元戦争ももうすぐ終わるという頃。周囲の様子を見てみると瓦礫と焼けた野原のような戦争の傷が痛々しく見える。

 

そんな景色の中に明らかに異色な巨大な建造物があった。

 

 

 

 

―――聖王のゆりかご

 

 

 

 

次元戦争を終わらせ、ベルカをも滅ぼしたベルカの最終兵器とも呼べる兵器。

 

地平戦から太陽が顔を見せようとする今の時間、その聖王のゆりかごのすぐ側に2人の男女がいた。後に聖王と呼ばれるオリヴィエ·セーゲブレヒトと覇王流を編み出し、覇王として歴史に名を残すクラウス·G·S·イングヴァルトだ。

 

 

オリ「やはり、クラウスなら来ると思いましたよ」

 

クラ「もちろんだ。前も言ったろ?ヴィヴィをゆりかごに乗せる訳にはいかない。死にに行くようなものだって」

 

オリ「それでも、この戦争を終らせるには……残された手段はもうこれしかないんです」

 

 

オリヴィエは次元戦争を止める為、ゆりかごに歩を向ける。

 

 

オリ「この戦争で沢山の血が流れました。何千…何万もの人が死にました。もう帰って来ない騎士達を見送るのはコリゴリです。そして、それを終わらせられるのも私だけなんです」

 

 

戦争を終結させたい、オリヴィエのその意志は固かった。

 

 

クラ「確かに、今すぐにでも止めるならそれしかない。それは俺にもわかっています。しかし、ゆりかごは暴走する危険性も……そうなればヴィヴィ…貴女の命は…」

 

オリ「()()()()()()。でも、私1人の命で戦争が終わるのなら……安いと思いませんか?」

 

クラ「思わない!少なくとも俺は……こんな兵器(ゆりかご)なんかにヴィヴィを殺させたくない!それでも行くというのなら……」

 

 

クラウスは地面を蹴って跳躍。オリヴィエの頭上を飛び越え、ゆりかごとの間に着地。オリヴィエの方へ振り返って構える。

 

 

クラ「俺が……ヴィヴィを殺してでも止める。ここから先には行かせない」

 

オリ「私を死なせたくないと言って私を殺れるのですか?」

 

クラ「ゆりかごに殺させるくらいなら、俺がこの手で殺す。それだけだ!」

 

 

――――覇王

 

 

クラ「断空拳!!」

 

 

そして先制攻撃に断空拳をぶつける。

 

が、聖王の鎧による防御でいともたやすく防がれる。

 

 

オリ「私にも、譲れないものはあります。クラウスがそこを通さないと言うのなら、私は押し通ります!」

 

 

オリヴィエも拳を振り上げ、間発入れずに拳を振り下ろす。クラウスは即座に下がって避けるが、拳が直撃した地面は大きく抉れていた。

 

 

クラ「やっぱり、ヴィルフリッド(リッド)から…」

 

オリ「貴方なら止めに来るだろう確信してましたからね」

 

クラ「エレミア式戦闘術(エレミアンクラッツ)……まさかリッドまでそちら側とは思ってなかったな」

 

オリ「彼女はこのことは知りません。私がゆりかごに乗る決意をする前夜にどこかへ行ってしまいましたから。この件を話したこともないですしね」

 

クラ「だと思ったよ」

 

 

拳をぶつけ合いながら言葉もぶつけ合う。そんな一進一退の攻防が続いた。

 

しかし、次第にお互いの口数も減り、意識は全て目の前に立ち塞がる敵を倒す、殺してでも止める(殺してでも押し通る)ことに向けられていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――― 一体何時間この攻防が続いただろう。1時間?2時間?もう戦っている当事者すらそれは分からないくらい、この戦闘は続いていた。

 

しかし、それは唐突に訪れた。

 

 

クラ「覇王…」

 

 

クラウスが震脚でサッカーボール大の岩をいくつも浮かせ、それをオリヴィエへと飛ばす。当然オリヴィエはそれを聖王の鎧による障壁で防ぐ。

 

 

クラ「岩砕!」

 

 

が、クラウスもそれを読んでいたのか、飛ばした岩を岩をすべて爆散させ、オリヴィエの視界を埋める。

 

 

オリ「っ!?」

 

クラ「はぁぁぁ!!!」

 

 

オリヴィエは咄嗟に不意打ちに備えて周囲を警戒。しかしそれがクラウスの罠だった。視界を奪ってすることは不意打ち、特に背後からの不意打ちという定石を逆手に取って即正面からオリヴィエの懐へと飛び込んだ。

 

 

―――覇王断空拳!

 

 

予想していなかった訳ではない。しかし、一撃貰えば致命傷ともなり得るクラウスの一撃。それの為に正面への警戒が手薄になった瞬間を付いた攻撃。聖王の鎧の防御も間に合わない。咄嗟に右の拳で相殺しようとするが、最大威力の一撃の前に右腕の義手は引きちぎれるかのように音を立てて砕けた。

 

勝った。クラウスはそう確信した。()()()()()()()()()()()()()

 

オリヴィエは左の拳でクラウスの胴に一撃。肋が折れるリアルな感触がオリヴィエとクラウスへと伝わった。クラウスはその衝撃で吹き飛び、瓦礫へと突っ込んだ。そこに追い討ちのかかと落とし。咄嗟にさらに後ろへと飛ぶが、避けきることが出来ず、今度は両の脚が折られる感触が伝わった。

 

 

クラ「ぁ…ぐ……」

 

 

脚の骨が砕かれ、クラウスはもう立つことが出来なかった。

 

 

―――敗北

 

 

そうクラウスは確信した。

 

 

オリ「私の勝ち、ですね」

 

クラ「………はい」

 

オリ「何で最後の一撃の時。胴から外したんですか?その気になれば今の立場は逆でしたよ。それこそ、私を殺せたはずです」

 

クラ「俺もそう思ったよ。けど……出来なかった」

 

 

最後の一撃を入れる時。不意にオリヴィエと過ごした平凡な日常がクラウスの頭の中に思い浮かんだ。一撃を急所から外したのじゃない。急所に入れることが出来なかった。

 

オリヴィエを殺してでも止める。頭では理解して覚悟もしていた。しかし、現実になると出来なかった。それがクラウスの感じた()()だった。

 

 

クラ「殺してでも止める。そう覚悟してたんだけどな…出来なかった。ヴィヴィ(俺の愛した女性)を殺すなんて……ヴィヴィを殺すなんて……」

 

オリ「……っ」

 

 

オリヴィエは少しの動揺を見せる。が、すぐにクラウスに背を向けてるゆりかごへと向く。

 

 

オリ「すみません。それでも、止まれません」

 

 

そう言い残し、オリヴィエはゆりかごへと向かって行った。

 

 

クラ「ヴィヴィ……ヴィヴィ!」

 

 

そのオリヴィエにクラウスは手を伸ばし、叫ぶしかできなかった

 

 

クラ「オリヴィエぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那「オリヴィエぇぇぇぇ!!っ!?っぅぅぅ………」

 

 

ガバッという擬態語が聞こえそうな勢いでベッドから刹那は起き上がった。当然のことではあるが、クイントとの試合のダメージに激しい激痛を覚える。

 

ん?ベッドから……??

 

 

刹那「っぅ…。夢……ですか。それはそうと、やここは……どこでしょう?」

 

 

見た所医務室や病院でも無さそうな平凡な天井、何かと生活感のある部屋とベッド。

 

と、思いを巡らせている時、部屋のドアが開いて1人の女性が入ってきた。

 

クイント·ナカジマ。先の大会初戦で刹那と戦った相手だ。

 

 

クイ「ぁ、起きた?ごめんね、少し強くしすぎたみたいで。大丈夫?」

 

刹那「あの……ぇっと……?」

 

クイ「あぁ。あの後なかなか起きなかったから連れてきたの。怪我自体はそうでもなかったから医務室に連れていくのもアレだったしね。ここ、私の家なの。で、今寝てるのが普段は私の旦那が使ってるところね」

 

 

あぁー、と納得。とりあえずもう起きれるのでベッドから出ることにする。

 

 

刹那「ぇっと、いろいろとありがとうございます。ダメージ自体は…まだ少し残ってますが、大丈夫です。私、どれくらい寝てました?」

 

クイ「んー…だいたい半日くらいかな。ちなみに今は夜の7時。もうすぐ晩ご飯だから食べていって?」

 

刹那「…いただきます」

 

 

半ば押し切られるような形で晩ご飯までいただく流れになってしまう。

そんな刹那の頭の中で思い出すのは試合中のクイントの言葉。

 

 

刹那「そう言えば、試合中言ってたことは…」

 

クイ「あのこと?もう大丈夫だよ?聞いたから」

 

刹那「聞いた…?」

 

 

クイントに連れられてリビングに入る。

 

 

アリ「ぁ、刹那起きた?ダメージは大丈夫??」

 

刹那「まだ少し残ってますが、大丈……夫………???」

 

 

そこで目にしたのはクイントの娘らしき2人の女の子と戯れていた金髪のよく見知った女の子。

 

そう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

刹那「なんで……アリシアが………あの時、死んだはずじゃ……」

 

アリ「確かに死んだよー?でも、()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ。詳しいことは私にもわからないけど、稀少能力(レアスキル)か何かじゃない?」

 

クイ「何でも、ずっと刹那くんの中から見てたらしいよ?可視化出来るようになったのもほんの数時間前で実体化は………何故か先に覚えたんだって」

 

アリ「あははは……私ってドジだよね。普通逆だよね」

 

 

アリシアが生きていた。いや、正確には死んでいる。それは本人が言っていた。けど、こうして目の前で笑っている。刹那があの時失ったものの1つが今目の前にあった。

 

いつも側にアリシアはいた。見えず触れられず声も聞こえなかった。けど、側にいた。そばで私のことをずっと見ていた。その事が、ただただ嬉しかった。と同時に恥ずかしくもあった。

 

この1年でしてきた私の愚行。いくつもの大会を荒らし、結果こそ残しても心には残らない試合の数々。

 

それを全てアリシアが見ていたと思うと嬉しさと恥ずかしさでどうにかなってしまいそうで、私は床に膝をついて涙を流すしかできなかった。




とりあえず書き終えた後で気づいたのですが、夢の部分が長くなりすぎました。


まぁ、いっか( ー`дー´)キリッ



ということでアリシアは生きてました。いや、死んでますけど。

今の状態はいわゆる実体を持ったお化け的な感じです。もちろん半実体になったりふわふわ浮いたり出来ますよ。

感覚としては一昔のジャンプ漫画のシャー〇ンキングの霊的な感じです。あれは実体ありませんが。



ちなみに本編行けるまであと何話かなぁー。2話くらいかな?ってとこです。

少しずつお気に入りも増えてきてテンション上がってる私もいますし、更新のペース上げていきたいですね。

では、誤字脱字の指摘や感想、アドバイスなどあればどしどしとお願いします!


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第5話 強さの意味3

またやってしまった………ペースあげるとか言いつつまた間が…

それはそうとVivid Strike!がとうとう終わっちゃいましたねぇ。リンネ可愛いよリンネ!

まぁ、今思うとコミックVivid見てない人や初見さんは終始なんのこっちゃなアニメだったような気もします。イクス目覚めるの、イクスが登場した後にコミックで目覚めましたし(放送地域によるかな)

アニメVividしか知らない人にはクロが誰や!ってなるだろうし。

とはいえ、総合的に私は好きですね、Vivid Strike!は。リンネがどことなく刹那と似てて(偶然だよ?)
よし、リンネをこの小説で早く出すためにも頑張りますか!


刹那「すみません、お見苦しいものを…」

 

 

あれから約30分。刹那はようやく落ち着きを取り戻した。クイントの2人の娘(ギンガ、スバルという名前らしい)にもガッツリ見られてて恥ずかしさが胸をよぎる。

 

というか途中からギンガは刹那を慰めようと頑張っていた(スバルは気にも留めていなかった)。

 

 

クイ「いいのよ、気にしなくても。1年ぶりの再会でしょ?無理もないわよ」

 

アリ「刹那の中では私は死んでたもんねー。いや、死んだけど」

 

 

死んだけど目の前で普通に動いてるアリシアを見ると本当に死んでるのかすら怪しく思えてくる。当の本人はそこ事さえもボケとしてぶっ込んでくるあたり相当メンタルが強いのだろうか。

 

 

刹那「ありがとうございます。クイントさん、アリシア。ギンガも」

 

ギン「ぁ、いえ!」

 

 

不意に声を掛けられて驚いたのかビクッ!と体を跳ねさせるギンガ。聞けば初等科に入学したばかりらしく、見た目や実年齢とは裏腹になかなか出来た子である。

 

ちなみにスバルはもう椅子に座ってフォークとナイフを持ち、ごはんまだー?とか言っていた。まだ料理に取り掛かったばかりだと言うのに物凄い食い意地だ。

 

 

クイ「もうすぐ旦那が戻ると思うけど、しばらくギンガの相手頼めるー?」

 

刹那「ぁ、わかりましたー」

 

 

キッチンの方からクイントの声がしてそれに返事。というかスバルはこのままスルーなところを見るとこれがナカジマ家の日常らしい。

 

ギンガとわいわい(主にアリシアが)時間を潰しながら小1時間。途中でクイントさんの旦那、ゲンヤ・ナカジマが帰宅し、待ってましたと言わんばかりのタイミングで晩御飯が出来上がる。

 

メニューはカレーらしく、いい匂いが広がる。フライングして食べようとしたスバルがクイントに止められるのも日常らしい(ギンガ談)。

 

それからはナカジマ家の4人に刹那とアリシアを混ぜた6人での晩御飯。スバルと意外にもギンガの食べるペースと量に驚きつつ(今思えば鍋も異様に大きかった)久々の暖かい家庭料理を堪能する。

 

ちなみにアリシアは霊的な存在だから本来は食べる必要は無いらしいけど、1人だけ見てるのは嫌!と言って一緒に食べてる。

 

その食後のこと。

 

 

クイ「強さの意味??」

 

 

刹那は今まで思っていたことをクイントにぶつけてみた。当のクイントは洗い物を終えて手を拭き、刹那と自分の分の飲み物をテーブルに起き、刹那の正面に座る。刹那もそれをいただきます、と返して頂くことにする。

 

 

刹那「はい。アリシアを失ってから私は強さのみを追い求めてきました。鍛錬に明け暮れ、一応大会でも結果をたくさん残しました。自分で言うのも何ですが、同年代の中ではかなり上の方にランクインできると思います。事実ずっと不敗でしたからね」

 

 

そうだろうねぇ、と返しながら刹那の話に耳を傾けるクイント。

 

 

刹那「1年前と比べると格段に力も技術も伸びましたし、格闘技への知識なら私はそうそう負けるつもりはありません」

 

クイ「覇王の記憶、だっけ?」

 

 

はい、と刹那は続ける。

 

 

刹那「クラウスの記憶には彼が身に付けた技術(覇王流)や知識がありますからね。そうでなくても鍛錬ばかりしていたので力は付きましたが」

 

クイ「そこは大きすぎるアドバンテージになるわよね。人によっては反則だーとか言いそうなレベルで」

 

 

そこでコップのお茶をグイッと飲み、続ける。

 

 

刹那「力も技術も知識もある。なのに今日負けました。まぁ、元はと言えば私の驕りと油断の結果と言えなくもありませんが」

 

クイ「私に負けて強さの意味がわからなくなっちゃった?」

 

刹那「はい。力はただ力という事を思い知らされました。では、いったい強さとは何なのか………と」

 

 

ふむ、と少し考え込むクイント。

 

 

クイ「根も葉もないこと言っちゃうと、その答えは人それぞれなんじゃないかな」

 

刹那「………ぇ」

 

クイ「たまに勝った方が強くて負けた方が弱いっていう人もいるけど、私はそうは思わない。確かにそれも1つの真実だとは思うけど、それだけが全てじゃない。力や技術、知識も強さの1つだとも思うし、刹那君の不敗記録みたいな結果も1つの強さだと思うし、才能も強さの一角だと思う。」

 

 

唐突な人生相談にも関わらず、真剣に考えてくれていることが嬉しく、軽い感動すら覚える刹那。そんなクイントの意思を無駄にせまいと刹那も真剣に耳を傾ける。

 

 

クイ「要は、刹那君がこれが強さだ!って自信を持っていえる何かはあなた自身で見付けなければいけないことなのよ。他の誰でもない、刹那君がね」

 

刹那「私自身が………」

 

クイ「そうよ。それがハッキリすれば、刹那君はもっともっと強くなれる。それこそ、同年代はおろか、U-24くらいまでは負け知らずって言えるくらいにはなれるんじゃないかな?」

 

刹那「さすがにそれは持ち上げすぎですよ」

 

クイ「そう?こう見えて結構本気なんだけど……ま、それは今後の刹那君次第よ。と言っても、相談受けた手前、答えを見付ける手助けくらいはしないとね」

 

 

クイントはホロウィンドゥをいくつか展開して操作。少しして刹那の目の前に1つウィンドゥが現れる。

 

―――DSAAミッドチルダ地区予選出場選手エントリー受付中!

 

それはこう書かれている広告だった。

 

 

 

クイ「去年はアリシアちゃんのこともあって途中で棄権しちゃったでしょ?他にも………」

 

 

次々とウィンドゥを出していくクイント。そこにはU-15、U-19、U-23のランキングマッチ、ウィンターカップを初めとして、様々な大会が名前を連ねていた。

 

 

刹那「ちょ、ちょっと待って下さい!DSAAやU-15はわかりますが、U-19とU-23はやりすぎですよ!?」

 

クイ「さっきも言ったでしょ?刹那君ならやれる。それに、出場選手要件は満たしてるわけだし、敢えてこれくらいキツイ環境の方が気付きやすいものよ?」

 

刹那「クイントさんって、案外スパルタなんですね」

 

クイ「よく言われる」

 

 

その後2人そろって笑ったのだった。ここまで笑ったのは……ぁ、そうか。アリシアと死に別れる前以来ですからほとんど1年ぶりですね。

 

そんなこんなで各種大会へのエントリーが決定した。




今日は少し短めにしておきます!時間にしても数時間しか経過してませんね!←←

では、感想やアドバイス、誤字脱字などの報告待ってます!


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第6話 強さの意味4

今年もあと僅かで終わりです……って言うつもりが書いてたら日付超えちゃいました(´>∀<`)

明けましておめでとうございますm(_ _)m

去年は思えば色々ありました。この小説的な意味では大したことはありませんでしたが。

去年の年納は間に合いませんでしたが、今年の書き初めです!


クイントから様々な大会を紹介されてから3ヶ月。この間にもいくつかの大小の大会に出場。そのほとんどでベスト3以内の結果を残している。

 

考え方を変えたせいと“強さ”を探していたこともあり、前のような全戦全勝という訳にもいかなかった。

 

いくつもの勝利といくつもの敗北。それを経験してなお、自分の“強さ”が何なのかは未だわからなかった。

 

とはいえ、刹那は格闘技に関しては天賦の才とクラウスの記憶を持っていたせいもあり、ことDSAAに関しては予選は多少の苦戦はあるも優勝。再び都市本戦へと歩を進めている。

 

一方の都市本戦。さすが各次元世界の予選を勝ち抜いてきた猛者の集まりなだけあり、しかも刹那は最年少の11歳ということもあり、予選のようなワンラウンドKOはそうそう滅多には出来ずに苦戦を強いられていた。

 

それでも覇王としての意地か、それとも運か実力か。都市本戦決勝へと出場を決める。対戦相手は去年の優勝者、これに勝てば次元世界最強の格闘技選手になれる。

 

当然、相手も連覇がかかっている為、これまで以上に苦戦を強いられた。

 

相手はいつだか戦ったカウンターを得意とした選手と似たようなスタイルだったが、その練度が桁違いで反撃の隙が見当たらない。強引に攻めてみたが、当然といえば当然か、激しいカウンターを許してダウンを取られてしまった。

 

そのまま防御に徹して泥沼にハマってしまい、ズルズルと最終ラウンドまで来てしまう。ダウンを取られているのでこのままでは判定負けは確定だ。

 

試合の行方をセコンドにいるクイントとその親友メガーヌ、観客席のゲンヤとその娘ギンガとスバル、そして私の幼なじみのアリシアがじっと見守っていた。

 

 

刹那(かなり…ヤバイですね。攻撃の隙が……相変わらず全く見えません…っ!)

 

 

当の刹那も元々防御が苦手(そもそも覇王流自体防御が苦手)だったので、次にダウンを取られるのも時間の問題だった。

 

 

刹那「(こうなったら……一か八かもう1度…!)覇王…断空k」

 

「それはもう見たよ」

 

刹那「が……はっ……」

 

 

もう1度強引に断空拳で攻めにかかる刹那。だが、大会中何度も見せた技ということもあり、構えた瞬間に拳を止められて腹部に膝蹴りを食らってしまった。

 

 

「おまけ、だ」

 

刹那「っ……!」

 

 

それで怯んだ隙に後頭部へ拳を喰らい、顔面からリングの床に叩きつけられた。

 

尽きかけた体力と、後頭部への一撃で朦朧とする意識。いや、ほぼ意識はブラックアウトしていた。その途切れた意識の中。刹那はいくつもの風景が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

―――アリシアと遊んだ緩やかな数々の日常

 

 

 

 

 

 

 

 

―――オリヴィエと積み重ねてきた数々の鍛錬

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ベルカの地で共に学び、共に上を目指したたくさんの盟友達。

 

 

 

 

 

 

 

―――()()(()()()())()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那「そうか………私は………守りたかったんですね」

 

「ぁん?」

 

刹那「やっと、見付けました。私の強さの意味」

 

 

刹那は2度目のダウンからゆっくりと起き上がり、一瞬だけクイントへ目配せ。クイントはサムズアップでそれに応える。刹那もそれを見て笑みを零し、再び目の前の対戦相手へと目を向ける。

 

しかし、もう最終ラウンド。時間は残り少ない。そこで刹那が取った手段。それは

 

 

刹那「覇王流…牙山!」

 

 

覇王流の中でも唯一無二の()()()()()

 

 

刹那「これで決めさせてもらいますよ。覇王流…断空k」

 

「だからそれはもう見たと!」

 

 

牙山の構えから断空拳へと移る刹那。だが、当然相手もそれを止めにかかり、再び先程同様のカウンターを決める。

 

 

刹那「その言葉、そっくりそのまま返しますよ」

 

「っ!」

 

しかし、そのカウンターは刹那による防御により、逆にダメージを受けてしまう。

 

牙山。それは有り体にいえば相手の打撃を肘で防御する型。肘は身体の各部の中でも一二の硬さを持つため、そこで防御することで打撃を防ぎつつ、攻撃も兼ねることが出来る。刹那のカウンター技の崩雷を完全防御に寄せた構えと言えるだろう。

 

刹那はその肘の防御を受けて拳にダメージを与え、無理矢理隙を作ったのだ。

 

こうなれば、もう流れは刹那のものだ。

 

 

刹那「覇王…断空拳!旋風脚!爆砕棍!崩雷!」

 

 

殴り、蹴り、ラリアットに肘打ち。他にも数々の乱舞。その前にとうとう、相手選手はダウンし、カウントダウンが始まる。しかし、相手選手が起き上がってくることは無かった。つまり

 

 

『試合終了ぉぉぉぉぉぉ!!!今年の次元世界最強は刹那·ストラトスだぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 

刹那の優勝。それにより今年の新たな次元世界最強選手が生まれ、同時に今後10数年更新されることのない都市本戦優勝最年少記録を作り出した。

 

その後はもう大変だった。たくさんのヒーローインタビューは元より、その後の大会でも次元世界最強の肩書きが付いて回る。それそのものは悪くないが、よくファン(主に女性)が押し寄せてきてあとでアリシアをなだめるのが大変だったりしたのが特に大変だった。

 

刹那の中の強さ。それは“守る意思”。

 

思い返してみればクラウスがオリヴィエと死闘をしてのけたのもオリヴィエを守りたかったからだし、アリシアとのこの日常も守りたいと常々思っていた。灯台下暗しとはこの事だ。

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

その後、刹那はU-15、U-19のタイトルを獲得。U-23も辛くもタイトル獲得。クイントの予想(予言?)は何一つ間違いなく当たったのだ。

 

ウィンターカップも危なげなく優勝し、この頃には修羅の覇王なんて二つ名も付いていた。誰が言い出したのかは知らないが、恥ずかしいことこの上ない。

 

ちなみにこの数々の結果がのちに彼を格闘技者間の伝説とすることになるのだが、それはまだ先の話である。

 

とまぁ、そんなこんなで今年の大会は一通り優勝。ナカジマ家で年を越し、年が明けると他の次元世界の大会も視野に入れてあちこち遠征するようになった。

 

そんな新暦も64年を数える年の5月も終わりを告げようという頃。

 

 

刹那「今回の相手は強者揃いでしたね。結構苦労しました」

 

アリ「という割には、余裕綽々って感じじゃなかった?笑ってたし」

 

刹那「強敵と当たると、自然と笑顔になるんですよ。アリシアも格闘技やればわかりますよ」

 

アリ「刹那と一緒にされてもねぇ……ぁ、次の目的地はどこだっけ?」

 

刹那「えっとですね………管理外世界ですね。第90管理外世界です。ここからは少し遠いですが、転移で行けない距離ではありません」

 

アリ「ぇーと……それなら、向こうについてからある程度余裕あるし、転移の消耗は問題ないかなー。なら、さっそく…?」

 

刹那「行っちゃいましょう。私によーく掴まっていてくださいね」

 

アリ「うん!」

 

 

次の大会を求めて時空間を転移する刹那。

 

しかし2人は知らなかった。2人が転移しようとしている宙域はP()T()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな所を生身で転移すればどうなるか……例えるなら嵐の大海原へ生身で遠泳するような。そんな感じだろう。

 

もちろん刹那とアリシアは次元震の奔流をもろに受けてしまう。

 

 

刹那「なっ!?うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アリ「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

大波に飲まれたかのごとく、2人は右に左に上に下にとかき混ぜられるような乱れに飲み込まれて言った。当然、このままでは2人とも命はまず助からないと言っていい。

 

刹那はアリシアを絶対に離さないようにと精一杯抱き締め、現状を打開する術はないか策を巡らせた。巡らせて…見つけた。

 

近くに時空管理局のものと思われる艦艇の反応を感じたのだ。

 

とは言ってもこのもみくちゃにされながらだ。その艦艇へと言えど安定した転移は1人が限界だろう。

 

自分が飛ぶか、アリシアを飛ばすか。考えるまでも無く答えは最初から1つだった。

 

 

刹那「っぁぁ!!アリシアへ私のリンカーコアを半分譲渡!!と同時に転移しますよ!!」

 

アリ「ちょ、ちょっと待って!?そんなことしたら刹那は!?」

 

刹那「どの道この状況で2人とも助かる術はありません!なら、私は喜んでアリシアのためにこの命を使います!」

 

アリ「ダメだよ!そんなんなら私も!」

 

刹那「リンカーコアは……もし私も奇跡的に生き延びたら……また出会った時に返してください!断空拳っ!」

 

アリ「が……っ!?せ……っ………な………」

 

 

腹部へ断空拳を受け、気を失うと同時にアリシアのみ転移。

 

 

刹那「そう言えば………告白してませんでした………ね」

 

 

少しの後悔を残したまま、刹那の意識は時空の奔流に飲み込まれていった。




若干無理矢理感のある流れだったような気がしたりしなかったり………

こんな私ですが、今年もよろしくお願いしますね。

この回でプレリュードはおしまい!次回から本編A‘sに入っていきますよ!

では、感想、誤字脱字報告、アドバイス等待ってます!


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A’s編
第7話 フェイト·テスタロッサ


前回投稿から約4ヶ月弱………ほんっとぅにもうしわけありませんでしたぁぁぁ!!!

あの後FGOにハマってしまってですね←言い訳

とりあえずここから少しずつA’s編に行きますよ!今回から原作キャラがちょこちょこ出てきます!

ぁ、それとここから書き方を変えてですね。今まで台本形式だったのを廃止して普通の小説っぽく行こうかと思います。では、どうぞ!

2017/5/13 最後の1文追記。


side ??

 

―――時空管理局艦船アースラ

 

「ぇーっと、ビデオメールって初めてだから……これんな感じで良かったのかな?また感想聞かせてくれたら嬉しいな。じゃあ、またね♪」

 

ぇっと、私はフェイト·テスタロッサって言います。先日解決した後にPT事件って言われる事件の重要参考人として今はアースラ、時空管理局の保護観察下にいます。

今私は直接会うことが出来ない友達にビデオメールっていうのでメッセージを入れてて、丁度それが終わったところです。地球の文化って難しいです。

 

「この前あのガキンチョ(高町なのは)が送ってくれたやつ、結構よかったもんね。フェイトは恥ずかしがり屋だしこういうのヘタだから無理ないか」

「むぅ…すっごく言い返したいけど事実だから言い返せない………」

 

この子はアルフって言って私の使い魔です。素体が狼なので耳と尻尾が着いてます。

アルフは私との付き合いが長いから私のことはよく知ってる……のはいいんだけど、たまにこうやって弄ってくるんだよね。

とりあえずぷくーっと頬をふくらませてみます。

 

「ごめんってば。ほら、リンディにそのビデオメール届けてもらうんでしょ?早く行ってきなって。」

「アルフは来ないの?」

「んー。行ってもいいけど、あたしはパス。ここでお昼寝してるー」

「わかった。じゃあ、おやすみなさい」

 

私はビデオメールのディスクを用意していた包装紙でラッピングしてから部屋の明かりを消してリンディさんの部屋に向かいます。ぁ、リンディさんはこのアースラの艦長をしている偉い人です。

 

コンコン

 

「はーい。どうぞ〜」

「お邪魔します」

 

扉をノックするとすぐに返事がしたので中に入りました。部屋の中は赤絨毯や獅子脅しがある純和風(?)な感じにレイアウトされてます。

 

「ビデオメールはもう出来たの?」

「はい、自信は全然ですけど………私頑張りました!」

「じゃあ後は私の仕事ね。責任をもって必ず送り届けます」

「お願いします、艦長」

 

プシュー

 

と、そこまで話したところで後ろの扉が開いて私と同じくらいの背の男の子が入ってきました。

 

「フェイトも来てたんだ。ビデオメール?」

「うん、丁度出来上がったから届けてもらおうかなって」

「そうか、それは良かった」

 

この男の子はクロノ·ハラオウン。リンディさんの息子さんで時空管理局の執務官をやってるみたいです。あまり愛想はないけど優しくて頼れるお兄ちゃんって感じがする人です。

 

「クロノ、近辺の様子はどう?」

「率直に言ってまだ安定しませんね。安全に航行出来るまでは……そうですね。あと1週間くらいかな、と」

「あれだけ大規模の次元震の余波ですもの。仕方ないわね。むしろ、これだけで済んで良かったと考えましょう。近隣の次元世界に悪影響も無いみたいですし」

「逆に考えればフェイトの裁判まで時間がかかるのでその分対策を立てる時間が稼げると取れるのであながち悪くは無いですね。とりあえず観測は続けておきます」

「そうねぇ。もし安定してたら本局までそう長くはかからないものね。プラス思考で行きましょう。何かあったら報告よろしくね」

 

そう、クロノの言うように今アースラの近くの次元の海は大荒れに荒れています。原因は…私のお母さんが起こした大規模な次元震。ジュエルシードと時の庭園の魔導炉を暴走させてアルハザードに行こうとして、そこを私達で阻止。その余波で空間が不安定になってるんだって。アースラでも安全な航行は保証できないっぽい。

でも、私の裁判………かぁ。気が重くなるよ……

 

「私の裁判、そんなに苦労しそう?」

「ん?あぁ…どうでしょうか艦長?」

「そうねぇ…フェイトさんはどちらかと言うとお母さん、プレシアの為にやったことだし巻き込まれた側だって理解してもらえればそう難しくはないんじゃないかしら?実際にその証拠は抑えてるわけですし。少なくとも懲役とかの実刑は無いはずよ?せいぜい保護観察処分………今と大差ないわね。そうなったら私が保護観察下に置けばいいだけだし」

「よかったァ……」

 

私の裁判へのリンディさんの考察を聞いて私はホッと胸をなでおろします。

 

「じゃあ話は変わるけどクロノ。後で私と模擬戦やろ?」

「構わないが……藪から棒にどうしたんだ?」

「なのは、きっとすごく練習して強くなるよ。なのに私だけここで足踏みするだけってのはイヤなの」

「確かになのはなら間違いなくそうするだろうね、レイジングハートもいる訳だし。なら、早速やろうか。艦長、良いですか?」

「もちろんよ。今日の訓練はもう終わってるのよね?なら、あまり熱を上げすぎない程度にやりなさい?」

「「ありがとうございます!」」

 

落ち着きついでにクロノに宣戦布告。少し前まで敵同士だったなのはと、今度からは肩を並べて戦えるように……次に会う時はなのはは絶対に強くなってる。それなら私も強くならなきゃ!

許可も出たし、早速練習場に

 

ビービービー

 

行こうかなってところでアラートがうるさく鳴り響きました。クロノが早速ブリッジに通信を繋ぎます。

 

「エイミィ!何があった!?」

『ぇっとね、私達じゃない誰かがアースラの転送ポートに転移してこようとしてるの!今ポーターに武装隊の人を向かわせたところ!』

「僕もすぐに向かう!フェイト、申し訳ないけど模擬戦はまた後だ。」

「なら私も行くよ。手伝わせて?」

「……わかった。」

「私も現場に向かうわね。」

 

よく分からないですけど非常事態みたいで、私、クロノ、リンディさん、寝起きらしいアルフも合流してアースラの転送ポートに向かいます。

 

転送ポートの前は武装した武装隊のみんながもう集まっていて、私達はその一番前に出て転移してくる何かを待ちます。ポーターも作動状態でいつ出てきてもおかしくなさそう………

 

『転移5秒前……4……3……2……1……0、来ます!』

 

エイミィのカウントダウンと共にポーターの光が強くなり、一際大きく光ったかと思った瞬間。光の中で何かがドサッと倒れる音が聞こえました。そして光が消えた中心には

 

「「『「ぇ………?」』」」

 

信じられない……絶対に有り得ない人がそこに倒れていました。

 

その(女の子)は先日の事件で母、プレシアと共に虚数空間へと消えたアリシア·テスタロッサそのひとだったから




という訳で、少し短めですが今回は終始フェイト目線でストーリー展開してみました!
口調とか変じゃないかな。自信ないです。フェイトのビデオメール並に←←←

ちなみにしばらくなのはは出ないです。たぶん…恐らく…?

駄文ですけど感想、評価など待ってます!


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第8話 海鳴

どうもどうも。相変わらず超亀更新のルイスです。

前話とは打って変わってタイトル通り場所を海鳴りに移して続けていきたいと思います。

ぁ、ずっと言い忘れてましたがside〜 の表記があれば基本そのキャラの視点、無ければ主人公視点です。

ではどうぞ!


「ん………んぅ………」

 

心地よい日差しが頬にあたり、周囲からは鳥のさえずりが聞こえてくる中、私は意識を取り戻しました。

硬い地面の上に仰向けに倒れ込み、ずっと意識を失っていたようです。

 

「ぃつつ………ここは……?」

 

身体中が軋むように痛いですが、とりあえず動くのに支障は無さそうなので起き上がります。

 

「森の中………というのはわかりますが…この感じはミッドでは、なさそうですね」

 

周囲に魔力がほとんど感じられない。そんなことはミッドやその管轄の管理世界ではまず有り得ません。管理世界は少なくとも管理局が関与しているので大なり小なりの魔力が待機から感じられる。それがほとんど無いということはここは管理外世界、ということでしょうが………

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

そう、ここに来るに至るまでの記憶が全くありません。自分の名前はちゃんとわかりますし……クラウスの記憶もちゃんとあります。たくさんの大会に出た記憶もありますが……うーむ、わかりません。

 

「とりあえず、少し歩いてみましょうか」

 

じっとしていても始まらない、そう考えて私は当ても無く歩き始めます。と、その途端、不意に魔力の反応を感知しました。

 

「っ……不自然です。大気からは何も感じられないのに……しかもこの魔力、かなり大きいです。ざっと………AAAクラスと言ったところでしょうか?」

 

ちなみに私の魔力量はAAクラス相当のはずですが……私が自覚するだけでもB程しか感じられません。リンカーコアに損傷でも受けたのでしょうか?そのせいで私の記憶も……?

 

「考えても仕方ありませんね。とりあえずこの魔力の方に行ってみましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

「っ……!」

 

1つの桃色の球体が空を舞い、1つの空き缶をリフティングの要領で連続で打ち上げ。それをそばのベンチに置いてある赤い水晶(レイジングハート)が回数をカウントしています。その数はそろそろ50を超えるところ

 

「アクセルっ!」

 

50を超えたところで桃色の球体、魔力弾に加速をかけていきます。しかし、バランスがなかなか取れず、先程より不安定。何度か落としそうになりながらも続けていきます。

 

「ラスっ…ト!」

 

カウントが100になった所で魔力弾に大きな子を描いて急降下させ、落ちてきた空き缶をゴミ箱に向けてシュート!――――ぁ、外れました。

 

「あちゃぁ……外しちゃった」

 

ガサッ

 

と、その魔力弾から気を離した瞬間。その軌道上の森の中から人が出てきました。

 

『Master!』

 

レイジングハートが警告しましたが、魔力弾の制御は間に合わず……

 

「っ!?危ない!」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

「魔力反応かなり近いですね。っと、森から出ら……れそ……う!?」

 

森の中を歩くこと10分程。魔力反応がかなり近くなり、森も開けてきました。反応を見るところ、このすぐ先に反応の大本がありそうです。

それはいいんですが、森から出た瞬間何故か私に向かって高速の魔力弾が飛んできました。

私は咄嗟に構え、

 

―――覇王旋衝破!

 

その魔力弾をキャッチしました。一瞬遅かったら直撃でした。危なかったです。

 

「ぁ、あのぉ……お怪我はありませんか?」

「大丈夫ですよ。ギリギリでしたが、キャッチ出来たので」

「あ、えっと……これはですね、その……」

 

……?魔法のことを知られたくないのでしょうか?見たところこの世界に魔法文化は無さそうなので無理もないですが……フォローしておきましょう。

 

「このシューターは強度が高いですね。その分制御に苦労している、と言ったところでしょうか?」

「!?」

 

とりあえず魔法のことを知っている風で話しておきます。この子相手の場合その方が都合が良さそうなので。

 

「魔法のこと、知っているんですか?」

「えぇ。知ってますよ。一応ミッド出身なので魔法も使えます、よ!」

 

パキーン

 

話しながらシューターを握る右手に力を入れてリンゴのようにシューターを握り潰しました。

 

「ほぇぇ……ぁ、私高町なのはっていいます。清祥大附属小学校の3年生です」

「私は刹那です。刹那·ストラトス。本名は長いのでこれで覚えてください」

 

自己紹介を終え、なのはと名乗る少女からこの世界の情報を得ることにしました。

それによると、この世界は海鳴市という名前で、私の予想通り魔法文化は皆無。なのはが高い魔力を持っているのはただの偶然のようです。そして先日、ロストロギア(ジュエルシード)をめぐる事件が起きたことも。

そして私の方の情報もわかる範囲で教えておきます。しかし、私の記憶の所々に穴があるので、自分でもわからないところはあるのですが…

 

「じゃあ刹那さんはそのミッドチルダ?出身でなぜ海鳴にいるのかは自分でもわからない、ということですか?」

「そういうことになります。何故かは自分でも分からないですし、心当たりもないので……」

「ぅーん……じゃあしばらくはこっちにいるんですよね?なら、私の家でご飯だけでも食べていきませんか?これからの事はそれから考えても遅くないんじゃないかな……って」

「申し出はありがたいですが……やめておきます。朝イチで娘が見ず知らずの男を連れてくるのは親としてはいい気分では無いでしょうしね」

 

なのはからある程度情報を得たとはいえ、この世界のことは何もわからないし、もちろん食べるものは持っていない私にとってこの申し出はありがたかった。しかし、なのはの家族のことを考えると受ける訳にはいかない、そう思い申し出を辞退。

聞く話によると先の事件の時に親に黙って動いていたこともあったらしく、これ以上ヘタに疑われるようなことをさせるのは気も引けますしね。

私が申し出を辞退すると、なのははじゃあせめておにぎりだけでも、と次の申し出。これ以上初対面のこの子を心配させるわけにもいかないので私もここは折れることにしました。

その後、なのは宅でいくつかのおにぎり(なのはが親に内緒で速攻で作ったらしい)をいつくかもらい、なのはとお別れ。近くの公園のベンチで美味しく頂きました。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

そして時間はすぎていき、もう日は落ちてきて夜となりました。

今日1日海鳴を散策しましたが、なのはの言うようになのは以外の魔力反応はほぼ皆無。疑っていた訳ではありませんが、これで確信しました。

しかし、そうなると困りました。魔法文化がないので別の次元世界との繋がりは当然ありません。つまり、この海鳴がある次元世界が次元の海のどの辺りにあるのかがわかりません。当然転移で近くの世界に飛ぶことも出来ず、食べるものも寝る場所もないというホームレス顔負けのこの現状。

 

「そろそろ朝のおにぎりだけではお腹も空いてきましたし……どうしまs…·ん?」

 

私の目線の先、道路を挟んだ反対側には車椅子に乗ったショートボブの女の子。それだけなら特にどうということは無いのですが、なんなのでしょう。この懐かしいような、禍々しいような違和感は……

と、私が考え込んでいる間に件の車椅子の女の子は交差点で左右確認し、道路を渡ろうとしていました。

 

「ぁっ!」

 

そこで事故発生。車椅子の車輪が歩道と車道の間の段差で滑り、車椅子ごと転倒。女の子は車道の方へ投げ出されてしまいました。

しかも不運なことにその女の子に向かって1台のトラックが猛スピードで近付いてきて……運転手は……船を漕いでませんか!?

 

「っ!烈風脚!」

 

このままではあと数秒もしない間に女の子が轢かれる、そう私は咄嗟に判断して断空を乗せた蹴りで地面を蹴って急加速、一瞬で女の子の下に接近して抱き上げました。しかし、トラックはもう目の前。

 

「断空拳っ!」

 

接触する寸前。左からくるトラックをチラッと見てから私は左脚を軸にして反時計回りに体を捻り、女の子を右手で抱き寄せて庇いながら左手の裏拳でトラックの左側のライト付近を殴り、その反動で私は歩道の方へと吹き飛ぶように待避。地面にぶつかる直前に体勢を変えて私が女の子のクッション代わりになるようにしました。もちろん障壁魔法の応用で体にかかる衝撃を和らげるのもわすれません。

ちなみにトラックの方はぶつかる直前に意識が戻って避けようとしたのか、それとも私がぶん殴った衝撃なのかはわかりませんが、大きくバランスを崩し、道路のど真ん中で横転していました。

 

「ぃっっ……何とか間に合いました。怪我はないですか?」

「ぁ、ぇっと、その……私は大丈夫なんやけど……」

「あぁ、私なら大丈夫ですよ。鍛えてるのでこう見えて頑丈なんです」

「よ、良かったぁー…ぁ、助けていただき、本当にありがとうございます」

 

女の子は喋りの発音がなのはと比べて独特な印象で、少し不思議な感じでした。

怪我もなさそうで、私の方も大丈夫だと告げると安堵で胸をなでおろし、私の上から降りました。

その後、警察や救急車が来て当然私たち2人とトラックの運転手は搬送。病院からの帰りらしいこの八神はやてという女の子はまた病院戻りや!と残念?そうにしていました。

ちなみにトラックの運転手は横転した時に足を打ったらしく骨折していたそうですが、加害者の方なので自業自得ということにされていました。ま、私が割り込まなかったら死者が出ていた可能性の方が高かったわけですしね。

 

閑話休題

 

所変わってここは病院。こちらの世界の私の情報は何も無いのですが、はやての主治医である石田先生の計らいではやてと1晩入院。怪我は私もはやても無いのですが、念のためということらしいです。私としてはあまり美味しくなかったとはいえ、晩御飯(病院食)にあり付けたのとベッドで寝れるということで、怪我の功名。ぁ、怪我はしてないんですけどね?

 

この時の私と八神はやての出会い……と言うには唐突過ぎるものでしたが、これが私のこれからの人生を大きく変えることになるとは、まだ誰も知らなかったのです。




どうもどうも。相変わらず久々更新が終わりました。

この物語のキーであるはやてがやっと出せました!(ほとんど喋ってませんが)

次あたりから恐らくA’sのアニメ本編に入っていくと思います。タブンネ()


それはそうとFGOのCCCコラボ来ましたねー。私はキャメロットが終わってなかったので大急ぎでストーリーを進めてGWが終わってからやっとイベント参戦。しましたが、大きく遅れた都合上モチベが続かずちまちま素材交換に徹する方向でやってます。
ガシャのメルトリリスは引き当てて初の特殊クラスも出たのでこれはこれで満足かな。今日の17時にくるイシュタルピックアップ!是非当てたいです!
エレシュキガル実装してもいいのよー?

PSO2の方は2年ぶりの7鯖(現在の活動鯖は公式最過疎鯖9鯖)への帰還が今日のメンテで行われる予定です。丁度雨風2017も来るので、エンペ掘りがてら頑張っちゃいます。

更新の方もペース上げていきたいなぁ……と思ってますが、せめて月一以上は更新していきたいです。仕事の都合で週一は厳しくて………申し訳ありません。

では、感想、評価などお待ちしております!
次回も乞うご期待ください!


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第9話 闇の書

どうもお久しぶりです。ルイスです。

相変わらずの亀更新申し訳ありません!

更新ペースを上げたいなぁーと思いつつもリアルの多忙や各種ゲーム、特にそろそろ初めて4年になるPSO2のEP5に備えての準備や多少攻略ペースの落ちたFGO、リリースしたばかりのシンフォギアXD、モンハンXXとやることが多くてですね(言い訳)

そう言えばこの前読み返していて思ったのですが、後書きでなのははしばらく出ませんって言った次の話の冒頭で早速なのは出てましたね。更新前に読み直すの、大事だァ………

という訳で、相変わらずの駄文ですが、どうぞ!そろそろアニメ本編にも追いついてきますよ!


私が海鳴へ(未だに原因は不明ですが)やって来てから1週間ほどが経ち、月も変わり6月3日となりました。

例の交通事故の後、当然のことながら身元不明な私はその時助けた少女、八神はやての主治医の石田先生の計らい(と言うにはしてくれた事が大きすぎるのですが)によってはやての義兄、八神刹那としての籍を取り、八神はやてとの生活が始まった。

 

交通事故から助けただけで特に他の関わりもなかった八神はやてだが、はやては元々独りで生活していたらしく、助けてもらった恩返しとはやての少しのワガママ(やはり9歳のひとり暮らしは寂しかったらしい)で住む場所のない私に住む場所を提供してくれた。

 

はやての義兄という立ち位置になったのは特に深い理由はなく、これもはやてのワガママとその方が手続きが楽だからというはやてと石田先生の利害の一致から、と私は後から聞かされた。私としても別に嫌ではないので快諾したわけですしね。

 

余談ですが、はやての検診ついでに私の記憶がところどころ途切れていることについて調べてもらったところ、外的要因はないとのことで、精神的ななにか──恐らくトラウマか強い後悔だろうとは先生談──が原因で起きた記憶喪失だろうとのこと。

 

と、住む場所と刹那·ストラトス改め八神刹那としての新たな生活が幕を開けた。

 

その直後にわかったことだが、はやても魔力を保有しているということが判明。というのも、私がはやての寝室にお邪魔した際に本棚にあったあるものを見つけてしまったからだ。

 

───ロストロギア·闇の書

 

正式名称夜天の魔導書。古代ベルカでも猛威を奮い、大惨事を引き起こしたロストロギア。

機能はリンカーコアの蒐集とそれによる魔導の行使。魔力を持つ主を求めての無限転生。これだけ聞けばそれほど危険でもないが、蒐集をある一定以上行うと闇の書はほぼ確実に暴走。一定期間蒐集を行わない場合は主の魔力を侵食し、最終的には主を取り込み暴走。つまり、どう転んでも最後には主共々暴走し大規模な破壊をもたらす危険な代物である。そしてその後は新たな主を求めて転生。

 

確かここ最近で最後に起動し暴走した事件は11年前。いつからはやての手元にあったのかは不明ですが、守護騎士がいないところを見るとまだ待機状態ということでしょう。恐らくはやての下半身麻痺はまだ未成熟な内から闇の書………もとい夜天の魔導書の魔力侵食を受けたから、という筋書きが出来そうです。

 

かの古代ベルカでもとある国の王が夜天の魔導書の主となり蒐集を実行。私も守護騎士(ヴォルケンリッター)

とは何度も戦火を交えていますが、結局当時は暴走を止められず、その国は滅び夜天の魔導書は転生しました。それがまさかこんな所で再会するとは…

 

私に海鳴での居場所をくれたはやてへの恩返し(くれたこと自体が恩返しだが)は高くつきそうです。何せ、夜天の魔導書を暴走させずに停止させ、封印する……時空管理局でさえ11年前の闇の書事件の際に成し遂げられなかったことをしないといけないのですから。

そうしないと、私の新しい居場所(海鳴)が消えてしまいますから。

 

っとと、かなり話が脱線しましたね。とまぁ、そんなこんなではやての魔力保有が判明。はやてを初めて見かけた時の違和感の謎も解決。はやて本人にはその事は伝えていませんが、遅かれ早かれ伝えないといけませんね。夜天の魔導書がいつ起動するかわかりませんから。

 

ただ、伝えるタイミングを完璧に失ってしまった感じがあるのでいつ伝えるべきか、と私は()()()()()で考えを巡らせていた、丁度その時。

 

 

「八神君、どうぞー」

 

 

目の前の扉の向こうから私を呼ぶ声。そう、私は今学校にいます。もちろん生徒として。

病気のはやてはともかく、完全な健康体の私が学校に行かないのはおかしいです!と石田先生とはやてに説得され、私立清祥大附属小学校の6年生に転入することになってしまった、というわけです。ちなみに学校がここなのは単に一番近いから、というだけです。

 

どこかで聞いたことのあるような学校名でしたが、きっと気のせいでしょう。

 

「はい!」

 

何はともあれ今から私の紹介をするそうなので呼ばれた声に返事をし、教室に入ります。

 

「八神刹那と言います。よろしくお願いします」

 

簡潔に自己紹介をすると同時に丁寧にお辞儀。ここから私の学生生活が幕を開けた。

 

───その日の夕方。私は学校初日を終えて帰宅しました。

 

「ただ今帰りました」

「ぁ、兄やんおかえりー」

 

リビングに入るとエプロンを着けて車椅子でキッチンをあっちこっちと動き回るはやての姿を発見。

 

「初めての学校、どないやった?友達でけそう?さみしゅうない?」

「まだ初日なのでわかりませんよ。しかし、なかなか楽しめました。何もかもが初めての経験で新鮮で。というか、はやては心配症過ぎますよ?」

「だって気になるんやもん。ほら、私見ての通り不登校やし」

「それはそうですが、病気なので仕方ないですよ。そんなことよりほら、鍋が吹きこぼれそうですよ」

「あっ!っとと、危なかったァ」

 

私が帰ってくるなり目の色を変えて私の元に寄ってくるはやて。気になるのはわかりますが、今は料理の方に集中して欲しいものです。

 

その後、晩ご飯を済ませて私はまだ済んでいない自室の片付け。はやては部屋で読書をするらしいです。ちなみにお風呂はご飯の後にはやてと済ませました。はやてが下半身麻痺なので、私が一緒に入っています。恥ずかしいことこの上ないですが、この際仕方ありません。ちなみに最初にこれを提案してきたのははやてから。

 

「ぁ、そういえば先程石田先生から電話がありましたよ。明日の診察のあとはやての誕生日祝いで一緒に食事しませんかって言ってました」

「石田先生が?」

「はい。明日の診察の時に返事する、と伝えておきました」

「おおきにー。兄やん明日も学校やろ?ほな、その後合流ってことにしよか」

「わかりました。では、私は部屋の片付けしてきますね。今夜のうちに終わらせないと」

「私部屋で本読んどるから何かあったら呼んでぇな」

「そうさせてもらいます」

 

そんなやり取りをすませ、私は自室へ。先日慌てて揃えた家具類や小物類、衣類等々を整理していきます。個人的にはサンドバックくらいは欲しいものですが……まぁ、追々でいいでしょう。

 

「んー!片付けは終わり、ですね。時間は……11時半……もう1度お風呂入って、それから寝ましょうか」

 

片付けを終えてみるとホコリやなんやらで汚れていたので寝る前にもう一風呂入ることに。時間もそれで丁度それくらいで日付も変わりそうですし。

 

ということで再び入浴。1人なのでゆっくり入っていると少し悪寒を感じました。いえ、湯が冷めて物理的に寒い、という訳でなく……こう感覚的に。まるでこれから大きな何かが動き出す、そんな感じの悪寒を感じました。その直後、丁度時間が0時を回った時。

 

「……っ!?」

 

とても大きな魔力の反応を感じ、私は急いで風呂から出て、速攻で体を拭き、頭にタオルを巻きながら2階のはやての部屋へ。そしてはやての部屋の扉を勢いよく開ける、とベッドの上で気絶したはやてとそれを囲む見知らぬ……いえ、よく見知った4人がそこにいました。

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「ん……んぅ?」

 

柔らかいベッドの上で私は目を覚ました。目の前には白い天井、そこそこ広い個室………ここどこ?病院?

 

「私、どうなったんだろう………刹那と一緒に転移して……次元の海の嵐??に巻き込まれて……刹那が私だけ転移させて……っ!?刹那!」

 

とりあえず私の記憶の中にある最後の光景を思い出していきます。私の記憶が途切れる最後の光景、それは私にリンカーコアを半分譲渡した刹那があの嵐???に飲まれて消えるところ。

 

「刹那を探さなきゃ」

 

私はベッドから降りて少し体を動かして問題がないことを確認。問題ないことがわかるとすぐに入院服を脱ぎ捨てて白と水色で彩られた可愛らしいバリアジャケットへと姿を変えました。ついでに私の私服を量子変換して格納することも忘れない。

 

「さて、と。まずはココがどこかわからないと何も始まらないよね……っ!」

 

と、この後のことを考えていると外から人の気配。この部屋に入ってこようとしてるみたい。

とりあえず私は扉の死角に隠れて念の為実体化を解除。姿も消します。丁度そこで扉が開き、医師のような格好の人が入ってきました。私はそのタイミングを見計らって部屋から脱走。

その数秒後からアラームが鳴り始め、周りが慌ただしくなり、廊下に人が増える中、私はどこか外が見える場所を探して走り続けました。

 

(刹那………待ってて!)

 

廊下を走りに走り、右に左にと走ったところで展望室のような場所が見えてきました。

私はそこに入ると非実体化と透明化を解いて外の景色を見て唖然。管理局本局の要塞のような建造物が目の前にあったからです。

だって私たちがいた次元世界は本局からはかなり離れてて、管理局の巡洋艦でも数日は掛かるような距離。それにあそこまで荒れてたんだから少なくとも数日は足止めされてたはず………正確にはわからないけど刹那とはぐれてから1週間は経過してるってのが私がたどり着いた結論。

 

「っ!」

 

と、絶望に浸っているところに魔力反応がしたので、反射的に横にステップ。その瞬間、私がいた場所に帯電したリングバインドが現れ、私が避けたことでリングだけが収縮して消滅。避けたところには追撃とばかりにいつくものチェーンバインド。私は何故か持ってたハイペリオンを刹那が私用に作ってた双銃に変えて何度もバックステップしながら魔力弾を撃って迎撃し、凌ぎきりました。

 

「うっそ………今の全部避けるの!?」

「フェイトのライトニングバインドだけならわかるんだけど、完全に不意打ちだった僕とアルフのチェーンバインドの追撃も……反応速度がスバ抜けて高いんだよ」

 

このバインドの主は当然私を追ってきた管理局の人。そこにいたのはアルフと呼ばれたオレンジの髪で犬耳と尻尾が特徴的な女の人と、ユーノと呼ばれたボブカットの髪に茶色のジャケットとマントの男の子。そしてもう1人は

 

「でも、これで追い詰めたよね 」

 

ジャケットは全く違うけど私にそっくりな見た目をしたフェイトと呼ばれた女の子。

 

「ぇ……わ、私?っ!?」

 

その姿に私が躊躇を見せた瞬間、私の後ろの件の3人が入ってきたところとは逆の通路から入ってきた人のバインドによって私は捕まってしまいました。

 

「ふぅ………ストラグルバインドだ。身体強化も無効化するから抵抗はやめて投降すれば」

「いや、だっ!」

「なっ!?」

 

後ろから現れた黒のジャケットの魔導士から投降を提案されるが、私はそれを拒否して精一杯の脱力。からの刹那御用達のバインドブレイク。身体強化を一切使わず、脱力からの瞬発力だけでバインドを砕く技術。

 

「私は!やらなきゃいけない事があるの!」

 

黒の魔導士が驚くのを傍目に私はその魔導士から距離を取りながら左右から迫る魔導士に銃を向けて牽制。でもどうにもさっきの私と瓜二つの魔導士が気になってしまって集中できない。

 

「なら、私達がそれを手伝うから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃん!!」




アリシアのジャケットはイノセントのそれにスパッツ穿いた状態をイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。

なんとかアニメのところに一瞬だけだけど入れました!後半タイトルと全く関係ないことやってたのは内緒。
ぇ?知ってるって?

次回は…時間を一気に飛ばしてアニメの流れがっつりやっていこうと思います!

ではまた次回!


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第10話 唐突な模擬戦

今回は少しペースあげて投稿できました、ルイスです!

22日、劇場版なのはREFLECTION公開初日に見てきました!初日の2回目の公演だったんですが、狙っていたタオルとメタルブックマーカーは既に売り切れ!
私の演算が間違っていただとぉぉぉ!(某敗者感)

まぁ、劇場版の話はネタバレにも繋がりかねないので控えめにしておきます。


side アリシア

 

お姉ちゃん……?今、お姉ちゃんって言った……?誰が?誰の?私?そんな訳ない。だって私は1人っ子だったんだもん。確かに妹は欲しかったし、それをお母さんに言ったこともあった。あの頃はその手の知識とかは皆無だったからわかんなかったけど、今になってよく考えてみたら無理なお願いだったんだなってよくわかる。だって、あの時のお母さんの表情、今になって思い出してみたらすごく困った感じだったからね。

そうでなくてもここまで私とほとんど年の変わらない妹なんていない。それほ間違いない。

 

「お姉ちゃん……?」

 

私は動揺を隠せずに少しフラ付き、窓際の手すりに体を預けてから思考を巡らせる。フェイトと呼ばれた私そっくりさんが心配そうにこっちに来ようとするけど、足元を魔力弾で撃って牽制。

 

「確かに……私にそっくりだし、端から見たら姉妹なんだろうけど……私に妹なんて居ない!そうやって、私を動揺させる作戦なんでしょ!?」

「っ……そんな、つもりじゃ……」

 

私はさっき考えた結果をありのまま伝える。妹が居ないのは事実だし、そこから導き出せる結論は私の動揺を誘う作戦ってことくらい。

その私のはっきりとした拒絶を受けてフェイトは明らかなショックを受けた様子。でも、すぐに立ち直って真剣な表情を見せてくる。

 

「じゃあ、さ。私と戦おう?」

「「「「は?」」」」

 

つい私、アルフ、ユーノ、黒の魔導士(クロノ)でハモってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

───side フェイト

 

「勝った方は負けた方の言い分を聞くって条件。これでいい?」

「んなっ!はぁぁぁ!!??」

 

私はとっさの思いつきで模擬戦をお姉……じゃなくてアリシアに申し込んでみます。もちろんタダでは受けてくれないと思うから美味しい条件も付けて。………後で口をあんぐりさせて驚いてるクロノには謝っておこう。

 

「……わかった。受ける!」

「ちょ、待ってくれフェイト!勝手に話を進めないでもらえないか!?それも向こうの言うこと次第では僕では手に負えないことになるぞ!」

「大丈夫だよ。それに、なのはから教えてもらったんだ。本気でぶつからなきゃ、分からないこともあるって(それに、私が戦ってる間にお姉……アリシアに関する証拠資料集められるでしょ?だから勝っても負けてもデメリットはほとんど無いはずだよ)」

 

アリシアは了承してくれたけど、当然反対するクロノは私の一言で黙らせておきます。私だって考えがあるんです。

少し前、ジュエルシードを巡って対立していた私となのは。何度も拒絶した私に対してなのはは何度も何度も想いを伝えようとしていた。そして最後の模擬試合ではその思いの差で私はなのはに負けて、そしてなのはを受け入れた。

そんななのはから学んだんだ。本気でぶつかってみなきゃ、伝わらないことだってあるって。なのはには感謝さてもしきれないよ。

ぁ、勝っても負けてもって言ったけどもちろん負けるつもりは無いからね?

 

「んぐ……しかし、僕の一存では「良いんじゃない?」っ!?」

 

それでも必死に反論しようとするクロノ。けど、そこに唐突にクロノの後ろの方から声がして、そっちを見てみるとリンディさんがいました。

 

「お互いにとって悪い話じゃないんじゃない?上手く行けばアリシアさんをこちらで保護できるし、お互い無茶な要求するつもりはないんでしょ?」

「私は、お話聞いてほしいなって思ってます。真実、伝えたいから」

「私はここから解放してほしい!早く刹那を探さないといけないんだ!」

 

……そもそも拘束とかはしてないような?誤解の方も解いておかなきゃかな?にしても、刹那??

 

「艦長まで!?」

 

リンディさんの助太刀で模擬戦はほぼする流れに。あと反対してるのはこの場ではクロノだけになった。

 

「クロノ、ダメ?」

「ぅぐ……ここでダメだって言ったら僕だけが悪者じゃないか」

「じゃあ…?」

 

やった!クロノから許可でた!

でも、クロノの顔、赤くない?風邪でも引いてるのかな。

何はともあれ、模擬戦をする流れに出来て良かったです。

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「模擬戦、かぁ………前は刹那の練習相手よくやってたっけ」

 

てんやわんやで模擬戦をする流れになってしまった私は指定されたアリーナっぽい所の隅で物思いに耽っていました。

刹那は基本私以外は側に居なかったから練習相手は基本的に私かスポーツ用具。私は刹那の中にいた時間も長かったからある程度の覇王流は使うことが出来る。もっとも、刹那のそれとは精度や威力とかが比べ物にならないくらい低いんだけどね。だって私、筋トレとかほとんどしてないし!

でも刹那曰く並レベルの格闘技者相手なら良い勝負できるらしい。したことないけど。

あと、こうも言ってた。私はどちらかと言うと格闘とかの近接戦闘よりは射撃戦向きだって。で、それを聞いて私なりに編み出した答えが格闘と射撃を織り交ぜた中距離のヒットアンドアウェイ。刹那にさえもまだ見せたことのない戦法。いい機会だし、試してみよっと。

 

「お姉………じゃくて、アリシア。もう来てたんだ?」

 

と、そこにフェイトとそれに続いて黒の魔導士(後からクロノって名前だって聞いた。黒の、だけに?とか言ったら怒られた)他アルフ、フェレットもどきことユーノ(クロノ談)、艦長のリンディさん。まだ何人かモニターとかで見てるらしい。

 

「準備って言ってもやること、ストレッチくらいしかないからね。負けないよ、フェイト」

 

そう言って私はアリーナの中央に。

 

「私もだよ、アリシア」

 

フェイトも私から少し離れた場所まで移動し、バルディッシュって名前のデバイスを起動。バリアジャケットの姿になる。私?ずっとバリアジャケット着たままだよ。

 

「2人とも、準備はいいか?」

「「うん!」」

 

私とフェイトが構えたところでクロノから声がかかり、それに返事。もう始まるみたい。

 

「それでは、これよりフェイト·テスタロッサ対アリシア·テスタロッサの模擬戦を始めます!レディ……スタート!」

「テスタロッサ!?」

 

フェイトの姓がテスタロッサって初耳だよ!?

……ってことは……ぇ………えぇ!?私、既に盛大にやらかしちゃっ…た??

 

 

 

 

 

 

───side フェイト

 

「はぁぁ!!」

 

クロノの開始の合図と共に私は一気に急加速して急接近。一瞬でアリシアの懐に飛び込んでサイスフォームの横薙ぎを一閃。入った、と私は確信した。けど、アリシアはそれに反応して見せた。的確なタイミング、的確な判断で持っているデバイスの銃の下についてる刃のような部分で私のバルディッシュの魔力刃を受け止めている。素直に凄いなって思った。だってなのはでも反応出来なかったからね、これ。

でも、そんなアリシア。なんでか分からないけど、やっちゃったぁ……って言うような後悔してるような感じの表情。

 

「どうしたの?まさか今からやっぱり嫌、なんて言わないよね?」

「ぇ?そ、そりゃそう、なんだけど………だぁぁぁぉ!!!」

「ぇ?」

 

止められたあとも何度も何度もサイスフォームでの近接攻撃を続ける。けど、全部的確に防御されてて通らない……のは良いんだけど、なんかいきなり叫び出した。何で???

 

「ぐじぐじ後悔して考えるのはやめやめ!後回し!」

「むしろ、考え事しながらあの反応速度だったことにビックリなんだけど……」

「ごめんね、真剣勝負なのに。でも、今から真面目にやる!」

 

ちょっとアリシアを過小評価しちゃってた私も反省。アリシア、想像以上に強いみたい。

私はサイスフォームの近接攻撃からバックステップを入れて体を捻って一回転。その勢いを乗せて…

 

「アーク…セイバー!!」

 

サイスフォームの魔力刃をブーメランの如く飛ばしました。

 

「ブランニュースター!!!」

 

一方のアリシア。いきなり飛んできた私のアークセイバーを魔力弾の連射で迎撃。アークセイバーの魔力刃は爆散。アリシアの魔力弾は貫通性能があるみたいで()()()()()()()()()地面に着弾。

ちなみに私は爆散したアークセイバーを目眩しにして高速移動でアリシアの背後へ。

 

「っ!?」

 

回ったのはいいんだけど、そこで私が見たのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。不意を付いたはずなのに、逆に不意を付かれてしまいました。そしてその銃からさっきの魔力弾が連射され、私はとっさの防御をするもいくつか被弾。空中へと距離をとって体勢を直します。

 

「アリシア、強いんだね」

「フェイトが弱いんじゃない?」

「酷くない!?」

「じょーだん、だよ!」

 

アリシアは銃を連射しながら接近、私もフォトンランサーで迎撃しながら再び近接攻撃を仕掛けます。さっきのではっきりと分かったんだけど、アリシアは本当に強い。完全に動きが読まれてる……なのはを過小評価するつもりは欠片も無いけど、なのはと戦った時以上に気を引き締めないと、負ける。私はそう心の底から思いました。

 

 

 

 

────side クロノ

 

不本意だが、ほんっとうに不本意だがフェイトに押される形で了承してしまったこの模擬戦。

エイミィに必要な資料は集めさせてるしフェイトが言ったようにフェイトが勝っても負けてもこちらにデメリットはほとんど無い。まぁ、フェイトに負けてほしいとは欠片も思ってないんだが。勝つに越したことはないし、その方がメリットも大きい。

それにしても………

 

「アリシアさん、本当に強いわね」

 

………僕の言おうとしてたことを言おうとしてたタイミングで艦長に言われてしまった。

 

「最初の動きこそ躊躇のようなものがありましたが、さっき何故か叫んでからが凄いですね。なのはすら圧倒したフェイトが完全に押されてる。特にフェイトの不意打ちを完全に読んだあの動き。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような感じでした」

「そうねぇ。そうでなくても射撃の精度、反応速度、どれをとってもフェイトさんと同等かそれ以上じゃないかしら?」

「そして何より実戦経験があります。そっちはアリシアと一緒にいた刹那、と名乗る誰かから調べてもらってます」

 

僕達の知るアリシアはプレシア·テスタロッサの培養機の中で眠るアリシアだけ。今フェイトと戦ってるアリシアがそこから出てきたのか………とも一瞬考えたけど、あれは虚数空間に落ちたからまずありえない。その当たり、後で詳しく聞く必要がありそうだ。

 

「ちなみにクロノは刹那、から連想するものは何かあるかしら?」

「やはり世代最強の格闘技者、刹那·ストラトスくらいでしょう」

「誰さ、その刹那·ストラトスっての」

 

僕と艦長で考察をしていると、そこにアルフが話しかけてくる。

 

「時の庭園と地球にずっといたアルフが知らないのも無理ない。年齢12歳にしてU-23までの全てのランキングの王者で史上最年少で今年のインターミドル·チャンピオンシップ、DSAAを制覇した格闘技者だよ」

「よくわかんないや」

「簡単に言うと、今いる全ての格闘技者の中で最強の称号を持つ魔導士ってことだ」

「へぇー………ん?もしあのアリシア(ちびっ子)がその関係者なら」

「あの強さにも納得がいく。まぁ、推測の域を出ないけどね」

 

と、色々考えては見るものの、根拠に乏しい。模擬戦の後で聞いてみる必要かありそうだな。

 

 

ドォォォォォォン

 

 

丁度そこで大きな爆発音。僕達は模擬戦の方へと意識を戻した。




最近思うのですが、私のこの作品は3000~4500字程度を目安にして書いてるんですが、ボリューム的にどうなんでしょう?感想のところに書いてくれれば嬉しいです!

それと相変わらず戦闘描写難しいです。

それは置いておいて、PSO2でついにヒーロー含めEP5実装!さっそくヒーローを75にしてきました(SPオーダーはこれから)
ストーリーもこれからに期待な展開で満足です。
強いて言うなら、マルチがヒーロー以外お断りな風潮にならないか心配ってくらいですねぇ。賛否両論ありますが、ヒーローは強すぎるので。

ちなみにアリシアが使ったブランニュースター。ヒーローの使うTMGのPAそのままです!アリシアは肉弾戦もするヒーローっぽい立ち回りをイメージしてやっていこうと思ってます。
innocentのアリシアとは似て非なるもの、あくまでinnocentのアリシアベースですが、中身は別人って思ってくれればわかりやすいかと。タグも増やしていかないとなぁー。

では、また次話で!


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第11話 決着と真実

そう言えば前々話の後書きでアニメの流れに入るって言ってたっけ?あれは嘘だ()

ごめんなさい。やろうとしたのですが純粋にそこまで行きませんでした!文字数がいい感じになってしまって

今回も行かないと思います(タブンネ)。もうちょいアリシアサイドのストーリーです!

どこかで刹那やアリシアの簡単なプロフィールでも書いてみようかな?とか考えてます。後書きとかかな?


───side アリシア

 

私とフェイトは何度も武器を切り結び、何度も射撃を撃っては避け、撃っては相殺、撃っては撃ち落とし……と決定打に欠ける戦闘を繰り広げています。撃ってばっかだね……仕方ないじゃん。射撃寄りなんだもん、私!

フェイトは高速機動の近接戦闘タイプで私は同じく高速機動の射撃タイプ。そりゃあなかなか一撃さえ入れれないわけだ。

私の場合、対近接は刹那で散々やったから慣れてるし!

でも、フェイトも射撃への対応に慣れるの早い……もしかして経験が既にある……?

 

(フェイト、強いなぁ……刹那しか相手したことないけど、同年代ならそこそこ行けるって思ってたんだけどね)

 

フェイトの斧(バルディッシュって名前らしい)の振り下ろしを私の銃に付いた刃で弾いて魔力弾で牽制。この至近距離でも射撃がなかなか当たらない。

 

「(こうなったら、出し惜しみは無しでいこう!)ハイペリオン!!」

〈Get set〉

「ライトニングバズーカっ!!」

 

一旦距離を離して砲撃。これなら!と思ったのも束の間。フェイトの砲撃によって相殺されてしまった。

 

 

 

 

 

 

───side フェイト

 

(お姉ちゃん……強い……射撃寄りのスタイルなのに近接攻撃の対処が的確だ)

 

私は今絶賛戸惑っています。というのも、私の射撃は兎も角、自慢の高速機動からの近接攻撃が1度もクリーンヒットを与えれていないから。同じく射砲撃型のなのは相手の時でもこうはいかなかった。なのはとはまた違った強さがあるな、と改めて実感。

とは言っても、お姉ちゃんの方もクリーンヒットをできてないのは同じ。勝負は五分五分。一撃さえ入れれば勝機は見える!

 

「バルディッシュ!」

〈Get set〉

「サンダー……スマッシャぁぁぁぁ!!!」

 

私はお姉ちゃんが距離をとったタイミングで即座に砲撃をチャージ、発射。砲撃はお姉ちゃんの砲撃で相殺されたけど、想定内。相殺したことで発生した爆煙を目隠しにして私は得意の広範囲魔法の準備に

 

「でやぁぁぁぁぁ!!!」

「っ!?」

 

入ろうとしたところで片手に剣を構えたお姉ちゃんが煙を正面から突っ切って来た。もちろん剣での攻撃はバルディッシュで防がせてもらったけど、範囲攻撃魔法の準備が止まってしまう。

 

「覇王流…」

「……っ!?」

 

足元に三角形の魔法陣が浮かび上がる。それと同時に私の背筋に寒気が走った。そのせいで今私が下から顎をかち上げるようにして食らった一撃……サマーソルトを認識出来なかった。

 

(ぁ……これ、マズい…)

 

意識が朦朧としてきて目もチカチカしてきた。もちろんお姉ちゃんがどこにいるのかもわからない……

 

(私がお姉ちゃんなら………こういう時…)

 

と、その時。自分で意識したわけではない。無意識でバルディッシュをサイスフォームにしてノールックで後ろに一振り。

 

「なっ!?」

 

私の背後からお姉ちゃんの声と、背中にデバイスの銃口が押し当てられてゼロ距離射撃を食らった感触と同時に、バルディッシュがお姉ちゃんを捉えた手応えが伝わってきて、そこで私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

「んっ……んぅ?」

 

私が目覚めたのはベッドの上………ではなくさっきのアリーナの隅だった。頭の下には何かぷにぷにしたものが……

 

「ぁ、起きた?大丈夫?痛くない?」

 

そして目の前にはお姉ちゃん……·もといアリシアの顔。膝枕されてたみたい…少し恥ずかしいな。

 

「お姉……アリシア?」

「いいよ、お姉ちゃんで」

「ぇ?」

「すまない、フェイトが寝ている間に全て話したんだ」

 

と、そこにクロノ。全てってことは……お母さんのことも、かな。よく見たらお姉ちゃんの目が赤い………いや、瞳は元々赤いけど、そうじゃなくて充血してる。きっとさっきまで泣いてたんだ。

 

「フェイトは……唯一無二の家族、だから。……せめて、ママの最期……立ち合いたかったな…」

 

また泣きそうな顔をするお姉ちゃん。でも、もう涙も枯れちゃったのか、涙は出てこない。

 

「ママがいなくなって、刹那までいなくなって……私、もうフェイトしか、いないんだ」

「と、そうだ。聞き忘れていたんだが、その刹那っていうのはこの刹那·ストラトスのことか?」

 

クロノがモニターを出して1人の男の子……だよね?髪長いけど。の写真を出す。見覚えは……うん、全くない。

 

「そうだよ、刹那はその刹那だよ。私の、家族……だった。死んだ私を助けてくれて、今まで一緒にいて、最期は……私を護って次元の嵐に飲み込まれたの」

「あの次元震の余波の時か………言い方は悪いけど、運が無かった……」

「ぁ、あのぉ……?」

 

そろそろ頭の中に?マークが大量生産されてきたので蹴られて痛い顎(湿布がはられてた)を擦りながら起き上がる。

 

「気になってたんだけど、その刹那って………誰?」

「あぁ、そうだな。ずっと海鳴と時の庭園にいたフェイトが知らないのも無理はない。彼は覇王流(カイザーアーツ)という古代ベルカ武術の使い手で通称修羅の覇王、もしくは世代最強の格闘技者だ」

「ぇっと……?」

「簡単に言うと、もっのすごく強い私の幼馴染みだよ」

 

私の疑問にクロノが答えてくれる。で、それにお姉ちゃんが補足。ぁ、ということは……

 

「私が最後に使ったヤツも覇王流が1つ。旋風脚。要は断空を乗せた蹴りだね。刹那から私が勝手に学んだ技の1つだよ。ぁ、断空っていうのは足先から練り上げた力のことね」

「刹那のものほど強くないそうだが、それでもフェイトの意識を一撃で刈り取るとは……恐れ入るしかないな」

「え”……」

 

劣化版であの威力って……·本家はどれだけなの!?

 

「んーと、フェイトと同じようにモロに直撃したら……たぶん歯が半分は折れる?」

「で、済めばいいがな。顎の骨の方が心配だ」

「荒れてた時期に大会で何人も病院送ったからねぇ………」

 

………絶対に敵対したくない、と心底思いました。というかお姉ちゃん!?心読まないで!?

 

「そう言えば、そんなニュースを見たことがある。今の話を聞く限り……荒れた理由は(アリシア)が死んだと思い込んだから、かな」

「ぁ、そう言えばなんでお姉ちゃん生きてるの?確かお母さんと一緒に虚数空間に落ちたはずじゃ………?」

 

模擬戦とかいろいろで忘れてたけど、今のクロノの言葉で思い出しました。確かに私はこの目で見た。お母さんと一緒に虚数空間に落ちるお姉ちゃんの入った培養機を。

 

「私?生きてないよ?ちゃんと死んでるよ?」

「ちゃんと死んでるってのもおかしな表現だと思うのだが………」

「むしろネタにしてる言い方……·」

 

お姉ちゃんのメンタルの強さにビックリです。

 

「刹那の稀少技能(レアスキル)だと思うんだけどね。それで私が本当に死んじゃう前に意識だけ取り込んだみたい。だから今の私は有り体に言ったら成仏できてない幽霊みたいなものだよ」

「本当に死んじゃう??」

「少し難しい話になるんだが、人は心肺が止まっても少しの間は脳は生きているんだ。そのラグの間で取り込まれたってことかな」

「難しい話はよくわかんないけど、そうだと思うよ」

 

んーと、つまりお母さんと一緒に虚数空間に消えたのは今のお姉ちゃんの体だけで、今目の前にいるのは意識だけ………実体があるのは魔法で作ってるから……かな。

 

「なるほど……それでか。しかし、刹那に関しては………現状はどうすることも……むしろ生きている可能性はほとんど」

「そんなことない!私がなんとしても探す!刹那は絶対に生きてる!」

 

実際、次元空間に落ちた場合、アルフの時みたいにアルフみたいに転移で避難はできる。けど、それが荒れ狂う次元空間であったのなら話は別。

後からクロノに聞いたんだけど、なのはの世界の海、あれが大荒れになった時に生身で泳ぐ様な状況に刹那って人が巻き込まれたらしい。

 

「お姉ちゃん………」

「ぇ……?」

 

気が付いたら、私はお姉ちゃんを抱き締めてました。体格が私よりも小柄だから抱き締めやすいな

 

「私がいるよ。私が一緒に刹那を探すよ」

「っ………フェイト……うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

しばらくの間、お姉ちゃんは私の腕の中で大泣きに泣いていました。クロノも空気を読んで、気付いたらアリーナから出て行っていた。

これも後から知ったことなんだけど、クロノが秘密裏に刹那の情報を探してくれることになったんだって。

 

ちなみにこの後、私は管理局の嘱託魔導士として登録し、クロノと一緒に行動しながら刹那の情報を探すことになりました。ちなみにフェイトも半年後の最後の裁判が終わってから登録するらしい。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

約半年後 12月1日深夜

 

───side 刹那

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

海鳴のオフィス街。そこの路地裏に私はいました。そして目の前には倒れた数人の管理局の局員。

 

「雑魚いな……こんなんじゃ、大した足しにもならないだろうけど」

 

私の隣にいる赤いゴスロリ風のジャケットを纏い、髪をおさげに編んだ少女が口を開きました。同時にその局員に向けて持っていた分厚い本を向けます。すると、その本は自ら浮遊し禍々しく光りながらページを開きました。

それと同時に倒れていた局員が苦しそうな呻き声をあげ、体から光る物が浮かび上がります。

 

──リンカーコア。生物の持つ魔力の源。

 

「お前らの魔力、闇の書の餌だ」

「うぁぁっ、がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そこでその本の光が強くなったかと思うと、局員数名は完全に意識を失いました。

 

「ヴィータ、どうですか?」

「んー、ざっと24ページってとこかな。1人辺り大体8ページってところ」

 

その少女(ヴィータ)と私は武装形態を解除して私服になり、何食わぬ顔で路地裏から表通りに出ました。

 

「少ないですね………(なのはのを蒐集出来れば20ページは行けるのですが…これは可能な限り避けなければ)」

 

今私達がやっているのは闇の書……もとい夜天の魔導書の魔力蒐集。海鳴で局員の反応があったので奇襲してリンカーコアを蒐集させてもらいました。もちろん完全には奪わず、回復できるレベルに残してあるので命に別状はありません。

しかし、その効率の悪いこと悪いこと。もっとも、別の次元世界の魔導生物だと図体ばかりでかくて1ページ、ということもザラなのでだいぶんマシなほうです。

ちなみに最初に蒐集したのは私自身の魔力。私自ら望んで捧げました。

 

「魔力が減った兄ちゃんの蒐集しても14ページだったんだけどなぁ……ホントに大丈夫だったのか?無理してない?」

「大丈夫です。何度も言ってますが、あれは同情とか哀れみではありません。はやてを助けたい、それに尽きます」

 

本心を言えばさらにその先、夜天の魔導書の封印というゴールもありますが、そこは伏せておきます。だって、夜天の魔導書を封印すればヴィータ達は消えてしまうから…

もちろん消えないで済む方法は模索しているところです。

 

「っと、シグナムから通信だ。んー?どうした?………了解、今からそっちに送る」

「シグナム、何と?」

「向こうでも魔導生物討伐に目処がたったってさ。今日はこれで引き上げるから闇の書を送ってくれって」

「シグナムの言う目処………屍の山な気がします」

「ははっ。ちげぇねぇや」

 

2人で笑いながら夜天の魔導書をシグナムの元へ転送。

 

「さて、私達も帰りましょう。何か飲みますか?」

「飲む!」

 

それから私は近くの自販機でスポーツドリンクを買い、家へと帰宅しました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、夕方頃

 

───side はやて

 

私は今海鳴の図書館に来ています。目的はもちろん本や。そりゃあここ、図書館やしな。

 

「この前の本、どこやったかなぁ……」

 

本を探して本棚の間を行ったり来たり。ぁ、あった!

 

「………のは、ええんやけど………」

 

位置が高い!この前あんなに高ぉなかったよ!?誰や変な場所に入れたの!!

 

「んっ…」

 

手を伸ばしてみても……ダメや………届かへん

 

「んっ!んーーーー!!!」

 

それでも諦められず、必死に手を伸ばし続け……てはみるんやけど……全然届かへん。

と、そこに横から手が伸びてきてその本をひょいと取りました。

 

「これ、ですか?」

「はい、ありがとぉございます」

 

その子はその本を私に渡してくれました。その後、私はその子としばらくの間テーブルお話をすることに。

 

「そっかぁ、同い年なんだ」

「せや、時々ここで見かけてたんよ?ぁ、同い年くらいの子やって」

「実は私も」

 

私はこんな足やから趣味と言える趣味は家事を除いたら読書くらい。図書館に来る頻度は…かなり多い。この子も読書って趣味は同じやんやろうな、2日に1回は見かけるんよ。

 

「ぇと、私月村すずか」

「すずかちゃん。八神はやていいます」

「はやてちゃん」

 

ここですずかちゃんの方から自己紹介。そう言えばまだやった。

 

「平仮名ではやて、変な名前やろ?兄やんは可愛いって言ってくれるんやけど……」

「お兄さんの言う通りだよ、綺麗な名前だと思うし可愛いよ?」

「ありがとぉ」

 

それからしばらく話したあと、すずかちゃんに車椅子を押してもらって外へ……出ようとしたところで入口のところに人影が。

グレーのコートにショートボブの金髪。20歳くらいに見える女性。シャマルや!

 

「ありがと、すずかちゃん。ここでえぇよ? 」

「うん、それじゃ」

 

すずかちゃんは車椅子に掛けていたカバンを取り、押すのをやめる。

 

「お話してくれておおきに。ありがとぉな」

「うん、またね、はやてちゃん」

 

そう言い残してすずかちゃんは帰っていきました。

そこからはシャマルに車椅子を押してもらって外へ。

 

「はやてちゃん、寒くないですか?」

「うん、平気。シャマルも寒ない?」

「私は全然」

 

そんな会話を交わしながら駐車場へと差し掛かったところで駐車場のど真ん中に2つの人影。1つは学校帰りの兄やん!もう1つはピンクのポニーテールを黄色のリボンで括り、白のコートを着て紫のマフラーを巻いたシャマルくらいの年齢の女性。

 

「シグナム!兄やん!」

「はい」

「先ほど、そこで合流しまして」

 

でもなんで駐車場のど真ん中なんやろ?まぁ、気にせんとこ。

 

「晩ご飯、シグナムとシャマル、兄やんは何食べたい?」

「あぁ、そうですね。悩みます」

「はやてのおまかせコース、ではダメですか?」

「スーパーで材料見ながら考えましょうか」

「うん、せやね」

 

兄やん完全に考えるの放棄しとるやろ!それでも作るの手伝ってくれるから許すんやけど!

 

「そう言えば、ヴィータは今日もどこかお出かけ?」

「あぁー、えっと…そうですね」

「外で遊び歩いているようですが、ザフィーラが着いていますのであまり心配はいらないですよ」

「そうか?」

 

ヴィータは遊びたい年頃やからなー。それにザフィーラもいるのならシグナムの言う通り、心配は無用やな。兄やんもなんやニコニコしとるし。

 

「でも、少し距離が離れても私達はずっとあなたのそばに居ますよ」

「はい、我らはずっと、あなたのそばに」

 

今まで1人っきりで、半年前にそこに兄やんが加わって、それからすぐにシグナム、シャマル、ヴィータにザフィーラも加わって………こんなに嬉しいことはあらへん。シャマルとシグナムの言葉で私はそれを実感しました。

 

「それに、血は繋がってませんが義兄として私もいます。絶対にはやてを1人にはしませんよ」

「うん、ありがとぉ」

 

不意に兄やんに頭を撫でられ、少しじーんと来ました。私はもう1人やない。こんなに嬉しいことはあらへんのや。




後半やっとアニメに本格的に合流できました!
次回はお察しの通りあの展開です!

そして更新ペース、少し上げれました!やっほぉー!


………コホン。では、とりあえずで前書きで言ったように現時点での刹那のプロフでも書きますね!次回でアリシアやります!

名前 刹那·ストラトス(地球では八神刹那)
年齢 12歳(清祥大学付属小学校6年)
魔力量 AA+相当→B(アリシアに譲渡した影響)
魔法系統 古代ベルカ式
特徴 碧色の髪をうなじあたりで纏めている(イメージはFGOの新宿版アルトリア·オルタやISのシャル)
身長はクロノより少し高い程度。
見た目はスラっとしているが、鍛えているので筋肉は多い。ザフィーラほどあからさまにそうではないが。
右目が紫、左目が蒼のオッドアイ。以前は普段は両方紫で覇王流を使う時のみオッドアイだったが、今では普段からこう。
丁寧語で喋るのがクセ。一人称も私。中性的な見た目と合わさってよく女性と間違われるが、れっきとした男性。
使用魔法 主に身体強化や覇王流、その派生のみ。あと飛行魔法も使えるが、基本は空中に魔法陣で足場を作り、跳躍という移動方法をとっている。
主な使用技
①覇王断空拳 断空を拳から打ち出す覇王流の基本技。
②爆砕棍、旋風脚 断空拳の派生技。爆砕棍がラリアットで旋風脚が蹴り。
③崩雷 断空を乗せた肘打ち。カウンターでよく使う。
④旋衝破 本来は自分に飛んでくる魔力弾を掴んで受け止め、投げ返す技だが、刹那は自身に飛んでくるものは基本なんでも投げ返す。
⑤アンチェインナックル 別名繋がれぬ拳。バインドに掛けられてもそれを即時に破壊する技。魔力を一切使わない身体能力のみでの技のため、ストラグルバインドでも砕ける。
⑥覇王岩砕 震脚で複数の岩を浮かべ、それに魔力を付加して飛ばす。岩は爆破させて目眩しに使う他、ぶつけて攻撃することも可能。刹那の数少ない中~遠距離攻撃。



………こんなかな?
では次回でまた会いましょー!


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第12話 突然の邂逅

お気に入り100件!こんな駄文をお気に入りにしてくれる人がいて私は嬉しいです!

前置きはさておき、今回の後書きでアリシアのプロフィール書きますね。ちなみに原作既存のキャラは書かない予定です。オリジナルの子は出して数話くらいしてからその時点での設定書いていこうかな、と。
設定も変わればその時にまた書き直します。(だいぶん先ですがStS変の時とか)


───12月2日 19:40 八神家

 

「シグナム、紅茶は飲みますか?」

 

はやてとシャマルがキッチンで夕食の調理する間、私はシグナムと2人でベランダに。ちなみにシャマルは調理が壊滅的なのでシグナムから切ったりするだけ、と強く念を入れられている。

 

「いただきます」

「熱いので気をつけてくださいね」

 

シグナムは私から紅茶の入ったティーカップを受け取り、早速1口。

 

「美味しいです。寒いこの時期に丁度良いですね」

「紅茶が美味しいと気分もいいですからね。レモンかミルクは?」

「いえ、今回はストレートでいただきます」

 

美味しい紅茶を飲み、体を温めます。自慢ではないですが紅茶には少し自信があって、はやてを始めみんなから好評だったりしています。ちなみに茶葉はなのはの家の喫茶『翠屋』で買ったものです。

シグナムは今日は普段はミルクやレモンを使うことが多いのですが、今夜はストレートでいくようです。ロシアでは紅茶にジャムを入れる文化もある、と聞いたことはありますが、試したことはありません。

 

「ヴィータは蒐集に?」

「えぇ。先も言ったようにザフィーラも一緒です。心配はないと思いますが………」

「様子、見に行きますか?」

「そうですね。これをいただいてから、で」

 

私も特段心配はしていませんが………万が一なのはと鉢合わせたら………と思うと心配で。ヴィータが負けることはないでしょうが、ヴィータは少々怒りっぽいところがあってやりすぎることがあるので、そちらが心配。

 

「はやて、シグナムと一緒にヴィータの様子を見てきますね。そろそろ晩ご飯なので」

「はいなー。丁度頼も思てたから助かるわ」

「シャマル、お前は主のそばにいろ。何も無いとは思うがな」

「わかったわ、シグナム」

 

私とシグナムは紅茶を飲み干してから、様子を見に行くことを告げてから外へ。

結界が張られたのを感じたので、外に出るとすぐに武装形態になり、空へ上がりました。

 

「結界………ということは?」

「恐らくこの間言っていた大物を見つけたのでしょう。並の魔導士ならともかく、大物なら結界を張った方がいいですから」

「でしょうね………(なのは…)」

 

普段の戦闘ならすぐ終わるので目立たずに終わらせられます。が、大物(恐らくなのは)相手の場合はそうはいかない。となると結界を張る必要があります。特になのはの場合砲撃をよくぶっぱなすので余計に。

 

「急ぎましょう。管理局も結界まで張れば位置の特定はすぐしてきます」

「そうですね。数で押されればザフィーラがいるとはいえヴィータと言えども……」

「置いていかれないようにしてくださいね、シグナム」

 

私はバック宙し、後ろに魔法陣を展開。それに水泳のターンの要領で両足を揃えて力を溜めます。

 

「旋風脚っ!」

 

そしてその魔法陣を断空を乗せた蹴りで勢いをつけてスタートダッシュ。普通に飛ぶよりこの方がスピードを出せるしその気になれば小回りもきくので私はよく使っています。

 

「ふっ……誰にものを言っている?私はヴォルケンリッターが烈火の将シグナムだぞ?」

「そうでしたね、すみません」

 

高速で飛ぶ私に易々と追いつくシグナム。さすが烈火の将、伊達ではありませんね。

そして飛ぶこと数分。私達が結界の元に辿り着くより少し早く転移の反応がしました。

 

「先を越されましたか」

「意外と早かったですね」

 

私達は結界の中へ侵入し、手近なビルの上へ。そこからは金髪の魔導士とその使い魔らしきオレンジの魔導士の計3人と交戦し、苦戦するヴィータ。近くのビルの上には負傷したなのはともう1人別の魔導士。ザフィーラとは別行動だったようで、まだ援護は来てません。

 

「やはり……ん?」

 

と、戦闘の様子を見ていると近くの道路に見覚えがある物が落ちていました。

 

「これは………ヴィータの帽子ですね」

「それを壊されて頭に来た……が、援軍が来て苦戦している、といったところか」

 

私はそれを手に取り修復。シグナムに手渡しました。

 

「シグナム、ヴィータの援護ついでに返してあげてください。その間あの魔導士3人は私が相手を………いえ、使い魔はザフィーラに任せましょう」

 

私が3人を相手にしようとしたところで後ろに誰か着地。すぐそれがザフィーラだとわかると作戦を変更。

 

「シグナム、ヴィータの回復と援護を。そのあと金髪の魔導士の黒い方を頼みます。見たところ近接型なのでシグナムが相手をした方がいいでしょう」

「射撃型は刹那では厳しいのではないか?」

「いえ、問題ありません。取っておきがあるので。では2人とも、任せましたよ」

「承知した(心得た)」

 

私は上、シグナムは下、ザフィーラは側面へ回り込んで作戦開始。

丁度ヴィータはバインドにかかって動きを止められていました。私は私の遥か真下の地面から急上昇するシグナムとアイコンタクト。

 

「はぁぁ!!」

 

シグナムが金髪の黒い方に不意打ちで斬り掛かると同時にその横の白い方の魔導士へ上からかかと落とし。双方防御されましたが、ヴィータから突き放すことに成功。

 

「シグナムと……兄ちゃん!」

「うぉぉぉぉぁぁぁぁ!!!」

 

一瞬遅れてザフィーラも使い魔らしき魔導士へと不意打ち。作戦通り。

 

「シグナム、ヴィータを頼みます。覇王……断空拳っ!」

 

私は即座に魔法陣を展開、それを蹴って加速。まずは黒い方へ。

 

「っ!?」

 

一瞬で懐へ入り一撃入れ……たはずでしたが、まさか金髪の黒い方はそれに反応。デバイスの斧の柄で受け止めました。が、私の断空拳はそれを叩き折り、その勢いで一回転。遠心力を乗せて右腕を振りかぶり

 

「爆砕棍っ!!」

 

今度はラリアットを振り下ろします。

 

「フェイトっ!!」

 

が、今度は白い方が間に割って入り、腕をクロスして防御。

 

「っ!刹n」

「らぁぁぁぁ!!!」

 

それも私には関係ありません。フェイトと呼ばれた金髪の黒い方を巻き込ませて白い方を真下のビルへと叩き落としました。

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

───時は少し遡り刹那とシグナムが紅茶を飲んでいるのと同時刻

 

今私達のいるアースラ内は慌ただしい空気に包まれていました。というのも、つい1時間くらい前にフェイトの裁判が全て終わりなのはに連絡を取ろうとしたところ、まさかそれが通じず、なのはがいるであろう当たりに広域結界が展開されていたからです。

 

ちなみにフェイトの判決は事前の想定通り保護観察処分と嘱託魔導士として管理局への従事ということで事実上無罪。

 

閑話休題

 

私とフェイトは今アースラの転送ポート前で座って待機しています。

 

「なのは………」

 

なのはと仲のいいフェイトは気が気じゃないのか、震えながら誰が見ても心配で仕方がないオーラを出しています。私は膝の上でプルプル震えてるフェイトの手に私の手を重ね、肩と肩が当たるくらいまで寄り添います。

 

「なのはは大丈夫だよ。だって、フェイトの友達でしょ?それに、なのはは強いもん」

「お姉ちゃん……」

 

フェイトの震えが収まった丁度その時。クロノとユーノ、アルフがこちらにやって来ました。結界の解析が終わったのかな?

 

「お待たせ、やっと結界の解析がある程度終わった。本来なら武装隊も送り込みたいが、結界が複雑だから君達を送るだけで精一杯になりそうだ」

「クロすけはどうするの?」

「僕はこっちで犯人の特定を急ぐ。現場は任せたぞ?………あと、その呼び方は辞めてくれと何度も言ってるだろ、アリシア」

「現場は任せて。でも嫌」

 

とりあえずクロすけ呼びをやめる気は無いからクロすけのリクエストは一蹴しておいて転送準備。だって可愛いじゃん?クロすけって

 

「……まぁ、いい。すぐにでも転送するよ。現場の指揮はアリシア、君に任せる」

「わかった。じゃあアルフだけは少し離れた場所に送って。犯人が何人いるかわからないからそこから状況を見て援護。フェイトとユーノは私と一緒になのはの援護及び救助!」

「「「了解!」」」

 

現場の指揮を任され、早速現場配置の指示。それと同時に指示した場所へ転送。

 

転送された瞬間、負傷したなのはに向かってハンマーらしきデバイスを振りかぶる今回の襲撃犯と思われる赤いゴスロリの少女。それを確認した時には既にフェイトは飛び出し、なのはを守っていた。

 

「ごめんなのは、遅くなった」

 

なのはと付き合いのあるユーノもすぐになのはの側へ。

 

「私達が来たからには、もう大丈夫だよ!」

 

私もなのはの側へ行って安心させる。

 

「ユーノ君……アリシアちゃん……?」

 

もちろん私となのはちゃんは直接の面識はない。けど、フェイトがやってるビデオメールでのやりとりで紹介してもらってるから知らない仲じゃない。

ちなみに紹介してもらったビデオメールの返信でものすっごい驚かれてた。まぁそりゃ、フェイトと一緒に見たもんね、私がママと一緒に虚数空間に落ちるところ。

 

「っ……仲間、か」

 

フェイトと鍔迫り合いをしていた赤い子はフェイトから一旦距離をとる。私はそのタイミングでフェイトの隣へ行き

 

「「友達だ!」」

 

フェイトはバルディッシュをサイスフォームに変形、私は銃形態を対峙している魔導士に向けました。

 

「ちぃっ……!」

「民間人への魔法攻撃…軽犯罪では済まない罪だ」

 

……親友のなのはが襲われたとあって、やっぱりフェイト怒ってる。普段おとなしいだけにちょっと怖いな。

 

「何だてめぇら。管理局の魔導士か?」

「時空管理局嘱託魔導士。フェイト·テスタロッサ」

「同じくアリシア·テスタロッサ。抵抗さえしなければ、弁護の機会がまだあるよ。同意するなら武装の解除を「誰がするかよっ!」……ですよねぇ…っ!」

 

とりあえずダメ元で投降を呼び掛けるけど、案の定失敗。赤い女の子は外へ飛んで逃げる。私が咄嗟に魔力弾を撃って牽制するけど効果無し。こりゃ、完全に交戦するしかなさそう。

 

「ユーノ、なのはをお願いね。フェイトは前衛、好きに動いて!私が合わせて援護する!」

「「了解!」」

 

簡単に指示を飛ばし、私とフェイトは外へ。念話でアルフへの指示も忘れない。と言っても、状況見て援護して、だけだけど。

で、外に出てみると件の女の子は上空で魔法陣を展開してた。あの魔法陣は……刹那と同じベルカ式!?

 

「やぁぁ!」

 

フェイトがバルディッシュの魔力刃を飛ばすと同時に赤い女の子も鉄球をいくつも出して撃ち出して来た。その双方は互いに交差し、お互いへの直撃コース。

 

「フェイトっ!アルフっ!」

 

フェイトはそれをジグザグに動いてうまく避けるけど、ホーミングがなかなか厄介で振り切れない。そこに私が割り込んで魔力弾を撃ち込んで相殺。フェイトのアークセイバーも障壁で防がれていた。

 

「バリアぁぁぁブレイクっ!!」

 

こっちの動きに注意を取られてきる隙に女の子の死角からアルフの不意打ち。障壁を張られるけど、障壁ごと砕き距離を取る。

けど、女の子はすぐ体勢を立て直して反撃。アルフはシールドを張るけど打撃力が強いのか、バリアごと吹き飛ばされてしまう。

 

(やっぱり………近接戦闘になったらこっちが不利。なら、近接戦闘はフェイトだけに任せてアルフはバインドの拘束に専念してもらおう)

 

ベルカ式を使う魔導士は刹那も含めてほとんどが近接戦闘に特化してる。ベルカ式の魔法陣見た時から予想はしてたけど、やっぱりこの子も……

 

「アルフは拘束に専念して!あの子に近接戦闘挑むのはこっちが不利だよ!」

「でも、それじゃあ…」

「フェイトのスピードなら大丈夫。ヒットアンドアウェイで凌げるし、私も援護するから。」

「わかった」

 

アルフにこの後の指示を出してからフェイトと女の子の戦闘の方を見る。フェイトも私と同じこと考えてるのか、何度も何度もぶつかり合いながら隙を見てバインドを狙ってる。

私も射撃で女の子の動きを止めて拘束の援護。

 

「んなろっ……こんのぉ!っ!?」

 

こっちの高速機動のヒットアンドアウェイとバインドに痺れを切らしたのか、まっすぐ突っ込んできた。もちろんこのチャンスを見逃すアルフじゃない。バインドをすかさず掛けて拘束、動きを封じた。

この子が単純で助かったよ。

 

「終わりだね。名前と出身世界、目的を教えて貰うよ」

「ぐぬぬぬ………」

「っ!?なんかやばいよ!フェイト!アリシア!」

 

拘束して私達も安心した次の瞬間だった。フェイトの真下から別の魔導士が現れ、フェイトに斬り掛かる。フェイトはそれを辛うじて防いだけど体勢を崩され、距離を離されてしまう。

 

「なっ!?」

 

フェイトに気を取られたのとほぼ同時。今度は私の真上からまた別の魔導士の打撃が。不意だったこともあって、防御は間に合ったけど私もフェイトの側まで吹き飛ばされてしまう。アルフもまた別の魔導士の不意打ちを受けて落とされる。

 

「覇王……断空拳!」

「っ……フェイト!」

 

次に仕掛けてきたことは私に攻撃してきた魔導士の真っ直ぐな吶喊。体勢を崩された直後のほぼ一瞬と言える懐への接近、からの拳………これって、まさか!?

 

「なっ!?」

 

その拳によってバルディッシュの柄は瞬時に叩き折られ、向こうはというとその反動で体を捻って腕を振り上げる。

 

「フェイト!!」

「爆砕棍!!」

 

案の定、ラリアットに遠心力を乗せた重打撃攻撃。私は咄嗟にフェイトの前に割り込んで腕をクロスして防御。そしてさっき感じた疑惑。これが最も嫌な形で真実となってしまった。そう、この魔導士は私がずっと探していた刹那だったんだ。

 

「刹n」

「はぁぁぁぁ!!」

 

刹那に呼びかけようとしたその瞬間。私とそれに巻き込まれたフェイトは真下のビルの方へと叩き付けられるように落とされた。




やっぱり戦闘って難しいですねぇ………とつくづく思います。まだ続くんですけどね!(白目

もうひとつ思ったのが主人公の刹那より何気にアリシア視点の方が多い気がする(((

とりあえず予告通りアリシアの設定を載せますね

名前 アリシア·テスタロッサ
年齢 10歳
魔力量 A+
魔法系統 ミッド式、古代ベルカ式(覇王流使用時のみ)
特徴 イノセントのアリシアとほぼ同じ。唯一の違いはバリアジャケットの際にスカートの下にスパッツを穿いていること。格闘も使うため、中を見られるのは恥ずかしいとは本人談。
使用魔法 射撃と砲撃がメインで、防御を削って高速機動が出来るなのはといったイメージ。なのはを固定砲台と例えるならアリシアは移動砲台。覇王流が多少使えるので近接戦闘も出来るが、相手が近接特化型でもない限りは自衛か不意打ちにしか使わない。
デバイス ハイペリオン(以前刹那が使っていたもの)。銃形態と剣形態とあるが、前述通り近接戦闘用の剣は自衛か不意打ちのみ。
主な使用技
①ブランニュースター 貫通属性の魔力弾を連射
②ブライトネスエンド 剣で広範囲を薙ぎ払う(現状未使用)
③覇王流各種(刹那の設定参照)
④ライトニングバズーカ アリシアの射砲撃の中で現状最大火力の砲撃。
⑤ソニックムーヴ フェイトのものと同じ


こんな感じかなー。ではまた次回っ!
感想、評価お待ちしています!


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第13話 開戦

お盆の間更新しよう!って思っていた時期が私にもありました。実際書いてはいたんですけどね、更新自体はお盆明け(前話)という。

まぁ、それは置いておいて劇場版の方、先日2回目見てきました!特典のサイン色紙はなのは!もう可愛くて可愛くて(けどごめんなさい、今回のなのはの扱いお察しのアレです)

では本編どうぞ!


───Side アリシア

 

「大丈夫?」

 

刹那に撃墜されてビルの下の方まで落とされた私とフェイトの2人。そこにユーノが来てくれました。なのはには回復と防御の結界を張ってそこにいるように言ったみたい。

 

「うん。ありがとう、ユーノ」

「バルディッシュも………」

「大丈夫。本体は無事」

 

フェイトは柄が真っ2つに折られたバルディッシュを手に取りました。コアは辛うじて無事みたいだけど、かなりボロボロ。フェイトはそのバルディッシュに魔力を与えて修復しました。

 

「アリシアも………あんな打撃をモロに食らって…」

「ぃっっ………なんとか、ね。少し痺れるけど大丈夫」

 

かくいう私もハイペリオンは無傷なんだけど、爆砕棍を腕で受けたせいで少し痺れてきて。むしろギリギリである程度ダメージを受け流せたからこの程度のダメージで済んでる様なものだし。

 

「ユーノ、この結界の中から全員同時に外に転送。いける?」

 

やっぱり、これしかないよね。今の打開策。フェイトに先に言われちゃったけど。数は拮抗してるけど今はなのはを助ける方が優先だし、個々の戦力差がね。

 

「うん、アルフと協力出来れば………なんとか」

「じゃあ、私とフェイトで前衛やるからその間にお願い。アルフもいい?」

「わかった」

『チョイときついけど、何とかするよ』

 

アルフは今戦闘中なのかな。かなり焦ってるような感じ。

 

「フェイトはピンクの人をお願いね。私が緑の人………刹那を止める」

「ぇ?刹那って「それじゃあ、頑張ろう! 」」

 

フェイトが聞き返してきたことに無理矢理重ねて私は飛び立ちます。フェイトとユーノもそれに続いて。

ビルから出たところでこちらを不安そうに見つめてるなのはの姿が目に入ってきて。勝算はほとんど無いけど、とりあえずサムズアップしておきました。

 

───Side out

 

 

 

 

 

 

───Side 刹那

 

「これでよしっと」

 

私は例の2人を撃墜し、ヴィータの元へ。丁度シグナムがヴィータにかかっていたバインドを解除して帽子を返したところでした。

 

「ヴィータ、大丈夫でしたか?」

「あんぐらい、大したことねぇよ」

「良かった。状況は数だけ見れば4対4ですが…どうです?」

「愚問だな。1対1なら我らベルカの騎士に」

「負けはねぇ!」

 

状況を確認した後、私達は各々戦闘に突入していきました。

その中で私が向かったのはすぐ側のビルの上。そこで待っていると案の定金髪の魔導士の白い方がやって来ました。

 

「先程の防御、良い反応でしたよ」

「伊達に鍛えてないからね、私。強くなったでしょ?」

「……?そう言われましても…私達、初対面ですよ?」

「っ!?」

 

私は先程の爆砕棍を防がれたことを素直に賞賛しました。が、この子はここでおかしなこと、あたかも私とこの子が顔見知りなような事を言ってきました。もちろん私はそんな記憶はないので一蹴しましたが……

 

「…名乗らないのも不躾ですね。私は刹那。()()刹那と言います。あなたは?」

「アリ…シア………テスタ…ロッサ」

「………泣いて、るんですか?」

 

私はまだ名乗ってなかったのを思い出し、私自身の名前を名乗ります。ストラトス、で名乗っても良かったのですが、今は八神で名乗っているのでそちらの方で。アリシアの方も名乗り返してきましたが、なんとも歯切れが悪く、俯くアリシアをよく見ると目元の当たりから雫がぽたぽたと地面におちていました。

 

「あんなに………あんなに、一緒だったのに…」

「…?」

「なんで私のことが!分からないの!刹那!!」

 

泣いている、と気付き気にかけようとしたその時。アリシアが急に怒りの形相で私に殴りかかってきました。正直隙だらけの攻撃だったので、カウンターで一気に勝負を決めても良かったのですが、この子の涙と言っていることは私には嘘には見えなくて、私らしくないと思いながらも防御に徹していました。

 

「勝手に居なくなって死んだんじゃないかって思ったら…生きてた、再会出来たって思った時は(そっち側)で!」

 

両の目から涙を流し、それでも怒りの形相で何度も何度も私を攻撃。同情は出来ますが、正直何を言っているのか私には全くわからないので反応に困ります。

 

「すみません…がっ!」

 

ある程度受け流し続けたところで私はアリシアの腕を弾き、胸元へ掌底を一撃。アリシアはビルのフェンスの所まで吹き飛びました。

 

「言いたいことは分からなくもないですが、何度でも言いますよ。()()()()()()()()()()()()()()

「っ………せぇぇぇつなぁぁぁぁ!!!」

 

完全にブチ切れたであろうアリシアと私はそのまま戦闘に突入していきました。

 

───Side out

 

 

 

 

 

 

───Side なのは

 

「フェイトちゃん……アリシアちゃん……ユーノ君……」

 

私は今ユーノ君の張ってくれた防御結界の中からみんなが戦っているところを見ています。だって、今の私にはそれしか出来ないから。でも、やっぱり何も出にないって言うのがもどかしくて

 

「助けなきゃ……」

 

身体中痛い……さっきやられたダメージがまだ癒えていない。それはわかってる。ユーノ君はじっとしててって言ってた。その約束を破るのは嫌だけど……でも、私のためにみんなが傷付くのはもっと嫌。

 

「っ………私が、みんなを助けなきゃ」

〈Master〉

 

私が痛む体に鞭を打って動き出した時、ボロボロになったレイジングハートの声が聞こえてきました。

 

〈Shooting mode acceleration〉

 

そのレイジングハートはコアが少し強く光ったと思うと、私が砲撃を打つ時に展開している翼を展開。まだ私はやれます……そう私に訴えかけてきている様に見えました。

 

「レイジングハート……」

〈Let’s shoot it. Star Light Breaker.〉

 

そしてまさかのスターライトブレイカーを撃ってください、と言ってきて……フレームもあちこちボロボロで今の状態の維持だけでもギリギリのはずなのに

 

「そんなっ…無理だよ、そんな状態じゃあ」

〈I can be shot〉

「あんな負担のかかる魔法…レイジングハートが壊れちゃうよっ!」

 

スターライトブレイカーは周囲に漂っている魔力を掻き集めて放つ集束魔法。それ自体、高等魔法で当然負荷も大きい。今の状態で使ったらどうなるか……考えるまでもない。レイジングハートのことを考えたら使うわけにはいかない。

 

〈I believe master.〉

「…っ」

〈Trust me. My master.〉

 

けど…私のことをここまで思ってくれるレイジングハートのことを思ったら、少し涙も出てきて……ダメだってわかってるんだけど、応えてあげたいって私は思う。

 

「レイジングハートが私を信じてくれるなら…私も信じるよ!」

 

そう決めた私はユーノ君の結界から出て、レイジングハートを構えてスターライトブレイカーの体勢に。

 

『フェイトちゃんにアリシアちゃん…ユーノ君、アルフさん。私が結界を壊すから、タイミングを合わせて転送を!』

『なのは…』

『なのは、大丈夫なのかい?』

『………っ』

 

やっぱり、みんな心配してくれてます。念話の返事、アリシアちゃんだけなかったのが少し気掛かりだけど…

 

『大丈夫、スターライトブレイカーで撃ち抜くから!』

「レイジングハート、カウントを!」

〈All right.〉

 

きっと返事がないのは戦闘に集中してて気付いてないだけ、私はそう思ってチャージを開始。

 

〈Count……9……8……7……6……〉

 

いきなり襲ってきた赤い子やその仲間のピンクの人、青い人はみんなが止めてくれる……なんで向こう側にいるのかわからない刹那君だってアリシアちゃんが足止めしてくれる!

 

〈5……4……3……3……3……〉

 

けど、カウント3のところで3を繰り返すレイジングハート。その声にもノイズが入ってきて……やっぱり無茶だったんだ…

 

「レイジングハート…大丈夫!?」

〈No problem.〉

 

無茶ってわかってる……これもただの強がりってのもわかってる……けど、私を信じてくれたレイジングハートが大丈夫って言ってる!なら、私はそれに応える義務がある!

 

〈Count……3……2……1……〉

「っ!?」

 

カウントが0になり発射、そう思った矢先のこと。不意に私が感じたとてつもなく大きな違和感。

 

「あっ……ぁ、あ…………ぅあ……っ…」

「ふぅ……何とか、間に合いました」

 

それは私の体……ちょうど私の胸のあたりを刹那君の左腕が貫いていました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

「無理はやめた方がいいですよ、なのは。レイジングハートも」

「っ……ぁ、アリシアちゃん……は?」

「大丈夫、気を失っているだけです。しばらくすれば目を覚ましますよ」

 

あの後アリシアとの戦闘を終え、気絶した彼女を背負って、集束魔法を撃とうとしていたなのはを後ろから強襲。転移魔法の応用でリンカーコアを捕獲。見かけ上なのはの体を私の左腕が貫いていますが、実際はそんなことは無いです。ちなみに蒐集はアリシアのコアは何故か出来ませんでした。

 

「なのはぁぁぁ!!」

 

フェイト、と呼ばれた黒い方の魔導士はなのはを助けようとしますが、大丈夫。シグナムが援護してくれます。ヴィータとザフィーラの方も私の動きに合わせてくれてます。

 

「リンカーコアは捕獲。あとは……蒐集開始」

 

と、近くに浮いていた夜天の魔導書。それを開き白紙のページに次々と中身が書きたされていきます。それに比例してなのはのリンカーコアはどんどん小さく…

 

「なのはを巻き込みたくはありませんでしたが……こうなってしまった関係上、もう見逃せません……」

「ぁ………っ…」

〈Count……0〉

 

それでもなのははスターライトブレイカーを諦めていませんでした。

 

「す、たぁライトぉ……ブレイk」

 

カウントを終え、レイジングハートを振り下ろすなのは。その腕を私はなのはから引き抜いた左腕で掴み、制しました。ちなみに蒐集の方はもう十分に出来ました。

 

「無理はダメだ、と言いましたよね?」

「っ……止め、ないでっ!」

 

なのはのリンカーコアは限界まで小さくなり、立っていることもままならないような状態。でも、スターライトブレイカーは諦めない。なのはらしいと言えばなのはらしいです。付き合いはこの半年だけですが。なのはのこういう真っ直ぐなところ、嫌いではないです。ここは私が折れておきますか。

 

「………わかりました」

 

私はレイジングハートにスターライトブレイカーに最低限耐えられるだけの防護フィールドを纏わせ、なのはを支えます。

 

『シグナム、ヴィータ、ザフィーラ!今から結界を撃ち抜きます。集束魔法発射と同時に撤退です。いつもの場所で合流しましょう』

『了解した』

『おぅ!』

『心得た』

「刹那、君?」

 

不思議そうに私の方を見てくるなのは。そりゃあそうですよね。止めたと思ったら今度は発射の手助けですから。

 

「撃つのなら、私も力を貸します。と言っても最低限だけですが…これでレイジングハートへの負荷はある程度抑えられるはずです」

「っ…ぅん!」

 

なのはは再びレイジングハートを振り上げ…

 

「スタぁ…ライト…ブレイカぁぁぁ!!!」

 

振り下ろしてスターライトブレイカーを発射。発射された砲撃はヴィータの展開した広域結界を破り、上空へ。シグナム達もその場を離れ、バラバラの方向へ転移。

 

「なのは……すみません」

 

私もとうとう気絶したなのはを支え、背負っていたアリシアと並べて寝かせてから転移。私達のことは管理局に気付かれているでしょうが、この際仕方ないです。

 

こうして、闇の書を巡る私達の戦いが火蓋を切ったのです。




やっぱ戦闘ムズいわ……多分色々わかりにくいことになってるんじゃないかなって思います。もしそうならごめんなさい

感想、評価など出来ればよろしくお願いします!


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第14話 引越し、いざ海鳴へ

初の連続投稿!

こんなハイペースですけど、普段は週一くらいが限度かなって思います。その上で余裕があればその都度、って感じです。

ではどうぞ!


───PM8:45 時空管理局本局

 

───side アリシア

 

「はぁ………」

 

こんにちは……あの戦いの後だからこんばんわ?アリシアです。先の戦闘が終わって、気を失った私となのはちゃんは本局で治療を受けました。

なのはちゃんはまだ意識が戻ってないけど、私は一足先に目を覚まして自販機の前で項垂れてます。ぁ、一応絶対安静って条件下なら何してもいいとドクターからの許しはもらってるよ?

 

「刹那、様子がおかしかった」

 

今私が考えてることは当然刹那のこと。刹那は私のことを知らない、覚えていないって言った。そのことが頭からな離れなくて……あれは演技とかじゃない、嘘を言ってるようでもなかった。他人の空似?それは150%有り得ない。

 

「何で私のことを………っ!?ゲホッゲホッ」

 

私は適当な飲み物のボタンを押し、出てきた缶を手に取って自販機前の長椅子に座りました。で、それのプルタブを開けてぐいっと1口ってこれコーヒー!?それもブラック!?

 

「にっがぁぁ………」

 

何も見ずに適当に押しちゃったから変なの取っちゃった。

 

「洗脳とか操られてるって感じでもなかったし……本人の意思に間違いはないんだよねぇ………っゲホッ」

 

なんで刹那が向こうにいるのか……そんなことを考えながらもう1口。やっぱり苦い………

 

「でも、ならなんで私のことを……?」

「ぁれ?アリシア?」

「アリシアじゃん。体の方は大丈夫なのかい?」

 

長椅子に座ってブラックコーヒーをちびちび飲んでるところにアルフとユーノがやって来ました。思い切って私は2人に今のことを相談、端から見てどうだったか聞いてみることに。

 

「と言っても、あたしは終始向こうの使い魔の相手してたからねぇ………あたしよりユーノの方が見れてるんじゃない?」

「うーん………と言っても、僕も彼とは面識ないし……人柄もわからないよ?」

「ううん、いいの。なにか思うことがあったら聞かせて?」

「と、言われても………ぁ、でも1つ思い当たる節、というか仮説なら」

 

青い使い魔さんとずっと戦ってたアルフはやっぱり見れてないか……まぁ、仕方ないね。ユーノ君はなにか思うところはあるらしい。

 

「何でもいいんだ、聞かせて?」

「うん。アリシア言ってたでしょ?別れる前、次元震の荒波に揉まれてたって。クロノもあの時言ってたけど、普通なら助からない。けど、彼は奇跡的に助かった。となると、その時に何かしらの影響が体に出たんじゃないかって」

「何かしらの影響って何だい?」

 

ユーノとアルフはジュースを買って私の隣に座ります。

 

「例えば……記憶喪失」

「っ!?」

 

私は全身雷に打たれたような衝撃が走りました。何でこんな簡単なこと思いつかなかったんだろう!

 

「とは言っても、本人に確認しないことには確信は持てない、ただの仮説だけどね」

「ううん、ありがとうユーノ!アルフ!んっんっ!ゲホッゲホッ」

 

ユーノの仮説を聞いて、今私がするべきことがはっきりした!私はとりあえず持っていたブラックコーヒーを一気に飲んで(当然のように苦さで咳き込んだ)缶を捨ててから廊下をダッシュ!っとと、危ない危ない。エイミーにぶつかるところだった。

 

「アリシアちゃん、大丈夫!?」

「大丈夫です!ぁ、クロすけどこかわかります?」

「それ私が聞こうかなって」

「クロノならなのはとフェイト連れて偉い人と面接するって言ってたよ?」

 

がーん………と言うことはすぐには会えないのかァ。リンディさんもすぐには無理だろうし……けど、探してみよう!

 

「わっかりましたぁー!」

 

私は3人と分かれて廊下を走っていきました。エイミーが走ったらダメだよーって言ってたのが聞こえたような気がしたけど、ガン無視で。

あっちこっち走り回って、たまに走るなって怒られて、私がやってきたのは格納庫のアースラの修理をしているところが良く見える部屋。そこに飛び込みます。するとアースラの修理を見守るクロすけを発見。

 

「ん?あぁ、アリシアか」

「ぜぇ……ぜぇ………く、クロすけ………みぃつぅけぇたぁでぇ!」

「と、とりあえず落ち着け。そこまで迫らなくても僕は逃げない。あとクロすけはやめてくれ」

 

あちこち走り回った私は当然息も上がっちゃって。そう言えば安静にって言われたけど……まぁ、いっか!

私がクロすけから離れたところで別の扉が開いて、そこからリンディさんとフェイトが入ってきました。

 

「クロノ。あぁ、アリシアさんもいたのね」

「艦長」

「フェイトも!」

「お姉ちゃんもいたんだ」

 

私はすぐにフェイトの側へ。息も上がったからフェイトに、抱きついて癒されようっと。

 

「ちょ、お姉ちゃん!?」

 

当然恥ずかしがり屋のフェイトは困ったようにするけど、抵抗はしてこないからそのまま続行。

そんな私たちを傍目にリンディさんが1つの資料を取り出しました。

 

「今回の事件資料、もう見た?」

「はい、さっき全部」

「資料??私も見せてぇー」

「本来部外者には見せれないけど………まぁ、いいでしょう。当事者ですし」

 

その資料を受け取って(フェイトに抱きついたまま)読み進めていきます。ちなみに私はフェイトより小柄だからフェイトは何気にベンチに座って私が抱きつきやすいようにしてくれてる。私の方がお姉ちゃんで(1つだけだけど)年上なのに不公平な世の中だ!

 

「なのはの世界が中心なんですよね、魔導士襲撃事件って」

 

もう私に慣れたのか、フェイトが口を開きました。

 

「そうね。なのはさんの世界から個人転送で行ける範囲にほぼ限定されてる」

「あの当たりは本局からだとかなり遠いですね」

「私も刹那とあの近くの世界行った時は中継ポート使ったよ。いくつも。それくらい遠いもんね」

「アースラが使えないの、痛いですね」

「空いている艦船があればいいんですが………」

 

そこで修理しているアースラをみんなで一瞥。今絶賛修理中でまだまだ時間がかかるらしくて、すぐには動かせないんだって。

 

「長期稼働出来る船は2ヶ月先まで空きがないって」

「そうか………」

 

………というか、フェイトがこういうことまで知ってるって管理局のセキュリティ大丈夫!?いや、ハッキングした訳じゃないんだろうけどさ、偶然聞いたとかそんな程度だろうけどさ!?

 

「……というかフェイト、アリシアもだが、君達はいいのか?」

「んぇ?」

「何が?」

 

資料を読みながら話を聞いていた私は不意に話しかけられて変な声でちゃいました。

 

「嘱託とは言え、あくまで君らは外部協力者だ。今回の件にまで無理に付き合わなくても」

「クロノやリンディ提督が大変なのに、呑気に遊んでなんて居られないよ。アルフも付き合ってくれるって言ってるし、手伝わせて?」

「私も、刹那が向こうにいるからね。来るなって言われてもついて行くよ?もう1度、何としても刹那に会って………お話したいから」

「ありがたくはあるんだが………」

「刹那さんに関しても、ワールドチャンピオンが何でこんなことに手を貸しているのか私達も気になるところですしね」

 

やっぱり刹那のこと考えたらクロすけに協力するのが1番の近道。もしダメって言われても密航してでもついて行く覚悟が私にはある。

そして、その場の空気にしばらくの沈黙。

 

「やっぱり、アレで行きましょっか」

 

それを破ったのはリンディさんでした。アレってなんだろう?

 

その後すぐ、リンディさんはアースラスタッフを休憩室(さっきの自販機のところ)に集めてミーティングを開きます。私はなのは、フェイトと並んで長椅子に座りました。もちろん前に立つのはリンディさん。

 

「さて、私達アースラスタッフはロストロギア闇の書の捜索及び魔導士襲撃事件の捜査を担当することにのりました」

 

ここまではみんな知ってるっぽい感じ。それかやっぱり?みたいな感じ。

 

「ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生地の近隣に臨時作戦本部を置くことになります」

 

んー?と言うことは地球に………ってこと?確かにアースラが使えないのなら現状の最善手だね。

 

「分轄は観測スタッフのアレックスとランディ」

「「はいっ」」

「ギャレットをリーダーとした捜査スタッフ一同」

「「「「「はいっ」」」」」

「司令部は私とクロノ執務官、エイミー執務官補佐、フェイトさん、アリシアさん。以上3組に分かれて駐屯します」

 

やった!と、私は心の中でガッツポーズ。

 

「ちなみに……司令部はなのはさんの保護も兼ねて、なのはさんのお家のすぐご近所になりまぁす」

 

………ぇ?

 

「ぇ?」

 

私の脳内となのはが奇跡的にハモりを見せたあと、なのはとフェイトは少しの間見つめ合ったあと

 

「わぁぁぁ!」

 

なのはを筆頭にみんなの笑顔でミーティングは締めくくられました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

───ほぼ同時刻。八神家

 

「はやてちゃん、お風呂の準備出来ましたよ」

「うん、ありがとぉ」

 

あの戦闘の後、無事合流してからみんな揃って何食わぬ顔で帰宅し、晩御飯を食べました。その後はやてとヴィータはテレビを見て、ザフィーラは獣形態でくつろぎ(ながらはやての背もたれ)、シグナムはソファで新聞を読み、私は紅茶の支度。

 

「ヴィータちゃんも一緒に入っちゃいなさいね」

「はーい」

「私もはやての次に入りますね」

「明日は朝から病院です。あまり夜更かしはされぬよう」

 

はやてとヴィータはここでテレビを見るのをやめました。シグナムも読み終わったのか新聞を折りたたみ、私の渡す紅茶を受け取ります。お風呂の用意が終わってエプロンを脱いだシャマルははやてを抱き上げます。

 

「はぁい」

「シグナムはお風呂どうします?」

「私は今夜はいい。明日の朝にするよ」

「そう」

「お風呂好きが珍しいじゃん」

 

意外と思うかもしれないが、シグナムはこう見えてお風呂好きで八神家では有名。今までヴォルケンリッターとして使役されていた頃はこういう機会はなかったらしく、その影響だとか。もちろんヴォルケンリッターの女性陣はみな似た傾向にあるが、シグナムは特に。毎日お風呂は欠かさず、訓練などで汗を流したあともよく入っています。ちなみにザフィーラはお風呂嫌い。シグナム達同様今までこういう機会が無かった影響らしいです。こういっては何ですが、完璧に犬です。

シャマルがはやてを抱っこして、ヴィータを連れ立ってお風呂へ。

 

「たまには、そんな時もあるさ」

「ほんならお先に」

「はい」

 

シャマル、ヴィータ、はやてが部屋から出たことを確認し、私はシグナムの隣へ。ザフィーラも近寄ってきました。

 

「今日の戦闘か」

「大方脇腹に斬撃を受けた、と言ったところでしょうか」

「聡いな。その通りだ」

 

シグナムがティーカップを持っていない方の手で服を捲ると、左の脇腹当たりに斬撃を受けたアザがありました。

 

「お前の鎧を打ち抜いたか」

「澄んだ太刀筋だった。良い師に学んだのだろうな」

 

シグナムは捲った裾を戻し、紅茶を啜ります。

 

「武器の差がなければ少々苦戦したかもしれん」

「だが、それでもお前は負けないだろう」

「そうだな」

「私も、剣でシグナムに勝てる気はしませんしね」

 

私の本職は拳ですが、と付け加えてらおきます。

 

「そういう刹那も。右腕だろう?」

「やはり、バレてました?」

「ティーポットを左手で使っていたからな。普段は右手だ」

「それに、要所要所で左手を使うことも多かった。主は気付いておらぬようだったが」

 

私も右腕の袖を捲ると手首と肘の丁度真ん中当たりが青いアザに。アリシアを気絶させる直前に彼女の断空拳をモロに受けたのでそのせいですね。

 

「刹那にこれ程の捨て身の防御を強いた、か」

「あの武術も私と同じ(覇王流)でした。私のように格闘技に特化はしていませんでしたが……」

「なっ……!?」

「あの時は冷静さを欠いている様子でしたが、もし平常心だったら……彼女の高機動射撃戦に織り込まれたらと思うと…」

 

驚くのも無理はありませんね。覇王流は古代武術。伝承者がそうそういるものでもない。私は心の中で彼女ともう1度会う必要があると確信します。

 

「しかし、私達は止まるわけには行きませんからね。子孫ですが、覇王の名にかけて」

「えぇ。我らもヴォルケンリッター、騎士の誇りにかけて」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

───side アリシア

 

「うわっ!うわ!すごーい!すごい近所だ!」

「ホント?」

「なのはの家どこ?」

「ほら、あそこが私ん家!」

 

今私達はなのはの家の近所のマンションへと引越しの最中。と言っても、私達はベランダではしゃいでるだけだけど!

中では今は荷物の搬入は終わって整理中。私?フェイトと2人で私物は整理し終えたよ!元々少ないし。

 

「とりあえず、中入ろう?」

「「うん!」」

 

いつまでもここではしゃいでたら迷惑かなって思って私達は家の中に。するとそこには子犬形態らしきアルフと見慣れないイタチ???

 

「わぁぁ!アルフちっちゃい!どうしたの?」

「ユーノ君もフェレットモード久しぶり!」

 

アルフはフェイトに可愛いだろぉ?と半ドヤ顔で抱き着き、フェレットの方はなのはが抱き上げて頬擦り。苦笑いを浮かべてるよ、ユーノ………ん?これユーノ!?

 

「クロすけがフェレットモドキって言ってたの、これかぁ」

「仕方がなかったんだっ!」

「ぁはは。まぁ、半幽霊の私が言ってもアレなんだけどね」

「なのは、フェイト、アリシア。友達だよ」

 

私がユーノをつつきながら弄ってるとそこにクロノが。友達、というと……あの2人しかないよねっ!

 

「こんにちはー」

「来たよー?」

 

玄関まで迎えに出るとやっぱり!アリサとすずかだ!

 

「アリサちゃん、すずかちゃん!」

「初めましてってのもなんか変かな」

「ビデオメールでは何度も会ってるもんね」

「でも、会えて嬉しいよ。アリサ、すずか」

「私も会いたかったよ!」

 

フェイトに後ろから抱きつきながら私も会話に参加します!

 

「ぉ、お姉ちゃん!?恥ずかしいから降りてっ」

「ビデオメールではあまり分からなかったけど……これで年上……なのよね?」

「そうだよー?1つ年上の10歳!」

「1つ年下の妹って言われた方が素直に納得できる光景だわ、これ」

「むぅー!」

 

自分で言うのもアレなんだけど、すずかの疑問とアリサのツッコミも納得できちゃうこの私。だってフェイトより小柄だし、こんな性格だし。

このあと何やかんやでなのはの家のお店、喫茶『翠屋』へ行くことに。私達は4人でティータイム、リンディさんはご挨拶に。

店外のテーブルでティータイムを私達が楽しんでいるとそこに小包を2つ抱えた捜査スタッフのアレックスが。これは?

私とフェイトはそれを渡されると中身を開けてみました。そこに入っていたのはなのはの学校の制服。

 

「「ぇ!?」」

 

私とフェイトはお互いに顔を見合わせるや否や制服の入った箱を持って店内に。

 

「リンディて………リンディさん!」

「これって!?」

「転校手続き取っといたから。週明けからなのはさんのクラスメイトと先輩ね」

 

嬉しさと恥ずかしさでフェイトが真っ赤になっている所になのはのご両親、高町士郎さんと高町桃子さんもやって来て。みんな良かったね!と言ってくれて私は嬉しくて嬉しくて

 

「良かったわね、フェイトちゃん、アリシアちゃん」

「ぁの、ぇと……はい。ありがとう、ございます」

「ぅん!」

 

恥ずかしがり屋のフェイトはハニカミながら制服を抱き締めて顔を真っ赤に。かくいう私も喜びを隠しきれなくて。そんなフェイトも可愛いなぁーって思ってるところに翠屋の扉がカランという鈴の音とともに開いて、新たなお客さんが。

 

「こんにちはー。いつものアレ、買いに来ま……し……」

「………っ!?」

 

ふと振り返った私達。そこに居たのは、私達のよく知るあの人。

 

「あら?刹那君。フェイトちゃん達とお知り合い?」

「ぇ?あぁ、まぁ。少し」

「なら、これからも仲良くしてやってくれ。今日引っ越してきてまだわからないことも多いだろうからね。ほら、いつもの紅茶だよ」

「ぁ、はい。ぇっと、わかりました。ありがとうございます」

 

そう、刹那がいました。




会話だけのはずが過去最長に!?
多分似たような感じで次回も進むと思います。

感想等、あればよろしくお願いします!


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第15話 欠けた記憶

最近FFXIVにハマったルイスです。ヒーラー楽しいよヒーラー。

コホン。本題に戻して、今回は説明とか会話とかそんなのばっかりです。


───sideアリシア

 

私達は今喫茶『翠屋』にいます。と、そこに現れたのはあの刹那!タイミング悪すぎない!?

 

『なのは、これどういう事?』

『ぇーっと………隠してたわけじゃないんだけど…』

『言い忘れてた?』

『ごめんなさい…にゃはは』

 

不意の刹那の登場に私はなのはに念話。とりあえずなのはが匿ってたってわけじゃないって分かって安心………できるかァァ!!!

 

「刹那君、うちの常連さんなの。いつも紅茶買ってくれててね。刹那君の淹れる紅茶、美味しくてね!うちの紅茶って信じられないくらい!」

「気持ちはわかるし美味しいの知ってるけどなのは落ち着こう?」

 

刹那は紅茶淹れるの上手だからねー。ただの常連さんかぁ。それなら納得納得。

ぁ、でも刹那がここの紅茶よく買ってるってことはここの紅茶は絶品って証拠だね!

 

「刹那もなのは達とお茶していかないかい?丁度この姉妹の歓迎ムードなんだ」

「折角のお誘いですが、すみません。丁重にお断りさせて頂きます。このあと少々立て込んでまして」

「なら、無理強いは出来ないね。わかった」

「またの機会に頂きます。失礼します」

 

なのはちゃんのお父さんが私達と刹那が知り合いって知って私達の輪に入れようと誘うけど、刹那は案の定それを断ってお店から出ていっちゃって。

見た感じ、本当に偶然来ちゃっただけみたい。咄嗟のことすぎてリンディさんも何も出来てなかったし。

 

「っ、刹那!」

 

と、私は刹那君を追って店の外に。刹那も私に背を向けたまま立ち止まる。いきなり店の中から飛び出てきたアリサとすずかがギョっとしてるけど気にしてる余裕はないかな。

 

「………どうかしましたか?」

 

呼び止めたはいいけど、言葉が出てこない。そんな私にしびれを切らしたのか、刹那から声がかけられる。

 

「………ごめん、何でもない」

「そうですか」

 

刹那はそれだけ言うと再び歩を進め、離れていっちゃって。

やっぱり私のこと覚えてないのかな。以前の刹那からは(荒れていた時期を除いて)考えられないくらい冷たい。私達は今は敵対している立場だから当たり前と言ってしまえばそこまでなんだけどね。

 

『ここで言い難い用件でもあるのなら、後でまた会いますか?』

『ぇ?』

 

私が少し落ち込んだ時、ふと刹那から念話が来ました。不意のことだったからすぐに私は上手く反応出来ませんでした。

 

『お互いに武装は解除して危害は加えないという条件でなら、ですが。場所と時間の指定は任せます。私は1人で行くので』

『ぇ?ぇ??』

『返事、待ってます。なのはが私の連絡先知っているので、そこにお願いします』

 

私がキョドってる間にトントン拍子に話が進んじゃって………とりあえず刹那と話せるってことでいいんだよね?

 

『ぇっと………わかった。あとでなのはに頼んで連絡するよ』

『はい、ではまた後で』

 

そこで刹那との念話は途切れました。私は心配(?)してたアリサとすずかになんでもないよ、と返しつつ店の中に。

 

「アリシアちゃん、何かあったの?」

「ううん、何でもないよ『刹那が後で会おうって。なのはが連絡先知ってるからそっちにって言ってた』」

『罠の可能性はないの?』

 

私のなのはに送った念話、これにまさかのリンディさんから返事が来ました。まぁ、当然の考えだね。敵対してる人からの誘いだもん。けど…

 

『絶対にないよ。刹那だもん。ここにいる人で一番刹那のこと知ってる私が断言する』

『わかりました。なら、あなたとなのはさん、フェイトさんで会ってらっしゃい。時間と場所は好きにしていいわよ』

『ありがとうございます!』

 

伊達に刹那の幼馴染やってないもんね、私。向こうは覚えてないみたいだけど、私は覚えてる。

とりあえずリンディさんからの許可は貰ったし、あとはなのはとフェイトにも話して、だね。

その後私はお茶会の片手間になよは、フェイトに今のことを念話で相談。夕方5時になのはがいつも訓練してる公園で会うことになりました。

ちなみにアリサとすずかも刹那とは顔見知りの様で。なのはが仲良いらしいから予想はしてたけど。

 

時は過ぎて夕方。時間は5時よりも少し前。私達はなのはがいつも魔法の練習をしている丘の上の公園へやって来ました。5分前行動って大事!

と言っても、刹那はもう着いてたんだけどね。ベンチにバッグを置いてシャドウをしてました。私は何度も見てるから、やっぱり変わらないなぁー程度しか思わないけど、初めて見るフェイトやなのはは視線を釘付けにされてて。私が言うことじゃないかもしれないけど、刹那のフォーム、綺麗だもん。仕方ないよ。

 

「っ!」

 

締めの右ストレートで少し風がぶわっと吹いた感じがして、刹那のシャドウ終了。見惚れてたなのはとフェイトもそこで我に返ってきました。

こんなに寒い冬なのに額から汗が吹いてるってことは、多分この前にランニングでもしてたのかな。私は刹那のバッグの側にあったタオルを手に取って渡しました。

 

「ありがとうございます。すみません、待たせましたね」

「ううん、気にしないで?」

 

刹那は汗を吹くとタオルを仕舞い、バッグから魔法瓶と紙コップの入った袋を取り出しました。袋の封を切って紙コップを人数分出し、そして魔法瓶の中の液体を紙コップに入れて私達に渡し、刹那もそれを啜りました。

 

「本当は淹れ立てが良いんですが、場所が場所なので。熱いので気を付けてく「あちっ」だs……躊躇とかはないんですか?」

 

それを迷わずに飲む私を見て刹那が呆れ半分な感じで問いかけてくる。

 

「だって刹那だもん。大好きな紅茶に混ぜ物して私達を罠に嵌めたりー、なんて考えられないよ」

「にゃはは。それにね、刹那君。何気に先に毒味したでしょ?紅茶には何も入ってないよって意思表示だよね?」

「紙コップも新品で袋も今開封してたから紙コップに細工も無理だしね。」

「………」

 

刹那の懸念もわかるんだけど、その前に私、なのは、フェイトの推理をぶつけて見る。対する刹那はポカーンとして無反応。

 

「刹那?」

「あぁ、いえ、すみません。意図していたとはいえ、そこまで言われるとは予想外で」

 

まぁ、だよね。私が逆の立場だったら似たような反応になると思うし。

刹那はここで紙コップの紅茶をクイッと飲んで落ち着き、本題に入る様子。

 

「一応、自己紹介は要りますか?特にそのお姉さんの方」

「私にはもうしたでしょ?しなくても知ってたけど」

 

私には要るってどゆことだろう?

 

「いえ、アリシアではなく、あなたの姉の方」

「……ぷっ」

 

やっぱりかぁぁぁ!!!というかフェイト!笑わないで!?なのはも笑い堪えてる!?

 

「姉は私だぁ!!!」

「………ホント、ですか?」

「っ……間違い、無いよ?妹は私。ぷくく」

「確かに私の方が小柄だしいいたいことはわかるけど!?」

 

刹那の気持ちがわかるだけに否定出来ないけど、なんか悔しい!!

 

「すみません。謝罪します」

「わかればよろしい」

((納得早い!?))

 

コホン、と刹那は咳払いをしてこの変なことになった空気を元に戻します。

 

「では、不要かもしれませんが自己紹介を。八神刹那と言います。苗字はストラトスもありますが、こっち(地球)では八神で名乗ってます。ストラトスはミッドでの苗字ですね」

「私はもうしたし、なのはも省略でいいよね?」

「そうですね」

 

私は昨日の戦闘の時にしたし、なのはとは顔見知りらしいからスキップ。私はフェイトを見ました。

 

「ぇっと……フェイト·テスタロッサと言います。こう見えてアリシアの妹、です。よろしくお願いします」

 

フェイトも行儀よくお辞儀と一緒に自己紹介しました。刹那もそれによろしくお願いします、とお辞儀。

 

「さて、呼び出したのはアリシアなわけですが、どこから話します?言っておきますが、話せることは限られますよ?」

「わかってるよ。私が知りたいのは1つだよ」

 

私はここで深呼吸。

 

「本当に私のこと、覚えてないの?」

 

一番の核心をついて聞きました。

 

「先も言いましたが、覚えてないですよ?ただ……」

 

やっぱり、覚えてないのかァ………ん?ただ?

 

「私の記憶、所々穴があって…記憶喪失だそうです」

「「「っ!?」」」

 

刹那にそれまでの記憶を掻い摘んで説明してもらいました。そこでひとつ思ったことはただ1つ。

 

「アリシアちゃんに関する記憶がすっぽり抜けてる……?」

 

なのはに言われちゃったけど、私に関する記憶。それが綺麗に抜け落ちていた。原因は多分例の次元震に飲み込まれたこと……だと思うんだけど。

そして地球に来て最初に会ったのがなのは、その次に今お世話になっている人、ということ。その人が闇の書の主ってことなのかな。教えてくれなかったし。たぶんだけど、刹那が敵対する理由はその人を守る為なんだろうな。それ以外の理由で頑なに私達に敵対する理由が思いつかない。

ちなみにその人にもし何かあれば容赦はしない、と釘を刺されたから今は下手に手出しは出来ない。

 

「そんな………」

「私自身、信じたくはないですが………」

「お姉ちゃん…」

 

悲しいけど、これが現実なんだよね………

 

「なら、さ」

 

と、そこでフェイトが口を開く。

 

「……?」

「私達で刹那の記憶、取り戻そう?」

 

フェイトの一言で私達はハッとなる。何でこれを思いつかなかったんだろう!

 

「そうだ!そうしよう!」

「私は、構いませんが………方法はあるのですか?」

「わかんない!」

 

方法なんてわからない。けど、何とかするしかない!

 

「闇の書関連の時は敵同士だけど、プライベートはいいでしょ?」

「私は構わないのですが………」

 

一方の刹那は当然ながらキョトンとしてて。曲がりなりにも私達は刹那に敵対してる立場だから仕方ないかな。

 

「折角学校が一緒なんだからプライベートまでギスギスするのは……嫌だな」

「敵対する時は手抜きとかはしないけど、普段仲良くするくらいはいいよね?」

「………わかりました」

 

結局、なのはとフェイトの追い討ちで折れる刹那。満更でもないみたいで。

これを機に特に計画性は何も無いけど、刹那の記憶回復大作戦(仮)が始まる………のかな?

余談だけど、私の持ってる刹那のハイペリオン。これに関しても刹那に記憶はなかったけど、ハイペリオン自体最終的に私にプレゼントするものだったってハイペリオン本人から追々聞いたのでした。




かなりグダグダと進めた気がしなくも無い………前々の所で刹那とアリシアがギスギスしていたのとなのはとの和解パートとでも思ってくれれば!

敵対するけど和解もするっていう矛盾は気にしないで!

では、感想や評価等お待ちしております!


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第16話 新しい日常

どうも、ルイスです!

やっぱり戦闘ないとUAの伸びがイマイチだなって気付き始めた今日この頃です。私の文才の低さもあると思いますが((

では、どうぞ!


「ぁ、そうそう」

「んー?どうかしたの?」

 

アリシアが私の記憶を取り戻す、と言い始めたそのあとのまだ残っていた紅茶とお菓子で3人を家に送るついでにプチお茶会。ご飯の前なので元々量は持ってきてませんでしたが、折角なので。

 

「シグナムが言ってましたよ。フェイトは筋がいい、と」

「っ!」

「私は?私は?」

 

昨日シグナムに大敗しているフェイト。見たところそれのせいで戦意喪失ということはなさそうですが、戦闘狂(バトルマニア)のシグナムの為に褒めておきます。すると同じく私に大敗したアリシアが私の方に詰め寄ってきて。

この子、無自覚なのでしょうが小柄なのも相まって詰め寄られると上目遣いになるんですよね。断りにくいんですよ、こう言うことされると。悪い気はしませんが。

 

「アリシアは………そうですね。射撃寄り高速機動戦闘のスタイルであの打撃力。冷静さを欠いていなければ脅威だ、と思いました。それとここまで言い出すきっかけが無かったのですか、昨晩怒らせたことについてはすみません。記憶が無いことを説明無しに言うことでは無かったですよね」

「それは私こそごめんだよ。こっちだってよくよく考えたら記憶が無いって結論出せたわけだし、お互い様だよ」

 

昨晩の戦闘中にアリシアを怒らせたこと。それは私にも非がありました。私に記憶がなかったとは言え、その事を何も言わずにただ知らないの一点張り。アリシアの言葉から察するに私とこの子は相当仲のいい関係だったのでは、と簡単に推測すらできたのに。

と、そんなことを話しながらお茶を飲んでいると魔法瓶の中も空に。魔法瓶をバッグに入れました。そしてここは丁度私達の家への分かれ道。

 

「さて。時間も時間ですし、家まで送りますよ」

「そんなっ、悪いよ」

「呼び出したのはこっちなのに帰りに送らせるなんて…」

 

時計は7時半。この当たりは街灯が多いのでそこまで気にはしませんが、もう暗い。女の子3人だけを放り出す時間ではありませんね。なのはとフェイトは当然の様に遠慮していますが。

 

「格闘技をかじってるアリシアがいるので何も心配はしていませんが、こんなに暗いですし。そして何より私のプライドが許しません。送らせてください」

 

少し強引すぎたかな?とは思いますが、このあと3人を家まで送りました。玄関でばったり遭遇したなのはの兄やクロノはいい顔しませんでしたが………むしろクロノには捕まりそうになりましたが、そこはフェイトとアリシアがクロノをホールドして説得。次の戦闘の時は容赦はしない代わりにここでは見逃す、とお互いに約束(?)して私も帰路につきました。

その後、はやてはもう寝てしまっている深夜。はやてから引き受けた朝ご飯の支度等も済ませ、夜の鍛錬と入浴を済ませてパジャマ姿でリビングに出た所。

 

「あれ?刹那じゃん。今風呂上がり?」

 

丁度はやてのベッドから抜け出したヴィータと遭遇しました。

 

「夜の鍛錬が終わったところなんですよ。入浴も済ませたのでもう寝ようかな、と。ヴィータは蒐集ですか?」

「まぁな。シグナム達が待ってるからな」

「気をつけてくださいね。それとはやてが起きるまでには帰ってきてください」

「わかったよ。シグナム達にも伝えとく。んじゃ、いってきまーす」

 

私は蒐集に行くヴィータを見送り、何気なしにベランダへ。

 

「………記憶、ですか」

 

私の欠けた記憶。今まで気にしてませんでしたが、アリシアと遭遇して何を私が忘れているのか、それを思うとつい口に出てしまっていた。

 

「………こんな時間に夜風に当たっていたら風邪を引きますね」

 

私はすぐに中に入り、自室へ。夢の中へと旅立って行った。

 

 

 

 

 

 

side アリシア

───月曜日

 

「ぅぅ……緊張するよぉ」

 

今私がどこにいるかって?もちろんここは学校。私立清祥大学付属小学校。4年B組のクラスの前。これから転入ってことになるクラスへの挨拶!

 

「どうぞー」

「っ!」

 

人の字を必死に掌に書いては飲んでを繰り返してると唐突に呼ばれてビクって反応しちゃいました。誰も見てなくてよかったぁ………。

私は大きく深呼吸して自分自身を落ち着かせます。

 

「失礼します!」

 

私は教室の扉を開けて中に入り教卓の隣へ。

 

「今日からこのクラスに転入になりました、アリシア·テスタロッサと言います。わからないことも多いですが、よろしくお願いします!」

 

刹那もこの学校らしいし、刹那の時もこんなだったのかなって想像しながら私の新しくて人生初の学校生活が幕を開けました!

そして最初の休み時間。当然の事ながら私の周りには人!人!人!具体的に言うならみんなクラスメイト!そりゃあ転入生だもん、気になるよね。しかもほぼ同時に何人もがたくさんの質問してきて答えられないっ!いや、なんの質問が飛んできてるのかはだいたい分かるんだけど、人波のせいで答える余裕がね?

 

ビークワイェーット

 

下の方の教室からアリサっぽい声が聞こえてきて。よーし!そっちがその気ならこっちだって!

 

「よっ…っと!」

 

私はほぼ1秒あるかないかくらいの時間でこの人波の間を通り抜けました。種は簡単。予め通るルートを決めておいて、その周りにいる人の肩を指でそっと押して重心をズラして通るスペースを作る。これをルート上の人数の回数やるだけ!魔法は一切使ってないし、もちろん倒れて怪我とかさせないように細心の注意は怠らない。端から見たらもみくちゃにされてた私が一瞬で人波の後ろに出てきたように見えたんじゃないかな。それこそ魔法みたいに。繰り返し言うけど魔法は使ってないよ?

 

「ごめんねー。さすがにこうももみくちゃにされたら答えれないよ?ほら順番順番!」

 

みんなの注目を集めたところで手をパンっと叩いて順番に質問するように促しました。その後いくつも質問が来て、たまーに困る質問あったりもしたけど、なんとか乗り切りました!

ちなみに趣味聞かれた時に格闘技をちょこっとって言ったら教室の隅にいたやんちゃグループっぽい人達の中のジャ〇アンっぽい人がピクっと反応してました。格闘技やってるのかな?

その後の授業とかも順調に済んで、お昼はフェイト達のお誘いもあったけど、断ってクラスの女子グループに入れてもらいました!ファッションの話とかは全くわからないけどね!ぁ、でも女子グループの恋バナ?みたいな空気で好きな人はー?とか聞かれた時少し困ったかな。刹那って答えるわけにもいかなくて、今はいないって答えちゃいました。リンディさんのお弁当美味しかったです。

それから更に時間が過ぎて放課後。私のクラスは少し早く終わって、フェイト達を待ってるところ。ただ待ってるだけも暇だったから私は校舎内をウロウロ。事前にもらった地図を見ながら探検してました。そして丁度体育館の側に差し掛かったところで

 

パチン

 

何かを叩くような音と、呻き声みたいなのが一緒に聞こえてきました。普通の人なら聴き逃してたかもしれないけど、そこはほら。私は刹那とよくいたからその辺りの鋭さには自信があるのです。

 

「ん?今の音って?この裏の方?」

 

私は気になったので体育館裏へと走りました。

物陰からそーっと様子を見るとそこにはお約束のよく見知った顔が。クラスのやんちゃグループの大将?みたいな体格の人とその連れ2人。体育館の壁にもたれ掛かって頬を抑えてるのは私のクラスの委員長(女の子)。もしかして女の子を引っぱたいた?しかもまた手を振り上げて……って今度はグーパン!?

さすがに私も見ていられなくて、飛び出しました。

 

───side out

 

 

 

 

 

───side 委員長

 

痛い……引っぱたかれた頬が凄くヒリヒリする。体育館裏に呼び出されたって思ったらいつものガキ大将(いじめっ子)に遅い!っていきなり引っぱたかれて。

いじめる理由?そんなの私がひ弱でいつもビクビクしてるからだよ。それなのにクラス委員長で生意気だって。それだけ。今度はそのいじめっ子、引っぱたいただけだとお気に召さなかったのか、グーで握った手を振り上げて……

 

「ひっ!?」

 

私は殴られるんだなって思って目を閉じました。

でも何時になっても痛みも衝撃も来なくて。恐る恐る目を開けてみるとそこには

 

「女の子に手上げちゃうんだ?かっこ悪いよ?」

 

今日転入してきたばかりのアリシアさんがいじめっ子の手首を掴んで私を庇ってくれてました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「女の子に手上げちゃうんだ?かっこ悪いよ?」

 

私は飛び出した直後、右足の旋風脚で地面を蹴って加速、委員長の前に出てジャ〇アンぽいクラスメイトのパンチを手首を掴んで止めました。間に合ってよかったぁ。

 

「何しやがんだっ!」

「んー……何って、何だろう?」

 

パンチを止められてご立腹なのかな。私のこの余裕な態度もあって怒りのボルテージがどんどん上がる。

 

「こいつ、格闘技やってるって言ってた転校生!」

「ボス!空手の県大会でベスト8の実力、見せてやろうよ!」

 

今どきボス…?いや、ダメじゃないけど。県大会ベスト8がどれくらい凄いのかって?全然わかんない!

 

「そうだな。今後舐めた態度取られないように今のうちにどっちが上かはっきりして置かないと、な!」

 

今度はターゲットを私に切り替えたみたいで、数回シャドウ(口でシュッシュッって言ってた)をしてから私に右ストレート。後ろの委員長もひっ!って呻き声と共に両手で目を覆いました。私がやられる未来でも見えたのかな?

 

パァン

 

そんな軽快な音とともにその拳を私は左手で正面から受け止めました。ぶっちゃけ刹那の断空拳を(寸止めだけど)何回も受けてるとこの程度は止まって見えちゃっててね。

 

「県大会ベスト8ってこの程度でもなれるの?」

「っ!?」

「パンチは大振りすぎて軌道は見え見え。重さもスピードもイマイチ。鋭さなんて欠けらも無い。踏み込みもなってない。最初のシャドウは威嚇のつもりなのかもしれないけど、本物の威嚇はそんな安くないよ?」

 

とりあえず今思った落第ポイントを列挙。本当はもっとあるけど割愛。今度はこっちの番だね。

 

「それじゃあ、1発には1発。ね?」

「は?…ぅ!」

 

私は最大級の笑顔からの右フック(私の方が小柄だったからどうしてもこうなった)の断空拳。いじめっ子からしたら私が構えた次の瞬間には私の拳がお腹にめり込んでたんじゃないかな。

いじめっ子はお腹を抑えて蹲って……ぁ、この一撃で意識保ってるって流石県大会ベスト8?

私は蹲るいじめっ子のすぐ側まで近寄りました。

 

「私が尊敬する人の受け売り。力を持つ人にはそれ相応の責任がある。君みたいに無闇矢鱈にそれを振り撒くのは力を持ってるって言わない、ただの暴力なんだよ」

 

そして尊敬する人(刹那)の受け売りの言葉と同時に右足を地面から5cmくらい浮かせて思いっきり震脚。足を退かせるとそこには1cmくらいの深さをした靴跡。

 

「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」

「っ!?」

 

いじめっ子3人と委員長はそれを見て驚くばかりで。あれ?これくらい格闘技やってたら普通じゃないの?刹那の本気だったらこの倍は軽いのに………

 

「ほーら、今日のところは見逃してあげるから2度とこんなことするんじゃないよー?」

「「「すみませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

そんな私を見ていじめっ子は脱兎のごとく逃げ出していきました。

 

「ふぅ……さて、と。委員長、大丈夫?怪我してない?」

「ふぇ?ぁ、ぇっと……うん、大丈夫だよ?引っぱたかれたところが少しヒリヒリするくらいかな」

「良かったぁ、大事にならなくて。」

 

私は近くの水道でハンカチを湿らせて、よく絞ってから委員長の頬に当てます。それで冷しながら委員長を起こし、制服についた土埃を払いました。

 

「ぇっと……ありがと」

「気にしないで良いよ。えっと………ごめん、まだ名前覚えきれてなくって」

「加藤紗綾だよ。よろしくね」

「よろしく!」

 

固い握手を交わす2人。こんな感じで私の最初の友達が出来たのです。

 

「それにしてもテスタロッサさん「アリシアでいいよ?」じゃあアリシアちゃんは何でこんなところに?」

 

もっともな疑問だね。だってここ学校の敷地の端っこの方。少なくとも転校初日に1人で来るところじゃないもん。

 

「たまたまだよ。妹待ちついでに学校内を探検してたら偶然見かけてね。気付いたら飛び出して助けちゃってた」

「ほへぇ…ぁ、あの子達じゃない?妹さん。金髪の子アリシアちゃんそっくり」

「ぁ、ほんとだ。じゃあ私行くよ。また明日ね、バイバイっ」

「バイバーイ」

 

委員長、紗綾ちゃんの言う方向を見ると、こっちに向かって手を振ってるフェイト達が少し向こうに見えたので、紗綾ちゃんと別れてそっちに合流、帰路につきました。

ちなみにこれは余談なんだけど、その後いじめっ子の報復?の嫌がらせみたいな事があったんだけど、腹が立った私は本気でそれを捜査。証拠を突きつけて吊るしあげたら、私には敵わないってやっとわかったのか、黙り込んで私や紗綾ちゃんに絡んでこなくなりました。




どうもー。今回は転入初日のストーリー、主人公刹那の出番は深夜の一瞬だけという扱い。

今回初登場のオリキャラ、委員長こと加藤紗綾(かとう さや)ちゃん!ほぼその場のノリで作っちゃいました!だってフェイト達とばかり絡んでたらクラスに友達いないの!?ってなるからね。フェイトにとってのアリサ、すずか的立ち位置です。紗綾ちゃんからしたらアリシアはちっちゃな(は余計だよ!)ヒーローなのかもしれません。
今後も(たぶん)ちょくちょく出てくると思います。

ちなみに刹那は描写してないけどクラスに友達ちゃんといますよ。書くことはないと思いますが!

感想、評価などあればよろしくお願いします!


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第17話 新たな力

どうもどうもー。ルイスです。

最近FFハマってエオルゼアでヒーラーやってます。つい最近紅蓮編まで行きました!

それは置いておいて今回は前話までと違ってほぼ原作通り進めますね。
ぁ、ここまでの流れでだいたいわかるかな?って思いますが、この作品は基本的に刹那かアリシア視点です。もちろん状況次第で他の人の視点も書きますが。
戦闘は一部を除いてほとんどこの2人の戦闘ばかり書くと思います。原作キャラの子の戦闘どないなんや!って思う人は是非原作アニメを見てください(唐突な布教)

ではどうぞ!


side なのは

 

───その日の夜 管理局本局

 

「ありがとうございましたー」

 

私、高町なのははこの前の戦闘でリンカーコアを蒐集されちゃって、しばらく魔法が使えませんでした。それからずっとユーノ君に付き合ってもらってリハビリ。そして今日は最後の検査!

 

「なのはー」

「検査結果どうだった?」

 

その検査が終わって医務室から出たところで丁度こっちに走ってくるフェイトちゃんとアルフさん、ユーノ君。あれ?アリシアちゃんは?

 

「無事完治!」

 

私はガッツポーズで完治をアピールします。そんな私に笑顔を向けてくれた後、フェイトちゃんとユーノ君はバルディッシュとレイジングハートを取り出します。

 

「こっちも完治だって」

 

私はレイジングハートを受け取り、いつも通り首に掛けます。

 

「アリシアちゃんは?一緒じゃなかったの?」

「お姉ちゃんのは修理………というより改修メインだったから。少し動かしてくるってアリーナに」

「じゃあアリシアちゃん呼びに行こう!」

 

その後アリーナへ行くと早くも汗だくなアリシアちゃんと合流。とりあえずシャワー室に押し込んで汗を流してもらってから帰宅することにしました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

シャワーを浴びて汗を流してから帰宅する、そのちょうど2番目の転送ポートでのことでした。ユーノが現状報告でエイミィと通信していたその時。通話の向からめちゃくちゃうるさいアラートが聞こえました。

もちろん私達の予定は変更。帰宅ではなく現場へ直行することに。その結界の内部へ直接転送出来るところまでポートで行ってから転送してもらいました。

転送された場所は結界内にあるとあるビルの屋上。上を見上げるとこの前のなのはをやっつけた子と青い使い魔。アルフさんとユーノ君は少し後方に転送してもらってサポートをしてもらうことになってます。

 

「なのは!フェイト!アリシア!」

 

クロ助の声を聞き、私達は各々のデバイスを手に取ります。

 

「レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

「ハイペリオン………ううん、イクスペリオン!」

「「「セェーット!アーップ!!」」」

 

私はもう初期セットアップはしてるからごくごく普通にバリアジャケットに。ちなみにジャケット自体に変化はほとんどありません!デバイスの方は見た目から変わっちゃってるけどね。名前もハイペリオンからイクスペリオンに!

一方のなのはとフェイト。これが修理兼改修後の初起動だからデバイスからOS起動のボイスが流れ、もちろんいつもと違う様子に2人はオロオロ。

 

「ぇ?えっと、これって?」

「今までと……違う」

「なのは、フェイト。落ち着いて聞いて?」

 

先に起動しちゃってネタを知ってる私からネタばらししておこうかなっと。

 

「レイジングハートもバルディッシュも新しいシステムを搭載してるんだよ!」

「新しいシステム?」

「そうそう。要するにその子達の最初のワガママってやつだよ。余程負けたのがツラかったんだね。マスターの力になれなかったって」

 

2人とも絶句して掲げた自身のデバイスを見つめてます。

 

 

「だからさ、呼んであげて!その子達の新しい名前を!」

 

丁度その直後、OS起動ボイスが全部終わりました。

 

「レイジングハート·エクセリオン!」

「バルディッシュ·アサルト!」

 

2人とも新しい名前を呼ぶ。それとほぼ同時にジャケット姿に。とりあえず私は銃形態のイクスペリオンは両太腿のホルスターに仕舞ったままにしてあります。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

───side 刹那

 

私は今、シグナムと2人、結界のすぐ外まで来ています。とりあえず目の前の結界の分析を。

 

「強壮型の捕獲結界………ヴィータ達は閉じ込められたか」

「見た感じかなりの強度ですね。破壊は困難と言ったところでしょうか。さて、シグナム。どうします?援護は諦めますか?」

 

結果、破壊は困難と結論を出してから今後の方針をどうするか………返事は分かりきっていますが、シグナムへ聞いてみます。

 

「刹那。烈火の将はこんな所で引くような軟弱な騎士だったか?」

「もしそうなら、私は1人で行動を起こしていますよ」

「だろうな」

 

さすがシグナム、と言ったところでしょうか。

 

「この結界、破壊となると困難ですが、人1人通る穴を一瞬開けるだけなら私たちなら可能ですよ」

「なら、答えは1つだけだ!レヴァンティン!!」

 

シグナムはレヴァンティンのカートリッジを1つロード。刀身に炎を纏わせました。一方の私も足元に魔法陣を展開して構えます。

 

「覇王断空拳っ!!」

「紫電一閃っ!!」

 

私達は結界に穴を開け、内部へと突撃しました。

 

───side out

 

 

 

 

 

───再びside アリシア 刹那とシグナム突撃の数分前

 

ジャケットへ変身し終えた私達。先程の屋上へと着地して上にいる赤い子と青い使い魔?を見上げます。

 

「私達はあなた達と戦いに来たわけじゃない!」

「だからまずは話をしよう?でないと何もわからないから!」

「闇の書の完成を目指してる理由を!」

「………あのさぁ」

 

ずっと上にいた敵さん2人。その赤い子が(新システムを見た時は少し驚いていたけど)イラだった様子でこちらを睨みながら口を開きました。

 

「ベルカの(ことわざ)にこういうのがあんだよ」

「……ん?」

「ふぇ?」

 

それに真っ先に反応したのは赤い子の横にいる使い魔と私。使い魔っぽい人は当然として、私も刹那の影響で少しだけならベルカ関係の知識あるからね。

 

「和平の使者なら槍は持たない」

 

それを聞いてお互いに顔を見合わせて頭の上に大きな?マークを浮かべるなのはとフェイト。ちょっと難しかったかな。

………ん?でもこれって確か?

 

「話し合いをしようってのに武器を持ってくるヤツがいるかバカって意味だよ!バーカ!」

「んなっ!?いきなり有無を言わさず襲いかかってきた子がそれを言うー!?」

 

あの子の言うことも一理あるんだけど………なのはからしたらそうだよね。

 

「それにそれは諺ではなく、小話のオチだ」

「というか諺ならもっと回りくどい言い回しすると思うなー………そんなど真ん中どストレートな諺聞いたことないよ?」

 

挙句の果てに仲間であるはずの使い魔からもツッコミを受ける始末。この子のキャラがわかってきたかも。

 

「うっせ!良いんだよ、細かいことは」

 

赤い子が軽く自棄になったところで突如結界の一部が爆発。そこから何かが隣のに降下してきました。

 

「「「「「っ!」」」」」

 

そして土煙が晴れたそこにいたのが

 

「っ………シグナム」

「刹那………」

 

そう、シグナムと刹那の2人でした。

 

「ユーノ君、クロノ君!手出さないでね!私、あの子と1対1だから!」

「ちっ………」

 

なのはは赤い子に向かって宣戦布告。クロ助とユーノもまじかぁ………と呆れ顔。

………最初に和平って言ったの誰だったっけ?ぁ、フェイトか。一方、かくいうフェイトも………

 

〈 アルフ、お姉ちゃん。私も………彼女と〉

 

私とアルフに念話で1対1の意思表示。明らかにシグナムって人に戦意を剥き出しにしてる。

 

「あぁ、あたしもヤローにちょいと話がある」

「………」

 

アルフもアルフで向こうの使い魔の人に戦意剥き出し。

 

「刹那は私が抑える。だからみんな、お願いね!クロ助は闇の書を探しといて!」

「って僕をパシらないでくれないk………あぁ、2人ともどっか行った!」

「まぁまぁ、どの道そうするしかないんだし」

 

私はクロ助をパシリながら刹那に目配せ。2人してその場から離れました。クロ助の叫び声とそれを宥めるユーノの声が後ろから聞こえた気がしたけどきっと気の所為。

 

………結局、だーれも和平する気ゼロじゃん!!!

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

───side 刹那

 

アリシアのアイコンタクトを見た後、私は彼女を追ってその場を離れました。何、シグナム達なら任せて問題はありませんし。

 

「デバイス、強化したんですね。カートリッジシステムですか」

「うん。レイジングハートとバルディッシュが負けたの見て、自分も強くならなきゃって思ったんだろうね」

 

先程の場所から少し離れたビルの上、そこにアリシアは着地し両太腿のホルスターから銃を抜いて両手に構えました。

カートリッジは見た感じフェイトと同様のリボルバータイプ。カートリッジ搭載に伴って銃身が少し長くなってますね。それに銃身の下に恐らく剣にも変形するのでしょう、刀身の一部が装飾のように着いてます。ただの銃だった以前と違って、明らかに戦闘用と言った感じでほとんど別物ですね。

 

「なるほど。確かにあれを見ればそうなるのも納得です」

「じゃあ、行くよっ!」

 

私が腕を組んでなるほど、としている所にアリシアがいきなり接近して右の拳での一撃。私はその拳を掴んで止めました。彼女が右手に持っていたデバイスの銃は突撃前に真上に放り投げてます。

 

「今の視線誘導(ミスディレクション)、通用しないんだね」

「真上にものを投げて視線誘導からの不意打ち、しかも銃を構えた状態からの拳。二重に組んだ不意打ちですか。いい作戦ですが、戦でのタイマンでは常套手段です。そんなものが通用するほど、素人ではありませんよ」

「じゃあ、これなら!ブランニュースター!!」

 

右の拳を掴まれたまま、アリシアは銃をほとんどゼロ距離で私に突きつけ連射。私は咄嗟に掴んでいたアリシアの拳を離して距離を取り…

 

「覇王…旋衝破ぁ!」

 

私はその螺旋回転で貫通性能を上げている魔力の弾丸を無理矢理掴んで受け止め、1つにまとめて投げ返しました。ちなみにこれがいつだか言った対射撃型魔導士のとっておきです。要は受け止めて投げ返すだけですが。

一方のアリシア、先程投げた銃は空中で剣へ変形させて磁力のような力で靴裏に吸着。雷の変換資質の応用でしょうか?

 

「旋風脚っ!」

 

軸足で回転して遠心力と断空を乗せた蹴りの勢いで私に吸着させた剣を飛ばしてきました。

この2つの攻撃のタイミングと軌道は完全に一致、私達のほぼ中間で激突し爆発と一緒に相殺しました。

 

「も1つオマケ!ブライトネスエンド!!」

 

アリシアはその爆発で吹き飛んだ剣を空中でキャッチし、元々持っていた銃も剣に変形させて、そのままの勢いで私へと斬りかかってきました。

 

「空破断っ!」

 

私はそれに対して拳で衝撃波を発生させてアリシアへぶつけます。アリシアはそれを上手く受け流してクルクルバック宙しながら私から少し離れた場所へ着地。

 

「銃撃、斬撃、拳撃……それらを得意の高速機動で織り交ぜた一連の攻撃はカートリッジでブーストしてありますか。巧いですね」

「褒めても何も出ないよ。それに、刹那に勝って闇の書のこと教えてもらわないといけないから。でないと、刹那の記憶だって戻す手伝いできない!」

 

再び私達は拳同士をぶつけ合いました。

こうしてヴィータVSなのは、シグナムVSフェイト、ザフィーラVSアルフ、私VSアリシアのそれぞれの戦いが幕を開け、激化していきました。




本音を言うともう少し進めておこうかなって思ったんですが、丁度キリが良かったのとかなり長くなりそうだったのでこの当たりで区切りにしました。
戦闘シーンって難しいけど書いてると楽しくなって長くなっちゃいますね。

ちなみに今回までカッコを色々使ってますが
「」普通の会話
〈 〉デバイスの発言
()心の声
『』通信や念話
が主な用途になってます。

感想、評価よろしくお願いします!


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第18話 謎の仮面

どうもー。最近仕事の後に暇な時間が増えたのでどんどん執筆が進んでます!

ただ、よくよく考えたらA’s編の後にReflection編やりたいなぁと思ってるんですが………Detonationって来年なんですよね。
本編はReflection踏襲しつつのGoD編でってのも考えてるんですが………でもイリス出したいしなぁ。

どうしよう?


───side ザフィーラ

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

「てやぁぁぁぁぁ!!!」

 

何故私の視点が存在しているのか。我ながら甚だ疑問だが………まぁ、いい。今私は敵の使い魔………アルフとか言ったか、と交戦している。

 

「うぉぁぁぁぁぁぁ!!」

「うぐぉぉぉ!」

 

アルフの強烈な拳をクロスした両腕と障壁で防御。単純な威力だけなら我らが覇王、刹那の断空拳にも匹敵するのではなかろうか。

 

「デカブツ!あんたも誰かの使い魔か!」

「ベルカでは騎士に使える獣を使い魔とは呼ばぬ!」

 

こちらでは使い魔で通っているのだろうな。私の一言でアルフは顔をしかめる。

 

「主の牙、そして盾!守護獣だぁぁぁ!!

「同じようなもんじゃんかよぉぉ!!!」

 

アルフは拳に力を上乗せし、私も障壁を強化。お互いの魔力の激突によって爆発。

 

「くっ……」

 

私はそれを利用して一旦距離を取り、他の皆の様子を確認。

 

〈 状況は………あまり良くないな〉

 

刹那、シグナム、ヴィータ、私は善戦しているが敵のカートリッジ搭載によるパワーアップのせいで他の援護に回ることが出来ない。いや、アルフはカートリッジなぞないのだが。

そして後方支援はこちらはシャマル1人に対して敵は2人。シャマルが見付かるのも時間の問題か。

そう考えた私はシャマルへと念話を飛ばす。

 

〈 シグナムやヴィータ、刹那も負けるとは思えんが、ここは引くべきだ。シャマル、なんとか出来るか〉

 

それに応えるシャマルは結界が見えるところからこちらの様子を伺っている。戦闘に不向きだからな、仕方がない。

 

〈 何とかしたいけど………局員が外から結界維持してるの。私の魔力じゃ破れない〉

 

そもそも攻撃型では無いからな。仕方ない。

 

〈 シグナムのファルケンかヴィータのギガント、刹那の5連レベルの魔力でも出せなきゃ………〉

〈 3人とも手が離せん。アレを使うしか〉

〈 わかってるけど、でも!………っ!〉

 

そこでシャマルの念話が急に途切れた。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

───side シャマル

 

〈 シャマル!?どうした!シャマル!〉

 

私の頭にはちゃんと聞こえてるザフィーラの念話。でもそれに反応できない理由………それは

 

「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いであなたを逮捕します」

 

局の執務官に後ろから杖を頭に向けられているから。少しでも怪しまれることをしたら魔力弾がゼロ距離で炸裂しそう。

 

「抵抗しなければ弁護の機会があなたにはある」

 

何とかしないといけないんだけど、どうすることも出来ない………そんな時、不意に横から現れた影が執務官を蹴り飛ばした。

 

「ぇ?」

「っ!ぐぁ!」

 

振り向くとそこには怪しげな仮面を付けた男が1人。

 

「仲間………っ?」

 

少なくとも私は知らない、ヴォルケンリッター以外で私達の仲間は刹那だけ。この人はいったい………?

 

「あなたは「使え」ぇ?」

 

私が何者なのか訪ねようとしたと同時に言葉を重ねてくる。

 

「闇の書の魔力を使って結界を破壊しろ」

「でもあれは!」

「使用して減ったページはまた増やせばいい。仲間がやられてからでは遅いからな」

「っ」

 

ここでページを消費するのはあまり得策ではない………とは言ってもザフィーラも言うようにこのまま戦闘を続けても不利なだけ。この仮面の人が仲間なのかどうかわからない以上戦力にカウントするのはナンセンス。決断するしか………

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

───side 刹那

 

「「断っ空拳!!」」

 

もうこれで何度目でしょうか。斬撃をいなし、射撃は投げ返し、砲撃は弾き飛ばし、打撃はこちらの打撃で応戦。断空拳同士をぶつけるのも数えるのをやめました。

アリシアは見た目相応の細腕なので腕力こそ私ほどありませんが、魔力運用が凄く巧い。身体強化に続いて移動魔法や各種攻撃。彼女の話だと魔力量は私より少し多い程度のはずですが、これ程の多彩な魔法を使いこなしています。

 

(可能なら、撤退するべきなのでしょうが………)

 

先程のザフィーラの念話を聞いていたので今の状況はよく分かっています。恐らくシャマルは局員に見付かったので、最終手段の夜天の書の魔力での結界破壊も困難………どうするべきか。

 

〈 みんな!今から結界破壊の砲撃を撃つわ!上手く躱して撤退を!〉

 

ん?状況が変わったみたいですね。流石シャマル。

 

「「「「応っ!」」」」

 

私達がそれに応じてから程なく、真上から夜天の雷が結界へ直撃。結界破壊を開始。

 

「逃がさないよっ!」

 

それでも尚、私に向かってくるアリシア。

 

「なら、1つ隠し球を披露します。爆砕断空拳………2連!!」

「っ………なっ!かはっ!」

 

私は私に向かってくるアリシアの断空拳を断空拳で相殺し、バランスを崩させます。その次の瞬間、アリシアは急に何かに殴られた様な衝撃と共に近くのビルのフェンスへ吹き飛び直撃。

爆砕断空拳、断空拳複数発分を一撃に乗せて時間差で複数回ダメージを与える攻撃。私は相殺した時の1発しか殴ってませんが、アリシアは2回(最初の相殺とバランスを崩したあとの2撃目)殴られた様に見えていたはずです。今回は1撃目に比重を乗せていたので2撃目は吹き飛ばすだけに留めてダメージは与えていませんが。

 

「刹…那っ!」

「私はここで引きます。アリシアはみんなと合流して防御魔法を。アレの直撃は命に関わります」

「ぇ?ぁ、うん」

 

もしダメージを与えていたら?破壊の雷から逃れるのは困難となり、アリシアが危ない。そういう配慮です。

とりあえず私はこの隙に離れて転移の用意。次の瞬間、結界を破った一撃が降り注ぎました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「「ふぅ………」」

 

刹那の指示のお陰でなんっとか合流と防御に成功。いち早く察したユーノと向こうの守護獣?の人から指示を受けたらしいアルフと連携して砲撃を防ぎきりました。

かなり強烈な砲撃だったから私もアルフも疲れきってグテェー

 

〈 なのはっ!フェイト!アリシア!アルフ!大丈夫!?〉

「ぅ、うん。ありがとうユーノ君。アルフさん、アリシアちゃん」

「間一髪だったよ」

 

みんなで空を見上げると結界は今の砲撃で消滅。夜空が広がってました。もちろん刹那とヴォルケンリッターは誰一人そこには残ってませんでした。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

───side 刹那

 

ギリギリで砲撃を躱してみんなバラバラに転移してから帰宅。電気がついてなかったのでおや?と思って中に入ってからシャマルがはやての携帯へ電話。どうやら独りが寂しくてすずかの所へ行ったみたいです。

今、シャマルが必死に謝罪の真っ最中。

テーブルの上には鍋の用意がもう出来ていて、食材を入れて火を入れさえすれば食べられるようになっていました。シグナムが冷蔵庫を開けると『大盛りやで〜デザートは冷凍庫!』のメモ(はやての似顔絵付き)のついた食材がスタンバイされていました。

 

シャマルは見ての通りですが、いつもは強気なシグナムやヴィータ、寡黙で表情をほとんど表に出さないザフィーラでさえ暗い表情。

かく言う私も普段なら紅茶の1つでも淹れるのですが、そんな気分でもなく………。

シャマルがヴィータに電話を代わってベランダへ出るのを見て、私とシグナムもそれに続きました。

 

「寂しい思いをさせてしまったな」

 

そこで最初に口を開いたのはシグナムでした。

 

「うん………」

「こうなるのだけは防ごうと細心の注意を払っていたのに………私の責任です」

「それを言うなら将としての私の!」

「ううん、参謀の私よ!」

 

3人が3人とも自身の責任だ、と言い張る始末。私達はお互いの顔を見合って、反省。

 

「連帯責任、ですね」

「そうだな………そう言えば」

 

シグナムなりの気遣いでしょうか。この暗い空気を変えようと(したのかは定かではないですが)話題を変えてきました。

 

「お前を助けた男は一体何者だ?」

「わからないわ。少なくとも、当面の敵では無さそうだけど………刹那の知り合い?」

「私に仮面を常に被る趣味の知り合いはいませんよ」

 

そうよね、と返すシャマル。

 

「管理局の連中もこれで本腰を入れてくるだろうな」

「あの砲撃でだいぶんページも減っちゃったし………」

「かと言って私達に時間はあまり残ってません。一刻も早く、はやてには夜天の書の真の主になってもらわなければ………」

「そうだな」

 

これは追々話しますが、はやてには夜天の書の真の主になってもらわなければいけない理由があります。しかも残り時間の定かでないタイムリミット付きで。はやて本人は何も知りませんが、私達には猶予は残ってません。その後、ヴィータに続いてシグナム、私と電話を代わってはやてへ謝罪。私はそれに加えてすずかへのお礼。今の状況で「今度なにか奢ってください」と言われたら断れませんよ。

電話を済ませた私はヴィータとザフィーラも元気づけてから作戦会議も兼ねて夕ご飯の鍋に。良かった、何とかみんな元気が戻ってきました。あったかお鍋の魔力は凄いです。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「カートリッジシステムは扱いが難しいの」

 

あの戦闘から撤退した私達はとりあえずテスタロッサ邸へ集合。先延ばしになった新システム(カートリッジシステム)の説明をエイミィから受けてる真っ最中。

 

「本来ならその子達みたいな繊細なインテリジェントデバイスに組み込むようなものじゃないんだけどね。本体破損の危険も大きいし、危ないって言ったんだけど………」

「この子達、聞かなかったでしょ?」

「そうなんだよねぇ。それだけ悔しかったってことなんだと思う。自分がご主人様を守ってあげられなかったこととか、ご主人様の信頼に応えきれなかったことが。イクスペリオンにしても本来の実力を発揮しきれなかったことも、かな」

 

そんな私達のデバイスの姿勢に感動して。呼びかけてあげるとレイジングハートとバルディッシュはそれに答えました。イクスペリオンは………元々寡黙(と言うより無口)だからピカピカって光って応答。ちなみに待機形態はバルディッシュの銀色バージョン。

 

「モードはそれぞれ3つずつ」

 

ここから空気を変えて新システムの説明へ。

 

「レイジングハートは中距離射撃のアクセルと砲撃のバスター。フルドライブはエクセリオンモード。バルディッシュは汎用のアサルト、鎌のハーケン。フルドライブはザンバーフォーム。ハイペリオン改めイクスペリオンは銃のガンフォームの剣のセイバーフォーム。フルドライブにベリルスマッシャー」

 

私のフルドライブだけ仰々しい名前なのは気のせいだよね?

 

「破損の危険があるからフルドライブはなるべく使わないように。特になのはちゃんとアリシアちゃん」

「「は、はいっ」」

 

あれ?私達だけ名指し!?

 

「なのはちゃんはフレーム強化したんですするまでエクセリオンモードは起動させないでね。アリシアちゃんは………さっきの戦闘みたいな放り投げてから蹴り飛ばしたりとかみたいな無茶苦茶は厳禁ね」

「はい………」

「いや、あれだけ大きいとやりたくても出来ない………よ?」

 

ベリルスマッシャー、起動はしてないけどデータで見る感じ大きいから。頑張ればできないこともないけど、無理は禁物、かな。

 

私達から少し離れたソファではリンディさんとクロノが作戦会議をしています。

 

「問題は彼らの目的よね」

「えぇ。どうも腑に落ちません。彼等はまるで、自分の意思で闇の書の完成を目指しているようにも感じますし………明らかに闇の書とは関係の無い刹那·ストラトスの協力もあるあたり不自然すぎます」

 

とりあえず私はなのは達とそっちに合流。

 

「うん?それって何かおかしいの?刹那ってヤツの事は兎も角、闇の書ってのも要はジュエルシードみたくすっごい力が欲しい人が集めるもんなんでしょ?だったら、その力が欲しい人の為にあの子達が頑張るってのもおかしくないと思うんだけど」

 

確かに………アルフの意見ももっともだね。私も詳しいことはよく知らないからこの機会に聞いておこうかな。

 

「クロ助………ううん、クロノ、リンディさん。私達、当事者だけど闇の書の事は何も知らない。だから教えて!でないと説得も何も出来ない!」

 

私がクロ助呼びを訂正した事で私の本気さが伝わったのかな。クロノとリンディさんは顔を見合わせてからクロノが説明を始めました。

 

「第1に闇の書の力はジュエルシードみたいに自由な制御の聞くものじゃないんだ」

「先の事件で居なかったアリシアさんの為に補足すると、ジュエルシードは21個集めるとその莫大な魔力で所有者の願いを叶える力があるの。プレシアはその力でアルハザードへ行こうとしたわね」

 

それをなのは達が阻止して、ママと私の本体は虚数空間に落ちていったんだよね。

 

「仮にプレシアが闇の書で同じことをしたとしても不可能ね。完成前も完成後も純粋な破壊にしか使えない。少なくともそれ以外に使われたという記録は1度もないわ」

「あぁ、そうかぁ」

 

ジュエルシードみたいなのならアルフの言う説もあり得たんだろうけど、破壊にしか使えないのならほぼゼロだね。だってこの平凡な世界でそんな破壊行動するメリットある?ないでしょ?

 

「それからもう1つ。あの騎士達。闇の書の守護者の性質だ」

 

刹那以外の4人のことかな。

 

「彼等は彼等は人間でも使い魔でもない」

「「「「「っ!?」」」」」

 

この一言で私達は息を飲みます。あれ?エイミィも!?知らなかったの!?

 

「闇の書に合わせて魔法技術で作られた擬似人格。主の命令を受けて行動する………ただそれだけのプログラムにすぎない()()なんだ」

「あの、使い魔でも人間でもない擬似生命っていうtあいたっ!?」

「私みたいなって言おうとしたでしょ?」

 

クロ助の説明を受けてフェイトが自棄発言をしようとした途中で可愛い悲鳴。だって私がデコピンしたもん。

リンディさんとクロ助も少し怖い顔してるし。

 

「フェイトさんは生まれ方が少し違っていただけでちゃんと命を受けて生み出された人間でしょ?」

「検査の結果でもちゃんとそう出てただろ?変な事言うものじゃない」

「はい、ごめんなさい」

 

この穏やかな(クロ助に関しては若干疑問が残るけど)2人がすごい剣幕でフェイトへ説教。フェイトがそう言いたくなる気持ちもわからないでもないけど、違うってちゃんと証明されてるんだもん。でも、わかればよろしい!

 

「どちらかって言うと私の方がそれに近いよ?人格と命は私本人のだけど体は擬似的なものだしね。イクスペリオンの実体化維持を切れば私紛れもない幽霊だもん」

「………すまん、アリシア。そっちは否定出来ない」

「ぁははは………とりあえずアリシアさんはそれを笑いのネタにするのは辞めましょうか?」

 

場の空気が暗くなってきたので、私はいつものネタを出してみました。のはいいんだけど、返ってきたのは苦笑とリンディさんからの禁止宣告。がびーん

 

この後エイミィさんがモニターで色々教えてくれたんだけど………まとめると守護騎士の人達は

 

①闇の書内蔵プログラムが人の形になった姿

②闇の書の転生、再生と共に様々な主を渡り歩く

③意思疎通の対話能力はある(過去に実績あり)

④ただし感情を見せたのは前代未聞

⑤当然だが役目は闇の書の蒐集及び主の護衛

 

とのこと。そもそも今は主が誰かわからないから何とも、な部分はあるけどね。

 

「でも、あの帽子の子…ヴィータちゃんは怒ったり悲しんだりしてたし………」

「シグナムからもはっきり人格を感じました。成すべきことがあるって。仲間と主の為だって」

「蒐集と護衛以外の目的………か」

 

感情を見せた守護騎士達、本来の機能を超えた彼女らの動き、言動。みんな考え込んじゃいました。

 

「まぁ、それについては捜査に当たっている局員の情報を待ちましょうか」

「転移頻度と刹那·ストラトスの存在からして主がこの付近にいるのは確実ですし。案外、主が先に捕まるかも知れません」

「ふぇ?刹那君が主って訳じゃないの?」

 

たぶんクロ助と私、リンディさん以外みんなが思っていることをなのはが真っ先に口にしました。

 

「なのは、考えてみて。闇の書の前回の転移は11年前。刹那はまだ1歳。それに私が事故でフェイト達と出会う直前まで刹那とずーーっと一緒だったんだよ?」

「ぁ、そっか。仮に刹那君が主ならアリシアちゃんが知らないはずないもんね」

 

刹那が私にずっと黙ってたのなら話は別だけど、と続ける。けど、自分で言ってそれは無いと断言出来る。もしそうなら刹那が荒れてたあの頃に起動してるはず。そもそも刹那、嘘とか苦手だし。

 

「あぁ〜。刹那ってヤローが主じゃないんならわかり易くていいね」

「だね。彼が主じゃないなら探す手間はあるけど、闇の書が完成前なら持ち主はごく普通の魔導士だろうし」

「うん。それにしても、闇の書についてもう少し詳しいデータが欲しいな」

 

そこでユーノ(フェレット)をじっと見つめて近寄るクロ助。何事?

 

「ユーノ。明日から少し頼みたいことがある」

「うん?いいけど?」

 

まさか、この頼みたいことがあぁんな大変なこととは………この時のユーノはまだ知らないっ!

なぁんて、言っても締まらないか。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

───side フェイト

 

今私はなのはを見送ってからベランダに出ました。

 

「ねぇ、フェイト」

「お姉ちゃん、どうかした?」

 

と、後ろからお姉ちゃんもベランダに出てきて、持ってたホットココアを私に渡しながら横に並んで外を眺めます。

 

「フェイトは刹那のことどう思う?」

「どうって?」

 

ぇ?どういう………?

 

「シグナムやヴィータ達守護騎士は、何かしらその先の目的があるとは言っても、とりあえずは蒐集が目的で動いてるじゃん?」

「そうだね。そこは間違いないと思う」

 

ぁ、そういう事。抽象的過ぎてわかんなかった。

確かに、成さねばならぬことがあるとは言ってたけど、要は闇の書を完成させないとそれが出来ないってことだもんね。

 

「じゃあさ、刹那の目的は?蒐集するメリットは?守護騎士の人達のそれとは違ってなぁんにもわからないんだよ」

「言われてみれば………確かに?刹那に力が入る訳じゃないし………そもそも刹那って確かにベルカの記憶が………?」

「うん、あるよ。クラウス·G·S·イングヴァルトの記憶が」

 

言われてみれば、シグナム達とは違って刹那って人の行動目的が読めない。特にベルカの記憶があるなら………当時にも闇の書は起動してるだろうから、闇の書に関しては私たちよりも詳しいはず。なら、純粋な破壊にしか使えないことももちろん………

 

「さっきの戦闘でね、刹那のこの拳をぶつけ合って1つだけわかったことがあるんだ」

 

頭を捻る私を他所にお姉ちゃんは続けます。

 

「今の刹那、すごく強い。刹那が強いってことはそこに断固とした意思があるってことなんだ」

「断固とした意思?」

「うん。刹那言ってた。私の強さは守る意思なんですって」

 

………口真似のつもりなのかな。いや、刹那の声、あまり聞いたことないんだけど。

でも、守る意志………か。

 

「ということは、刹那は誰かを守ってる?」

「だと思うよ。まぁ、その誰かってのは間違いなく主なんだろうけど………護衛、じゃなくて守る。何から?」

 

私は刹那と交戦した訳じゃないけど、お姉ちゃんの言いたいことはわかる。私も前の事件の時、お母さんのためにって頑張ったもん。私の場合少し違うかもしれないけど、要はそういうことでしょ?

 

「ぅーん………何からって言われると………」

「やっぱり、情報待ちかぁ………」

「お姉ちゃんが本人から聞「無理」くってえぇ!?」

 

本人から聞きくってのは?って言おうとしたところに先回りされちゃいました。

 

「刹那、口硬いもん。私達に聞かせてメリットがあるのなら兎も角、蒐集して闇の書を完成させようとしてる時点で私達に話すメリットなんて無いもん」

「た、確かに………」

 

お母さんもジュエルシードを集める理由、結局本人からは教えてもらえなかったもんね。だとすると………

 

「なら、さ。刹那をお姉ちゃんがぎゃふんって言わせて倒せばいいよ。なのはだってわからず屋の私にそうして言葉届かせてくれたもん!」

「やっぱりそうだよねぇ。確かにフェイト、頑固でわからず屋な所あるもんね。刹那と一緒」

 

もしかしてお母さんが私を生み出した時、お姉ちゃんの人格に刹那のそれも混ぜてた………?3人で仲良かったみたいだし、可能性はあるかも。

 

「ほら、フェイト。今日は一緒ににお風呂入ろっ!ぁ、もちろんベッドの添い寝付き!」

「ちょ!?お姉ちゃん!?」

 

深刻そうな顔から一転、満面の笑顔を私に向けたお姉ちゃんは部屋の中へ。私はそれを真っ赤になりながら追いかけました。




8000字………だとぉ!?

最初のザッフィー視点とシャマル視点はカットしても良かったんだけど、ザッフィーの守護獣だぁぁ!ってのやりたくて(((

次話の事も考えながら進めてたらこんななっちゃいましたっ!
ちなみにあれです。アリシアのフルドライブ、ベリオスマッシャーってのはフレームアームズ・ガールのフレズベルクのそれです。刃はレモン色だけど。
フレームアームズ・ガールがわからない人はGoogle先生に聞こう!

感想や評価、待ってます!


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第19話 小さな意志

どもども、ルイスです。

ネロ祭!私は初めてなので少し頑張っちゃいます。まぁ、コツコツ周回ってのは少々苦手なんですけどね。

今回はほとんど過去の話ですねー。と言っても刹那視点なので色々とカットしまくってますが。

では、どうぞ!


翌日昼前頃 八神家

 

「シグナム、刹那。はやてちゃん、もうすぐ帰ってくるそうですよ」

 

先程まで2階にいたシャマルがはやてからの連絡を受け、リビングまで降りてきました。

あのあと夜が明けてからヴィータは蒐集に。シグナム、シャマル、ザフィーラ、私は自宅待機。出ているのがヴィータだけなのではやてが帰ってきた時に言い訳しやすいですしね。本来ならヴィータも含めて帰ってきたところを謝罪するべきなんでしょうが………如何せん私達には時間が無いのでヴィータがゴリ押しで蒐集へ行ってしまいました。

ちなみにリビングは照明もつけずに、しかもカーテンも閉め切っているので真っ暗。唯一の光源はカーテンの隙間から差す日差しのみ。シグナムからこうして欲しい、と希望があったのでこうしてます。集中するのに丁度いいんだとか。

ちなみに私はベランダでトレーニングしてます。カーテンは閉めていますが、戸は開いているので声は聞こえるんです。さて、私もそろそろ中に入りましょうか。

 

「そうか」

「ヴィータちゃんは………まだ?」

「かなり遠出らしい。夕方までには戻るそうだ」

 

側に置いておいたタオルを拾い、汗を拭きながら中へ。丁度シグナムが冷蔵庫から飲み物を取り出したところでした。

 

「ほら、刹那も」

「ありがとうございます。私も、はやてが帰ってきたらヴィータに合流しますよ」

 

物のついででしたが、シグナムが私の分も取り出してこちらへひょいと放り投げます。私はそれをキャッチしてキャップを開けてぐいっと一口。

 

「あなたも、随分変わったわよね」

「うん?」

「なんの話ですか?」

 

そこに唐突にシャマルから振られた話題。唐突すぎてなんのことやらです。

 

「シグナムのことよ。昔はこんな風には笑わなかったわ」

「そうだったか?」

「そう言えばそうですね。私はベルカ時代しか知りませんが、当時は何か切り詰めていたような印象でした。少なくとも笑ってませんでしたね」

 

シャマルの言う昔がどれほどのものかはわかりませんが、古代ベルカしかシグナム達を知らない私からすれば今はよく笑うようになったと思います。側にずっといたシャマルすらそう言うのですから間違いないでしょうね。

 

「あなただけじゃない。私達全員、随分かわったわ。みんなはやてちゃんが私達のマスターになってからよね」

「………そう言えば、もうあれから半年以上になるんですよね」

 

 

 

 

 

 

 

───約半年前 6月4日0時過ぎ

 

あれは私が部屋の片付けを終えてお風呂に入ってから少ししてからでしたね。もうそろそろ上がろうかな、という時に突如大きな魔力反応。何が起きたのか、おおよその予想はできたので、すぐに体を拭いて服を着て、髪を拭きながら2階へ。髪が長いので乱暴に拭くわけにはいきませんから。

そして私は迷わずはやての部屋へ。本来ならノックをしてから入るのですが、緊急事態なので。後で謝っておきましょう。

 

「何者だ!」

「なっ!?」

 

不意に現れた私へ唐突にシグナムからレヴァンティンの縦斬り。私はギリギリでそれを白刃取り。自分でもよく出来たと思います。

 

「久し振りですね、シグナム」

「その虹彩異色………まさかっ!?」

 

私が誰かわかったのか、すぐに剣を引いて私に跪くシグナム。恐らくさっきまでもはやてにしてたんしでしょう。

 

「クラウス殿下っ、申し訳ありません」

「クラウスは私の祖先です。私はクラウスではありませんし殿下でもありません。はやての………あなた達の主の義兄です。とりあえず、状況を説明してください」

 

まぁ、こんな虹彩異色はそうそういないですからね。髪の色も込で考えればクラウスに結論が行くのは当然でしょう。とりあえずは将のシグナムからわかる範囲で今の経緯の説明を受けます。その間に私は髪を整えてタオルを頭に巻きました。ほら、女性が風呂上がりによくやってるアレです。

 

「要は闇の書………もとい夜天の魔導書が起動して、同時に守護騎士たるあなた達も現界。それにはやてがビックリして気絶、と」

「そんなところです」

「なるほど………ぁ、シャマル。はやてをベッドに入れて布団かけてあげておいてください。まだ春先なので夜は冷えますから。私達は下に降りてますね」

 

はやての部屋で話し込むわけにも行かなかったので、私はシグナム、ヴィータ、ザフィーラを連れてリビングへ。

 

「適当に座ってください。紅茶淹れますね。ぁ、お腹すいてませんか?何か軽く作りますよ」

「ぁ、えっと………その」

「ならさ、何か作ってよ。前の主の時からあまり食べてなかったから腹減っててしゃーねぇんだよ」

「おいヴィータ。無遠慮過ぎるぞ。そもそも殿下に家事など」

「腹減ってるのは事実なんだからいいだろ!?」

「ザフィーラ、構いませんよ。調理や家事ははやてと2人でやったりしてますし私は大丈夫です。それと先程も言いましたが、殿下ではありません。ここではごく普通の一般人です」

 

私のこの対応に戸惑うシグナムを傍目に遠慮のないヴィータ。そんなヴィータを叱るザフィーラ。やはり、あまりいい扱いは受けてなかったみたいですね。

とりあえずザフィーラの言葉の一部を訂正し、降りてきたシャマルの分も含めて夜食の用意。時間も時間なので簡単に出来るチャーハンでも。

このチャーハンを口の中に掻き込む皆(主にヴィータ)の姿は忘れられそうにありません。

 

「すみません、深夜なので余り物ではこれが精一杯でした」

「いえ、お気になさらず」

「すげー美味かった!」

「むしろ感謝するべきはこっちの方よ」

 

私としては昔のシグナム達はあまりロクに食べていたイメージがなかったので気を利かせただけなんですけどね。とりあえずみんながチャーハンを掻き込んでいる間に準備した紅茶とミルクを出して私も座ります。

 

「本当なら病院に担ぎ込むのがいいんでしょうが………シグナム達が不審に思われるのは間違いないので今はやめておいた方がいいですね」

「すみません………」

「皆が気にすることではないですよ。ぁ、紅茶熱いので気を付け「あちっ!」てって………遅かったですね」

 

この後のことを決めようとしたところ。と言っても主たるはやては気絶中(シャマル曰くそのまま寝たらしい)なので、決めるのは現状の対処だけですが。

 

「………夜も遅いですし、それを飲んだら今のところは寝て、明日全部決めましょう。布団は………毛布で我慢してもらうしかないですね。そこはすみません」

 

私はヴィータの紅茶にミルクを入れて混ぜながらフーっと冷まします。もちろんすぐに冷めたりはしませんが。

その後私の部屋へみんなを案内し、ヴィータとシャマルをベッドで寝かせて私とシグナム、ザフィーラはリビングで寝ました。

空き部屋もあったのですが掃除しないといけないので、今のところは私の部屋で寝てもらいました。ちなみにシグナムはベッドの広さが足りず、リビングで寝ると申し出たので私とリビングで。ザフィーラは獣形態でその側に。

翌朝、はやてがまたビックリしないようにはやてより少し早起きして朝ごはんの支度。もちろん米も量が少ないと思い、追加で炊きました。

それからはやてへ朝ごはんついでにシグナム達のことを紹介も兼ねてすべて説明しました。その後になるほどなぁと言うはやてに付いてはやての部屋へ。

 

「覚醒の時と眠ってる間に闇の書の声を聞きませんでしたか?」

「うーん………私魔法使いとちゃうから漠然とやったけど………ぁ、あった」

 

机の上の小物入れの中をゴソゴソと何か探すはやて。すぐに目当てのものを見付けたようです。

ちなみにヴォルケンリッターのみんなは入口近くでみんな跪いてます。私はその後ろで苦笑いを浮かべながら扉に寄りかかってます。

 

「わかったことが1つある。闇の書の主として守護騎士みんなの衣食住、きっちり面倒みなあかんゆうことや。幸い住むところはあるし、料理は得意や。兄やんもよぉ手伝ってくれるし」

「では、ザフィーラと2人で先に空き部屋の掃除始めておくので女性陣の採寸しておいて下さい。ザフィーラの場合、普段を獣形態でいるなら服は不要でしょうしね」

「了解や。採寸終わったら私はみんなの服買って来る。この格好でおらすわけにはいかへんから」

 

その後ザフィーラと空き部屋の清掃を開始。しばらくしてヴィータと少し頬が紅潮したシグナム、シャマルの3人も合流。ちなみにこの時の採寸がきっかけで後々はやては揉み魔へと覚醒………することはまだ誰も知りません。

 

 

 

 

 

 

 

 

───現在

 

「そう、本当に。今までの主とは何もかもが違っていた。主はやての我々への対応はこれまでの主のように高圧的であったり道具のように扱うものでもなく」

「家族として迎え入れるような、ですか?」

「はい。そんなところです」

「きっと、嬉しかったんですよ。ずっと独りきりで、私が一緒に住むようになったのもほんの少し前。はやてにとっては文字通り家族が増えたのですから」

 

石田先生曰く、私が加わっただけでもはやては変わったらしいので、この時のはやての気持ちは想像に難くなかったです。早くに両親を亡くしたはやてにとって、本来ならもう手に入らないものが手に入ったんですから。

 

「ですから、あの夜の………主はやての蒐集するのは良くない、という言葉は私の胸に刺さりました」

「はやては自身のことよりも他人のことをよく考えられる良い子ですからね。他人の迷惑になるのなら反対するでしょう」

「ですが、先月のあの決意。後悔はしていません」

 

 

 

 

 

 

 

 

───1ヶ月程前

 

それから1ヶ月ほどしてからでしたね。いつもの検査のあと、私とシグナム、シャマルが石田先生に呼ばれて。行ってみるとはやての命の危機を告げられて。なんでも、半年前から足の麻痺が上へと進行してきてるとか。

 

「何故っ!何故気付かなかった!」

「ごめんっ!ごめんなさい!」

「お前にじゃないっ!自分に言っている」

 

壁を思いっ切り殴り付けるシグナムと、その側のベンチで泣き崩れるシャマル。私も2人ほど表に出してはいませんが、側の壁に寄りかかって拳を強く握りしめ………正直かなり苛立っていました。もちろん、シグナムやシャマルに対してではなく、はやての異常に気付けなかった私自身に。

はやての足の麻痺は当初の私の推測通り闇の書の呪い。幼少期から共にあったのではやてと密接に繋がっていた闇の書はリンカーコアが未成熟なこともあって、はやての肉体機能、生命活動を蝕んでいました。そしてそれははやての最初の覚醒───闇の書の起動したあの夜───で加速。

 

「私達4人の活動維持のため、極わずかとはいえ主の魔力を使っているのも無関係とは言えないはずだ」

 

検査のあと、1度帰宅してからヴォルケンリッター4人と私は外で集まって事の経緯をザフィーラ、ヴィータにも説明。あの時の落ち込むヴィータは見ていて痛々しかったです。

 

「助けなきゃ………はやてを助けなきゃ!」

 

はやてに1番懐いていたヴィータだからこそ、余計に、そう思ったんでしょうね。目から涙を流してそう訴えるヴィータからは、とても強い意志が感じられました。

もちろんシャマルの治癒でなんとかなるレベルの話ではなく、この4人に出来ることはほとんどないと言っていいくらいに少なかったです。

 

「1つ、方法が無いでもないですよ」

 

私はそんなみんなを見るに見かねて口を開きました。

 

「はやては反対していますが………闇の書を完成、させましょう。そうすれば、きっとはやても」

「そうか………主として真の覚醒を得れば!」

「我らがある時の病は消える。少なくとも進みは止まる!」

「そういうことです。もちろん、私も手伝います」

「しかし、刹那は闇の書には」

「無関係、ですか?私がはやての義兄だと言うだけで協力する理由としては十二分だと思いますが?」

 

私としても可能ならはやてに黙って蒐集なんて方法は取りたくはありません。しかし、病気の原因が闇の書の呪いである以上、それを完成させる以外に道はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

───再び現在

 

「さて、と」

 

はやてが帰宅してから私は外出。先にも言ったようにヴィータと合流するためです。

私が蒐集に力を貸す理由。もちろんはやてを助けたいというヴォルケンリッターと共通のものもあります。が、私にはもう1つ。闇の書、もとい夜天の魔導書の封印。

このことはこの4人には言えませんが、その方法もおおよその目処は付けてあります。最後は、この4人をも裏切るような形になりそうなので、これも可能なら避けたい方法ではあるんですが………。

その方法。それは夜天の魔導書のページを全て埋め、はやてを覚醒させる。そしてそこからはやてが完全に夜天の魔導書と一体化して真の覚醒をするまでの僅かなタイムラグの間に夜天の魔導書の中枢へ侵入。防衛プログラムを全て一気に封印する方法。

当然、防衛プログラムに守護騎士システムも含まれているのでシグナムらは間違いなく消えてしまいます。理論上可能、と言うだけなので実際に出来るかどうかはまた別問題。かなり危ない橋を渡ろうとしているのは百も承知。出来ることならシグナムらのことも助けたい管理者権限が使えれば切り離すことも可能でしょうが………ページを埋めてはやてが覚醒した時点ではやては無意識下に置かれるはずなので、万に1つも可能性は残ってません。

はやての命のために、はやてをここまで愛してくれてる4人を犠牲にする。しかもそれははやては絶対に望まないことで、恐らくその時ははやては私を軽蔑するでしょう。1番の悪役は私ですね。自分でも笑えてきます。

古代ベルカで夜天の魔導書に敗北してからクラウスも後々のために………対策を練っていたのですが、それでもこれしか結論は出ずに。いえ、従来通りの夜天の魔導書ならそれで良かったんですが、主たるはやてがそれを望まないってはっきりわかっているが故に。

 

「我ながら………最低ですね」

 

私はそう呟いた後、転移。蒐集へと向かいました。




そう言えば今の書き方に変えてからフルで刹那視点ってのは初かな?過去の回想とかははやて視点がやりやすいんですけど、進行上はやて視点に入りにくかったのでこうなりました。
シグナムと刹那の模擬戦とかも入れたかったんですが、書いていくとめっちゃシリアスな流れになって、どうも模擬戦!って雰囲気じゃなくなったのでこれもカット。

というか我ながらオリ主がヘタしたら仮面よりも悪役やってる気がします。というか黒幕が刹那って感じですね。主人公なのに。

感想、評価等あればよろしくお願いします!


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第20話 誇り

そう言えばタグにFA;Gでキャラと武器だけって追加したんですけど、これってキャラ出るって自分でもネタバレしてるような気がしてきましたっ!いや、もう手遅れですけどね。

結論からいえば出ます。まぁ、かーなーり先ですけど。少なくとも前書きでこのこと書いたことを忘れる程度には先ですね。だから問題なし!

………なのかな?


───side アリシア

 

「ぅーん………」

「どれがいいんだろう…」

 

はい、私は今絶賛お困り中です。何に困ってるかって?携帯選びだよっ!なのははもちろんすずかにアリサ、紗綾も持ってるもん。

ちなみに最初はフェイト達3年生組だけが教室で悶々してたんだけど、私と紗綾もそこに加わったから場所変更。今は屋上!

 

「種類が多くてどれにすればいいやらぁ………」

「そう言えば加藤さんはどんなの使ってるんですか?」

「アリシアちゃんみたいに紗綾で良いよ、フェイトちゃん。なのはちゃんにすずかちゃん、アリサちゃんも」

 

参考にフェイトが紗綾にどんなのなのか見せてもらうことに。苗字にさん付けで他人行儀だったのを修正させつつえーっと、と携帯を出してくれる。

 

「あ!そのモデルってド〇モの最新モデルですよねっ!」

「ぇ?ぁ、うん。そうだよ」

 

それを見るや否やすぐ食いつくアリサ。見ただけでわかるってすごいなぁ。

なんでもそのド〇モの最新モデルはメモリや操作性はもちろん、カメラも綺麗で使いやすいらしい。でも個人的にデザインは好みじゃないかも?

みんなに色々とアドバイス貰ったんだけど、まとめると

 

「ぶっちゃけ新しいモデルならほぼ同じっ!」

 

とのこと。もちろん違いはあるけど大体同じなんだって。結果、リンディさんに頼み込んで買ってもらったのは紗綾と同じド〇モの最新モデル………の1つ前のやつ。紗綾のと違って若干カメラが荒い(と言っても私には違いがわからなかった。かいぞーど?)けど操作性は凄くいいらしい。ちなみにフェイトも同じやつで私が水色、フェイトが黒。

その後でみんなで番号教えあって登録、それからなのはに教えて貰って刹那にもメールを送って………おきたいんだけど事件の間は我慢しよう。

その後みんなと別れて、私とフェイトの部屋へ。もちろんなのはは一緒に。

 

「そっか、アリサとすずかはバイオリンやってるんだね」

「メールでよくお稽古の話とか教えてくれるんだよ」

「刹那はそういう話、ほぼ皆無だなぁ。刹那、格闘技一筋だから。でも元々王族だから嗜みで出来ちゃったり?」

「「………有り得る」」

 

うん、自分で想像してみたけど画になる。カッコよかった!

丁度そこにエイミィが買い物から帰宅。3人でその片付けの手伝いをすることに。

 

「艦長、もう本局に出掛けちゃった?」

「うん、アースラの武装追加が済んだから試験航行だって。アレックス達と」

「武装ってーと………アルカンシェルか。あんな物騒なもん最後まで使わずに済めばいいけど」

武装(ぶっそう)なだけに?」

「うん、ぶっそうなだけに………ってちっがーーう!」

 

エイミィさんナイスノリツッコミ。私のボケもちゃんと拾ってくれる。クロ助は最近黙ってゲンコツだもんなぁ………

 

「にゃはは………でも、クロノ君も居ないですし、戻るまではエイミィさんが指揮代行だそうですよ?」

「責任重大」

 

それを聞いて、それもまた物騒なぁ、と顔を引き攣らせてフェイトの持ってたカボチャをなぜか撫で始めるエイミィ。現実逃避しても解決しないぞー。

そしてそれを片手で上からふんすと掴んで手に持つ。あれって相当握力いるはずじゃあ………意外と怪力なのかな?

 

「ま、とは言えそうそう非常事態なんて起こるわけが………」

 

ビービー

 

あるんだよなぁ、とでも言うかのようになる非常事態の警報。

 

「エイミィさんがフラグ立てるからァ………」

「私のせい?私のせいなのかっ!?」

 

ちなみに持っていたかぼちゃは放心した時に落としちゃったけど、私がキャッチしました。食べ物は大切に。

それからみんなで管制室に。マンションの1室を改造したらしい。今緊急警報のあったエリアを調べてるとこ。

 

「………文化レベル0。人間は住んでない砂漠の世界だね」

 

映像に映るのは砂漠の上空のシグナム、刹那、ザフィーラ。何かと戦ってる。

 

「結界を張れる局員の到着まで最速で45分………あぁ!まっずいなぁ」

 

ということは45分以内に逃げられたら一環の終わりってことかな。確かにそれはマズそうだ。

 

「エイミィさん。それなら私とフェイト、アルフで先行して時間稼ぐよ。あのヴィータって子が見当たらないからなのははここで待機。いざって時に備えてて!いいよね、フェイト」

「もちろん」

「ぇ?ぁ、うん。お願い。必要無いかもしれないけど、現場ではアリシアちゃんが指揮取ってね。私もサポートするから」

「そのつもり!」

 

私とフェイトはすぐにカートリッジとデバイスを手に取って砂漠の世界へ転移しました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ………はぁ………」

「ふぅ………」

 

今私とシグナム、ザフィーラは砂漠の世界でその世界の生物のデカいミミズ???のようなのと戦闘中。ヴィータが苦戦しただけあって、しかも2体いるので私とシグナム、ザフィーラの3人がかりなのになかなか仕留められません。地中に逃げ込まれたら攻撃できませんし。

 

「ヴィータが、手こずるわけだな」

「図体も大きい、それなのに意外と素早い。地中に逃げれる。かなり厄介です………っ!シグナム後ろっ!」

「なっ!」

 

シグナムが1度息を整えてカートリッジを補給しようとしたその時。突如真後ろから件のミミズが現れてシグナムを急襲。噛み付きの直接攻撃こそ避けましたが、その後の触手からは逃げ切ることが出来ずに雁字搦めに。

 

「しまった!」

「すみませんシグナム、私も援護できませんっ!」

 

かく言う私も他のミミズの攻撃を捌きつつなのでそのシグナムを助けることができない状態。ザフィーラも同じく。

そしてそのままシグナムを締め上げるミミズ。かなりやばい状況です。

その次の瞬間。空から唐突に電撃が降り注いでシグナムの拘束を解き、ミミズを攻撃。

私とシグナムが空を見上げるとそこには魔法陣を展開したフェイトとアリシア。電撃はフェイトのものでしょうね。

 

「ブレイクっ!」

 

フェイトがそのまま手を振り下ろすと強烈な電撃が再度発生。ミミズを砕きました。

ただミミズはまだ残っています。その生き残りがフェイトとアリシアへ強襲。もちろんそれを見過ごす彼女らでもなく。

 

「ライジング………スラッシュ!」

 

アリシアはそれを両手の剣で切り刻み、果ては盛大な縦斬りで真っ2つに。ミミズは全て亡き者にされました。

 

「礼は言わんぞ。テスタロッサ」

「助けてもらった、とは思いたくないですしね」

「お邪魔でしたか?」

「むぅ!素直じゃない!」

「蒐集対象を潰されてしまった」

「まぁ、悪い人の邪魔が私達の仕事ですし」

 

ごもっとも。それを言われたら言い返せません。

 

「そうか。悪人だったな、私達は」

「ですね。フェイトの方の蒐集、お願いしても?」

「構わんさ。お前はあのアリシア、とかいうヤツの足止め、任せても?」

「わかりました」

 

私はアリシアを見てこっちへ付いてこい、とジェスチャーで指示。向こうもそのつもりだったらしく素直についてきました。

 

「前戦った時と立場が逆になりましたね」

「ぇ?あぁ、そう言えばあの時は私が前だったね」

「ですね。さて、これくらいでいいでしょう」

 

シグナム達から数キロほど離れた場所までアリシアを誘導。フェイトもアリシアも高速機動タイプ、シグナムもフェイト程速くはないにしても、それを追うにはそれなりに動き回る必要があります。私に関しても同じく。アリシアは射撃型というのも相まってこれくらい離れないとお互いの邪魔になりかねない。

 

「逃がしてもらえない上にスピードだけなら私の方が下。なら戦うしかないですね」

「可能なら和解したいんだけどね。無理でしょ?」

「成すべきことが、ありますから!」

 

丁度そこで遠くの空で爆発音。フェイトとシグナムの戦闘音でしょう。その音と同時に私達は距離を縮めて挨拶がわりに断空拳。

しかしアリシアはそれをひらりと避けて私の後ろへ回り込み、魔力弾を連射。少々予想外でしたが、避けることには成功。ただ、その魔力弾のせいで砂埃が舞い上がって私の視界は塞がれました。

 

「ちっ!」

 

そこに留まるのは危険、そう判断して砂埃の上まで高くジャンプ。

 

「断空拳っ!」

「っ!崩雷!」

 

それを待っていたようなタイミングでアリシアの真上からの断空拳。私はそれを受け止めつつ肘打ちの崩雷。しかし、それもアリシアには受け止められました。

 

「「旋風脚っ!」」

 

すかさず1歩後退し、回し蹴り。アリシアも同じく蹴りをぶつけてきました。アリシアはすぐに銃を構えつつバックステップで距離を取ろうとしたので私はそれを追うように正面へステップ。

 

「アリシアの戦闘スタイルはヒットアンドアウェイ。なら離れる時に同時に私も加速すれば「ずっと私の距離で戦える?」なっ!」

「残念っ!ここは私の距離だよっ!」

 

突如密着状態のアリシアが視界から消えました。次の瞬間、私は下から顎をカチ上げられて。

 

「っ!空破断っ!」

「っ!」

 

そのせいで一時はバランスを崩しましたが、すかさず空破断の衝撃波を放ち、それはとっさに防御をとったアリシアへ直撃。お互いに少し離れた砂の上に落下。

 

「っ!密着状態からその場でのバック宙、その勢いでの旋風脚ですか」

 

口の中で折れてしまった歯を吐き捨て、さきの攻撃を自身の中で確認。

 

「裏をかいたはずが、逆に裏をかかれました」

「私も、あの状況で反撃が来るって思ってなかったけどね」

 

アリシアも口の中の砂をぺっぺっと吐き出しつつ私に答えてくれました。

その後も何度も何度も打撃と射撃、斬撃の応酬を繰り広げて。もっとも、私は打撃だけしかしてませんが。

私の体は所々に切り傷やアザが。アリシアも腕にいくつものアザが出来てます。流石に顔は抵抗があるので狙ってません。

 

「ねぇ、刹那………っ!」

「なんです、か!」

 

お互いに攻撃の応酬をしながらなのに、アリシアが私に話しかけてきたので一旦距離を取って息を整えます。

 

「刹那の目的って、何なの?」

「………はい?」

「普通に考えたら蒐集なんだろうけど、それだと不自然だから」

「っ………」

 

私は絶句しました。私は蒐集とは他に目的がある、その事を誰かに話したことは1度もありません。それにもかかわらず、アリシアはその事を知っている様なことを仄めかしたからです。

 

「だって、刹那はマスターじゃないでしょ?それにもちろんヴォルケンリッターでもない。なら、刹那には蒐集するメリットがない。なら何で蒐集を?って考えたらね。答えは1つしかないよ。蒐集以外の目的があるって」

「………」

 

この子は勘が鋭い。これ以上話させるのは危険。私の本能がそう訴えてきます。かと言って無視もできない現状。それをわかっているのか、アリシアは口を再び動かしました。

 

「ヴォルケンリッターだったら蒐集して主を覚醒させることが目的だと思うんだけどね。でも刹那はそれは違うよね?それ以外の目的ってなると………例えば、闇の書の永久封印」

「っ!?」

 

ポーカーフェイスを保っていた私ですが、流石に自分でも顔が引き攣るのがわかりました。

 

「私達管理局の方法だと現状は闇の書を消滅させて事を先延ばしにすることしか出来ない。でも、ベルカの時代の経験があって、その時から対策と封印の方法を考案してたであろう覇王家、刹那なら?永久封印の方法案があっても不思議じゃないよね?」

「なら、なぜ聖王教会は動かないんですか?同じ理屈なら彼らが動いても同じはず」

「聖王教会の方の仕組みはよく知らないんだけどね。刹那の行動から察するに完全封印はページの蒐集………つまり闇の書を一旦完成させないとダメなんじゃない?なら、管理局側の聖王教会は動けないよ」

 

筋は通ってます。むしろ私の計画がほぼ筒抜けと言ってもいいでしょう。他の人たちがどうかはわかりませんが、少なくともアリシアの洞察力は一線を画すものがありました。

 

「それに、刹那は覇王の記憶を継承してるけど、聖王家にそういうのがあるって聞いたことないよ。書物とかに残ってるなら話は別だけど」

「なかなか鋭い、ですね」

「大丈夫だよ。私以外誰もここまでは勘づいてないよ」

 

話していいものか………。しかし、彼女は嘱託とは言え管理局の魔導士。話したところで夜天の魔導書の完成をみすみす見逃してくれるとも思えないです。

 

「………もし肯定すれば、蒐集を見逃してくれるのですか?」

「私の一存では無理だよ。でも、クロノやリンディさんに相談くらいはできるよ」

「しかし………っ!」

 

私がアリシアの言葉に揺れたその時。少し離れた場所に転移の反応。それは丁度シグナムとフェイトが戦っているあたりで、もちろんそれはシャマルやヴィータではなく………

 

「………その話はまた後で。一大事です」

「ぇ?」

「フェイトが危ない!」

「なっ!?」

 

消去法で転移してきたのは恐らく例の仮面。目的は………考えるまでもありませんでした。私とアリシアは地面を蹴り、加速しました。

数分飛ぶと、そこには渋々と言った形で蒐集をするシグナムと私がなのはのリンカーコアを摘出した時と同じ方法でフェイトのリンカーコアを摘出している仮面。

シグナムの表情から察するにシグナムとの一騎打ちの最中にフェイトは仮面からの不意打ちでリンカーコアを摘出され、シグナムはそれを渋々蒐集している、と言ったところでしょう。

私はアリシアへアイコンタクトをするとアリシアは頷いてから私の後ろからルートを外れていきました。

 

「ちっ………」

 

シグナムは蒐集は終わったのか、舌打ちと同時に夜天の魔導書を閉じました。

 

「その子を………離せぇぇえ!!」

 

私はそれでも構わず、フェイトを拘束している仮面の顔面へ向けて今までの加速のエネルギーをすべて乗せた回し蹴りを放ちました。仮面はフェイトから左手を引き抜き、右手で蹴りを咄嗟にガード。私は気を失ったフェイトを抱き抱えました。

 

「シグナム、フェイトを頼みます。管理局が来たら保護させてください」

「ぁ、あぁ。心得た」

「私は、あの仮面を少し制裁してきますっ!」

 

私はフェイトをシグナムへ託し、すぐさま仮面へと加速して急接近。断空拳を始めとした覇王流を惜しみなく叩き込みました。が、それらはすべて防がれてしまい………まぁ、予想内なんですけどね。

 

「アリシアっ!」

「ブランニュースター!!!」

「っ!」

 

私がアリシアの名前を叫ぶと仮面の死角からアリシアが現れ、ほぼゼロ距離で魔力弾を連射。仮面はそれ腕をクロスして防御。それを解いた瞬間に

 

「爆砕断空拳………2連!!!」

「ライトニングバズーカ!!!」

 

正面から私の爆砕断空拳が文字通り仮面に入り、その追撃にアリシアの砲撃が直撃。確かな手応えはありましたが………ギリギリで転移で逃げたみたいですね。

しかし………一瞬猫耳のようなものが見えたのは気のせいでしょうか?

丁度そこにアルフが駆けつけてきました。私とアリシアはシグナムと合流。

 

「言い訳は出来ないが………フェイトが起きたらすまない、と伝えてくれ」

「私からも。私達からすれば結果オーライですが………こんな方法は望んでません。油断が招いた結果です。すみません」

 

その後、アルフはアリシアの顔を立てて私達の撤退を見逃してくれて。近くまで管理局の艦船が来ているらしいので、フェイトの処置はすぐ出来るそうです。良かった………

 

しかし………これからどうなるのでしょうか。嫌な予感しかしません。




刹那が刹那の台詞言われて吹っ飛ぶという名前ネタをぶち込んでみました。

個人的にあの仮面のシーン、あれ見る度に仮面殴りたくなるので代わりに刹那とアリシアに。
記憶はなくてもアリシアの事は体が覚えてるので咄嗟にでも連携は取れるんですよこの2人。

では、感想、評価あれば待ってます!


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第21話 イブの邂逅と終わりの始まり

そろそろA’s編もクライマックスに突入してきます!

長年やってたぷそもEP5来てから性に合わなくなって引退、それで再開したFF14も仲良くしてた身内と喧嘩してから辞めちゃったし………最近じゃあこれ書くかエロゲやるかしかしてないですっ!


ことが動いたのは先の砂漠の戦闘から帰ってすぐでした。

リビングでみんな思うことがあったらしく、その事を話していた時でした。唐突に2階から物音が。みんなで駆けつけてみると床に倒れて苦しむはやてがいて。病院で検査してもらったところ、一応は問題なし。一応、と付けたのは今回のような発作は今までに無かったから麻痺が広がろうとしている可能性があったから。とりあえずはやては大事をとって入院。

シャマルはなるべくはやてのそばに居るようにして他のみんなで急ピッチで蒐集。私も家庭の事情、と説明して学校を休んで蒐集へ参加。その事を知ってか、アリシアからメールが何通も来てて。アリシアには申し訳ないとは思いますが、今返信するわけにもいかなくて。後で謝っておきましょう。

そこでまた1つ問題が発生。はやての友達のすずか繋がりでなのは達がはやての見舞いに来ることに。シグナム達は私達が顔を合わせなければ問題ないと言いましたが、少なくともアリシアは………気付くでしょうね。当然ながら、私もはやても苗字は八神ですから。こんな珍しい苗字がそうそう被るなんて考えにくいですしね。となると、勘の鋭いアリシアの事です。私の真の目的、永久封印を決意した理由までも辿り着くでしょう。

 

「………弱りましたね」

 

かと言って見舞いを拒否するわけにもいかないので、石田先生とはやてに私達の名前は口に出さないように口止めしておいて、なんとかやりすごしましょう。無理だとは思いますが………

 

「かと言って、敢えて私と鉢合わせるメリットはないですし………むしろデメリットしかないですね」

 

結局、どうすることも出来ないと結論になったのでシャマルにことを任せて私は蒐集へと意識を向けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

砂漠の戦闘のあと、なりゆきですずかの友達のはやての見舞いに行くことに。はやての苗字は八神。刹那のこの世界での苗字と同じ八神。

ここ最近学校を休んでて、なのはから連絡先聞いてメールしても返事はないし。理由は間違いなくこれ。

はやての病気………恐らく原因は闇の書の呪い。そして刹那の危険を犯してでもやろうとしている闇の書の永久封印の理由。

そして刹那の強さの根幹は『守ること』。ここまでのキーワードが揃っていれば結論を導くのは簡単だったよ。

 

「はやてを呪いから守るために………刹那はあんな危険を犯して………」

 

ユーノに頼んで調べてもらったけど、永久封印は仮に可能だとしても闇の書が完成してからでないと不可能とのこと。その上で管理者権限の行使までも視野に入れないといけない。多分、完成してから真に覚醒する前にシステムに侵入して封印するつもりなんだと思う。けど、そんなことしたら守護騎士のみんなは………。きっとそれも覚悟の上なんだと思う。

守るって決意した刹那は誰よりも強いし、意思は固い。他に確実で安全な方法が無い限り止めるのは無理だと思う。ぶつかるのは確実、かな。そう言えば刹那、闇の書を呼ぶ時にほとんど闇の書って言ってなかった。夜天の魔導書って言ってた。きっと、自らが悪役になって………はやてに嫌われてでもはやての命だけは助けるつもりなんだ。

 

「弱ったなぁ………」

 

刹那達、前は日毎に帰ってた様子があったけど、今は転移の様子からしても帰ってない。そのせいで管理局側も追いきれてないのが現状。

刹那の意図と覚悟がわかった今、私はどうしたらいいんだろう?

止める?でも刹那のやろうとしてる永久封印は手段としては現状最善だから、止めるってことは闇の書の被害を先送りにするってことだし。

手助け?管理局の嘱託魔導士って立場があるからそれは無理。蒐集を見逃すのも同じ理由で看過できないし。

 

「アリシアちゃん??」

「ふぇ?」

 

私が考えにふけっているところに紗綾が顔を覗き込んできて、私はハッと我に帰りました。

今日はクリスマスイヴ。今私達ははやての病室の前。イヴのサプライズではやてに見舞いに来るって言ったの、止めるに止めれなくって今に至ってます。

 

「こんにちわー」

 

すずかがノックして、とうとうその時は訪れました。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はやて、ごめんね?あんまり会いに来れなくて」

「ううん。元気やったか?」

「めちゃめちゃ元気!」

 

蒐集のせいでなかなか見舞いに来れなくて落ち込むヴィータをはやてが撫でるとヴィータはすぐに笑顔に戻りました。

 

「こんにちわー」

 

丁度その時。病室のドアをノックする音が聞こえ、同時にすずかの声が。

 

「「「っ!」」」

「あれ?すずかちゃんやん。はい、どうぞー」

 

すずかの声を聞き、ハッとなる私達。ヴィータは状況を飲み込んでないようですが。そして断る理由のないはやては当然それを部屋に招き入れます。

 

「ぁ、今日はみなさんお揃いですか?」

「こんにちわ、初めまして」

「急に押しかけてすみません」

「「っ!?」」

「あちゃぁ………」

 

シグナム達と既に面識のあるすずか、初対面のアリサと加藤紗綾、と言いましたか?アリシアの友達の。そして私達の敵であるなのは、フェイト、アリシア。

なのはとフェイトは当然知らなかったらしく、私達の顔を見て驚いています。アリシアは………やはり気付いていたのですね。やってしまったというような感じで項垂れてます。

当のこちらもオロオロするシャマル、威嚇するヴィータ、敵意剥き出しのシグナム。私ですか?アリシアと似たような感じです。

 

「うん?」

「ぁ、すみません。お邪魔でした?」

 

もちろんそんな不自然なことをしていれば何も知らないはやてやアリサ達も疑問に思ってくるわけで。そんな空気を読んだアリサが謝罪したところでシグナムも敵意にそっと蓋をしてくれました。

 

「ぁ、いえ」

「いらっしゃい、みなさん」

 

とはいえ、ギクシャクした空気は変わらず。もっとも、アリサ達はそこまで気付いてないみたいで、はやてにプレゼントを渡していました。そう言えば今日はイブでしたね。

 

「あぁ、みんな。コート預かるわ」

 

そろそろはやてがこの不自然極まりない空気に疑問を持ち始めたあたりで気を利かせたシャマルが無理矢理話題を逸らしました。

 

「念話が使えない………通信妨害を?」

「シャマルはバックアップのエキスパートだ。この距離なら造作もない」

 

この対応はさすがシャマル、と言うしかないですね。

 

「はぁー………」

「せーつな。どうかした?」

 

遅かれ早かれこうなることはわかっていたんですが、流石に想定よりも早くて、それを防ぐことを怠っていたと考えるとため息が出てきました。そしてそれを目敏く見つけたアリシアが私の隣へ。

 

「何でもないですよ。それより、やっぱりアリシアは気付いていたんですね」

「まぁね。でも、誰にも言ってないよ。刹那の覚悟がわかって、どうすればいいか私もわからなくってさ」

「私の拳は………今ははやてを守るためだけに捧げますから」

「わかってるよ。お見舞い、してもいい?」

「構いませんよ」

 

それからアリシア達は予定通りはやての見舞い。当然若干ギスギスしていたけど、なんとか乗り切りました。

 

その後。当然ながらなのはとフェイトから私達は呼び出されて病院から少し離れた市街地にあるビルの屋上へ赴きました。

今にもヴィータは襲いかかろうとしていたので、手は出さないように言い聞かせ、必要なことを全て教えました。念の為に広域結界を張ることも忘れずに。

 

「そんな………はやてちゃんが」

「闇の書のマスターだなんて………」

 

当然の反応だと思います。あの状況ではそうとしか言えないとはいえ、よもや自身の友達がマスターだとは考えもしないでしょうからね。

 

「アリシアは………知ってたの?」

「ぇ?私?」

 

そしてこれも当然ながら、はやてがマスターということを知ってもほぼ無反応、むしろ知ってましたというような反応を返していたアリシアへも疑念が向きます。

 

「知ってた………というよりそうわかった、の方が正しいかな。はやての苗字は刹那と同じ八神だし」

「そっか………めったに見ない珍しい苗字だもんね」

「てことは、刹那君の蒐集の目的ははやてちゃんを助けること?」

 

やはりというかなんというか。私にも飛び火してきました。そりゃそうですよね。私ははやての義兄以外は夜天の魔導書には無関係な人間、なのに守護騎士を手伝って蒐集している。そう思われても不思議じゃありません。間違ってませんしね。

 

「それだけでは無いですが、究極的にははやての為………はやてを守ることが私の目的です」

「究極的には………?どういう事だ!」

「刹那!教えろ!ことと次第によっちゃあ刹那といえども許さねぇぞ!」

 

私の発言に食いつくシグナムとヴィータ。仕方ない。全て話しましょう。

 

「はやてを守る、それに嘘偽りはありません。が、この際ですから正直に言います。私の目的は闇の書、夜天の魔導書の永久封印です」

「私が察するに、夜天の魔導書完成させてから真の覚醒を果たすタイムラグの間で何らかの方法システム内に侵入して夜天の魔導書のシステム全体を封印するんでしょ?」

「そんなところです」

 

私の説明に補足を入れるアリシア。そんな私達にヴィータは食いつきました。

 

「刹那!てめぇ………そんなことしたらあたしたちは!」

「間違いなく消えますね。それどころか、下手をすれば私自身も」

「はやてがっ!そんなこと望むのかよ!」

「では、逆に聞きますが。他に方法があるんですか?」

「んなもん、はやてが真のマスターとして覚醒「したら残るのは破壊の傷痕だけですよ」なっ!?」

「闇の書の事はずっと一緒だった我らが一番良く知っている!そんな我らが知らぬ事などが!」

 

やはり、夜天の魔導書は破壊しかもたらさない………ヴォルケンリッターはその事を知らないみたいですね。

 

「幾度もの改変のせいで壊れてしまった自己防衛システム。そのせいで守護騎士の記憶さえも書き換えられているんでしょうね。過去の記録も私の記憶も………夜天の魔導書の真の覚醒が破壊以外をもたらしたことは一度もないと物語っています」

「確かに………クロノ君は破壊にしか使えないって言ってたけど………」

「でも、こんなのってあんまり過ぎるよ!刹那っ!」

 

事実は事実、なのはやフェイトもそう認識しているみたいです。が、やはり私の目的への賛同は無理みたいですね。

 

「やれやれ………見ていられませんね」

「なっ!?がふっ………っ」

 

突如私の後ろへ現れる人影。私がそれを認識した時には時既に遅く、隣のビルまで蹴り飛ばされていました。

防御をする暇もなく、モロに蹴りを直撃。ビルの壁に激突し、体勢を立て直そうとしたその時でした。私は戦慄しました。先程まで私がいた場所では、もう1人の仮面がシグナム達全員をバインドで縛り上げ、リンカーコアを蒐集している姿が目に入ったからです。

 

「シグナムっ!シャマル!」

「貴様の方法では………所詮は何も守れない。今までも、これからもな。過ちはまた、繰り返す」

「なっ!」

 

そのせいで目の前まで仮面が接近していることに気付くのが遅れ、気がついた時には仮面の拳が私の腹にめり込んでいて。私はそのビルのオフィスの天井を貫いて屋上へ無残に落下。

 

「が…はっ……」

 

肺の中の空気を吐き出すと同時に吐血。

『所詮は何も守れない。今までも、これからも』

薄れゆく意識の中で先程の仮面の言葉が何度も反芻していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

やられた………仮面の存在を完全に失念していた。刹那は不意打ちを食らったとはいえ、2撃目は防ごうと思えば防げたはずなのに………それが出来なかった。多分何か言われたんだと思う。

けど、助けに行こうにもバインドで雁字搦めにされていて、その上で狭いクリスタルケージに閉じ込められてるからアンチェインナックルも使えない。

私はなのはとフェイトとは別のクリスタルケージだから無理矢理破壊することは可能だけど、それをするとただでさえ少ない魔力が枯渇してしまいそうで………でも、背に腹は変えられないっ!

 

「フル………ドライブ!」

〈Full drive. Beryl Smasher. Get set.〉

 

私は全魔力を解放してバインドを無理矢理破壊、それと同時に両手の銃をフルドライブのベリルスマッシャーへと変形。

私の背丈ほどもある長い柄の先端には片や1つと片や2つの左右で数の違う駆動部があり、1つしかない方の駆動部には柄とほぼ同じくらいの長さの魔力刃が付いていて、2つある方にはその半分くらいの長さの魔力刃がそれぞれ1つずつ。この3つの魔力刃を変幻自在に変形させて戦う近接と中距離攻撃主体の大型武器、それが私のフルドライブのベリルスマッシャー。ちなみに鎌と斧と槍の三形態。

私は長い方の魔力刃を先端に横向きになるように、小さい方は縦向きのままで固定し、鎌の形に変形させました。

 

「運命って残酷なんだよ」

 

丁度その頃、なのはとフェイトに化けた仮面の2人ははやてをすぐ側に転移させ、その目の前でヴィータへと手に発生させた魔力刃を振り下ろしました。

 

「させないっ!」

 

私はベリルスマッシャーをツーハンドモードにして両手に構え、瞬時に加速。ヴィータに当たらない様に下から振り上げてその魔力刃を防ぎました。

 

「ほぅ?もうあのバインドから抜け出してきたんだね」

「けどね、もう遅いんだよ」

 

偽なのはと偽フェイトは防がれた反対の手に再度魔力刃を発生、ヴィータへとそれを容赦なく食らわせました。

 

「っく、あぁぁ……」

「はやてっ!」

 

同時にはやては苦しみ出して………私が駆け寄った時には足元に真っ白な三角の魔法陣、ベルカ式魔法陣が展開。それはすぐに黒く染まり………

 

「っ………うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

はやての悲痛な叫びと共に膨大な魔力を放出。それに弾き飛ばされた私はやっとバインドから抜け出したなのはとフェイトに助けてもらいました。

衝撃波が治まりはやてを見ると、そこに居たのは背丈は伸び、髪は白のロングに変わり、簡素ながら悪魔を思わせるような服と翼、手足には赤い包帯を巻いたような装飾を施した何かが立っていて………それがはやてが夜天の魔導書のマスターとして覚醒した姿だとわかるまで時間は要りませんでした。

 

「また、全ては終わってしまった。いったい幾度、こんな悲しみを繰り返せば………」

「はやてちゃん!」

「我は闇の書。我が力の全ては………」

 

黒いベルカ式魔法陣の真ん中で両手を広げて天を仰ぐ覚醒したはやて………ううん、さしずめ闇の書の意思と言ったところかな。もう私達の声も届かなくて………

闇の書の意思が右手を空に掲げるとそこから真っ黒の球体が生まれ、それはすぐに闇の書の意思の背丈の10倍ほどへ膨張しました。

 

「「「っ!?」」」

「主の願いを………そのままに」

 

そしてそれは手元まで収縮。

 

「デアボリック……エミッション」

「っ!」

「空間攻撃!」

「防ぐしかっ!」

「闇に染まれ」

 

黒い魔力球が再び急速に膨張を始め、私は咄嗟になのはとフェイトの前に出て両手のベリルスマッシャーを正面に構えて障壁を展開、ギリギリで防御に成功。その攻撃が治まった瞬間にフェイトのソニックを使って退避、一旦身を隠して作戦を立て直すことにしました。

空間攻撃は物凄いパワーで、まだ両手が痺れてます。

 

「っ………」

「お姉ちゃん………ごめん。ありがと、大丈夫?」

「本当なら私がやらないといけなかったのに」

「うん、手が少し痺れるけど何とか大丈夫」

 

フェイトとなのはは私を心配してくれてて、少し痺れは残ってるけどまだやれる。これくらいで負けられないもん!

そこでフェイトは広域攻撃型に防御の薄いソニックは分が悪いと判断して普段のインパルスフォームへ戻しました。

 

「………お姉ちゃん。お姉ちゃんは刹那のことお願いしてもいい?」

「ぇ?」

「弱音を吐くみたいで嫌なんだけど、あの刹那がいないと正直厳しいかなって」

「刹那君があれくらいの攻撃でノックアウトってのは考えにくいから………私達の中で一番付き合いの長いアリシアちゃんだから、刹那君をお願い」

 

確かに、仮面の打撃は強力だった。1撃目は不意打ちだったけど、2撃目は明らかに防御の余裕があったのにしなかった………いや、出来なかった。その事はなのはとフェイトも気付いていました。それをわかって、闇の書の意思を止める手を減らしてでも刹那のところに行けと言ってくれる2人。それがどれだけ危険なのか………わからない2人じゃないはずなのに。

 

「はやてちゃんはそれまで私達で抑えてみせるから!」

「………わかった!」

 

私達の援護に来たユーノとアルフと入れ違いに、私はベリルスマッシャーをガンモードに戻してホルスターに格納してから急降下。闇の書の意思に気づかれないように低空から刹那の倒れたビルへと向かいました。

 

それと同時に闇の書の意思は広域の隔離結界を展開して飛び立ち、なのは達と戦闘を開始しました。




何ページか前にも書きましたが、ベリルスマッシャーがよく分からない!って人はフレームアームズかフレームアームズ・ガールのフレズヴェルクで調べてみてください。(フレスヴェルク=アーテルの方がわかりやすいかかも?イメージはどちらかとこっちなので)

感想などあればよろしくお願いします!


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第22話 守る覚悟·救う意思

どうしよう!そろそろ前書き書くことなくなってきた!

という訳で本編行きまーす


オリヴィエ………アリシア………そしてはやて。

私が守ると決めた人は誰一人、守れていない。もう、どうしていいのかわからない………

 

「守れなかった………」

 

私の頭の中ではゆりかごへ乗り込むオリヴィエ、そして私の腕の中で息を引き取るアリシアの2つの映像が何度も何度もループ再生されています。

今まで私が忘れていたもの、それはアリシアを守れなかった記憶。

アリシアは確かに側にいた。けど、守れなかった事実は変わらない。

そしてはやても。はやてに嫌われる事を覚悟して行動し、それでもなお守れなかった。

 

「私の決意は………覚悟は………無意味だったんですね」

 

私の意識は深い闇の中へと沈んでいきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

私は低空飛行を続け、刹那が倒されたビルの下まで来ると一気に上昇。そのビルの屋上まで行くと、ちょうど昇降口の影に刹那はもたれ掛かって座っていました。けど、刹那の様子がおかしい。私はそのすぐ近くに着地しました。

 

「刹那?」

「………」

 

私の呼びかけにも無反応。ダメージで気を失ってる?そうも考えて刹那の肩に触れて揺さぶりました。しかし、それでも無反応。

 

「刹那っ!」

 

耳元で叫んでみても、それでも無反応。

気になって俯く顔を覗き込んでみると、刹那の目は焦点があってなくて、よく見ると口が微かに動いていることに気付きました。

 

「守れなかった………」

 

口元に耳を近付けると、そう消えそうなほど小さな声で呟いているのが何とか聞き取れました。

 

「刹那………」

 

刹那の強さの意味は守る意志だって言ってた。けど、よく考えてみたら、それは守るという意思が刹那を支えているってこと。それを壊された為に精神崩壊を起こして今に至る、と私は推測しました。

刹那の記憶(クラウス)が守れなかった聖王オリヴィエ、魔導炉心ヒュドラの事故の時に守れなかった私、そして今回。嫌われることさえ覚悟してはやてを守ることを第1に考えていたにも関わらず、許してしまった覚醒。たぶん刹那はあの覚醒の瞬間に何らかの方法でシステム内に侵入するつもりだったんじゃないかな。

その唯一無二のチャンスを無駄にして、そこに過去の記憶がフラッシュバックしてるんだと思う。

クラウスは自身の弱さのせいで守れなかったと嘆き、私の事故の時は刹那は自身の判断の誤りで私を失い………それで刹那は力をつけ、どんな状況でも正しい判断ができるようにって注意を払ってた。

私は刹那は強くなったし、今でも間違ったことはしてない。そう思う。

けど、恐らく次元震の余波に巻き込まれたせいかな、それで私に関する記憶に蓋をしちゃって、そのせいで余計に今の刹那のを苦しめてるんだと思う。

私は刹那じゃないから刹那がどれだけ苦しんでるのかはわからない。でも………それでも!

 

「刹那!なのはとフェイトは………私も!まだはやてを諦めてないよっ!」

 

刹那には立ってもらわないといけない………刹那はこんな所で腑抜けてて良いはずはない!

私は刹那の肩を掴んで強く揺さぶりました。

 

「シグナムも、ヴィータも、シャマルもザフィーラも!助けよう?まだ間に合うよ!」

 

何度も、何度も揺さぶりました。それでも反応を返してくれない刹那。

 

「守れなかったんなら、助けよう?まだ間に合うよ!ねぇ!」

「私のしてきたことは………無意味なんです。今までも、これからも」

 

そしてとうとう自身を否定し始めて………

 

「このっ………わからず屋っ!」

 

バチーン

 

それに我慢出来なくなって、私は刹那の頬を思いっ切り引っぱたいてしまいました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の意識は真っ黒な闇に染まり………どんどん奥深くへと沈んでいき………

私は自身の弱さのせいでオリヴィエを失い、誤りのせいでアリシアを失い………もうそんなことは繰り返すまいとしてきた。時には道を踏み外すこともあった。けど、支えてくれる人が、導いてくれる人がいた。だから正しい道に戻ることが出来た。

それでもなお、はやてを失った。過ちを繰り返してしまった。

もう私には何も見えない。何も聞こえない。

守るものを失った私には存在する価値なんてもう無い。

 

───守れなかったんなら、助けよう?

 

ふと、私の心にそんな言葉が響いてきて………

 

───まだ間に合うよ!ねぇ!

 

まだ終わりじゃない、そう私に訴えかけ、手を差し伸べてくれる光。しかし、私にはそれをとる自信も覚悟も、資格もない。

 

「私のしてきたことは………無意味なんです。今までも、これからも」

 

その一言で差し伸べられていた光はフッと消え………

 

───このっ!わからず屋っ!

 

「っ!」

 

たかと思った途端、私の頬に強い衝撃を受け、私の意識は半ば強引に引き戻されていきました。

 

「いっつぅ………」

 

頬の痛みで私は目を覚ました。正面へと顔をやると、そこには涙を流しているアリシアがいて………引っぱたかれた、そう気付くまでに時間はいりませんでした。

 

「何1人で何もかもが終わったようなこと言ってるの!まだ終わりじゃないし誰も諦めてなんて無いよ!刹那は………私が大好きな刹那は!こんな程度の危機じゃ諦めないし、弱気になんてならない!今の刹那なんて………大嫌いっ!」

「大嫌い………ですか」

 

私を引っぱたいて、それでも目から涙を流しながら訴え続けてくるアリシア。そんな姿を私は見たくなくて、手を伸ばして指でアリシアの涙を拭いました。

 

「喧嘩した時にも、大嫌いとは言われたことは無かったですね」

「刹那っ!記憶が戻ったの?」

「はい、おかげさまで。殻の中から失った記憶ごと無理矢理連れ出されました」

 

自分で引っぱたかれた頬をつんつんとつつくと、アリシアはバツが悪そうにして

 

「ぇっと…………ごめんなさい。思いっ切りやっちゃって………」

「構いません。むしろ手遅れになる前に引っぱたいてくれて感謝してます」

「ぇ………刹那ってえm「それだけは断じて違います」」

 

アリシアからの一撃が無ければ恐らく、私が今こうしていることは無かった。そう断言できます。もちろん私はMではありません。断じて違います。

しかし、喧嘩した時ですら大嫌いと言われたことは無かったが為に、大嫌いという言葉は私の胸の奥深くまで突き刺さっていました。つまりどういう事か。それを自覚し、気づけば私はアリシアの背中へ手を回して抱き締めていました。

 

「ぇ?ふぇぇぇ!?!?」

 

もちろん当のアリシアは顔を耳まで真っ赤にしてバタバタ。しかし、私は離すまいと更に抱き寄せます。

 

「私の大好きなアリシアにあそこまで言われたんです。ここで諦めたら覇王としてのプライドと男が廃ります」

「っ………ぅん」

 

大好きな刹那、そう言われた意趣返しで私も大好きなアリシアと付けて決意を新たにしました。もちろん大好き、と言ったのは意趣返しのためだけではなく、私自身の本心です。いつだか使えられることが出来なかった言葉、それをやっと伝えることが出来、ホッとしました。

一方のアリシアはそう言われたことが嬉しかったのでしょう、真っ赤のまま私の胸に顔をうずめました。

それから程なく。私がアリシアを抱擁から解放すると、アリシアは私に背を向けて座り込み、あわあわとパニック状態。余程先程の告白が嬉しかったのでしょうね

 

「さて、と。みんなはまだ戦ってるんですか?」

「ぇ?うん。クロ助が封印の方法探してくれてるから今はその時間稼ぎだよ。大丈夫、きっとはやては」

「………助けますよ。絶対に。アリシアの時も助けられたのです。今回出来ない道理はありません」

「うん!」

 

私は座り込むアリシアの隣に膝をつきます。アリシアは満面の笑みと共に私の背中に掴まり………

 

「飛ばしますよ………旋風脚っ!」

 

私は精一杯の断空を乗せて蹴りだし、加速。戦闘空域へと向かいました。アリシアは高速機動を売りにした戦闘スタイルですが、単純な直線移動だけなら旋風脚で加速した私の方が速いので私がアリシアを運ぶ形を取ってます。もちろん(言い方は変ですが)小回りを含めたちょこまかとした機動力は私ではアリシアやフェイトには及びません。

 

「あの光………何でしょう?」

「なのは!フェイト!今の状況教えてっ!」

 

ある程度移動すると、遠くの空にピンクの球体とそれに集まる小さな光が。咄嗟にアリシアはなのは、フェイトに念話を繋ぎます。

 

〈私の魔法がコピーされてて、それで!〉

〈しかも結界内に人が取り残されてるの。今私となのはでそっちに向かってるところ〉

〈わかりました。私達もそちらに合流します。逃げ遅れた人の位置、送ってください〉

 

すぐにバルディッシュから逃げ遅れた人の位置情報が送られてきて、私は一度道路に着地してからその方向に再加速しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side 紗綾

 

私、今めちゃくちゃ混乱しています。だってそうでしょ?ついさっきまで人で賑わっていたのがいきなりみんな消えちゃって………残ったのは私と一緒にいたアリサ、すずかだけ。私に出来るのは2人の手を引いて一緒に逃げることだけ。

 

「やっぱり誰もいないよ!急に人がいなくなっちゃった」

「ぅん………」

「辺りは暗くなってるし………向こうは何か光ってるし………逃げよう!アリサちゃん、すずかちゃん!」

 

遠くの空は何かピンクの球体が光ってて………何かはわからないけどあれは危険、そう思って2人の手を引いてその場を離れました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side フェイト

 

なのはの集束砲撃(スターライトブレイカー)………私は1度直撃を貰ったから良くわかるけど、あれは至近で食らったら危険。何の防御も意味をなさなくなるから………ぁ、思い出したら少し震えてきたかも………

 

「フェイトちゃん………」

「………ううん、大丈夫」

 

今私はなのはを抱えて全速力で退避してるところ。なんだけど、バルディッシュから一般市民が残ってるって言われて、そっちの方へ向かってる。距離をバルディッシュがカウントしてくれてるから………もうすぐっ!

 

「なのは、この辺で」

「うん!」

 

私は今の速度のままなのはを離し、なのははそのまま着地。と言っても何十メートルも地面を擦ってたけど。私の方はゆっくり減速して信号機の上に着地。なのはの立てた砂煙がスゴい煙たい。私のせいだから我慢しなきゃだけどね。お姉ちゃんと刹那は………まだみたいだね。

丁度そこでバルディッシュのカウントが18を示して………つまりここから18ヤード、大体18メートル弱くらいの所に一般市民がいるってこと。私となのははあたりをキョロキョロとしてその人を探しました。

すると建物の影から出てくる3つの人影が見えて

 

「あの!すみません!危ないですからそこでじっとしてて下さい!」

 

なのはもそれに気付き、大声で呼び掛けます。その人影ものはの声に気付きこっちに愕然振り向き。

 

「なのは………?」

「フェイトちゃん?」

「ぁ…………」

 

まさか残った人って言うのがアリサとすずか、お姉ちゃんの友達の紗綾さんだったなんて………思ってもいませんでした。

丁度そこで交差点の別方向から刹那と、それにおんぶされてるお姉ちゃんも来ました。

 

「ぁ、アリシア………ちゃん?」

「それに刹那君まで………」

「なっ………」

 

当然お姉ちゃん達も唖然としてて………集束砲撃(スターライトブレイカー)が発射されてみんな我に返りました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、すずか達に見られて私達は唖然………しかし、そうも言わせてくれないのか、あの光、スターライトブレイカーは発射されて着弾。大規模な余波がこちらへ襲いかかってきました。

 

「フェイトっ!すずか達をお願いします!みんな私の後ろで障壁!私が相殺します!」

「っ………うん!」

 

フェイトがバルディッシュのカートリッジを使い、強化した防御結界をアリサ、すずか、紗綾に張ってその正面に降りてプロテクションを展開。アリシアもフェイトの横でプロテクション。そのさらに前になのはが、これもカートリッジを使って強化した障壁を展開。私はさらにその前に立ち………

 

「はぁぁ!」

 

地面へ思いっ切り震脚。それに呼応するように目の前の地面がせり上がり、大きな壁を作ります。次の瞬間、スターライトブレイカーの余波がそれに直撃。私達は必死でそれに耐えました。

 

〈なのは…なのはっ!大丈夫!?〉

〈フェイト!?〉

〈っ………大丈夫、ではあるんだけど〉

〈アリサに、すずか、紗綾さんが結界内に、取り残されてるんだっ!〉

〈私と刹那の心配してくれなかったのが引っ掛かるけど、そんなことより3人の安全確保!お願い!〉

〈何だって!?〉

〈エイミィさん!〉

 

すぐにユーノとアルフから通信が来て、すずか達のことを伝えると余波が収まり次第安全な場所に転送してくれるとのこと。とりあえず良かった。あとは………なんとか堪えるだけっ!

 

「絶対に守りますから!うぉぉぉぉぉぉ!!断絶衝っ!!」

 

目の前の壁が崩れ去るその瞬間、私は左手を左から右へ一閃。空破断を応用した衝撃波の壁を張って余波を凌ぎきりました。

 

「もう大丈夫」

「すぐ安全な場所に運んでもらうから!」

「もう少しじっとしててね」

「巻き込んでしまいすみません」

 

とりあえず安全は確保。すずか達も蹲っていたところから立ち上がって事情の説明を求めようとしたところで3人の足元に転送用の魔法陣が展開。驚く3人を他所に安全なところまで転移していきました。

 

「見られちゃったね………」

「うん………」

「残ってるなんて………想定外だったよ」

「事情………あとで全部話さないといけませんね」

〈ユーノ君、3人のこと守ってあげてくれるかな〉

〈アルフもお願い〉

 

見られたのは仕方がない。なので、安全なところへ転移してはもらいましたが、結界内から出すことは現状不可能。つまり、安全なところとは言っても比較的安全と言うだけで危険なことには変わりない。なので、ユーノとアルフに3人を守るようにお願いします。

 

〈でも………〉

〈行こうアルフ。気がかりがあると、みんな思いっ切り戦えないから〉

〈それと、こう言っては難ですが、守りながらというのは現状得策ではありません。お願いします〉

〈………うん〉

 

それを渋るアルフですが、私とユーノの言葉で納得してくれました。

 

「そう言えば………その」

 

そこで私はなのはとフェイトの方へ向き直り、深々と頭を下げました。

 

「ぇ!?」

「ちょ………刹那!?」

「私が弱気になったせいで………迷惑をかけました。すみません」

 

そして先程までの私を、戦力を削ってでもアリシアを私の元へ寄越してくれたことを謝罪しました。

 

「ううん、私は気にしてないよ?」

「何言われたのかはわからないけど、また、元気になってくれてよかった」

「ありがとう……ございます」

 

私は再び夜天の魔導書へと向き直ります。

 

「では、反撃の開始です!」




連続投稿じゃぁぁぁい!疲れました!

ここの流れは前々からすっごく悩んでて、直前まであーでもないこーでもないと………で、至った結末がこんな感じになってます。あまり自信はありませんがっ!

では、感想や評価よろしくお願いします!


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第23話 夢の内へ

すみません!リアルの方が忙しくなって更新遅れましたっ!

本編の補足説明ですが、刹那がアリサ達をすずか中心で呼んでるのははやて繋がりでそこそこ親しいからです。

クライマックス突入!A’s編も終わりが近づいてきてます!まぁ、話数でいえばまだまだ続くと思いますが……

ちなみに今回はあまり長くないです。

マーリンピックアップ………来なかった代わりにランサーが飽和しましたっ(愚痴)


『なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん!それから………刹那君?』

 

私達がちょうど夜天の魔導書へ向き合ったその時、私達へ向けて念話が飛んできました。誰かわからないけど、たぶんアリシア達に指示飛ばしてる人みたいです。

 

『クロノ君から連絡。闇の書の主に………はやてちゃんに投降と停止を呼び掛けてって!』

〈 はいっ!〉

 

投降と停止………確かに聞いてもらえればそれが最善ですね。ただ………恐らく今、はやては無意識下のはず。どこまで聞いてもらえるかは不明ですが、やってみる価値はあるでしょう。

 

〈 はやてちゃん、それに闇の書さん!止まってください!ヴィータちゃん達を傷付けたの、私達じゃないんです!〉

〈 シグナム達と私達は〉

〈 我が主はこの世界が………自分の愛する者達を奪った世界が悪い夢であって欲しいと願った。我はただ、それを叶えるのみ。主には穏やかな夢の内で永久の眠りを………〉

 

例の仮面は管理局の執務官………たぶんさっきの通信ので言ってたクロノが拘束したらしいですが………はやての心中を考えると誰がそんなことをしたのかは関係ない、と言ったところでしょう。シグナム達を奪われ、消された。なのは達がしたことではないですが、消された事実は消えないのですから。

 

〈 そして、愛する騎士達を奪った者には………永久の闇を!〉

 

夜天の魔導書は右手を正面にかざし、ベルカ式の魔法陣を展開しました。

 

「闇の書さんっ!」

「なのはっ!」

 

止まってくれない夜天の魔導書を見て叫ぶなのは。しかし、私はそのなのはに対して、(自分で言うのも難ですが)珍しく声を荒らげて静止させました。

 

「本気で彼女を止めたいのであれば、その名前で呼ぶのはやめて下さい!」

「「ぇ………?」」

 

珍しく声を荒らげてまで言う私にキョトンとするなのはとフェイト。そこに間に入るかのようにアリシアが前に出てきました。

 

「なのはが自分で言ったことだよ?何で闇の書って呼ぶの?本当の名前があるんでしょ?って。それに気付いてたかな?刹那が彼女やあの本のことを言う時、1度でも闇の書って言ってた?」

「ぁ………」

 

アリシアの言う通り。なのはは先程ヴィータとぶつかった時にヴィータが闇の書と呼ぶことを指摘している。それなのに自分は闇の書と呼ぶ。私が言いたかったことをアリシアが指摘してくれました。

そして補足で私のことも。そう、私は1度も彼女、もしくはあの魔導書のことを闇の書とは呼んでいません。システムの説明等でやむを得ず闇の書という単語を使用することはありましたが、魔導書そのものを呼んだりするときは必ず『夜天の魔導書』と言っています。

 

「ぇっと………ごめんなさい。夜天の魔導書さん、それに刹那君、アリシアちゃん」

「………私もすみません。声を荒らげることではなかったですね」

「ま、それはそれとして、刹那みたいに夜天の魔導書だと長いからね。親しみを込めて夜天さんとか?魔導書さんだとそこら辺の魔導書全部それだし」

「お姉ちゃん………問題はそこじゃないような」

 

とは言っても、声を荒らげてしまったことは反省。さすがに言い過ぎました。アリシアが素なのかボケなのかはわからない(まぁ、素でしょうが)ことを言ってたことには少し呆れましたが、そこはそれ。私達の仲を心配してのアリシアなりの配慮だと思います。

とか何とかしてる間に道路があちらこちらで地割れを起こし、そこから巨大なミミズのような生物が現れてその触手で私達は拘束されてしまいました。

 

「これ、は………っ!」

「私達で、蒐集した………生物っ!?」

 

なのはのスターライトブレイカーをもコピーしてましたからね。まさか、とは思いましたが………やはり蒐集した対象をコピーすることも出来るのですね。

しかし、こうも柔らかいとアンチェインナックルも威力を吸収されてしまう………シグナムが苦戦したわけです。

 

「………それでも私は主の願いを叶えるだけだ」

「願いを叶えるだけっ!?それではやてちゃんは本当に喜ぶの!?」

「心を閉ざして………何も考えずに、主の願いを叶える為の道具でいて、夜天さんはそれでもいいの!?」

 

拘束されてなお、説得を試みるなのはとアリシア。

というか、アリシアの中ではもう夜天さんで定着したみたいです。

 

「我は魔導書。ただの道具だ」

 

なのはとアリシアの言葉に肯定で返す夜天。しかし、その瞳からは涙を流し、泣いています。

 

「では、その涙は何ですか!あなたは心があって、言葉を紡ぐことも出来る。本当に心を閉ざしてしまったら涙なんて流れない!」

「この涙は主の涙。私は道具だ。悲しみなど………ない」

「………バリアジャケット、パージ」

 

夜天の言葉に痺れを切らしたフェイトがジャケットをパージしてソニックフォームに。その衝撃と魔力の放出で私達を拘束していた触手は吹き飛びました。

 

「悲しみなどない?そんな言葉を、そんな悲しい顔で言ったって誰が信じるもんかっ!」

「例えそれがはやての涙だとしても………涙を流せるってことは心があるってことなんだよ!心があって、悲しいものを悲しいって言っていいんだよ?」

「あなたのマスターは………はやてちゃんはきっとそれに応えてくれる。優しい子だよ?」

「そうですね。はやては優しい子です。それとも何ですか?涙ははやてのものと言いながら、はやての義兄(あに)の私の言葉は信じられませんか!信じてくれるなら………はやてを解放してください!」

 

フェイトの痛切な訴えにアリシアやなのは、私も続いて説得を試みます。その言葉を聞いて夜天は何も答えず、ただ沈黙がこの場に残りました。私たちの言葉が伝わっていれば………良いのですが。

その直後、地響きが伝わってきて、街の至る所でから天に向かって火柱が上がりました。

 

「早いな。もう崩壊が始まったか。私も直、意識を無くす。そうなればすぐに暴走が始まる」

 

っ………タイムリミットも、もうほとんど残っていないのですか!?せめて何か一瞬だけでいい………一瞬だけのチャンスさえあれば、私の稀少技能(レアスキル)が使えるのに!

 

「意識のある内に………主の願いを叶えたい」

 

夜天はその言葉と共に右手を正面にかざすと、今度は私達の周りに赤い色のクナイのようなものが現れ、私達の動きを封じにかかってきました。

 

「闇に沈め」

「っ………覇王岩砕っ!」

 

そのクナイが強く光り輝き始め、私達を突き刺さんとしました。私はそれにいち早く反応、震脚でアスファルトを砕いてそれをクナイにぶつけて全て破壊。同時に私達は空中へと飛び上がります。

 

「このっ………駄々っ子!」

 

言う事を聞かない夜天にフェイトがとうとう怒りを露わにしてバルディッシュを構え、同時に手足の羽根が強く光りました。

 

「言う事を………聞けぇ!」

 

そしてそのまま夜天へ真っ直ぐに突進。対する夜天はソニックフォームのスピードにも憶さずにページを開いた夜天の魔導書を正面に掲げました。

 

(っ………!?)

「お前も我が内で、眠るといい」

「うぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「旋風脚っ!」

 

反撃を食らう、そう感じた私はすかさず得意の旋風脚での加速。直線の加速だけなら何とかフェイトにも追いつけるはず。

 

「フェイトっ!」

 

そしてフェイトへ追いついた私はフェイトの腕を掴んで引き寄せ、ここまでの加速のエネルギーを全て回転に転換してフェイトを後方へ投げ飛ばしました。

 

「覇王………断空拳っ!」

 

しかし、旋風脚の加速エネルギーはもちろんそれだけで止まることはなく、それを承知していた私は回転のエネルギーも乗せた断空拳を夜天の張った障壁へと叩き込みました。その瞬間、私の体が光を帯び始めてきて…

 

(私を吸収しようと………?今ならっ!)

「レアスキル·ソウルコア………フルドライブ!!!」

 

これが期………そう思うや否や、私はレアスキルのソウルコアを発動。

このソウルコアはフルドライブでしか使えないという燃費劣悪なスキルですが、かつてアリシアを吸収したように対象の意識を我が内に取り込むことが出来るレアスキル。取り込むことが出来るということはその逆、対象の内に自身を取り込ませることだって出来るのです!

ちなみにアリシアを取り込んだ当時はリンカーコアや私自身が未成熟だったので気絶、リンカーコア自体も軽い損傷をしていたみたいです。

閑話休題

 

「「「刹那(君)っ!!!!」」」

 

3人の叫びを聞きながら………私の体と意識は夜天の魔導書へと取り込まれていきました。




久々に4000字行かないという少し短い1話でしたっ。

ちなみにソウルコアですが、その気になれば記憶を共有したりもできます。燃費劣悪ですけどっ!

感想、評価などあればよろしくお願いしますっ!


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第24話 泡沫の夢

前期末………地味にすること多くなってきました。でも週に最低1ページのペースは崩さない方向で行きますよ!


───side フェイト

 

「少し想定外ではあったが……全ては安らかな眠りの内に」

 

言うことを聞かない駄々っ子へ斬りかかった瞬間、唐突に後ろへ投げ飛ばされた私。投げ飛ばしたのが刹那だと気付いた時には刹那はその体を夜天の魔導書へと吸収されてしまって………私達は刹那の名前を叫ぶしかできませんでした。

 

「そんな………嘘、だよね?私なんかを庇って………」

 

私を庇って犠牲になった刹那………私があんな軽はずみな突撃さえしなければ、こんなことにはっ!

 

「フェイト!」

「ァリ………シア?」

 

戦意を失い掛けた私でしたが、不意に肩を掴まれて右へ体の向きを無理矢理変えられて。それをしたのはお姉ちゃん………私のせいで大切な人を失ったお姉ちゃんでした。

 

「ごめ………ごめん、なさいっ」

 

そのお姉ちゃんの目をみると、私は涙を流さずにはいられなくて。私はお姉ちゃんの胸に顔を埋めるようにして泣きました。

 

「なのは、フェイトと少し戦線離脱するから夜天さんをしばらくお願いしていい?」

「ぇ?ぁ、うん。わかったよ」

「交戦するなら可能な限り沖の方に誘い出してね」

「うんっ!」

 

お姉ちゃんは今は戦えない私を気遣ってくれて、泣きじゃくる私を連れて戦線を離脱し、少し離れたビルの上に。

 

「エイミィさん、どう?」

『刹那君のバイタルはまだ健在してる!闇の………じゃなくて、夜天の魔導書の内部空間に閉じ込められてる!助ける方法現在検討中!』

 

刹那………良かった………あれ?でも刹那って自分から飛び込んで………?

 

「刹那言ってた。覚醒直後の不安定な状態ならシステムに潜り込む隙があるかもって。今は比較的安定してるから………フェイトを取り込もうとしたあれ見て無理矢理飛び込んだんじゃない?」

「でも………取り込まれたら向こうの思う壺」

「大丈夫だよ。刹那のレアスキル。ソウルコアって言ってたっけ?名前はよく知らないんだけど、死んだ私を取り込んだヤツ。それの応用だと思うんだ」

 

ぇーっと………つまり、私が飛び込んでそれを夜天さんが取り込もうとして、その取り込もうとしたところに刹那のレアスキルをねじ込んだ………?

 

「そゆことそゆこと。だからフェイトの猪突猛進は無駄じゃなかったってことだよ」

「お姉ちゃん心読まないでっ!?」

 

でも、それなら希望はある。刹那は外の戦闘は私達に託してくれたんだよね。なら、その期待に応えなきゃ。

 

「なのはの援護、行くよ?」

「うんっ!」

 

私はお姉ちゃんの後を追ってなのはの援護に向かいました。

 

───side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ………」

 

そよ風と日差しが心地よい。そんな中で私は目を覚ましました。まだ寝惚け気味な眼であたりを見回します。

 

「野原………?」

 

大きな城壁に囲まれた街を眺められるこの場所。その街へ向かう街道沿いにある丘と野原。そこで私は眠っていたようです。

 

「なぜ………こんな所に………?」

 

たしか私は夜天の魔導書との戦闘でフェイトを庇って取り込まれて………その時に私のレアスキルのソウルコアを介入させたはずですが………これはいったい?それにこの景色にも見覚えが………

 

「………っなー!」

「ん?」

 

誰かがこちらへ手を振りながら丘を駆け上ってくるのが見えて………ぇ?あれって………もしかして!?

 

「もう、刹那!探しましたよ?」

「ぇ………?」

 

私のそばに来て息を整えるこの女の子。髪は金髪ですが、アリシアやフェイトより赤みが強い色。それにドレスを動きやすそうにアレンジした格好。背丈は………アリシアとどっこいどっこい。もしかしたら少しこちらの方が高いかも。

そして何よりも特徴的なのがその目と腕。目は赤と緑の虹彩異色で腕は左右共に義手。私の記憶にはそれに該当する人は1人しかいません。

 

「ヴィヴィっ!馬を繋ぐのも待ってくれないのか君は」

「あははは………刹那がやっと見つかってはしゃいでしまいました。すみません」

 

その子の後から追いついてきたのは私より少し高い背丈、髪はこれも私と同じ薄い翠。ただ、私と違って髪は首元までで整えてあります。そしてその人の目は蒼と紫のこちらも虹彩異色。

 

「ヴィヴィ……?と、クラウ…ス??」

「はい、刹那のお姉ちゃんのヴィヴィですよ?」

「何だ?昼寝し過ぎて俺達のことすら忘れたのか?」

 

ちょっと待ってください?ぇ?何がどうなってるんですか?何で私の前に今は亡きヴィヴィこと聖王オリヴィエと私の祖先の覇王クラウスが?

ということはこの見覚えのある景色は………クラウスが城を構えているベルカ時代の都市の1つのシュトゥラですか!?

 

「完っ全に寝惚けてるな」

「ですねぇー。あの刹那が珍しいです」

 

あれ?でも私はクラウスの子孫なのでヴィヴィとは血の繋がりはないはず………などと1人で考察してる間に私は2人に連れられて気に繋がれた馬の元へ。何でも私を探しに来たらしいです。これから鍛錬なんだとか。

ちなみに馬は当然ヴィヴィとクラウスの乗ってきた2頭のみ。ヴィヴィ本人の希望で私はヴィヴィと一緒に馬に跨り、手綱は私が引いています。ヴィヴィは私の腕に包まれるような感じでちょこんと馬に跨ってます。本人曰く「私の特等席ですっ!」とのこと。

 

それから例の城壁に囲まれている街………シュトゥラへと向かう道中、寝惚けてド忘れしているという設定でいろいろ2人に聞いてみました。ちなみにさっきヴィヴィがお姉ちゃんって言っていたのはただの自称で(当然ですが)血の繋がりは無いそうです。

他にも私はクラウスの1つ歳下の弟であったり、ヴィヴィが何故かクラウスではなく私に懐いていたりと記憶との相違点がチラホラ。ヴィヴィの自称お姉ちゃんというのはクラウス曰く「見た目がちっちゃいけど年齢は1つ歳上だから態度だけお姉ちゃんっぽくしてる。どう見ても妹にしか見えない子が背伸びしてるようで可愛い」とのこと。ちっちゃいと言われて不機嫌になるのもいつもの事らしいです。

というか、クラウスさん。言いたいことは分かりますし納得もしますが、後半あなたの感想ですよね?

 

これ以外にも色々と情報を得て、私の辿り着いた結論。それは今私が見ているこれは夜天の魔導書が私に見せている夢。舞台がベルカで皆の年齢が私とあまり変わらないくらいなのは私の引き継いでいる記憶がこの平和がずっと続くことを望んでいたから。クラウスと私が同時に存在しているのは恐らく私の記憶とクラウスの記憶が私の中に同時に存在しているから。確証はありませんが、状況から推察するに間違いはないかと。

 

で、今は何故か訓練用のスペースで向き合う私とクラウス。ヴィヴィ含む他のメンツは遠巻きに私達を見てます。

 

「………で、なんでこうなってるんですか?」

「昨日言っただろ?明日の鍛錬の時に俺と勝負する、と」

「今日の刹那、物忘れ激しすぎませんか?もしかしてもうボケが………?10代でそれは早すぎませんか!?」

 

ボケでないのは確かですが、否定する材料がないのでとりあえずスルー。模擬戦自体は別に構わないのでそのまま執り行うことに。かの伝説の覇王がどれだけのものなのか………夢の中とはいえ直に見るチャンス。私の研鑽の参考にさせてもらいます。

ヴィヴィのスタートの掛け声の下、私とクラウスは同時に地面を蹴り、模擬戦が始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side 紗綾

 

「っ………」

 

魔法陣?みたいな円形の模様が現れ、私とアリサ、すずかはお互いに身を寄せ合っていました。そして気が付けばそこは私達にとってよく見覚えのある場所。

 

「ぁれ………学校?」

「ホントだ」

「さっきまで街の方にいたと思ったのに………」

 

きっとアリシアちゃん達が逃がしてくれたんだ。あの場所は危ないよって。でもあの格好………それにあの人達がやってたのって何なの?

 

「魔法………みたいだった」

「紗綾さん、何か言いました?」

「ううん、何でもないよ」

 

とりあえず私達はこの当たりに隠れていよう。きっとアリシア達が何とかしてくれるよ。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「んぅぅぅっ!!」

「お姉ちゃんっ!」

 

フェイトが前衛、私が前衛と後衛兼任、なのはが後衛。そのフォーメーションで夜天さんと今交戦中。けど、如何せん前の私とフェイトは防御はあまり自信がなくて………なのはが援護してくれてるとは言っても正直かなりキツい。夜天さんは素直に強い。

 

「はぁ………はぁ………はぁ………」

 

もう私含めて3人とも肩で息をしていて、疲労が目に見えて溜まってる。それに加えて私は魔力がもう残り半分切ってる………私の魔力、なのはやフェイトの半分くらいしかないからこれ以上の長期戦はキツい。

 

カートリッジの残量もマガジン2つで12発………でも射撃をメインにしたらすぐ減っちゃう。

 

「なのは、フェイト。カートリッジ残りどれくらい?」

「私はマガジン3本!残り18発!」

「私は今使ってるの含めて15発だけど………お姉ちゃんこそ魔力大丈夫なの?」

「へーき、へっちゃらだよ。だって、お姉ちゃんだもん」

 

フェイトが私を心配してくれるけど、ここで弱音を言ったら士気に関わるからね。少し強がり。本音を言うとかなり厳しい。かと言って、なのはやフェイトから魔力を分けてもらうような余裕はないから今あるもので何とかするしかないんだよね。

 

「なのは、フェイト。()()、やるしかないと思うんだ」

「私はいつでも大丈夫だけど………お姉ちゃんは大丈夫なの?」

「エイミィさんからも本体の補強が終わるまで使っちゃダメって!」

「要は魔力コントロールと出力が複雑になって制御が難しくなるからダメってことでしょ?大丈夫、なのはならやれる。それに私は1度使っちゃってるしね」

 

正直、フルドライブを既に1度使ったせいもあって今の消耗なんだけど、ここまできたら四の五の言ってられないよね。

 

「お前達も………もう眠れ」

「いつかは眠るよ。だけど、それは今じゃない」

「今ははやてと刹那を………それからあなたを助ける!眠ってる暇なんてない!」

「私の限界は私が決める!だからまだ………繰り返される悲しみも悪い夢も終わらせられる!!」

 

私達は自身の愛機を構えます。

 

「レイジングハート………エクセリオンモード!」

「バルディッシュザンバー!」

「イクスペリオン………ベリルスマッシャー!」

「「「ドライブ!!」」」

 

フルドライブを発動させた私達は………さらなる激戦へと身を投じていきました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぃつつ……」

「大丈夫ですか?ほら、お薬塗りますからアザのところ見せてください」

 

模擬戦の結果………当然ながら惨敗。意思がどうのこうの以前に素の実力が違いすぎました。まさかここまでとは………私の覇王流だけでなく日本の柔道の動きも取り入れてみましたが、それでも歯が立ちませんでした。

で、今は城のベランダでティータイムを兼ねてヴィヴィから治療を受けています。と言っても何ヶ所かあるアザに打ち身によく聞く塗り薬を塗ってもらうだけですが。

 

「にしても、驚いたぞ。何だ?あの独特なフォームの投げは」

「ぇ?あぁー………ぇっと、自己研鑽の成果、とだけ」

 

まさか何百年も未来の異世界の技術………なんて言えませんよね。それよりも気になるのが

 

「そんなことより、クラウスの最後のアレは何なのですか?私の記憶だとあのタイミングでならクラウスの反応速度を考えたら防御すら間に合わないと思ったのですが………まるで見た瞬間にはもう体が反応していたような?それとただのパンチがまるで全速力の体当たりのような威力の打撃も………」

 

模擬戦のラスト、クラウスが見せた()()()()()()()技。いや、技というより技術の方が正しいかも知れません。当然ながら私はクラウスの記憶を引き継いでいるのでクラウスの技のすべては知っていますし、反応速度もわかります。

そのクラウスが反応できないタイミングの角度で放ったカウンターの崩雷。それをまるで時間が止まったかのような錯覚を覚えた反応速度で避けて見せ、さらにはただのジャブが突如ノーモーションで全速力で体当たりを喰らったと言われても納得できるレベルの威力に跳ね上がらせた一撃。ジャブの応酬で相手の隙を作って必殺の一撃を決める、それが基本のはずなのですが、そのジャブが必殺の一撃と豹変したあの瞬間。

 

「ん?あぁ、アレか。確かに普段の俺なら反応すらできなかっただろうな」

「普段の?」

「そうだ。覇王流とはまた違うが、武術の奥義と言ってもいいんじゃないかな」

 

驚異的に上がった反射速度と恐らくすべての打撃を必殺へと化けさせる一撃。確かに奥義と言っても過言でない気がします。

しかし、私の記憶だとクラウスはそんな技術は持っていないはず………

 

「ただ、お前にそれを教えるのはまだ早い。だから、俺はお前にそれを()()()()()()

 

教えていない………?普通でしたらここは「まだ教えない」とかそう言うニュアンスの言葉を使うと思いますが………と言うことはこれは

 

「………なるほど。あなた達はこれが夢だ、と知っていたのですね」

「夢でもいいじゃないですか。私とクラウスがいて、そして刹那がいる。歴史上では絶対にありえない事ですけど、ここならそれが叶うんですよ」

「そうだな。ここでしか一緒には居られないんだ。ここでならこの後戦乱が起こる未来は存在しない。故にゆりかごもない。平和に過ごせる」

 

やはり、自覚していたのですね。

 

「すみません………ヴィヴィ、クラウス。それでも私は行かないといけません。みんなが………大切な仲間が待ってますから」

「………そう言うだろうと、思ったよ。ヴィヴィ」

「はいっ!」

 

ヴィヴィはクラウスとアイコンタクトを取ると同時にベランダから室内へ。少しして出てきた時には先程のドレスではなく戦装束………袖は肩までしかなく、義手は根元以外すべて露出していてロングスカートの両サイドには義手を除いて唯一の装甲。まるでこれから戦にでも出るかのような。

 

「あの………これは?」

「私もあなたの力になりたい。それだけです」

「知っていると思うが永き戦乱の後も幾度となく夜天の魔導書は起動していてな。恐らくその内のどこかでゆりかご内のヴィヴィの魔力を蒐集されたのだろう。きっと力になる。連れていけ」

「しかし、クラウスは………?」

「俺は一緒には行けないが、()()()()()()()()()()()だ。つまり、問題ない。」

 

私はクラウスで、クラウスは私………?確かに私はクラウスの子孫ですが………

 

「代わりに、俺からはさっきの2つの技術を教えてやる。と言っても、直ぐには使えないぞ?。しかし………そうだな、名前だけは教えてやる」

 

椅子から立ち上がり、ベランダから遠くを眺めるクラウス。私とヴィヴィはその隣でクラウスの横顔を見ると、その表情はいつも以上に真剣そのもの。

 

「全ての無駄を打ち消し、全ての影を見据える。されど自身の心は一滴の雫の如し。その名は」

 

───明鏡止水

 

「全ての打は己の全を持って打ち込むべし。自身の有り様に囚われぬその必殺は」

 

───鏡花水月

 

「明鏡止水と鏡花水月………」

「そうだ。ヴィヴィとの血戦の後(あの後)俺が構築して記憶の中に封じ込めた。と言っても、俺の血筋の皆が使える訳では無いけどな」

「素質と覚悟。それの両方が揃い、その上で真の意味で守りたい、救いたいと思った時に記憶に刻まれる………でしたよね?」

「………ヴィヴィ。俺の決め台詞を取らないでくれないか?しかし、そういう事だ。刹那には素質も覚悟もある。あとは、お前の意思次第だ」

「私の………意思」

 

いくつか疑問は残りますが………少なくとも今わかるのは今の私の意思は真に誰かを守るにはまだ何かが足りないと言うこと。それとヴィヴィが一緒に来てくれること。

私は胸の前で拳を握りしめ、自身の意思を再確認。

 

「クラウスっ!」

「礼は要らないさ。さて、俺からは渡すものはすべて渡したよ。俺はもう悔いはない。何たって、俺はお前だからな。じゃあな、また夢の中で」

 

私が一言礼を伝えよう、そう思ってクラウスの方へ向き直りました。しかし、当のクラウスは別れの言葉と共に光を纏い、辺りの景色と共に霧散していきました。

 

「クラウス………」

「さて、刹那。私はこれから外に出ます。あなたの大切な人を助けてきますね。刹那は刹那のするべきことをしてください」

「しかし、この閉鎖空間からどうやって外へ?」

「簡単ですよ。外にはあなたのリンカーコアを半分受け継いだ子がいるので、刹那のリンカーコアを伝ってそちらへ転移で出るのです」

 

残されたヴィヴィは外の援護へ行くと言いますが、ここは夜天の魔導書内部の閉鎖された空間。そこからどうやって出るのか。ヴィヴィは私とアリシアが全く同じリンカーコアということを利用して出る、と言い出します。それは確かに理論上は可能かも知れませんが、かなりの高等魔術なはずです。

 

「………私の大好きな人を、その家族と友達を頼みます」

「あなたにそんなに想われていて………妬けますね。では、行ってきます。また後で!」

「はい、また後で」

 

しかし、ヴィヴィなら出来る。私の直感がそう訴えてきて………私はヴィヴィを信じて託す事に。ヴィヴィは行ってきます、の言葉と共に私のリンカーコアへ吸い込まれるように飛び込んでいきました。

 

「さて、私も義妹を起こしに行かないといけませんね。急がないと」

 

私も闇の中へと歩を進めていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「はぁぁぁぁっ!」

「っく………やぁぁ!」

「てやぁぁ!」

 

フルドライブを発動し、なのはも前衛に加わって何度もぶつかって………それでも尚私達は夜天さんの力に押され気味で………打撃と射撃、砲撃を織り交ぜたコンビネーションを掻い潜るどころか完全に裏すらかかれてしまっていて………私の魔力も枯渇寸前。

 

「きゃぁっ!」

「なのはっ!っぁぁ!」

 

息も上がって一瞬なのはの動きが緩んだ瞬間、夜天さんはその隙を見逃さずなのはへ肉薄して零距離砲撃。なのはは海底からいくつも励起した岩の柱の1つへ激突。

それに気を取られたフェイトも夜天さんの回し蹴りに防御が間に合わずに直撃。なのはに重なるようにして岩の柱へ激突。

 

「縛れ」

「なっ!きゃぁぁっ!」

 

そして私も既にフラフラで、夜天さんのチェーンバインドに拘束されてなのはとフェイトも巻き込んで柱に縛り付けられてしまいました。

 

「しくじっ………た………もう魔力が……っ」

 

咄嗟にバインドを魔力を流し込んで破壊しようとしたせいで私は魔力が完全に枯渇、バインドを破壊できないどころか成す術がなくなってしまいます。なのはとフェイトは魔力こそまだ残っているみたいだけど、ダメージのせいでバインドを破壊できるだけの余力は無いみたい。

でも弱音は見せたらダメ………痛いのや苦しいのをグッと堪えて夜天さんの方を見て………絶望しました。

だって、夜天さんはまたスターライトブレイカーをチャージしていて、もう発射寸前だったから。

私達がさっき止めたのは余波で、しかも私達自身万全の状態。けど、今回は魔力もカツカツでダメージも酷い………バインドで縛られているから回避も無理。かと言って防御が可能かと言われれば………万全の状態でもできる自信はないです。

 

「眠りにつけ。スターライト………ブレイカー」

 

そしてそれは私達へ向けて容赦無く発射。私達はやられるのを覚悟して目を固く閉じました。

 

「……………………ぁれ?」

 

しかし、直撃の衝撃はいつになってもやって来なくて、私達は恐る恐る目を開けました。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

するとそこに居たのは障壁を展開した見慣れない女性。私やフェイトより赤みの強い金髪を青のリボンでアップで纏め、服は首周りと袖が黒でそこより下は白の半袖に黒のロングスカート。スカートの両サイドにはグレーの装甲が付いています。そして何より特徴的なのはその両腕。人のそれではなく、明らかに鉄………義手を身に付けていました。

その人がこちらに振り向いたので分かったのですが、目も右が緑で左が赤の虹彩異色。

 

「遅くなってすみません。私はオリヴィエ。オリヴィエ·ゼーゲブレヒトと申します。刹那の指示であなた達の援護に参りました」

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side オリヴィエ

 

肉体の実体化異常なし、私のリンカーコアも異常なし、その他もろもろ全部異常なし!後半は面倒なので色々省略しました。

今私は刹那のリンカーコアを伝って外への転移途中。距離的にはすぐそこなんですが、如何せん閉鎖空間から外に出るということで少し時間がかかってます。と言っても1分も無いですが。その間に私は夜天の魔導書に保存されていた私の魔力を掻き集めて作ったリンカーコアと自身の体、その他もろもろの確認をしていました。

魔力量は………本来の私の体ではないこともあり、刹那の世界基準だと今は約1000万くらいかな。最盛期が確か7580万でしたっけ?それに比べればかなり減ってますが……先程の刹那と比べれば莫大な量ですね。

 

「外の様子も見ておきましょう。下手なタイミングで出ると自滅しかねませんからね」

 

私は刹那のリンカーコアからそのリンカーコアを受け継いだ子のコアの中へ。リンカーコアを通じてその子の見ている景色を少し拝借………っと。

 

「見たところ柱のようなものに縛り付けられてますね。魔力ももうほとんど残ってないみたいなので自力で脱出出来ないんでしょう。近くで縛られてるのはお仲間………でしょうか?」

 

とりあえず自身の現状を確認、そして仲間の状態も確認。肝心の敵は………あれは集束魔法でしょうか?正直、ちょっとマズいですね。これでは防御すらままなりません。私がやるしかないみたいです。

 

「少し強引ですが………やってやれないことはありません」

 

集束魔法の砲撃が放たれ、この体の持ち主が目を閉じた瞬間、私は体外へ。

 

「魔力解放、聖王の鎧っ!」

 

そして私は聖王なる私の代名詞でもある聖王の鎧を発動。その強力な障壁によって集束魔法は二股に分かれ、そのまま海へと直撃して2つの大きな水柱を上げました。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

私は後ろへ振り返ります。

 

「遅くなってすみません。私はオリヴィエ。オリヴィエ·ゼーゲブレヒトと申します。刹那の指示であなた達の援護に参りました」

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

オリヴィエ、と名乗る女性………ううん、良く見たら背丈は私より少し高いくらいで多分年齢も見たところ私達と大差ないと思うから女の子って言うべきかな。

 

「えっと………ありがとう、ございます?」

「どういたしまして。ちょっと待ってくださいね。このバインド、砕きますから」

 

オリヴィエさんは私達を縛るバインドを掴むとぐいっと引っ張り、それだけで破壊。力技ですが、アンチェインナックルのような強引さは無く、魔力運用としても繊細なものがあります。

 

「そちらのお2人は大丈夫ですか?」

「ぁ、はい。これくらいなら、なんとか大丈夫です」

「私も大丈夫ですけど………お姉ちゃんはそろそろ魔力が………」

「へーき、へっちゃら………っ」

 

なのはとフェイトは自分のことよりも私のことを心配してくれて。強がってはみるけど、魔力の枯渇はどうしようもなくって、飛行魔法すら不安定でオリヴィエさんに支えられる形になってしまいます。

 

「無理、しないでください。こんなこともあろうかと、刹那は私をこっちに寄越したんですから」

「こんなこともあろうかと?」

「私のリンカーコアを使ってください。今の私は融合騎のようなものなので、私が内部で適合させます。少し…数分かかるので………ぇっと、皆さんの名前を教えていただけますか?」

 

オリヴィエさんは私と融合して私に自身のリンカーコアを適合させる、と言います。

同時に私達は唐突に名前を聞かれてオリヴィエさんへ答えました。

 

「なのはさん、フェイトさん。数分………いえ、1分の間、アレの相手をお願いしても?」

「「わかりましたっ!」」

 

なのはとフェイトはそう返事をすると同時に、夜天さんに向けて突撃していきました。

 

「さて、アリシア。私達は私達のすることをしましょう?」

「ぇっと………わかりました!ユニゾン………」

「「イン!」」

 

オリヴィエさんが私の中へ溶け込み、早速適合させていっているのが私にもわかる。枯渇していた魔力がどんどんと回復し、力がみなぎる。

 

「さすがに私の全魔力を受け渡すのはアリシアの負担になるので辞めておきますが………そちら基準でS相当くらいで宜しいですか?」

「そんなにっ!?オリヴィエさんは大丈夫なんですか!?」

「大丈夫ですよ。それでもまだまだ残りますから」

「ふぇぇ………」

 

あれ?でもオリヴィエって名前どこかで聞き覚えが………

 

「アリシア!適合完了です。行けますよ!」

「ありがとうございます、オリヴィエさん!」

「馴染むまでは私が中で調整します。好きなように暴れちゃってください!」

「わっかりました!」

 

オリヴィエさんに元気と魔力をもらい、なのはとフェイトの援護へ飛び立ちました。

 

刹那もあの中で頑張ってるんだ。私だって!!




初!10000字突破ぁぁ!!長かったです。疲れました!

個人的にオリヴィエも出してあげたくて(個人的な趣味)半ば無理矢理な流れだったかな、とも思います。
オリヴィエの格好は分かりにくければVividのコミックを読んでみてください!
ちなみにシュトゥラの物語でエレミアやクロを出していないのはわざとで、ぶっちゃけ出したらカオスになるかと思って出しませんでした。

さて、(多分次回くらいで)ユーノの反応が楽しみだ(((

では、感想や評価があればよろしくお願いします!


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第25話 少女八神はやての決意

ここのアリシア、今にして思えは刹那の影響受けまくってますねー。
A’sや劇場版のアリシアは勉強とか苦手だったりしてますが、そこそこ勤勉ですし。魔力資質とかも刹那がいなかったらまるっきり凡人だったんだろうなって思う今日この頃。性格も若干勇敢さ入ってますし尚更。

後悔はしてませんけどねっ!


───夜天の魔導書 内部空間

 

オリヴィエを外に送り出し、私は夜天の魔導書の内部空間に1人残っています。当たりは真っ暗。と言っても光がない意味での暗さではなく、景色が黒一色。事実私は自身の体がハッキリと見えています。光がないと見えませんからね。もっとも、光源がどこなのかはわかりませんが………

 

「さて………」

 

もちろんこんな空間に好き好んで残ったわけではなく、ちゃんと目的があって残りました。それは現状の最悪の結末を回避する唯一無二と言っていい手段、今現在無意識下にあるであろう夜天の魔導書の主たる八神はやて(義妹)を起こし、管理者権限でシステムへ介入すること。

当初ははやてを解放した後、夜天の魔導書をこの守護騎士システムやこの内部空間を含む全てを私毎封印するつもりでいました。しかし、それでははやてを助けることは出来てもはやては独りに戻る。確かに当初はこれが最善と考えていましたが、それでははやては守れてもはやての愛する家庭は守れない。ならどうするか?答えは簡単。暴走前に内部空間のどこかにいるであろうはやてを叩き起して管理者権限で必要最低限のシステムを切り取って独立させ、防衛システム含めた不要なシステム、夜天の魔導書が闇の書たる所以のみを封印もしくは完全破壊する。

私一人では不可能でしょう。しかし、私には仲間がいます。頼っていい仲間がいます。それなら不可能ではない………いえ、十分に可能です。

あとははやてをいかに早く見付けるか、それだけ。

 

「外でみんなが時間を稼いでくれているんです。私も、私のやることを成し遂げましょう」

 

宛がある訳では無いですが、私はこの真っ黒な内部空間を駆け出しました。

 

 

 

 

 

 

 

───side はやて

 

「眠い………」

 

気が付いたら病院のベッドからビルの屋上におって、なのはちゃんやフェイトちゃんがヴィータに酷いことして………その後から少し記憶が無い。

 

「眠い………」

 

ほんで気ぃ付いた思たら夢と現を言ったり来たりしとるみたいに睡魔がすごぉて………

 

「ん………?」

 

私は重い瞼を薄らと開けてみた。そこにおったんは銀髪の女性で。すると、その女性が口を開きました。

 

「そのままお休みを………我が主。あなたの望みは全て私が叶えます」

 

望み………私、何望んだんやろ………寝惚けたような今の頭で考えても何も思い出せへん。

 

「目を閉じて、心静かに夢を見てください。あなたの欲しかった幸せを全て差し上げます」

 

私はそれから重い瞼を閉じて、それでも何とか意識は保って考えに考えた………のはええんやけど、眠過ぎて眠過ぎてやっぱり何も思い出せへん。

 

「私が………欲しかった幸せ………」

 

どんくらい考えてたんか………ほんの数秒なんか、それともずっとなんかわからへん。気ぃ付いたらこの人の言ってたことを私は反芻しとった。

 

「健康な体、愛する者達とのずっと続いていく暮らし。眠ってください。そうすれば夢の中であなたはずっとそんな世界に居られます」

 

確かに私はずっと足を患っとるから健康な体が欲しい思たことは1度や2度やない。

ずっと1人で暮らしとったから刹那(兄やん)がそこに加わっただけでも嬉しかった。それからヴィータやシグナム、シャマルやザフィーラも加わって賑やかになって………何度もそれが続けばええなって思たし、ここ半年での私の夢やった。今この睡魔に全てを委ねればそれが叶う。私は睡魔に抵抗するのを辞め、意識を手放そうした。

 

『望みは自らの手で勝ち取るものです。他人の力や、ましてや夢の中でだけ叶えられても意味は無いんです』

 

その瞬間、ヴィータ達と出会う少し前くらいやったかな。兄やんの夢について話した時の兄やんが言ったことが頭をよぎった。

確か私が兄やんの夢は何なんか聞いた時やったかな。

 

『私の望みですか?』

『せやせや。みっどちるだ?ゆうとこやったらもう敵無しぃゆうくらい強くて名前も通ってるんやろ?なら、今目指してるものは何なんかな思てな』

『そうですね………やはり、向こうで取った様々なタイトルの連覇、あとは』

『あとは?』

『はやてとのこの生活、ですね。なんせ私も独りでしたし、今となってははやては大切な義妹ですし』

『なんや、面と向こぉて言われると恥ずかしいわ………ぁ、せやったらな?私もたまに見るんやけど、それを寝とる時に夢で見たりしたらどう思うん?やっぱり覚めてほしゅうないん?』

『そうですね………』

 

この後、少し考えてから兄やんが言ったことがさっきの言葉やった。嬉し恥ずかしやったから今でも覚えとる。

その言葉を思い出して頭をぶんぶんと振って手放しかけとった意識を繋ぎ止めてから自分で両の頬をピシャリと叩く。これで睡魔はもう大丈夫や!

 

「せやけど、それはただの夢や。夢の中でだけ叶えられても、現実は何も変わらへん!」

「っ!」

「私、こんなん望んでない!あなたも同じはずや。違うか?」

 

私は私の本音をこの人にぶつける。するとこの人は少しだけ悲しそうにしてからまた口を開いた。

 

「私の心は騎士達の感情と深くリンクしています。だから騎士達と同じように私もあなたを愛おしく思います。だからこそ、あなたを殺してしまう自分自身が許せない」

「…っ」

「自分ではどうにもならない力の暴走。あなたを侵食することも暴走してあなたを喰らい尽くしてしまうことも止められない」

『止められないからと、諦めるのですか?』

 

不意に聞こえた私でもこの人のでもない声がこの空間に響く。この声はよぉ覚えとるし、私が聞き間違えるはずのない声。

 

「断空拳っ!」

「兄やん!」

 

次の瞬間、私らの横の空間に突如ヒビが入ったかと思たらガラスの様に砕け、そこから声の主である兄やんが姿を見せる。私は唐突な兄やんの登場が嬉しくて、兄やんの方に寄ろうとしてバランスを崩し、車椅子ごと倒れてしまって

 

「なっ………あなたは夢の世界に閉じ込めたはず!?」

「なに、私のレアスキルでシステムに介入して少し弄っただけですよ。多少消耗はしましたが、はやてのためなら大したことはありません。今はやての意識が覚醒しているのは少々計算外ですが。もちろん良い意味で」

 

兄やんはそんな私を抱き起こし、車椅子も起こしてそこに私を座らせてくれた。そして私の頭にそっと手を置き、優しく撫でてくれた。

 

「はやても、ずっと悲しい思いをしてきました。ですから望むように生きられない悲しさははやては一番よくわかっています」

「………せや。シグナム達と同じや。ずっと悲しい思い、寂しい思いしてきた………」

 

シグナムと感情が繋がっているこの人もそれがわかるんやと思う。昔シグナム達と戦ったゆうご先祖様の記憶を持っとるゆう兄やんも戦った時に似たようなこと感じたのを覚えとるんやろう。同情するような悲しい顔を見せるこの2人。

 

「せやけど、忘れたらあかん」

 

そこに私の一言。この女性はギョっと驚き、兄やんはさもわかっとったかのように口角が上がって笑みをこぼす。私は車椅子から身を乗り出してこの女性の頬に手を伸ばす。兄やんはそんな私が転けないよう支えてくれる。

 

「あなたのマスターは今は私や。マスターの言うことはちゃんと聞かなあかん」

 

私のこの言葉と同時に足元に白い三角形の魔法陣(ベルカ式の魔法陣やってあとから聞いた)が展開。

今の私の体勢を案じてくれたんか、この女性は膝立ちになり、兄やんは私をそのまま車椅子へと戻してくれた。

 

「名前をあげる。もう闇の書とか呪いの魔導書なんて私が呼ばせへん。私は管理者や。私にはそれができる」

「無理です………自動防御プログラムが止まりません………管理局の魔導士が戦っていますが、それも」

「諦めるのはまだ早いですよ」

 

涙を流して私の言葉を否定する。この人としても本心やないゆぅんはよぉわかる。と、そこに口を挟んだのは兄やん。元々私のためゆぅてたから考えがあったんやと思う。

 

「さっきはやても言ったではないですか。はやては管理者です。管理者なら自動防御プログラムのコントロールを魔導書本体から切り離してある程度止めることは可能です。その上で外で動いてる子を倒してくれれば………もしかすると最善の中の最善の結果を得られるかも知れません。外には………私が最も信頼出来る人と、かつての親友がいますから」

「っ!?」

「わかった………止まって!」

 

兄やんの助言を受けて私はシステムの介入を試みる。すると、足元の魔法陣が強く光り輝いた。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

オリヴィエさんの協力もあって、あれからまた夜天さんと戦ってる私達。けど、それでも力はほとんど拮抗しているみたいで押し切れない………って思ったら何でか夜天さんの動きがいきなり止まっちゃって………まるで壊れた機械みたいにギシギシ動き始めて………何が起きてるんだろう?

 

『外の方!管理者の方!』

「「「「っ!」」」」

 

そしたら急に声が聞こえてきて………私と私の中にいるオリヴィエは何が起きているのかすぐにわかりました。刹那ははやてを起こすことに成功したんだって。

 

『ぇっと、そこにいる子の保護者、八神はやてです!』

「「はやて(ちゃん)!?」」

『なのはちゃん!それにフェイトちゃん!?ゆぅことはアリシアちゃんも!?』

「正解だよー。話せば長い色々なことがあって夜天さんと戦ってるの!」

 

何が起きてるのかわかってなかった様子のなのはとフェイトはビックリしてるみたいです。

 

『やはり、持ちこたえてくれてましたか。………これ以上注文するのは本意ではありませんが、何とかその子を止めてあげてください』

『魔導書本体からのコントロールは切り離したんやけど、その子が走ってると管理者権限が使えへん。今そっちに出てるのは自動行動の防御プログラムだけやから!』

 

次いで刹那の声も聞こえてきて………なのはもフェイトも唖然。と言うより理解が追いついてないんだと思う。

と、近くの空間に唐突にモニターが出てきました。そこに出たのはユーノ君のどアップ。ユーノ、もう少し画面から離れよう?

 

『なのは、フェイト、アリシア!わかりやすく伝えるよ。融合状態で主が意識を保ってる。今なら防衛プログラムを本体から切り離せるかもしれない!そうすればはやてちゃんも刹那も外に出られる!』

「「「っ!」」」

 

確かに、刹那は出る方法までは考えてなかったと思う。というか私達を信用してそこまで考えなかったんだと思う。きっと、私達がなんとか出来るから………

 

「具体的に、どうすれば!」

『3人の純粋魔力砲でその子をぶっ飛ばして!全力全開、手加減無しで!』

「さすがユーノ!」

「わっかりやすい!」

 

ユーノ君の通信はそこで途切れました。けど、やることはもう明確に決まっている!なら、大丈夫!

 

「なのは、フェイト。魔力の回復すぐするね!」

 

私はオリヴィエさんからもらった魔力を消耗したなのはとフェイトに分け与えて十分に回復。

 

『アリシアさん、なのはさん、フェイトさん。この一撃に全ての魔力を使ってください。私の魔力でサポートします!』

 

私の中のオリヴィエさんも私達のサポートをしてくれるみたいで、百人力!

私とフェイトはなのはの両サイドへと立ち、構えます。

同時に3人分の普段より2回りくらい大きな魔法陣が展開。そして私達の魔力をすべて注ぎ込んで砲撃をチャージ

 

「NFA中距離殲滅コンビネーション!」

「ブラストカラミティ!」

「ハイパーバースト!」

 

フェイトはザンバーを振り上げ、私は鎌を牙突の構えで翳します。

 

「「「ファイヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

私達の叫び声と一緒に全力全開の砲撃を発射。避ける術のない夜天さんはそれを直撃しました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side はやて

 

「夜天の主の名において、汝に新たな名を送る」

 

私は全神経を集中して魔力を解放。この子を救うことに全力を出す。外はみんなが何とかしてくれるから。兄やんも、私の近くで見てくれてる。失敗する気がせぇへん!

 

「強く支える者………幸運の追風………祝福のエール………リインフォース」

「ここから出ましょう。一緒に」

 

今度は兄やんもその魔力を解き放ちました。

 

『自動防御プログラム一時的に沈黙。管理者権限の使用が可能になります。ですが、あくまで一時的。防御プログラムの暴走は止まりません。管理から切り離された膨大な力が直に暴れだします』

「まぁ、何とかしよ。行こか、リインフォース。そして、兄やん」

『「はい、我が主(はやて)!」』

 

私は意識の中で主としての力を発動。

 

『夜天の魔導書とその管制融合機リインフォース。この身の全てで御身をお守りいたします』

「管理者権限発動。リンカーコア復帰、守護騎士システム破損回帰。おいで、私の騎士達」

 

夜天の魔導書に取り込まれたシグナム達のリンカーコアを修復して復帰。私の周りには赤、紫、緑、白の計4つリンカーコアが漂い始め、同時に私の周りの光が凝縮、爆散しました。

 

「我ら、夜天の主の元に集いし騎士」

「主ある限り我らの魂尽きることなし」

「この身に命ある限り我らは御身の元にあり」

「我らが主、夜天の王。八神はやての名の元に!」

「夜天の主に祝福を………リインフォース、ユニゾン·イン!」

 

外に出ると同時、私はシグナム達に囲まれてて。なのはちゃん達に目配せしてから、決意を決めて私は手元に現れた杖を高く掲げて叫ぶとリインフォースのコアが私の中へと溶け込む。するとノースリーブにミニスカートだけやったベースウェアの上にチョッキと腰マント、背中には3対の黒い羽、頭にはベレーみたいな帽子が現れる。そして、髪が普段の濃い茶髪から雪のような白へ。瞳も鮮やかな青に変わります。

さぁ、こっからが本当の本番やで!




私は基本的TV放映の方ベースなんですけど、今回は何ヶ所か劇場版の方の描写も取り入れて書いてみました(そのせいで余計に時間がかかりました)

個人的にかなり無茶苦茶な気がしなくもないですが。ぁ、ちなみにはやてが外に出た後刹那もTVのフェイトっぽい感じで外に出てます。

最後の守護騎士の詠唱、間違ってないよね?聞いたまま書いたからもしかしたらどこか間違っちゃってるかも?

感想、評価などあればよろしくお願いします!


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第26話 ナハトヴァール

どうもー!最近アプリのアズールレーン(通称アズレン)にハマったルイスです。

ユニコーン可愛いよユニコーン(指輪も渡しました)

今回は劇場版要素たっぷりでお届けします。というかほとんど劇場版?


「はやて………」

 

海鳴の沖合にいくつも聳え立つ岩の柱、その1つの上で復活したシグナムを始めとしたヴォルケンリッターとその主はやて、そして私が向き合っています。

やっとの再会、そしてはやての意思に反する蒐集行為への後ろめたさ。特に後者のせいで感動(?)の再会にも関わらずはやて以外皆落ち込んでいます。

唯一言葉を発したヴィータへはやては笑顔で返答。怒ってないよ、と意思表示。確かに主の命令に逆らった行為を彼女らはしました。けれど、それは主たるはやてを思ってのものなのは明白。はやてとしても怒るに怒れなかったのでしょう。

 

「すみません………」

「あの………はやてちゃん、私達………」

「ええよ。みんなわかってる。リインフォースが教えてくれた。そやけど、私よりそこの兄やんの方が言いたい事いっぱいあるみたいよ?」

 

私も私でここの皆とは顔を合わせ辛く、その事を察したはやては私より兄やん、とこちらへ話を向けます。

 

「その………ごめんなさい。はやての為を思ってのこととは言え、みんなを騙して利用してしまいました」

 

そう、私はヴォルケンリッターの皆を蒐集に利用し、結果として仮面が行ったヴォルケンリッターからの蒐集と自身をも巻き込む暴走前の無理矢理の永久封印、それをやろうとしました。それははやてを愛し私を信用してくれていたシグナムらを利用して騙した事に他ならない行為。結果としてはやてが暴走前に覚醒状態にあった為に(もっとも、仮に覚醒状態でなくても無理矢理叩き起しましたが)皆を救い出してこうして再会出来たのですが、やはり蟠りは残ります。

私は地面(正確には岩の柱の足場)と並行になるほど綺麗な直角になるほど頭を下げて謝罪することで反省と謝罪の意を伝えました。

 

「許してもらえるとは思ってません。あの家から追い出すと言うのならそれに応じる覚悟です」

「なっ!?」

「えぇ!?」

 

普段なら見せないような私のこの態度。私から直には見えませんが、声から察するところによるとシグナムとシャマルはそれに戸惑っている様子。それでもこの体勢を続けていると私の視界に見慣れた赤い靴、ヴィータの靴が無言のまま入ってきて。私は殴られることを覚悟して目を閉じました。

 

「てりゃっ!………っぅぅ!!」

「っ!?」

 

その意に反して私を襲ったのは殴られた衝撃………ではなく頭頂部になにか柔らかいもので軽く叩かれたような衝撃と呼ぶには弱すぎるもの。状況がよくわからず顔を上げるとヴィータが自身の手を抑えて痛がっていました。どうやら私にデコピン(頭頂部なのでデコではないですが)して逆にダメージが返ってきたようです。

 

「これと後でアイス………って言いたいけど寒いからケーキ奢って!それでチャラ!兄ちゃんがこんな調子だと私らも調子狂うんだよ」

「とは言いますが………」

「つ!ま!り!要は私らははやてに黙って悪いことしたけど、兄ちゃんは黙ってた対象がはやてと私達だったってだけだろ?私らと兄ちゃんの違いは!」

「それもそうだな。結果論だが、主はやてを思っての行動というところは変わらないしな。私もこれが終わったら模擬戦にでも付き合ってもらえればそれで構わんさ」

「私も、刹那のこと怒ってませんよ。言ってみれば共犯者ですし」

「だな。その頭が少々別の事も視野に入れていて我らがそれを知らなかった。それだけだ」

 

ヴィータを筆頭にシグナム、シャマル、ザフィーラも私のことを快く許してくれて。はやてはおそらこれもリインフォースから聞いたのでしょう、すべてを知っていたような風で微笑んでいました。

私は思わず目に涙が浮かびました。

 

「ありがとう……ございます」

「ぁ、でもコンビニとかの安物のケーキはダメだかんな?すげぇ美味しいヤツ!」

「………宛があるので元々そのつもりでしたが、それを言うと台無しですよ、ヴィータ」

 

防衛プログラムの暴走前という緊張感漂う中に溢れる緊張感の欠けらも無い笑い声。これでやっと、八神一家は1つになれたと、そう確信しました。

と、そんな空気の中になのはとフェイト、アリシアがやってきてすぐ側に着地しました。

 

「なのはちゃんとフェイトちゃん、アリシアちゃんもごめんな?うちの子と兄やんが色々迷惑かけてもぉて」

「ううん」

「平気」

「のーぷろぶれむっ」

 

こちらも蟠りは何もないみたいでとりあえず一安心。3人の後ろにその頭らしいクロノ執務官が来たことで私は頭を切り替えて涙を拭いました。アルフとユーノも続いて近くに着地。

 

「すまないな、水を差してしまうんだが………時空管理局執務官クロノ·ハラオウンだ。時間が無いので簡潔に事態を確認したい」

 

クロノ執務官は海上に残る黒い塊を指さしました。

 

「あそこの黒い淀み、あれは闇の書の防衛プログラムであと数分で暴走を開始する。間違いないか」

「自動防衛システム。名前はナハトヴァール」

『暴走は周辺の物質を侵食しナハトの一部にしていく。臨界点が訪れなければこの星1つくらいなら飲み込んでしまう可能性がある』

 

私も知らなかったシステムの名前、その危険性をはやての中から姿だけ投影したリインフォースが補足説明。

あまりにも危険すぎるそれにその場の皆は固まりました。

 

「こちらで用意した停止のプランは現在2つある。1つ目は極めて強力な氷結魔法で停止させる」

 

クロノ執務官は指を1つ立ててこちらにもわかりやすいようプランを説明してくれます。そして2つ目の指を立てて

 

「2つ目は軌道上に待機している艦船アースラの魔導砲アルカンシェルで消滅させる。これ以外に他にいい手は無いか?」

 

まとめるとクロノは氷結魔法での停止とアルカンシェルでの消滅を提案。ただ、私が知りうる限りだと問題点が多い………氷結魔法の停止は確かに可能だろう。しかし、封印の解除もそこまで難しくなかったはず。そしてナハトヴァールのコアは氷結魔法させるだけでは『完全には』停止しない。つまり、その場しのぎにしかならない。その事はシャマルやシグナムも指摘しています。クロノ執務官も「だろうな………」と知っていたかのように返答。恐らくこれ自体ダメ元だったのでしょう。

そしてアルカンシェルは………

 

「アルカンシェルも絶対ダメ!こんなとこであんなもん撃ったらはやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!」

「そ、そんなにすごいの?」

「発動地点を中心に100数十キロ範囲の空間を歪曲させながら反応消滅を起こさせる魔導砲っていうとだいたい分かる?」

 

恐らく前回の暴走時のデータが夜天の書の内部に残っていたのでしょう、アルカンシェルもヴィータが反対。理由は単純。()()()()()()。ユーノがなのはへ答えたようにここで使えばここを中心に100数十キロという広範囲が吹き飛ぶ。そんなもの容認できるはずもない。もちろんそれを聞いたなのはやフェイト、アリシアは猛反発。クロノとしても使いたくない手のようです。

 

「だが、あれが暴走を始めると先程リインフォースが言ったようにこの星1つくらいは侵食する………もちろん僕も艦長もここで使いたくはないが………」

「大より小の犠牲、地球の全人口70億でしたか?の前のここ周辺数千万の犠牲で………ですか?」

 

ここに来てずっと口を開いていなかった私が少し冷たい怒気を含めた声で口を開きます。クロノ執務官はそれに少し怯えたように焦りながら反論。

 

「僕もこの手は取りたくないっ!だからこうしてもっと良いプランがないかと「ありますよ」聞いて…ってあるだと!?」

 

クロノ執務官の言葉を遮る私のある、の一言に皆の視点が私へと注がれます。

 

「正確には考案は私ではありませんが………考案者がこの場にいるので本人から話してもらいましょうか」

「この場にって言っても………誰が……ぁ!もしかして」

 

この場にいる皆に思い当たる節は無い………それを私に指摘しようとするアリシア。ですが、アリシアもその途中で気付きました。この場にはヴォルケンリッターやリインフォースと同じくらい夜天の魔導書と共に過ごし、彼女らと違いずっとその対策を練れた人物がいた事を。

 

「ユニゾン·アウトっ!」

 

アリシアはおもむろに自身のしていたユニゾンを解除(はやてのそれと違い見た目はほとんど変わりませんが)。アリシアの正面にすぅーっとアリシアより少し背丈の高い両手の義手が目立つ少女と言っても過言ではないような女性、オリヴィエが現れました。

 

「一部を除いてお初にお目にかかります。私はオリヴィエ·ゼーゲブレヒトと申します」

 

彼女の事を既に知っている私やなのは達(彼女自身の詳細は知らないだろうが)以外へ向けてペコリと頭を下げて自己紹介。それを見てヴォルケンリッターやユーノ、クロノは身をワナワナと震わせ

 

「えぇぇぇぇぇぇ!?!?」

 

ユーノが叫び声を上げました。まぁ、彼ら考古学者からすれば当然の反応でしょう。

 

「オリヴィエって………あの『聖王』!?」

「はい、そうですよ。ちなみに刹那と違ってその末裔、とかではなく本人です」

 

例えるなら大ファンのアイドルにでもたまたま遭遇したかのような、これがオリヴィエの末裔とかならまだ違ったのでしょうが、本来なら絶対に直接会うことなど不可能な聖王が聖王たる所以のオリヴィエ張本人との謁見。それをオリヴィエ本人がにこやかな笑顔で補足し、ユーノがそれに驚きすぎて後退り、柱から落ちそうになったところをなのはが助けます。私もとりあえず補足説明しておきます。

 

「ゆりかごに囚われた後、どのタイミングかは分かりませんが、いずれかの主がゆりかごを発見してそこから蒐集したのでしょう。間違いなく本人です」

「ぁ、今は非常事態なのでシグナム達も頭をあげてくださいね?さっさと第3のプラン、説明しちゃわないといけないので!でないとこの星が消えちゃいますよ」

 

いつの間に片膝をついていたシグナム達を立たせてからふぅ、と一息ついてから皆を見回すオリヴィエ。そして、口を開きました。

 

「まずはあの淀み、ナハトヴァールの展開する多重防壁をこのみんなで破壊します。強度はそこそこありますが、この皆さんの魔力や先程の戦闘を見る限り問題は無いでしょう」

 

クロノはそれを聞き、ふむふむと頷きます。オリヴィエはなのはやフェイトを見て再び口を開きます。

 

「次に本体へ直接ダメージを与えてコアを露出。並大抵の魔力では不可能ですが、これもなのはさん達なら問題ありませんね」

 

ふぇ!?っと期待をかけられて驚くなのはですが、フェイトやアリシアはどちらかと言うとやっぱりかぁ、と言った様子。

 

「そして、私の案ですとここからが問題だったのですが、これも今クリアしました」

「と言うと………?」

 

一番大切な部分、そこを言い淀むオリヴィエに疑問を持つクロノ執務官。まぁ、無理もないです。

 

「露出したコアを軌道上のあーすら?の正面に強制転移。そこならアルカンシェルをぶっ放しても問題ないですよね?」

「そうか!軌道上ならどこにも被害は出ない………それならアルカンシェルも問題なく使える!」

「元々最後の消滅をどうするか、がキーポイントだったのですが、アルカンシェルの威力、聞く限りでしたら問題ないですから」

 

皆一同になるほど!と納得。これなら確かに被害はゼロで決着できます。もちろんあの魔力の塊はそれだけでと危険なので油断はできませんし、思い通りに進むかはわかりません。しかし、希望は持てます。

 

「よし、それなら………艦長!」

『大丈夫、聞いてたわよ。アルカンシェル、チャージか開始!』

 

アースラの方もそれに向けて動き始めました。もう、決まりですね。

 

「クロノ執務官、私の案はどうでしょうか?」

 

それでも尚、オリヴィエはクロノ執務官へ最終確認を取ります。

 

「聞くまでもないでしょう、陛下。その案を採用させて頂きます!皆、これは皆の連携が大切だ!守護騎士の皆は闇の書の呪いを終わらせる為………なのはとフェイト、アリシア達はこの街とこの世界を守る為………協力してもらえるか!?」

 

クロノ執務官もやるべき事がハッキリとしたのか、この場にいる皆へ意思確認。もちろん皆協力するつもりだったので満場一致で可決。

その後、私達は淀みが良く見える柱の上へ移動し、戦闘態勢へ入ります。

 

「ぁ、せや。なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん。シャマルぅー」

「はいっ」

 

と、そこへはやてがシャマルを呼びます。少し下の足場にいたシャマルはなのは達の元へと向かいます。

 

「3人の治療ですね。クラールヴィント、本領発揮よ」

 

シャマルは指輪へ軽くキスし、それを嵌めた右手を正面に掲げます。

 

「風よ、癒しの恵みを運んで!」

 

それによってなのは達は光に包まれ、体の傷はおろかバリアジャケットやデバイスの損傷も完全に修復。その回復力を見てなのは達は声を上げて驚いています。私?こう言うのも何ですけど、戦闘はほとんどしていないので、仮面に貰った一撃以降問題はありません。それも既に回復してますしね。

 

「湖の騎士シャマルと風のリング、クラールヴィント。癒しと補助が本領です」

「うわぁお」

「すごい………」

「ありがとうございます!」

 

その回復を待ちってユーノとアルフ、ザフィーラは淀みの上空へ展開しました。とうとう、作戦開始です。

 

「コア露出までは私達がサポートだ。上手いこと動きを止めるよ!」

「うん!」

「あぁ」

 

それとほぼ同時、淀みを中心にして漆黒の柱が海中から何本も発生しました。

 

「始まる………」

「夜天の魔導書を呪われた魔導書と呼ばせたプログラム」

「ナハトヴァールの侵食暴走体」

「闇の書の闇」

 

クロノに続いてはやて、私、オリヴィエと続いて口を開きます。そのあいだに例の柱を中心に淀みが爆散、内部からいくつもの魔導生物を合わせたような化け物が姿を表しました。ここからが、本番です!

 

「ケイジングサークル!」

「チェーンバインド!」

「囲え!鋼の軛っ!!」

 

3人に拘束された化け物は叫び声を上げ、暴れます。当然その拘束は瞬く間に破られ、周囲へと無差別砲撃を開始。ユーノ達は直ぐにそれを回避しつつ離脱しました。

 

「状況開始っ!なのはちゃん、ヴィータちゃん!お願い!」

 

その砲撃の1発が私達のいる柱へ直撃。私達は上空へ飛び立ち、戦闘スタート。まずはシャマルの指揮の元にヴィータとなのはが動きます。

 

「合わせろよ、高町なのは」

「っ………うん!」

 

初めて名前で呼ばれたなのはは嬉しくて仕方ないのでしょう。満面の笑みでヴィータへ答えてみせます。

 

「やるぞ!アイゼン!」

 

ヴィータはグラーフアイゼンをギガントフォームへ変形。動きながらでは攻撃できないので砲撃を避けながらポジション取りへ動きます。

 

「アクセルシューターバニシングシフト!」

〈 Rock on.〉

「シュゥゥゥゥゥゥト!!」

 

なのはの放つ無数の魔力弾、それはヴィータへと襲いかかっていた砲撃を放つ砲台、それを全てロックし、撃ち落としました。それによって避ける必要のなくなったヴィータはなのはとアイコンタクトの後、魔法陣を展開して停止し攻撃へ入ります。

 

「轟天爆砕っ!!!」

 

ヴィータの一声と共にグラーフアイゼンを振り上げます。するとグラーフアイゼンはそれまでの数十、いや、数百倍は巨大化。

 

「ギガント………シュラァァァァァァック!!!」

 

それをナハトヴァール目掛けて振り下ろしました。それによって防壁の1つが破壊。しかし、その内側にあった次なる防壁の破壊までは至らず。

 

「シグナム!フェイトちゃん!」

 

ヴィータの一撃によって更に激しく暴れ、再生した砲台から無数の砲撃。シグナムとフェイトはそれを得意の高速起動で回避しつつ突撃をかけます。

 

「行くぞ、テスタロッサ!」

「はい、シグナム!………はぁぁっ!」

 

フェイトはさらに加速を掛け、シグナムはその場で停止。加速したフェイトはバルディッシュザンバーを自身の回転で遠心力を乗せて横薙ぎに1振り。衝撃波として斬撃を飛ばし、砲台を殲滅。もちろん防壁破壊までは至りません。

 

「くっ………」

 

破壊できないと見るや、直ぐにシグナムの反対側へと身を翻るように移動。魔法陣を展開して高威力攻撃の用意。同時にシグナムはレヴァンテインをボーゲン、つまり弓へ変形、シグナム最大威力の魔法を発動します。

 

「翔けよ、隼!」

「貫け、雷神!」

 

2人によって放たれた炎を纏った隼の矢と巨大な剣による雷を纏った振り下ろしは残った障壁を破壊し尽くすのには十分すぎる威力でした。

 

「やった!?」

「………いや、まだ!」

 

ナハトヴァールはその一撃によって障壁を失います。が、その巨体ごと宙へと浮上。さらに追加で障壁を作り出しました。それは今までの攻撃から学んでいるのか、今までの攻撃では破壊できそうにもない強度。それなら………

 

「アリシア!ヴィヴィ!!」

「待ってましたっ!」

『いつでも!』

 

ここは私の動く番。私は頭上で回避に専念していたアリシアとアリシアにユニゾンしているヴィヴィへ声を掛けます。アリシアは丁度私の反対側へすかさず移動し、両手のベリルスマッシャーを頭上へ振り上げます。

 

「回れ!聖なる力よ!」

 

そしてそれの柄を連結させてとてつもなく長い両刃の鎌とし、頭上でグルグルと回して魔力の環を発生。

私も特大の魔力を右手に込め、踏み込みます。

 

「『ジェットホイィィィィィィルっ!』」

「爆砕断空拳………真打5連っ!!!」

 

アリシアはその巨大な環を防壁へ飛ばし、私は反対側から私の最大威力の5連、本来なら5回の衝撃を与えるそれを一撃へ全て込めて打ち出します。

私達の一撃でナハトヴァールが意地で発生させた障壁は全て破壊しました。それによりさらに激しくなる暴走。次に動くのは

 

「はやてちゃんっ」

「彼方より来たれ、宿木の枝!」

『銀月の槍となりて撃ち貫け!』

 

はやてはシャマルの指示を待ってましたとばかりにナハトヴァールの頭上で詠唱開始。

 

「石化の槍!」

「『ミストルティン!!』」

 

はやてとリインフォースは8つの槍をナハトヴァールへ振らせ、その着弾地点を中心に石化を開始。そ空中に留まれなくなったナハトヴァールは海中へ落下、爆発するように石化を破壊して再生を開始。再生こそしていますが、ダメージは通っています。

ここで動くのは隠し玉を持ってきているクロノ執務官。

クロノ執務官はただ、無言で手に持つ杖を空へ掲げます。その杖は普段使っているS2Uではなく、氷結の杖デュランダル。かの仮面を裏で操っていたギル·グレアムより託された切り札にして先程の1つ目のプランの氷結魔法の媒体。氷結魔法での停止は無理でも再生を一時的に止めるくらいなら十分過ぎる威力を持っているそれは、空に掲げるそれ以前より強い冷気を放ち、クロノ執務官の吐息はまるで真冬のように(クリスマスイブなので真冬で間違いないが)白くなっています。

 

「凍てつけっ!!」

 

そしてそのデュランダルより氷結魔法の砲撃。ナハトヴァールへ着弾して拡散したそれはデュランダルの作り出した4つのビットの障壁によって幾重にもナハトヴァールへ着弾。完全に凍りつきました。

 

「なのは!フェイト!アリシア!はやて!」

 

自身の髪やバリアジャケットの一部すら凍らせたクロノ執務官はその役目を終えると最後の締め括りを担う4人へと合図。

その時、既にナハトヴァールの上空ではなのはが魔力の集束を開始していました。

フェイトは空へと魔力を送り込んで雷を発生、そのパワーをザンバーへと込めます。

そしてアリシアは自身の内にある聖王の魔力を完全解放。本人は気付いてませんが、アリシアの右目が赤から緑色へ変化。

 

「ごめんな、おやすみな」

 

はやても今まで一緒に育ったナハトヴァールへと一声掛け、それから魔力を集束。

 

「全力全開!スターライトォ!!」

「雷光一閃!プラズマザンバー!!」

「一撃必殺!セイクリッドォ!!」

「響け終焉の笛!ラグナロク!!」

 

直ぐに4人の集束した魔力は臨界点を迎え………

 

「「「「ブレイカぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

ナハトヴァールへと向けて4つの集束砲撃が発射されました。その衝撃はクロノ執務官によって凍らされた海面の氷を全て拭き飛ばし、ナハトヴァール自身の体を作っていた無数の魔導生物の肉体すらも吹き飛ばします。

 

「捕まえ………た!!」

 

その機を待ってましたとばかりにシャマルの旅の鏡によりナハトヴァールの露出したコアを補足。

 

「長距離転送!」

「目標、軌道zy………なっ!」

 

そして軌道上へ強制転移………と思った瞬間それは起きました。

補足したコア、それの魔力が突如今までとは比にならない濃度で集束し、爆散したのです。

それをすぐ側で見ていたシャマルはすぐにコアの確保を諦めて離脱しましたが、爆散の衝撃波に離脱が遅れたアルフとユーノ共々捕まり、吹き飛ばされました。

 

「シャマルっ!」

「アルフ!」

「ユーノ君!」

 

すぐにシグナムとフェイト、なのはが3人を助けに向かい、ヴィータとザフィーラ、クロノ執務官はその爆散地点へと同時に突撃。するとその爆散地から黒い『何か』が高速で飛び出し、3人を瞬く間に迎撃します。

それにより吹き飛ばされた3人を見ると、既にノックアウト、動けそうにない状態で気絶していて。

 

「なっ!?」

「あの3人が………たった一撃!?」

 

鉄槌の騎士として名高いヴィータに元々防御に自信のある盾の守護獣ザフィーラ、防御こそそこまで高くないが、魔法技術が高く防壁による防御の上手いクロノ。その3人を一撃でノックアウトするほどの攻撃。

その黒い『何か』が着地した地点の砂煙が晴れ、そこにいる『何か』がハッキリと見えるようになり………

 

「………何なんですか、あれは」

 

それは姿ははやてを解放する前のナハトヴァールそっくりですが、全身から闇のオーラのようなものを纏っていて、最初戦ったそれとは全くの別物を思わせる物でした。

 

「なるほど………一筋縄ではいかない、ということですか」

 

私はそれを見て再び戦闘態勢。残ったシグナムとなのは、フェイト、アリシア、はやても各々の武器を構えます。

 

「ここからが………正念場ですよ!」




A’s一番盛り上がる場所!一斉攻撃とトリプルブレイカー!ぁ、この小説の場合はクアトロブレイカーですが。

しかし、まだまだ終わらせません。もう少し続きます。回収してないフラグもありますし(((

それはそうと、アズールレーン………そろそろクリーブランド来てくれませんか!5-3回りすぎて燃料がががが。
え?建造?もうすぐ来るであろう鶴イベントに向けてキューブと資金温存中です、はい。

ぁ、私の鯖は佐世保ですよ。誰がフレンドなりませんか?(((

という訳(どういう訳?)で感想、評価よろしくお願いします!!


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第27話 深遠なる闇

どうもルイスです!

どうでもいいですが、仕事が思いっきり忙しい中つい先日誕生日を迎えました!日付は秘密です。某武力介入する組織の操舵の人と同じ誕生日とだけ(((
わかる人にはわかりそう

それはそうと5-3グルグルしてるのにクリーブランド落ちませぇぇぇぇんっ!ぇ?建造すれば良いじゃないかって?鶴に備えて備蓄中なのです。一応戦力的には先に進めるんですけどね。

では本編どうぞ!


───軌道上 アースラ艦橋

 

「何が起きてるの!状況と現場の安否確認!急いで!」

 

総攻撃によるコアの露出が成功し、あとはアースラ正面に強制転移してアルカンシェルで反応消滅させる。それどけだと思っていた矢先のハプニング。

今アースラの艦橋はアラートがけたたましく鳴り、しかも先程の高密度魔力の放出のせいでアースラのセンサー類がジャミングを受け、現場の状況確認すらままならない。エイミィを始めとしたスタッフ一同はその復旧に追われている。

艦橋を一望出来る艦長席のリンディも平静を装ってスタッフへ檄を飛ばしてはいるものの、内心では現状がどうなっているのかわからないせいで焦りとパニックに近い状態となっている。もちろんそんな感情を表にだしたら士気に関わるので、必死にポーカーフェイスでいるのだが。

 

「カメラ一部復旧完了!遠目ですが結界内の映像出ます!」

「お願いっ!」

 

そんな中、カメラ復旧に当たっていたアレックスからカメラの復旧が一部完了したとの報告。リンディは即座に返答すると同時に先程から砂嵐となっているモニターを凝視。すると、そこに若干乱れている上にかなり遠目だが、現場の映像が映し出される。

 

「何が………起きてるの………?」

 

リンディはそれを見て絶句。そこに映し出されたものは目を疑うような光景だった。総攻撃後にカメラを含めたセンサー類がジャミングを受けてからまだ数分も経っていないにも関わらず、前線に送り込んでいるなのはを始めとしたアースラの主力魔導士、アースラの隠し玉クロノ、夜天の主はやてとその守護騎士と刹那………映像を見る限り彼らの姿がどこにも見えない。

代わりに見えるのは防衛プログラムのナハトヴァールが海底から励起させた数多の岩の柱、これはいくつも崩れている以外は先程と変わらない。しかしその聳え立つ中央、そこにはドス黒いオーラのようなものが渦巻き、空へと登っている。そのオーラの中心には人型の『何か』がいるようにも見えるが、カメラが遠目なので正確なことはわからない。わかるのはあの中央にある黒い『何か』は、少なくともロクでもないものということだけ。

 

「推定魔力Sランク…SS…なおも増大にて測定不能!ぁ、前線の魔導士の魔力、微弱ながら反応ありました!」

 

次にエイミィによって別のモニターに現場の魔力反応を示す上空からのマップが写し出される。中央には例のドス黒いオーラだろう、明らかに1つだけ色が違う部分がある。そしてそこから離れた場所にポツポツと別の微弱な反応。

 

「これって………」

 

それが示すもの、それは前線の魔導士はほとんどが撃墜されたという、あの短時間での出来事とは到底信じられない事実だった。クロノとザフィーラ、ヴィータはすぐ側の海岸に打ち上げられて気絶しており、なのはとフェイト、アリシア、刹那、はやて、シグナムは励起した岩の柱や海鳴の街にあるビル内部で倒れていて、ほとんどが魔力反応は微弱。大きな魔力反応はオリヴィエとユーノ、アルフ、シャマルのものだが、撃墜された皆を守ることだけで精一杯なようだ。

 

「あの短時間で………3分も経ってないわよ!?」

 

前線にいる戦闘に特化している皆、特に防御に特化しているザフィーラが完全に撃墜されている事実。

気絶している3人以外は少なくとも動くことだけは可能なようだが、満足な戦闘が出来るかと言われれば怪しいところだろう。かと言って残っている4人だけでなんとかなる相手でもない(そもそも残っているのはオリヴィエ以外サポート特化で、オリヴィエも攻撃よりは防御向き)上に全員をアースラへ強制転移させて治癒する余裕はない。あれを放置すればどうなるか、火を見るよりも明らかだからだ。

リンディも魔導士ではあるが、リンディがアースラの魔導士隊を率いてあの只中へ飛び込んだとしても被害が増えるだけということは本人が一番よくわかっている。

 

「どうすることも………できないの?」

 

この悲惨な現状はリンディを始めとしたアースラスタッフを絶望させるには十分過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ………ぁっ」

 

あの暴走した夜天と同じ姿の闇の化身、あれが出てきてから私達の状況は変わってしまいました。先ずクロノとヴィータ、ザフィーラが撃墜された事で私達はあれへの警戒を強め、フロントに私とシグナム、センターになのは、遊撃にフェイトとアリシア、バックスにはやてを配置した即席のフォーメーションを組んで戦闘を開始。各々の連携は当然だが、自身の自衛を最優先とすることは徹底させてある。シャマルとアルフ、ユーノは気絶した3人を戦闘空域から離れた場所へ運ぶように指示しています。

戦闘を始めてすぐ、まずセンターに配置していたなのはが目の前まで瞬時に移動してきた『あれ』の一撃を受けて街の方へ吹き飛ばされ、それに気を取られたフェイトとはやても、その隙をつかれて同様に。前線に残った私とアリシア、シグナムも瞬く間に一撃の元で撃墜されてしまいました。

今はアリシアとユニゾンを解いたオリヴィエが戦闘をしていますが、それもいつまで持つか………オリヴィエ自身は聖王の鎧があるので、そう簡単にやられはしないでしょうが、現状決定打に欠けるのもまた事実。

私は岩の柱へ叩きつけられた際に私の上に降り掛かってきた岩の塊をどかし、何とか動ける様になりました。

 

「刹那っ!私か時間を稼ぎますから、その間に皆を連れてここから離れてください!先ずは態勢を立て直しましょう!」

「っ………わかり、ました」

 

軋むように痛む体に鞭を打ち、近くの岩の柱の天辺に出来たクレーターの中心で倒れているシグナムを助け起こしてお互いに肩を貸しあい、海鳴の街の方へフラつきながら飛んでいきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

「かはっ………こほっ」

 

ここはどこだろう………どこまで飛ばされたんだろう………。

私達が現状考えうるほぼ最善のフォーメーションを組んだ矢先のこと。『あれ』がなのはの目の前へ瞬間移動。そう、()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのはの正面まで肉薄。その後の一撃でなのはがやられ、私やフェイト、はやても。恐らく刹那とシグナムも………。

今私はたまたま近くに飛ばされていたフェイトを助け起こし周囲を確認。街の方まで飛ばされたのはわかるけど、どの辺まで飛ばされたのかわからない。その上、体も打ち身や切り傷で痛くて痛くて思うように動かせなくって………下手したらどこか骨やっちゃってるかも。

 

「アリシアちゃんっ!」

 

唐突に私を呼ぶ声がしたから振り返ってみると、そこに居たのは息を切らしたクラスメイトの加藤紗綾。確かエイミィさんに安全なところまで転移させてもらってたはずだけど………

 

「紗綾………?」

「学校近くから、アリシアちゃん達が戦ってるの見えて……っ………そしたら急に、なのはちゃんって子が飛ばされてきて」

「っ………なのは、が?」

 

息も絶え絶えなのに私とフェイトに肩を貸してくれる紗綾。それと同時に今までの経緯を教えてもらう。

つまり、紗綾が言うには遠くの安全な場所(学校の近く)から戦闘を見てたらなのはが飛ばされてきたからそれを保護。一緒に近くに飛ばされた私達もすずかと紗綾が助けに来たってことらしい。とりあえず、今は私達は満足に動ける状態じゃないから学校に集まって体勢を立て直そう………でないと全滅する、と私の勘がそう伝えていました。

紗綾に連れられ、途中ではやてを連れたすずかとも合流して学校に着くとなのはは芝生の上で寝転がされていてアリサがその面倒を見ていました。保健室から持ってきたであろう薬や絆創膏、湿布に包帯が辺りに散乱している所から察するになのはを簡易的ながら治療した後ってところかな。

 

「とりあえず、横になって。簡単にだけど治療しちゃうから」

 

紗綾とすずかはなのはの横に私とフェイト、はやてを寝かせて治療してくれました。その途中で完全に気を失っているザフィーラ、ヴィータ、クロノを連れたシャマル、ユーノ、アルフとシグナムと肩を貸しあって飛んできた刹那も合流。

やられた後なだけあり、誰もが俯いてしまい口を開こうとはしませんでした。

 

「あぁぁぁ!!!もう!何なのよあんた達!湿っぽいオーラ出しちゃって!あれはなんなの?私達はちゃんと助かるんでしょうね!?」

「ぁ、アリサちゃん落ち着こう?今焦っても仕方ないよ」

「そんなこと言ったって私達は巻き込まれた側なんだから知る権利くらいあるわよ。あんた達がどれ位の実力なのかは知らないけど、この人数を1人で圧倒する敵なんでしょ!?」

 

確かにアリサの言うように彼女達は完全に部外者。巻き込まれた側。その上こんな非現実的なものを見せられたら何が起きてるのか知る権利はあるのは当然。もちろん、全部終わったら説明するつもりだった。けど、今はそうも言ってられないかな。

 

「………魔法とかそういう根本に関しては今はそういうものって思っててください。ゼロから教える時間的余裕は私達にはないので」

「わかったわ。けど、後でそのゼロからも教えてよね」

 

とりあえず刹那からことの経緯、夜天の魔導書の呪いや蒐集、それに伴う私達の対立と今の決戦、総攻撃。それらを掻い摘んで教えました。

 

「と、言ったところです」

「………でもそれだと1つおかしいじゃない。アリシア刹那のいつさう通りなら『あれ』は今は軌道上のあーすら?のあるかんしぇる?で消えてるんでしょ?」

「本来ならその予定だったんですけど………ハプニングと言いますかアクシデントと言いますか………守護騎士たる私達すら『あれ』が何なのかは全くわからないので………」

 

刹那の説明に対するアリサの疑問へシャマルから補足説明。結論からいえば『あれ』が何なのかは私達みんなわからない。わかることはあれは私達が束になってどうにかなる敵ではないということだけ。そして今『あれ』にオリヴィエさんが1人で対抗してるってこと。

 

「みなさん、ご無事だったんですね」

 

とと、噂をすれば何とやら?戦闘をしていたはずのオリヴィエさんもこちらに合流しました。

 

「『あれ』はどうしたのですか?」

「流石にキツくなってきましたし、皆さんが集まってると言われたので聖王の鎧を応用した障壁のケージで閉じ込めました。けど、今の私は全盛期から比べたら魔力もかなり少ないので………」

「そんなに長くは持たない、と」

「はい。約10分と言ったところです」

 

つまり、このまま何も出来なくても10分後には私達は完全に全滅する、ということだけは今はっきりしたのかな。だってそうでしょ?私達はみんな手負いで、元気なシャマル、アルフ、ユーノは戦闘は門外漢。オリヴィエさんも聞く限り拮抗は出来ても倒し切るのは無理みたい。もっとも、拮抗するのも辛いみたいだけど。そんなところに『あれ』が襲いかかってきたら………

 

「けど、情報が少すぎて………『あれ』が何なのかだけでもわかれば対策も立てようはあるんだけど………ううん、それでも勝てる気がしないよ………」

「フェイトちゃん………」

 

フェイトが珍しく弱音を吐いていて、なのはがそれを慰めてる。

と、そんな空気の中に唐突に空間モニターが投影。そこに映ったのは(若干乱れのある映像の)エイミィでした。

 

『良かった!やっと繋がった!』

「「「「エイミィ(さん)!?」」」」

 

もちろんその唐突すぎる登場(モニター上でだけど)に驚く一同。

 

『状況はこっちでも観測してるよ。だから改めての状況説明は省略してね。で、さっき『あれ』が何なのかが断片ながら分かったからそれ教えるね』

「わかったんですか!?」

『管理局の古い資料まで漁ったら奥底から出てきたの。『あれ』は結論から言うと深遠なる闇って言うみたい。正式名称なのかどうかは不明だけど、あれが前回発現した53年前にはそう呼ばれてたって記録があってね。で、その深遠が出てくる条件というのが輪廻転生出来ない状態で消滅の危機に陥ったらってことみたい。要は消滅の危機を察知して出てくる文字通り最後の自己防衛プログラム。ただ、それはそれまで表に出ていた暴走前の防衛プログラムとは比にならない強さ、破壊力を持ってるらしいの。これは実際体験した皆の方がわかるよね。それで、ここからが怖い所なんだけど………深遠は発現から1時間もすればあの集束しているとてつもなく大きい魔力を一気に解き放ってその次元世界ごと消滅、防衛プログラムは輪廻転生するって記録にはあった』

 

………まとめると、あのとてつもなく強い深遠なる闇?は出てきてから1時間以内に何とかできなければ地球は跡形もなく吹き飛ぶ、と。これ、かなりヤバいかも。

 

「ちなみに残り時間は?」

『30分。ついさっきそれを切ったわ』

 

地球消滅まで30分、かぁ

 

「………なるほど。エイミィさん、ありがとうございます。それと1つお願いが」

『何かなー?今私に出来ることなら協力は惜しまないよ』

「………ここにいる全員を、私以外の全員をアースラへ転移させてください。もちろん一般人の3人も」

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここにいる全員を、私以外の全員をアースラへ転移させてください。もちろん一般人の3人も」

 

私の一言の要望で沈黙が走りました。

 

「「「「「「『はぁぁぁぁぁぁっ!?』」」」」」」

 

待つこと数秒。ようやく来た反応は、やはり予想通りの叫び声。

 

「ちょ!刹那貴様っ!どういうつもりだ!?」

「あんな化け物に1人でって無茶だよ刹那君っ!」

 

そしてこれも予想通りの反論。ちなみに前者がシグナムで後者がなのは。もちろん誰が反論してくるかまでは予想できてませんよ?私は魔導士で予言者ではないので。

 

「私からすれば、今の皆さんをアレと戦わせることの方が無茶だと思いますよ」

「私達………そんなに足でまとい………かな」

 

フェイトが俯いた状態で訴えかけてきます。正直これは精神的にかなり抉られますが、ここは心を鬼にしないとアレは対処できません。

 

「普段のフェイト達ならむしろ戦力です。しかし今は先程の総攻撃での消耗、特になのは、フェイト、はやて、アリシアは集束魔法(ブレイカー)を使っているので。そうなれば消去法で残る戦力は私とシグナム。シグナムを外した理由は………まぁ、本人が一番わかってると思いますが?」

「やはり………気付かれていたか。先程深遠なる闇、長いから深遠と略すが、そいつから攻撃をもらった時に脚をやってしまってな。恐らく骨がやられている。自力では立つことすら厳しいだろうな」

「と、いうわけです」

 

集束魔法はとりわけ自身の消耗が激しい。そりゃ、辺りに散らばっている自身や他人の魔力全てを掻き集めるのですから当然です。それをしていないメンツだと既にやられたザフィーラ、ヴィータ、クロノを除くと私とシグナム。そしてシグナムは脚をやられています。これは先程シグナムを助けた際に気づいたのですけどね。そんな体で深遠とはで戦わせられません。

 

「………わかったよ。どうせ刹那のことだから対処法も考えてるんでだよね?でなきゃこんな無茶苦茶、私の知ってる刹那は言わないよ」

 

今までずーっと考え込んでいたアリシアがやっと口を開きました。その様子は少し怒っているようにも見えて………勘のいいアリシアのことです。恐らく自身が力になれないことは誰よりも彼女自身がわかっているのでしょう。

 

「当然あります。とてつもなく危険な賭けですけど………大丈夫です。アリシアが待っててくれるなら私は必ず帰りますよ」

 

私はアリシアのすぐ側まで近寄り、頭を優しく撫でてやります。

 

「とりあえずエイミィさん。今から作戦を伝えますね」

『えぇ!?あぁ、うん。了解だよ』

「それは────

 

 

 

 

 

 

 

───です」

 

『「「「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」』

「ではエイミィさん。皆の転移をよろしくお願いします。そろそろオリヴィエの掛けた捕縛も切れる頃なので」

『ぇ!?いや、ちょっと待って!?ほんとに正気!?そんなことしたらあなた自身も!』

「ですから先程とてつもなく危険な賭けだと申し上げました。これより安全で尚且つ確実な作戦があるのならそちらを実行しますが」

『ぅぐ………』

 

まぁ、当然こんな無茶苦茶な作戦を聞いて私の正気を疑わない方がおかしいですよね。私が深遠の動きを止めたら()()()()()()()()()()()()()()、ですから。

でも実際、それくらいしないとアレを消滅させるのは無理だと思っています。それこそ、私1人の犠牲でこの次元世界が助かるのなら儲けものです。もちろんうまくいけば私も生還できて御の字、ただ恐らくその可能性は極端に低いでしょうね。

 

『………わかった。転移、始めるね』

 

エイミィも渋々この作戦を了承。私達のいる一帯に大きな転移の魔法陣が浮かび上がります。

 

「アリシア」

「………必ず、帰ってきてね。でないと許さないよ」

「わかりました。必ず、アリシアの所に帰ります。先程の告白は流れでしてしまいましたが、帰ったらまたきちんと伝えます」

「………ぅん」

 

私は魔法陣の縁で俯くアリシアへ最後の声を掛けます。アリシアの瞳は大粒の涙がとめどなく流れていて、私は少しでも慰めようとアリシアを抱き締めました。

 

「では、行ってきます」

 

そして、アリシアを解放するとおデコに口付けし、アリシアがさらに真っ赤になったのを確認してから海の方へと飛び立ちました。

 

「全く………あんな作戦、お前1人で遂行できるとでも思っていたのか?」

「残った魔力と継戦能力、これらを考えたら私達も選択肢に入りますよ、刹那」

「っ!?」

 

すると間も無く、2つの影が私の横に並んで来ました。それははやてとのユニゾンを解いたリインフォースとオリヴィエで。

 

「しかし………あなた達は」

「どうせ全てが終わったら私は消えねばならないからな。それなら、同じく消えるのなら皆を守って消えたい。それだけだよ」

「この作戦、アルカンシェルの反応消滅を1点に凝縮させる。私の聖王の鎧が役に立つと思いますよ。そもそも刹那、その手の防御はむしろ不得手でしたよね」

 

そう、リインフォースは闇の書の管制プログラムで

彼女が残っていると例え自己防衛プログラムを消滅させても自己修復してこれまでの繰り返しになるんだとか………そういう理由で全てを終わらせたら彼女は消える。恐らくなのはとフェイト当たりにでも消してもらうつもりなのでしょう。

そしてオリヴィエの言うことも一理あり、私は確かに防御系が不得手。まぁ、現状そんなこと言っている余裕は無いのですが、この状況なので確かに彼女の聖王の鎧はありがたい。

 

「貧乏くじ、ですよ」

「違いない」

「戦乱の時代を思い出しますね」

 

私達はそんなふうに言葉を交わしながら海上に今もいくつも励起している岩の柱の天辺に降り立ちました。丁度そのタイミングでオリヴィエの掛けた捕縛が破壊され、深遠なる闇が出てきて

 

「さて、行きますよ!」

「あぁ!」

「はいっ!」

 

私達は最後の決戦へと身を投じていきました。




ふぅー。やっと書き終えました。

ぁ、ちなみに数日かけてこれを書いてる合間で今朝クリーブが見事泥っ!ハロウィンコスも来るそうでテンションがヤバいです。

とりあえず今回はこの当あたりでっ!

感想や評価などあればよろしくお願いします!


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第28話 海鳴の血戦

どもども、ルイスです。

育成途中の第二艦隊に件のクリーブ入れて加賀掘りかねてレベリングの真っ最中でございます。

それは置いておいて、次話でA’s編完結っ!次々回から次章へ移りたいと思います。それではどうぞっ!


───side フェイト

───アースラ内医務室

 

「ねぇ、アリシア。あんた、本当にあの作戦に納得してるの!」

 

私達が刹那に言われてアースラへ転移してすぐ。私達は医務室へ運ばれ、怪我の治療を受けています。

そんな中、治療を早々に終えてベンチで俯いて座っているお姉ちゃんに私の使い魔、アルフが食ってかかりました。

 

「あたしはしないよ。あの場は刹那の勢いに押されちまったけどさ、でもおかしいじゃんか!あんな危険な作戦認められn」

 

全く反応がないお姉ちゃんの肩を掴むアルフ。お姉ちゃんはアルフの言葉を遮る様に包帯が巻かれた手で肩を掴んだアルフの手を振り払い、早足で医務室から出ていきました。

 

「ちょ、ちょっと……!」

 

いつものお姉ちゃんらしくないその態度にアルフは唖然。けど、私にはお姉ちゃんの気持ちが痛いほどわかるな。医務室で治療を受けてるみんなも何となく察しているんだろう、無言を貫いている。

 

「アルフ、わかってあげて。あの作戦に反対したいのはお姉ちゃんも同じだよ。もちろん私だって………」

「じゃあ何でっ!」

「アルフだってわかってるんでしょ?現状あの作戦以外に私達に取れる手はないって」

「そ、それは………」

 

アルフだってわかってるはず。あの深遠なる闇の魔力を完全消滅させるにはアルカンシェル級の特大魔力を1点に集中させるしかない、それをするには囮と広範囲に広がらないように凝縮させる前線の魔導士がいる。そしてそれをするには現状刹那とリインフォース、オリヴィエの3人が残った魔力や負傷具合を見てもベストだってことを。

私はモニターに映された深遠なる闇と戦う3人の映像へ視線を向けました。

 

「出来るのなら私だって今からでも彼処に行って刹那を手伝いたいよ。でも、私が行ったところで足でまといになる。刹那とはほとんど関わりのない私だってそうなんだから一緒に暮らしてたはやてにシグナム、この世界の最初の友達のなのはだって。もちろん小さい頃から刹那と一緒にいたお姉ちゃんもね」

「………」

 

図星をつかれたんだと思うアルフはさっきまでの勢いが無くなり、さっきまでお姉ちゃんが座っていたベンチに力なく座り込みました。

 

「あたし達には信じて待つことしか出来ない………ってことか」

「うん。だから、今はお姉ちゃんはそっとしておいてあげよう?」

「………そうする」

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side アリシア

 

アルフに散々言われ、医務室を飛び出てきた私は行く宛もなくアースラの廊下を歩いていると気付けば艦橋の前に来ていました。私は少し戸惑いましたが、その扉が開くのを待ってから艦橋へ。

 

「………アリシアさん。治療の方は大丈夫なの?」

「怪我自体は軽かったのでもう大丈夫です。状況はどうですか?」

「正直、最悪って言っていいわ………今も3人が死闘を繰り広げてるけど………タイムリミットは残り10分を先程切ったわ」

「あの3人で………」

 

本当は私があそこに飛び込んで刹那達を………ううん、刹那を助けたい、支えたい、一緒に戦いたい。でも、それをすれば刹那の足を引っ張ることになるのは他ならない私自身が一番わかってる。守りながら戦うって、かなり分が悪いからね。

 

「リンディさん、1つだけワガママ………良いですか?」

「何かしら?」

 

それでも一緒に戦いたい。だって、刹那は諦めてない。モニター頭や腕から血を流し、グレーや黄緑の刹那のバリアジャケットは所々赤い物が滲んでいて痛々しい。けど、あの目を見たらわかる。刹那は最後の1分1秒まで絶対に諦めない。もちろんリインフォースさんやオリヴィエさんだって。

さっきまで落ち込んでたけど、そんな刹那達を見たら励まされたような気がして………1つ、私の頭に良い考えが浮かびました。

 

「アルカンシェルのキー、私に使わせてください」

「なっ!?」

 

突飛すぎることは重々承知。けど、刹那と一緒に戦うならそこは譲りたくないなって。あの場所に飛び込むことだけが一緒に戦うってことじゃない。でも、見ているだけってのも嫌。なら、こうするしかないよね。

 

「けど、アルカンシェルは」

「お願いしますっ!」

 

中々折れてくれないリンディさんに私は頭を下げました。数秒沈黙したあと、リンディさんが口を開きました。

 

「………わかったわ。チャージはもう完了してる。あなたのタイミングで撃ちなさい。今は………彼らを信じで待ちましょう」

「ありがとうございますっ!」

 

リンディさんからアルカンシェルのキーを借り、そのそばに展開していたタイムリミットを示すタイマーを一瞥。残り5分と少し。モニターを見ると岩の柱へ叩き付けられ、そして押さえ付けられて身動きを封じられた刹那の姿が映っていて………押さえ付けている深遠なる闇の右腕は闇を纏い、それが槍の切っ先のように形作り、刹那に向かって振り上げられていました。まさに絶体絶命。そんな状況でした。

私はとっさに音声通信をオン。大声で叫びました。

 

「何やってるの!!刹那ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の地上。つい先程深遠なる闇───長いので深遠と略します───と戦闘を開始。私、ヴィヴィ、リインフォースの3人だと全員前衛でフォーメーションもへったくれもない乱戦。しかし、私達は連携は忘れません。個々で好き勝手に戦って勝てるほど楽な相手ではないですから。

決戦を始めた時がタイムリミットまで約25分くらいでしたが、観測しながら戦うヴィヴィからの最新の情報だとあと10分程度とのこと。あと10分以内に深遠を無力化、アルカンシェルをここに落とさないといけない………しかし、私達は当然ながら苦戦を強いられていて、なかなか攻撃が思うように通りません。

私とヴィヴィによるクロスレンジでの連携打撃、そこに織り交ぜたリインフォースからのダガーや砲撃、これら全てを良いようにいなされ、決定打を与えられない。

深遠は言わばプログラム。しかも魔力は事実上ほぼ無限。一方私は生身であり魔力も限界があります。オリヴィエとリインフォースは生身ではないにしろ、魔力に限界があるのは同じです。長引けば長引くほどジリ貧なのは明らかでした。

私達は何度も何度も攻撃を仕掛け、そしてその度に何度も吹き飛ばされ………

 

「っ、あぁぁぁ!」

 

根性論でどうにかなる相手ではない、それはわかっています。

身体のいたる場所から血を流して力が入らなくなりかけている体に鞭を打ち、岩の柱に叩き付けられた体を起こした瞬間でした。

 

「がはっ!」

 

再び私の体に衝撃が走り、それが深遠に背後の柱に押さえ付けられたものだと気付くのに数秒時間を要してしまいました。

 

「っ………」

 

そして戦慄。槍の切っ先の如き形を作った闇を腕に纏い、それを私目掛けて振り上げていたのが目に入ったからです。これを食らえば致命傷、作戦続行は困難となり、この世界は滅びの一途を辿る………元々分の悪すぎる賭け、それの結末がこんなことで

 

『何やってるの!!刹那ぁぁぁぁぁ!!!!』

 

と、一瞬諦めが頭を過ぎった瞬間………アリシアの大声が私の耳へ飛び込んできました。

 

『帰ってくるんだよね!なら、そんなヤツなんて吹っ飛ばしちゃってよっ!』

「───っ!」

 

アリシアの音声通信と、ほぼ同時。深遠が声にならない声を上げ、闇を纏わせた右手を振り下ろしました。普通に考えたらもう回避も防御も間に合わない瞬間と間合い、そもそも体は押さえ付けられていて動かせない。しかし、何故かその深遠の動きが私にはスローに見えて………

 

ズガァァァァァァァァン

 

そんな爆音と同時に当たりが岩の柱が崩れた時の煙で覆われ、その瞬間何かがそこから飛び出して別の岩の柱へと叩き付けられる姿が。

煙が晴れるとそこに居たのは先程の攻撃を避けた刹那と、刹那の一撃によって岩の柱へ吹き飛んだ深遠。

 

「………少し、黙っててください。アリシアの声が聞こえないじゃないですか」

 

私は怒気を込めた眼差しを深遠へ向け、再び構えました。

私が今やったこと、それは深遠の攻撃が振り下ろされた瞬間に唯一動かせた脚で背後の岩の柱を破壊、背後へ回避した後に私の全エネルギーを込めた一撃を深遠の顔面へお見舞いというもの。

とはいえ、今の私には力だけで岩の柱を一撃で粉砕する攻撃も深遠を吹き飛ばす力もほとんど残っていない。なのにそれが出来た理由、それは

 

「明鏡止水………鏡花水月………まさか、クラウスの言っていた真に守るという意思が自分自身をも命の勘定に入れることだったとは………」

 

夜天の魔導書内でクラウスが使った人知を超えた超反応の明鏡止水、自身の出せる全エネルギーを余すこと無く一撃へ乗せる鏡花水月。

まさかクラウスとヴィヴィが言っていた『真の意味で守りたい、救いたいと思った時』と言うのがその対象に自分自身も含んだ時というのは予想外でしたが………自分で言うのも難ですが、確かに私は守るとよく言いますが、その命の勘定に私自身を含んだことは無い。例え自身を犠牲にしてでも守る。半年前にアリシアをアースラへ逃がした時もそうでしたし、夜天の魔導書の呪いからはやてを救うと豪語した時も私自身を犠牲にしてでも、と考えていました。

それではダメなんだ、と、気付かせてくれたのは先程のアリシアからの声援(という名の叫び)。命懸けでこの任務を遂行して、アリシアの元へ帰る。約束しましたからね、きちんと想いを伝えるって。

 

「ヴィヴィ、残り時間は?」

「ぃっっ………あと3分です。もう時間がっ!」

「だが、あと3分もある………だろ?」

「流石リインフォース。よくわかってます」

 

先程は深遠のせいで見えなかったですが、リインフォースとヴィヴィもやられていたのでしょう。別々の岩の柱へ叩き付けられた体を起こし、私の元へ飛んできました。

 

「ヴィヴィは聖王の鎧の障壁の準備をしてください。あれは、私とリインフォースで止めます」

「ですがっ!」

「大丈夫です。私は死にませんから」

「っ………わかりました」

 

今の私の言葉で私が明鏡止水と鏡花水月の境地に達したと察したのでしょう。ヴィヴィは前線から下がりました。

 

「リインフォース、ここからが正念場ですよ」

「わかっているさ。何、今の刹那とならあんなやつに負ける気がしない」

「では、私が先に行きます。援護をよろしくお願いします」

「承知っ!」

 

2、3リインフォースと言葉を交わして私は深遠へと突撃。私の最初の一撃は深遠の瞬間移動とも思えるほどの高速移動で避けられ、簡単に背中を取られてしまいます。そして頭を吹き飛ばそうとしているのか、右側頭部へ向けての強烈な蹴り。

先程の私なら反応すらできずに食らっていたでしょうが、今の私ならわかる。空気の流れ、深遠の動く際の防護服の布擦れの音………全てが私に情報をくれます。私は右手で蹴りを防ぎ

 

「リインフォースっ!」

「穿て!ブラッディダガーっ!」

 

私がそれを後ろへ向けて殴り飛ばし、そこへリインフォースが待ってましたとばかりに無数の真紅のダガーを浴びせました。

 

「鏡花水月………覇王断空拳っ!」

 

それによって出来た隙に私の全エネルギーを込めた断空拳。

鏡花水月は先程も言ったように乗せられる全エネルギーを余すこと無く乗せる一撃。全体重、全運動エネルギーetc..要はこれによって出される一撃はただのジャブですら最高効率の体当たりと化す訳です。断空拳の場合はそこに断空も乗るわけで、その威力たるや凄まじいものでした。

ようやく当てた決定打。そこから戦況はほぼ五分の一進一退。先程3分だったタイムリミットはもう1分を切り、秒をカウント。

 

「っ!?」

 

と、そこで突如立ち眩みが私を襲いました。それによって私はこの場面で決定的な隙を見せてしまい、それを見逃してくれる深遠ではありませんでした。

 

「明鏡止水………酷使し過ぎました………っ!?」

 

明鏡止水による神経伝達速度の飛躍的上昇に感覚器官の強化と現状に不要な情報の添削。それは自身にも多大な負荷で、その影響と受けたダメージによる出血による失血で起きた立ち眩みを起こしました。私が状況を理解したその時には目の前には深遠、そして私の脇腹に襲いかかる激痛。深遠の刃の如き手刀が私の左脇腹を貫いていました。

しかし、この世界の消滅まで秒を数える今、私にとってこれ以上のチャンスはありませんでした。

 

「………やっと、捕まえましたっ」

 

私は私を貫いたその腕を掴んで引き抜き、反対の腕も掴んで拘束しました。脇腹からは血が吹き出しましたが、気にする余裕はありません。

 

「封縛っ!」

 

両腕を封じられ、私を蹴りあげようとしてきた深遠はリインフォースのバインドによって脚も封じられます。私は機は熟したとばかり、真上を向き、遥か彼方上空へ向けて叫びました。

 

「撃てぇぇぇぇぇぇ!!!アリシアぁぁぁ!!!」

『発射ぁぁぁ!!!』

 

私とアリシアの叫びが重なり、程なくアルカンシェルが着弾。反応消滅を起こしながら広がる高濃度魔力波の1点凝縮により空間震すら発生。それにより、深遠なる闇の反応は完全に消滅。

幸い戦闘中域が海鳴の沖合まで移動していたことと市街地の復旧に当たっていたアースラ魔導士の働きによって海鳴を含む近隣の市街への影響はゼロだったそうです。




刹那の「アリシアの声が聞こえない」発言はイメージは鉄血の三〇月、アルカンシェルの発射は某鷹が不可能を可能にした後のローエングリンで大天使を轟沈させた時のイメージをしてもらえたらわかりやすいかなと思います。

前書きにも書きましたが、次の話でA’s編ラスト!ご期待下さいっ!

短いですが、今回はこれくらいで!

感想、評価あればよろしくお願いします!


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第29話 希望

どうも、ルイスです!

この話でA’s編完結ですっ!

※29話飛ばして30話になっていたのでサブタイ修正。


───side アリシア

 

後に『闇の書事件』って呼ばれることになる事件が解決してから2年が経ちました。私はあの後クロすけの執務官補佐をしながら執務官試験の勉強中。当のクロすけは管理外世界の地球(さらに言えば海鳴)で立て続けにロストロギア絡みの事件が発生したこともあり、東京に臨時の管理局支局が設けられ、そこの支局長として指揮を取っています。

大々的に管理局が介入してこないのは地球は既に独自の文化や経済、技術が発達していて、そこに管理局が介入すると世界が混乱するからって言ってました。表向きはちょっとした事務所みたいな感じになってるらしい。

で、私はエイミィさんと一緒にその補佐。ちなみにこの2人は結婚するんじゃ?って私は思ってる。その時はクロすけの補佐は離れて独学で勉強するか、それか誰か別の執務官の補佐をするか………そこはまだ決めてません。

とは言っても、今の私は小学6年生。勉学が本分ってこともあってそっちが優先。クロすけも有事でない限りは普段の補佐の業務は任せて勉学に励めって言ってるし、そこは甘えておく。

ちなみに私の最愛の妹、フェイトも執務官志望。けど、フェイトは国語とか一部の科目が大の苦手で私みたいに執務官補佐と並行ってのは無理っ!って言ってた。でも、執務官試験の勉強は一緒にやってるし、実務経験の差以外はほぼ横並びかなって思ってる。

なのはもたまに武装隊でお世話になってるんだって。本人曰く将来は教導隊に行きたいらしい。

はやては件の事件以降、足の麻痺がどんどん良くなっていって、半年後には車椅子を卒業して歩くリハビリを開始。1年後にはもう麻痺してたっけ?ってくらいに元気に動き回ってた。で、はやてはなのはやフェイトとは違ってキャリア組の進路を進むらしい。そっち方面のことはよくわからないんだけどね。今は人事部ってところにいるって言ってた。

守護騎士のみんなもはやてと一緒のまま。シグナムとヴィータは武装隊、シャマルは医療部にそれぞれ配属。ザフィーラは管理局には入ってないけど有事には協力って形。

そして私にこの体をくれたオリヴィエさん(最初のユニゾンの時に一緒に肉体も生成したらしい)は本人も言ってたけど融合機扱いで私と一緒にいる。オリヴィエ·ゼーゲブレヒトって本名名乗っちゃうとユーノの同業者とかいろんな人が騒ぎ起こしちゃうから刹那が使ってたヴィヴィってあだ名で名乗ってる。ちなみに登録上は私の個人所有の融合機。ぶっちゃけマスター(であるはず)の私より強いです。

 

「あぁー!もぅ!シューターがなかなか当たらないっ!アリシアちゃんすばしっこいっ!」

「それが私の売りだし、なのはの弾当たると痛いもんっ!」

 

で、今私は何してるかって?シャマルが作った訓練用の空間でなのはと模擬戦中。フェイトとはやてはアリサ、すずか、紗綾と一緒にその観戦。ちなみにザフィーラを除く守護騎士のみんなは本局に、ヴィヴィ(オリヴィエ)さんは東京臨時支局に今日は出勤で不在。紗綾達は事件の後に魔法についてとかの諸々は説明済みだから見られても平気っ!そりゃ、アースラに転移とかもしちゃってる訳だしね。説明しない方が無理だよ。

閑話休題。

私はなのはが撃ちまくってくる無数のシューターを避けたり迎撃したりを繰り返してます。正直、弾幕厚すぎて近寄れないし反撃できないっ!

 

「ライトニングバズーカっ!」

「えっ!?」

 

私は1度なのはの視界を塞ごうと、なのはの真下の海面に向かって砲撃。大きな水柱が上がって目論見通りなのはは私を見失ったみたい。

 

「ブライトネスエンドっ!」

「っ!」

 

そして私はその隙になのはの後ろに回り込み斬撃。決まった!って思ったんだけどまさか見えてないはずの斬撃に反応されて止められました。

 

「っ………これがあるからなのはって厄介なんだよねぇ」

「ふぇ?これって?」

「しかも無自覚」

 

無自覚でこの反応って………なのはって天才?って思わせるくらいの才能と実力だよ、ほんと。

 

「ねぇねぇ、フェイトちゃん。今のなのはちゃんのって?」

「アリシアの言ってたなのはの持ってる『これ』って何よ」

「えっとね、空間認識能力って言ってね。簡単に言うと………そうだなぁ。どこに何があるのか、見えてない範囲もきっちり把握できる能力ってことかな?」

「「「???」」」

「要するにや。なのはちゃんは私らより遥かに視野が広いゆうことや」

 

なのはの空間認識能力、これは本当に厄介。下手な不意打ちは通用しないし、なのはの得意の射砲撃と合わさったら明らかな死角も普通に撃ってくる。

フェイトの説明には頭に?マークがいっぱい付いてたアリサ、すずか、紗綾もはやての補足説明で理解してくれたのかな。

 

「言われてみれば心当たりあるかも。一緒に帰ってた時明らかに死角から飛んできたボールを見えてたみたいに止めたことあったし」

「あったねー、あのたい焼き食べながら帰った時だよね」

 

なのはの親友2人にはどうやら心当たりがあったみたい。

 

「ハイペリオォォン………スマッシャァァァ!!!」

「ジェットホイィィィィィィルっ!!!」

 

話が逸れたけど、私となのはの模擬戦はこの私達の2つの魔法が激突した余波で引き分けになりました。

 

「あぁーっ!アリシアちゃんに勝ちたかった!」

「惜しかったぁ………もう少しで勝ち越せたのに」

 

余談だけど、私となのは、フェイトの模擬戦の戦績はほぼ拮抗。これでなのはに勝てたら対なのはは勝ち数がなのはに勝てたんだけど、惜しかった!

はやてが参戦してないって?本人曰く「私は対人戦は向いてへん。どちらかと言えばみんなの指揮やな」らしい。

 

「はい、2人とも。冷たいジュース」

「あとタオルね」

「「ありがとぉぉぉ」」

 

みんなが待ってたところに着地するとアリサと紗綾が私となのはにジュースとタオルを渡してくれて、模擬戦で汗をかいてた私達はジュースを一気に飲み干しました。そしてジャケットを解除してタオルで汗を拭います。

 

「………そう言えば、もうあれから2年になるんだね」

「ふぇ?」

 

と、汗を拭っているとすずかから唐突な一言。最初はなんのことかわからなかったけど、すずかの視線の先を見るとすぐわかった。すずかが見てたのは私の腕。正確には手首に付けてる水色のリストバンド。そう、()()()()()()()()()リストバンド。

 

2年前のクリスマスイブの夜、深遠なる闇との血戦の最後。刹那とリインフォース、オリヴィエさんを巻き込んだアルカンシェルの発射とそれの反応消滅を凝縮したことで発生した空間震、その影響が収まってから復旧したアースラのセンサー類でその場を観測すると、深遠なる闇の反応は当初の作戦通り完全に消滅していました。

ただ、そこで問題が発生。深遠なる闇の反応と一緒に刹那とリインフォースの反応も消えていて………残ったオリヴィエさんもその後3日間目を覚まさなくて。

目が覚めてから事情を聞くと、空間震によって発生した空間の裂け目みたいなものに刹那とリインフォース吸い込まれたらしい。オリヴィエさんは偶然その影響範囲外にいて助かったって言ってた。

その後、近隣の次元世界すらも対象にした大規模な必死の捜索にも関わらず、消えた2人は2年経った今でも見付かっていません。

ちなみにその捜索自体は事件後1ヶ月でMIAとして処理されて打ち切り。要は確認してないけどもう死んでるでしょって見なされたわけ。

リンディ提督を始め、アースラスタッフ全員はこれに反発したけどお上が下したこの決定が覆ることはなくって。この反発が理由でアースラスタッフは左遷に近い形でみんな(当時は計画だけだった)東京支局に異動になったらしい。願ったり叶ったりだってみんな言ってたっけ。リンディさんはアースラを取り上げられて1週間の謹慎、その後総務部に異動になったらしい(ほとんど海鳴近辺で過ごしてるけど)

閑話休題

で、私がそれ以降身に付けてるこの水色のリストバンドとはやてが首から掛けてる金の十字の夜天の書の紋様のペンダントは空間の裂け目に吸い込まれる寸前の刹那とリインフォースから托された物だって言っていました。「私達は必ず帰る」と言う刹那とリインフォースからの伝言と一緒に。

それ以降私はお風呂と寝る時間と洗ってる時以外はずっとこのリストバンドを着けてます。はやての方は十字のペンダントをはやての杖(シュベルトクロイツ)待機形態として肌身離さず身につけてます。そしてさらに

 

「ふぃぃ………今回の模擬戦のデータ、整理完了です〜」

 

ずーっとはやての肩の上で作業していたリインフォースを幼くした見た目の小さな融合機、リインフォース(ツヴァイ)を生み出し、初代リインフォース(アインス)の後を継いでいます。

このリストバンドとはやてのペンダント、そしてリインフォースⅡ。そしてもう1つ、刹那から(私が勝手に)受け継いだ覇王流。これらは私達が消えた2人はまだきっとどこかで生きているって信じられる証なんです。

だから私は管理局の中でも比較的行動に自由がある執務官を志望していて、刹那とリインフォースを自分の手で探そうって決めたわけで。はやては情報を集めやすい方法を取るって言って今の進路に。フェイトとなのはは直接探すって言うような理由はないけど、各々の夢とかも踏まえて私達で話し合った結果、なのはは武装隊(からの教導隊志望)とフェイトは執務官志望って進路を取ってます。

 

「ほな、休憩とデータ整理もすんだことやし、そろそろ朝ご飯や。リンディさんが待っとるよ!」

「はいですっ!お腹ぺこぺこですよぉ」

「さっきまで模擬戦してたアリシアとなのはより先にそれを言うとは………リインって案外食いしん坊?」

「まぁまぁ、食べ盛りって言ってあげよ?」

「成長期なのかも。融合機?に成長期ってあるのかわからないけど」

「みんな酷いですっ!」

 

刹那とリインフォース………根拠なんて何も無い。けど、2人は絶対にどこかで生きてる。例え何年掛かっても絶対に見付けてみせる。

だからそれまで………待っててね。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───???

 

「っ………ぁ、ぐ」

 

ここがどこかもわからない、そこに私達は辿り着きました。空間震に飲み込まれた後に使った2つのとある魔法、そのせいで私のリンカーコアはダメージを負い、その前の戦闘のせいで体の各所から出血、特に貫かれた脇腹は酷く、脇腹の傷口はリインフォースに炎熱系の魔法で無理矢理止血してもらいましたが……

それらの影響でダメージが溜まってる上に運悪く周辺は荒野。食べるものはおろか水の1滴すらもなく、私と弱りきったリインフォースはそこをただひたすらにお互いに肩を貸しあってフラつきながら歩いていました。

 

「夜………か。可能なら、どこかで休みたい、が」

「無理、ですね。隙を見せたら、獣の餌、です」

 

食べるものも飲むものも無く、お互いに満身創痍。寝れば荒野の獣の晩ご飯になることは確実なので寝ることすら叶わない。

私とリインフォースは………ただ、歩みを進めるしかありませんでした。

それから歩くことさらに数時間。リインフォースは先に力尽きた様なので眠らせ、私が背負って(意外と軽くて助かりました)歩を進めていると、暗闇の中に人工物のような物が遠目に見えて。私はそこを目指しました。

 

「あと少し………です」

 

その人工物は崖の上にあるみたいで、私はそこの住民か利用者が作ったと思われる崖を登るための坂を登りました。崖の上までなんとか登り着ると、その人工物は風力発電と思わしき風車と誰かが住んでいるであろう家。草が生い茂っておらず、管理されているような雰囲気で今でも誰かがいる(時間的に寝ているでしょうが)ことが伺えます。

 

「良かっ………た」

 

私はそこで力尽きてその家の前に倒れ込み、意識を失いました。

私が意識を失う直前に見たもの。それは家に明かり灯り、中から恐らく姉妹だろう赤とピンクの髪をした2人の女の子が駆け寄ってくる姿でした。




A’s完結っ!

次話から新章に入ります!………最後の場面、わかる人にはわかるかも?

ちなみにGODとReflectionはやりませんっ!(時系列的には起こってますが大人の事情でスキップします)

感想、評価あればよろしくお願いします!


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エルトリア編
第30話 荒野での生活


どもどもー。ルイスです。

今話より新章突入!舞台は………まぁ、章名で既にネタバレな気が半端ないですが、エルトリア!

では、どうぞ!


「ふっ………ふっ………」

 

私は今、朝のジョギングの真っ最中。見渡す限り岩と砂、荒野の中をただ1人で走り抜けていきます。元は草原でもあったのだろう真っ更な荒野を抜け、岩山の麓まで走るとここで一旦休憩して持ってきた水を少し飲み、そのあと頭から被ります。ここでシャドウボクシングを少ししながら息を整えたら、元きた道(実際に道があるわけではありませんが)をジョギングで戻ります。これがこの世界に来てからの私の日課。

私とリインフォースがこの世界に飛ばされてから早2年が経ちました。あれから私とリインフォースはケガと魔力の回復に約1ヶ月を要し、その間私達を助けてくれた人のお世話になっていました。最も、行く宛のない私達は今でもその人達のお世話になっていますが。

私は朝のジョギングを終えて助けてくれた人の家、フローリアン牧場へと帰ってきました。

 

「ただいま戻りました」

「あら、おかえりなさい」

「刹那さん!朝ごはんの準備、もうすぐ出来ますからシャワーでも浴びてきてください!」

 

この穏やかな人がこの牧場を管理している人の奥さんでエレノア·フローリアン。

もう1人の赤い髪を三つ編みにした元気な女の子がアミティエ·フローリアン。愛称はアミタ。この家の前で倒れた私とリインフォースを助けてくれた1人です。

 

「わかりました。汗、流してきますね」

「ぁ、キリエが使っているかもしれないので気をつけてくださいね?先程キリエもシャワーを浴びるって言っていましたから」

 

このキリエ、という子が助けてくれたもう1人の女の子で、アミタの妹のキリエ·フローリアン。ウェーブの掛かったピンクのロングヘアと花の髪飾りが特徴的な女の子。

それともう1人。今ここにはいませんが、ここの主グランツ·フローリアン。今彼は病に犯されていて別室の無菌室で療養中。

ケガが治ってここに住むようになってすぐ、今のようにジョギング帰りでアミタに勧められてシャワー室へ入ったところに先にシャワーを浴びていた(もちろん裸の)キリエとばったり遭遇するという事件が起きて以降、こうして注意を促してくれるようになりました。

 

「では、キリエがいたら先にリインフォースを起こしに行くようにしますね」

「そうしてもらえると助かります」

 

私は家の奥にあるシャワー室へと向かいます。脱衣所の前まで来ると中からシャワーを浴びる音が聞こえるので、アミタの言うようにキリエが先に浴びているみたいです。

 

「キリエ、タオルだけ取らせてもらいますね?」

「ぁ、刹那?もう帰ってきたんだ。ごめんなさい、すぐ代わるわね」

 

リインフォースを起こすにも汗だくのまま行くわけにいかないので、タオルだけ貰おうと私は脱衣場の更に奥のシャワー室にいるキリエに声を掛けます。

 

「待つ間にリインフォースを起こしに行くのでそのまま続けてて大丈夫ですよ。ジョギング上がりなのでタオルだけもらえれば」

「わかったわ。そこにあるヤツ、使っていいわよ」

 

キリエから脱衣場にあるタオルを使っていいと許可が出たので、私は脱衣場へ入ってタオルを1枚拝借。もちろんキリエの脱いだ服の方は気にしないようにするのも忘れません。こんなつまらないことで信用を失いたくないですしね。

で、私は汗を拭きながらリインフォースの寝室へ。今現状唯一の寝坊助はまだ夢の中。

 

「リインフォース、起きてください。朝ですよ」

「んぅ………おふぁよぅ………刹那」

 

そんな寝坊助(リインフォース)を揺すりながら声を掛けるとまだ眠そうに目を擦りながらゆっくりと起き上がります。

 

「ほら、着替えて外で顔洗ってきてください。もうすぐ朝ごはんです」

「ぅむ………」

「ぁ、刹那ー?シャワー空いたわよ」

 

寝癖でボサボサになったリインフォースの銀髪を手櫛で簡単に調えているとシャワーを終えたキリエがやってきます。

 

「わかりました。リインフォースの髪、頼んでも?」

「そういうことは私にお任せよん」

 

私はキリエと交替してシャワー室へ。シャワーを浴びて汗を流し、さっぱりしてから着替えて朝ごはん。これが私の1日の始まりです。

惑星エルトリア。そこが今私達がいる場所の名前。

エルトリアは環境汚染や資源枯渇等々の理由で荒廃が進んでいて、約300年前から外宇宙への進出やコロニーの建造と移住が進められていて、惑星地上に住んでいる人はほとんどいないらしいです。で、このフローリアン一家はその地上に住んでいる数少ない人という訳です。

しかし、一家の主のグランツさんが病に倒れてからというもの、このフローリアン牧場の運営と種々の実験は滞っていて………今はコロニー『フロンティアロック』へ移住することも視野に入れて(主にアミタとエレノアさんが)色々と考えているみたいです。

 

「そうそう、私今日は少し遠出しますね。夜の内に魔獣が出たって連絡があったのでその退治に。刹那さん、リインフォースさんを借りていいですか?」

「本人が良いなら、私は構いませんよ。ちょうど私はキリエと調べ物をするつもりでしたし」

「アミタ、よろしく頼むよ」

「ありがとうございますっ!」

 

リインフォースは空間震に飲み込まれる前「私が生きていれば防衛プログラムが再構築される」というようなことを言っていました。だからあの血戦にも参加しましたし、そもそも本人はそこで消えるつもりだったのでしょう。

けど、今リインフォースは生きています。それは何故か?答えは簡単。空間震に取り込まれた後、離れ離れにならないように私はリインフォースを抱き寄せてからレアスキルのソウルコアを発動し、リインフォースを構築するシステムの書き換えを行ったからです。それによりリインフォースがリインフォースであるのに必要なもののみ残し、防衛プログラムの様な物騒で不要なシステムは一切合切捨て去りました。

とは言え、あの不安定極まりない空間で行ったこの無謀な行為、その後行った取り込まれた空間から脱出するための無差別転移も相まって再構築したリインフォース自身もボロボロで不安定、私もリンカーコアに(その前の血戦時の無茶もあり)深刻な損傷を受けました。

で、そのボロボロで不安定なリインフォースはその後アミタの行ったマテリアライズというものによって今の安定した肉体を得ているわけです。

マテリアライズとは………話すと長くなりますが、要約するとこのエルトリア独自の技術であるヴァリアントシステムというものの応用で、実態のない意思や人工知能に肉体を与える技術、だそうです。

長くなったのでまとめると、不要なシステムを全部捨てて再構築、肉体がボロボロで不安定になってしまったのをマテリアライズでさらに再構成して今に至る、という訳です。

 

「それでは行ってきますねー」

「行ってくるよ」

 

っとと、本題に戻りましょう。

朝ごはんが終わりると魔獣退治に行くというアミタとリインフォースは簡単な用意を済ませてから2人で出発。

それを見送ってから私は地下へ降りたキリエの所へ向かいます。

 

「お姉ちゃん達、もう行った?」

「はい、先程」

 

キリエのいる部屋へ入ると、そこにあったのは大きな石板。これは地球でいうコンピュータのようなもので、情報を検索、閲覧することができます。タブレットサイズのものだと持ち運びもできるので便利です。石板なので地球のタブレットより重いのが難点ですが。

キリエはその大きな石板を操作しており、私が部屋に入ったのには気付いていたようですが、石板から目を離そうとはしません。

 

「キリエの方は調査の進渉はどうです?ここ最近ここに篭る時間が長くなってるみたいですが」

「うーん………お手上げ状態かなぁー。これと言ってめぼしい情報はなし。焦ってるのかも」

 

私はキリエに紅茶のカップを渡しました。キリエはありがと、とそれを受け取り一口。ちなみにこの紅茶の茶葉は先日フロンティアロックの病院へ行く用事があり、そのついでに仕入れたものです。

 

「1つ確認してもいいですか?」

「んー?」

「エルトリアの荒廃の原因は種々あるそうですが………主だったものは資源の枯渇と環境汚染、それで間違いはないですか?」

「そうねぇ。かなり大雑把に言えばそんな感じかな。人間同士の争いとかもあったらしいけど、荒廃が目立ちはじめた頃にはみんなそれどころじゃなかったみたいよ?」

「確か、300年前からは全人類で協力してエルトリアを離れてコロニーに移住したり外宇宙へ進出したりし始めて………それ以降は汚染そのものは一応は止まったんですよね?」

「えぇ。その辺は前にも話したわね。でー、それがどうかしたの?」

「少し気になることがあるんですよ。ぇーと………ここで見られればいいんですが………」

 

私はキリエの操作していた石板を操作し、情報検索。地球のデータベースにある情報が見られればいいのですが………

 

「何を調べてるの?」

「私が前いた場所、地球なんですけどね。エルトリア程ではないですけど、環境汚染や資源の枯渇は問題となっているんですよ」

「うんうん。それで?」

「もちろんその原因は私達人間。その辺は大体の想像は出来ますか?」

「エルトリアも似たようなものだし、それくらいなら出来るわよ。要は、放っておくとその星もエルトリアみたいになりかねないってことよね?」

「まだ遠い未来の話で極論ですけどね。ぉ、ありました。このコンピュータは優秀ですね」

 

地球の現状を簡単にキリエに教えながら見つけた情報のウィンドウを拡大。そこにあったもの、それは

 

「原因が人間なら、もしその人間が1人残らず居なくなればどうなるか。それを科学的に推測した番組があったんですよ。あくまでもifですけどね」

「へぇ〜。なかなか面白いわね」

 

私はその映像の荒い動画をキリエにも見せました。キリエはそれを興味深々と言った様子で凝視。

 

「エルトリアから人類が離れ始めたのが約300年前。地上に人がほとんどいなくなったのはそんなに昔ではないとしても、開発そのものが地上で行われなくなって200年は経っている、と考えると1つおかしな点があるんですよ」

「おかしな点?」

「えぇ。この動画だと200年も経てばそれなりに回復はしていってます。もちろんこれは推測ですし、エルトリア地上で全く開発をしていないのか、と言われれば全くの0では無いでしょうから鵜呑みには出来ませんが」

「つまり、開発が0ではないにしろほとんど止まったような状態が200年くらいは続いていて、エルトリアが自然に回復していないってことね?まぁ、そもそも地球とエルトリアは星として別物だし地球での推測がエルトリアに通用するかって言われたら怪しいのだけれど」

「それを言われると私の考えは説得力が無くなりますけどね」

 

映像を見せながらキリエに私が考えたことを伝え、それについて2人で考察します。キリエが調べているのは荒廃したエルトリアを蘇らせる方法。私も助けてもらった恩と、今住んでいる世界というのもあって私もそれに力を貸している、という訳です。

特に最近はアミタがエレノアさんとフロンティアロックへ移住する計画を立てていて、それにキリエがハブられでしまって独りでいることが多くなった関係でキリエとアミタはすれ違いが多くなり、今はその双方と仲良くしている私を通じてなんとか仲を保っている、と言ったところ。ただ、もしも何が引き金があればこの2人は仲違いしてしまいそうなほど危うい関係です。

私は独りの寂しさをよく知っているので、キリエとはよく一緒に過ごしています。アミタのことは基本的にリインフォース任せになってしまってますが。

すれ違っていはいるものの、アミタもキリエもエルトリアの事を本気で心配していて、何とかしたいという思いは同じであるが故に、こちらも何とかしてあげたいのですが………如何せん私は居候の身、家族のことに口出しをするのは下手をすれば今以上に仲をこじらせて家庭崩壊の危機すら有り得るので、抵抗があります。可能な限り私は出しゃばらずに当事者同士で解決してもらうのがベスト。きっかけさえあればその手助けくらいは出来そうなのですが……

 

「とは言っても私達は藁にも縋りたいのが本音なのよねぇ………刹那のことだからそこまで話したんだから何が考えがあるんじゃないの?」

「まぁ、一応は」

 

私の考え………これをアミタとキリエの2人でやってもらえればきっかけにはなるでしょうが………下手すれば仲違いが酷くなりかねない。ただ、エルトリアのことも考えたらそうも言ってられませんね。

 

「そうですね。要は環境汚染や資源枯渇の他に根本の原因があるんじゃあないか、と」

「根本の原因?」

「えぇ。例えばこの星に巡っている魔力が弱まっている、とか。そのせいで星そのものが弱っているのかもしれないというのが私の考えです。最も、それを調べる術は今はありませんが」

「それを調べられる人を連れてきてほしい………ってこと?」

「えぇ。私がロストロギア『夜天の書』に取り込まれた時に偶然見つけた情報なのですが………。それは───」

 

私はエルトリアが弱っている理由の推測とそれを確証にする為の方法をキリエに教えました。夜天の書内のデータなので石板に見えるようにはできませんが。

 

「なるほどね。けど、それには地球に行かないといけないんじゃないの?」

「えぇ。ただ、私はリンカーコアの負傷がまだ残っているのでそれを手伝うことは出来ませんが」

 

ちなみにリインフォースは夜天の書のコアでしたが、その類のデータは消失しています。なので、そのことはリインフォースは知りません。が、夜天の書本体を利用すれば………可能性はあります。

 

「刹那が来れないってことは………リインフォースも無理よね?」

「はい。ですから、可能ならアミタと協力してやってもらえれば………」

「うーん………」

 

やはりアミタと、となると渋りますよね。結局、了承はしてもらえましたがかなり渋々といった様子で。心配事は尽きません。

ちなみに地球に行く方法自体は近所の遺跡にいるイリスの力を借りようかと思っています。ただ、このイリスもどこか猫を被っているように思えて………キリエは絶対の信頼を置いているみたいですが、私はどうもそこまで信頼できません。

私はキリエと一緒にイリスにこの話をしに行き、その後石板を幾らか貰って帰り、夜の内にその計画を実行する為の魔法を読み込ませます。ついでにイリス対策の魔法も少々。それをキリエに持たせて数日後に地球へ。

ただ、そこで問題が発生。キリエがアミタを放置して単独で地球へ行ったのです。アミタもそれを追って地球へ行くと言い出しました。一応アミタにもリインフォースを通じて先程の私の案は伝えてあるのですが………やはり心配です。

 

「アミタ、すみません。私が入れ知恵したばかりに」

「気にしないでください。刹那さんなりにエルトリアを思ってのことなんですから。とりあえず、キリエにあったら説教しないといけませんね」

「お、お手柔らかに………。ぁ、向こうの魔導士に会ったら私とリインフォースのこと、伝えてあげてください。心配してるでしょうから」

「わかりました!」

 

私は全てをアミタに託し、地球へと送り出しました。




なまじReflectionやらないとなると難しいです。完全なオリジナルストーリーになる訳ですからねぇ。

刹那とリインフォース達を中心にしてもっと展開していくので生暖かい目で見守ってくださいっ!

感想、評価あればよろしくお願いします!


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第31話 復興の序章

どもども。アズレンのイベント海域B3ぐるぐるしてるルイスです。瑞鶴出ないまま絵馬8000行っちゃいましたっ!!

前にも言いましたが改めて、Reflection及びGoD版(前回の流れなのでReflectionですが)はやりません。まぁ、来年夏以降に番外的にやるかもですが、本編ではやりません。
当然エルトリア編はアリシア含めたメインキャラ達は一切出てきません。回想は………あるかどうかは別としてもしかしたらそこで出るかもですが。

キャラ設定とかは………今はまだやらないつもりです(オリキャラはまだ出ないので)。まぁ、あと数話しない内に1人出すので、その時に。

ではどうぞ!


───コロニー『フロンティアロック』

 

「ありがとうございます」

 

私はアミタを見送った後、軌道上のフロンティアロックにある病院へ来ています。転移時の怪我は治っているのですが、リンカーコアの損傷やたまに来る右腕の感覚麻痺や唐突な目眩。それの定期通院に。まぁ、原因はわかってるんですけどね。

 

「しかし、明鏡止水と鏡花水月………反動がここまで長引くとは思いませんでした」

 

そう、原因は深遠なる闇との血戦で使った明鏡止水と鏡花水月の酷使。私は知っての通り当時12歳。つまり体はまだ成長途上の未成熟。そんな体で神経を無理矢理強化したりすれば、特に(視神経)を酷使したので、目眩はその反動。

鏡花水月はこれも改めて説明すると一撃にありとあらゆるエネルギーを余すことなく乗せる技術。私は右の断空拳が得意な関係もあり、右腕に鏡花水月を乗せることが多く、そのせいで腕が悲鳴をあげている、ということです。

しかし、それが2年経った今でも治らない。かなり深刻です。主治医の先生の話だとこれ以上酷使しなければ、たまに発作は起こるかもしれないが悪化することは無い、とのこと。治療方法は検討中らしいです。

 

「さて、と。アミタ達が帰ってくるまでにこちらの準備、しておきますか」

 

私は病院を出ると人気のない場所へ行き、エルトリア地上へ転移しました。リンカーコアが損傷しているとは言っても、このくらいの近距離転移なら問題ありません。アミタとキリエに持たせた私の魔法を保存した石板を作る時はかなり無理しましたが………

 

「おかえり、刹那」

「ただいま帰りました。エレノアさんは?」

 

家に入ると迎えてくれたのはリインフォース。リインフォースを地球へ送らなかった理由は大きく2つ。1つは送った場合事態がややこしくなることを懸念して。もう1つはこちらでの活動が目と腕に現状不安のある私だけになるのを避ける為。そうなると消去法でリインフォースが残るのがベストだと考えたからです。

 

「エレノアさんなら今はグランツさんの看病をしているよ。キリエのこと、心配していた」

「でしょうね………エレノアさん、私のことを許してはくれましたが、内心では怒っているでしょうね」

 

キリエが独走して危険な異世界へと旅立った原因は私にあります。下手をすれば命の危機すらありえる異世界、そこへキリエが飛び込み、それを追ってアミタも。そんな私に対して怒りを抱いていてもおかしくない。我ながら自身の軽率な判断に嫌気がさします。

 

「そうでもないぞ?刹那の行動はエルトリアを復興したい一心のことだし、元々はアミタとキリエで協力してしてもらう予定だったのだ。キリエがそれを独断で勝手に先行したに過ぎないのだからな」

「キリエが焦る気持ちもわかるだけに心苦しいです」

 

向こう(地球)にはなのはとフェイト、はやて、アリシアがいます。彼女らの協力を得られればアミタとキリエも大分楽になると思いますが。

 

「アミタはともかく、キリエの方は彼女らとは敵対してそうですね」

「ははっ。焦っているようだし、計画の邪魔をする障害と認識してしまいそうだな」

 

私とリインフォースは連だって外へ。アミタとキリエが地球へ転移した遺跡へ向かいます。

 

「しかし、宛はあると刹那は言うが………具体的にはどうするつもりなんだ?それにアミタとキリエが帰らぬことには本格的に動くことも出来ないだろう?」

 

ごもっとも。確かにこの星を循環する魔力が弱まっているかも、とは言いましたし、私やリインフォースの持つ魔力ではそれを調べるには弱い。元々あまり多く魔力を持っていない上にリンカーコアが損傷している私はともかく、リインフォースもシステムを書き換えた時とマテリアライズで人並み(とは言ってもなのはやフェイトレベルの量はある)まで減りましたし。

 

「龍脈って聞いたことありませんか?」

「確か………星の中を血管のように張り巡っている魔力の流れ………だったか?」

「えぇ。私の推測ではそれが何らかの原因で弱っているのかも、ということです。私達ではその原因の特定は無理ですが、観測ポイントを絞るくらいなら出来ると思うので」

「それを今からする、と」

「えぇ。龍脈にはそれが集まる場所や他よりやたら密度の濃い場所………所謂特異点があります。それがどこなのかを探ることが出来れば」

 

なるほどな、と私の説明にリインフォースは納得してくれました。とは言え、これはあくまで地球ではという補足もあるので、このエルトリアでも通用するかはわかりません。私の魔力ではその龍脈がある、というところまでしかわかりませんから。

ちなみに今遺跡に向かっているのは、その龍脈の特異点である可能性が高いから。観測はできなくとも感覚で昔の人は知っていたのでしょうね、そういう特異点に遺跡などがあるのはよくあることなので。

遺跡に着くとリインフォースは地面に膝を付き、地面に掌を当てます。

 

「どうですか?」

「うーむ………確かにここに魔力の流れのようなものは感じるが………」

「ゆっくり魔力を流し込んでみてください。可能ならそれをモニターしてもらえれば」

「やってみよう」

 

リインフォースが観測した魔力の流れをモニターに書き込んでいきます。が、リインフォースの魔力が多少多いと言っても1度で観測できる範囲は限られています。ここの観測が終わるや否や、今観測した次の特異点へ。

移動して観測、観測して移動。この日は日が暮れるまでそれを繰り返しました。

翌日も翌々日もその特異点のマップ製作を続行。観測を始めて約1週間が経っても(当然ですが)エルトリアの大きさからすれば大した広さは観測できていません。

今回は牧場から遠出して観測します。

 

「わかってはいたが、なかなか進まんな」

「初めて日本地図を作った人の苦労がよく分かりますね。特異点自体が大小合わせるとかなりの数になるので。すみません、こんな地道な作業に付き合わせて」

「構わんさ。刹那とフローリアン一家の皆は私の恩人だからな。今の私に出来ることならなんでも力になりたい」

「ありがとうございます、リインフォース」

 

その後も観測を続けて数時間、昼時になったので持参したお弁当を食べて少し休憩。ちょうどその時でした。

 

『刹那さん、リインフォースさん。今少し大丈夫ですか?』

「エレノアさん?どうかしましたか?」

 

急にエレノアさんから通信が入り、私はそれをモニターに出して繋ぎます。

 

『家の牧場から北に20kmくらいのところに1つ集落があるじゃない?』

「よく買出しに行くあそこですか?」

『えぇ。そこに魔獣が出たって連絡がさっきあったの。今頼めるのが2人しかいないので………お願いできますか?』

「少し遠いですね………ですが、わかりました。大急ぎで向かいます」

『ありがとうございます!』

 

私は通信を切り、リインフォースとアイコンタクト。2人で出していた荷物を片付けて量子変換して格納します。そしてすぐさま武装形態に。

 

「全速力で飛ばしますよ、リインフォース。旋風脚っ!」

「わかった。行くぞっ!アクセラレイター!」

 

私は構えてからの旋風脚で地面を蹴る超加速、リインフォースはアミタの使うアクセラレイターと同性能の加速を使用し、私に追随。

リインフォースは基本的に高速機動はしませんが、こういう時のためにアミタからアクセラレイターのみは受け継いだ、と言っていました。何でもマテリアライズで作り出した肉体なので、ナノマシンの適応も早いんだとか。最近になって古代ベルカ式と切り替えて使うのに慣れてきた、とリインフォースは言っていました。併用はまだ無理とのことですが。

 

「私達が着くまで持ち堪えてくれれば良いのですが」

「あそこにはアミタやキリエ程ではないが、自衛程度はできるフォーミュラの使い手なら何人かいる。なんとかなるさ」

「だと、良いですが」

 

エルトリア式フォーミュラの使い手は当然ながらアミタとキリエだけではありません。それ自体、元々は少ない資源でやりくりするための技術で、少なからず魔獣も出るエルトリア地上。数少ないとは言え、各集落には自衛程度はできる戦力はあります。

アミタやキリエはそれらより戦力として突出しているので、各集落で対処しきれない時に呼ばれる、といった暗黙の了解のようなものがフローリアン牧場近辺(と言っても周囲100km以上)の集落にはあります。 今回もそのパターン。

そして最高速度で飛ぶこと30分。やっと目標の集落が見えてきました。ちなみに集落とは言ってもそれなりに栄えた街程度はあります。避難用のシェルターも完備していてこういう時の避難用に役に立っているとか。

 

「魔獣は………って、まさか竜種!?」

「珍しいな。あのレベルの魔獣とは。しかも小型の数が多い」

「援護、急ぎましょう」

「あぁ!」

 

目的の集落が良く見える丘の上から双眼鏡を使って街を見渡してみると、見えたのは大量の翼の生えたトカゲを連想させるような生き物の群れ。いわゆる竜種と言われる種類の魔獣で、凶暴で攻撃的、以前アミタから聞いた話では今確認されている魔獣では一番危険な魔獣の1つらしい。

見たところ住民らしき人は見えないので、避難そのものは上手くいったらしい。たまに光弾のようなものが見えるのはまだ守備隊が戦っているからでしょう。

 

「断空拳っ!」

 

私は屋根伝いにシェルターの入口へ向かい、そこを防衛していたこの集落の守備隊の人の前に着地。ついでにその場所にいた竜種を地面にめり込ませておきました。

 

「刹那さんっ!」

「奮闘、お疲れ様です。被害の方は?」

「幸い魔獣の確認が早かったので、住民に何人か負傷者ごいるだけで死者はいません。守備隊の方も死者こそいませんが、重軽傷者が続出。今動けるのは私だけです」

「なら、ここは任せます。シェルターの入口、絶対に守ってください」

「っ!了解です!」

 

こちらに襲いかかってくる小型の竜種を殴り飛ばしつつ状況確認。死者はいないようで安心ですが、守備隊はこの人(一応隊長格)以外壊滅らしい。なら、シェルター防衛に専念してもらうのがいいと判断して任せました。

 

「ナイトメアハウンド!」

「斬空破っ!」

 

リインフォースの手から放たれる砲撃と私の脚で放つ空破断の斬空破を群れに放ちます。ナイトメアハウンドは威力こそそこまで高くないですが、連射の効く便利の良い砲撃。私の斬空破は脚で放つ関係で斬擊のように使えます。腕で放つ空破断が打撃なら脚の斬空破は斬撃です。

 

「とは言え、ものすごい数ですね。空間殲滅攻撃は出来ませんか?」

「無理だ。いや、正確には出来ないことはないが、シェルター内の住民を巻き込みかねない。魔力耐性がないからな、あのシェルターは」

「頑丈さならこれ以上ないくらいなんですけど、ね!」

 

数の比率はおおよそ数100対1………私は元々1対1が得意で範囲攻撃はほとんど出来ません。一方のリインフォースは範囲攻撃さえ出来ればこの街の範囲なら吹き飛ばせるくらいの力はあります。空間攻撃なら建物に被害は出ませんし。とは言え、住民の避難しているシェルターは魔力耐性が無いタイプのもの。空間殲滅魔法は住民をも巻き込む危険があるので使えません。

 

「1匹ずつ、仕留めるしかないんですね!」

「そのよう、だな!ブラッディダガー!」

 

といいつつもリインフォースは周囲にダガーを放射。一気に10は落として見せてきました。

 

「言ってることとやってる事が違う気もしますが、気にしないでおきますね」

 

それから私とリインフォースはキリのないこの魔獣の群れとの戦闘を本格的に開始していきました。

殴り、蹴り、穿ち………減らしても減らしても減っているという実感がないまま戦闘を始めてから2時間。守備隊の人は約3時間が経過。あの隊長さんもよくやるものです。

 

「っ………はぁ、はぁ………っらぁ!」

「なんのっ!封縛っ!」

 

魔力もかなり減ってきて、披露もかなり蓄積。そこまでしてもなお、敵が減っている実感はありませんでした。正直なところ、右腕の痛みと目眩がたまに出るようになり、今は騙し騙しで何とか戦線を維持している形です。

リインフォースも砲撃や捕縛を多用した関係で、魔力もかなり少なくなり、肉弾戦が多くなってきています。

ちなみに隊長さんは先程シェルターに収容させました。疲労困憊で倒れそうだったので。私自身も似たようなものですけど、あの人は私達が来るずっと前から戦っていたので。

 

「っ!リインフォース!!後ろっ!」

「なっ!?」

 

リインフォースが目の前の竜種を殴り飛ばした直後。背後から別の竜種がリインフォースへ襲いかかりました。とっさに私が援護に向かおうとしましたが、竜種にその間に立ちはだかるように位置取られて援護できない状態に。リインフォース自身も反応が遅れ、防御も回避も迎撃も取れそうに無い体勢。

 

「リインフォースっ!」

「っ………!」

 

リインフォースがもうダメだっ、と目を閉じたその瞬間でした。

 

「ディザスター………ヒーッッッット!!!」

「スプライトっ!ゴー!!!」

 

リインフォースへ襲いかかっていた竜種を真紅の砲撃が飲み込み、その直後に蒼の閃光が私の周りの竜種を切り刻みました。

 

何事かと空を見れば、そこに居たのはミッド式の真紅の魔法陣上に立つ黒いバリアジャケットの女の子。どことなくなのはのような雰囲気を醸し出しています。

そしてそのすぐ側に近くにいた竜種を切り刻み終えた蒼い閃光がシュタッという擬音でも聞こえそうな決めポーズで着地。この子はどことなくフェイトのような雰囲気でした。

そしてその背後には杖を空高く掲げ、大規模な広範囲攻撃の魔法陣を展開したはやてのような雰囲気の女の子。

 

「これで終いにしてくれる!ドゥームブリンガー!!!」

 

そのはやて風の子が掲げた杖を振り下ろすと、空の魔法陣から大量の槍が発射され、街にいた竜種を次々と殲滅。しかもあれだけの数を放っておいて建物には1発も当てず竜種を的確に貫く正確さ、そして小型とはいえ竜種を一撃で屠る威力。

この3人の攻撃によって街にいた小型竜種は大半が殲滅され、少数の生き残りは逃げるように撤退していきました。蒼い閃光のフェイト風の子が追撃しようとしましたが、はやて風の子に止められ、3人で私たちの元へ着地。

 

「………援護、ありがとうございます」

「ところで、君達はいったい?」

 

状況が落ち着いたのを確認し、私とリインフォースはその3人の元へと行きました。

 

「むぅ………話せば長くなるが………すまぬが先に質問するぞ。貴様らが刹那と先代リインフォースで間違いないか?」

「ぇ?あぉ、はい。確かに私は刹那ですが?」

「私もリインフォースで間違いはないが………先代?」

 

その私達に応対したのがこの3人のリーダー的存在なのだろう、はやて風の女の子。雰囲気は気高く例えるなら王様とでも言うような。しかし、よくある偉そうなだけの王とは違って礼儀はきっちり弁えている様で、質問に質問を返すことを失礼なことと自覚している様子。言葉の節々にもこの子は信用できる、ということが見え隠れ。

 

「言ったであろう?話せば長い、と。我らの自己紹介も帰ったらする故、今は許せ」

「はぁ………とりあえずは了解しました」

「ねぇ王様ぁー。早く帰ろうよー。ボクお腹すいたー」

 

突如駄々をこねだしたフェイト風の子を王様と呼ばれたはやて風の子がゲンコツをお見舞いしてから3人は帰路へ。方向からしてフローリアン牧場でしょう。ということは恐らく………

私達も事後処理を先程の隊長さんや住民の人に任せ(むしろここから先は自分達でやると言い出した)て、私達もフローリアン牧場へ。

牧場に着くと建家の前には案の定アミタとキリエ、先程の3人、そして薄い金髪にウェーブのかかったロングヘアの小柄な少女が2人(顔付きなどもほとんど同じ)。

そして半透明のオレンジをサイドテールにした女の子、イリス。

やはり、私の予想通り。当初の計画通り、キリエとアミタは役目を無事やり遂げてくれたみたいですね。

 

「っ………刹那っ!」

「ごふっ!?」

 

私が着地するや否や、キリエがいきなりタックルをかましてきました。なんとか受け止めることは出来ましたが、地味に痛いです。

 

「ごめんっ、なさい………」

 

当のキリエは私の背中に腕を回して抱き着いて泣いています。

 

「キリエ」

「っ!」

 

私がキリエの名を呟くとキリエがビクッと肩を跳ねさせました。私にも怒られる、と怯えているのでしょう。

 

「無事で良かったです。おかえりなさい」

 

元々怒るつもりの無かった私は私の胸に顔を埋めるキリエの頭に手を置き、ゆっくりと撫でました。

撫でられるキリエはビックリとしつつも、どこか納得したようなホッとした様子で私の胸に顔を埋め続けました。

キリエと地球へ行ったイリスの方へ目線を向けると申し訳なさそうな様子でモジモジと。イリスはキリエを利用したわけですが、イリスに関しても私は怒るつもりは無いので、笑顔で返しておきます。

 

「さて」

 

私はキリエに抱き着かれたまま、(主にキョトンとしている先程の3人と双子の)他の皆に目配せしました。

ここに新たに集まった6人、それこそが私がキリエとアミタに託したエルトリア復興を進める為のメンバー。私の復興の計画がこの瞬間、動き始めました。

 

 

キリエが抱き着いたままで少々格好つかないですが………




ごめんなさいっ!なかなかネタが思い付かなくて更新が遅れました!

イリスの扱い、Detonationでどうなるか分かりませんでしたが、とりあえず出しました(((
まぁ、ある程度は捏造設定でなんとか保管しましょう!

評価、感想あればよろしくお願いします!


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第32話 マテリアル

どもども、なかなかネタが思いつかないスランプのルイスです。

先に補足だけしておくとここでのマテリアルズとユーリの設定はReflectionの設定を要所要所で使いつつでGODを展開したような感じです。魄翼もGODの禍々しいアレですし(個人的にユーリの装束はGODが好みなので)、元々夜天の書の深層部にあったものと言う設定も。
要は闇の書の欠片が2年かけてゆっくり再生して結晶化(Reflectionエグザミアでユーリが封印されていたアレ)してU-Dとして復活、と言ったところでしょうか。

Detonationでどうなるかわかりませんが、その当たりはタグにもある捏造設定で!

ちなみにGODではディアーチェだけ〇のマテリアルという紹介がなかったので勝手に決めました。PSPが動かないのでwiki先生に教えてもらいましたが。

では、本編をどうぞっ!

※タグをちょっと編集


アミタとキリエが地球から帰還して1ヶ月。あれから自体は大きく動きました。

まず、アミタとキリエが連れてきてくれた5人──イリスを含むと6人ですが、元々エルトリアにいたので除外──が予想以上に頼もしいです。

 

まずはやて風の子、ディアーチェ。王のマテリアル、と言うだけはあり上に立つことに慣れている様子。口調もやや(かなり?)尊大な言い回しをしていますが、エレノアさんなどの目上の人を敬うところや何かと皆を気遣える姿勢は王というより母親気質な部分もあります。要は皆の前に立って先導するリーダーと言ったところ。復興活動でも要所で的確な指示を飛ばしたり、いざという時は前に立つ度胸などその素質は計り知れません。戦闘でははやて同様広域殲滅の使い手です。ちなみに趣味は料理。はやての影響強すぎです。

次になのは風の子、シュテル。理のマテリアルで冷静沈着に物事を考えられる作戦参謀タイプ。よくディアーチェと私、アミタを交えて作戦会議を開いてますが、彼女の案は目を見張るものが多くて頼りになります。戦闘はなのは同様砲撃型ですが、近接戦闘も卒なくこなせる近~中距離型と言ったところ。

次はフェイト風の子、レヴィ。力のマテリアルで、性格は単純。やや子供っぽい所もありますが、戦闘面では私やリインフォースと共に前線をこなすパートナーです。フェイトやアリシア並の高速機動とそれを強化したスプライトフォームは強力で頼りになります。ちなみに好物はカレー(甘口)。

そして例の双子、ユーリ·エーベルヴァインとユーキ·エーベルヴァイン。紫天の書の盟主でかつては闇の書の闇をも超えるの魔力資質の持ち主でしたが、地球で封印処理を施された上にユーリとユーキの2つに分けられたそうです(並の封印では危険、とアリシアの判断らしいです)。ユーリは紫天の書の管制を引継ぎ、ユーキは魄翼を引継いだとか。性格はユーリはおっとりとしていて、ユーキは前向き。ほぼ2人だけで前線と後衛をこなせるタッグです。イリスと何かあったそうですが、その辺の詳しいことは聞いていません。

ちなみにユーリとユーキの封印魔法は元々私が用意して遺跡板に読み込ませてアミタに託したもの。私が夜天の書に取り込まれた時にたまたま紫天の書の情報を見付けて、それをエルトリアの復興に役立てれないかと考え、行動に移したという訳です。

 

と、この5人にイリスの協力を得て復興活動を本格スタート。とは言え、やることはリインフォースとマッピングした特異点から異常のある場所を特定し、その場所を浄化するという単純なもの。ただ、その場所が遺跡の奥深くだったりすることもあるので少々手間取ったりしています(マッピングだけなら遺跡の外からでもできましたが)。

そしてこの1ヶ月だけでかなりの数を浄化しましたが、恐らくこれだけではダメでしょう。特異点が異常をきたすようになった根本の原因、それを解決しないことにはトカゲの尻尾切りで、実際同じ場所を何度か浄化活動したりもしています。

 

「うーむ………」

 

で、今私は観測した特異点のデータを見て唸っているところ。単純にこのトカゲの尻尾切りをどうしたものか、と考えているところです。

 

「難しい顔してどうしたの?」

「ん?あぁ、イリスですか」

「あと私もいる」

「ユーキも。あれ?他の皆は?」

 

あーでもないこーでもないと唸る私の元へやってきたのはユーキと半透明のイリス。ちなみにイリスは遺跡板さえあれば基本どこでも行けるらしく、今はこの家に遺跡板を置いています。

 

「ユーリとシュテルは地下。水の循環システムの開発をやってる」

「やっと目処がたったから試作して近くの街で試そうってところらしいわよ?ちなみに他のみんなは魔獣退治。ちょっとした群れが出たらしくて手が空いてたみんなで行っちゃった」

「私も行きたかった。けど、もしものためにって言われて残った」

「最近、魔獣も多くなりましたね。凶暴なのも増えました」

「そうねぇー。嫌なことが起こる前触れみたい」

 

ここに来て1ヶ月のユーキはよくんからない、という様子ですが、エルトリア歴2年の私とそれよりも長くエルトリアにいるイリスはその当たりの変化がよく分かります。私が来たばかりの頃は1~2週間に1度、小規模の魔獣が出れば良い方だったのが、今では数日ペース。それも凶暴性が増していたり今回の様に群れだったり。イリスが嫌なことの前触れ、と言いたくなる気持ちもわかります。

 

「それはそれとして、刹那は何してたの?」

「これ………特異点の地図?」

 

魔獣については今考えても仕方ない、と2人は私が見ていた特異点のデータを覗き込みます。

 

「えぇ。もう気付いてるかも知れませんが、特異点は浄化してもすぐに侵食されています。他に根本の原因があるのでは、と」

「侵食が起きている原因………かぁ」

「皆目見当もつかない」

 

特異点の場所、浄化した日、侵食が再発した日、規模等々のデータと睨めっこしますが、なかなか答えは出ず。3人寄れば何とやらとは言いますが、テーマが難しすぎるので何ともです。

 

「っ………」

 

と、私を唐突な目眩が襲い、椅子から転げるように床に倒れました。事ある事に起こる明鏡止水の反動による発作です。

 

「大丈夫!?ユーキ、薬と水!」

「わかった」

 

発作のせいで朦朧とする中、イリスがユーキに指示を飛ばして私の部屋に薬を取りに行かせました。

 

「どうかしましたか?」

「っ!刹那さん!?」

 

そこに物音を聞きつけて地下から上がってきた2人が来て、まともに起き上がれない私を2人でソファまで連れて行ってくれました。で、ソファに私を横にしたところで薬とコップに入った水を持ってきたユーキが来て。

視界がグワングワンして自分1人ではまともに薬を飲めないので、口の中に水と錠剤を入れてもらってそれを飲み込みます。そうして少しすると発作も治まってきました。

 

「ふぅ………すみません、いろいろしてもらって」

「気にしない」

「こういう時は助け合わないと、です」

 

さすが双子、息がぴったりです。

 

「シュテル、なんとか治る手立てはないの?」

「………すみません。原因が原因ですので、私ではどうにも」

「めーきょーしすい?の反動で神経か脳に負担がかかっている、ですよね?」

「明鏡止水、だよ」

 

この手の知識が豊富でグランツ博士の治療にも一役買っているシュテルとユーリでもお手上げという私の発作。当然主治医の先生も症状を軽くしたり今回みたいに起きた時に飲む薬を処方するくらいしか手立てがないんだとか。

この発作のせいで私は魔獣退治や遺跡探索はほぼ他の皆に任せっきりの状態。とは言え、現地調査等私がいなければ出来ないようなこともあるので、そういう時は誰がが一緒に来るようにしています。ちなみによく一緒に来るのはユーキだったり。

 

その後、シュテルとユーリは私の発作がとりあえずは治まったことに安心して地下へ戻り、再び私とイリス、ユーキの3人に。地下へ降りる前に先程のデータを見せたところ、流石にすぐには答えは出せないとの事で今は保留。

今発作で倒れたばかりということもあって、イリスとユーキの薦めもあり、とりあえずソファに横になることに。

そのままイリスとユーキの2人と何気ない会話をしていると魔獣退治へ出ていたディアーチェとレヴィ、キリエが帰ってきました。

 

「ぁ、おかえりなさい。魔獣退治、お疲れ様です」

「いやぁー、凄かったよ?見渡す限り………なんて言うのアレ?………ボク達くらいの大きさの魔獣の群れがドバァーって」

「流石の我とて少々苦戦させられたわ………それはそれとして、うぬらは何をしておる?」

「もしかして発作、起きちゃった?」

 

はい、と私は肯定。発作が起きたあとはよく横になっているので2年の付き合いになるキリエはすぐにわかったようです。

ちなみにアミタとリインフォースがいないのは見回りをもう少ししたいから、とのことらしいです。

 

「私のことは良いんですが………ディアーチェもすみません。せっかくエルトリアに来てもらったのにここ1ヶ月間地味な仕事ばかりで」

「うん?別に気にしてはおらぬが………元々復興を手助けする約束であるしな。こういう地味な仕事こそ王たる我が率先してやらねば臣下に示しがつかぬ」

「普通は臣下にやらせるよね、よくある王様って」

「ボクらの王様はそーんなちゃちな王様じゃないからねー。にしてもこれ………うーん………んー………?」

「褒めても我特製飴玉しか出ぬが………レヴィよ、特異点のマップなぞ見てどうかしたか?」

 

出るんだ!とレヴィとディアーチェ以外の全員が心の中でツッコミを入れる中、私が投影していた特異点のマップを覗き込んで唸り始めるレヴィとそれを気にかけるディアーチェ。

 

「いやさ、こぉんな感じのマップ………どこかで見たような?見てないような?」

「何でしたらバルニフィカスにそのデータ送りましょうか?それなら後でも見れるでしょう」

「ホント!?せっつんありがと!」

 

ちなみにせっつんとは私のこと。刹那だからせっつんらしいです。

 

「さて、我も夕餉の支度をせねばな。ちなみに今夜はカレーにしようと思う」

「カレー!大好き!やったぁー!」

 

ディアーチェからカレーの単語を聞いた途端、意識が全てそちらへ向くレヴィ。単純な性格だなぁー、とは思いますが、その単純さが時には長所ともなりますし、いざという時の発想力にも繋がるので、ある意味羨ましかったりもします。ちなみにカレーはレヴィの大好物ということもあってディアーチェの一番の得意料理です。一応和洋中等々大抵の家庭料理は作れるそうですが。

この日は結局レヴィを持ってしてもずっと考え込んでいた疑問の結論は出ず、皆でカレーを堪能することにしました。




今回は会話回+説明回。ということで少し短めです。

次話から少しずつ進展して行く………かもしれません。ネタが本当になかなか出てこず、出てきてもうまく文章にできずで今回もこんなに短くなっちゃいました。

では、感想、評価あればよろしくお願いします!


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第33話 天使襲来

どうもルイスです!

前話でオリキャラ(ほとんど既存キャラですが)出ましたが、まただそうかなーと思ってます!まぁ、オリキャラではなくクロスオーバーデスケド

ではどうぞっ


「んぇぇぇぇぇ………目的の場所、まだつかないのぉぉぉぉ???」

 

荒野を歩く私とレヴィ、キリエとユーキの4人。もう歩き始めて半日、前の休憩からもそろそろ1時間ほどが経過。さらに言えば昨日も丸1日歩き続けていて、夜は適当な街の宿で寝たとは言っても疲れは残る2日目。日差しの中歩き続けて、とうとうその最後尾のレヴィがへばってきました。

 

「そうですね………あと少しですが、そろそろ昼時休憩にしましょうか。あそこに丁度良い日陰もありますし」

「やったぁぁ!」

 

体力自慢のレヴィがへばっているので、顔には出してないだけでユーキとキリエもきついことが伺えます。ずっと日差しの下ということもあるので丁度見付けた岩山の間にある日陰のスペースへ行き、荷物を下ろしました。

何故今私達がこのように荒野を歩いているのかというと、その理由は昨日の朝まで遡ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一昨日、朝8時頃

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

レヴィが唐突に叫び声を上げたのは、その翌日の朝ごはんを食べたあとの片付けの真っ最中のこと。

 

「どうかしました?」

 

その叫びにビクッと驚いてエレノアさんが落とした皿をシュテルが空中キャッチしつつレヴィへ訳を聞きます。

当のレヴィはちょっと待って!と残して急ぐ様に外へ。恐らく離れ(アミタ達が地球から戻ってから新しく建てた)にある自室に行ったのでしょう。しばらくして戻ったレヴィはリビングの机に自身のデバイスであるバルニフィカスを起き、その上にモニタを投影。

 

「それは………昨日刹那から貰っておった特異点のマップか?確かあの時どこかで見たことがある、とぬかしておったが」

「そう!それをやっと思い出したんだよ!」

 

レヴィはもう1つモニタを投影。

 

「これは………魔獣の出現地点ですか?」

「そーそー」

 

新たに投影したモニタをみんなで覗き込みます。それが何かに最初に気付いたのは一番頭の回転の早いシュテルでした。

 

「でねー、これを………こうする、と」

 

新たに投影したモニタを特異点のモニタに重ねるレヴィ。そのポイントは特異点の近くに集中しているのが見てわかります。

 

「ほら、特異点の近く!魔獣がたくさん!」

「………はぁ」

 

得意げに説明(?)するレヴィに最初に反応したのはディアーチェのため息でした。

 

「そんなこと、もう皆が気付いておるぞ?」

「実際その現場に何度も行ってるのは他でもない私達よー?嫌でも気付くわよ」

「そんなぁぁぁ………」

 

部屋の隅に体育座りして、まるでガビーンという擬音まで聞こえてきそうな程に落ち込むレヴィ。

実際、魔獣は特異点の周りに出没することが多い。行動力のある魔獣ならそこから離れた場所へ移動することもありますが、大抵はその近くで暴れ、たまたまそこに街があればそこで、と言った具合です。

それもそのはず、魔獣はその特異点の魔力の影響を受けた生物なのだから。しかしそれだけならば一部の元々凶暴な種は例外としても、大抵の種はせいぜい大型化したり見た目が少しゴツくなる程度。普通なら凶暴化したりはしません。

本来凶暴でないはずの種さえも凶暴化しているのはもちろん理由があります。それは単純で、特異点の変質にあると私達は睨んでいます。元々特異点の魔力の影響を受けているので、その魔力が変質すれば魔獣の方も影響を受ける、という至って簡単な推理です。

特異点の変質のレベルも大小あり、それが大きい特異点近傍ほど凶暴化な魔獣が多いのも当然といえば当然の推理。

 

「………あれ?」

「うん?ユーリ、どうかした?」

「ぇっと、ここ、なんですけど」

 

レヴィが映したモニタを見て、ユーリが首を捻ります。ユーキに返答しながらそのモニタを操作してある一部分を拡大するユーリ。

 

「この部分、です」

 

その拡大した部分。そこは不自然な程に()()()()。龍脈や特異点のモニタリングや凶暴化した魔獣の出現ポイント。そのどちらかならたまたまで済ませたでしょうし、実際片方だけの空白なら何ヶ所もあります。しかし、ユーリが示した場所はそのどちらも共通して同じ場所が空白となっていて、その場所は範囲にしてせいぜい半径10kmほど。そこに集落や街はなく、あると言っても岩山や荒野が広がるのみ。

 

「不自然に何も無い、のF.N.Nです!」

「これのどちらかならわかるのだが………両方とくればな」

「調査、しないと」

 

ユーリの提示に真っ先に反応したのがアミタ、それに続いてリインフォースとユーキ。

私も調査すべきというユーキの案は賛成。正直、少しでもこういう可能性があることは当てにしたいくらい調査も行き詰まっているのが現状。

私は誰が行くか考えながら皆を見回しました。

 

「そうですね………私と最初に気付いたレヴィは確定。現地の案内にキリエも確定として………」

「ボクも行けるのっ!?」

 

私に名前を呼ばれて部屋の隅から復活したレヴィ。こういう時のレヴィの閃きは当てになりますし、頼りにもなります。それもあってレヴィを採用。

 

「私も行く」

「………ユーキを含めた4人でどうでしょう?」

「我は賛成だ。強いていえば後方支援がいないのが気掛かりではあるが………我はうぬがおらぬ間ここの指揮を執らねばならぬし」

 

ディアーチェはシュテルの方へアイコンタクト。それを見たシュテルは首を横に振りました。

 

「シュテルは例の水循環システムで手が離せぬようだしな」

「なら、決まりですね」

 

ちなみに現地案内はアミタでも良かったのですが、前々からキリエとはよく一緒に行動していたのでキリエに決めました。

 

「さて、出発は明日にしますね。そこそこ長い調査になると思うので準備はしっかりしてください」

 

私が締めると私以外の調査メンバー3人は「はーい」と各々の部屋へ戻っていきました。

 

「正直、今のエルトリアは何が起こるかわからぬ。十分気を付けよ。うぬをチビひよこの元へ無事に返さぬと後で我が恨まれるからの」

「わかりました。ディアーチェを心配させないように、ちゃんと無事に帰りますね」

「んなぁ!?」

 

ディアーチェがアリシアの名前を出して心配してくれる時というのはディアーチェ本人が本気で心配してくれている証拠。要は自身が心配している、ということを悟られるのが恥ずかしいのでしょう(当然バレバレ)。こういうのをキリエ曰くツンデレ、と言うのだとか。

私は顔を真っ赤にしているディアーチェの頭を軽く撫でてやってから部屋へ戻りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………とまぁ、このような事があって今私達は荒野のど真ん中を歩いているわけです。飛ばない理由は魔力の節約と大荷物を抱えているから、の2つ。

 

「あまり手の込んだものは出来ませんが、お昼ご飯にしましょう。調査は昼からです」

「私手伝う」

 

料理は私とユーキで、フローリアン家の倉庫に封印されていたキャンプセットのテーブルとイスのセッティングをキリエ、キャンプ用のステンレス食器の用意をレヴィで分担してテキパキと昼食の用意。

 

「それにしても、刹那のその量子変換?って便利よねぇ………薪とか食材とか普通なら嵩張るようなものも簡単に運べちゃうんだから」

「容量に限度はありますけどね。とは言え、ある程度節約すれば2~3日はキャンプ生活出来ると思いますよ」

 

以前海鳴に飛ばされる前にアリシアと2人で格闘競技の大会をあちこち巡っていた時に覚えた物の量子変換を使った運搬、これがかなり便利で普通なら嵩張ってとても運べないような薪や食材をそこそこの量なら運べます。重くないですし。

 

「インスタント系の物ならここまでしなくてもいいのですが………」

「インスタントは嫌」

「と、ユーキが断固拒否しているので」

 

と、口を動かしながら手も動かす私とユーキ。水は限りがあるので、あまり凝ったものや食器が汚れそうなものは作れないので、簡単なホットドッグやサンドイッチを数種類。ちなみに火はレヴィの雷の変換資質で静電気を起こして作りました。

 

「にしても、この辺りはホント不思議よねぇ」

 

作ったホットドッグとサンドイッチを食べているとキリエがふと意味深なことを言い出しました。

 

「不思議ってー?」

「私、ずーっとこのエルトリアにいたじゃない?だから尚更なんだけど、ホントに何も無いのよ。それこそ、人がまだ地上にたくさんいた頃はこの辺りも開発しようとしたらしいってくらいに」

「………それほど昔から何もないとなると、確かに不思議ですね」

「けど、特に結界が張ってある訳でも無いのにユーリが示したあの範囲近辺は誰も立ち入れなかったの。気が付いたら通り抜けてたり、元の場所に戻されてたりね。まさか龍脈すらもないとは思ってなかったわ」

「そのせいで誰も開発するに出来なくて何も無かったんだ」

 

大昔、まだエルトリア地上に人が多くいた頃。開発できる場所は開発し、資源を掘り、後のエルトリア荒廃の原因となった時代。その頃すらこの辺りは開発されず何も無いまま。上空から見てみると荒野が広がるだけですが、確かに不思議ですし気になりますね。

 

「………ん?」

 

と、物思いに耽っていた丁度その時、私達がいる場所のすぐそばに何かが着地しました。見たところユーキより少し背が高いくらいの身長にオレンジに近い金髪のロングで頭の後ろには赤いリボンを着けた青い瞳の女の子。身に纏っているのは胸にはやや派手な模様のついたブレストアーマーに白を基調として黄色いラインの模様のついたヘソ出しのミニスカートに同じ模様のニーソックスという装束。右手には聖剣と言えば誰もが疑わない様な立派な剣、左手には炎を纏った上でそれ自身も炎の様な形をした剣の二刀流。

これだけならやや派手な女騎士で済ませられるでしょうが、私達の目を疑ったのは彼女の頭の上と背中にあるもの。頭の上にあるのはまるで王冠を思わせるような輪っかで、背中にあるのは3対の純白の翼。それはまるで

 

「天……使……?」

 

そう、天使。そう言われれば誰しも納得してしまいそうな意匠。確かに魔獣の中には竜種(ドラゴン)吸血種(ドラキュラ)の様な種類もいるので、天使がいても不思議ではありませんが………ちなみに吸血種は昼でも普通に動き回ります。単に血を吸う魔獣なので吸血種と言っているだけです。

 

「はぁぁっ!」

「っ!」

 

そんな考察をしていると、その天使(?)が何の前触れもなく私達へ襲いかかってきました。真っ先に反応したのは一番近くにいたレヴィで、口にホットドッグをくわえたままバルニフィカスのスライサーで防御。

両の手に持つ2本の剣で繰り出す巧みな剣術をレヴィは何とか全て捌いています。

 

「んっぐ………ゴクン………ねぇ君ぃ、ごはんの最中に襲ってくるって少し不躾すぎるんじゃないかな?王様いたら2時間は説教されるところだよ?」

「ここから、出て行けぇぇぇ!!!」

「………ダメだこりゃ、言うこと聞いてくれないよ」

 

両手が塞がっているので、咀嚼だけで器用にホットドッグを全て飲み込んでから意思の疎通を図ろうとしますが、向こうは(理由は見当つきませんが)問答無用とばかりに攻撃を仕掛けてくるのみ。

出て行け、とだけは聞き取れたので縄張りに入り込んだとかそういう理由でしょうか?確かに魔獣の中には縄張り意識の強い種もいますが………そもそもを言うとここまで人間に似せた上で文化を持っていそうな魔獣なんて聞いたことありません。キリエの驚く顔を見る限り、キリエも同様みたいです。

 

レヴィは何度も天使の持つ剣とバルニフィカスのスライサーで打ち合い、挙句の果てには戦闘の舞台は空中へ。縦横無尽に駆け巡りながらレヴィと何度もぶつかり合っています。

 

「あの子、レヴィのスピードに拮抗してるわよ!?」

「レヴィ並のスピードのシグナムみたいです」

「それ、冗談抜きに怖い」

 

私達の中でもレヴィは速度に特化していて、スプライトフォームを使わなくてもレヴィの速度に対抗できるのはアクセラレイターを使ったアミタとリインフォースやシステムオルタを使ったキリエ、旋風脚の超加速を使った私のみ。つまり、素のスピードではレヴィに敵うのは誰1人としていません。そのレヴィのスピードに対抗し、あまつさえ拮抗しているあの天使らしき女の子。その上シグナムを連想させるような剣さばきは圧巻の一言。

 

「へぇー?なかなかやるじゃん!フェイトやブシドー以外でボクとここまでやり合えるのって滅多に居ないんだよ、ね!」

 

ちなみにシグナム(レヴィの言うブシドー)はレヴィ程のスピードは無いですが、天性の勘とフェイトとの戦闘経験でレヴィと拮抗して戦ったらしいです。

 

「でも、お昼ごはんを邪魔されてボク、少し機嫌よくないんだよね。だから、ここからは本気で行くよ。スプライトっ!!ゴーっ!!!」

 

レヴィの楽しみだったごはん、これを邪魔された上に何度話しかけても無視され続けてレヴィの怒りのボルテージは最高点に達したのか、レヴィはスプライトフォームを発動しているさらに加速。バルニフィカスもスライサーから大剣のブレイバーに変形させました。

その加速によって天使の方も反応出来なくなったのか動きが鈍くなり、完全に防戦一方に。

 

「でやぁぁぁぁぁ!!!」

 

最後にはレヴィのスプライトによる加速を使った縦振りを防御しきれずに地面へ落下。何度かバウンドして岩山の壁面にぶつかってやっと静止しました。

私がその子の方へ近寄ると、その天使らしき子は目を回して完全に気絶。怪我をしたのか頭から血も流していました。

 

「気絶してるわね」

「レヴィ………やりすぎです」

「えぇぇ!?」

 

突然襲来してきた天使を撃退して得意顔のレヴィ。そのレヴィを待っていたのはキリエとユーキからの冷たい目線。

 

「まぁまぁ。レヴィなりに頑張ったのですから素直に褒めてあげましょうよ」

「治療する手間が増えた」

「ぁ、あははは」

 

私達はその気絶した天使を日陰の休憩していた場所へ連れていき、武器である2本の剣は取り上げてから治療することにしました。

この天使は何者なのか、そして何故襲ってきたのか………それは結局、この場の誰にも結論は出せず、この天使が起きるまでわからないままでした。




ぁー!ネタが出てこないっ!出てきても文章に出来ないっ!

と、スランプが続いております。以前ならスラスラと出てきたネタも今は何とか絞り出して書いている、と言った感じです。
そのせいで展開がやや無理矢理になっているのは許してくださいm(_ _)m
天使の正体は次話で明らかになりますっ!

感想や評価、よろしくお願いしますっ!


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第34話 龍脈の真実

どもども、ルイスです。

アズレンのユニコーン新衣装の最終任務で3-4ハードを回してたら赤城と加賀が続けて泥して( 'ω')ふぁっ!ってなってます。
明石はゆっくり進めまする


side ???

 

私は………夢を見ていた。

 

───聖杯に異変?

 

───原因はわからないわ。でも、今は微々たるものだし、ゆっくり調べればいいでしょ?

 

約100年くらい前だったか。私達の管理している天界の中心、特異点の中心たる聖杯に異変が起き始めたのは。

いつもなら聖杯の中で燃え続ける純白の魔力の炎、それの根元が僅かながら黒ずんでいたのが事の始まり。

 

───この星の力を吸ってる?

 

───只でさえ衰えているのに………これじゃあ再生出来ないっ!

 

惑星エルトリアで最も影響力の強い特異点、天界にある聖杯の異変はそれから何年も掛けて徐々にエルトリアの星全体へと悪影響を及ぼしていった。

 

───闇が広がってる!?

 

───聖杯が闇に染まれば、この星は………

 

年月を経るごとに広がる聖杯を汚染していく闇。そしてその魔の手は、とうとう私達にも牙を向いた。

 

───聖杯の闇が溢れてっ!?助けっ!助けてぇ!!!

 

───私達がアレを一時的に足止めするわ。だから、その間に貴方は外へっ!

 

───でもっ!

 

───私達には闇を止めることは出来ない………けど、外なら。可能性があるの!だから行きなさいっ!ウリエル!!!

 

「ミカ姉ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッと聞こえてきそうなほど勢いよく私は跳ね起きた。気が付けば私は何かわからないけど、ふわふわした袋の中に入れられて寝かされていて、その場所も布のような部屋の中。

 

「………何よ、これ?」

「起きた?大丈夫?」

 

何が何だかわからずキョロキョロしていると、布の部屋の一部がチィィィィィと音を立てて亀裂が入り、そこが裂けたと思ったらそこから女の子が顔をひょこり。その女の子はさっき私が襲いかかった一行の1人で、金髪の小柄の子。

 

「魘されてた。はい、タオル。汗拭いて」

 

さっき見た悪夢、それで魘されていたみたい。確かに言われてみたら私の額には汗が滲んでいて、服の方も汗で濡れていた。今気付いたんだけど、上の甲冑である鎧は脱がされていて下着の上に誰のかわからないけどTシャツを着せられていた。甲冑の下に着ていたスカートとニーソックス、それも脱がされていてこっちもジャージのようなズボンを穿かされていた。ちなみに輪っかと羽根は気絶した時点で消えたんだと思う。あれ、出し入れできて意外と便利。

 

「あぁ、その服だけど。上はキリエので下は私のね。汚れてたし打ち身とかもあったから脱がせた。大丈夫、刹那は見てないし、脱がせたの私とキリエだから」

「ぁ、ありがと?」

 

確かに一行には1人だけ男がいた。多分それがこの子の言う刹那なんだろう。汗で濡れたTシャツを脱いで体の汗を拭くと、この子が新しいTシャツを渡してくれて、それに着替えた。

 

「動かける?動けるなら出て、何か食べた方がいい」

「ぇ?あぁ………うん?」

 

見た目は可愛らしいのにかなり積極的、というか強引というか。とりあえず動けることは動けるから言われた通りにふわふわした袋と布の部屋から外に。部屋の外に甲冑の靴が置いてあって、それを履いて外に出る。

外はまだ昼間で明るかった。

 

「今他の皆は今見回り行ってて私だけ。とりあえず、あなたが目を覚ましたことは伝えたからもうじき戻るとは思う。はい、これ。お昼ご飯の残りだけど」

 

クゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

「………っ」

 

サンドイッチを渡されたところで私のお腹が可愛らしい音を立てて鳴いた。恥ずかしかったけど、お腹がすいてるのは事実だし、ここ数日あまり食べれてないから何か口にしたかった。

 

「………いただきます」

 

そのサンドイッチはたぶん、手っ取り早く作ったものなのだろう。けど、数日も何も食べてない私からすればご馳走で、テーブルの上にあったサンドイッチとホットドッグが全てなくなるまで私はそれにがっついた。食べるのを見ていたユーキ(食べてる時に名前を教えてくれた)にリスみたいって言われてたけど、それも無視してとにかく食べた。

全部食べきって一息付いたところで、ユーキが紅茶をいれてくれたので、それを飲む。そうしているとユーキの仲間が戻ってきた。

 

「ぁ、全部食べれたんですね。良かったです」

「私の服、サイズどう?少し大きめだと思ったんだけど」

「ごめんねー?さっきは強くぶん殴っちゃって。ってあぁあ!!ボクのサンドイッチがぁぁ!!」

 

薄い緑の髪に青と紫のオッドアイの男性に、ピンクの髪をした女性と青のツインテールの女の子。

ちなみにツインテールの子はピンクの人に「さっきたらふく食べたでしょうが」と軽く怒られてた。

 

「………ねぇ、どういうつもりなの?私はあなた達を襲ったのよ?それを助けるなんて………それに何者なの?自分で言うのも恥ずかしいけど、私はミカ姉以外には負けたことなんてなかった私を倒すなんて」

「名前を尋ねるなら、まず自分から。それが此方の礼儀です。其方は違うのですか?」

 

緑の髪の人に言い返されて、うぐ…と押し黙る。確かに天使の一族でも似たようなこと言われてる。

 

「………ウリエル。見ての通り、と言っても今はリングも羽根も出してないけど、天使よ。その中でもトップの4柱を張ってる1人よ」

「確か………神の炎や神の光という意味で、熾天使や大天使の異名を持つ1人」

「あら?知ってるの?」

「まぁ、多少は。前いた世界ではそれなりに有名ですから。最も偉大な天使長ミカエル、神の言葉を伝えるガブリエル、癒しを司るラファエル、そして破壊を司るウリエル、と言った感じに。先程のミカ姉、とはこの序列で言うと天使長ミカエルの事でしょうか?」

 

詳しいのね。でも、今はそれよりも

 

「………えぇ、そうよ。でも、その前に私が名乗ったんだからそっちも名乗りなさいよ」

「っと、そうですね。私は刹那·ストラトスと言います。どうぞ、お見知り置きを」

「ボクはレヴィ!ぶん殴っちゃったところ大丈夫?痛くない?」

「キリエよ。キリエ·フローリアン。私からも謝るわ。うちのレヴィがごめんなさいね」

「さっき名乗ったけど、私も。ユーキ·エーベルヴァイン。紫天の盟主の片割れで魄翼を受け継いでる」

 

えーと、刹那にレヴィ、キリエ、もう知ってるけどユーキっと。

 

「先程言っていたあなたを圧倒したレヴィですが………ま、恐らくウリエル、あなたが空腹で不調だったからでしょう。レヴィは確かに私達の特攻隊長で実力はかなりのものですが………」

「実際に戦った感想言うと………ウリエルは本気を出せてない感じだった。手を隠してる、とかじゃなくて出せない。なにかの理由で弱ってるって」

「………バレてたのね」

 

まぁ、腹が減ってはなんとやらを体現しちゃってた訳だし、仕方ないわよね。

 

「で、次にさっき言ってた私達は何者か、何だけど」

「一言で言うなら………そうねぇ………エルトリアを復興させるために調査に来てた、かな」

「私達が調べていた龍脈、そして各地の魔獣出現地点。その双方がこの周辺だけ不自然に何も無かったんです。それで調査に」

「何も無い、か。そりゃそうよね」

 

龍脈が無くて、魔獣も現れていない。その理由は簡単。

 

「だってそこ、私達の領域だからね。通称天界。何も無い理由は特殊な結界で覆っているから」

「ということはそこに近付いた人が気付いたら元の場所に戻されてたり違う場所にいたり、魔獣が現れていない理由は………」

「その結界のせいね。特殊な結界で自身にも同等の結界を張って中和しないと入れないの。出るのは普通に出れるんだけどね」

 

ここまで外界から自らを隔絶し、それでも人に偽装して多少は外との交流は続けて情報を得てきた私達天使。そのせいでエルトリアに昔からいたキリエすらも天使の存在は知らなかった。

外の人が言う魔獣、その中でも最も知性に秀でていて、しかも種族全体として攻撃性はないが故に世間から一歩引いてきた。その影響で他族から襲われることもなく、むしろ人の中に溶け込んで生きてきた。

 

「けど、それだと1つ気になることがあるんです。そもそもそれなら、何故ウリエルがここにいるんです?何故、ここで腹を空かせていたんです?」

 

この短い付き合いの私でもわかる。この刹那って人は勘が鋭い。だから、私がここにいることそのものの違和感は気付く。空腹だったとは言え、私を倒す戦闘力。実際に戦ったのはレヴィだけだけど他のみんなもレヴィと同等かそれ以上ということは戦わなくてもわかる。それに、私を助けてくれたことから人として信用もできる。だからこそ、私はこの人達なら伝えてもいいかな、と思う。ミカ姉も言ってた、外なら可能性があるって。私もこの人達に賭けてみよう。それだけの価値がある。

 

「………天界にはね、聖杯っていう龍脈の源泉みたいなものがあるの。私達天使がここまで知性的で人に近いのはそれを守護する役目があるからじゃないかってのが現天使長のミカ姉の見解」

「そもそも知性がないと守るって概念にはそうそうならないからね。人の姿を取ってるのは、多分その方が何かと効率いいからじゃないかな」

「多分ね。で、常に聖杯の影響下にあるから魔力としての素質はかなり高いの。さすがにレヴィと拮抗できる戦闘力は私クラスくらいでもないといないと思うけどね」

 

私は天界が天界たる所以、聖杯についてユーキ達に告げた。本当ならこのことは天使以外には他言無用で口外することは禁忌。けど、今天界で起きていることを説明するのには聖杯について教えないと始まらない。

 

「で、ここからが本題。100年くらい前かな。その聖杯に若干の穢れが現れたの。最初は私達もあまり危機感は抱いてなくてね。それでもどんな対策を取っても解消されることはなくてね」

「ちょっと待って?ということはその穢れが100年かけて………?」

「キリエ正解。それがこの星に悪影響を与えているのが気付いたのは穢れが出て比較的すぐだったわ。それもあって私達も対策を急いだの。けど何をしても失敗したわ。で、事態が急変したのは今から2週間くらい前。聖杯の穢れが急に天界を飲み込み始めたの。急に物凄い速度で侵食を始めたから逃げれたのは私くらいだと思う。ミカ姉も………私を庇って………」

 

私を庇って闇に飲まれたミカ姉。天使長という立場でありながら皆に母親とか姉と慕われた人徳(天使だから天使徳の方がいいのかな?)の持ち主。実際に私も姉と慕ってたし、鍛錬もよく付き合ってくれた。そもそも私以上の手練がミカ姉しかいないからってのもあるけど、自分で言うのはすごく恥ずかしいけど、それだけミカ姉から私が慕われてたからなんだと思う。

話していて私は涙が込み上げてきて目から零れた。それは止めどなく零れてきて、私は俯いて泣いた。今まで我慢してきただけに、それは止まることがなくて………泣き止むまでキリエは優しく抱きしめてくれた。ユーキもハンカチを貸してくれた。刹那も黙って落ち着くから、と新しく紅茶をいれてくれた。ちなみにレヴィはずっとあわあわしてた。

 

しばらくして私が泣き止むと、私を抱き締めていたキリエは私を解放してくれた。柔らかくて大きな胸が少し羨ましい。

 

「っ………ごめんなさい。人前で泣くものじゃないってのに」

「………そんなことはありませんよ」

「ぇ?」

「誰かのこと、特に大切な人のことを想って流す涙は別です。私は何があっても泣かない、という人のことは信用しません」

 

私は刹那の一言に衝撃を受けた。私は熾天使という称号を貰ってからそれに誇りを持っていて、ミカ姉を含めて他人に弱みを見せたことは無い。涙はその弱みを見せる最たる例だと思っていた。だから人前では泣いたことはないし、泣く時は絶対に1人になれる時だけだった。

けど、刹那の言ったことは泣いても良い、と私の根本を覆された気がした。でも、刹那の言うことは良くわかる。確かに泣かない人より泣く人の方が人間として(私達の場合天使として?)信用できる。最も、私の場合は天使事態が全体の数はあまり多くないんだけどね。私も正確に把握してるわけじゃないけど、多くても数100くらいじゃないかな。

 

少し話が逸れたけど、このあと今後の方針をみんなで話した。今日はまだ昼過ぎだけど、本格的に動くのは明日から。明日天界の中を時間をかけて調べるみたい。

刹那とキリエはその下準備、私とレヴィ、ユーキは訓練や模擬戦をしたりして今日の残りを過ごした。夕方頃には刹那とキリエもそれに参加。私の予想通り皆強くて、本調子に戻った私も苦戦を強いられたけど、1つ気付いたことがある。この人達はまだ本気を出してない。まだまだ底が知れないことに畏怖する反面、味方なことへの心強さを感じて、私達なら天界………いや、エルトリアを救えるかもしれない。もう100年近く思ってこなかった感情が私の中に生まれた瞬間だった。

この日の夜は近くにあった、私が寝起きしていた洞窟の奥にある水源の水でお風呂沸かしたりして、天界を出てから1番快適な1日となった。

 

───side out




エルトリア編初の刹那以外の視点のみで構成した話。
出てきたウリエルはモンストのウリエルです。ちなみに他の天使、例えば本編で何度か名前の出たミカ姉ことミカエルもそれです。
ミカ、というあだ名で呼ばれてますが、決して某止まらない隊長の右腕ではありませんよ。

今後はこの様なクロスオーバーはやらないと思います。武器だけ、とかスキルや技だけならちょこちょこあるかもですが、キャラを出すのはこれ限りだと思います。

では、感想や評価などがあればよろしくお願いします!


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第35話 根源

更新遅れてすみませんっ!

オールオリジナルのエルトリア編………すごく難しいです。いい流れがなかなか思い浮かびません!仕事の休憩の時とかに色々妄想してますが、何故か最初ISのネタばかり思いつく謎現象(書く予定は今のところありません)

と言うのは事実なんですが、先週買ったウルトラサンにハマっていたのが真実だったりもします。旅パがアローラ感全くないです!


ウリエルとの出会いの翌日。私達は天界を調べることに。とは言っても聖杯侵食の影響でそもそも中に入れるのか、それが気掛かりでした。

 

「私が行く」

 

そう真っ先に声を上げたのはキリエ。曰く、キリエなら内部のデータをフォーミュラを使って取れるから、とのこと。環境に対してもその応用ですぐ対応出来るのだとか。結局ウリエル同伴で天界への斥候はキリエに決まり。すぐに決行しました。

天界へと通じる渓谷の入口で待つこと2時間。2人は私達の元へ戻ってきて、即作戦会議。聖杯の侵食の環境への悪影響、敵性存在等々のデータは流石キリエと言わせるものがありました。

ちなみに環境への悪影響は全く無し。生身で入っても問題ないみたい。ただ、問題は敵の数。天界内の唯一の都市、王都付近はまるで餌に群がる蟻のようにうじゃうじゃと黒い影が埋め尽くしている様でした。天界の住人が侵食されて群がっているのかとも考えたのですが、どうもそうではないらしく、聖杯を侵食した強力な闇の魔力の影響で現界した思念体の様です。しかし、並の思念体とは質が違って、魔力反応はとても濃く………そして1つ気になる事がありました。

 

「この魔力………私、知ってます」

 

その魔力の反応………私の記憶に1つだけ同じものが残っていました。

 

「深遠なる闇………」

 

そう、夜天の魔導書の事件で最後に文字通り血戦をした深遠なる闇。あれと同じでした。

全く同じかと言えば少し違和感もあって、恐らくそれは聖杯を100年に渡って侵食してきた影響でしょう。

これは私の推測ですが、私が身をもって撃たせたアルカンシェルのダメージが深刻で、回復にこれだけの長い時間が掛かったのでしょう。私より100年近く前に飛ばされたのは偶然でしょうが………

その時のことを私はここにいるみんなに話しました。

 

「まさか刹那の因縁?」

「ある意味私も。紫天の書は夜天の書の一部みたいなものだから」

「けど、刹那ってボク達の中でも強い方だよ?しかも全盛期のリインフォースもって言ったら今の何十倍も魔力持ってて強かったんでしょ?」

「そのオリヴィエって人は地球行った時会ったけど、底知れぬ何かがあったわね。大昔からゆりかごの聖王って呼ばれて畏怖されてたらしいわよ?聖王教会って言ってそれを祀る場所もあるらしいけど」

「ちなみにそれの対をなす覇王の末裔が目の前にいますけどね」

 

オリヴィエに直接会ったキリエ、全盛期のリインフォースを知っているレヴィとユーキ。それを直接知らないですが、ウリエルは私達の話から私と全盛期のリインフォースにオリヴィエの3人掛かりで苦戦し、挙句の果てに自爆覚悟のアルカンシェル特攻で何とか相打ちに持ち込めたという深遠なる闇の強さを想像して鳥肌を立てていました。

 

「しかし、そうなると問題があります」

「問題って?」

「あの血戦で使った切り札、アルカンシェルかそれに相当する火力の出せる攻撃がない事です。100年経ってどれだけ回復してるのかはわからないですが、私が戦った時と同様を考えると………」

 

あの時使ったアルカンシェル。あれは確かに私達の切り札で、私が自爆覚悟の特攻したのも、それを確実に当てる為でした。

アルカンシェルはそもそも管理局の艦船が無いために、それ相応の火力を用意する必要があるのですが、あのレベルの火力を人の手で出せるのか?それが問題でした。

 

「ユーキの永遠結晶(エグザミア)に掛けてある封印を解くのはどう?あれならなんとかなると思うと思うな」

「ダメよ。確かにそれならアルカンシェルクラスの火力は出せるかもしれない。けど、そもそもそれをユーキが制御出来ないわよ。地球で起きたことの二の舞よ?」

「私もそれを考えた。でも、やっぱり危険」

「そっかぁ………良い考えだと思ったんだけどなぁ」

 

唯一出た案はユーキとユーリの永遠結晶の封印の全解除。私はデータでしか知りませんが、あれの魔力は絶大で、確かにアルカンシェルクラスの火力は出るでしょう。が、そもそも地球でユーリはその力を制御出来ず、暴走。結果として人格と魔力を分けた上で封印を10段階に掛けたのです。ちなみにその封印の解除は私とディアーチェで半分ずつの承認制。半分だけなら仮に全て解除しても制御は可能らしいですし。

結局、そのユーリを止める時に使ったディアーチェのトリニティ、あれに賭けることに。暴走のリスクを考えれば一番安全な手段。現状の私達の攻撃系統の魔法では最大威力ですが、深遠なる闇を完全消滅できるかは不明。かなり歩の悪い賭けになりそうです。

 

「さて、と。賭けとは言えやることは決まったわけですが………」

 

私は丁度天界のある方向の空を見上げます。そこにあるのは天界辺りを中心にして少しずつ広がっている黒い雲。

 

「っ!?」

「アレなんなの!?すっごくやな予感しかしないんだけど!」

「恐らく、聖杯の侵食が終わって、エルトリアそのものを侵食しようとしてるんだと思う。早くしないと取り返しがつかないことになる」

 

タダでさえ龍脈を通じて星そのものが弱っていると言うのに外からも侵食されたら今のエルトリアでは長くは持ちません。時間をかけるのは今は最悪手。例え闇を祓えたとしても侵食が広がってしまえば復興すらできなくなります。

 

「行くしか、ないですね」

「そうみたい」

「さっき見てきた感じだと戦力の差はざっと1000対1ってところ?ま、それでもやるしかないんだけど」

「さーて、ボクも腕が鳴ってきt「レヴィは突入しませんよ」えぇ!?」

 

なんでなんでぇ!と私の袖を掴んでぶん回すレヴィ。唯一レヴィだけ中で戦わせてもらえないので気持ちはわかりますが。

 

「レヴィにはディアーチェやリインフォース達を呼んできて欲しいんです。今のメンツで1番速いのはレヴィ。頼れるのはあなただけなんです」

「ボクだけ!?」

「はい、レヴィに『しか』出来ない『重要な』任務です。1秒でも早くディアーチェ達の援護を連れてきて下さい」

「ボクにしか……… 重要………うん、わかった!」

「頼みますよ」

「うん!行ってくる!」

 

私は言葉の節々をわざとらしく強調して説得。レヴィは基本的に単純な子なのでこういう時は楽でいいです。

レヴィはスプライトフォームを展開するとすぐに飛び立ち、数秒の内に見えなくなりました。

 

「………さて。残った私達ですが、貧乏くじです」

「だろうと思った」

「ディアーチェにまた仲間を失う悲しみを味合わせたくありませんから」

 

地球で暴走したユーリにワクチンを撃ち込む際、特攻を掛けて犠牲となったシュテルとレヴィ。正確には力尽きてディアーチェの内部で回復していたのですが、その時のディアーチェは相当に悲しんだそうです(シュテル談)。失う悲しみは私がよく知っていること、それをまた味合わせるのは酷というものです。

 

「とは言っても、嘘は言ってませんよ?どの道誰かが残らないといけないので」

「そうねぇー。確かに、ここにいるメンバーなら最善はレヴィよね。ウリエルもレヴィ並に速いけど、王様達はウリエルのこと知らないし」

「ウリエルは中に一緒に来てもらった方がメリットが大きいのも事実」

「キリエのオルタだっけ?アレをこんな所で使うのもバカバカしいしね。そもそもそんなにオルタも持たないでしょ?レヴィのスプライトは素で速いから燃費の問題もないし」

「という訳です。さ、行きましょう」

 

私達は踵を返して渓谷の奥へ。天界の入口たる結界を抜け、その中へ。そして渓谷を抜けると………

 

「………何ですか、これは!?」

 

そこに見えた光景、それは広がる広大な平野と遠くに見える王都と思われる巨大な都市。それはキリエの事前調査通り。1つ違うのはそこにいる思念体。キリエの調査では王都周辺のみでしたが、今見えるのは私達のいる渓谷出口近辺全て思念体で覆われていて、恐らく王都までこれは続いています。

そして当然の如く、私達が姿を見せたことで近くにいた思念体から飛び掛ってきます。私達はそれらを殴り飛ばしたり撃ち抜いたり斬ったりで対応しますが、キリがありません。

 

「そりゃあ………こうなる、わよね」

「ある意味想定通り。悪い意味、だけど」

 

キリエを突入させた時点で私達が嗅ぎ回っていることは敵にバレるので、こうなることは想定していました。なんて言ってもこの付近にある天界の入口はここだけなんですから。

とは言え、この数は流石に想定外。ここまで増殖させてくるとは………下手に空を行けばこれら全てからの攻撃を受けてしまいますし。

 

「王都の門はまっすぐ突っ切ったところよ。何とかそこまで行ければ………」

「空は集中砲火を受ける。なら、地上を突っ切るしかない。刹那」

「………わかりました。1段階だけ許可します」

「ありがと。エグザミア、リミットリリースレベル1。魄翼展開。みんな、私の後ろに」

 

ユーキの力はまだ温存すべき、私の中にそれが浮かびました。が、ユーキの真剣な眼差しを受けて1段階のみ承認。正直、1段階だけでも出力はかなり高いので大丈夫だとは思いますが。

エグザミアのリミットを1段階外したユーキは身体の左右に赤黒い霏を展開、それは炎のように燃え広がりながら私達を包み、鏃のような形を成していきました。

 

「グリムゾンダイブっ!」

 

そして目の前の思念体の群れに突っ込む形で突撃。立ち塞がる思念体を次々と轢き倒し、突破していきます。

王都の門まであと少しという所で、ユーキは鏃から飛び出し、こちらに飛びかかってきた思念体へ右手を突っ込み、それの魔力を取り込みます。

 

「展開!ブラッドフレイムソードっ!エンシェントマトリクス!!」

 

そしてその取り込んだ魔力を赤黒い巨大な剣として顕現させ、近くの思念体を斬ってから門へ向けて投げ飛ばしました。門に直撃したその剣は大きな爆発を起こし、更にそこへ私達を纏った鏃も突っ込む形で突撃しました。門に直撃する直前に離脱した私達は門の前に着地、ユーキもすぐ側に着地しました。

爆発による砂煙が晴れると、そこにあったのはほとんど傷の付いていない王都の門。

 

「なっ!?」

 

まさかリミットを1段階しか外していないとは言え、ユーキのマトリクスの火力でダメージがほとんど通らないのは予想外でした。

私達がそれに驚いているあいだも後ろからは先程突破してきた思念体が次々と飛び掛ってきて………ユーキとキリエ、ウリエルがそれの迎撃をしています。

門を開けるのは恐らく不可能なので破壊するしかないのですが、ここで時間を使うのもよろしくありません。

 

「一撃なら………なんとか行けます」

「王都の門の強度は私がよく知ってる。ちょっとやそっと外から攻撃したくらいじゃ壊れないわよ!?」

「外から、ですよね。ならば、答えは1つ」

「ぇ?」

()()()()破壊します」

 

確かにエンシェントマトリクスは高火力ですが、表面上のダメージに過ぎません。それで破壊できないのはここ出身のウリエルが一番よく知っています。もちろん、マトリクスで人が通れる穴でも空いてくれれば御の字でしたが、そうは問屋が卸さないらしく。外からが無理なら内側から、それも特大火力を内側からぶち込む必要がありそうです。

 

「そんなことどうやって………」

「すぅ………鏡花水月っ!」

 

私は反論しようとするウリエルを無視して覇王流の構えを取ります。そして右腕に魔力を集中。以前使った時の後遺症は残っていますが、一撃くらいなら耐えられるでしょう。

 

「爆砕断空拳………3連っ!!」

 

私は鏡花水月を乗せた3連の断空拳を門のど真ん中へ打ち込み、今度こそ人が通れる穴を開けることに成功しました。

 

「うっそぉ………」

 

それを見ていたウリエルはポカーンと半分放心状態。ですが、キリエに連れられてすぐに中へ。

しかし、ユーキだけ王都に入って来る様子がなく、迎撃を続けていました。

 

「ユーキも!早く!」

「私も中に入ったら、この思念体も追ってくる。闇と戦うのに挟み撃ちにされるのは良くない。だから私がここでこれを食い止める」

「けど、この数相手じゃ!」

「無理でも、誰かがやらなきゃダメなの。でも、キリエもウリエルも刹那もこの大多数相手にするのは不得手。私ならむしろ得意。だから、先に行って」

 

純格闘技者の私や剣士のウリエル、キリエにしてもこの数相手にするのは手に余るでしょう。確かにユーキの言うことは理にかなっていて正しいですが、如何せん数が数。数万近くいる思念体を1人で食い止めるのは無茶がすぎます。

が、ここでこれ以上戦力を割くわけにいかないのも事実で………

 

「ユーキ、無理しないでね」

「後で合流、するからね!」

「もちろん」

 

ウリエルもキリエも内心では納得していないでしょう。しかし、こうするしかないともわかっている様で、無理矢理笑顔を作って先へと駆け出しました。

 

「刹那も、行って」

「………私に承認権限のある封印解除、全て外します。ここは任せます」

 

私もユーキに掛けた封印を全て承認し、奥へと駆け出しました。これでユーキは自分の意思で半分までなら封印を外すことができるように。これなら、この数が相手でも何とかしてくれる可能性があると信じて………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side ユーキ

 

「………刹那」

 

私はエルトリアに来てからずっと刹那と一緒にいた。もちろん私自身生まれて間も無いこともあって、刹那が私の世話係という立ち位置だったこともあるけど、何故か私にとって刹那の側は落ち着いた。ユーリがディアーチェのそばに居たがる様に、私も刹那の側にずっといた。

これが恋愛感情で好きってことなのか、それは私にはわからない(そもそも恋愛感情がどういうものかよく知らない)。もちろん他のみんなの事も大切だし、離れるのはイヤ。エルトリアも大切な私の居場所。それを奪われるのはもっとイヤ。なら、私はこの身を盾にしてでもそれを護る。それがみんなの為………ううん、違うな。刹那の為なんだ。

 

「リミットリリース………レベル2っ!」

 

私は更に封印を解除、押し寄せてくる思念体へとキリのない攻撃を開始していった。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

───side ユーリ

 

ユーキや刹那達が何も無い場所の調査に出てから今日で2日目です。予定ではそろそろ着いた頃でしょうか?未知の領域なだけに心配は着きません。

そんな私は今はシュテルの手伝いで水循環システムの開発中………ではなく、ディアーチェの手伝いで夕ご飯の支度をしています。丁度その時でした。

 

「っ!?」

 

私自身に起きた大きな違和感………そう、例えるなら今まで鎖で縛られていた物が解き放たれたような。

………まさか!?

 

「ん?ユーリよ、どうかしたか?」

「………」

 

突然動きを止めた私をディアーチェ隣で仕込みを進めているディアーチェが心配してくれます。

 

「ユーリ?ユーリ!?」

「ディアーチェ………」

 

震え上がって反応を見せない私。ディアーチェが肩を揺すったことでやっと我に返って、怯えるような目でディアーチェの方へ向きました。

 

「エグザミアの封印………半分、外れました」

「なっ!?」

 

私のこの一言、それだけでディアーチェはすべてを察しました。封印の解除の権限があるのはディアーチェと刹那。私の横で夕ご飯の支度をしていたディアーチェが外すことはまず有り得ないので、外したのは確実に刹那。

こういうことは特に慎重な刹那がこれ程の決断をしたということは、それだけ自体が切迫しているということ。

 

「こうしてはおれん!我らも行くぞ!」

 

コンロの火を止め、エプロンを脱ぎ捨ててからディアーチェは外へ。私もエプロンを脱いでから地下へ向かいました。

その後、地下で研究を進めていたシュテルと自身の部屋にいたリインフォース、アミタ、イリスと私達は家の外に集まりました。

 

「先程、ユーリに掛けてあるエグザミアの封印が半分解除された。まず間違いなく、外したのは刹那だ。つまり、それだけ向こうの自体は良くない。緊急を要すると言っても良いであろうな。我らも援護に向かおうと思うが、異論はないか!」

 

みんなディアーチェの言葉で驚いている様ですが、異論は出てきませんでした。

すぐに私達は行動を開始。アミタとリインフォースは車庫へ向かい、バイクを出しました。アミタは自前のものですが、リインフォースはキリエのそれを。すぐに私とディアーチェはアミタ、リインフォースの後ろに乗り、バイクを発車。シュテルは一足先に北へ向けて飛び立っていたので、それを追い掛けました。ちなみにイリスはもしもの時のために居残りです。

 

「みんな………無事でいてくださいっ!」

 

私は気を紛らわす為、リインフォースに捕まる手に少しだけ力を入れました。




かれこれ2週間かかりましたが、やっと投稿できました。冒頭にも書きましたが、遅れてしまい、すみませんでした。

ちなみにユーキ(ユーリ)の封印解除時の出力は大体ですが、半分外した段階でGoDでアミタが自爆特攻仕掛けたあの辺くらいと思っていただければ。全部外したら当然最終決戦以上になります。あの時にはワクチン入ってましたし。

これから最終決戦が始まってきます!最終、と言っても戦いはこれ以外はVSウリエルしか描写してませんが………

では、感想などあればよろしくお願いします!


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第36話 堕天と深遠

どもども!ルイスです。

ISABが正式リリース!βで貯めた石で☆5シャル引いてウハウハしてます。ちなみに交換でもらったのは☆5セッシー。シャルのグレースケール強くない?とか思う今日この頃。あとのほほんさん可愛い(☆5シーンのデートで卒倒出来る)
あとβテストといえばなんと言ってもモンハンワールドっ!開始早々にログインして即興奮しっぱなしでした!発売が楽しみだァ

とまぁ、これは置いておいて本編いきまーす


「にしても広いわねぇ。その上入り組んでて迷いそうよ」

 

王都へ突入し、奥へ進む私達一行。イメージでは門から奥の祭壇のような一際目立つ建物(とりあえず天守閣と呼ぶことに)までメインストリートが一本通っていると思っていたのですが、意外と中は入り組んでいて、ウリエルがいなければ迷っていたところです。空から行くか屋根伝いなら問題ないんですけど、王都内は飛べないように特別な結界のようなもので包んでいるのだとか。

ちなみに、ここは王都と呼称してますが、ウリエル曰く王様がいるわけでもなく、とりあえずそう呼んでいるだけだとか。

ちなみにウリエルの話だと侵食された聖杯があるのは天守閣頂上、そこから繋がった裏にある岩山の頂上の祭壇とのこと。

 

「大数百年前までは隔離結界もなかったみたいだから、その時に賊のようなのがいて、当時とった対策の名残ね。私達天使は絶対数が少ないから王都防衛に数を割けないし」

「数が多ければ防衛に戦力を割けますからね。私の先祖が生きていた古代ベルカの都市は大抵それでした」

 

そんなことを話しながら右へ左へとしばらく進むと門から見えていた天守閣へ着きました。

 

「………当然といえば当然ですが、誰もいませんでしたね」

「そうねぇ。外はあんなに思念体がいたのに中はもぬけの殻。誘い込まれてるって思いたくなるわよ」

「実際そうなんでしょ?これが罠だってなら乗ってやるくらいしかどうせできないんだしね」

 

外にいた無数の思念体、あれを見たあとなので内部がこんなに静かなのは不自然で。目的の聖杯は天守閣の最上階にあるので、どの道ここには来ないといけないことを考えたら逆に好都合ではあるんですけどね。

 

「中は………とりあえず、ロビーは適性反応は無さそうです」

 

中の様子を簡単に探ってから扉を開けて中へ侵入。私達は奥にある階段へ向かいました。

 

「刹那、ウリエル。先行ってて」

「どうかした?」

「少し野暮用を、ね」

 

しかし、階段の手前でキリエが立ち止まりました。適性反応はありませんでしたが、何かに見られている気配はしていたので、その事を言ってるのでしょう。

 

「わかりました。気をつけて」

「出来ることなら、殺さないでね」

 

私とウリエルはそこにキリエを残し、上へと向かいました。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side キリエ

 

「はぁー………つくづく私も貧乏くじ引くの好きよね」

 

刹那とウリエルが上のフロアへと消えてから私はヴァリアントザッパーの銃を装備しつつそう漏らす。たぶん刹那達も気付いてると思うけど、中に入った時から感じていたこっちを見てる刺すような視線。思念体とも違う、確かな意思を感じるそれをここで食い止めないと後が危ない、そう思って私はここに残ることを決意したの。

 

「いるんでしょー?私達を見てる人………ううん、天使かな」

 

私はその視線の主に呼び掛けてみる。それから少し待ったけど、それは出て来なくて………まぁ、当然よね。

 

「そうねぇ………例えば、そことか!」

 

私は壁の高いところに飾られているステンドグラスの影へエネルギー弾で銃撃。それによって発生した煙が晴れるとそこには紫に近いような色をした半透明の円形の壁。

 

「随分と荒っぽい………出会い頭に銃撃とか正気の沙汰じゃないよ?」

 

その半透明の壁の向こうから出てきたのは水色の髪に濃い紫のドレスのような服を着て片手に壺を抱えた女の人。その人自身も服と同じような色のオーラのようなものを纏っていて、背中には黄色い3対の黄色い羽根と頭の上に金の光の輝きを思わせるような形の輪っか。

 

「私達の迎えにあんな数の思念体寄越したあなた達がそれを言う?」

「………それもそうね」

 

そう言う間にさっきの壁だったものはバラバラになって水玉のように、女の人の周りを漂い始める。あれって………水?

 

「それにしても、私の弾を水で防ぐって何なのよ」

「水って言っても、高濃度で圧縮してやればこれくらい簡単よ。それに、ね!」

 

唐突にその女の人は壺を持ってない手を横に振る。するとさっきの水玉がまるで鞭のように私に襲いかかってきた。私はそれを階段の踊り場までジャンプして回避。水が直撃したところにあった手摺は真っ二つ。

 

「うわぁお」

「癒しを司る水の天使ラファエル………私にはこれくらい簡単よ」

 

ラファエルと名乗った女の人は水玉の1つを剣のような形にして私に斬りかかってくる。私はそれをザッパーを変形させたフェンサーで受け止める。

 

「遠近両用って便利ね、それ」

「あんたの水も似たようなもんでしょ!」

 

私が力ずくでラファエルを振り払うと、離れ際に水弾を撃ってきて、それを回避。すると、その先でまた別の影が私の目の前に現れて、私のお腹に掌底。

 

「かはっ!?」

「雷撃」

「っ!あぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

ラファエルに気を取られすぎて気づけなかったそれの掌底をモロに受けて壁に激突。すかさずその影は私へ雷のようなものを落として攻撃。当然それも直撃。

 

「あら、ガブリエル。いたの?」

「最初からいたよ。出るつもりはなかったけど、この人強そうだったからラファエルだけだと手に余るかなって」

 

ガブリエルと呼ばれたそれはクルクルとバック宙でラファエルの側に着地。見ると、黒い色をした郵便局員と言われれば納得してしまうような装飾の服と帽子、カバン。背中には白い3対の羽根、頭の上は金の輪っか(ラファエルやウリエルより小さめ)。

 

「2対1………!?」

 

私は痺れる体を無理矢理動かして立ち上がり、ザッパーとフェンサーを構える。

敵は2人の天使、しかもウリエルと同格の高ランク天使。歩が悪い所の話じゃないわよ、これ。

戦力ってのは互いの実力が拮抗していると仮定した場合は戦力比は数の2乗に比例する………私がこの2人に拮抗出来るかはわからないけど、たとえ出来たとしても戦力比は4対1………かなりキツい。けど、それでも出来ないことはない!

 

「やってやろうじゃないっ!」

 

それから2対1の戦闘が始まった。飛んでくる水弾、水の鞭の中距離攻撃、その隙に近接攻撃を仕掛けてくるガブリエル。足を止めたら雷撃を食らうことになるから一瞬たりとも気が抜けない。私は回避の合間で銃撃し、反撃。けど、やっぱり数の多い向こうに歩があるから牽制以上の効果はないし、かと言ってこちらから接近戦を仕掛ける余裕はない。

 

「攻めきれ、無い………っ!?」

 

空中で水弾を避けて着地したちょうどその時、動きを読まれてたのか、着地した瞬間には目の前にガブリエルが。その右手はバチバチと帯電していて、それは私の鳩尾へと強烈な一撃を叩き込んできました。もちろん私は着地した瞬間で対応ができず、またもやモロに直撃。

 

「がっ……!」

 

刹那の断空拳くらいはあるんじゃないかって思わせられるその一撃で私はものすごい勢いで吹き飛ばされ、壁に大穴を開けて外へ。そのまま建物を3つ4つ貫いてから広場の噴水に突っ込む形でやっと停止。

 

「がふっ………」

 

噴水の水でびしょ濡れになりながら、私は口から血を吐き出す。多分肋も何本かやられたかな。

 

「トドメ」

「っ………!?」

 

そこで私が見たのはさっき私が開けた大穴のところで、持っていたツボを前に翳して水を溜めているラファエル。その次の瞬間、そこから先程までの水弾とは比べ物にならない水流を撃ち出してきて………まるでなのはちゃんの砲撃みたいな………

 

「ぁはは………ここまで、みたい?」

 

私はそれを避けられないと悟って目を閉じる。そして、自らの最期をただ、待った。

 

「諦めるのは、まだ早いわ」

 

その時、ふと声が聞こえ、目を開くと先程の砲撃は紫の障壁で防がれていた。けど、この障壁は私達の使うものとは別のもので………私は先程の声が聞こえた方向、後ろを振り向いた。そこにいたのは紺のロングコートを着た金髪の女性、コートの下(前を留めてない)には大きな胸を強調するかのようなデザインのスカートと一体になった白い服。頭には白いフードのような物を被っている。一番特徴的なのは背中の黒い3対の翼と頭にある触覚のような紫のモヤ。

 

「………えぇと………ドチラサマデスカ?」

「私?私、ルシファー。そうねぇ、ウリエルの友達って言われればわかるかしら」

「ウリエルの………」

「そ。ずーっと外の世界で暮らしてたんだけど、珍しくウリエルから連絡寄越してくるから。助けてって」

 

いつの間に連絡したんだろう?私達みたいに念話も出来るのかな?

 

「そんなことはどうでもいい。あなた「キリエよ」………キリエ、回復にどれくらいかかる?」

「………1分。無理矢理回復させてそれくらい」

「40秒で回復させて」

 

はぁ!?と反論を入れようとする間もなく例の2人に飛び込んでいくルシファー。味方っぽいけど………無茶振りが過ぎない?

 

「はは………無茶苦茶言うのね、あの人」

 

私は持ってきていたナノマシンの注射器を3本取り出………あれ?2本しか………まさか!?

 

「刹那………あなた………」

 

刹那、きっと私以上の無茶をやろうとしてる………なら、私もやってやらなきゃね

 

「っ!」

 

私は手に持った注射器を2本ともお腹に突き刺してナノマシンを注入。空になるとそれをすぐ抜いて投げ捨てる。

 

「………システム『 オルタ』ヒーリングバースト!!」

 

少し前までは加速能力向上くらいしか性能がなかった(それでも効果は大きすぎた)けど、あの後システムを改良したシステムオルタ。今ではアクセラレイター同様にナノマシンの活性化を行うことが可能になってるし、効果時間も長くなってる。最も、大元がオルタだからお姉ちゃんのアクセラレイターと比べたら出力はかなり大きくなっている。加速能力以外にも色々出来る。

今私が使ったオルタはその中でも回復能力向上。ルシファーの強さがどれくらいなのかわからないけど、あの2人相手がそう長く持つとは思えない。言われた40秒、フルに使ってオルタで回復する。

 

「ファイネストカノンっ!」

 

回復が終わって、システムオルタを解除した私はお姉ちゃんからデータを借りてきたファイネストカノンを近くに落ちてた瓦礫から生成、ラファエルへ向けてグレネード弾を一撃撃ち込んでからルシファーの方へ走る。

 

「遅いぞ、5秒遅刻だ」

「無茶振りしたんだからそれくらい大目に見なさい」

「ふん。足引っ張らないでね」

「あんたも、ね!」

 

これで2対2、私達の戦いはここからが本番よ!

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───天守閣奥、祭壇

 

「がっ………っ!」

「んんっ!………かはっ!」

 

私とウリエルは祭壇で敵と邂逅していました。その敵、それは

 

「ミカ………姉っ!」

「手も足も………出ないとはっ!」

 

深遠なる闇に侵食された天使長ミカエル、それを相手に私とウリエル2人掛かりで手も足も出ず、地面に倒れ込んでいました。

でも、負けるわけには行かない。私は壁にもたれかかりながら、ウリエルは自身の剣を衝立にして立ち上がりました。

 

「強い相手ほど燃える………ですよね、ウリエル」

「私、刹那と違って競技者じゃないんだけど………でも、それわかるわよ。私だって、相手がミカ姉でも負けっぱなしは趣味じゃない!」

 

無理矢理自らを奮い立たせて、天使長ミカエルに向けて拳を(ウリエルは2振りの剣を)構えました。




どうもどうも、戦闘シーン長めでお送りしています。

この辺りからエルトリア編もクライマックス、あまり長くはなかったですが、もうすぐでオリジナル回が終わります!

ちなみに今回新たにラファエル、ガブリエル、ルシファーが出ましたが、それぞれの見た目は相の変わらずモンストのそれです。ルシファーは真正面からだけでよくわからない部分もあったんで、若干違うかもしれませんが。

では、感想などあればよろしくお願いします!


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第37話 切り札

どもども、最近FFに復帰したルイスです。

まだ予定ですけど、恐らくこれと次の話でエルトリアは終わるかなって思います。結構駆け足でグダグダしてた感じがしますが、そこは生暖かい目で見てくれれば(

ではどうぞー


「がぁぁっ!」

「刹那!っぁぁ!?」

 

辛うじて立ち上がり、天使長ミカエルとの戦闘を再開した私達。しかし、私が踏み込もうとした瞬間にはもうミカエルは目の前まで迫っていて、ミカエルが左右に展開している拳型の浮遊武装の一撃が私を襲い、後ろの壁に大穴を開けて祭壇の外へ。祭壇の外は岩山の頂上とは言えかなり広く、そこには中央に参道が1本通っていて、その周りには石を積んだ柱が無数に建っています。私はそのうちの1つに激突。ウリエルも私に気を取られた瞬間にミカエルの拳で私の近くまで飛ばされてきました。

深遠とやった時もそうでしたが、憑依とはいえ完全な肉体を手に入れたことで(しかも元々魔力の親和性の高い天使)以前戦った時より厄介になっています。以前は放出する魔力でブーストをかけて押してくる感じでしたが、今は憑依元が元々戦闘能力が高いので、出力や索敵に魔力を割けるというわけで。

 

「覚悟はしてましたが………やはり出し惜しみしている場合では………しかし………」

 

明鏡止水。深遠との戦闘で私が目覚めた力。反応速度を飛躍的に上昇させるそれは後遺症として今でも私の体を蝕んでいます。もしまた使えば………短時間ならまだしも、ミカエル相手に短期決戦が出来るとは到底思わないので、正直私が私であることを維持できる自信すらありません。

 

「刹那。提案がある、んだけど」

 

痛む身を起こしたところで、近くにいたウリエルが私の元へ寄ってきました。

 

「しばらくミカ姉を1人で抑えられる?」

「………具体的には?」

「最短で数分。ただ、今までやったことない出力出すからもっとかかるかも」

 

あのミカエルを私1人で、ですか。

 

「もし私がやられたら後がなくなりますよ?」

「その時はその時。今はこれに賭けるしかないと思う。でないとミカ姉は………」

 

なるほど、要はミカエルを倒す為の切り札を使う、というわけですか。しかし、私達2人で手も足も出なかったミカエルを私1人で抑える。正直かなり厳しいというのが結論。もちろん、私がやられればウリエルも切り札を使うことが出来ず、仲間もみんなやられてしまい、そうなったらエルトリアは破滅の未来しかなくなります。

逆に成功すれば聖杯の浄化が進む可能性も出てくるわけで。どの道このまま続けていても勝ち目はありません。なら、選択肢なんて1つしかないじゃないですか。

 

「わかりました。なら、ウリエルのことは私が命に代えても必ず守りきってみせます。ですから、あとの事は………頼みます」

「ぇ?それってどういう」

「行きますっ!」

 

私はウリエルの反論を待たずにミカエルへと突撃。

 

「明鏡止水、発動。刹那·ストラトス、目標を制圧します!」

 

私も切り札、明鏡止水を発動。反応速度を飛躍的に上昇させます。

 

「覇王断空拳っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side ウリエル

 

さっきの刹那の言葉、「命に代えても」と「後の事は頼みます」の2つ。前者はそれくらい力量に差がある強者との決戦とかでたまに聞く覚悟を決めた言葉。覚悟を決めた人ってのは本当に強い。そうでもしないと勝てない相手に勝つための覚悟だから。けど、後者。こんなこと普通は言うだろうか?いや、言わない。まるで本当に死ぬことが決まっているかのような言葉。

 

「刹那………」

 

私はさっきまでとは考えられない反応速度でミカ姉と一進一退の攻防を繰り広げる刹那を一瞥。刹那がそう覚悟を決めたのなら私のするべきことは1つだよね。

 

「刹那のこと、絶対に死なせない。だから、今は………!」

 

私は両手の剣を左右に広げて構え、地面に円を描く。するとその円は魔法陣となって光り輝き始める。

それを確認してから左足を後ろに下げ、左手の炎を模した剣『 獄』を後ろに、右手の剣『 天』を逆手に持ち替えて前に構え、魔力を集束。

 

「赤の他人であるはずの私達のために命を懸けて戦ってくれる人を………死なせてたまるもんか。例えミカ姉でも、それだけは絶対に許さない」

 

私は魔法陣の中心で2振りの剣を構えたまま腰を低く落とし、ゆっくりと魔力を集中させていった。

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柱と柱の間を縦横無尽に駆け回り、同じく柱の間を高速で飛び回るミカエルと接近して攻撃。離れる時はミカエルの銃による追討ちがあるので、それを旋衝破で軌道を変えて受け流す。受け止めて投げ返せればそれがベストなんですが、高速機動しながらだと明鏡止水を使った状態でもそれはほとんど無理で、軌道を逸らすので精一杯。そして弾幕を避けつつ再び接近して打撃、この繰り返しです。

私には覇王岩砕と空破断、斬空破しか中距離以遠に攻撃する手段がなく、それらはミカエルの銃ほど連射性も良くなく、対ミカエルのみを考えると牽制くらいにしか使えないのが辛いです。

ウリエルに中距離以遠のレンジ攻撃があるのかは見たことがないので知りませんが、ミカエルが強いという彼女の言葉は間違いがなく、明鏡止水状態の私と互角に張り合っている時点でそれは明らか。

逆に言えば明鏡止水を使わないと互角に張り合えない時点で私は不利な立場に置かれているということ。

 

「覇王岩砕っ!」

 

私は一度接近して打撃を加えてから距離を取る、幾度も繰り返したその応酬、その最中で距離を取る際に地面を思いっ切り蹴り、近くの石柱ごと大量の岩を浮かせ、それをミカエルへと飛ばします。

 

「旋風脚っ!」

 

ただ、それはもちろん牽制。先程も言ったようにミカエルには通用しないと分かっていますから。

私はそれを囮にして上から断空を込めた蹴りで強襲。

 

「見えてますよ?」

 

ミカエルは身体の左右に展開させた巨大な拳型装甲で私を弾き飛ばし、同時に魔力による衝撃波を周囲に放つ。それによって私の飛ばした岩をすべて吹き飛ばし、同時に銃へ魔力をチャージし、即座に私へ向けて発射。威力だけならなのはのエクセリオンバスターは軽く超えているであろうその砲撃。

私はそれを一緒に飛ばされていた岩を足場にしてジグザグの高速機動で惑わしつつ下へ回避。足場にした岩に魔力を付与させて身代わりにするのは忘れない。

 

「なら、これなら!爆砕断空拳…3連!!」

 

身代わりにした岩への着弾に気を取られている隙にミカエルの懐へ密着。3連の爆砕断空拳を放つ。ミカエルはそれを直撃、初撃から続く2回の衝撃も食らうが、それでもその場から1mほど後退した程度。むしろ問題は私の方で、そろそろ右腕の感覚が薄くなり始めてきて………そのせいで気付くのが一瞬遅れました。

 

「今こそ審判の時。悪しき者には聖なる鉄槌を」

「っ!?ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ミカエルが私の拳を食らいつつ魔力を高速集束。至近距離で集束砲撃を私は直撃。遥か後方へ吹き飛ばされました。

 

「さて………ん?」

 

ミカエルは私を倒したことで魔力集束を続けるウリエルへ向き直ります。が、そこで1つ異変に気付きます。

 

「っ………ロックバインド………足止め、成功です。準備は?」

「上等!」

 

ミカエルの足を膝下まで地面から励起した岩が固定、動けなくしていました。私がミカエルの集束砲撃を避けられないと悟った時にとった行動は反撃でも防御でもなく拘束。ウリエルの魔力集束がほとんど終わっていることは魔力反応を見て予め分かっていましたからね。

 

「刹那が捨て身でくれたチャンス………無駄にはしないよ!地獄を粛す神の炎(ブレイズ·オブ·ジャッジメント)!!」

 

ウリエルは魔力を集束した左手の剣『 獄』で高速の牙突。足を固定されて回避する術のないミカエルは真正面からそれを防御して受け止めます。が、ウリエルの突撃はそれでも勢いが止まらず、拘束の岩を砕いてまだまだ突撃。そのまま祭壇の祠を突き破って中へ。見ると、聖杯の真下でミカエルが倒れ、右手の剣『 天』を逆手で掲げるウリエルがそこにいました。

 

「闇は私が消し去るっ!神が定めし光の法(エンジェル·ハイロウ)!!」

 

そして振り上げた『 天』は膨大な光を纏い、まるで巨大な光剣のような形となり、聖杯を巻き込んでミカエルへと振り下ろされました。

 

「っ………はぁ…はぁ…」

 

その直後、纏っていた闇のオーラが消え去り、ダメージで気絶したミカエルの横にウリエルも倒れました。魔力を消耗しきって動けないだけだとわかっているので、心配はしていませんが。

しかし、今の技………実剣で斬ったにも関わらずミカエルは無傷で魔力ダメージと侵食されていた影響の精神的なダメージのみ。これは私の推測なんですが、ウリエルが2回目で使った技、エンジェル·ハイロウは恐らく()()()()()()()()()()()()()()()技なのでしょう。威力だけならなのは達のクアトロブレイカーも超えているかも知れません。流石破壊を司る天使と言ったところです。ミカエルも聖杯も闇の気配は消えて………っ!?

 

「ない………!?」

 

いや、正確にはミカエルと聖杯()()()消えています。が、この周囲には深遠なる闇の気配と反応がまだ残っていて………それはウリエルとミカエルの上空に集まだていき………

 

「ちっ………」

 

私は2人の元へ向かおうとしますが、先程のダメージで力が入らず、その場にコケてしまいました。

 

「こうなったら!」

 

私は懐から注射器を1つ取り出し、もう既に感覚の消えた右腕に突き立てて中身を注入。これは薬………ではなくキリエから1つだけ拝借したナノマシン。かなり分の悪すぎる賭けになるのてわ正直、これに頼りたくはありませんが、この際四の五の言ってられません。

 

「キリエのアレ、データだけでも取っておいて正解でした。こういう土壇場で役に立つのですから。システム『 オルタ』………バーストドライブ!」

 

キリエの切り札、システムオルタ。あれを魔力的に制御させて発動、注入したナノマシンを強制的に活性化。

 

「っ!?」

 

先程から無茶ばかりさせていた私の目から血の涙が流れて視界が赤く染まりますが、この際それはどうでもいい。

ウリエル達の近くに集まった闇は海鳴沖で戦った時の姿を形作り、先程のウリエルの攻撃が効いているのか覚束無い足取りでウリエルのそばまで行き、左手のパイルバンカーを振り上げました。気を失っているミカエルは当然として、魔力を使い切ったウリエルもそれから避ける術はなく………

 

「鏡花水月っ!!」

 

私は右足にを鏡花水月で強化し、オルタの加速度強化も併用しつつ地面を蹴って超加速。しかし、ここで誤算が1つ。私とウリエル達の間の距離は意外と遠く、ギリギリ間に合わない。

 

「空破断っ!」

 

私は空破断を放ち、それでウリエルとミカエルをその場から吹き飛ばしました。それによって深遠の一撃から逃がします。

が、ここで2つ目の誤算。ウリエルとミカエルを助けることに集中しすぎていたのと血の涙のせいで私が気付けなかった………深遠が私が動き始めたあたりから狙いを私に定めていたこと。そう、ウリエルとミカエルを囮にして私を誘き寄せた、そういうことです。当然振り上げたパイルバンカーは私の方へ向けられていて………明鏡止水で強化された反射速度で見る光景、私に振り下ろされるパイルバンカー。それの回避は間に合わない、と告げていて………

 

「鏡花水月………爆砕断空拳·真打10連っ!!!」

 

なら迎え打つのみ。今私に打てる最大威力の一撃でそれに正面からぶつかりました。

パイルバンカーは私の右腕を砕き、私の一撃は深遠の左腕ごと吹き飛ばし………反動でお互い反対の壁へ吹き飛び激突。

 

「刹那ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ウリエルの絶叫と共に私の意識はそこで完全に途切れました。

 

「アリ……シア………すみません」

 

その時見た血で染まった光景、今にも崩れそうな祭壇と大粒の涙を流すウリエル。それが私が生涯見た最後の光となることを、まだ私は知りませんでした。




んーむ。やはり駆け足感が半端ない。で!す!が!次話でエルトリア編はキリをつけようとおもいます!要はエルトリア編エピローグですね。

その後はStS編。とは言ってもコミックの内容も触れていくのでアニメに追いつくのはもうすぐかかるかも?

かなりグダグダしたエルトリア編でしたが、感想などあればよろしくお願いします!


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第38話 光の先

どもども、ルイスです。

お年玉あげるのに銀行行き忘れてて新札にしたら手数料取られました!

アズレンで鉄血イベント始まりましたねー。初日にグラーフとアドミラル、フィーゼ引いてやりました!イベント海域の方もちまちま進行中。ティルピッツは取りたいなぁ。あと魚雷とかも欲しい!

ではどうぞ!


───4年後

 

side ウリエル

 

「ウリエルっ!もう出る時間よ!」

「あぁ!もう、待ってよミカ姉!」

「ガブリエルもラファエルももう外で待ってるのよー?」

 

部屋で髪型をセットする私をしつこく急かすミカ姉。それから数分してリボンを結びながら私は部屋から出る。

 

「あれ?あれ?」

 

でもリボンを結ぶ場所が頭の後ろな上に部屋から出たので鏡はなく急いでることもあってなかなか上手く結べない。

 

「ほら、貸して?やってあげるから」

「ぁ、ありがと」

 

そんな私を見かねたミカ姉が私からリボンを受け取って結ぶ。うん、やっぱりミカ姉がやると可愛い。

ミカ姉と一緒に外へ。外で待ってたラファ姉、ガブ姉とも合流して天界から出る。歩いたら時間かかるから渓谷を抜けたところで翼を出して飛翔。目指すはフローリアン牧場!

 

「あれからもう4年かぁ………」

 

早かったな、と思いを馳せながら私は飛んだ。

結局刹那が倒れたあの後、ディアーチェって名前の自称王様が私達の援護に来てくれて、私と刹那の最後の攻撃で弱りきっていた深遠なる闇?は完全に浄化された。王都前で戦っていたユーキのところにはリインフォースって人が助けに行ったんだって。

ガブ姉とラファ姉を同時に相手してたキリエのところは私が呼んだルシファーと後から来たアミタってキリエのお姉さん。そして私達のところにディアーチェとシュテル、ユーリ、リインフォースと代わってこっちに来たユーキって感じだったらしい。

 

聖杯が浄化されたことで天界は少しずつ元通りに回復。王都外へ逃げていた市民の人達も戻ってきて、2年くらいで聖杯が侵食される前の喧騒を取り戻した。

闇に犯されていたガブ姉やラファ姉はルシファーとアミタキリエ姉妹に修正されて闇を浄化。ミカ姉は知っての通り私の懇親の一撃で。

天界の回復はフローリアン牧場の人達も手伝ってくれた。自分達もエルトリアの復興で大変なのにね。今ではいい友達よ。

 

そうそう、フローリアン牧場と言えば、やっぱりエルトリアの復興。ここに関しては詳しいこと聞いたわけじゃないけど、刹那達の目論見通りエルトリア各地の死蝕と荒廃の原因は天界にある聖杯の侵食だったみたいで、聖杯を浄化したら少しずつ良くなった。とは言っても、4年経った今でもまだ荒野が広がってて、復興そのものはあまり進んでないっぽい。

でも、フローリアン牧場を中心にして緑が広がっていってるし、各地に水源と川も出来て(ラファ姉がお詫びって言ってめっちゃ協力した)、その周りにも少しずつ自然が復活していってるんだって。各地の魔獣も数が減ってて、たまに一緒に討伐に参加する私も最近は少し退屈でフローリアン牧場に目的もなく遊びに行ったりしてるくらい。

4年しか経ってないからエルトリアという星にとっては大きな変化ではまだないし、軌道上のコロニーにまだ人口の大多数が住んでるのも変わりない。けど、復興は着々と進んでるのは間違いない。

グランツ博士曰くあと10年20年とかければ宇宙に移住した人達も帰って来れるだろうって言ってた。

 

ちなみに病気で寝込んでたグランツ博士もエルトリア回復と合わせて少しずつ回復。ラファ姉の介護と治療(これもお詫びらしい)の甲斐もあって2年くらい前からもう車椅子要らずってとこまで回復。今ではもう死ぬ寸前まで弱ってたって言うのが嘘かというくらい元気。アミタの元気なとこってお父さん譲りなんだね。

 

「ほら、見えてきましたよ」

「幸せのお知らせに参りましたぁ〜」

 

ラファ姉の一言と共にガブ姉が牧場の建物の前に着地。中からアミタとキリエが出てきて迎えてくれた。

 

「ぁ!みなさん、お待ちしてました!」

「遅いわよぉー。みんなもう行ってるわよ?」

「すみません。ウリエルが珍しくオシャレ始めて部屋からなかなかでてこなくって」

「み、ミカ姉っ!?」

 

珍しくって言わなくてもいいじゃん………いや、事実だけどさ?普段鎧とか制服くらいしか着てないし。

まさかのミカ姉の暴露。恥ずかしい………きっと顔、赤くなってる。

 

「ほら、そんなことより、早く行かないと先に行ってる皆が待ちくたびれてしまいますよ?」

「そんなこと!?」

 

さっきのアミタ達の言葉からも分かる通り、今ここにはアミタとキリエしかいない。いや、普段はちゃんと皆いるんだよ?今日はとある事情で皆出掛けてるの。私達が今日来たのも同じ理由。

私達はアミタとキリエの車に分かれて乗り、目的地の遺跡へ。

数分程車を走らせて着いた遺跡にはもうディアーチェやグランツ博士達が来ていて。私はその人達を見渡すけど、目当ての人は見当たりません。

 

「うん?あぁ、彼なら多分この裏よ」

「っ!ありがとう!」

 

そんな私を見てキリエから一言。言われた通りに遺跡の裏、崖の方へ向かう。そこには白と黄緑の戦闘服に身を包んだ彼、刹那が崖の淵に座っていました。

 

「刹那っ!」

「ウリエル、ですか。そろそろ来る頃だろうと思ってました」

 

私が声をかけると刹那はいつも通りに返事を返してくれて。けど、こっちを見てくれることはなく………

そして風に揺れる戦闘服の右の袖………それを見てるといたたまれない気持ちになってきます。

 

あの戦闘で倒れ、その後ケリを付けてからすぐ軌道上の病院まで連れていかれた刹那。その参上は散々なもので、特に右腕は肩口から先がほぼペシャンコ。なんとか原型を留めている、といった有様。もちろん治療する術はなく、右腕は切断。今ではアミタ達がフォーミュラの技術を駆使して作った義手(フォーミュラ·アーム)を付けて必要な時にそれを展開する形に。今は腕として展開してないみたい。ちなみにそのコアにはイリスさんが起用(むしろ自分からやるって言い出したらしい)

明鏡止水?って強化魔法で酷使した目、それはもう完全に使い物にならなくなっていて、その上視神経は完全に焼ききれて光を見ることはもう出来なくなってしまった。主治医や治癒に長けたラファ姉すら、その回復を諦めざるを得ない酷さだったらしい。

さらにリンカーコアの方も若干ながら損傷を受けていたらしく、今まで使ってた魔法のうちいくつかは使えなくなってしまった。その代表が飛行魔法。つまり、前みたいにもう飛べないってこと。まぁ、刹那がよくやってた魔法陣の上に立って空中機動ってのは問題ないみたいだけど。

もちろんそんな惨状がすぐ治る訳もなく、あれから次に目を覚ますまで1ヶ月。それまで何度生死の境を彷徨って主治医とラファ姉がてんやわんやひたか。いざ目を覚ましたと思ったら完全に光を失ったことでパニックに。まぁ、当然だよね。気を失って、目が覚めたのに何も見えない、真っ暗闇なんだもん。

そのショックと怪我の影響でさらに2年間はまともに起き上がることさえできず、私は毎日のように病院へ顔を出してその手を握ってた。私を庇ってこんなことになってしまったせめてもの償い、そう思った。

やっと起き上がれるようになってからはリハビリの毎日。2年も寝たきりだったから体力も筋力もガタ落ち。最近なんとか元に戻せたって言ってた。失った視力は周囲に魔力を放ってそれで感知する方法で周りを視てるらしい。コウモリの超音波と同じような原理なんだって。それと音、匂い、熱なんかを感じて周囲の情報を得ているみたい。刹那本人も言ってたけど、視力失った影響で他の感覚が研ぎ澄まされたらしい。開き直った、ともとれるけどね。

 

「体の方は………大丈夫?」

「お陰様で、今ではほとんど元通りです。ナノマシンやフォーミュラの影響で魔力運用がガラッと代わったくらいです」

「ごめんなさ「ダメですよ、そこから先は」ぇ?」

 

私のせいでそうなったとまた考えてしまって出てきた謝罪の言葉。けど、それは最後まで言わせてもらえなくって。

 

「それはもう何度も聞きました。それにウリエルとミカエルを救えたんです。むしろ私の右腕と目だけですんで良かったです」

「でも………」

「それに、私がパニックになった時に何度も私の手を握っててくれました。それだけで、私はかなり救われているんです」

「ぅん……」

「………ほら、行きますよ。そろそろ転移の準備も出来る頃です」

 

私は刹那に手を引かれて遺跡の中へ。

今日ここに来た目的、それは()()()()()。一応の回復はしたものの、まだ全快とは呼べず、エルトリアではこれが限界だろうと刹那の故郷への帰還が決まった。

そこでキリエやアミタが使った遺跡へ集合、というわけ。最も、遺跡に蓄えてたエネルギーはアミタとキリエの往復の転移で尽きていて使い物にならない。そこで出てきたのがガブ姉。神の伝言を伝える役目、つまり何かを届ける、伝えることに特化した能力で1回だけなら転移させられるだろう、とのこと。この時のデータをもとにして安定したエルトリアとミッド(や地球)間転移を可能にするんだってガブ姉やグランツ博士は燃えてたっけ。

 

「ぁ、刹那〜。ウリエル〜。転移の用意、いつでもいいよ!」

「ガブリエル、ありがとうございます」

 

遺跡板を操作していたガブ姉が私達に声をかけて来ると同時に玉座の魔法陣が光り輝き出す。そこへ刹那は立ち、一緒に行く予定になっていたユーキがその隣へ。私はミカ姉達とその見送りって言うのが今日の目的。

 

「………エネルギーの方は私が持つからいいとして、術式はいつでも発動準備オッケー。刹那〜、転移の出口の場所は?」

「イメージ出来てますよ。地球やミッドに出ると管理局が動きかねないので適当な管理外世界へ出る予定です」

「おっけぇーい。じゃあ術式起動するね!」

 

遺跡板のコンソールを素早く操作するガブ姉。それに従って魔法陣の光はより強く輝いていき、刹那の姿もほとんど見えなくなっていき………

 

「刹那………」

 

恐らくもう会えなくなる人が見えなくなるまで私はその姿を見つめ続けた。

 

「ウリエル、行きたいなら行っていいのですよ」

「ぇ?」

 

そんな時、私の肩に手が置かれたかと思うと隣のミカ姉の声。肩に置かれた手はミカ姉。

 

「1番嘘を吐いたらいけないのは自分に対してです。抑え込むくらいなら、心に従いなさい。彼ならあなたを安心して任せられますし」

「ミカ姉………」

 

振り返るとラファ姉もニッコリとした笑顔を向けてくれて、グランツ一家のみんなも、まるで私がこうなるのを分かってたように行ってこい、とか刹那をよろしく、とか声を掛けてくれてて。

 

「なに、エルトリアの復興は我らとミカエルらに任せればよい。うぬのやるべき事はエルトリアではなく、向こうにある。そうであろう?」

「………うん!」

 

最後にディアーチェの応援の言葉を貰ってから私は魔法陣の方へ走り出す。

 

「ミカ姉!ラファ姉!ガブ姉!グランツのみなさん!行ってきます!!」

 

私が光の中へ飛び込んだ直後。その光は天へと上り、消えていきました。

光の向こうではこっちも私が来るって分かってたように、刹那は私を抱きしめて受け入れてくれて。

 

「刹那、ユーキ。これからもよろしく!!」

 

───side out




年を越える前に投稿できてよかった!去年は書き納めのつもりが書き初めになりましたからね!

ではもう少ししかありませんが、みなさん、良いお年を!


…………ぁ、感想や評価あればよろしくです!


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StS編
人物紹介


あけましておめでとうございます。

今年最初の書き初めになりますが、エルトリア編が完結してキリがいいのでここで一度オリキャラ設定を書こうと思います。
基本はエルトリア編終了時点での設定ですが、1部少し先に描写することも書いてます。多くはないですが。
あと、原作に出るキャラは書きません。


【名前】刹那·ストラトス(ハルオーネ·S·S·イングヴァルト)

【年齢】18歳

【魔導士ランク】A

【魔力光】翠

【容姿】右瞳が蒼、左瞳が紫のオッドアイだが、目が見えない為ハイライトは消えている。髪型は肩より少ししたまで伸びた髪を首後ろで纏めている(イメージ:FGOの新宿アルトリアオルタ(私服)やISのシャルロット)

身長はクロノと同じくらい。スラッとしているが、筋肉量はザフィーラ程目立っていないがそこそこ。右腕がない。

【デバイス】ヴァリアントアーム(AIはイリス)

【魔法形態】古代ベルカ式及びフォーミュラ

【稀少技能】ソウルコア

【使用魔法】覇王流改めて神風流各種

a.神風流裂空拳 断空拳と全く同じ

b.その他神風流各種 基本は前と同じ名前(蹴りの旋風脚、肘打ちの崩雷、ラリアットの爆砕棍等)

c.空破断 お馴染みのアレ

d.断絶衝 空破断を正面広範囲に展開する衝撃波の盾

e.斬空破 蹴りで出す空破断。空破断を衝撃波の打撃とするならこれは衝撃波の斬撃(例えるならト○コのレッグナイフ)

f.覇王岩砕 震脚で浮かせた岩に魔力を付与して飛ばす。途中で爆破して目眩しなどの使い道の他、壁を作って盾にもできる

g.明鏡止水 魔力によって無理矢理不要な情報を選別、圧倒的に上昇させた神経伝達速度で反応する。今までは全て自身の脳だけで処理した為に(特に酷使していた)視神経が焼き切れて視力を失った。今はAIのイリスが情報処理を行っているのでそのデメリットは無くなったが、それでも負荷はかかる

h.鏡花水月 打撃をする時にどのような体勢からでも乗せられる力(体重、魔力、重力等)を余すこと無く乗せる(ジャブですら必殺の一撃に出来る)。放つ場所には相応の負荷がかかる

【備考】

クラウスの子孫でオッドアイも引き継いでいる。ただ、クラウスと違い丁寧語を主に喋り、一人称も私。

闇の書事件でははやてを助けたい一心でヴォルケンリッターに協力。最後には自らを犠牲にしてアルカンシェルを受けてエルトリアに飛ばされる。

余談だが、エルトリアで目が見えなくなったことで闇の書事件でアリシアを自身の目で見たのが生涯最後となる。

 

エルトリアでは復興をアミタ、キリエらと進める。その際天界のウリエルと出会い、エルトリアの死蝕の原因を突き止め、右腕と視力を犠牲にするも死蝕を食い止める。死蝕の原因が闇の書事件の際の敵、深遠なる闇だったこともあり、2年かけてその決着をつけたこととなる。

 

失った右腕はヴァリアントアームズの技術の応用で作ったヴァリアントアームによる義手。ただ、強度に難がある為覇王流改め神風流は右腕では使えない。それによる攻撃力減少を補う為にシュテルと同型のブラストクロウへ換装することも出来る。AIは遺跡板から引っ越したイリス。本人曰く砕け得ぬ闇事件で迷惑をかけたお詫びらしい。

 

見えなくなった視力は魔力を放出してその反応を見るいわゆるソナーによる探知を主にして補助で音、匂い、熱を感じて補っている。刹那本人曰く、目が見えなくなったことで他の感覚や第6感が研ぎ澄まされて、目が見えていた頃よりも良く見える、らしい。

天界での決戦でリンカーコアも損傷。飛行が出来なくなる。保有魔力も元々AA+相応あったが、A相当まで落ちる。

 

決戦でキリエからくすねたナノマシンを使った影響で魔力運用が変わり、フォーミュラも使うようになる。その影響で覇王流を神風流と改名。とは言え基本は同じで魔力運用が違うだけ。

 

稀少技能のソウルコアは対象の意識を取り込んだり、場合によっては肉体から魂を抜き取ることも可能。記憶を読んだりも出来る。ただ、デメリットとして燃費が悪すぎて、魔力が減った影響もあり滅多につかわない。魔導炉ヒュドラ暴走事故で死亡したアリシアの魂を抜き取って取り込んだのがこれ。

 

 

 

 

 

 

 

【名前】アリシア·テスタロッサ

【年齢】16歳

【魔導士ランク】S+→AA(リミッター)

【魔力光】水色

【容姿】innocentで出た大人版と髪型、BJ以外同じ。髪型はポニーテールに変えた。ジャケットも動きやすさ重視でフリフリと腰のリボンを撤去。代わりにリインフォースIIと同じようなデザインの腰マントを装備。妹のフェイトより1つ年上だが、背が低い(はやてより頭1つほど低い)

【デバイス】イクスペリオン(インテリジェントデバイス)

オリヴィエ(ユニゾンデバイス扱い)

【魔法形態】ミッド式及び古代ベルカ式

【使用魔法】

a.覇王流改め神風流各種 魔力運用が変わった訳では無いが刹那に合わせた

b.ブランニュースター 貫通性能のある魔力弾を連射

c.ブライトネスエンド 若干の衝撃波を伴う魔力付与斬撃

d.ライトニングバズーカ 砲撃。普段から使用する魔法では唯一の単発威力の高い魔法

e.ジェットホイール フルドライブ時のベリルスマッシャーを回転させ、環状に溜めた魔力を放つ

f.セイクリッドブレイカー お約束の集束砲撃

g.ソニックムーヴ フェイトのものと同じ

【備考】

本来は魔導炉ヒュドラ暴走事故の際に死亡している。

しかし、その際居合せた刹那に取り込まれて生き延びた。その後しばらくは魔力で実態を持たせていたが、闇の書事件にて闇の書内部より蘇ったオリヴィエによって受肉される(原理はフォーミュラのマテリアライズと同じ)

 

1つ年下の妹のフェイトより背が低く(3人で一番背の低いはやてより頭1つ程低い)為によく妹に間違われるがれっきとした姉。

 

なのはが撃墜された際にフェイトは2度執務官試験に落ちたが、アリシアは一発合格。曰く、フェイトみたいになのはの事が心配なのも理解できるし私もそうだけど、そのせいで試験に落ちたらなのはが悲しむし、きっと自分を責めるから、とのこと。

その後しばらくは東京臨時支局局長兼執務官クロノの補佐をしつつ実績を積む(よくクロノの許可を得てクロノの執務官としての仕事の代理もしていた)。捜査能力や戦闘能力等の才能が高く(本人は自覚なし)、それが三英雄の3人の目に留まり、特別執務官(通称特務官)に薦められる。クロノもそれを推薦し、只今それの絶賛勉強中。

ちなみに特務官とは執務官より1つランクの高い執務官。三英雄直属で捜査権等は基本的に好きにできる。補佐も管理局内外で好きに置くことも出来る。要は普通の執務官よりも強い権限を持った執務官が特務官で文字通り特別な執務官。

 

妹のフェイトはリンディの養子となり苗字にハラオウンが追加されたが、アリシアはそれを拒否(正確には養子になったが、ハラオウンを苗字に追加するのを拒否した)。「苗字が増えるとすれば、もう決めているものがある」とは本人談。ただ、立ち位置はほぼ養子になったのと同じで保護者はリンディ。

 

 

 

 

 

 

 

【名前】ユーキ·エーベルヴァイン

【年齢】15歳という設定だが、実年齢は不詳。生まれた時から数えるならエルトリア編終了時点では6歳。ユーリに合わせるなら………不詳

【魔導士ランク】不詳→A相当(多重の封印処理とリミッターによる)

【魔力光】赤黒

【容姿】GoDの暴走時のU-Dと同じ。ただ、リミッターを外さない限り頬の刺青は現れない

【デバイス】無し

【魔法形態】古代ベルカ式

【稀少技能】魄翼

【使用魔法】基本的にGoDやinnocentでユーリの使う攻撃系魔法と防御系魔法(出力はかなり抑えられているが)

【備考】

地球での砕け得ぬ闇事件の最後に暴走したU-Dことユーリから人格ごと分離される形で発現。性格は淡白だが、やや前のめり。エルトリア帰還後は基本的に刹那と行動を共にしている為、前のめりなのはその影響か?

 

ユーリが紫天の書を受け継ぎ、ユーキは魄翼を受け継いだ。その際お互い10段階のリミッターを掛けられていて刹那とディアーチェでそれの解除を半分ずつ許可できる。刹那帰還後はユーリはディアーチェとアミタに、ユーキは(しばらくの間は)刹那がその全権を持つ。余談だが、ユーリは魄翼を失う代わりに機翼(Reflectionでの魄翼)をヴァリアントアームズの応用で鋭意製作中。

 

 

 

 

 

 

 

 

【名前】ウリエル(·エーベルヴァイン)

【年齢】16歳(という設定)だが、実年齢は少なくとも100歳以上

【魔導師ランク】不詳→SS(封印処理)→A(リミッター)

【魔力光】金と赤(左右の剣で違う色)

【容姿】モンストの獄ウリエル。背はユーキより少し高い程度

【デバイス】天(右手で使う聖剣風の剣)、獄(左手で使う炎を模した剣)

【魔法形態】フォーミュラ(本来は存在しないが、ミッドで混乱を招く可能性がある為、フォーミュラですべて再現)

【稀少技能】エンジェライズ

【使用魔法】

基本は斬撃や炎を飛ばす(無名)

a.地獄を粛す神の炎(ブレイズ·オブ·ジャッジメント) 左の剣(獄)での強力な牙突。イメージはFGOアルテラのフォトン·レイの左手版

b.神が定めし光の法(エンジェル·ハイロウ) 右手の剣の光で自らが敵と認識した対象(実態の有無は問わない)を斬る。これを使う際のみ逆手持ちになる

【備考】

エルトリアの天界に住む天使の中でも高位の天使。破壊を司る名前の通りかなり強い。刹那曰く本気の勝負なら勝てるか怪しい。

 

刹那が右腕と視力を失ったのは自分のせいと責任を負い(刹那本人は否定)ミッドへの帰還に着いてくる………というのは建前でウリエルのことを一番よく知るミカエル曰く守ってもらった刹那に気があるから、とのこと。真偽は不明。

 

ミッドへ行くにあたって苗字がない(天使にその文化がない)のは不自然とのことでユーキの姉という設定にした。刹那の妹より髪の色的にその方が都合がいいから。

 

天界特有の多すぎる魔力を封印処理とリミッターで大幅に減らした。

 

普段は3対の翼と輪は隠し、本気を出す時のみそれを出す(稀少技能のエンジェライズ)。

 

 

 

 

 

 

 

 

【名前】加藤 紗綾(かとう さや)

【年齢】16歳

【容姿】ふわっとしたボブカットに淵の目立たないメガネ。イメージはアクセルワールドの若宮恵に(同作品の)黛拓武のメガネをかけた感じ。

【備考】

アリシアの同級生で親友。クラスの男子にいじめられていたのをアリシアに助けられたのをきっかけに仲良くなる。

 

闇の書事件の際にアリサ、すずかと一緒にアリシア達が魔法を行使するのを目撃。家族共々アリシアらからその説明を受けて魔法や次元世界の存在を知る。一方で本人は魔力は一切持っていない。

 

その後、今度は自分がアリシアを助けたいと局員となり、アリシアの補佐となる。ちなみにシャーリーの同期。親を説得して1年間海外留学という名目でミッドで学んだ際に出会い、仲良くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【名前】八雲 燕

【年齢】17歳(陸士訓練校入局時なので、上記5人と合わせると16歳)

【魔導師ランク】無し→A

【魔力光】濃い青

【容姿】藍色に近い色をしたロングヘア、瞳の色も同じ色

【デバイス】柄に水晶のついたレイピア型のエクシア

【魔法形態】近代ベルカ

【使用魔法】

a.スキャッター 単発の魔力弾を飛ばし、指定のポイントで拡散して直径5mほどを攻撃

b.ヴァルファイヤ 任意の大きさの炎弾を飛ばす。同系魔法でヴァルサンダー、ヴァルエアロもある

c.フラッシング·ペネトレイター 後方から魔力付与した加速で急接近して強烈な突きを繰り出す

d.スター·スプラッシュ 8回の斬撃と突きを混ぜた連撃

e.ムーンサルトバースト 足元を魔力弾で爆撃すると同時に後方へムーンサルトで大きく後退する

f.スターリィ·ティアー 星型を描く様に動きながらの5連突き

【備考】

刹那、ユーキ、ウリエルの陸士訓練校での同期で刹那のルームメイト。クールな出で立ちで、シグナムを思わせる雰囲気がある。

 

明確な実績こそないが武術をしていたらしく、刹那の動きに合わせられるほどの実力者。得意レンジはクロス~ミドル。ミドルレンジでは範囲攻撃や各種属性付与魔力弾、急接近からの突き。クロスレンジでは各種細剣術によるスピード攻撃と後退しながらの爆撃、と特化している訳では無いがヒットアンドアウェイが真骨頂な戦い方をする。

各種属性付与魔力弾を使うが、変換資質がある訳ではなく、デバイスのエクシア内で変換処理を施してから打ち出している。ちなみにミドルレンジ攻撃をする際には細剣を逆手持ちしてコアの水晶から撃ち出す。クロスレンジ攻撃時は水晶を柄から外して左手の上に浮遊させる。イメージはFF14の赤魔道士。ヒカセンなら分かるよね(




こんな感じかなぁー。何か忘れてるのあるかも?
ちなみにミカエル他の天使シリーズは今後ほとんど出ないので書いてません!


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第39話 帰還

少し整理。今の時間軸は闇の書事件から6年後、StSのコミック冒頭あたりです。

2018.11.17 ヴィータの発言に伴うアリシアの考察を少し修正(Det仕様へ変更)


少し時間を遡って転移する直前。

 

「地球か………何もかも皆懐かしいです」

「刹那。それフラグっぽい」

 

ウリエルと共に遺跡に入った私はガブリエルが遺跡の転送装置を起動している横で、私は地球でのことを思い出していました。

 

「最も、半年しかいませんでしたけどね。なかなか濃い半年でした」

「闇の書事件………だっけ。あれからそう呼ばれた一連の騒動よね?」

「うぬが子鴉を助けるために躍起になったアレか。アレがなければ我らが生まれてくることもなかったのだったな」

「ある意味ボク達にとっても運命の分かれ道になったんだよねー」

 

確かに。あの事件で拡散した闇の書………もとい夜天の魔導書の防衛プログラムの残滓の影響で起きた砕け得ぬ闇事件、それがキッカケで紫天の書の盟主としてユーリが覚醒。その時に王様やシュテル、レヴィが本格的に復活。本格的にと言ったのは闇の書事件の直後、年末年始頃に闇の欠片事件という夜天の書の残滓が暴走した事件が起きたからです。王様達は一応その時に復活………と言ってもその時は夢現だったらしい(故に砕け得ぬ闇事件で本格的に復活)ですけど。

 

「キッカケはキリエの暴走ですけど、今となってはその巡り合わせに感謝です!お陰でエルトリアもお父さんも………まだ完治には程遠いですけど、良くなりましたし」

「フローリアン博士を治療したの、主に私ですよ?」

「もちろんラファエルさんにも感謝してますよ!」

 

そんなこんなで談笑する面々。一方でその輪を抜けて私の方へ来る気配が2つ。

 

「シュテル?それにキリエ」

「はい、私です」

「あらら?もう魔力探知は慣れたのん?」

「まぁ、多少は」

 

その正体はディアーチェの配下(というかほとんど家族)のシュテル。こちらに来てからはエルトリアで特に深刻だった水周りを改善させるシステムを開発して成功させた功労者です。

 

「これ、使ってください。キリエと共にフォーミュラの技術を応用して作りました」

 

そう言ってシュテルが私に1つのヴァリアントコアを差し出しました。

 

「義手よ。起動はほとんど私達のそれと同じ感覚でやれるはずだから使って?今までの義手だと色々不便って言ってたじゃない」

「コアにはAIとしてイリスが組み込まれてます。あと、まだ試作品ですので強度の保証は………すみません。まだあなたの神風流には耐えられませんので」

 

最近イリスを含めた3人で何かしていると思ったらこれだったんですね。

私が上着をはだけさせて右肩を露出させると、いつも義手を付けているアタッチメントが露わに。シュテルはそこに今のヴァリアントコアを接続させます。

私の覇王流改め神風流が右腕では使えないのが残念ですが、贅沢は言えませんね。

 

「イリス」

〈はぁーい。刹那と生体リンクを接続、起動の承認は刹那へ全権移譲。神経への接続完了。肉体に拒絶反応無し。うん、全部完了よ〉

「名前は………そうね。ヴァリアントアーム、でどうかしら?」

「わかりやすくて良いですね。起動、させても?」

〈もちろん良いわよ〉

 

シュテルが名を呼ぶと私の隣に半透明のイリスが現れ、コンソールを出して操作。初期設定の完了を待ってからはだけさせた上着を再び着直します。

 

「ヴァリアントアーム、セットアップ!」

 

そして起動。何も無かった右袖から光が出て数秒もしないうちにそこには腕がありました。目が見えないので見た目がどうなのかは分かりませんが、感触や動かした感じはほとんど生身。義手だと言われなければ気付かないレベルの出来栄え。強いて違いを言えば手の甲にコアのような部分があるくらい。まぁ、普段は起動しないか手袋を着けるかすれば良いでしょう。

 

〈 どう?〉

「まだ少し違和感はありますが、かなり馴染みます」

〈さすがに着けて最初だしね。調整とかは今後やってく〉

「お願いします」

「ぁ、言い忘れてましたが、先程これでは神風流は使えないと言いましたが、それを補う為に私のブラストクロウと同型の装備も展開できるようにしています。使ってください」

「私達のザッパーを付けようかとも思ったんだけどねー。刹那に武器戦闘は合わないかもって結論になったのよ」

 

シュテルに言われて右手をその装備へ換装。なるほど、爪と掌の魔力放射機構の付いた武装ですね。

シュテル、砲撃主体な割りには以外と突っ込みがちなところがありますから、彼女らしいです。

確かに私は武器戦闘は出来ないことは無いですが、やはり素手の方が馴染みますしね。

 

「シュテル、キリエ。ありがとうございます」

「わぷ」

「ちょっ!?」

「むぅ」

 

ブラストクロウを普通の手に戻し、私は2人へ感謝の意を込めて撫でてやります。シュテル、意外とこれが好きなので。初めてされたキリエは恥ずかしそうにしてて、これはこれでいいかもとか思ってみます。横でヤキモチを焼くユーキも何気に可愛かったり。

 

「さぁさぁ!転移、いつでも出来るよ!」

「っと、そろそろですね」

 

私はカブリエルの呼び掛けを聞いて2人を解放、展開されていた魔法陣の上へ。付いて来ることが決まっているユーキは私の左隣に並びます。

 

〈転移の先はどうする?地球?〉

 

それと同時に先程までコンソールを弄っていたコアのAIたるイリスが私の右隣に。

 

「地球は………止めておきましょう。東京に管理局の支局があるので騒動になりかねません。ミッドは同じ理由で論外………蒐集の際に行った適当な世界でどうでしょう?場所は私が指定します」

〈わかったわ〉

 

転移先を私が指定すると、足元の魔法陣が魔力を強く帯び始め………恐らく見た目もかなり強く光ってるでしょうね。

 

「刹那さん、地球の皆さんによろしく伝えてくださいね!」

「次に会えるのは何年後かわからないんだから、絶対に忘れちゃダメよ!」

 

最初に別れの挨拶を口にしたのはアミタとキリエ。もちろん今生の別れにするつもりは無いのでさよならは絶対に言うつもりはありません。

 

「子鴉のこともよろしく頼むぞ。代わりにこっちのことは我に任せよ」

「ナノハにもよろしく伝えてください」

「フェイトにも!」

「ユーキのこと、お願いしますね。あと、アリシアさんにも!」

 

次いでディアーチェ、シュテル、レヴィ、ユーリ。

 

「我が主に………まだ会えないことを伝えてください。私はこっちで元気にやってます、こちらが落ち着いたら会いに行きます、と」

 

やはり、リインフォースははやてに会いたいんでしょう。酷なようですが、今はエルトリアの復興にリインフォースは欠かせない存在。本人もそれを分かっているので渋々ですが、まだ帰れません。私も本心では帰してあげたいんですけどね。

 

「その節はお世話になりました。天使一同を代表して礼を申し上げます」

 

次に口を開いたのはミカエル。後ろのラファエルにウリエル、装置をいじるのを終えたガブリエルと共に頭を下げます。キリエを助けたルシファーは………ぁ、入口の影にいますね。

 

「では、行ってきます」

 

魔力が一層強くなり、もうすぐ転移。私が皆を感じられる今の内に私も別れの挨拶。

てっきりウリエルは着いてくると思ったんですが………意外です。

 

「刹那!ユーキ!これからもよろしくっ!」

「っと」

 

………噂をすればなんとやら。やはり来ましたね、ウリエル。

私は転移直前に飛び込んできたウリエルを咄嗟に抱き締めました。ある意味、来てくれてホッとしてたりもします。

その直後、装置が作動。光となって転移していきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那達の転移より少し前

 

───side アリシア

 

「紗綾ー。この辺だよね?最近変な反応出たり消えたりしてる場所」

『そうそう、その辺。丁度アリシアちゃんのいる場所を中心にして大体………半径1kmで点々とだよ』

 

どうも久しぶりです、アリシアです!今私は第162観測指定世界での任務中です。ぇ?学校?去年中学を卒業してから管理局に本格的に就職したから実質中卒だネ。ちなみになのはやフェイト、はやては今中3。午前の授業だけ受けて午後から私に合流する手筈になってる。

 

「とは言っても………反応でた記録のある場所、何ヶ所か見たけど何も無いよ?普通の荒地で岩と砂ばっかり。遺跡が近い訳でもないし、魔力打ち込んでみたけどロストロギアが埋まってるわけでも無かったし」

『んー。今後も継続して観測していくしかないかぁ。わかった、その方向で手続き進めるね。もうすぐなのはちゃん達来るはずだから拠点まで戻れる?』

「もうちょっと調べたら戻るよ。一旦通信切るね」

 

私は拠点の紗綾との通信を切りました。

 

「さて、と」

 

そして近場の岩の上に座って空間モニタをいくつか展開して周辺のデータを表示。

 

「んー………やっぱり変なパラメータはないんだよなぁ。となるとやっぱりセンサ類の故障?いや、それはないかな。数日前に替えたばかりってあったし。それにここまではっきりと反応が出るのは故障とは考えにくいし………」

 

反応のあったポイントのパラメータを次々と出したり消したりしながら私はあーでもないこーでもないと考え込みます。

 

「もしかして誰かがこの辺で何かしてる?もしくは転移した、とか。でも後者なら点々とはしないよね。なら前者?だとすると目的は………陽動?でも向こうにはなのは、フェイト、はやてがいるから私だけ分断する意味は無いし」

 

そのまま唸り続けること5分程。あれからもいくつかの推測は出来た。とは言ってもどれも確証のないもので、当然の事ながら原因の特定には至ってない。

 

「………戻ろっか」

 

ここでこのまま考え込んでても仕方ない、そう結論づけて私は座ってた岩から立ち上がり、空に上がる。

 

「紗綾〜。今からそっち行くね。なのは達は?」

『丁度今着いたところだよ』

「了解。全速力で戻るね!」

『じゃあこの後の任務の確認ね。一言で言うならその世界の遺跡発掘先を3つ回って発見された古代遺物(ロストロギア)を確保ってところ?アリシアちゃんの担当場所はこれからデータを転送するよ。他の場所は1つはなのはちゃん達、もう1つはシグナムとザフィーラが行くことになってる。で、そこでブツを受け取ってアースラまで護送』

「平和な任務だねぇ。相手が古代遺物(ロストロギア)だから油断は禁物なんだけどね」

「エイミィさんも言ってたけど、このメンツだもん。多少の天変地異なら何とかしちゃうと思う」

 

要は物を受け取って運ぶだけの任務。相手が古代遺物(ロストロギア)とは言え本当に平和だなって思う。と言うか私の担当場所、私1人なんだけど、それでも天変地異どうにかしちゃうって過大評価じゃない?いや、全体のメンツだと納得出来るけど

 

「っと、うん。場所のデータ来たよ。今から向かうね」

 

私は飛行ルートを変えてターン。私の担当場所はと進路を変更して飛び続けました。

そのまま飛ぶこと20分ほど。

 

「ここ………?」

 

担当場所に到着。したのはいいんだけど………

 

「遺跡、どこ?」

 

あるのは大きなクレーター。まるでなにかの爆発でもあったかのような大きな大地の凹み。

 

『こちらアースラ派遣隊!シグナムさん、アリシアさんですか!』

『その声、なのはか?とちらは無事か?』

「なのはちゃんそっち大丈夫?何ともなかった?」

 

おろろ?なのはから通信だ。任務中だからか少し口調が硬いのが気になるけど、仕方ないか。

でも、ここで通信が来るってことは………シグナムの反応からしても同じようなことがあったのかな。

 

『機械兵器の襲撃があったんですが………まさかそっちも?』

『こちらは襲撃ではなかったがな』

「不幸中の幸いかな。確か危険回避のために無人にしてたんだよね?発掘現場は跡形もなくなってた」

『こちらもだ。先程シャマルとヴィータを緊急で呼び出した』

 

なのは達は襲撃を受けて私とシグナム達のところは遺跡そのものの消失。

 

『ねぇ、シグナム。私達、多分同じ事考えてると思うんだ』

「………アリシアもか」

「『今日の任務、気楽にこなせるわけじゃ(ものでは)なさそうだね(な)』」

『仲良いねぇ、2人とも』

 

私達、特に私が卒業してからちょくちょく一緒に動いてるしねー。模擬戦もよくやるし。

 

「とりあえず私、データだけ取ってシグナムに合流するよ。その方がいいでしょ?」

『了解した』

『わかった』

 

それから私はパパっとデータを採取、そこそこ近くだったシグナム達と合流。丁度シャマルとヴィータも来た頃みたい。

 

「ひでぇなこりゃ。完全に焼け野原だ」

「かなりの範囲に渡っているが汚染物質の残留はない。典型的な魔力爆発だな」

「こっちも同じだよ。典型的な魔力爆発」

 

私のところとシグナムのところの状況を照らし合わせてシャマルが現状確認してるのを横目に、焼け野原と化したクレーターをずっと見つめてるヴィータを発見。私とザフィーラで近寄ります。

 

「ヴィータ、どうかしたか?」

「大丈夫?何かあった?」

「別になんでもねーよ。相変わらずこういう焼け野原は好きになれねーだけさ」

 

私とザフィーラが話しかけるとヴィータは一瞬こっちを見て、すぐに目を逸らします。まぁ、焼け野原が好きって物好きは某焼け野原ヒロシ以外私は思いつきません!

 

「戦いの跡はいつもこんな風景だったし………あんまり思い出したくないことも思い出すしさ」

 

………ヴィータの言ってる思い出したくないことはきっとなのはが撃墜された時のことだろうね。それまでの無茶で溜まりに溜まった疲労が限界を超えちゃって、その時たまたま大きな事件起きちゃって(何故かどんな事件なのかは覚えてない)、その事件の最後の一瞬気が緩んだ隙に撃墜。右腕を失った上で全身重症。救援に向かった私とフェイト、はやてが着くのがあと数分遅れてたらなのは命すら危なかったってシャマル言ってたっけ。

あの時の戦闘はとても熾烈で、結界が無ければ東京近辺はそれこそ焼け野原だったしね。

そうでなくてもヴィータ達にとって焼け野原ってベルカ時代の戦乱の世を思い起こす嫌なものだろうしね。

 

「なのはー。そっちで襲われたっていう機械兵器について教えてー?性能とか」

『んー?と言っても攻撃性能は不明だよ?見つけて即撃破したから』

『心配することと言えばAMFくらいじゃないかな』

『折角やし、リイン。もう1度復習や』

『はいです。AMFというのはフィールド防御の1種、でしたよね。フィールド系というのは………』

『基本防御魔法4種のうちの1つだね』

 

基本防御魔法4種。簡単に説明すると………

まず1つ目、バリア。敵の攻撃を防御幕で相殺して柔らかく受け止めることが目的の汎用性の高い防御。私達の使うのだとプロテクションとかがそれだね。

2つ目、シールド。攻撃と相反する魔力で固く弾く、反らすことを目的とした防御。よくやる魔法陣出して守るアレ。

3つ目、フィールド。範囲内で発生する例えば温度変化みたいな特定の効果を阻害することで防御するヤツ。大抵は複数の種類を重ねてバリアやシールドの補強で使うことが多いね。今回のAMFは範囲内の魔力結合を阻害するフィールドで範囲内での魔力行使はおろか魔力弾もフィールド突破は困難を極める。方法はあるんだけどね。

4つ目、物理装甲。説明不要文字通り。刹那が使う覇王岩砕で発生させる壁や断絶衝の衝撃波の壁がそれにあたるね。

 

「AMFはフィールド系でもかなり上位の方だね。単独でも使えて効果も高いし」

『魔力攻撃オンリーのミッド式魔導士はとっさには手も足も出ないだろうね』

『ベルカ式でも並の使い手なら威力補強は武器の魔力に頼ってる部分が多いし。ただの刃物やとアレつぶすんはキツいよー』

『でもなのはさんやフェイトさんはカンタンにどかーんって』

『距離があったし向こうのフィールドが狭かったからね』

 

ちなみにフェイトの言うミッド式ってのは正式にはミッドチルダ式っていって現在の主力魔法。魔力で色んな効果(例えば飛行)を自在に発生させられるね。戦闘では射撃や砲撃、要は遠距離攻撃主体。

はやてのベルカ式は魔力で自身の体や武器を強化するタイプ。強力な個人戦闘能力を誇るけど魔力を体から放出したり打ち出すのは不得手。要は近距離主体。はやてみたいなベルカ式で遠距離広域殲滅ってのはかなり稀有。さらに言うとヴォルケンリッターみたく空飛ぶベルカ式ってのも稀有。近代空戦はミッド式で長射程&大火力の届かない遠くからペチペチが主流だからね。

 

「なのはの事だから………この周辺の環境から推測するにそこらの石を魔力で加速させたんでしょ?フェイトは雷。それだと発生そのものがフィールド外ならAMFに入っても既に加速されたものや熱、電気はそのままだからね。慣性の法則ってヤツ」

『ご明察!だからもしも囲まれたりしてフィールド内に閉じ込められたら結構ピンチだね。AMFで魔法の発動が厳しいから』

「飛行や基礎防御すらかなり妨害されるしね」

『だねー。やり方はあるけど高等技術。リインなんか気を付けないと大変だよー』

『はうぁっ!そーです!リインは魔法がないとなんにもできないです〜』

「なのは、後で教えたげて」

『いい機会だしねー。その辺の対処と対策も覚えていこうね』

『はいです』

『すみません教官。うちのコをよろしくお願いしますー』

 

まぁ、リインは生まれてまだ数年だしねー。仕方ないよ。

 

『ちなみになんですけど、アリシアさんはAMF相手ならどうするです?』

「私?ぶん殴って壊す」

『何の参考にもならなかったです!』

 

やろうと思えばなのはやフェイトがやった方法も取れるし、覇王流で壊すことも可能。その気になれば射撃と砲撃で突破もできるしね。なんとでもなるなる。

 

『割り込み失礼っ!こちら観測基地!先程と同系と思われる機械兵器を確認!地上付近で低空飛行しながら北西に移動中!』

『護送隊の進行方向に向かってるようです!狙いは………やはり古代遺物(ロストロギア)なのではないでしょうか?』

「だろうねぇ」

 

と、そこに紗綾もいる観測基地から通信。シャーリーとグリフィス君だね。

 

『ちょっと待って!機械兵器確認地点から西方向に特大の魔力反応!規模は………ぇ?なにこれ!?魔力値増大!観測不能!!大規模な転移魔法も確認!恐らく何か特大の魔力を保有した物が転移しようとしてる!それで機械兵器も一部がそっちに進路転換!』

「………観測基地!守護騎士から2名出撃する。シグナムとヴィータが迎え撃つ!」

「大規模転移魔法の方は私が行く!」

 

なのはにはやて、フェイトがいて機械兵器に遅れをとるのは万が一………億が一にもないと思うけど、運んでるものがアレだしね。

 

『シグナム、お姉ちゃん。AMFの話は聞いてると思うけど気をつけてくださいね!』

「テスタロッサ………貴様誰にものを言っている。己が信じる武器を手にあらゆる妨害を貫き敵を打ち砕くのがベルカの騎士だ」

魔導士ども(おめーら)みてーにゴチャゴチャやんねーでもストレートにぶっ叩くだけでぶち抜けんだよ!リインも私の活躍しっかり見てろよ!」

『はいです、ヴィータちゃん』

「フェイト、心配しすぎ。この程度の敵に遅れをとるお姉ちゃんじゃないことはフェイトが一番よく知ってるよね」

 

心配症なフェイトを軽くつついておいてから私達は空へ。シグナムとヴィータは護送隊の援護、私は大規模魔力反応の調査とそっちに向かった機械兵器の殲滅。

 

「「「出撃!」」」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どぉぉぉぉぉぉん

 

「ケホッ……ケホッ」

 

エルトリアから私達が転移してきたのは岩と砂の世界。少し前までのエルトリアみたいなところ。そこに派手に着地したから着地ミスったウリエルが砂に突っ込んで蒸せてます。

 

「転移座標確認………問題ないようですね」

「すっ転んだウリエル以外は、ね」

 

私がウリエルに水を渡すと砂が入ったらしい口の中を漱ぎます。ついでに羽や鎧についた砂も叩いて落とします。

 

「ふぅ………死ぬかと思った」

「魔力保有量と戦闘能力に特化した天使が転移の着地ミスしてそれで死んだら笑いものになりませんよ」

〈そうねぇー。末代まで語り継がれると思うけど。ぁ、ソナー展開するね〉

 

それだけは嫌ァァ!と叫ぶウリエルを横目にイリスがソナーを準備して展開。範囲はそんなに広くしてませんが、十分でしょう。

 

〈おっと、お出迎えがこっちに向かってきてるよ〉

「これは………機械兵器?それと魔導士が1人こっちに向かってきてますね。今顔を見られるのはまずいので………ウリエルとユーキで機械兵器を破壊してください。私とイリスで転移魔法を準備します。転移は1分後で」

「わかった。ウリエル、右半分任せる」

「了解よ!ついでに後ろにいる魔導士の足止めもしとく!」

 

恐らくエルトリアからの転移を観測されたのでしょう。ここは前は管理外世界だったと記憶してましたが………6年で事情が変わったみたいですね。ユーキは封印処理をしてあるのでともかく、ウリエルも魔力量はロストロギアクラスは持ってるのでそれも感知された要因………むしろこれが主因な気もします。

視界の左半分に魄翼の槍が大量に展開し、右半分は火に染まる(おそらく獄で焼き払ったついでに魔導士を牽制して足止めしたのでしょう)のを見ながら転移用の魔法陣を展開。

 

「転移は何重にもかけてください。探知されると厄介なので。最終的な行き先は地球です」

〈はーい〉

 

細かな指示をイリスに出しつつ私の方でソナーの範囲を広げ、件の魔導士をその範囲に入れて魔力を探知。

 

「この魔力は………なるほど。偶然とはいえ、巡り合わせですね」

〈転移用意完了!ユーキ、ウリエル!カウント!10、9………〉

 

私は持ってきたローブを被って万が一姿を見られても良いようにします。

そしてイリスのカウントが3になったあたりでユーキとウリエルが戻り、その流れで転移。本当なら挨拶くらいしたかったんですが………すみません、アリシア。()()あなたと会うわけにはいかないんです。




はいはーい。というわけでエルトリア編からStS突入ぅ!

正確にはまだA’s to StSってところですが。

久々に8000字超えしたし、原作キャラもちょこちょこ出せたし満足満足。空港火災はいつごろ出来るかな。あまり先にはならないと思うけど。

では、感想、評価あればよろしくです!


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第40話 再会

どもども、ルイスです。

最近FFでやってるタンク(主にナイトと暗黒騎士)のヘイト管理に苦戦してます。もっと練習しないとです。ちなみに本職は白魔導士(ヒーラー)です。

今回はStSでお馴染み(?)のアレが起きますよ!

※若干内容修正


───機械兵器襲撃から数時間後 地球 海鳴郊外

 

「よっと。はい、到着です」

 

機械兵器から襲われ、管理局にも見付かってから転移で逃げてきた私達は最終目的地たる海鳴へやってきました。もちろん街中に出ようものなら目立ちますし、こちらに滞在してるであろう局関係者に見付かりかねないので人気のない郊外に。

 

「で、これからどうする?」

『行く宛でもあるの?』

「一応は。ぁ、でもその前に………」

 

半実体化したイリスとユーキから聞かれたことに答えつつ、目線を後ろへ。

 

「うぅ………すっごく違和感。力が出ないし湧いてこない」

 

そこには少しばかりぐてーっとしたウリエルが。理由は単純で、その多すぎる魔力を封印したから。そりゃそうですよ。ウリエルを含めた天使は単体で保有する魔力量はロストロギアクラス。そんな魔力保有者が闊歩していたら管理局に見付かってお縄についてしまいます。事実、先程エルトリアから転移してきた際に機械兵器や管理局に勘づかれたのもウリエルの膨大な魔力を感知したからでしょうし。転移魔法そのものも感知していたでしょうが、ウリエルクラスに膨大な魔力だとかなり目立ちますし。

ちなみに現在のウリエルの魔力量はSSランク相当。それでもかなり多い部類ですが、元が多すぎてこれ以上調整するのが困難だったのでこうなりました。あとは必要に応じてリミッターをかければいいでしょう。

 

「ウリエルの服、何とかしないといけませんね」

「………何の用意もせずに飛び出たようなものだからね、ウリエル」

『鎧だと悪目立ちするわね、確実に』

 

とは言っても、今あるお金は昔私が海鳴にいたころに持っていたものだけ。そこまで多い訳では無いので、服を何着も買えばすぐ底をつきそうです。

とりあえず応急処置としてイリスが以前キリエにしたフォーミュラの技術の応用で、たまたま近場にあった適当な布を洋服に作り替えてそれを着てもらいました。

もちろん頭の上の輪と翼は今は隠してもらってます。人前では私かユーキの許可無しに出さないようにとだけ言っておけば変にわる目立ちもしないでしょう。

 

「で、さっき言ってた行く宛って?」

「決まってます。前アースラ艦長のリンディ·ハラオウンさんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───4月末 ミッドチルダ北部

 

リンディさんと接触してから約2週間が過ぎました。私達から事情を聞いたリンディさんは(アリシアやフェイトの保護者としての立場上)快諾………とは言えませんが、私達を匿ってもらうことを了承。もちろんハラオウン家はアリシアやフェイトが暮らしている家でもあるので私が居候すれば一瞬でバレてしまうので、私達は東京臨時支局の局員が宿舎にしているアパートの一室を借りることに。

その後はリンディさんからレティ提督経由で局の医者と技術者を紹介してもらい、私のリンカーコアの修復や治療、義手のメンテもしてもらえることに。ある程度はエルトリアで治していますが、向こうとこっちの環境の違いで何かあってはいけないので、念の為というやつです。エルトリアでやったと言ってもある程度、ですし。

局に出入りすることになるのでなのは達を始めとした顔見知りに遭遇しないかが不安要素ですが、リンディさんがそこはうまく調整してくれたみたいです。ちなみに1番エンカウントしそうなのは(一番口が軽そうな)シャマル。低頻度とはいえ、局の病院に出入りする訳ですからね。

ちなみに東京臨時支局支局長のクロノには私達のことは話した上で口止め済みです。フェイトやアリシアに詰め寄られたら吐いてしまいそうですが………そこはクロノを信じましょう。

 

で、今私がどこで何をしているかというと。

私がいるのはミッド北部にある見晴らしのいい墓地。簡潔に言えば、8年前の事故前に会って以降離れ離れだった私の母親代わりをしてくれた女性、プレシア·テスタロッサに会いたいとリンディさんに話したところ、今日が命日だから、とここを教えてくれたわけです。最初は信じられませんでしたが、こうしてお墓の前まで来ると現実を突きつけられるわけで。ちなみに目は見えませんが、墓石に掘ってある文字はわかるのでどれがプレシアのものかはわかります。

 

「プレシア………」

 

私はこの墓地を管理している人からバケツや雑巾を借り、私を育ててくれたお礼とアリシアを死なせてしまった謝罪を込めて墓石を念入りに掃除していきます。

最後に水をかけて掃除は終わり。それから持ってきた花を墓石の前に置き、私は手を合わせて黙祷。そうして目を閉じるともう8年以上も前のことなのに当時のことが頭をよぎります。

一生懸命仕事に向き合うプレシア、アリシアや私との日常でよく見せていたプレシアの笑顔、ピクニックに行った時のアリシアが言った「妹が欲しい」発言に戸惑うプレシア。本当に家族思いで優しかった。今になって思えば私は(詳しい事情は私すら知りませんが)居候の身だった私さえも家族の一員として扱ってくれて、私も救われていました。

 

「だからこそ、なんでしょうね」

 

そう考えるとプレシアがこうなっでしまったことにも納得がいってしまいます。原因はどうであれプレシアが携わっていた魔導炉『ヒュドラ』の事故でアリシアが死んでしまい、同時期に私も失踪して生死不明。大切な家族を2人同時に失い、独りになってしまった現実を突き付けられれば気だって狂ってしまいます。プレシアは特に優しかったので特に………

 

「まだ………1度も『ありがとう』も『ごめんなさい』も………言えてませんよ………っ」

 

思い出せば思い出すほど私の目から溢れる涙。ウリエルとユーキを連れてこなくて正解でした。

 

「それでは、また来ます。()()()()

 

義母さん(プレシア)へ伝えたかったことは伝えられず、死に目にも立ち会えなかった私ですが、せめて命日だけは必ずここに来ます。

一頻り泣いた私はもう1度手を合わせてからその場を離れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約1時間後

───side アリシア

 

「んぇ?」

 

今日はお母さんの命日。6年前、所謂PT事件で虚数空間にお母さんが落ちた日。リンディさんやフェイトからお母さんの最期を聞いて以来、私は毎年この日はお墓参りをすると決めていて、それを欠かしたことは一度もないです。

今日もいつも通りフェイトと2人でお墓参りに来たんだけど………いつもと違うことが1つ。

 

「もう誰か来たのかな。フェイト??」

「まさか。というか先に来るんならお姉ちゃんに連絡するし今ここに私がいるのおかしいよ!?」

 

それもそうだよねー、と苦笑。いや、わかってて言ったんだけどね?

 

「今までこんなこと無かったよね?」

「うん。少なくとも私達以外でここに来る人はいないはず。お義母(リンディ)さん、今年は仕事の関係で少し遅く行くって言ってたし」

「………まぁ、いっか。ほらフェイト。私達もお墓参りしよ?」

「そうだね」

 

先に来た人が誰なのか。すごく気になったけど、気にしても仕方がないからとりあえず頭の隅に置いておいて私達もお墓参り。掃除もしようかなって思ったけど、先に来た人がやったみたいで(すごい念入りだった)結局お花を供えて手を合わせるだけになっちゃいました。

帰る時に墓地の管理人さんに聞いてみたんだけど、フード被っててよく分からなかったみたい。

誰なんだろう?

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月29日 PM6:00

 

お墓参りを済ませてから数日。ユーキとウリエルを連れてミッドのあちこちを観光。とは言っても、その内の1日(墓参りの翌日)はミッド中央部にある医療センターで検査を受けるのが目的ですが。観光はその空き時間に。この手の都市を見たことのないウリエルは辺りをキョロキョロして興味津々。海鳴でもそうでしたが、ミッド中央部は海鳴とは比にならないレベルで都会ですからね。ウリエルは100歳は超えているみたいですが、天界からあまり出たことがないらしいので、こういう近代都市が珍しいのでしょう。

とは言え、墓参りのあとの半日とその後の数日あれば大抵の場所は回れるわけで。

で、もうすぐ夜という頃になって私達3人は地球へ向かう為にミッド北部にある臨海第8空港へ向かうところ。ちなみにここを使うのは単純に私達が泊まっていた場所から近いからというだけです。

 

「ミッドはどうでした?こういう都会は初めてだったでしょう?」

「スゴい、以外に言葉が出なかったよ。天界からほとんど出たことなかったし、出ても近隣だけだし」

「あの近くってあまり都市ってないから仕方ない。私も海鳴しか知らなかったけど、この規模はすごいと思った」

「私もミッドは8年ぶりでしたが、新鮮でした………ん?」

 

次元船が出る時間までまだ時間に余裕があるので、談笑をしながら歩いて向かう道中。遠くで何かの音が聞こえた気がしました。

 

「どうかした?」

「今何か聞こえませんでした?」

「何かって何?」

「何か、こう………大気が震えるような………地響きのような………」

 

急な私の態度の変化に不安を隠せないユーキとウリエル。どうやら音が聞こえたのは私だけみたいです。

 

「空港の方からでした。急ぎましょう」

 

そして私が走り出し、それに並走して2人も着いてきます。走ること数分。見晴らしのいい高台の上に出ました。そこから見えたのは

 

「空港が………」

「燃えてる!?」

 

赤々と燃え、もうほぼ陽も落ちて暗くなった空に真っ黒な煙を立ち上らせる巨大な建造物。紛れもなくそれは私たちの目的地の空港でした。

 

「じゃあさっき刹那が聞いた音って爆発かなにか?」

「だと思います。イリス」

『もうやってる。索敵範囲最大拡張………完了!』

 

普段はそれほど広げていない魔力探知の範囲をめいいっぱい広げ、空港近辺を索敵。まぁ、距離が距離なので正確な探知は不可能ですが。

 

「どう?」

「いくつか反応はあります。しかし、見た感じたまたま巻き込まれた被害者、と言った感じですね。まだ防災は動いてません」

「それちょっとヤバいんじゃあ………?」

 

恐らくまだ発災して間がないんでしょう。それでもあの規模で既に燃えているのは不自然ですが………

 

『一応レティさんに連絡はしたわよ?やるなら魔導行使許可するけど無茶はするなって』

「イリス、ありがとうございます。では、行きましょう。私達にも出来ることはあるはずです」

 

許可が降りてすぐ、私達はバリアジャケット、紫天装束、鎧へ換装。ちなみにウリエルの翼と輪っかは消したまま。

そうして地面を蹴って加速。私は飛べないのでちょくちょく空中に魔法陣の足場を作って空中跳躍。その横をユーキとウリエルが飛んで並走。飛(跳)ぶこと10分ほど。私達は空港の管制塔らしき塔の上に着地しました。

 

「近くで見るとこれ、規模すごいよ」

「すごく熱い………もうすぐ夜なのに昼間みたいに明るい」

「ジャケットを耐熱仕様にしておいて下さい。中に突入してジャケットがもたないと思ったら1度外に出て再構築。それともうすぐ管理局の防災が来るはずです。ローブの方も着けておいてください。ウリエルはともかく、私とユーキは知っている人は知っているはずですから」

「ん、わかった」

「了解よ」

 

最低限の確認だけ済まして塔から飛び降ります。そしてすぐ下の天井をぶち抜いて中に突入。私達は別々の方向に散開して救助を開始。取り残された人を見つけては障壁を張って、1人ずつ外へ連れ出していきます。

それから10分ほどして管理局も到着、消化と救助活動を始めました。

 

「やっと管理局も到着ですか。とは言え、ここでやめるのは野暮ですよね」

『乗りかかった………と言うかもう出航しちゃった船だしね。………あら?』

「どうかしました?」

 

管理局も突入したのを私も確認したところでイリスが何かの反応をキャッチ。何か気になるものでも見つけたんでしょうか?

 

『4つ程刹那もよく知ってる反応よ』

「………なのは、フェイト、アリシア、はやて」

 

こう言っては難ですが、空港火災くらいで出動するとは思えない面々。恐らく非番か何かでたまたま近くにいて応援要請でもあったのでしょう。

 

『帰ってきたって伝えてもいいんじゃないの?』

「まだ完治してませんし、何より私の心の準備がまだなので無理ですよ」

『絶対本音は後者よね………まぁ、言いたいことはわかるけど。あまり心配かけたくないのよね?』

「そんなところです」

 

私は耐熱仕様のローブに付いているフードを被り、空港の奥へと向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───side ???

 

「お父さん………お姉ちゃん………」

 

空港の奥の方にあるエントランス、そこを私は1人で歩いています。辺り一面火の海ですごく熱い………はぐれてしまったお姉ちゃんも見付からない。絶望のドン底に私はいました。

 

「きゃっ!」

 

すると、近くで爆発が起き、私はそれに巻き込まれて女神像のそばの床に投げ出されました。体の至る所には擦り傷や切り傷が出来ていてすごく痛い。歩くのももう限界。何より熱くて暑くて動く気にもなれない。

 

「誰か………助けて………」

 

ガラッ…バキッ

 

「ひっ!?」

 

ちょうどその時、何かが崩れる音と砕けるような嫌な音が聞こえ、すぐ側にあった女神像が私の方に倒れてきました。死ぬとかそういうのを考える余裕もなく、私は恐怖に目を閉じました。

 

「………ぇ?」

 

でもすぐにくると思っていた女神像に潰される感触と激痛はそれから数秒経っても来なくて。

 

「間に合って良かったです。大丈夫ですか、ギン………いえ、この魔力はスバルですね?」

 

恐る恐る目を開けると目の前にいたのは倒れてきた女神像を両手で支えるローブを被った男の人………だと思う。男の人の声だったもん。

でもなんで私の名前知ってるんだろう?

 

「ぇっと………誰?」

「それは後で。先ずはこれを何とかします。イリス、右腕武装化。ブラストクロウ·レプカ!」

『了解!』

 

誰なのかすごく気になるけど、確かに今はそれどころじゃない。男の人が叫ぶと肌が多めに露出している右腕(何故か手の甲にコアみたいなのがついてた)が光り、赤と黒の禍々しい風の武装した腕に変わりました。

 

「イリス、出力は弱めで」

『弱めね。了解』

「ディザスターヒート!」

 

その武装した右腕の掌を女神像に当て、そこから砲撃。それによって女神像は離れた所に吹き飛んで落下。それからこの男の人は右手の武装化(?)を解いて私の方へ向き直りました。

 

「怪我はないですか?」

「ぇっと………うん。大丈夫」

 

ローブに付いたフードで目元が見えなく、私は聞かれたことにオドオドしながら返事。それを見て男の人は「あぁ」となにかに気づいた素振りを見せてからフードを外しました。そこから出てきたのは薄い翠の髪を後ろで纏めた蒼と紫の虹彩異色の男の人。

ぁれ?見覚えがあるような………無いような?

 

「刹那です。刹那·ストラトス。7年くらい前にナカジマ家で一時期お世話になったことがあるんですよ。その頃のスバルはこんなにちっちゃかったので覚えてるかわかりませんが」

「何となく、覚えてる。優しいお兄さんがいたこと」

 

良かったです、と答えながら男の人、刹那さんは着ていたローブを脱いで私に羽織らせます。

昔一緒に住んでた少し年上の男の人と、その人と仲のいい女の人。朧気ながら覚えているその2人。その男の人の方の特徴とこの人が一致しました。私やギン姉はその2人とよく遊んで貰っていたのを思い出しました。

 

「思い出に浸るのはそこまでにしてください。まだ火の海の真っ只中ですよ」

「ぁ、そうだった」

「そのローブは耐熱………熱に強いので着ていてください。もうすぐ管理局の人がここに来ますから」

「刹那さんは………?」

「私がその人に見付かるのは少し不味いので。ぁ、私のことは他言無用でお願いしますね」

 

管理局の人に見付かるのが不味いってどういうことなんだろう?

刹那さんはどこからともなく別のローブを取り出して羽織りました。

それとほぼ同時、エントランスの上の方で爆発がして、その中から白い服の女の人が出てきました。

 

「そこ、誰かいるの!?」

「この魔力は………なのはですか」

 

その女の人は私達に声を掛けて、刹那の後ろに着地しました。同時に刹那さんは片膝をついて私の頭に手を置きました。

 

「スバルはなのはに救助してもらってください。では、私は行きますね。また会いましょう」

「うん!」

 

なのはさん?って人に背を向けたままの刹那さんを不審に思ったのか、そう言って立ち上がった刹那さんの右肩をなのはさんって人が掴みます。

 

「あなた、何者ですか?所属と氏名を言ってください」

「………イリス。空港内の要救助者を再スキャン。そのデータをレイジングハートに転送。それからヴァリアントアーム解除」

『ぇ?あぁ、うん。わかったわ』

「っ!?」

 

肩を掴まれた刹那さんは私にも聞こえないくらいの小声で何かを言うと、ローブの中で刹那さんの右腕のある部分が光り、そこを掴んでいたなのはさんがまるで掴んでいたものがなくなったかのようにつんのめりました。刹那さんはその隙にエントランス2階へと飛び上がって奥へと消えていきました。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side なのは

 

エントランスで不審なローブを被った人と要救助者の女の子を見つけた私。私はその不審な人の後ろに降りてその人の肩を掴んで拘束しようとしました。するとその時、その人が何か小声で言ったかと思うと私が掴んでいた肩がいきなり何の感触もなくなり、私はつんのめってしまいました。その一瞬をつかれてローブの人はどこかへ立ち去ってしまいました。

 

「………逃がしちゃった」

〈Master. You get a message.〉

「ぇ?私に?」

 

ローブの人を見逃した直後、レイジングハートから私へメッセージが届いたと言われてモニタを投影。

差出人不明、件名なし。本文はただ一言「使ってください」のみ。気になるのはその添付ファイル。私はそれもモニタに投影。

 

「これって………この空港だよね」

〈Master〉

「っと、そうだよね。まずはこの子を救助しないとだよね」

 

何故か私の名前を知っていたさっきのローブの人、唐突に送られてきた謎のデータとメッセージ。疑問は尽きないけど、優先順位が違うよね。外出た時にはやてちゃんに相談してみよっと。

 

「もう大丈夫だからね。安全な場所まで一直線だから!」

 

その後、天井をディバインバスターで撃ち抜き、そこからこの女の子を救助しました。

ちなみにさっき送られてきたデータは空港内の逃げ遅れた人の位置を示していることがわかり、そのお陰で救助は捗りました。

でも、あの人………誰なんだろう?

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ウリエル

 

「これで大丈夫ですよ。その中にいれば管理局の人が助けてくれます。もし倒壊とか起きてもビクともしないから!」

「ぁ、ありがとうございます」

 

私は腰にぶら下げた剣『天』の力で逃げ遅れた人を数人ずつ結界で囲んでいく。この結界は中にいればこの辺の気温(多分数百度くらい)なら全く問題ないし、仮にここが地下で倒壊して押し潰されても傷1つはいらないくらいの強度を持っている。魔力使えば結界ごと中の人を建物の外に運べるし解除するならバインドを解く要領でやれば出来る。戦闘では全く使い道はないけど、こういう時には役に立つ。ちなみに管理局にもわかるように目立つ魔力反応を残したりもしてる。

 

「さて、と。次は………この奥か」

 

刹那のスキャンした空港内のマップを見て残った要救助者の位置を確認。一番近いのはこの奥の吹き抜けのホールに1人。私はそこへ向かって走った。

 

「えっと、この辺よね」

 

程なくホールへと到着。ここはまだ火の手は来てないけど、足場がかなり悪い。多分熱とかの影響で脆くなってるのかな?それか消火した後。

とにかく下手に衝撃でも加えたらすぐに崩れそう。

 

「スバル………どこ………?」

「………?」

 

と、私がキョロキョロしてると近くから声が聞こえる。手摺まで近寄って下を覗いてみると2つほど下のフロアの通路に人がいるのを発見。ちなみに私がいるのは5階かな?確かここは地下まで吹き抜けのはずだから、もしも今崩れたらあの子は!?

 

「誰かいますか!」

 

そこに私の近くに新たな人影。白いマントのしたは黒い軍服?っぽい金髪ロングの身長の高い女の人。手には斧?っぽい形の武器。多分これがデバイスってヤツ。レヴィに似てる気もするのは気の所為?

 

「ぇ?きゃっ!」

 

その金髪の人(多分管理局の人)の声に例の女の子が反応した瞬間。運悪くその周りの足場が崩れ、その影響でこの辺り一帯の足場もあの近くから崩れていく。

 

「ちょ!?ヤバいって!?」

 

私は今いる足場が崩れる前に手摺の上に乗って、そこを蹴って加速し飛翔。女の子へ向けて全速で飛ぶ。

 

「管理局の人!上の方の瓦礫だけ何とかして!」

「え!?」

「早く!」

 

突然の事で対応が遅れてしまったのか、私が管理局の人に激を飛ばして指示を出す。その間に私は女の子に向かって落ちる瓦礫を次々と蹴ってさらに加速。その下にいる女の子を優しく抱きしめ、さらに下へ加速。

 

「下は危ないよ!」

「大丈夫だから!」

 

ホールそのものも崩れ始めてきて、上の方の瓦礫を破壊するだけで精一杯な様子の管理局の人から声が掛かるけど、大丈夫。むしろここから上に行く方が危ないと思う。

 

「あぁもう!これ邪魔!」

 

私はさっきから高速機動するのに邪魔だったローブを脱ぎ捨てて左の腰に下げた剣『獄』を抜く。同時に着地。すぐ頭上まで瓦礫が落ちてきてるこの状況でふわっと軟着陸した私を褒めて欲しい。

 

「魔力溜める余裕はない………。危ないから目閉じてて?」

「ぇ?はい!」

「ありがと。エンジェライズ!!」

 

女の子に目を閉じてもらい、私は天使の翼とリングを一瞬だけ顕現。これすると魔力が一気に溜めれるんだよ。無闇矢鱈に使うものじゃないけど、今は緊急時。

 

地獄を粛す神の炎(ブレイズ·オブ·ジャッジメント)!!」

 

その溜めた魔力をフォーミュラを介して獄へ伝達し、真上に向かって牙突。落ちてくる瓦礫を破壊しつつその上に出る。ちなみに破壊した時の砂煙から出る前に翼とリングは消してある。見られるわけにいかないからね。

で、上にいた管理局の人に目線で合図を送って脇の通路に避難。

 

「ふぅ。もう大丈夫だよ」

「助かった………の?」

「そうだよ。あとはこの管理局の人が外に連れてってくれるからね」

 

そして私は女の子を放して管理局の人に引き渡す。と、気がついた時にはその管理局の人が斧型のデバイスを私に向けて牽制(?)してた。

 

「待ってください。時空管理局執務官フェイト·T(テスタロッサ)·ハラオウンです。あなたの所属と氏名を答えてください。場合によっては無許可の魔導行使で拘束します」

「ウリエル。今は答えられるのはそれだけよ。あと、許可は取ってるわ。誰から、とは言えないから信じてはもらえないと思うけど。じゃ、その子お願いね。フェイト執務官」

 

それでも私は微動だにせず、女の子をフェイト執務官に任せてから私はユーキに通信を入れながらそこから通路の奥へと立ち去った。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side フェイト

 

ホールに取り残された人を救助して外へ出た私。この女の子はギンガ·ナカジマ陸士───要は管理局員───でたまたま巻き込まれて、離れ離れになった妹を探してたんだって。問い合せてみたら妹のスバル·ナカジマって子はなのはが救出してたみたい。良かった。

 

「フェイト、首尾はどう?」

 

外で救急の人にギンガを引き渡してからすぐ、お姉ちゃんが私の所へやって来ました。

 

「うん、こっちはもう大丈夫だよ。要救助者の反応はもうなし。お姉ちゃんは?」

「こっちも。ただ、気になることがあるんだよね。要救助者が既に謎の結界で守られてたり、既に外に逃げてた人がローブの魔導士に助けてもらったって証言してたり」

「ぁ、ローブの魔導士なら私も見たよ。と言うかローブの中も。ちょうどお姉ちゃんより背が低いくらいの小柄の女の子だった。バルディッシュ、画像データある?」

〈Yes sar〉

 

お姉ちゃんが気になるっていう謎のローブの魔導士、バルディッシュに残しておいた画像データを投影します。

 

「………何これ?炎と瓦礫しか写ってないよ?」

「ぁ、あれ?おかしいな」

 

けど、それにはどこにもあの女の子は写ってなくって。間違いなく写ってるはずなんだけどなぁ………

 

「まぁ、救助活動してたから犯人って訳じゃないと思うけど………」

「ぁ、その女の子だけどね。魔導行使の許可貰ってるって言ってたよ。誰からなのかはわからないから信憑性欠けるけど」

「欠けるどころか全く皆無だよ、それ」

 

その後すぐ、本局魔導士が到着。そちらに引き継いで私達現地応援はそれこらも引き続き作業続行。本局魔導士、来るの遅いよ!




何気に10000字弱って初めてかな?すごいボリュームになっちゃいました。

ちなみにプレシアの命日云々の話は明言されてないので、だいたいこのあたりだろーって適当言ってます。春であることは間違いないですからね!

最後の方は少し違うけど、再会をテーマにした話にしてみました。具体的にはプレシアとスバルですが。この後はまたしばらくコミックの話になると思います!

感想などあればよろしくです!


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第41話 動き出した夢

どもどもー。ルイスです。

モンハンワールド発売!もちろん私は買いました!
上から有給消化しろって命令あったから発売日にぶち込みました(

まぁ、案の定というかなんというかサーバーパンクしてましたけどね。何で複数サーバー用意しなかったのかー、とか言いたいことは多々あるけど初日だしある程度は仕方ないかな(ワールドワイドだし)って思ってやってます。とりあえずもう直ったみたいでよかった。
とりあえず大剣楽しい!


───翌日 某ホテルの1室

side アリシア

 

『おはようございます。早速現場を呼んでみましょう』

『はい、こちら現場です。火災は現在は鎮火していますが───』

 

私達の今滞在しているホテルの1室、そこのモニターから流れるニュースが昨夜の火災のことをやってる。まぁ、あんな大規模な火災だといいネタだよね。ネタとか言ったら怒られそうだけど。

で、その現場に立ち合った(というか救助を手伝った)なのは達3人はその疲労でベットでぐったり。服装も乱してかなりラフ。みんな上着を脱ぎ散らかしてぶっ倒れてる。なのはに至ってはスカートすら脱いで黄色い下着が丸見え。まぁ、ここ今私達4人しかいないから見られることはないけど、油断しすぎじゃあ?

ぇ?私?近くのデスクで参考書広げてる。特務官認定試験も近いしね。三英雄やクロ助の推薦があるとは言っても権限が大きいだけあって試験は超難関。ここ10年くらい空白の席だったくらいには。

 

『幸いにも迅速に出動した本局の航空魔導士の活躍もあり───』

「やっぱり表立って取り上げられるのは本局の人になるよね」

「アリシアちゃんもそう思うんー?」

 

ぐてーとはしながらもはやてだけはニュースを聞いて思うところがあるようで。一応15歳の身としてどうなのかツッコミは尽きないけど。

 

「んぅー?」

「実際働いたんは災害担当と初動の陸士部隊となのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんやんか?」

 

確かに。火災が発生してその通報を受けて近くに駐屯している108陸士部隊と災害担当がまず動いた。ニュースで言ってるような本局の航空魔導士は言ったら悪いけど、ほとんど災害救助という意味では活躍してない。というか航空魔導士が着いた時、救助自体はもう終わってた。後は消火と事後処理って時に航空魔導士が到着。

 

「まぁ、休暇中だったし」

「民間の人が無事だったんだし」

「思うことが無いわけじゃないけど、ニュースとかで名前売りたかったわけじゃないしね」

 

私同様、なのはもフェイトも思うところはあるようで。最も、それをあーだこーだ言うつもりも無いみたい。

実際出動には承認とか色々手続きいるから航空魔導士の人達は悪くないしね。すぐ動けないのはアレだけど、そういう時のための陸士部隊や災害担当だしね。

 

「あのなぁ、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん。やっぱ私、自分の部隊を持ちたいんよ」

 

さっきまでぐてーとしたなのはとフェイトもはやての言葉に身を起こし、聞きに入る。私も勉強を一旦やめてそっちにイスごと体を向ける。

 

「今回みたいな災害救助はもちろん、犯罪対策も発見されたロストロギアの対策も、何につけミッドチルダ地上の管理局部隊は行動が遅すぎる」

「確かにねー。今回の場合たまたま近くに来てた私達や、緊急で出動した108部隊の人がいなかったらどうなってたか………」

 

さっきも言ったように管理局は基本的に行動が遅い。通報などで事態が発覚してから上に報告、出動承認までの流れが長いし遅い。今回はたまたま近くに108陸士部隊があったからその流れすっ飛ばして部隊長権限の緊急出動出来て、私達も近くにいたから緊急でその手伝いが出来た。そのお陰で怪我人は何人かあれど死者は出てない。実際航空魔導士が来た頃には救助は終わってたしね。じゃあもし近くに陸士部隊がなかったら?私達みたいなプライベート出来てる魔導士もいなかったら?考えるだけでも怖すぎる。

 

「後手に回って承認ばっかりの動きじゃあかんし、私も今みたいにフリーで呼ばれてはあっちこっち回ってたんじゃちっとも前に進めてる感じがせぇへん」

 

本当は何かしら反応返した方がいいのかもしれないけど、はやてが真面目に話してるからあえて無言で聞きに入る。

 

「少数精鋭のエキスパート部隊。それで成果を上げてったら上の方も少しは変わるかもせぇへん。でな?私がもしそんな部隊を作ることになったら………フェイトちゃん、なのはちゃん、アリシアちゃん。協力してくれへんかな?」

 

予想はしてたけど、まぁ、部隊作るとなれば最初の問題は人だからね。基本的にメンバーは部隊長が選出していくことになる。部隊作るから人くださいって言っても基本的には来ないからね。部隊作ります、メンバーはこれだけいます、なら上も動きやすいし。で、はやてはその夢のために最初のメンバーとして私達を………と。

 

「もちろん!3人の都合とか進路とかあるんはわかるんやけど………ほんでも………その………」

 

で、そのはやては誘ってみたはいいけど私達のことも考えてオドオドと。

 

「はやてちゃん、何を水臭い」

「小学3年生からの付き合いじゃない」

「私達が断るとでも思った?」

「ぇ?」

 

図星なのかな?キョトンとするはやて可愛い。

 

「それに!そんな楽しそうな部隊に誘ってくれなかったら逆に怒るよ?ね?フェイトちゃん、アリシアちゃん」

「うん」

「もちのろん!」

「っ………おおきに。ありがとうな、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん」

 

はやてがありがとう、じゃなくておおきにって関西弁全開の感謝を言う時は決まって本当に嬉しい時。余程私達が良いよって言ってくれたことが嬉しかったんだね。

 

「そう言えばさ、話は変わるんだけど」

「うん?どないしたん?」

「昨夜の火災、腑に落ちないことがあるんだよね」

「原因とかそういうの?それは今本局が調べてるでしょ?」

「そこは火災の規模と広がる早さから考えて何かしらのロストロギアに近しいものだと思う。密輸物か何かじゃないかな。ぶっちゃけそれはどうでもいい」

 

ぶっちゃけすぎだしどうでも良くないよそれ!?ってなのはちゃんが返してくる。確かに大きなことだけど、ここからは今調査してる本局の人の仕事。だからどうでもいいの。

 

「今回の火災の裏で動いてたローブを羽織った謎の魔導士。それが気掛かりで」

「少なくともクロノくんくらいは身長のある男性とフェイトちゃんが中身も見たっていう騎士っぽい人の2人組以上の?」

「その人が名乗ったウリエルって名前、少なくとも管理局員にはいなかったらね。嘱託や民間協力者含めて」

「そういやその人の言ってた許可はあるって言葉も………一体誰なん?その人らぁに許可出したの」

 

実際に接触したのはなのはとフェイトだけ。私とはやて、108部隊や災害担当の人は遠目だったり、謎の結界みたいな救助の痕跡だったり、既に外に助け出された人の証言だったり。

ウリエルって名前から連想するのはやっぱり天使。その中でも高位の破壊を司る天使。癒しのラファエルや神の言葉の伝達者ガブリエルを子供の名前につけるのはたまに聞くけど、破壊を司る天使の名前を付けるのは聞いたことがないね。

 

「少なくとも初動は管理局で1番早く動いた108陸士部隊や災害担当よりも早かった。最初に着いた人の話だと既に10人くらい外に連れ出されてたらしいよ」

「たまたまその場に居合わせたってことなのかな?」

「せやかて、偶然居合わせたとは言ってもや。緊急出動の陸士部隊より圧倒的に早く動こ思うたら………気付いて即行動くらいせぇへんと無理やと思うんよ」

「普通ならパニック起こして即行動なんて無理だね。少なくとも私達くらい場慣れしてないと。いや、場慣れしてても現状の確認しないといけないから救助に即移るのは厳しいと思う」

 

うーん………ローブの魔導士の情報が少なすぎて何もわからないことしかわからない。

 

「まぁ、悪い人ではなさそうだし今はそこまで気にする必要ないんじゃないかな?」

 

考え込んでいると欠伸をしながらなのはが口を開きます。どうやら昨晩の疲れが出てきた見たい。ぁ、それ見てたら私も眠く………

 

「だねー。今は気にしても仕方ないふわぁぁぁ」

「お姉ちゃんも寝たら?救助終わったあと寝てないでしょ?」

「特務官認定試験近いから少しでも勉強しなきゃって………」

 

とりあえず参考書を閉じてシャツを脱いで持ってきた寝巻きに着替える(皺になるからね!)。そしてベッドに潜り込んでフェイトに抱き着いて豊満な胸に顔を埋める。

 

「ひゃっ!お姉ちゃん!?」

「柔らかいから枕に丁度いい………ぐぅ」

 

こうするとすぐ眠気はMAXに。私はそれに抗うことなく夢の世界に旅立つ。

 

「お姉ちゃん………」

「ほな、私らも寝よ?欠伸してたなのはちゃんやもう寝てもぉたアリシアちゃんもやけど、疲れ溜まっとるしな」

「だね、おやすみ。はやて、なのは」

「おやすみー」

「おやすみなぁ」

 

その後はやてが部屋のカーテンを閉め、照明も切って4人(+既に爆睡してたリイン)はそのまま眠りにつきました。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───同刻 同ホテル1階レストラン

 

「まさか、同じホテルだったとは………」

 

件の空港火災の後、その空港を利用予定だった私達は管理局(というかレティ提督あたり?)の計らいでミッドにもう1泊することに。帰る手段がなかったので助かりました。

が、ここで問題が1つ。いや、問題という程の問題でもないのですが。私達の宿泊しているホテルの別の部屋にアリシアを始めとして、なのはやフェイト、はやても宿泊していました。幸い宿泊している階は離れているので気を付ければ鉢合わせることは無いでしょうが。

ちなみに今私はホテルにあるレストランで朝食を食べているところ。ユーキとウリエルですか?部屋で寝てます。

 

「そうなると………せめて私もアリシアの隣に立てるくらいにはならないといけないですよね」

 

私は紅茶を啜り、カップを置いてからモニターを展開してレティ提督へ通信を送ります。

 

「レティ提督、おはようございます。先日言われていた件ですが………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シグナム

 

───約2ヶ月後 管理局本局休憩室

 

「ふむ………どうしたものか」

 

私は今非常に悩んでいる。というのも先程まで武装隊の訓練に付き合って、そのすぐあとに渡されたこの書類、その内容が明らかに突飛すぎるからだ。

 

「んぉ?シグナムじゃん。難しい顔してっけど何かあったのか?」

「ん?あぁ、ヴィータか。いや、なに。大したことではないのだがな」

「こんなおおっぴらに悩んでるからには機密とかじゃねぇんだろ?なら教えてくれてもいいじゃんか」

「………それもそうだな。これをヴィータはどう思う?」

 

とりあえずヴィータの要望通りに私が今悩んでいたことを教える。とは言っても口で言うより、先程受け取った書類を渡した方が早いと判断してそれをヴィータに渡す。

 

「んーと、なになに?………はぁ!?陸士候補生特別認定試験の模擬戦相手にシグナムを指名したぁぁ!?」

「うむ。そうらしい」

 

陸士候補生の認定試験は大きく2つのパートに別れる。先ず面接。これの説明はいらないだろう。

次に試験。これはさらに筆記と実技の2パートに分かれている。総合的なレベルはそれ程高くないことから、航空魔導士を目指す者でも、先ず陸で学んでから空へ、というパターンがよくあるくらいだ。

もちろん誰でも入れるという訳でもないのだが、どちらかの出来がダメだとしてももう片方で取り返すこともある程度は可能だったりする。

 

「しっかし、()()認定試験ってことは筆記が何かの事情で受けることが出来ないってことだろ?」

「詳しいことはわからんがな」

 

更に、ヴィータの言ったように筆記が何らかの事情(大抵は身体的なの事情)で受験すら出来ない場合は筆記は免除される場合がある。しかし、それを適応する場合は実技の比重が高くなるというデメリットがあり、難易度は通常の方法で認定試験を受けるよりも格段に跳ね上がる。

具体的には通常の実技試験は様々なパターンの動き(シャトルランなど)を行う所謂体力測定の様な一面があるが、特別認定試験の場合はそこに現役局員との模擬戦という項目が追加され、そこである程度の結果を残す必要がある。必ずしも勝つ必要はないが、もしそこで試験官をあっと言わせるような結果を残さないと先ず合格はない。もちろん試験官は現役なわけだから受験生相手に本気を出したりはしないが、特別認定試験を受ける=特別扱いを受けていることになるので、試験官の目も厳しくなるのは必然。事実、制度として特別認定試験は存在するが過去にそれで合格した人はいない。

 

「その相手にシグナムを指名だろ?試験官がランダムに選んだんじゃなく」

「どうもそうらしい。余程の自信家なのかただの阿呆なのかわからんな」

「シグナムはやたら強い上に手加減っつう言葉を知らねぇからな。それに何かを教え導くようなタマじゃねぇし」

「少々癇に障るが、そんなところだ。自分で言うのも自信過剰の様で気が引けるがな」

「ま、引き受けてみりゃあいいんじゃねぇか?どんなやつが相手なのか気になるしな。その日はあたしもはやてもシャマルもザフィーラも見に行けねぇし。特別受けられない理由があるわけじゃねぇんだろ?」

「まぁな。内容が突飛過ぎて戸惑ったが、相手がただの阿呆なら斬り伏せれば良いだけだしな」

 

確かにヴィータの言う通り私を指名する輩がどんなやつか気になるのも確か。断る理由も特に無いし引き受けてみるのも一興か。

 

「っと、それはそうとヴィータ。お前、これから任務があるとか言ってなかったか?話を振った私が言うのもアレだが………」

「ん?んぇ!?忘れてた!行ってくる!」

 

任務を忘れたらいかんと思うのだが………まぁ、今回は話を振った私にも非があるか。

その後私は先程の依頼を承諾。2ヶ月後の特別認定試験の模擬戦相手を引き受けた。

この時の私は、その相手がアイツであることをまだ知らなかった。

 

side out




アニメ2話の冒頭に若干触れつつあとはオリジナル展開でした。

次回はお察しと思いますが、バトル回になります!

………ネルギガンテつおかった((

では、感想や評価等あればよろしくお願いしますです


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第42話 特別認定試験

どもども、ルイスです。

モンハンワールドにハマっております。


───同年 8月

 

リンディさんにコンタクトを取って以降、私は管理局員にならないかと誘われていました。リンディさんは6年前の闇の書事件の件で(アリシアの件を含めて)少なからずお世話になってますし、リンディさんも私のことを知っているのでなんとなく予想はしてました。

とは言え、実際に勧誘されてみても即答でOKとは言えず、少し考える時間を貰った私。最終的には空港火災で頑張っているアリシアやなのは達を見て、私も入局を決意。その件をレティ提督に告げたのが4ヶ月前。

空が飛べない私は必然と陸士訓練校へ入ることになるのですが、ここで問題が発生。今の私は目が見えない。それが一番の問題でした。理由は簡単。訓練校へ入るための認定試験には筆記があり、目が見えない私はそれを受ける術が無いからです。正確にはイリスの力を借りて一時的に視覚を得ることは可能なのですが、あくまでも一時的。具体的には長く持っても1時間が限度。燃費が恐ろしく悪いんです、これ。

今後入局した後は少なからずデスクワークもあることも予想できるので、イリスはこの術式の改善中。ただ、恐らく長くても3時間が限度だろうとのことです。

 

閑話休題

 

で、目の見えない私に取られた特別措置、それが特別認定試験。要は筆記試験の代わりに実技試験に現役局員との模擬戦を追加する措置。ただ、全体的な難易度は高くなるようで。私は2つ返事でそれを承諾。ついでに可能ならば、とその模擬戦相手にシグナムを指名。闇の書事件の際の模擬戦をする、という約束を果たせていませんからね。ヴィータにケーキを奢る約束もですけど………

 

「ふぅ………イリス、集中するのでシグナムが来たら教えてください」

〈はーい〉

 

試験の模擬試合の時間までもう少し時間はありますが、私は試験用のフィールド(訓練校のグラウンド)の脇にあるベンチに座り、目を閉じます。目が見えないので閉じる意味はありませんが。そして周囲の魔力探知を一時的にオフに。公式試合やこの手の結果の残る試合前は必ずやっていた瞑想。余計な雑念を排除し、試合へ全神経を向ける為の儀式のようなものです。

ちなみに余談ではありますが、今訓練校内では認定試験の筆記試験が行われていて、ウリエルやユーキはそちらにいます。

さて、シグナムとの初の模擬試合が楽しみですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シグナム

 

「結局、当日まで相手が誰なのかわからないままだったな」

 

特別認定試験の模擬試合相手に指名されてから2ヶ月。今日がその試験日なのだが、今日の今日まで相手が誰なのかは、どんな戦い方をするやつなのか………その類の情報は入ってこなかった。いや、正確には教えられないとのことらしいが。

 

「ま、下手に私情を挟まれたり、こちらが対策を立てやすくなると余計に受験者に不利になるからな」

 

元々受験者に不利なシステム上、私に情報が回せない理由もわからないでもないし、納得もするが。

 

「ま、それもこれこら分かることだな。瑣末事だ」

 

気にはなるが、もう気にしても仕方が無い。私は頭の中でそう割り切って訓練校の門を潜り、グラウンドへと向かった。

グラウンドへ着てみると、仮説のテントがいくつかあり、その内の1つは長テーブルが設置されていて、マイクもある。試験官席と言ったところか。他はいざと言う時の救護班、イスに座った白のTシャツと黒の長ズボン(訓練校で使用する訓練着)の人がいる。恐らくあれが私の相手だろう。テントの影でどのような人物かはわからないが。

もう1つはイスやドリンクの置かれたテーブルがあるが、そちらは無人。恐らく私の控え席だろう。私はそちらのテントへ向かい、荷物を下ろした。

 

「せいぜい5分やそこらの試合にしては張り切っているな。主はやての小学校時代の運動会を思い出す」

 

曲がりなりにも試験だからな。形は整えておかないといけないのだろう。等と考えながら準備運動をしていると人が近寄ってくる気配がした。試験官ではないな。対戦相手か。

 

「本日対戦相手に指名されたシグナムだ。よろしk」

 

私は準備運動を一旦やめて挨拶をしながら立ち上がった。が、すぐに言葉を失った。

 

「お久しぶりです、シグナム。6年ぶりですね」

 

6年前、闇の書事件の最後に空間震に巻き込まれて消えた刹那·ストラトスがそこに立っていたからだ。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈シグナムが来たわよ〉

「ん、わかりました」

 

イリスの声掛けで私は目を開け、同時に魔力探知も入れます。確かにシグナムが来てます。挨拶、した方が良いですよね。

私はベンチから立ち上がり、シグナムのテントへ向かいました。シグナムのテント下へ入ると準備運動をしていたシグナムも私に気付いたのか、立ち上がります。

 

「本日対戦相手に指名されたシグナムだ。よろしk」

 

そして私の顔を見て顔を引き攣らせ、言葉を失いました。

 

「お久しぶりです、シグナム。6年ぶりですね」

 

私は構わず挨拶しますが、シグナムは固まってしまって言葉が出てこない様子。

 

「2人とも、もう大丈夫か?可能ならすぐにでも始めたいんだが」

「ぉ、はい。わかりました」

 

助け舟のつもりか、たまたまなのかはわかりませんが、そこに試験官から声がかかります。もうすぐ始めると言うので私はシグナムへ背を向けテントへ戻りました。

 

「刹那!」

「………?」

 

と、数歩歩いたところでシグナムに呼び止められ、私は立ち止まりました。

 

「………貴様が相手だと言うのなら、加減はできんぞ」

「大丈夫です。元より求めてません。あの時の約束も果たせてませんからね」

 

私は振り返らずにシグナムへ言葉を返し、そのままテントへ戻っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side シグナム

 

唐突なかつての戦友………もとい家族の刹那の登場に戸惑ってしまったが、なんとか平常に戻れたな。

 

「しかし、かつての刹那とは様子が違っていた………」

 

先ず刹那は話す時は目を見ていた。しかし、今の刹那にそれはない。いや、意識は向けてくれているのだが、目の焦点が合っていない感じがする。見られているのに見られていない感じがするのだ。魔力も以前から若干ながら変質していた。それにヤツの右袖だけ不自然に切られていた。半袖Tシャツなので左の袖は普通にあるのだが、右袖だけカットされてノースリーブ。何があるというんだ?

それに私が知る刹那ならこの特別認定試験を受ける必要はないはず………

 

「目が見えていない………?だとするとこの6年で一体何が………今気にしても仕方ないか」

 

そもそも帰ってきているのならなぜ顔を出さなかったのか問い詰めたいところだが、恐らく今私の感じた違和感に答えがある気がする。

私は相棒(レヴァンティン)を手に取り、グラウンド中央へ向かった。そこには既に騎士甲冑の刹那も来ていて、ルーティンをしている。Tシャツ同様、右腕だけノースリーブなのが気になるが。

 

「あの刹那が相手だ。心が踊るな」

 

しかし、それ以上にかつて共に戦った刹那と戦える。その事が私は楽しみで仕方なくなっていた。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー………」

 

騎士甲冑に換装して所定の位置にたった私は大きく深呼吸。同時に腕を腰の前あたりでクロスさせて頭の上まで上げる。そこから大きな円を描く様にゆっくりと左右から腰の横まで腕を下げ、手のひらを前に向けて重ねて突き出す。最後に左足を下げて半身になりつつ左腕を腰まで下げて私のルーティン終了。これも試合前の儀式の一環。利き手を右から左に変えた影響で最後の構えが以前と比べて左右逆ですが、それ以外は変わらない私のルーティン。これをすると集中力が高まっていいんですよね。

 

「構えが以前と左右逆だ。何かあったのか?」

「まぁ、色々と。後で話しますよ。今の仲間も紹介したいですし」

「む、それは楽しみだ」

「双方、私語はそれくらいにして。そろそろ始めるよ」

 

私とシグナムで少し言葉を交わしていると試験官に止められ、模擬試合の方へ頭を切り替えます。シグナムも深呼吸をしてから愛剣のレヴァンティンを構えました。

 

「制限時間は5分。飛行魔法の使用は禁止。刹那·ストラトスからの要望により魔力リミッター等のハンデもなし。勝敗は直接結果に影響せず、立ち回り、判断力を主に審査することを念頭に置いてほしい」

「わかりました」

「心得た」

 

そして試験官から簡潔にルール説明。どことなく私が負けることを前提にしているのが気になりますが、状況から見て仕方ないでしょうね。

 

「それでは特別認定試験模擬試合………開始!」

 

ドワァォォァン!

 

どこから持ってきたのかドラムの音が鳴って模擬試合のスタートを告げ、それと同時に私とシグナムは地面を蹴って加速。

 

「紫電一閃!!」

 

密着するや否やシグナムは得意の炎熱変換を使った縦斬りを繰り出します。私はそれを右足を軸にしたスピンで避け、その勢いで左の裏拳でシグナムの頭部を狙います。が、シグナムもそれを読んでいたのか紫電一閃を振り下ろした勢いで状態を低くして回避。ここまでは私の読み通り。

 

「右腕武装化!ディザスターヒート!!」

 

体勢を低くした、ということはその分の視野は狭くなります。それを見越した私はシグナムの死角からブラストクロウ·レプカによるディザスターヒートをお見舞い。シグナムは咄嗟に防御して直撃だけは避けて距離を起きます。

 

「砲撃………だと!?」

「本家のはもっと高威力で射程も長いですよ。私のは近距離炸裂砲撃のようなものですから」

「それも先程言っていた仲間か」

「今は一緒ではないですけどね」

 

以前の私にはなかった不意打ちを受けて若干とはいえ戸惑うシグナム。また少し言葉を交わしてからまた剣と拳でぶつかり合いを始めます。

左腕の神風流と右腕の爪による斬撃や防御、たまに近距離砲撃を織り交ぜつつ攻めますが、やはり歴戦の猛者たるシグナム。なかなか攻めきれません。

 

「やはり、シグナムは一筋縄ではいきませんね」

「褒めても加減はせんぞ?」

「先程も言いましたが、求めてませんよ」

 

私は一度距離を取って構え直します。

 

「イリス、フォーミュラ!」

〈オルタはダメよ?まだ刹那用のシステム構築が出来てないんだから〉

「わかってます。それ以外で行きますよ」

〈仕方ないわね。システムフォーミュラ、ドライブ!〉

 

今までは古代ベルカのみで戦っていましたが、ここでもう1つの私の使う魔力形態、フォーミュラを解放。とは言っても私のフォーミュラはほぼ付け焼き刃。アミタやキリエと違い、使っている時間が圧倒的に短いのである程度の魔法をヴァリアントアームに読み込ませてあってそれを私の体を媒体にして使う方式をとっています。そもそも私の体内のナノマシンは天界で使ったあれのみで、その時に打ち込んだ右腕はもう無いので微量しか今はありません。なので、ヴァリアントアーム内を循環している少量の専用ナノマシン(当然ながらアミタやキリエのそれとは別の性質)を私の魔力と混合させて運用します。魔力そのものが少ない私にとってなかなか貴重なエネルギー源だったりもします。

そのフォーミュラを起動した私の足元にはミッド式に似た円形の魔法陣の外側四方に爪のようなエフェクトの付いたフォーミュラの魔法陣が展開。同時にヴァリアントアームの手の甲のコアから肩まで通ったラインが緑に輝き始めました。

 

「なんだ?その見慣れない術式は」

「この6年………正確には4年ほどで習得した術式です」

 

シグナムも4年前の(イリスから聞いた話では)砕け得ぬ闇事件で見たはずですが、当時の記憶封印で思い出せないのでしょうね。

 

「空破断!」

「っ!」

 

そこから私は左腕で空破断による衝撃波を放ちます。もちろんフォーミュラによる強化が乗っているので今までよりかなり強力になっています。シグナムはそれを防御しますが、数メートルほど後ろへ後退。

 

「レヴァンティン!!カートリッジロード!!」

〈explosion〉

 

それを見て目の色が変わったシグナムはレヴァンティンを剣から連結刃へ変形。

 

「飛竜一閃!!」

「斬空破ぁぁ!!」

 

シュランゲフォームによるシグナムの中距離攻撃と私の斬空破が激突してその衝撃で砂埃が巻き上がります。私は目を閉じ、その隙に旋風脚で加速して一気に接近。

 

「神風流……裂空拳!!」

「紫電……一閃!!」

 

巻き上がった砂埃の中で私とシグナムの攻撃が再び激突。ちょうど私がレヴァンティンの刃面を左拳でぶん殴る形になっています。当然魔力でコーティングしてあるので切れることはありませんが。

その私の左腕はバリアジャケットが肩口から先が吹き飛び、シグナムは右手首に装着してある装甲が吹き飛ぶ結果に。

 

ドワァォォァン

 

そこで再びあのドラムが鳴らされて試合終了のお知らせが。それから私はすべての構えを解いてフォーミュラも解除。右腕も普通の義手へと武装を解いてシグナムに一礼。シグナムもレヴァンティンを仕舞ってから一礼。お互いのテントへと戻りました。

その後はそこで少し休憩し、試験官から今後のことを聞いてから更衣室で私服へ着替えました。そうこうしているうちにユーキ達の筆記試験も終わって合流。着替え中に、シグナムから来たメッセージに近くの喫茶店で待っているとあったので3人でそこへ向かいました。

そこでは約束通りエルトリアで何があったのかをユーキとウリエル、イリスの自己紹介を交えつつ、当たり障りの無いように掻い摘んで説明。天使云々や聖杯云々等の細かいことは言っていません。下手をすればロストロギア云々の面倒ごとになるので。あと、シグナムにかけてある『砕け得ぬ闇事件』に関する記憶の封印もイリスに頼んで解除。その方が都合がいいですしね。

 

「あとシグナム。出来れば私達のことは………」

「主やその友人達………いや、誰にも口外するな、だろう?」

「はい。ウリエルやユーキのことは兎も角として、私の身体がこんなこと(盲目で隻腕)になっている上にリンカーコアまで重度の損傷をしていると知られれば」

「余計な心配をかける、か」

〈リンカーコアの治療自体は順調だから、今日の試験に合格すれば陸士訓練校に入って無事卒業するくらいには治るみたいだけどね〉

 

エルトリアで4年、こちらで2~3年と考えるとかなり重症だったと実感します。だからこそ、今は皆に会うわけにはいかない。今日の模擬戦レベルの魔導行使は問題ないですが、またエルトリアでの事例や闇の書事件のような自体になればリンカーコアは耐えられない。だからこそ、皆のところに戻るのはそれが治ってから。そう決めています。もっとも、イリスの言うようにちゃんと完治しても後遺症は残るとか。少なくとも飛行魔法は二度と使えないみたいです。

 

「つまり、フォーミュラは………その損傷したリンカーコアに無理をさせないための強化用術式というわけか」

「本来の用途は違いますけどね。私のそれはシグナムの解釈で構いません」

「なるほどな」

 

さて、と話に区切りをつけてから席を立つシグナム。代金は私が払おうと申し出ましたが、呼び出したのは私だからと言われて引き下がりました。

 

「ぁ、そうだ。1つ聞いておかねばな」

 

見せから出て別れようというところでシグナムに再び呼び止められる私。

 

「主達にお前のことを聞かれたらどう答えれば良いだろうか?流石に名前を知らないのは不自然すぎるだろ?」

「確かに。それならハルオーネと。ハルオーネ·イングヴァルドと言えば恐らく私とはわかりません」

 

クラウスをクラウス·G·S·イングヴァルドと言うなら私はハルオーネ·S·S·イングヴァルド。クラウスは普段クラウス·イングヴァルドと名乗っていたのを考えれば私のこの名前は本名かつ今まで名乗ったことのない名前なので都合が良いのです。

 

「なるほどな。そういう風に言っておくよ」

「ありがとうございます、シグナム」

「なに、こちらこそ」

 

そう言い残してシグナムは今度こそ私と別れ、行ってしまいました。

ちなみに試験結果は私を含め3人とも無事合格。私の場合史上初の特別認定試験のクリア者ということで少し話題になったそうですが、それはまた別の話。




というわけで(どういうわけだ)今回は短いながら模擬戦回でした。シグナムとの約束………というか忘れてた伏線?回収です。いつかヴィータにもケーキ奢らなきゃ

刹那の本名、もしかしたらアリシアあたりは感づきそうですね(((

感想などあればよろしくですよー。


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第43話 陸士訓練校

どもどもー。ルイスです。

最近休みや仕事上がりはFF14でルレ回すかMHWしかしてないです!


約1年後 新暦72年6月

時空管理局武装隊ミッドチルダ北部第4陸士訓練校

 

「───試験をクリアし、志を持って本校に入校した諸君らであるからして、管理局員武装隊員としての心構えを胸に平和と市民の安全のための力となる決意をしかと持って訓練に励んでほしい。以上、解散!1時間後より訓練に入る!」

「「「「はい!」」」」

 

訓練校敷地内にあるホール、そこに(私やユーキ、ウリエルを含む)今年の武装隊の卵が集まり、入校式を執り行っています。とは言っても、指導員代表の人の挨拶があるのみ。それを終えて部屋割りだけすると着替えて早速訓練。もちろん私も茶色の制服に身を纏ってそこに身を置いています。

そんな一団をブラインドの影から眺める1つの影があったことは………恐らく私以外、ここにいる人は気付いてないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side フェイト

 

───第4陸士訓練校学長室

 

「新人さん達、みんな元気そうですね」

「えぇ。今年も元気な子達が揃ったわ。中には今のあなたよりも年上の子や、7年前のあなた達に負けず劣らずのやんちゃな子達もいるわよ」

 

どうも、フェイトです。私は今、ファーン·コラード三佐とある用事で第4陸士訓練校に来ています。なぜここなのかと言うと、答えは単純でコラード三佐はここの学長だから。

 

「まぁ、あなたとなのは、お姉さんのアリシアはたった3ヶ月の短期プログラムだったけど」

「その説はお世話になりました」

 

実は私達も闇の書事件の後にここのお世話になっているんです。小学校との平行だったから休みの日や放課後の時間の短期集中だったんだけどね。たまに学校休んで、って時もあったかな。

 

コンコン

 

当時のことを少し思い出していると、丁度そこで学長室のドアを叩く音が。コラード三佐がどうぞ、と返事をすると、失礼します、と管理局の茶色い制服の女性2人とまだ年端の行かない男の子が。

 

「ぁー、どもです。本校通信士科卒業生シャリオ·フィニーノ執務官補佐でっす。配置替えになりました」

「同じく本校通信士科卒業生で、シャリオ·フィニーノ執務官補佐と同期の加藤沙綾特務官補佐です!私も引き継ぎという形で配置替えになりました」

「知ってるわよ、シャーリー。それに沙綾も」

 

局員の2人は私の補佐のシャーリー、それに去年末の試験で見事特務官試験に合格したお姉ちゃん、アリシアの補佐の沙綾。前からお姉ちゃんの補佐だったけど、特務官になったから配置替えという名目で引き継ぎ補佐。コラード三佐から見てもこの2人(たぶん特にシャーリーが)やんちゃでよく覚えてたみたい。

 

「それにそちらは………」

「はい!エリオ·モンディアルですっ!」

 

ちなみにこの子は私が保護した子で、今日は特別に訓練校見学の許可をもらって、丁度私の補佐になったシャーリーと、たまたまお姉ちゃんが研修で出張してて、しかもお姉ちゃんの要領がいいもんだから書類仕事はもう残ってないらしく、暇を持て余していた沙綾がその付き添いに。シャーリーと沙綾、同期なだけあって仲がいいから丁度いいやって。ちなみに沙綾は私達同様の短期集中コースではなく1年間ガッツリのシャーリーと同じ通常コース。小学校はどうしたかって?リンディさんを交えて加藤家の親と相談して海外留学って口実でミッドに1年間旅立ったの。沙綾も沙綾で行動力スゴいよね。

ちなみに沙綾の親曰く「小学校の勉強を1年間しなかったくらいで別に大したことないし、本人がやりたいならそれを優先したらいい」らしい。海外留学って口実はその後その両親がでっち上げたとかなんとか。

 

「訓練校のこと、いろいろ勉強させていただきますっ!」

「はい、しっかり勉強していってね」

「シャーリー、沙綾、ごめんね。エリオをよろしく」

 

その後エリオはシャーリーと沙綾に連れられて社会見学に。エリオ、将来は局員になりたいって言ってるから、これもそれを考える良い機会だね。

ちなみにシャーリーは先月から私から希望指名して補佐につけてもらったんだよね。

 

「そう言えば、少し話題が戻るんだけど、今年は珍しい術式の使い手が来てるのよ?フォーミュラって言うんだけど」

「フォーミュラ………?聞いたことのない術式ですね」

「聞いた感じだと魔力等のエネルギーを効率的に運用する為の術式なんだそうよ。ミッド式と近代ベルカ式を足して2で割ったような感じね」

「色々あるんですねぇ………」

 

この時にリストで誰なのかを確認しなかったことを、私は後に後悔したとかしなかったとか。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入校式の挨拶が一通り終わるとホールから出て、それぞれの学科に分かれてからの部屋割り。今年の新人はこの第4陸士訓練校だけで100人近くいますが、一言に武装隊と言っても一枚岩ではありません。文字通り………と言いますか、武装隊の顔、と言うような最前線で戦う武装科、それを本部から支援する通信士科、現場までの送迎や資機材の運搬等の車輌科………他にもいくつかのありますが、それらの学科に分かれるとせいぜい1学科20人前後と言ったところでしょうか?私と同じ武装科には当然ながらウリエル、ユーキ。それとこれは意外、スバルもいます。

 

「2人部屋のルームメイトは当面のコンビパートナーでもある。試験と面接の結果から選ばれた組み合わせだ。円滑に過ごせるよう努力するように!」

 

各グループに分かれてロビーへと移動した私達はモニターに投影された部屋割り表を確認。

 

「イリス、1分だけ()を貸してください」

〈はーい。トランスリンクシステム、起動!〉

 

トランスリンクシステム。それは端的に言えば感覚共有のシステム。例えば、今私がやろうとしているのはイリスが見た光景を私の脳に伝達して私の視覚として見る、というもの。イリスは実体を持っていないので、その目の位置を私のそれと合わせ、さらに私の動きとリンクさせれば疑似的に私の視覚として捉えることが可能になる、というわけです。もちろんあまり燃費が良くないので長くは持ちませんが。今はそれでも長くなって、2時間は持つようになりました。でないと座学が大変なことになりますからね。

 

「私は………っと。34号室ですね」

「私33号室」

「ぁ!ユーキ、私も33!」

 

と言うことはユーキとウリエルが同室。私のルームメイトは………部屋に行けばわかりますし、今はいいでしょう。

 

「刹那さん、何号室ですか?」

 

そこにスバルがやって来ました。私が「34ですよ」と答えると少し残念そうに。ちなみにスバルは32号室らしいです。

 

「まぁ、私もスバルもド近接タイプですから。バランスの問題かと」

「ですよねぇー………」

「ぁ、それはそうと、そのリボルバーナックルはクイントさんからのおさがりですか?」

 

私のレンジは知っての通りクロスレンジ。その中でも密着タイプ。スバルが戦うイメージはありませんが、クイントさんと同型のリボルバーナックルと考えるとほぼ私と同じでしょう。

 

「ぁ、えっと………お母さん、刹那さんがいなくなった少しあとくらいに………任務で………」

「………すみません。知らなかったとはいえ」

「いえいえ!気にしないでください。刹那さんが私のお母さんのことをずっと尊敬しているってことはお父さんから聞いて知っていたので。そういう反応をするのも仕方ないですよ」

 

私がいなくなった少しあとに、と言うと7年ほど前でしょうか?8年前に強さの意味を教えてもらい、それ以降ずっと私の目標であり憧れ、そして尊敬する人。それがクイントさんでした。結局私は1度もクイントに勝つことは出来ませんでしたね。機会を見つけてお墓参りやお線香、立てに行きましょう。

 

「ところで、隣の2人は誰ですか?」

 

そういえばスバルはこの2人は初めてでしたね。

 

「ユーキ·エーベルヴァイン。16歳。刹那の今の仲間」

「同じくウリエル·エーベルヴァイン。17歳よ」

「スバル·ナカジマ、12歳です………って年上!?」

 

予想通りの反応ありがとうございます。この2人、見かけはスバルより小柄なので、年下と思ってたのでしょうね。

 

「こう見えて、ね」

「ぁははは………」

 

ふふん、とユーキは何気にドヤ顔。ウリエルは実際何歳なのかわかりませんが、少なくとも100歳は超えてるのは確かなので本人は苦笑しています。ちなみに本人曰くいつからかは忘れたけど数えるのは止めた、らしいです。

そんなこんなで4人の部屋が近いこともあって、部屋まで移動。そこにオレンジのツインテールの人と青のロングヘアの人の2人も付いてきます。

 

「あなた方は何号室ですか?」

「私は32号室」

「私が34号室だ」

 

オレンジのツインテールの人が32号室、青のロングヘアの人が34号室(つまり私のルームメイト)らしいです。

 

「ぁ、私も32号室!スバル·ナカジマって言います。12歳です」

「ティアナ·ランスター。13歳。正式な班とコンビ分けまでの仮コンビだけど、よろしく」

 

ぁ、スバルが見惚れてますね。

 

「刹那·ストラトス、19歳です。男女のルームメイト………恐らく私は目が見えないので、その辺の理由かと」

「八雲燕、17歳。よろしくね。ま、私の気分の問題もあるから着替えの時に気を付ければ………それ以外は大丈夫でしょ」

 

一方の八雲燕さんはシグナムみたいなクールな感じですね。人によっては男女のルームメイトとなると怒りそうなものですが………決定事項なのかそもそも事前に説明されているのか、諦め半分と言った感じでしょう。

 

「言ってくれれば着替えの時は部屋から出ますよ」

「ありがと。とりあえず、急がない?早く部屋に荷物置いて、着替えてグラウンド行きたいの。準備運動念入りにしたいから」

 

私も、とティアナもそれに賛同。私達も異論はないのでそれに従うことに。ちなみに着替えは八雲さんから先にしてもらいました。

このメンツ………パッと見た感じだと変則組同士を集めた感じですね。特にデバイス。普通は持ち込みはしませんが、私達は持ち込み組。私の場合は右腕がデバイス扱いですし、ウリエルは2振りの愛剣天と獄。ユーキはデバイスは持っていませんが、魄翼の特異性からの特例。そもそも魄翼の異質な魔力が管理局製の量産デバイスが耐えられるはずもなく。他のデバイス持ち込みはクイントと同じリボルバーナックルにローラーブーツのスバル、2丁の(恐らくカートリッジシステム搭載の)銃型のティアナ、柄に拳大の水晶のようなものの付いたレイピア型を持ち込んでいる八雲燕の計6人。

レアスキル等も考慮したら私、ユーキ、ウリエルはダントツ変則でしょう。

 

「次!Bグループ、ラン&シフト!」

 

その後グラウンドにて準備運動の後に初訓練スタート。最初はラン&シフトで、石壁やカラーコーン等の障害物を突破して陣形展開する内容になります。キモになるのはスピードと状況判断能力。仮に実戦だとすると陣形展開が遅れれば作戦に支障が出ますし、ヘタに突っ込み過ぎると待ち伏せを食らって返り討ちに………も、ありえます。

 

「燕、レンジは?」

「クロスからミドル。少なくとも刹那よりは後ろね。背中は任せて。エクシア、お願いね」

〈了解〉

「わかりました。任せます」

 

デバイスのレイピア(名前はエクシア)に一言声をかけるとAIが入っているのか返事が返ってきます。

ちなみに着替えの前に名前をお互いに呼び捨てで呼ぶようにしました。コンビなのでお互いの親密度も大切ですし、呼びやすいですし。

燕は武器がレイピアなので同じクロスレンジかと思ったのですが、ミドルも得意な様子。私もできなくはないですが、支援には不向きですから。

ラン&シフトを卒なく終わらせ、その後の垂直飛越。これは単純に相方を押し上げて上から引っ張りあげてもらう。飛行魔法のない陸戦魔導士の場合、かなり重要となる立ち回りです。私のように空中跳躍でもできるなら話は別ですが………

初日の訓練はこれらに加えて体力増強系のメニュー。最後にペアで軽いスパーリング。スバルとティアナのようなクロスとミドル~ロングの組み合わせも多いのでお互いにお互いの攻撃をいなし合う程度ですが、私と燕、ユーキとウリエルはそこそこ白熱。他の訓練生はもちろん、教官も唖然としてました。というか燕、私の動きに合わせて動いている時点でかなりの手練と推測できます。

ぇ?スバルとティアナはどうかって?ラン&シフトでスバルがティアナをスタートダッシュで吹っ飛ばした挙句、垂直飛越でティアナを空中30メートルくらいまでぶん投げすぎてペナルティが重なって反省清掃してました。

ま、それも2ヶ月も訓練を続ければ力の制御もかなりできるようになり、最初はズッコケだったスバルとティアナも今では優秀な方に入るペアに。最近ではユーキ、ウリエル、燕と私の4人でやってる朝晩の自主訓練を一緒にやるようになって、さらに伸びてきました。で、今はその晩の自主訓練の後。

 

「これで来月までの予習は一通り終了ですね」

「えへへ………ごめんね、要領悪くって」

「要領が悪いと言うより自身のバカ力を扱いきれてなかっただけ」

 

そう言うユーキも何やら思うところはあった様子。ユーキ自身永遠結晶がらみで自身の力を制御しきれず暴走させた過去があるので、そこまで深刻ではないとはいえ他人事とは思えなかったんでしょう。

 

「ま、何にせよよ。早めに矯正出来て良かったんじゃない?はい、ジュース」

「ウリエル、ありがとね。それにしても、燕もスゴい。刹那とほぼ互角だよ?」

「ん?あぁ、一応武術の心得はあるからな。さすがに元世代最強がペアなんだ。張り切りもするさ」

「ぇ?刹那って名前からまさかとは思ってたけど………マジで!?」

 

ウリエルが買ってきたジュースをみんなで受け取りながら訓練後のクールダウン。スバルが初日やその後しばらく暴走していたのは単純に自身の力を扱いきれなかったから、というだけ。なので、その使い方をみんなで教えながら私達も今後の予習。それが私達の自主訓練の主な内容。まだ2ヶ月というところで矯正できたと考えればむしろ要領が、いい方だと私は思いますよ、スバル。ティアナはコンビが使えないと迷惑だから、とか理由つけてますが、純粋にスバルのことを思っての行動なんでしょうね。

ちなみにジュースは6人で輪番で奢ることにしてます。

で、そのクールダウンの雑談で昔の私のことが出て来て、口をあんぐりと開けて驚くティアナ。

 

「あれ?ティアナには話してなかったですか?もう8年も前ですが、そう呼ばれてましたよ」

「私も試合見たよ!当時、私のお母さんがセコンドしてたから!」

「私もテレビでだが、見た。私達くらいの年代で武術をやってる人の中では知らない人はいないし、格闘技者ならみんなの憧れだな」

 

世間って狭いわ………と半ば呆れるティアナ。丁度そこに夕方6時を示すチャイムがなり、慌てて着替えて戻りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

sideスバル

 

「シャワーが混む時間になっちゃったねぇ」

「ぐずぐずするからよ」

 

あれからすぐ、私達は急いで片付けてシャワー室へ。けど、当然人がいっぱいで混む時間帯。いつもならもう少し早めに来るんだけどね。

幸いまだ空きはあるみたいだから、さっさと訓練着を脱いで、ずっと首にかけてるなのはさんの写真も服の上に置きます。

 

「あんたほんとに、その写真ずっと持ち歩いてんのね」

「うん、刹那さん同様に私の憧れの人だから、お守り代わり!雑誌の切り抜きなんだけどね」

「うんー?この人誰?」

 

気になったのか、服を脱ぎながらお守りの写真をのぞき込むウリエル。

あれ?ウリエルはこの人のこと知らないのかな?

 

「戦技教導隊の高町なのは二等空尉。私と同じ16歳」

「管理局の若手の中のエースオブエースね」

「ふへぇ………」

 

そこですかさず(もう脱ぎ終わって全裸状態の)ユーキからフォローが。失礼だとは思うけど、同じ年齢なのにこの体格の差は不公平を感じる!いや、私が言っても嫌味になるんだけどね。

 

「すごい人なんだよ!9歳の頃に既にもうAAAランクで次元災害止めたとか、破壊不能って言われてた危険な兵器を完全破壊したとか!」

「流石にそれは噂でしょ。どういう9歳よ」

「一言で言うなら天才。次元災害や危険な兵器については私は居合わせてないからわからないけど、AAAランクってのは本当」

「マジで!?」

 

ランスターさん、さっきから驚いてばかりだなぁ。

 

「少なくとも私が知り合ったなのはが12歳の時のランクはSだった。その時本人や当時の彼女の上司から聞いたから間違いない。ぁ、危険な兵器ってのに関しては刹那の方が詳しいかも。なのはが9歳の頃は友達だったって言ってたから」

「噂、事実だったんだ………」

「凄い人ってのは知ってたけど、そこまでとは………」

「私はなのはさんの幼馴染であるフェイトさんを推したい。同じ年齢で同じランク。恐らくその事件の時も関与してる。私の目標」

 

さすがの私もなのはさんの噂に関しては半信半疑だったけど………本人から聞いたとなると信憑性はすごく高いね、こりゃ。八雲さんがフェイトさんを目標にしてるのは初めて聞いたけど、2人とも有名人だからね。

でも私は飛行もミッド式も適正なくって、最終的に自分でこの陸上を選んだ。空隊に行きたい気持ちはあるけど、でも適正がないんなら仕方ないもん。

その話をしてる時に聞いたんだけど、ランスターさんは空隊志望らしい。その辺のこと詳しく聞きたかったんだけど、必要以上に馴れ合うつもりはないって言われちゃって少しショック。私個人的にはランスターさん、良い人なんだけどなぁ。

 

それからも至っていつも通りの訓練と座学の日が続きました。そんな数日後。

 

「これが本日までの訓練成果発表だ。教官判断の総合成績だが、各自参考にするように!」

 

今日の分の訓練と座学が一通り終わった後、私達はロビーに集められて、何かと思ってたらいわゆる途中成績発表みたい。

 

「ふぇぇ………こんなんあるんだ」

「そりゃああるわよ。訓練校の中でも競争はあるんだから」

「実際、人を伸ばす最高効率なのは誰かと競わせることだしね。私もミカ姉超えたくて頑張ってたの思い出す」

「私もクイントさんを目標にずっとやってきましたしね」

 

やっぱりみんな少なからず目標があるんだね。

 

「あたし達どれくらいかな?」

「どっかの誰かさんのせいでスタート出遅れたけど、最近はほとんど叱られないしそんなに悪くないと思うけど」

「スバルは座学の成績良いから上の方狙える。表が見えないけど」

 

当然訓練生みんなが集められてるわけだから、掲示されてるモニター前は人だかりが。その後の方にいる私達にはモニターは見えるけど何が書いてるのかは全くわからない。

 

〈私が見てこよっか?〉

「んぇ!?」

 

と、そこにどこからともなくあまり聞き覚えのない声が。どこだろ?

 

「あぁ、イリスですか」

 

その声の主は刹那さんの右腕の甲にあるコアからで、そこから半透明の手の平に乗るくらいのオレンジのサイドテールの女の子がすぅーっと出てきました。

 

「私の義手の制御AIをしているイリスです」

〈イリスよ、スバルとティアナもよろしくね〉

 

八雲さんが含まれてないってことはもう知ってるってことなのかな?まぁ、同部屋だし当たり前か。

イリスさん、どうも実体がないみたいですぅーっと今度は姿を消し、少ししてまた戻ってきました。

 

〈えーっとね、まず32号室ナカジマ&ランスター総合2位、最初は不安こそあったけどバランス良く良い成績。33号室エーベルヴァインペア総合同率2位、座学が………特にウリエルが少し低いけど実技が高い。34号室ストラトス&八雲総合1位言うまでもなく優秀って一言コメントあった〉

 

2位!?本当に!?

 

「やったね!すごいね!」

「うん!これならトップも狙える!」

「それはない。だって刹那を下してトップになるのは私達」

「うぅ………ごめんね、ユーキ。私が座学しっかりしてれば」

「もちろん、受けて立ちますよ。簡単にトップを譲るつもりはありませんが」

「これはうかうかしてられないな」

 

トップが見えてきた私とランスターさん、ウリエルさんとユーキさん。トップの座を奪われまいとする刹那さんと八雲さん。よぉし、次はトップになる!

 

「他の上4人はともかく、あの子士官学校も空隊も落ちてるんでしょ?相方はコネ入局の陸士士官のお嬢だし」

 

うん?

 

「格下の陸士部隊ならトップ取れると思ってるんじゃない?」

「恥ずかしくないのかしらねー」

 

明らかな悪口、たぶん私達の成績がいいからそれを妬んでるってことなのかな。ほら、私とランスターさんズッコケコンビだし。

私はそれに怒りを覚えたティアナを半ば無理矢理外に連れ出して行きました。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成績発表中に聞こえた明らかな罵倒。向けられた先はスバルとティアナ。大方、私や燕、ウリエルとユーキはペアとして変則すぎて(私に至っては元世代最強という明らかな確証もありますし)半ば超えるのを諦めているんでしょうけど、スバルやティアナにはそれはない。それなのにトップ3に入っているのが気に食わないのでしょう。

スバルがティアナを無理矢理外に連れ出したのも………フォローしておかないとですね。

 

「私、2人のとこ行ってくる」

「ぁ、それなら私も行く」

 

そんな私の考えを呼んだのか、たまたまなのかはわかりませんが、スバルとティアナのフォローは任せましょう。

私が頷くと2人はすかさず外へ。私はそれを確認してからわざと目立つ様に大きくため息。

 

「はぁぁ……自身の成績が振るわなかったのはわかりますが、それを他人のせいにするとは………愚かにも程がありますよ?」

「同感だな。スバルとティアナの出自はともかく、仮に2人が陸士部隊を舐めていたとしても、それを超えられないのなら貴様達にそれをどうこう言う資格はないな。恥ずかしいのはどっちやら」

「あんだと!?」

 

わざと聞こえるように罵倒していた人に、こちらもわざと聞こえるように言い返します。燕もやはり同じ思いのようで。そうすると、恐らく最初に言った人でしょう、男の人が出て来て私の胸倉を掴んできました。

ちなみに私が燕を後に押しやったので(本人は不満そうでしたが)、危害を加えられているのは私だけです。

 

「だってそうでしょう?あの2人は彼女らなりに努力して今の成績なんです。自身の成績の悪さを人に八つ当たりするのは愚の骨頂!ここは実力が物を言うんです。ここにいることに誇りを持っているのなら、文句があるのなら彼女らを超えてからにしてもらいたい!」

「そもそもだ。スバルがコネ入局だとしても、普通なら士官学校が定番。普通なら陸士訓練校なんていれないしな。それにティアナとはよく自主訓練してるが、今いる場所を卑下するほど腐った人格ではない」

 

ちっ………と舌打ちをして掴んでいた私の胸倉を離してからどこかへ行ってしまいました。

その後私達もスバルとティアナを追って外へ行くと、もう機嫌を直し、むしろ上機嫌になっていました。

ストレス発散にスバルのシューティングアーツを基本だけ教える、という話になったので興味があるのなら、と私の神風流も。フォーミュラと併用した術式は無理ですが、以前の覇王流なら可能ですしね。




途中でフォーミュラについてコラード三佐が解説してますが、大雑把には私の独自解釈だったりします。その当たりはご容赦ください。
コミックとスバル、ティアナコンビの順位が違いますが、それも刹那達の影響ということでこれもご理解ください。

それと、人物設定に八雲燕を追加しました!

感想、評価などあればよろしくです。


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第44話 訪問者

どもどもルイスです。

ネルギガンテがまったく宝玉くれなくて装備作成が滞っています!ガンランとか双剣とか!

ちなみにちょくちょく刹那視点時に視覚的な表現をしていることがありますが、刹那本人には見えてません。表現上わかりやすくそうしてるだけです。


───約1ヶ月後

 

side ユーキ

 

私達が陸士訓練校に入校してかれこれ3ヶ月。武装隊としての基礎と応用を詰め込んでいく訓練も佳境に入ってきて、最近ではベルカ式とミッド式に別れての訓練も増えてきた。私は古代ベルカ式だから本当ならベルカ式の訓練になるんだけど、中~遠距離で戦うからミッド式と一緒に訓練。ちなみに刹那とスバルはベルカ式の打撃系チームで、ウリエルと燕は同じくベルカ式だけど武器戦闘系チーム。今やってるのは障害物を避けて林の奥にある的に魔力弾を当てるヤツで、魔力弾のコントロールが大切になる。

 

「32番、ティアナ·ランスター行きます!」

 

ちょうど順番の回ってきたティアナがデバイスの銃を構えて魔力弾を2つ生成し、発射。シュテル程じゃないけど、そこそこ早い弾速で木を避けていき、1つは的の中央、もう1つは的の端に着弾。

 

「よーし、いいぞ32番!」

「ありがとうございます」

 

教官が褒めると同時に周りからもおぉー、と感嘆の声が上がる。事実、弾速や命中精度、魔力弾の生成数を考慮したら1番優秀なのがティアナだからね。他の人は1つだけだったり、2つ生成出来ても精度が甘かったり弾速が遅かったり。みんな今の目標は事実上ティアナってところ。最初は1番年下のティアナを妬む人もいたけど、今では文字通り実力で黙らせてる。

 

「次、33番。ユーキ·エーベルヴァイン。行く」

 

ティアナと入れ違いに魔力弾発射の立ち位置に立って、両腕を前に翳す。その前方に魄翼の赤黒いモヤを展開し、すぐにそれは弓矢の形を形成。

 

「威力減衰99%。ブラッドフレイムアロー·ダブル!」

 

私はそれを2つとも思いっきり引き絞り、放つ。弾速だけならレヴィやフェイトのランサー並あるそれは、障害物に直撃する直前にサッと横スライドして避け、それを数回繰り返してから2つ同時にカカッと軽い音を立てて的の中央に突き刺さる。

 

「相変わらず、弾速と言い精度と言い、規格外だな。33番は」

「ありがとうございます。とは言っても、的の位置も障害物の位置もハッキリしてるので、私の矢が通るべきルートとそこにかかる時間が正確に出るから、コントロールしやすい。流石にこの制度は実戦では無理です」

「いや、それでも普通は無理よ………」

 

当然、今言ったように通るべきルートさえハッキリしてればこの精度は出せる。実戦では敵味方動き回るから流石に、ね。ちなみに普段後衛してるときは今のブラッドフレイムアローの劣化版、フェニックスアローを連射して使ってる。こっちは連射が効かないから。ま、とは言っても訓練校のレベルだとティアナの言う通りかな、とも思う。

みんな、順調にレベルアップしていってる。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「刹那さん、お願いします!」

 

ベルカ式の打撃系チームで訓練中の私とスバル、もうすぐミッド式との合流の時間ですが、それまでの締めにバリアバッグ打ち。次がスバルのカートリッジを使った打撃を受けるので、バリアバッグ持ちを私が代わります。

 

「刹那さん、すみません。お願いします」

「気にしないでください。スバルのアレを止めれるのは私しかいないので」

「俺達男が3人掛かりで止められないのが情けないです」

 

精進あるのみですよ、とフォローを入れながらバッグを支えて腰を落とす。

 

「いつでもいいですよ!」

「はい!ロードカートリッジッ!!!」

 

スバルの一声でリボルバーナックルからカートリッジが排出され、ホイールが回転を始める。

 

「でぇぇぇぇっ!!」

 

ローラーブーツで加速しながら私の支えるバリアバッグへ一撃。ゴンッ!とまるで岩でも殴ったかのような音とともにバリアバッグが大きく『く』の字にへし曲がります。

 

「っ!!」

 

私はそれを少しばかり後方へずり下がりながら勢いを殺して止めきります。ちなみに他の人がやれば3人掛かりで10メートルは吹き飛ばされます。

 

「ふぅ………流石スバルです。さらに強くなりましたね」

「えへへー。ありがとうございます。ぁ、次はあたし()が持つから刹那さんどうぞ!」

「ぁ、なら俺も行きます!刹那さんの受けてみたいです」

「お願いします」

 

バリアバッグ持ちをスバルと交代すると、先程までバリアバッグを持っていた人ともう1人、スバルの補助でバリアバッグを支えに。

 

「んー。とりあえず何連くらいで行きましょう?3連は大丈夫ですか?」

「「無理!」」

 

では2連で、と返しつつ構えてからフォーミュラを展開。

 

「爆砕裂空拳………2連!!」

「っぉぉぉぉ!!のぁぁぁぁ!!!」

 

旋風脚の加速で一瞬で間を詰め、左の裂空拳をお見舞い。スバル他2人でなんとか踏み止まるも、追ってくるもう一撃の衝撃で吹っ飛ばされる。

 

「くっそぉぉ………今日こそはって思ってたんだけどなぁ」

「でも、あたし達単発なら止められる様になったし力はついてるよ!」

「その単発を止めて一瞬気が緩んだ隙に追撃が来るからな。分かってても止めるのキッチィよ。流石世代最強だ」

「元、ですけどね。それに事故で利き腕(右腕)失ってから、その単発の威力も落ちてますけどね」

 

うへぇ、と顔を引き攣らせる3人を1人ずつ手を差し伸べて起こしながら、今度は私がバッグを持つ。

 

「ミッド式連中との合流までもうちょっとあるな。もう1周くらいバリアバッグ打ちやっとくか」

「じゃあ私がバッグ持ちやるよー」

「お願いしますね」

 

みんな共々力を付けていってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ウリエル

 

「よっ!はっ!」

 

ベルカ式武器戦闘系チームと訓練中の私。今は燕とコンビを組んで林の中を駆け抜ける。これはそういう訓練で、山の中の道無き道をダッシュして、体力増強はもちろん、判断力やバランス感覚を養う。

私は跳んだり跳ねたりして茂みや木々を超えていく。時たまジャンプ中に適当な木を蹴って三段跳をしてみたり、クルンと一回転してみたり。

 

「燕!」

「ん、了解!」

 

私は私に合わせて隣を走る燕に声を掛け、返事が聞こえると同時に横回転しながらジャンプして目の前の茂みを越える。その目の前には障害物の木が生えていて、このままだと直撃コース。けど、そんなこと心配ないない。

私はちょうど私の逆回転で私の隣を跳んだ燕と掌を重ねてお互いを押す。それで元々してた回転と押した力の慣性で最後の障害物を避けて広場に着地し、ゴールの旗を越えて止まる。それから遅れて同じチームの人達もゴール。

 

「はぁ、はぁ………八雲、エーベルヴァインも………早、すぎだろ」

「ほとんど息切れしてないし………ホントすげぇよ」

「まぁ、私はこういうのは前からやってて慣れてるし」

「私の武術でも鍛錬の一環で似たようなことしたしな」

 

他の人達が私と燕の動きに着いてこれないのは仕方ないかな、と思う。要は今までの積み重ねと慣れがあるからね。でも、それを抜きにするとこの3ヶ月でみんな実力を伸ばしてる。スパーリングで切り結ぶだけなら天か獄だけの一刀の私にはみんな着いてこれるしね。ちなみにその両方を抜いた二刀流になると、燕でも手を焼くらしい。まぁ、燕はレイピアで私の剣と切り結ぶには相性悪過ぎるからそれこそどうしようもない。

 

「じゃあ、少し休んだらみんなと合流しよ。時間もちょうどいいんじゃない?はい、ドリンク」

「サンキュ。確かに、これ以上は無理だ」

「私も同意だ。ウリエルを早く超えたい気もあるが、無理な訓練は体を壊すしな」

 

私がみんなにドリンクを渡してから輪になって座り込む。ミッド式、ベルカ式打撃系、ベルカ式武器戦闘系と別れたらほぼ2:1:1くらいに別れてベルカ系は各5人やそこらになるからこんな雰囲気にもすぐなる。

 

「にしても、俺らん中で1番年下で見た目こんなに可愛くてか弱そうな少女のウリエルが1番強いんだから、俺らももっと鍛えないとってよく思うよ」

「褒めたところで何も出さないよ?」

 

一応、もう100は超えてるから逆に1番年上なんだけどね。言うわけにいかないから言わないけど。

 

「今のみんな見てたら少し前の私自身を思い出すな」

「そんなに強いのにか?」

「私なんてまだまだ。ミカ姉って言って私が1度も勝ったことない目標の人がいてね。私も頑張ってたもん」

「おいおい、ウリエルの時点で規格外なのにそれ以上とか………」

 

ま、今でもミカ姉が目標なのは変わらないけどね。いつかはサシで勝ちたいし。この前のはミカ姉暴走してたし、刹那と2人掛かりだったし。

 

「ま、何はともあれだ。目標があれば強くなれる。それだけで十分じゃないか?」

「だね。停滞こそ最大の敵だよ」

「とどのつまり、俺らの当面の壁はウリエルってことになるのか?」

「スタートから壁高ぇな!?」

 

そんなこんなで談笑しながらミッド式との合流まで時間を潰した私達です。こんな緩い空気でもみんな着実に強くなってるよ!

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、今週の訓練はここまで!なお、週末の休暇中はグラウンド整備が入るので、自主練は禁止だ。週末訓練組もたまには休め」

 

「はいっ!」

 

一通り訓練を終え、グラウンド整備のアナウンスを聞いてから解散。皆、滝のようにかいている汗を流そうとシャワー室に向かいます。

 

「ストラトス、八雲。ちょっと来い」

「………はい?」

「なんですか?」

 

私もシャワー室へ行こうとしたところで教官に呼び止められ、教官の元へ。

 

「ストラトスに来客があった。ロビーは訓練終わりの人で混むだろうから部屋で待ってもらっている。それを伝えたくてな」

「私に来客………誰かわかりますか?」

 

何でも私に来客が来ていて、私と燕の部屋で待っているとのこと。確かに、先程の私同様訓練の汗を流すのに宿舎のシャワー室へ向かう人でロビーは混むのはいつもの事なので、今来る人を待たせるのは不向きでしょう。汗の臭いとか気になる人も多いでしょうし。

燕も呼んだのは単純に私達の部屋で待たせているから、でしょうね。部屋に戻って見知らぬ人がいたら驚きますし。

 

「んー………私が直接会ったわけではないが、何でも本人から会うまで秘密にしてくれ、とのことらしい。ただ、ストラトスの知り合いの本局魔導士とのことだ」

「刹那、心当たりはあるのか?」

「そうですね………認定試験の相手に指名したシグナム………は秘密にする理由がありませんし、彼女の性格上最初から名乗るでしょう。新宿臨時支局でお世話になったクロノ提督にしても同じくですし………わざわざ私を訪ねるとなると………わからないです」

「出てきた候補がやたら有名な人なのが気になるが………ま、会えばわかると本人が言ってるんだ。訓練後だからシャワー後まで待つとも言っていたらしいから早めに済ませてくるといい」

「わかりました」

 

誰かわからないので腑に落ちませんが、待たせすぎるのも何なので、私と燕は急ぎ足でシャワーを浴びに向かいました。浴び終わってから燕に念話を入れると、もう少しゆっくり浴びる、とのことで(そもそも来客は私に来ている訳ですしね)私は一足先に自室へ向かうことに。

 

「すみません、お待たせしました。刹那·ストラトスでs………」

 

誰が来客かわからないので、とりあえず名乗りながら恐る恐る部屋に入ります。が、そこで私は言葉に詰まりました。

 

「Zzz………」

 

青の管理局の制服(上着は脱いで白のシャツ)を着て赤がかった金髪をアップで纏めた女性が私のベッドで寝ていたら、そうなるでしょう?しかし、こんなことをする女性でこの容姿この髪型、この魔力反応は私の記憶には1人しかいません。

 

「ほら、起きてください。()()()()!」

「んぅ?んんぅー!………待ちくたびれて寝てしまってました」

 

それはヴィヴィことオリヴィエ·ゼーゲブレヒト。私が夜天の魔導書内から連れ出したクラウスの想い人であり、今のアリシアの相棒兼融合騎。確か階級は………三尉でしたっけ?

で、そのヴィヴィの肩を揺すって起こすと、伸びをしながら起き上がって、私のベッドから出てきました。

 

「お待たせしてしまったのは申し訳ないんですが………なぜ私のベッドで?」

「だって見ず知らずの人のベッドに寝転ぶわけにいかないじゃないですか」

「それはそうですが、論点はそこじゃないですよね!?」

 

細かいことは気にしないでください、と(これも私の使っている)部屋備え付けのデスクのイスに掛けていた制服の上着を着るヴィヴィ。

 

「全く………先に帰ってきたのが私だからよかったですが、来客が部屋で待っていると知っていてもルームメイトが先ならヴィヴィはただの不審者ですよ?」

「んー。それは困るかも?ですね」

 

なぜ疑問形なのかすごく気になりますが、今はそれどころではないですよね。

 

「刹那、戻ったぞ。結局来客は誰だったんだ?」

「ぁ、こちらがルームメイトさんですか?」

「!?」

 

丁度そこへシャワーを浴び終わった燕も帰ってきました。部屋に入るや否や、そこに本局魔導士がいるとわかると、ビシッと擬音が聞こえそうな勢いで敬礼する燕。

 

「刹那·ストラトス陸士候補生の仮コンビでルームメイトの八雲燕陸士候補生であります」

「ぁ、ご丁寧にどうもです。ヴィヴィ·()()()()()特務官補佐です。階級は今は三尉ですね」

「………はい?」

 

ビシッとした敬礼で自己紹介する燕に緩い感じの敬礼と自己紹介で返すヴィヴィ。

………は良いとして、今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたんですが?

 

「本題に入る前に疑問が増えました。なぜヴィヴィのファミリーネームがストラトスなんでしょうか?」

「だって私の本名、名乗るわけにいかないじゃないですか。カリムには話してますけど、局内絶対混乱しますよ?」

「いや、確かにそうですけど………それならテスタロッサやハラオウンでも良かったのでは」

「それもありだけど、折角なので刹那のお姉ちゃんを名乗ろうかと思ったんです。その方が何かと好都合ですし、面白そうですし」

 

絶対に後者が本音ですよね………

部屋の入口でポカーンとしている燕には本当のこと言った方が良い気がしてきました。とりあえずヴィヴィにアイコンタクト。ヴィヴィが頷くのを確認してから開いたままになっていた部屋の扉を閉めて施錠し、話を切り出しました。

 

「燕、今から話すことは他言無用でお願いします。局内でもひと握りしか知らないことだと思うので。驚いても声を上げないでくださいね」

「は?なぜそのようなことを刹那が知っているのだ?」

「刹那には刹那の事情があるんですよ」

 

コホン、と1つ咳払いをしてからヴィヴィが口を開きました。

 

「もう一度名乗らせてください。私はヴィヴィ………なのは本来はただの愛称。本当の名前はオリヴィエ。オリヴィエ·ゼーゲブレヒトと申します」

 

またポカーンとひている八雲燕。まぁ、無理もありませんが。

 

「………すまん刹那、私の聞き間違いか?何百年も前に亡くなったはずの名前が今聞こえた気がしたんだが」

「聞き間違いではありませんし、事実ですよ。彼女は聖王教会が崇めている聖王オリヴィエ本人です。7年前の闇の書事件で夜天の魔導書から私が連れ出したんです」

「連れ出されちゃいました」

 

肉体は作り物ですけどね、とヴィヴィから補足説明。

 

「で、その名前を名乗ったら大変なことになるでしょう?なので、愛称のヴィヴィと刹那のファミリーネームを名乗ってるんです。ぁ、年齢も20なので刹那より年上。つまりお姉ちゃんですよ?」

「夜天の魔導書の内部空間でもそのような素振りをしてましたが、戸籍上だけどはいえ、本当に姉になるとは………」

「………要約すると、7年前に起きた事件の最中に現代に現界してしまい、本名は名乗れないから知り合いたる刹那の姉として生きている、ということで間違いないか?」

「そうですね。概ね燕の解釈で合ってます」

 

むしろ、この短時間で入ってきたすごく多い情報で、よくここまで纏められたものだとも思います。

 

「私がここにいることはシグナム以外は知りませんが、シグナムに教えたハルオーネ·イングヴァルドという私の別名もヴィヴィなら知ってて当然ですよね」

「そういうことなのです」

「………ところで、そろそろ本題に入らないか?かの有名な聖王陛下がわざわざ遊びに来ただけなわけないでしょう?」

 

呆れに呆れてしびれも切らせたのか、燕から本題を切り出していきました。

 

「あぁ、そうでした。刹那、明日暇ですよね?」

「今のところは何もありませんね」

 

ちょうど良かった、と手を打ってから真剣な眼差しでヴィヴィが口を開きました。

 

「アリシアの看病、頼めますか?」

 

ヴィヴィが来てから何度目でしょう。ヴィヴィの発言の意味を私が理解しきれなかったのは。




これを書いているあいだにネルギガンテの宝玉1つ泥!その間に私のフレンドは5つほど!

泣いていいかな(இдஇ`。)

それはともかく、感想などあればよろしくです!


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第45話 天才の休息

どもども、ルイスです。

メイン武器で大剣とヘビボ使ってるんですが、最近双剣にもハマってます。あとキリンの女装備可愛いです!

ちなみに今回のは少し(かなり?)甘いと思います。ブラックコーヒーいるかも?(((


side オリヴィエ

 

───3時間程前 管理局本局

 

「失礼しました」

 

約1週間ほどの任務を終えたアリシアと、その補佐をしている私と加藤紗綾。今はアリシアが執務官長へその報告をし終わったところです。

任務そのものは自然保護隊からの応援要請があった違法密猟組織の摘発だったんですが、特務官試験に受かってから半年も過ぎましたが、研修と任務を絶え間なく受けてきてほとんど休まないアリシア。いえ、全く休んでないというわけではないんですけどね。何かと遠征系の任務をよく受けて遠出し、それが終わっても休暇をとるのは大抵は1日のみ、のような日々が続いています。

 

「ふぅ〜………今回も空振りかぁ」

「空振りって?任務は上手くいったんだよね?」

「任務はね。刹那が今いる世界………名前も思い出せないけど、そこの手掛かりだよ」

「5年前からずっと探してますからね」

 

刹那がいなくなってから2年間は生きているのかも定かではなかったんですが、2年前の事件──何故かどんな事件だったかは思い出せませんが──でどこかの世界で生きていることがわかり、ノーヒントに変わりはないですが、遠征系任務を好んで受けては刹那を探し続けているアリシア。

特に去年末に特務官となってからはその行動に自由度が増し、それまでは行けなかったような遠くまでも足を伸ばし始めました。それから半年と少し、未だに手掛かりすら見付かってません。

今日はまだ昼過ぎですが、長期任務明けなので報告を終えたらもう上がりなので、このままの足でアリシアの借りているマンションへ。紗綾はまだ書類の仕事が残っているので本局に残ってます。

 

「アリシア、たまには休まないと体を壊しますよ?」

「んぇ?へーきへっちゃらだよ。刹那見つけるまで止まれないからね」

「ですが、体は資本とも言いますし………」

 

本人は元気にしてますが、先程の任務以降多少顔色も良くない気もするので、少し長めに休むことを勧めてみますが、本人は大丈夫と言います。

 

「………わかりました。けど、今日と明日はちゃんと休んでくださいね?」

「もぉー。ヴィヴィはお母さんみたいだなぁ」

「心配なんですよ!」

 

まぁ、これくらい冗談を言い合えるのなら大丈夫なんだとは思いますが。

私はアリシアの部屋のドアを閉め、モニターを展開したその時です。

 

ドサッ

 

「っ!?」

 

部屋の中から何かが倒れるような音が聞こえて私は展開したモニターをすぐに消し、ドアを開けました。

 

「はぁ………はぁ………」

「アリシア!?」

 

そこで見たのは床に倒れるアリシア。私が咄嗟に駆け寄って額に手を当てると、かなりの熱を持っていて、すぐに風邪だとわかりました。そのあと私はアリシアをベッドまで運んでシャマルに連絡して来てもらって診察。幸いただの過労からくる風邪だとのことで、2、3日ゆっくり休めば治るだろうとのこと。

ただ、1つ気掛かりなのは………

 

「今日は私が診ていれば良いとして、明日なんですよねぇ」

「私、1人でも大丈夫だよ?」

「高熱で動くことすらままならない状態で言われても説得力ありません」

 

明日は私も紗綾も外せない会議が入っていて、アリシアに付き添うことが出来ません。なのはや妹のフェイト、その補佐のシャーリーも似たような事情でNG。八神家も外せない仕事があるとかで。

 

「ぅーん、どうしましょう?」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───翌日

 

「それで、シグナムが引き受けた特別認定試験の模擬戦の私がここ(第4陸士訓練校)にいるのを思い出して訪ねてきた、と」

 

翌日。ミッド中央部の少し外れ。そこの街路樹の脇にヴィヴィ、ユーキと並んで歩く私の姿がありました。

 

「大体はそんなところですね。刹那の本名、ちゃんと知ってますから。何か理由があったんですよね?会えない理由が」

「オリ………ヴィヴィのことを完全に失念していた刹那の失態」

 

ユーキ、今オリヴィエって言いかけましたね。慣れてないだけでしょうけど。ちなみにユーキにも来てもらったのは2つ理由があります。

1つはユーキはアリシアとは少なからずの知り合いだから。砕け得ぬ闇事件で顔見知り(もっとも、今は記憶封印で見ただけでは思い出せないでしょうけど)ですから。

2つ目、看病するのが幼馴染のアリシアとは言っても異性だから。例えば汗を拭いたり、着替えさせたりすることも必要ならあるでしょうし、そういう時のために。以前は普通にお風呂とかも一緒に入っていた私とアリシアの仲なので下手をすれば私なら良い、とか言い出しそうですが、今は大人でアリシアも(小柄ですが)1人前の女性。やはり着替えや汗ふきはユーキに任せた方がいいと言う私とヴィヴィの結論から。何かあれば人手もいるでしょうしね。買い物とか。

私の右腕のコア内にイリスがいますが、彼女は基本的に半実体。軽く触るくらいしか出来ず、それ以上のことをしようとするとすり抜けてしまいます。マテリアライズしようにも媒体がありませんしね、今は。

 

「まぁ、遅かれ早かれ会わなければいけませんでしたから。それが大幅に早まっただけですよ。理由と言っても私のリンカーコアの損傷が完治してから、程度ですし」

「でないと余計な心配をかけるからって。目が見えなくて隻腕で損傷の後遺症で飛べなくなってるから今更だけど」

「ユーキ、ズバズバ言いますね」

「ヴィヴィに隠し事はいけないってだけ」

 

隠していたつもりは無いんですけどね。

 

「ナノマシンの影響で術式も変わって、そのせいで魔力運用も変わり、覇王流を神風流に改名したんでしたっけ?」

「そんなところ。魔力とフォーミュラのナノマシンの奇跡の適合ってところから神風………奇跡の力って意味で」

「名付けたのはユーキと今はエルトリアにいるユーリですけどね。それはそうと………」

 

アリシアの住んでいるマンションに案内してもらいながら、私は魔力探知で辺りを見渡します。

 

「この辺り、かなり立地が良いですね。都市部に近くてスーパーもすぐそこにあるので利便性が良さそうです」

「確かにそうですね。部屋を取れたのもほぼ奇跡だったって言ってました」

 

この周辺は都市部の外れ、と言ってもそこそこ開発はされていて、マンション等の高層住宅やスーパーや飲食店を始めとした各種店舗が多く、近くになんでもある立地。さらに都市部に近いので通勤にも困らない。あとから聞いた話ですが、この辺りに部屋を取れたのもたまたまアリシアが部屋探しをしているタイミングでたまたま引っ越す人が出て、そこに滑り込めたからという奇跡ぶり。それがなければどこも満室だったそうです。

 

「少し買い物してから行きたいので先に行っててもらっていいですか?アリシアの好きな物をいくつか買っておきたいんです」

「わかりました。場所は」

「ぁ、ユーキとヴィヴィの魔力を追うので大丈夫ですよ」

「そうですか。では、先に行きますね」

 

私は2人と別れて近くのスーパーへと向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

side アリシア

 

「ぁぅ………体が重い………頭がくらくらする………」

 

昨日倒れて風邪って診断されてから私はずっとここで寝てる。シャマルに診てもらって、お薬も貰ったからあとは安静にしてるだけなんだけど………

 

「こういう時って………一人暮らしなのが恨めしいよ」

 

寂しいってわけじゃないけど、こういう時には誰かそばにいて欲しい。補佐のオリヴィエが今日見てくれるお手伝いさん連れてきてくれるらしいけど………誰だかわからない知らない人だとそれはそれで………ね。

 

「せめてフェイトだけでも来れたらなぁ………」

 

とは言ってみるけど、今は長期の任務で遠くにいるからワガママはダメだよね。そりゃあ今の私のこと伝えたら飛んできてくれると思うけど、仕事の邪魔になるから絶対にダメ。

 

「前に風邪引いたの………いつだっけ?」

 

確か………9年くらい前だったかな。まだママも元気で、刹那も一緒だった頃。あの頃は刹那がそばに居てくれて、ママも仕事休んで一緒だった。今はそれがどちらもない。

 

「刹那………どこにいるの」

 

気が付いたら私は今まで押し殺していた弱音を吐いていた………

 

「アリシアー。戻りましたよ」

「ぁ、おかえりなさい」

 

そこにオリヴィエが帰ってきた。ってことは今日私のこと見てくれる人を連れて来てくれたってことみたい。

 

「あなたの面倒、見てくれる人連れて来ましたよ」

 

やっぱね。

オリヴィエが私の寝室に入ってきて、その面倒見てくれるって人も入ってくる。見たところ私くらいの小柄の女の子で、髪がウェーブの掛かった赤みの強い金髪ロング。

 

「ヴィヴィ、その表現は正確じゃない。私はその人のお手伝い。それはともかくとしてよろしくアリシア。それと久しぶり」

「ぇ?」

 

この子、私のことを知ってるの?少なくとも私は見覚えは………ない、よね?

 

「ぁ、そっか。記憶封印してるからか。ちょっと待って。今からヴィヴィも含めて解除する」

「記憶………封印?」

 

熱のせいかな。この子の言ってることがわからない。

そう思いながらベッドで横になったままその子を見てると、そのユーキって子は手を前にかざして魔法陣を展開。その魔法陣はミッド式に似た円形だけど少し違ってて、その外側に爪みたいなのがついてる。見たことの無い………ぁれ?

 

「私、ユーキのこと知ってる?その術式も………見たことある」

「何ですかこれは?頭の中に情報が入ってきてますよ!?」

「それは正確じゃない。例えるなら、そう。今まで鍵をかけていた戸棚の鍵を解いた。だからその中身が見れるようになった。その戸棚とその中身自体は元々そこにあったの」

 

それがさっき言っていた記憶封印………もしかして!?

 

「砕け得ぬ闇………?」

「ん。正解。その時に生まれたユーキ。ユーキ·エーベルヴァイン」

「っ!?」

 

まさか………あの時の。エルトリアに行ったはずの紫天の書の一家。その中の紫天の書の盟主。その片割れの魄翼を受け継いだ子。

 

「何故あなたがここに!?」

 

動けない私の前に即座に甲冑姿になったオリヴィエが立ち塞がる。けど、なんでこの子がここに?しかも陸士訓練校に?

 

ピーンポーン

 

「………私が出るね」

 

狙ったようなタイミングでインターホンが鳴り、ユーキは身を翻して玄関へ。

 

「外まで声が聞こえましたよ。いや、私以外には聞こえなかったでしょうけど」

「ごめんなさい。少し軽率だった」

 

すぐに今来た人(多分ユーキの言ってた本当の私の面倒を見てくれる人)が入ってきて、その声が聞こえ………ぇ?

 

「この声………」

「ま、あの人が信用しているんです。今は少しテンパってしまいましたが、危害を加えることはないでしょう」

 

オリヴィエは事情を知っているのか、落ち着きを取り戻すとすぐに先程までの制服姿に戻る。

そしてその声の主が私の部屋へと入ってくる。

 

「せ………っな?」

「はい、刹那です。ただいま、アリシア」

「刹那っ!」

 

私の記憶にある姿からはだいぶ雰囲気が変わっていたし、背も伸びていた。けど、間違いなく………私がずっと探していた人、7年前に空間震で時空の彼方に消えた私の大好きな人(刹那)その人だった。

私は思わずベッドから飛び起きて駆け寄………ろうとしてバランスを崩してベッドから落ちる。

 

「っぅ………」

「風邪を引いてるのに急に動こうとするからですよ。まぁ、私のせいですけど」

 

ベッドから落ちたせいでおデコを床に直撃、蹲る私を刹那は軽々と抱き上げてベッドに寝かせてくれる。

 

「ヴィヴィ」

「………そうですね」

 

気を使ってくれたのか、ユーキの呼び掛けでオリヴィエとユーキは私の寝室から出ていく。オリヴィエはその途中、刹那の持っていた買い物袋を受け取っていたけど………あれ何なんだろう?

 

「すみません。去年の春頃には戻ってきていたんですが、事情があって会いに行けませんでした」

「じゃあ戻ってるの知ってる人は………?」

「シグナムだけです。彼女には特別認定試験の時にお世話になりました」

 

ってことは去年シグナムが言ってた特別認定試験の相手が刹那だったんだ?確かに言われてみたらハルオーネ·イングヴァルトのイングヴァルトは覇王家のファミリーネームだし。ハルオーネってのは多分刹那のもう1つの名前ってところかな。

 

「あとスバル。ほら、ナカジマ家にお世話になっていた時の次女です。訓練校で一緒なんですよ。恐らくそこ繋がりでギンガとゲンヤさんにも」

「そうだったんだ」

 

それから刹那はこの7年間で何があったのか話してくれた。エルトリアの復興のこと、そこでの事故で右腕と視力を失ったこと、今は周りの魔力を検知して周囲を見てること、義手のこと、新しい仲間のこと、訓練校のこと………その間ずっと刹那は私の手を握っててくれて、今までの刹那を知れたこと以上にそっちの方が嬉しかった。

1年間会いに来てくれなかったことは素直に寂しいし、少し怒りも覚える。けど、刹那にも事情(明言はしてないけど、多分失った腕と目の関係)があったんだし、そこは多めに見ないとね。

 

「そういえば、もう10時は過ぎてますがアリシアは朝ごはんは食べてますか?」

「1人だったから何も………食欲あまりなくって」

「まぁ、1人だと余計にそうですよね。ちょっと待っててください」

「ぁ………」

 

刹那が握っててくれた手を離して部屋から出ていっちゃいました。すぐ戻るってわかってるけど、寂しい気はする。

その刹那は数分もする前に戻ってきました。手には小さ目の土鍋とお椀、レンゲ、そして小さいお皿とプリンを乗せたお盆。

 

「ユーキ特製の卵粥です」

「刹那特製、じゃないんだ?」

「そう言いたいのは山々なんですが、既にユーキが作ってましたから。私が買ってきた食材見て察したんでしょうね」

 

そのお盆を寝室に常備しているテーブルに置きました。

 

「起きれますか?」

「んっ………1人じゃキツいかも」

「わかりました」

 

もちろん嘘。ただ単に刹那に起こしてほしいだけ。多分刹那もそれはわかってるけど、私のワガママにちゃんと付き合ってくれる。

刹那は私の背中に手を回して上半身だけ起こし、それから土鍋の中の卵粥をお椀に移してました。

 

「まだ熱いですから気を付けてくださいね」

「っ!?」

 

そしてレンゲで少し混ぜてから一口分すくい、私の方へ差し出してきます。

ぇ?これってあれだよね?あーん(恋人同士でやる儀式)だよね!?

 

「アリシア?少し熱が上がってるみたいですけど大丈夫ですか?」

「んぇ!?だだだ大丈夫だよ?………タブン」

 

絶対私、今顔真っ赤だよね!?いや、元々熱のせいで体温高いし顔赤いだろうけども!?私がこんなだから刹那が気を遣ってくれてるってわかってるけど、ものすごく恥ずかしい。

 

「食べるの、今はやめておきますか?」

「………ううん、食べる」

 

確かにあまり食欲はないけど、お腹が空いてるのもまた事実。それに前に風邪引いた時も卵粥だったから、刹那はこれを用意してくれたんだと思う。作ったのはユーキだけど。

 

「はい、どうぞ」

「あー……ん……ハフハフ……ぁ、美味しい」

 

ものすっごく恥ずかしいのを我慢して刹那に最初の1口を食べさせてもらう。熱かったけど、土鍋や茶碗を経由したからか程よく冷めてて食べやすかった。ユーキって料理得意なんだね。

 

「とりあえず、完食は無理でも食べれるだけ食べてください」

「ぅ、ぅん」

 

それからたまに水を貰いながらお粥を食べさせてもらって………たぶんずっと顔真っ赤だったと思う。

ちなみに食べさせてもらってる途中にオリヴィエは少しだけ顔を出して出勤していきました。

ちょうどお粥を半分くらい食べさせてもらって、お腹もいい感じになったところでプリンを食べさせてもらってるところでユーキが部屋に入ってきました。

 

「2人きりでお楽しみのところ悪いけど、薬置いておくね。食卓の上に置きっぱなしだったから持ってきた。あとスポーツドリンクも」

「楽しんでる訳ではありませんが、ありがとうございます」

 

ごめんなさい、私それなりに楽しんでました。刹那は真面目に看病してくれてるのに。でもずっと欲しかった温もりがすぐそこにあるんだもん。これくらいは許して欲しいな。

 

「ユーキ、ごめんね。せっかく来てくれたのに1人にしてて」

「ううん、気にしない。話し相手ならイリスがいるし、そこそこすることはある」

「じゃあ、洗濯とかもお願いしていい?」

「ん、わかった」

 

イリスってのは刹那の義手の制御AIで、砕け得ぬ闇事件の時のあのイリスだって刹那から補足説明。

私は薬を飲んでから再びベッドに寝転がりました。そして当然のように刹那の手を握る。

それから少し寝て、昼を過ぎたあたりで起きた時にお昼ご飯のお粥、その後は流石に寝れなかったから17時頃にオリヴィエが帰ってくるまで刹那と途中参加でユーキ、イリスと話してた。もちろん食べてる時以外はずっと刹那の手を握ったままで。

そのおかげもあってか、夕方頃にはそこそこ熱も引いてある程度なら動けるようにもなった。まぁ、大事をとって明日もお休みするんだけどね。

 

「さて、と。ヴィヴィも帰ってきましたし、門限もあるので私達はそろそろ戻りますね」

「ぁ………」

「アリシア、どうかしました?」

 

時間が経つのは本当に早くて、気が付いたら18時前。訓練校の宿舎の門限が何時なのかはわからないけど、引き止めるわけにもいかなくって、離れていく刹那の手の感触が少し寂しい。

 

「ううん………ぁ、たまに連絡入れてもいい?」

「良いですよ。しかし、その時はイリスを経由してください。訓練中だと出れないので」

「そうする。あと、7年分の埋め合わせ、ちゃんとしてよ?」

「ものすごい負債が貯まっていそうですが………可能な限りしますよ」

「ありがと!」

「では、これはその最初の返済ということで」

 

玄関で見送りする時の少しの会話。刹那は靴を履いてから私に向き直りました。

 

「愛してますよ、アリシア。んっ」

「っ!?」

 

私がキョトンとしてると刹那から唐突な告白。そのせいで一瞬頭が真っ白になった所に唇に伝わる柔らかい感触。

 

「っ………返事はまた今度会ったときで構いませんよ。では」

 

数秒してその感触が離れ、刹那とユーキは帰っていきました。

 

「………ぷしゅぅぅぅ」

「アリシア!?」

 

刹那に改めて告白され、キスもされた。そう実感した私はまた倒れてしまいました(数分で復帰したケド)




ふひぃ。書けました!アリシアとの再会パート!書いてたらかなり甘くなっちゃいました。表現が下手なのでアレですが

感想などあればよろしくですよ!


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第46話 召集─Saint─

どもども、ルイスです。ハンター稼業にハマってる傍らでグラブルも始めてみました。


───新暦75年3月

 

side はやて

 

念願の夢やった私の部隊、遺失物管理部対策部隊、通称は機動六課ゆう名前なんやけど、その隊舎見てからその後。私はアリシアちゃんに前々から頼まれとった仕事に向こぉた。行き先はミッド北部に駐屯しとる陸士108部隊。4年前の空港火災の時にもお世話になったゲンヤ·ナカジマ三佐が部隊長をしとる部隊。

ここに来た目的はただ1つ。アリシアちゃんの補佐候補の人が配属しとって、アリシアちゃんに任せる予定のセイント小隊(なのはちゃんのがスターズ、フェイトちゃんがライトニングや)の隊員候補やからや。3年前に訓練校入って、首席で卒業、しかも異例の特別認定試験の合格者なんやって。シグナムの話やとハルオーネって名前。写真はなかったからどんな人かよぉわからん!

 

「あと、次席卒業のエーベルヴァイン姉妹とハルオーネって人の相棒の八雲燕。まぁ、流石に全員は無理やろけど」

 

首席と次席のペアを確保するってナカジマ三佐、なかなかすごいと思うんよ私。ちなみにナカジマ三佐の娘さんも同率で次席卒業して別の部隊の災害担当で活躍しとるらしい。そっちはなのはちゃんが引き抜きに行っとる。

 

「それにしてもアリシアちゃん、いつの間にそんな大物新人に目ぇ付けとったんや?しかも補佐の候補にちゃっかり勧誘しとるし………」

 

今ナカジマ三佐のとこおるのも現場経験を積むためって名目らしいしなぁ。ま、特務官補佐ゆうても訓練校上がり2年やそこらでなれるもんちゃうしな。

そういやここ2~3年くらいでアリシアちゃんが遠征系任務やる頻度一気に落ちたし休暇もちょいちょいとるよぉになっとる。本人に聞いても何も無いの一点張りやけど………

 

「絶対になんかある」

 

多分その答えはこのハルオーネっちゅう人やろうな。でもなぁんか引っかかるんよ。ハルオーネ·イングヴァルト………イングヴァルトの方。どっかで聞いたような?まぁ、ええか。

 

「八神はやて二等陸佐、入ります!」

「おぅ。嬢ちゃん、やっと来たか」

 

予めアポは取ってたからすぐにナカジマ三佐に会うことが出来た。ナカジマ三佐も私が入るとすぐにデスクから立って来客用のソファに案内してくれて、お茶(これが美味しいんよ)を入れてくれる。

 

「ご無沙汰してます、ナカジマ三佐」

「ホントになぁ。めっきり連絡寄越さねぇと思ったところにいきなり連絡してきたと思ったら引き抜きかい」

「あははは………それは申し訳ないゆうか心苦しいゆうか。せめてスカウト言うてください」

「ま、内1人は元々テスタロッサの嬢ちゃんの補佐研修の現場経験でここにいただけだからな。そのテスタロッサの嬢ちゃん直々の頼みっちゃあ断れねぇよ」

 

本当ならここに来るのは自身の補佐候補を引き取る名目のあるアリシアちゃんやった。けど、急遽外に出んとあかんことなって来れんくなったから私が来たっちゅうわけや。でも引き抜きに変わりはないし、お世話になったナカジマ三佐にここまでしてもらうのは心苦しいというかなんというか。

これも余談なんやけど、階級はナカジマ三佐が三等陸佐、私がさっきも言ったように二等陸佐。アリシアちゃんは私と同じ二等空佐相当。なのはちゃんとフェイトちゃんは一等空尉(フェイトちゃんは相当)や。

前は私の方がナカジマ三佐より下やったけど、階級逆転した今でもこの人は尊敬する上官や。

 

「んーと、例の新人だったな。八雲燕、ウリエル·エーベルヴァイン、ユーキ·エーベルヴァインの3人」

「はい、そうです。ゆぅても、全員連れて行くつもりは無いんですけど」

「ったりめぇだ。せめて1人くれぇ残してほしいもんだな。ほらよ、3人のデータだ。今訓練………もうすぐ終わるんじゃねぇか?」

「あれ?ハルオーネって人含めて4人やないんです?」

「聞いてねぇのか?元々近いうちにテスタロッサの嬢ちゃんが引き取って自分の手元で経験積ませるって予定だったのが早まったんだ。で、異動になった。これがここにいた頃の………っても数日前までのだが、のハルオーネのデータだ」

「残念、会いたかったんやけどなぁ………ぇ?」

 

その渡されたデータを見て私は目を丸ぅした。だってそうやろ?

 

「兄やん………?」

 

そのハルオーネっちゅう人、その顔写真がどお見ても私の兄やん、刹那やったからな。

 

「あの、ナカジマ三佐。このハルオーネゆう人………もしかして刹那って名前もあったりしません?」

「あぁ………やっぱり気付いちまうか。本人とテスタロッサの嬢ちゃんからは極力隠し通してくれって言われてたんだがな。嬢ちゃんの言う通り、刹那·ストラトスって名前もある。よくわからんが、どっちも本名らしい」

 

兄やん、帰っとったんや。ナカジマ三佐の言い方聞くと、アリシアちゃんもそれは知っとる………ということはや。アリシアちゃんが遠征系任務減らした理由にも納得がいく。

 

「兄やんのこと、見付けとったんやな」

 

アリシアちゃんが遠征系任務受けまくっとった理由は兄やんを見付けるゆうただ1つだけや。それを減らした時期から逆算したら………

 

「丁度2年と少し前だったか?任務明けに風邪でぶっ倒れたことがあったろ。そん時に会ったらしいぞ。それ以降大変でよ、たまにフラっとここに来て惚気話聞かされてな。デートでどこ行ったとか、模擬戦したとか」

「えぇ!?」

 

やっぱり2年ちょい前………ってもうそんな関係なん!?早ない!?早過ぎひん!?確かに10年前の時も相思相愛ゆう感じやったけど!?というかデートで模擬戦するってどんなカップルなんや!?

 

「まぁまぁ、落ち着け。とりあえずエーベルヴァイン姉妹とハルオーネ………もう刹那でいいか。刹那の相棒の八雲に会ってみねぇか?」

 

兄やんだけ名前呼びなのは多分ヴィヴィさんの影響やね。オリヴィエゆう本名名乗れへんからヴィヴィ·ストラトスゆう偽名使うてるから。ストラトスやと被るもん。

 

「せやな。そうさせてもらいます」

 

その後ナカジマ三佐の紹介で八雲燕二等陸士、エーベルヴァイン姉妹(どちらも二等陸士)と面会。本人達の希望もあってエーベルヴァイン姉妹をスカウトすることになりました。ナカジマ三佐曰く詳しい事情を知る刹那がいない今、あの封印処理を施された2人を手元に置いておくのは気が引ける、とのこと。

なんのこっちゃ?ってそこら辺を本人に聞くと、ユーキちゃんの方は私の記憶封印ってのを解いたらすぐ解決。ウリエルちゃんの方は生まれつき規格外(それこそ私なんか比較にならないレベル)の魔力を持っとるから、らしい。で、その封印の解除承認権限をナカジマ三佐が刹那から引き継いで半分持っとったらしいんやけど、それを慣れてる私に、ってことらしい。セイントのフォワードが1人多くなるけど………まぁ、えっか!

 

「………貧乏くじ引いた気がするんは気のせいやろか?」

 

───side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 第3管理世界ヴァイゼン 次元港

 

私は今アリシアに呼び出されてヴァイゼンに来ています。あれから順調に訓練校を卒業し、それと同時にアリシアから補佐候補としての勧誘があり、それを承諾。ただ、訓練校上がりで実務経験が足りないとかで、考査試験は後回しで、元々配属予定だった陸士108部隊で実務研修(アリシアが既に手配していた)を受けることに。2年間で経験を積んで実績も上げ、そろそろ補佐としての研修をするとかでアリシアの元に異動。元々遅かれ早かれこうなる予定だったのが少し早まった、と部隊長のナカジマ三佐から聞かされました。

 

「確か、迎えが来ているはずなんですが………」

 

私は手荷物一色を入れたキャリーバッグを引きながら次元港のロビーを歩いていました。

 

「せーつーなー」

 

そうしてると聞き覚えのある声が聞こえ、魔力探知をそちらに向けると案の定、アリシアがこちらに手を振っているところ。

ちなみにアリシアとは例の1件の後(というか次の週末)に呼び出され、それ以降付き合っている関係。俗に言う恋人同士というやつですね。とは言っても、当時私は訓練校の研修生でその後も陸士部隊所属の陸戦魔導士。アリシアは本局航空隊所属の特務官。会える機会もほとんどなく、恋人らしいことはほとんど出来てませんが。精々月一でデートでも出来ればいいかな程度です。電話やメールはよくしてますが。

ちなみに最初にアリシアから連絡があった時にスバルやティアナ達が近くにいたこともあって、当時よく一緒にいたメンツは皆、私とアリシアが付き合っていることは知っています。

で、今会うのもなんだかんだで1ヵ月ぶりくらいです。

 

「直接会うのは久し振りですね」

「だねぇー。お互い忙しい時期だもん。ほら、車向こうに停めてるから着いてきてー」

 

言われるままにアリシアについて近くの駐車場へ。そこにある黒のスポーツカー風の車に乗り込みました。当然ですが、アリシアが運転席、私が助手席。

 

「これ、アリシアの車ですか?」

「まさか。レンタカーだよ。普段ならバイク使うんだけど、今日は刹那いるしね」

 

バイクに跨るアリシアというのもあまり想像出来ませんが、仕事柄そっちの方が都合がいいのもあるんでしょうね。

 

「しかし、1つ気になることがあるんですが、なぜ私を引き取るのが今なんですか?まだ階級的にも現場経験的にもアリシアの補佐にはまだ物足りないと思うんです」

「んーとね、いくつか理由があるんだけど」

 

アリシアの運転で車を発進させつつ、思っていた疑問を聞いてみます。

 

「1番大きいのはやっぱりこれかな。はやてが部隊作るんだけど、それがもうすぐ始動ってところなんだ。で、本来の予定だと108から直接そこに異動ってなっちゃう。それだと将来的に私の補佐やるとしても、そっちの経験が少なくとも1年は先延ばしになっちゃうからね」

「そこで私を早めに引き取って、少しでも補佐としての経験を積ませたい、ですか?」

「そゆことそゆこと。その関係でオリヴィエと紗綾は今隊舎の方行ってるんだよ。本来私が行くはずだった108は………ちょうど今はやてが行ってる頃だよ。ぁ、噂をすればはやてから連絡だ。刹那出てもらえる?こっちに連絡するってことはバレてるだろうし」

 

アリシアの脇に出た音声通信のモニターを手早く操作して、私の脇に再度出します。

 

「はい、アリシア·テスタロッサ特務官代理の刹那·ストラトスです」

『せぇぇぇぇつぅぅぅぅなぁぁぁぁ!!』

「………久し振りです、はやて」

 

通信繋いだ途端怨念のような声出すのはやめてください。怖いです。

 

『帰っとんなら連絡くらい寄越しぃ!ずぅぅっと心配しとったんやで!』

「しかし、事情が」

『それでもや!エルトリアの1件で生きとるのはわかったけど、それでも………ずっと待たされる私らの気身にもなってぇな………』

 

怒ったと思った途端、今度は顔を俯かせるはやて。

確かにはやての言う通り。みんなのことを考えていたら事情があったにせよ先ず顔を出すべきでした。リンディさんに最初にあった時も似たようなこと言ってましたしね。

 

「すみません………自分のことばかり考えてました」

『………反省しとる?』

「もちろんです」

『何でもしてくれる?』

「もちろんでs………ぇ?」

 

今言ってはいけないことを言ってしまった気がします。

 

『言質とったで!約束やで!』

 

その瞬間はやてはパァァっと明るくなり………案の定ハメられたと思った時には時すでに遅く。まぁ、元々悪いのは私なのでお詫びはするつもりですけど。

 

「………程々でお願いしますね?」

『もちろんや。ほんなら最初の命令はアリシアちゃんを幸せにする、や。これ以上泣かせたら許さへんからな?絶対に幸せにするんやで?』

「言われるまでもありません。10年前にさんざん泣かせてしまいましたから」

『そもそも今このタイミングで兄やんを異動させたのもアリシアちゃんのワガママやしな。余程早く側に置きたかったんやろ』

「ぶふっ!?」

 

はやての爆弾発言でアリシアが盛大に吹き出し、車が蛇行。はやて、運転中のアリシアにそれを言うのはダメですよ。なんとなく私も察してましたけど。

 

「はやて!今運転中!そういうの勘弁して!」

『ごめんごめん、許してぇな』

「それより、何か要件あったんじゃないの?」

『そやそや。アリシアちゃんの下につくフォワード、スカウト出来たで。ユーキちゃんとウリエルちゃん』

「じゃあ刹那込で3人?」

『せやな。本当なら2人が良かったんやけど………』

「ユーキとウリエルの封印処理の関係でしょうね。その辺ははやての方が慣れてるでしょうし」

 

元々の魔力が多いからねぇー、とアリシアが呟きます。実際慣れてないと荷が重いんだと思います。

 

『せやけど、ウリエルって………どこかで………』

「4年前の空港火災だよ。ほら、フェイトが会ったっていうあの子」

『っちゅうことは兄やんもあの場におったん?』

「いましたよ。スバルを助けた時になのはに見られてますしね。後ろ姿ですが」

『つまり、あの時の正体不明の魔導士が………』

「刹那とウリエル、あとユーキだね。その辺は前に刹那から聞いてるよ」

『あん時すれ違っとったんかぁ………』

 

あの時見付からないように暗躍したのは私ですからね。無理もありません。

 

『ほな、なのはちゃんとフェイトちゃんに兄やんのことバラすのはまだあとにせぇへん?私が良い場所と機会用意する!ほな!』

「絶対によからぬ事を企んでるよね」

「だと思います」

 

満面の笑顔で通信を切るはやて。

この時、まさかあんな形でなのはとフェイトに再会するとは夢にも思ってなかった私でした。




少しばかり短くなりました!

ちなみに訓練校卒業時の成績は刹那と燕が首席。スバルとティアナ、ウリエルとユーキは次席になっています。原作だとスバルとティアナが首席ですけどね。描写はしてませんが、ほぼ僅差でこの成績と思っていてください。

次あたりからStSのアニメ本編に入っていくと思います!

では、感想などあればよろしくです!


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第47話 魔導士ランク昇格試験

どもです、ルイスです。

最近前書きに書くことがなくなってきた感じがします。

今回からアニメと合流しますけど、今話は内容そのものはアニメとは全く違うことやってますが悪しからず!


───2週間後 新暦75年4月 臨海第8空港近隣廃棄都市街

 

「まさか合同とは驚きですよ」

「はやてが悪企みしただけだと思う」

「はやてって、あの八神二佐だよね?」

「ん?刹那と八神二佐は知り合いなのか?」

 

私達108配属組(私は元ですが)の4人は今日がBランクへの昇格試験。ちなみに言うと、今ここにはまだ来てませんが、スバルとティアナも。もうすぐ来るはずですけどね。

 

「義妹なんですよ。私が地球にいた10年前の半年間だけでしたが」

「ちなみに私が知り合いなのもそれ繋がり」

「その上で付き合ってる人がテスタロッサ特務官。階級が二等空佐相当でしょ?こっちもこっちでお偉いさんだし」

「ま、刹那にとっては『お偉いさん』ではなく『身内』なんだろうな。一緒にいた頃はそういうのはなかったんだから。公私は分けるだろうが」

 

確かに今にして思えば私の身内、普通にハイスペックですよね。

そんなことを考察してると遠くから私達を呼ぶ声がし、そちらに意識を向けると今ここにいない2人が見えてきました。

 

「みんなー、お待たせー!」

「っ……はぁ、はぁ……もぅ、バカスバルが寝過ごすから私達が1番最後じゃない」

「一応集合時間には余裕で間に合ってるけどね。まだ10分近く前だし」

「むしろ私達が早すぎるだけ。刹那はテスタロッサ特務官が試験官務めるから私達より早かったけど。八神二佐がその辺調整したとか聞いた」

 

今思えばこれ、完全にはやての職権乱用ですよね………とか思いつつ私達は各々軽い雑談をしながら準備体操を進めていきます。

 

『おはようございます。さて、魔導士試験受験者さん6名、揃ってますか?』

「「「「「「はい!」」」」」」

 

それから時間が過ぎていき、試験時間ピッタリに少し高いところにモニターが出現。私はイリスに目を借りてそちらを見ました。そこに映っていたのは管理局の茶色の制服を着た女の子で、髪は薄い水色(銀に近い)ロングで黄色のバッテンマークの髪飾りが特徴的。髪型と今日の試験がはやて(とアリシア)主催な所を考えるとこの子が以前ディアーチェから聞いたリインフォースII(2代目)ということなんでしょう。性格は………先代とは似ても似つかない(お茶目そうなところはそっくりかも)ですが。手を腰に当てて大人っぽくしているあたり可愛らしいです。

そのリインフォースIIはリストで私達全員の所属部隊、現魔導士ランク、昇格予定のランクに間違いがないことを確認していきます。

 

「はい、本日の試験官を務めますのは私、リインフォースII空曹長です。よろしくですよぉ!」

「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」

 

一通り確認を終え、リインフォースII空曹長が自己紹介。私達はその敬礼に合わせて敬礼で返しました。

ちなみに私達の格好は基本的に自前のバリアジャケットや甲冑、鎧(もちろんウリエルはリングと翼は出ていない)。燕のそれは初めて見ますが、黒に青ラインのロングコートと言った感じです。スバルとティアナはお揃いの黒のベースウェアに白のチョッキ。違いといえばスバルはへそ出しスタイルでホットパンツ、ティアナのそれはミニスカートも兼ねたものになっているくらいですね。あとはスバルは頭に巻いたハチマキ。頭の後ろで結んで、それでも1m近く余らせて風になびいています。ティアナは腰にカートリッジをホルダーしたベルト。

私はイリスに借りた目を返し、いつもの魔力探知に戻しました。

 

「ん?………なるほど」

 

やはり、はやてが見てますね。上空のヘリ、そこのハッチを全開にして身を乗り出してます。落ちたらどうする気ですか。ぁ、飛べるので関係ないですね。

さて、シグナム以外に今の私の戦いを見せるのは初めて。張り切っていきますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side はやて

 

「おー、さっそく始まってるなぁ。リインもちゃんと試験官しとる」

「はやて、ドア全開だと危ないよ?モニターでも見られるんだから」

「はぁーい」

 

ヘリからドア全開で眼下の試験のアナウンスをするリインと兄やんらぁ受験者を見下ろす私、八神はやて。一緒に乗っとるフェイトちゃんが危ない、言うこともあって、ドアを閉めてモニターを展開。

 

「でも、フェイトちゃん。そんな他人事でええの?」

「ぇ?これっていつものターゲット破壊しながらゴール目指すやつだよね?」

「まぁ、それでも良かったんやけど………それやとなのはちゃんとフェイトちゃんの中に溜まりに溜まった物を発散できないんやないかなーって。ほら、受験者見てみ」

 

実はなのはちゃんとフェイトちゃんには今回の受験者のこと(なのはちゃんがスカウトした子以外)は内緒にしとった。理由?単純にその方が面白そうやからや。まぁ、なのはちゃんは教導官ゆう立場を逆手に取って私から聞き出したんやけどな?それを踏まえて今日の()()()()()()を提案したら快く(黒い)笑顔で承認してくれた。

フェイトちゃんにも見せるなら今やな。

 

「この2人がはやてが見付けてなのはがスカウトした子達だよね。他4人はお姉ちゃんがスカウト………ぇ?」

「まぁ、そゆことや」

 

案の定言うか予想通り言うか私と同じ半の言うか………言葉を詰まらせるフェイトちゃん。そりゃそうやろ兄やんを見たら。私もそうやったもん。多分アリシアちゃんも。

 

「フェイトちゃん、10年前の事件ときに叩き落とされて、それ以降1回も模擬戦すらやったことないやろ?絶好の機会やないか、思うんよ。ぁ、なのはちゃんの方はもうスタンバイしとるよ。フェイトちゃんも行き?」

「ぇ?ぇ?」

「変更した試験内容はな。2人1組(ツーマンセル)バトルロワイヤルや。なのはちゃんと組んで行ってき」

「えぇぇぇぇぇえ!?!?」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side なのは

 

〈範囲内に生命反応、危険物の反応はありません。コースチェック終了です〉

「ん、ありがとうレイジングハート。サーチャーも設置完了。あとはアリシアちゃんに全部引き継いで私達も出る準備しなきゃね」

〈All right〉

 

試験のバトルロワイヤル………その範囲内の安全確認を全て終え、私達の所定のスタート地点に歩を向ける私、高町なのは。今日の試験は私の直接の部下になるかもしれない子と10年前消えたっきりの幼馴染にオシオキ。

刹那君、私達のことを守って空間震に巻き込まれて、先代リインフォースと一緒に次元の彼方に消えちゃって………アリシアちゃんはそれからしばらく塞ぎ込んじゃって………やっと帰ってきたって思ったらそれは4年前。つまり帰ってきてることを私達に何も言わなかったってこと。リンディさんやクロノ君は知ってたみたいだけど、本人から口止めされてたらしい。

 

「私とフェイトちゃんはランクAまでリミッターを設定。まぁ、これでもBランク昇格試験の相手って考えたらかなり強敵になるけどね」

 

私は自身に設ける手加減、魔力のリミッターを付けてからバリアジャケットのアグレッサーフォームを身に纏う。

 

「でも、よく考えたら昔の刹那君ってAランクで私達(当時AAA)を相手にしてたんだよね」

 

それを考えたらこのリミッターって手加減になるのかどうかかなり疑問。リミッター無しのシグナムさんといい勝負したって聞いてるし。まぁ、でもそれは刹那君が規格外なだけ。他の子は………多分そうでもないと思う。

 

「考えるのは止め。行こうか、レイジングハート」

〈Yes. My master〉

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side アリシア

 

「ぉ、なのはからサーチャーの映像きたきた」

 

本来この試験で試験官をする必要の無い私がここにいる理由。それははやてが試験内容を急に変更したから。元々の予定は………指定のターゲットを破壊しつつ(破壊したらダメなダミーもある)ゴールを目指すもの。

それをはやてが模擬戦………正確にはバトルロワイヤルに変更したってわけ。

理由を聞いたら面白そうだから、ってだけだったけどね。今回の試験内容そのものはなのはに一任されていたから大した問題はないんだけどね。多分本心はこの前言ってた刹那君となのは、フェイトを再会させる場作り。それこそ本来の試験内容よりこの方が(はやての中だと)面白そうだし、はやてが刹那に怒ったみたいになのはも怒るだろうから、その発散も兼ねたんじゃないかな。フェイトは………まぁ、はやてみたいに私を泣かせたって怒ると思う。静かに怒るからそれも可愛いんだけどね、うちの妹。

 

「そう言えば今の刹那の戦い方、じっくり見るのは初めてかも」

 

補佐候補として一緒に任務したのも2週間程度。背中を任せたりしたけど、そもそも回数が少ない上にそれこそ任せてるのは背中、つまり後ろ。私は比較的視界は広い方だけど、流石にじっくり見る余裕はないからね。

 

「ウリエルに至っては未知だもんなぁ」

 

それにユーキは8年前に少なからず戦ったこともあるからどんな戦い方するのか知ってる(もちろんそれこら変わった可能性もあるけど)。けど、刹那がエルトリアから連れて来たウリエルは私達には未知。剣持ってるからシグナムみたいな剣士なのかな?ってくらい。

ちなみに他の3人に関しては過去のデータである程度はね。もちろんじっくり見るのはこれも初めて。

 

「見てるだけの私でこれだからね。実際戦うなのはとフェイトは相当なんじゃないかな。特にフェイトは戦闘狂(バトルマニア)の気があるからね」

 

これに関しては私もあまり人のことは言えないけど。可能なら私もあそこに混ざりたいんだけどね。

さぁて、私のことも楽しませてよね?

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『という訳で、皆さんの戦闘時の判断能力や戦闘能力を見たいという理由から、本来ならターゲット破壊しながらゴール目指すっていうやつだったんですけど、2人1組(ツーマンセル)形式のバトルロワイヤルに急遽変更になりましたです。予習してくれてたと思うですけど、ごめんなさいです』

 

あのあとリインフォースII空曹長から試験内容が変更になったと通知されました。幸い、その内容は予習等がなくても出来るもの。最もらしい理由ですが、恐らくはやての仕業でしょう。

 

「リインフォースII空曹長、1つ質問良いですか?」

『ぁ、はい。刹那·ストラトス二等陸士、どうぞです』

「これははや………ではなく八神二佐の発言に基づく推測なのですが、私達3組以外にもう1組試験官側から………そうですね、なの………ではなく高町一等空尉とテスタロッサ·ハラオウン執務官のペアも参加しますよね?戦闘能力図るのには実際に戦うのが1番ですから。百聞は一見に如かず、百見は一回に如かずとも言いますし」

 

危ない危ない。危うく義妹と幼馴染(2人の上官)を呼び捨てにするところでした。

私のこの考察、恐らく間違いないと思います。私以外の5人がえぇ!?という感じの反応をしてますが。

2週間前、私がアリシアの元に異動した時にはやてから来た通信。その事を考えるとこの推測は私の中ではほぼ確信に近いものがありました。

 

『あぁ〜………私の説明不足だったですね。ごめんなさいです。はい、こちら側からもストラトス二等陸士の言う2人組が参加します。と言ってもリミッター処理はしていますけどね。けど、八神二佐の発言から、とはどういうことです?』

「あぁ、いえ。少しありまして。説明しても良いですけど、試験時間のこともあるので私からは止めておきます。テスタロッサ特務官か八神二佐本人に聞いてもらえればわかると思いますが」

 

私がアリシアの名前を出したあたりであぁ〜、とリインフォースII空曹長は苦笑。大体のことは察したようです。

 

『コホン。これ以外に質問等ありますですか?』

「「「「「「ありません!」」」」」」

『よろしい!では、順次ペア毎にスタート地点へ転移しますね。その後簡単にルール説明にしますです』

 

リインフォースII空曹長の言葉が終わるやいなや、スバルとティアナの足元に転移用魔法陣が展開して転移。次にユーキとウリエル。私と燕は最後に転移。その先は先程見ていた廃棄都市街の一角。

 

『では、ルール説明をしますですよー』

 

周囲の確認を一通り終えたところで再びリインフォースII空曹長を映したモニターが投影されました。

 

『制限時間は30分。デバイスは非殺傷設定………ぁ、デバイス未所持のユーキ·エーベルヴァイン二等陸士はその当たりは………はい、大丈夫そうですね。あとバリアジャケットに相当するものを持っていないスバル·ナカジマ二等陸士とティアナ·ランスター二等陸士には特殊なバリアフィールドをこちらで展開しておきますので安心してください。こちらが戦闘継続不能と判断した人は安全な地点に強制転移します。最後に、戦闘能力や判断能力を見る試験ですが、勝敗そのものは試験結果には直接は響きません。健闘を祈るですよぉー!』

 

リインフォースII空曹長の可愛らしい応援と同時に上空に大きなモニターでカウントダウンが始まります。それが0になると同時にぷぉぉぉぉんとスタートを告げるほら貝?のような音が鳴り、モニターの表示が残り時間に変わりました。

 

「さて、久々に暴れましょうか」




途中のレイジングハート、英語聞き取れなくて日本語表記になっちゃいましたごめんなさいm(_ _)m

あとここまで原作を改変することは………ないとは言いきれませんが、滅多にないと思いますです。あと数話くらいはこの行を続けますね。

ちなみにスバルとティアナに施されたバリアフィールドはVivid Strike!のフーカが特訓の時に使ったアレに近しいものと思ってください。

感想などあればよろしくです!


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第48話 挑戦

どもどもー。ルイスです。

イビルジョー実装………こやし玉竜と合わさってカオスになりそう。一応3rdとかで狩り慣れてるけど………3rdヌルゲーだしなぁ。これしかしてなくてアプデの目玉ってのもどうかと思う私です。バランス調整?あれはアプデなら毎回やることだから中身としては含みません(
それよかヤマツカミとナルガクルガ実装してほしいと思う私です。前者は双剣の祭囃子、後者は安定して強い無属性武器(ディアブロ系統あるけど会心率低いからそこの対策必須だしね)。ナルガクルガは防具込みで見た目も好きだし!


───side ウリエル

 

「ウリエル、言われたやつの設置終わった」

「ありがとユーキ」

 

バトルロワイヤルがスタートしてすぐ、私達は作戦を開始した。と言っても大層なものじゃないんだけどね。

その作戦は待ち伏せ。さっきユーキが近くのスキャンかけたらそこそこ近くに目当てのペアがいたからね。こっちに来るだろうと踏んでユーキに頼んでトラップを仕掛けたってわけ。

 

「多分先行してくるならあの人でしょ?」

「うん。そっちの方が機動力ある。レヴィみたいな加速力と俊敏性が抜群な機動力じゃなくて最高速度の維持で機動力出すタイプだけど」

私の親友(レヴィ)がライバルって認めてるもんね。1度手合わせしたかった」

 

話の流れでなんとなくわかるかもしれないけど、私達の狙ってるペアは高町一等空尉とテスタロッサ·ハラオウン執務官のペア。うん、長いからハラオウン執務官でいいや。

エルトリアにいたころ、私はレヴィと何度も模擬戦(たまにガチ喧嘩したりしてディアーチェとミカ姉に怒られたけど)して、私とレヴィはほぼ五分五分。勝ったり負けたりを繰り返してる。魔力の量だけなら圧倒的に私が有利なんだけど、そこをレヴィはものともしない(考えてないとも取れるけど)。そのレヴィがこのハラオウン執務官(よく分からないけどオリジナルって言ってた)と刹那が陸士訓練校の試験で戦ったシグナム(レヴィが言ってたぶしどー?何それ?)はライバルだって言ってた。あのレヴィ並に私を楽しませてくれる人なんてそうそういないと思ってたけど、こっちには2人もいる。戦わない理由がないよね!

ぁ、レヴィ以外のみんなとの模擬戦が楽しくないわけじゃないよ?アミタやキリエ、ユーキもなんだかんだいって私と拮抗してくるし。ユーリとディアーチェ、シュテルは私とは相性が悪いって言ってたかな。刹那は大怪我してから模擬戦やってないしね。しても軽い手合わせ程度。

 

「ハラオウン執務官は頭がいいから戦術を駆使してくるレヴィって思っていい」

「ペアの高町一等空尉は?」

「砲撃の鬼。見えないところからでも容赦なく魔力弾飛ばしてくるし、砲撃を直撃しようものなら防御ごと削り飛ばされる。で、ハラオウン執務官とは幼馴染で親友」

「ペアとしての相性最高、前と後ろきっちりわけてこっちが隙見せたらしっかり砲撃叩き込んで来るだろうね。援護も上手そう」

「だから、高町一等空尉の方は私が引き付ける。ハラオウン執務官との手合わせに集中してていい」

 

高町一等空尉のスペック聞いて少し尻込みするけど、ユーキが嬉しいことを言ってくれる。なら、私はハラオウン執務官に集中していいかな。

 

「もうすぐ指定のポイントに来る。準備しよ?」

「おっけー。ユーキ、頼むわよ」

「もち」

 

ユーキが近くの建物の中に消えていくのを見て、私は2振りの剣を抜き、構えに入った。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side フェイト

 

「ねぇ、なのは。作戦とかどうする?」

「んー。とりあえずは見敵必殺、近くにいるペアから確実に倒していく、でいいんじゃないかな。刹那君のペアの場所遠いし」

「だとすると先ずはエーベルヴァイン姉妹?」

「うん、そうなるね」

 

今私となのはは廃都市街の中を低空飛行。高度出したら陸戦魔導士のみんなが明らかに不利だからね。

私はそうでもないんだけど、なのははどうも刹那に対して敵意を隠しきれてないみたいだけど、刹那のペアがいる場所は私達のスタート地点からは対角で1番遠い。近くの訓練生無視したら大人気ないからってのもあって近くにいるペアから狙うことにする。

 

「フェイトちゃん、前は任せるよ?」

「うん。なのはも、背中任せるね」

 

反応からしてその先にある角を曲がったらエーベルヴァイン姉妹がいる、それをなのはもわかってるからなのはは高度をあげて建物の上に着地。私は低空飛行を続けて角を曲がり───

 

「………ぇ?」

 

その瞬間私の目に映ったのは赤い羽のような浮遊した大量の何か。角が死角になって私達から見えない位置に的確に仕掛けられていた罠、それを私が理解した時にはもうそれは光を帯びていて

 

「っ!?」

 

ズドドドドドドドドドドドド

 

「フェイトちゃ……!?」

 

私はそれの爆発にモロに巻き込まれてしまいました。辛うじてマントで身を包むようにして爆風の直撃は避けたけど、衝撃はかなり強くて背中から地面に落下。なのはの声が聞こえたけど、その声も様子がおかしい。多分なのはも待ち伏せを受けたんだと思う。

 

「やぁぁぁ!!!」

「なっ!?」

 

何度か地面で体を打って、やっと起き上がると剣を振りかぶって相手ペアの1人、ウリエルが私に突っ込んできた。私は倒れた姿勢のままなんとかそれをバルディッシュで受け止める。けど、ウリエルの方の剣は1本じゃない。左手の炎のような剣を横薙に振ってくる。

 

〈Plasma smasher〉

「っ!」

 

私は右手を地面に当て、そこを威力を抑えたゼロ距離砲撃。その反動と爆風でウリエルの右側へ転がり、辛うじて横薙を回避。

 

「さすが、ハラオウン執務官。完全にバランス崩していたのにクリティカルヒットを入れられませんでした」

「かなりギリギリだったけどね。トラップの設置も絶妙で避けようがなかった。なのはの援護がないのも………」

「向こうはユーキが引き付けてくれてるから。それはそうと、お久しぶりです。4年ぶりです」

「うん、久し振りだね」

 

剣と斧を何度も斬り結ばせながらの雑談。やっぱり空港火災の時に会ったの、覚えられてたみたい。あんな出会い方じゃ覚えるよね。

 

「………なのはと引き離された。これもウリエルの作戦?」

「はい。私の親友がライバルって認めたフェイトと戦いたかったからね」

「私を………?シグナム………なわけないか」

「あとで、教えます!」

 

私をライバル視………誰だろう?シグナムくらいしか思いつかないけど

けど、この子、本当に強いな。リミッターかけられてると言っても今の私はAランク相当。現在Cランクの向こうからしたら圧倒的に格上なのにお互いにクリティカルヒットを入れれない。剣術だけならシグナムくらいの腕はありそう。しかもそれが両手に持ってる二刀から来るから手数も多い。距離を取ろうにも動きを読まれてるかのように即座に詰められるからランサーを撃ち込んで中距離戦闘にするのも難しい。

 

「………油断大敵、だね」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side なのは

 

「さて、と。この向こうにエーベルヴァインの姉妹がいるみたいだけど………」

 

ズドドドドドドドドドドドド

 

「フェイトちゃ………!?」

 

私が廃ビルの上に着地して下の様子を確認しようとした瞬間。丁度フェイトちゃんが下の角を曲がったくらいのタイミングで連続して爆発音。フェイトちゃんが心配で

下に降りようとした瞬間、私は殺気を感じて咄嗟に右にプロテクションを展開。そこに1本の高密度の魔力で構築された矢が直撃して爆ぜる。相手のペアの方………だよね。でもどこから………

 

「やぁ!」

「っ!?」

 

矢が爆ぜた影響で立ち込める煙から出たところを後ろから赤黒い魔力で構築した腕が私を強襲。ギリギリそれをプロテクションで防御。

 

「高町一等空尉でも、向こうの援護に行かせる訳にはいかない」

「なるほどね、要は時間稼ぎかな?」

「そう」

「新人の子が1人で私を足止め………私もナメられたものだなぁ。でも、そっちがその気なら私も受けて立つよ」

「よろしくお願いします」

 

たぶんウリエルって子がフェイトちゃんとの1対1でも望んだんだろうね。データ見た時は小柄で可愛らしい子だなって印象だったけど、中身は闘志メラメラだ。育て甲斐がありそう。

 

「っ………ディバインバスター!」

「ジャベリン!」

 

私はユーキから距離をとってチャージ時間の短いショートバスターを発射。チャージ時間を削ったぶん威力もかなり落ちてるけど、Cランクの子が対処するには十分に高威力な部類に入る。相殺するのは至難の業のはずなそれを、ユーキは真上に掲げた手の上に赤黒いモヤを集束して構築した彼女の背丈以上の長さのある槍を投げてぶつけて完璧に相殺。

 

「ウェズパーリング乱発射!」

 

しかもそれで終わらず、すぐに次の行動。今度は例のモヤをバスケのゴールリングくらいの大きさのリング状にして何発も連射。単発単発は誘導性能は低いそれを微妙に狙いを逸らして弱い誘導で的確に私を狙えるように撃ってくる。

私はそれを回避出来るものは回避、無理なものを選定してアクセルシューターで迎撃して対応。誘導性能はさっき言ったように低いから対処出来ないことはないけど、もしも当たったら………たぶんタダでは済まない威力じゃないかな。

 

「ブラッドフレイムアロー!」

「えっ!?」

 

などと考察しながら避けてたら最初に来た矢がまた私めがけて飛んできた。なんとか矢の上を身を翻すようにして避けたけど、矢が掠ったお腹の部分のバリアジャケットが裂けてた。アグレッサーフォームとは言っても私のジャケット、かなり強度あるのにね。

 

「驚いた………掠っただけで私のジャケット、裂けちゃった。強度には自信あったんだけどな」

「私も、今の避けられたのに驚いた。完全に不意打ちだったのに………空間認識能力にも8年前とは比較にならないくらい磨きがかかってる」

「私達会ったことあるっけ?」

「あるにはある。あとで話す」

「ん、わかった」

 

8年前………私がヘマして撃墜された頃だよね?ユーキの言葉から察するに会ったのはその頃。けど、全く覚えがないんだよなぁ。

ま、話してもらえるんだからそれでいいかな。今はこの戦いに集中しよっと。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

「っ!らぁぁ!」

 

廃都市街にあるハイウェイ、そこで私とスバルが拳と拳をぶつけ合っていました。

 

「ちっ………幻影がやっかいな!」

 

その近くでは燕が四方八方へ範囲攻撃型魔力弾のスキャッターを発射。恐らくティアナの幻影魔法で作られた偽物に撃っているんでしょう。それが本物とわからない故に無視は出来ません。ティアナの攻撃そのものは魔力弾によるもののみなので、私なら旋衝破でいなすことは出来ますが、スバルの相手をしながらはそれも困難。同じ理由で私の探知を広げてティアナの位置を絞り込むことも不可能。そうすればスバルへの注意が疎かになってしまってクリティカルヒットを貰いかねませんからね。燕はそれをわかっているのでティアナの対処に奔走している、というわけです。

 

「ここっ!」

「なっ!?」

 

スバルは私から向かって右側、つまり右腕の外側へ体を潜り込ませ、私へ攻撃を仕掛けてきます。その位置は今の私が最も苦手とする位置。左ならディザスターヒートを撃ち込めますが、右側は反応こそ出来ても反撃するのに体を捻って距離を詰めるワンテンポを挟まなければいけない為、スバルの機動力ならそこに潜り込まれれば反撃しにくいんですよね。恐らくティアナの差し金でしょうけど、よく私のことを研究してますね。

そうなってしまえば私の方から距離を離すしか取れる手段がないので、ますますスバルの思う壷というわけで………何とかしなければ。

 

「やりますね、スバル!」

「刹那さんには今度こそ勝ちたいですから!」

「私も負けるわけにはいきませんけどね。それなら………こうです!ディザスターヒート!!」

「なっ!?」

 

私はスバルから距離を取ったと同時に右腕のブラストクロウ·レプカの掌をハイウェイの路面に当てて砲撃。私へ突貫してくるスバル諸共、足場を破壊してバランスを崩させます。

 

「神風流………裂空拳!」

「っ………ウィングロード!」

 

崩した足場の破片の1つを蹴ってスバルへ加速。私の得意の一撃はスバルに入る………そう思っていたのですが、スバルはそれを空中にウィングロードと呼ばれた魔法によって足場を作って回避。私も見たことの無いその魔法、空中に道路状の足場を作るそれは、私とは違う形で陸戦魔導士が空中戦をする手段。しかもローラースケートを使うスバルならでは。

 

「新しい魔法、ですか?」

「ううん、お母さんからリボルバーナックルと一緒に受け継いだんです!」

「訓練校では使う機会は皆無ですからね」

 

厄介ですね………あのスバルの作った足場自体は私も使うことは出来るでしょうが、スバルに有利すぎます。

 

「燕!」

 

そこで私は1度スバルから離れ、燕の近くへ。

 

「10秒だけ、スバルを足止め出来ますか?」

「ん?出来なくはないが………」

「探知範囲を広げてティアナを探します。本体の場所さえわかれば心置き無くスバル相手に集中出来るので」

「了解、だ!ヴァルファイア!」

 

私が後ろへ下がると同時に燕は近場のハイウェイの足場を攻撃して崩します。

 

「フラッシング………」

 

そして体勢を低く構えてから

 

「ペネトレイタぁぁぁぁ!!!」

「いぃぃ!?!?」

 

魔力付与で加速性能を格段に上げ、崩したハイウェイの破片を足場にしてスバル目掛けて突進。スタートからスバルに到達するまでの時間、僅か2秒。そのものすごい加速の突きにスバルは予想外だったのか回避が遅れ、障壁により防御。しかも加速によって底上げされたパワーを受け止め切ることが出来ずにウィングロードから外れて落下。

 

「ムーンサルトバースト!!スキャッター!ヴァルエアロ!」

「ちょぉぉぉ!?!?」

 

落下と同時に燕は後方へ大きく跳び、広範囲魔力弾や雷の魔力弾を連続発射。スバルはそれを何とかウィングロードへ着地してダッシュで避けます。

 

「スキャン完了。燕!」

「………なるほど。確かにそこなら可能だな」

「頼みます」

「了解!」

 

私が探知したティアナの場所、それは私達の後方のハイウェイ上にある瓦礫の影。距離にしてざっと50mほど。そこならスバルを援護することも簡単ですし、私達の妨害も可能。いざと言う時は建物の中より逃げやすい。流石ティアナ、考えましたね。

しかし、それは並のペアが相手の場合。見付かってから攻撃が来るまで時間の掛かるペアなら有効だったでしょうが、私達………特に燕のフラッシング·ペネトレイターなら先程の驚異的な加速でスタートと着弾の間の時間は数秒。ティアナは高速機動型では無いので、その間に逃げることはまず不可能。

 

「やっば!?」

 

先程の燕の加速力と、自身の方へ向いた燕を見て悪寒がしたのか、ティアナはその場所に留まるのを止めて下へ逃げます。が、それを逃す燕でもなく。

 

「フラッシング·ペネトレイター!!!」

 

2回目の超加速が炸裂しました。ギリギリで避けたみたいですが、後ろにあったハイウェイの瓦礫が吹っ飛んでいます。

 

「さて、と。援護は絶ったところで………スバル、再開しましょうか」

「ぉ、お手柔らかに?」

「行きますよ!」

「っ………はい!」

 

先程の燕との連携で少し怯んでいたみたいですが、スバルは自身の頬をバシンと叩いて気を取り直し、最初の気迫とともに私へと迫ってきました。




フロンティアで森丘や塔行くと帰ってきたなぁ、って感じがひしひしとします。

ちなみにここでのスバルとティアナは原作の2人より若干強化されてます。とは言ってもやらかすところはちゃんとやらかしますが(

感想などあればよろしくですよー


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第49話 集結、機動六課!

どもども。お久しぶりです!

新年度が始まり新生活へと移った方も多いのではないでしょうか?
私ですか?私は仕事が忙しくなったってくらいでしょうか。仕事量が3倍増しくらいで。

あとゆずソフトの最新作、RIDDLE JOKERにハマりました。買ったのは3月末の発売日ですけど。それとその少しあとにハマったのがスパロボXですね。アマリ可愛いよアマリ!

更新が遅くなったのはこの2つ(主に後者)が原因です、すみません

ではどうぞ!


───約30分後 第8臨海空港近隣の管理局支部ロビー

 

「とまぁ、そんな経緯があって八神二佐は新部隊設立のために奔走して」

「4年程かかってやっとそのスタートを切れた………というわけなんやけど………」

「「「「「「「ぐってぇぇぇ………」」」」」」」

「………半分も頭に入ってないですね、これは」

 

今私達はバトルロワイヤルを終え、近くの管理局支部のロビーではやてとアリシア、リインフォースIIから説明を受けているんですが………私、燕、ウリエル、ユーキ、スバル、ティアナ、フェイトの7人はそのロビーの一角にあるソファでぐったり。単純にダメージが蓄積したのと疲労で動けない、というわけです。

リインフォースIIと私の右腕のコアを務めているイリスの2人から治癒系の魔法は貰ったんですが、それでもダメージ自体は残るので。特に最終的に相打ちになったウリエルとフェイト以外はなのはからのバスターの直撃を貰ってノックアウトなので余計に………

 

「ごめんなさい………誘導してたつもりで、まんまと私の方が誘導されてた」

「そこは経験の差だよ。ユーキちゃん、すごい奮闘してたよ?まぁ、最後に突っ込んできたのは悪手だったかもしれないけど」

 

ユーキと(データを纏めてて今奥から出てきた)なのはの言う通り、ユーキはなのはをウリエルや私達から引き離すように誘導していました。が、なのははそれをさりげなく利用。私達を巻き込んで撃ち落とせる位置に逆にユーキを誘導した、というわけです。で、それに気付いたユーキが焦って特攻。まんまとバスターをほとんどゼロ距離で直撃。射線上にいた私達もそれに巻き込まれてノックアウトした、というのがあの後の流れですね。なのはだけヘロヘロでないのもこれが理由。

 

「ふぅ………つまり単純に纏めると、今の管理局の指揮系統は弱いところが多いので、ある程度自由に動ける部隊を作りたかった。で、それが4年かかって今実現しようとしている………と言ったところいいですか?八神二佐」

「せやせや。というか兄やんにはそれ話したよね!?」

「………仕事中です。その呼び方はやめてください。それに、私だけわかっても仕方ないでしょう?」

「ここは私達だけなんやしいいやんか?で、話の続きやけど、その部隊は陸戦魔導士が主力になるんや」

「私達はその部隊のフォワードにスバル·ナカジマ二等陸士、ティアナ·ランスター二等陸士、刹那·ストラトス特務官補佐候補、ウリエル·エーベルヴァイン二等陸士、ユーキ·エーベルヴァイン二等陸士を迎えたい思ってるの。まぁ、私の補佐予定の刹那からは了承貰ってるんだけどね」

「欲を言うなら八雲燕二等陸士も欲しいんやけど、流石にナカジマ三佐に怒られてもーたしな」

 

………そりゃ新人を4人も引き抜けばそうなります。

 

「でも臨時の応援要員としてはしてくれるみたいやからナカジマ三佐には感謝やな。で、うちに来ると濃い経験が積めるし昇進機会も多くなる。どないやろ?」

「ぁ………ぇっと………」

「例えばスバル、ユーキ、ウリエルなら高町教導官から魔法戦を直接襲われるし、メンバーにはウリエルが言ってたシグナムからも学ぶ機会が出来ると思うし」

「「はい」」

「っ!」

「執務官志望のティアナには私やそこでぶっ倒れてるテスタロッサ執務官で良かったらアドバイスとかも出来るしね。いい事づくめだよ」

「ぁ、いえ!とんでもない!………と言いますか恐縮です?と言いますか」

 

既に知っていた私はともかく、この新人ズからしてみたら美味しすぎる誘いにしどろもどろ。無理もないですけどね。

………1番年上の私も新人ですが。

 

「ま、結論を急ぐことじゃないからゆっくり考えてもらえればそれでいいよ。それよりもなのは、試験結果どう?」

「んっとね。全員技術はほぼ問題なし。ユーキちゃんやウリエルちゃんは戦闘になると少し視野が狭くなる傾向にあるけど………」

「「ぅぐぐ………」」

「とは言ってもそれを補って余りある能力と魔力値から鑑みて、不合格とするには要素としては小さすぎるし、これから矯正していけるから問題なし。というのが私とリインフォースII(試験官)の共通の見解」

「ですぅー」

「そもそもリミッターかけていたって言っても私とフェイトちゃんはAランクで、それと互角以上に渡り合えてた子達を次の試験の半年後までCランクにしておくのは返って危険だしね。能力そのものはみんな問題ないから可能なことなら飛び級でAにしてあげたいけど、そこまでの権限はないから………ごめんね?」

 

数少ないダメだしをされたウリエルとユーキ、これ自体は前から言われてたことなので、自覚があるのもあってか2人は恥ずかしさで真っ赤に。

なのはからの結果発表は少し長くなりましたが、要約すると

 

「みんな、Bランク昇格試験は合格ってことだね」

 

アリシアに言われましたが、そんなところらしいです。

 

「さっきも言うたけど、私への返事は急がんでえぇよ?言うてものんびりされすぎても困るんやけど………せめて数日中くらいでええかな?」

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同月 機動六課隊舎

 

あれから数週間時が経ち、ここは機動六課隊舎内のロビー。

私達はあれからはやてからの提案を了承し、ここ機動六課へ出向となりました。そして今日がその機動六課の本格始動の日。先程私達を含むスタッフ一同がこうしてロビーに集合、部隊長たるはやての挨拶を受けたところです。長話は嫌われるから、本当に2言3言で早々に挨拶を切り上げたあたり、はやてらしさを感じました。

スタッフ一同はフォワード陣の私達とは別行動でオリエンテーションを受けているところですね。スタッフの人達は当然ながら知らない顔ばかりですが、ごく一部に見知った顔もあります。一方でスタッフの人達からすれば私達フォワード陣以外はほぼほぼ顔見知りと言った様子。

ちなみに私の見知った顔と言うのは当然、私の直接の上官であり、同じくアリシアの補佐のヴィヴィと沙綾です。2人とも未だに上官というのが信じられませんが、悲しいことにこれは現実なんですよね。これは余談なんですが、アリシアやはやてにも行った記憶封印の解除はなのはやフェイトを初めとした皆に行い、私達のことはちゃんと認識してもらえるようにしました。当然ユーキのことは驚いてましたが、ちゃんと受け入れてもらえるみたいでよかったです。

で、肝心のフォワード陣。私達4人は知っての通りなんですが、新たに2人。ユーキくらいの背丈の男の子と女の子。確かフェイトが任務先で保護した………とかなんとか。男の子の方は陸士訓練校入校初日にたまたま見学に来ていたらしく、私達のことを覚えてました。

 

「この6人がフォワード………のようですね。スターズと私と同じセイントは顔見知り同士ですが、ライトニングの2人は初めてですよね?」

「ぁ、はい!そうなります。個人的なことを言えば1度だけ………4年前の陸士訓練校を見学した際に訓練を見ていたので僕の方は見たことはあるんですが、こうして顔を合わせるのは初めてになります」

「私はつい先日まで環境保護隊にいたので、初めてになります」

 

あの日はスバルが色々やらかした日でしたね。ティアナがそれを指摘すると顔を真っ赤にしてました。

 

「とりあえず自己紹介しておきましょう。私は刹那·ストラトス。コールサインはセイント3でポジションはFA(フロントアタッカー)です」

「同じくセイント4のウリエル·エーベルヴァイン。ポジションはよGW(ガードウィング)よ」

「セイント5、ユーキ·エーベルヴァイン。ウリエルの妹。ポジはCG(センターガード)。よろしく」

 

補足でウリエルが20歳、ユーキが19歳だと教えるとすごく驚いてました。確か10歳………ですからね。ユーキやウリエルの方が背丈や体格は年上っぽいとは言っても10近く年上とは思えなかったんでしょう。

 

「次は私ね。スターズ3のティアナ·ランスターよ。ポジションはユーキと同じCGね。便宜上はフォワードの指揮も任されてるわ」

「スターズ4のスバル·ナカジマだよ。刹那さんと同じくFA!宜しくね!」

「ライトニング3、エリオ·モンディアルであります!ポジションはGW………ウリエルさんと同じですね」

「同じくライトニング4のキャロ·ル·ルシエであります。今ここにはいませんが、竜のフリードリヒも。ポジションはFB(フルバック)、よろしくお願いします」

 

第一印象は2人とも年相応に幼さを残した元気さがある、と言ったところでしょうか?

 

「あの………1つよろしいでしょうか?」

「んー?私達で答えられることならいいわよ?」

 

自己紹介とコールサイン、ポジションの確認を済ませたところでエリオから何か聞きたいことがあるようですね。

 

「同じCG、ということでしたら………こう言ってはなんですけど、年上のエーベルヴァイン二士の方が適任じゃないのか………と思いまして」

「ぁー、そのこと?」

「単純に私が指揮するのが苦手だから。もちろん勉強するけど、それならティアに任せた方がいいって判断」

「で、本来ならFBでも良かったんだけどこの子、後方支援って言うよりも脳筋傾向が強くてね………姉妹揃って、だけど。で、それなら指揮勉強も兼ねてCGはどうか?ってなったのよ」

「なるほどです、ありがとうございます!」

 

散々な言われようだったユーキと(飛び火した)ウリエルは自覚はあるようで、顔が真っ赤。

その後イリスの紹介も兼ねてスキルや経験の確認をし、それを終えたところでなのはと合流。これから訓練みたいです。

 

「では、私達は着替えてきますね」

「ん。とりあえず10分後………でいいかな。外に来てね。場所わかる?」

「最悪、なのは………ではなく高町一尉の位置を探知してそこへ向かいますよ」

「良いよ、公の場以外は昔みたいに『 なのは』で。じゃ、10分後ね」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

一応上官なんですが………まぁ、本人の了解があるのならその方がいいでしょう。はやてやフェイト、アリシアもそう言ってましたし。

それにしても、なのはの教導………どういうスタイルでやるのか楽しみですね。わくわくします。




はい、すみません。期間空いた上に色々端折ってます。ごめんなさいm(_ _)m

次回以降は………(たぶん)比較的原作に沿って進んでいくと思います!

では、感想や評価あれば頑張れるのでよろしくですよ!


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第50話 訓練スタート!

どもどもー。ルイスです。相変わらず更新遅くなってしまってすみません。

少しずつ書いていってるんですが、なかなか投稿まで進みませんっ!更新を楽しみにしている人には申し訳ありません………

書く合間で前回投稿の少し後くらいに半年前に辞めたPSO2へ復帰、今では14武器を3本泥してます。まぁ、強化が追いついてないんですけどね。ちなみにリヴァガローラ(DB)とジルドギローラ(パルチザン)、ギアエクスペリエンス(拳)です。
リヴァガローラはこの小説にも出しているウリエル模倣のキャラの主力武器として、ジルドギローラはこれも最近作ったキャラ、天羽奏(シンフォギア模倣)の、ギアエクスペリエンスは立花響(同じく)の武器として使う予定です!

これだけ落としてるせいか、ここ1週間くらいは数本の13が落ちたのを見たくらいなんですけどね。

そして、私のカチ装備も一新。オメガルーサーの時止めも普通に耐えられる様になって万々歳です。バフ支援が捗ります!

というぷその近況報告はこれくらいにしておいて、本編いきまーす。


機動六課隊舎のすぐ側、海上に設置された訓練場。そこはパッと見はヘリポートのようにも見えるただの平坦で機械的な場所でした。しかし、そこは魔力運用によって擬似的に様々なフィールドを投影、実体化させるという管理局最先端技術の粋を集めた場所でした。

今そこに投影しているフィールドは廃都市。その建物と建物の間をスバルとエリオの2人が逃げ回る縦長の楕円形をした計8機の機械兵器を追い、時には待ち伏せて攻撃しています。

しかし、その攻撃は全てそれらの高速機動で避けられ、未だ1発のダメージも与えられていない状況。そのせいもあって前衛のスバルとエリオは無駄に分散してしまい、後衛のティアナとキャロの2人の援護もおぼつかない状況。

それを建物の上から眺めるなのはとシャーリー、そしてセイント小隊フォワードの私達3人。

 

「アレは………私達がエルトリアから帰ってきた直後に襲ってきた機械兵器ですよね?」

「そ。通称ガジェットドローン。長いからみんなガジェットって呼称してる」

「あれは見ての通りそこそこ機動力があるのが特徴ね。それともう1つの特徴が………」

 

丁度そこでティアナが撃った魔力弾が全てフィールド系の防壁に阻まれ、消されていました。

 

「攻撃魔力を掻き消すアンチマギリンクフィールド。通称AMF。普通の射撃は通じないし、全開にされると飛翔や足場作り、移動系魔法の発動も困難になる。スバル、大丈夫?」

 

その直後、ウィングロードを展開したスバルが全開にされたAMFのせいで足場を消失、ビルに突っ込んでいました。一応無事みたいですが………

最も、今やっているこれはシャーリー曰くデバイスに細工をして擬似的に再現をしているだけらしいですが。データを現物からとっていることもあって再現度の高さは折り紙付き。

 

「対抗する方法はいくつかあるよ。どうすればいいか素早く考えて素早く動いて!」

「……·なるほど。これは偽物なので今はなんともないですけど、本物だと私の探知にも影響が出そうですね」

「出るだろうね。あの小型レベルのAMFだとまだ易しい方だとは思うけど」

「一応イリスさんに同意も得て、この後の番でその辺の再現もしますからね。まぁ、イリスさん曰くその時のデータで解析と対策出来たって言ってたんだけど、念の為ね」

 

ちなみに私達セイント小隊だけこの対ガジェット訓練が後回しなのは単純に私達がガジェットとの戦闘経験があるから。正確には戦ったのはユーキとウリエルですが、私もその場にいたので。で、先ずは経験のないスターズとライトニングの4人だけで戦わせて、どう言ったものかを感じて貰う、とのことです。

 

「ぉ、ティアナが動くみたいだよ。キャロも何かやるみたい!」

「無機物操作と多重弾殼射撃………召喚については私詳しくないけど、多重弾殼射撃って確か………」

「ユーキちゃん詳しいね。そう、あれは本来ならAAランク相当のスキル。今のティアナなら不可能じゃないけど、消耗は普段より多いだろうね」

「AMFの犠牲にする外殻で本命の弾丸を包む射撃………ですね。キャロがやっているのはAMF範囲外で火炎を発生させて打ち出し、それから退避したガジェットを遠隔召喚した鎖で捕獲、と。ティアナが優秀なのは知ってますが、キャロもなかなか」

 

残りのガジェットもエリオが崩した高架の下敷きとスバルの強引な力任せの破壊で全滅。最初こそ苦戦していましたが、かなり良い結果が残せたんじゃないでしょうか。

 

「じゃあ次、セイント。行ってみようか。数は9機、AMF出力は………とりあえず今と同じね」

「「「了解(です/よ!)」」」

 

スバルのウィングロードで私達の待機しているビル上に4人が戻って来るのを待って、私達セイントの3人はビルから飛び降りて地面に着地。

 

「それじゃあ始めるよー?スタートっ!」

 

なのはの号令と同時に呼び出されたガジェット9機が逃走を開始しました。

 

「ユーキ、背中は任せますね」

「了解。私の獲物、残しておいて」

「オッケー。ま、AMFなんて私達にはほとんどあってないようなものだけどね。刹那以外は」

 

そう言ってウリエルも地面を蹴って追撃を開始。私もそれに続きます。

 

「やはり魔力探知が妨害されるので少しキツいです………目を1つ潰されているようなものですからね」

〈もうAMFの解析は出来てるから、実戦ではこんなことはないはずよ。実物との照合は必要だろうけどね〉

「流石イリス、優秀で助かります。とりあえず今回はこのまま続けますね。斬空破っ!」

 

いつも使っている視界確保の為の魔力探知が上手くいかないことを確認するや否や、私は耳に神経を集中。探知ができないなら音で何とかするだけです。

私は丁度ガジェットが通過しようとした高架を先程のエリオ同様、斬空破を飛ばして破壊し、ガジェットを分散させると同時に、その時の音でガジェットの現在位置を把握。

 

「3機突破した。刹那、そっちお願い。私とウリエルでこっちの6機片付ける」

「了解!」

 

スタート地点で状況を見ていたユーキの指示で私は瓦礫を飛び越え、追撃に入りました。と言ってもそこまで時間をかけるつもりはありませんが。

 

「空破断っ!」

 

少しの間ガジェットを走って追い掛け、ある程度追いついたところで3機編隊へ向けて空破断を撃ちます。が、それも分散して避けられました。

 

「予想通り、です!」

 

が、それも想定内。私は地面を旋風脚で蹴って方向転換と同時に急加速。分散した内の1機へ急接近しました。

 

「崩雷っ!」

 

私はそのままの勢いで肘打ちを直撃させ、壁に激突。まず1機を破壊。

 

「ディザスターヒート!」

 

すかさず加速と同時に右掌に炸裂弾をチャージ。ブラストクロウの爪で別のガジェットに大穴を開けて内部へ腕を突っ込み、ガジェット内部でその炸裂弾を爆発させて破壊。ちなみにこの炸裂弾、ティアナの多重弾殼射撃同様にフォーミュラを使って増幅させた魔力でコーティングしてあります。

 

「あと1つ!神風流……」

 

残った1機が逃走を始めたのを確認し、急加速して密着。左の拳をぶつけます。

 

「爆砕烈風拳………2連!!」

 

その一撃でガジェットは壁に激突し、遅れてくるもう一撃で完全に破壊し終わりました。

ふぅ、と一息着いたところで後ろを確認すると丁度ユーキとウリエルも戦闘が終わったみたいです。特に心配はしていませんでしたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side なのは

 

「やっぱり、アレくらいだと刹那君達なら一捻りしちゃうかぁ」

「僕達はAMFやガジェットの機動力にあれだけ翻弄されたのに、それをサラッと………」

「うん。ユーキ二士の射撃もストラトス二士の炸裂弾もAMFを無視してるみたいだったです。それに術式もベルカ式はわかるんですけど、見たことないものも使ってました」

 

刹那君達セイント小隊フォワード陣の戦闘が終わり、それをビルの上から眺めていた私達。相変わらずと言うかなんというか………魔力探知が使えないってハンデを背負っているはずなのにこの手際だもんね。先に戦闘を終わらせていた4人、特に刹那君達と面識のないライトニングの2人は驚きを隠せないみたい。

ユーキちゃんの事をエーベルヴァイン二士って呼んでないのは多分ウリエルちゃんと被るからかな?

 

「あれは無視してるわけじゃないんだけどね。いい機会だし少し説明しとこうか。スバルとティアナはどうする?」

「「はい!」」

「えーっと………大体のタネはわかるんですけど、せっかくなので聞かせてもらいます」

「私も!」

 

私達魔導士と比べたらあの3人は異色だからね。同期のスバルとティアナはある程度知ってるみたいだけど。

 

「まず、あの3人が使ってる術式から。あれはフォーミュラっていう少し特殊な術式でね。体内のナノマシンを使ってエネルギー運用や動力供給を行う………少し難しいんだけど、魔力とはまた別のエネルギーを運用してるって思えばいいよ。車に例えるんだったら私達はガソリン自動車、刹那君達は電気自動車ってところかな」

「体内にナノマシン………?」

「そ。元々エネルギーとかが乏しい異世界の技術なんだよ。魔力との相性も良くてね。と言っても、それを運用するにはかなりの熟練がいるけど」

 

シャーリーに頼んでいくつかのデータを投影して、それも交えて説明。とは言ってもこれ、なかなかに難しいんだよね。私ですらまだ理解し切ってないし。

 

「で、それと同時に運用しているのが刹那君の右腕、ヴァリアントシステム。刹那君の身体のことは聞いたことある?」

「「知りません!」」

「私とティアは知ってます。何年か前に事故で右腕と視力を失ったって、訓練校で本人から聞きました」

「目と腕を!?」

 

まぁ、驚くよね。私だって再会した時にその事聞いてびっくり通り越して腰抜けちゃったし。

 

「あれ?でもストラトス二士、まだ付き合いはほとんどないですけど、目が見えないような素振りは全く見せてませんよ?腕もちゃんとありますし」

「それにもタネがあるんだよ。ティアナ、せっかくだから答えてみて?」

「ぁ、はい!えっと、普段はごく微量の魔力を周囲に放出、それによって周りの物の位置や動きを探知している………と聞いたことがあります。他にも音や温度もその補助で探知している、とも。腕に関しては少し特別な義手、とまでしか」

 

ぁー、やっぱり義手のことは詳しく話してないのか。想定内と言えば想定内だけどね。難しいし。

 

「大体正解だね。簡単に言えばコウモリの超音波、あれに近い発想だと思っていいよ。腕に関しては………これもフォーミュラと同じく乏しい資源を効率的に運用するシステムでね。ヴァリアントシステムっていうの。コアを中心にして無機物を変化させて好きな形状にするんだよ。ユーキちゃんとウリエルちゃんのは少し別なんだけどね」

「別、と言いますと?」

「んーとね。ユーキちゃんのあの赤黒いモヤやそれで形成している物は純粋な魔力。それも魔力結合を通さない魔力の塊。ウリエルちゃんのは魔力でもなんでもない普通の剣………って言うよりは妖刀とか魔剣って言った方が近いかも」

 

よく考えたらあれって普通の、って言い方は間違いだよね。魔力で成形してるわけじゃないし、シグナムさんのレヴァンティンとも少し違うけど、性能は明らかに普通じゃないもん。

 

「ぁ、そうか!ストラトス二士は基本は僕達と同じ魔力結合を通した魔力運用をしているけど、そのサポートでフォーミュラを使っている、だから炸裂弾がAMFを無視していたように見えたんですね!ユーキ二士とウリエル二士はそもそも魔力結合を通さない運用だから!」

「エリオ大正解。付け加えるなら刹那君の覇王流………じゃなかった、神風流は肉弾戦だからそもそもAMFは意味無いからね。あの3人が簡単にノシちゃったのは単純に私達と違って、対AMF戦において相性が良いからなんだよ。実戦経験があるから、ってのも大きいけどね。機会はたくさんあると思うし、色々と話してみるといいよ。今後の参考になるはずだよ」

「「はい!」」

 

そんなこんなで、色々説明している間に下にいた刹那君達がこっちに戻って来て、続きの訓練をスタート。それはもう、夜まで!最後の方は刹那君ですら息を切らせてました。




んーむ。ほとんど説明パートで埋まっちゃった気がしますが………気のせいでしょう!

次はファーストアラート………の前に閑話いれようかな?

では、感想などあればよろしくです!


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第51話 ストライカーの朝

どもども、ルイスです。

期待していたNewガンブレ………期待してたのに悪い意味で裏切られて失望してます。製品版は予約してましたけど、買うの辞めました。その後の感想とか評価とか見て中古を考えますです。

ぷその方は鯖10へ引越し。チームでゴタゴタがあって解散しちゃって、頼る伝手が無くなった(可能な限りソロプレイはしたくない)ので仲の良いフレンドのいる10鯖へ行きます!過去に数ヶ月だけ滞在したことありますしね。当時は旅行感覚でしたが

それはそうとして、今回は少し短めですが、本編どうぞ!


私、刹那·ストラトスの朝は早い。5時前には起床し、着替えと洗顔、歯磨きと一通りの身なりを整えたら寮舎の外へ。

春先のこの時期、少々薄暗い時間帯ですが、私はランニングへと出ます。途中で別の寮舎の前を通ったところで髪をポニーテールに纏めて白のTシャツと紺の半ズボンのトレーニングウェアを着たアリシアも合流、2人で並んで朝のランニング。途中途中で小休止を入れながら30分強程走って寮舎に戻ったらアリシアと交互に柔軟をしてからミット打ち。最後に軽くスパーリングをしてからお互いの寮舎へ戻り、シャワーで汗を流してから制服に着替えて朝食。

これが10年前に海鳴にいた頃から続けている私の日課。最も、場所が海鳴やエルトリアの荒野、そしてここミッドと変わったり、アリシアも一緒にするようになったりと色々と変化してますけどね。走る時間も本格的なトレーニング前とあって少し短くしてますし。アリシアが加わったのは(当然ながら)ここ最近ですけどね。

 

「ふっ………ふっ………」

「っ………はぁ……っ」

 

アリシアは私と違って体力がある方でもなく、鍛えていた訳でもないので、ランニングの終盤に差し掛かると息も上がってきます。それでも私のペースに合わせた上でフォームも崩さずに着いてくるあたり、根性は目を見張るものがあります。

 

「あの角を曲がれば、ゴールはもうすぐですよ」

「わかっ………てる!」

 

正確な距離を測ったことはないですけど、休み休みとは言え30分強も走っているので距離はかなりのもの。息も絶え絶えで今にも倒れそうですが、アリシアは最後の力を振り絞って走り続けます。

そしてゴール。隊舎前に到着し、ランニングが終了。

 

「ぁ、刹那さんにアリシアさん!お疲れ様です!」

「あれ?エリオ、早いですね」

 

しかし、今日はいつもと少し違うことが待っていました。普段ならまだ寝ているか丁度起きたくらいのエリオが私達を待っていました。とりあえずエリオには私の柔軟の補助を頼み、アリシアも魔力を使ってマテリアライズしたイリスに補助を頼んで柔軟。

 

「たまたま目が覚めたんですよ。そうしたら刹那さんがが部屋から出ていくところで。それで着替えて僕も外に出たら丁度ジョギングに出たところだったんで、待ってたんです」

「もしかして私の起きた時の物音で………?だとしたらすみません」

「かなり長く走ってたけど退屈じゃなかった?」

「これでもかなり短めの時間と言ってもそこそこ走ってるからね、刹那とアリシアは」

「たまたまです、刹那さんは気にしないでください。僕も柔軟したり素振りしたりしていたので、案外退屈でもないですよ」

 

ちなみにイリスは初日の訓練の後にエリオとキャロには紹介済み。そして初日から数日は私達のことをファミリーネームと階級で呼んでいたエリオとキャロもつい昨日、それをスバルやティアナ、ユーリとウリエルに諭されて今では名前呼びが定着してます。アリシア(とフェイト)に対しては元々面識もあった関係で最初から名前呼びでしたけどね。

 

「ぁ、それはそうと今日はお願いがあったんです」

「お願い?」

「と言いますと?」

 

柔軟を終え、いつものミット打ちの用意をしようとしたところにエリオから唐突なお願い事が。特に急ぐ訳でもないので私とアリシア、イリスはそれを聞くことに。

 

「僕、まだGWとして未熟で………なので、強くなるコツ………と言いますか、鍛えてほしいんです」

「なのはの訓練だと足りない感じ?」

「そんなことないですよ。なのはさんの訓練は基本に着実で身になります。プラスアルファで自主的になにか身に付けたい………そんなところです」

 

なるほど………と私は少し考えます。同じチームメイトのキャロのことを守ってあげたい、とかそういうのもあるのでしょうね。

 

「それなら良いのが1つありますよ」

「何ですか!?」

 

すずいっと前のめりになるエリオ。そんなに焦らなくても逃げませんよ。

 

「特別な技術が必要な訳でもなく、やることはとても単純で簡単。しかし、本格的に身に付けるには日々の積み重ねが大切。そういうテクニック………のようなものです」

「どういうものなんですか?」

「一言で言うなら()()()()()()………でしょうか?」

「目を閉じない?」

「言葉で言うより実際に見た方が早いでしょう。エリオ、寸止めはしますが構えてください」

「ぇ?ぁ、はい!」

 

私の後ろの方でミット打ちを始めたアリシアとそれの補助のイリスを他所に、私とエリオは構えの体勢へ。

 

「行きますよ?」

「はい!っ!?」

 

エリオから返事が来るとほぼ同時、私は思いっきり踏み込んでエリオへ向けて急接近。元々数メートルしか離れてなかったこともあって一瞬で肉薄すると左の拳をエリオの顔面向けて一閃。もちろん寸止めしましたが。

 

「………っ?」

 

エリオがゆっくりと目を開けると目の前には私の拳。殺気を放ったつもりは無かったのですが、流石に怖かったのかエリオは腰を抜かして地面に座り込みました。

 

「今、エリオは目を閉じましたよね?何故ですか?」

「ぇ、えっと………こ、怖かったから………です」

「でしょうね。すみません、最初から思いっきり行き過ぎました」

 

腰を抜かしていたエリオへ私は手を差し伸べ、立たせてから服についている汚れを払い落とします。

 

「私が言った目を閉じない、というのは今のようなタイミングで目を閉じないという事です。もちろん怖い、と感じて目を閉じたエリオが間違っている訳ではありませんよ?」

 

怖い、そう感じるということは身の危機を感じているということ。人間を始め、あらゆる生物はそれを本能的に回避しようとします。野生の世界ではそうしないと生きていけませんからね。

つまり、今エリオが私の攻撃に対して怖いと感じたという事は、私の攻撃に身の危険を感じだ証拠。そして目を閉じた行動はそれから逃れようと本能的にとってしまったもの。目を閉じたところで私の攻撃は避けられませんが、エリオは何ら悪くありません。

 

「では、もし目を閉じなければどうなるか………エリオはわかりますか?」

「えっと、閉じるってことは僕自身に降り掛かる危機から逃げてるってことだから………立ち向かう?だから………ぅーん?」

「ま、考えるより見た方が早いでしょう。アリシア、良いですか?」

 

私が呼ぶとはーい、と返事とともにアリシアがこちらに。事の顛末をとりあえず説明してから、少し離れて構えます。

 

「私ではなくアリシアの動きをよく見ててくださいね」

「わかりました!」

「では、行きますよっ!」

 

エリオの返事を待ってから、先程と同じように一瞬で肉薄。その勢いを乗せたまま右拳による一撃を繰り出します。が、アリシアはそれをギリギリで身を翻して避け、私の腕を目隠しに利用して死角を作り、そこから反撃の一撃。空いていた私の左手でそれを止めて今の攻防が終わります。

ちなみにこの一連の攻防に掛かった時間は長く見積もって1秒足らず、と言ったところです。

 

「す………すごい」

 

そんなものを見せられたエリオは当然といえば当然、呆然としています。見えたのでしょうか?

 

「どう?見えた?ものすごく早いやり取りになっちゃったけど」

「何とか。絶妙なタイミングで拳を避けてから反撃してました」

「ちなみに補足すると、反射神経そのものはアリシアは並ですよ」

 

えぇ!?と驚くエリオ。ま、そう言われても普通はその反応しますよね。

 

「さっき言った答えがこれだよ。刹那から感じだ怖さ、それから逃げるんじゃなくて立ち向かう。エリオはまだ漠然と怖いって感じるだけかもしれないけど、鍛錬を重ねたらそれがどこにどう感じるのかが分かるようになるんだよ」

「それを感じることが出来れば、見てから反応するよりも早く反応出来ますし、自身の怖さを相手に感じさせることだって出来ます」

 

このテクニックは私がエルトリアでの聖杯事件(エルトリアでそう名付けられた)以前に私が身に付けたもので、明鏡止水に頼らなくても、反応速度を上げようと研鑽した成果です。侵食されたミカエルにはそれでも敵いませんでしたが。

 

「とは言え、まずは目を閉じないようにするところからですね。朝の鍛錬以外でもなのはの訓練の時も意識してみるといいですよ。何でしたら、ウリエルに声をかけてみるのもオススメします。彼女、その手の近接戦闘のテクニックには私以上に長けてますから」

「わかりました!」

「ウリエルは朝に弱いから、私達みたいに早起きしては来ないけどね〜。普段キリッとしてるのに案外抜けてるとこあって可愛いよね!」

「ぁははは………」

 

付き合いの長い私や、なんだかんだで2年の付き合いになるアリシアにはウリエルのそういう所は全部見抜かれて(1度パジャマパーティーをして、その時にバレたそうです)いますが、まだ数日の付き合いのエリオには驚きだったそうです。無理もないですが。

 

「では、時間も時間なので1度解散しましょう。これ以上遅くなると朝ごはん食べれませんよ」

「それは大変だ!急がなきゃ!」

 

ふと時間を確認するといつも朝の鍛錬を終える時間。急いで片付けを済ませて着替えとシャワー、その後他のみんなと合流して朝ごはん。そんな感じで今日の朝も過ぎていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウリエルさん!勤務後に僕の鍛錬に付き合ってください!」

「んぇぇ!?」

 

約1名、寝る時間が少し遅くなったらしいですが、それはまた別の話。




はい、相変わらずの亀更新でございます、ごめんなさい。

2人でやるはずの仕事量を何故か1人でやるハメになって忙しさがトランザムしてるのです………
今後も月一くらいの更新になるかと思いますが、それでもいいよって方はお付き合い下さい!

感想、評価などあればよろしくですよ!


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第52話 なのはさんの訓練

まず最初に謝らせてください。
更新4ヵ月近く停滞して申し訳ありません!

仕事関連やプライベートも引越しがあったりとゴタゴタしてて更新できませんでした。引越しの方はまだ片付けが済んでませんが!
あとネタがなかなか思いつかなかった、というのも………

本当にごめんなさいですm(_ _)m


side ウリエル

 

私達が機動六課に配属されてから約2週間がたった。と言っても本格的な出動はまだなくて、訓練とデスクワークの日々。教導官のなのはさん(公の場以外は高町教官とか一尉って呼ぶのは堅苦しいから名前でって言われてる)はシュテルがライバル視してただけあって知識や技術が豊富。あれで19歳ってのが嘘みたい。それ言ったら22歳でやたら達観してる刹那はどうなんだってなるんだけどね。ユーキがなのはさんを天才って言ってたのもわかる気がする。

訓練の方はライトニングとスターズの4人がまだまだ新人で経験が浅いってのもあって基礎を身体に叩き込むのを重視したもの。限界まで体をいじめ抜いて、その限界を少しでも超えたポテンシャルを身に付けるってやつ。やってることは地味な上に地獄のようなキツさだから並大抵の人だと折れちゃうだろうなってメニューだけど、逆を言えばこれを乗り越えればレベルアップは確実。件の4人も根性で着いてきてる。

私達セイントの3人は他の4人と比べて基礎は出来てるけど、所詮は我流。刹那は競技用の身体作りみたいなところあるしね。それがダメとは誰も言わないけど、それでも私達セイントにとってもこの訓練はプラスになるものの方が多い。こういう地味な訓練の積み重ねは慣れてるしね。

 

「はーい、整列!」

 

今日の訓練もほぼ終わり、空中の足場の上に立ったなのはさんの声がかかり私達6人が集まり整列。

ぇ?1人少ないって?先に答え言っちゃうと不在なのはセイント3こと刹那。彼はアリシア特務官の補佐候補ってのもあって今日は上官(アリシアさん)と外回り。何でも元々アリシアさんが別件で受け持ってた任務の関係で要請があったんだって。で、アリシアさんが出て、実戦での補佐って名目で刹那も行っちゃったの。

 

話を戻すね。で、集まった私達6人はみんな肩で息をしててほぼ全身汚れてたりとこれまでの訓練のキツさを語るようなボロボロ感。このタイミングで集めたってことは今日の最後の課題かな。いつもやってるやつ!

 

「じゃあ本日の総中訓練ラスト1本!みんな、まだ頑張れる?」

「「「「「「はい!」」」」」」

「じゃあシュートイベーションやるよ!」

 

シュートイベーション、簡単に言えば制限時間中なのはさんの魔力弾避け続けるかクリーンヒット一撃お見舞すればクリアっていう半模擬戦形式の訓練。ちなみに誰かが1度でも被弾すれば最初からやり直し。もちろんユーキの魄翼みたいなので防御するのは有り。まぁ、なのはさん相手だと防御し続けるのはそもそも困難を極めるんだけどね。

 

「とりあえずいつも通りにスターズとライトニング、セイントの2グループに分けるね。今回は………そうだね、ウリエルとティアナが別グループ。今データ送ったよ。そこにあなた達の相手してくれる人が待ってるから」

「「了解!」」

 

と言ってもなのはさん1人で私達6人相手にするのは骨のようで(本気を出せばなんとかなるんじゃないか?って私は思うけど)、私とティアナは別の場所に移動。ちなみに最初の方は6人同時に相手してたんだけど、私とユーキの遠近撹乱と防御でアッサリクリアしちゃって、それ以降グループ分けてるの。たまに所属分隊関係無く分けられたりもするけど基本は分隊単位で2グループ。

 

「今回の相手は誰だろう?ヴィータ副隊長?」

「有り得るけど、昨日やったばかりでしょ?フェイトさんあたりじゃない?」

「ぁー、それはあるかも」

 

その相手がまさかあの人とは………私もティアナも想像すらしてませんでした。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ユーキ

 

「スバルは突撃。エリオは高速機動で撹乱とスバルのサポート、私とフリードで援護射撃する。キャロは適宜強化魔法掛けて」

「「「了解!」」」

 

私はスバルとエリオ、キャロへ指示を飛ばして、魄翼を広げてキャロを守りつつヴェスパーリングを左右5つずつ生成し発射。ウィングロードを展開して近接戦闘を仕掛けるスバルへと迫るなのはさんの魔力弾を撃ち落とす。けど撃ち落とした先からどんどん再生成されていってる。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

「っ!」

 

そこをスバルが真正面からの渾身の正拳突き。ただ、もちろんのようになのはさんには障壁で止められる。

 

「貰いましたっ!」

 

なのはさんはスバルに気を取られてる、その隙を狙うように真後ろの死角からエリオが突っ込んでくる。が、それもなのはさんにはバレてた様で止められる。

 

「っ…スバル!エリオ!すぐ離脱!!」

「「っ!?」」

 

私が警告するや否や、2人はすぐになのはさんから距離を取る。次の瞬間なのはさんの魔力弾がつい先程まで2人のいた場所へ着弾。離脱が1秒遅ければ被弾してた。

 

「キャロ、ブースト行ける?」

「いつでも行けます!ユーキさんにですか?」

「ううん、よく聞いて?作戦は───」

 

スバルとエリオの2人がコンビネーションでなのはさんを攻め立てる傍ら、私は今思いついた作戦をキャロへと伝達する。

 

「───どう、いけそう?」

「タイミングが命ですね。早すぎても遅すぎてもなのはさんにクリーンヒットは与えれない。けど、やる価値はあります!」

「決まり。即動こう。キャロはポジション取って。私はエリオと前衛交代するから」

「了解!」

 

キャロへと指示を出してから私は魄翼で弓矢を生成し矢を引き絞る。キャロは走って建物の影へと姿を消す。

 

『エリオ、飽和射撃するからそれを目隠しにして私とスイッチしてキャロと合流。スバルは引き続きなのはさんへ攻撃』

『『はい!』』

『秒読み。3……2……1……T作戦開始!』

(((T作戦って何!?)))

 

カウントが終わると同時に矢を放ち、即座に魄翼を大きく広げてヴェズパーリングを大量に発射。私の立てた作戦、その名もT作戦が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

「それじゃ、今朝はここまで。向こうももうすぐかな。合流するまで少し休んでて?合流したら集合だよ」

「「「「はい!」」」」

 

あれから数分。私のT作戦で何とかなのはさんにクリーンヒットを入れてなんとかクリア。正直もうヘトヘトで立ってるのもやっと。

 

「そう言えばユーキさん。さっきのT作戦のTって何なんですか?」

「ぁ、それ私も気になってた」

「僕もです。何なんです?」

 

一息着いたところでキャロからさっきの作戦について聞かれる。それについてはみんなも疑問だったみたい。T作戦のTって言ったら1つしかないよね?

 

「T?Totsugeki(突撃)の頭文字Tだよ」

 

当たり前じゃない。エヘン。

 

「ぁ、安直………」

「そうじゃないかと思ってました………」

「ある意味ユーキさんらしいですね」

 

ぁ、あれ?

ちなみに作戦内容は初弾の矢とヴェスパーリングの飽和射撃でなのはさんの視覚を撹乱、その隙エリオと私がスイッチして、スバルと私でなのはさんを足止めと誘導。エリオはキャロと合流後に指定の場所でブーストを掛けてもらって待機。その場所へ私とスバルでなのはさんを誘導。期を図ってエリオが突撃、って感じ。

 

「ユーキの指揮、まだまだ粗が残るね。精進していこ?」

「はい!」

「それと指揮官が前衛には極力加わらない方がいいよ。イレギュラーがあった時に対応できないからね。アリシア隊長やフェイト隊長みたいに高速でヒットアンドアウェイが出来るのなら話は変わるんだけど」

「ぅぐ………気を付けます」

「なのは隊長、お待たせしました。こちらも終わりましたよ」

 

そんなこんなで話してるところにヴィヴィ副隊長に連れられてウリエルとティアナが。ぇ?向こうの相手ってヴィヴィ副隊長だったの!?

ティアナがウリエルから剣(獄の方)借りて杖替わりにしてるあたり相当ハードだったんだろうことは想像つく。ウリエルもボロボロだし。

 

「ヴィヴィ副隊長、そちらはどうでした?」

「なかなかよく育ってますよ。流石はなのは隊長です。ティアナの指揮も筋が通ってましたし、ウリエルのフロントも目を見張るものがありました」

「へぇー?どう、ティアナ。指揮官訓練受けてみる?」

「ぇ?いや、あの………戦闘訓練だけでいっぱいいっぱいです!」

 

やっぱり指揮官としてはティアナの方が上かぁ………なんか悔しい。

 

「キュ………キュクル?」

「ぇ?フリード、どうしたの?」

 

と、その時突然フリードが何かを気にするようにキョロキョロと。ん?あれ?そう言えば何か臭う……?

 

「なんか、焦げ臭いような………」

「あぁ!スバル、あんたのローラー!」

「ぇ?わ!うっわやば!!」

 

エリオもそれに気付き、ティアナがふとスバルの足元へと視線をやる。ティアナの言葉に私達も見るとスバルのローラーの片方がバチバチと火花を出して煙を吹き出してる。スバルはそれを直ぐに脱ぐ。

 

「あっちゃぁ………しまったぁ、無茶させちゃったぁ」

「たぶんさっきの作戦中のなのはさんの弾避けた時じゃないかな。そこで変な負荷掛かったんだと思う。自作だし、その辺脆かったんじゃない?」

「となるとオーバーヒートかぁ………後でメンテスタッフに見てもらおう?」

「はい………」

「ぁ、それならティアナのアンカーガンもですよ?さっき何度かジャムってたでしょ?」

「ぅぐ………はい。イリスさんの力も借りて補強してたんですけど、さすがにもう騙し騙しです」

 

スバルのローラーとティアナのアンカーガンは知っての通り自作。専門の人が組んだわけじゃないから4年も使ってるともう限界が近いのかも。訓練校の時にイリスがある程度補強したみたいだけど、それももう持ちそうにないのかな。スバルもティアナも良い動きするから、それに自作デバイスがついてこれてないのもあるのかも。

ちなみにヴィヴィ副隊長の言うジャムはイチゴジャムとかのジャムじゃなくて、詰め込むとかの意味。ここでは弾詰まりって解釈だね。たぶん何度か詰まらせて不発したんだと思う。

 

「なのは隊長、そろそろいいんじゃないです?」

「んー………みんな訓練慣れてきたしね。そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかなぁ」

「新………?」

「デバイス??」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side キャロ

 

「ぇっと、スバルさんのローラーブーツとティアさんの銃ってご自分で組まれたんですよね?」

 

あれから訓練場を撤退。戻ってくる途中で外回りに出るフェイトさんと八神部隊長、ヴィヴィ副隊長とすれ違って少し世間話みたいなこともし、今私達はエリオ君と別れて女性用のシャワールームで汗を流しているところです。フェイトさんの車とヴィヴィさんのバイク、カッコよかったです。

そこで今まで聞かたかったことをズバリ聞いてみました。

 

「うん、そうだよー」

「訓練校でも前の部隊でも支給品って杖しかなかったのよ」

「私は魔法がベルカ式な上に戦闘スタイルがあんなだし。ティアもカートリッジシステムを使いたいからって」

「で、そうなると自分で作るしかないのよ」

「オリジナルデバイス持ちなんてスバルとティアナ、私と刹那。あとは刹那の相棒の人しかいなかったからすごい目立ってたわよね」

 

確かに周りがみんな杖ばかりな中に自作の銃や剣、ナックルとローラーみたいなオリジナルが混ざると目立ちますもんね。

 

「あれ?そうなるとユーキさんは………?」

「私?私はそもそもデバイス持ってないよ。魔法が特殊過ぎて。私自身が優秀だからその辺特別扱いしてもらってた」

「だからある意味1番目立ってたのはユーキね。ユーキ自身がデバイスですって言われても私否定出来ないわよ?」

「大丈夫、私自身も出来ないから」

「いや、そこは否定しようよ。あと自分で自分を優秀って………自画自賛よ?」

 

ぁー、きっと支給品のデバイスがユーキさんの魔法に耐えられずに壊れちゃったのかな。でもユーキさん自身素質があったから無下に出来なくて特別扱い………な感じなのかも。けど、この4人を見てるとユーキさんがなのはさん達と同い年でウリエルさんがその1つ上って信じられないんですよね。スタイル的な意味で。ユーキさんとウリエルさん、身長が少し高い以外はほとんど私と同じような体型だし。私は年相応だと思うんだけど。

 

「今キャロが失礼なこと考えてた気がする」

「そそ、そんなことありませんよ?ぁ、それでみなさん仲良くなったんですね?」

「腐れ縁と私の苦悩の日々の始まりって言って」

「話逸らした。まぁ、気にしてないけどね。スバルにも同じこと言われたし」

「ティアナ、すごい苦労してたもんね。初日からスバルに吹っ飛ばされたり空飛ばされたり」

 

あははは………何考えてたのかちゃんとバレてました。後で謝っておこう……

訓練校かぁー………私は行ってないからわからないけど、聞いた感じだとティアさん本当に苦労してたみたいです。でもそれはそれで楽しそうです。

 

「えへへへ。さてキャロ、頭洗おっか」

「お願いします」

「私、先に上がってるからね」

「私もー」

「「「はーい」」」

 

そこでティアさんとウリエルさんはシャワーを止めて外へ。私とスバルさん、ユーキさんもそれから少しして上がりました。

ロビーではエリオ君がすごく長いこと待ってたみたいで………ごめんなさい。




長らくお待たせした割にかなり短い出来となってしまいました。本当ならファーストアラートの出撃前のとこまでやるつもりだったんですけど、そこまで行くと長くなりそうだったので、キリのいいここで済ませることにしました。

ちなみにヴィヴィのバイクと以前アリシアがチラッと言っていたアリシアのバイクですが、イメージとしては仮面ライダーアギトの津上翔一が普段使ってるバイク(アリシアが灰、ヴィヴィが黒)です。私自身がその手のことはあまり詳しくないので、こういう表記になってしまいますが。

それと劇場版なのはDetonation見てきました!戦闘とか迫力あって、まさかの結末で。ネタバレになるのであまり多くは語れませんが、なのはGoDやってた身としては新鮮かつ懐かしい感覚で楽しめました!
それに伴って少しばかり過去の内容を修正しました。ごく一部だけですけど。RefとDet編、どうしよっかな。やるなら番外編になるけども………ゆっくり考えて追追、かなー。

感想など、良ければお願いします!


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第53話 アリシア特務官の任務

どうも、ルイスです!

ぐぁぁぁ………ネタが降りてこなくてなかなか筆が進まないです。申し訳ない

最近いろんなモチベ下がり気味で、ほぼひたすらガンプラ組んでるかたまにFFやプリコネやってる私がいます。この小説のネタも考えてるんですけど、なかなかキャラがいい感じに動いてくれなくて………(இдஇ`。)
モビルドールサラに始まって、バルバトスルプスレクス、レギンレイズジュリア、アメイジングストライクフリーダム、MG赤枠改、ガンダムフェニーチェリナーシタ、RGサザビー、バエル、MGデュナメス、ダブルオースカイ(ハイヤーザン)、ダブルオーダイバーエース、RGウィングゼロEW………かなりの数くんじゃいました!ほとんど微塗装くらいしかしてないですけど!

とまぁ、そんなことは置いておいて、本編どうぞ!


side アリシア

───FW達が訓練を始めるよりも前の陸士108部隊隊舎

 

「ったく………急にお押しかけてきて小隊貸してくれ、はねぇんじゃねぇか?」

「無理は承知なんですけど………」

「と言われてもなぁ」

 

丁度今私は任務の都合で陸士108部隊(ナカジマ三佐の部隊)へ来ています。今いるのはそこの部隊長室。これからやる任務で108部隊の小隊を借りたいなぁーと思って部隊長に交渉してるところ。私と刹那、後から合流予定のヴィヴィだけで戦力としては十二分だけど、任務の内容的にあと数人の人手が欲しいんだよね。

 

「あら?私はそれ受けるの賛成ですよ?」

 

私がナカジマ三佐に頭を下げてお願いをしているところへ、唐突にプシューと空気の抜けるような音とともに扉が開き、どことなくスバルに面影の似た女性が入ってきます。それも当然、彼女の名前はギンガ·ナカジマ。スバルより階級も歳も2つ上の正真正銘姉だからね。

 

「今日明日は今のところ別件の出動予定はなく訓練のみ。中隊規模ともなればともかく、小隊ならいいんじゃないですか?他ならないテスタロッサ特務官のお願いなんですよ」

「んなこたぁ、わぁーってる。だが、今回は内容が内容だけに即決ってわけにゃいかねぇんだよ」

 

ナカジマ三佐はそう言い、今回の任務内容が書かれた紙をギンガに渡す。ギンガはそれを受け取って目を通していく。

 

「えっと………作戦内容は密輸犯の検挙のようですが………あぁ、密輸物の中にロストロギアがあるんですか。これだけ見ればよくある普通の任務ですね。対象が曲がりなりにもロストロギアですから気は抜けませんが………とはいえ、確かに即答は難しいですよね。ロストロギア関連の任務、扱える部隊はあまり多くないですから」

「だから言ったろ?B級とはいえロストロギアはロストロギアだからな。嬢ちゃんが10年前遭遇した夜天の魔導書やジュエルシードよりランクは低ぃが危険なことに変わりはねぇからよ」

「正確に言えばジュエルシードは私は関わってないんですけどね」

 

ナカジマ三佐と私の言葉を聞きつつ任務資料を読み進めるギンガ。確かに空隊ならロストロギア関連の事案も経験のある魔導士がそこそこいる。数ある次元世界を管理している都合で様々な管理内外の世界へ行くからだね。端的に言えば縄張りが広い。

一方で陸士部隊は担当する次元世界の一部(例えば108ならミッド北部の一部地域)が管轄。もちろん有事の際はそこから出て任務にもあたることもあるけど、基本は管轄内で任務に当たってる。端的に言えば縄張りが狭い。

陸士部隊の方が入隊が容易な理由の1つがこれだね。空隊の方が求められる技術や知識等々が圧倒的に水準が高いからね。

そもそも特にミッドは開発が進められててロストロギアが新たに〜なんてことは滅多にないし。そのせいで解析云々をやることも少ないしね。

 

「対象のロストロギアは名称“ツクヨミ”。見た目は円形のクリスタルみたいですね。特性は詳細は不明だが、秘めた魔力で所有者の思考や記憶をスキャンすることが確認されている、と。内包している魔力そのものも至って並」

「ナカジマ三佐も言ってたけど、私が昔出会った夜天の魔導書とかに比べれば危険度はかなり低いね。詳細が不明なのは遺跡から掘り出された直後に盗難にあって初期の簡易検査しか出来ていなかったから、らしいよ」

「その事件は有名だな。確かおめぇのいる部隊のランスターの…」

「はい、お兄さんが最期に担当していた事件です。私もお世話になった人ですし、何度かそれ関連の捜査もしたことがあります。何故今のタイミングなのかわからないですけど、今回のこの作戦は絶対にしくじる訳にはいかないんです」

 

この盗難事件が起きたのが6年前。発掘して初期の簡易検査を終えたロストロギア『ツクヨミ』がミッド中央の研究所から専用の保管庫に移すまでの僅かな隙に盗難された事件。

さっき話題にでてきたティアナのお兄さん、故ティーダ·ランスター執務官はこの事件を担当していた執務官で、犯人は無許可で魔導を行使し、様々な犯罪を起こしてきた違法魔導士。もちろん非殺傷設定なんてものは使いやしない。ティーダさんは元々この人を追ってたらしい。

で、いよいよ犯人を追い詰めて逮捕!ってところでたまたま近くに居た民間人に犯人が発砲。ティーダさんはそれを庇って倒れ、死亡。犯人も捕り逃してしまった………ってのがこの盗難事件の顛末。

この事件の犯人はそれ以降管理局でもマークしてて、足取りがつかまめないまま今に至るってわけ。つまり今回はやっと掴めたチャンスってやつ!………まぁ、6年近くも空振り続きだったのにこんなに簡単に見付かったってのに違和感はあるんだけどね。

 

ちなみに余談だけど、ティーダさんが死亡したことについて葬儀の席や公式な会見で「死んでも犯人を捕らえるべきだった」とか「犯人を取り逃すとは無駄死だ」みたいなことを発言したお偉方がいて、一時期問題になったことがあった。当時私もティーダさんにはお世話になったこともあって、葬儀には私も出てたから、そのお偉方をその場でぶん殴りたかったけど、それはそれで問題になるからその辺は我慢。

ぇ?そのお偉方は今どうしてるかって?後ろめたいこと全部私が洗いざらい調べ尽くして然るべき場所に提出したらお縄に着いたよ。例の発言は最後まで撤回しなかったから名誉毀損罪も付けてね。

たぶんティアナが執務官志望な理由もここから来てるんじゃないかな。

 

「なるほどな。っし、わぁーった。うちの隊員連れてけ!メンツは顔見知りだしギンガと八雲は安定か。それだけじゃ少ねぇな。あとのメンツはギンガに一任する」

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシアがナカジマ三佐とのミーティングを終わらせてから数時間。私とアリシアのペアに108の燕、ギンガ、それと後衛を任せられるバックス1人を合わせた計5人は件の犯人の潜んでいる廃都市近郊内へと潜入しています。拠点としているであろう建物はまだ先ですが、乗り物を使うと目立つので離れた場所から歩いて向かう形です。

 

HQ(ヘッドクォーター)よりセイント1以下5名へ。現状目標地点までの最短ルート近辺に敵性反応なし。繰り返す、最短ルート近辺に敵性反応なし』

 

離れた地点の指揮車で待機している沙綾から通信が入り、センサー上では反応はなし。気は抜けませんが、このまま進むのは問題なさそうです。

沙綾は魔力を持たない関係でサーチャーの操作は出来ないので、イリスがそれをしています。ちなみに口調が普段と比べて物凄く硬いのは、こういうのが沙綾の中での作戦参謀のイメージだからみたいです。形からはいるタイプなんですね。

ちなみにコールサインはアリシアと私はいつも通り、ギンガ達はスカイライン1、2、3らしいです。ギンガが1で燕が2。

 

「事前にも伝えたけど、今回の任務は敵の罠って可能性がすごく高い。杞憂に終わればいいけど、サーチャー情報だけじゃなくて肉眼での確認もしっかりね。刹那も探知範囲広げておいて」

 

私達は了解、と短く返事をして周囲を警戒。敵にとってはホームであろうこの場所、私達が潜入しているのだって気付かれていてもおかしくはないですし、罠の1つや2つあったとしても何の不思議もありません。今のところは何も起きていないことに覇王(クラウス)を継ぐものとしての勘が立て続けに警鐘を響かせている中、私は索敵の範囲を広げ………っ!?

 

「伏せてっ!」

 

不意の殺気を感じ、私は隊列の後方へ。そして武装化させた右腕で何も無い虚空を一閃。すると、何も無いはずが、その途中で大きな火花が。同時に後方の地面(隊列的には前方)の地面が抉れました。

 

「ひっ!」

「そこに隠れて!」

 

バックスとして連れてきた108の隊員が怯える中、近くの路地裏へと退避。

 

「刹那、すまん。恩に着る」

「狙撃………しかもこれは実弾?」

「えぇ。魔力弾ではありません。ただ、いつまでもここに隠れていたら今度は魔力弾が飛んでくるでしょうね。かと言って裏路地は待ち伏せを受ける可能性が高い………」

 

本来ならばそのまま裏路地を進行して行きたいですが、地の利がないこちらは奇襲を常に警戒せねばならず、不利なことこの上ない。今まで表通りを通ってきたのも同じ理由ですね。先程の通信で沙綾が何も言ったなかったので、沙綾のサーチャーの方は何かしら妨害を受けているでしょうし。

かと言って、下手にここから出れば先程の狙撃に見舞われることに。どうするべきか………

 

「………イリス。今確認できる敵戦力は?」

 

私が思案しているところで、口を動かしたのは何やら考え込んでいたアリシアでした。

 

〈えっと………確認できるだけだと、後方約100メートルのビル上に約20人ほど。脅威度は先頭のリーダーみたいなのが少し高いけど、ほかは雑魚ね。あとはさっきのスナイパーがさらに後方。背の高いビルの屋上にいるわ。沙綾さんのデータベースとリンクして調べたらあの中に今回の主犯はいないけど、全員が指名手配中の次元犯罪者ね。今回の犯人………なかなかカリスマがあるみたいね。〉

「なるほど………でも、それならやりようはありそうだよ。刹那、頼める?」

 

なるほど。考えていたことは同じでしたか。

 

「わかりました。全員拘束したら直ぐに合流します」

「刹那、気を付けてね」

「ここから飛び出すとなるとスピードが命ね。テスタロッサ特務官、私がユイ·クサノ三尉を背負っていきますね。私のブリッツキャリバーならテスタロッサ特務官にも着いていけますから。燕は1人で大丈夫よね?」

「もちろんです。スピードはそこそこ自信がありますから」

 

アリシアが頷くのを確認して、すぐにユイ·クサノ三尉を背負うギンガ。スピードが命と言っていたのは単純で、のんびりしていたら飛び出したところを狙撃されるから。なら、飛び出して直ぐにダッシュし、その間に私が覇王岩砕で壁を作れば狙撃から守れる、という訳です。目隠しにもなりますしね。

ちなみにユイ·クサノ三尉は108の隊員でスカイライン3。治癒魔法と転移魔法、封印魔法とサポートに特化している後衛です。フルバックとしてはシャマルには劣りますが、同年代のバックスとしては若手では右に出る人はほとんどいないとか。ちなみにギンガとは同い年で同期らしいです。

 

「スリーカウントで行くよ。3……2……1……Go!」

 

アリシアの合図でいっせいに私達全員は隠れていた路地裏から飛び出し、敵の拠点の方へダッシュ。私だけ逆方向、後ろから狙っている敵の方へ向き直って震脚し、後ろに壁を作ります。案の定、その壁にいくつも狙撃弾が当たるのを確認してから私は不規則なジグザグでダッシュ。ここで狙撃されたらたまりませんからね。

 

「私は時空管理局特務官補佐の刹那·ストラトス!あなたがた全員に各種違法行為及び時空犯罪による容疑がかかっています。抵抗せず武装を解除、こちらの指示に従っていただけるのなら弁護の機会が与えられます」

 

敵の集団のいる建物の50メートルほど手前、大通りの真ん中に私は立ち止まり、お決まりの文句ですが投降を呼び掛けます。ま、結果は見えてますが。こちらは1人、向こうは約20人。私や特務官のアリシアの知名度はかなりあるでしょうが、如何せん数の差が圧倒的。まず、素直に投降はしてくれないでしょう。

 

「これは最後通告です。これ以上抵抗するのであれば、武力によって拘束することも視野に入れなければなりません」

 

実際、あいつ何言ってんの?とか馬鹿だろ、とか言われてます。

 

「ふーん?あんたの実力がどんくれぇなのかは知らねぇけどよ、この数の差でそんな上からものが言えるったぁ、余程の自信過剰だな?それともただの馬鹿か?」

「さぁ?どちらでしょうね。()()()()()()試したことがないのでわかりません」

 

あの中のリーダーなのか、1番前にいた男が返答をしてきました。ま、想定内の回答ですね。

ちなみに私個人で人間相手にこの人数差の戦闘を試したことは無いと言いましたが、それは現世に限った話。私の記憶の中にあるクラウスは普通にこの何倍もの数を相手にしていました。ちなみに人間以外だと例えばエルトリアでディアーチェ達が帰ってきた時の竜種の数はこの数十倍はありましたね。最も、その時はアインスもいましたが。

 

「それもそうか。ま、その余裕もここまでだ。1人でここに来たことを後悔しとけ!おまえら行くぞ!」

 

ヤツらの士気も相当に高いらしく、リーダー格の男の掛け声とともにビルの上からゾロゾロと飛び降りてきました。真正面からやり合えば確かにこちらに分が悪いですね。向こうは実弾銃やらなんやら揃えてますし。

 

「この数で一気に攻めりゃ………ごはっ!?」

 

飛び降りてきた一団の先頭、リーダー格の男だけが、飛び降りた直後に重力に逆らうように上へと吹き飛びます。

 

「神風烈空拳っ!からのスタンショット!」

 

その種は単純で、向こうが飛び降りると同時に私が旋風脚で超加速、その勢いのまま烈空拳をお見舞いした、という訳です。オマケにスタンショットで動きを封じるのも忘れずに(烈空拳の時点で意識はないでしょうが)。そしてヤツらのいた場所の後方、頭一つとびぬけて高い建物の屋上に意識を向ければそこには実体化し、戦闘服を纏ったイリスがこちらへサムズアップ。その脇にバインドで締め上げられた狙撃手も。

 

「こういう時はまず、頭を潰す。そして支援を断つ」

「「「!?!?」」」

 

私が立てた今回の作戦は至極単純。路地裏から飛び出す直前、アリシアの魔力を少量借りてイリスを実体化、私が敵と会話して気をこちらに向けている間にイリスが回り込んで後方の狙撃手を奇襲して拘束。それだけです。もちろん奇襲するのは敵が投降しないと言質を取ってからです。

正式なマテリアライズでは無いので、イリスの実体化は持って5分ほどな上に私のブラストクロウもその間細かな制御が出来なくなりますが、大した問題でもありませんね。

 

「さて、言いたいことはもうありませんか?でしたら、今回の敗因をよく考えておいてくださいね。何かが見えてくるかもしれませんから」

 

リーダー格を一撃で沈められ、頼みの綱である後方支援の狙撃ももう来ない。敵集団に動揺が走る中、私達は戦闘を開始しました。




前書きにも書きましたが、大変長らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでしたm(_ _)m結局あれからさらにひと月近くかかってしまいました(இдஇ`。)

そのいい証拠にあれだけ組んだ後にも(前書き最後に更新したのが4月中頃なので、それ以降)にHGCEフォースインパルス、同じくフリーダム、RGダブルオークアンタフルセイバー(クリアバージョン)、HGペイルライダー(陸戦重装備仕様)、HGフルコーン(緑の方)組んじゃいました。ちなみに今はHGハシュマル組んでます。

大まかなあらすじは出来てるので、あとはキャラが動いてさえくれたら文章にできるのですが………難しいですね(இдஇ`。)

あと、本編中で陸と空についての解説や故ティーダさんについて色々語ってますが、独自解釈と捏造設定と思ってください!

それでは次回もよろしくお願いします!


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第54話 干渉

どもです!随分とお待たせしてしまいました。申し訳ありませんm(_ _)m

本当であればこのオリジナル回は今話で終わらせるつもりでしたが、書いてるうちに長くなってしまいました。それでも多分次で終わる………かな?

ではどぞどぞ


other side

 

刹那、そしてアリシアも勧告を無視され、戦闘を始めて少しした頃。現場から少し離れた場所に建つ塔の上。展望台のフロアの上に2つの人があった。

親子と言えば納得できそうな大柄と小柄の2人組。2人ともローブを羽織っている上にフードで目元まで隠しているので具体的な容姿はわからない。背丈だけなら大柄な方は人間モードのザフィーラ、小柄な方はキャロ以上アリシア未満と言ったところか。アリシア自体、キャロとは頭1つ分ちょいくらいしか背丈の違いがないので、かなり小柄なことが分かる。そして大柄な方はその手に身の丈ほどありそうな槍を持っているのも特徴だ。

その2人は放った目を通して、2箇所の戦闘を監視していた。

 

「あれか。今回の用事、とやらは」

「うん。ドクターからのおつかい。詳しいことは知らないけど、今別の場所で()()してる方よりこっちの方が大切なんだって。こっちはドクターが直接関わった案件………とかなんとか」

「あんなロストロギアがかぁ?あんの変態ドクターも物好きだなぁ」

 

大柄な方は男、小柄の方は女の子らしい。

否、2人組ではないらしい。大柄な方のローブの中からとりわけ小柄な少女が飛び出てきて当たりを飛び回り始める。

小柄な少女よりもさらに小柄。それこそリインフォースⅡ並に。見た目はリインフォースⅡを天使と例えるなら、この少女はどことなく小悪魔を連想させる。

 

「あのロストロギア(ガラクタ)自体はどうでもいいらしい。特に問題なのはあっち」

「………なるほどねぇ。ま、そうでもなきゃドクターのおもちゃを大量に持ってきたりはしねぇか」

「うん。けど、あっちで1人で戦ってる方はこれじゃ役不足。だから………ガリュー、そっちはお願い」

 

女の子はローブの中から右手を横に掲げる。その右手にはめてある手袋の公にある水晶が一瞬だけ光り、地面に四角形の魔法陣を展開。程なくしてその中心に黒一色の人型が現れる。全身を甲羅のようなもので覆っており、背中には羽根のようなものもある。人型ではあるが人ではない。甲虫を彷彿とさせるイメージを人型に落とし込んだような、そんな見た目だ。

そのガリューと呼ばれた人型は、主たる女の子の言葉に小さく頷くと音もなく跳び去っていく。

 

「で、向こうの嬢ちゃん達の相手をさせるのがガジェットってわけか」

「うん。倒す必要は無いしそれでいい」

 

男の質問へ簡単に答えた後、女の子は淡々と召喚魔法の行使に移る。

 

(………にしても、あの野郎が直接関わった案件………か。面倒事にならないといいんだが)

 

その男は小さく溜息を漏らすと、目を投影してあるモニタの1つへ向ける。そこに映っていたのは、つい今しがた先程のガリューと呼ばれた人型と戦闘を始めた刹那の姿だった。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、拘束対象の転送準備完了。HQ、あとはお願いします」

『こちらHQ、了解。護送を108に引き継ぐ』

 

先程の犯罪者集団と戦闘すること約10分。対象は全員無力化され、バインドにより拘束。護送のための転送も準備完了しました。イリスは合流して右腕のコアに戻っているので、あとはアリシアとも合流するだけですね。

 

「………向こうの様子、どうなっているかわかりますか?」

『ぇ?ぇっと………セイント1もそちら同様に対象へ投降勧告実施。現在はそれを無視されて攻撃を受けたので迎撃中です。こちらの負傷はなし、確保対象のロストロギアも発見済みです。どうかしましたか?』

「ぇ?あぁ、いえ、少し違和感………というか何かあるような気がするんです。覇王の勘ってやつです」

『あぁ、そう言えば刹那さんの先祖は覇王さんでしたね』

 

忘れられていたことは少し心外でしたが、まぁそこまで重要なことでもないですし、言うほど私はそれを表には出していないので仕方ない、そう私は思いつつ、転送を開始。この集団も1人残らず気絶しているので、それ自体はそつ無く終わります。

 

「よし。転送完了しました。護送の方はよろしくお願いしますね」

『………チQ……………転………くに………』

「ぇ?………っ!?」

 

と、突如通信にノイズが混ざり、向こうの声がほとんど聞き取れなくなります。咄嗟に周囲探知を広げ、警戒しようとした瞬間。その探知にものすごく至近距離では引っかかる物があった。その物から明確な殺意を感じ、咄嗟に今いた場所から横へ飛び退きました。

 

ズドォン

 

それとほぼ同時。つい数瞬前まで私がいた場所にミサイルでも落ちたのかと思わせるような爆音と土煙。

 

「私の探知すら掻い潜る………いえ、違いますね。そもそも私の探知が妨害されてるんですね。今は至近距離だから妨害があってもなお見えているだけ」

〈AMF………だね。そんなのを息ををするように使うのなんて1人しか思い付かないわよ〉

 

ジェイル·スカリエッティ………アリシアから話を聞いただけですが、元々フェイトが追っていて、今では6課を上げて追っている次元犯罪者。訓練でもよく戦ったガジェットドローン、通称ガジェットを主力として運用している………とは聞いてましたが

 

「明らかに人型………ですよね。機械ではありません。人でもありませんが」

〈たぶんだけど………召喚獣の類だと思うわ〉

「なるほ、っど!!」

 

奇襲をしかけてきた人型を分析していると目にも止まらぬほどの早業で、今度は正面から格闘による攻撃を仕掛けてきました。当然と言えば当然ですが、ゆっくり分析をする時間はなさそうです。なんとか防御には成功しましたが、AMFの影響もあり視野は狭く、それに割いている魔力も普段よりかなり多い。このままだとジリ貧ですね。繰り出してくる格闘術も、流派があるようなものでは無いですが、侮れないですし。

 

「イリス、アレで行きましょう」

〈えぇ!?確かにアレはコアにインストールしてるから、切り替えれば使えるけど………でもあれは最終調整がまだよ!〉

「遅かれ早かれ実戦で慣らさないといけないんです。それが今、と言うだけですよ」

 

それにこの人型は音や匂いの情報だけで渡り合えるとは思いませんしね。それほどの強敵です。さすがに暴走していた時のミカエルほどでは無いですが。

 

〈あぁもう!どうなっても知らないわよっ!それなら何とかして5秒、アイツの隙を作りなさい。そこで切り替えるわ!〉

「わかりましたっ!」

 

切り替え………要は今の魔力放出による視野から新しく構築した対AMF用の視覚魔法への切り替え。当然ですが、魔力放出をそこで停止させるので、その瞬間だけ私の今の視覚が失われることになります。例えそれが一瞬だとしても、音や匂い等の感知である程度補えるとしても、それは私が敵の前で一瞬隙を晒す事実に他ならず、戦場でそれは死を意味します。だからこそ、切り替えのタイミングが重要。イリスはそれでもその隙を短くしようとしています。それが今言った1秒。

ちなみにイリスとこの会話の間も肉弾戦は続いていて隙がありません。

 

「ならばっ!」

 

両手両足で次から次へと繰り出される打撃、私もそれを防ぎ、避けられるものは避けて反撃をしますが、それは向こうも同じ。時折距離をとってもすぐに詰められます。このままでは埒が明かず、アレに切り替える余裕もありません。

このまま、ならば。

 

「ぐっ、せぁぁぁ!!」

 

敵の人型がやや不意打ち気味の膝蹴りを仕掛けてきます。今までならそれを防いでいたタイミング。私はそれをあえて受け、その膝を抱え込むように持ち上げ、体を捻りながら上へと投げます。そして投げると同時に軸足で地面を蹴って回し蹴りによる追撃で廃ビルへと吹き飛ばします。

普通の人間相手にこれをやればまず間違いなく股関節がただでは済まないでしょうが………アレは人ではないのは間違いないなく、この程度でどうこうなることもないと確信していました。

 

「イリスっ!」

〈魔力放出、停止!〉

「了解です………っ!?」

 

ここぞというタイミングでイリスへ合図を送り、切り替えに入ります。が、私はここで重大なミスを犯していました。

 

「がっ………」

 

敵の実力を見誤る、ということ戦場でしてはならない重大なミスを。

魔力放出は止めていましたが、音や第6感で何とか察知出来たおかげで辛うじて防御は間に合いましたが、それでも受けきることが出来ず、私は背後にあった建物の中へ吹き飛ばされます。このダメージのせいもあり、イリスは切り替えを中断してしまったみたいです。

 

〈刹那!?〉

「大丈夫、です………続けてください」

〈けど………〉

「あの敵に、議論している場合では無いと思いますよ」

 

当然、あのレベルの強さを持つ敵が今の隙を放ってくれる訳もなく、直ぐに飛び掛ってきて追撃してきます。私もそれを何とか回避していますが、ここは狭い室内で今の私の視野はゼロ。足元の瓦礫でバランスを崩した瞬間を狙われて再びクリーンヒットを貰って大通りの反対側まで吹き飛ばされてしまいます。

 

(ぐ………少し、ダメージを受けすぎました………ヤバいですね)

〈視界モード………切り替えっ!オン!〉

「っ………」

 

丁度そのタイミングで視野が開けてきます。切り替えの前と後の違いは一言で言えば『魔力で見る』か『魔力を見る』か、それに尽きます。何度も言ってきたように今までは放出した魔力を再感知してそれを見るソナー式。今は例えるならサーモグラフィーの魔力バージョンのようなものですね。

が、調整も何もしていないので見える光景は不明瞭。ぼんやりと分かるのはあの黒い人型のような敵が更なる追撃を仕掛けてきていることだけ。受けたダメージのせいで回避もままならないのが正直なところです。起き上がることだけなら出来そうですが、回避となるとキツイです。

 

「刹那っ!」

 

と、そこに横からの介入が。黒い人型に横から一撃入れて吹き飛ばしたかと思うとすかさず魔力弾を連射して追撃し、足止めをします。

 

「今ヒールしますね。少しの辛抱です」

「っ、ヴィヴィ?」

「はい、おねーちゃんです。随分とボロボロ………珍しく油断でもしました?」

「そんな、ところです」

 

その横から割り込んできたのはオリヴィエことヴィヴィ。朝の訓練に出てから来ると言っていたので、それが今到着したんでしょう。なんにせよ最高のタイミングです。

そのヴィヴィは追撃防止の為か、持っていた大型の斧を地面に突き刺した後、ドーム状の障壁を張ってから私を治癒魔法で回復してくれます。

 

「………ヴィヴィ。向こうの状況はわかりますか?まだ今の視覚だと視野が狭いので」

「当初の目標は制圧済みですよ。ただ、まだ転送の方は数名残っています。その上、向こうにも新たな敵………ガジェットの群れと交戦中です。数は地上と空中それぞれ30ほど。数機程ですが、大型もいます。飛べるのがアリシアだけなので空中はアリシアが1人で対応しています。地上の方も戦線は維持できています」

「なるほど………では、回復が終わり次第ヴィヴィは向こうの援護に行ってください。私の推測通りならすぐに戦線が崩壊します。アリシアも地上の援護は難しいとなれば尚更」

「なっ!?」

 

だってそうでしょう?向こうの地上で戦っているのはギンガ、燕、ユイの3人。私の記憶通りであればギンガとユイの2人はともかく、燕はまだ()A()M()F()()()()()()()()()()()()。初見での対応が困難なアレが30も相手な上、護送対象を守りながら、しかもユイは攻撃系の魔法は不得手。燕の実力は知っているので、ある程度は上手く立ち回れるでしょうが、遠からず戦線は崩壊します。

 

「こちらの方も手はあります。大丈夫です」

「………わかりました。何かあれば……っ!?」

「っ!?」

 

唐突に私たちを襲う魔力の奔流。ただ、これはガジェット由来のものとは訳が違う………ツクヨミに何かがあったのでしょうか!?

 

「ヴィヴィ!」

「今向かいます!システム全開!ヴァリアントハルバート展開っ!」

 

ヴィヴィが大きく右足を踏み込み、左腰の辺りで腰溜めの体勢に。ただ、左手は腰の辺りではなく大きく後ろへ。次の瞬間足元に私も使っているフォーミュラタイプの魔法陣が展開し、ヴィヴィの両手には身の丈を軽く超える大きさの戦斧が。

一般的にハルバートと呼ばれる戦斧は槍の刃の根元にピックと斧頭があることが特徴で、要は斧のようにも使えるほぼ槍のようなもの。ですが、ヴィヴィの展開したヴァリアントハルバートは柄の長さこそ一般的な槍のそれですが、太さがそれこそ私の腕程もあり、その先端の斧頭の大きさがそれだけでヴィヴィの身の丈よりも大きく、その反対側のピックも根元に少し小さめ(それでも十分に大型)の斧頭がついています。先端には槍の刃は付いてませんしね。名前と見た目から推測するに魔力刃でも展開するのでしょうか?

 

「6年前の事件の時に私も覚えたんです。最近まで忘れてましたけどね」

「なるほど。では、私も隠し球を」

 

私は大きく右足を踏み込み、右腕を頭を守るように正面に構えて左腕を腰溜めに構えます。

 

「柔体の型『牙城』!」

 

似たようなもので鋼体の型『牙山』がありますが、あれは肘で攻撃を受けることで相手にもダメージを与える攻撃的防御の型(それを完全に攻撃に転用させたものが崩雷)です。が、これは柔体の型。簡単に言ってしまえばカウンターを想定した型です。受け流して攻撃………とは少し違いますが。

 

「刹那、ご武運を」

「ヴィヴィも。みんなを頼みます」

 

ちょうどそこで瓦礫の中から敵の人型が飛び出して来ました。私はものすごいスピードで走っていくヴィヴィとの間に位置取り、敵の初撃の踵落としの軌道を逸らして外させます。次は逆足から来る膝蹴り。

私は踵落としの時点で敵の魔力の流れからそれを読み、左腕でそれを受けつつ先程踏み込んだ右足で地面を蹴ってバックステップ。自身の中の力の流れを強く意識し、右腕で受け流した膝蹴りのパワーを右腕から胴体、右足へと伝達。

 

「神風流」

 

同時に左足を軸にして素早く一回転。がら空きの胴へ肉薄します。

 

「旋衝砲っ!」

 

そして回し蹴り。敵は先程埋まっていた瓦礫へと逆戻りで吹っ飛びました。

柔体の型『牙城』、これは簡単に言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()型。そしてそのパワーを乗せたカウンターが旋衝砲というわけです。今回は旋風脚の要領で打ち込みましたが、裂空拳等他の物理攻撃でも乗せることが出来ます。砲、と名前にはありますが砲撃ではありません。打撃です。

 

視覚を切り替えてまだ慣れていないこともあり、今の私の視野はそこまで広くなく高速戦闘は分が悪いです。なので、こちらからは大きく動くことはせずにひたすら防御に徹する体勢をとったというわけです。敵の打撃のパワーを伝達するのに特殊な魔力運用をするので咄嗟には出来ない上に、事前準備をしていてもそれなりに集中力を使うのが欠点ではありますが………

相手の方が私を突破していくことが目的なら、それを許してしまうかもしれませんが、今の敵はそれをしないことはわかっています。そのつもりなら今までいくらでもチャンスはありましたからね。

 

「何のつもりかは知りませんが、無力化の後に公務執行妨害で拘束させていただきます。」

 

私は再び瓦礫の中より立ち上がった敵へ、そう宣言しました。

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 燕

 

くっ………少しマズいな。何がマズいってあとから湧いてきたこの機械兵器の大群だ。

当初の任務のロストロギア『ツクヨミ』の確保とそれを密輸していた組織の検挙は無事完遂。これから封印処置をして護送、というところで突如として大量に機械兵器が湧いてきたんだ。見た目はカプセル錠剤をどデカくしたような感じだな。あとはエイみたいな見た目の空中飛行型もいて、それらがざっと30ずつ程。数はその2種類ほどじゃないが、直径2m程はありそうな球状の大型も数機………。

まず数の差が圧倒的な上にこれら全機がAMF(アンチマギリンクフィールド)を展開していて、私はその対策訓練を受けていない。

私達の中で空中戦が出来るのはテスタロッサ特務官だけなので、空中はテスタロッサ特務官が1人で向かった。そもそも飛行魔法も阻害されるはずなのに発動がスムーズで、彼女には驚かされるばかりだ。

一方の地上は私とギンガさん、ユイさんの3人。ギンガさんとユイさんは対AMF訓練は受けているが、ユイさんは回復や補助が専門でそもそも攻撃魔法が苦手。ギンガさんとも機械兵器の数の暴力のせいで引き離された。

簡単な対応方法はざっと説明を受けたが、即時対応はさすがに難しい。一応見様見真似とユイさんの回復や補助で何とか………と言ったところだ。しかし、このままではジリ貧だな。魔法攻撃はガジェットのAMFで阻まれるし、エクシアによる斬撃や刺突は装甲で止められる。ギンガさんだけに任せるというわけにも行かないし………

 

「たぁぁーっ!っ……てゃぁ!」

 

もう何度目かわからないが、刺突を装甲に弾かれてとりあえず距離を取らせるためにガジェットを蹴飛ばす。対応方法は教わったが、魔力を練るのに一苦労で即応するのは難しい………機動六課ではそれを専門にしているから刹那やユーキ、ウリエルならなんとかするんだろうが………

 

「負けてられるかっ!」

「つ、燕ちゃん!?」

「なんとかするっ!」

 

数多のガジェットから繰り出される射撃を辛うじて防ぎつつ、魔力を練り上げる。刀身に魔力を纏わせ、それにさらに重ねるように魔力を纏わせる。これが一番簡単で手っ取り早い対策らしいが、かなり難しい。

 

「っ、ぐぅ………!もう少し!!」

「私も手伝うよっ!彼の者に聖なる力を………フラワリングブースト!」

「ありがとうございますっ!」

 

ユイさんの使った強化魔法の暖かい光が私の身体を包み、同時に私の中に力が漲る。おかげでなんとか魔力構築そのものは完了。どこまでやれるかわからないが………

 

「スターリィ………ティアァァァ!!!」

 

練り上げた魔力を放出、高速で突撃して刺突。そこそこ進んだところで急ブレーキしてターン、そして突撃と刺突。それを計5回。それが終わると巻き込んだガジェットが爆散する。

今私が通った軌道を上から見たら星型に見えるだろう。そういう技だ。

私の広範囲刺突技、スターリィティアー。星型軌道で刺突を繰り返し、多数の敵を巻き込んで広範囲を巻き込む。

 

「燕ちゃん!!!」

「ぇ?」

 

私の大技が決まって油断した。それを気付かせてくれたのはユイさんに私の名前を呼ばれてからだ。振り返るとガジェットが爆散した煙の中から、小型が1機突っ込んできた。

 

「しまっ………」

 

私は咄嗟に細剣を腰溜めに構えて、そこに魔力を集中させて即効で構築していく。

 

「必殺剣·………」

 

ただ、私は気付くのが遅れた。

 

「天下五剣っ!!」

 

腰溜めに構えた細剣を機械を斬り裂く感覚とともに逆袈裟斬りに振り抜き、溜め込んだ魔力を放出。放射状に広がるそれはまるで5本の剣の様に。

だがこれは………()()()使()()()()()()()()()()()。それに気付くのが遅れてしまった。咄嗟に放った今の前方扇状範囲攻撃、必殺剣·天下五剣。これは昔私が得意としていた()()。私が細剣ではなく刀を使っていた頃の技だ。

それを私が自覚したのは硬いものが砕ける感覚が手に伝わってきたその時。ハッとして右手を見ると、細剣の刀身が半ばから砕けるように折れていた。

 

ガジェットの一斉攻撃が私を襲ってきたのは………それとほぼ同時だった。




最初の方にでてきた3人?組、見覚えある人はいると思います(そもそも内1人は名前出てますし)。はい、想像の通りです。

特に因縁とか、今後どうこうってわけでもないですが、流れ的にからませやすかったんで( ̄▽ ̄;)

ではまた次回!


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